(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184359
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両の高電圧装置搭載構造
(51)【国際特許分類】
H02K 5/00 20060101AFI20231221BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20231221BHJP
B60K 1/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H02K5/00 A
B62D25/20 C
B60K1/00
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098480
(22)【出願日】2022-06-17
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125265
【弁理士】
【氏名又は名称】貝塚 亮平
(72)【発明者】
【氏名】黒田 修路
(72)【発明者】
【氏名】深水 信貴
【テーマコード(参考)】
3D203
3D235
5H605
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203AA31
3D203AA33
3D203BB16
3D203BB35
3D203CA23
3D203CA37
3D203CA58
3D203CB19
3D203DB07
3D235AA02
3D235BB07
3D235CC12
3D235DD12
3D235FF06
3D235FF14
3D235HH22
5H605BB05
5H605CC03
5H605CC09
5H605CC10
5H605EA01
5H605EA18
(57)【要約】
【課題】比較的に簡単な構成で、車両の衝突時に高電圧装置やそのケーシングを適切に保護することが可能な車両の高電圧装置搭載構造を提供する。
【解決手段】ケーシング(30)の開口部(34)を覆うカバー部材(40)における車幅方向の外側を向く面(40c)と、サイドフレーム(10)における車幅方向の内側を向く面(10d)にはそれぞれ、車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第一傾斜部(41)と第二傾斜部(11)が設けられている。第一傾斜部(41)と第二傾斜部(11)は、それらの少なくとも一部が互いに対向する位置にあり、かつ、第一傾斜部(41)は第二傾斜部(11)よりも大きく傾斜しており、カバー部材(40)における第一傾斜部(41)の後端部(40b)がケーシング(30)におけるカバー部材(40)との合わせ面(35)よりも後方の位置まで延在している。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のエンジンルーム内に設置された高電圧で駆動する高電圧装置を収容してなるケーシングと、
前記ケーシングの開口部を覆うカバー部材と、
前記エンジンルームの側部で前記車両の前後方向に延びるサイドフレームと、を備える車両の高電圧装置搭載構造であって、
前記カバー部材における車幅方向の外側を向く面には、前記車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第一傾斜部が設けられており、
前記サイドフレームにおける車幅方向の内側を向く面には、前記車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第二傾斜部が設けられており、
前記第一傾斜部と前記第二傾斜部は、それらの少なくとも一部が互いに対向しており、かつ、前記第一傾斜部は前記第二傾斜部よりも大きく傾斜しており、
前記カバー部材における前記第一傾斜部の後端部が前記ケーシングにおける前記カバー部材との合わせ面よりも後方の位置まで延在している
ことを特徴とする車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項2】
前記ケーシングに収容された高電圧装置は電動機である
ことを特徴とする請求項1に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項3】
前記カバー部材の前記第一傾斜部は、少なくともその一部が前記サイドフレームにおける車幅方向で最も内側の位置よりもさらに内側の位置まで延在している
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項4】
前記ケーシングと前記カバー部材との合わせ面には、前記カバー部材用の位置規制部材が介在しており、
前記合わせ面には、複数の前記位置規制部材が設けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項5】
前記位置規制部材は、車幅方向から見て前記サイドフレームの前記第二傾斜部と重なる位置に配置されている
ことを特徴とする請求項4に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項6】
前記エンジンルームの後部に配置されて前記エンジンルームと車室とを仕切る仕切部材を備え、
前記サイドフレームの後端部は、前記仕切部材に接続されており、
前記サイドフレームと前記仕切部材とが接続された接続部には、当該接続部を補強する補強部材が取り付けられている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項7】
前記サイドフレームの前記第二傾斜部と前記補強部材とは、車幅方向における同一位置で車両の前後方向に並んで配置されている
ことを特徴とする請求項6に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項8】
車両に設置された高電圧で駆動する高電圧装置を収容してなるケーシングと、
前記ケーシングの開口部を覆うカバー部材と、
前記カバー部材の側部で前記車両の前後方向に延びるサイドフレームと、を備える車両の高電圧装置搭載構造であって、
前記カバー部材における車幅方向の外側を向く面には、前記車両の前方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第一傾斜部が設けられており、
前記サイドフレームにおける車幅方向の内側を向く面には、前記車両の前方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第二傾斜部が設けられており、
前記第一傾斜部と前記第二傾斜部は、それらの少なくとも一部が互いに対向しており、かつ、前記第一傾斜部は前記第二傾斜部よりも大きく傾斜しており、
前記カバー部材における前記第一傾斜部の前端部が前記ケーシングにおける前記カバー部材との合わせ面よりも前方の位置まで延在している
ことを特徴とする車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項9】
前記カバー部材の前記第一傾斜部は、少なくともその一部が前記サイドフレームにおける車幅方向で最も内側の位置よりもさらに内側の位置まで延在している
ことを特徴とする請求項8に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項10】
前記ケーシングと前記カバー部材との合わせ面には、前記カバー部材用の位置規制部材が介在しており、
前記合わせ面には、複数の前記位置規制部材が設けられている
ことを特徴とする請求項8又は9に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【請求項11】
前記位置規制部材は、車幅方向から見て前記サイドフレームの前記第二傾斜部と重なる位置に配置されている
ことを特徴とする請求項10に記載の車両の高電圧装置搭載構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載された電動機やその制御装置などの高電圧装置を備える車両の高電圧装置搭載構造に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示すように、ハイブリッド車両や電動車両などのエンジンルーム内には、車両の駆動装置である電動機と、当該電動機を収容してなるケーシングが設置されている。このような電動機は高電圧で駆動する高電圧装置であるため、車両の衝突時などに、万一、ケーシングが大きく破損すると電動機から高電圧の電流が車体のフレームなどに流れるおそれがある。そのため、衝突などの衝撃が加わった際にもケーシングの損傷を最小限に抑えることができる構造が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特に、車両の前方衝突時には、電動機のケーシングに車両の後方へ変位させる向きの荷重がかかるため、当該荷重に対してケーシングの過度の変位を抑制できる構造や、ある程度意図的にケーシングを変位させることで荷重を適切に逃がすことができる構造、ないしは、ケーシングと車体フレームなど他の剛性の高い部材との衝突を避けるような構造が必要となる。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、比較的に簡単な構成で、車両の衝突時に高電圧装置やそのケーシングを適切に保護することが可能な車両の高電圧装置搭載構造を提供することを目的とする。また本発明は車両の安全性の向上を目的としたものである。そして、延いては交通の安全性をより一層改善して持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための本発明は、車両のエンジンルーム(3)内に設置された高電圧で駆動する高電圧装置(G,M)を収容してなるケーシング(30)と、ケーシング(30)の開口部(34)を覆うカバー部材(40)と、エンジンルーム(3)の側部で車両の前後方向に延びるサイドフレーム(10)と、を備える車両の高電圧装置搭載構造であって、カバー部材(40)における車幅方向の外側を向く面(40c)には、車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第一傾斜部(41)が設けられており、サイドフレーム(10)における車幅方向の内側を向く面(10d)には、車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第二傾斜部(11)が設けられており、第一傾斜部(41)と第二傾斜部(11)は、それらの少なくとも一部が互いに対向しており、かつ、第一傾斜部(41)は第二傾斜部(11)よりも大きく傾斜しており、カバー部材(40)における第一傾斜部(41)の後端部(40b)がケーシング(30)におけるカバー部材(40)との合わせ面(35)よりも後方の位置まで延在していることを特徴とする。ここで、前記ケーシング(30)に収容された高電圧装置は一例として電動機(G,M)であってよい。
【0007】
本発明にかかる車両の高電圧装置搭載構造によれば、カバー部材の第一傾斜部とサイドフレームの第二傾斜部との少なくとも一部が互いに対向しているので、車両の衝突の際、車両の前方から衝突の荷重が入力することで、エンジンルーム内で高電圧装置(ケーシング及びカバー部材)が後方へ変位した場合、後方へ変位するカバー部材の第一傾斜部がサイドフレームの第二傾斜部に接触(衝突)する。このとき、第一傾斜部と第二傾斜部はいずれも車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する傾斜面状であることで、これら第一傾斜部と第二傾斜部を傾斜面同士の接触で斜め方向へ相対的にスライド移動させることが可能となるので、当該接触(衝突)の衝撃や荷重を効果的に低減することが可能となる。特に、第一傾斜部は第二傾斜部よりも大きく傾斜していることで、接触(衝突)の衝撃や荷重をより効果的に低減することが可能となる。
【0008】
本発明では、さらに、カバー部材における第一傾斜部の後端部がケーシングにおけるカバー部材との合わせ面よりも後方の位置まで延在していることで、その分、カバー部材の第一傾斜部の長さをより長くすることが可能となるので、第一傾斜部と第二傾斜部の接触(衝突)の衝撃や荷重をさらに効果的に低減することができる。また、カバー部材の第一傾斜部がサイドフレームの第二傾斜部に接触(衝突)した後、万一、カバー部材及びケーシングがエンジンルームの後方に位置する他の部材に接触する場合でも、カバー部材の後端部がケーシングよりも先に当該他の部材に接触するようになるので、ケーシングへの衝突の衝撃を低減できる。したがって、ケーシングの破損を未然に防止して高電圧装置の効果的な保護を図ることが可能となる。
【0009】
また、本発明にかかる車両の高電圧装置搭載構造では、カバー部材(40)の第一傾斜部(41)は、少なくともその一部がサイドフレーム(10)における車幅方向で最も内側の位置よりもさらに内側の位置まで延在していてもよい。
【0010】
この構成によれば、カバー部材の第一傾斜部の少なくとも一部がサイドフレームにおける車幅方向で最も内側の位置よりもさらに内側の位置まで延在していることで、第一傾斜部と第二傾斜部との傾斜部同士の接触をより確実に行わせることができ、それらを斜め方向へ相対的にスライド移動させることができる。
【0011】
また、本発明にかかる車両の高電圧装置搭載構造では、ケーシング(30)とカバー部材(40)との合わせ面(35、45)には、カバー部材(40)用の位置規制部材(50)が介在しており、当該合わせ面(35,45)には、複数の位置規制部材(50)が設けられていてもよい。
【0012】
この構成によれば、ケーシングにおけるカバー部材との合わせ面に複数の位置規制部材が介在していることで、ケーシングに対するカバー部材の容易かつ確実な位置決めが可能になる。
【0013】
また、本発明にかかる車両の高電圧装置搭載構造では、位置規制部材(50)は、車幅方向から見てサイドフレーム(10)の第二傾斜部(11)と重なる位置に配置されていてもよい。
【0014】
この構成によれば、位置規制部材は、車幅方向から見てサイドフレームの第二傾斜部と重なる位置に配置されていることで、カバー部材の第一傾斜部がサイドフレームの第二傾斜部に接触(衝突)した場合にカバー部材に位置ずれや破損が生じるおそれを低減できるので、ケーシング及び高電圧装置の効果的な保護が可能となる。
【0015】
また、本発明にかかる車両の高電圧装置搭載構造では、エンジンルーム(3)の後部に配置されてエンジンルーム(3)と車室(6)とを仕切る仕切部材(5a)を備え、サイドフレーム(10)の後端部(10b)は、仕切部材(5a)に接続されており、サイドフレーム(10)と仕切部材(5a)とが接続された接続部(13)には、当該接続部(13)を補強する補強部材(15)が取り付けられていてもよい。
【0016】
また、この場合、サイドフレーム(10)の第二傾斜部(11)と補強部材(15)とは、車幅方向における同一位置で車両の前後方向に並んで配置されていることが望ましい。
【0017】
この構成によれば、サイドフレームと仕切部材とが接続された接続部には、当該接続部を補強する補強部材が取り付けられていることで、車両の衝突時に後方へ変位するカバー部材の第一傾斜部がサイドフレームの第二傾斜部に接触(衝突)した後、さらに後方へ変位した場合には、カバー部材が補強部材で受け止められるようになるので、カバー部材の変位量を少なく抑えることができる。したがって、ケーシング及び高電圧装置の変位量が少なくなることで、高電圧装置や該高電圧装置に接続されたケーブルなどの効果的な保護が可能となる。
【0018】
また、本発明は、他の態様として、車両に設置された高電圧で駆動する高電圧装置を収容してなるケーシング(130)と、ケーシング(130)の開口部(134)を覆うカバー部材(140)と、カバー部材(140)の側部で車両の前後方向に延びるサイドフレーム(110)と、を備える車両の高電圧装置搭載構造であって、カバー部材(140)における車幅方向の外側を向く面(140c)には、車両の前方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第一傾斜部(141)が設けられており、サイドフレーム(110)における車幅方向の内側を向く面(110d)には、車両の前方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第二傾斜部(111)が設けられており、第一傾斜部(141)と第二傾斜部(111)は、それらの少なくとも一部が互いに対向しており、かつ、第一傾斜部(141)は第二傾斜部(111)よりも大きく傾斜しており、カバー部材(140)における第一傾斜部(141)の前端部(140b)がケーシング(130)におけるカバー部材(140)との合わせ面(135)よりも前方の位置まで延在していることを特徴とする。
【0019】
この構成によれば、カバー部材の第一傾斜部とサイドフレームの第二傾斜部との少なくとも一部が互いに対向していることで、車両の衝突の際、車両の前方から衝突の荷重が入力することで、車両の後部に設けた収容部内で高電圧装置(ケーシング及びカバー部材)が前方へ変位した場合、前方へ変位するカバー部材の第一傾斜部がサイドフレームの第二傾斜部に接触(衝突)する。このとき、第一傾斜部と第二傾斜部はいずれも車両の前方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する傾斜面状であることで、これら第一傾斜部と第二傾斜部を傾斜面同士の接触で斜め方向へ相対的にスライド移動させることが可能となるので、当該接触(衝突)の衝撃や荷重を効果的に低減することが可能となる。したがって、車両の後方からの衝突による衝撃から高電圧装置を保護することが可能となる。
【0020】
またこの場合、カバー部材(140)の第一傾斜部(141)は、少なくともその一部がサイドフレーム(110)における車幅方向で最も内側の位置よりもさらに内側の位置まで延在していてもよい。
【0021】
またこの場合、ケーシング(130)とカバー部材(140)との合わせ面(135,145)には、カバー部材(140)用の位置規制部材(150)が介在しており、合わせ面(135,145)には、複数の位置規制部材(150)が設けられていてもよい。
【0022】
またこの場合、位置規制部材(150)は、車幅方向から見てサイドフレーム(110)の第二傾斜部(111)と重なる位置に配置されていてもよい。
【0023】
なお、上記の括弧内の符号は、後述する実施形態における対応する構成要素の図面参照番号を参考のために示すものである。
【発明の効果】
【0024】
本発明にかかる車両の高電圧装置搭載構造によれば、比較的に簡単な構成で、車両の衝突時に高電圧装置やそのケーシングを適切に保護することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の第1実施形態にかかる高電圧装置搭載構造を備えた車体の前部を示す概略の側面図である。
【
図2】エンジンルーム内のモータケーシングとサイドフレームの配置を示す図で、(a)は、平面図、(b)は、側面図((a)のX矢視図)である。
【
図4】ケーシングの側面図で、(a)は、サイドカバーを取り外した状態を示す図、(b)は、サイドカバーを取り付けた状態を示す図である。
【
図5】ケーシングとサイドカバーの合わせ面を示す斜視図で、ノックピンを挿入する挿入穴を示す図である。
【
図6】本発明の第2実施形態にかかる高電圧装置搭載構造を備えた車体の後部を示す概略の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、以下の説明で前方、後方というときはそれぞれ後述する車体(車両)の前進方向である前側、後進方向である後側の方向(向き)を示すものとする。また、上、下、左、右というときはそれぞれ車体(車両)の前進方向(前側)を向いた状態での上、下、左、右を示すものとする。
【0027】
〔第1実施形態〕
図1は、本発明の第1実施形態にかかる高電圧装置搭載構造を備えた車体の前部を示す概略の側面図である。同図に示す車体2の前部には、後述するモータMやジェネレータG(本発明の高電圧装置)を備えた駆動装置20を収容するためのエンジンルーム(前方空間)3が画成されている。エンジンルーム3は、ダッシュボード5を間に挟んで車室6の前方に位置している。
【0028】
ダッシュボード5は、左右方向における車体2の全体に亘って延在している。ダッシュボード5は、上下方向に延在するダッシュボードロア5aと、ダッシュボードロア5aの上端部から前方に張り出すダッシュボードアッパ5bとを有している。ダッシュボードロア5aの下端部は、フロアパネル(不図示)に接続されている。ダッシュボードロア5aは、エンジンルーム3の後部に配置されてエンジンルーム3と車室6とを仕切る仕切部材である。
【0029】
エンジンルーム3の左右方向(車幅方向)両側には、一対のサイドフレーム10が前後方向に沿って延在している。なお、図では左側(図の手前側)のサイドフレーム10のみを示しており、右側のサイドフレームは図示を省略している。サイドフレーム10の後端部10bはダッシュボードロア5aに結合されている。本実施形態では、サイドフレーム10がエンジンルーム3の左右側部の下部骨格をなしている。
【0030】
また、エンジンルーム3の上端開口部は、ボンネット8により上方から覆われている。ボンネット8の後端部は、車体2に回動可能に支持されている。これにより、エンジンルーム3が開閉可能に構成されている。
【0031】
図2は、エンジンルーム内の駆動装置の配置を示す図で、(a)は、平面図、(b)は側面図((a)のX矢視図)である。また、
図3は、
図2(a)のY部分の拡大図である。エンジンルーム3内には、車両の駆動源である駆動装置20が収納されている。駆動装置20は、エンジンルーム3内において左側のサイドフレーム10の車幅方向の内側に隣接して配置されている。駆動装置20は、エンジンルーム3内におけるサイドフレーム10の下方に配置された枠状のサブフレーム(不図示)に防振部材等を介して支持されている。なお、サブフレームは、上述したサイドフレーム10等に接続されている。
【0032】
図4は、駆動装置のケーシングの側面図で、(a)は、後述するサイドカバーを取り外した状態を示す図、(b)は、サイドカバーを取り付けた状態を示す図である。駆動装置20のケーシング30は、主に発電を行うための電動機であるジェネレータGを収容するジェネレータ収容部31と、主に車両の駆動源となる駆動用の電動機であるモータMを収容するモータ収容部32と、ディファレンシャル機構Dを収容するディファレンシャル機構収容部33を備えるとともに、左側の側面には開口部34が形成されている。そして、ケーシング30の開口部34を覆うサイドカバー(カバー部材)40を備えている。サイドカバー40は、ケーシング30の開口部34に被せられていることで当該開口部34を塞いでおり、その状態で、開口部34の周囲の合わせ面35にボルト(締結具)47(
図4(b)参照)の締結で固定されている。ケーシング30内のジェネレータG及びモータMとディファレンシャル機構Dは、それらの回転軸S1,S2,S3の軸方向を車両の左右方向に向けた状態で配置されている。なお、詳細な図示は省略するが、ジェネレータG及びモータMはケーブル類でバッテリに接続されており、バッテリからの電力供給とバッテリへのエネルギー回生が可能となっている。
【0033】
図2及び
図3に示すように、サイドカバー40の後端部40bにおける車幅方向の外側を向く面(外面)40cには、車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第一傾斜面(第一傾斜部)41が設けられている。第一傾斜面41は、サイドカバー40の後端部40bの外面40cを平面視で傾斜面状にカットした形状で、後方に向かうにつれてサイドカバー40の厚さ寸法が次第に薄くなるように、サイドカバー40の外面40cが車幅方向の外側から内側に向かって傾斜している。
【0034】
一方、サイドフレーム10における車幅方向の内側を向く面(内面)10dには、車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第二傾斜面(第二傾斜部)11が設けられている。サイドカバー40の第一傾斜面41とサイドフレーム10の第二傾斜面11とは、互いが対向して(向き合って)配置されており、かつ、車両の車幅方向から見て互いの少なくとも一部が重なる位置に配置されていると共に、車両の前後方向から見ても互いの少なくとも一部が重なる位置に配置されている。
【0035】
そして、サイドカバー40の第一傾斜面41は、サイドフレーム10の第二傾斜面11よりも大きく傾斜している。すなわち、
図3に示すように、サイドカバー40の第一傾斜面41が車幅方向の内側に向かって傾斜する角度αは、サイドフレーム10の第二傾斜面11が車幅方向の内側に向かって傾斜する角度βよりも大きな角度(α>β)となっている。
【0036】
また、サイドカバー40における第一傾斜面41の後端部(サイドカバー40の後端部40b)は、ケーシング30におけるサイドカバー40との合わせ面35の後端部35bよりも後方の位置まで延在している。すなわち、サイドカバー40の後端部40bは、ケーシング30の合わせ面35よりも後方へ突出している。
【0037】
また、
図3に示すように、サイドカバー40の第一傾斜面41は、その一部がサイドフレーム10における車幅方向で最も内側の位置10dよりもさらに内側の位置まで延在している。すなわち、サイドカバー40の第一傾斜面41の車幅方向における最も内側の位置40dは、サイドフレーム10における車幅方向で最も内側の位置10dよりも寸法Lだけ車幅方向の内側に位置している。
【0038】
図5は、ケーシングとサイドカバーの合わせ面を示す斜視図である。サイドカバー40の第一傾斜面41に対応する位置のケーシング30の合わせ面35には、サイドカバー40を位置決めするためのノックピン(位置規制部材)50を挿入するための挿入穴36が設けられている。挿入穴36は複数個が設けられており、図示するものでは二個の挿入穴36が(前後方向の同位置で)上下に並べて配置されている。また、
図2に示すように、これら二個の挿入穴36は、車幅方向から見てサイドフレーム10の第二傾斜面11と重なる位置に配置されている。なお、サイドカバー40の内面に設けた合わせ面45における挿入穴36に対向する位置にもノックピン50を挿入する挿入穴46が設けられている。ノックピン50が挿入穴36と挿入穴46の両方に挿入されることで、ケーシング30の開口部34に対するサイドカバー40の位置決めがされる。本実施形態では、二組の挿入穴36,46それぞれにノックピン50が挿入されることで、ケーシング30とサイドカバー40の合わせ面35,45に2個(複数)のノックピン50が介在している。また、これら2個のノックピン50は、車幅方向から見て、サイドカバー40の第一傾斜面41及びサイドフレーム10の第二傾斜面11と重なる位置に配置されている。
【0039】
図2に示すように、サイドフレーム10の後端部10bは、エンジンルーム3と車室6とを仕切るダッシュボードロア5aに接続されている。本実施形態では、サイドフレーム10とダッシュボードロア5aとが接続された接続部13は、両部材が溶接によって接合されており、当該接続部13を補強する補強部材15が取り付けられている。補強部材15は、接続部13の上面から両側面に跨るように接続部13に被せて取り付けられた金属製の板材で、この補強部材15も溶接によって接続部13に取り付けられている。そして、サイドフレーム10の第二傾斜面11と補強部材15は、車幅方向における同一位置で車両の前後方向に並んで配置されている。
【0040】
本実施形態では、車両のエンジンルーム3内に設置されたジェネレータG及びモータMを収容してなるケーシング30と、ケーシング30の開口部34を覆うサイドカバー(カバー部材)40と、エンジンルーム3の側部で車両の前後方向に延びるサイドフレーム10とを備えている。そして、サイドカバー40における車幅方向の外側を向く面には、車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第一傾斜面(第一傾斜部)41が設けられており、サイドフレーム10における車幅方向の内側を向く面には、車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第二傾斜面(第二傾斜部)11が設けられている。また、第一傾斜面41と第二傾斜面11は、それらが互いに対向して(向き合った状態で)配置されており、また、それらの少なくとも一部が車両の車幅方向及び前後方向で互いに重なる位置にあり、かつ、第一傾斜面41は第二傾斜面11よりも大きく傾斜している。そして、サイドカバー40における第一傾斜面41の後端部40bがケーシング30におけるサイドカバー40との合わせ面35の後端部35bよりも後方の位置まで延在している。
【0041】
本実施形態によれば、サイドカバー40の第一傾斜面41とサイドフレーム10の第二傾斜面11とが互いに対向していることで、車両の衝突の際、車両の前部から衝突の荷重が入力することで、エンジンルーム3内で駆動装置20(ケーシング30及びサイドカバー40)が後方へ変位した場合、後方へ変位するサイドカバー40の第一傾斜面41がサイドフレーム10の第二傾斜面11に接触(衝突)する。このとき、第一傾斜面41と第二傾斜面11はいずれも車両の後方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する傾斜面状であることで、これら第一傾斜面41と第二傾斜面11を傾斜面同士の接触で斜め方向へ相対的にスライド移動させることが可能となるので、駆動装置20への当該接触(衝突)の衝撃や荷重を効果的に低減または分散することが可能となる。特に、第一傾斜面41は第二傾斜面11よりも大きく傾斜していることで、接触(衝突)の衝撃や荷重をより効果的に低減することが可能となる。
【0042】
本実施形態では、さらに、サイドカバー40における第一傾斜面41の後端部40bがケーシング30におけるサイドカバー40との合わせ面35の後端部35bよりも後方の位置まで延在していることで、その分、サイドカバー40の第一傾斜面41の長さをより長くすることが可能となるので、第一傾斜面41と第二傾斜面11との接触(衝突)の衝撃や荷重をさらに効果的に低減することができる。また、サイドカバー40の第一傾斜面41がサイドフレーム10の第二傾斜面11に接触(衝突)した後、サイドカバー40及びケーシング30がエンジンルーム3の後方に位置するダッシュボードロア5aなどの他の部材に接触する場合でも、サイドカバー40の後端部40bがケーシング30よりも先に当該他の部材に接触するようになるので、ケーシング30への衝突の衝撃を低減できる。したがって、ケーシング30の破損を未然に防止してジェネレータG及びモータMの効果的な保護を図ることが可能となる。
【0043】
また、本実施形態では、サイドカバー40の第一傾斜面41は、少なくともその一部がサイドフレーム10における車幅方向で最も内側の位置よりもさらに内側の位置まで延在している。
【0044】
この構成によれば、サイドカバー40の第一傾斜面41の少なくとも一部がサイドフレーム10における車幅方向で最も内側の位置よりもさらに内側の位置まで延在していることで、サイドカバー40の第一傾斜面41とサイドフレーム10の第二傾斜面11との傾斜面同士の接触をより確実に行わせることができ、それらを斜め方向へ相対的にスライド移動させることができる。
【0045】
また、本実施形態の車両の高電圧装置搭載構造では、ケーシング30とサイドカバー40との合わせ面35,45には、サイドカバー40の位置決め用のノックピン(位置規制部材)50が介在しており、合わせ面35,45には、複数のノックピン50が設けられている。
【0046】
この構成によれば、ケーシング30とサイドカバー40との合わせ面35,45に複数のノックピン50が介在していることで、ケーシング30に対するサイドカバー40の容易かつ確実な位置決めが可能になる。
【0047】
また、複数のノックピン50は、車幅方向から見てサイドフレーム10の第二傾斜面11と重なる位置に配置されている。
【0048】
この構成によれば、複数のノックピン50は、車幅方向から見てサイドフレーム10の第二傾斜面11と重なる位置に配置されていることで、サイドカバー40の第一傾斜面41がサイドフレーム10の第二傾斜面11に接触(衝突)した場合にサイドカバー40に位置ずれや破損が生じるおそれを低減できるので、ケーシング30及び該ケーシング30内のジェネレータGやモータMの効果的な保護が可能となる。
【0049】
また、本実施形態では、エンジンルーム3の後部に配置されてエンジンルーム3と車室6とを仕切る仕切部材であるダッシュボードロア5aを備え、サイドフレーム10の後端部10bは、このダッシュボードロア5aに接続されており、サイドフレーム10とダッシュボードロア5aとが接続された接続部13には、当該接続部13を補強する補強部材15が取り付けられている。そして、サイドフレーム10の第二傾斜面11と補強部材15は、車幅方向における同一位置で車両の前後方向に並んで配置されている。
【0050】
この構成によれば、サイドフレーム10とダッシュボードロア5aとが接続された接続部13には、当該接続部13を補強する補強部材15が取り付けられていることで、車両の衝突時に後方へ変位するサイドカバー40の第一傾斜面41がサイドフレーム10の第二傾斜面11に接触(衝突)した後、さらに後方へ変位した場合には、サイドカバー40がこの補強部材15で受け止められるようになるので、サイドカバー40の変位量を少なく抑えることができる。したがって、駆動装置20のケーシング30及び該ケーシング30に収容されたジェネレータGやモータMの変位量が少なくなることで、ジェネレータGやモータMに接続されたケーブル類などの効果的な保護が可能となる。
【0051】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、第2実施形態の説明及び対応する図面においては、第1実施形態と同一又は相当する構成部分には同一の符号を付し、以下ではその部分の詳細な説明は省略する。また、以下で説明する事項以外の事項、及び図示する以外の事項については、第1実施形態と同じである。
【0052】
図6は、本発明の第2実施形態にかかる高電圧装置搭載構造を備えた車体の後部を示す概略の平面図である。同図に示す車体2の後部には、高電圧で駆動するPCU(パワーコントロールユニット)やバッテリ駆動装置などである高電圧装置120のケーシング130を収容するための収容部103が画成されている。収容部103は、詳細な図示は省略するが、車体2の後部に設けたトランクルームなどの下部に配置した収容空間であってよい。
【0053】
収容部103の左右方向(車幅方向)両側には、一対のサイドフレーム110が前後方向に沿って延在している。なお、図では右側のサイドフレーム110のみを示しており、左側のサイドフレームは図示を省略している。本実施形態では、サイドフレーム110が収容部103の左右側部の下部骨格をなしている。
【0054】
高電圧装置のケーシング130における右側の側面には開口部134が形成されている。そして、ケーシング130の開口部134を覆うサイドカバー(カバー部材)140を備えている。サイドカバー140は、ケーシング130の開口部134に被せられていることで当該開口部134を塞いでおり、その状態で、開口部134の周囲の合わせ面135にボルト(図示せず)の締結等で固定されている。
【0055】
また、サイドカバー140の前端部140bにおける車幅方向の外側を向く面(外面)140cには、車両の前方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第一傾斜面(第一傾斜部)141が設けられている。第一傾斜面141は、サイドカバー140の前端部140bの外面140cを平面視で傾斜面状にカットした形状で、前方に向かうにつれてサイドカバー140の厚さ寸法が次第に薄くなるように、サイドカバー140の外面140cが車幅方向の外側から内側に向かって傾斜している。
【0056】
一方、サイドフレーム110における車幅方向の内側を向く面(内面)には、車両の前方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する第二傾斜面(第二傾斜部)111が設けられている。サイドカバー140の第一傾斜面141とサイドフレーム110の第二傾斜面111とは、互いが対向して(向き合って)配置されており、かつ、車両の車幅方向から見て互いの少なくとも一部が重なる位置に配置されていると共に、車両の前後方向から見ても互いの少なくとも一部が重なる位置に配置されている。
【0057】
そして、本実施形態でも、サイドカバー140の第一傾斜面141は、サイドフレーム110の第二傾斜面111よりも大きく傾斜している。
【0058】
また、サイドカバー140における第一傾斜面141の前端部(サイドカバー140の前端部140b)は、ケーシング130におけるサイドカバー140との合わせ面135の前端部135bよりも前方の位置まで延在している。すなわち、サイドカバー140の前端部140bは、ケーシング130の合わせ面135よりも前方へ突出している。
【0059】
また、本実施形態においても、サイドカバー140の第一傾斜面141は、その一部がサイドフレーム110における車幅方向で最も内側の位置110dよりもさらに内側の位置まで延在している。
【0060】
サイドカバー140の第一傾斜面141に対応する位置のケーシング130の合わせ面135には、サイドカバー140を位置決めするためのノックピン(位置規制部材)150を挿入するための挿入穴136が設けられている。図示は省略するが、本実施形態においても、挿入穴136は複数個が設けられており、例えば二個の挿入穴136が(前後方向の同位置で)上下に並べて配置されている。また、これら二個の挿入穴136は、車幅方向から見てサイドフレーム110の第二傾斜面111と重なる位置に配置されている。なお、サイドカバー140の内面に設けた合わせ面145における挿入穴136に対向する位置にもノックピン150を挿入する挿入穴146が設けられている。ノックピン150が挿入穴136と挿入穴146の両方に挿入されることで、ケーシング130の開口部134に対するサイドカバー140の位置決めがされる。
【0061】
本実施形態によれば、サイドカバー140の第一傾斜面141とサイドフレーム110の第二傾斜面111とが互いに対向していることで、車両の衝突の際、車両の後部から衝突の荷重が入力することで、収容部103内で高電圧装置(ケーシング130及びサイドカバー140)が前方へ変位した場合、前方へ変位するサイドカバー140の第一傾斜面141がサイドフレーム110の第二傾斜面111に接触(衝突)する。このとき、第一傾斜面141と第二傾斜面111はいずれも車両の前方に向かうにつれて車幅方向の内側へ傾斜する傾斜面状であることで、これら第一傾斜面141と第二傾斜面111を傾斜面同士の接触で斜め方向へ相対的にスライド移動させることが可能となるので、高電圧装置への当該接触(衝突)の衝撃や荷重を効果的に低減または分散することが可能となる。特に、第一傾斜面141は第二傾斜面111よりも大きく傾斜していることで、接触(衝突)の衝撃や荷重をより効果的に低減することが可能となる。
【0062】
本実施形態では、さらに、サイドカバー140における第一傾斜面141の前端部140bがケーシング130におけるサイドカバー140との合わせ面135の前端部135bよりも前方の位置まで延在していることで、その分、サイドカバー140の第一傾斜面141の長さをより長くすることが可能となるので、第一傾斜面141と第二傾斜面111との接触(衝突)の衝撃や荷重をさらに効果的に低減することができる。また、サイドカバー140の第一傾斜面141がサイドフレーム110の第二傾斜面111に接触(衝突)した後、サイドカバー140及びケーシング130が収容部103の前方に位置する他の部材に接触する場合でも、サイドカバー140の前端部140bがケーシング130よりも先に当該他の部材に接触するようになるので、ケーシング130への衝突の衝撃を低減できる。したがって、ケーシング130の破損を未然に防止して高電圧装置の効果的な保護を図ることが可能となる。
【0063】
また、本実施形態でも、サイドカバー140の第一傾斜面141は、少なくともその一部がサイドフレーム110における車幅方向で最も内側の位置110dよりもさらに内側の位置まで延在している。
【0064】
この構成によれば、サイドカバー140の第一傾斜面141の少なくとも一部がサイドフレーム110における車幅方向で最も内側の位置110dよりもさらに内側の位置まで延在していることで、サイドカバー140の第一傾斜面141とサイドフレーム110の第二傾斜面111との傾斜面同士の接触をより確実に行わせることができ、それらを斜め方向へ相対的にスライド移動させることができる。
【0065】
また、本実施形態でも、ケーシング130とサイドカバー140との合わせ面135,145には、サイドカバー140の位置決め用のノックピン(位置規制部材)150が介在しており、合わせ面135,145には、複数のノックピン150が設けられている。
【0066】
この構成によれば、ケーシング130とサイドカバー140との合わせ面135,145に複数のノックピン150が介在していることで、ケーシング130に対するサイドカバー140の容易かつ確実な位置決めが可能になる。
【0067】
また、複数のノックピン150は、車幅方向から見てサイドフレーム110の第二傾斜面111と重なる位置に配置されている。
【0068】
この構成によれば、複数のノックピン150は、車幅方向から見てサイドフレーム110の第二傾斜面111と重なる位置に配置されていることで、サイドカバー140の第一傾斜面141がサイドフレーム110の第二傾斜面111に接触(衝突)した場合にサイドカバー140に位置ずれや破損が生じるおそれを低減できるので、ケーシング130及び該ケーシング130内の高電圧装置の効果的な保護が可能となる。
【0069】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲、及び明細書と図面に記載された技術的思想の範囲内において種々の変更が可能である。例えば、上記第1実施形態では、サイドカバー40の第一傾斜面41は車両の車幅方向で左側を向く面であり、当該第一傾斜面41に対向するサイドフレーム10の第二傾斜面11は、車両の車幅方向で右側を向く面であるが、これ以外にも、図示及び詳細な説明は省略するが、サイドカバー40の第一傾斜面41を車両の車幅方向で右側を向く面とし、当該第一傾斜面41に対向するサイドフレーム10の第二傾斜面11を、車両の車幅方向で左側を向く面であってもよい。同様に、上記第2実施形態では、サイドカバー140の第一傾斜面141は車両の車幅方向で右側を向く面であり、当該第一傾斜面141に対向するサイドフレーム110の第二傾斜面111は、車両の車幅方向で左側を向く面であるが、これ以外にも、図示及び詳細な説明は省略するが、サイドカバー140の第一傾斜面141を車両の車幅方向で左側を向く面とし、当該第一傾斜面141に対向するサイドフレーム110の第二傾斜面111を、車両の車幅方向で右側を向く面としてもよい。
【0070】
また、第一傾斜面41(141)と第二傾斜面11(111)はそれらの全体が互いに対向しているものに限らず、それらの一部のみが互いに対向しているものであってもよい。また、第一傾斜面41(141)と第二傾斜面11(111)は、車両の前後方向で互いに重なる位置(前後方向から見て少なくともそれらの一部が同じ位置)にあれば、必ずしも車両の車幅方向で互いに重なる位置(車幅方向から見て少なくともそれらの一部が同じ位置)に無くてもよく、前後の位置は互いに異なる位置に配置されていてもよい。
【0071】
また、上記第1実施形態では、本発明にかかる高電圧装置がケーシング30に収容されたモータ(電動機)M及びジェネレータ(電動機)Gである場合を説明したが、本発明にかかる高電圧で駆動する高電圧装置は、これらモータMやジェネレータGに限らず、例えば第2実施形態に示すように、PCU(パワーコントロールユニット)など他の装置であってもよい。ここでいうPCUは、図示及び詳細な説明は省略するが、モータを駆動するインバータ、電圧をコントロールする昇圧コンバータ、高電圧を降圧するDCDCコンバータ等の電装部品を備え、これら電装部品がケーシングに収容された構成であってよい。また、本発明の高電圧装置としては、PCU以外にも、高電圧のバッテリや、バッテリを制御する各種の制御装置などであってもよい。
【符号の説明】
【0072】
2 車体
3 エンジンルーム
5 ダッシュボード
5a ダッシュボードロア(仕切部材)
5b ダッシュボードアッパ
6 車室
8 ボンネット
10 サイドフレーム
10b 後端部
11 第二傾斜面(第二傾斜部)
13 接続部
15 補強部材
20 駆動装置
30 ケーシング
31 ジェネレータ収容部
32 モータ収容部
33 ディファレンシャル機構収容部
34 開口部
35 合わせ面
35b 後端部
36 挿入穴
40 サイドカバー(カバー部材)
40c 外面
41 第一傾斜面
40b 後端部
45 合わせ面
46 挿入穴
47 ボルト(締結具)
50 ノックピン(位置規制部材)
G ジェネレータ(電動機、高電圧装置)
M モータ(電動機、高電圧装置)
D ディファレンシャル機構
S1,S2,S3 回転軸