(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184319
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用シートのバックボードの取付構造及び車両用シート
(51)【国際特許分類】
B60N 2/64 20060101AFI20231221BHJP
A47C 7/40 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B60N2/64
A47C7/40
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098390
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000004640
【氏名又は名称】日本発條株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝部 健一
【テーマコード(参考)】
3B084
3B087
【Fターム(参考)】
3B084EC02
3B087DE01
3B087DE10
(57)【要約】
【課題】バックボードの少なくとも一部をフックやネジを用いないで取り付ける。
【解決手段】車両用シート10は、着座乗員の背部を支持するシートバック14の骨格を構成するバックフレーム16と、バックフレーム16に対してシート後方側に配置され、シートバックのシート後方側の面を構成するバックボード20と、を備えている。また、車両用シート10は、バックフレーム16とバックボード20との間に掛け渡される糸状の掛渡部34Dを有し、掛渡部34Dの長さが定められた長さに保たれることで、バックボード20がバックフレーム16に取り付けられた状態が保たれる掛渡部材34を備えている。さらに、車両用シート10は、バックボード20に取付けられ、掛渡部34Dの長さを定められた長さに保つ保持部材38を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
着座乗員の背部を支持するシートバックの骨格を構成するバックフレームと、
前記バックフレームに対してシート後方側に配置され、前記シートバックのシート後方側の面を構成するバックボードと、
前記バックフレームと前記バックボードとの間に掛け渡される糸状の掛渡部を有し、該掛渡部の長さが定められた長さに保たれることで、前記バックボードが前記バックフレームに取り付けられた状態が保たれる掛渡部材と、
前記バックボードに取付けられ、前記掛渡部の長さを定められた長さに保つ保持部材と、
を備えた車両用シートのバックボードの取付構造。
【請求項2】
前記バックボードには、前記保持部材が挿入される保持部材挿入孔が形成され、
前記保持部材は、その間に前記掛渡部の端部が配置される把持部分を備えており、
前記保持部材が前記保持部材挿入孔に挿入される際に、前記把持部分が前記掛渡部の端部側へ移動して前記掛渡部の端部を把持し、
前記保持部材の前記保持部材挿入孔への挿入が完了した状態で、前記掛渡部の長さが定められた長さに保たれる請求項1に記載の車両用シートのバックボードの取付構造。
【請求項3】
前記保持部材の前記保持部材挿入孔への挿入が完了した状態から前記保持部材を前記シートバックフレーム側へさらに押し込むと、前記把持部分が前記掛渡部の端部とは反対側へ移動する請求項2に記載の車両用シートのバックボードの取付構造。
【請求項4】
前記バックボードは、前記掛渡部の端部が係止される係止部を備えていると共に、該係止部は前記掛渡部の端部とは反対側へ撓み変形可能とされ、
前記保持部材は、該保持部材が前記バックボードに取付けられた状態において前記係止部の前記掛渡部の端部とは反対側へ撓み変形を制限する制限部を備えている請求項1に記載の車両用シートのバックボードの取付構造。
【請求項5】
前記保持部材は、一方側へ回転させられることで前記バックボードに取り付けられ、前記バックボードに取り付けられた状態から他方側へ回転させられることで該バックボードから取り外し可能とされ、
前記保持部材と前記バックボードとの間には、前記保持部材を前記バックボードとは反対側へ向けて付勢する付勢部材が設けられ、
前記保持部材が前記バックボードに取り付けられた状態から他方側へ回転させられる際に、前記保持部材が前記付勢部材の付勢力によって前記バックボードから突出する請求項4に記載の車両用シートのバックボードの取付構造。
【請求項6】
前記保持部材には、前記掛渡部材の余剰部分が巻き掛けられる余剰部分巻掛部が設けられている請求項1に記載の車両用シートのバックボードの取付構造。
【請求項7】
着座乗員の背部を支持するシートバックと、
前記シートバックの骨格を構成するバックフレームと、
前記バックフレームに対してシート後方側に配置され、前記シートバックのシート後方側の面を構成するバックボードと、
前記バックフレームと前記バックボードとの間に掛け渡される糸状の掛渡部を有し、該掛渡部の長さが定められた長さに保たれることで、前記バックボードが前記バックフレームに取り付けられた状態が保たれる掛渡部材と、
前記バックボードに取付けられ、前記掛渡部の長さを定められた長さに保つ保持部材と、
を備えた車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートのバックボードの取付構造及び車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、車両用シートのシートバックにおけるバックボードの取付構造が開示されている。この文献に記載された車両用シートは、シートバックの外枠を形成するフレームと、フレームの前面に設けたシートパッドと、シートパッドの後面を覆うバックボードと、を備えている。バックボードの上端にはフックが設けられており、このフックはフレームに係止されている。また、バックボードの下端はネジによってフレームに固定されている。これにより、バックボードがフレームに取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、バックボードが取り付けられる部分の構成等によっては、当該バックボードの少なくとも一部をフックやネジを用いないで取り付ける必要が生じることが考えられるが、上記特許文献1に記載された構成はこの点を考慮していない。
【0005】
本発明は上記事実を考慮し、バックボードの少なくとも一部をフックやネジを用いないで取り付けることができる車両用シートのバックボードの取付構造及び車両用シートを得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様の車両用シートのバックボードの取付構造は、着座乗員の背部を支持するシートバックの骨格を構成するバックフレームと、前記バックフレームに対してシート後方側に配置され、前記シートバックのシート後方側の面を構成するバックボードと、前記バックフレームと前記バックボードとの間に掛け渡される糸状の掛渡部を有し、該掛渡部の長さが定められた長さに保たれることで、前記バックボードが前記バックフレームに取り付けられた状態が保たれる掛渡部材と、前記バックボードに取付けられ、前記掛渡部の長さを定められた長さに保つ保持部材と、を備えている。
【0007】
第1の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、先ず、バックボードをバックフレームに対してシート後方側に配置した状態で、掛渡部材の掛渡部をバックフレームとバックボードとの間に掛け渡す。次に、保持部材をバックボードに取り付ける。これにより、バックボードがバックフレームに取り付けられる。このように、第1の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、バックボードの少なくとも一部をフックやネジを用いないで取り付けることができる。
【0008】
第2の態様の車両用シートのバックボードの取付構造は、第1の態様の車両用シートのバックボードの取付構造において、前記バックボードには、前記保持部材が挿入される保持部材挿入孔が形成され、前記保持部材は、その間に前記掛渡部の端部が配置される把持部分を備えており、前記保持部材が前記保持部材挿入孔に挿入される際に、前記把持部分が前記掛渡部の端部側へ移動して前記掛渡部の端部を把持し、前記保持部材の前記保持部材挿入孔への挿入が完了した状態で、前記掛渡部の長さが定められた長さに保たれる。
【0009】
第2の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、保持部材をバックボードの保持部材挿入孔に挿入することで、保持部材の把持部分が掛渡部の端部側へ移動して掛渡部の端部を把持する。そして、保持部材の保持部材挿入孔への挿入が完了した状態で、掛渡部の長さが定められた長さに保たれる。このように、第2の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、掛渡部の端部を保持部材によって直接把持することができる。
【0010】
第3の態様の車両用シートのバックボードの取付構造は、第2の態様の車両用シートのバックボードの取付構造において、前記保持部材の前記保持部材挿入孔への挿入が完了した状態から前記保持部材を前記シートバックフレーム側へさらに押し込むと、前記把持部分が前記掛渡部の端部とは反対側へ移動する。
【0011】
第3の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、保持部材の保持部材挿入孔への挿入が完了した状態から保持部材をシートバックフレーム側へさらに押し込むと、把持部分が掛渡部の端部とは反対側へ移動する。これにより、第3の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、保持部材の保持部材挿入孔への挿入が完了した状態から保持部材をシートバックフレーム側へさらに押し込むことにより、バックボードをバックフレームから取り外すことができる。
【0012】
第4の態様の車両用シートのバックボードの取付構造は、第1の態様の車両用シートのバックボードの取付構造において、前記バックボードは、前記掛渡部の端部が係止される係止部を備えていると共に、該係止部は前記掛渡部の端部とは反対側へ撓み変形可能とされ、前記保持部材は、該保持部材が前記バックボードに取付けられた状態において前記係止部の前記掛渡部の端部とは反対側へ撓み変形を制限する制限部を備えている。
【0013】
第4の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、先ず、掛渡部材の掛渡部の端部をシートバックの係止部に係止させる。次に、保持部材をバックボードに取付ける。ここで、保持部材がバックボードに取付けられた状態では、保持部材の制限部がバックボードの係止部の掛渡部の端部とは反対側へ撓み変形を制限する。このように、第4の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、掛渡部の端部をバックボードに係止させる構成を実現することができる。
【0014】
第5の態様の車両用シートのバックボードの取付構造は、第4の態様の車両用シートのバックボードの取付構造において、前記保持部材は、一方側へ回転させられることで前記バックボードに取り付けられ、前記バックボードに取り付けられた状態から他方側へ回転させられることで該バックボードから取り外し可能とされ、前記保持部材と前記バックボードとの間には、前記保持部材を前記バックボードとは反対側へ向けて付勢する付勢部材が設けられ、前記保持部材が前記バックボードに取り付けられた状態から他方側へ回転させられる際に、前記保持部材が前記付勢部材の付勢力によって前記バックボードから突出する。
【0015】
第5の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、保持部材を一方側へ回転させることで当該保持部材をバックボードに取り付けることができる。また、保持部材がバックボードに取り付けられた状態から、当該保持部材を他方側へ回転させることで、当該保持部材をバックボードから取り外すことができる。ここで、保持部材がバックボードに取り付けられた状態から他方側へ回転させられる際においては、保持部材が付勢部材の付勢力によってバックボードから突出する。これにより、保持部材をバックボードから容易に取り外すことができる。
【0016】
第6の態様の車両用シートのバックボードの取付構造は、第1の態様の車両用シートのバックボードの取付構造において、前記保持部材には、前記掛渡部材の余剰部分が巻き掛けられる余剰部分巻掛部が設けられている。
【0017】
第6の態様の車両用シートのバックボードの取付構造によれば、掛渡部材の余剰部分を保持部材の余剰部分巻掛部に巻き掛けることができる。
【0018】
第7の態様の車両用シートは、着座乗員の背部を支持するシートバックと、前記シートバックの骨格を構成するバックフレームと、前記バックフレームに対してシート後方側に配置され、前記シートバックのシート後方側の面を構成するバックボードと、前記バックフレームと前記バックボードとの間に掛け渡される糸状の掛渡部を有し、該掛渡部の長さが定められた長さに保たれることで、前記バックボードが前記バックフレームに取り付けられた状態が保たれる掛渡部材と、前記バックボードに取付けられ、前記掛渡部の長さを定められた長さに保つ保持部材と、を備えている。
【0019】
第7の態様の車両用シートによれば、先ず、バックボードをバックフレームに対してシート後方側に配置した状態で、掛渡部材の掛渡部をバックフレームとバックボードとの間に掛け渡す。次に、保持部材をバックボードに取り付ける。これにより、バックボードがバックフレームに取り付けられる。このように、第7の態様の車両用シートによれば、バックボードの少なくとも一部をフックやネジを用いないで取り付けることができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る車両用シートのバックボードの取付構造及び車両用シートは、バックボードの少なくとも一部をフックやネジを用いないで取り付けることができる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】第1実施形態の車両用シートを示す側面図である。
【
図2】シートバックを斜め後方側から見た斜視図である。
【
図3】バックボードが取り付けられる前の状態のシートバックを斜め後方側から見た斜視図である。
【
図4】バックボードを斜め後方側から見た斜視図である。
【
図7】バックボードにおいて保持部材挿入孔が形成された部分及び保持部材を上下方向及び前後方向に沿って切断した断面を示す断面図であり、保持部材の保持部材挿入孔への挿入初期の状態を示している。
【
図8】バックボードにおいて保持部材挿入孔が形成された部分及び保持部材を上下方向及び前後方向に沿って切断した断面を示す断面図であり、保持部材が保持部材挿入孔へ
図7に示された状態よりも挿入された状態を示している。
【
図9】バックボードにおいて保持部材挿入孔が形成された部分及び保持部材を上下方向及び前後方向に沿って切断した断面を示す断面図であり、保持部材が保持部材挿入孔へ
図8に示された状態よりも挿入された状態を示している。
【
図10】バックボードにおいて保持部材挿入孔が形成された部分及び保持部材を上下方向及び前後方向に沿って切断した断面を示す断面図であり、保持部材が保持部材挿入孔へ
図9に示された状態よりも挿入された状態を示している。
【
図11】他の形態の保持部材を示す
図8に示す断面図である。
【
図12】他の形態の保持部材を示す
図8に示す断面図であり、掛渡部材の余剰部分が余剰部分巻掛部に巻き掛けられた状態をしめしている。
【
図13】第2実施形態の車両用シートのバックボードにおいて保持部材挿入孔が形成された部分の断面及び保持部材等を示す斜視図である。
【
図14】バックボードにおいて保持部材挿入孔が形成された部分及び保持部材を上下方向及び前後方向に沿って切断した断面を模式的に示す断面図である。
【
図15】バックボードをバックフレームに取り付ける際の第1の工程を斜め後方側から見た斜視図である。
【
図16】バックボードをバックフレームに取り付ける際の第1の工程を斜め前方側から見た斜視図である。
【
図17】バックボードをバックフレームに取り付ける際の第1の工程を斜め前方側から見た斜視図であり、係止球が係止部に係止された状態を示している。
【
図18】バックボードをバックフレームに取り付ける際の第2の工程を斜め後方側から見た斜視図である。
【
図19】バックボードをバックフレームに取り付ける際の第2の工程を斜め後方側から見た斜視図であり、保持部材のバックボードへの取り付けが完了した状態を示している。
【
図20】バックボードのバックフレームへの取り付けが完了した状態のバックボード及び保持部材等を斜め前方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(第1実施形態)
図1~
図10を用いて、本発明の第1実施形態に係る車両用シート10について説明する。なお、図中に示す矢印FR、矢印UP、矢印RH及び矢印LHは、車両用シート10に着座した乗員から見たシート前方側、上方側、右側及び左側をそれぞれ示している。以下、単に前後、上下、左右の方向を用いて説明する場合は、特に断りのない限り、シート前後方向の前後、シート上下方向の上下、シート左右方向の左右を示すものとする。また、シート左右方向は、シート幅方向と一致している。
【0023】
図1に示されるように、本実施形態の車両用シート10は、着座乗員の臀部を下方側から支持するシートクッション12と、着座乗員の背部を後方側から支持するシートバック14と、を備えている。シートバック14はシートクッション12の後端部に支持されている。なお、
図1においては、後述する保持部材38がバックボード20に取り付けられる際の途中の状態を示している。
【0024】
図2及び
図3に示されるように、シートバック14は、当該シートバック14の骨格を構成するバックフレーム16と、バックフレーム16に取り付けられたバックトリム18と、バックフレーム16に取り付けられたバックボード20と、を備えている。
【0025】
図3に示されるように、バックフレーム16は、左右方向に間隔をあけて配置され上下方向に延びる左右一対のサイドフレーム部22を備えている。また、バックフレーム16は、左右一対のサイドフレーム部22の上端部を左右方向につなぐ上フレーム部24と、左右一対のサイドフレーム部22の下端側を左右方向につなぐ下フレーム部26と、を備えている。また、バックフレーム16は、後述する掛渡部材34が掛けられる複数のフック部28を備えている。複数のフック部28は、左右一対のサイドフレーム部22、上フレーム部24及び下フレーム部26にそれぞれ固定されている。複数のフック部28は、略U字状に形成されており、一対のサイドフレーム部22、上フレーム部24及び下フレーム部26にそれぞれ溶接で固定されている。
【0026】
バックトリム18は、定められた形状に形成されたバックパッドが表皮材30に覆われること等により形成されている。このバックトリム18においてバックフレーム16に隣接する部分には、後述する掛渡部材34が掛けられる複数の筒状部32が形成されている。複数の筒状部32は、表皮材30の一部分によって筒状に形成されている。
【0027】
ここで、バックトリム18をバックフレーム16に取り付ける工程においては、糸状に形成された掛渡部材34が用いられる。なお、掛渡部材34は、ゴム紐のように伸縮性を有するものであってもよいし、伸縮性を有していないものであってもよい。この掛渡部材34は、バックフレーム16側に設けられた複数のフック部28とバックトリム18側に設けられた複数の筒状部32との間において定められた経路で配索される。これにより、バックトリム18がバックフレーム16に取り付けられる。また、掛渡部材34の一方の端部34Aは、下フレーム部26に固定された一方のフック部28から後方側へ向けて引き出されており、掛渡部材34の他方の端部34Bは、下フレーム部26に固定された他方のフック部28から後方側へ向けて引き出されている。
【0028】
図2及び
図3に示されるように、バックボード20は、後方側から見て矩形状に形成されている。このバックボード20がバックフレーム16に後方側から取り付けられる。これにより、バックフレーム16等がバックボード20によって後方側から覆われるようになっている。なお、バックボード20は、シートバック14の後方側の面を構成する部材ともいえる。
【0029】
図2、
図4、
図5及び
図6に示されるように、バックボード20は、前述の掛渡部材34及び2つの保持部材38を用いてバックフレーム16に取り付けられる。
【0030】
図4に示されるように、バックフレーム16の下方側の部分には、2つの保持部材38がそれぞれ挿入される2つの保持部材挿入孔36が形成されている。2つの保持部材挿入孔36は左右方向に間隔をあけて配置されている。なお、2つの保持部材挿入孔36の構成は同一の構成となっている。そのため、以下においては、一方の保持部材挿入孔36の構成について説明する。また、2つの保持部材38の構成も同一の構成となっている。そのため、以下においては、一方の保持部材38の構成について説明する。
【0031】
図7に示されるように、保持部材挿入孔36の内周部は、後方側から前方側へ向かって順番に6カ所の部分を有している。ここで、保持部材挿入孔36の内周部の各部を後方側から前方側へ向かって順番に第1内周部36A、第2内周部36B、第3内周部36C、第4内周部36D、第5内周部36E及び第6内周部36Fとそれぞれ呼ぶことにする。
【0032】
第1内周部36Aは、保持部材挿入孔36の後端部を構成しており、その内周面は定められた内径に設定された円筒面状となっている。第2内周部36Bは、その内周面の内径が第1内周部36Aの内径よりも小さな内径に設定された円筒面状となっている。第3内周部36Cは、その内周面の内径が第1内周部36Aの内径とほぼ同じ内径に設定された円筒面状となっている。第4内周部36Dは、その内周面の内径が第2内周部36Bの内径とほぼ同じ内径に設定された円筒面状となっている。第5内周部36Eは、その内周面の内径が第4内周部36Dの内径よりも小さな内径に設定された円筒面状となっている。第5内周部36Eは、その内周面の内径が第1内周部36Aの内径とほぼ同じ内径に設定された円筒面状となっている。これにより、保持部材挿入孔36の内周部は、後方側から前方側へ向かって複数の段差を有する段付き形状となっている。
【0033】
図5、
図6及び
図7に示されるように、保持部材38は、円板状に形成された円板部40と、円板部40から当該円板部40の軸方向一方側へ向けて突出する複数の把持部分42と、を備えている。ここで、円板部40の軸方向一方側を矢印Zで示し、円板部40の径方向外側を矢印Rで示し、円板部40の周方向一方側を矢印Cで示すことにする。この円板部40の軸方向一方側は、保持部材38をバックボード20の保持部材挿入孔36へ挿入する方向と一致している。なお、以下の説明においては、円板部40の軸方向、円板部40の径方向及び円板部40の周方向を単に軸方向、径方向及び周方向として説明する場合がある。
【0034】
円板部40の径方向の中心部には、当該円板部40を軸方向に貫通する通過孔44が形成されている。この通過孔44には、掛渡部材34が挿通されるようになっている。また、円板部40には、径方向外側が開放された溝部46が周方向の全周に渡って形成されている。
【0035】
本実施形態の保持部材38は、4つの把持部分42を備えている。これら4つの把持部分42は、円板部40における通過孔44よりも径方向外側の部分から軸方向一方側へ向けて突出しており、周方向に沿って等間隔に配置されている。以下、把持部分42の細部の構成について説明する。
【0036】
把持部分42は、径方向を厚み方向とする板状に形成されていると共に軸方向から見て径方向外側が凸となるように湾曲している基板部42Aを備えている。この基板部42Aにおける軸方向他方側は円板部40に接続されている。なお、基板部42Aにおいて円板部40に接続される部分の厚みは、他の部分の厚みに対して薄くなっている。
【0037】
また、把持部分42は、基板部42Aから径方向内側へ向けて突出すると共に軸方向へ間隔をあけて配置された複数の把持板部42Bを備えている。本実施形態では、1つの把持部分42が3つの把持板部42Bを備えた構成となっている。把持板部42Bは、軸方向を厚み方向とする板状に形成されており、突出方向の先端部が尖った形状になっている。
【0038】
また、把持部分42は、基板部42Aの軸方向の中央部から径方向外側へ向けて突出する押圧凸部42Cを備えている。この押圧凸部42Cの突出方向先端側の面は、軸方向から見て径方向外側が凸となるように湾曲した面となっている。
【0039】
次に、バックボード20をバックフレーム16に取り付ける工程について説明する。
【0040】
図3及び
図4に示されるように、先ず、バックボード20をバックフレーム16に沿わせて配置する。この時、掛渡部材34の一方の端部34A及び他方の端部34Bをバックボード20に形成された2つの保持部材挿入孔36を通じてバックボード20の後方側に引き出した状態にする。次に、以下の手順で2つの保持部材38をバックボード20に取り付ける。なお、2つの保持部材38の取り付け工程は互いに同一の工程となるため、以下においては、一方の保持部材38をバックボード20に取り付ける工程について説明し、他方の保持部材38をバックボード20に取り付ける工程についての説明は省略する。
【0041】
図5及び
図6に示されるように、掛渡部材34の一方の端部34Aを保持部材38の4つの把持部分42の間に軸方向一方側から挿入する。また、掛渡部材34の一方の端部34Aを保持部材38の円板部40に形成された通過孔44から軸方向他方側へ引き出す。
【0042】
次に、
図7~
図9に示されるように、掛渡部材34の一方の端部34Aにおいて保持部材38の円板部40から軸方向他方側へ引き出されている余剰部分34Cを後方側へ引くことで、掛渡部材34の一方の端部34Aに張力を掛けながら、保持部材38をバックボード20の保持部材挿入孔36に挿入する。ここで、
図7に示されるように、4つの把持部分42の押圧凸部42Cが保持部材挿入孔36の第2内周部36Bを乗り越える位置まで、保持部材38を保持部材挿入孔36に挿入すると、4つの把持部分42の押圧凸部42Cと第2内周部36Bとが挿入方向に対向して配置される。これにより、保持部材38の保持部材挿入孔36からの抜け出しが抑制される。また、
図8に示されるように、4つの把持部分42の押圧凸部42Cの外周面が保持部材挿入孔36の第4内周部36Dの内周面に当接する位置まで、保持部材38を保持部材挿入孔36に挿入すると、押圧凸部42Cが保持部材挿入孔36の第4内周部36Dによって径方向内側へ向けて押圧される。これにより、4つの把持部分42が径方向内側へ向けて移動した状態となり、4つの把持部分42の各々の把持板部42Bが掛渡部材34の一方の端部34A側へ向けて付勢される。すなわち、掛渡部材34の一方の端部34Aの保持部材38への仮止め状態となる。この仮止め状態では、保持部材38を掛渡部材34の一方の端部34Aに対して動かすことができる。そして、
図9に示されるように、4つの把持部分42の押圧凸部42Cの外周面が保持部材挿入孔36の第5内周部36Eの内周面に当接する位置まで、保持部材38を保持部材挿入孔36に挿入すると、保持部材38のバックボード20への取り付けが完了する。なお、4つの把持部分42の押圧凸部42Cの外周面が保持部材挿入孔36の第5内周部36Eの内周面に当接する位置における保持部材38の位置を挿入完了位置と呼ぶことにする。保持部材38が挿入完了位置に位置している状態では、押圧凸部42Cが保持部材挿入孔36の第5内周部36Eによって径方向内側へ向けて押圧される。これにより、4つの把持部分42が径方向内側へ向けて移動した状態となり、4つの把持部分42の各々の把持板部42Bが掛渡部材34の一方の端部34Aに食い込む。
【0043】
ここで、掛渡部材34の一方の端部34Aにおいてバックフレーム16とバックボード20との間に掛け渡される部分を掛渡部34Dと呼ぶことにする。保持部材38が挿入完了位置に位置している状態では、掛渡部34Dにおけるバックボード20側の端部が4つの把持部分42によって強固に把持された状態となる。これにより、掛渡部34Dの長さが定められた長さに保たれることで、バックボード20がバックフレーム16に取り付けられた状態が保たれる。すなわち、バックボード20のバックフレーム16への取り付けが完了する。なお、掛渡部材34の一方の端部34Aにおいて保持部材38の円板部40から軸方向他方側へ引き出されている余剰部分34Cは、以上説明した工程を経た後に切断すればよい。
【0044】
このように、本実施形態では、バックボード20の少なくとも一部をフックやネジを用いないで取り付けることができる。なお、バックボード20の全体を上記のような保持部材38を用いた構成で取り付けてもよいし、バックボード20の一部をフックやネジを用いて取り付けてもよい。
【0045】
次に、バックボード20をバックフレーム16から取り外す工程について説明する。
【0046】
バックボード20をバックフレーム16から取り外す際においては、
図10に示されるように、挿入完了位置に位置している保持部材38(
図9参照)をバックボード20の保持部材挿入孔36内にさらに押し込む。これにより、押圧凸部42Cが保持部材挿入孔36の第5内周部36Eを乗り越えて、第6内周部36Fと対向して配置される。ここで、押圧凸部42Cが保持部材挿入孔36の第5内周部36Eを乗り越えると、4つの把持部分42が径方向外側へ向けて移動可能となる。その結果、4つの把持部分42が掛渡部34Dにおけるバックボード20側の端部を把持する力が無くなる或いは弱くなる。これにより、バックボード20をバックフレーム16から取り外すことができる。このように、本実施形態では、工具を用いることなくバックボード20をバックフレーム16から取り外すことができ、その結果、車両用シート10の解体性を良好にすることができる。
【0047】
なお、以上説明した本実施形態では、掛渡部材34の一方の端部34Aにおいて保持部材38の円板部40から軸方向他方側へ引き出されている余剰部分34Cを切断した例について説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、以下の構成を適用することにより、余剰部分34Cを切断しないようにしてもよい。
【0048】
図11に示された構成では、掛渡部材34の一方の端部34Aが通過する通過孔44が円板部40の溝部46内につながっている。そして、
図12に示されるように、余剰部分34Cを円板部40において溝部46の底を形成する部分に巻き掛けることにより、余剰部分34Cを切断しないようにしてもよい。なお、円板部40において溝部46の底を形成する部分は、余剰部分34Cが巻き掛けられる余剰部分巻掛部48となっている。
【0049】
(第2実施形態)
次に、
図13及び
図14を用いて、本発明の第2実施形態に係る車両用シートについて説明する。なお、第2実施形態の車両用シートにおいて前述の第1実施形態の車両用シート10と対応する部材及び部分には、第1実施形態の車両用シート10と対応する部材及び部分と同じ符号を付して、その説明を省略することがある。
【0050】
図13及び
図14に示されるように、本実施形態の車両用シートでは、掛渡部材34の掛渡部34Dにおけるバックボード20側の端部が、バックボード20に係止されることに特徴がある。なお、
図14においては、断面のハッチングを省略している。
【0051】
掛渡部材34の掛渡部34Dにおけるバックボード20側の端部には、球状に形成された係止球50が固定されている。なお、この係止球50は、一例として樹脂材料や金属材料を用いて形成されている。また、係止球50における掛渡部34Dとは反対側の端部からは余剰部分34Cが延出している。
【0052】
バックボード20における保持部材挿入孔36の内周部には、係止球50が係止される複数の係止部52が設けられている。なお、本実施形態では、4つの係止部52が設けられており、これら4つの係止部52は周方向に沿って等間隔に配置されている。以下、係止部52の細部の構成について説明する。
【0053】
係止部52は、保持部材挿入孔36の内周面から径方向内側へ向けて突出する脚部52Aと、脚部52Aにおける径方向内側の端から軸方向一方側へ向けて延びる撓み部52Bと、撓み部52Bにおける軸方向一方側の端部から径方向内側へ向けて突出する係止凸部52Cと、を備えている。そして、前述の係止球50が4つの係止部52へ軸方向一方側から挿入されて、係止球50が4つの係止部52の係止凸部52Cを乗り越える際に、4つの係止部52の撓み部52Bが径方向外側へ撓み変形するようになっている。
【0054】
また、バックボード20における保持部材挿入孔36の内周部には、保持部材38の一部が係止されることで、当該保持部材38がバックボード20から外れることを防止する保持部材係止部54が形成されている。
【0055】
保持部材38は、4つの制限部56を備えている。これら4つの制限部56は、円板部40から軸方向一方側へ向けて突出しており、周方向に沿って等間隔に配置されている。
【0056】
保持部材38の4つの制限部56の外周側には、付勢部材としてのコイルバネ58が配置されている。このコイルバネ58は、保持部材38がバックボード20に取り付けられた状態において保持部材38とバックボード20との間で圧縮されるようになっている。
【0057】
次に、バックボード20をバックフレーム16に取り付ける工程について説明する。
【0058】
図15及び
図16に示されるように、先ず、掛渡部材34の余剰部分34Cをバックボード20に形成された保持部材挿入孔36を通じてバックボード20の後方側に引き出した状態にする。また、バックボード20の後方側に引き出した余剰部分34Cを保持部材38の円板部40に形成された通過孔44(
図11参照)に通す。
【0059】
次に、余剰部分34Cを後方側へ引くことで、掛渡部材34に張力を掛けながら、バックボード20を前方側へ移動させる。バックボード20を前方側へ移動させると、
図17に示されるように、係止球50がバックボード20の4つの係止部52へ軸方向一方側から挿入される。そして、係止球50が4つの係止部52の撓み部52Bの径方向内側に配置される。
【0060】
次に、
図18に示されるように、保持部材38をバックボード20の保持部材挿入孔36に挿入する。この時、バックボード20と保持部材38との間から延出している余剰部分34Cを余剰部分巻掛部48(
図14参照)に巻き掛ける。そして、
図19に示されるように、保持部材38をバックボード20の保持部材挿入孔36にさらに挿入して、保持部材38を周方向一方側(矢印C方向側)へ回転させる。これにより、保持部材38の一部が保持部材係止部54(
図13参照)に係止されて、保持部材38のバックボード20への取り付けが完了する。
【0061】
ここで、保持部材38のバックボード20への取り付けが完了した状態では、
図20に示されるように、保持部材38の4つの制限部56が、バックボード20の4つの係止部52の撓み部52Bの径方向外側の面に沿ってそれぞれ配置される。これにより、4つの係止部52の撓み部52Bの径方向外側への変形が保持部材38の4つの制限部56によって制限される。その結果、係止球50が4つの係止部52から抜け出すことが不能となり、掛渡部材34の掛渡部34Dの長さが定められた長さに保たれる。これにより、バックボード20がバックフレーム16に取り付けられた状態が保たれる。すなわち、バックボード20のバックフレーム16への取り付けが完了する。
【0062】
このように、本実施形態においても、バックボード20の少なくとも一部をフックやネジを用いないで取り付けることができる。
【0063】
次に、バックボード20をバックフレーム16から取り外す工程について説明する。
【0064】
バックボード20をバックフレーム16から取り外す際においては、保持部材38を
図19に示された状態から周方向他方側(矢印C方向とは反対側)へ回転させる。これにより、保持部材38の一部が保持部材係止部54(
図13参照)から外れる。保持部材38の一部が保持部材係止部54から外れると、コイルバネ58(
図13参照)の付勢力によって、保持部材38の円板部40がバックボード20の後面から突出する。これにより、保持部材38をバックボード20から容易に取り外すことができる。
【0065】
保持部材38をバックボード20から取り外した状態では、係止球50が4つの係止部52から抜け出すことが可能となる。この状態で、バックボード20をバックフレーム16に対して後方側へ移動させることで、バックボード20をバックフレーム16から取り外すことができる。
【0066】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0067】
10 車両用シート
14 シートバック
16 バックフレーム
20 バックボード
34 掛渡部材
34C 余剰部分
34D 掛渡部
36 保持部材挿入孔
38 保持部材
42 把持部分
48 余剰部分巻掛部
52 係止部
56 制限部
58 コイルバネ(付勢部材)