IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社竹中工務店の特許一覧

<>
  • 特開-仕上構造 図1
  • 特開-仕上構造 図2
  • 特開-仕上構造 図3
  • 特開-仕上構造 図4
  • 特開-仕上構造 図5
  • 特開-仕上構造 図6
  • 特開-仕上構造 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184264
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】仕上構造
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/08 20060101AFI20231221BHJP
   E04B 9/00 20060101ALI20231221BHJP
   E04B 9/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
E04F13/08 A
E04F13/08 B
E04B9/00 C
E04B9/04 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098317
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003621
【氏名又は名称】株式会社竹中工務店
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉田 敬太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 恭章
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼橋 拡
【テーマコード(参考)】
2E110
【Fターム(参考)】
2E110AA14
2E110AA27
2E110AA48
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB23
2E110BA12
2E110BB04
2E110BC02
2E110CA07
2E110CA08
2E110CA21
2E110CA26
2E110DA02
2E110DA12
2E110DC21
2E110DC23
2E110GA14Z
2E110GA15Z
2E110GA16Z
2E110GA33W
2E110GA33X
2E110GA44Z
2E110GB16W
2E110GB16X
2E110GB17W
2E110GB17X
2E110GB23W
2E110GB23X
2E110GB42Z
2E110GB53Z
2E110GB55Z
2E110GB62W
2E110GB62X
(57)【要約】
【課題】板材を複数枚重ね合わせて形成された仕上構造において、板材の割れを抑制する。
【解決手段】仕上構造は、躯体に固定された支持部材(野縁18)に固定された板状の下地材22と、下地材22の目地と異なる位置に目地が配置された状態で下地材22に固定された板状の仕上材24と、少なくとも下地材22の裏面及び仕上材24の表面に形成された難透湿性膜22B、24Bと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
躯体に固定された支持部材に固定された板状の下地材と、
前記下地材の目地と異なる位置に目地が配置された状態で前記下地材に固定された板状の仕上材と、
少なくとも前記下地材の裏面及び前記仕上材の表面に形成された難透湿性膜と、
を備えた仕上構造。
【請求項2】
前記仕上材は、前記下地材より湿度変化による伸縮率が大きい、請求項1に記載の仕上構造。
【請求項3】
前記難透湿性膜は、前記下地材及び前記仕上材の1枚ごとに、前記下地材及び前記仕上材の全面を被覆している、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【請求項4】
前記下地材の裏面に形成された前記難透湿性膜は、前記支持部材に前記下地材が固定された状態において、前記支持部材の側面から前記下地材の裏面に亘って配置され、前記支持部材と前記下地材との間には配置されていない、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【請求項5】
前記下地材が石膏ボードであり、
前記仕上材がケイ酸カルシウム板である、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【請求項6】
前記難透湿性膜が、層状ケイ酸塩鉱物を含有した塗料である、
請求項5に記載の仕上構造。
【請求項7】
前記下地材と前記仕上材とは弾性接着剤で接着されている、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【請求項8】
前記下地材及び前記仕上材は天井面を形成する、請求項1又は2に記載の仕上構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、面部材に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、接着剤を用いて躯体壁に内装ボードを貼着した直貼り構造が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001-27028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1の補強部材の直貼り構造では、内装ボードが躯体壁に直貼りされている。ここで、建材として用いられるボード類のなかには、湿度変化によって伸縮するものがある。内装ボードが湿度変化によって伸縮すると、内装ボード間の目地が拡がったり縮んだりする場合がある。躯体壁は内装ボードと比較して十分に剛性が高いため、目地の拡がりによって割れる蓋然性は低い。
【0005】
一方で、建物における壁や天井材は、下地材としての板材と仕上材としての板材とを重ねて二重貼り以上とする場合がある。このように複数枚の板材を重ねて配置する場合、一方の板材の目地が拡がったり縮んだりすると、目地部分にある他方の板材に曲げモーメントが発生して、他方の板材が割れる可能性がある。
【0006】
本発明は、上記事実を考慮して、板材を複数枚重ね合わせて形成された仕上構造において、板材の割れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の仕上構造は、躯体に固定された支持部材に固定された板状の下地材と、前記下地材の目地と異なる位置に目地が配置された状態で前記下地材に固定された板状の仕上材と、少なくとも前記下地材の裏面及び前記仕上材の表面に形成された難透湿性膜と、を備えている。
【0008】
下地材と仕上材とで形成された仕上構造において、下地材と仕上材とで目地位置が異なると、例えば湿度変化で下地材と仕上材とが伸縮した際に、仕上材及び下地材には、互いに引張力が作用する。このとき、下地材の目地部分や仕上材の目地部分に曲げモーメントが発生し、仕上材又は下地材が割れることがある。
【0009】
例えば、乾燥によって下地材及び仕上材が収縮した場合、仕上材の目地部においては、仕上材が離れる方向へ移動する一方、下地材が縮む。これにより仕上材の目地部分の下地材に曲げモーメントが発生し、下地材が割れることがある。
【0010】
そこで、請求項1の仕上構造においては、下地材の裏面及び仕上材の表面に難透湿性膜を形成することで、湿度変化により下地材及び仕上材の含水率が変化することを抑制できる。これにより、下地材及び仕上材の伸縮を抑え、下地材及び仕上材の割れを抑制できる。
【0011】
請求項2の仕上構造は、請求項1に記載の仕上構造において、前記仕上材は、前記下地材より湿度変化による伸縮率が大きい。
【0012】
請求項2の仕上構造は、仕上材が下地材より湿度変化による伸縮率が大きい。すなわち、湿度変化によって仕上材が下地材より大きく動く。これにより、仕上材の目地部分において発生する曲げモーメントが、下地材と仕上材との伸縮率が同じ場合と比較して、大きくなる可能性がある。
【0013】
しかし、下地材の裏面及び仕上材の表面に難透湿性膜が形成されていることにより、この曲げモーメントを緩和できる。このように、下地材と仕上材とで伸縮率が異なる場合でも、効果的に下地材又は仕上材が割れることを抑制できる。
【0014】
請求項3の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記難透湿性膜は、前記下地材及び前記仕上材の1枚ごとに、前記下地材及び前記仕上材の全面を被覆している。
【0015】
請求項3の仕上構造では、難透湿性膜が、下地材及び仕上材の1枚ごとに、下地材及び仕上材の全面を被覆している。このため、複数枚の下地材及び仕上材をまとめて被覆する構成と比較して、下地材及び仕上材間での水分の移動がなく、下地材及び仕上材の含水率が変化することを抑制できる効果が高い。
【0016】
請求項4の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記下地材の裏面に形成された前記難透湿性膜は、前記支持部材に前記下地材が固定された状態において、前記支持部材の側面から前記下地材の裏面に亘って配置され、前記支持部材と前記下地材との間には配置されていない。
【0017】
請求項4の仕上構造では、下地材の裏面を被覆する難透湿性膜が、支持部材の側面から下地材の裏面に亘って配置され、前記支持部材と前記下地材との間には配置されていない。このため、難透湿性膜は、下地材を支持部材に取付けたあとで施工できる。
【0018】
請求項5の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記下地材が石膏ボードであり、前記仕上材がケイ酸カルシウム板である。
【0019】
ケイ酸カルシウム板は、石膏ボードより湿度変化による伸縮率が大きい。すなわち、湿度変化によってケイ酸カルシウム板が石膏ボードより大きく動く。これにより、難透湿性膜を有しない構成では、ケイ酸カルシウム板の目地部分において石膏ボードに発生する曲げモーメントが、下地材と仕上材との双方が石膏ボードの場合と比較して、大きくなる可能性がある。しかしながら、難透湿性膜を有することにより、このような曲げモーメントの発生を抑制できる。このように、下地材と仕上材とで伸縮率が異なる場合でも、効果的に下地材又は仕上材が割れることを抑制できる。
【0020】
請求項6の仕上構造は、請求項5の仕上構造において、前記難透湿性膜が、層状ケイ酸塩鉱物を含有した塗料である。
【0021】
請求項6の仕上構造は、下地材が石膏ボードであり仕上材がケイ酸カルシウム板であるものの、難透湿性膜を有し、さらに、難透湿性膜が、層状ケイ酸塩鉱物を含有した塗料とされている。層状ケイ酸塩鉱物を含有した塗料は、主にコンクリートの中性化を抑制するために用いられるが、水分が通過し難いという性質も持っている。これにより、下地材及び仕上材の含水率が変化することを効果的に抑制できる。
【0022】
請求項7の仕上構造は、請求項1又は2に記載の仕上構造において、前記下地材と前記仕上材とは弾性接着剤で接着されている、
【0023】
請求項7の仕上構造では、下地材と仕上材とが弾性接着剤で接着されている。このため、仮に下地材と仕上材とが変位した場合でも、弾性接着剤が下地材及び仕上材の変位に追随して変形することにより、下地材と仕上材との接着面で応力の伝達が抑制される。これにより仕上材及び下地材の割れが抑制される。
【0024】
請求項8の仕上構造は、請求項1~4の何れか1項に記載の仕上構造において、前記下地材及び前記仕上材は天井面を形成する。
【0025】
請求項8の仕上構造では、下地材及び仕上材が天井面を形成している。天井面は壁面と比較して、大面積となりやすい。このため、面材1枚当たりの面積が大きくなり易く、吸水や乾燥による伸縮量が大きくなり易い。この仕上構造では、このように伸縮量が大きい場合でも、効果的に下地材及び仕上材が割れることを抑制できる。
【発明の効果】
【0026】
本発明によると、板材を複数枚重ね合わせて形成された仕上構造において、板材の割れを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る仕上構造の一例としての天井構造を示す斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る仕上構造の一例としての天井構造の分解斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る仕上構造を示す断面図である。
図4】本発明の実施形態に係る仕上構造に適用される難透湿性膜を模式的に示す部分拡大断面図である。
図5】(A)は比較例に係る面部材の湿度による変形前の状態を示す断面図であり、(B)は変形後の状態を示す断面図である。
図6】(A)は本発明の実施形態に係る仕上構造の湿度による変形前の状態を示す断面図であり、(B)は変形後の状態を示す断面図である。
図7】(A)本発明の実施形態に係る仕上構造において難透湿性膜の構成の変形例を示す断面図であり、(B)は別の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態に係る仕上構造について、図面を参照しながら説明する。各図面において同一の符号を用いて示される構成要素は、同一の構成要素であることを意味する。但し、明細書中に特段の断りが無い限り、各構成要素は一つに限定されず、複数存在してもよい。
【0029】
また、各図面において重複する構成及び符号については、説明を省略する場合がある。なお、本開示は以下の実施形態に限定されるものではなく、本開示の目的の範囲内において構成を省略する又は異なる構成と入れ替える等、適宜変更を加えて実施することができる。
【0030】
各図面において矢印X、Yで示す方向は水平面に沿う方向であり、互いに直交している。また、矢印Zで示す方向は鉛直方向(上下方向)に沿う方向である。各図において矢印X、Y、Zで示される各方向は、互いに一致するものとする。
【0031】
<天井構造>
図1には、本発明の実施形態に係る仕上構造の一例としての天井構造が示されている。この天井構造は、支持部材10及び面部材20を備える。
【0032】
(支持部材)
支持部材10は、躯体としてのスラブ(不図示)に固定された吊下げ部材であり、吊りボルト12、ハンガー14、野縁受け16及び野縁18を含んで構成されている。
【0033】
吊りボルト12は、一例として、上端部がスラブの下面に埋設されたアンカーナットなどに捩じ込まれた全ねじボルトであり、上下方向に沿って配置されている。また、吊りボルト12は、互いに直交する2方向(X方向及びY方向)のそれぞれにおいて、所定の間隔で配置されている。
【0034】
ハンガー14は、吊りボルトの下端部にナットを用いて固定された部材である。Y方向に沿って配置された複数のハンガー14には、野縁受け16が架け渡されて固定されている。
【0035】
野縁受け16は、Y方向に沿って配置された長尺部材である。また、野縁受け16は、X方向に所定の間隔(吊りボルト12の間隔と等しい間隔)で配置されている。
【0036】
野縁18は、X方向に沿って配置された長尺部材であり、野縁受け16にクリップ(不図示)を用いて固定されている。また、野縁18は、Y方向に所定の間隔(野縁受け16のX方向における間隔より狭い間隔)で配置されている。
【0037】
(面部材)
面部材20は、下地材22、仕上材24及び弾性接着剤26を含んで構成され、建物の天井面を形成している。
【0038】
図2に示すように、下地材22は、野縁18の下方に配置され、野縁18に固定された板材である。下地材22は、長手方向が、野縁18の延設方向と直交して配置されている。すなわち、下地材22の長手方向はY方向に沿っている。下地材22は、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、複数枚並べて配置されている。
【0039】
また、下地材22は、図3に示すように、石膏ボード22A及び難透湿性膜22Bを用いて形成されている。
【0040】
石膏ボード22Aは、湿度変化によって伸縮する。例えば環境湿度が上昇して含水率が高くなると、石膏ボード22Aは面内方向に伸びる。一方、環境湿度が低下して含水率が低くなると、石膏ボード22Aは面内方向に縮む。
【0041】
そこで、下地材22は、石膏ボード22Aの1枚ごとに、石膏ボード22Aの全面を被覆する難透湿性膜22Bを備えている。難透湿性膜22Bは、図4に模式的に示すように、本発明の層状ケイ酸塩鉱物の一例である水膨潤性合成無機層状珪酸塩Eを含有した塗料である。塗料中において、水膨潤性合成無機層状珪酸塩Eは、アスペクト比(塗布方向[X方向又はY方向]に沿う長さ/厚み[Z方向の寸法])が高い状態で含有され、塗膜の厚み方向に積層して配置される。
【0042】
水膨潤性合成無機層状珪酸塩Eは、塗膜中でこのように配置されることにより、破線で示すように塗膜中でガス分子Gを迂回させて、塗膜にガス分子Gの拡散抵抗性を付与する。「ガス分子Gの拡散抵抗性」とは、ガス分子Gが塗膜の一方側から他方側へ「透過し難い」度合いのことであり、「塗膜にガス分子Gの拡散抵抗性を付与する」とは、ガス分子を塗膜の一方側から他方側へ透過し難くさせることを指す。
【0043】
ここで、水膨潤性合成無機層状珪酸塩Eによって拡散抵抗性が付与されるガス分子Gとしては、例えば二酸化炭素が挙げられる。このため、難透湿性膜22Bは、例えばコンクリートの表面に塗布されて、コンクリートの中性化を抑制することができる。
【0044】
また、水膨潤性合成無機層状珪酸塩Eによって拡散抵抗性が付与されるガス分子Gとしては、例えば水蒸気が挙げられる。このため、難透湿性膜22Bは石膏ボード22Aの表面に塗布されて、石膏ボード22Aの吸水及び乾燥を抑制することができる。
【0045】
なお、難透湿性膜22Bは例えば以下のような物理的性質を備えていることが好ましい。
【0046】
・水膨潤性合成無機層状珪酸塩の含有量
難透湿性膜22Bを形成する樹脂100質量部に対して、1~50質量部であり、好ましくは2~30質量部であり、2~10質量部がより好ましい。
【0047】
・水膨潤性合成無機層状珪酸塩の種類
合成フッ素ヘクトライト、及び合成フッ素マイカから選ばれる少なくとも1種である
【0048】
・水中で分散した状態における層状珪酸塩の平均粒子径
好ましくは1~50μmであり、より好ましくは3~50μmであり、更に好ましくは3~20μmである。
【0049】
・板状結晶層の大きさ
1枚の厚さが1nm程度であり、また、厚さ方向に対して垂直方向に形成される面の大きさ(長さ)が、縦方向と横方向との平均値として100nm~100μm程度である。
【0050】
・面の平均長さに対する厚みであるアスペクト比(面の平均長さ/厚み)
通常、10~100,000であり、好ましくは100以上であり、より好ましくは1,000以上である。
【0051】
図2に示すように、仕上材24は、下地材22の下方に配置され、弾性接着剤26によって下地材22に固定された板材である。仕上材24は、長手方向が、下地材22の長手方向と直交して配置されている。すなわち、仕上材24の長手方向はX方向に沿っている。仕上材24は、X方向及びY方向のそれぞれにおいて、複数枚並べて配置されている。
【0052】
また、仕上材24は、図3に示すように、ケイ酸カルシウム板24A及び難透湿性膜24Bを用いて形成されている。
【0053】
ケイ酸カルシウム板24Aは、湿度変化によって伸縮する。例えば環境湿度が上昇して含水率が高くなると、ケイ酸カルシウム板24Aは面内方向に伸びる。一方、環境湿度が低下して含水率が低くなると、ケイ酸カルシウム板24Aは面内方向に縮む。
【0054】
石膏ボード22A及びケイ酸カルシウム板24Aの湿度変化よる伸縮率(環境湿度が1%変化した際の伸縮率)は特に限定されるものではないが、本実施形態においては、ケイ酸カルシウム板24Aのほうが、石膏ボード22Aより伸縮率が大きい。
【0055】
難透湿性膜24Bは、難透湿性膜22Bと同様の構成を有している。このため、難透湿性膜24Bは、ケイ酸カルシウム板24Aの表面に塗布されて、ケイ酸カルシウム板24Aの吸水及び乾燥を抑制することができる。
【0056】
仕上材24の1枚あたりの大きさは、下地材22の1枚あたりの大きさと等しい。但し、例えば天井の端部などにおいては、下地材22及び仕上材24は、天井下空間の面積や形状に合わせて適宜切断して用いられるため、大きさは一定ではない。
【0057】
なお、仕上材24を目視した際の意匠性を考慮して、仕上材24の1枚あたりの大きさや形状は、下地材22の大きさや形状と無関係に決定してもよい。一例として、仕上材24は、所望の大きさで正方形状に形成し、格子状に配置することもできる。また、別の一例として仕上材24は、長方形状に形成し、目地が馬目地状となるように配置することもできる。さらに、仕上材24は、三角形状や六角形状などとしてもよい。
【0058】
弾性接着剤26は、変成シリコーン等の変形追随性が高い(ヤング率が小さい)素材を用いて形成された接着剤である。なお、便宜上、図2において弾性接着剤26はシート状に描かれているが、弾性接着剤は仕上材24の裏面の略全体に亘って又は裏面に部分的に塗布して施工される。裏面に弾性接着剤26が塗布された仕上材24を、下地材22へ押し付けることにより、下地材及び仕上材24が固定される。
【0059】
(目地構造)
上述したように、下地材22の長手方向はY方向に沿っている一方、仕上材24の長手方向はX方向に沿っている。このため、図3に示すように、下地材22の目地と仕上材24の目地とはそれぞれ異なる位置に配置される。「異なる位置」とは、下地材22及び仕上材24の面内方向と直交する方向から見て異なる位置である。
【0060】
また、厳密には、下地材22の「X方向に沿う」目地と、仕上材24の「X方向に沿う」目地とが異なる位置に配置される。また、下地材22の「Y方向に沿う」目地と、仕上材24の「Y方向に沿う」目地とが異なる位置に配置される。
【0061】
なお、下地材22及び仕上材24の大きさによっては、下地材22の「X方向に沿う」目地と、仕上材24の「X方向に沿う」目地とが部分的に同じ位置に配置される場合があるが、このような構成を含んでいてもよい。「Y方向に沿う」目地についても同様である。また、X方向に沿う目地とY方向に沿う目地とは、互いに重なっていてもよい。
【0062】
図3においては、目地構造を把握し易くするため、下地材22、仕上材24及び弾性接着剤の厚みは、野縁18の大きさに対して誇張して描かれている。目地幅についても同様である。仕上材24の目地には、必要に応じて弾性シーリング材を充填することができる。
【0063】
<作用及び効果>
ここで、本発明の仕上構造の作用及び効果の説明に先立って、比較例について説明する。図5(A)、(B)には、比較例に係る面部材200が示されている。この面部材200を構成する下地材220及び仕上材240は、下地材22及び仕上材24と同様に、それぞれ石膏ボード及びケイ酸カルシウム板で形成されているが、難透湿性膜を有していない。また、下地材220と仕上材240とで目地位置が異なる。
【0064】
このように下地材220と仕上材240とで目地位置が異なると、湿度変化で下地材220と仕上材240とが伸縮した際に、下地材220及び仕上材240には、互いに引張力が作用する。このとき、下地材220の目地部分や仕上材240の目地部分に曲げモーメントが発生し、下地材220又は仕上材240が割れることがある。
【0065】
例えば、周辺湿度が低下することにより下地材220及び仕上材240が乾燥し、それぞれ矢印N1及びN2で示すように収縮した場合、仕上材240の目地部においては、互いに隣り合う仕上材240同士が離れる方向へ移動する一方、下地材220が縮む場合がある。これにより仕上材240の目地部分の下地材220に曲げモーメントM1が発生し、下地材220が割れることがある。
【0066】
また、面部材200においては、下地材220として石膏ボードを用い、仕上材240としてケイ酸カルシウム板を用いている。上述したように、ケイ酸カルシウム板は、石膏ボードより湿度変化による伸縮率が大きい。すなわち、湿度変化によって仕上材240が下地材220より大きく動く。
【0067】
このため、難透湿性膜を用いない比較例においては、仕上材240の目地部分において下地材220に発生する曲げモーメントが、下地材22と仕上材240との双方が石膏ボードの場合と比較して、大きくなる可能性がある。
【0068】
これに対して、本発明の実施形態に係る仕上構造においては、図3に示すように、下地材22を構成する石膏ボード22Aの1枚ごとに、難透湿性膜22Bが、石膏ボード22Aの全面を被覆している。また、仕上材24を構成するケイ酸カルシウム板24Aの1枚ごとに、難透湿性膜24Bが、ケイ酸カルシウム板24Aの全面を被覆している。これにより、下地材22及び仕上材24の環境湿度の変化による伸縮を抑制し、下地材22及び仕上材24の割れを抑制できる。
【0069】
また、面部材20においては、難透湿性膜22B及び24Bとして、層状ケイ酸塩鉱物を含有した塗料を用いている。層状ケイ酸塩鉱物を含有した塗料は、上述したように、水分が通過し難いという性質を持っている。これにより、下地材22及び仕上材24の含水率が変化することを効果的に抑制できる。
【0070】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造においては、図6(A)、(B)で示すように、下地材22と仕上材24とを弾性接着剤26で接着している。下地材22及び仕上材24は難透湿性膜22B及び24Bで被覆されているため、含水率の変化が抑制されているが、極端な環境変化により、多少の含水率の変化が想定される場合もある。
【0071】
このような場合において、例えば、周辺湿度が低下することにより下地材22及び仕上材24が乾燥し、それぞれ矢印N1及びN2で示すように収縮した場合、仕上材24の目地部においては、互いに隣り合う仕上材24同士が離れる方向へ移動する一方、下地材22が縮む場合がある。
【0072】
しかしながら、弾性接着剤26が下地材22及び仕上材24の変位に追随して変形することにより、下地材22と仕上材24との接着面で応力の伝達が抑制される。これにより仕上材24の目地部分において、下地材22に曲げモーメントが発生することが抑制される。このため、下地材22の割れが抑制される。
【0073】
また、本発明の実施形態に係る仕上構造では、下地材22及び仕上材24が天井面を形成している。天井面は壁面と比較して、大面積となりやすい。このため、下地材22及び仕上材24の1枚当たりの面積が大きくなり易く、吸水や乾燥による伸縮量が大きくなり易い。この仕上構造では、このように伸縮量が大きい場合でも、効果的に下地材22又は仕上材24が割れることを抑制できる。
【0074】
<変形例>
本実施形態においては、図3に示すように、下地材22を構成する石膏ボード22A及び仕上材24を構成するケイ酸カルシウム板24Aの1枚ごとに、難透湿性膜22B及び24Bが、これらの全面を被覆しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0075】
例えば図7(A)に示す難透湿性膜22C及び24Cのように、少なくとも、下地材としての石膏ボード22Aの裏面及び仕上材としてのケイ酸カルシウム板24Aの表面を被覆すればよい。難透湿性膜22Cは、石膏ボード22Aの裏面を被覆しており、難透湿性膜24Cはケイ酸カルシウム板24Aの表面を被覆している。
【0076】
なお、「裏面」とは躯体側(支持部材10側)の面であり、「表面」とは室内空間側(支持部材10と反対側)の面である。
【0077】
難透湿性膜をこのように配置しても、石膏ボード22A及びケイ酸カルシウム板24Aが空気に触れることが抑制されるため、下地材22及び仕上材24の環境湿度の変化による伸縮を抑制し、下地材22及び仕上材24の割れを抑制できる。
【0078】
また、下地材22の裏面を被覆する難透湿性膜は、必ずしも下地材22の裏面全体を被覆しなくてもよい。例えば図7(B)に示す難透湿性膜22Dのように、支持部材としての野縁18に下地材としての石膏ボード22Aが固定された状態において、野縁18の側面から石膏ボード22Aの裏面に亘って配置してもよい。
【0079】
この例においては、石膏ボード22Aの裏面のうち、野縁18と接触する部分には難透湿性膜22Dは配置されていない。したがって、難透湿性膜22Dは、石膏ボード22Aを野縁18に取付けたあとで施工できる。野縁18は金属製であり非透水性部材であるため、石膏ボード22Aが野縁18と接触する部分から吸放湿することは抑制されている。
【0080】
また、本実施形態においては、下地材22が石膏ボードであり、仕上材24がケイ酸カルシウム板であり、湿度変化による伸縮率が互いに異なっているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0081】
例えば下地材22及び仕上材24の双方を同じ厚みの石膏ボードで構成し、双方の湿度変化による伸縮率を等しくしてもよい。面部材20をこのように構成しても、下地材22又は仕上材24の割れを抑制する効果を得ることができる。また、下地材22及び仕上材24としては、木製の合板、フレキシブルボード等を用いてもよい。
【0082】
また、本実施形態においては、下地材22及び仕上材24の双方を1層で形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば下地材22及び仕上材24の少なくとも一方を、2層以上で形成してもよい。
【0083】
また、本実施形態においては、下地材22、仕上材24及び弾性接着剤26で構成される面部材20が天井面を形成しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えばこの面部材20用いて壁面を形成してもよい。この際、面部材20が固定される支持部材は、一例として、躯体である壁体に固定された角型のスタッド材などである。
【0084】
また、本実施形態においては、下地材22及び仕上材24を弾性接着剤26で固定しているが、本発明の実施形態はこれに限らない。
【0085】
下地材22及び仕上材24を固定する固定手段としては、例えば変成シリコンより変形追随性が低い(ヤング率が大きい)素材を用いて形成された接着剤を用いてもよいし、タッカーなどの乾式の固定手段を用いてもよい。
【0086】
また、本実施形態においては、難透湿性膜として、膨潤性層状ケイ酸塩鉱物Eを含有した塗料を用いているが、本発明の実施形態はこれに限らない。例えば透湿性が石膏ボードより低い塗料を用いることで、石膏ボードの含水率が変化することを抑制できる。
【0087】
また、透湿性がケイ酸カルシウム板より低い塗料を用いることで、ケイ酸カルシウム板の含水率が変化することを抑制できる。さらに、難透湿性膜としては、塗料ではなくシート材を用いてもよい。このシート材としては、塩化ビニリデンシートや金属蒸着樹脂フィルム等を用いることができる。
【符号の説明】
【0088】
10 支持部材
18 野縁(支持部材)
20 面部材
22 下地材
22A 石膏ボード
22B 難透湿性膜
22C 難透湿性膜
22D 難透湿性膜
24 仕上材
24A ケイ酸カルシウム板
24B 難透湿性膜
24C 難透湿性膜
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7