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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184332
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】太陽電池システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/35 20060101AFI20231221BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231221BHJP
   B60L 8/00 20060101ALI20231221BHJP
   B60L 58/15 20190101ALI20231221BHJP
   B60L 58/20 20190101ALI20231221BHJP
【FI】
H02J7/35 F
H02J7/35 G
H02J7/00 P
B60L8/00
B60L58/15
B60L58/20
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098413
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100102141
【弁理士】
【氏名又は名称】的場 基憲
(74)【代理人】
【識別番号】100137316
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 宏
(72)【発明者】
【氏名】冨田 要介
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 誠則
(72)【発明者】
【氏名】谷本 勉
(72)【発明者】
【氏名】荒井 拓実
(72)【発明者】
【氏名】本部 惇史
(72)【発明者】
【氏名】早川 峰洋
(72)【発明者】
【氏名】潘 テン
【テーマコード(参考)】
5G503
5H125
【Fターム(参考)】
5G503AA06
5G503BB01
5G503BB05
5G503DA04
5G503FA06
5G503GB03
5H125AA01
5H125AC09
5H125AC12
5H125BB09
5H125BC29
5H125EE23
5H125EE31
(57)【要約】
【課題】太陽電池からバッテリに充電する充電回路を簡素化し、発電電力損失の低減と低コスト化とが可能な車載用太陽電池システムを提供する。
【解決手段】本発明の太陽電池システムは、太陽電池と、低電圧バッテリと、上記低電圧バッテリの電圧値よりも電圧値が高い高電圧バッテリと、電力変換装置と、上記電力変換装置の動作を制御する制御装置と、を備える。
そして、上記太陽電池の開放端電圧が、上記低電圧バッテリの許容上限電圧以下であり、上記太陽電池と上記低電圧バッテリとが直接接続され、上記低電圧バッテリと上記高電圧バッテリとが上記電力変換装置を介して接続されており、上記電力変換装置が双方向DC/DCコンバータであり、上記制御装置が、上記低電圧バッテリの電圧値に基づいて上記電力変換装置を制御することしたため、充電回路が簡素化されると共に、太陽電池―低電圧バッテリ間における電力損失が防止された太陽電池システムを提供することができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、低電圧バッテリと、上記低電圧バッテリの電圧値よりも電圧値が高い高電圧バッテリと、電力変換装置と、上記電力変換装置の動作を制御する制御装置と、を備える太陽電池システムであって、
上記太陽電池の開放端電圧が、上記低電圧バッテリの許容上限電圧以下であり、
上記太陽電池と上記低電圧バッテリとが直接接続され、上記低電圧バッテリと上記高電圧バッテリとが上記電力変換装置を介して接続されており、
上記電力変換装置が双方向DC/DCコンバータであり、
上記制御装置が、上記低電圧バッテリの電圧値に基づいて上記電力変換装置を制御することを特徴とする太陽電池システム。
【請求項2】
上記制御装置は、
太陽電池の最適動作点電圧を得て、
下記式(1)、式(2)及び式(3)の関係を同時に満たす、低電圧バッテリの電圧値を制御する基準となる電圧値を設定し、
上記低電圧バッテリの電圧値が、
第1充電上限値を超えたときに低電圧バッテリから高電圧バッテリに電力を供給し、第1放電電圧下限値以下になったときに低電圧バッテリから高電圧バッテリへの電力供給を停止し、
第2放電電圧下限値以下になったときに高電圧バッテリから低電圧バッテリに電力を供給し、第2充電電圧上限値を超えたときに高電圧バッテリから低電圧バッテリへの電力供給を停止することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池システム。

(第1充電電圧上限値-最適動作点電圧)×2<(最適動作点電圧-第1放電電圧下限値)・・・式(1)

許容上限電圧値≧第1充電電圧上限値>第1放電電圧下限値>第2放電電圧下限値≧許容下限電圧値 ・・・式(2)

許容上限電圧値≧第1充電電圧上限値>第2充電電圧上限値>第2放電電圧下限値≧許容下限電圧値 ・・・式(3)

但し、上記式(1)~(3)中、
許容上限電圧は、低電圧バッテリが過充電とならない上限の電圧値であり、許容下限電圧値低電圧バッテリが過放電とならない下限の電圧値である。
第1充電上限値は、電力変換装置が停止している際の電圧上限値であり、電力変換装置による低電圧バッテリの放電を開始するための閾値である。また、第1放電下限値は電力変換装置による低電圧バッテリの放電を停止するための閾値である。
第2放電電圧下限値は、電力変換装置が停止している際の電圧下限値であり、電力変換装置による低電圧バッテリの充電を開始するための閾値である。また、第1放電下限値は電力変換装置による低電圧バッテリの充電を停止するための閾値である。
【請求項3】
上記最適動作点電圧は、予め設定された太陽電池の温度と日射量との関係から設定されることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池システム。
【請求項4】
太陽電池の温度が得られないときは、
予め設定された太陽電池の温度と日射量との関係のうち、最も高い太陽電池の温度と日射量との関係から求められた最適動作電圧を、最適動作電圧とすることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池システム。
【請求項5】
上記制御装置は、
低電圧バッテリから高電圧バッテリに電力を供給する際、
上記電力変換装置の通過電力を、予め設定された連続動作状態で使用できる最大電力の10%以上に制御することを特徴とする請求項2に記載の太陽電池システム。
【請求項6】
上記制御装置は、上記低電圧バッテリの内部電圧を低電圧バッテリの電圧値とし、上記電力変換装置の制御を行うことを特徴とする請求項5に記載の太陽電池システム。
【請求項7】
上記制御装置は、
低電圧バッテリから高電圧バッテリに電力を供給する際、
上記第1放電下限値を、下記式(5)を満たす値に設定することを特徴とする請求項6に記載の太陽電池システム。

第1放電下限値<[第1充電電圧上限値+(第1充電電圧上限値-4×第1目標電力+太陽電池の定格出力×低電圧バッテリの内部抵抗)0.5]×0.5 ・・・式(5)

但し、式(5)中、第1目標電力は、電力変換装置により低電圧バッテリを放電する際の電力変換装置を通過させる電力である。
【請求項8】
上記制御装置は、
高電圧バッテリから低電圧バッテリに電力を供給する際、
第2充電上限値を、下記式(6)を満たす値に設定することを特徴とする請求項6に記載の太陽電池システム。

第2充電上限値>第2放電電圧下限値+(第2目標電力+太陽電池の定格電力)/第2放電電圧下限値×低電圧バッテリの内部抵抗 ・・・式(6)

但し、式(6)中、第2目標電力は、電力変換装置により低電圧バッテリを充電する際の電力変換装置を通過させる電力である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池システムに係り、更に詳細には、駆動用の高電圧バッテリと電子機器用の低電圧バッテリとを備える車両に用いられる車載用太陽電池システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池の発電電力を、電気自動車のモータ駆動用の高電圧バッテリや、車載電子機器用の低電圧バッテリ(補機バッテリ)に供給し、これらを充電することが行われている。
【0003】
太陽電池の発電電力は日射量に応じて変動し、発電効率のよい最適動作点電圧が変わるので、そのときの最適動作点電圧に応じて充電先を発電効率よい電圧値のバッテリに変更するには、バッテリの充放電を制御する制御装置が必要であり、この制御装置は、通常、低電圧バッテリの電力を消費する。
【0004】
さらに、低電圧バッテリは、他の電子機器などにも電力を供給しており、太陽電池の発電電力を直接高電圧バッテリに充電していると、低電圧バッテリの電圧が下がり過ぎてしまうことがある。
【0005】
特許文献1には、太陽電池の発電電力を降圧して低電圧バッテリに充電し、この低電圧バッテリの電力量が規定量以上になったら、低電圧バッテリの電圧を昇圧して高電圧バッテリに充電を行う車載充電制御装置が開示されている。この車載充電制御装置によれば、低電圧バッテリの電力量が下がり過ぎることを防止できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5673633号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の車載充電制御装置にあっては、太陽電池と低電圧バッテリとの間、及び、低電圧バッテリと高電圧バッテリとの間に、それぞれコンバータが必要であり、低コスト化が困難である。
【0008】
加えて、太陽電池の発電電力を高電圧バッテリに充電するには、電力変換に伴う損失が2段階で生じてしまう。
【0009】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、太陽電池からバッテリに充電する充電回路を簡素化し、発電電力損失の低減と低コスト化とが可能な車載用太陽電池システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、上記太陽電池の開放端電圧を低電圧バッテリ許容上限電圧よりも小さくして、太陽電池と低電圧バッテリとを直接接続し、この低電圧バッテリの電圧値に基づき、低電圧バッテリと高電圧バッテリとの間に設けた双方向DC/DCコンバータによって、これらバッテリの充放電を制御することにより、上記目的が達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明の太陽電池システムは、太陽電池と、低電圧バッテリと、上記低電圧バッテリの電圧値よりも電圧値が高い高電圧バッテリと、電力変換装置と、上記電力変換装置の動作を制御する制御装置と、を備える。
そして、上記太陽電池の開放端電圧が、上記低電圧バッテリの許容上限電圧以下であり、上記太陽電池と上記低電圧バッテリとが直接接続され、上記低電圧バッテリと上記高電圧バッテリとが上記電力変換装置を介して接続されており、上記電力変換装置が双方向DC/DCコンバータであり、上記制御装置が、上記低電圧バッテリの電圧値に基づいて上記電力変換装置を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、太陽電池の開放端電圧を低電圧バッテリの許容上限電圧よりも小さくして太陽電池と上記低電圧バッテリとが直接接続し、低電圧バッテリの電圧値に基づいて、低電圧バッテリと高電圧バッテリとの間に設けた双方向DC/DCコンバータにより、これらのバッテリの充放電を制御することとしたため、充電回路が簡素化されると共に、太陽電池―低電圧バッテリ間における電力損失が防止された、車載用太陽電池システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の太陽電池システムの構成の一例を示す、システム構成図である。
図2】太陽電池の温度及び日射量と、太陽電池の最適動作点電圧との関係を示すグラフである。
図3】低電圧バッテリの内部電圧、外部電圧、内部抵抗及び充電電流の関係を示す図である。
図4】低電圧バッテリを充電状態から放電状態に切り替えるときの低電圧バッテリの内部電圧と外部電圧の変化の例を示すグラフである。
図5】低電圧バッテリを放電状態から充電状態に切り替えるときの低電圧バッテリの内部電圧と外部電圧の変化の例を示すグラフである。
図6】本発明の太陽電池システムの制御装置の動作の一例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の太陽電池システムについて詳細に説明する。
図1に示すように、本発明の太陽電池システムは、太陽電池と、低電圧バッテリと、高電圧バッテリと、電力変換装置と、制御装置と、を備える。
【0015】
上記低電圧バッテリは、車載されている電子機器などに電力を供給するバッテリである。
上記高電圧バッテリは、上記低電圧バッテリの電圧値よりも電圧値が高いバッテリであり、駆動用モータなどに電力を供給する。
上記太陽電池と上記低電圧バッテリとは直接接続されており、上記低電圧バッテリと上記高電圧バッテリとは上記電力変換装置を介して接続されている。
【0016】
本発明の太陽電池システムは、太陽電池の開放端電圧が低電圧バッテリの許容上限電圧以下であるので、太陽電池の発電電力を降圧することなくそのまま低電圧バッテリに充電することが可能である。したがって、太陽電池-低電圧バッテリ間のコンバータが不要であり、充電回路が簡素化されて低コスト化できると共に、コンバータによる電力損失を防止できる。
【0017】
上記太陽電池の開放端電圧の下限値は、低電圧バッテリに充電可能な電圧を有していれば特に制限はないが、充電効率の観点から高い方が好ましい。
【0018】
なお、本発明において「許容上限電圧」とは、過充電によるバッテリの故障を防止するために予め設定された上限の電圧であって、バッテリが100%充電されたときの電圧をいい、「許容下限電圧」とは、過放電によるバッテリの劣化を防止するために、予め設定されている電圧をいい、これらは制御装置に記憶されている。
【0019】
太陽電池は、日射量によるその発電出力電圧の変動が抑えられたものであることが好ましい。太陽電池の一部に影がかかった場合、太陽電池単セルや太陽電池モジュールが直列接続された太陽電池であると、発電出力電圧が低下してしまう。
太陽電池の構成を太陽電池単セルや太陽電池モジュールが主に並列接続された構成とすることで、発電出力電圧の変動が抑えられ、低電圧バッテリの電圧値により太陽電池の発電電圧値を最適動作電圧に制御することが可能である。
【0020】
また、低電圧バッテリと高電圧バッテリとの間に設けられた電力変換装置が双方向DC/DCコンバータであるので、低電圧バッテリと高電圧バッテリとの間で相互に充電を行うことが可能であり、制御装置は低電圧バッテリの電圧値に基づいて電力変換装置を制御し、低電圧バッテリ-高電圧バッテリ間の電力供給を相互に行う。
【0021】
したがって、低電圧バッテリから高電圧バッテリに電力を供給して高電圧バッテリを充電するだけでなく、太陽電池から発電電力が供給されず、低電圧バッテリの電圧が下がったときには、高電圧バッテリから低電圧バッテリに電力を供給し充電することができる。 これにより、低電圧バッテリが過放電となって電圧が下がり過ぎることを防止でき、低電圧バッテリの劣化を抑止できる。
【0022】
上記制御装置は、太陽電池の最適動作点電圧に応じて、低電圧バッテリ-高電圧バッテリ間の充電制御を行う基準となる電圧値を設定し、低電圧バッテリの電圧値と、設定した基準となる電圧値とを比べて双方向DC/DCコンバータを制御し、低電圧バッテリ-高電圧バッテリ間で相互に電力を供給する。
【0023】
具体的には、制御装置は太陽電池の最適動作点電圧を得て、予め記憶された低電圧バッテリが正常に動作する電圧値の範囲内で、下記式(1)、式(2)及び式(3)の関係を同時に満たす、低電圧バッテリの電圧値を制御する基準となる電圧値を設定する。

(第1充電電圧上限値-最適動作点電圧)×2<(最適動作点電圧-第1放電電圧下限値)・・・式(1)

許容上限電圧値≧第1充電電圧上限値>第1放電電圧下限値>第2放電電圧下限値≧許容下限電圧値 ・・・式(2)

許容上限電圧値≧第1充電電圧上限値>第2充電電圧上限値>第2放電電圧下限値≧許容下限電圧値 ・・・式(3)

但し、上記式(1)~(3)中、
許容上限電圧は、低電圧バッテリが過充電とならない上限の電圧値であり、許容下限電圧値低電圧バッテリが過放電とならない下限の電圧値である。
また、第1充電電圧上限値は、太陽電池から低電圧バッテリに充電が行われているときに低電圧バッテリを充電するときの上限電圧値であり、第1放電電圧下限値は、太陽電池から低電圧バッテリに充電が行われているときに低電圧バッテリを放電させるときの下限電圧値であり、
第2充電電圧上限値は、太陽電池から低電圧バッテリに電力の供給が行われていないときに低電圧バッテリを充電するときの上限電圧値であり、第2放電電圧下限値は太陽電池から低電圧バッテリに電力の供給が行われていないときに低電圧バッテリを放電させるときの下限電圧値である。
【0024】
本発明の太陽電池システムは、太陽電池と低電圧バッテリとが直接接続されており、太陽電池と低電圧バッテリとの電圧が同じになるので、太陽電池の発電効率だけでなく、低電圧バッテリへの充電効率をも考慮する必要がある。
【0025】
このような太陽電池システムにおいては、低電圧バッテリとの電圧が最適動作点電圧から離れると、最適動作点電圧よりも高電圧側では低電圧側よりも急激に効率が低下するので、太陽電池から低電圧バッテリへの充電が行われているときの動作範囲を低電圧側が広くなるように設定する。
【0026】
上記式(1)を満たす、第1充電電圧上限値と第1放電電圧下限値とを設定し、これらの間で太陽電池から低電圧バッテリに充電を行うことで、太陽電池の発電効率と太陽電池から低電圧バッテリへの充電効率とを両立させ、高効率な充電が可能である。
【0027】
そして、上記低電圧バッテリの電圧値が、第1充電電圧上限値を超えたときに低電圧バッテリから高電圧バッテリに電力を供給し、第1放電電圧下限値以下になったときに低電圧バッテリから高電圧バッテリへの電力供給を停止する。
これにより、太陽電池の発電電力によって低電圧バッテリが過充電になることが防止される。
【0028】
また、第2放電電圧下限値以下になったときに高電圧バッテリから低電圧バッテリに電力を供給し、第2充電電圧上限値を超えたときに高電圧バッテリから低電圧バッテリへの電力供給を停止する。
これにより、低電圧バッテリの電圧が下がり過ぎることを防止でき、低電圧バッテリの劣化を抑止できる。
【0029】
上記最適動作点電圧は、図2に示すように、太陽電池の温度と日射量とによって変化する。最適動作点電圧は、予め制御装置に記憶しておいた、図2に示すような太陽電池の温度及び日射量と、最適動作点電圧との関係と、太陽電池に設けられた温度センサや日射量センサから得られた温度及び日射量と、から得ることができる。
【0030】
太陽電池の温度が得られないときは、予め設定された太陽電池の温度と日射量との関係のうち、最も高い太陽電池の温度における日射量と最適動作電圧との関係から求められる最適動作電圧を、最適動作電圧として設定してもよい。
【0031】
上記制御装置は、低電圧バッテリから高電圧バッテリに電力を供給する際の双方向DC/DCコンバータの通過電力を、双方向DC/DCコンバータが連続動作状態で使用できる最大電力(以下、「定格電力」という。)の10%以上に制御することが好ましい。
【0032】
双方向DC/DCコンバータは、通過電力が小さくなるとの変換効率が低下するので、低電圧バッテリから高電圧バッテリに電力を供給する際の通過電力はその定格電力になるように設定することが好ましく、定格電力の10%以上の通過電力に制御することで、電力変換に伴う損失を低減することができる。なお、上記定格電力は、双方向DC/DCコンバータを通過させる電力の上限値として、予め制御装置に記憶されている。
【0033】
また、高電圧バッテリから低電圧バッテリに電力を供給する際の双方向DC/DCコンバータの通過電力は、上記コンバータの定格電力に設定してもよく、後述する低電圧バッテリの内部電圧が第2充電電圧上限値となるように制御してもよい。
【0034】
上記制御装置は、低電圧バッテリの外部電圧(端子間の電圧)を低電圧バッテリの電圧値としてもよいが、内部電圧を低電圧バッテリの電圧値とすることが好ましい。
【0035】
低電圧バッテリの内部電圧、外部電圧、内部抵抗及び充電電流の関係を図3に示す。
図3に示すように、バッテリの内部には抵抗成分があるため、低電圧バッテリを充電又は放電する際の電流の影響によって外部電圧の値が変動する。
【0036】
つまり、充電時には外部電圧が内部電圧よりも高くなり、放電時には外部電圧が内部電圧よりも低くなる。したがって、図4,5に示すように、低電圧バッテリ-高電圧バッテリ間の電力の供給方向を切り替えることによって外部電圧が変動し、この変動によって外部電圧が切り替えたばかりの電力の供給方向とは逆方向に電力を供給するような電圧値を示してしてしまう。
【0037】
制御装置が低電圧バッテリの内部電圧に基づいて、電力変換装置の制御を行うことにより、充放電の電流による外部電圧の変動の影響が排除され、電力変換装置の切り替え制御が頻繁に行われることを防止できる。
【0038】
低電圧バッテリの内部電圧は、測定された低電圧バッテリの外部電圧及び低電圧バッテリの充電電流と、予め設定された低電圧バッテリの内部抵抗とから、下記式(4)により算出できる。

内部電圧=外部電圧-内部抵抗×充電電流 ・・・式(4)
【0039】
また、電力変換装置の不要な切り替え制御は、充放電により変動した電圧値を考慮して第1放電電圧下限値、及び第2充電電圧上限値を設定することにより防止できる。
【0040】
低電圧バッテリを充電状態から放電状態に切り替えるときには、図4に示すよう電圧が低下するので、充放電の影響により低下した電圧よりも第1放電電圧下限値を低く設定する。
【0041】
具体的には、第1放電電圧下限値を、下記式(5)を満たすように設定することで、電力変換装置の不要な切り替え制御を防止できる。

第1放電電圧下限値<[第1充電電圧上限値+(第1充電電圧上限値-4×第1目標電力+太陽電池の定格出力×低電圧バッテリの内部抵抗)0.5]×0.5 ・・・式(5)
【0042】
また、低電圧バッテリを放電状態から充電状態に切り替えるときには、図5に示すよう電圧が上昇するので、充放電の影響により上昇した電圧よりも第2充電電圧上限値を高く設定する。
【0043】
具体的には、第2充電電圧上限値を、下記式(6)を満たすように設定することで、電力変換装置の不要な切り替え制御を防止できる。

第2充電電圧上限値>第2放電電圧下限値+(第2目標電力+太陽電池の定格電力)/第2放電電圧下限値×低電圧バッテリの内部抵抗 ・・・式(6)
【0044】
但し、式(5)、式(6)中、第1目標電力は、太陽電池から低電圧バッテリに充電が行われているときに電力変換装置を通過する電力であり、第2目標電力は、第2目標電力は、太陽電池から低電圧バッテリに充電が行われているときに電力変換装置を通過する電力である。
また、太陽電池の定格電力は、JIS C8918に規定される標準試験条件における電力であり、予め制御装置に記憶されている。
【0045】
次に、制御装置の動作について説明する。
制御装置の動作を示すフローチャートを図6に示す。
【0046】
制御装置は、先ず、温度センサより太陽電池の温度を取得し、日射センサより日射量を取得する(ステップS1)。
【0047】
ステップS1で取得した太陽電池温度と日射量とから、太陽電池の最適動作点電圧を取得する(ステップS2)。最適動作点電圧は、予め設定された太陽電池の温度と日射量との関係から設定される。
なお、日射量センサから日射量が得られない場合は日時から日射量を推定してもよい。
また、太陽電池の温度が得られないときは、予め設定された太陽電池の温度と日射量との関係のうち、最も高い太陽電池の温度と日射量との関係から求められた最適動作電圧を、最適動作電圧とする。
【0048】
ステップS2で取得した太陽電池の最適動作点電圧と、上記式(1)~(3)及び式(5)、式(6)とを用いて、制御の基準となる、第1充電電圧上限値、第1放電電圧下限値、第2充電電圧上限値及び第2放電電圧下限値を設定する(ステップS3)。
【0049】
電圧センサより低電圧バッテリの外部電圧(端子電圧)を取得し、電流センサより低電圧バッテリ充電電流を取得する(ステップS4)。
【0050】
ステップS4で取得した外部電圧及び充電電流と、予め制御装置に記憶されている低電圧バッテリの内部抵抗とから、上記式(4)によって低電圧バッテリの内部電圧を取得する(ステップS5)。
【0051】
低電圧バッテリの内部電圧が、第1充電電圧上限値よりも大きいかどうかを判定する。
Yesの場合はS7に進み。Noの場合はステップS10に進む(ステップS6)。
【0052】
上記ステップS6での判定がYesの場合は、電力変換装置の電力供給方向を低電圧バッテリから高電圧バッテリに設定する(ステップS7)。
【0053】
再度、電圧センサより低電圧バッテリの外部電圧(端子電圧)を取得し、電流センサより低電圧バッテリ充電電流を取得し、上記式(4)によって低電圧バッテリの内部電圧を取得する(ステップS8)。
【0054】
ステップS8で取得した低電圧バッテリ内部電圧が、第1放電電圧下限値以下かどうかを判定し、Noの場合はYesになるまでステップS6に戻って繰り返し、YesになったらステップS1に戻る(ステップS9)。
【0055】
上記ステップS6での判定がNoの場合の場合は、低電圧バッテリ内部電圧が、第2放電電圧下限値以下かどうかを判定する。Yesの場合はステップS11に進み。Noの場合はステップS1に戻る(ステップS10)。
【0056】
上記ステップS10での判定がYesの場合は、電力変換装置の電力供給方向を高電圧バッテリから低電圧バッテリに設定する(ステップS11)。
【0057】
再度、電圧センサより低電圧バッテリの外部電圧(端子電圧)を取得し、電流センサより低電圧バッテリ充電電流を取得し、上記式(4)によって低電圧バッテリの内部電圧を取得する(ステップS12)。
【0058】
ステップS12で取得した低電圧バッテリ内部電圧が、第2充電電圧上限値よりも大きいかどうかを判定し、Noの場合はYesになるまでステップS12に戻って繰り返し、YesになったらステップS1に戻る(ステップS13)。
【0059】
このように、低電圧バッテリの電圧値に基づいて、低電圧バッテリ-高電圧バッテリ間の電力供給を行うことで、簡易な回路構成で太陽電池の出力電圧を最適動作点電圧に追従させることができると共に、太陽電池-低電圧バッテリ間における電力変換に伴う損失を防止できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6