(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184324
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】シフト装置
(51)【国際特許分類】
B60K 20/02 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B60K20/02 A
B60K20/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098395
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 遥貴
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 一博
【テーマコード(参考)】
3D040
【Fターム(参考)】
3D040AA03
3D040AA24
3D040AA33
3D040AB01
3D040AC17
3D040AC36
3D040AC65
3D040AD04
3D040AF07
(57)【要約】
【課題】節度感付与のための構造部を節度部材の案内方向において小型化することが可能なシフト装置を得る。
【解決手段】シフトレバー20が移動されて、シフトレバー20のシフト位置が変更される。また、節度部材40が付勢されて節度面54に当接する節度機構28は、シフトレバー20が移動操作される際に、シフトレバー20の移動に伴って節度部材40が移動すると共に、シフトレバー20に節度感を付与する。節度部材40を節度面54側に案内するガイド挿入部38は、節度面54と対向しない位置に配置されている。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、
節度部材と、前記節度部材が付勢されて当接する節度面と、を有し、前記シフト体が移動操作される際に、前記節度部材及び前記節度面のうちの一方が前記シフト体の移動に伴って移動すると共に、前記シフト体に節度感を付与する節度機構と、
前記節度部材を前記節度面側に案内し、前記節度面と対向しない位置に配置されたガイド部と、
を備えるシフト装置。
【請求項2】
前記ガイド部は、前記節度面の対向側から見て前記節度面に対して両側方側にオフセットする位置に一対で設けられている、請求項1に記載のシフト装置。
【請求項3】
前記ガイド部は、前記節度部材側から挿入可能に形成されて前記節度部材を案内する方向に延在するガイド挿入部とされ、
前記節度部材は、前記ガイド挿入部によって案内される方向に延在して前記ガイド挿入部に挿入された被案内部を有する、請求項1又は請求項2に記載のシフト装置。
【請求項4】
前記ガイド挿入部は、案内方向側の先端部が開放されると共に、前記案内方向側とは反対側の部分において前記被案内部が挿入される第一構成部の幅をその他の部分において前記被案内部が挿入される第二構成部の幅よりも小さくさせる段差部が形成されている、請求項3に記載のシフト装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シフト体が移動されてシフト体のシフト位置が変更されるシフト装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載のAT用シフト節度設定装置では、節度ピン(節度部材)は、シフトレバーアッシーに形成されるガイド孔にスライド自在に嵌挿され、節度ピンの底面とガイド孔の底面間に装着されるばね部材により常時付勢される。
【0003】
ここで、この装置では、節度ピンを案内する部分が節度ピン当接面(節度面)と対向する位置で節度ピン当接面と当接しないように設定されており、節度感付与のための構造部を節度ピンの案内方向において小型化する点からは改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記事実を考慮して、節度感付与のための構造部を節度部材の案内方向において小型化することが可能なシフト装置を得ることが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1態様のシフト装置は、移動されてシフト位置が変更されるシフト体と、節度部材と、前記節度部材が付勢されて当接する節度面と、を有し、前記シフト体が移動操作される際に、前記節度部材及び前記節度面のうちの一方が前記シフト体の移動に伴って移動すると共に、前記シフト体に節度感を付与する節度機構と、前記節度部材を前記節度面側に案内し、前記節度面と対向しない位置に配置されたガイド部と、を備える。
【0007】
本発明の第2態様のシフト装置は、本発明の第1態様のシフト装置において、前記ガイド部は、前記節度面の対向側から見て前記節度面に対して両側方側にオフセットする位置に一対で設けられている。
【0008】
本発明の第3態様のシフト装置は、本発明の第1態様又は第2態様のシフト装置において、前記ガイド部は、前記節度部材側から挿入可能に形成されて前記節度部材を案内する方向に延在するガイド挿入部とされ、前記節度部材は、前記ガイド挿入部によって案内される方向に延在して前記ガイド挿入部に挿入された被案内部を有する。
【0009】
本発明の第4態様のシフト装置は、本発明の第3態様のシフト装置において、前記ガイド挿入部は、案内方向側の先端部が開放されると共に、前記案内方向側とは反対側の部分において前記被案内部が挿入される第一構成部の幅をその他の部分において前記被案内部が挿入される第二構成部の幅よりも小さくさせる段差部が形成されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明の第1態様のシフト装置では、シフト体が移動されて、シフト体のシフト位置が変更される。また、節度部材が付勢力されて節度面に当接する節度機構は、シフト体が移動操作される際に、節度部材及び節度面のうちの一方がシフト体の移動に伴って移動すると共に、シフト体に節度感を付与する。
【0011】
ここで、節度部材を節度面側に案内するガイド部が、節度面と対向しない位置に配置されている。このため、例えば節度部材を案内するガイド部が節度面と対向する位置に配置されているような対比構造と比べて、節度感付与のための構造部を節度部材の案内方向において小型化することが可能になる。
【0012】
本発明の第2態様のシフト装置では、ガイド部が節度面の対向側から見て節度面に対して両側方側にオフセットする位置に一対で設けられている。このため、一対のガイド部が節度部材を節度面側に安定的に案内することができる。
【0013】
本発明の第3態様のシフト装置では、ガイド部としてのガイド挿入部が、節度部材側から挿入可能に形成されて節度部材を案内する方向に延在すると共に、節度部材の被案内部が、ガイド挿入部によって案内される方向に延在してガイド挿入部に挿入されている。このため、ガイド挿入部に案内される節度部材のガタツキが抑制される。
【0014】
本発明の第4態様のシフト装置では、ガイド挿入部は、案内方向側の先端部が開放されている。また、ガイド挿入部には、前記案内方向側とは反対側の部分において被案内部が挿入される第一構成部の幅をその他の部分において被案内部が挿入される第二構成部の幅よりも小さくさせる段差部が形成されている。このため、第一構成部及び第二構成部を形成するための成形金型の抜き勾配による第一構成部及び第二構成部の幅寸法の拡大をそれぞれ小さくでき、第一構成部及び第二構成部に対する被案内部のガタツキを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の第1実施形態に係るシフト装置を示す左後方側かつ斜め上方側から見た斜視図である。
【
図2】本発明の第1実施形態に係るシフト装置の構成部の一部を示す左後方側かつ斜め上方側から見た分解斜視図である。
【
図3】本発明の第1実施形態に係るシフト装置におけるレバー本体の下部及びその周囲部を示す右後方側かつ斜め上方側から見た斜視図である。
【
図4】
図3に示す構成部において節度用プレートを下方側に分離して示す斜視図である。
【
図5】本発明の第1実施形態に係るシフト装置におけるシフトレバーが初期位置にある状態でのシフト装置内部を左右方向に沿って切断した状態で示す縦断面図である。
【
図6】本発明の第1実施形態に係るシフト装置におけるシフトレバーが操作された状態でのシフト装置内部を左右方向に沿って切断した状態で示す縦断面図である。
【
図7】本発明の第1実施形態に係るシフト装置におけるシフトレバーが初期位置にある状態でのシフト装置内部を前後方向に沿って切断した状態で示す縦断面図である。
【
図8】本発明の第1実施形態に係るシフト装置におけるシフトレバーが操作された状態でのシフト装置内部を前後方向に沿って切断した状態で示す縦断面図である。
【
図9】本発明の第1実施形態に係るシフト装置における節度部材を示す斜視図である。
【
図10】本発明の第1実施形態に係るシフト装置におけるレバー本体の被装着部を下方側から見た底面図である。
【
図11】本発明の第2実施形態に係るシフト装置を示す左後方側かつ斜め上方側から斜視図である。
【
図12】本発明の第2実施形態に係るシフト装置の構成部の一部を示す左後方側かつ斜め上方側から見た分解斜視図である。
【
図13】本発明の第2実施形態に係るシフト装置におけるノブを斜め下方側から見た斜視図である。
【
図14】本発明の第2実施形態に係るシフト装置において節度部材が装着された筐体上部の一部を左後方側かつ斜め上方側から見た斜視図である。
【
図15】本発明の第2実施形態に係るシフト装置における筐体上部の被装着部にばね及び節度部材が装着される前の状態を拡大して後斜め上方側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1実施形態]
図1には、本発明の第1実施形態に係るシフト装置10が左後方側かつ斜め上方側から見た斜視図で示されている。また、
図2には、シフト装置10の構成部の一部が左後方側かつ斜め上方側から見た分解斜視図で示されている。なお、図面では、シフト装置10の前方を矢印FRで示し、シフト装置10の左方を矢印LHで示し、シフト装置10の上方を矢印UPで示している。
【0017】
図1に示す本実施形態に係るシフト装置10は、所謂シフトバイワイヤタイプのものであり、一例として車両(自動車)のコンソール(図示省略)に設置されて、車両の運転席(図示省略)の車両前側かつ車幅方向内側に配置されている。シフト装置10の前方、左方及び上方は、車両の前方、左方及び上方に向けられている。
【0018】
図1及び
図2に示す如く、シフト装置10は、アッパケース12を備えている。アッパケース12は、外郭部12Aを含んで構成されている。アッパケース12の外郭部12Aの下方側は、
図2に示すロアケース14によって塞がれている。また、アッパケース12の平面視における中央部は、上下方向に貫通形成された貫通部12Cとされている。さらに、アッパケース12において貫通部12Cの左右両側には、上側に突出した軸受部12Dが形成されている。左右一対の軸受部12Dには、それぞれ挿通孔12Hが左右方向に貫通形成されている。
【0019】
図1に示す如く、アッパケース12の外郭部12Aの上端部には、板状のカバー部材16が固定されている。カバー部材16は、外郭部12Aの上端部の開口部12B(
図2参照)を上側から閉鎖するように配置されている。カバー部材16の上面は意匠面とされている。カバー部材16の左側部分には、前後方向を長手方向とする略矩形状の第一挿通孔16Lが上下方向に貫通して形成されている。カバー部材16の左右方向の中央部には、左右方向を長手方向とする略矩形状の第二挿通孔16Aが上下方向に貫通して形成されている。カバー部材16の右側部分には、前後方向を長手方向とする略矩形状の第三挿通孔16Rが上下方向に貫通して形成されている。
【0020】
第一挿通孔16Lには、押圧操作可能なPスイッチ(パーキングスイッチ)18が配置されている。また、第三挿通孔16Rには、押圧操作可能なハザードスイッチ19が配置されている。Pスイッチ18及びハザードスイッチ19については詳細説明を省略する。
【0021】
第二挿通孔16Aには、シフト体としてのシフトレバー20が挿通されている。シフトレバー20は、アッパケース12の内部から突出すると共に左右方向の軸線周りに回動(移動)されてシフト位置が変更される。すなわち、シフトレバー20は、車両の乗員(特に運転手)によって前後方向に回動操作可能にされ、前側から後側に向けて、シフト位置としての「R」位置(リバース位置)、「N」位置(ニュートラル位置)、及び「D」位置(ドライブ位置)に回動操作可能にされている。
【0022】
シフトレバー20における先端部側はノブ22によって構成されている。ノブ22は、
図2に示すレバー本体24に固定されている。レバー本体24は、樹脂製とされてアッパケース12の貫通部12Cの中に設けられ、レバー本体24の上部は、ノブ22の内側に配置されている。また、ノブ22の基端部及びレバー本体24の上部には、これらを左右方向に貫通する図示しない回動軸が固定される。この回動軸は、左右一対の軸受部12Dの各挿通孔12Hに回転自在に挿通されて、軸受部12Dによって回動可能に支持される。
【0023】
図3には、レバー本体24の下部及びその周囲部が右後方側かつ斜め上方側から見た斜視図で示されている。また、
図4には、
図3に示す構成部の一部を下方側に分離した状態の斜視図が示されている。
図3及び
図4に示す如く、レバー本体24の下部には、他部材が装着される被装着部30が設けられている。
【0024】
図5には、シフトレバー20が初期位置にある状態(
図1に示す状態)でのシフト装置10の内部を左右方向に沿って切断した状態の縦断面図が示されている。なお、
図5では、便宜上、シフトレバー20は断面形状でなく背面視の形状が図示されている(
図6も同様)。
図5に示す如く、被装着部30は、上側に凹んでレバー本体24の下方側に開放された挿入穴32を備えている。
図10には、レバー本体24の被装着部30を下方側から見た底面図が示されている。
図10に示す如く、挿入穴32の下端側開口端32Aは、一部欠損しているものの全体として見ると略円状に形成されている。なお、
図5では、挿入穴32の下端側開口端32Aの一部を点線(隠れ線)で示している。
【0025】
図5に示す如く、挿入穴32の内側の上端側は横壁部34によって構成されている。また、
図4及び
図5に示す如く、被装着部30は、挿入穴32の下端部の左右両サイド側から垂下された一対の垂下部36を備えている。挿入穴32の左右両サイドから垂下部36にかけては、詳細後述するガイド部としてのガイド挿入部38(
図7参照)が形成されている。
【0026】
図5に示す如く、挿入穴32の内側には、節度機構28の一部を構成する節度部材40が配置されている。なお、
図5では、節度部材40は、断面形状ではなく背面視の形状が図示されている(
図6も同様)。節度部材40の一部は、左右一対の垂下部36の間に配置されている。
【0027】
図9には、節度部材40の単品が斜視図で示されている。
図9に示す如く、節度部材40は筒状部42を備えている。筒状部42は、上下方向を筒軸方向として配置される。筒状部42の上端部には開口部42Aが形成されている。また、筒状部42の下端部側の内部には、ばね着座用の座部42Bが形成されている。
図5に示す如く、レバー本体24の横壁部34と筒状部42の座部42Bとの間には、節度機構28の一部を構成するばね48が配置されている。ばね48は、圧縮コイルスプリングとされ、節度部材40を下方側に付勢している。なお、
図10に示す如く、横壁部34の中央部には、ばね48(
図5参照)の上端部側に挿込まれるばね保持用の凸部35が下方側(図中手前側)へ向けて突出形成されている。
【0028】
図9に示す如く、節度部材40は、筒状部42の下端部から下方側に突出される突出部44を備えている。突出部44の下面は凸状に湾曲されている。また、節度部材40は、筒状部42の両サイドから突出部44における下部以外の両サイドにかけての部位から張出した一対の被案内部46を有している。被案内部46については詳細後述する。
【0029】
図3及び
図4に示す如く、レバー本体24の下方側には、節度機構28の一部を構成する節度面54を備えた節度用プレート50が設けられている。節度用プレート50は、ロアケース14(
図2参照)に固定されている。
図4に示す如く、節度用プレート50の左右方向中央部には、平面視で前後方向に延在するスロープ台部(「節度山」ともいう)52が形成されている。また、節度用プレート50の外周部には、上方側に立ち上がった立壁部56が形成されている。また、節度用プレート50においてスロープ台部52に対して左右両側方側でかつ立壁部56よりも内側の部分58は、スロープ台部52の前部及び後部よりも上面側が低く設定されている。
【0030】
スロープ台部52の上面部は、節度面54とされている。節度面54は、前後方向中央部へ向けて下方側に傾斜しており、節度面54の前後方向中央部は、底部54A(下端部)になっている。節度面54の底部54Aは、節度面54の前端部側の部位54F及び後端部側の部位54Rよりも、シフトレバー20(
図1参照)の回動中心から遠い位置に設定されている。なお、
図6に示す如く、前述した節度部材40の筒状部42は、その左右方向中間部がスロープ台部52と対向しており、ばね48の直径は、スロープ台部52の幅と概ね同等に設定されている。
【0031】
図5に示す如く、節度部材40は、ばね48によって付勢されて節度面54に突出部44が当接するようになっている。そして、節度機構28は、シフトレバー20が移動操作される際に、節度部材40がシフトレバー20の移動に伴って移動すると共に、シフトレバー20に節度感を付与するように構成されている。
【0032】
次に、節度部材40に形成された被案内部46及びレバー本体24の被装着部30に形成されたガイド挿入部38について詳細に説明する。
【0033】
図7には、シフトレバー20が初期位置にある状態を前後方向に沿って切断した状態でのシフト装置10の内部の縦断面図が示され、
図8には、シフトレバー20が操作された状態を前後方向に沿って切断した状態でのシフト装置10の内部の縦断面図が示されている。なお、
図7及び
図8では、便宜上、シフトレバー20は断面形状でなく左側面視の形状が図示されている。また、
図6には、シフトレバー20が操作された状態(
図8と同様の状態)を左右方向に沿って切断した状態でのシフト装置10の内部の縦断面図が示されている。
図5~
図8に示す如く、レバー本体24の被装着部30に形成されたガイド挿入部38は、節度部材40を節度面54側に案内する部分とされる。このガイド挿入部38は、節度部材40側から挿入可能に溝状に形成されて(
図10参照)、節度部材40を案内する方向に延在している。
図10に示す如く、ガイド挿入部38の底面視での形状は、矩形凹状とされている。一方、
図7に示す如く、節度部材40の被案内部46は、ガイド挿入部38によって案内される方向に延在してガイド挿入部38に挿入されており、ガイド挿入部38を摺動するように構成されている。また、被案内部46の下部46Aの前後方向寸法は、被案内部46の下部以外の部分46Bの前後方向寸法よりも大きく設定されている(
図9参照)。
【0034】
図5及び
図6に示す如く、ガイド挿入部38は、節度面54と対向しない位置に配置されている。より詳細に説明すると、ガイド挿入部38は、節度面54の対向側から見て節度面54に対して両側方側にオフセットする位置に一対で設けられている。このような構成にするために、
図3に示す如く、レバー本体24の被装着部30における一対の垂下部36同士の対向間隔は、スロープ台部52の幅よりも大きく設定され、一対の垂下部36はスロープ台部52と対向しない位置に配置されている。
【0035】
図10に示す如く、一対のガイド挿入部38は、互いに対向する位置に設けられて、左右対称に形成されている。また、
図7に示す如く、ガイド挿入部38は、案内方向側の先端部38Aが下方側に開放されている。
図7の部分拡大図に示す如く、ガイド挿入部38には、その案内方向側とは反対側の部分において被案内部46が挿入される第一構成部38Bの幅をその他の部分において被案内部46が挿入される第二構成部38Cの幅よりも小さくさせる段差部38Dが形成されている。段差部38Dは、前後の両側に一対で設けられている。
【0036】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0037】
以上の構成の
図1に示すシフト装置10では、シフトレバー20が移動されて、シフトレバー20のシフト位置が変更される。また、
図7及び
図8に示す如く、節度部材40が付勢されて節度面54に当接する節度機構28は、シフトレバー20が移動操作される際に、シフトレバー20の移動に伴って節度部材40が移動すると共に、シフトレバー20に節度感を付与する。
【0038】
ここで、
図5に示す如く、節度部材40を節度面54側に案内するガイド挿入部38は、節度面54と対向しない位置に配置されている。このため、例えば節度部材を案内するガイド部が節度面と対向する位置に配置されているような対比構造と比べて、節度感付与のための構造部を節度部材40の案内方向において小型化することが可能になる。
【0039】
この点について説明すると、前記対比構造では、ガイド部と節度面との当接を避けるためにガイド部の案内方向側の先端部を節度面から所定量離間させる必要がある。また、節度部材のガタツキを抑える必要があるためガイド部と節度部材とが接する案内方向の長さ(ガイド長)を短くすることは難しい。これらにより、前記対比構造においては、節度感付与のための構造部の体格を節度部材の案内方向において小型化することが困難である。これに対して、本実施形態のシフト装置10では、ガイド挿入部38が節度面54と対向していないので、ガイド挿入部38の高さ位置を節度面54の高さ位置を考慮して高くする必要がないので、節度感付与のための構造部の体格を節度部材40の案内方向において小型化(言い換えれば省スペース化)することが可能になる。
【0040】
なお、本実施形態では、
図8に示す如くシフトレバー20を操作した場合にガイド挿入部38の案内方向側の先端部38Aは、スロープ台部52の側方側に配置される。このように配置される構成にすることで、ガイド挿入部38の高さ位置が下げられ、節度感付与のための構造部が節度部材40の案内方向において小型化される。
【0041】
また、
図5に示す如く、シフト装置10では、ガイド挿入部38は、節度面54の対向側から見て節度面54に対して両側方側にオフセットする位置に一対で設けられている。このため、一対のガイド挿入部38が節度部材40を節度面54側に安定的に案内することができる。
【0042】
また、
図3に示す如く、樹脂製のレバー本体24の被装着部30において一対の垂下部36の間は空間となっており、一対の垂下部36のサイズは抑えられている。このため、熱及び吸水の少なくとも一方によって一対の垂下部36の寸法が変化したとしても、その変化量は小さく抑えられる。したがって、レバー本体24の被装着部30の寸法精度を高くすることひいてレバー本体24の製品精度を高くすることができる。
【0043】
また、
図5及び
図7に示す如く、シフト装置10では、ガイド挿入部38が、節度部材40側から挿入可能に形成されて節度部材40を案内する方向に延在すると共に、節度部材40の被案内部46が、ガイド挿入部38によって案内される方向に延在してガイド挿入部38に挿入されている。このため、ガイド挿入部38に案内される節度部材40のガタツキが抑制されると共に、耐久性を確保することが可能となっている。
【0044】
さらに、このシフト装置10では、
図7に示す如く、ガイド挿入部38は、案内方向側の先端部38Aが開放されている。また、
図7の部分拡大図に示す如く、ガイド挿入部38には、その案内方向側とは反対側の部分において被案内部46が挿入される第一構成部38Bの幅をその他の部分において被案内部46が挿入される第二構成部38Cの幅よりも小さくさせる段差部38Dが形成されている。このため、第一構成部38B及び第二構成部38Cを形成するための成形金型の抜き勾配による第一構成部38B及び第二構成部38Cの幅寸法(前後方向寸法)の拡大をそれぞれ小さくでき、第一構成部38B及び第二構成部38Cに対する被案内部46の前後方向へのガタツキを抑制できて、被装着部30に対する節度部材40の前後方向へのガタツキを抑制できる。
【0045】
なお、このシフト装置では、
図6に示す如く、節度部材40の筒状部42は、その左右方向中間部がスロープ台部52と対向しており、ばね48の直径は、スロープ台部52の幅と概ね同等に設定されているので、節度機構28はシフトレバー20に対して十分な荷重を作用させることができる。
【0046】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るシフト装置60について、
図11~
図15を用いて説明する。なお、第2実施形態において第1実施形態と実質的に同様の構成部については、同一符号を付して適宜説明を省略する。
【0047】
図11には、本発明の第2実施形態に係るシフト装置60が左後方側かつ斜め上方側から見た斜視図で示されている。また、
図12には、シフト装置60の構成部の一部が左後方側かつ斜め上方側から見た分解斜視図で示されている。なお、図面では、シフト装置60の前方を矢印FRで示し、シフト装置60の左方を矢印LHで示し、シフト装置60の上方を矢印UPで示している。
【0048】
図11に示すシフト装置60は、所謂シフトバイワイヤタイプのものであり、一例として車両(自動車)のコンソール(図示省略)に設置されて、車両の運転席(図示省略)の車両前側かつ車幅方向内側に配置されている。シフト装置60の前方、左方及び上方は、車両の前方、左方及び上方に向けられている。
【0049】
図11及び
図12に示す如く、シフト装置60は、樹脂製の筐体62を備えている。
図11に示す如く、筐体62の前部から前後方向中間部にかけての上側には、第一カバー部材64が固定され、筐体62の後部上側には、第二カバー部材66が固定されている。第一カバー部材64の上壁部64Aには円形状の挿通孔64Bが上下方向に貫通して形成されている。
【0050】
挿通孔64Bには、略円柱状の外形を有するシフト体としてのノブ70が挿通されている。ノブ70は、その中心軸方向を上下方向として配置されて筐体62側に支持され、上下方向の軸線周りに回転(移動)されて(矢印A及び矢印B参照)シフト位置が変更される。すなわち、ノブ70は、車両の乗員(特に運転手)によって回転されて、シフト位置としての「P」位置(パーキング位置)、「R」位置(リバース位置)、「N」位置(ニュートラル位置)、「D」位置(ドライブ位置)に配置可能にされている。
【0051】
図13には、ノブ70を斜め下方側から見た斜視図が示されている。
図13に示す如く、ノブ70は、底面視で環状に形成された環状下壁部72を備えている。環状下壁部72は、ノブ70の下部における外周端部から内方側へ所定長さだけ延出された部分とされる。環状下壁部72の内周端部の一部からは下方側へ突出された節度用突出部(「節度山」ともいう)76が形成されている。節度用突出部76は、底面視で円弧状に形成されている。節度用突出部76の下面は、節度機構74の一部を構成する節度面78とされている。節度面78は、凹凸状に形成されている。節度面78の凹凸形状は、ノブ70のシフト位置に合わせて形成されている。
【0052】
図14には、節度部材40が装着された筐体62の上部の一部を左後方側かつ斜め上方側から見た斜視図が示されている。
図14に示す節度部材40は、第1実施形態の節度部材40(
図4等参照)と同様の部材であるが、第1実施形態とは上下が逆に配置されている。また、
図14に示す節度部材40は、上下方向に移動可能にされ、一例として、一対の被案内部46が前後方向の前側及び後側になるように配置されている。
【0053】
節度部材40の筒状部42内には、ばね48(
図12参照)が上側から挿入されて配置されている。節度部材40及びばね48(
図12参照)は、それぞれ節度機構74の一部を構成し、筐体62に形成された被装着部80に装着されている。
【0054】
図15には、ばね48及び節度部材40(いずれも
図12参照)が装着される前の状態の被装着部80を拡大して後斜め上方側から見た斜視図が示されている。
図15に示す如く、被装着部80は、上方側に略筒状に延出されて上方側に開放された収容筒82を備えている。収容筒82の上端側開口端82Aは、全体として見ると略円状に形成されている。収容筒82における前壁部82F及び後壁部82Zは、収容筒82における円弧状の左壁部82L及び円弧状の右壁部82Rよりも上方側への延出長さが長い。収容筒82における前壁部82F及び後壁部82Zの各上部は、前後方向に見て、上方側へ向けて先細り状に形成されている。収容筒82の内側の下端部は底壁部84によって繋がれている。底壁部84は、ばね48(
図12参照)の着座部となる。底壁部84の中央部には、ばね48(
図12参照)の下端部側に挿込まれるばね保持用の凸部85が突出形成されている。
【0055】
図12に示すばね48は、節度部材40の筒状部42の内部の座部(図示省略)と、
図15に示す被装着部80の底壁部84との間に介在され、
図14に示す節度部材40を上方側に付勢する。節度部材40は、ばね48(
図12参照)によって付勢されて突出部44が
図13に示す節度面78に当接するようになっている。
図13では、節度面78に当接する節度部材40の一例を簡略化して二点鎖線で示す。なお、
図13に示す如く、節度部材40の筒状部42は、一対の被案内部46が並ぶ方向における中間部が節度用突出部76と対向している。節度機構74は、ノブ70が回転操作(移動操作)される際に、節度面78がノブ70の回転(移動)に伴って回転(移動)すると共に、節度部材40が節度面78の凸部分を乗越えることで、ノブ70に節度感を付与するように構成されている。
【0056】
図15に示す如く、収容筒82における前壁部82F及び後壁部82Zの互いの対向面には、ガイド部としてのガイド挿入部88が形成されている。ガイド挿入部88は、節度部材40(
図14参照)を節度面(
図13参照)側に案内する部分とされる。このガイド挿入部88は、節度部材40(
図14参照)側から挿入可能に溝状に形成されて節度部材40(
図14参照)を案内する方向に延在している。ガイド挿入部88の底面視での形状は、矩形凹状とされている。
図14に示す如く、ガイド挿入部88には節度部材40の被案内部46が挿入されている。被案内部46は、ガイド挿入部88によって案内される方向に延在しており、ガイド挿入部88を摺動するように構成されている。
【0057】
ガイド挿入部88は、節度面78(
図13参照)と対向しない位置に配置されている。より詳細に説明すると、ガイド挿入部88は、節度面78(
図13参照)の対向側から見て節度面78に対して両側方側にオフセットする位置に一対で設けられている。このような構成にするために、
図15に示す被装着部80の前壁部82Fと後壁部82Zとの対向間隔は、節度用突出部76(
図13参照)の幅よりも大きく設定され、前壁部82F及び後壁部82Zは節度用突出部76(
図13参照)と対向しない位置に配置されている。
【0058】
また、ガイド挿入部88は、案内方向側(本実施形態では上方向側)の先端部88Aが開放されている。さらに、
図15の部分拡大図に示す如く、ガイド挿入部88には、その案内方向側とは反対側(本実施形態では下方向側)の部分において被案内部46(
図14参照)が挿入される第一構成部88Bの幅をその他の部分において被案内部46(
図14参照)が挿入される第二構成部88Cの幅よりも小さくさせる段差部88Dが形成されている。段差部88Dは、左右一対で設けられている。
【0059】
次に、本実施形態の作用を説明する。
【0060】
以上の構成の
図11に示すシフト装置60では、ノブ70が回転(移動)されて、ノブ70のシフト位置が変更される。また、
図13に示す節度部材40が付勢されて節度面78に当接する節度機構74は、ノブ70が回転操作(移動操作)される際に、ノブ70の回転(移動)に伴って節度面78が回転(移動)すると共に、節度部材40が節度面78の凸部分を乗越えることで、ノブ70に節度感を付与する。
【0061】
ここで、節度部材40を節度面78側に案内する
図14に示すガイド挿入部88は、節度面78(
図13参照)と対向しない位置に配置されている。このため、例えば節度部材を案内するガイド部が節度面と対向する位置に配置されているような対比構造と比べて、節度感付与のための構造部を節度部材40の案内方向において小型化することが可能になる。
【0062】
また、本実施形態では、ガイド挿入部88は、
図13に示す節度面78の対向側から見て節度面78に対して両側方側にオフセットする位置に一対で設けられている。このため、一対のガイド挿入部88(
図14参照)が節度部材40を節度面78側に安定的に案内することができる。
【0063】
また、
図15に示す如く、樹脂製の筐体62の収容筒82において前壁部82F及び後壁部82Zの各上側突出部分(左壁部82L及び右壁部82Rよりも突出している部分)同士の間は空間となっており、当該上側突出部のサイズは抑えられている。このため、熱及び吸水の少なくとも一方によって前記上側突出部の寸法が変化したとしても、その変化量は小さく抑えられる。したがって、筐体62の収容筒82の寸法精度を高くすることひいては筐体62の製品精度を高くすることができる。
【0064】
また、本実施形態では、
図14に示す如く、ガイド挿入部88が、節度部材40側から挿入可能に形成されて節度部材40を案内する方向に延在すると共に、節度部材40の被案内部46が、ガイド挿入部88によって案内される方向に延在してガイド挿入部88に挿入されている。このため、ガイド挿入部88に案内される節度部材40のガタツキが抑制されると共に、耐久性を確保することが可能となっている。
【0065】
さらに、本実施形態では、
図15に示す如く、ガイド挿入部88は、案内方向側の先端部88Aが開放されている。また、
図15の部分拡大図に示す如く、ガイド挿入部88には、その案内方向側とは反対側の部分において被案内部46(
図14参照)が挿入される第一構成部88Bの幅をその他の部分において被案内部46(
図14参照)が挿入される第二構成部88Cの幅よりも小さくさせる段差部88Dが形成されている。このため、第一構成部88B及び第二構成部88Cを形成するための成形金型の抜き勾配による第一構成部88B及び第二構成部88Cの幅寸法(左右方向寸法)の拡大をそれぞれ小さくでき、第一構成部88B及び第二構成部88Cに対する被案内部46(
図14参照)の左右方向へのガタツキを抑制できて、被装着部80に対する節度部材40(
図14参照)の左右方向へのガタツキを抑制できる。
【0066】
なお、
図1~
図15に示す上記第1実施形態及び第2実施形態では、ガイド部としてのガイド挿入部38、88は、節度面54、78の対向側から見て節度面54、78に対して両側方側にオフセットする位置に一対で設けられているが、変形例として、ガイド部が、節度面(54、78)の対向側から見て節度面(54、78)に対して一方の側方側にオフセットする位置に一つ設けられている、という構成も採り得る。
【0067】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ガイド部としてのガイド挿入部38、88が溝状に形成されているが、変形例として、ガイド挿入部は、例えば節度部材(40)側から挿入可能に貫通形成されて節度部材40を案内する方向に延在するガイド用長孔等のように溝状に形成されたもの以外のものでもよい。また、ガイド部は、節度部材(40)を節度面(54、78)側に案内できるものであればガイド挿入部でなくてもよい。
【0068】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、節度部材40においてガイド挿入部38、88に挿入された被案内部46がガイド挿入部38、88の延在方向に延在しているが、変形例として、例えば、節度部材において、ガイド挿入部(38、88)に挿入される部分が、ガイド挿入部(38、88)の延在方向に断続的に複数形成されている、という構成も採り得る。
【0069】
また、上記第1実施形態及び第2実施形態では、ガイド挿入部38、88には、第一構成部38B、88Bの幅を第二構成部38C、88Cの幅よりも小さくさせる段差部38D、88Dが形成されているが、変形例として、ガイド挿入部に段差部が形成されていない構成も採り得る。
【0070】
なお、上記第1実施形態及び第2実施形態と上述の複数の変形例とは、適宜組み合わされて実施可能である。
【0071】
以上、本発明の一例について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0072】
10・・・シフト装置、20・・・シフトレバー(シフト体)、28・・・節度機構、38・・・ガイド挿入部(ガイド部)、38A・・・案内方向側の先端部、38B・・・第一構成部、38C・・・第二構成部、38D・・・段差部、40・・・節度部材、46・・・被案内部、54・・・節度面、60・・・シフト装置、70・・・ノブ(シフト体)、74・・・節度機構、78・・・節度面、88・・・ガイド挿入部(ガイド部)、88A・・・案内方向側の先端部、88B・・・第一構成部、88C・・・第二構成部、88D・・・段差部