(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184263
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】仕上構造
(51)【国際特許分類】
E04F 13/08 20060101AFI20231221BHJP
E04B 9/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E04F13/08 A
E04F13/08 B
E04B9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098316
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恭章
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬太郎
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拡
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA27
2E110AA48
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB23
2E110BA12
2E110BA15
2E110BC02
2E110CA07
2E110CA08
2E110CA26
2E110CC02
2E110CC15
2E110DA02
2E110DA03
2E110DA12
2E110DC21
2E110DC23
2E110DD12
2E110GA14Z
2E110GA15Z
2E110GA16Z
2E110GA33W
2E110GA33X
2E110GB16W
2E110GB16X
2E110GB17W
2E110GB17X
2E110GB23W
2E110GB23X
2E110GB42Z
2E110GB53Z
2E110GB55Z
2E110GB62W
2E110GB62X
(57)【要約】
【課題】板材を複数枚重ね合わせて形成された仕上構造において、板材の割れを抑制する。
【解決手段】仕上構造は、躯体に固定された支持部材(野縁18)に固定された板状の下地材22と、下地材22の目地と異なる位置に目地が配置された状態で下地材22に固定された板状の仕上材24と、仕上材24の目地に跨がった状態で仕上材24に接着され、仕上材24の目地の開きを抑制する帯状部材26と、を備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に固定された支持部材に固定された板状の下地材と、
前記下地材の目地と異なる位置に目地が配置された状態で前記下地材に固定された板状の仕上材と、
前記仕上材の目地に跨がった状態で前記仕上材に接着され、前記仕上材の目地の開きを抑制する帯状部材と、
を備えた仕上構造。
【請求項2】
前記仕上材は、前記下地材より湿度変化による伸縮率が大きい、請求項1に記載の仕上構造。
【請求項3】
前記仕上材の厚さ方向の中心位置から前記下地材の厚さ方向の中心位置までの距離をe1、前記下地材の厚みをt1、前記下地材の弾性係数をE1とし、
前記仕上材の厚さ方向の中心位置から前記帯状部材の厚さ方向の中心位置までの距離をe2、前記帯状部材の厚みをt2、前記帯状部材の弾性係数をE2とした場合、
次の式が成り立つ、請求項1又は2に記載の仕上構造。
0.5≦(e2t2E2)/(e1t1E1)
【請求項4】
前記下地材及び前記仕上材を接着する接着剤と、前記仕上材及び前記帯状部材を接着する接着剤とが、同じ接着剤である、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【請求項5】
前記下地材及び前記仕上材は天井面を形成する、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【請求項6】
前記帯状部材の前記仕上材に対する接着幅は、前記仕上材の厚みの3倍以上である、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、仕上構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、接着剤を用いて躯体壁に内装ボードを貼着した直貼り構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の補強部材の直貼り構造では、内装ボードが躯体壁に直貼りされている。ここで、建材として用いられるボード類のなかには、湿度変化によって伸縮するものがある。内装ボードが湿度変化によって伸縮すると、内装ボード間の目地が拡がったり縮んだりする場合がある。躯体壁は内装ボードと比較して十分に剛性が高いため、目地の拡がりによって割れる蓋然性は低い。
【0005】
一方で、建物における壁や天井材は、下地材としての板材と仕上材としての板材とを重ねて二重貼り以上とする場合がある。このように複数枚の板材を重ねて配置する場合、一方の板材の目地が拡がったり縮んだりすると、目地部分にある他方の板材に曲げモーメントが発生して、他方の板材が割れる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、板材を複数枚重ね合わせて形成された仕上構造において、板材の割れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の仕上構造は、躯体に固定された支持部材に固定された板状の下地材と、前記下地材の目地と異なる位置に目地が配置された状態で前記下地材に固定された板状の仕上材と、前記仕上材の目地に跨がった状態で前記仕上材に接着され、前記仕上材の目地の開きを抑制する帯状部材と、を備える。
【0008】
下地材と仕上材とで形成された仕上構造において、下地材と仕上材とで目地位置が異なると、例えば湿度変化で下地材と仕上材とが伸縮した際に、仕上材及び下地材には、互いに引張力が作用する。このとき、下地材の目地部分や仕上材の目地部分に曲げモーメントが発生し、仕上材又は下地材が割れることがある。
【0009】
例えば、乾燥によって下地材及び仕上材が収縮した場合、仕上材の目地部においては、仕上材が離れる方向へ移動する一方、下地材が縮む。これにより仕上材の目地部分の下地材に曲げモーメントが発生し、下地材が割れることがある。
【0010】
そこで、請求項1の仕上構造においては、帯状部材を仕上材の目地に跨った状態で仕上材に接着して、仕上材の目地の開きを抑制する。これにより、下地材に発生する曲げモーメントが抑制され、下地材の割れが抑制される。
【0011】
請求項2の仕上構造は、請求項1に記載の仕上構造において、前記仕上材は、前記下地材より湿度変化による伸縮率が大きい。
【0012】
請求項2の仕上構造は、仕上材が下地材より湿度変化による伸縮率が大きい。すなわち、湿度変化によって仕上材が下地材より大きく動く。このため、帯状部材がない場合は、仕上材の目地部分において発生する曲げモーメントが、下地材と仕上材との伸縮率が同じ場合と比較して、大きくなる可能性がある。
【0013】
しかし、帯状部材によって仕上材の目地の開きを抑制することにより、曲げモーメントを抑制できるため、効果的に下地材又は仕上材が割れることを抑制できる。
【0014】
請求項3の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記下地材の厚みをt1、前記下地材の弾性係数をE1とし、前記帯状部材の厚みをt2、前記帯状部材の弾性係数をE2とした場合、次の式が成り立つ。
0.5≦(e2t2E2)/(e1t1E1)
【0015】
請求項3の仕上構造では、0.5≦(e2t2E2)/(e1t1E1)とされている。すなわち、仕上材の中心線からみて、帯状部材の軸力による曲げモーメント(e2t2BE2δ/L)が、下地材の軸力による曲げモーメント(e1t1BE1δ/L)の0.5倍以上であり、0.5≦(e2t2E2)/(e1t1E1)という関係が成り立つ。各種材料物性等のバラツキを考慮して、下地材の発生応力を破壊応力の半分程度とするには、下地材及び帯状部材の剛性バランスがこの関係を満たすことが好ましい。これにより、下地材が割れることを抑制できる。なお、B、δ、Lについては後述する。
【0016】
請求項4の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記下地材及び前記仕上材を接着する接着剤と、前記仕上材及び前記帯状部材を接着する接着剤とが、同じ接着剤である。
【0017】
請求項4の仕上構造では、下地材及び仕上材を接着する接着剤と、仕上材及び帯状部材を接着する接着剤とが、同じ接着剤である。このため、下地材及び帯状部材の伸縮量が、接着剤の弾性の違いに影響を受けることを抑制できる。
【0018】
請求項5の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記下地材及び前記仕上材は天井面を形成する。
【0019】
請求項5の仕上構造では、下地材及び仕上材が天井面を形成している。天井面は壁面と比較して、大面積となりやすい。このため、面材1枚当たりの面積が大きくなり易く、吸水や乾燥による伸縮量が大きくなり易い。この仕上構造では、このように伸縮量が大きい場合でも、効果的に内側ボードが割れることを抑制できる。
【0020】
請求項6の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記帯状部材の前記仕上材に対する接着幅は、前記仕上材の厚みの3倍以上である。
【0021】
請求項6の仕上構造では、帯状部材の仕上材に対する接着幅は、仕上材の厚みの3倍以上である。これにより、仕上材から帯状部材へ応力がスムーズに伝達される。
【発明の効果】
【0022】
本発明によると、板材を複数枚重ね合わせて形成された仕上構造において、板材の割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】本発明の実施形態に係る仕上構造の一例としての天井構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る仕上構造の一例としての天井構造の分解斜視図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る仕上構造を示す断面図である。
【
図4】(A)は本発明の実施形態に係る仕上構造の湿度による変形前の状態を示す断面図であり、(B)は変形しようとした際に作用する軸力を示す断面図である。
【
図5】(A)は比較例に係る面部材の湿度による変形前の状態を示す断面図であり、(B)は変形後の状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態に係る仕上構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0025】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0026】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0027】
<天井構造>
図1には、本発明の実施形態に係る仕上構造の一例としての天井構造が示されている。この天井構造は、支持部材10及び面部材20を備える。
【0028】
(支持部材)
支持部材10は、躯体としてのスラブ(不図示)に固定された吊下げ部材であり、吊りボルト12、ハンガー14、野縁受け16及び野縁18を含んで構成されている。
【0029】
吊りボルト12は、一例として、上端部がスラブの下面に埋設されたアンカーナットなどに捩じ込まれた全ねじボルトであり、上下方向に沿って配置されている。また、吊りボルト12は、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)のそれぞれにおいて、所定の間隔で配置されている。
【0030】
ハンガー14は、吊りボルトの下端部にナットを用いて固定された部材である。Y方向に沿って配置された複数のハンガー14には、野縁受け16が架け渡されて固定されている。
【0031】
野縁受け16は、Y方向に沿って配置された長尺部材である。また、野縁受け16は、X方向に所定の間隔(吊りボルト12の間隔と等しい間隔)で配置されている。
【0032】
野縁18は、X方向に沿って配置された長尺部材であり、野縁受け16にクリップ(不図示)を用いて固定されている。また、野縁18は、Y方向に所定の間隔(野縁受け16のX方向における間隔より狭い間隔)で配置されている。
【0033】
(面部材)
面部材20は、下地材22、仕上材24及び帯状部材26を含んで構成され、建物の天井面を形成している。
【0034】
図2に示すように、下地材22は、野縁18の下方に配置され、野縁18に固定された板材である。下地材22は、長手方向が、野縁18の延設方向と直交して配置されている。すなわち、下地材22の長手方向はY方向に沿っている。下地材22は、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、複数枚並べて配置されている。
【0035】
また、下地材22は、石膏ボードを用いて形成され、湿度変化によって伸縮する。例えば環境湿度が上昇して含水率が高くなると、下地材22は面内方向に伸びる。一方、環境湿度が低下して含水率が低くなると、下地材22は面内方向に縮む。
【0036】
仕上材24は、下地材22の下方に配置され、接着剤によって下地材22に固定された板材である。仕上材24は、長手方向が、下地材22の長手方向と直交して配置されている。すなわち、仕上材24の長手方向はX方向に沿っている。仕上材24は、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、複数枚並べて配置されている。
【0037】
なお、下地材22の長手方向をX方向に沿う方向としてもよいし、仕上材24の長手方向をY方向に沿う方向としてもよい。さらに、本例では下地材22の長手方向と仕上材24の長手方向とを異なる方向としているが、これらの方向を、X方向又はY方向の何れかに揃えてもよい。
【0038】
仕上材24は、ケイ酸カルシウム板を用いて形成され、湿度変化によって伸縮する。例えば環境湿度が上昇して含水率が高くなると、下地材22は面内方向に伸びる。一方、環境湿度が低下して含水率が低くなると、下地材22は面内方向に縮む。
【0039】
下地材22及び仕上材24の湿度変化よる伸縮率(環境湿度が1%変化した際の伸縮率)は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、仕上材24のほうが、下地材22より伸縮率が大きい。
【0040】
仕上材24の1枚あたりの大きさは、下地材22の1枚あたりの大きさと等しい。但し、例えば天井の端部などにおいては、下地材22及び仕上材24は、天井下空間の面積や形状に合わせて適宜切断して用いられるため、大きさは一定ではない。
【0041】
なお、仕上材24を目視した際の意匠性を考慮して、仕上材24の1枚あたりの大きさや形状は、下地材22の大きさや形状と無関係に決定してもよい。一例として、仕上材24は、所望の大きさで正方形状に形成し、格子状に配置することもできる。また、別の一例として仕上材24は、長方形状に形成し、目地が馬目地状となるように配置することもできる。さらに、仕上材24は、三角形状や六角形状などとしてもよい。
【0042】
帯状部材26は、仕上材24の目地に跨がった状態で仕上材24に接着されたテープ又は板状部材であり、仕上材24の目地の開きを抑制する。このテープ又は板状部材としては、一例として鋼材の薄板が用いられる。
図4(A)に示すように、帯状部材26の仕上材24に対する接着幅Wは、仕上材24の厚みt
3の3倍である。下地材22及び仕上材24を接着する接着剤Gと、仕上材24及び帯状部材26を接着する接着剤Gと、は、互いに等しい接着剤である。
【0043】
なお、帯状部材26を形成する素材は特に限定されるものではなく、フィルム状のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素、FRP(Fiber Reinforced Plastics)などを用いることができる。また、板状に形成した鉄鋼等の鉄系金属、アルミ、アルミ合金、銅、銅合金、チタン、樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ、フェノール、アクリル等)、セラミック等を用いることができる。帯状部材26の厚みは、選定する材料の弾性係数に応じて適宜決定すればよい。
【0044】
(目地構造)
上述したように、下地材22の長手方向はY方向に沿っている一方、仕上材24の長手方向はX方向に沿っている。このため、
図3に示すように、下地材22の目地と仕上材24の目地とはそれぞれ異なる位置に配置される。「異なる位置」とは、下地材22及び仕上材24の面内方向と直交する方向から見て異なる位置である。
【0045】
また、厳密には、下地材22の「X方向に沿う」目地と、仕上材24の「X方向に沿う」目地とが異なる位置に配置される。また、下地材22の「Y方向に沿う」目地と、仕上材24の「Y方向に沿う」目地とが異なる位置に配置される。
【0046】
なお、下地材22及び仕上材24の大きさによっては、下地材22の「X方向に沿う」目地と、仕上材24の「X方向に沿う」目地とが部分的に同じ位置に配置される場合があるが、このような構成を含んでいてもよい。「Y方向に沿う」目地についても同様である。また、X方向に沿う目地とY方向に沿う目地とは、互いに重なっていてもよい。
【0047】
なお、
図3においては、目地構造を把握し易くするため、下地材22及び仕上材24の厚みは、野縁18の大きさに対して誇張して描かれている。目地幅についても同様である。
【0048】
ここで、下地材22と仕上材24とで目地位置が異なると、湿度変化で下地材22と仕上材24とが伸縮した際に、下地材22及び仕上材24には、互いに引張力が作用する。例えば、
図4(A)に示すように、周辺湿度が低下することにより下地材22及び仕上材24が乾燥し、それぞれ矢印N1及びN2で示すように収縮した場合、仕上材24の目地部においては、互いに隣り合う仕上材24同士が離れる方向へ移動しようとする一方、下地材22が縮もうとする。
【0049】
これにより、
図4(B)に示すように、下地材22には面内力F1が作用し、仕上材24に引っ張られる帯状部材26には面内力F2が作用する。
【0050】
面内力F
1は、仕上材24の目地部において下地材22に作用する軸力であり、下地材22が縮む方向に作用する。この面内力F
1は、
図4(A)に示すように、下地材22の厚みをt
1、下地材22の弾性係数をE
1、仕上材24の目地幅をL、目地幅変位をδ、仕上材24の目地の奥行き方向(X方向)の寸法をB(不図示)とすると、以下の(1)式で表される。
【0051】
F1=E1t1B/Lδ (1)
【0052】
一方、面内力F2は、仕上材24の目地部において帯状部材26に作用する軸力であり、帯状部材26が伸びる方向に作用する。この面内力F
2は、
図4(A)に示すように、帯状部材26の厚みをt
2、帯状部材26の弾性係数をE
2、仕上材24の目地幅をL、目地幅変位をδ、仕上材24の目地の奥行き方向(X方向)の寸法をB(不図示)とすると、以下の(2)式で表される。
【0053】
F2=E2t2B/Lδ (2)
【0054】
ここで、各種材料物性等のバラツキを考慮して、石膏ボードである下地材22の発生応力を破壊応力の半分程度とするには、下地材22及び帯状部材26の剛性バランスが以下の関係を満たすことが好ましい。
【0055】
一例として、仕上材24の中心線からみて、帯状部材26の軸力による曲げモーメントが、下地材22の軸力による曲げモーメントの0.5倍以上あることが好ましい。すなわち、仕上材24の厚さ方向の中心位置から下地材22の厚さ方向の中心位置までの距離をe1、仕上材24の厚さ方向の中心位置から帯状部材26の厚さ方向の中心位置までの距離をe2、仕上材24の目地幅をL、目地幅変位をδ、仕上材24の目地の奥行き方向(X方向)の寸法をB(不図示)とすると、以下の(3)式が成り立つ。
【0056】
0.5(e1t1BE1δ/L)≦e2t2BE2δ/L (3)
すなわち、
0.5≦(e2t2E2)/(e1t1E1)
【0057】
また、帯状部材26の軸力による曲げモーメントが、下地材22の軸力による曲げモーメントの等倍である場合、すなわち、次の(4)式が成り立つ場合は、さらに好ましい。
【0058】
e1t1E1=e2t2E2 (4)
【0059】
<作用及び効果>
ここで、本発明の仕上構造の作用及び効果の説明に先立って、比較例について説明する。
図5(A)、(B)には、比較例に係る面部材200が示されている。この面部材200を構成する下地材220と仕上材240とは、接着剤260で固定されている。また、下地材220と仕上材240とで目地位置が異なる。
【0060】
このように下地材220と仕上材240とで目地位置が異なると、湿度変化で下地材220と仕上材240とが伸縮した際に、下地材220及び仕上材240には、互いに引張力が作用する。このとき、下地材220の目地部分や仕上材240の目地部分に曲げモーメントが発生し、下地材220又は仕上材240が割れることがある。
【0061】
例えば、周辺湿度が低下することにより下地材220及び仕上材240が乾燥し、それぞれ矢印N1及びN2で示すように収縮した場合、仕上材240の目地部においては、互いに隣り合う仕上材240同士が離れる方向へ移動する一方、下地材220が縮む場合がある。これにより仕上材240の目地部分の下地材220に曲げモーメントM1が発生し、下地材220が割れることがある。
【0062】
これに対して、本発明の実施形態に係る仕上構造においては、
図4(A)、(B)で示すように、帯状部材26が設けられている。帯状部材26は、仕上材24の目地に跨がった状態で仕上材24に接着され、仕上材24の目地の開きを抑制している。これにより、下地材22の割れが抑制される。
【0063】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造では、湿度変化による伸縮率は、仕上材24のほうが下地材22より大きい。すなわち、湿度変化によって仕上材24が下地材22より大きく動こうとする。これにより、仕上材24の目地部分において発生する曲げモーメントが、下地材22と仕上材24との伸縮率が同じ場合と比較して、大きくなる可能性がある。
【0064】
しかし、仕上材24の目地に帯状部材26が跨って設けられていることにより、この曲げモーメントの発生を抑制できる。このように下地材22と仕上材24とで伸縮率が異なる場合でも、効果的に下地材22が割れることを抑制できる。
【0065】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造においては、上記(3)式が成り立っている。すなわち、下地材22及び仕上材24が変位しようとした場合に、仕上材24の中心線からみて、帯状部材の軸力による曲げモーメント(e2t2BE2δ/L)が、下地材22の軸力による曲げモーメント(e1t1BE1δ/L)の0.5倍以上ある。このため、面部材20の曲げが抑制される。これにより、下地材22が割れることを抑制できる。
【0066】
そして、上記(4)式が成り立つ場合、すなわち、下地材の軸力による曲げモーメント(e1t1BE1δ/L)と、帯状部材の軸力による曲げモーメント(e2t2BE2δ/L)とが等しい場合は、下地材22が割れることをさらに抑制できる。
【0067】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造では、下地材22及び仕上材24が天井面を形成している。天井面は壁面と比較して、大面積となりやすい。このため、下地材22及び仕上材24の1枚当たりの面積が大きくなり易く、吸水や乾燥による伸縮量が大きくなり易い。この仕上構造では、このように伸縮量が大きい場合でも、効果的に下地材22又は仕上材24が割れることを抑制できる。
【0068】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造では、帯状部材26の仕上材24に対する接着幅Wが、仕上材24の厚みt3の3倍である。下地材22及び仕上材24が変位しようとした場合、仕上材24には、目地位置から仕上材24の厚みt3の3倍程度の範囲に応力が発生する。この範囲に帯状部材26を接着することにより、仕上材24から帯状部材26へ応力がスムーズに伝達される。
【0069】
<変形例>
本実施形態においては、下地材22が石膏ボードであり、仕上材24がケイ酸カルシウム板であり、湿度変化による伸縮率が互いに異なっているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0070】
例えば下地材22及び仕上材24の双方を同じ厚みの石膏ボードで構成し、双方の湿度変化による伸縮率を等しくしてもよい。面部材20をこのように構成しても、下地材22には曲げモーメントが作用するが、帯状部材26を用いることで、下地材22の割れを抑制する効果を得ることができる。また、下地材22及び仕上材24としては、木製の合板、フレキシブルボード等を用いてもよい。
【0071】
また、本実施形態においては、下地材22、仕上材24及び帯状部材26で構成される面部材20が天井面を形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばこの面部材20用いて壁面を形成してもよい。この際、面部材20が固定される支持部材は、一例として、躯体である壁体に固定された角型のスタッド材などである。
【0072】
また、本実施形態においては、
図4(A)に示す帯状部材26の仕上材24に対する接着幅Wは、仕上材24の厚みt
3の3倍であるが、本発明の実施形態はこれに限らない。この接着幅Wは、仕上材24と帯状部材26との間で応力を伝達する観点から、仕上材24の厚みt
3の3倍より大きく形成してもよい。但し、この接着幅Wは、仕上材24の厚みt
3の3倍未満としないことが好ましい。
【符号の説明】
【0073】
10 支持部材
18 野縁(支持部材)
20 面部材
22 下地材
24 仕上材
26 帯状部材