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  • 特開-車両の駆動力制御装置 図1
  • 特開-車両の駆動力制御装置 図2
  • 特開-車両の駆動力制御装置 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184287
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両の駆動力制御装置
(51)【国際特許分類】
   B60W 30/02 20120101AFI20231221BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B60W30/02
B60L15/20 Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098353
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】古橋 雄介
(72)【発明者】
【氏名】姫野 寛
(72)【発明者】
【氏名】牟田 浩一郎
【テーマコード(参考)】
3D241
5H125
【Fターム(参考)】
3D241BA18
3D241BA51
3D241BC01
3D241BC06
3D241CA06
3D241CC01
3D241DA04Z
3D241DB12Z
3D241DB14Z
3D241DB16Z
5H125AA01
5H125BA00
5H125CA01
5H125DD15
(57)【要約】
【課題】車両の旋回挙動制御時において安定した運転が可能となり、スリップを抑制できる車両の駆動力制御装置を提供すること。
【解決手段】本開示に係る車両の駆動力制御装置14は、車両10の旋回挙動制御時において、旋回初期にトルクダウンにより発生する前記車両10のロールの位相に対するピッチの位相を所定の目標値に制御するための操作量としての駆動トルクの補正を行う駆動力補正手段を備え、前記駆動力補正手段による前記補正により、前記駆動トルクが負側にならないように下限ガードを設定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の旋回挙動制御時において、旋回初期にトルクダウンにより発生する前記車両のロールの位相に対するピッチの位相を所定の目標値に制御するための操作量としての駆動トルクの補正を行う駆動力補正手段を備え、
前記駆動力補正手段による前記補正により、前記駆動トルクが負側にならないように下限ガードを設定する、
車両の駆動力制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両の駆動力制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の旋回時に発生するヨーレートは、車両の旋回時の安定性に影響する。特許文献1には、車両の旋回時において、左右の駆動輪に付与する駆動トルクを制御する車両の駆動力制御装置が開示されている。
【0003】
具体的には、上述の制御装置は、車両の操舵角が変化を開始する旋回初期において、ヨーレートの目標値を設定し、ヨーレートを目標値に制御するための操作量としてのヨーモーメントを算出する。その後、制御装置は、ヨーモーメントに応じた内燃機関に対するトルク指令値の補正量を算出し、補正量によって補正されたトルク指令値となるように内燃機関を操作する。これにより、車両の旋回時における左右の駆動輪に付与する駆動力を制御している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-133811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ハイブリッド車両において、トルクダウンによってライントレース制御を実施すると、発電モータでエンジンを回転させて電力消費を行うモータリングモードによる減速時にエンジン回転数が変動し、ドライバーへの違和感と繋がるおそれがある。
【0006】
ハイブリッド車両では、減速時に運動エネルギーを電気エネルギーに換えて、駆動用バッテリーに戻して再利用する回生ブレーキを採用している。モータリングモードにおいて、回生ブレーキによる減速にて得られる電気エネルギーを電池で吸収しきれない場合は、要求される駆動力を得るために、エンジンフリクションを用いて減速力を賄っている。
【0007】
エンジン回転数の変動について、図1を用いて説明する。図1は、モータリングモードによる減速時に、エンジンフリクションを用いて減速力を賄ってトルクダウンした場合のエンジン回転数の変動量をプロットしたものである。縦軸はエンジン回転数Ne(rpm)、横軸はエンジンフリクションによる減速力Pefc(kW)を表す。
【0008】
車両の速度が40km/h、80km/h、160km/hの状態から停止するまでのエンジン回転数Neの変動量は、それぞれ600rpm、1147rpm、2013rpmであった。この変動量がドライバーへの違和感と繋がる要因となっている。
【0009】
また、ライントレース制御において、減速トルクを増加させることにより、スリップを助長させてしまう可能性がでてくる。
【0010】
本開示は、このような課題を解決するためになされたものであり、車両の旋回挙動制御時において安定した運転が可能となり、スリップを抑制できる車両の駆動力制御装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る車両の駆動力制御装置は、車両の旋回挙動制御時において、旋回初期にトルクダウンにより発生する前記車両のロールの位相に対するピッチの位相を所定の目標値に制御するための操作量としての駆動トルクの補正を行う駆動力補正手段を備え、前記駆動力補正手段による前記補正により、前記駆動トルクが負側にならないように下限ガードを設定する。
【発明の効果】
【0012】
本開示により、車両の旋回挙動制御時において安定した運転が可能となり、スリップを抑制できる車両の駆動力制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】モータリングモードにおいて、エンジンフリクションを用いて減速力を賄った場合のエンジン回転数の変動を示す図である。
図2】本実施の形態に係る車両の駆動力制御装置を備える車両の構成を示す略図である。
図3】本実施の形態に係る車両の駆動力制御装置の処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本開示の実施の形態について説明する。図2は、本実施の形態に係る車両の駆動力制御装置を適用する車両の構成を示している。本実施の形態に係る車両10は、内燃機関11、モータなどを備える駆動機構12、駆動輪13、車両の駆動力制御装置14を備えている。内燃機関11は、駆動機構12を介して駆動輪13と接続している。
【0015】
本実施の形態に係る車両の駆動力制御装置14は、旋回挙動開始時の車両10の駆動トルク及びヨーレートをモニターし、旋回初期にトルクダウンにより発生する車両10のロールの位相に対するピッチの位相を所定の目標値を算出する手段を備える。また、車両の駆動力制御装置14は、算出された目標値に基づいて操作量としての駆動トルクの補正を行う駆動力補正手段とを備える。
【0016】
さらに、車両の駆動力制御装置14は、ライントレース制御を行い、その際に補正されたトルクにより駆動トルクが負側にならないように下限ガードを設定する手段を備える。
【0017】
図3は、本実施の形態に係る車両の駆動力制御装置14で実行される処理を示している。以下、図3を用いて、車両の駆動力制御装置14にて行われる制御について説明する。
【0018】
ユーザから車両10の旋回挙動の指示を受けた後、車両の駆動力制御装置14にて車両の駆動トルク及びヨーレートをモニターし、モニターされた駆動トルクと下限ガード値を比較する(S101)。モニターされた駆動トルクが下限ガード値よりも高い場合は、処理を終了する。
【0019】
モニターされた駆動トルクが下限ガード値よりも低い場合は、ライントレース制御を開始する。この時、ライントレース制御における補正されたトルクを、下限ガード値から補正前の駆動トルクの差分となるように設定する(S102)。これにより、駆動トルクがライントレース制御によって負側になることが抑制され、ドライバーへの違和感を抑制することが可能となる。
【0020】
このように制御することで、車両の旋回挙動制御時において安定した運転が可能となり、スリップを抑制できる車両の駆動力制御装置を提供することが可能となる。
【0021】
なお、本開示は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 車両
11 内燃機関
12 駆動機構
13 駆動輪
14 車両の駆動力制御装置
図1
図2
図3