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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184386
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】スロットアレイアンテナ
(51)【国際特許分類】
   H01Q 13/22 20060101AFI20231221BHJP
   H01Q 13/02 20060101ALI20231221BHJP
   H01Q 15/12 20060101ALI20231221BHJP
   H01Q 13/10 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
H01Q13/22
H01Q13/02
H01Q15/12
H01Q13/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022161700
(22)【出願日】2022-10-06
(31)【優先権主張番号】22179696.4
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】000166247
【氏名又は名称】古野電気株式会社
(72)【発明者】
【氏名】肥野 明大
【テーマコード(参考)】
5J020
5J045
【Fターム(参考)】
5J020AA03
5J020AA07
5J020BA04
5J020BC04
5J020BC12
5J020BD04
5J020CA05
5J020DA02
5J020DA04
5J020DA05
5J045AA05
5J045AA13
5J045AA21
5J045AA26
5J045AB06
5J045CA02
5J045DA04
5J045FA00
5J045FA01
5J045HA01
5J045JA02
5J045LA01
5J045NA07
(57)【要約】
【課題】容易に製造可能なスロットアレイアンテナを実現する。
【解決手段】
放射板2とベース板1とを含むスロットアレイアンテナ4を提供する。放射板2は、電波を放射する複数のスロット22を有する第1面と、第1面の短編方向の両側が曲がったホーン形状を有する。放射板は、さらに第1面の長辺方向の両端において電波の放射方向と反対方向に曲がった突起である第1および第2接続部材25、26を有する。ベース板は、U字形状を有し、長辺方向の両端において第1および第2切欠部14、15を有する。そして、放射板2の第1および第2接続部材25、26がベース板1の第1および第2切欠部14、15に挿入される。
【選択図】 図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電波を放射する複数のスロットを有する第1面を有し、前記第1面の短編方向の両側が曲がってホーン形状をなす放射板と、
U字形状を有するベース板と、
を備え、
前記放射板は、前記第1面の長辺方向の両端に電波の放射方向と反対方向に曲がった突起である第1および第2接続部材を有し、
前記ベース板は、長辺方向の両端付近に第1および第2切欠部を有し、
前記放射板の前記第1および第2接続部材が前記ベース板の前記第1および第2切欠部に挿入された、
スロットアレイアンテナ。
【請求項2】
前記U字形状と前記放射板の前記第1面とで、前記電波が伝搬する導波管を形成する、請求項1記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項3】
前記第1および第2接続部材は、前記導波管内の前記電波の短絡部となる、請求項1に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項4】
前記第1および第2接続部材は、矩形状である、
請求項1に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項5】
前記接続部材の長辺の長さが、前記ベース板の前記U字形状の深さ以下である、請求項1から4のいずれかに記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項6】
前記ベース板は、前記第1切欠部の長辺方向の外側に第3切欠部を有し、第2切欠部の長辺方向の外側に第4切欠部を有する、
請求項1に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項7】
格子を有するグレーティング面と、長辺方向の両端に電波の放射方向と反対方向に曲がった第3および第4接続部材と、を有するグレーティング板と、
をさらに備え、
前記グレーティング板の前記第3および第4接続部材は、前記第3および第4切欠部に挿入された、
請求項6に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項8】
前記グレーティング板の前記格子は、ノイズ信号である垂直偏波を抑圧する、請求項7に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項9】
前記ベース板、前記放射板および前記グレーティング板は、互いに固定するための締結具が挿入される複数の孔を有する、請求項7又は8に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項10】
前記ベース板は電波を給電する給電点を有する、請求項9に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項11】
前記給電点は、前記ベース板の長辺方向の中央に位置する、請求項10に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項12】
前記複数のスロットの中心スロットの角度と給電点の距離が、同位相の電波を各スロットに給電する距離に固定された、請求項11に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項13】
前記放射板の前記第1面における前記複数のスロットの数は、奇数である、請求項1に記載のスロットアレイアンテナ。
【請求項14】
放射板の第1面に電波を放射する複数のスロットを形成し、
前記第1面の短編方向の両端を曲げてホーン状を形成し、
前記第1面の長辺方向の両端に電波の放射方向と反対方向に曲がった突起である第1および第2接続部材を形成し、
U字形状のベース板を形成し、
前記ベース板の両端の近傍に第1および第2切欠部を形成し、
前記放射板の前記第1および第2接続部材を前記ベース板の前記第1および第2切欠部に挿入する、
スロットアレイアンテナの組み立て方法。
【請求項15】
格子を有するグレーティング板を形成し、
前記グレーティング板の長辺方向の両端を電波の放射方向と反対方向に曲げて第3および第4接続部材を形成し、
前記ベース板の両端近傍に、それぞれ第3および第4切欠部を形成し、
前記グレーティング板の第3および第4接続部材をそれぞれ前記第3および第4切欠部に挿入する、
請求項14に記載のスロットアレイアンテナの組み立て方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に船舶用レーダのスロットアレイアンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の船舶用アンテナでは、指向性を向上させるために、複数のスロットを有する方形導波管を用いたスロットアレイアンテナや複数のパッチを備えるパッチアレイアンテナ(以下、パッチアンテナとも称する)を用いていた。パッチアンテナは、基板上に作られるため安価で製造が容易であるが、スロットアレイアンテナに比べて損失が大きく利得が低い。
【0003】
スロットアレイアンテナは、導波管にスロットが設けられたアンテナである。ここで、導波路の端部には蓋が必要である。一般的に共振形の方式では短絡板(金属板)を用い、進行波形の方式ではターミネータ(電波吸収体)を用いる。
【0004】
導波管は矩形管であるため、一般に蓋は別途製造して取り付ける必要がある。また、導波路を高精度に研削してスロット加工する必要がある。蓋は別途製造して装着することから、導波路を高精度に切断してスロット加工を行う必要があり、製造には高度な技術と多くの時間を要する。
【0005】
このように、導波管スロットアレイアンテナは、損失が小さく、利得が高いが、高精度な処理が必要であり、時間的および費用的コストがかかる。そこで、矩形導波路よりも加工が容易で、パッチアンテナよりも性能の良いアンテナが期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5219139号
【0007】
より簡易な方法でアンテナを作成すべく、特許文献1のように、複数の金属板(金属シート)を加工して作成したアンテナが開発されてきた。しかし、この金属板から作られたホーンは、導波管に連結する必要があり、その連結には、ネジ等の多くの締結部材を使用しなければならず、依然として容易に作成することは困難であった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本願発明は、創作が容易なスロットアレイアンテナを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、放射板とベース板とを含むスロットアレイアンテナを提供する。放射板は、電波を放射する複数のスロットを有する第1面と、第1面の短編方向の両側が曲がってホーン形状を形成する。また、放射板は、第1面の長辺方向の両端において電波の放射方向と反対方向に曲がった突起である第1および第2接続部材を有する。ベース板は、U字形状を有し、長辺方向の両端において第1切欠部と第2切欠部を有する。そして、放射板の第1および第2接続部材がベース板の第1および第2切欠部に挿入される。この構成により、製造が容易なスロットアレイアンテナを提供できる。
【0010】
さらに、U字形状と放射板の第1面とで、電波が伝搬する導波管を形成してもよい。この構成により、導波管を容易に構成できる。
【0011】
さらに、第1および第2接続部材は、導波管内の電波の短絡部として作用してもよい。この構成により、効率的に励振させることができる。
【0012】
さらに、第1および第2接続部材は、矩形状でもよい。
【0013】
さらに、接続部材の長辺の長さが、ベース板のU字形状の深さ以下でもよい。この構成により、接続部材の長さをU字形状の深さに厳密に合わせる必要がなく、作りやすい構造で電波を導波管に閉じ込めることができる。
【0014】
さらに、ベース板は、第1切欠部の長辺方向の外側に第3切欠部を有し、第2切欠部の長辺方向の外側に第4切欠部をさらに有してもよい。
【0015】
さらに、格子を有するグレーティング面と、長辺方向の両端に電波の放射方向と反対方向に曲がった第3および第4接続部材と、を有するグレーティング板と、をさらに備え、グレーティング板の第3および第4接続部材は、第3および第4切欠部に挿入されてもよい。この構成により、グレーティング板を容易に取り付けることができる。
【0016】
さらに、グレーティング板の格子は、ノイズ信号である垂直偏波を抑圧してもよい。
【0017】
さらに、ベース板、放射板およびグレーティング板は、互いに固定するための締結具が挿入される複数の孔を有してもよい。
【0018】
さらに、ベース板は電波を給電する給電点を有してもよい。
【0019】
さらに、給電点は、ベース板の長辺方向の中央に位置してもよい。このような構成によって、アンテナの作成がより容易になる。
【0020】
さらに、放射板の第1面における複数のスロットの数は、奇数であってもよい。
【0021】
さらに、複数のスロットの中心スロットの角度と給電点の距離が、同位相の電波を各スロットに給電する距離に固定されてもよい。このような構成により、それぞれのスロットから同位相の電波が供給される。
【0022】
本開示の別の態様では、スロットアレイアンテナを組み立てる方法が提供される。当該組み立て方法では、放射板の第1面に電波を放射する複数のスロットを形成し、第1面の短編方向の両端を曲げてホーン状を形成し、第1面の長辺方向の両端に電波の放射方向と反対方向に曲がった突起である第1および第2接続部材を形成し、U字形状のベース板を形成し、ベース板の両端の近傍に第1および第2切欠部を形成し、放射板の第1および第2接続部材をベース板の第1および第2切欠部に挿入する。
【0023】
本発明のスロットアレイアンテナは、プレス加工によって製造された金属板の組み合わせからなる。金属シートの組立は、放射線およびグレーティング板に接続部材を設け、ベース板に対応する切欠部を設けることによって容易になる。これにより、放射板とグレーティング板とがベース板に組み付けられ、電波を放射するスロットアレイアンテナが形成される。このように、従来のスロットアレイアンテナに比べて製造が容易であり、従来のパッチアンテナに比べて利得が高いアンテナを実現する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本課維持の図面は実施形態の理解を容易にするものであり、開示の構成や結果に限定することを意図しない。ここで、同じ構成は、全体を通して同様の符号によって示される。
図1図1は、スロットアレイアンテナのベース板、放射板、およびグレーティング板を分離した状態を表す。
図2図2は、スロットアレイアンテナにおける放射板とベース板との結合の構造である。
図3図3は、スロットアレイアンテナにおけるグレーティング板とベース板との結合構造である。
図4図4はスロットアレイアンテナの全体図である。
図5図5は、スロットアレイアンテナの断面図を示す。
図6図6は、電波の放射に関連する放射パターンである。
図7図7は、スロットアレイアンテナとパッチアンテナとの利得の比較を示すグラフである。
図8図8は、スロットアレイアンテナを組み立てる方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、他の例示的なした実施形態または特徴に限定されず、本明細書に提示する技術的思想の範囲内で種々の変更が可能である。以下の詳細な説明では、一部で添付図面を参照する。
【0026】
本発明は、本明細書に記載および図面に示されている範囲において、多種多様な異なる構成で配置、置換、結合、分離、および設計することができる。
【0027】
図1は、スロットアレイアンテナ(後述の図4に示す)のベース板1、放射板2およびグレーティング板3を示す。スロットアレイアンテナは、ベース板1と、放射板2と、グレーティング板3とを含む。
【0028】
ベース板1は、図1に示すように、U字状をなす第1、第2および第3の面11、12、13を有する。また、ベース板1は、端部近傍にそれぞれ第1および第2の切欠部14、15を有する。具体的には、第1の切欠部14は、ベース板1の第1および第3の面11、13のそれぞれの端の近傍にスリットとして形成される。同様に、第2切欠部15は、第1の切欠部14と反対側において、ベース板1の第1面および第3面11、13のそれぞれの端の近傍にスリットとして形成されている。各スリットの幅は、放射板2の厚さ以上である。
【0029】
また、ベース板1は、端部近傍にそれぞれ第3および第4の切欠部16、17を有する。具体的には、第3切欠部16は、ベース板1の第1および第3面11、13のそれぞれの端の近傍にスリットとして形成される。同様に、第4切欠部17は、ベース板1の第1面11および第3面13のそれぞれの端の近傍にスリットとして形成される。各スリットの幅は、放射板2の厚さ以上である。
【0030】
ベース板1の端近傍に配置された第1および第3の切欠部14、16は、互いの間に所定の間隙を有し、第3の切欠部16はベース板1のより端側に配置され、所定の間隙を空けて第1の切欠部14が内側に配置される。同様に、ベース板1の長辺方向の反対側の端近傍に位置する第2および第4の切欠部15、17は、第4の切欠部17がベース板1のより端側に位置し、所定の間隙を空けて第2の切欠部15が内側に配置される。
【0031】
放射板2は、電波を放射する複数のスロット22を有する第1面21と、ホーン形状を形成する第2および第3の面23、24とを有する。ベース板1の第1、第2、第3の面11、12、13および放射板の第1面21は導波路を形成する。このようにして形成された導波路は、細長い矩形導波路となる。ベース板1は、電波をスロットアレイアンテナに給電する給電点20をさらに含む。給電点20は、ベース板1の中心に位置している。具体的には、給電点20は、ベース板1の第3の面13の中心に位置する。放射板2の第1の面21の複数のスロット22は、奇数のスロットを有し、各スロットは所定の角度で形成されている。複数のスロット22の中心スロットのスロット角度および給電点20の距離は、同位相の電波を各スロットに給電するように予め定められている。
【0032】
また、放射板2は、放射板2の第1面21の端部に、電波の放射方向と反対方向に屈曲した一つの接続部材25および別の接続部材26をそれぞれ有する。放射板2の接続部材25、26は、矩形の形状を有する。他の実施形態では、放射板2の接続部材25、26は、ベース板と接合できる任意の形状、例えば正方形、楕円形、棒状の形状を有することができる。放射板2の接続部材25、26の長さは、ベース板1のU字状の深さ以下である。
【0033】
グレーティング板3は、グレーティング面31の両端にそれぞれ電波の放射方向と反対方向に屈曲した接続部材32、33とを有する。グレーティング板3の接続部材32、33は、矩形の形状を有する。他の実施形態では、グレーティング板3の接続部材32、33は、ベース板と接合できる任意の形状であればよく、例えば正方形、楕円形、棒状の形状を有することができる。グレーティング板3の接続部材32、33の長さは、ベース板1のU字形状の深さ以上である。
【0034】
ベース板1、放射板2、およびグレーティング板3は、所望のデザインを形成するために曲げられかつ打ち抜かれた金属板である。ベース板1、放射板2、およびグレーティング板3は、同じ金属から作られてもよいし、異なる金属から作られてもよい。また、ベース板1、放射板2、およびグレーティング板3は、同じ厚さを有する。
【0035】
図2は、放射板2とベース板1との結合の構造を示す。放射板2は、放射板2の接続部材25、26、並びにベース板1の第1および第2切欠部14、15を介してベース板1に連結されている。放射板2の接続部材25と接続部材26との間の離間距離は、ベース板1の第1の切欠部14と第2の切欠部15との間の離間距離に等しい。
【0036】
放射板2の接続部材25、26は、それぞれ、第1および第2の切欠部14、15に挿入できる。放射板2の接続部材25を、ベース板1の第1および第3の面11、13の端における第1切欠部14(スリット)にスライドさせることで挿入される。同様に、放射板2の接続部材26を、ベース板1の第1および第3の面11、13の端における第2切欠部15(スリット)にスライドさせることで挿入される。放射板2の接続部材25、26は、導波管中の電波に対して短絡部として作用する。
【0037】
図3は、グレーティング板3とベース板1との結合の構造を示す。グレーティング板3は、接続部材32、33、並びにベース板1の第3および第4切欠部16、17を介してベース板1に連結されている。グレーティング板3の接続部材32、33間の離間距離は、ベース板1の第3および第4切欠部16、17間の離間距離に等しい。グレーティング板3の接続部材32と接続部材33との間の離間距離は、放射板2の接続部材25と接続部材26との間の離間距離よりも大きい。また、ベース板1の第3の切欠部16と第4の切欠部17との離間距離は、ベース板1の第1の切欠部14と第2の切欠部15との離間距離よりも大きい。
【0038】
グレーティング板3の接続部材32、33は、第3および第4の切欠部16、17にそれぞれに挿入され、電波の放射のためのスロットアレイアンテナを組み立て、電波の放射に関連するノイズ信号を抑圧する。ノイズ信号は、垂直偏波である。グレーティング板3の接続部材32を、ベース板1の第1および第3の面11、13の端の第3切欠部16(スリット)にスライドして挿入させることができる。同様に、グレーティング板3の接続部材33を、ベース板1の第1および第3の面11、13の端の第4切欠部17(スリット)にスライドして挿入させることができる。グレーティング板3は、交差偏波抑制に利用される。
【0039】
ベース板1、放射板2およびグレーティング板3の各々は、相互に固定するための留め具を受けるための複数の孔19、27、34をそれぞれ有する。ベース板1、放射板2およびグレーティング板3を互いに固定するために使用される締結具の例は、ねじ、ナットおよびボルトのようなねじ付き締結具を含むが、これらに限定されない。ベース板1は、それぞれベース板1の第1および第3の面11、13に隣接しかつ垂直な第4および第5の面18a、18bを有する。第4および第5の面18a、18bは、複数の孔19を含む。放射板2の第1の面21は、複数の孔27を含む。
【0040】
図4は、組み立てられたスロットアレイアンテナ4を示す。ベース板1、放射板2およびグレーティング板3は、図2および3で説明したように組み立てられ、スロットアレイアンテナ4を形成する。スロットアレイアンテナ4は、船舶の航行に使用されるレーダ装置のために使用される。放射板2は、図2で説明したように、放射板2の第1および第2の切欠部14、15、並びに接続部材25、26を介してベース板1に組み付けられる。グレーティング板3は、図3で説明したように、グレーティング板3の第3および第4の切欠部16、17、並びに接続部材32、33を介してベース板1に組み付けられる。ベース板1、放射板2、グレーティング板3は、複数の孔19、27、34を通して締結具を利用して互いに固定される。
【0041】
放射板2は、電波の短絡部として機能する接続部材25、26を有するので、スロットアレイアンテナ4を共振型として利用することができる。吸収体が放射板2に取り付けられている場合、スロットアレイアンテナ4は進行波型としても利用できる。
【0042】
ベース板1の第1、第2、第3の面11、12、13と放射板2の第1面21とで形成される導波管の大きさ(すなわち高さ)は、電波の高次モードが発生しない高さである。ベース板は、ベース板の第1面11と第3面13の外側を曲げることで(以下、曲げ部という)、更に第4および第5の面18a、18bを有する。第4および第5の面18a、18bは、放射板2と接触する面となる。また、曲げ部により、第4および第5の面18a、18bと放射板2が接触する面を小さくすることができるため、導波管の高さがスロットの高さより短くても、ベース板にスロットの切り欠けを設ける必要がなく、スロットと干渉せずに電波を送受信することができる。なお、当該ベース板1における第4および第5の面18a、18bの曲率はスロットとの干渉に応じて適宜調整することができる。その結果、従来のスロットアレイアンテナはスロットの面以外にもスロットの切り欠けが必要であったが、曲げ部のスロットを切断する必要がなく、加工が容易になる。このように、本開示のスロットアレイアンテナ4では、組み立てが容易であっても構造が安定する。
【0043】
図5は、スロットアレイアンテナ4の断面図を示す。給電点20に位置する給電線5を介して電波が給電される。スロットアレイアンテナ4は、接続部材25、26を介して両端が短絡された共振スロットアレイアンテナであり、複数のスロット22のスロット数は奇数であり、給電点20の近傍にもスロットが設けられている。電波の同位相で各スロットに給電しながら所望の重量が得られるように、中央スロットのスロット角度と給電点20の距離が調整される。図6は、電波の放射に関連する放射パターン6の例を示す。
【0044】
図7は、スロットアレイアンテナ4とパッチアンテナ(従来)との利得の比較を示すグラフである。グラフでは、本発明のスロットアレイアンテナ4の利得が、同一サイズの従来のパッチアンテナの利得に比べて高い。
【0045】
図8は、スロットアレイアンテナを組み立てるための方法8を示すフローチャートを示す。なお、スロットアレイアンテナを組み立てることができれば、この組み立ての順序は問わない。
【0046】
ステップ81において、電波を放射する複数のスロット22を有する第1面21と、ホーン状をなす第2および第3の面23、24と、第1面21の両端において電波の放射方向とは反対方向に屈曲した接続部材25、26とを有する放射板2を作成する。
【0047】
ステップ82では、U字形状をなす第1、第2および第3の面11、12、13と、端部近傍の第1および第2の切欠部14、15とを有するベース板1を作成する。
【0048】
ステップ83では、グレーティング板3を作成する。この際、グレーティング板3のグレーティング面31の両端において、電波の放射方向と反対方向に屈曲した接続部材32、33を形成する。また、ベース板1の端部近傍に、それぞれ第3および第4の切欠部16、17を形成する。
【0049】
ステップ84では、放射板2の接続部材25、26をそれぞれ第1および第2の切欠部14、15に挿入して、スロットアレイアンテナ4を組み立てる。電波は、ホーン形状の間のスロットから放射される。
【0050】
ステップ85では、グレーティング板3の接続部材32および接続部材33をそれぞれ第3および第4の切欠部16、17に挿入し、スロットアレイアンテナ4を組み立てる。
【符号の説明】
【0051】
1 ベース板
2 放射板
3 グレーティング板
4 スロットアレイアンテナ
14―17 第1~第4切欠部
25、26 放射板の接続部材
32、33 グレーティング板の接続部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8