(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184375
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用動力伝達装置
(51)【国際特許分類】
F16H 61/12 20100101AFI20231221BHJP
F16H 59/08 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H59/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022098499
(22)【出願日】2022-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085361
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 治幸
(74)【代理人】
【識別番号】100147669
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 光治郎
(72)【発明者】
【氏名】天野 潤
【テーマコード(参考)】
3J552
【Fターム(参考)】
3J552MA07
3J552MA12
3J552MA29
3J552NA01
3J552NB01
3J552NB08
3J552PA51
3J552PB06
3J552QA06C
3J552QA13C
3J552QA18C
3J552QA19C
3J552QA26C
3J552QA30C
3J552RA20
3J552RA22
3J552RB01
3J552RB02
3J552SA36
3J552SA52
3J552TA10
3J552UA02
3J552UA07
3J552VA32W
3J552VA37W
3J552VA45W
3J552VA53W
3J552VA64W
3J552VA65W
3J552VA66W
3J552VB01W
3J552VC01W
3J552VD02W
(57)【要約】
【課題】フェールセーフモードが実行される異常検出時にロックアップクラッチを開放状態に保持したままNレンジとする場合に、油圧制御バルブの1フェールで摩擦係合装置が係合することを防止する。
【解決手段】Nレンジでは、ON-OFFソレノイドバルブSC1がON、SC3がOFFとされ、油圧制御バルブSLU、SL2がOFFとされる。油圧制御バルブSLUが正常であれば、その油圧出力が停止されることでロックアップクラッチLUが開放状態に保持されるとともに、油圧制御バルブSL2への油圧供給が遮断され、SL2がオンフェールした場合にベルト走行用クラッチC2が係合することが防止される。油圧制御バルブSLUが実際にオンフェールの場合は、SLUがONのフェールセーフモードと実質的に同じになり、ロックアップクラッチLUが開放されるとともに、油圧制御バルブSL2のOFF制御でニュートラル状態になる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロックアップクラッチ付きの流体式伝動装置と、
駆動力源から前記流体式伝動装置を介して動力が伝達される入力軸と出力軸との間に配設され、油圧式の前進用係合装置および油圧式の後進用係合装置が設けられて前進走行および後進走行が可能とされている自動変速機と、
を有する車両用動力伝達装置において、
油路切替用の第1切替バルブ、第3切替バルブ、およびフェール切替バルブと、油圧制御用のロックアップ油圧制御バルブ、および第2油圧制御バルブと、を備えている油圧制御回路を有し、
前記第1切替バルブは、各種の油圧の元圧となるライン圧を前進走行用のDレンジ圧として出力する第1接続状態と、前記ロックアップ油圧制御バルブの制御油圧をフェール圧として前記フェール切替バルブに出力する第2接続状態と、に切り替え可能で、
前記第3切替バルブは、前記ロックアップ油圧制御バルブの制御油圧を、前記ロックアップクラッチの係合油圧を制御するロックアップ係合油路に出力する第1接続状態と、前記ロックアップ油圧制御バルブの制御油圧を前記後進用係合装置に出力する第2接続状態と、に切り替え可能で、
前記フェール切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧を前記第2油圧制御バルブに出力する第1接続状態と、前記Dレンジ圧とは別経路で供給される前記ライン圧を退避走行用油圧として前記第2油圧制御バルブに出力し、前記第1切替バルブが前記第2接続状態の場合に供給される前記フェール圧を、前記ロックアップクラッチを強制的に開放するロックアップ開放油路に出力する第2接続状態と、に切り替え可能で、前記フェール圧が供給されると前記第2接続状態に機械的に切り替えられ、該フェール圧の供給が停止すると前記第1接続状態に機械的に切り替えられるようになっており、
前記第2油圧制御バルブは、前記フェール切替バルブと前記前進用係合装置との間に配設されて、該フェール切替バルブから供給される前記Dレンジ圧または前記退避走行用油圧を制御して該前進用係合装置に出力することにより、該前進用係合装置を係合開放制御するものであり、
前記車両用動力伝達装置は、前記ロックアップ油圧制御バルブが油圧出力状態に固定されるオンフェールの可能性がある予め定められた異常検出時に、前記第1切替バルブを前記第2接続状態とし、前記第3切替バルブを前記第1接続状態とし、前記ロックアップ油圧制御バルブの油圧出力で前記フェール切替バルブが前記フェール圧に基づいて前記第2接続状態に切り替えられることにより、該フェール圧が前記ロックアップ開放油路に供給されて前記ロックアップクラッチが開放状態に保持されるとともに、前記第2油圧制御バルブの油圧制御で前記前進用係合装置を係合させて前進走行が可能なフェールセーフモードとする制御装置を備えており、
前記制御装置は、前記異常検出時に動力伝達を遮断するニュートラルレンジが選択された場合に、前記第1切替バルブを前記第2接続状態とし、前記第3切替バルブを前記第1接続状態とし、前記ロックアップ油圧制御バルブの油圧出力を停止し、前記第2油圧制御バルブの油圧出力を停止する
ことを特徴とする車両用動力伝達装置。
【請求項2】
前記自動変速機は、前記入力軸と前記出力軸との間に第1動力伝達経路および第2動力伝達経路を並列に備えており、前記第1動力伝達経路には、ギヤ式伝動装置、油圧式のギヤ前進用摩擦係合装置、油圧式のギヤ後進用摩擦係合装置が設けられているとともに、前記ギヤ前進用摩擦係合装置および前記ギヤ後進用摩擦係合装置と直列に油圧式の同期噛合式係合装置が設けられ、前進走行および後進走行が可能とされている一方、前記第2動力伝達経路にはベルト式無段変速機および油圧式のベルト走行用摩擦係合装置が設けられて前進走行が可能とされており、前記ベルト走行用摩擦係合装置が前記前進用係合装置で、前記ギヤ後進用摩擦係合装置が前記後進用係合装置であり、
前記油圧制御回路は、前記第1切替バルブ、前記第3切替バルブ、前記フェール切替バルブ、前記ロックアップ油圧制御バルブ、および前記第2油圧制御バルブに加えて、油路切替用の第2切替バルブおよび油圧制御用の第1油圧制御バルブを備えており、
前記第1切替バルブの前記第2接続状態では、前記ライン圧が後進走行用のRレンジ圧として前記第2切替バルブに出力され、
前記第3切替バルブの前記第1接続状態では、前記第1切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧が前記第2切替バルブに出力され、前記ライン圧が前記ロックアップ油圧制御バルブに出力される一方、該第3切替バルブの前記第2接続状態では、前記第1切替バルブが前記第2接続状態の場合に前記第2切替バルブを経由して供給される前記Rレンジ圧が前記ロックアップ油圧制御バルブに出力され、
前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第3切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧を前記フェール切替バルブに出力し、前記ライン圧を前記第1油圧制御バルブに出力し、該第1油圧制御バルブの制御油圧を前記同期噛合式係合装置に出力し、前記第1切替バルブが前記第2接続状態の場合に供給される前記Rレンジ圧を前記第3切替バルブに出力する第1接続状態と、前記第1切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧を前記フェール切替バルブに出力し、前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第3切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧を前記第1油圧制御バルブに出力し、該第1油圧制御バルブの制御油圧を前記フェール切替バルブに出力し、前記ライン圧を前記同期噛合式係合装置に出力する第2接続状態と、に切り替え可能で、
前記フェール切替バルブの前記第1接続状態では、前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第2切替バルブが前記第2接続状態の場合、および前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第3切替バルブが前記第1接続状態で前記第2切替バルブが前記第1接続状態の場合に、それぞれ供給される前記Dレンジ圧が前記第2油圧制御バルブに出力され、前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第3切替バルブが前記第1接続状態で前記第2切替バルブが前記第2接続状態の場合に供給される前記第1油圧制御バルブの制御油圧が前記ギヤ前進用摩擦係合装置に出力される一方、
前記制御装置は、前記異常検出時に後進走行用のリバースレンジが選択された場合に、前記第1切替バルブを前記第2接続状態とし、前記第2切替バルブを前記第1接続状態とし、前記第3切替バルブを前記第2接続状態とし、前記ロックアップ油圧制御バルブを油圧出力状態とし、前記第1油圧制御バルブを油圧出力状態とする
ことを特徴とする請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両用動力伝達装置に係り、特に、油圧制御バルブの異常検出時に前進走行が可能なフェールセーフモードとする車両用動力伝達装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
(a) ロックアップクラッチ付きの流体式伝動装置と、(b) 駆動力源から前記流体式伝動装置を介して動力が伝達される入力軸と出力軸との間に配設され、油圧式の前進用係合装置および油圧式の後進用係合装置が設けられて前進走行および後進走行が可能とされている自動変速機と、を有する車両用動力伝達装置が知られている。特許文献1に記載の装置はその一例で、流体式伝動装置としてトルクコンバータ16を備えているとともに、自動変速機として車両用変速機78を備えている。この自動変速機は、前記入力軸と前記出力軸との間に第1動力伝達経路および第2動力伝達経路を並列に備えており、前記第1動力伝達経路には、ギヤ式伝動装置、油圧式のギヤ前進用摩擦係合装置(C1)、および油圧式のギヤ後進用摩擦係合装置(B1)が設けられているとともに、前記ギヤ前進用摩擦係合装置および前記ギヤ後進用摩擦係合装置と直列に油圧式の同期噛合式係合装置(D1)が設けられ、前進走行および後進走行が可能とされている一方、前記第2動力伝達経路にはベルト式無段変速機(60)および油圧式のベルト走行用摩擦係合装置(C2)が設けられて前進走行が可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、このような車両用動力伝達装置においては、油圧式の係合装置の油圧を制御したり油路を切り替えたりするために種々の油圧制御バルブや切替バルブが必要であるが、部品点数削減の観点から、共通の油圧制御バルブを用いて複数種類の油圧を制御することが考えられている。しかしながら、このように油圧制御バルブの共通化を図ると、単一の油圧制御バルブが油圧出力状態に固定される1フェールで、ニュートラルレンジにも拘らず係合装置が係合して運転者に違和感を生じさせる可能性がある。
【0005】
例えば、
図2は、前記ギヤ前進用摩擦係合装置として前進用クラッチC1、ギヤ後進用摩擦係合装置として後進用ブレーキB1、ベルト走行用摩擦係合装置としてベルト走行用クラッチC2、同期噛合式係合装置として同期噛合式クラッチS1、ロックアップクラッチLU、が設けられた車両用動力伝達装置の油圧制御回路の一例である。この油圧制御回路70は、油路を切り替える油路切替用の第1切替バルブ110、第2切替バルブ112、第3切替バルブ114、およびフェール切替バルブ116を備えているとともに、油圧を制御する油圧制御用のロックアップ油圧制御バルブSLU、第1油圧制御バルブSL1、および第2油圧制御バルブSL2を備えている。
【0006】
第1切替バルブ110は、実線で示す第1接続状態と破線で示す第2接続状態とに切り替え可能で、ON-OFFソレノイドバルブSC1によって接続状態が電気的に切り替えられる。第2切替バルブ112は、実線で示す第1接続状態と破線で示す第2接続状態とに切り替え可能で、ON-OFFソレノイドバルブSC2によって接続状態が電気的に切り替えられる。同期噛合式クラッチS1には、第2切替バルブ112から供給される第1油圧制御バルブSL1の制御油圧Psl1 、或いはライン圧PLが、それぞれS1係合油圧Ps1として供給され、そのS1係合油圧Ps1に基づいて同期噛合係合させられる。第3切替バルブ114は、実線で示す第1接続状態と破線で示す第2接続状態とに切り替え可能で、ON-OFFソレノイドバルブSC3によって接続状態が電気的に切り替えられる。第3切替バルブ114の第1接続状態では、ロックアップ油圧制御バルブSLUによりライン圧PLを元圧として調圧された制御油圧Pslu がロックアップ係合油圧Pluの制御用油圧として用いられる一方、第3切替バルブ114の第2接続状態では、ロックアップ油圧制御バルブSLUによりRレンジ圧PRを元圧として調圧された制御油圧Pslu がB1係合油圧Pb1として後進用ブレーキB1に供給され、ロックアップクラッチLUおよび後進用ブレーキB1の油圧制御に対して共通のロックアップ油圧制御バルブSLUが用いられる。
【0007】
フェール切替バルブ116は、実線で示す第1接続状態と破線で示す第2接続状態とに切り替え可能であり、フェール切替バルブ116の第1接続状態では、第1油圧制御バルブSL1によりDレンジ圧PDを元圧として調圧された制御油圧Psl1 がC1係合油圧Pc1として前進用クラッチC1に供給され、この前進用クラッチC1および前記同期噛合式クラッチS1の油圧制御に対して共通の第1油圧制御バルブSL1が用いられる。このフェール切替バルブ116は、フェール圧Pfailが供給されると第2接続状態に機械的に切り替えられ、フェール圧Pfailの供給が停止すると第1接続状態に機械的に切り替えられる。第2油圧制御バルブSL2は、フェール切替バルブ116から供給されるDレンジ圧PDまたは退避走行用油圧Plimpを元圧として油圧を制御し、その制御油圧Psl2 がC2係合油圧Pc2としてベルト走行用クラッチC2に供給されることにより、ベルト走行用クラッチC2はその制御油圧Psl2 に応じて係合開放制御され、ベルト式無段変速機を用いた前進走行が可能になる。
【0008】
一方、このような油圧制御回路70を備えている車両用動力伝達装置は、ロックアップ油圧制御バルブSLUが油圧出力状態に固定されるオンフェールの可能性がある予め定められた異常検出時に、前進走行が可能なフェールセーフモードとすることが求められる。ロックアップ油圧制御バルブSLUは、ロックアップクラッチLUの係合油圧Pluおよび後進用ブレーキB1の係合油圧Pb1の両方の制御に用いられるため、ロックアップ油圧制御バルブSLUが油圧出力状態に固定されると、後進走行以外でロックアップクラッチLUが常に係合状態になって駆動力源が車輪に直結され、車両停止時に駆動力源の回転が停止させられてエンジンストール等を生じる恐れがある。
【0009】
フェールセーフモードは、このような駆動力源の直結状態を回避しつつ前進走行を可能にするためのもので、例えば第1切替バルブ110を第2接続状態とし、第2切替バルブ112を第2接続状態とし、第3切替バルブ114を第1接続状態とし、ロックアップ油圧制御バルブSLUの油圧出力でフェール切替バルブ116がフェール圧Pfailに基づいて第2接続状態に切り替えられることにより、成立させられる。
図4は、このフェールセーフモード時における油圧の伝達経路を太線で示した油圧回路図で、フェール切替バルブ116が第2接続状態に切り替えられると、フェール圧Pfailがロックアップ開放油路132に供給されてロックアップクラッチLUが開放状態に保持され、その状態で第2油圧制御バルブSL2の油圧制御でベルト走行用クラッチC2を係合させることにより、ベルト式無段変速機を使って前進走行することが可能になる。すなわち、ベルト走行用クラッチC2が、フェールセーフモード時に係合させられて前進走行を可能とする前進用係合装置である。
【0010】
ここで、上記フェールセーフモードが実行される異常検出時に動力伝達を遮断するニュートラルレンジ(Nレンジ)が選択された場合に、例えばON-OFFソレノイドバルブSC1がOFF(非励磁状態)とされて第1切替バルブ110が第1接続状態になると、フェール圧Pfailの出力が停止してロックアップ開放油路132に油圧が供給されなくなる。このため、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際に油圧出力状態に固定されるオンフェール時には、ロックアップ油圧制御バルブSLUの出力油圧に基づいてニュートラルレンジでロックアップクラッチLUが係合させられるようになり、その状態で後進走行用のリバースレンジ(Rレンジ)が選択されると、第3切替バルブ114が第2接続状態に切り替えられて、後進用ブレーキB1が係合させられるとともにロックアップクラッチLUが開放される。しかし、ロックアップ油圧制御バルブSLUのオンフェールで後進用ブレーキB1が急係合させられると、ロックアップクラッチLUの残圧によってエンジンストールを生じる可能性がある。また、ニュートラルレンジから前進走行用のドライブレンジ(Dレンジ)が選択されてフェールセーフモードに切り替えられた場合は、ロックアップ開放油路132にフェール圧Pfailが供給されるようになってロックアップクラッチLUが開放されるが、ベルト走行用クラッチC2の係合が早いと、同じくロックアップクラッチLUの残圧によってエンジンストールを生じる可能性がある。
【0011】
一方、
図4に示すフェールセーフモードにおいて、第2油圧制御バルブSL2の油圧出力を停止してベルト走行用クラッチC2を開放すれば、ロックアップクラッチLUを開放状態に保持したままニュートラルレンジを成立させることが可能で、上記のようなエンジンストールを防止することができる。しかしながら、第2油圧制御バルブSL2が油圧出力状態に固定されるオンフェールが発生すると、ニュートラルレンジにも拘らずベルト走行用クラッチC2が係合し、運転者に違和感を生じさせる恐れがある。特に、ロックアップ油圧制御バルブSLUが正常でも、燃料切れでエンジンが停止した場合などにフェールセーフモードへ移行する可能性があるが、その場合には、第2油圧制御バルブSL2の1フェールでニュートラルレンジにも拘らずベルト走行用クラッチC2が係合させられ、ロバスト性が低下する。
【0012】
本発明は以上の事情を背景として為されたもので、その目的とするところは、フェールセーフモードが実行される異常検出時にロックアップクラッチを開放状態に保持したままニュートラルレンジを成立させる場合に、油圧制御バルブの1フェールで摩擦係合装置が係合することを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
かかる目的を達成するために、第1発明は、(a) ロックアップクラッチ付きの流体式伝動装置と、(b) 駆動力源から前記流体式伝動装置を介して動力が伝達される入力軸と出力軸との間に配設され、油圧式の前進用係合装置および油圧式の後進用係合装置が設けられて前進走行および後進走行が可能とされている自動変速機と、を有する車両用動力伝達装置において、(c) 油路切替用の第1切替バルブ、第3切替バルブ、およびフェール切替バルブと、油圧制御用のロックアップ油圧制御バルブ、および第2油圧制御バルブと、を備えている油圧制御回路を有し、(c-1) 前記第1切替バルブは、各種の油圧の元圧となるライン圧を前進走行用のDレンジ圧として出力する第1接続状態と、前記ロックアップ油圧制御バルブの制御油圧をフェール圧として前記フェール切替バルブに出力する第2接続状態と、に切り替え可能で、(c-2) 前記第3切替バルブは、前記ロックアップ油圧制御バルブの制御油圧を、前記ロックアップクラッチの係合油圧を制御するロックアップ係合油路に出力する第1接続状態と、前記ロックアップ油圧制御バルブの制御油圧を前記後進用係合装置に出力する第2接続状態と、に切り替え可能で、(c-3) 前記フェール切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧を前記第2油圧制御バルブに出力する第1接続状態と、前記Dレンジ圧とは別経路で供給される前記ライン圧を退避走行用油圧として前記第2油圧制御バルブに出力し、前記第1切替バルブが前記第2接続状態の場合に供給される前記フェール圧を、前記ロックアップクラッチを強制的に開放するロックアップ開放油路に出力する第2接続状態と、に切り替え可能で、前記フェール圧が供給されると前記第2接続状態に機械的に切り替えられ、そのフェール圧の供給が停止すると前記第1接続状態に機械的に切り替えられるようになっており、(c-4) 前記第2油圧制御バルブは、前記フェール切替バルブと前記前進用係合装置との間に配設されて、そのフェール切替バルブから供給される前記Dレンジ圧または前記退避走行用油圧を制御してその前進用係合装置に出力することにより、その前進用係合装置を係合開放制御するものであり、(d) 前記車両用動力伝達装置は、前記ロックアップ油圧制御バルブが油圧出力状態に固定されるオンフェールの可能性がある予め定められた異常検出時に、前記第1切替バルブを前記第2接続状態とし、前記第3切替バルブを前記第1接続状態とし、前記ロックアップ油圧制御バルブの油圧出力で前記フェール切替バルブが前記フェール圧に基づいて前記第2接続状態に切り替えられることにより、そのフェール圧が前記ロックアップ開放油路に供給されて前記ロックアップクラッチが開放状態に保持されるとともに、前記第2油圧制御バルブの油圧制御で前記前進用係合装置を係合させて前進走行が可能なフェールセーフモードとする制御装置を備えており、(e) 前記制御装置は、前記異常検出時に動力伝達を遮断するニュートラルレンジが選択された場合に、前記第1切替バルブを前記第2接続状態とし、前記第3切替バルブを前記第1接続状態とし、前記ロックアップ油圧制御バルブの油圧出力を停止し、前記第2油圧制御バルブの油圧出力を停止することを特徴とする。
【0014】
第2発明は、第1発明の車両用動力伝達装置において、(a) 前記自動変速機は、前記入力軸と前記出力軸との間に第1動力伝達経路および第2動力伝達経路を並列に備えており、前記第1動力伝達経路には、ギヤ式伝動装置、油圧式のギヤ前進用摩擦係合装置、油圧式のギヤ後進用摩擦係合装置が設けられているとともに、前記ギヤ前進用摩擦係合装置および前記ギヤ後進用摩擦係合装置と直列に油圧式の同期噛合式係合装置が設けられ、前進走行および後進走行が可能とされている一方、前記第2動力伝達経路にはベルト式無段変速機および油圧式のベルト走行用摩擦係合装置が設けられて前進走行が可能とされており、前記ベルト走行用摩擦係合装置が前記前進用係合装置で、前記ギヤ後進用摩擦係合装置が前記後進用係合装置であり、(b) 前記油圧制御回路は、前記第1切替バルブ、前記第3切替バルブ、前記フェール切替バルブ、前記ロックアップ油圧制御バルブ、および前記第2油圧制御バルブに加えて、油路切替用の第2切替バルブおよび油圧制御用の第1油圧制御バルブを備えており、(b-1) 前記第1切替バルブの前記第2接続状態では、前記ライン圧が後進走行用のRレンジ圧として前記第2切替バルブに出力され、(b-2) 前記第3切替バルブの前記第1接続状態では、前記第1切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧が前記第2切替バルブに出力され、前記ライン圧が前記ロックアップ油圧制御バルブに出力される一方、その第3切替バルブの前記第2接続状態では、前記第1切替バルブが前記第2接続状態の場合に前記第2切替バルブを経由して供給される前記Rレンジ圧が前記ロックアップ油圧制御バルブに出力され、(b-3) 前記第2切替バルブは、前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第3切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧を前記フェール切替バルブに出力し、前記ライン圧を前記第1油圧制御バルブに出力し、その第1油圧制御バルブの制御油圧を前記同期噛合式係合装置に出力し、前記第1切替バルブが前記第2接続状態の場合に供給される前記Rレンジ圧を前記第3切替バルブに出力する第1接続状態と、前記第1切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧を前記フェール切替バルブに出力し、前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第3切替バルブが前記第1接続状態の場合に供給される前記Dレンジ圧を前記第1油圧制御バルブに出力し、その第1油圧制御バルブの制御油圧を前記フェール切替バルブに出力し、前記ライン圧を前記同期噛合式係合装置に出力する第2接続状態と、に切り替え可能で、(b-4) 前記フェール切替バルブの前記第1接続状態では、前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第2切替バルブが前記第2接続状態の場合、および前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第3切替バルブが前記第1接続状態で前記第2切替バルブが前記第1接続状態の場合に、それぞれ供給される前記Dレンジ圧が前記第2油圧制御バルブに出力され、前記第1切替バルブが前記第1接続状態で前記第3切替バルブが前記第1接続状態で前記第2切替バルブが前記第2接続状態の場合に供給される前記第1油圧制御バルブの制御油圧が前記ギヤ前進用摩擦係合装置に出力される一方、(c) 前記制御装置は、前記異常検出時に後進走行用のリバースレンジが選択された場合に、前記第1切替バルブを前記第2接続状態とし、前記第2切替バルブを前記第1接続状態とし、前記第3切替バルブを前記第2接続状態とし、前記ロックアップ油圧制御バルブを油圧出力状態とし、前記第1油圧制御バルブを油圧出力状態とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
このような車両用動力伝達装置においては、ロックアップ油圧制御バルブが油圧出力状態に固定されるオンフェールの可能性がある所定の異常検出時に、第1切替バルブを第2接続状態とし、第3切替バルブを第1接続状態とし、ロックアップ油圧制御バルブの油圧出力によるフェール圧に基づいてフェール切替バルブが第2接続状態に切り替えられることにより、そのフェール圧がロックアップ開放油路に供給されてロックアップクラッチが開放状態に保持されるとともに、フェール切替バルブを介して第2油圧制御バルブに退避走行用油圧が供給される。したがって、その第2油圧制御バルブの油圧制御で前進用係合装置を係合させることにより前進走行が可能なフェールセーフモードが成立し、ロックアップ油圧制御バルブが正常である場合は勿論、ロックアップ油圧制御バルブが実際にオンフェールであった場合でも前進走行が可能であるとともに、ロックアップクラッチが開放状態に保持されることで車両停止時にエンジンストール等を生じることなく適切に退避走行することができる。
【0016】
また、上記フェールセーフモードが実行される異常検出時にニュートラルレンジが選択されると、第1切替バルブを第2接続状態とし、第3切替バルブを第1接続状態とし、ロックアップ油圧制御バルブの油圧出力を停止し、第2油圧制御バルブの油圧出力を停止する。この場合、ロックアップ油圧制御バルブが正常であれば、そのロックアップ油圧制御バルブの油圧出力が停止されるとともに、フェール切替バルブに対するフェール圧の供給が停止し、フェール切替バルブが第1接続状態に切り替えられる。これにより、ロックアップクラッチが開放状態に保持され、ニュートラルレンジからリバースレンジやドライブレンジに切り替えられる際に、ロックアップクラッチの係合に起因して駆動力源が回転停止させられてエンジンストール等が生じることが防止される。また、第1切替バルブが第2接続状態でフェール切替バルブが第1接続状態とされることで、そのフェール切替バルブから第2油圧制御バルブへの油圧供給が遮断されるため、第2油圧制御バルブが油圧出力状態に固定されるオンフェールが発生しても、前進用係合装置が係合させられることはなく、第2油圧制御バルブの1フェールでニュートラルレンジにも拘らず前進用係合装置が係合して運転者に違和感を生じさせることが防止される。
【0017】
一方、ロックアップ油圧制御バルブが実際にオンフェールの場合には、上記ニュートラルレンジでもロックアップ油圧制御バルブの油圧出力によるフェール圧に基づいてフェール切替バルブが第2接続状態に切り替えられ、フェールセーフモードと実質的に同じ状態になる。すなわち、フェール圧がフェール切替バルブからロックアップ開放油路に供給されることによりロックアップクラッチが開放状態に保持され、ニュートラルレンジからリバースレンジやドライブレンジに切り替えられる際に、ロックアップクラッチの係合に起因して駆動力源が回転停止させられてエンジンストール等が生じることが防止されるとともに、第2油圧制御バルブの油圧出力が停止されることにより、前進用係合装置が開放されて動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。
【0018】
第2発明は、自動変速機が、ギヤ式伝動装置、ギヤ前進用摩擦係合装置、ギヤ後進用摩擦係合装置、および同期噛合式係合装置が設けられた第1動力伝達経路と、ベルト式無段変速機およびベルト走行用摩擦係合装置が設けられた第2動力伝達経路とを備えており、油圧制御回路が第2切替バルブおよび第1油圧制御バルブを備えている場合で、フェールセーフモードが実行される異常検出時にリバースレンジが選択された場合には、第1切替バルブを第2接続状態とし、第2切替バルブを第1接続状態とし、第3切替バルブを第2接続状態とし、ロックアップ油圧制御バルブを油圧出力状態とし、第1油圧制御バルブを油圧出力状態とする。これにより、第3切替バルブから供給されるロックアップ油圧制御バルブの油圧に基づいてギヤ後進用摩擦係合装置が係合させられるとともに、第2切替バルブから供給される第1油圧制御バルブの制御油圧に基づいて同期噛合式係合装置が係合させられて、ギヤ式伝動装置を用いた後進走行が可能になる。その場合に、前記ニュートラルレンジでは、ロックアップ油圧制御バルブが実際にオンフェールか否かに拘らずロックアップクラッチが開放状態に保持されるため、ニュートラルレンジからリバースレンジへ切り替えられる際に、ロックアップクラッチの係合に起因して駆動力源が回転停止させられてエンジンストール等が生じることを防止する、という効果が適切に得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施例である車両用動力伝達装置の概略構成を説明する骨子図である。
【
図2】
図1の車両用動力伝達装置が備えている油圧制御回路の要部を説明する油圧回路図である。
【
図3】
図1の車両用動力伝達装置が備えている複数の動力伝達レンジ、およびDレンジで切替可能な複数の走行モードと、複数のソレノイドバルブの作動状態および複数の係合装置の係合開放状態と、の関係を説明する図である。
【
図4】
図1の車両用動力伝達装置がDレンジのフェールセーフモードとされた時の油圧の伝達経路を太線で示した油圧回路図である。
【
図5】
図1の車両用動力伝達装置がNレンジに切り替えられた時の油圧の伝達経路を太線で示した油圧回路図である。
【
図6】
図1の車両用動力伝達装置がRレンジに切り替えられた時の油圧の伝達経路を太線で示した油圧回路図である。
【
図7】
図5のNレンジにおいてロックアップ油圧制御バルブSLUが油圧出力状態に固定されるオンフェールの時の油圧の伝達経路を太線で示した油圧回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明は、駆動力源としてエンジン(内燃機関)を備えているエンジン駆動車両の車両用動力伝達装置に好適に適用されるが、駆動力源としてエンジンおよび電動モータを備えているハイブリッド車両など、その他の車両の動力伝達装置にも適用され得る。第1切替バルブ、第2切替バルブ、第3切替バルブは、例えばON-OFFソレノイドバルブの信号圧に基づいて接続状態が切り替えられるように構成されるが、スプール弁等の弁体がON-OFFソレノイドによって直接移動させられるものでも良いし、ソレノイド以外の駆動装置を採用することもできるなど、接続状態を切り替えることができる種々の態様が可能である。各切替バルブの第1接続状態および第2接続状態は、ソレノイドが励磁状態のON時に第1接続状態となり、励磁が解除されるOFF時に第2接続状態になるものでも、ON時に第2接続状態となり、OFF時に第1接続状態になるものでも良い。ロックアップ油圧制御バルブ、第1油圧制御バルブ、第2油圧制御バルブは、例えば励磁電流に応じて出力油圧を連続的に変化させるリニアソレノイドバルブが好適に用いられるが、比例制御などで油圧を連続的に変化させるものでも良い。これ等の油圧制御バルブは、ソレノイドバルブ自体で所定の油圧に制御して出力するものでも良いが、ソレノイドバルブの出力油圧に従って油圧コントロールバルブ等を介して油圧を制御するものでも良い。また、油圧制御バルブから出力された制御油圧がそのまま係合装置に供給されて係合装置を係合させても良いが、油圧制御バルブの制御油圧に応じて係合装置の係合トルクを間接的に制御するものでも良い。
【0021】
本発明の車両用動力伝達装置は、例えば前記
図2に示す油圧制御回路を備えて構成されるが、
図2の油圧制御回路はあくまでも一例であり、第2切替バルブ112および第1油圧制御バルブSL1の配設位置や有無について適宜変更できる。他の切替バルブ110、114、116についても、その接続状態を部分的に変更することが可能である。ロックアップ係合油路130およびロックアップ開放油路132に関する油圧回路についても、適宜変更できる。同期噛合式係合装置である同期噛合式クラッチS1を省略することもできる。
図2は、ギヤ式伝動装置、ギヤ前進用摩擦係合装置、ギヤ後進用摩擦係合装置、および同期噛合式係合装置が設けられた第1動力伝達経路と、ベルト式無段変速機およびベルト走行用摩擦係合装置が設けられた第2動力伝達経路と、を備えている自動変速機を有する車両用動力伝達装置に関するものであるが、少なくとも前進用係合装置および後進用係合装置によって前進走行および後進走行が可能な自動変速機を備えていれば良い。例えばギヤ前進用摩擦係合装置である前進用クラッチC1を、フェールセーフモード時に係合させて前進走行を可能にすることも可能で、その場合はベルト式無段変速機およびベルト走行用摩擦係合装置を有する第2動力伝達経路は必ずしも必要ないなど、種々の態様が可能である。
【実施例0022】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して詳細に説明する。なお、以下の実施例において、図は説明のために適宜簡略化或いは変形されており、各部の寸法比や形状等は必ずしも正確に描かれていない。
【0023】
図1は、本発明の一実施例である車両用動力伝達装置10の概略構成を説明する骨子図で、互いに平行な複数の軸が一平面内に位置するように展開して示した図である。この車両用動力伝達装置10は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両に好適に採用される横置き型で、走行用駆動力源であるエンジン12の出力は、流体式伝動装置としてのトルクコンバータ14から自動変速機16を介して差動歯車装置18に伝達され、左右の駆動輪20L、20Rへ分配される。エンジン12は、ガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等の内燃機関である。トルクコンバータ14は、エンジン12のクランク軸に連結されたポンプ翼車14p、および自動変速機16の入力軸22に連結されたタービン翼車14tを備えており、流体(作動油)を介して動力伝達を行うとともに、ロックアップクラッチLUを介して直結されるようになっている。ポンプ翼車14pには機械式のオイルポンプ74が設けられており、エンジン12により回転駆動されて油圧を出力することにより、破線で示す油圧制御回路70の油圧源として用いられる。オイルポンプ74の連結先すなわち配設位置は適宜変更できるし、電動式オイルポンプを採用することも可能である。
【0024】
図2は、油圧制御回路70の要部、すなわちバルブボデー等によって構成される油圧作動制御部72を具体的に例示したもので、トルクコンバータ14のロックアップクラッチLUの係合油圧であるロックアップ係合油圧Pluは、ロックアップ油圧制御バルブSLUによって調圧制御され、このロックアップ係合油圧Pluに応じてロックアップクラッチLUが係合開放制御される。ロックアップ係合油圧Pluは、例えばロックアップ係合側油室とロックアップ開放側油室との差圧を制御するものである。ロックアップ油圧制御バルブSLUは油圧制御用のリニアソレノイドバルブであり、電子制御装置80によって出力油圧Pslu が電気的に制御されることによりロックアップ係合油圧Pluを調圧する。出力油圧Pslu は制御油圧Pslu とも表現する。他の油圧制御バルブについても同様である。
【0025】
自動変速機16は、トルクコンバータ14の出力回転部材であるタービン軸と一体的に設けられた入力軸22、入力軸22に連結されたベルト式無段変速機24、同じく入力軸22に連結されてベルト式無段変速機24と並列に設けられた前後進切替装置26およびギヤ変速機構28、ベルト式無段変速機24およびギヤ変速機構28の共通の出力回転部材である出力軸30、減速歯車装置32を備えており、その減速歯車装置32の小径ギヤ34が差動歯車装置18のリングギヤ36と噛み合わされている。このように構成された自動変速機16においては、エンジン12の出力が、トルクコンバータ14からベルト式無段変速機24を介して出力軸30へ伝達され、或いはベルト式無段変速機24を介することなく前後進切替装置26およびギヤ変速機構28を介して出力軸30へ伝達される。そして、その出力軸30から、更に減速歯車装置32および差動歯車装置18を経て左右の駆動輪20L、20Rへ伝達される。
【0026】
このように、本実施例の自動変速機16は、エンジン12の出力を入力軸22から前後進切替装置26およびギヤ変速機構28を介して出力軸30へ伝達する第1動力伝達経路TP1と、エンジン12の出力を入力軸22からベルト式無段変速機24を介して出力軸30へ伝達する第2動力伝達経路TP2と、を備えているのであり、車両の走行状態に応じてそれ等の動力伝達経路TP1、TP2が切り替えられる。このため、自動変速機16は、上記第1動力伝達経路TP1における動力伝達を断接(接続・遮断)する前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、および第2動力伝達経路TP2における動力伝達を断接するベルト走行用クラッチC2を備えている。第1動力伝達経路TP1には更に、前後進切替装置26およびギヤ変速機構28に対して直列に、具体的にはそれ等よりも下流側に、同期噛合式クラッチS1が設けられている。ギヤ変速機構28は、第1動力伝達経路TP1に設けられたギヤ式伝動装置に相当し、前進用クラッチC1は油圧式のギヤ前進用摩擦係合装置に相当し、後進用ブレーキB1は油圧式のギヤ後進用摩擦係合装置に相当し、ベルト走行用クラッチC2は油圧式のベルト走行用摩擦係合装置に相当し、同期噛合式クラッチS1は油圧式の同期噛合式係合装置に相当する。本実施例では、ベルト走行用クラッチC2が前進用係合装置で、後進用ブレーキB1が後進用係合装置である。
【0027】
前後進切替装置26は、ダブルピニオン型の遊星歯車装置を主体として構成されており、キャリア26cが入力軸22に一体的に連結され、サンギヤ26sが入力軸22に対して同軸に相対回転可能に配設された小径ギヤ42に連結されている一方、リングギヤ26rが後進用ブレーキB1を介して選択的に回転停止させられるとともに、キャリア26cおよびサンギヤ26sが前進用クラッチC1を介して選択的に連結されるようになっている。そして、前進用クラッチC1が係合させられるとともに後進用ブレーキB1が開放されると、入力軸22が小径ギヤ42に直結されて前進用動力伝達状態になり、同期噛合式クラッチS1の係合により第1動力伝達経路TP1が成立させられると前進走行が可能になる。一方、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに前進用クラッチC1が開放されると、小径ギヤ42は入力軸22に対して逆方向へ回転させられるため、後進用動力伝達状態になり、同期噛合式クラッチS1の係合により第1動力伝達経路TP1が成立させられると後進走行が可能になる。また、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が共に開放されると、第1動力伝達経路TP1による動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。
【0028】
上記前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1は、何れも複数の摩擦材が油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の油圧式摩擦係合装置であり、その油圧シリンダに供給されるC1係合油圧Pc1、B1係合油圧Pb1が、油圧作動制御部72に設けられた第1油圧制御バルブSL1、ロックアップ油圧制御バルブSLU(
図2参照)によってそれぞれ調圧制御されることにより、それ等の係合力すなわち伝達トルク容量が連続的に調整される。第1油圧制御バルブSL1、ロックアップ油圧制御バルブSLUは、何れも油圧制御用のリニアソレノイドバルブであり、それぞれ電子制御装置80によって出力油圧Psl1 、Pslu が電気的に制御されることにより、C1係合油圧Pc1、B1係合油圧Pb1を調圧する。本実施例では、出力油圧Psl1 、Pslu がそのままC1係合油圧Pc1、B1係合油圧Pb1として前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1に供給される。
【0029】
ギヤ変速機構28は、小径ギヤ42と、カウンタ軸44に相対回転不能に設けられて小径ギヤ42と噛み合わされた大径ギヤ46と、カウンタ軸44に対して同軸に相対回転可能に設けられた小径のアイドラギヤ48とを備えている。そして、カウンタ軸44とアイドラギヤ48との間に、同期噛合式クラッチS1が設けられており、それ等の間の動力伝達が断接される。同期噛合式クラッチS1は、シンクロナイザリング等のシンクロメッシュ機構(同期機構)を備えており、クラッチハブスリーブ50が、図示しない油圧シリンダにより
図1の左方向である接続方向へ移動させられると、シンクロナイザリングを介してアイドラギヤ48がカウンタ軸44と同期回転させられるようになり、クラッチハブスリーブ50が更に移動させられると、そのクラッチハブスリーブ50の内周面に設けられたスプライン歯を介してアイドラギヤ48がカウンタ軸44に相対回転不能に連結される。同期噛合式クラッチS1の油圧シリンダには、油圧作動制御部72に設けられた第1油圧制御バルブSL1(
図2参照)によって調圧制御されたS1係合油圧Ps1が供給されるようになっており、同期噛合式クラッチS1はそのS1係合油圧Ps1に基づいて同期噛合係合させられる。同期噛合式クラッチS1の油圧シリンダにはまた、ライン圧PLがそのままS1係合油圧Ps1として供給されるようになっており、同期噛合式クラッチS1が噛合状態に維持される。ライン圧PLは、例えば出力要求量であるアクセル操作量Accやエンジントルクに対応するスロットル弁開度θth等に応じて調圧される。第1油圧制御バルブSL1は、電子制御装置80によって出力油圧Psl1 が電気的に制御されることにより、S1係合油圧Ps1を調圧する。本実施例では、出力油圧Psl1 がそのままS1係合油圧Ps1として同期噛合式クラッチS1に供給される。
【0030】
前記アイドラギヤ48は、出力軸30に設けられた大径ギヤ58と噛み合わされており、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1の何れか一方が係合させられ且つ同期噛合式クラッチS1が接続されることにより、エンジン12の出力が入力軸22から前後進切替装置26、ギヤ変速機構28、アイドラギヤ48、および大径ギヤ58を順次経由して出力軸30に伝達されるようになり、第1動力伝達経路TP1が成立させられる。なお、小径のアイドラギヤ48と大径ギヤ58との間でも変速(減速)が行なわれ、それ等を含めてギヤ変速機構28が構成されていると見做すこともできる。
【0031】
ベルト式無段変速機24は、入力軸22に設けられた有効径が可変のプライマリシーブ60と、出力軸30と同軸の回転軸62に設けられた有効径が可変のセカンダリシーブ64と、それ等の一対の可変シーブ60、64の間に巻き掛けられた伝動ベルト66とを備えており、一対の可変シーブ60、64と伝動ベルト66との間の摩擦を介して動力伝達が行われる。一対の可変シーブ60、64は、それぞれV溝幅を変更する推力を付与する油圧アクチュエータとして油圧シリンダ60c、64cを備えており、油圧シリンダ60cへ供給されるプライマリ油圧Ppri が、油圧作動制御部72に設けられたプライマリ油圧制御バルブSLP(
図2参照)によって制御されることにより、両可変シーブ60、64のV溝幅が変化して伝動ベルト66の掛かり径(有効径)が変更され、変速比γ2が連続的に変化させられる。例えば、プライマリシーブ60の回転速度である入力軸22の回転速度(入力回転速度)Ninが、変速比γ2に対応する所定の目標回転速度となるように、プライマリ油圧制御バルブSLPによってプライマリ油圧Ppri が制御される。また、油圧シリンダ64cへ供給されるセカンダリ油圧Psec が、油圧作動制御部72に設けられたセカンダリ油圧制御バルブSLS(
図2参照)によって調圧制御されることにより、伝動ベルト66が滑りを生じないようにベルト挟圧力が調整される。プライマリ油圧制御バルブSLP、セカンダリ油圧制御バルブSLSは、何れも油圧制御用のリニアソレノイドバルブであり、電子制御装置80によって電気的に制御されることによりプライマリ油圧Ppri 、セカンダリ油圧Psec をそれぞれ調圧する。
【0032】
出力軸30は、回転軸62に対して同軸に相対回転可能に配設されており、その出力軸30とセカンダリシーブ64との間に設けられた前記ベルト走行用クラッチC2により、それ等の出力軸30とセカンダリシーブ64との間の動力伝達が断接される。このベルト走行用クラッチC2が係合させられると、エンジン12の出力が入力軸22からベルト式無段変速機24を経由して出力軸30に伝達されるようになり、第2動力伝達経路TP2が成立させられて前進走行が可能になる。ベルト走行用クラッチC2は、複数の摩擦材が油圧シリンダによって摩擦係合させられる多板式の摩擦係合装置であり、その油圧シリンダに供給されるC2係合油圧Pc2が、油圧作動制御部72に設けられた第2油圧制御バルブSL2(
図2参照)によって調圧制御されることにより、その係合力すなわち伝達トルク容量が連続的に調整される。第2油圧制御バルブSL2は油圧制御用のリニアソレノイドバルブであり、電子制御装置80によって出力油圧Psl2 が電気的に制御されることによりC2係合油圧Pc2を調圧する。本実施例では、出力油圧Psl2 がそのままC2係合油圧Pc2としてベルト走行用クラッチC2に供給される。
【0033】
このような車両用動力伝達装置10において、前記ギヤ変速機構28のギヤ比等によって定まる前記第1動力伝達経路TP1の変速比γ1は、第2動力伝達経路TP2の変速比γ2の最大値γ2max よりも大きく、車両発進時や高負荷走行時には第1動力伝達経路TP1を用いるギヤ走行モードで走行し、車速Vの上昇や要求駆動力の減少などに伴って第2動力伝達経路TP2を用いるベルト走行モードに切り替えられる。ギヤ走行モードからベルト走行モードへのモード切替(アップシフト)は、前進用クラッチC1を開放するとともにベルト走行用クラッチC2を係合するクラッチツークラッチ変速によって実行される。また、ベルト走行モードからギヤ走行モードへのモード切替(ダウンシフト)は、ベルト走行用クラッチC2を開放するとともに前進用クラッチC1を係合するクラッチツークラッチ変速によって実行される。変速比γ1、γ2は、出力回転速度(出力軸30の回転速度)Nout に対する入力回転速度Ninの比(Nin/Nout )で、変速比γ1、γ2max は何れも1.0より大きく、入力軸22に対して出力軸30が減速回転させられる。出力回転速度Nout は車速Vに対応し、入力回転速度Ninはタービン回転速度Ntと一致する。
【0034】
ここで、前記油圧制御回路70には、
図2に示されているように、前記油圧制御バルブSLP、SLS、SLU、SL1、SL2の他、ON-OFFソレノイドバルブSC1、SC2、SC3、第1切替バルブ110、第2切替バルブ112、第3切替バルブ114、フェール切替バルブ116、およびプライマリシーブコントロールバルブ(以下、PSCVという)120が設けられている。
【0035】
第1切替バルブ110は、ON-OFFソレノイドバルブSC1から供給される信号圧の有無に応じて油路を切り替えるスプール弁で、実線で示す第1接続状態と破線で示す第2接続状態とに切り替えられる。第1接続状態は、ライン圧PLをDレンジ圧PDとして第2切替バルブ112および第3切替バルブ114に出力する。第2接続状態は、ライン圧PLをRレンジ圧PRとして第2切替バルブ112に出力し、ロックアップ油圧制御バルブSLUの出力油圧Pslu をフェール圧Pfailとしてフェール切替バルブ116に出力する。Dレンジ圧PDは前進用クラッチC1のC1係合油圧Pc1、ベルト走行用クラッチC2のC2係合油圧Pc2の元圧として用いられ、Rレンジ圧PRは後進用ブレーキB1のB1係合油圧Pb1の元圧として用いられる。本実施例では、ON-OFFソレノイドバルブSC1がOFF(非励磁状態)で信号圧が供給されない場合にはスプリングの付勢力に従って実線で示す第1接続状態とされ、ON-OFFソレノイドバルブSC1がON(励磁状態)で信号圧が供給されると破線で示す第2接続状態になる。すなわち、シフトレバー88により前進走行用のDレンジが選択されると、ON-OFFソレノイドバルブSC1がOFFで、第1切替バルブ110が第1接続状態とされてDレンジ圧PDが出力される一方、シフトレバー88により後進走行用のRレンジが選択されると、ON-OFFソレノイドバルブSC1がONとされ、第1切替バルブ110が第2接続状態とされてRレンジ圧PRが出力される。なお、動力伝達を遮断するNレンジやPレンジが選択された場合、本実施例ではON-OFFソレノイドバルブSC1がONとされ、第1切替バルブ110が第2接続状態とされる。
【0036】
第2切替バルブ112は、ON-OFFソレノイドバルブSC2から供給される信号圧の有無に応じて油路を切り替えるスプール弁で、実線で示す第1接続状態と破線で示す第2接続状態とに切り替えられる。第1接続状態は、第1切替バルブ110が第1接続状態の場合に第3切替バルブ114を経由して供給されるDレンジ圧PDをフェール切替バルブ116に出力し、ライン圧PLを第1油圧制御バルブSL1に出力するとともにフェール切替制御圧としてフェール切替バルブ116に出力し、その第1油圧制御バルブSL1によって調圧された制御油圧Psl1 をS1係合油圧Ps1として同期噛合式クラッチS1に出力し、第1切替バルブ110が第2接続状態の場合に供給されるRレンジ圧PRを第3切替バルブ114に出力する。第2接続状態は、第1切替バルブ110が第1接続状態の場合に供給されるDレンジ圧PDをフェール切替バルブ116に出力し、第1切替バルブ110が第1接続状態の場合に第3切替バルブ114を経由て供給されるDレンジ圧PDを第1油圧制御バルブSL1に出力するとともにフェール切替制御圧としてフェール切替バルブ116に出力し、その第1油圧制御バルブSL1によって調圧された制御油圧Psl1 をフェール切替バルブ116に出力し、ライン圧PLをそのままS1係合油圧Ps1として同期噛合式クラッチS1に出力する。すなわち、第1油圧制御バルブSL1によりライン圧PLまたはDレンジ圧PDを元圧として調圧された制御油圧Psl1 が、第1接続状態ではS1係合油圧Ps1として同期噛合式クラッチS1に出力される一方、第2接続状態ではフェール切替バルブ116を経由してC1係合油圧Pc1として前進用クラッチC1に供給され、同期噛合式クラッチS1および前進用クラッチC1の油圧制御に対して共通の第1油圧制御バルブSL1が用いられる。本実施例では、ON-OFFソレノイドバルブSC2がOFFで信号圧が供給されない場合にはスプリングの付勢力に従って実線で示す第1接続状態とされ、ON-OFFソレノイドバルブSC2がONで信号圧が供給されると破線で示す第2接続状態になる。
【0037】
第3切替バルブ114は、ON-OFFソレノイドバルブSC3から供給される信号圧の有無に応じて油路を切り替えるスプール弁で、実線で示す第1接続状態と破線で示す第2接続状態とに切り替えられる。第1接続状態は、ライン圧をロックアップ油圧制御バルブSLUに出力し、そのロックアップ油圧制御バルブSLUによって調圧された制御油圧Pslu を、ロックアップクラッチLUの係合油圧Pluを制御するロックアップ係合油路130に出力し、第1切替バルブ110が第1接続状態の場合に供給されるDレンジ圧PDを第2切替バルブ112に出力する。第2接続状態は、第1切替バルブ110が第2接続状態で第2切替バルブ112が第1接続状態の場合に供給されるRレンジ圧PRをロックアップ油圧制御バルブSLUに出力し、そのロックアップ油圧制御バルブSLUによって調圧された制御油圧Pslu をB1係合油圧Pb1として後進用ブレーキB1に出力する。すなわち、ロックアップ油圧制御バルブSLUによりライン圧PLまたはRレンジ圧PRを元圧として調圧された制御油圧Pslu が、第1接続状態ではロックアップ係合油圧Pluの制御用油圧としてロックアップ係合油路130に出力される一方、第2接続状態ではB1係合油圧Pb1として後進用ブレーキB1に供給され、ロックアップクラッチLUおよび後進用ブレーキB1の油圧制御に対して共通のロックアップ油圧制御バルブSLUが用いられる。本実施例では、ON-OFFソレノイドバルブSC3がOFFで信号圧が供給されない場合にはスプリングの付勢力に従って実線で示す第1接続状態とされ、ON-OFFソレノイドバルブSC3がONで信号圧が供給されると破線で示す第2接続状態になる。
【0038】
フェール切替バルブ116はスプール弁で、実線で示す第1接続状態と破線で示す第2接続状態とに切り替えられる。第1接続状態は、第1切替バルブ110が第1接続状態で第2切替バルブ112が第2接続状態の場合、および第1切替バルブ110が第1接続状態で第3切替バルブ114が第1接続状態で第2切替バルブ112が第1接続状態の場合に、それぞれ第2切替バルブ112から供給されるDレンジ圧を第2油圧制御バルブSL2に出力し、第1切替バルブ110が第1接続状態で第3切替バルブ114が第1接続状態で第2切替バルブ112が第2接続状態の場合に供給される第1油圧制御バルブSL1の制御油圧Psl1 をC1係合油圧Pc1として前進用クラッチC1に出力する。第2接続状態は、Dレンジ圧PDとは別経路で供給されるライン圧PLを退避走行用油圧Plimpとして第2油圧制御バルブSL2に出力し、第1切替バルブ110が第2接続状態の場合に供給されるフェール圧Pfailを、ロックアップクラッチLUを強制的に開放するロックアップ開放油路132に出力する。すなわち、第1油圧制御バルブSL1によりDレンジ圧PDを元圧として調圧された制御油圧Psl1 が、第1接続状態ではC1係合油圧Pc1として前進用クラッチC1に供給され、この前進用クラッチC1および前記同期噛合式クラッチS1の油圧制御に対して共通の第1油圧制御バルブSL1が用いられる。上記ロックアップ開放油路132はPSCV120にも接続されており、フェール切替バルブ116が第2接続状態に切り替えられてフェール圧PfailがPSCV120に供給されると、そのPSCV120によってベルト式無段変速機24のプライマリ油圧Ppri が減圧され、通常よりも変速比γ2が大きくされる。
【0039】
上記フェール切替バルブ116は、フェール圧Pfailが供給されると第2接続状態に機械的に切り替えられ、フェール圧Pfailの供給が停止すると第1接続状態に機械的に切り替えられる。但し、第2切替バルブ112からライン圧PLやDレンジ圧PDがフェール切替制御圧として供給されると、そのライン圧PLやDレンジ圧PDの作用でフェール圧Pfailによる第2接続状態への切替が制限される。
【0040】
第2油圧制御バルブSL2は、フェール切替バルブ116とベルト走行用クラッチC2との間に配設されており、フェール切替バルブ116から供給されるDレンジ圧PDまたは退避走行用油圧Plimpを元圧として油圧を制御し、その制御油圧である出力油圧Psl2 がC2係合油圧Pc2としてベルト走行用クラッチC2に供給される。これにより、ベルト走行用クラッチC2は第2油圧制御バルブSL2の出力油圧Psl2 に応じて係合開放制御され、ベルト式無段変速機24を有する第2動力伝達経路TP2による前進走行(ベルト走行)が可能になる。
【0041】
このような油圧制御回路70によれば、シフトレバー88の操作ポジションLpoに応じて
図3に示されるように複数の動力伝達レンジP、N、R、Dを成立させることができる。すなわち、シフトレバー88は、前進走行用のD(ドライブ)レンジを選択するDポジション、後進走行用のR(リバース)レンジを選択するRポジション、動力伝達を遮断するN(ニュートラル)レンジを選択するNポジション、駐車用のP(パーキング)レンジを選択するPポジション等を操作ポジションLpoとして備えている。そして、それ等の操作ポジションLpoに応じて電子制御装置80によりソレノイドバルブSC1、SC2、SC3、SL1、SL2、SLUがそれぞれ制御され、係合装置であるクラッチC1、C2、S1、LU、およびブレーキB1の係合開放状態が切り替えられることにより、動力伝達状態が異なるPレンジ、Nレンジ、Rレンジ、Dレンジが成立させられる。
【0042】
PレンジおよびNレンジでは、ON-OFFソレノイドバルブSC1およびSC2がON、ON-OFFソレノイドバルブSC3がOFF、油圧制御バルブSL1、SL2、SLUがOFF(油圧出力停止)とされる。
図5は、この時の油圧の伝達経路を太線で示した油圧回路図であり、第1切替バルブ110が第2接続状態で、第2切替バルブ112が第2接続状態で、第3切替バルブ114が第1接続状態で、フェール切替バルブ116が第1接続状態になり、クラッチC1、C2、後進用ブレーキB1、およびロックアップクラッチLUが開放されるとともに同期噛合式クラッチS1が係合させられ、動力伝達が遮断されるニュートラル状態になる。なお、この実施例では、第2切替バルブ112が第2接続状態とされ、第1油圧制御バルブSL1がOFFとされ、同期噛合式クラッチS1が係合させられるが、同期噛合式クラッチS1を開放しても良く、第2切替バルブ112を第1接続状態にしたり、第1油圧制御バルブSL1をONにしたりすることも可能である。
【0043】
Rレンジでは、ON-OFFソレノイドバルブSC1およびSC3がON、ON-OFFソレノイドバルブSC2がOFF、第1油圧制御バルブSL1、ロックアップ油圧制御バルブSLUがON(油圧出力)、第2油圧制御バルブSL2がOFFとされる。
図6は、この時の油圧の伝達経路を太線で示した油圧回路図であり、第1切替バルブ110が第2接続状態で、第2切替バルブ112が第1接続状態で、第3切替バルブ114が第2接続状態で、フェール切替バルブ116が第1接続状態になり、後進用ブレーキB1および同期噛合式クラッチS1が係合させられるとともに、クラッチC1、C2、およびロックアップクラッチLUが開放され、ギヤ変速機構28を介して動力が伝達されて後進走行する後進走行モードが成立させられる。
【0044】
Dレンジでは、ギヤ走行モード、ベルト低車速走行モード、ベルト高車速走行モード、およびフェールセーフモードが成立可能である。ギヤ走行モードでは、ON-OFFソレノイドバルブSC1、SC3がOFF、ON-OFFソレノイドバルブSC2がON、第1油圧制御バルブSL1がON、第2油圧制御バルブSL2がOFFとされる。これにより、第1切替バルブ110が第1接続状態で、第2切替バルブ112が第2接続状態で、第3切替バルブ114が第1接続状態で、フェール切替バルブ116が第1接続状態になり、前進用クラッチC1および同期噛合式クラッチS1が係合させられるとともに、ベルト走行用クラッチC2および後進用ブレーキB1が開放され、ギヤ変速機構28を介して動力が伝達されて前進走行するギヤ走行が可能になる。
【0045】
ベルト低車速走行モードでは、ON-OFFソレノイドバルブSC1およびSC3がOFF、ON-OFFソレノイドバルブSC2がON、第1油圧制御バルブSL1がOFF、第2油圧制御バルブSL2がONとされる。これにより、第1切替バルブ110が第1接続状態で、第2切替バルブ112が第2接続状態で、第3切替バルブ114が第1接続状態で、フェール切替バルブ116が第1接続状態になり、ベルト走行用クラッチC2および同期噛合式クラッチS1が係合させられるとともに、前進用クラッチC1および後進用ブレーキB1が開放され、ベルト式無段変速機24を介して動力が伝達されて前進走行するベルト走行が可能になる。
【0046】
ベルト高車速走行モードでは、ON-OFFソレノイドバルブSC1、SC2、SC3がOFF、第1油圧制御バルブSL1がOFF、第2油圧制御バルブSL2がONとされる。これにより、第1切替バルブ110が第1接続状態で、第2切替バルブ112が第1接続状態で、第3切替バルブ114が第1接続状態で、フェール切替バルブ116が第1接続状態になり、ベルト走行用クラッチC2が係合させられるとともに前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、および同期噛合式クラッチS1が開放され、ベルト式無段変速機24を介して動力が伝達されて前進走行するベルト走行が可能になる。
【0047】
Dレンジのギヤ走行モード、ベルト低車速走行モード、およびベルト高車速走行モードでは、一定の条件下でロックアップ油圧制御バルブSLUがONにされ、その出力油圧Pslu に応じてロックアップ係合油圧Pluが調圧されることにより、ロックアップクラッチLUが完全係合或いはスリップ係合させられるロックアップONになる。また、ロックアップ油圧制御バルブSLUがOFFにされると、ロックアップクラッチLUが開放されるロックアップOFFになる。
【0048】
フェールセーフモードは、ロックアップ油圧制御バルブSLUが油圧出力状態に固定されるオンフェールの可能性がある場合に選択されるモードである。このフェールセーフモードでは、ON-OFFソレノイドバルブSC1、SC2がON、ON-OFFソレノイドバルブSC3がOFF、第1油圧制御バルブSL1がOFF、第2油圧制御バルブSL2、ロックアップ油圧制御バルブSLUがONとされる。
図4は、この時の油圧の伝達経路を太線で示した油圧回路図であり、第1切替バルブ110が第2接続状態で、第2切替バルブ112が第2接続状態で、第3切替バルブ114が第1接続状態で、フェール切替バルブ116が第2接続状態になり、ベルト走行用クラッチC2および同期噛合式クラッチS1が係合させられるとともに、前進用クラッチC1、後進用ブレーキB1、およびロックアップクラッチLUが開放され、ベルト式無段変速機24を介して動力伝達されて前進走行するベルト走行が可能になる。
【0049】
すなわち、フェールセーフモードでは、ロックアップ油圧制御バルブSLUの出力油圧Pslu によるフェール圧Pfailがフェール切替バルブ116に供給されることにより、フェール切替バルブ116が破線で示す第2接続状態に切り替えられ、退避走行用油圧Plimpが第2油圧制御バルブSL2に供給されて、その第2油圧制御バルブSL2の油圧制御でベルト走行用クラッチC2が係合させられることにより、ベルト式無段変速機24を用いた前進走行が可能とされる。また、フェール圧Pfailがフェール切替バルブ116からロックアップ開放油路132に出力されることにより、PSCV120を介してベルト式無段変速機24のプライマリ油圧Ppri が減圧されて変速比γ2が大きくなり、通常よりも大きな変速比γ2で前進走行が行なわれる。一方、ロックアップ油圧制御バルブSLUの出力油圧Pslu は、第1接続状態の第3切替バルブ114からロックアップ係合油路130に出力され、ロックアップ係合油圧Pluの制御用油圧として作用するが、フェール切替バルブ116からロックアップ開放油路132に供給されたフェール圧Pfailにより相殺されて、ロックアップクラッチLUが開放状態に保持される。したがって、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際に油圧出力状態に固定されるオンフェールが発生した場合でも、ロックアップクラッチLUを開放状態に保持して適切に退避走行を行なうことができる。なお、この実施例では、第2切替バルブ112が第2接続状態とされ、第1油圧制御バルブSL1がOFFとされ、同期噛合式クラッチS1が係合させられるが、同期噛合式クラッチS1を開放しても良く、第2切替バルブ112を第1接続状態にしたり、第1油圧制御バルブSL1をONにしたりすることも可能である。
【0050】
このような車両用動力伝達装置10は、
図3に示すPレンジ、Rレンジ、Nレンジ、Dレンジの切替制御や、Dレンジにおける複数の走行モードの切替制御、ベルト式無段変速機24の変速制御およびベルト挟圧力制御、ロックアップクラッチLUの係合開放制御、などを行なうコントローラとして電子制御装置80を備えている。この電子制御装置80は、CPU、ROM、RAM、入出力インターフェースなどを有する所謂マイクロコンピュータを含んで構成されており、RAMの一時記憶機能を利用しつつROMに予め記憶されたプログラムに従って信号処理を行う。電子制御装置80には、操作ポジションセンサ90から前記シフトレバー88の操作位置である操作ポジションLpoを表す信号が供給される他、タービン回転速度Nt、車速Vに対応する出力回転速度Nout 、アクセルペダルの操作量であるアクセル操作量Accを表す信号など、各種の制御に必要な種々の情報が供給されるようになっている。アクセル操作量Accは運転者の駆動力要求量に対応する。電子制御装置80は、車両用動力伝達装置10の制御装置に相当するが、エンジン12の出力制御などその他の制御についても、電子制御装置80によって行なうようにしても良い。
【0051】
電子制御装置80は、機能的にフェールセーフ制御部82を備えている。フェールセーフ制御部82は、ロックアップ油圧制御バルブSLUが油圧出力状態に固定されるオンフェールの可能性がある予め定められた異常検出時に、シフトレバー88によりDレンジが選択されると、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際にオンフェールでも前進走行が可能なフェールセーフモードとする。ロックアップ油圧制御バルブSLUは、ロックアップクラッチLUの係合油圧Pluおよび後進用ブレーキB1の係合油圧Pb1の両方の制御に用いられるとともに、後進走行時以外は第3切替バルブ114が第1接続状態に保持されることから、ロックアップ油圧制御バルブSLUがオンフェールになると、後進走行以外でロックアップクラッチLUが常に係合状態になって駆動力源であるエンジン12が駆動輪20L、20Rに直結され、車両停止時にエンジン12の回転が停止させられてエンジンストールを生じる恐れがある。言い換えれば、前進走行時の車両停止時にエンジンストールが生じた場合には、ロックアップ油圧制御バルブSLUがオンフェールの可能性があると判断できる。すなわち、上記予め定められた異常検出時は、前進走行時の車両停止時にエンジンストールが生じた場合を含んで定められる。ロックアップ油圧制御バルブSLUのオンフェールは、例えば電気回路のショートや断線、異物の噛込み等によるスプール弁等の弁体の作動不良などによって発生する。
【0052】
フェールセーフ制御部82は、異常検出時にDレンジが選択された場合にフェールセーフモードとするだけで、PレンジやNレンジ、Rレンジが選択された場合は、通常のレンジ切替制御に従って
図3に示されるPレンジやNレンジ、Rレンジがそのまま用いられる。例えば、シフトレバー88によってNレンジが選択されると、
図3に従って、ON-OFFソレノイドバルブSC1およびSC2がON、ON-OFFソレノイドバルブSC3がOFF、油圧制御バルブSL1、SL2、SLUがOFFとされる。この時、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際にはオンフェールでなかった場合、前記
図5に示されるように第1切替バルブ110が第2接続状態で、第2切替バルブ112が第2接続状態で、第3切替バルブ114が第1接続状態で、フェール切替バルブ116が第1接続状態になり、クラッチC1、C2、後進用ブレーキB1、およびロックアップクラッチLUが開放されるとともに同期噛合式クラッチS1が係合させられ、動力伝達が遮断されるニュートラル状態になる。
【0053】
一方、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際にオンフェールであった場合には、
図7に示されるように、そのロックアップ油圧制御バルブSLUの出力油圧Pslu がロックアップ係合油路130に出力されるとともに、出力油圧Pslu に基づくフェール圧Pfailがフェール切替バルブ116に供給され、そのフェール切替バルブ116が第2接続状態に切り替えられることにより、退避走行用油圧Plimpが第2油圧制御バルブSL2に供給されるとともに、フェール圧Pfailがロックアップ開放油路132に出力される。すなわち、実質的に
図4のフェールセーフモードと同じ状態になるが、第2油圧制御バルブSL2がOFFすなわち出力停止状態とされてベルト走行用クラッチC2が開放されることにより、動力伝達が遮断されるニュートラル状態に保持される。
【0054】
また、シフトレバー88によってRレンジが選択されると、
図3に従って、ON-OFFソレノイドバルブSC1およびSC3がON、ON-OFFソレノイドバルブSC2がOFF、油圧制御バルブSL1およびSLUがON、第2油圧制御バルブSL2がOFFとされる。これにより、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際にオンフェールか否かに拘らず、
図6に示されるように第3切替バルブ114から供給されるロックアップ油圧制御バルブSLUの出力油圧Pslu に基づいて後進用ブレーキB1が係合させられるとともに、第2切替バルブ112から供給される第1油圧制御バルブSL1の出力油圧Psl1 に基づいて同期噛合式クラッチS1が係合させられ、ギヤ変速機構28を用いた後進走行が可能になる。
【0055】
このように、本実施例の車両用動力伝達装置10においては、ロックアップ油圧制御バルブSLUがオンフェールの可能性がある所定の異常検出時に、
図4に示されるフェールセーフモードとされ、ロックアップ油圧制御バルブSLUが正常である場合は勿論、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際にオンフェールであった場合でも、ベルト式無段変速機24を使って前進走行するベルト走行が可能であるとともに、ロックアップクラッチLUが開放状態に保持されることで車両停止時にエンジンストールを生じることなく適切に退避走行することができる。
【0056】
また、上記フェールセーフモードが実行される異常検出時にNレンジが選択されると、
図3に従ってON-OFFソレノイドバルブSC1がONで第1切替バルブ110が第2接続状態とされ、ON-OFFソレノイドバルブSC3がOFFで第3切替バルブ114が第1接続状態とされ、ロックアップ油圧制御バルブSLUがOFFとされ、第2油圧制御バルブSL2がOFFとされる。この場合、ロックアップ油圧制御バルブSLUが正常であれば、
図5に示されるように、そのロックアップ油圧制御バルブSLUの油圧出力が停止されることで、フェール切替バルブ116に対するフェール圧Pfailの供給も停止し、フェール切替バルブ116が第1接続状態に切り替えられる。これにより、ロックアップクラッチLUが開放状態に保持され、NレンジからRレンジやDレンジに切り替えられる際に、ロックアップクラッチLUの係合に起因してエンジン12が回転停止させられてエンジンストールが生じることが防止される。また、フェール切替バルブ116が第1接続状態とされることで、そのフェール切替バルブ116から第2油圧制御バルブSL2への油圧供給が遮断されるため、その第2油圧制御バルブSL2が油圧出力状態に固定されるオンフェールが発生しても、ベルト走行用クラッチC2が係合させられることはなく、第2油圧制御バルブSL2の1フェールでNレンジにも拘らずベルト走行用クラッチC2が係合して運転者に違和感を生じさせることが防止される。
【0057】
一方、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際にオンフェールの場合には、
図7に示されるように、そのロックアップ油圧制御バルブSLUの出力油圧Pslu によるフェール圧Pfailに基づいてフェール切替バルブ116が第2接続状態に切り替えられ、
図3、
図4から明らかなようにロックアップ油圧制御バルブSLUがONのフェールセーフモードと実質的に同じ状態になる。これにより、ロックアップクラッチLUが開放状態に保持され、NレンジからRレンジやDレンジに切り替えられる際に、ロックアップクラッチLUの係合に起因してエンジン12が回転停止させられてエンジンストールが生じることが防止される。また、第2油圧制御バルブSL2のOFF制御で油圧出力が停止されることにより、ベルト走行用クラッチC2が開放されて動力伝達を遮断するニュートラル状態になる。言い換えれば、フェールセーフモードのまま、第2油圧制御バルブSL2のOFF制御でニュートラル状態にすることと同じである。
【0058】
また、フェールセーフモードが実行される異常検出時にRレンジが選択されると、
図3に従ってON-OFFソレノイドバルブSC1がONで第1切替バルブ110が第2接続状態とされ、ON-OFFソレノイドバルブSC2がOFFで第2切替バルブ112が第1接続状態とされ、ON-OFFソレノイドバルブSC3がONで第3切替バルブ114が第2接続状態とされ、ロックアップ油圧制御バルブSLUがONとされ、第1油圧制御バルブSL1がONとされる。これにより、
図6に示されるように、後進用ブレーキB1が係合させられるとともに同期噛合式クラッチS1が係合させられて、ギヤ変速機構28を用いた後進走行が可能になる。その場合に、前記Nレンジでは、ロックアップ油圧制御バルブSLUが実際にオンフェールか否かに拘らずロックアップクラッチLUが開放状態に保持されるため、NレンジからRレンジへ切り替えられる際に、ロックアップクラッチLUの係合に起因してエンジン12が回転停止させられてエンジンストールが生じることを防止する、という効果が適切に得られる。
【0059】
なお、この実施例ではロックアップ油圧制御バルブSLUがオンフェールの可能性がある異常検出時にも、
図3に示される通常時のNレンジおよびRレンジがそのまま用いられるが、異常検出時に用いられるNレンジおよびRレンジとは別に通常時のNレンジおよびRレンジが定められても良い。
【0060】
以上、本発明の実施例を図面に基づいて詳細に説明したが、これはあくまでも一実施形態であり、本発明は当業者の知識に基づいて種々の変更、改良を加えた態様で実施することができる。
10:車両用動力伝達装置 12:エンジン(駆動力源) 14:トルクコンバータ(流体式伝動装置) 16:自動変速機 22:入力軸 24:ベルト式無段変速機 28:ギヤ変速機構(ギヤ式伝動装置) 30:出力軸 70:油圧制御回路 80:電子制御装置(制御装置) 110:第1切替バルブ 112:第2切替バルブ 114:第3切替バルブ 116:フェール切替バルブ LU:ロックアップクラッチ TP1:第1動力伝達経路 TP2:第2動力伝達経路 C1:前進用クラッチ(ギヤ前進用摩擦係合装置) C2:ベルト走行用クラッチ(ベルト走行用摩擦係合装置、前進用係合装置) B1:後進用ブレーキ(ギヤ後進用摩擦係合装置、後進用係合装置) S1:同期噛合式クラッチ(同期噛合式係合装置) SLU:ロックアップ油圧制御バルブ SL1:第1油圧制御バルブ SL2:第2油圧制御バルブ PL:ライン圧 Pfail:フェール圧 Plimp:退避走行用油圧 PD:Dレンジ圧 PR:Rレンジ圧 Pslu 、Psl1 、Psl2 :制御油圧