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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184354
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】レンズユニット
(51)【国際特許分類】
   G02B 7/02 20210101AFI20231221BHJP
【FI】
G02B7/02 C
G02B7/02 A
G02B7/02 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098475
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126240
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 琢磨
(74)【代理人】
【識別番号】100223941
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 佳子
(74)【代理人】
【識別番号】100159695
【弁理士】
【氏名又は名称】中辻 七朗
(74)【代理人】
【識別番号】100172476
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 一史
(74)【代理人】
【識別番号】100126974
【弁理士】
【氏名又は名称】大朋 靖尚
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅未
【テーマコード(参考)】
2H044
【Fターム(参考)】
2H044AA02
2H044AA04
2H044AA08
2H044AA14
2H044AA16
2H044AC01
2H044AJ01
2H044AJ04
(57)【要約】
【課題】 プラスチックレンズを偏芯調整する場合において、調整位置からの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供する。
【解決手段】 プラスチックからなるレンズを光軸方向で位置決めする受け面と平行に移動調整された後の前記レンズを固定して保持するレンズユニットであって、前記受け面を有し、前記レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダに対して固定される押さえ部材と、前記押さえ部材と前記レンズの間に配置され、前記レンズを前記レンズホルダに対して押圧する弾性部材と、を備え、前記押さえ部材は、前記レンズの外周面を押圧して前記レンズを前記受け面と平行に移動調整するための工具が挿通される開口部を有し、前記レンズは、前記押さえ部材および前記弾性部材により位置が固定されることを特徴とするレンズユニット。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックからなるレンズを光軸方向で位置決めする受け面と平行に移動調整された後の前記レンズを固定して保持するレンズユニットであって、
前記受け面を有し、前記レンズを保持するレンズホルダと、
前記レンズホルダに対して固定される押さえ部材と、
前記押さえ部材と前記レンズの間に配置され、前記レンズを前記レンズホルダに対して押圧する弾性部材と、を備え、
前記押さえ部材は、前記レンズの外周面を押圧して前記レンズを前記受け面と平行に移動調整するための工具が挿通される開口部を有し、
前記レンズは、前記押さえ部材および前記弾性部材により位置が固定されることを特徴とするレンズユニット。
【請求項2】
前記開口部は、貫通孔、または、切り欠きであることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項3】
前記開口部は、前記押さえ部材の側面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項4】
前記開口部は、前記押さえ部材の側面と直交する面に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項5】
前記押さえ部材は、スナップフィットにより、前記レンズホルダに対して固定されることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項6】
前記押さえ部材は、前記レンズホルダに螺合することで前記レンズホルダに対して固定されることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項7】
前記レンズの外周面は、傾斜していることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項8】
前記レンズの外周面は、前記レンズホルダと当接する側の前記レンズの面に近づくにつれて前記レンズの光軸から離間するように傾斜していることを特徴とする請求項7に記載のレンズユニット。
【請求項9】
前記レンズの前記開口部から露出する露出部の透過率は、前記レンズの光学面の透過率よりも低いことを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項10】
前記レンズの光軸からの前記開口部の距離をr、前記押さえ部材が前記レンズホルダに対して固定する際に、前記レンズホルダに対して前記押さえ部材が光軸方向に回転する角度をθ、前記開口部の周方向における長さをLとすると、L>rθであることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項11】
板部材をさらに有し、
前記板部材は、前記レンズと前記弾性部材の間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項12】
前記弾性部材と前記押さえ部材間の摩擦係数をμ1、前記弾性部材と前記板部材間の摩擦係数μ3、前記板部材と前記レンズ間の摩擦係数をμ4、前記レンズと前記レンズホルダ間の摩擦係数をμ6としたとき、少なくともμ1<μ6、μ3<μ6、μ4<μ6のいずれか1つを満たしていることを特徴とする請求項11に記載のレンズユニット。
【請求項13】
板部材をさらに有し、
前記板部材は、前記押さえ部材と前記弾性部材の間に配置されることを特徴とする請求項1に記載のレンズユニット。
【請求項14】
前記弾性部材と前記レンズ間の摩擦係数をμ2、前記弾性部材と前記板部材間の摩擦係数μ3、前記板部材と前記押さえ部材間の摩擦係数をμ5、前記レンズと前記レンズホルダ間の摩擦係数をμ6としたとき、少なくともμ2<μ6、μ3<μ6、μ5<μ6のいずれか1つを満たしていることを特徴とする請求項13に記載のレンズユニット。
【請求項15】
前記板部材は固定絞りであることを特徴とする請求項13に記載のレンズユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、監視カメラの高画素化や小型化が要求され、レンズの光軸を調整する偏芯調整が行われる場合がある。また、レンズには、プラスチックレンズを用いられる場合がある。
【0003】
レンズを偏芯調整して保持する技術として、特許文献1の技術が開示されている。特許文献1は、レンズ保持部材に保持爪を設けて受け面と保持爪でレンズを挟持して仮止め状態とする。その後、貫通穴を介して調整ピンによりレンズ側面を押圧して偏芯調整を行い、開口部より接着材を注入してレンズを固定する構成である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-065017
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の技術は、レンズを偏芯調整した後に接着固定する構成である。しかしながら、プラスチックレンズには親水性が低いものがあり、接着固定では接着強度が劣る場合がある。このような場合、高温・低温環境などで接着はがれが発生し、偏芯調整位置からレンズがずれてしまうおそれがある。また、接着固定を無くすために保持爪による付勢を強くしてしまうと、偏芯調整時にプラスチックレンズの摺動負荷が大きくなり、細かい位置調整が困難となる。
【0006】
本発明では、プラスチックレンズを偏芯調整する構成において、調整位置からのレンズの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のレンズユニットは、プラスチックからなるレンズを光軸方向で位置決めする受け面と平行に移動調整された後の前記レンズを固定して保持するレンズユニットであって、前記受け面を有し、前記レンズを保持するレンズホルダと、前記レンズホルダに対して固定される押さえ部材と、前記押さえ部材と前記レンズの間に配置され、前記レンズを前記レンズホルダに対して押圧する弾性部材と、を備え、前記押さえ部材は、前記レンズの外周面を押圧して前記レンズを前記受け面と平行に移動調整するための工具が挿通される開口部を有し、前記レンズは、前記押さえ部材および前記弾性部材により位置が固定されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、プラスチックレンズを偏芯調整する構成において、調整位置からのレンズの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1の撮像装置100の斜視図
図2】実施形態1の撮像装置100の分解斜視図
図3】実施形態1のレンズユニット20の分解斜視図
図4】実施形態1のレンズユニット20の側面断面図
図5】実施形態1のレンズユニット20の偏芯調整前の斜視図
図6】実施形態1のレンズユニット20の偏芯調整後の斜視図
図7】実施形態1のレンズユニット20の偏芯調整後の側面断面図
図8】実施形態2のレンズユニット20の斜視図
図9】実施形態3のレンズユニット20の斜視図
図10】実施形態3のレンズユニット20の偏芯調整中の側面断面図
図11】実施形態4のレンズユニット20の分偏芯調整前の斜視図
図12】実施形態4のレンズユニット20の分偏芯調整後の斜視図
図13】実施形態5のレンズユニット20の分解斜視図
図14】実施形態5のレンズユニット20の側面断面図
図15】実施形態6のレンズユニット20の側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明の好ましい実施の形態を、添付の図面を基に詳細に説明する。
【0011】
[実施形態1]
以下、図1図7を参照して、実施形態1におけるレンズユニットについて説明する。
【0012】
図1は、実施形態1の撮像装置100の斜視図である。図2は、実施形態1の撮像装置100の分解斜視図である。
【0013】
撮像装置100は、撮像レンズユニット200、撮像素子ユニット300より構成されている。
【0014】
撮像レンズユニット200は、前側筐体部材50および後側筐体部材51を有する。撮像レンズユニット200は、撮像素子ユニット300の配置されている側と逆側である被写体側から順に、第1レンズ群1、第2レンズ群2、第3レンズ群3を含む撮像光学系を有する。
【0015】
前側筐体部材50は、被写体側に配置され、後側筐体部材51は、撮像レンズユニット200に配置される。また、前側筐体部材50は後側筐体部材51にビス等で固定されている。
【0016】
第1レンズ群1は、前側筐体部材50に熱カシメ等で固定されている。第2レンズ群2は、レンズホルダ24に保持されている。レンズホルダ24はガイドバー52と係合して撮像光学系の光軸O方向に移動可能に支持されている。また、レンズホルダ24は、ガイドバー53とも係合しており、ガイドバー52回りでの回転が規制されている。また、レンズホルダ24は、2群ラック25を保持している。2群ラック25は、ステッピングモータ等のアクチュエータを含む2群駆動部56のリードスクリュー部と係合している。2群駆動部56によってリードスクリュー部が回転されると、レンズホルダ24は2群ラック25と共に撮像光学系の光軸O方向に移動される。レンズホルダ24、2群ラック25,第2レンズ群2、押さえ部材26、弾性部材27により、レンズユニット20が構成される。レンズユニット200の詳細については、後述する。
【0017】
第3レンズ群3は、第3レンズ群枠31に保持されている。第3レンズ群枠31はガイドバー54と係合して撮像光学系の光軸O方向に移動可能に支持されている。また第3レンズ群枠31はガイドバー55とも係合しており、ガイドバー54回りでの回転が規制されている。また、第3レンズ群枠31は、3群ラック32を保持している。3群ラック32は、ステッピングモータ等のアクチュエータを含む3群駆動部57のリードスクリュー部と係合している。3群駆動部57によりリードスクリュー部が回転されると、第3レンズ群枠31は3群ラック32と共に撮像光学系の光軸O方向に移動される。第2レンズ群2および第3レンズ群3が、撮像光学系の光軸O方向に移動することで、撮像光学系のズーミング及びフォーカシングが行われる。
【0018】
ガイドバー52、53、54、55は、前側筐体部材50及び後側筐体部材51に挟持されている。また、2群駆動部56及び3群駆動部57は、後側筐体部材51にビス等で固定されている。
【0019】
撮像素子ユニット300は、撮像素子301、撮像基板302を有している。撮像素子301は撮像基板302に実装されている。撮像基板302は、後側筐体部材51にビス等で固定される。なお、撮像基板302は他の部材を介して後側筐体部材51に固定されていてもよく、本構成に限定されない。撮像レンズユニット200により集光された光が撮像素子301に結像することで、画像を取得可能である。
【0020】
図3は、実施形態1のレンズユニット20の分解斜視図である。図4は、実施形態1のレンズユニット20の側面断面図である。レンズユニット20は、第2レンズ群2、レンズホルダ24、2群ラック25、押さえ部材26、弾性部材27を有している。
【0021】
第2レンズ群2は、調整レンズ21、レンズ22、レンズ23より構成される。レンズ22、レンズ23は共にレンズホルダ24に熱カシメで固定されている。なお、レンズ22,レンズ23の固定方法は例えば接着固定や押さえ部材による押圧固定であってもよく、本構成に限定されない。
【0022】
調整レンズ21は、プラスチックレンズである。調整レンズ21は、モールド成形により作られている。レンズホルダ24の受け面24dと当接する側の調整レンズ21の面は第一の面21aである。また、第一の面21aと光軸O方向において反対側に位置する側の調整レンズ21の面は第二の面21bである。調整レンズ21の第一の面21aと第二の面21bとを接続する部分は側面部21cである。側面部21cは、光軸O方向において第二の面21bから第一の面21aに向かうに従って、光軸Oから離間する方向に傾斜する面を有している。なお、側面部21cの傾斜面は側面部21cの全面である必要はなく、部分的であってもよい。あるいは、側面部21cは光軸Oと平行であってもよい。また、調整レンズ21はモールド成形によるゲート跡の突起部を有していてもよい。また、調整レンズ21の側面部21cのうち、押さえ部材26がレンズホルダ24に固定されても露出する部分、つまり露出部の光線透過率をt1とする。また、調整レンズ21の光学面の透過率をt2とする。この場合、t1<t2であることが好ましい。なお、光学面とは、撮像レンズユニット200により集光された光が撮像素子301に結像する際に透過する面を表す。また、調整レンズ21の側面部21cのうち、押さえ部材26がレンズホルダ24に固定されても露出する部分を墨塗り等で遮光してもよい。これにより、結像に不要な光、いわゆる迷光を防ぐことができる。
【0023】
レンズホルダ24は、第2レンズ群2を保持する部材である。レンズホルダ24は、略円筒状である。レンズホルダ24は、レンズを位置決めする受け面24dを有する。受け面24dは、調整レンズ21を光軸方向で位置決めしている。
【0024】
2群ラック25は、2群駆動部56からの駆動力を第2レンズ群2に伝達している。2群ラック25は、ステッピングモータ等のアクチュエータを含む2群駆動部56のリードスクリュー部と係合している。
【0025】
押さえ部材26は、弾性部材27および調整レンズ21を押えるための部材である。押さえ部材26は、弾性部材27と接触している。押さえ部材26は、円環状である。押さえ部材26は、光軸Oに直交する方向に開口する切り欠き部26aを3箇所有している。切り欠き部26aは、調整レンズ21の外周面を押圧して調整レンズ21をレンズホルダ24の受け面24dと平行に移動調整するための工具を挿通するためのものである。
【0026】
切り欠き部26aは、押さえ部材26の周壁を円周方向で略三等分する三箇所に設けられている。切り欠き部26aは、光軸Oに直交する方向において貫通するように開口している。言いかえると、切り欠き部26aは、光軸Oに直交する方向からみて調整レンズ21の側面部21cが見えるように、貫通している。また、調整レンズ21の側面部21c(外周面)は、押さえ部材26がレンズホルダ24に固定された状態であっても、切り欠き部26aより露出している。なお、切り欠き部26aは必ずしも3箇所である必要はなく、少なくとも1箇所以上の切り欠き部26aがあればよい。押さえ部材26は、レンズホルダ24に図示しないスナップフィットにより固定される。
【0027】
弾性部材27は、調整レンズ21を固定するために部材である。弾性部材27は、円環状である。弾性部材27は、押さえ部材26と調整レンズ21に挟持され圧縮される。
【0028】
押さえ部材26とレンズホルダ24の光軸O方向の間には、押さえ部材26側から順に弾性部材27、調整レンズ21が配置されている。押さえ部材26をレンズホルダ24に固定することで、弾性部材27が押さえ部材26と調整レンズ21に挟持され圧縮される。弾性部材27が圧縮されることで、調整レンズ21は弾性部材27によりレンズホルダ24に対して光軸O方向に付勢され、レンズホルダ24に保持される。なお、レンズホルダ24と押さえ部材26の固定は、例えば、接着固定、ビスによる締結固定であってもよく、スナップフィットによる固定に限定されない。
【0029】
図5は、実施形態1のレンズユニット20の偏芯調整前の斜視図である。図6は、実施形態1のレンズユニット20の偏芯調整後の斜視図である。図7は、実施形態1のレンズユニット20の偏芯調整後の側面断面図である。
【0030】
調整レンズ21の偏芯調整をする際には、画像を確認しながら、ピン等の調整治具500を挿入して調整レンズ21の側面部21cを押圧する。なお、調整治具500は例えば調整レンズ21を吸着する構成であってもよく、また調整治具500は1つ以上であればいくつであってもよい。調整治具500を進退させることで、レンズホルダ24に対して調整レンズ21を光軸Oに直交する方向の所望の位置に移動させる。このとき、側面部21cに直交する方向より調整治具500で押圧することで、調整レンズ21はレンズホルダ24に対して光軸O方向に付勢される。これにより、調整レンズ21がレンズホルダ24から浮き上がらないようにしている。
【0031】
また、偏芯調整中は、調整レンズ21は弾性部材27により付勢されていないため、光軸Oに直交する方向にスムーズに偏芯調整を実施可能である。なお、弾性部材27が圧縮されない位置まで押さえ部材26をレンズホルダ24に係合させた状態で偏芯調整を実施してもよい。あるいは十分スムーズに偏芯調整を実施できる摺動抵抗しか発生しない程度に弾性部材27が圧縮される位置まで押さえ部材26をレンズホルダ24に係合させて、調整レンズ21を付勢した状態で偏芯調整を実施してもよい。弾性部材27で調整レンズ21を軽く付勢した状態で偏芯調整を実施することで、側面部21cの形状に関わらず調整レンズ21からレンズホルダ24から浮き上がならいようにすることが可能である。
【0032】
偏芯調整が完了した状態で、押さえ部材26をレンズホルダ24に係合させる。押さえ部材26とレンズホルダ24はスナップフィットにより係合する。このとき、調整レンズ21の位置は調整治具500により規制されているため、調整レンズ21の位置は偏芯調整した所望の位置より変動しない。押さえ部材26がレンズホルダ24に固定されるまで、調整治具500により調整レンズ21の位置を規制する。これにより、調整レンズ21は偏芯調整した所望の位置でレンズホルダ24に保持される。調整レンズ21の保持が完了した後に調整治具500を外すことで、調整レンズ21の偏芯調整および保持が完了する。
【0033】
なお、調整レンズ21の固定が完了した後に、切り欠き部26aの開口に遮光部材等を配置して開口を塞いでもよい。
【0034】
以上のように、偏芯調整を完了した状態で押さえ部材26をレンズホルダ24に固定することで、調整レンズ21は偏芯調整した所望の位置を維持したままレンズホルダ24に保持される。すなわち、調整レンズ21を偏芯調整した後に、接着ではなく機械的な手段で調整レンズ21を保持できるため、高温・低温環境においてもレンズ調整位置からの位置ずれを低減できる。以上より、本実施形態によれば、レンズを偏芯調整する場合において、調整位置からの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供できる。
【0035】
また、調整レンズ21は光軸O方向の付勢力によりレンズホルダ24に保持されるため、光軸Oに直交する方向からの負荷を受けず、光学面の歪みが生じにくい。さらに、弾性部材27は調整レンズ21の面を略均等な力で付勢するため、調整レンズ21には応力が集中しない。よって、調整レンズ21の保持に必要な力で付勢しても調整レンズ21に加わる応力は分散し、光学面の歪みを低減できる。
【0036】
[実施形態2]
以下、図8を参照して、実施形態2におけるレンズユニットについて説明する。なお、本実施形態において、実施形態1と共通する構成要素には実施形態1と同符号を付す。また、実施形態1と共通する項目は、説明を省略する。実施形態1は、押さえ部材26に切り欠き部26aが設けられていたが、実施形態2では、押さえ部材26に開口部26b(貫通孔)が設けられている。
【0037】
図8は、実施形態2のレンズユニット20の分解斜視図である。押さえ部材26は、弾性部材27および調整レンズ21を押えるための部材である。押さえ部材26は、略円環状である。押さえ部材26は、光軸Oに直交する方向に開口する開口部26b(貫通孔)を3箇所有している。開口部246は、調整レンズ21の外周面を押圧して調整レンズ21をレンズホルダ24の受け面24dと平行に移動調整するための工具を挿通するためのものである。開口部26bは、押さえ部材26の周壁を円周方向で略三等分する三箇所に設けられている。開口部26bは、押さえ部材26の側面を貫通している。開口部26bは、光軸Oに直交する方向において開口している。言いかえると、開口部26bは、光軸Oに直交する方向からみて調整レンズ21の側面部21cが見えるように、貫通している。調整レンズ21の側面部21c(外周面)は、押さえ部材26がレンズホルダ24に固定された状態であっても、開口部26bより露出している。なお、開口部26bは必ずしも3箇所である必要はなく、少なくとも1箇所以上の開口部26bがあればよい。
【0038】
また、偏芯調整および保持方法は、実施形態1と同様の方法である。
【0039】
本実施形態によれば、実施形態1よりも開口部を小さくすることができ、押さえ部材26の強度の低下を抑制できる。また、本実施形態によれば、実施形態1と同様に、レンズを偏芯調整する場合において、調整位置からの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供できる。
【0040】
[実施形態3]
以下、図9および図10を参照して、実施形態3におけるレンズユニットについて説明する。なお、本実施形態において、実施形態1と共通する構成要素には実施形態1と同符号を付す。また、実施形態1と共通する項目は、説明を省略する。実施形態3は、実施形態1の切り欠き部26aおよび実施形態2の開口部26bと形状が異なる。
【0041】
図9は、実施形態3のレンズユニット20の分解斜視図である。図10は、実施形態3レンズユニット20の偏芯調整中の側面断面図である。
【0042】
図8は、実施形態2のレンズユニット20の分解斜視図である。押さえ部材26は、弾性部材27および調整レンズ21を押えるための部材である。押さえ部材26は、略円筒状である。押さえ部材26は、光軸Oに直交する方向、および光軸O方向に開口する開口部26c(貫通孔)を3箇所有している。つまり、開口部26cは押さえ部材26の側面と物体側面にまたがって開口する。ここで、側面は、押さえ部材26のうち、光軸Oを囲んで略円筒状に形成される部分を表す。物体側面は、光軸O方向に垂直な面として略円環状に形成される部分を表す。また、側面部と物体側面は略直交し、接続している。なお、図9および図10では、開口形状として開口部26cを図示したが、レンズホルダ24側の外縁まで開口が及ぶ、切欠き形状であってもよい。
【0043】
開口部26cは、調整レンズ21の外周面を押圧して調整レンズ21をレンズホルダ24の受け面24dと平行に移動調整するための工具を挿通するためのものである。開口部26cは、押さえ部材26の周壁を円周方向で略三等分する三箇所に設けられている。また、開口部26cからは調整レンズ21の一部が露出している。調整レンズ21の側面部21c(外周面)は、押さえ部材26がレンズホルダ24に固定された状態であっても、開口部26cより露出している。なお、開口部26cは必ずしも3箇所である必要はなく、少なくとも1箇所以上の開口部26cがあればよい。
【0044】
調整レンズ21は、側面部21cと第二の面21bとの接続部21dを有する。接続部21dはエッジ形状でも、面取り形状でも、R形状でもよい。押さえ部材26がレンズホルダ24に固定された状態であっても、押さえ部材26の開口部26cから、調整レンズ21の接続部21dの少なくとも一部が露出する。
【0045】
調整レンズ21の偏芯調整を実施する際には、押さえ部材26の開口部26cにピン等の調整治具500を挿入して調整レンズ21の接続部21dを押圧する。このとき、調整治具500により光軸Oに直交する方向ではなく、レンズホルダ24に向かう方向から接続部21dを押圧する。これにより、調整レンズ21はレンズホルダ24に対して光軸O方向に付勢され、調整レンズ21がレンズホルダ24から浮き上がらない。その他の偏芯調整および保持方法は、実施形態1と同様の方法である。
【0046】
本実施形態によれば、レンズの側面21cを光軸Oに対して傾斜させずとも、調整レンズ21をレンズホルダ24に対して浮き上がり抑制できる。これにより、レンズ21およびレンズユニット20の径方向の拡大を抑制できる。また、実施形態1と同様に、レンズを偏芯調整する場合において、調整位置からの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供できる。
【0047】
[実施形態4]
以下、図11および図12を参照して、実施形態4におけるレンズユニットについて説明する。なお、本実施形態において、実施形態1と共通する構成要素には実施形態1と同符号を付す。また、実施形態1、2と共通する項目は、説明を省略する。本実施形態では、実施形態2と押さえ部材26の開口部26bの大きさ、および押さえ部材26のレンズホルダ24への固定方法が異なる。
【0048】
図11は、実施形態4のレンズユニット20の偏芯調整中の側面断面図である。図12は、実施形態4のレンズユニット20の偏芯調整後の側面断面図である。
【0049】
押さえ部材26は3つの開口部26dを有する。開口部26dは光軸Oに直交する方向に開口する。なお、図11および図12では、開口形状として開口部26dを図示したが、レンズホルダ24側の外縁まで開口が及ぶ、切欠き形状であってもよい。開口部26dは、押さえ部材26の外周面方向に延びている。調整レンズ21の光軸からの開口部26dの距離をr、押さえ部材26をレンズホルダ24に対して固定する際に、レンズホルダ24に対して押さえ部材26が光軸方向に回転する角度をθとする。また、開口部26dの大きさ(弧の長さ)をLとする。このとき、L>rθの関係となる。
【0050】
レンズホルダ24及び押さえ部材26は、図示しないねじ部を有している。本実施形態では、レンズホルダ24が有するねじ部に対して押さえ部材26が有するねじ部を係合させて、レンズホルダ24が対して押さえ部材26を固定する。
【0051】
以下に、調整レンズ21の偏芯調整および保持方法を記載する。まず、付勢部材27が圧縮されない位置、もしくは、十分スムーズに偏芯調整を実施できる摺動抵抗しか発生しない程度に付勢部材27が圧縮される位置まで、押さえ部材26をレンズホルダ24にねじ係合させて仮固定する。次に、少なくとも1つのピン等の調整治具500を押さえ部材26の開口部26dに挿入する。さらに、調整治具500で調整レンズ21の側面部21cを押圧または吸着し、調整レンズ21の側面部21cを進退させて、レンズホルダ24に対して調整レンズ21を光軸Oに直交する方向の所望の位置に移動する。
【0052】
偏芯調整が完了した状態で、押さえ部材26を回転させ、レンズホルダ24にさらにねじ係合させ、押さえ部材26に対してレンズホルダ24を固定する。
【0053】
また、弾性部材27と押さえ部材26間の摩擦係数をμ1、弾性部材27と調整レンズ21間の摩擦係数をμ2、調整レンズ21とレンズホルダ24間の摩擦係数をμ3とすると、μ1<μ3あるいはμ2<μ3であることが好ましい。このようにすることで、押さえ部材26をレンズホルダ24にねじ係合する際に光軸Oの回転方向に負荷が発生した場合も、弾性部材27が摺動し調整レンズ21の回転を抑制できる。
【0054】
また、μ1<μ3あるいはμ2<μ3の関係性であれば、偏芯調整が完了後、調整治具500を調整レンズから離した状態で、押さえ部材26をレンズホルダ24にねじ係合する場合でも、レンズの調整状態を維持したまま固定することが可能である。実施形態1と同様に、レンズを偏芯調整する場合において、調整位置からの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供できる。
【0055】
[実施形態5]
以下、図13および図14を参照して、実施形態5におけるレンズユニットについて説明する。なお本実施形態において、実施形態1と共通する構成要素には実施形態1と同符号を付す。また、実施形態1と共通する構成は、説明を省略する。また、実施形態1と共通する構成は、説明を省略する。実施形態3のレンズユニット20は、板部材28を有する。
【0056】
図13は、実施形態5のレンズユニット20の分解斜視図である。図14は、実施形態5のレンズユニット20の側面断面図である。
【0057】
レンズユニット20は、第2レンズ群2、レンズホルダ24、2群ラック25、押さえ部材26、弾性部材27、板部材28を有している。
【0058】
押さえ部材26とレンズホルダ24の光軸O方向の間には、押さえ部材26側から順に弾性部材27、板部材28、調整レンズ21が配置されている。押さえ部材26をレンズホルダ24に固定することで、弾性部材27が押さえ部材26と板部材28に挟持され圧縮される。弾性部材27が圧縮されることで、調整レンズ21は弾性部材27により板部材28と共にレンズホルダ24に対して光軸O方向に付勢され、レンズホルダ24に保持される。
【0059】
また、偏芯調整および保持方法は、実施形態1と同様の方法である。なお、弾性部材27と押さえ部材間の摩擦係数μ1、弾性部材27と板部材間の摩擦係数μ3、板部材28と調整レンズ間の摩擦係数μ4、調整レンズ21とレンズホルダ間の摩擦係数μ6とする。このとき、μ1<μ6、μ3<μ6あるいはμ4<μ6であることが好ましい。これにより、押さえ部材26をレンズホルダ24に螺合する際に光軸Oの回転方向に負荷が発生した場合も、弾性部材27あるいは板部材28が摺動し、調整レンズ21の回転を抑制できる。
【0060】
なお、本実施形態においても実施形態2と同様にレンズホルダ24は切り欠き部24aではなく、開口部24bを有していてもよい。
【0061】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、レンズを偏芯調整する場合において、調整位置からの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供できる。また、弾性部材27が摺動しにくい材質であったとしても、板部材28が摺動するため調整レンズ21の回転を抑制できる。
【0062】
[実施形態6]
以下、図15を参照して、実施形態6におけるレンズユニットについて説明する。なお本実施形態において、実施形態1と共通する構成要素には実施形態1と同符号を付す。また、実施形態1と共通する構成は、説明を省略する。実施形態6のレンズユニット20は、実施形態5と同様に、板部材28を有し、板部材28が固定絞りを兼ねている。実施形態5とは、板部材28と弾性部材27の配置も異なる。
【0063】
図15は、実施形態6のレンズユニット20の側面断面図である。
【0064】
板部材28は固定絞りであり、調整レンズ21に不要な光線が入射しないように遮光している。板部材28は、遮光機能がある。押さえ部材26とレンズホルダ24の光軸O方向の間には、押さえ部材26側から順に板部材28、弾性部材27、調整レンズ21が配置されている。押さえ部材26をレンズホルダ24に螺合して固定することで、弾性部材27が板部材28と調整レンズ21に挟持され圧縮される。弾性部材27が圧縮されることで、弾性部材27により調整レンズ21はレンズホルダ24に対して光軸O方向に付勢され、レンズホルダ24に保持される。
【0065】
また、偏芯調整および保持方法は、実施形態1と同様の方法である。なお、弾性部材27と調整レンズ間の摩擦係数μ2、弾性部材27と板部材間の摩擦係数μ3、板部材28と押さえ部材間の摩擦係数μ5、調整レンズ21とレンズホルダ間の摩擦係数μ6とする。このとき、μ2<μ6、μ3<μ6あるいはμ5<μ6であることが好ましい。これにより、押さえ部材26をレンズホルダ24に螺合する際に光軸Oの回転方向に負荷が発生した場合も、弾性部材27あるいは板部材28が摺動し調整レンズ21の回転を抑制できる。
【0066】
なお、本実施形態においても実施形態2と同様に、押さえ部材26には、切欠き部26aではなく、開口部26bを有していてもよい。
【0067】
本実施形態によれば、実施形態1と同様に、レンズを偏芯調整する場合において、調整位置からの位置ずれを低減できるレンズユニットを提供できる。また、実施形態3と同様に、調整レンズ21の回転を抑制できる。さらに、板部材28が固定絞りを兼ねるので、部品点数を削減できる。
【0068】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。また設計機能を考慮した構成であれば、それを限定するものではない。
【符号の説明】
【0069】
1 第1レンズ群
2 第2レンズ群
3 第3レンズ群
21 調整レンズ
21a レンズ第一面
21b レンズ第二面
21c レンズ側面部
21d 接続部
22、23 レンズ
24 レンズホルダ
25 2群ラック
26 押さえ部材
26a 切り欠き部
26b、26c、26d 開口部
27 弾性部材
28 板部材
31 第3レンズ群枠
32 3群ラック
50 前側筐体部材
51 後側筐体部材
52、53、54、55 ガイドバー
56 2群駆動部
57 3群駆動部
200 撮像レンズユニット
300 撮像素子ユニット
301 撮像素子
302 撮像基板
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15