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  • 特開-酸価測定装置、酸価測定プログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184299
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】酸価測定装置、酸価測定プログラム
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20231221BHJP
   G01N 33/03 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N33/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098369
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】593012310
【氏名又は名称】菱熱工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107928
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正則
(74)【代理人】
【識別番号】110003362
【氏名又は名称】弁理士法人i.PARTNERS特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅原 利克
(72)【発明者】
【氏名】小島 良元
(72)【発明者】
【氏名】上野 宗一郎
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB04
2G059CC14
2G059DD20
2G059EE01
2G059EE02
2G059EE13
2G059FF01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】測定者の主観に依存することなく低コストで食用油の酸価を測定する技術を提供する。
【解決手段】油脂の酸価を測定する酸価測定装置4であって、測定対象である測定油脂の油種を設定する油種設定部402と、測定油脂が撮像された撮像画像を取得する画像取得部401と、撮像画像における測定油脂の色における少なくとも1つの原色の値と、設定された油種に対応付けられた係数及び定数とに基づいて、測定油脂の酸価を算出する算出部405とを備えた。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
油脂の酸価を測定する酸価測定装置であって、
測定対象である測定油脂の油種を設定する油種設定部と、
前記測定油脂が撮像された撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像における前記測定油脂の色における少なくとも1つの原色の値と、前記設定された油種に対応付けられた係数及び定数とに基づいて、前記測定油脂の酸価を算出する算出部と
を備える酸価測定装置。
【請求項2】
前記算出部は、前記赤の値に前記係数を乗算し、前記定数を加算することにより前記測定油脂の酸価を算出することを特徴とする請求項1に記載の酸価測定装置。
【請求項3】
前記設定された油種には更に閾値が対応付けられ、
前記算出部は、前記赤の値が前記閾値以上である場合、前記赤の値に2を乗算して前記測定油脂の色における緑の値を減算した値に対して、前記係数を乗算し、前記定数を加算することにより前記測定油脂の酸価を算出することを特徴とする請求項2に記載の酸価測定装置。
【請求項4】
前記撮像画像には、前記測定油脂とともに少なくとも1つ以上のカラーチャートが撮像され、
前記撮像画像における少なくとも1つ以上のカラーチャートに基づいて前記測定油脂の色を補正する補正部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の酸価測定装置。
【請求項5】
前記係数は負値であり、前記定数は正値であることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の酸価測定装置。
【請求項6】
油脂の酸価を測定する酸価測定プログラムであって、
コンピュータを、
測定対象である測定油脂の油種を設定する油種設定部と、
赤、緑及び青の三原色により色が表現され、前記測定油脂が撮像された撮像画像を取得する画像取得部と、
前記撮像画像における前記測定油脂の色における赤の値と、前記設定された油種に対応付けられた係数及び定数とに基づいて、前記測定油脂の酸価を算出する算出部として機能させる酸価測定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、食用油の酸価を測定する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
加熱された食用油内に食材を浸して加熱する揚げ調理においては、繰り返し使用されることによって食用油の酸化反応が進行すると揚げ調理された食品の品質が劣化する。揚げ調理を行う現場においては、揚げ調理に使用している食用油を新しい食用油に交換するタイミングを判断するため、使用中の食用油の酸価が測定される。
【0003】
食用油の酸価の測定には、一般的に、高価な測定機器を用いることなく、専門知識を要さない測定方法として、AV(Acid Value)試験紙が用いられる。AV試験紙を用いた酸価の測定は、測定対象とする食用油にAV試験紙における試験部分を浸し、一定時間後に発色した試験部分の色がカラーチャートと比較されることによってなされる。
【0004】
なお、関連する技術として、油脂試料を、カルボン酸誘導体化試薬と反応させ、生成したカルボン酸誘導体を定量し、および該カルボン酸の定量値から前記油脂試料の酸価を算出する工程を含むことを特徴とする酸価測定方法、が知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-037225号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
AV試験紙を用いた酸価の測定において、試験部分の色とカラーチャートとの比較は試験を行う測定者による目視によって行われるため、測定者の主観により測定結果が不正確となる、という問題があった。
【0007】
本発明が解決しようとする課題は、測定者の主観に依存することなく低コストで食用油の酸価を測定する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決するため、本発明の一態様は、油脂の酸価を測定する酸価測定装置であって、測定対象である測定油脂の油種を設定する油種設定部と、前記測定油脂が撮像された撮像画像を取得する画像取得部と、前記撮像画像における前記測定油脂の色における少なくとも1つの原色の値と、前記設定された油種に対応付けられた係数及び定数とに基づいて、前記測定油脂の酸価を算出する算出部とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、測定者の主観に依存することなく低コストで食用油の酸価を測定する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る酸価測定システムの構成を示す概略図である。
図2】実施形態に係る採取具の構成を示す側面図である。
図3】実施形態に係る酸価測定装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
図4】実施形態に係る酸価測定装置の機能構成を示すブロック図である。
図5】実施形態に係る酸価測定装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0012】
(酸価測定システムの構成)
本実施形態に係る酸価測定システムの構成について説明する。図1は、酸価測定システムの構成を示す概略図である。図2は、採取具の構成を示す側面図である。
【0013】
図1に示すように、本実施形態に係る酸価測定システム1は、測定対象とする油脂Oを採取する採取具2と、カラーチャート3と、酸価測定装置4とを備え、油脂Oが撮像された撮像画像IMに基づいて酸価測定装置4が酸価を算出することによって、油脂Oの酸価を測定する。本実施形態において測定対象とする油脂は食用油とし、このような食用油としては、例えば、コーン油、ヒマワリ油、菜種油、ごま油、オリーブオイル、綿実油、パーム油、パーム核油、ココナッツオイル、ピーナッツオイル、サフラワー油、大豆油などの植物油が挙げられる。
【0014】
図1図2に示すように、採取具2は、底面が閉塞され上面が開口された円筒状に形成され、測定対象とする油脂Oを貯留する貯留部21と、一方向に延在する略棒状に形成され、一端部が貯留部21に接続された把持部22とを有する。本実施形態に係る採取具2は、全体的にステンレス鋼によって製造され、着色されず銀色の表面を有し、貯留部21の内径DMを25mm、深さDPを10mmとする。なお、後述するように、酸価測定装置4は、油脂Oの色に基づく値を酸価として算出するため、採取具2は、反射率が比較的高く、彩度が低い表面を有するものが望ましい。
【0015】
図1に示すように、カラーチャート3は、採取具2を載置可能な大きさを有する方形のシート状に形成され、一方側の面には、4つのマーカーM、3つのカラーシンボルCS、枠線FLが描画される。4つのマーカーMは、酸価測定装置4により識別可能な二次元コードであり、カラーチャート3の四隅近傍に描画される。4つのマーカーMは、それぞれ、互いに異なる識別子がコード化された二次元コードであり、これによって、酸価測定装置4が撮像画像IM中におけるカラーチャート3の四隅のそれぞれの位置が測定される。
【0016】
3つのカラーシンボルCSは、後述するように、撮像画像IMにおける油脂Oの色を補正するための基準として用いられ、本実施形態においては、それぞれ、RGBカラーモデルにおける原色としての赤(R)、緑(G)、青(B)に着色される。なお、カラーシンボルCSは、少なくとも1つ以上描画されていれば良く、赤、緑、青以外の色であっても良い。枠線FLは、平面視の採取具2を象った点線であり、採取具2を載置すべき位置を示す。測定者は、油脂Oの酸価の測定に際して、測定すべき油脂Oを採取した採取具2を枠線FL内に収まるようにカラーチャート3上に載置する。
【0017】
(酸価測定装置の構成)
本実施形態に係る酸価測定装置の構成について説明する。図3図4は、それぞれ、酸価測定装置のハードウェア構成、機能構成を示すブロック図である。
【0018】
図3に示すように、酸価測定装置4は、油脂Oの測定者が用いるタブレット型端末装置として構成され、ハードウェアとして、CPU(Central Processing Unit)41、RAM(Random Access Memory)42、記憶装置43、タッチパネル44、カメラ45を備える。CPU41及びRAM42は協働して各種機能を実行し、記憶装置43は各種機能により実行される処理に用いられる各種データを記憶する。タッチパネル44は、ディスプレイとタッチセンサとを有し、酸価測定装置4の正面側に備えられた入出力装置である。カメラ45は、酸価測定装置4の背面側に備えられ、可視光による2次元画像及び映像を撮像する撮像装置である。
【0019】
図4に示すように、酸価測定装置4は、機能として、画像取得部401、油種設定部402、抽出部403、補正部404、算出部405を備える。画像取得部401は、カメラ45により撮像された撮像画像IMを取得する。油種設定部402は、酸価を測定すべき油脂Oを測定者により選択された油種に設定する。抽出部403は、画像取得部401により取得された撮像画像IMから油脂O、3つのカラーシンボルCSのそれぞれの部分画像を抽出する。補正部404は、3つのカラーシンボルCSの部分画像に基づいて油脂Oの部分画像の色を補正する。算出部405は、設定された油種に対応付けられた係数、定数及び閾値と、補正された油脂Oの部分画像の色とに基づいて油脂Oの酸価を算出する。なお、本実施形態においては、部分画像内において特定の条件を満たす画素のRGB値、または、部分画像内の全ての画素のRGB値の平均値を部分画像の色とする。
【0020】
油種に対応付けられた係数、定数及び閾値は、油種毎に予め設定された値であり、酸価測定装置4の使用に先立って行われる基礎測定の結果に基づいて決定される。この基礎測定は、酸価が異なる油脂Oの色を油種毎に測定するものであり、少なくとも同一油種の色の測定は同一の環境条件下でなされる。具体的には、同一油種については、同一の光源下において同一のカメラ特性を有するカメラによる撮像がなされる。なお、基礎測定においても、採取具2、カラーチャート3が用いられ、油脂Oとともに3つのカラーシンボルCSが撮像される。
【0021】
本実施形態に係る酸価測定装置4による酸価の算出は、RGBカラーモデルにより表現される油脂Oの色のうち、赤の値または赤と緑の値に基づいて酸価に近似する値を算出することができる、という知見に基づくものである。具体的には、Rを赤の値、Gを緑の値、Bを青の値、Tを閾値、X=2×R-G(R≧Tの場合)、X=R(R<Tの場合)、Aを負値の係数、Cを正値の定数、Yを酸価とすると、Y=AX+Cにより酸価を算出する。なお、油種によっては閾値Tを必要とせず、赤の値によらず、常時X=Rとして上述の式により酸価を算出するため、油脂Oの赤の値のみを用いて酸価を算出することができる。なお、係数A、定数C、閾値Tは油種と対応付けられて記憶装置43に予め記憶されるものとする。
【0022】
(酸価測定装置の動作)
酸価測定装置の動作について説明する。図5は、酸価測定装置の動作を示すフローチャートである。
【0023】
図5に示すように、まず、油種設定部402は、測定対象とする油脂Oの油種を設定する(S101)。ここで、油種設定部402は、タッチパネル44に少なくとも1つ以上の油種を表示し、表示された油種のうちユーザにより選択された油種を測定対象とする油脂Oの油種として設定する。
【0024】
次に、画像取得部401は、油脂Oが採取された採取具2が載置されたカラーチャート3が撮像された撮像画像IMを取得する(S102)。ここで、画像取得部401は、撮像範囲内にカラーチャート3全体を含むようにカメラ45による撮像を行うことをタッチパネル44を介してユーザに催す。
【0025】
次に、抽出部403は、画像取得部401により取得された撮像画像IMから、測定対象画像を抽出する(S103)とともに、色基準画像を抽出する(S104)。測定対象画像は油脂Oを含む部分画像であり、色基準画像は3つのカラーシンボルCSを含む部分画像である。抽出部403は、撮像画像IM中の4つのマーカーMの位置に基づいて、測定対象画像、色基準画像として抽出する画像範囲を決定する。
【0026】
次に、補正部404は、抽出部403により抽出された色基準画像に基づいて、抽出部403により抽出された測定対象画像の色を補正する(S105)。画像取得部401により取得される撮像画像IMは、基礎測定とは環境条件が異なる測定現場において撮像される可能性がある。具体的には、撮像画像IMが、基礎測定とは異なる光源下において、基礎測定とは異なるカメラ特性を有するカメラ45により撮像される可能性がある。このような環境条件の差異による測定対象画像に対する影響を低減させるため、補正部404は、測定対象として設定された油脂Oの油種に係る基礎測定において撮像された3つのカラーシンボルCSの色と、抽出部403により抽出された色基準画像とに基づいて、測定対象画像の色を補正する。
【0027】
補正部404は、RGBカラーモデルを構成する赤、青、緑のそれぞれについて、赤、青、緑に着色された3つのカラーシンボルCSのそれぞれを用いて、環境変動要因値を算出し、この環境変動要因値を測定対象画像の色を表現するRGB値それぞれに乗じることによって、測定対象画像の色の補正を行う。例えば、赤についての環境変動要因値は、基礎測定において撮像された撮像画像IMにおける赤のカラーシンボルCSのR値を色基準画像における赤のカラーシンボルCSのR値により除算することによって算出される。
【0028】
測定対象画像の色の補正後、算出部405は、油種設定部402に基づいて設定された油種に対応付けられた係数A、定数C、及び閾値Tを記憶装置43から読み出し、補正部404により補正された測定対象画像の色を表現するRGB値のうちのR値またはR値とG値とに基づいて式Y=AX+Cにより酸価を算出し(S106)、算出された酸価はタッチパネル44に表示される。
【0029】
算出部405は、油種に対応付けられた閾値Tが存在しない場合、X=Rとして酸価を算出する。また、算出部405は、油種に対応付けられた閾値Tが存在し、且つ測定対象画像のR値が閾値T以上である場合にはX=2×R-Gとして酸価を算出する。また、算出部405は、油種に対応付けられた閾値Tが存在し、且つ測定対象画像のR値が閾値T未満である場合、X=Rとして酸価を算出する。
【0030】
以上に説明したように、撮像画像IMにおける油脂Oの色に基づいて酸価を算出することによって、測定者の主観に依存することなく低コストで食用油の酸価を測定することができる。
【0031】
なお、上述した実施形態においては、酸価測定装置4がタブレット型端末として構成されるものとしたが、タブレット型端末とネットワークを介して通信可能なサーバとして構成されても良い。この場合、タブレット型端末からユーザに選択された油種と撮像画像IMがサーバに送信され、サーバが撮像画像と選択された油種に基づいて酸価を算出してタブレット型端末に送信する。また、上述した実施形態においては、RGBカラーモデルの原色の値を用いて酸価を算出するものとしたが、CYMカラーモデルの原色であるシアン、イエロー、マゼンタの少なくともいずれか1つの値と、基礎測定から得られた油種に対応する係数A、定数C、閾値Tに基づいて酸価を算出しても良い。また、撮像画像IMは、酸価測定装置4に内蔵されない外部の撮像装置により撮像されたものであっても良い。
【0032】
本発明は、その要旨または主要な特徴から逸脱することなく、他の様々な形で実施することができる。そのため、前述の実施形態は、あらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、何ら拘束されない。更に、特許請求の範囲の均等範囲に属する全ての変形、様々な改良、代替および改質は、全て本発明の範囲内のものである。
【符号の説明】
【0033】
4 酸価測定装置
401 画像取得部
402 油種設定部
404 補正部
405 算出部
図1
図2
図3
図4
図5