IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社シャルレの特許一覧 ▶ 株式会社カドリールニシダの特許一覧

<>
  • 特開-ウエスト補正機能付き衣類 図1
  • 特開-ウエスト補正機能付き衣類 図2
  • 特開-ウエスト補正機能付き衣類 図3
  • 特開-ウエスト補正機能付き衣類 図4
  • 特開-ウエスト補正機能付き衣類 図5
  • 特開-ウエスト補正機能付き衣類 図6
  • 特開-ウエスト補正機能付き衣類 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184346
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ウエスト補正機能付き衣類
(51)【国際特許分類】
   A41C 1/02 20060101AFI20231221BHJP
   A41C 1/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A41C1/02 B
A41C1/00 E
A41C1/00 G
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098453
(22)【出願日】2022-06-17
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-01-16
(71)【出願人】
【識別番号】000131555
【氏名又は名称】株式会社シャルレ
(71)【出願人】
【識別番号】390016850
【氏名又は名称】株式会社カドリールニシダ
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】須磨 碧
(72)【発明者】
【氏名】本城 真理子
(72)【発明者】
【氏名】蛭川 伸子
(72)【発明者】
【氏名】井上 彩子
【テーマコード(参考)】
3B131
【Fターム(参考)】
3B131AA08
3B131AA09
3B131AB11
3B131AB14
3B131BA11
3B131BA21
3B131BA33
(57)【要約】
【課題】着用者の動作時の皮膚の伸縮に追随する「ウエストのスキンフィット設計」により、動いてもウエスト部がずれにくく、めくれにくく、動いてもウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、ウエスト部からのハミ肉を生み出しにくいウエスト補正機能付き衣類を提供する。
【解決手段】緊迫力の大きさと伸縮方向が異なる複数の領域からなり、着用者の少なくとも腰周囲及び骨盤周辺を覆うウエスト補正機能付き衣類であって、着用者の骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い、且つ前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わない骨盤キープパネルを含み、前記骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる表パネル及び着用時に皮膚と接する裏パネルを重ね合わせた2重構造となっていることを特徴とする、ウエスト補正機能付き衣類。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊迫力の大きさと伸縮方向が異なる複数の領域からなり、着用者の少なくともウエスト周囲及び骨盤周辺を覆うウエスト補正機能付き衣類であって、
着用者の骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い、且つ前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わない骨盤キープパネルを含み、
前記骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる表パネル及び着用時に皮膚と接する裏パネルを重ね合わせた2重構造となっていることを特徴とする、ウエスト補正機能付き衣類。
【請求項2】
着用者のウエスト周囲にウエストスムージングベルトを含み、該ウエストスムージングベルトは、ウエストラインの高さが後身頃中心から前身頃中心に向かって徐々に低くなり、着用者の脇から後身頃中心に向かって後下がりの斜め方向Sに大きく伸縮する、請求項1に記載のウエスト補正機能付き衣類。
【請求項3】
前記骨盤キープパネルにおける前記表パネルは、該表パネルを上下に二等分する横方向の線分に沿う伸縮方向Lに大きく伸縮し、前記裏パネルは、前記表パネルの伸縮方向Lに対して、約35°~55°(45°±10°)傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向Dに大きく伸縮する、請求項1に記載のウエスト補正機能付き衣類。
【請求項4】
前記骨盤キープパネルにおける前記表パネルは、該表パネルを上下に二等分する横方向の線分に沿う伸縮方向Lに大きく伸縮し、前記裏パネルは、前記表パネルの伸縮方向Lに対して、約35°~55°(45°±10°)傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向Dに大きく伸縮する、請求項2に記載のウエスト補正機能付き衣類。
【請求項5】
前記骨盤キープパネルにおける前記表パネル並びに前記裏パネル及び前記ウエストスムージングベルトの伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%である、請求項1乃至4のいずれかに記載のウエスト補正機能付き衣類。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエスト補正機能付き衣類に関する。より詳細には、緊迫力の大きさと伸縮方向が異なる複数の領域からなり、着用者の少なくともウエスト周囲及び骨盤周辺を覆うウエスト補正機能付き衣類であって、着用者の骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い、且つ前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わない骨盤キープパネルを含み、骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる表パネル及び着用時に皮膚と接する裏パネルを重ね合わせた2重構造となっていることを特徴とする、ウエスト補正機能付き衣類に関する。
【0002】
<語句の説明>
本明細書における「ハミ肉」とは、衣類着用時に、柔らかい肉(脂肪)が衣類の外側にはみ出して、衣類を着けているところとそうでない際で段が発生している状態を意味する。
本明細書における「補正」とは、ハミ肉が発生せず、楽に衣類を着用できるようにすることを意味する。
本明細書における「緊迫力」とは、補正のために伸縮性のある生地により着用者の身体を締め付ける力を意味する。
本明細書における「ウエスト部」とは、着用者の胴体で、へその高さ辺りにある一領域を意味する。
本明細書における「ウエスト周囲」とは、着用者のへその高さの腹囲を意味する。
本明細書における「前身頃中心」とは、ウエスト補正機能付き衣類の前側部分において、着用者の前面の正中線付近の領域を意味する。
本明細書における「後身頃中心」とは、ウエスト補正機能付き衣類の後側部分において、着用者の背面の正中線付近の領域を意味する。
本明細書における「縦方向」とは、着用者の立位時に頭と足を結び、地面に対し垂直方向を意味する。
本明細書における「縦斜め方向」とは、着用者の立位時に頭と足を結び、地面と垂直方向の直線に対して傾きのある方向を意味する。
【背景技術】
【0003】
近年、益々注目が集まる健康志向やシェイプアップ志向に伴い、補正下着に求められる機能も多種多様なものとなっている。その中でも体型の補正を目的とする衣類には、従来から着用時の圧迫感や動きづらさが指摘されるものも多く、着用感や身体の動きに対する追随性の改善が望まれていた。一例として、ガードルは、日常生活における動作の中で、ウエスト部のずれが発生してめくれ上がった生地が、骨格のない腹部等の柔らかな皮膚に食い込み、必要以上に締め付けが生じて着用感を損ねたり、ウエスト部の柔らかい肉(脂肪)がはみ出して段差が生じたりし、ボディラインが崩れる要因となっていた。
【0004】
この問題に対して、着崩れを起こすことなく、ウエスト部への食い込みを防ぐことの可能な、ウエスト構造(特許文献1参照)が公知である。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造ではウエスト部に配置された当て布自体が本体にしっかりと固定されておらず、贅肉を分散させ食い込みを予防するものの、着用時の動作に対する衣類の身体への追随性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-96044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
日常生活における動作の中で、従来の補正下着等の着用した際、ウエスト周囲のボディラインが崩れる原因を解明するため、発明者らは、下半身の皮膚の伸縮や伸縮方向について検証をおこなった。
検証の結果、日常の前屈みや座り込み動作の際に、後ウエスト中央から臀部中央(17)の皮膚は縦方向に伸長し、腸骨より上の皮膚は、後ろから斜め上方向へ伸長し、腸骨より下の皮膚は、後ろから斜め下方向へ伸長し、でん溝付近の皮膚では、より大きく伸長していた。立位姿勢のウエスト周囲寸法は、立位姿勢より、前屈みや座り動作時の方が大きくなることが分かった。
さらに、前屈みや立ち座り動作時には、後中央の臀部の皮膚は縦方向や縦斜め方向へ大きく伸びるが、逆に前面の腹部では、縦方向や縦斜め方向に収縮していた。
以上の結果より、従来の補正下着等を着用した際に、ウエスト周囲のボディラインが崩れる原因は、動作時にウエスト周囲の皮膚の伸縮による変化や、腹部の寸法変化に従来の補正下着等の設計や生地が追随できていないことによるものと判明した。
よって、本発明の課題は、着用者の動きに追随でき、ウエスト部がずれにくいウエスト補正機能付き衣類を提供することである。
【0008】
さらに、前述のように、従来の補正下着のウエスト部にずれが発生し、めくれ上がった生地が、骨格のない腹部等の柔らかな皮膚に食い込み、必要以上に締め付けが生じて着用感を損ねたり、ウエスト部の柔らかい肉(脂肪)がはみ出して段差が生じたりし、ボディラインが崩れる要因となっていた。
よって、本発明のもうひとつの課題は、日常生活における動作の中で、ウエスト部がずれにくく、めくれにくく、ウエスト部からのハミ肉を防止することができるウエスト補正機能付き衣類を提供することである。
【0009】
上述の課題を同時に解決するため、発明者らは、日常生活における前屈みや座り込み等の動作時に、皮膚の伸縮に合わせて、ウエスト部や臀部の素材が、前屈みや座位時には縦斜め方向に大きく伸び、立位時には縦斜め方向に収縮して元に戻り、前側の腹部では、寸法変化を想定した(前下がり)位置を基準として、動作時の皮膚の伸縮に追随する「ウエストのスキンフィット設計」を発明した。
本発明は、上述のウエストのスキンフィット設計により、動いてもウエスト部がずれにくく、めくれにくく、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、ウエスト部からのハミ肉を防止するウエスト補正機能付き衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、緊迫力の大きさと伸縮方向が異なる複数の領域からなり、着用者の少なくともウエスト周囲及び骨盤周辺を覆うウエスト補正機能付き衣類であって、着用者の骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い、且つ前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わない骨盤キープパネルを含み、前記骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる表パネル及び着用時に皮膚と接する裏パネルを重ね合わせた2重構造となっていることを特徴とする、ウエスト補正機能付き衣類に関する。
【0011】
請求項2に係る発明は、着用者のウエスト周囲にウエストスムージングベルトを含み、該ウエストスムージングベルトは、ウエストラインの高さが後身頃中心から前身頃中心に向かって徐々に低くなり、着用者の脇から後身頃中心に向かって後下がりの斜め方向Sに大きく伸縮する、請求項1に記載のウエスト補正機能付き衣類に関する。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記骨盤キープパネルにおける前記表パネルは、該表パネルを上下に二等分する横方向の線分に沿う伸縮方向Lに大きく伸縮し、前記裏パネルは、前記表パネルの伸縮方向Lに対して、約35°~55°(45°±10°)傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向Dに大きく伸縮する、請求項1に記載のウエスト補正機能付き衣類に関する。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記骨盤キープパネルにおける前記表パネルは、該表パネルを上下に二等分する横方向の線分に沿う伸縮方向Lに大きく伸縮し、前記裏パネルは、前記表パネルの伸縮方向Lに対して、約35°~55°(45°±10°)傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向Dに大きく伸縮する、請求項2に記載のウエスト補正機能付き衣類に関する。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記骨盤キープパネルにおける前記表パネル並びに前記裏パネル及び前記ウエストスムージングベルトの伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%である、請求項1乃至4のいずれかに記載のウエスト補正機能付き衣類に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、着用者の骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い、且つ前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わない骨盤キープパネルは、圧迫を感じにくい腸骨周りに配置し、腸骨を固定することで、パネルの上部(ウエスト部)や下部(臀部から太腿部分)を支えてずれにくくしている。
また、締付けによる圧迫を感じにくい腸骨周りでウエスト補正機能付き衣類を固定することで、圧迫を感じやすいウエスト部を締め付けることがなく、腹部周囲の苦しさを軽減することができる。
さらに、骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる少なくとも2枚の生地を重ね合わせた構造となっており、表パネルは横方向の緊迫力で骨盤周囲を強力に保持し、裏パネルは、着用者の皮膚の伸長方向(後上がりの斜め方向)に追随するという表裏別の機能を果たすため、表パネル及び裏パネルの2重構造による相乗効果により、着用者の皮膚の動きに追随しやすく、動いてもウエストがずれにくい上にウエスト周囲のボディラインを美しく保つことができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、ウエストスムージングベルトは、ウエストラインの高さが後身頃中心から前身頃中心に向かって徐々に低くなり、脇から後身頃中心に向かって後下がりの斜め方向Sに大きく伸縮し、下半身を覆う部分の素材よりも後下がりの斜め方向Sの伸長回復率が大きく、且つ骨盤キープパネルは、ウエストスムージングベルトと比較し、緊迫力が強いことで着用者の骨盤周囲を強力に保持しつつ皮膚の動きに追随し、骨盤キープパネルにより支えられている臀部及び下半身を覆う部分と、上部のウエストスムージングベルトが、臀部の皮膚の伸縮に合わせて、前屈みや座位時には縦方向や後下がりの縦斜め方向Sに大きく伸び、立位時には縦方向や後下がりの縦斜め方向Sに収縮して元に戻ることで、動いてもウエストがずれにくいため、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、且つウエスト部がめくれにくくなることでハミ肉を防止することができる。
【0017】
請求項3及び4に係る発明によれば、骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる少なくとも2枚の生地を重ね合わせた構造となっており、表パネルは、該表パネルを上下に二等分する横方向の線分に沿う伸縮方向Lに大きく伸縮し、裏パネルは、表パネルの伸縮方向Lに対して、約35°~55°(45°±10°)傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向Dに大きく伸縮するため、表パネルは横方向の緊迫力で骨盤周囲を強力に保持し、裏パネルは、着用者の皮膚の伸長方向(後上がりの斜め方向)に追随するという表裏別の機能を果たすため、表パネル及び裏パネルの2重構造による相乗効果により、着用者の皮膚の動きに追随しやすく、動いてもウエストがずれにくいため、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、且つウエスト部がめくれにくくなることでハミ肉を防止することができる。
【0018】
請求項5に係る発明によれば、骨盤キープパネルにおける表パネル並びに裏パネル及びウエストスムージングベルトの伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%であるため、骨盤キープパネルにおける表パネル並びに裏パネル及びウエストスムージングベルトのそれぞれの機能を十分に発揮することができ、着用者の皮膚の動きに追随しやすく、動いてもウエストがずれにくいため、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、且つウエスト部がめくれにくくなることでハミ肉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明に係るウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルを着用した人の側面図である。(a)は座位状態の左側面図、(b)は立位状態の左側面図である。
図2】前屈みや立ち座り動作における皮膚の伸縮方向と大きく伸縮する部位を示す図である。(a)は座位状態の左側面図、(b)は前屈み状態の左側面図、(c)は座位状態の背面図である。斜線部で示した領域(17)は後ウエスト中央から臀部中央を示し、矢印は皮膚の伸縮方向を示す。
図3】骨盤周囲に骨盤キープパネル(網掛で示した部分)を配置した、ウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルの図である。(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。図中の矢印L、D及びSは生地の伸縮方向を示す。
図4】ウエスト周囲にウエストスムージングベルト(網掛で示した部分)を配置した、ウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルの図である。(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。図中の矢印Sは生地の伸縮方向を示す。
図5】本発明に係るウエスト補正機能付き衣類のウエストスムージングベルト及び骨盤キープパネルの表パネル並びに裏パネルの伸縮方向を示した図である。(a)はウエストスムージングベルトの伸縮方向を示した図、(b)は骨盤キープパネルにおける表パネル及び裏パネルの2重構造とそれぞれの伸縮方向を示した図、(c)は裏パネルの伸縮方向の説明図、(d)は表パネルの伸縮方向の説明図である。
図6】本発明に係るウエスト補正機能付き衣類を着用した時の骨格と骨盤キープパネルとの位置関係を示した図である。(a)は正面図、(b)は背面図である。
図7】本発明に係るウエスト補正機能付き衣類と骨格との位置関係を示した正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類の詳細な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0021】
図1は、本発明のウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルを着用した人の図を示す。
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、ウエスト周囲に配されたベルトと接合される下半身を覆う部分の上端部であるウエストライン(1)の高さが、背部の後身頃中心(2)から腹部の前身頃中心(3)に向かって徐々に低くなることを特徴とする。
【0022】
ウエストライン(1)における後身頃中心(2)と前身頃中心(3)の高低差は、立位時及び動作時においても生地のめくれ等による腹部への食い込みを低減し、苦しさを感じやすいウエスト部を締め付けることなく、腹部周囲の圧迫感を逃すことができ、かつ、ハミ肉を防止できればよく、高低差の範囲は特に限定されないが、約2~8cmが好ましい。
【0023】
図2は、前屈みや立ち座り動作における皮膚の伸縮方向と大きく伸縮する部位(12)を示す。
動作時における腹部、後ウエスト部(4)、及び臀部(5)の皮膚の伸縮方向を図面中の矢印で示している。また、後ウエスト中央から臀部中央(17)を図面中の斜線部で示し、皮膚が大きく伸縮する部位(12)を図面中の網掛け部で示している。前屈みや座り込み動作の際に、後ウエスト部(4)や臀部(5)の皮膚が縦方向や縦斜め方向へ大きく伸び(図2の(a)、(b)参照)、後ウエスト部(4)の皮膚が脇から後中心にかけて両方向へ動き、臀部(5)の皮膚が後中心から脇にかけて両方向へ動く(図2の(c)参照)。また、腹部では縦方向や縦斜め方向に収縮し、腹囲周りは太くなる。
【0024】
図3は、骨盤キープパネル(9)(網掛けで示した部分)を配した、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルの図である。矢印L、D及びSは生地の伸縮方向を示している。
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、皮膚の動きの研究結果に基づき、図2で示した着用者の皮膚と同様に伸長するよう開発された生地を用いて、着用者の皮膚の伸縮に追随するよう設計されている。
【0025】
後中心身頃部に配されたアーモンド形の生地は、骨盤キープパネル(9)よりも伸縮率が大きく設計され、皮膚の伸長に合わせて縦方向に大きく伸縮するため、着用者が前屈みになってもずれにくい。
皮膚が一番大きく伸縮する太腿部分の裏側は、縦方向にも伸縮する一枚の生地で構成されているため動きに柔軟に対応でき、快適な着用感を得ることができる。
【0026】
図4は、ウエスト周囲にウエストスムージングベルト(6)(網掛けで示した部分)を配した、ウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルの図である。
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、ウエストライン(1)の高さが、背部の後身頃中心(2)から腹部の前身頃中心(3)に向かって徐々に低くなることを特徴としている(図面中の(a)参照)。加えて、ウエストスムージングベルト(6)には脇から後身頃中心(2)に向かっての後下がりの斜め方向(S)に大きく伸縮する素材を配し、下半身を覆う部分よりも後下がりの斜め方向(S)の伸長回復率(キックバック)を大きくし、後ウエスト部(4)が動作時の皮膚の伸縮に合わせて、前屈みや座位時には縦斜め方向に大きく伸び、立位時には縦斜め方向に収縮して元に戻ることを特徴とする(図面中の(b)、(c)参照)。
【0027】
ウエストスムージングベルト(6)の素材は、後下がりの斜め方向(S)に伸縮性の大きな素材であることが好ましい。伸縮性部材に用いられる素材は特に限定されないが、人体の動きに追随するという効果を発揮し、ウエスト部のずれやめくれを防止するため、後下がりの斜め方向(S)に伸縮する素材であれば良く、例えばパワーネットや、サテンネット、ツーウェイトリコット、ベア天竺等のストレッチ素材が挙げられる。
さらに、伸縮性部材を衣類に用いる際は、生地を重ね合わせた当て布、生地を重ね合わせた接着、樹脂加工、プリント加工、オパール加工等の加工、編み組織の切り替え等特に手法は問わない。
【0028】
図5は、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類のウエストスムージングベルト(6)及び骨盤キープパネル(9)の表パネル(10)並びに裏パネル(11)の伸縮方向を示した図である。
ウエストスムージングベルト(6)は、着用時のハミ肉を防止し、動作時のずれを防止するために配するという観点から、帯状ではなく、下辺より上辺の寸法が長くなる扇形状となるように設計されている(図面中の(a)参照)。この形状により、着用者の身体への締め付けと食い込みをより低減させることができる。
【0029】
ウエストスムージングベルト(6)の伸縮方向は、ウエストスムージングベルト(6)の前端の中間点と、後端の中間点とをつなぐ横方向の線分(M)に対して、約125°~145°(135°±10°)縦斜め方向に傾斜した直線に沿って、着用者の両脇から前身頃中心又は後身頃中心に向かう後下がりの斜め方向(S)に大きく伸縮する(図面中の(a)参照)。
ウエストスムージングベルト(6)の伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%であることが望ましい。
【0030】
本実施形態において、ウエストスムージングベルト(6)は、必ずしもベルトの形態である必要はなく、例えばボディシェーパー等においては、前下がりのウエストラインにベルトの形態ではない上半身の身頃を取り付けてもよい。
【0031】
骨盤キープパネル(9)における表パネル(10)は、表パネル(10)の前身頃の端部と後身頃の端部それぞれを上下に二等分する横方向の線分に沿う横向きの方向(L)に大きく伸縮し、裏パネル(11)は、表パネル(10)の伸縮方向(L)に対して、約35°~55°(45°±10°)縦斜め方向に傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向(D)に大きく伸縮する(図面中の(b)~(d)参照)。
骨盤キープパネル(9)における表パネル(10)及び裏パネル(11)の伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%であることが望ましい。
また、骨盤キープパネル(9)は、ウエストスムージングベルト(6)と比較し、JIS L1096 A法(定率伸長時伸長弾性率)において、伸度30%の時、緊迫力が10cN~30cN強い素材で構成されることが望ましい。
【0032】
本実施形態において、骨盤キープパネル(9)の表パネル(10)は、横方向(L)、裏パネル(11)は、後上がりの斜め方向(D)に伸縮性の大きな素材であることが好ましい。骨盤キープパネル(9)の素材は特に限定されないが、例えばパワーネットや、サテンネット、ツーウェイトリコット、ベア天竺等のストレッチ素材が挙げられる。
【0033】
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、ウエストスムージングベルト(6)及び骨盤キープパネル(9)における表パネル(10)並びに裏パネル(11)のそれぞれの機能を併せ持つことで、着用者の皮膚の動きに追随しやすく、動いてもウエストがずれにくいため、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、且つウエスト部がめくれにくくなることでハミ肉を防止することができるという本発明特有の顕著な効果を十分に発揮することが出来る。
【0034】
図6は、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類を着用した時の骨格と骨盤キープパネル(9)との位置関係を示している。(a)は正面図、(b)は背面図である。
【0035】
図7は、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類を着用した時の骨格との位置関係を示す正面図である。
本発明に係る骨盤キープパネル(9)は、着用者の骨盤周辺における腸骨稜(13)、腸骨(14)、及び上前腸骨棘(15)を覆い、且つ前中心身頃及び後中心身頃の仙骨(16)付近を覆わない設計となっている。
骨盤キープパネル(9)は、圧迫を感じにくい腸骨(14)周りに配置し、腸骨(14)を固定することで、パネルの上部(ウエスト部)や下部(臀部から太腿部分)を支えてずれにくくしている。
また、締付けによる圧迫を感じにくい腸骨(14)周りでウエスト補正機能付き衣類を固定することで、圧迫を感じやすいウエスト部を締め付けることなく、腹部周囲の苦しさを軽減することを目的としているため、前中心身頃及び後中心身頃の仙骨(16)付近を覆う必要がない。
【0036】
本発明の一実施形態であるガードルにおいて、ウエストスムージングベルト(6)の前身頃がクロスして縫合されずに重ね合わされた「クロス構造」を備えていても良い。
このクロス構造は、ウエストスムージングベルト(6)が、前身頃で縫合されずにクロスして重ね合わされており、クロスしていないものよりやわらかく伸縮性に優れ、立ち座りの腹部の幅の変化に対応して広がるため、腹部の衣類への食い込みや苦しさをより軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、本明細書に例示したガードル等の下着類に限らず、妊婦用の衣類や男性用のダイエット用衣類、スポーツ用衣類、介護用衣類等、様々な用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 ウエストライン
2 後身頃中心
3 前身頃中心
4 後ウエスト部
5 臀部
6 ウエストスムージングベルト
7 太腿部分
9 骨盤キープパネル
10 表パネル
11 裏パネル
12 皮膚が大きく伸縮する部位
13 腸骨稜
14 腸骨
15 上前腸骨棘
16 仙骨
17 後ウエスト中央から臀部中央
L 表パネルの伸縮方向
D 裏パネルの伸縮方向
S ウエストスムージングベルトの伸縮方向
M ウエストスムージングベルトの前端と後端の幅の中点同士をつなぐ横方向の線分
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2022-10-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
緊迫力の大きさと伸縮方向が異なる複数の領域からなり、着用者の少なくともウエスト周囲及び骨盤周辺を覆うウエスト補正機能付き衣類であって、
着用者のウエスト周囲にウエストスムージングベルトを含み、該ウエストスムージングベルトは、ウエストラインの高さが後身頃中心から前身頃中心に向かって徐々に低くなり、着用者の脇から後身頃中心に向かって後下がりの斜め方向Sに大きく伸縮し、
着用者の骨盤周辺に骨盤キープパネルを含み、該骨盤キープパネルは、着用者の前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わず、且つ骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い
前記骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる表パネル及び着用時に皮膚と接する裏パネルを重ね合わせた2重構造となっており、
前記ウエストスムージングベルト及び前記骨盤キープパネルにおける前記表パネル並びに前記裏パネルのそれぞれの機能を併せ持つことで効果を発揮することを特徴とするウエスト補正機能付き衣類。
【請求項2】
前記骨盤キープパネルにおける前記表パネルは、該表パネルを上下に二等分する横方向の線分に沿う伸縮方向Lに大きく伸縮し、前記裏パネルは、前記表パネルの伸縮方向Lに対して、約35°~55°(45°±10°)傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向Dに大きく伸縮する、請求項1に記載のウエスト補正機能付き衣類。
【請求項3】
前記骨盤キープパネルにおける前記表パネル並びに前記裏パネル及び前記ウエストスムージングベルトの伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%である、請求項1又は2に記載のウエスト補正機能付き衣類。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエスト補正機能付き衣類に関する。より詳細には、緊迫力の大きさと伸縮方向が異なる複数の領域からなり、着用者の少なくともウエスト周囲及び骨盤周辺を覆うウエスト補正機能付き衣類であって、着用者の骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い、且つ前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わない骨盤キープパネルを含み、骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる表パネル及び着用時に皮膚と接する裏パネルを重ね合わせた2重構造となっていることを特徴とする、ウエスト補正機能付き衣類に関する。
【0002】
<語句の説明> 本明細書における「ハミ肉」とは、衣類着用時に、柔らかい肉(脂肪)が衣類の外側にはみ出して、衣類を着けているところとそうでない際で段が発生している状態を意味する。
本明細書における「補正」とは、ハミ肉が発生せず、楽に衣類を着用できるようにすることを意味する。
本明細書における「緊迫力」とは、補正のために伸縮性のある生地により着用者の身体を締め付ける力を意味する。
本明細書における「ウエスト部」とは、着用者の胴体で、へその高さ辺りにある一領域を意味する。
本明細書における「ウエスト周囲」とは、着用者のへその高さの腹囲を意味する。
本明細書における「前身頃中心」とは、ウエスト補正機能付き衣類の前側部分において、着用者の前面の正中線付近の領域を意味する。
本明細書における「後身頃中心」とは、ウエスト補正機能付き衣類の後側部分において、着用者の背面の正中線付近の領域を意味する。
本明細書における「縦方向」とは、着用者の立位時に頭と足を結び、地面に対し垂直方向を意味する。
本明細書における「縦斜め方向」とは、着用者の立位時に頭と足を結び、地面と垂直方向の直線に対して傾きのある方向を意味する。
【背景技術】
【0003】
近年、益々注目が集まる健康志向やシェイプアップ志向に伴い、補正下着に求められる機能も多種多様なものとなっている。その中でも体型の補正を目的とする衣類には、従来から着用時の圧迫感や動きづらさが指摘されるものも多く、着用感や身体の動きに対する追随性の改善が望まれていた。一例として、ガードルは、日常生活における動作の中で、ウエスト部のずれが発生してめくれ上がった生地が、骨格のない腹部等の柔らかな皮膚に食い込み、必要以上に締め付けが生じて着用感を損ねたり、ウエスト部の柔らかい肉(脂肪)がはみ出して段差が生じたりし、ボディラインが崩れる要因となっていた。
【0004】
この問題に対して、着崩れを起こすことなく、ウエスト部への食い込みを防ぐことの可能な、ウエスト構造(特許文献1参照)が公知である。
【0005】
しかしながら、特許文献1の構造ではウエスト部に配置された当て布自体が本体にしっかりと固定されておらず、贅肉を分散させ食い込みを予防するものの、着用時の動作に対する衣類の身体への追随性に問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2013-96044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
日常生活における動作の中で、従来の補正下着等の着用した際、ウエスト周囲のボディラインが崩れる原因を解明するため、発明者らは、下半身の皮膚の伸縮や伸縮方向について検証をおこなった。
検証の結果、日常の前屈みや座り込み動作の際に、後ウエスト中央から臀部中央(17)の皮膚は縦方向に伸長し、腸骨より上の皮膚は、後ろから斜め上方向へ伸長し、腸骨より下の皮膚は、後ろから斜め下方向へ伸長し、でん溝付近の皮膚では、より大きく伸長していた。立位姿勢のウエスト周囲寸法は、立位姿勢より、前屈みや座り動作時の方が大きくなることが分かった。
さらに、前屈みや立ち座り動作時には、後中央の臀部の皮膚は縦方向や縦斜め方向へ大きく伸びるが、逆に前面の腹部では、縦方向や縦斜め方向に収縮していた。
以上の結果より、従来の補正下着等を着用した際に、ウエスト周囲のボディラインが崩れる原因は、動作時にウエスト周囲の皮膚の伸縮による変化や、腹部の寸法変化に従来の補正下着等の設計や生地が追随できていないことによるものと判明した。
よって、本発明の課題は、着用者の動きに追随でき、ウエスト部がずれにくいウエスト補正機能付き衣類を提供することである。
【0008】
さらに、前述のように、従来の補正下着のウエスト部にずれが発生し、めくれ上がった生地が、骨格のない腹部等の柔らかな皮膚に食い込み、必要以上に締め付けが生じて着用感を損ねたり、ウエスト部の柔らかい肉(脂肪)がはみ出して段差が生じたりし、ボディラインが崩れる要因となっていた。
よって、本発明のもうひとつの課題は、日常生活における動作の中で、ウエスト部がずれにくく、めくれにくく、ウエスト部からのハミ肉を防止することができるウエスト補正機能付き衣類を提供することである。
【0009】
上述の課題を同時に解決するため、発明者らは、日常生活における前屈みや座り込み等の動作時に、皮膚の伸縮に合わせて、ウエスト部や臀部の素材が、前屈みや座位時には縦斜め方向に大きく伸び、立位時には縦斜め方向に収縮して元に戻り、前側の腹部では、寸法変化を想定した(前下がり)位置を基準として、動作時の皮膚の伸縮に追随する「ウエストのスキンフィット設計」を発明した。
本発明は、上述のウエストのスキンフィット設計により、動いてもウエスト部がずれにくく、めくれにくく、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、ウエスト部からのハミ肉を防止するウエスト補正機能付き衣類を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、緊迫力の大きさと伸縮方向が異なる複数の領域からなり、着用者の少なくともウエスト周囲及び骨盤周辺を覆うウエスト補正機能付き衣類であって、
着用者のウエスト周囲にウエストスムージングベルトを含み、該ウエストスムージングベルトは、ウエストラインの高さが後身頃中心から前身頃中心に向かって徐々に低くなり、着用者の脇から後身頃中心に向かって後下がりの斜め方向Sに大きく伸縮し、
着用者の骨盤周辺に骨盤キープパネルを含み、該骨盤キープパネルは、着用者の前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わず、且つ骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い
前記骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる表パネル及び着用時に皮膚と接する裏パネルを重ね合わせた2重構造となっており、
前記ウエストスムージングベルト及び前記骨盤キープパネルにおける前記表パネル並びに前記裏パネルのそれぞれの機能を併せ持つことで効果を発揮することを特徴とするウエスト補正機能付き衣類に関する。
【0011】
請求項に係る発明は、前記骨盤キープパネルにおける前記表パネルは、該表パネルを上下に二等分する横方向の線分に沿う伸縮方向Lに大きく伸縮し、前記裏パネルは、前記表パネルの伸縮方向Lに対して、約35°~55°(45°±10°)傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向Dに大きく伸縮する、請求項1に記載のウエスト補正機能付き衣類に関する。
【0012】
請求項に係る発明は、前記骨盤キープパネルにおける前記表パネル並びに前記裏パネル及び前記ウエストスムージングベルトの伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%である、請求項1又は2に記載のウエスト補正機能付き衣類に関する。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、ウエストスムージングベルトは、ウエストラインの高さが後身頃中心から前身頃中心に向かって徐々に低くなり、脇から後身頃中心に向かって後下がりの斜め方向Sに大きく伸縮し、下半身を覆う部分の素材よりも後下がりの斜め方向Sの伸長回復率が大きく、且つ骨盤キープパネルは、ウエストスムージングベルトと比較し、緊迫力が強いことで着用者の骨盤周囲を強力に保持しつつ皮膚の動きに追随し、骨盤キープパネルにより支えられている臀部及び下半身を覆う部分と、上部のウエストスムージングベルトが、臀部の皮膚の伸縮に合わせて、前屈みや座位時には縦方向や後下がりの縦斜め方向Sに大きく伸び、立位時には縦方向や後下がりの縦斜め方向Sに収縮して元に戻ることで、動いてもウエストがずれにくいため、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、且つウエスト部がめくれにくくなることでハミ肉を防止することができる。
骨盤キープパネルは、着用者の前中心身頃及び後中心身頃の仙骨付近を覆わず、且つ骨盤周辺における腸骨稜、腸骨、及び上前腸骨棘を覆い圧迫を感じにくい腸骨周りに配置し、腸骨を固定することで、パネルの上部(ウエスト部)や下部(臀部から太腿部分)を支えてずれにくくしている。
また、締付けによる圧迫を感じにくい腸骨周りでウエスト補正機能付き衣類を固定することで、圧迫を感じやすいウエスト部を締め付けることがなく、腹部周囲の苦しさを軽減することができる。
さらに、骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる少なくとも2枚の生地を重ね合わせた構造となっており、表パネルは横方向の緊迫力で骨盤周囲を強力に保持し、裏パネルは、着用者の皮膚の伸長方向(後上がりの斜め方向)に追随するという表裏別の機能を果たすため、表パネル及び裏パネルの2重構造による相乗効果により、着用者の皮膚の動きに追随しやすく、動いてもウエストがずれにくい上にウエスト周囲のボディラインを美しく保つことができる。
【0014】
請求項に係る発明によれば、骨盤キープパネルは、伸縮方向が異なる少なくとも2枚の生地を重ね合わせた構造となっており、表パネルは、該表パネルを上下に二等分する横方向の線分に沿う伸縮方向Lに大きく伸縮し、裏パネルは、表パネルの伸縮方向Lに対して、約35°~55°(45°±10°)傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向Dに大きく伸縮するため、表パネルは横方向の緊迫力で骨盤周囲を強力に保持し、裏パネルは、着用者の皮膚の伸長方向(後上がりの斜め方向)に追随するという表裏別の機能を果たすため、表パネル及び裏パネルの2重構造による相乗効果により、着用者の皮膚の動きに追随しやすく、動いてもウエストがずれにくいため、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、且つウエスト部がめくれにくくなることでハミ肉を防止することができる。
【0015】
請求項に係る発明によれば、骨盤キープパネルにおける表パネル並びに裏パネル及びウエストスムージングベルトの伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%であるため、骨盤キープパネルにおける表パネル並びに裏パネル及びウエストスムージングベルトのそれぞれの機能を十分に発揮することができ、着用者の皮膚の動きに追随しやすく、動いてもウエストがずれにくいため、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、且つウエスト部がめくれにくくなることでハミ肉を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明に係るウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルを着用した人の側面図である。(a)は座位状態の左側面図、(b)は立位状態の左側面図である。
図2】前屈みや立ち座り動作における皮膚の伸縮方向と大きく伸縮する部位を示す図である。(a)は座位状態の左側面図、(b)は前屈み状態の左側面図、(c)は座位状態の背面図である。斜線部で示した領域(17)は後ウエスト中央から臀部中央を示し、矢印は皮膚の伸縮方向を示す。
図3】骨盤周囲に骨盤キープパネル(網掛で示した部分)を配置した、ウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルの図である。(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。図中の矢印L、D及びSは生地の伸縮方向を示す。
図4】ウエスト周囲にウエストスムージングベルト(網掛で示した部分)を配置した、ウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルの図である。(a)は正面図、(b)は左側面図、(c)は背面図である。図中の矢印Sは生地の伸縮方向を示す。
図5】本発明に係るウエスト補正機能付き衣類のウエストスムージングベルト及び骨盤キープパネルの表パネル並びに裏パネルの伸縮方向を示した図である。(a)はウエストスムージングベルトの伸縮方向を示した図、(b)は骨盤キープパネルにおける表パネル及び裏パネルの2重構造とそれぞれの伸縮方向を示した図、(c)は裏パネルの伸縮方向の説明図、(d)は表パネルの伸縮方向の説明図である。
図6】本発明に係るウエスト補正機能付き衣類を着用した時の骨格と骨盤キープパネルとの位置関係を示した図である。(a)は正面図、(b)は背面図である。
図7】本発明に係るウエスト補正機能付き衣類と骨格との位置関係を示した図である。(a)は正面図、(b)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類の詳細な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0018】
図1は、本発明のウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルを着用した人の図を示す。
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、ウエスト周囲に配されたベルトと接合される下半身を覆う部分の上端部であるウエストライン(1)の高さが、背部の後身頃中心(2)から腹部の前身頃中心(3)に向かって徐々に低くなることを特徴とする。
【0019】
ウエストライン(1)における後身頃中心(2)と前身頃中心(3)の高低差は、立位時及び動作時においても生地のめくれ等による腹部への食い込みを低減し、苦しさを感じやすいウエスト部を締め付けることなく、腹部周囲の圧迫感を逃すことができ、かつ、ハミ肉を防止できればよく、高低差の範囲は特に限定されないが、約2~8cmが好ましい。
【0020】
図2は、前屈みや立ち座り動作における皮膚の伸縮方向と大きく伸縮する部位(12)を示す。
動作時における腹部、後ウエスト部(4)、及び臀部(5)の皮膚の伸縮方向を図面中の矢印で示している。また、後ウエスト中央から臀部中央(17)を図面中の斜線部で示し、皮膚が大きく伸縮する部位(12)を図面中の網掛け部で示している。前屈みや座り込み動作の際に、後ウエスト部(4)や臀部(5)の皮膚が縦方向や縦斜め方向へ大きく伸び(図2の(a)、(b)参照)、後ウエスト部(4)の皮膚が脇から後中心にかけて両方向へ動き、臀部(5)の皮膚が後中心から脇にかけて両方向へ動く(図2の(c)参照)。また、腹部では縦方向や縦斜め方向に収縮し、腹囲周りは太くなる。
【0021】
図3は、骨盤キープパネル(9)(網掛けで示した部分)を配した、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルの図である。矢印L、D及びSは生地の伸縮方向を示している。
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、皮膚の動きの研究結果に基づき、図2で示した着用者の皮膚と同様に伸長するよう開発された生地を用いて、着用者の皮膚の伸縮に追随するよう設計されている。
【0022】
後中心身頃部に配されたアーモンド形の生地は、骨盤キープパネル(9)よりも伸縮率が大きく設計され、皮膚の伸長に合わせて縦方向に大きく伸縮するため、着用者が前屈みになってもずれにくい。
皮膚が一番大きく伸縮する太腿部分の裏側は、縦方向にも伸縮する一枚の生地で構成されているため動きに柔軟に対応でき、快適な着用感を得ることができる。
【0023】
図4は、ウエスト周囲にウエストスムージングベルト(6)(網掛けで示した部分)を配した、ウエスト補正機能付き衣類の一例であるガードルの図である。
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、ウエストライン(1)の高さが、背部の後身頃中心(2)から腹部の前身頃中心(3)に向かって徐々に低くなることを特徴としている(図面中の(a)参照)。加えて、ウエストスムージングベルト(6)には脇から後身頃中心(2)に向かっての後下がりの斜め方向(S)に大きく伸縮する素材を配し、下半身を覆う部分よりも後下がりの斜め方向(S)の伸長回復率(キックバック)を大きくし、後ウエスト部(4)が動作時の皮膚の伸縮に合わせて、前屈みや座位時には縦斜め方向に大きく伸び、立位時には縦斜め方向に収縮して元に戻ることを特徴とする(図面中の(b)、(c)参照)。
【0024】
ウエストスムージングベルト(6)の素材は、後下がりの斜め方向(S)に伸縮性の大きな素材であることが好ましい。伸縮性部材に用いられる素材は特に限定されないが、人体の動きに追随するという効果を発揮し、ウエスト部のずれやめくれを防止するため、後下がりの斜め方向(S)に伸縮する素材であれば良く、例えばパワーネットや、サテンネット、ツーウェイトリコット、ベア天竺等のストレッチ素材が挙げられる。
さらに、伸縮性部材を衣類に用いる際は、生地を重ね合わせた当て布、生地を重ね合わせた接着、樹脂加工、プリント加工、オパール加工等の加工、編み組織の切り替え等特に手法は問わない。
【0025】
図5は、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類のウエストスムージングベルト(6)及び骨盤キープパネル(9)の表パネル(10)並びに裏パネル(11)の伸縮方向を示した図である。
ウエストスムージングベルト(6)は、着用時のハミ肉を防止し、動作時のずれを防止するために配するという観点から、帯状ではなく、下辺より上辺の寸法が長くなる扇形状となるように設計されている(図面中の(a)参照)。この形状により、着用者の身体への締め付けと食い込みをより低減させることができる。
【0026】
ウエストスムージングベルト(6)の伸縮方向は、ウエストスムージングベルト(6)の前端の中間点と、後端の中間点とをつなぐ横方向の線分(M)に対して、約125°~145°(135°±10°)縦斜め方向に傾斜した直線に沿って、着用者の両脇から前身頃中心又は後身頃中心に向かう後下がりの斜め方向(S)に大きく伸縮する(図面中の(a)参照)。
ウエストスムージングベルト(6)の伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%であることが望ましい。
【0027】
本実施形態において、ウエストスムージングベルト(6)は、必ずしもベルトの形態である必要はなく、例えばボディシェーパー等においては、前下がりのウエストラインにベルトの形態ではない上半身の身頃を取り付けてもよい。
【0028】
骨盤キープパネル(9)における表パネル(10)は、表パネル(10)の前身頃の端部と後身頃の端部それぞれを上下に二等分する横方向の線分に沿う横向きの方向(L)に大きく伸縮し、裏パネル(11)は、表パネル(10)の伸縮方向(L)に対して、約35°~55°(45°±10°)縦斜め方向に傾斜した直線に沿って、着用者の前身頃中心又は後身頃中心からそれぞれ両脇に向かう後上がりの斜め方向(D)に大きく伸縮する(図面中の(b)~(d)参照)。
骨盤キープパネル(9)における表パネル(10)及び裏パネル(11)の伸び率は、JIS L―1096-2010試験の伸び率D法(編物の定荷重法、カットストリップ法50mm×300mm、荷重15N時)で、タテ(地の目方向)に120%~160%、ヨコ(地の目方向から90°の方向)に30%~50%であることが望ましい。
また、骨盤キープパネル(9)は、ウエストスムージングベルト(6)と比較し、JIS L1096 A法(定率伸長時伸長弾性率)において、伸度30%の時、緊迫力が10cN~30cN強い素材で構成されることが望ましい。
【0029】
本実施形態において、骨盤キープパネル(9)の表パネル(10)は、横方向(L)、裏パネル(11)は、後上がりの斜め方向(D)に伸縮性の大きな素材であることが好ましい。骨盤キープパネル(9)の素材は特に限定されないが、例えばパワーネットや、サテンネット、ツーウェイトリコット、ベア天竺等のストレッチ素材が挙げられる。
【0030】
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、ウエストスムージングベルト(6)及び骨盤キープパネル(9)における表パネル(10)並びに裏パネル(11)のそれぞれの機能を併せ持つことで、着用者の皮膚の動きに追随しやすく、動いてもウエストがずれにくいため、ウエスト周囲のボディラインを美しく保ち、且つウエスト部がめくれにくくなることでハミ肉を防止することができるという本発明特有の顕著な効果を十分に発揮することが出来る。
【0031】
図6は、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類を着用した時の骨格と骨盤キープパネル(9)との位置関係を示している。(a)は正面図、(b)は背面図である。
【0032】
図7は、本発明に係るウエスト補正機能付き衣類を着用した時の骨格との位置関係を示す図である。(a)は正面図、(b)は背面図である。
本発明に係る骨盤キープパネル(9)は、着用者の骨盤周辺における腸骨稜(13)、腸骨(14)、及び上前腸骨棘(15)を覆い、且つ前中心身頃及び後中心身頃の仙骨(16)付近を覆わない設計となっている。
骨盤キープパネル(9)は、圧迫を感じにくい腸骨(14)周りに配置し、腸骨(14)を固定することで、パネルの上部(ウエスト部)や下部(臀部から太腿部分)を支えてずれにくくしている。
また、締付けによる圧迫を感じにくい腸骨(14)周りでウエスト補正機能付き衣類を固定することで、圧迫を感じやすいウエスト部を締め付けることなく、腹部周囲の苦しさを軽減することを目的としているため、前中心身頃及び後中心身頃の仙骨(16)付近を覆う必要がない。
【0033】
本発明の一実施形態であるガードルにおいて、ウエストスムージングベルト(6)の前身頃がクロスして縫合されずに重ね合わされた「クロス構造」を備えていても良い。
このクロス構造は、ウエストスムージングベルト(6)が、前身頃で縫合されずにクロスして重ね合わされており、クロスしていないものよりやわらかく伸縮性に優れ、立ち座りの腹部の幅の変化に対応して広がるため、腹部の衣類への食い込みや苦しさをより軽減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明に係るウエスト補正機能付き衣類は、本明細書に例示したガードル等の下着類に限らず、妊婦用の衣類や男性用のダイエット用衣類、スポーツ用衣類、介護用衣類等、様々な用途に利用可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 ウエストライン
2 後身頃中心
3 前身頃中心
4 後ウエスト部
5 臀部
6 ウエストスムージングベルト
7 太腿部分
9 骨盤キープパネル
10 表パネル
11 裏パネル
12 皮膚が大きく伸縮する部位
13 腸骨稜
14 腸骨
15 上前腸骨棘
16 仙骨
17 後ウエスト中央から臀部中央
L 表パネルの伸縮方向
D 裏パネルの伸縮方向
S ウエストスムージングベルトの伸縮方向
M ウエストスムージングベルトの前端と後端の幅の中点同士をつなぐ横方向の線分