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特開2023-184348電子楽器、発光制御方法及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184348
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電子楽器、発光制御方法及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G10H 1/32 20060101AFI20231221BHJP
   G10H 1/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G10H1/32 A
G10H1/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098455
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001443
【氏名又は名称】カシオ計算機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001254
【氏名又は名称】弁理士法人光陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】岡野 真吾
(72)【発明者】
【氏名】池田 晃
(72)【発明者】
【氏名】寺尾 健
(72)【発明者】
【氏名】森山 修
(72)【発明者】
【氏名】梶川 知哉
(72)【発明者】
【氏名】市村 優太郎
【テーマコード(参考)】
5D478
【Fターム(参考)】
5D478CC37
5D478KK12
5D478KK14
(57)【要約】
【課題】より楽しく利用することのできる電子楽器、発光制御方法及びプログラムを提供する。
【解決手段】電子楽器は、入力操作を受け付ける操作受付部と、制御部と、を備える。操作受付部は、回転ホイールを含み、回転ホイールは、カラー発光可能な第1発光部を有する。制御部は、回転ホイールへの入力操作があった場合に、第1発光部による発光色を入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力操作を受け付ける操作受付部と、
制御部と、
を備え、
前記操作受付部は、回転ホイールを含み、
当該回転ホイールは、カラー発光可能な第1発光部を有し、
前記制御部は、前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、前記第1発光部による発光色を前記入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる
電子楽器。
【請求項2】
前記制御部は、前記回転ホイールへの入力操作がない状態では前記第1発光部の発光色を時間変化させる、請求項1記載の電子楽器。
【請求項3】
前記回転ホイールは、ピッチベンダー又はモジュレーションホイールである請求項1記載の電子楽器。
【請求項4】
前記操作受付部は、電力供給の有無を切り替える操作を受け付ける電源スイッチを備え、
前記電源スイッチは、第2発光部を有し、
前記制御部は、前記操作受付部が基準時間以上続けて操作を受け付けていない場合に前記第2発光部を消灯させ、前記第1発光部の発光色を時間変化させる待機状態とする
請求項1記載の電子楽器。
【請求項5】
前記制御部は、前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、当該入力操作のあったタイミングにおける前記第1発光部の発光色が前記回転ホイールの回転角度よりも大きい回転角度に対応する色である場合には、前記第1発光部による発光色を変化させない請求項1記載の電子楽器。
【請求項6】
カラー発光可能な第1発光部を有する回転ホイールを備える電子楽器の前記第1発光部の発光制御方法であって、
前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、前記第1発光部による発光色を前記入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる
発光制御方法。
【請求項7】
カラー発光可能な第1発光部を有する回転ホイールを備える電子楽器のコンピュータを、
前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、前記第1発光部による発光色を前記入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる
ように機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電子楽器、発光制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ユーザによる操作を電子的に検知して音を発する電子楽器では、供給される電気を利用して操作スイッチや、鍵盤などのキーを発光させる技術がある。また、電子楽器には、回転操作により出力音の音程を変化させるピッチベンダーと呼ばれる操作部材を有するものがある。
【0003】
特許文献1には、電子鍵盤楽器において、初心者などを対象としてピッチベンダーやモジュレーションホイールといった回転ホイールの回転操作をナビゲートするためにこれらの発光色を変化させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2018-54860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このようなナビゲーションのための回転ホイールの発光動作は、待機時や演奏時の動作としては無機的であって楽しさに欠けるという課題がある。
【0006】
この発明の目的は、より楽しく利用することのできる電子楽器、発光制御方法及びプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は、
入力操作を受け付ける操作受付部と、
制御部と、
を備え、
前記操作受付部は、回転ホイールを含み、
当該回転ホイールは、カラー発光可能な第1発光部を有し、
前記制御部は、前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、前記第1発光部による発光色を前記入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる
電子楽器である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従うと、より楽しく電子楽器を利用することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態の電子楽器である電子鍵盤楽器の平面図である。
図2】電子鍵盤楽器の機能構成を示すブロック図である。
図3】ピッチベンダーの操作に応じた各色LEDの輝度の変化例を示す図である。
図4】ピッチベンダー発光部の輝度の時間変化例を示す図である。
図5】発光制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
図6】表示発光制御処理の制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態の電子楽器である電子鍵盤楽器1を上方から見た平面図である。
電子鍵盤楽器1は、鍵盤11と、ピッチベンダー12(ピッチベンド)と、電源スイッチ21と、音量切替部22と、表示部60などを備える。
【0011】
鍵盤11は、特には限られないが、7オクターブ強の範囲の各音を出力する操作を受け付ける白鍵及び黒鍵が並んでいる。特に設定がなされない限り、鍵盤11は、半音ごとに平均律での出力を受け付ける。鍵盤11には、通常の指で操作するものに加えて又は代えて、足で操作するペダル鍵盤(足鍵盤)が含まれていてもよい。
【0012】
ピッチベンダー12は、略円盤形状を有し、その円盤面の法線方向が鍵盤11の並び方向(図1の左右方向)に平行に位置している。ピッチベンダー12は、電子鍵盤楽器1の上面から略円盤形状の一部角度範囲が突出して位置し、上記突出する角度範囲よりも広いある可動角度範囲内でこの円盤の中心回りに回転操作が可能な回転ホイールである。ピッチベンダー12の回転操作により、鍵盤11では半音単位でしか出力できない音程を回転角度(基準となる中央の回転位置(基準位置)からの回転量)に応じて連続的に変化させる。ピッチベンダー12は、ユーザが手を離すと自動的に基準位置(回転量がゼロ)に復帰する。最大の回転角度(回転量)の状態での音程の変化量は、設定操作により変更可能(例えば、半音~1オクターブの範囲など)であってよい。ピッチベンダー12は、側面外周(円盤の上下面の縁)に沿って略円弧状に光を出射するピッチベンダー発光部31(図2参照)を有する。
【0013】
なお、電子鍵盤楽器1には、ピッチベンダー12の代わりに、又はピッチベンダー12と並んでモジュレーションホイールが位置していてもよい。モジュレーションホイールは、音のモジュレーション、例えば、ビブラートの大きさなどを調整、規定するものであり、ピッチベンダー12と同様に基準となる中央の回転位置からある角度範囲内で回転操作が可能である。一方で、モジュレーションホイールは、ユーザが手を放してもその位置で留まり、基準位置(回転量がゼロ)に自動では復帰しない。
【0014】
電源スイッチ21は、電力供給の有無を切り替える操作を受け付ける押しボタンスイッチである。電源スイッチ21は、電源スイッチ発光部32(図2参照)を備え、電力供給がオンとされている場合に光を発する。電源スイッチ発光部32が発する光は、特には限られないが白色であってもよい。
【0015】
音量切替部22は、スピーカー72(図2参照)から音を出力する際の音量を調整する回転スイッチである。音量切替部22は、回転方向を示す標識がある範囲、例えば、300度程度の範囲で回転可能であり、例えば、時計回りに標識位置が移動するほど出力の音量が大きくなるように切り替えられる。音量切替部22は、音量を上昇させる押しボタンスイッチと音量を低下させる押しボタンスイッチの組み合わせといった、他の操作スイッチであってもよい。
【0016】
表示部60は、各種機能の設定状態やその内容などを表示する。例えば、機能設定の状態は、各々機能設定内容の識別に係る標識などが付された光出射ウィンドウの下方(内側)でのLEDなどの光源の点灯有無など(点滅やその速さ、パターンなども含み得る)により示される。また、表示部60は、表示画面を有し、当該表示画面に文字や標識などの表示を行わせることで、設定内容、例えば、出力音の音質の設定などを示すことができてもよい。
【0017】
図2は、電子鍵盤楽器1の機能構成を示すブロック図である。
電子鍵盤楽器1は、操作受付部20と、発光部30と、CPU40(Central Processing Unit)(制御部)と、記憶部50と、表示部60と、音声出力回路71と、スピーカー72と、通信部80などを備える。
【0018】
操作受付部20は、入力操作を受け付けて、当該入力操作に応じた信号を出力する。操作受付部20は、演奏受付部10を含む。演奏受付部10は、出力させる音の音程を定める操作を受け付ける。演奏受付部10には、上記鍵盤11及びピッチベンダー12が含まれる。演奏受付部10は、その他、音色や余韻(残響)などを一時的に変化させたり音量バランスを変化させたりといった演奏に係る直接的な操作を受け付けることが可能であってもよい。
【0019】
上記に加えて、操作受付部20には、上記電源スイッチ21、音量切替部22が含まれる。また、操作受付部20は、設定受付部23を含む。設定受付部23は、上記機能設定などの切り替えなどに係る操作を受け付ける。設定受付部23は、専用の押しボタンスイッチ、回転スイッチ、ロッカスイッチ、スライドスイッチなどのいずれか又はこれらのうち複数の組み合わせを有していてもよいし、あるいは、タッチパネルなどであってもよい。
【0020】
発光部30は、上記のピッチベンダー発光部31(第1発光部)及び電源スイッチ発光部32(第2発光部)を含む。光源は、それぞれLEDであり、電源スイッチ発光部32は、単色の白色LEDであってもよい。電源スイッチ21は、例えば、円状の光透過部材(内部が視認可能である必要はない)によるカバー部材を有し、当該カバー部材下方に位置するLEDの光が光透過部材を介して外部に出射される。
【0021】
ピッチベンダー発光部31は、RGB各色のLEDの組を有し、カラー発光が可能である。ピッチベンダー12の内側でLEDが発した光が必要に応じて導光部材などを介してピッチベンダー12の外周付近に導かれ、光透過部材を介して非一様性を抑えつつ(ほぼムラなく)外部に出射される。RGB各色の輝度の組み合わせにより発光色が適宜切り替えられ得る。また、ピッチベンダー発光部31は、回転方向に沿って複数方向にそれぞれ光を出射する複数組(例えば、3組)のLEDを有し、回転方向について異なる色の光を出射可能とされてもよい。
【0022】
CPU40は、演算処理を行い、電子鍵盤楽器1の全体動作を統括制御するプロセッサである。CPU40は、単一であっても複数のプロセッサが並列に又は処理に応じて各々独立に処理を実行するものであってもよい。また、CPU40は、汎用のプロセッサに限られず、専用の処理を行うものを含んでいてもよい。
【0023】
記憶部50は、揮発性メモリ(RAM)と、不揮発性メモリとを含む。RAMは、CPU40に作業用のメモリ空間を提供し、一時データを記憶する。不揮発性メモリは、動作情報や、制御用のプログラム51などを記憶する。動作情報には、予め設定された(プリセットされた)設定に対する動作の内容、例えば、音色(倍音分布)、音の立ち上がりや余韻(エコー)などの処理が含まれていてもよい。また、動作情報には、後述するピッチベンダー発光部31の発光色の変化パターンに係る発光色情報52が含まれる。プログラム51には、上記発光色情報52などを用いたピッチベンダー発光部31の発光制御プログラムが含まれる。少なくともCPU40及び記憶部50が本実施形態のコンピュータを構成する。
【0024】
表示部60は、CPU40の制御に基づいて表示動作を行う。表示部60は、上記の通り、LEDランプの点招待状態により機能設定などを示す部分と、表示画面と、をそれぞれ有している。
【0025】
音声出力回路71は、鍵盤11及びピッチベンダー12の操作に応じた出力音のデジタルデータをスピーカー72の駆動信号に変換して出力する。スピーカー72は、上記駆動信号に応じた音声を生成出力する。音声出力回路71及びスピーカー72は、ステレオ対応であってもよい。
【0026】
通信部80は、外部機器との間で行う通信を制御する。通信部80は、外部音源からの音声データの入力を受け付けて、リアルタイムで音声出力回路71を経てスピーカー72から音声出力させることができる。通信部80は、信号線を接続する接続端子を有していてもよいし、ネットワーク接続するためのネットワークカードなどを有していてもよい。これらに加えて又は代えて、通信部80は、ブルートゥース(登録商標)などの近距離無線通信に係るアンテナ及び通信モジュールを有し、外部機器と近距離無線通信によるデータの送受信が可能であってもよい。
【0027】
上記のように、電子鍵盤楽器1は、演奏受付部10への入力操作に従って音を出力する演奏機能と、外部から通信部80を介して入力された音声データに基づく音声をスピーカー72から出力する音声出力機能とを有し、これらが併用されることも可能である。電子鍵盤楽器1は、電源スイッチ21がオンされている場合には、外部からの信号入力に応じて音声出力機能は実行可能な状態で維持される。演奏機能(演奏のための電力供給)は、ある基準時間(例えば、6分間)以上演奏操作がなかった場合には中断されて、待機状態に移行し、一部の機能動作が停止される。演奏操作が検出されると、即座に中断されていた機能動作が再起動されて、演奏が可能な通常動作状態に移行する。
【0028】
電源スイッチ発光部32及び表示部60は、待機状態では消灯されて、少なくとも演奏機能が実行されていないことを示す。一方で、ピッチベンダー発光部31のみは点灯状態が維持されて、電源スイッチ21がオフされて電力供給が遮断されているわけではないことを示す。
【0029】
次に、電子鍵盤楽器1におけるピッチベンダー発光部31の発光動作について説明する。
上記のように、ピッチベンダー発光部31は、所望の色でカラー発光させることができる。ピッチベンダー発光部31は、ピッチベンダー12の操作時に、当該操作の量(回転量、回転角度)に応じた色に発光色を変化させる。例えば、音程を上昇させる場合には、ピッチベンダー発光部31を赤色系の色に変化させ、音程を低下させる場合には、緑系の色に変化させるように定めることができる。
【0030】
図3は、ピッチベンダー12の操作に応じたRGB各色LEDの輝度の変化例を示す図である。図3(a)に示すように、ピッチベンダー12を高音側に移動させる操作を行った場合、ピッチベンダー12の回転量に応じて赤色LEDの発光量が増大し、緑色LED及び青色LEDの発光量が低下する。一方、図3(b)に示すように、ピッチベンダー12を低音側に移動させる操作を行った場合、ピッチベンダー12の回転量に応じて青色LED及び赤色LEDの発光量が低下する。
【0031】
ピッチベンダー12が操作されたとき、発光色は、ある変化速度又は時定数(速度パラメータ)に基づいて連続的な漸次変化とすることができる。すなわち、ピッチベンダー12の音程の変化量と発光色とがリアルタイムで完全に対応しなくてもよく、発光色をなめらかに変化させてもよい。速度パラメータは、輝度の変化量に応じて変化させてもよい。例えば、操作前の発光色から操作後の発光色への変更時間が輝度の変化量に大きく依存せずに概ね一定となるように速度パラメータが定められてもよい。
【0032】
また、ピッチベンダー12への入力操作がなされていない場合には、ピッチベンダー発光部31は、周期的に発光色が時間変化するように発光制御される。変化周期は、特には限られないが、ゆっくりとしたものであってもよく、例えば人の呼吸周期などに応じて3~8秒程度(6秒など)とされてもよい。
【0033】
図4は、ピッチベンダー発光部31における各LEDの輝度の時間変化例を示す図である。ここでは、6秒周期の変化を10秒間例示している。
ピッチベンダー発光部31は、緑色と橙色系の色との間で周期的な色の変動をしながら発光している。なお、ここでは青色LEDを高強度で発光させない範囲で変動させているが、説明を省略する他の用途で青色発光による報知動作などがなされないのであれば、青色系の光の出射も変動内に含まれてもよい。また、ここでは、完全なRGB3原色のいずれかを出射せず、中間色の範囲内で変化させることで、主張の強くない柔らかい表現に留めている。この変化の幅は、操作受付部20への入力操作により段階的に設定調整が可能であってもよい。変化の幅が小さいほど、待機時の変動が目立たなくなる一方で、上記ピッチベンダー12の回転操作に応じた色の変化が目立ちやすくなる。
【0034】
このような変化パターンのデータは、例えば、各タイミングでの輝度テーブルが予め定められて発光色情報52として記憶部50に保持され、順次読み出されてもよい。あるいは、輝度値自体の代わりに輝度の変化量のテーブルを保持し、現在の輝度に対して次にどの程度輝度を変更させるかを順次読み出して、輝度を変化させてもよい。
【0035】
変化パターンの途中でピッチベンダー12が操作された場合、ピッチベンダー発光部31は、操作開始時点の発光色からピッチベンダー12の回転量に応じた発光色へ発光が連続的に変化する。すなわち、操作開始時点の発光色によっては、各LEDの輝度の変化量が、ピッチベンダー12の基準位置における発光色からの輝度の変化量よりも大きくなったり小さくなったりし得る。上記のように輝度の変化量に応じて速度パラメータを変化させることで、ピッチベンダー12の回転量に応じた発光色への変化に要する時間を概ね一定としてもよい。ただし、操作開始時点の発光色と対応するピッチベンダー12の回転角度が、ピッチベンダー12の操作による回転角度と同符号(同方向)かつこれよりも大きい場合には、操作開始時点の発光色から逆向きにLEDの輝度を変化させない(その時点での発光色に固定する)こととしてもよい。例えば、操作開始時点の発光色がピッチベンダー12の+20度の回転角度に対応していた場合、実際にピッチベンダー12が+20度より大きい角度に回転された場合や、マイナスの角度に回転された場合には、LEDの輝度を変化させるが、ピッチベンダー12が+20度未満のプラス側に回転された場合には、LEDの輝度を変化させないこととしてもよい。また、操作によりピッチベンダー12の回転角度が上記のLEDの輝度が変化しない範囲に変化した後に、ゼロ度側に戻された場合には、上記と同様に操作開示時点の発光色と比較されて、LEDの輝度変化を行うか否かを判別してもよいし、無条件にLEDの輝度変化を行うこととしてもよい。
【0036】
なお、発光色がピッチベンダー12の回転量に応じた色に変化する前にピッチベンダー12が更に操作されて回転量が異なる値になった場合には、その時点での発光色(各LEDの輝度)と、新たな回転量に対応して設定されている発光色(輝度)とに基づいて、輝度の変化パターンが改めて設定される。また、ピッチベンダー12の回転量がゼロに戻った場合には、基準位置における発光色へ戻すように輝度が変更された後、当該発光色の状態(例えば、図4における4秒の状態と等しい)から変化パターンによる発光色の変化に移行してもよい。あるいは、図4におけるいずれかの状態と一致した時点から変化パターンによる発光色の変化に移行してもよい。
【0037】
図5は、電子鍵盤楽器1で実行されるピッチベンダー発光部31などの発光制御処理のCPU40による制御手順を示すフローチャートである。この発光制御処理は、電子鍵盤楽器1への電力供給が開始されると自動で開始され、電子鍵盤楽器1への電力供給が続いている間継続的に繰り返し処理を行っている。
【0038】
CPU40は、初期色で発光するようにピッチベンダー発光部31の各LEDを点灯させる(ステップS101)。CPU40は、ピッチベンダー12の回転量の情報を取得する(ステップS102)。
【0039】
CPU40は、ピッチベンダー12の回転量が前回の情報取得時から変化しているか否かを判別する(ステップS103)。ピッチベンダー12の回転量が変化していると判別された場合には(ステップS103で“YES”)、CPU40は、発光色情報52を参照して、ピッチベンダー12の回転量に応じた各LEDの輝度設定値を取得する(ステップS111)。
【0040】
CPU40は、現在の輝度値と、取得された輝度設定値との差分に基づいて、現在の輝度値から輝度設定値へ輝度を連続的に変更させるための輝度変更パターンを設定する(ステップS112)。CPU40は、設定された輝度変更パターンに従って、次の輝度値と当該輝度値への変更タイミングとを取得する(ステップS113)。
【0041】
CPU40は、変更タイミングでピッチベンダー発光部31の各LEDの輝度を変更させる(ステップS107)。CPU40は、表示発光制御処理を呼び出して実行する(ステップS108)。それから、CPU40の処理は、ステップS102へ戻る。
【0042】
ステップS103の判別処理で、ピッチベンダー12の回転量に変化がないと判別された場合には(ステップS103で“NO”)、CPU40は、ピッチベンダー12の回転量がゼロであるか否かを判別する(ステップS104)。ピッチベンダー12の回転量がゼロではないと判別された場合には(ステップS104で“NO”)、CPU40の処理は、ステップS113へ移行する。このような場合には、ステップS113の処理時点では、発光色が既にピッチベンダー12の回転量に応じた輝度となっている場合も含まれる。この場合には、CPU40は、輝度値を再設定する必要はなく、変更タイミングになった後に処理をステップS102に戻すだけであってもよい。
【0043】
ステップS104の判別処理で、ピッチベンダー12の回転量がゼロであると判別された場合には(ステップS104で“YES”)、CPU40は、輝度値が通常の変化パターンに従って変更されている状態であるか否かを判別する(ステップS105)。輝度値が通常の変化パターンに従って変更されていないと判別された場合には(ステップS105で“NO”)、CPU40の処理は、ステップS113へ移行する。
【0044】
輝度値が通常の変化パターンに従って変更されていると判別された場合には(ステップS105で“YES”)、CPU40は、発光色情報52に基づき、通常の変化パターンに従って、次の輝度値を取得する(ステップS106)。それから、CPU40の処理は、ステップS107へ移行する。
【0045】
図6は、図5のステップS108で呼び出される表示発光制御処理の制御手順を示すフローチャートである。この表示発光制御処理は、電源スイッチ発光部32及び表示部60の表示発光制御を行う。
【0046】
表示発光制御処理が開始されると、CPU40は、現在までの直近の基準時間内に操作受付部20への何らかの入力操作があったか否かを判別する(ステップS121)。この場合の入力操作は、意味のある設定や演奏の操作である必要はなく、単に入力操作に応じた信号が検出されさえすればよい。入力操作がなかったと判別された場合には(ステップS121で“NO”)、CPU40は、電源スイッチ発光部32及び表示部60の表示を消灯させる(ステップS131)。CPU40は、表示発光制御処理を終了して処理を発光制御処理に戻す。
【0047】
入力操作があったと判別された場合には(ステップS121で“YES”)、CPU40は、直近に表示、発光内容を変更させる何らかの設定操作や要求操作があったか否かを判別する(ステップS122)。何らかの設定操作又は要求操作があったと判別された場合には(ステップS122で“YES”)、CPU40は、操作内容に応じた表示発光設定を行う(ステップS123)。
【0048】
CPU40は、表示発光設定に応じた表示及び発光を電源スイッチ発光部32及び表示部60に行わせる表示制御を行う(ステップS124)。それから、CPU40は、表示発光制御処理を終了して処理を発光制御処理に戻す。
【0049】
直近に入力操作がなかったと判別された場合には(ステップS122で“NO”)、CPU40は、設定済の設定内容で表示発光制御を行う(ステップS124)。それから、CPU40は、表示発光制御処理を終了して処理を発光制御処理に戻す。
【0050】
なお、表示発光制御処理は、発光制御処理とは独立して実行されてもよい。この場合、発光制御処理は、ステップS121で“NO”となって待機状態に移行する場合には、ステップS131の処理後に発光制御処理を終了し、待機状態から通常動作状態に移行すると、発光制御処理が再起動されてもよい。
【0051】
以上のように、本実施形態の電子鍵盤楽器1は、操作受付部20と、CPU40とを備える。操作受付部20は、ピッチベンダー12(及び/又はモジュレーションホイール。以下同じ)を含み、当該ピッチベンダー12は、カラー発光可能なピッチベンダー発光部31を有する。CPU40は、ピッチベンダー12への入力操作があった場合に、ピッチベンダー発光部31による発光色を入力操作があったタイミングの色からピッチベンダー12の回転角度に応じた色へ漸次変化させる。
このように、ピッチベンダー12の回転量に応じて発光色を変えることで、当該ピッチベンダー12の使用状態を反映することができる。また、無機的な報知機能としてだけでなく、感情表現である音楽に沿った表示として、電子鍵盤楽器1の利用をより楽しいものとすることができる。
【0052】
また、CPU40は、ピッチベンダー12への入力操作がない状態ではピッチベンダー発光部31の発光色を時間変化させる。このように、ピッチベンダー12を操作していないときでも、当該ピッチベンダー12の色を変化させることで、無機的な報知機能としてだけでなく、感情表現である音楽に沿った表示として、電子鍵盤楽器1の利用をより楽しいものとすることができる。また、通常の発光色の変化から上記ピッチベンダー12の回転量に応じた発光色への変化を連続的な漸次変化とすることで、色彩表現を不自然に不連続な表示となることを避けることができる。
【0053】
また、回転ホイールを用いたピッチベンダー12又はモジュレーションホイールに上記の発光動作させることで、回転操作に応じた発光色の変更を適切に表現することができる。
また、弓状に突出した部分の円弧部分から光が出射されるので、曲線状の発光エリアにより、尖った堅い印象を与えるのを抑えながらユーザの感情に影響を与えることができる。
また、電子鍵盤楽器1の上面から突出している側面部分(両側円盤面周縁付近)が発光するので、ユーザが電子鍵盤楽器1から離れた場所にいても、発光状態を視認することができる。
【0054】
また、電子鍵盤楽器1は、電力供給の有無を切り替える操作を受け付ける電源スイッチ21を備え、電源スイッチ21は、演奏のための電力供給がある演奏機能状態の場合に点灯する電源スイッチ発光部32を有する。CPU40は、操作受付部20(演奏受付部10であってもよい)がある基準時間以上続けて操作を受け付けていない場合に電源スイッチ発光部32を消灯させてピッチベンダー発光部31の発光色を時間変化させる待機状態とする。
このように、待機状態では、電源スイッチ発光部32ではなく、ピッチベンダー発光部31を点灯させることで、離れた位置からも容易に部分的な動作状態を識別可能とする。また、上記変化パターンでの発光状態の変化を継続させることができるので、演奏に限らず、電子鍵盤楽器1に電力供給がなされている間は、無機的な表示ではなく、電子鍵盤楽器1の利用がユーザにとって楽しいものであるとすることができる。
【0055】
また、CPU40は、ピッチベンダー12への入力操作があった場合に、当該入力操作のあったタイミングにおけるピッチベンダー発光部31の発光色がピッチベンダー12の回転角度よりも大きい回転角度に対応する色である場合には、ピッチベンダー発光部31による発光色を変化させないこととしてもよい。
これにより、ピッチベンダー12の回転方向と反対向きに色が変化するのを抑制するこ
とができるので、気分を盛り上げる方向と相殺しない。
【0056】
また、カラー発光可能なピッチベンダー発光部31を有するピッチベンダー12を備える本発明の電子鍵盤楽器1のピッチベンダー発光部31の発光制御方法は、ピッチベンダー12への入力操作があった場合に、ピッチベンダー発光部31による発光色を入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる。
このような発光制御により、また、一方で、ピッチベンダー12の回転量に応じて発光色を変えることで、当該ピッチベンダー12の使用状態を反映することができる。また、無機的な報知機能としてだけでなく、感情表現である音楽に沿った表示として、電子鍵盤楽器1の利用をより楽しいものとすることができる。また、上記の通常の発光色の変化からピッチベンダー12の回転量に応じた発光色への変化を連続的な漸次変化とすることで、色彩表現を不自然に不連続な表示となることを避けることができる。
【0057】
また、上記の発光制御方法に係るプログラム51を実行することで、容易に回転ホイール(ピッチベンダー12)の発光状態を変化させて、容易な制御により、より楽しく電子楽器を利用することが可能となる。
【0058】
なお、本発明は、上記実施の形態に限られるものではなく、様々な変更が可能である。
例えば、変化パターンに従ったピッチベンダー発光部31の発光色の変化周期は、人間の呼吸周期に近いものである必要はない。他の周期であってもよい。また、一定の周期ではなく、周期自体が変動するものであってもよい。また、変化パターンは、実施形態に示したものである必要はない。他の任意の変化パターンであってよく、輝度変化が線形変化ではなくても(たとえば、正弦波状の変化などでも)よい。
【0059】
また、カラー発光の漸次変化が不自然にならない範囲で、各LEDの輝度の設定可能な段階の数は適宜制限されて定められてもよい。また、あらかじめ想定され得る輝度値の組み合わせ以外での複数のLEDの発光はなされないように設定、制御されてもよい。また、LEDは、RGBの3色でなくてもよい。中間色で発光するLEDなどが含まれていてもよい。また、LED以外の光源であってもよい。
【0060】
また、上記実施の形態では、待機状態では、電源スイッチ発光部32を消灯して、ピッチベンダー発光部31の点灯、色変化を継続させるものとして説明したが、これに限られない。何らかの表示などにより待機状態であることをユーザが把握可能でありさえすればよい。
【0061】
また、電子鍵盤楽器1は、待機状態を有しなくてもよいし、反対に、待機状態では外部からの音声データの入力に対する動作も停止されてもよい。すなわち、待機状態では、入力操作の検出及び通信部80へのデータ入力の検出及びその取得が可能でさえあればよく、音声データの入力が検出された場合にデータ処理回路が再起動されてもよい。
【0062】
また、上記実施の形態では、回転ホイールとしてピッチベンダーやモジュレーションホイールを例に挙げて説明したが、これに限られるものではない。その他の内容の要求に係る回転操作を受け付ける演奏受付部10又はその他の操作受付部20の構成であってもよい。また、回転ホイールは、全体で1周(360度)以上の回転が可能なものであってもよい。
【0063】
また、上記実施の形態では、電子楽器として電子鍵盤楽器1を例に挙げて説明したが、これに限られない。ピッチベンダーを用いて音程変更が可能な電子楽器であれば、他の楽器、例えば、ギターや管楽器などであってもよく、その場合には、鍵盤11の代わりに弦、操作キーやピストンなどに対応するものを有していてもよい。
【0064】
また、上記実施の形態で示した、ピッチベンダー12への入力操作がないときの発光色の時間変化は、行われなくてもよい。この場合、発光色は、予め定められた固定色であってもよいし、起動ごとに異なる色に固定されてもよい。あるいは、単純な時間変化ではなく、演奏の切れ目ごとなどで色が変更されてもよい。
【0065】
また、以上の説明では、本発明の発光制御に係るプログラム51を記憶するコンピュータ読み取り可能な媒体としてHDDやフラッシュメモリなどの不揮発性メモリなどからなる記憶部50を例に挙げて説明したが、これらに限定されない。その他のコンピュータ読み取り可能な媒体として、MRAMなどの他の不揮発性メモリや、CD-ROM、DVDディスクなどの可搬型記録媒体を適用することが可能である。また、本発明に係るプログラムのデータを通信回線を介して提供する媒体として、キャリアウェーブ(搬送波)も本発明に適用される。
その他、上記実施の形態で示した具体的な構成、処理動作の内容及び手順などは、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。
【0066】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、本発明の範囲は、上述の実施の形態に限定するものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲とその均等の範囲を含む。
以下に、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲に記載した発明を付記する。付記に記載した請求項の項番は、この出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の通りである。
【0067】
[付記]
<請求項1>
入力操作を受け付ける操作受付部と、
制御部と、
を備え、
前記操作受付部は、回転ホイールを含み、
当該回転ホイールは、カラー発光可能な第1発光部を有し、
前記制御部は、前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、前記第1発光部による発光色を前記入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる
電子楽器。
<請求項2>
前記制御部は、前記回転ホイールへの入力操作がない状態では前記第1発光部の発光色を時間変化させる、請求項1記載の電子楽器。
<請求項3>
前記回転ホイールは、ピッチベンダー又はモジュレーションホイールである請求項1記載の電子楽器。
<請求項4>
前記操作受付部は、電力供給の有無を切り替える操作を受け付ける電源スイッチを備え、
前記電源スイッチは、第2発光部を有し、
前記制御部は、前記操作受付部が基準時間以上続けて操作を受け付けていない場合に前記第2発光部を消灯させ、前記第1発光部の発光色を時間変化させる待機状態とする
請求項1記載の電子楽器。
<請求項5>
前記制御部は、前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、当該入力操作のあったタイミングにおける前記第1発光部の発光色が前記回転ホイールの回転角度よりも大きい回転角度に対応する色である場合には、前記第1発光部による発光色を変化させない請求項1記載の電子楽器。
<請求項6>
カラー発光可能な第1発光部を有する回転ホイールを備える電子楽器の前記第1発光部の発光制御方法であって、
前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、前記第1発光部による発光色を前記入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる
発光制御方法。
<請求項7>
カラー発光可能な第1発光部を有する回転ホイールを備える電子楽器のコンピュータを、
前記回転ホイールへの入力操作があった場合に、前記第1発光部による発光色を前記入力操作があったタイミングの色から回転ホイールの回転角度に応じた色へ漸次変化させる
ように機能させるプログラム。
【符号の説明】
【0068】
1 電子鍵盤楽器
10 演奏受付部
11 鍵盤
12 ピッチベンダー
20 操作受付部
21 電源スイッチ
22 音量切替部
23 設定受付部
30 発光部
31 ピッチベンダー発光部
32 電源スイッチ発光部
40 CPU
50 記憶部
51 プログラム
52 発光色情報
60 表示部
71 音声出力回路
72 スピーカー
80 通信部
図1
図2
図3
図4
図5
図6