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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184279
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】二次電池システム
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/42 20060101AFI20231221BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20231221BHJP
   H01M 10/615 20140101ALI20231221BHJP
   H01M 10/633 20140101ALI20231221BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M10/42 P
H01M10/54
H01M10/615
H01M10/633
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098344
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100202441
【弁理士】
【氏名又は名称】岩田 純
(72)【発明者】
【氏名】南 圭一
【テーマコード(参考)】
5H030
5H031
【Fターム(参考)】
5H030AA10
5H030AS20
5H030FF43
5H030FF44
5H031CC09
(57)【要約】
【課題】二次電池の性能が低下した場合に二次電池の性能を回復させることが可能なシステムを開示する。
【解決手段】本開示の二次電池システムは、二次電池、加熱装置及び制御装置を有し、前記二次電池は、正極及び負極を有し、前記正極及び前記負極のうちの一方又は両方は、活物質、固体電解質及びLi含有塩を含み、前記活物質は、前記二次電池の充放電に伴って体積が変化する物質を含み、前記加熱装置によって加熱される対象は、前記Li含有塩を含み、前記制御装置は、前記二次電池の性能が一定以下であるものと判定された場合に、前記Li含有塩の温度が前記Li含有塩の融点以上となるように、前記加熱装置による加熱を制御する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池システムであって、二次電池、加熱装置及び制御装置を有し、
前記二次電池は、正極及び負極を有し、
前記正極及び前記負極のうちの一方又は両方は、活物質、固体電解質及びLi含有塩を含み、
前記活物質は、前記二次電池の充放電に伴って体積が変化する物質を含み、
前記加熱装置によって加熱される対象は、前記Li含有塩を含み、
前記制御装置は、前記二次電池の性能が一定以下であるものと判定された場合に、前記Li含有塩の温度が前記Li含有塩の融点以上となるように、前記加熱装置による加熱を制御する、
二次電池システム。
【請求項2】
前記Li含有塩は、60℃未満の融点を有する、
請求項1に記載の二次電池システム。
【請求項3】
電圧測定装置を有し、
前記電圧測定装置は、前記二次電池の電圧を測定し、
前記二次電池の性能は、前記電圧に基づくものである、
請求項1に記載の二次電池システム。
【請求項4】
前記制御装置は、前記二次電池の性能が一定を超えているものと判定された場合に、前記Li含有塩の温度が前記融点未満となるように、前記加熱装置による加熱を制御する、
請求項1に記載の二次電池システム。
【請求項5】
前記活物質は、Sを含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池システム。
【請求項6】
前記活物質は、Siを含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池システム。
【請求項7】
前記固体電解質は、硫化物を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池システム。
【請求項8】
前記Li含有塩は、第1カチオン及び第2カチオンを有し、
前記第1カチオンは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、及び、ピロリジニウムイオンから選ばれる少なくとも1種であり、
前記第2カチオンは、リチウムイオンである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池システム。
【請求項9】
前記Li含有塩は、第1カチオン及び第2カチオンを有し、
前記第1カチオンは、テトラアルキルアンモニウムイオンであり、
前記第2カチオンは、リチウムイオンである、
請求項1~4のいずれか1項に記載の二次電池システム。
【請求項10】
前記Li含有塩は、ハロゲンイオン、ハライドイオン、硫酸水素イオン、スルホニルアミドイオン、及び、Hを含む錯イオンから選ばれる少なくとも1種のアニオンを有する、
請求項8に記載の二次電池システム。
【請求項11】
前記Li含有塩は、第1アニオン及び第2アニオンのうちの一方又は両方を有し、
前記第1アニオンは、ハロゲンイオン及び硫酸水素イオンのうちの一方又は両方であり、
前記第2アニオンは、スルホニルアミドアニオンである、
請求項10に記載の二次電池システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は二次電池システムを開示する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、全固体リチウムイオン電池であって、正極及び負極を有し、前記正極及び前記負極のうちの一方又は両方が、活物質及び無機固体電解質粉末を含み、前記活物質がリチウムイオン導電性ポリマーで被覆されているものが開示されている。特許文献2には、全固体リチウム二次電池の製造方法であって、正極活物質層と負極活物質層との間に電流を供給して正極活物質層と負極活物質層との間に生じた短絡欠陥を修復すること、を含むものが開示されている。特許文献3には、二次電池用負極であって、集電体と活物質層と自己修復高分子層とを有するものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-007942号公報
【特許文献2】特開2012-138299号公報
【特許文献3】特開2017-045515号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
正極や負極に含まれる活物質には、電池の充放電に伴って体積が変化するものがある。電池の充放電に伴って活物質の体積が変化すると、正極や負極に割れや隙間等が生じ、電池のサイクル特性等が低下する場合がある。このような問題は、特に、正極や負極において活物質とともに固体電解質が含まれる場合に生じ易い。二次電池の性能が低下した場合に、当該性能を回復する新たな技術が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願は上記課題を解決するための手段として、以下の複数の態様を開示する。
<態様1>
二次電池システムであって、二次電池、加熱装置及び制御装置を有し、
前記二次電池は、正極及び負極を有し、
前記正極及び前記負極のうちの一方又は両方は、活物質、固体電解質及びLi含有塩を含み、
前記活物質は、前記二次電池の充放電に伴って体積が変化する物質を含み、
前記加熱装置によって加熱される対象は、前記Li含有塩を含み、
前記制御装置は、前記二次電池の性能が一定以下であるものと判定された場合に、前記Li含有塩の温度が前記Li含有塩の融点以上となるように、前記加熱装置による加熱を制御する、
二次電池システム。
<態様2>
前記Li含有塩は、60℃未満の融点を有する、
態様1の二次電池システム。
<態様3>
電圧測定装置を有し、
前記電圧測定装置は、前記二次電池の電圧を測定し、
前記二次電池の性能は、前記電圧に基づくものである、
態様1又は2の二次電池システム。
<態様4>
前記制御装置は、前記二次電池の性能が一定を超えているものと判定された場合に、前記Li含有塩の温度が前記融点未満となるように、前記加熱装置による加熱を制御する、
態様1~3のいずれかの二次電池システム。
<態様5>
前記活物質は、Sを含む、
態様1~4のいずれかの二次電池システム。
<態様6>
前記活物質は、Siを含む、
態様1~4のいずれかの二次電池システム。
<態様7>
前記固体電解質は、硫化物を含む、
態様1~6のいずれかの二次電池システム。
<態様8>
前記Li含有塩は、第1カチオン及び第2カチオンを有し、
前記第1カチオンは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、及び、ピロリジニウムイオンから選ばれる少なくとも1種であり、
前記第2カチオンは、リチウムイオンである、
態様1~7のいずれかの二次電池システム。
<態様9>
前記Li含有塩は、第1カチオン及び第2カチオンを有し、
前記第1カチオンは、テトラアルキルアンモニウムイオンであり、
前記第2カチオンは、リチウムイオンである、
態様1~8のいずれかの二次電池システム。
<態様10>
前記Li含有塩は、ハロゲンイオン、ハライドイオン、硫酸水素イオン、スルホニルアミドイオン、及び、Hを含む錯イオンから選ばれる少なくとも1種のアニオンを有する、
態様1~9のいずれかの二次電池システム。
<態様11>
前記Li含有塩は、第1アニオン及び第2アニオンのうちの一方又は両方を有し、
前記第1アニオンは、ハロゲンイオン及び硫酸水素イオンのうちの一方又は両方であり、
前記第2アニオンは、スルホニルアミドアニオンである、
態様1~10のいずれかの二次電池システム
【発明の効果】
【0006】
本開示の二次電池システムによれば、二次電池の性能が低下した場合に、二次電池の性能を回復することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】二次電池システムの構成を概略的に示している。
図2】二次電池システムにおける制御フローの一例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.二次電池システム
以下、図面を参照しつつ、本開示の二次電池システムの一実施形態について説明する。図1及び2に示されるように、一実施形態に係る二次電池システム100は、二次電池10、加熱装置20及び制御装置30を有する。前記二次電池10は、正極11及び負極12を有する。前記正極11及び前記負極12のうちの一方又は両方は、活物質、固体電解質及びLi含有塩を含む。前記活物質は、前記二次電池10の充放電に伴って体積が変化する物質を含む。前記加熱装置20によって加熱される対象は、前記Li含有塩を含む。前記制御装置30は、前記二次電池10の性能が一定以下であるものと判定された場合に、前記Li含有塩の温度が前記Li含有塩の融点以上となるように、前記加熱装置20による加熱を制御する。
【0009】
1.1 二次電池
二次電池10は、正極11及び負極12を有する。また、二次電池10は、正極11及び負極12の間に電解質層13を有していてもよい。さらに、二次電池10は、不図示の構成を備えていてもよい。正極11及び負極12のうちの一方又は両方は、所定の活物質、固体電解質及び所定のLi含有塩を含む。すなわち、正極11が、所定の活物質、固体電解質及び所定のLi含有塩を含んでいてもよいし、負極12が、所定の活物質、固体電解質及び所定のLi含有塩を含んでいてもよいし、正極11及び負極12の双方が、所定の活物質、固体電解質及び所定のLi含有塩を含んでいてもよい。
【0010】
1.1.1 正極
図1に示されるように、正極11は、正極活物質層11aと、当該層11aに接触する正極集電体11bを有するものであってもよい。この場合、正極活物質層11aが、所定の活物質、固体電解質及び所定のLi含有塩を含み得る。
【0011】
正極活物質層11aは、少なくとも正極活物質を含み、固体電解質及び所定のLi含有塩を含んでいてもよい。また、正極活物質層11aは、導電助剤及びバインダー等を含んでいてもよい。さらに、正極活物質層11aは各種の添加剤を含んでいてもよい。正極活物質層11aにおける各成分の含有量は、目的とする電池性能に応じて適宜決定されればよい。例えば、正極活物質層11aの固形分全体を100質量%として、正極活物質の含有量が40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上又は70質量%以上であってもよく、100質量%以下、95質量%以下又は90質量%以下であってもよい。或いは、正極活物質層11aの全体を100体積%として、正極活物質と、任意に固体電解質、Li含有塩、導電助剤及びバインダーとが合計で85体積%以上、90体積%以上又は95体積%以上含まれていてもよく、残部は空隙であってもその他の成分であってもよい。正極活物質層11aの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、略平面を有するシート状の正極活物質層であってもよい。正極活物質層11aの厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1μm以上、1μm以上又は10μm以上であってもよく、2mm以下、1mm以下又は500μm以下であってもよい。
【0012】
正極活物質は、二次電池の正極活物質として公知のものを用いればよい。例えば、リチウムイオン二次電池を構成する場合は、正極活物質として、リチウム含有複合酸化物(コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、LiNi1/3Co1/3Mn1/3、マンガン酸リチウム、スピネル系リチウム化合物等)やSを含むもの(S単体、S化合物)等が採用され得る。中でも、Sを含む正極活物質は、二次電池10の充放電に伴う体積変化が大きく、本開示のシステム100による一層顕著な効果が得られるものと考えられる。正極活物質は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。正極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。正極活物質の粒子は、中実の粒子であってもよく、中空の粒子であってもよく、空隙を有する粒子(多孔質粒子)であってもよい。正極活物質の粒子は、一次粒子であってもよいし、複数の一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。正極活物質の粒子の平均粒子径(D50)は、例えば1nm以上、5nm以上、又は10nm以上であってもよく、また500μm以下、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってもよい。尚、平均粒子径(D50)とは、レーザー回折・散乱法によって求めた体積基準の粒度分布における積算値50%での粒子径(メジアン径)である。
【0013】
正極活物質の表面は、イオン伝導性酸化物を含有する保護層によって被覆されていてもよい。すなわち、正極11は、正極活物質と、その表面に設けられた保護層と、を備える複合体を含んでいてもよい。これにより、正極活物質と硫化物(例えば、後述の硫化物固体電解質等)との反応等が抑制され易くなる。リチウムイオン伝導性酸化物としては、例えば、LiBO、LiBO、LiCO、LiAlO、LiSiO、LiSiO、LiPO、LiSO、LiTiO、LiTi12、LiTi、LiZrO、LiNbO、LiMoO、LiWOが挙げられる。保護層の被覆率(面積率)は、例えば、70%以上であってもよく、80%以上であってもよく、90%以上であってもよい。保護層の厚さは、例えば、0.1nm以上又は1nm以上であってもよく、100nm以下又は20nm以下であってもよい。
【0014】
固体電解質は、二次電池の固体電解質として公知のものを用いればよい。固体電解質は無機固体電解質であっても、有機ポリマー電解質であってもよい。特に、無機固体電解質は、イオン伝導性及び耐熱性に優れる。無機固体電解質としては、例えば、ランタンジルコン酸リチウム、LiPON、Li1+XAlGe2-X(PO、Li-SiO系ガラス、Li-Al-S-O系ガラス等の酸化物固体電解質;LiS-P、LiS-SiS、LiI-LiS-SiS、LiI-SiS-P、LiS-P-LiI-LiBr、LiI-LiS-P、LiI-LiS-P、LiI-LiPO-P、LiS-P-GeS等の硫化物固体電解質を例示することができる。特に、硫化物を含む固体電解質(硫化物固体電解質)、中でも構成元素として少なくともLi、S及びPを含む固体電解質の性能が高い。固体電解質は、非晶質であってもよいし、結晶であってもよい。固体電解質は例えば粒子状であってもよい。固体電解質は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0015】
Li含有塩の融点は、二次電池を構成する材料の耐熱性等を考慮して適宜選択され得る。Li含有塩の融点が高すぎると、Li含有塩の温度が融点以上となるように加熱装置20によって加熱した場合に、電池を構成する材料に対して悪影響を及ぼす虞(例えば、ラミネートフィルムのシール部が劣化する虞等)がある。例えば、Li含有塩は、60℃未満の融点を有するものであってもよい。Li含有塩の融点の下限は、特に限定されない。Li含有塩は、加熱装置による加熱を行わない場合に、融点未満の固体となるものであってもよい。例えば、Li含有塩の融点は、20℃以上、25℃以上、30℃以上、35℃以上、40℃以上、45℃以上又は50℃以上であってもよい。Li含有塩は、加熱装置20によって加熱される前において、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。Li含有塩の粒子の平均粒子径(D50)は、例えば1nm以上、5nm以上、又は10nm以上であってもよく、また500μm以下、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0016】
Li含有塩は、第1カチオン及び第2カチオンを有していてもよく、前記第1カチオンは、アンモニウムイオン、ホスホニウムイオン、ピリジニウムイオン、及び、ピロリジニウムイオンから選ばれる少なくとも1種であってもよく、前記第2カチオンは、リチウムイオンであってもよい。また、前記第1カチオンは、テトラアルキルアンモニウムイオンであってもよく、前記第2カチオンは、リチウムイオンであってもよい。Li含有塩が第1カチオンを有する場合、第1カチオンを有しない場合と比較して、低い融点を有するものとなり易い。
【0017】
第1カチオンの具体例としては、以下のものが挙げられる。
テトラヘキシルアンモニウムイオン、N(C13
テトラオクチルアンモニウムイオン、N(C17
テトラブチルアンモニウムイオン、N(C
テトラエチルアンモニウムイオン、N(C
テトラアミルアンモニウムイオン、N(C11
テトラデシルアンモニウムイオン、N(C1021
エチルジメチルフェニルエチルイオン、N(CH(C)(C
1-メチル-1-プロピルピペリジニウムイオン、(CH)(C)N(C10
アミルトリエチルアンモニウムイオン、N(C(C11
メチルトリオクチルアンモニウムイオン、N(CH(C17
【0018】
Li含有塩を構成する第1カチオンと第2カチオンとのモル比は特に限定されるものではない。Li含有塩が、第1カチオンと第2カチオンとの双方を有する場合、各々を単独で有する場合と比較して、Li含有塩の融点が低下する。Li含有塩の融点を大きく低下させる観点、及び、リチウムイオン伝導性を一層高める観点などから、第1カチオンに対する第2カチオンのモル比(第2カチオン/第1カチオン)は、0.05以上19.0以下であってもよい。当該モル比は、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、0.5以上、0.6以上、0.7以上、0.8以上、0.9以上、又は、1.0以上であってもよく、10.0以下、9.5以下、9.0以下、8.5以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下、又は、5.0以下であってもよい。Li含有塩を構成する第1カチオンに対する第2カチオンのモル比が1.0以上(例えば、全カチオンに占めるリチウムイオンの濃度が50モル%以上)と高濃度であったとしても、当該Li含有塩の融点が十分に低くなり、例えば、60℃未満となり得る。
【0019】
Li含有塩を構成するカチオンは、上記の第1カチオン及び第2カチオンのみからなるものであってもよいし、第1カチオンとは異なるその他のカチオンを含むものであってもよい。その他のカチオンとしては、例えば、貧金属元素を含むイオンが挙げられる。貧金属としては、例えば、AlやGaなどが挙げられる。Li含有塩を構成するカチオン全体に占める上記の第1カチオン及び第2カチオンの合計の割合は、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、99モル%以上又は100モル%であってもよい
【0020】
Li含有塩は、各種のアニオンを有し得る。例えば、Li含有塩は、ハロゲンイオン、ハライドイオン、硫酸水素イオン、スルホニルアミドイオン、及び、Hを含む錯イオンから選ばれる少なくとも1種のアニオンを有するものであってもよい。或いは、Li含有塩は、第1アニオン及び第2アニオンのうちの一方又は両方を有するものであってもよく、前記第1アニオンは、ハロゲンイオン及び硫酸水素イオンのうちの一方又は両方であってもよく、前記第2アニオンは、スルホニルアミドアニオンであってもよい。本発明者の新たな知見によると、Li含有塩が上記のアニオンを有する場合、中でもハロゲンイオン及び硫酸水素イオンのうちの一方又は両方を有する場合、特にハロゲンイオンを有する場合、Li含有塩の融点が特異的に低下し易い。また、本発明者の新たな知見によると、Li含有塩がスルホニルアミドアニオンを有する場合も、Li含有塩の融点が特異的に低下し易い。また、本発明者の新たな知見によると、Li含有塩が、複数種類のアニオンを有する場合、例えば、ハロゲンイオン及び硫酸水素イオンのうちの一方又は両方である第1アニオンと、スルホニルアミドアニオンである第2アニオンとを有する場合も、Li含有塩の融点が特異的に低下し易い。
【0021】
ハロゲンイオンは、例えば、臭素イオン及び塩素イオンのうちの一方又は両方であってもよい。
【0022】
スルホニルアミドアニオンとしては、例えば、トリフルオロメタンスルホニルアミドアニオン(TFSAアニオン、(CFSO)、フルオロスルホニルアミドアニオン(FSAアニオン、(FSO)、フルオロスルホニル(トリフルオロメタンスルホニル)アミドアニオン(FTAアニオン、FSO(CFSO)N)等が挙げられる。スルホニルアミドアニオンは、1種のみであってもよいし、2種以上が組み合わされてもよい。尚、上記のスルホニルアミドアニオンのうち、TFSAアニオンは、極性が低く、他の電池材料との反応性が特に低い。この点、Li含有塩がTFSAアニオンを有する場合、Li含有塩と他の電池材料との反応が一層抑制され易い。
【0023】
Hを含む錯イオンは、例えば、非金属元素及び金属元素のうちの少なくとも一方を含む元素Mと、当該元素Mに結合したHと、を有するものであってもよい。また、Hを含む錯イオンは、中心元素としての元素Mと、当該元素Mを取り巻くHとが共有結合を介して互いに結合していてもよい。また、Hを含む錯イオンは、(Mα-で表されるものであってもよい。この場合のmは任意の正の数字であり、nやαはmや元素Mの価数等に応じて任意の正の数字を採り得る。元素Mは錯イオンを形成し得る非金属元素や金属元素であればよい。例えば、元素Mは、非金属元素としてB、C及びNのうちの少なくとも1つを含んでいてもよく、Bを含んでいてもよい。また、例えば、元素Mは、金属元素として、Al、Ni及びFeのうちの少なくとも1つを含んでいてもよい。特に錯イオンがBを含む場合や、C及びBを含む場合に、より高いイオン伝導性が確保され易い。Hを含む錯イオンの具体例としては、(CB10、(CB1112、(B10102-、(B12122-、(BH、(NH、(AlH、及び、これらの組み合わせが挙げられる。特に、(CB10、(CB1112、又は、これらの組み合わせを用いた場合に、より高いイオン伝導性が確保され易い。
【0024】
Li含有塩が第1アニオンと第2アニオンとを有する場合、第1アニオンと第2アニオンとのモル比は特に限定されるものではない。第1アニオンに対する第2アニオンのモル比(第2アニオン/第1アニオン)は、0超19.0以下であってもよい。当該モル比は、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、又は、0.5以上であってもよく、10.0以下、9.5以下、9.0以下、8.5以下、8.0以下、7.5以下、7.0以下、6.5以下、6.0以下、5.5以下、又は、5.0以下であってもよい。
【0025】
Li含有塩は、上記例示したアニオン(ハロゲンイオン、ハライドイオン、硫酸水素イオン、スルホニルアミドイオン、及び、Hを含む錯イオンから選ばれる少なくとも1種のアニオン)とは異なるその他のアニオンを含むものであってもよい。Li含有塩を構成するアニオン全体に占める上記例示したアニオンの合計割合は、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、99モル%以上又は100モル%であってもよい。
【0026】
本発明者が見出したLi含有塩の組成及びその融点の一例を示す。
(1)AmTEA・TFSA+Li・TFSA
第1カチオン:N(C(C11
第2カチオン:Li
アニオン:TFSA
第1カチオンに対する第2カチオンのモル比:1.0
融点:50℃
(2)MTOA・TFSA+Li・TFSA
第1カチオン:N(CH)(C17
第2カチオン:Li
アニオン:TFSA
第1カチオンに対する第2カチオンのモル比:1.0
融点:50℃
(3)TAmA・Br+Li・TFSA
第1カチオン:N(C11
第2カチオン:Li
第1アニオン:Br
第2アニオン:TFSA
第1カチオンに対する第2カチオンのモル比:1.0
第1アニオンに対する第2アニオンのモル比:1.0
融点:30℃
【0027】
導電助剤としては、例えば、気相法炭素繊維(VGCF)やアセチレンブラック(AB)やケッチェンブラック(KB)やカーボンナノチューブ(CNT)やカーボンナノファイバー(CNF)等の炭素材料;ニッケル、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料が挙げられる。導電助剤は、例えば、粒子状又は繊維状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。導電助剤は1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0028】
バインダーとしては、例えば、ブタジエンゴム(BR)系バインダー、ブチレンゴム(IIR)系バインダー、アクリレートブタジエンゴム(ABR)系バインダー、スチレンブタジエンゴム(SBR)系バインダー、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)系バインダー、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)系バインダー、ポリイミド(PI)系バインダー等が挙げられる。バインダーは1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
【0029】
正極集電体11bは、二次池の正極集電体として一般的なものをいずれも採用可能である。また、正極集電体11bは、箔状、板状、メッシュ状、パンチングメタル状、及び、発泡体等であってよい。正極集電体11bは、金属箔又は金属メッシュによって構成されていてもよい。特に、金属箔が取扱い性等に優れる。正極集電体11bは、複数枚の箔からなっていてもよい。正極集電体11bを構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。特に、酸化耐性を確保する観点等から、正極集電体11bがAlを含むものであってもよい。正極集電体11bは、その表面に、抵抗を調整すること等を目的として、何らかのコート層を有していてもよい。また、正極集電体11bは、金属箔や基材に上記の金属がめっき又は蒸着されたものであってもよい。また、正極集電体11bが複数枚の金属箔からなる場合、当該複数枚の金属箔間に何らかの層を有していてもよい。正極集電体の厚みは特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上又は1μm以上であってもよく、1mm以下又は100μm以下であってもよい。
【0030】
1.1.2 負極
図1に示されるように、負極12は、負極活物質層12aと、当該層12aに接触する負極集電体12bを有するものであってもよい。この場合、負極活物質層12aが、所定の活物質、固体電解質及び所定のLi含有塩を含み得る。
【0031】
負極活物質層12aは、少なくとも負極活物質を含み、固体電解質及び所定のLi含有塩を含んでいてもよい。また、負極活物質層12aは、導電助剤及びバインダー等を含んでいてもよい。さらに、負極活物質層12aは各種の添加剤を含んでいてもよい。負極活物質層12aにおける各成分の含有量は、目的とする電池性能に応じて適宜決定されればよい。例えば、負極活物質層12aの固形分全体を100質量%として、負極活物質の含有量が40質量%以上、50質量%以上、60質量%以上又は70質量%以上であってもよく、100質量%以下、95質量%以下又は90質量%以下であってもよい。或いは、負極活物質層12aの全体を100体積%として、負極活物質と、任意に固体電解質、Li含有塩、導電助剤及びバインダーとが合計で85体積%以上、90体積%以上又は95体積%以上含まれていてもよく、残部は空隙であってもその他の成分であってもよい。負極活物質層12aの形状は、特に限定されるものではなく、例えば、略平面を有するシート状の負極活物質層であってもよい。負極活物質層12aの厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1μm以上、1μm以上又は10μm以上であってもよく、2mm以下、1mm以下又は500μm以下であってもよい。
【0032】
負極活物質は、二次電池の負極活物質として公知のものを用いればよい。例えば、リチウムイオン二次電池を構成する場合は、負極活物質として、Siを含むもの(Si単体、Si合金、Si化合物)や、炭素を含むもの(グラファイト、ハードカーボン等)、酸化物を含むもの(チタン酸リチウム等)、Liを含むもの(金属リチウム、リチウム合金等)が採用され得る。中でも、Siを含む負極活物質は、二次電池10の充放電に伴う体積変化が大きく、本開示のシステム100による一層顕著な効果が得られるものと考えられる。負極活物質は、1種のみが単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。負極活物質は、例えば、粒子状であってもよく、その大きさは特に限定されるものではない。負極活物質の粒子は、中実の粒子であってもよく、中空の粒子であってもよく、空隙を有する粒子(多孔質粒子)であってもよい。負極活物質の粒子は、一次粒子であってもよいし、複数の一次粒子が凝集した二次粒子であってもよい。負極活物質の粒子の平均粒子径(D50)は、例えば1nm以上、5nm以上、又は10nm以上であってもよく、また500μm以下、100μm以下、50μm以下、又は30μm以下であってもよい。
【0033】
負極活物質層12aに含まれ得る固体電解質、Li含有塩、導電助剤及びバインダー等については、例えば、上述の正極活物質層に含まれ得るものとして例示したものの中から適宜選択されればよい。
【0034】
負極集電体12bは、電池の負極集電体として一般的なものをいずれも採用可能である。また、負極集電体12bは、箔状、板状、メッシュ状、パンチングメタル状、及び、発泡体等であってよい。負極集電体12bは、金属箔又は金属メッシュであってもよく、或いは、カーボンシートであってもよい。特に、金属箔が取扱い性等に優れる。負極集電体12bは、複数枚の箔やシートからなっていてもよい。負極集電体12bを構成する金属としては、Cu、Ni、Cr、Au、Pt、Ag、Al、Fe、Ti、Zn、Co、ステンレス鋼等が挙げられる。特に、還元耐性を確保する観点及びリチウムと合金化し難い観点から、負極集電体12bがCu、Ni及びステンレス鋼から選ばれる少なくとも1種の金属を含むものであってもよい。負極集電体12bは、その表面に、抵抗を調整すること等を目的として、何らかのコート層を有していてもよい。また、負極集電体12bは、金属箔や基材に上記の金属がめっき又は蒸着されたものであってもよい。また、負極集電体12bが複数枚の金属箔からなる場合、当該複数枚の金属箔の間に何らかの層を有していてもよい。負極集電体12bの厚みは特に限定されるものではない。例えば、0.1μm以上又は1μm以上であってもよく、1mm以下又は100μm以下であってもよい。
【0035】
1.1.3 電解質層
電解質層13は、正極11と負極12との間に配置され、セパレータとして機能し得る。電解質層13は、少なくとも固体電解質を含み、さらに任意に、バインダー等を含んでいてもよい。電解質層13は、さらに、各種の添加剤を含んでいてもよい。電解質層13における各成分の含有量は特に限定されず、目的とする電池性能に応じて適宜決定されればよい。電解質層13の形状は特に限定されるものではなく、例えば、略平面を有するシート状であってもよい。電解質層13の厚みは特に限定されるものではなく、例えば、0.1μm以上又は1μm以上であってもよく、2mm以下又は1mm以下であってもよい。
【0036】
電解質層13に含まれる固体電解質やバインダー等としては、上述の正極活物質層11aや負極活物質層12aに含まれ得る電解質として例示されたものの中から適宜選択されればよい。
【0037】
1.1.4 その他の構成
二次電池10は、上記の各構成が外装体の内部に収容されたものであってもよい。外装体は、電池の外装体として公知のものをいずれも採用可能である。例えば、ラミネートフィルムからなる外装体が採用され得る。二次電池10は、複数の正極11を備えるものであってもよく、複数の負極12を備えるものであってもよく、複数の電解質層13を備えるものであってもよい。また、複数の二次電池10が、任意に電気的に接続され、また、任意に重ね合わされて、組電池とされていてもよい。この場合、公知の電池ケースの内部に当該組電池が収容されてもよい。二次電池10は、このほか必要な端子等の自明な構成を備えていてよい。二次電池10の形状としては、例えば、コイン型、ラミネート型、円筒型、及び角型等を挙げることができる。
【0038】
1.2 加熱装置
図1に示されるように、二次電池システム100は、加熱装置20を備える。加熱装置20によって加熱される対象は、上記のLi含有塩を含む。言い換えれば、加熱装置20は、少なくともLi含有塩を加熱できるように構成されていればよい。加熱装置20は、例えば、二次電池10の少なくとも正極11を加熱するように構成されていてもよく、少なくとも負極12を加熱するように構成されていてもよく、二次電池10の正極11、負極12及び電解質層13の全体を加熱するように構成されていてもよい。
【0039】
加熱装置20の加熱方式に特に制限はなく、Li含有塩を融点以上の温度に加熱できる方式であればよい。例えば、抵抗加熱、誘導加熱、誘電加熱、マイクロ波加熱、熱風加熱等の種々の方式が採用され得る。加熱装置20は、Li含有塩の温度が融点以上の温度となるように加熱するモードと、Li含有塩の温度が融点未満の温度となるように加熱又は非加熱するモードとを切り替え可能に構成されていてもよい。
【0040】
加熱装置20が設置される位置や加熱装置20の数についても特に限定されるものではない。図1には、正極11側及び負極12側の各々に加熱装置20が配置される形態が示されているが、加熱装置20の位置や数はこれに限定されない。加熱装置20は、例えば、二次電池10の外装体の内部に配置されていてもよいし、外部に配置されていてもよい。また、加熱装置20は、一つの二次電池10を加熱するように構成されていてもよいし、複数の二次電池10を加熱するように構成されていてもよい。
【0041】
加熱装置20による加熱温度の最高値は、Li含有塩の融点以上であればよい。一方で、二次電池10の材料劣化を抑制する観点等から、加熱装置20による加熱温度は、80℃以下、70℃以下又は60℃以下であってもよい。
【0042】
1.3 制御装置
図1に示されるように、二次電池システム100は、制御装置30を備える。制御装置30は、加熱装置20による加熱を制御する。制御装置30は、CPU、RAM、ROM等を備えるものであってもよい。
【0043】
上述の通り、二次電池10の正極11及び負極12の一方又は両方は、固体電解質とともに、充放電に伴って体積が変化する活物質を含む。そのため、二次電池10の充放電を繰り返した場合、活物質の体積変化によって、活物質や固体電解質に割れが生じ易い。また、活物質の体積変化によって、活物質と活物質との間、活物質と固体電解質との間、或いは、固体電解質と固体電解質との間に隙間が生じ易い。このような割れや隙間によって、電極中のイオン伝導パスや導電パスに途切れが生じ、二次電池10の性能が一定以下に低下し得る。
【0044】
これに対し、制御装置30は、二次電池10の性能が一定以下であるものと判定された場合に、上記のLi含有塩の温度がその融点以上となるように、加熱装置20による加熱を制御する。加熱装置20による加熱時間は特に限定されるものではなく、例えば、電極中のLi含有塩が十分に液化するまでの時間であってもよい。制御装置30は、例えば、二次電池10の性能が一定以下であるものと判定された場合に、加熱装置20による加熱が開始されるように、加熱装置20のON及びOFFの切り替えを制御するものであってもよい。或いは、制御装置30は、二次電池10の性能が一定以下であるものと判定された場合に、加熱装置20による加熱量を増加させるように、加熱装置20の加熱を制御するものであってもよい。このように、制御装置30によって加熱装置20による加熱を制御して、Li含有塩をその融点以上の温度に加熱することで、正極11や負極12に生じた割れや隙間を液体のLi含有塩によって埋めることができる。すなわち、正極11や負極12に生じた割れや隙間がLi含有塩によって解消される。Li含有塩は、リチウムイオンを含むことから、一定のリチウムイオン伝導性や導電性を有する。そのため、割れや隙間によって途切れたイオン伝導パスや導電パスがLi含有塩を介して再び接続される。結果として、二次電池10の性能が回復する。
【0045】
二次電池10の性能が一定以下であるか否かは、種々の基準に基づいて判定され得る。例えば、電極中のイオン伝導パスや導電パスに途切れが生じている場合、電極中のイオン伝導パスや導電パスに途切れが生じていない場合と比較して、(1)所定SOCにおける二次電池の電圧値が低下したり、(2)二次電池の抵抗が増加したり、(3)二次電池の出力が低下したりする。すなわち、二次電池の電圧や抵抗や出力等を基準として、二次電池の性能が一定以下であるか否かが判定され得る。例えば、図1に示されるように、二次電池システム100は、電圧測定装置40を有していてもよく、前記電圧測定装置40は、前記二次電池10の電圧を測定するものであってもよく、前記二次電池10の性能は、前記電圧に基づくものであってもよい。具体的には、電圧測定装置40によって所定SOCにおける二次電池10の電圧が測定され、当該電圧測定装置40によって測定された電圧値が一定以下である場合に、二次電池10の性能が一定以下であると判定されて、制御装置30による上述の制御が行われてもよい。
【0046】
二次電池の性能が一定以下であるか否かの判定は、例えば、制御装置30によって行われてもよいし、制御装置30以外の装置によって行われてもよい。二次電池10の性能が一定以下であるか否かの閾値は、特に限定されるものではない。二次電池10に求められる性能等に応じて、適当な閾値が設定されればよい。
【0047】
制御装置30は、二次電池10の性能が一定を超えているものと判定された場合に、上記のLi含有塩の温度がその融点未満となるように、加熱装置20による加熱を制御するものであってもよい。例えば、制御装置30は、二次電池10の性能が一定を超えているものと判定された場合に、加熱装置20による加熱が停止されるように、加熱装置20のON及びOFFの切り替えを制御するものであってもよい。或いは、制御装置30は、二次電池10の性能が一定を超えているものと判定された場合に、加熱装置20による加熱量を低下させるように、加熱装置20の加熱を制御するものであってもよい。
【0048】
1.4 電圧測定装置
二次電池システム100が電圧測定装置40を備える場合、当該電圧測定装置40は、二次電池10の電圧を測定可能なものであればよい。電圧測定装置40は、複数の二次電池10の電圧を監視するものであってもよい。電圧測定装置40の具体的な構成は公知である。
【0049】
1.5 制御フローの具体例
図2に、二次電池システム100における制御フローの具体例を示す。図2は、二次電池10の電圧を基準として、二次電池10の性能が一定以下であるか否かを判定する場合の制御フローである。上述したように、電極におけるイオン伝導パスや導電パスの途切れにより、所定SOCでの二次電池10の電圧が徐々に低下する。図2に示される制御フローは、二次電池10の電圧値に閾値を設定し、それを下回った場合に加熱装置20や循環ファン等をONにして二次電池10を加熱し、二次電池10の電極に含まれるLi含有塩を融点以上に加熱して融解させて、電極中の固-固界面を修復する、というものである。
【0050】
図2に示されるように、まず、所定SOCでの二次電池10の電圧値が取得される。二次電池10の電圧値は、例えば、電圧測定装置40によって取得され得る。
【0051】
二次電池10の電圧値が閾値を上回っている場合は、二次電池10の性能が一定を超えているものと判定され、加熱装置20による加熱制御が行われることなく、例えば、加熱装置20をOFFのままとして制御フローが終了される。一方、電圧値が閾値を下回っている場合は、二次電池10の性能が一定以下であるものと判定され、加熱装置20をONにし、循環ファンをONにして、加熱装置20によるLi含有塩の加熱を開始し、Li含有塩を液化させる。
【0052】
一定時間経過後、加熱装置20や循環ファンがOFFとされ、再度、所定SOCでの二次電池10の電圧値が取得される。電圧値が依然として閾値を下回っている場合は、再度、加熱装置20や循環ファンをONにして、Li含有塩の加熱及び液化が行われる。一方で、電圧値が閾値を上回っている場合は、二次電池10の性能が一定を超えているものと判定され、加熱装置20による再度の加熱が行われることなく、例えば、加熱装置20をOFFのままとして制御フローが終了される。
【0053】
2.二次電池の性能回復方法
以上の通り、二次電池システム100によれば、二次電池10の正極11や負極12におけるイオン伝導パスや導電パスの途切れを解消して、二次電池10の性能を回復することができる。この点、本開示の技術は、二次電池の性能回復方法としての側面も有する。すなわち、本開示の二次電池の性能回復方法は、
二次電池の性能が一定以下であるか否かを判定すること、及び、
前記二次電池の性能が一定以下であるものと判定された場合に、二次電池の性能を回復する処理を施すこと、を含み、
前記二次電池は、正極及び負極を有し、
前記正極及び前記負極のうちの一方又は両方は、活物質、固体電解質及びLi含有塩を含み、
前記活物質は、前記二次電池の充放電に伴って体積が変化する物質を含み、
前記二次電池の性能を回復する処理は、前記二次電池の前記正極及び前記負極のうちの一方又は両方に含まれる前記Li含有塩を前記Li含有塩の融点以上の温度に加熱すること、を含むものである。
【0054】
二次電池の性能が一定以下であるか否かの判定基準の詳細や、二次電池の性能を回復するための加熱制御の詳細については、二次電池システムにて説明した通りである。
【0055】
上述の通り、本開示の技術によれば、正極や負極におけるイオン伝導パスや導電パスの途切れを解消して、二次電池の性能を回復することができる。このほか、本開示の技術は、電解質層の割れや負極のデンドライト短絡を抑制又は修復する効果も期待できる。
【符号の説明】
【0056】
10 二次電池
11 正極
12 負極
13 電解質層
20 加熱装置
30 制御装置
40 電圧測定装置
100 二次電池システム
図1
図2