(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184341
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】検査システムの制御方法、塗抹標本作製装置の制御方法、検査システムおよび塗抹標本作製装置
(51)【国際特許分類】
G01N 35/04 20060101AFI20231221BHJP
G01N 35/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N35/04 E
G01N35/02 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】30
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098427
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】390014960
【氏名又は名称】シスメックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111383
【弁理士】
【氏名又は名称】芝野 正雅
(72)【発明者】
【氏名】川上 大貴
(72)【発明者】
【氏名】品部 誠也
(72)【発明者】
【氏名】朝原 友幸
【テーマコード(参考)】
2G058
【Fターム(参考)】
2G058CB09
2G058CB15
2G058CC09
2G058CD12
2G058GA01
2G058GC02
2G058GC05
2G058GE01
(57)【要約】
【課題】標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えるようにする。
【解決手段】この検査システムの制御方法は、血液検体の塗抹標本1を撮像する標本撮像部50を備える検査システム100の制御方法であって、複数の塗抹標本1を作製し、作製された複数の塗抹標本1を、塗抹標本1を複数収容可能な収容容器3に順次収容し、標本撮像部50における撮像処理の待ち状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器3における塗抹標本1の収容数にかかわらず、塗抹標本1を収容した収容容器3を標本撮像部50へ搬送する。
【選択図】
図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体の塗抹標本を撮像する標本撮像部を備える検査システムの制御方法であって、
複数の前記塗抹標本を作製し、
作製された前記塗抹標本を、前記塗抹標本を複数収容可能な収容容器に順次収容し、
前記標本撮像部における撮像処理の待ち状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、前記収容容器における前記塗抹標本の収容数にかかわらず、前記塗抹標本を収容した前記収容容器を前記標本撮像部へ搬送する、検査システムの制御方法。
【請求項2】
前記待ち状況に関連する情報は、搬送経路上の所定位置における搬送中の前記収容容器の有無に関する情報を少なくとも含み、
前記所定の条件は、前記所定位置において搬送中の前記収容容器がないことを含む、請求項1に記載の検査システムの制御方法。
【請求項3】
前記所定位置は、前記標本撮像部に供給される前記塗抹標本が前記収容容器から取り出される第1位置と、前記第1位置への前記収容容器の搬送を待機する第2位置と、を含み、
前記所定の条件は、前記第1位置および前記第2位置の少なくとも一方に前記収容容器がないことを含む、請求項2に記載の検査システムの制御方法。
【請求項4】
前記所定の条件は、前記第1位置および前記第2位置の両方に前記収容容器がないことを含む、請求項3に記載の検査システムの制御方法。
【請求項5】
前記待ち状況に関連する情報は、搬送開始済みの前記収容容器中の前記塗抹標本に対する撮像処理の残り時間の情報を含み、
前記所定の条件は、前記第1位置に前記収容容器がある場合、前記残り時間が所定時間以下であることを含む、請求項4に記載の検査システムの制御方法。
【請求項6】
前記待ち状況に関連する情報は、前記収容容器の搬送開始時刻の情報を含み、
前記所定の条件は、前回搬送した前記収容容器の前記搬送開始時刻に関する条件をさらに含む、請求項4に記載の検査システムの制御方法。
【請求項7】
前回搬送した前記収容容器の前記搬送開始時刻からの経過時間が、前記収容容器の搬送開始から前記第1位置への前記収容容器の到達までに要する到達所要時間以下の場合、前記収容容器の搬送を開始しないように前記収容容器の搬送を制御する、請求項6に記載の検査システムの制御方法。
【請求項8】
前記塗抹標本は、撮像の対象となる第1種の前記塗抹標本と、撮像の対象とならない第2種の前記塗抹標本と、を含み、
前記所定の条件は、前回搬送した前記収容容器の前記搬送開始時刻からの経過時間が前記到達所要時間よりも大きい場合、標本収容位置の前記収容容器における第1種の前記塗抹標本が存在することを含む、請求項7に記載の検査システムの制御方法。
【請求項9】
前記検査システムは、前記標本撮像部に向けて搬送された前記収容容器に収容された前記塗抹標本を検出する検出部を含み、
前記残り時間を、搬送開始済みの前記収容容器に収容された前記塗抹標本に対する前記検出部による検出結果と、1枚の前記塗抹標本の撮像処理に要する時間と、に基づいて取得する、請求項5に記載の検査システムの制御方法。
【請求項10】
前記待ち状況に関連する情報は、搬送開始済みの前記収容容器中の前記塗抹標本に対する撮像処理の残り時間の情報を含み、
前記検査システムは、前記標本撮像部に加えて、前記塗抹標本を作製し、作製した前記塗抹標本を前記収容容器に収容する標本作製部を含み、
前記残り時間を、搬送開始済みの前記収容容器に対して前記標本作製部が収容した前記塗抹標本の標本情報と、1枚の前記塗抹標本の撮像処理に要する時間と、に基づいて取得する、請求項1に記載の検査システムの制御方法。
【請求項11】
前記所定の条件を含む搬送条件を定めた搬送モードを少なくとも含む複数種類の前記搬送モードのうちからいずれかの前記搬送モードの選択を受け付け、
選択された前記搬送モードに定められた搬送条件を満たした場合に前記塗抹標本を収容した前記収容容器を前記標本撮像部へ搬送する、請求項1~10のいずれか1項に記載の検査システムの制御方法。
【請求項12】
複数種類の前記搬送モードは、
前記待ち状況に関連する情報が前記所定の条件を含む搬送条件を満たした場合に搬送タイミングであると判定する第1の前記搬送モードと、
前記収容容器に収容されている前記塗抹標本の数が前記収容容器に収容可能な最大枚数に達した場合に搬送タイミングであると判定する第2の前記搬送モードと、
を含む、請求項11に記載の検査システムの制御方法。
【請求項13】
複数の前記塗抹標本の作製開始時に、前記撮像処理の待ち状況に関連する情報が前記所定の条件に該当するか否かに基づく前記収容容器の搬送制御を行う、請求項1~10のいずれか1項に記載の検査システムの制御方法。
【請求項14】
検体の塗抹標本を作製する標本作製部および前記塗抹標本を撮像する標本撮像部を備える検査システムの制御方法であって、
複数の搬送モードから、一の搬送モードを設定し、
複数の前記塗抹標本を作製し、
作製された前記塗抹標本を、前記塗抹標本を複数収容可能な収容容器に順次収容し、
設定した前記搬送モードに応じて、前記塗抹標本を収容した前記収容容器を前記標本作製部から搬送し、
前記複数の搬送モードは、前記収容容器の搬送状況にかかわらず前記収容容器に収容可能な最大枚数の前記塗抹標本が収容された前記収容容器を搬送するモードと、前記収容容器の搬送状況によっては前記最大枚数未満の前記塗抹標本が収容された前記収容容器を搬送するモードとを含む、検査システムの制御方法。
【請求項15】
検体の塗抹標本を撮像する標本撮像部を備える検査システムに組み込まれる塗抹標本作製装置の制御方法であって、
複数の前記塗抹標本を作製し、
作製された前記塗抹標本を、前記塗抹標本を複数収容可能な収容容器に順次収容し、
前記収容容器の搬送状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、前記収容容器における前記塗抹標本の収容数にかかわらず、前記塗抹標本を収容した前記収容容器を前記塗抹標本作製装置から搬出する、塗抹標本作製装置の制御方法。
【請求項16】
複数の塗抹標本を作製し、作製された複数の前記塗抹標本を、前記塗抹標本を複数収容可能な収容容器に順次収容する標本作製部と、
前記標本作製部から搬出された前記収容容器を搬送する容器搬送部と、
前記容器搬送部から前記収容容器とともに搬送された前記塗抹標本を撮像する標本撮像部と、
前記標本撮像部における撮像処理の待ち状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、前記収容容器における前記塗抹標本の収容数にかかわらず、前記塗抹標本を収容した前記収容容器を前記標本撮像部へ搬送する制御を行う制御部と、を備える、検査システム。
【請求項17】
前記待ち状況に関連する情報は、前記容器搬送部の搬送経路上の所定位置における搬送中の前記収容容器の有無に関する情報を少なくとも含み、
前記所定の条件は、前記所定位置において搬送中の前記収容容器がないことを含む、請求項16に記載の検査システム。
【請求項18】
前記所定位置は、前記標本撮像部に供給される前記塗抹標本が前記収容容器から取り出される第1位置と、前記第1位置への前記収容容器の搬送を待機する第2位置と、を含み、
前記所定の条件は、前記第1位置および前記第2位置の少なくとも一方に前記収容容器がないことを含む、請求項17に記載の検査システム。
【請求項19】
前記所定の条件は、前記第1位置および前記第2位置の両方に前記収容容器がないことを含む、請求項18に記載の検査システム。
【請求項20】
前記待ち状況に関連する情報は、搬送開始済みの前記収容容器中の前記塗抹標本に対する撮像処理の残り時間の情報を含み、
前記所定の条件は、前記第1位置に前記収容容器がある場合、前記残り時間が所定時間以下であることを含む、請求項19に記載の検査システム。
【請求項21】
前記待ち状況に関連する情報は、前記収容容器の搬送開始時刻の情報を含み、
前記所定の条件は、前回搬送した前記収容容器の前記搬送開始時刻に関する条件をさらに含む、請求項19に記載の検査システム。
【請求項22】
前記制御部は、前回搬送した前記収容容器の前記搬送開始時刻からの経過時間が、前記収容容器の搬送開始から前記第1位置への前記収容容器の到達までに要する到達所要時間以下の場合、前記収容容器の搬送を開始しないように前記収容容器の搬送を制御する、請求項21に記載の検査システム。
【請求項23】
前記塗抹標本は、撮像の対象となる第1種の前記塗抹標本と、撮像の対象とならない第2種の前記塗抹標本と、を含み、
前記所定の条件は、前回搬送した前記収容容器の前記搬送開始時刻からの経過時間が前記到達所要時間よりも大きい場合、標本収容位置の前記収容容器における第1種の前記塗抹標本が存在することを含む、請求項22に記載の検査システム。
【請求項24】
前記標本撮像部に向けて搬送された前記収容容器に収容された前記塗抹標本を検出する検出部をさらに備え、
前記制御部は、前記残り時間を、搬送開始済みの前記収容容器に収容された前記塗抹標本に対する前記検出部による検出結果と、1枚の前記塗抹標本の撮像処理に要する時間と、に基づいて取得する、請求項20に記載の検査システム。
【請求項25】
前記待ち状況に関連する情報は、搬送開始済みの前記収容容器中の前記塗抹標本に対する撮像処理の残り時間の情報を含み、
前記制御部は、前記残り時間を、搬送開始済みの前記収容容器に対して前記標本作製部が収容した前記塗抹標本の標本情報と、1枚の前記塗抹標本の撮像処理に要する時間と、に基づいて取得する、請求項16に記載の検査システム。
【請求項26】
前記制御部は、
前記所定の条件を含む搬送条件を定めた搬送モードを少なくとも含む複数種類の前記搬送モードのうちからいずれかの前記搬送モードの選択を受け付け、
選択された前記搬送モードに定められた搬送条件を満たした場合に前記塗抹標本を収容した前記収容容器を前記標本撮像部へ搬送する、請求項16~25のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項27】
複数種類の前記搬送モードは、
前記待ち状況に関連する情報が前記所定の条件を含む搬送条件を満たした場合に搬送タイミングであると判定する第1の前記搬送モードと、
前記収容容器に収容されている前記塗抹標本の数が前記収容容器に収容可能な最大枚数に達した場合に搬送タイミングであると判定する第2の前記搬送モードと、
を含む、請求項26に記載の検査システム。
【請求項28】
前記制御部は、前記標本作製部による複数の前記塗抹標本の作製開始時に、前記撮像処理の待ち状況に関連する情報が前記所定の条件に該当するか否かに基づく前記収容容器の搬送制御を行う、請求項16~25のいずれか1項に記載の検査システム。
【請求項29】
複数の塗抹標本を作製し、作製された複数の前記塗抹標本を、前記塗抹標本を複数収容可能な収容容器に順次収容する標本作製部と、
前記標本作製部から搬出された前記収容容器を搬送する容器搬送部と、
前記容器搬送部から前記収容容器とともに搬送された前記塗抹標本を撮像する標本撮像部と、
複数の搬送モードから設定された一の前記搬送モードに応じて、前記塗抹標本を収容した前記収容容器を前記標本作製部から搬送する制御を行う制御部と、を備え、
前記複数の搬送モードは、前記収容容器の搬送状況にかかわらず前記収容容器に収容可能な最大枚数の前記塗抹標本が収容された前記収容容器を搬送するモードと、前記収容容器の搬送状況によっては前記最大枚数未満の前記塗抹標本が収容された前記収容容器を搬送するモードとを含む、検査システム。
【請求項30】
塗抹標本撮像装置を備えた検査システムに組み合わせ可能な塗抹標本作製装置であって、
複数の塗抹標本を作製する作製処理部と、
作製された複数の前記塗抹標本を、前記塗抹標本を複数収容可能な収容容器に順次収容する移送部と、
前記検査システムを構成する他の装置と接続可能に構成され、前記塗抹標本を収容した前記収容容器を搬送する搬送部と、
前記収容容器の搬送状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、前記収容容器における前記塗抹標本の収容数にかかわらず、前記塗抹標本を収容した前記収容容器を前記搬送部から搬出する制御を行う制御部と、を備える、塗抹標本作製装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体の塗抹標本を撮像する標本撮像部を備える検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、標本スライドを作製する塗抹標本作製装置と、複数の標本スライドを収容したスライドマガジンを搬送する標本搬送装置と、標本スライドを撮像する標本画像撮像装置とを備えた塗抹標本システムが開示されている。特許文献1では、塗抹標本作製装置は、標本スライドを作製すると、作製した標本スライドをスライドマガジンに収納する。収納部分が満杯になったスライドマガジンは、塗抹標本作製装置から搬送される。塗抹標本作製装置から搬送されたスライドマガジンは、標本搬送装置によって標本画像撮像装置へ向けて搬送される。標本搬送装置は、撮像前の標本スライドを収納したスライドマガジンを搬送経路上に複数滞留させておくことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
検査室では、所定の業務時間内に、塗抹標本システムにより多数の標本スライドを作製および撮像し、得られた標本画像をオペレータが確認し、その結果を検査依頼者に報告する。従って、業務時間の開始後、検査依頼者への結果報告を早期に開始するために、早期に標本画像の確認を開始することを望むオペレータがいる。また、所定の業務時間内に多数の標本画像の確認を完了させるために、早期に標本画像の確認を開始することを望むオペレータもいる。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1では、作製された標本スライドによって収納部分が満杯になったスライドマガジンが塗抹標本作製装置から搬送されるので、上記のオペレータの要望に十分に対応できないおそれがある。
【0006】
本発明は、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることに向けたものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の検査システム(100)の制御方法は、
図1に示すように、検体の塗抹標本(1)を撮像する標本撮像部(50)を備える検査システム(100)の制御方法であって、複数の塗抹標本(1)を作製し、作製された複数の塗抹標本(1)を、塗抹標本(1)を複数収容可能な収容容器(3)に順次収容し、標本撮像部(50)における撮像処理の待ち状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器(3)における塗抹標本(1)の収容数にかかわらず、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を標本撮像部(50)へ搬送する。
【0008】
本発明の検査システム(100)の制御方法は、上記のように、標本撮像部(50)における撮像処理の待ち状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器(3)における塗抹標本(1)の収容数にかかわらず、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を標本撮像部(50)へ搬送する。これにより、標本撮像部(50)における撮像処理の待ち状況に応じて、収容容器(3)が満杯になっていない場合でも、収容容器(3)を標本撮像部(50)へ搬送できる。そのため、業務時間の開始直後または標本作製を開始した時など、標本撮像部(50)において撮像処理待ちの塗抹標本(1)が存在しない場合や、撮像処理待ちの塗抹標本(1)が少ない場合に、収容容器(3)が満杯になってから収容容器(3)を搬送する場合と比べて、標本撮像部(50)に塗抹標本(1)を早期に供給できるので、標本撮像部(50)における撮像処理を早期に開始できる。その結果、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【0009】
本発明の検査システム(100)の制御方法は、
図14に示すように、検体の塗抹標本(1)を作製する標本作製部(10)および塗抹標本(1)を撮像する標本撮像部(50)を備える検査システムの制御方法であって、複数の搬送モードから、一の搬送モードを設定し、複数の塗抹標本(1)を作製し、作製された塗抹標本(1)を、塗抹標本(1)を複数収容可能な収容容器(3)に順次収容し、設定した搬送モードに応じて、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を標本作製部(10)から搬送し、複数の搬送モードは、収容容器(3)の搬送状況にかかわらず収容容器(3)に収容可能な最大枚数の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードと、収容容器(3)の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードとを含む。
【0010】
本発明の検査システム(100)の制御方法は、上記のように、設定した搬送モードに応じて、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を標本作製部(10)から搬送し、複数の搬送モードは、収容容器(3)の搬送状況にかかわらず収容容器(3)に収容可能な最大枚数の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードと、収容容器(3)の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードとを含む。これにより、収容容器(3)の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードに設定すれば、収容容器(3)の搬送状況に応じて収容容器(3)が満杯になる前でも収容容器(3)を搬送することができる。その結果、標本撮像部(50)に塗抹標本(1)を早期に供給し、標本撮像部(50)における撮像処理を早期に開始できるので、オペレータは早期に標本画像の確認を開始することができる。また、収容容器(3)の搬送状況にかかわらず収容容器(3)に収容可能な最大枚数の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードに設定すれば、収容容器(3)の搬送状況に応じて収容容器(3)が満杯になってから収容容器(3)を搬送することで、収容容器(3)の搬送回数が不必要に多くなることを抑制できる。その結果、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【0011】
本発明の塗抹標本作製装置(10)の制御方法は、
図1に示すように、検体の塗抹標本(1)を撮像する標本撮像部(50)を備える検査システム(100)に組み込まれる塗抹標本作製装置(10)の制御方法であって、複数の塗抹標本(1)を作製し、作製された塗抹標本(1)を、塗抹標本(1)を複数収容可能な収容容器(3)に順次収容し、収容容器(3)の搬送状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器(3)における塗抹標本(1)の収容数にかかわらず、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を塗抹標本作製装置(10)から搬出する。
【0012】
本発明の塗抹標本作製装置(10)の制御方法は、上記のように、収容容器(3)の搬送状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器(3)における塗抹標本(1)の収容数にかかわらず、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を塗抹標本作製装置(10)から搬出する。これにより、検査システム(100)における収容容器(3)の搬送状況に応じて、収容容器(3)が満杯になっていない場合でも、収容容器(3)を標本撮像部(50)へ搬送できる。そのため、標本撮像部(50)において撮像処理待ちの塗抹標本(1)が存在しない場合や、撮像処理待ちの塗抹標本(1)が少ない場合に、標本撮像部(50)への収容容器(3)の搬送が遅滞している状況で、収容容器(3)が満杯になる前に収容容器(3)を搬送することにより、標本撮像部(50)に塗抹標本(1)を早期に供給できる。これにより、標本撮像部(50)における撮像処理を早期に開始できるので、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【0013】
本発明の検査システム(100)は、
図1に示すように、複数の塗抹標本(1)を作製し、作製された複数の塗抹標本(1)を、塗抹標本(1)を複数収容可能な収容容器(3)に順次収容する標本作製部(10)と、標本作製部(10)から搬出された収容容器(3)を搬送する容器搬送部(30)と、容器搬送部(30)から収容容器(3)とともに搬送された塗抹標本(1)を撮像する標本撮像部(50)と、標本撮像部(50)における撮像処理の待ち状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器(3)における塗抹標本(1)の収容数にかかわらず、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を標本撮像部(50)へ搬送する制御を行う制御部(70)と、を備える。
【0014】
本発明の検査システム(100)は、上記のように、標本撮像部(50)における撮像処理の待ち状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器(3)における塗抹標本(1)の収容数にかかわらず、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を標本撮像部(50)へ搬送する制御を行う制御部(70)を備える。これにより、標本撮像部(50)における撮像処理の待ち状況に応じて、収容容器(3)が満杯になっていない場合でも、収容容器(3)を標本撮像部(50)へ搬送できる。そのため、業務時間の開始直後または標本作製を開始した時など、標本撮像部(50)において撮像処理待ちの塗抹標本(1)が存在しない場合や、撮像処理待ちの塗抹標本(1)が少ない場合に、収容容器(3)が満杯になってから収容容器(3)を搬送する場合と比べて、標本撮像部(50)に塗抹標本(1)を早期に供給できるので、標本撮像部(50)における撮像処理を早期に開始できる。その結果、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【0015】
本発明の検査システム(100)は、
図14に示すように、複数の塗抹標本(1)を作製し、作製された複数の塗抹標本(1)を、塗抹標本(1)を複数収容可能な収容容器(3)に順次収容する標本作製部(10)と、標本作製部(10)から搬出された収容容器(3)を搬送する容器搬送部と、容器搬送部から収容容器(3)とともに搬送された塗抹標本(1)を撮像する標本撮像部(50)と、複数の搬送モードから設定された一の搬送モードに応じて、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を標本作製部(10)から搬送する制御を行う制御部(70)と、を備え、複数の搬送モードは、収容容器(3)の搬送状況にかかわらず収容容器(3)に収容可能な最大枚数の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードと、収容容器(3)の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードとを含む。
【0016】
本発明の検査システム(100)は、上記のように、複数の搬送モードから設定された一の搬送モードに応じて、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を標本作製部(10)から搬送する制御を行う制御部(70)を備え、複数の搬送モードは、収容容器(3)の搬送状況にかかわらず収容容器(3)に収容可能な最大枚数の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードと、収容容器(3)の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードとを含む。これにより、収容容器(3)の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードに設定すれば、収容容器(3)の搬送状況に応じて収容容器(3)が満杯になる前でも収容容器(3)を搬送することができる。その結果、標本撮像部(50)に塗抹標本(1)を早期に供給し、標本撮像部(50)における撮像処理を早期に開始できるので、オペレータは早期に標本画像の確認を開始することができる。また、収容容器(3)の搬送状況にかかわらず収容容器(3)に収容可能な最大枚数の塗抹標本(1)が収容された収容容器(3)を搬送するモードに設定すれば、収容容器(3)の搬送状況に応じて収容容器(3)が満杯になってから収容容器(3)を搬送することで、収容容器(3)の搬送回数が不必要に多くなることを抑制できる。その結果、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【0017】
本発明の塗抹標本作製装置(10)は、
図1に示すように、塗抹標本撮像装置(50)を備えた検査システム(100)に組み合わせ可能な塗抹標本作製装置(10)であって、複数の塗抹標本(1)を作製する作製処理部(10b)と、作製された複数の塗抹標本(1)を、塗抹標本(1)を複数収容可能な収容容器(3)に順次収容する移送部(19)と、検査システム(100)を構成する他の装置(30)と接続可能に構成され、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を搬送する搬送部(23)と、収容容器(3)の搬送状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器(3)における塗抹標本(1)の収容数にかかわらず、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を搬送部(23)から搬出する制御を行う制御部(70)と、を備える。
【0018】
本発明の塗抹標本作製装置(10)は、上記のように、収容容器(3)の搬送状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器(3)における塗抹標本(1)の収容数にかかわらず、塗抹標本(1)を収容した収容容器(3)を搬送部(23)から搬出する制御を行う制御部(70)を備える。これにより、検査システム(100)における収容容器(3)の搬送状況に応じて、収容容器(3)が満杯になっていない場合でも、収容容器(3)を標本撮像部(50)へ搬送できる。そのため、標本撮像部(50)において撮像処理待ちの塗抹標本(1)が存在しない場合や、撮像処理待ちの塗抹標本(1)が少ない場合に、標本撮像部(50)への収容容器(3)の搬送が遅滞している状況で、収容容器(3)が満杯になる前に収容容器(3)を搬送することにより、標本撮像部(50)に塗抹標本(1)を早期に供給できる。これにより、標本撮像部(50)における撮像処理を早期に開始できるので、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】検査システムの一実施形態の平面説明図である。
【
図2】検査システムの一実施形態の斜視説明図である。
【
図4】塗抹標本のフロスト部への印刷例を示した図である。
【
図6】標本作製部の染色槽および移送部の斜視説明図である。
【
図10】検査システムの制御に関わる構成を示したブロック図である。
【
図11】検査システムの制御方法を示したフロー図である。
【
図12】収容容器の搬送タイミング判定処理を示したフロー図である。
【
図13】搬送タイミングを判定するための搬送モードを説明するための図である。
【
図14】搬送モードの設定画面の一例を示した説明図である。
【
図15】塗抹標本および収容容器の搬送経路を示した平面説明図である。
【
図16】撮像処理が終了するまでの残り時間を説明するための図である。
【
図17】第4搬送モードにおける撮像処理の待ち状況に基づく搬送条件充足判定処理を説明するためのフロー図である。
【
図18】第5搬送モードにおける撮像処理の待ち状況に基づく搬送条件充足判定処理を説明するためのフロー図である。
【
図19】第1搬送モードにおける処理の流れを示す図(A)および第4搬送モードにおける処理の流れを示す図(B)である。
【
図20】第1変形例による第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を示したフロー図である。
【
図21】第2変形例による第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を示したフロー図である。
【
図22】第3変形例による第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を示したフロー図である。
【
図23】第4変形例による第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を示したフロー図である。
【
図24】第5変形例による第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を示したフロー図である。
【
図25】第6変形例による第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を示したフロー図である。
【
図26】第7変形例による標本作製部の標本作製および搬送動作を示したフロー図である。
【
図27】第8変形例による標本作製部の標本作製および搬送動作を示したフロー図である。
【
図28】第9変形例による標本作製部の標本作製および搬送動作を示したフロー図である。
【
図29】第10変形例による標本作製部の標本作製および搬送動作を示したフロー図である。
【
図30】搬送モードの設定画面の他の例を示した図である。
【
図31】
図30における搬送モードの選択時の設定画面を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、実施形態を図面に基づいて説明する。
[検査システムの概要]
まず、
図1を参照して、一実施形態による検査システム100の概要について説明する。
【0022】
〔検査システム〕
本発明の一実施形態に係る検査システム100は、
図1に示すように、標本作製部10と、容器搬送部30と、標本撮像部50とを備えている。標本作製部10では、塗抹標本1が作製され、作製された塗抹標本1が収容容器3に収容される。塗抹標本1を収容した収容容器3が、標本作製部10から容器搬送部30へ搬送される。容器搬送部30では、標本作製部10から収容容器3が、標本撮像部50に塗抹標本1を供給するための所定位置へ搬送され、収容容器3内の塗抹標本1が容器搬送部30により標本撮像部50に供給される。検査システム100は、これらの標本作製部10、容器搬送部30および標本撮像部50により、検体が塗抹された塗抹標本1の作製から検体の撮像までの一連の動作を自動的に行うことができる。
【0023】
なお、本明細書においては、
図1に示すX方向を左右方向、Y方向を前後方向、Z方向を上下方向として説明する。また、
図1においてはY2側を前側とし、Y1側を後側としている。つまり、検査システム100において、標本作製部10が容器搬送部30の右側部に配置され、容器搬送部30の後側に標本撮像部50が配置されている。容器搬送部30は、その一部が標本撮像部50の前側に対向して配置されている。また、本明細書においては、左右方向と言う意味で「横」と記載することがあり、前後方向という意味で「縦」と記載することがある。
【0024】
図2に示すように、標本作製部10と、容器搬送部30と、標本撮像部50とは、それぞれ、別々の筐体に収容されている。本実施形態の検査システム100は、塗抹標本作製装置である標本作製部10と、塗抹標本撮像装置である標本撮像部50とを、収容容器3および塗抹標本1の搬送装置である容器搬送部30によって相互に接続することによって構築されている。つまり、標本作製部10と標本撮像部50とは、それぞれ、独立した装置としても機能するものである。検査システム100は、
図2の形態以外にも、標本作製部10と、容器搬送部30と、標本撮像部50とを単一の筐体に収容した単一の検査装置として構成されてもよい。
【0025】
[標本作製部]
標本作製部10は、被験者の検体である血液をスライドガラス2(
図3参照)上に塗抹し、乾燥および染色等の処理を施すことにより塗抹標本1を作製する装置である。なお、検体は血液には限定されない。標本作製部10は、複数の検体の夫々に対する標本作製依頼に応じて複数の塗抹標本1を作製し、作製された複数の塗抹標本1を、塗抹標本1を複数収容可能な収容容器3に収容するように構成されている。
【0026】
塗抹標本1は、
図3に示すように、長方形状のガラス製の板材であるスライドガラス2の中央部2aに、検体が塗抹されることにより作製される。塗抹標本1の長手方向の一端部である上部(ハッチングを付した部分)には、後述する識別情報の印字領域であるフロスト部2bが設けられている。フロスト部2bは、ガラス表面に合成樹脂をコーティングすることにより、インクによる印字が可能な処理が施された領域である。本明細書では、標本作製部10における標本作製処理が完了したものだけでなく、標本作製処理が完了する前のスライドガラス2も塗抹標本1と称する。
【0027】
フロスト部2bに印字される識別情報には、
図4に示すように、検体識別情報A1と、撮像要否識別情報A2とが含まれる。検体識別情報A1は、検体番号、日付、受付番号、被験者の氏名等の検体を識別するための情報であり、文字、記号等の形態でフロスト部2bに印字される。作製される塗抹標本1は、撮像の対象となる第1種の塗抹標本1と、撮像の対象とならない第2種の塗抹標本1と、を含む。撮像要否識別情報A2は、標本撮像部50の撮像対象となる検体であるか否か(第1種であるか第2種であるか)を識別するための情報である。第1種の検体であるか、又は、顕微鏡による目視検査(いわゆる鏡検)の対象となる第2種の検体であるかは、検査を受け付けるときに予めホストコンピュータ200(
図1参照)に入力することができる。
【0028】
撮像要否識別情報A2は、検体識別情報A1とは別にフロスト部2bに印字されている。撮像要否識別情報A2としては、二次元コード、文字、図形または記号等が用いられる。撮像要否識別情報A2の例としては、例えば、アルファベットのA、B、C等の種々の文字や幾何学的図形である。
図4では「DI」という文字が撮像対象であることを示す。「DI」が印字されている場合、その標本は撮像の対象となる第1種の塗抹標本1である。撮像の対象とならない第2種の塗抹標本1の場合、「DI」とは異なるとともに第2種であることを示す別の印字パターン(たとえば「X」)がなされる。なお、撮像要否識別情報A2は、検体識別情報A1とともに、二次元コードA3にも記録されている。
【0029】
標本作製部10は、
図1に示したように、スライド供給部11と、印刷部12と、塗抹部13と、吸引部14と、乾燥部15と、染色槽16a~16eと、洗浄槽17a、17bと、乾燥槽18と、移送部19(
図6参照)と、搬送部23とを備えている。染色槽16a~16e、洗浄槽17a、17b、乾燥槽18が、標本作製部10における染色部10aを構成している。そして、塗抹部13、乾燥部15および染色部10aが、標本作製部10における作製処理部10bを構成している。本実施形態では、作製処理部10bにより、検体をスライドガラス2に塗抹して塗抹標本1を作製する。標本作製部10は、さらに、染色槽16a~16eおよび洗浄槽17a、17bに対してそれぞれ染色液および洗浄液を供給し、また排出するための流体回路部21(
図6参照)と、移送部19の動作の制御を行うための制御部70とを備えている。
【0030】
スライド供給部11は、検体を塗抹する前の未使用のスライドガラス2を多数収納している。スライド供給部11は、塗抹前のスライドガラス2を一枚ずつ印刷部12に供給する。印刷部12は、スライドガラス2のフロスト部2b(
図3参照)に、検体識別情報A1や撮像要否識別情報A2等の各種情報(
図4参照)を印字する。印刷部12は、印字したスライドガラス2を塗抹部13に供給する。
【0031】
吸引部14は、検体搬送部6により搬送された検体容器7中の検体を吸引する。検体搬送部6は、複数の検体容器7を保持できる検体ラック8を搬送することにより、検体ラック8に保持された複数の検体容器7を読取位置B1に順次搬送した後、順次吸引位置B2に搬送する。検体ラック8は、複数の検体容器7を所定方向に並べて保持する。検体容器7には、検体の識別IDを記録したバーコードが付与されており、読取位置B1において、ID読取部14aによって識別IDが読み取られる。ID読取部14aは、光学式のバーコードリーダからなる。吸引部14は、吸引位置B2に搬送された検体容器7内から検体を吸引して、吸引した検体を塗抹部13に供給する。
【0032】
塗抹部13は、吸引部14により吸引された検体を、印刷部12から送られてきたスライドガラス2の中央部2a(
図3参照)に塗抹する。塗抹部13は、塗抹処理後の塗抹標本1を乾燥部15に供給する。
【0033】
乾燥部15は、検体が塗抹された塗抹標本1を塗抹部13から受け取り、中央部2a(
図3参照)に塗抹された検体を乾燥させる機能を有する。
【0034】
図6に示すように、染色部10aでは、乾燥部15で乾燥された検体塗抹済みの塗抹標本1に対して、各染色槽16a、16b、16c、16d、16eおよび各洗浄槽17a、17bでそれぞれ染色処理および洗浄処理が行われる。その後、乾燥槽18で乾燥処理が行われる。塗抹標本1の染色が完了すると、染色済みの塗抹標本1は搬送部23(
図1参照)に送られる。これらの各部間の塗抹標本1の移送は、移送部19により行われる。
【0035】
染色槽16a~16eの各々は、上面が開放された凹状の内部空間を有する容器形状に形成されており、検体が塗抹された塗抹標本1を浸すことができるように、その内部に染色液21aが溜められる。また、各洗浄槽17aおよび17bも容器形状に形成されており、染色された塗抹標本1を浸すことができるように、その内部に洗浄液21bが溜められる。標本作製部10では、3つの染色槽16a、16b、16c、洗浄槽17a、2つの染色槽16d、16e、および洗浄槽17bがY軸方向に沿って順に配置されており、これらの槽は一つの槽を構成する一部分として合成樹脂で一体形成されている。なお、染色槽16および洗浄槽17の数は、染色処理の内容や工程数等に応じて適宜選定すればよく、本発明において特に限定されない。
【0036】
染色槽16a、16b、16c、16d、16eおよび洗浄槽17a、17b内は、それぞれ仕切りが設けられている。塗抹標本1は、隣接する仕切りの間に挿入されることで、各槽内ではZ方向に沿って立てた姿勢で保持される。
【0037】
移送部19は、検体が塗抹された塗抹標本1を把持して移送するように構成されている。移送部19は、染色槽16a、16b、16c、16d、16e内又は洗浄槽17a、17b内に塗抹標本1を1枚ずつ出し入れできるように構成されている。このように塗抹標本1を1枚ずつ出し入れするための移送部19の構成としては、種々の構成を採用することができる。本実施形態では、移送部19は、水平方向(X方向およびY方向)および上下方向(Z方向)に移動可能であり、塗抹標本1を把持するためのハンド部22を含む3軸直交ロボットを採用している。ハンド部22としては、例えば、塗抹標本1を挟んで掴むことができる開閉機構や、塗抹標本1の所定部位を負圧により吸着して掴む吸引機構を用いることができる。
【0038】
移送部19は第1移送部19aおよび第2移送部19bを備えている。第1移送部19aおよび第2移送部19bは、いずれも染色槽16a、16b、16c、16d、16eおよび洗浄槽17a、17bの上方(Z1方向)に配置される。第1移送部19aおよび第2移送部19bは、共通のX軸レール25aに対してそれぞれ係合するX軸スライダ25bと、対応するX軸モータ25cとによって、それぞれX方向に移動可能である。第1移送部19aおよび第2移送部19bは、それぞれ、Y軸レール25dと、Y軸レール25dに係合するY軸スライダ25eと、Y軸モータ25fとによって、Y方向に移動可能である。第1移送部19aおよび第2移送部19bは、互いに独立して水平方向(X方向およびY方向)に移動することができる。ハンド部22は、Z軸モータ22aと伝達機構22bとによりZ方向に移動することができる。ハンド部22は、一枚の塗抹標本1を厚さ方向に挟んで把持したり、把持した塗抹標本1を開放したりできる。
【0039】
乾燥槽18は、染色処理および洗浄処理が施された塗抹標本1を乾燥させるように構成されている。乾燥槽18は、隣接する仕切りの間に塗抹標本1をZ方向に沿って立てた姿勢で保持できる。乾燥槽18には、乾燥槽18内に保持された塗抹標本1に温風を供給するための送風ユニット18aが設けられている。
【0040】
染色、洗浄および乾燥処理が終了した塗抹標本1は、移送部19により
図1に示した搬送部23に移送される。搬送部23は、収容容器3を搬送するように構成されている。
【0041】
図5に示したように、収容容器3は、複数の収容部3aを有し、染色済みの塗抹標本1を複数収容可能に構成されている。収容容器3は、上面が開口した箱型形状を有し、内部に複数の仕切り部3bが設けられている。仕切り部3bは、対向する一対の壁3cの内面のそれぞれに、収容容器3の短手方向に対向するように形成されている。収容部3aは、収容容器3の長手方向に隣り合う仕切り部3bの間の空間により構成されている。本実施形態における収容容器3は、M箇所の収容部3aを有する。本実施形態では、収容容器3が収容可能な塗抹標本1の最大枚数Mは10枚である。
【0042】
搬送部23は、複数の空の状態の収容容器3を貯留および搬送することができる搬入路23a、複数の塗抹標本1が収納された収容容器3を貯留および搬送することができる搬出路23b、および収容容器3を搬入路23aから搬出路23bに送る横送り機構23cを含んでいる。搬入路23aおよび搬出路23bは、いずれもベルトコンベヤを含んでおり、収容容器3をY方向に搬送することができる。搬送部23では、ユーザが空の収容容器3を搬入路23aの投入部Piにセットすると、収容容器3が標本収容位置Psに向けてY1方向へ自動的に搬送される。
【0043】
乾燥槽18による乾燥処理が終了した塗抹標本1から順番に、移送部19が掴み上げ、標本収容位置Psに配置された収容容器3の空いた収容部3aに塗抹標本1が順次収容される。本実施形態では、塗抹標本1が、収容容器3に対して1枚ずつ収容される。収容容器3に塗抹標本1が順次収容される過程で、後述する搬送タイミングになると、標本収容位置Psの収容容器3が、横送り機構23cによって搬入路23aから搬出路23bへと移送される。搬出路23bに移送された収容容器3は、Y2側に自動的に搬送される。搬出路23bの最もY2側に搬送された収容容器3は、横送り部24によって容器搬送部30に移送される。
【0044】
(容器搬送部)
容器搬送部30は、標本作製部10から搬送された収容容器3を搬送するように構成されている。容器搬送部30は、複数の塗抹標本1を収容した収容容器3を搬送するための容器搬送路31と、容器搬送路31により搬送された収容容器3に収容された塗抹標本1を取り出し、取り出した塗抹標本1を、標本撮像部50に供給するための標本移送部41とを備えている。
【0045】
〈容器搬送路〉
本実施形態における容器搬送路31は、前後2列の搬送路、すなわち標本撮像部50側(Y1側)の第1搬送路32と、第1搬送路32の前側(Y2側)の第2搬送路33とを有している。第1搬送路32および第2搬送路33は、いずれもベルト32b(
図8参照)と、当該ベルト32bを駆動させる駆動部32a(
図8参照)とを備えたベルトコンベヤを含んでおり、収容容器3をX方向に搬送することができる。
【0046】
第1搬送路32は、上流側(X1側)から下流側(X2側)に向けて、第2位置C2、第1位置C1、および第1貯留領域C3を含む。第1位置C1は、標本撮像部50に供給される塗抹標本1が収容容器3から取り出される位置である。第2位置C2は、第1位置C1への収容容器3の搬送を待機する位置である。第1貯留領域C3は、標本撮像部50による撮像対象となる第1種の塗抹標本1が取り出され、撮像の対象とならない第2種の塗抹標本1だけを収容した収容容器3が貯留される領域である。
【0047】
第1搬送路32は、上流側(X1側)端部において、標本作製部10の搬出路23bと接続されている。標本作製部10から搬送された収容容器3は、横送り部24によって第1搬送路32の上流端に移送される。第1搬送路32に移送された収容容器3は、第1位置C1に収容容器3がなければ、第1位置C1へ搬送される。第1位置C1に既に収容容器3がある場合、第1搬送路32に移送された収容容器3は第2位置C2で待機する。待機する収容容器3が複数ある場合、それらの収容容器3は、第2位置C2からX1方向へ標本作製部10から搬送された順番で並ぶことになる。
【0048】
図7に示すように、第1位置C1および第2位置C2には、それぞれ、容器センサ34aおよび容器センサ34bが設けられている。容器センサ34aおよび容器センサ34bは、収容容器3の有無を検知するための接触式センサである。収容容器3の有無を検知するためのセンサは、たとえば光学センサ、磁気センサ、重量センサ、または超音波センサでもよい。
【0049】
第1搬送路32は、第1位置C1および第2位置C2に、それぞれ、ロック機構35aおよび35bを備える。ロック機構35a、35bは、いずれも第1搬送路32の搬送動作に対して収容容器3を固定する機構である。ロック機構35a、35bが収容容器3の固定を解除した場合に、収容容器3が第1搬送路32の搬送動作によってX方向に搬送される。ロック機構35a、35bの固定および固定解除の切り替えにより、第1搬送路32は、第1位置C1および第2位置C2の一方の収容容器3を固定したまま、他方の収容容器3だけを搬送できる。
【0050】
第1位置C1に搬送された収容容器3から、撮像対象となる第1種の塗抹標本1が取り出される。収容容器3内に第1種の塗抹標本1がなくなると、第1搬送路32は、その収容容器3を第1位置C1から第1貯留領域C3へ搬送する。収容容器3に第1種の塗抹標本1が1枚も収容されていない場合(第2種の塗抹標本1のみの場合)には、その収容容器3は第1位置C1で塗抹標本1が取り出されることなく、第1貯留領域C3へ搬送される。第1位置C1の収容容器3から第1貯留領域C3へ搬送されると、第1搬送路32は、空いた第1位置C1へ、第2位置C2から次の収容容器3を搬送する。
【0051】
なお、本実施形態では、第1搬送路32の第1位置C1と第2位置C2との間に、割り込み領域C4が設けられている。この割り込み領域C4には、標本作製部10とは別個に、手作業で作製した塗抹標本1を収容した収容容器3をユーザが直接配置することができる。割り込み領域C4に配置された収容容器3が第1位置C1に搬送されることで、ユーザが手作業で作製した塗抹標本1の撮像処理を標本撮像部50に実行させることができる。
【0052】
第2搬送路33は、上流側(X1側)から下流側(X2側)に向けて、セット領域D2、撮像済み収容位置D1、第2貯留領域D3を含む。セット領域D2は、空の状態の収容容器3を貯留する領域である。空の状態の収容容器3は、ユーザによりセット領域D2に設置される。撮像済み収容位置D1は、標本撮像部50による撮像が終了した塗抹標本1が、収容容器3内に順次収容される位置である。撮像済み収容位置D1は、標本取出位置である第1位置C1とY方向に並んでいる。第2貯留領域D3は、標本撮像部50による撮像後の、第1種の塗抹標本1だけを収容した収容容器3が貯留される領域である。
【0053】
第2搬送路33は、空の収容容器3をセット領域D2から撮像済み収容位置D1まで搬送する。標本撮像部50による撮像が終了した塗抹標本1が、撮像済み収容位置D1の収容容器3内に順次収容される。つまり、第1種の塗抹標本1は、第1搬送路32の収容容器3から取り出され、撮像後には第2搬送路33の別の収容容器3に収容される。撮像済み収容位置D1の収容容器3が満杯になると、第2搬送路33は、撮像済み収容位置D1の収容容器3を撮像済み収容位置D1から第2貯留領域D3に搬送する。その後、第2搬送路33は、空いた撮像済み収容位置D1へ、セット領域D2から次の空の収容容器3を搬送する。
【0054】
〈標本移送部〉
標本移送部41は、第1搬送路32および第2搬送路33の上方(Z1方向)に設けられている。標本移送部41は、標本作製部10における移送部19(
図6参照)と同様に塗抹標本1を把持して移送するために設けられている。標本移送部41は、収容容器3内に塗抹標本1を1枚ずつ出し入れできるように構成されている。このように塗抹標本1を1枚ずつ出し入れするための標本移送部41の構成としては、種々の構成を採用することができる。本実施形態では、標本移送部41には、水平方向(Y方向)および上下方向(Z方向)に移動可能であり、塗抹標本1を把持するためのハンドリング部42(
図8参照)を含む2軸直交ロボットを採用している。ハンドリング部42としては、例えば、塗抹標本1を挟んで掴むことができる開閉機構や、塗抹標本1の所定部位を負圧により吸着して掴む吸引機構を用いることができる。
【0055】
図8に示すように、標本移送部41は、Y軸レール43aと、当該Y軸レール43aと係合するY軸スライダ43bと、Y軸モータ43cとによって水平方向(Y方向)に移動可能である。Y軸モータ43cとしては、例えばステッピングモータやサーボモータを採用することができる。Y軸モータ43cは、ベルト‐プーリ機構からなる伝達機構を介してY軸スライダ43bをY方向に移動させる。
【0056】
標本移送部41は、ハンドリング部42を昇降させるためのZ軸モータ43dと、伝達機構43eとを含んでいる。Z軸モータ43dは、伝達機構43eを介してハンドリング部42を昇降させることができる。
【0057】
ハンドリング部42は、一対の把持板により一枚の塗抹標本1を厚さ方向に挟んで把持したり、把持した塗抹標本1を開放したりできる。ハンドリング部42は、塗抹標本1の表面側と裏面側とにそれぞれ接触して塗抹標本1を把持する。
【0058】
ここで、検査システム100(
図1参照)は、標本撮像部50に向けて搬送された収容容器3に収容された塗抹標本1を検出する検出部60(
図7参照)を備える。検出部60は、標本移送部41に設けられたカメラにより構成されている。
図9に示すように、検出部60は、標本移送部41のハンドリング部42により取り上げられた塗抹標本1のフロスト部2bと対向する位置に設けられている。これにより、検出部60は、ハンドリング部42により把持された塗抹標本1におけるフロスト部2bに印字された撮像要否識別情報A2(
図4参照)を撮像する。
【0059】
撮像された画像データは、制御部70(
図1参照)によって、ハンドリング部42により取り上げられている状態の塗抹標本1が標本撮像部50の撮像対象であるか否かの判定に用いられる。標本移送部41は、第1位置C1に収容容器3が搬送されると、その収容容器3に収容された塗抹標本1をハンドリング部42により1枚ずつ取り出して、取り出した塗抹標本1のフロスト部2bを検出部60により撮像させる。
【0060】
標本撮像部50による撮像対象であると判定された塗抹標本1は、
図7に示すように、標本移送部41によって、移載位置Wまで移送される。標本移送部41は、移載位置Wに、水平移動機構44を備える。水平移動機構44は、容器搬送部30と標本撮像部50との間で塗抹標本1の受け渡しを行うための、容器搬送部30側の機構である。
【0061】
水平移動機構44は、移載位置Wと、標本撮像部50の標本受渡部51との間で塗抹標本1をX方向に移動させるように構成されている。水平移動機構44は、移載位置Wにおいて標本移送部41から塗抹標本1を受け取って、標本撮像部50の標本受渡部51へ向けてX2方向に移動し、撮像対象の塗抹標本1を標本受渡部51に受け渡す。水平移動機構44は、撮像済みの塗抹標本1を標本受渡部51から受け取って、移載位置Wに向けてX1方向に移動し、移載位置Wにおいて標本移送部41に撮像済みの塗抹標本1を受け渡す。
【0062】
(標本撮像部)
図1に戻り、標本撮像部50は、容器搬送部30から収容容器3とともに搬送された塗抹標本1を撮像するように構成されている。標本撮像部50は、標本受渡部51、搬送部52、オイル塗布部53、撮像部54および分析部55を備える。
【0063】
標本受渡部51は、撮像対象の塗抹標本1を水平移動機構44から受け取り、撮像済みの塗抹標本1を水平移動機構44に受け渡すように構成されている。搬送部52は、受け取った撮像対象の塗抹標本1を、オイル塗布部53に搬送する。オイル塗布部53は、塗抹標本1に塗抹されている検体にイマージョンオイルを塗布する。イマージョンオイルは、開口数を高めて鮮明な画像を得るために用いられる。搬送部52は、塗抹標本1を撮像部54に搬送する。撮像部54は、顕微鏡とカメラとを含む。撮像部54は、塗抹標本1の顕微鏡画像(以下、標本画像という)を撮像する。撮像された標本画像は、分析部55に出力される。撮像済みの塗抹標本1は、搬送部52によって標本受渡部51に戻され、標本受渡部51から水平移動機構44に受け渡される。
【0064】
図10を参照して、検査システム100の制御に関わる構成について説明する。
【0065】
標本作製部10は、制御部70と、記憶部71と、通信部72と、I/O(Input/Output)基板73と、表示部74および入力部75とを備える。容器搬送部30は、検出部60と、通信部81と、I/O基板82と、を備える。標本撮像部50は、制御部91と、通信部92と、I/O基板93と、を備える。
【0066】
標本作製部10のI/O基板73には、駆動機構76が接続されている。駆動機構76は、標本作製部10の各部に設けられたモータ、センサ、バルブなどの総称である。
【0067】
制御部70は、CPU、FPGAなどのプロセッサとメモリとを含んで構成され、記憶部71に記憶されたプログラム71aをプロセッサが実行することにより、標本作製部10の各部を制御する。制御部70は、プログラム71aの機能ブロックとして、標本作製部10を制御する第1制御部70aと、容器搬送部30を制御する第2制御部70bとを含む。第1制御部70aは、I/O基板73を介して駆動機構76を制御する。つまり、第1制御部70aは、標本作製部10による塗抹標本1の作製動作および収容容器3の搬送動作を制御する。第2制御部70bは、通信部72を介して容器搬送部30を制御する。
【0068】
記憶部71は、フラッシュメモリからなる記憶装置で構成され、上記したプログラム71aに加えて、標本作製部10において作製した塗抹標本1の標本情報71bを記憶する。標本情報71bは、収容容器3に収容した個々の塗抹標本1の種別(第1種か第2種か)と、塗抹標本1を収容した収容容器3を標本収容位置Psから搬送した搬送開始時刻と、を含む。本実施形態では、記憶部71は、標本撮像部50における撮像処理の待ち状況に関連する情報71cを記憶する。
【0069】
表示部74は、制御部70に対する設定画面120(
図14参照)を表示可能である。入力部75は、制御部70に対する入力操作を受け付ける。表示部74は、液晶表示装置からなり、入力部75は、表示部74に設けられたタッチパネルからなる。通信部72は、容器搬送部30の通信部81およびホストコンピュータ200と通信を行うための通信インターフェースである。通信部72と通信部81とは、たとえば、USB規格に準拠したケーブル(USBケーブル)より互いに接続されている。通信部72は、たとえばEthernet規格に準拠したケーブル(いわゆるLANケーブル)でホストコンピュータ200と接続されている。なお、通信部72は、通信部81およびホストコンピュータ200と、無線により通信可能に接続されていてもよい。
【0070】
容器搬送部30のI/O基板82には、搬送機構83が接続されている。搬送機構83は、容器搬送部30に設けられたモータ、センサなどの総称である。検出部60とI/O基板82とは、それぞれ通信部81と接続されている。通信部81は、標本作製部10の通信部72と通信を行うための通信インターフェースである。
【0071】
第2制御部70bは、第1位置C1へ搬送された収容容器3中の個々の塗抹標本1について、検出部60による検出(すなわち、フロスト部2bの撮像)を実行させるように、搬送機構83および検出部60を制御する。第2制御部70bは、フロスト部2bの画像に対する画像処理により撮像要否識別情報A2を抽出し、塗抹標本1が第1種(撮像対象)か第2種(撮像対象でない)かを判別する。第2制御部70bは、検出部60の検出結果から第1種(撮像対象)と判別された塗抹標本1を選別して、標本撮像部50へ供給するように搬送機構83を制御する。第2制御部70bは、検出部60の検出結果から第2種(撮像対象)と判別された塗抹標本1を、標本撮像部50へ供給せずに第1位置C1の収容容器3中に収容されたままにする。
【0072】
標本撮像部50の制御部91は、たとえば、CPUおよびメモリを含むコンピュータにより構成されている。通信部92は、分析部55およびホストコンピュータ200と通信を行うための通信インターフェースである。標本撮像部50のI/O基板93には、撮像部54および搬送部52が接続されている。なお、I/O基板93には、オイル塗布部53などを構成するモータ、センサ、バルブなどの各種機構が接続されているが、
図10では省略している。制御部91は、I/O基板93を介して、撮像部54により塗抹標本1の顕微鏡画像を取得する。制御部91は、取得した顕微鏡画像を、通信部92を介して分析部55に送信する。
【0073】
分析部55は、パーソナルコンピュータ(PC)からなり、CPU、ROM、RAMなどからなる本体と、液晶ディスプレイからなる表示部と、キーボードおよびマウスからなる入力デバイスとから主として構成されている。
【0074】
分析部55は、撮像部54で撮像された標本画像に対して画像処理および/または分類処理を実行する。具体的には、分析部55は、細胞の特徴抽出処理や識別分類処理、および、血球画像の切り出し、血球の自動分類、血球種ごとの計数等の所定の処理を行う。撮像された画像データや分析結果は、表示部に表示したり、プリンタを介して出力したりすることができる。
【0075】
〈検査システムの制御方法〉
次に、本実施形態の検査システム100の制御方法を説明する。
図11に示すように、本実施形態の検査システム100の制御方法は、検体の塗抹標本1を撮像する標本撮像部50を備える検査システム100の制御方法であって、少なくとも以下のステップを備える。
【0076】
(1)複数の塗抹標本1を作製する(S2)。
(2)作製された複数の塗抹標本1を、塗抹標本1を複数収容可能な収容容器3に順次収容する(S3)。
(3)標本撮像部50における撮像処理の待ち状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器3における塗抹標本1の収容数にかかわらず、塗抹標本1を収容した収容容器3を標本撮像部50へ搬送する(S4~S6)。
これらの(1)~(3)のステップは、制御部70(
図10参照)によって実施される。すなわち、制御部70は、標本撮像部50における撮像処理の待ち状況に関連する情報71c(
図10参照)が所定の条件に該当すると、収容容器3における塗抹標本1の収容数にかかわらず、塗抹標本1を収容した収容容器3を標本撮像部50へ搬送する制御を行うように構成されている。
【0077】
これにより、標本撮像部50における撮像処理の待ち状況に応じて、収容容器3の複数の収容部3aの全てに塗抹標本1が収容されていない収容容器3が満杯になっていない場合でも、収容容器3を標本撮像部50へ搬送できる。そのため、オペレータの業務時間の開始直後または標本作製を開始した時など、標本撮像部50において撮像処理待ちの塗抹標本1が存在しない場合や、撮像処理待ちの塗抹標本1が少ない場合に、収容容器3が満杯になってから収容容器3を搬送する場合と比べて、標本撮像部50に塗抹標本1を早期に供給できるので、標本撮像部50における撮像処理を早期に開始できる。その結果、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【0078】
以下、検査システム100の制御方法の具体的な流れを説明する。
図11(A)に示す標本作製部10の制御(S1~S6)は、制御部70(第1制御部70a)により実行される。
図11(B)のうち容器搬送部30の制御(S11、S12、S14およびS15)は、制御部70(第2制御部70b)により実行される。
図11(B)のうち標本撮像部50の制御(S13)は、制御部91により実行される。
【0079】
なお、検査システム100の動作開始前の準備作業として、標本作製部10の検体搬送部6に、検体容器7を保持した検体ラック8がユーザにより設置される。標本作製部10の搬入路23aの投入部Piと、容器搬送部30の第2搬送路33のセット領域D2とに、それぞれ、所定数の空の収容容器3が、ユーザにより設置される。そして、ユーザから標本作製開始の指示を受け付けると、検査システム100は、
図11に示す制御処理を開始する。検査システム100の構成は、
図1を参照し、検査システム100の制御に関わる構成は
図10を参照するものとする。
【0080】
図11のステップS1において、第1制御部70aは、標本作製依頼を受け付ける。第1制御部70aは、検体搬送部6により検体ラック8を搬送し、読取位置B1に搬送された各検体の識別IDをID読取部14aによって取得する。第1制御部70aは、通信部72を介して、各検体の識別IDをホストコンピュータ200に送信し、ホストコンピュータ200から、識別IDに対応付けてホストコンピュータ200に記録されている標本作製依頼を受信する。標本作製依頼は、検体の識別IDと、その検体が撮像対象か否かの情報と、その検体の検査項目とを、少なくとも含む。
【0081】
ステップS2において、第1制御部70aは、塗抹標本1の作製動作を実行するための下記の制御を行う。具体的には、第1制御部70aの制御の下、スライド供給部11が未使用のスライドガラスを印刷部12に供給し、印刷部12が、供給されたスライドガラスのフロスト部2bに、標本作製依頼に対応した検体識別情報A1、撮像要否識別情報A2、二次元コード等の各種情報を印刷し、印刷済みスライドガラスを塗抹部13へ供給する。これと並行して、検体搬送部6により吸引位置B2に搬送された検体容器7中の検体を吸引部14が吸引し、吸引した検体を塗抹部13へ供給する。塗抹部13が、印刷部12から供給された印刷済みスライドガラス2の中央部2aに、吸引部14から供給された検体を、塗抹する。検体塗抹済みの塗抹標本1が、塗抹部13から乾燥部15へ供給され、乾燥部15において塗抹された検体に乾燥処理が施された後、乾燥処理後の塗抹標本1が、染色部10aへ供給される。染色部10aへ供給された塗抹標本1が、移送部19によって、染色槽16a~16eおよび洗浄槽17a~17bの一部または全部に対して予め決められた順番で投入されることにより、検体の染色処理および洗浄処理が施される。染色処理および洗浄処理後の塗抹標本1が、移送部19によって乾燥槽18に投入され、乾燥槽18で乾燥処理が行われる。これらの一連の処理の結果、1枚の塗抹標本1の作製処理が完了する。
【0082】
ステップS3において、第1制御部70aは、作製した塗抹標本1を、収容容器3へ収容する制御を行う。第1制御部70aは、標本作製動作を開始した時点で、投入部Piにセットされた収容容器3の先頭の1つを、予め標本収容位置Psに配置させるように搬送部23を動作させる。そして、ステップS3で塗抹標本1が作製されると、第1制御部70aは、移送部19によって、乾燥槽18から塗抹標本1を取り出すとともに、取り出した塗抹標本1を標本収容位置Psの収容容器3の空いている収容部3aに収容する。
【0083】
ステップS4において、第1制御部70aは、収容容器3の搬送タイミングか否かを判定する搬送タイミング判定処理を実行する。搬送タイミング判定処理において、第1制御部70aは、収容容器3の搬送フラグを「1(搬送する)」または「0(搬送しない)」のいずれかに設定する。搬送フラグとは、収容容器3の搬送制御処理において、標本収容位置Psにある収容容器3を、標本収容位置Psから搬送するか否かを判断するための変数であり、「0」または「1」の2値データである。ステップS4の搬送タイミング判定処理の詳細は、後述する。
【0084】
ステップS5において、第1制御部70aは、搬送フラグの値が「1」であるか否かを判断する。搬送フラグの値が「0」である場合、第1制御部70aは、収容容器3を搬送することなく、1回の塗抹標本1の作製処理を終了する。
【0085】
搬送フラグの値が「1」である場合、第1制御部70aは、ステップS6において、標本収容位置Psから、収容容器3を標本撮像部50へ向けて搬送開始する。すなわち、第1制御部70aは、横送り機構23cによって標本収容位置Psの収容容器3を搬入路23aから搬出路23bへと移送し、移送された収容容器3を搬出路23bによって横送り部24まで搬送する。第1制御部70aは、横送り部24により、収容容器3を容器搬送部30の第1搬送路32へ送り出す。なお、第1制御部70aは、ステップS6で収容容器3の搬送を実行した場合、搬送フラグの値を「0」に設定(リセット)する。
【0086】
第1制御部70aは、検体ラック8に保持されている複数の検体容器7について、ステップS1~S6の処理を順次行う。検体ラック8に保持されている全ての検体容器7について検体吸引が完了したら、次の検体ラック8について同様の処理が実施される。そのため、ステップS1~S6の処理は、検体搬送部6に処理対象となる検体がある限り、開始時点をずらしながら継続的に実行される。ステップS1~S6が繰り返し実行される結果、ステップS2では、複数の塗抹標本1が、単位枚数(1枚)ずつ順次作製される。そして、ステップS3の塗抹標本1の収容は、所定の収容時間間隔T1で単位枚数(1枚)ずつ実行される。収容時間間隔T1は、たとえば48秒である。そのため、第1制御部70aは、ステップS4およびS5の収容容器3の搬送タイミングの判定も、収容時間間隔T1の一定周期で実行する。
【0087】
次に、
図11(B)のフローを説明する。ステップS11において、第2制御部70bは、標本作製部10から収容容器3が搬送されたか否かを判断する。第2制御部70bは、第1制御部70aから搬送動作(ステップS6)を実行したか否かの情報を取得し、搬送動作が実行された場合にはステップS12に処理を進める。ステップS6の搬送動作が開始されていない場合、第2制御部70bは、処理を終了する。
【0088】
ステップS12において、第2制御部70bは、標本撮像部50へ収容容器3を搬送するための下記の制御を行う。具体的には、第2制御部70bの制御の下、第1搬送路32に受け入れた収容容器3を、第1搬送路32が第1位置C1へ向けて搬送する。第1位置C1に既に収容容器3が配置されていることが容器センサ34aによって検知されている場合、受け入れた収容容器3は第2位置C2の容器センサ34bに検知されるまで搬送される。第2位置C2に既に収容容器3が配置されていることが容器センサ34bによって検知されている場合、受け入れた収容容器3は第2位置C2のさらにX1側位置まで搬送される。
【0089】
収容容器3が第1位置C1まで搬送されると、第2制御部70bは、検出部60により標本の判別を行う。すなわち、標本移送部41により、第1位置C1の収容容器3中の塗抹標本1を1つずつ取り出して、取り出した塗抹標本1のフロスト部2bを検出部60により撮像(
図9参照)する。第2制御部70bは、フロスト部2bの画像から撮像要否識別情報A2の印字内容を確認することにより、その塗抹標本1が撮像対象(第1種)か、撮像対象でない(第2種)かを判別する。なお、割り込み領域C4に配置された収容容器3が第1位置C1に搬送された場合、その収容容器3に収容されている塗抹標本1には、手作業による作製のため、撮像要否識別情報A2が印字されていない。第2制御部70bは、塗抹標本1に撮像要否識別情報A2が印字されていない場合も、その塗抹標本1が撮像対象(第1種)であると判別する。標本の種別判別は、収容容器3に収容されている全ての塗抹標本1について実施される。
【0090】
ステップS13において、標本撮像部50の制御部91は、塗抹標本の撮像処理を実行する。
【0091】
まず、第2制御部70bは、第1位置C1の収容容器3中の塗抹標本1のうち、撮像対象(第1種)の塗抹標本1を標本移送部41により取り出して、取り出した塗抹標本1を水平移動機構44を介して標本受渡部51に受け渡す。制御部91は、標本受渡部51により、容器搬送部30(水平移動機構44)から撮像対象の塗抹標本1を受け取り、搬送部52によって塗抹標本1を搬送させる。制御部91は、撮像部54により塗抹標本1を撮像する。撮像後、制御部91は、撮像済みの塗抹標本1を搬送部52によって標本受渡部51に戻し、標本受渡部51から水平移動機構44に受け渡す。この際、水平移動機構44に撮像対象の次の塗抹標本1が保持されていれば、制御部91は、標本受渡部51により次の塗抹標本1を受け取る。
【0092】
なお、第2制御部70bは、水平移動機構44により撮像済みの塗抹標本1を受け取ると、移載位置Wにおいて水平移動機構44から撮像済みの塗抹標本1を標本移送部41により取り出して、撮像済み収容位置D1に搬送しておいた収容容器3の空いている収容部3aに撮像済みの塗抹標本1を収容する。
【0093】
ステップS14において、第2制御部70bは、第1位置C1に配置された収容容器3中の塗抹標本1のうち、全ての撮像対象の(第1種の)塗抹標本1に対する撮像処理が完了したか否かを判断する。具体的には、第2制御部70bは、収容容器3中に、撮像対象でない(第2種の)塗抹標本1のみが収容されているか、または収容されている塗抹標本1が1つもない場合に、その収容容器3について撮像処理が完了したと判断する。第2制御部70bは、収容容器3中に撮像対象の(第1種の)塗抹標本1が1枚以上ある場合、撮像処理が完了していないと判断して処理をステップS13に戻す。
【0094】
第2制御部70bは、撮像対象の塗抹標本1に対する撮像処理が完了したと判断した場合、ステップS15に進み、第1搬送路32により、第1位置C1に配置された収容容器3を、第1位置C1から第1貯留領域C3へと搬送し、第2位置C2に待機させていた次の収容容器3を第1位置C1に搬送する。
【0095】
このように、第2制御部70bは、標本作製部10から搬送された収容容器3を容器搬送部30により第1位置C1へ順番に搬送させ、第1位置C1に配置した収容容器3中の撮像対象の塗抹標本1を1枚ずつ取り出して、標本撮像部50へと供給する。第2制御部70bは、第1位置C1に配置した収容容器3中の撮像対象の塗抹標本1がなくなると、第1位置C1から第1貯留領域C3へ収容容器3を搬送して、次の収容容器3を第1位置C1へ搬送する制御を行う。
【0096】
〈搬送タイミング判定処理〉
次に、
図11(A)のステップS4に示した搬送タイミング判定処理の詳細を説明する。
図12に示すように、搬送タイミング判定処理は、予め設定された搬送条件を満たしたか否かで判断される。すなわち、第1制御部70aは、ステップS21において、搬送条件充足判定処理を実行する。搬送条件充足判定処理は、予め設定された搬送モードの搬送条件を満たしたか否かを判定する処理である。搬送モードに応じて、判定される搬送条件の一部または全部が異なる。搬送条件充足判定処理において、第1制御部70aは、「搬送条件を充足した」または「搬送条件を充足しない」のいずれかの判定をする。
【0097】
第1制御部70aは、ステップS22において、ステップS21の搬送条件充足判定処理の結果に基づき、予め設定された搬送モードの搬送条件を満たしたか否かを判断する。ステップS21の判定結果が「搬送条件を充足した」である場合、第1制御部70aは、ステップS23において、搬送フラグの値を「1」に設定する。この結果、
図11(A)のステップS6で収容容器3が搬送される。ステップS21の判定結果が「搬送条件を充足しない」である場合、第1制御部70aは、ステップS24において、搬送フラグの値を「0」に設定する。この場合、
図11(A)のステップS5では搬送タイミングでないとして、収容容器3が搬送されることなく処理が終了する。
【0098】
〈搬送モード〉
本実施形態では、制御部70(第1制御部70a)は、待ち状況に関連する情報71cに基づく所定の条件を含む搬送条件を定めた搬送モードを少なくとも含む複数種類の搬送モード110(
図13参照)のうちからいずれかの搬送モード110の選択を受け付けるように構成されている。そして、制御部70(第1制御部70a)は、選択された搬送モード110に定められた搬送条件を満たした場合に、塗抹標本1を収容した収容容器3を標本撮像部50へ搬送する。
【0099】
これにより、ユーザの要望に応じた搬送タイミングで収容容器3の搬送および標本撮像部50による撮像を行える。すなわち、標本作製依頼の多さやユーザの状況によっては、早い段階で標本画像を確認したい場合だけでなく、搬送頻度を低くしたい場合など、様々な状況がある。そのため、ユーザの要望に合わせて検査システム100を動作させることができる。
【0100】
図13に示す例では、複数種類の搬送モード110として、第1搬送モードから第5搬送モードまでの5種類が設定されている。このうち、待ち状況に関連する情報71cに基づく搬送条件を定めた搬送モード110は、第4搬送モードおよび第5搬送モードの2つである。以下、各搬送モード110について順番に説明する。
図13の各行は、第1搬送モードから第5搬送モードの各搬送モード110を示し、
図13の各列は、それぞれの搬送モード110において適用される搬送条件を示す。
図13に示した丸マークは、その搬送モード110で、丸マークが付された列の搬送条件が適用されることを示す。一つの行に、複数の丸マークが付されている場合、その搬送モード110は、複数の搬送条件を含んでいることを示す。それら複数の搬送条件のいずれか1つが満たされた場合に、搬送条件が満たされたと判断される。
【0101】
図14は、いずれかの搬送モードに設定するための設定画面120の例を示す。第1制御部70aは、表示部74に設定画面120を表示し、ユーザの入力操作を受け付けることによって、搬送モードを選択する。
【0102】
設定画面120は、「収容容器搬送設定」の項目において、ラジオボタンタイプの5種類の選択部121a~121eを含む。
【0103】
「収容容器の最大枚数収容時」と表示された選択部121aが選択されると、第1制御部70aは、第1搬送モードで動作する。「待機状態へ移行時」と表示された選択部121bが選択されると、第1制御部70aは、第2搬送モードで動作する。「標本収納後の経過時間」と表示された選択部121cが選択されると、第1制御部70aは、第3搬送モードで動作する。選択部121cが選択された場合、設定画面120の下部に表示された後述する設定時間Tsの時間入力部122が有効化される。なお、選択部121cが選択されていない場合、時間入力部122は、入力操作を受け付けないグレーアウト表示となる。時間入力部122は、設定時間Tsの表示欄122aと、スライダ122bとを含む。ユーザがスライダ122bを動かすと、スライダ122bの位置に応じた数値が設定され、表示欄122aに表示される。また、設定時間Tsの数値は、プラスボタン122cおよびマイナスボタン122dを入力することで単位量ずつ調整できる。「標本撮像部の撮像タイミング」と表示された選択部121dが選択されると、第1制御部70aは、第4搬送モードで動作する。「標本撮像部の混雑状況予測」と表示された選択部121eが選択されると、第1制御部70aは、第5搬送モードで動作する。
【0104】
なお、設定画面120の上部の収容容器切れ通知条件の項目には、
図1に示した搬入路23aに貯留された空の状態の収容容器3の数が減少したことを通知するための条件を設定するための通知条件入力部123が設けられている。塗抹標本1を収容した収容容器3を搬送すると、空の状態の収容容器3が搬入路23aから補充されるので、搬入路23aに貯留された収容容器3がなくなる前に、ユーザにより空の状態の収容容器3が補充される。第1制御部70aは、搬入路23aに貯留された収容容器3の残数が通知条件入力部123に入力された設定数に合致した場合に、所定の報知メッセージを表示部74に表示する。
【0105】
OKボタン124が入力されることにより、第1制御部70aは、設定内容を記憶部71に反映する。キャンセルボタン125が入力されると、第1制御部70aは、設定内容を反映せずに設定画面120を閉じる。
【0106】
〈第1搬送モード〉
図13に示した第1搬送モードの搬送条件は、収容容器3に収容可能な最大枚数Mの塗抹標本1が収容されることである。第1搬送モードには、最大枚数以外の他の搬送条件が設定されていない。つまり、第1搬送モードでは、第1制御部70aは、
図15に示した標本収容位置Psの収容容器3に最大枚数Mの塗抹標本1が収容されるまで収容容器3を搬送せず、収容容器3に最大枚数Mの塗抹標本1が収容された場合に、収容容器3を搬送させる。上記の通り、本実施形態では、最大枚数M=10である。
【0107】
〈第2搬送モード〉
図13の第2搬送モードは、「収容容器3に収容可能な最大枚数Mの塗抹標本1が収容されること」、および、「標本作製部10が待機状態に移行すること」、の2つの搬送条件を含む。待機状態とは、標本作製部10で標本作製が行われておらず、次に収容する予定の塗抹標本1が判断時点で存在していない状態である。たとえば検体搬送部6にセットされた全ての検体容器7に対する標本作製処理が実施された場合に、次の検体ラック8がセットされ標本作製処理が再開されるまで、標本作製部10が待機状態となる。
【0108】
第2搬送モードでは、第1制御部70aは、
図15に示した標本収容位置Psの収容容器3に最大枚数Mの塗抹標本1が収容された場合に収容容器3を搬送させるが、収容枚数が最大枚数Mになる前に標本作製部10が待機状態に移行した場合、収容枚数が最大枚数Mでなくてもその収容容器3を搬送させる。
【0109】
〈第3搬送モード〉
図13の第3搬送モードは、「標本作製部10が待機状態に移行すること」、および、「収容容器3に1枚目の塗抹標本1が収容されてから設定時間(設定時間Tsとする)が経過すること」、の2つの搬送条件を含む。
図14に示したように、第3搬送モードが設定される場合、第1制御部70aは、1枚目の塗抹標本1が収容されてからの設定時間Tsの値の設定を受け付けることができる。第3搬送モードでは、第1制御部70aは、標本作製部10が待機状態に移行するか、収容容器3に1枚目の塗抹標本1が収容されてから設定時間Tsが経過した場合に、収容容器3を搬送させる。
【0110】
上記の通り、塗抹標本1の収容は、所定の収容時間間隔T1で実行されるので、設定時間Tsの値は、0≦Ts≦{(M-1)×T1}を満たす範囲で設定されうる。Ts=0の場合、収容容器3に1枚目の塗抹標本1が収容された時点で収容容器3が搬送される。Ts={(M-1)×T1}の場合、塗抹標本1が収容時間間隔T1で収容される限り、最大枚数Mに到達した時点での搬送となるが、塗抹標本1の作製が一時的に途切れた場合、最大枚数Mに到達しなくても設定時間Tsの経過により収容容器3が搬送される。
【0111】
〈第4搬送モード〉
図13の第4搬送モードは、上記の通り、撮像処理の待ち状況に関連する情報71c(
図10参照)に基づく所定の条件を含む。本実施形態では、待ち状況に関連する情報71cに基づいて所定の条件を満たしたか否かを判断することにより、特に標本撮像部50の撮像処理待ちとなる塗抹標本1が存在しないかまたは少ない場合に、早期に標本画像の撮像を行うことが可能である。
【0112】
具体的には、第4搬送モードは、「収容容器3に収容可能な最大枚数Mの塗抹標本1が収容されること」、「標本作製部10が待機状態に移行すること」、「搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間(以下、残り時間Trとする)が到達所要時間T3以下であること」、および、「搬送経路上の所定位置に搬送開始済みの収容容器3がないこと」、の4つの搬送条件を含む。撮像処理の待ち状況に関連する情報71cは、撮像処理終了までの残り時間Trの情報(
図16参照)と、搬送経路上の所定位置における搬送開始済みの収容容器3の有無に関する情報と、を含む。
【0113】
「搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trが到達所要時間T3以下であること」という搬送条件において、到達所要時間T3(
図15参照)は、標本収容位置Psの収容容器3の搬送開始から、第1位置C1への収容容器3の到達までに要する時間である。本実施形態では、到達所要時間T3は、収容時間間隔T1よりも長い。到達所要時間T3は、たとえば57秒である。
【0114】
第4搬送モードでは、第1制御部70aは、撮像処理終了までの残り時間Trを、搬送開始済みの収容容器3に収容された塗抹標本1に対する検出部60による検出結果と、1枚の塗抹標本1の撮像処理に要する時間(以下、単位時間T2とする)と、に基づいて取得する。撮像処理に要する時間T2は、1枚の塗抹標本1が第1位置C1の収容容器3から取り出されてから、次の塗抹標本1が第1位置C1の収容容器3から取り出されるまでの時間間隔と考えてよい。単位時間T2は、標本撮像部50の仕様によって予め決められた定数値であり、たとえば120秒である。
【0115】
図16に示すように、第1制御部70aは、検出部60(
図9参照)による検出結果に基づき、第1位置C1にある収容容器3中の、撮像対象(第1種)の塗抹標本1の枚数nを取得する。この枚数nと、1枚の塗抹標本1の撮像処理に要する単位時間T2との積(n×T2)により、現時点から第1位置C1にある収容容器3に収容された全ての第1種の塗抹標本1に対する撮像処理が完了するまでの残り時間Trが、算出される。
【0116】
これにより、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1を実際に検出部60によって検出するので、既に搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trを精度よく算出できる。つまり、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1の枚数nがばらつく場合(満杯まで収容しているとは限らない場合)でも、残り時間Trを正確に把握できる。
【0117】
第1制御部70aは、第1位置C1に収容容器3がある場合、残り時間Trの情報に基づいて、収容容器3の搬送タイミングを制御する。このように、所定の条件は、第1位置C1に収容容器3がある場合、残り時間Trが所定時間(到達所要時間T3)以下であることを含む。これにより、第1位置C1に収容容器3がある場合でも、収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理の残り時間Trが短い場合には、短時間で撮像処理待ちの塗抹標本1を収容した収容容器3が搬送経路上に存在しなくなることが分かる。そこで、残り時間Trを考慮することによって、標本撮像部50が塗抹標本1の供給待ちの待機状態にならないように収容容器3を搬送できる。つまり、標本撮像部50が撮像処理を実行していない時間を短縮できる。
【0118】
本実施形態では、第2位置C2には検出部が設けられていない。したがって、第2位置C2に収容容器3がある場合、検出部60の検出結果から残り時間Trを正確に判断できない。そのため、第4搬送モードにおける「残り時間Trが到達所要時間T3以下である」という搬送条件は、第2位置C2に収容容器3がない場合に判断される。
【0119】
次に、「搬送経路上の所定位置に搬送開始済みの収容容器3がないこと」という搬送条件について説明する。所定の条件は、所定位置において搬送中の収容容器3がないことを含む。第1制御部70aは、この条件に従い、搬送経路上の所定位置における搬送開始済みの収容容器3の有無に関する情報に基づき、収容容器3の搬送タイミングを制御する。
【0120】
これにより、既に搬送開始済みの収容容器3が搬送経路上にある場合、その収容容器3中の塗抹標本1への撮像処理を遅滞なく行うことができるのに対して、搬送開始済みの収容容器3が搬送経路上にない場合、収容容器3の搬送を行わなければ標本撮像部50側の待機時間が長くなることが分かる。そのため、搬送経路上に搬送開始済みの収容容器3があるか否かに応じて、収容容器3の搬送を実行することにより、撮像処理の開始待ち時間を短くできる。
【0121】
図15に示したように、本実施形態では、搬送経路上の所定位置は、標本撮像部50に供給される塗抹標本1が収容容器3から取り出される第1位置C1と、第1位置C1の上流側で第1位置C1への収容容器3の搬送を待機する第2位置C2と、を含む。
【0122】
本実施形態では、所定の条件は、第1位置C1および第2位置C2の少なくとも一方に収容容器3がないことを含む。これにより、第1位置C1および第2位置C2の少なくとも一方に収容容器3があれば、撮像処理待ちの塗抹標本1を収容した収容容器3が搬送経路上に存在していることから、直ちに収容容器3を搬送しなくても撮像処理の開始が遅れる可能性が低いと判断できる。第1位置C1および第2位置C2の両方に収容容器3がなければ、標本撮像部50において次の収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理が実行可能な状態になっても、撮像処理を開始できずに待機する可能性が高いと判断できる。そのため、第1位置C1および第2位置C2の少なくとも一方に収容容器3があるか否かに応じて、収容容器3の搬送を実行することにより、標本撮像部50における撮像処理の開始待ち時間を短くできる。本実施形態では、第1制御部70aは、少なくとも第2位置C2における収容容器3の有無に関する情報基づいて収容容器3の搬送を制御する。
【0123】
本実施形態では、所定の条件は、第1位置C1および第2位置C2の両方に収容容器3がないことを含む。すなわち、第1制御部70aは、第2位置C2に収容容器3がない場合、さらに第1位置C1における収容容器3の有無に関する情報に基づいて、収容容器3の搬送タイミングを制御する。ここで、第1位置C1の収容容器3の有無により、標本撮像部50が撮像処理中であるか、塗抹標本1の供給待ちの待機状態にあるかを判断できる。標本撮像部50が待機状態にある場合、速やかに収容容器3を搬送した方が、標本撮像部50における撮像処理を速やかに開始させることができる。そのため、第1位置C1および第2位置C2の両方に収容容器3がない場合に、収容容器3の搬送を実行することにより、標本撮像部50における撮像処理の開始待ち時間を短くできる。
【0124】
〈第4搬送モードの詳細説明〉
図17を参照して、第4搬送モードのうち、撮像処理の待ち状況に関連する情報71cに基づく搬送条件充足判定処理について説明する。そのため、ここでは、第4搬送モードのうち、収容容器3に収容可能な最大枚数Mの塗抹標本1が収容されること、標本作製部10が待機状態に移行すること、の2つの搬送条件については説明を省略する。この処理は、
図12に示したステップS21の処理に相当する。
【0125】
ステップS31において、第1制御部70aは、容器センサ34bの出力に基づいて、第2位置C2に収容容器3があるか否かを判断する。第1制御部70aは、第2位置C2に収容容器3がある場合、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。第2位置C2に収容容器3がある場合、ステップS32において、第1制御部70aは、容器センサ34aの出力に基づいて、第1位置C1に収容容器3があるか否かを判断する。第1位置C1に収容容器3がない場合、第1制御部70aは、処理をステップS34に進める。
【0126】
第1位置C1に収容容器3がある場合、ステップS33において、第1制御部70aは、第1位置C1の収容容器3に収容された塗抹標本1に関して、撮像処理終了までの残り時間Trが到達所要時間T3以下であるか否かを判断する。第1制御部70aは、残り時間Trが、予め記憶部71に記憶された到達所要時間T3よりも大きい場合、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。撮像処理が修了するまでの残り時間Trが、到達所要時間T3以下である場合、第1制御部70aは、処理をステップS34に進める。
【0127】
ステップS34において、第1制御部70aは、収容容器3の前回搬送からの経過時間(以下、経過時間Teとする)が到達所要時間T3以下であるか否かを判断する。具体的には、第1制御部70aは、記憶部71に記憶した搬送開始済みの収容容器3の搬送開始時刻の情報に基づき、前回搬送した収容容器3の搬送開始時刻から現時点までの経過時間Teを取得する。第1制御部70aは、取得した前回搬送からの経過時間Teが、記憶部71に予め記憶された到達所要時間T3以下である場合、収容容器3の搬送を開始しないように収容容器3の搬送を制御する。すなわち、第1制御部70aは、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。第1制御部70aは、取得した前回搬送からの経過時間Teが、到達所要時間T3よりも大きい場合、ステップS35に処理を進める。
【0128】
このステップS34について、
図15に示すように、収容容器3が標本収容位置Psから搬送された時、その収容容器3は、搬送開始時刻から到達所要時間T3の経過後に第1位置C1に到達する。そのため、前回の搬送開始時刻からの経過時間Teが、到達所要時間T3以下の場合、前回搬送した収容容器3が遅滞なく第1位置C1に搬送されることが分かる。そのため、ステップS34で経過時間Teが到達所要時間T3以下となる場合、収容容器3の搬送を開始しないように収容容器3の搬送を制御することにより、収容容器3に収容された塗抹標本1の枚数が少ない状態で不必要に搬送を実行することを抑制できる。
【0129】
一方、前回の搬送開始時刻からの経過時間Teが到達所要時間T3よりも大きい場合、前回搬送した収容容器3は既に第1位置C1または第2位置C2に到達しているはずである。そのため、第1位置C1および第2位置C2のいずれにも収容容器3が存在していない場合には、搬送経路上に収容容器3が存在していないことが分かる。そこで、第1制御部70aは、前回の搬送開始時刻からの経過時間Teが到達所要時間T3よりも大きい場合に、ステップS35に処理を進める。
【0130】
このように、第4搬送モードでは、待ち状況に関連する情報71c(
図10参照)は、収容容器3の搬送開始時刻の情報を含み、所定の条件は、前回搬送した収容容器3の搬送開始時刻に関する条件をさらに含む。
【0131】
このように、前回搬送した収容容器3の搬送開始時刻の情報を考慮することによって、収容容器3が第1位置C1および第2位置C2になくても搬送中であることが把握できるので、収容容器3に収容された塗抹標本1の枚数が少ない状態で不必要に搬送を実行することを抑制できる。
【0132】
図17のステップS35において、第1制御部70aは、今回の搬送対象の収容容器3(標本収容位置Psの収容容器3)内に、撮像対象(第1種)の塗抹標本1が存在しているか否かを判断する。第1制御部70aは、標本収容位置Psの収容容器3へ収容した塗抹標本1の標本情報71bに基づいて、標本収容位置Psの収容容器3に第1種の塗抹標本1が収容されているか否かを取得する。第1制御部70aは、標本収容位置Psの収容容器3に第1種の塗抹標本1が1枚も収容されていない場合(0枚である場合)、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。第1制御部70aは、標本収容位置Psの収容容器3に第1種の塗抹標本1が1枚以上収容されている場合、ステップS37において、搬送条件を充足したと判定する。この結果、
図12に示したステップS23で搬送フラグが「1」に設定される。
【0133】
このように、本実施形態では、所定の条件は、前回搬送した収容容器3の搬送開始時刻からの経過時間Teが到達所要時間T3よりも大きい場合、標本収容位置Psの収容容器3における第1種の塗抹標本1が存在することを含む。第1制御部70aは、標本収容位置Psの収容容器3における第1種の塗抹標本1の有無に基づいて、収容容器3の搬送タイミングを制御する。
【0134】
ここで、
図15の標本収容位置Psにある収容容器3に撮像対象の塗抹標本1が存在しなければ、収容容器3を搬送しても標本撮像部50の撮像開始を早めることにはならない。そこで、第1種の塗抹標本1の有無を判断することにより、標本撮像部50の撮像開始を早めることが可能か否かを考慮して、次の収容容器3を搬送することができる。
【0135】
〈第5搬送モード〉
図13の第5搬送モードは、上記の通り、撮像処理の待ち状況に関連する情報71cに基づく搬送条件を含む。また、第5搬送モードと第4搬送モードとの相違の1つは、第4搬送モードでは検出部60の検出結果から撮像処理終了までの残り時間Trを取得するのに対して、第5搬送モードでは、標本作製部10が作製した塗抹標本1の標本情報71bに基づいて撮像処理終了までの残り時間Trを推定する点にある。
【0136】
具体的には、第5搬送モードは、「収容容器3に収容可能な最大枚数Mの塗抹標本1が収容されること」、「標本作製部10が待機状態に移行すること」、「搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trが到達所要時間T3以下であること」、の3つの搬送条件を含む。第5搬送モードでは、待ち状況に関連する情報71cは、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trの情報を含む。
【0137】
第1制御部70aは、残り時間Trを、搬送開始済みの収容容器3に対して標本作製部10が収容した塗抹標本1の標本情報71b(
図10参照)と、1枚の塗抹標本1の撮像処理に要する単位時間T2と、に基づいて取得する。
【0138】
これにより、標本情報71bから、標本作製部10が収容した塗抹標本1の枚数nを取得することで、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trが算出できる。残り時間Trが大きい場合、直ちに収容容器3を搬送しなくても撮像処理の開始が遅れる可能性が低いと判断できる。残り時間Trが短い場合、標本撮像部50において次の収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理が実行可能な状態になっても、撮像処理を開始できない可能性が高いと判断できる。そのため、残り時間Trの情報に応じて、収容容器3の搬送を実行することにより、標本撮像部50における撮像処理の開始待ち時間を効果的に短くできる。そして、塗抹標本1の枚数nを、実際に標本作製部10が収容容器3に収容した実績に基づいて取得できるので、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1の枚数がばらつく場合(満杯まで収容しているとは限らない場合)でも、残り時間Trを精度よく算出できる。
【0139】
具体的には、第1制御部70aは、1枚の塗抹標本1を収容容器3に収容する毎に、その塗抹標本1の標本情報71bを記憶部71に記録する。標本情報71bは、収容した塗抹標本1の種別(第1種か第2種か)と、塗抹標本1を収容した収容容器3を標本収容位置Psから搬送した搬送開始時刻とを含む。そのため、収容容器3を搬送したとき、第1制御部70aは、その収容容器3に収容されている撮像対象(第1種)の塗抹標本1の枚数nを、標本情報71bから取得できる。第1制御部70aは、収容容器3を搬送する度に、撮像処理が完了するまでの残り時間Trを、その収容容器3に収容されている撮像対象の塗抹標本1の枚数nと単位時間T2との積の値(n×T2)だけ加算する。たとえば、収容容器3を搬送した順番を、変数xで表し、x番目に搬送した収容容器3に収容されていた第1種の塗抹標本1の枚数をnxとする。算出される残り時間Trは、残り時間Tr=T3+(n1×T2)+(n2×T2)+・・・+(nx×T2)となる。第1制御部70aは、時間経過に伴って残り時間Trをカウントダウンすることで、現時点における残り時間Trの値を取得する。そして、第1制御部70aは、残り時間Trが到達所要時間T3以下となる場合に、次の収容容器3を搬送する。
【0140】
第5搬送モードでは、検出部60の検出結果を用いずに、標本作製部10による塗抹標本1の収容実績に基づいて残り時間Trを算出するため、搬送開始済みの収容容器3がどこにあるか(第1位置C1にあるか、第2位置C2にあるか、他の位置にあるか)を考慮しない。そのため、第1位置C1および第2位置C2における収容容器3の有無に関わらず、推定した残り時間Trと到達所要時間T3との大小関係によって搬送条件の充足が判断される。
【0141】
〈第5搬送モードの詳細説明〉
図18を参照して、第5搬送モードのうち、撮像処理の待ち状況に関連する情報71cに基づく搬送条件充足判定処理について説明する。そのため、ここでは、第5搬送モードのうち、収容容器3に収容可能な最大枚数Mの塗抹標本1が収容されること、標本作製部10が待機状態に移行すること、の2つの搬送条件については説明を省略する。この処理は、
図12に示したステップS21の処理に相当する。
【0142】
ステップS41において、第1制御部70aは、搬送開始済みの収容容器3に収容した塗抹標本1の標本情報71bから、搬送開始済みの全ての収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理の残り時間Trを算出する。
【0143】
ステップS42において、第1制御部70aは、ステップS41で算出した現時点の残り時間Trが、予め記憶部71に記憶された到達所要時間T3以下か否かを判断する。現時点の残り時間Trが、到達所要時間T3よりも大きい場合、第1制御部70aは、ステップS45において、搬送条件を充足しないと判定する。現時点の残り時間Trが、到達所要時間T3以下である場合、第1制御部70aは、ステップS43に処理を進める。
【0144】
ステップS43において、第1制御部70aは、収容容器3の前回搬送からの経過時間Teが到達所要時間T3以下であるか否かを判断する。ステップS43は、
図17のステップS34と同じ処理である。第1制御部70aは、前回搬送から現時点までの経過時間Teが、記憶部71に予め記憶された到達所要時間T3以下である場合、ステップS45において、搬送条件を充足しないと判定する。第1制御部70aは、前回搬送から現時点までの経過時間Teが、到達所要時間T3よりも大きい場合、ステップS44に処理を進める。
【0145】
ステップS44において、第1制御部70aは、今回の搬送対象の収容容器3(標本収容位置Psの収容容器3)内に、撮像対象(第1種)の塗抹標本1が存在しているか否かを判断する。ステップS44は、
図17のステップS35と同じ処理である。第1制御部70aは、標本収容位置Psの収容容器3に第1種の塗抹標本1が1枚も収容されていない場合(0枚である場合)、ステップS45において、搬送条件を充足しないと判定する。第1制御部70aは、標本収容位置Psの収容容器3に第1種の塗抹標本1が1枚以上収容されている場合、ステップS46において、搬送条件を充足したと判定する。
【0146】
以上のように、複数種類の搬送モード110は、待ち状況に関連する情報71cが所定の条件を含む搬送条件を満たした場合に搬送タイミングであると判定する第1の搬送モード(
図13の第4搬送モードおよび第5搬送モード)と、収容容器3に収容されている塗抹標本1の数が収容容器3に収容可能な最大枚数に達した場合に搬送タイミングであると判定する第2の搬送モード(
図13の第1搬送モード)と、を含む。
【0147】
これにより、第1の搬送モード(第4搬送モードおよび第5搬送モードのいずれか)に設定すれば、標本撮像部50の撮像処理の待ち状況に合わせて収容容器3を搬送することで、早い段階で標本画像を撮像し、ユーザが確認できる。第2の搬送モードに設定すれば、収容容器3が満杯になってから収容容器3を搬送することで、収容容器3の搬送回数を低減できる。ここで、ユーザが標本撮像部50へ搬送された収容容器3を回収して、標本作製部10における塗抹標本1の収容に用いるためのセット位置へ収容容器3を手作業で設置する構成の検査システム100の場合、収容容器3の搬送回数が増大すると、ユーザによる回収作業および設置作業の作業頻度が増大する。そこで、収容容器3が満杯になってから収容容器3を搬送することによって、収容容器3の搬送回数が増大することを抑制できる。
【0148】
本実施形態では、第1制御部70aは、複数の塗抹標本1の作製開始時に、撮像処理の待ち状況に関連する情報71cが所定の条件に該当するか否かに基づく収容容器3の搬送制御を行う。これにより、オペレータの業務時間の開始直後(塗抹標本1の作製開始直後)には、標本撮像部50における撮像処理待ちの塗抹標本1が存在しないため、所定の条件に基づいて収容容器3における塗抹標本1の収容数にかかわらず収容容器3を搬送できる。その結果、塗抹標本1の作製を開始してから、最初の塗抹標本1が標本撮像部50に供給されるまでの時間を効果的に短くできる。
【0149】
(本実施形態の作用)
次に、本実施形態の作用について説明する。検査システム100による塗抹標本1の作製および撮像に関しては、下記の3つのニーズが存在する。
(第1ニーズ)標本作製の開始後、なるべく早い段階で第1種の塗抹標本1の標本画像を確認したい。
(第2ニーズ)収容容器3の補充作業頻度をなるべく低くしたい。
(第3ニーズ)標本作製の開始後、なるべく早い段階で第2種の塗抹標本1の鏡検を開始したい。
本実施形態では、第4搬送モードまたは第5搬送モードを選択することにより、これらのニーズのうち、第1ニーズと第2ニーズとの両立を図ることが可能である。以下、この点を具体例に基づいて説明する。第3ニーズについては後述する。
【0150】
図15に示したように、作製された塗抹標本1は、収容時間間隔T1で標本収容位置Psにおける収容容器3へ1枚ずつ収容される。標本収容位置Psから搬送される収容容器3は、到達所要時間T3で第1位置C1に到達する。第1位置C1の収容容器3に収容された塗抹標本1は、単位時間T2毎に1枚ずつ取り出されて撮像処理に供される。一例として、T1=48秒、T3=57秒、T2=120秒とする。
【0151】
たとえば第1搬送モードが選択された場合、標本の作製開始からの処理の流れは、
図19(A)に示すようになる。一方、第4搬送モードが選択された場合、標本の作製開始からの処理の流れは、
図19(B)に示すようになる。
図19において、「経過時間」は、収容容器3への塗抹標本1の収容開始からの経過時間とする。収容時間間隔T1=48秒であるため、「1枚目の塗抹標本1が収容される48秒前の時点」を経過時間の初期値(0秒)として説明する。つまり、経過時間のカウント開始から48秒後に1枚目の塗抹標本1が収容されるように、収容開始時点を定義する。「標本収容枚数」は、標本の作製開始後に標本作製部10がいずれかの収容容器3に収容した塗抹標本1の累積枚数である。「イベント」は、収容容器3の搬送や、第1位置C1への到達などの発生時点を示している。
図19では、作製される塗抹標本1が全て撮像対象(第1種)であると仮定する。
【0152】
第1搬送モードでは、標本作製の開始後、標本収容位置Psにおける収容容器3の収容枚数が最大枚数M(=10枚)に達するまで、収容容器3が搬送されない。そのため、標本収容開始から1回目の容器搬送まで、概算で時間(M×T1)=480秒を要する。搬送後、到達所要時間T3の経過後の537秒後に撮像処理が開始される。単位時間T2の経過後に標本画像が確認できるようになると仮定すれば、1枚目の標本画像が確認できるようになるまで、概算で、657秒(破線部参照)の時間がかかる。
【0153】
1枚目の撮像処理以降は、単位時間T2=120秒経過する毎に、次の標本画像が確認できる。2枚目の画像が確認できるのは、概算で、777秒後(破線部参照)である。
【0154】
図19(B)に示す第4搬送モードでは、標本作製の開始後、1つ目の収容容器3の搬送タイミングは、撮像対象(第1種)の塗抹標本1が最初に収容されたタイミングとなる。
図17において、第1位置C1および第2位置C2のいずれにも収容容器3が存在せず(ステップS31およびS32で共にNo)、撮像処理の残り時間Trがゼロであり(ステップS33でYes)、前回搬送を行っていないためステップS34でNoと判断されるので、ステップS35がYesになった時点で搬送条件を充足することになるためである。
【0155】
そのため、収容容器3に1枚の塗抹標本1が収容された時点(48秒)で、収容容器3が搬送される。搬送開始後、到達所要時間T3の経過後である105秒後に収容容器3が第1位置C1に到達して、撮像処理が開始される。単位時間T2の経過後、1枚目の標本画像が確認できるようになるのは、概算で、225秒後(破線部参照)である。このように、標本収容開始から、概算で、225秒後には、1枚目の撮像画像が確認できるようになる。
【0156】
第4搬送モードの場合、2つ目の収容容器3の搬送開始は、撮像処理の残り時間Trが到達所要時間T3以下となり、前回搬送からの経過時間Teが到達所要時間T3よりも長くなり、かつ、2つ目の収容容器3に第1種の塗抹標本1が1枚以上収容されたタイミングとなる。225秒後に1枚目の撮像処理が終了することから、残り時間Trが到達所要時間T3以下になるのは、標本収容開始から168秒後である。前回搬送からの経過時間Teが到達所要時間T3よりも大きくなるのは、標本収容開始から105秒後である。作製される塗抹標本1が撮像対象(第1種)のみである場合、標本収容開始から168秒後の時点で、上記の搬送条件を満たす。ただし、搬送タイミングは、収容時間間隔T1毎に判断されるため、2つ目の収容容器3が搬送されるのは、2つ目の収容容器3に3枚目の塗抹標本1が収容されたタイミングとなり、標本収容開始から192秒後である。収容容器3には2枚目から4枚目までの3枚の塗抹標本1が収容される。
【0157】
2つ目の収容容器3は、標本収容開始から249秒後に第1位置C1に到達して、撮像処理が開始される。単位時間T2の経過後、2枚目の標本画像が確認できるようになるのは、概算で、369秒後(破線部参照)である。
【0158】
このように、第4搬送モードが選択されることにより、収容容器3が満杯になってから搬送する場合と比べて、塗抹標本1の撮像画像を早い段階で確認できる。そのため、上記の第1ニーズが満たされる。塗抹標本1の撮像画像を早い段階で確認可能な搬送動作は、標本作製部10が待機状態になった後、検体が供給されて標本作製が再開される場合にも、同様に実行される。したがって、第4搬送モードでは、連続的な標本作製を開始(または再開)した直後において、特に塗抹標本1の撮像画像を早い段階で確認できる。
【0159】
一方で、第1搬送モードでは塗抹標本1が10枚収容される毎に収容容器3が搬送されるのに対して、第4搬送モードでは、10枚未満の収容枚数で収容容器3が搬送されることになるため、搬入路23a(
図15参照)において、空の状態の収容容器3が早期に消費されることになる。しかし、1枚の塗抹標本1に対する撮像処理の単位時間T2(=120秒)が、収容容器3への塗抹標本1の収容時間間隔T1(=48秒)よりも長いため、標本作製が継続すると、撮像処理待ちとなる収容容器3が発生し、1つ以上の収容容器3が容器搬送部30の第2位置C2で待機することとなる。
【0160】
この場合、第4搬送モードでも、
図17のステップS31からステップS36に進むことで、撮像処理の待ち状況に関連する情報71cに基づいた搬送条件が満たされなくなる結果、第1搬送モードと同じく「収容容器3に収容可能な最大枚数Mの塗抹標本1が収容されること」という他の搬送条件が満たされることによって、収容容器3が搬送されるようになる。その結果、第4搬送モードでは、
図19(B)に示した標本作製の初期段階では収容容器3の搬送頻度が高くなるものの、標本作製が継続して行われる限り、収容容器3の消費(搬送頻度)が第1搬送モードと同等のレベルとなる。その結果、第4搬送モードでは、上述の第1ニーズと第2ニーズとの両立を図ることができる。
【0161】
図18に示した第5搬送モードでも、基本的に第4搬送モードと同様である。標本撮像部50における撮像処理が混雑しておらず、撮像処理の推定残り時間Trが短い状況下では、
図19(B)と同様に、最大枚数M未満の収容枚数で収容容器3が搬送されることにより、塗抹標本1の撮像画像を早い段階で確認できる。
【0162】
そして、標本作製が継続し、1つ以上の収容容器3が第2位置C2で待機するようになると、撮像処理の推定残り時間Trが長くなるため、
図18に示した搬送条件が満たされなくなる(ステップS45に進む)。その結果、第1搬送モードと同じく「収容容器3に収容可能な最大枚数Mの塗抹標本1が収容されること」という搬送条件が満たされることによって、収容容器3が搬送されるようになる。したがって、第5搬送モードでも、第4搬送モードと同様、収容容器3の消費(搬送頻度)が第1搬送モードと同等のレベルとなるため、第5搬送モードでは、第1ニーズと第2ニーズとの両立を図ることができる。
【0163】
(検査システムの他の効果)
また、上記した本実施形態は、以下の構成の一例でもある。すなわち、本実施形態の検査システム100は、複数の塗抹標本1を作製し、作製された複数の塗抹標本1を、塗抹標本1を複数収容可能な収容容器3に順次収容する標本作製部10と、標本作製部10から搬出された収容容器3を搬送する容器搬送部30と、容器搬送部30から収容容器3とともに搬送された塗抹標本1を撮像する標本撮像部50と、複数の搬送モードから設定された一の搬送モード(
図13参照)に応じて、塗抹標本1を収容した収容容器3を標本作製部10から搬送する制御を行う制御部70と、を備える。複数の搬送モードは、収容容器の搬送状況にかかわらず収容容器3に収容可能な最大枚数の塗抹標本1が収容された収容容器3を搬送するモード(
図13の第1搬送モード)と、収容容器3の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本1が収容された収容容器3を搬送するモード(
図13の第4搬送モードおよび第5搬送モード)とを含む。
【0164】
また、本実施形態の検査システム100の制御方法は、検体の塗抹標本1を作製する標本作製部10および塗抹標本1を撮像する標本撮像部50を備える検査システム100の制御方法であって、
図11~
図14に示したように、以下のステップを備えている。
(1)複数の搬送モードから、一の搬送モードを設定する(
図14参照)。
(2)複数の塗抹標本1を作製する(
図11のS2)。
(3)作製された塗抹標本1を、塗抹標本1を複数収容可能な収容容器3に順次収容する(
図11のS3)。
(4)設定した搬送モードに応じて、塗抹標本1を収容した収容容器3を標本作製部10から搬送する(
図11のS4~S6)。
ここで、複数の搬送モードは、収容容器3の搬送状況にかかわらず収容容器3に収容可能な最大枚数の塗抹標本1が収容された収容容器3を搬送するモード(
図13の第1搬送モード)と、収容容器3の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本1が収容された収容容器3を搬送するモード(
図13の第4搬送モードおよび第5搬送モード)とを含む。
【0165】
上記構成により、収容容器3の搬送状況によっては最大枚数未満の塗抹標本1が収容された収容容器3を搬送するモード(第4搬送モードまたは第5搬送モード)に設定すれば、収容容器3の搬送状況に応じて収容容器3が満杯になる前でも収容容器3を搬送することができる。その結果、標本撮像部50に塗抹標本1を早期に供給し、標本撮像部50における撮像処理を早期に開始できるので、オペレータは早期に標本画像の確認を開始することができる。また、収容容器3の搬送状況にかかわらず収容容器3に収容可能な最大枚数の塗抹標本1が収容された収容容器3を搬送するモード(第1搬送モード)に設定すれば、収容容器3の搬送状況に応じて収容容器3が満杯になってから収容容器3を搬送することで、収容容器3の搬送回数が不必要に多くなることを抑制できる。その結果、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【0166】
(塗抹標本作製装置の効果)
また、上記のように、本実施形態の標本作製部10は、塗抹標本撮像装置(標本撮像部50)を備えた検査システム100に組み合わせ可能な塗抹標本作製装置により構成されている。そして、標本作製部10は、複数の塗抹標本1を作製する作製処理部10bと、作製された複数の塗抹標本1を、塗抹標本1を複数収容可能な収容容器3に順次収容する移送部19と、検査システム100を構成する他の装置(容器搬送部30)と接続可能に構成され、塗抹標本1を収容した収容容器3を搬送する搬送部23と、収容容器3の搬送状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器3における塗抹標本1の収容数にかかわらず、塗抹標本1を収容した収容容器3を搬送部23から搬出する制御を行う制御部70と、を備える。
【0167】
また、本実施形態の塗抹標本作製装置(標本作製部10)の制御方法は、検体の塗抹標本1を撮像する標本撮像部50を備える検査システム100に組み込まれる塗抹標本作製装置の制御方法であって、
図11(A)に示したように、下記のステップを備えている。
(1)複数の塗抹標本1を作製する(S2)。
(2)作製された塗抹標本1を、塗抹標本1を複数収容可能な収容容器3に順次収容する(S3)。
(3)収容容器3の搬送状況に関連する情報が所定の条件に該当すると、収容容器3における塗抹標本1の収容数にかかわらず、塗抹標本1を収容した収容容器3を塗抹標本作製装置から搬出する(S4~S6)。
【0168】
これにより、検査システム100における収容容器3の搬送状況に応じて、収容容器3が満杯になっていない場合でも、収容容器3を標本撮像部50へ搬送できる。そのため、標本撮像部50において撮像処理待ちの塗抹標本1が存在しない場合や、撮像処理待ちの塗抹標本1が少ない場合に、標本撮像部50への収容容器3の搬送が遅滞している状況で、収容容器3が満杯になる前に収容容器3を搬送することにより、標本撮像部50に塗抹標本1を早期に供給できる。これにより、標本撮像部50における撮像処理を早期に開始できるので、標本画像を確認する業務を行うオペレータの様々な要望に応えることができる。
【0169】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0170】
以下、本発明の変形例について説明する。まず、収容容器3の搬送タイミング制御の変形例を説明する。
【0171】
(第1変形例)
上記実施形態では、第1位置C1において標本移送部41により収容容器3から取り上げられた塗抹標本1を検出する検出部60を設け、第2位置C2には検出部60を設けない例を示したが、検出部60は第1位置C1だけでなく第2位置C2にも設けられていてもよい。すなわち、検出部60は、第1位置C1の収容容器3に収容された各塗抹標本1と、第2位置C2の収容容器3に収容された各塗抹標本1とを、検出可能であってもよい。
図20に示す第1変形例は、この場合の第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を示す。
【0172】
図20の第1変形例では、上記実施形態(
図17)のステップS31およびS33に代えて、ステップS51およびS52が設けられている点で異なる。ステップS51において、第1制御部70aは、容器センサ34bの出力に基づいて、第2位置C2に収容容器3があるか否かを判断する。第2位置C2に収容容器3がある場合、第1制御部70aは、処理をステップS52に進める。この場合、ステップS52では、第1制御部70aは、第2位置C2の収容容器3中の標本に対する撮像処理の残り時間Trが到達所要時間T3以下であるか否かを判断する。第1制御部70aは、第2位置C2の収容容器3に収容された塗抹標本1に対する撮像処理の残り時間Trが到達所要時間T3よりも大きい場合には、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定し、残り時間Trの合計が到達所要時間T3以下である場合には、ステップS34へ処理を進める。
【0173】
また、ステップS51において、第2位置C2に収容容器3がない場合、第1制御部70aは、処理をステップS32に進め、第1位置C1に収容容器3があるか否かを判断する。第1位置C1に収容容器3がある場合、ステップS52では、第1制御部70aは、第1位置C1の収容容器3中の標本に対する撮像処理の残り時間Trが到達所要時間T3以下であるか否かを判断する。残り時間Trが到達所要時間T3よりも大きい場合には、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定し、残り時間Trが到達所要時間T3以下である場合には、ステップS34へ処理を進める。その他の処理は、上記第1実施形態のステップS32~S37の処理と同様である。
【0174】
この第1変形例のように、検出部60の検出結果に基づいて、第1位置C1の収容容器3に収容された塗抹標本1に対する撮像処理の残り時間Tr、および、第2位置C2の収容容器3に収容された塗抹標本1に対する撮像処理の残り時間Trをそれぞれ算出し、これらの残り時間Trに基づいて搬送タイミングを制御してもよい。
【0175】
(第2変形例)
第2変形例における、第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を
図21に示す。第2変形例では、
図17に示した上記実施形態のステップS32~S35が設けられていない。
【0176】
図21のステップS31において、第1制御部70aは、容器センサ34bの出力に基づいて、第2位置C2に収容容器3があるか否かを判断する。第2位置C2に収容容器3がある場合、第1制御部70aは、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。第2位置C2に収容容器3がない場合、第1制御部70aは、ステップS37において、搬送条件を充足したと判定する。
【0177】
この第2変形例のように、第2位置C2における収容容器3の有無に関する情報のみに基づき、収容容器3の搬送タイミングを制御してもよい。つまり、所定の条件は、搬送経路上の所定位置(第2位置C2)における収容容器3がないこと、のみであってもよい。
【0178】
(第3変形例)
第3変形例における、第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を
図22に示す。第3変形例では、
図17に示した上記実施形態のステップS31およびS33~S35が設けられていない。
【0179】
図22のステップS32において、第1制御部70aは、容器センサ34aの出力に基づいて、第1位置C1に収容容器3があるか否かを判断する。第1位置C1に収容容器3がある場合、第1制御部70aは、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。第1位置C1に収容容器3がない場合、第1制御部70aは、ステップS37において、搬送条件を充足したと判定する。
【0180】
この第3変形例のように、第1位置C1における収容容器3の有無に関する情報のみに基づき、収容容器3の搬送タイミングを制御してもよい。つまり、所定の条件は、搬送経路上の所定位置(第1位置C1)における収容容器3がないこと、のみであってもよい。
【0181】
(第4変形例)
第4変形例における、第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を
図23に示す。第4変形例では、
図17に示した上記実施形態のステップS33~S35が設けられていない。
【0182】
図23のステップS31において、第1制御部70aは、容器センサ34bの出力に基づいて、第2位置C2に収容容器3があるか否かを判断する。第2位置C2に収容容器3がある場合、第1制御部70aは、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。第2位置C2に収容容器3がない場合、ステップS32において、第1制御部70aは、容器センサ34aの出力に基づいて、第1位置C1に収容容器3があるか否かを判断する。第1位置C1に収容容器3がある場合、第1制御部70aは、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。第1位置C1に収容容器3がない場合、第1制御部70aは、ステップS37において、搬送条件を充足したと判定する。
【0183】
この第4変形例のように、第1位置C1および第2位置C2の各々における収容容器3の有無に関する情報のみに基づき、収容容器3の搬送タイミングを制御してもよい。つまり、所定の条件は、第1位置C1および第2位置C2の両方に収容容器3がないこと、のみであってもよい。
【0184】
(第5変形例)
第5変形例における、第4搬送モードの搬送条件充足判定処理を
図24に示す。第5変形例では、
図17に示した上記実施形態のステップS34およびS35が設けられていない。
【0185】
図24のステップS31において、第1制御部70aは、容器センサ34bの出力に基づいて、第2位置C2に収容容器3があるか否かを判断する。第2位置C2に収容容器3がある場合、第1制御部70aは、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定する。第2位置C2に収容容器3がない場合、ステップS32において、第1制御部70aは、容器センサ34aの出力に基づいて、第1位置C1に収容容器3があるか否かを判断する。第1位置C1に収容容器3がない場合、第1制御部70aは、ステップS37において、搬送条件を充足したと判定する。第1位置C1に収容容器3がある場合、第1制御部70aは、ステップS33において、第1位置C1の収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理の残り時間Trが到達所要時間T3以下であるか否かを判断する。第1制御部70aは、残り時間Trが到達所要時間T3よりも大きい場合には、ステップS36において、搬送条件を充足しないと判定し、残り時間Trが到達所要時間T3以下である場合には、ステップS37において、搬送条件を充足したと判定する。
【0186】
この第5変形例のように、第1位置C1および第2位置C2の各々における収容容器3の有無に関する情報、および、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trの情報のみに基づき、収容容器3の搬送タイミングを制御してもよい。所定の条件は、所定位置において搬送中の収容容器3がないこと、第1位置C1に収容容器3がある場合、残り時間Trが所定時間以下であること、の2つであってもよい。
【0187】
(第6変形例)
次に、第6変形例における、第5搬送モードの搬送条件充足判定処理を
図25に示す。第6変形例は、
図18に示した上記実施形態のステップS43およびS44が設けられていない。
【0188】
図25のステップS41において、第1制御部70aは、搬送開始済みの収容容器3に収容した塗抹標本1の標本情報71bから、搬送開始済みの全ての収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理の残り時間Trを算出する。ステップS42において、第1制御部70aは、ステップS41で算出した現時点の残り時間Trが、到達所要時間T3以下か否かを判断する。現時点の残り時間Trが、到達所要時間T3よりも大きい場合、第1制御部70aは、ステップS45において、搬送条件を充足しないと判定する。現時点の残り時間Trが、到達所要時間T3以下である場合、第1制御部70aは、ステップS46において、搬送条件を充足したと判定する。
【0189】
この第6変形例のように、第5搬送モードにおいて、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trの情報のみに基づき、収容容器3の搬送タイミングを制御してもよい。つまり、所定の条件は、残り時間Trが所定時間(到達所要時間T3)以下であること、のみであってもよい。
【0190】
[標本作製動作に関する変形例]
次に、上記実施形態の、標本作製動作に関する変形例について説明する。上記実施形態では、標本作製部10は、検体ラック8に保持された複数の検体容器7から、順番に塗抹標本1を作製する例を示したが、本発明はこれに限られない。以下の変形例では、上記実施形態による搬送タイミングの制御に加えて、標本作製順序の制御をさらに行う例を示す。
【0191】
(第7変形例)
図26は、第7変形例による、標本作製部10の制御処理を示すフロー図である。第7変形例は、
図11(A)のステップS1~S6に示した標本作製部10の制御処理の変形例である。
【0192】
図26のステップS1において、第1制御部70aは、標本作製依頼を受け付ける。第1制御部70aは、検体搬送部6により、検体ラック8中の全ての検体容器7が読取位置B1に順次配置されるように検体ラック8を搬送し、検体ラック8中の全ての検体容器7から識別IDをID読取部14aによって順次読み取る。第1制御部70aは、通信部72を介して、各検体の識別IDを送信し、ホストコンピュータ200から、識別IDに対応付けてホストコンピュータ200に記録されている標本作製依頼を受信する。
【0193】
ステップS61において、第1制御部70aは、検体ラック8中に撮像対象(第1種)の検体があるか否かを判断する。具体的には、第1制御部70aは、検体ラック8中の各検体に対する標本作製依頼に基づいて、検体ラック8中の各検体容器7が、撮像対象の検体を収容するか、撮像対象でない(第2種の)検体を収容するかを、個々の検体容器7毎に個別に特定する。これにより、第1制御部70aは、検体ラック8のどの位置の検体容器7が、第1種の検体を収容しているかを特定する。そして、第1制御部70aは、検体ラック8中に第1種の検体を収容する検体容器7が1本以上ある場合に、撮像対象の検体があると判定し、検体ラック8中に第1種の検体を収容する検体容器7が0本である場合に、撮像対象の検体がないと判定する。
【0194】
撮像対象(第1種)の検体があると判定した場合、第1制御部70aは、ステップS62において、撮像対象の検体の塗抹標本1を作製するように、標本作製部10を制御する。つまり、第1制御部70aは、検体ラック8中の第1種の検体を収容した検体容器7を選別して、第1種の検体について先行して標本作製を行う第1標本作製処理を行う。
【0195】
ステップS63において、第1制御部70aは、作製した第1種の塗抹標本1を、標本収容位置Psの収容容器3の空いている収容部3aに収容する。ステップS64において、第1制御部70aは、収容容器3の搬送タイミングか否かを判定する搬送タイミング判定処理(すなわち、
図12のステップS21~S24)を実行する。搬送タイミングか否かは、上記の搬送モードに応じた搬送条件を満たしているか否かによって判断される。ステップS65において、第1制御部70aは、ステップS64の搬送タイミング判定処理の結果、搬送フラグの値が「1」であるか否かを判断する。
【0196】
搬送フラグの値が「1」である場合、ステップS67において、第1制御部70aは、収容容器3を標本収容位置Psから搬送させる、その後、搬送フラグの値を「0」にリセットする。搬送フラグの値が「0」である場合、ステップS66において、第1制御部70aは、検体ラック8中で特定された撮像対象(第1種)の全ての検体について、塗抹標本1を収容したか否かを判断する。
【0197】
検体ラック8中の撮像対象(第1種)の全ての検体について、塗抹標本1を収容していない場合、第1制御部70aは、ステップS62に処理を戻し、次の撮像対象の検体に対する標本作製を行う。ステップS62~S66が繰り返されることにより、検体ラック8中の撮像対象(第1種)の全ての検体について、塗抹標本1の作製および収容が第2種の検体に先行して行われる。検体ラック8中の撮像対象(第1種)の全ての検体について、塗抹標本1を収容した場合、第1制御部70aは、ステップS67に処理を進め、収容容器3を搬送させる。
【0198】
撮像対象(第1種)の検体に対する第1標本作製処理の結果、検体ラック8における撮像対象の全ての検体について標本作製が完了すると、ステップS61において、撮像対象の検体がない(なくなった)と判定される。この場合、第1制御部70aは、ステップS68に処理を進め、検体ラック8中に、標本未作製の検体があるか否かを判断する。検体ラック8中に、撮像対象でない(第2種の)検体を収容した検体容器7がある場合、その検体は標本未作製の検体に該当する。第1制御部70aは、標本未作製の検体がある場合、ステップS69において、標本未作製の検体の塗抹標本1を作製するように、標本作製部10を制御する。つまり、第1制御部70aは、第1種の検体について先行して標本作製を行う第1標本作製処理の後に、第1標本作製処理で標本作製が行われなかった第2種の検体に対して、後続して標本作製を行う第2標本作製処理を行う。
【0199】
ステップS70において、第1制御部70aは、作製した撮像対象でない(第2種の)検体の塗抹標本1を、標本収容位置Psの収容容器3の空いている収容部3aに収容する。ステップS71において、第1制御部70aは、収容容器3の搬送タイミングか否かを判定する搬送タイミング判定処理(すなわち、
図12のステップS21~S24)を実行する。ステップS71はステップS64と同じ処理である。ステップS72において、第1制御部70aは、ステップS71の搬送タイミング判定処理の結果、搬送フラグの値が「1」であるか否かを判断する。搬送フラグの値が「1」である場合、ステップS73において、第1制御部70aは、収容容器3を標本収容位置Psから搬送させ、搬送フラグをリセットした後、処理をステップS68に戻す。また、搬送フラグの値が「0」である場合、第1制御部70aは、処理をステップS68に戻す。
【0200】
ステップS68~S73によって、第1制御部70aは、検体ラック8中の、第1標本作製処理で標本作製が行われなかった検体についての標本作製を行う。検体ラック8における標本未作製の全ての検体について標本作製が完了すると、第1制御部70aは、ステップS68において、標本未作製の検体がない(なくなった)と判定し、処理を終了する。なお、検体ラック8中の全ての検体が撮像対象(第1種)の検体である場合、ステップS69へ進むことなく、ステップS68で標本未作製の検体がないと判定されて処理が終了する。
【0201】
このように、第7変形例では、ステップS61~S67により、第1制御部70aは、撮像対象(第1種)の検体について先行して塗抹標本1を作製し、作製された撮像対象の塗抹標本1が全て収容容器3に収容されると、収容枚数に関わらず収容容器3を搬送させる制御を行う。これにより、撮像対象の塗抹標本1が先行して作製され、先行して標本撮像部50へ搬送されるので、ユーザは、より早い段階で、塗抹標本1の撮像画像を確認できる。
【0202】
(第8変形例)
図27を参照して、第8変形例について説明する。第8変形例は、撮像対象(第1種)の塗抹標本1を先行して作製した上記第7変形例とは異なり、撮像対象でない(第2種の)塗抹標本1を先行して作製する例を示す。
【0203】
第8変形例では、
図26の第7変形例におけるステップS61、S62およびS66に代えて、ステップS81、S82およびS86が設けられている点で異なる。第8変形例において、上記第7変形例と同じ処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0204】
ステップS81において、第1制御部70aは、検体ラック8中に撮像対象でない(第2種の)検体があるか否かを判断する。第1制御部70aは、検体ラック8中の各検体に対する標本作製依頼に基づいて、検体ラック8のどの位置の検体容器7が、第2種の検体を収容しているかを特定する。そして、第1制御部70aは、検体ラック8中に第2種の検体を収容する検体容器7が1本以上ある場合に、撮像対象でない検体があると判定し、検体ラック8中に第2種の検体を収容する検体容器7が0本である場合に、撮像対象でない検体がないと判定する。
【0205】
撮像対象でない検体があると判定した場合、第1制御部70aは、ステップS82において、撮像対象でない(第2種の)検体の塗抹標本1を作製するように、標本作製部10を制御する。つまり、第1制御部70aは、検体ラック8中の第2種の検体を収容した検体容器7を選別して、第2種の検体について先行して標本作製を行う第1標本作製処理を行う。
【0206】
その後、ステップS63~S65を経て、第1制御部70aは、ステップS86において、第1制御部70aは、検体ラック8中で特定された撮像対象でない(第2種の)全ての検体について、塗抹標本1を収容したか否かを判断する。
【0207】
検体ラック8中の撮像対象でない(第2種の)全ての検体について、塗抹標本1を収容していない場合、第1制御部70aは、ステップS82に処理を戻し、次の撮像対象(第1種)の検体に対する標本作製を行う。ステップS82、S63~S65、およびS86が繰り返されることにより、検体ラック8中の撮像対象でない全ての検体について、塗抹標本1の作製および収容が第1種の検体に先行して行われる。検体ラック8中の撮像対象でない全ての検体について、塗抹標本1を収容した場合、第1制御部70aは、ステップS67に処理を進め、収容容器3を搬送させる。
【0208】
撮像対象でない(第2種の)検体に対する第1標本作製処理の結果、検体ラック8における撮像対象でない全ての検体について標本作製が完了すると、ステップS81において、撮像対象でない検体がない(なくなった)と判定される。この場合、第1制御部70aは、ステップS68に処理を進め、検体ラック8中に、標本未作製の検体があるか否かを判断する。検体ラック8中に、撮像対象(第1種)の検体を収容した検体容器7がある場合、その検体は標本未作製の検体に該当する。標本未作製の検体がある場合のステップS68~S73の処理は、標本未作製の検体が撮像対象の検体である点を除き、上記第7変形例と同様である。つまり、第1制御部70aは、第2種の検体について先行して標本作製を行う第1標本作製処理の後に、第1標本作製処理で標本作製が行われなかった第1種の検体に対して、後続して標本作製を行う第2標本作製処理を行う。
【0209】
このように、第8変形例では、ステップS81、S82、S63~S65、S86およびS67により、第1制御部70aは、撮像対象でない(第2種の)検体について先行して塗抹標本1を作製し、作製された撮像対象でない塗抹標本1が全て収容容器3に収容されると、収容枚数に関わらず収容容器3を搬送させる制御を行う。これにより、撮像対象でない塗抹標本1が先行して作製され、先行して標本撮像部50へ搬送されるので、ユーザは、より早い段階で、第2種の塗抹標本1の鏡検を開始することができる。第8変形例によるこの効果は、上述した検査システム100に対する第3ニーズ(標本作製の開始後、なるべく早い段階で第2種の塗抹標本1の鏡検を開始したい)を満たすものである。
【0210】
本発明では、好ましくは、第1制御部70aは、上記第7変形例で示した第1の標本作製モード(検体ラック8中の第1種の検体を収容した検体容器7を選別して、第1種の検体について先行して標本作製を行うモード)と、この第8変形例で動作する第2の標本作製モード(検体ラック8中の第2種の検体を収容した検体容器7を選別して、第2種の検体について先行して標本作製を行う第1標本作製処理を行うモード)とを含む複数の標本作製モードの選択を受け付け、選択された標本作製モードで塗抹標本1を作製するように構成されている。これにより、ユーザのニーズに応じてモード選択を行うことで、塗抹標本1の撮像画像を早期に確認したいニーズと、塗抹標本1の鏡検を早期に実施したいニーズと、の両方に対応することができる。
【0211】
(第9変形例)
図28を参照して、第9変形例について説明する。第9変形例は、標本撮像部50が待機状態か否かに応じて、撮像対象(第1種)の塗抹標本1を先行して作製するか否かを判断する例を示す。
【0212】
第9変形例では、
図26の第7変形例のステップS61~S73に加えて、さらにステップS91が設けられている点で異なる。第9変形例において、上記第7変形例と同じ処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0213】
図28のステップS91において、第1制御部70aは、標本撮像部50が待機状態であるか否かを判断する。標本撮像部50が待機状態であるか否かは、たとえば、第1位置C1に収容容器3がないことを条件としてもよいし、第1位置C1および第2位置C2の両方に収容容器3がないことを条件としてもよいし、第1位置C1および第2位置C2の両方に収容容器3がなく、かつ、前回搬送した収容容器3の搬送開始時刻からの経過時間Teが到達所要時間T3よりも大きいことを条件としてもよい。標本撮像部50が待機状態であるか否かは、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trに基づいて、たとえば残り時間Trがゼロになっていることを条件として判断してもよい。
【0214】
標本撮像部50が待機状態である場合、第1制御部70aは、処理をステップS61に進める。ステップS61~S67により、第1制御部70aは、上記第7変形例と同様に、検体ラック8中の第1種の検体を収容した検体容器7を選別して、第1種の検体について先行して標本作製、収容および収容容器3の搬送を行う。その後、ステップS68~S73により、第1制御部70aは、上記第7変形例と同様に、残りの標本未作製の検体について後から標本作製、収容および収容容器3の搬送を行う。
【0215】
一方、ステップS91において標本撮像部50が待機状態でない場合、第1制御部70aは、処理をステップS68に進める。このステップS91からステップS68に移行した場合、ステップS68における標本未作製の検体とは、撮像対象(第1種)と撮像対象でない(第2種の)検体とを含む全ての検体である。そのため、ステップS68~S73により、撮像対象の検体か否かの選別を行うことなく、たとえば検体ラック8の保持位置の順番通りに塗抹標本1が作製される。
【0216】
以上の結果、第9変形例では、標本撮像部50が待機状態である場合に、撮像対象(第1種)の塗抹標本1が先行して作製され、標本撮像部50に供給されるように検査システム100を制御できるので、標本撮像部50が待機時間を削減して、撮像対象の全ての検体に対する撮像処理の終了タイミングを早めることができる。
【0217】
(第10変形例)
図29を参照して、第10変形例について説明する。第10変形例は、標本撮像部50における撮像処理が滞留しているか否か(標本撮像部50がbusy状態か否か)に応じて、撮像対象でない(第2種の)塗抹標本1を先行して作製するか否かを判断する例を示す。
【0218】
第10変形例では、
図27の第8変形例の各ステップに加えて、さらにステップS92が設けられている点で異なる。第10変形例において、上記第8変形例と同じ処理については、同一の符号を付して説明を省略する。
【0219】
図29のステップS92において、第1制御部70aは、標本撮像部50の撮像処理が滞留しているか否かを判断する。標本撮像部50の撮像処理が滞留しているか否かは、たとえば、第1位置C1に収容容器3があることを条件としてもよいし、第1位置C1および第2位置C2の両方に収容容器3があることを条件としてもよいし、第1位置C1および第2位置C2の両方に収容容器3があるか、または、前回搬送した収容容器3の搬送開始時刻からの経過時間Teが到達所要時間T3よりも小さいことを条件としてもよい。標本撮像部50の撮像処理が滞留しているか否かは、搬送開始済みの収容容器3中の塗抹標本1に対する撮像処理終了までの残り時間Trに基づいて、たとえば残り時間Trが到達所要時間T3よりも大きいことを条件として判断してもよい。
【0220】
標本撮像部50の撮像処理が滞留している場合、第1制御部70aは、処理をステップS81に進める。ステップS81、S82、S63~S65、S86およびS67により、第1制御部70aは、上記第8変形例と同様に、検体ラック8中の第2種の検体を収容した検体容器7を選別して、第2種の検体について先行して標本作製、収容および収容容器3の搬送を行う。その後、ステップS68~S73により、第1制御部70aは、上記第8変形例と同様に、残りの標本未作製の検体について後から標本作製、収容および収容容器3の搬送を行う。
【0221】
一方、ステップS92において標本撮像部50の撮像処理が滞留していない場合、第1制御部70aは、処理をステップS68に進める。このステップS92からステップS68に移行した場合、ステップS68における標本未作製の検体とは、撮像対象(第1種)と撮像対象でない(第2種の)検体とを含む全ての検体である。そのため、ステップS68~S73により、撮像対象の検体か否かの選別を行うことなく、たとえば検体ラック8の保持位置の順番通りに塗抹標本1が作製される。
【0222】
以上の結果、第10変形例では、標本撮像部50の撮像処理が滞留している場合に、撮像対象でない(第2種の)塗抹標本1が先行して作製され、標本撮像部50に供給されるように検査システム100を制御できるので、標本撮像部50の処理状況(標本画像が確認できるようになるまでに時間がかかること)を考慮して、標本撮像部50の撮像処理を実行している間にユーザが第2種の塗抹標本1に対する鏡検を実行できるようにし、ユーザによる鏡検も含めた検査作業を円滑かつ効率的に遂行することができる。
【0223】
[その他の変形例]
例えば、上述した実施形態では、検査システム100が、標本作製部10、容器搬送部30および標本撮像部50により構成される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、検査システム100は、標本作製部10を備えていなくてもよい。たとえば標本作製部10に代えて、塗抹標本1を収容した収容容器3を貯留し、搬送タイミングになると容器搬送部30へ収容容器3を搬送する貯留装置を設けてもよい。この場合、ユーザが手作業で作製した塗抹標本1を収容容器3に収容して、塗抹標本1を収容した収容容器3をユーザが貯留装置にセットしてもよい。また、検査システム100は、標本作製部10、容器搬送部30および標本撮像部50に加えて、検体容器7に収容された検体を分析する分析部と、分析部および標本作製部10に、検体容器7を保持した検体ラック8を搬送する検体搬送部を備えていてもよい。検査システム100は、さらに、検査前の検体容器7を保持した検体ラック8を貯留し、検体搬送部に供給する検体投入部と、検査済みの検体容器7を保持した検体ラック8を貯留する検体回収部とを備えていてもよい。
【0224】
また、上述した実施形態では、標本作製部10の制御部70が、検出部60の検出結果に基づいて塗抹標本1が撮像対象であるか否かの判定を行っているが、検出部60で撮像した画像データをホストコンピュータ200に送信し、塗抹標本1が撮像対象であるか否かの判定を当該ホストコンピュータ200で行うこともできる。
【0225】
また、上述した実施形態では、標本作製部10の制御部70(第2制御部70b)が、容器搬送部30を制御しているが、制御部が標本作製部10と容器搬送部30とにそれぞれ設けられていてもよい。1つの制御部が、標本作製部10、容器搬送部30および標本撮像部50を制御してもよい。
【0226】
また、
図14に示した設定画面120では、搬送モードをラジオボタンタイプの選択部121a~121eによって選択可能にしたが、
図30および
図31に示すように、ドロップダウンリストタイプの選択部131によって搬送モードを選択可能にしてもよい。
図30の例では、選択部131のボタン132が入力(タップ)されると、
図31に示すように、選択部131は、搬送モードの選択部131a~131eをリスト形式で表示する。選択部131a~131eのいずれかが入力(タップ)されることにより、第1制御部70aは、搬送モードの選択を受け付ける。なお、
図31では、選択された搬送モードにハッチングを付して示している。いずれかの搬送モードに対する選択を受け付けると、選択部131のリスト形式の表示は消去され、
図30に示した表示態様に戻るとともに、選択部131の表示欄に、選択された搬送モードの内容が表示される。
図30は、第2搬送モードを示す「待機状態へ移行時、収容容器を搬送する」というテキストが表示されている例を示している。設定画面120の表示態様は、
図14、
図30および
図31に示した態様以外でもよい。
【0227】
また、上述した実施形態では、標本作製部10の制御部70(第1制御部70a)が、収容容器3の搬送制御を行っているが、
図32に示すように、制御部70が標本作製部10とは別個に設けられていてもよい。
図32では、制御部70は、標本作製部10、容器搬送部30および標本撮像部50とは別個の制御ユニットとして設けられている。
図32では、制御部70は、標本作製部10、容器搬送部30および標本撮像部50をそれぞれ制御する。この他、収容容器3の搬送制御を行う制御部が、容器搬送部30に設けられていてもよいし、標本撮像部50に設けられていてもよい。
【符号の説明】
【0228】
1:塗抹標本、3:収容容器、3a:収容部、10:標本作製部、10b:作製処理部、19:移送部、23:搬送部、30:容器搬送部、50:標本撮像部、60:検出部、70:制御部、70a:第1制御部、70b:第2制御部、71b:標本情報、71c:撮像処理の待ち状況に関連する情報、100:検査システム、110:搬送モード、C1:第1位置、C2:第2位置、M:最大枚数、T2:単位時間(1枚の塗抹標本の撮像処理に要する時間)、T3:到達所要時間、Te:前回の搬送開始時刻からの経過時間、Tr:収容容器中の塗抹標本に対する撮像処理終了までの残り時間