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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184415
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】スライド式切換弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 11/065 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
F16K11/065 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023017692
(22)【出願日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2022097863
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000143949
【氏名又は名称】株式会社鷺宮製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001243
【氏名又は名称】弁理士法人谷・阿部特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 純一
(72)【発明者】
【氏名】中野 誠一
(72)【発明者】
【氏名】笠井 宣
【テーマコード(参考)】
3H067
【Fターム(参考)】
3H067AA15
3H067CC32
3H067CC33
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD32
3H067EA02
3H067EA05
3H067EA24
3H067EC15
3H067FF11
3H067GG23
3H067GG24
(57)【要約】
【課題】弁座部の固定手段を工夫することにより、弁座部の位置決めのための加工コストを抑制し、弁体と弁座部とのシール性を向上させ得るスライド式切換弁を提供することである。
【解決手段】弁本体2と、弁体4と、弁座部3と、を備え、弁本体2の固定面2bfにおける、軸線L方向の一端側、及び、軸線Lと直交する方向の一対の側方の少なくとも一方には、固定面2bfから垂直方向に立設し、弁座部3と当接可能なガイド部2cg,2bgがそれぞれ設けられ、弁座部3は、ガイド部2cg,2bgに位置決めされた後、接着面34が固定面2bfに接着固定され、ガイド部2cg,2bg及び弁座部3の少なくとも一方の対向面には、接着面34から摺接面33上へと接着剤Adがはみ出さないように、接着剤溜め部61~66が形成される。これにより、弁体4と弁座部3とのシール性を向上させることができる。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に沿って延在する中空筒状の弁本体と、
前記弁本体の内部に軸線方向に沿ってスライド自在に設けられた弁体と、
前記弁本体の固定面に固定されて、前記弁体が摺接する板状の弁座部と、
を備えたスライド式切換弁であって、
前記弁座部は、軸線方向に並ぶ複数の弁ポートと、前記弁体が摺接する摺接面と、前記摺接面の反対側に位置する接着面と、を有し、
前記弁本体の前記固定面における、軸線方向の一端側、及び、軸線と直交する方向の一対の側方の少なくとも一方には、前記固定面から垂直方向に立設し、前記弁座部と当接可能なガイド部がそれぞれ設けられ、
前記弁座部は、前記ガイド部に位置決めされるとともに、前記接着面が前記固定面に接着固定され、
前記ガイド部及び前記弁座部の少なくとも一方の対向面には、前記接着面から前記摺接面上へと接着剤がはみ出さないように、接着剤溜め部が形成されることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項2】
前記接着剤溜め部の全容積が、前記弁座部の前記固定面への固定に用いられる接着剤の塗布量以上であることを特徴とする請求項1に記載のスライド式切換弁。
【請求項3】
軸線と直交する方向において、
前記ガイド部及び前記弁座部の少なくとも一方の対向面に形成される前記接着剤溜め部は、前記ガイド部と前記弁座部との最大取り付け間隙より大きい幅を有し、前記接着剤溜め部の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤が配置されることを特徴とする請求項2に記載のスライド式切換弁。
【請求項4】
軸線方向において、
前記ガイド部及び前記弁座部の少なくとも一方の対向する接着面に形成される前記接着剤溜め部は、前記ガイド部と前記弁座部との取り付け間隙より大きい幅を有し、前記接着剤溜め部の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤が配置されることを特徴とする請求項2に記載のスライド式切換弁。
【請求項5】
前記ガイド部は、軸線方向の一端側、及び、軸線と直交する方向の一対の側方の両側に設けられ、
前記固定面と、前記一対の側方の両側に設けられる前記ガイド部と、を接続する接着剤溜め部の隅部には、前記軸線方向に沿って延在する隅Rが設けられていることを特徴とする請求項3に記載のスライド式切換弁。
【請求項6】
前記接着剤溜め部の前記弁本体の軸心から最も離れた最離間半径を有する位置における、前記隅Rの曲率半径は、前記弁座部の板厚の0.5倍以上、かつ、前記最離間半径以下であることを特徴とする請求項5に記載のスライド式切換弁。
【請求項7】
前記軸心から最も離れた最離間半径を有する位置において、前記隅Rの曲率半径は、前記最離間半径であることを特徴とする請求項6に記載のスライド式切換弁。
【請求項8】
前記隅Rは、少なくとも前記固定面に対して窪んだ領域を有することを特徴とする請求項6に記載のスライド式切換弁。
【請求項9】
軸線方向に沿って延在する中空筒状の弁本体と、
前記弁本体の内部に軸線方向に沿ってスライド自在に設けられた弁体と、
前記弁本体の固定面に固定されて、前記弁体が摺接する板状の弁座部と、
を備えたスライド式切換弁であって、
前記弁座部は、軸線方向に並ぶ複数の弁ポートと、前記弁体が摺接する摺接面と、前記摺接面の反対側に位置する接着面と、を有し、
前記弁本体の前記固定面における、軸線方向の一端側、及び、軸線と直交する方向の一対の側方の少なくとも一方には、前記固定面から垂直方向に立設し、前記弁座部と当接可能なガイド部がそれぞれ設けられ、
前記弁座部は、前記ガイド部に位置決めされるとともに、前記接着面が前記固定面に接着固定され、
前記ガイド部に対向する前記弁体の外周面には、前記接着面から前記摺接面上へとはみ出した接着剤が前記弁体と干渉しないように、接着剤回避空間が形成されることを特徴とするスライド式切換弁。
【請求項10】
軸線と直交する方向において、
前記ガイド部に対向する前記弁体の外周面に形成される前記接着剤回避空間は、前記摺接面上の接着剤のはみ出し幅より大きく、前記弁体から突出するとともに、前記ガイド部と摺接する摺接部により形成されることを特徴とする請求項9に記載のスライド式切換弁。
【請求項11】
軸線方向において、
前記ガイド部に対向する前記弁体の外周面に形成される前記接着剤回避空間は、前記摺接面上の接着剤のはみ出し幅より大きく、前記弁体から突出するとともに、前記ガイド部と当接する突出部により形成されることを特徴とする請求項9に記載のスライド式切換弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、弁座部と当接可能なガイド部を備えるスライド式切換弁に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、冷凍サイクルシステムにおける成績係数(COP)の向上の目的のため、冷凍サイクルシステムの各機器(スライド式切換弁)におけるシール性の向上が要望されていた。
【0003】
ここで、例えば、特許文献1(特に、第6頁第20行-第7頁第9行及び図5a参照)には、スライド式切換弁(以下、「従来のスライド式切換弁」という)であって、弁座部及び弁座受部の位置決め手段として、弁座部の下面に突出する凸部と、弁座受部の上面に窪む凹溝と、を設け、凹溝内に凸部を嵌合させることにより、弁座部及び弁座受部を位置決めするものが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】中国特許出願公開第101614288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1では、弁座部に凸部を設けるため、弁座部への加工が複雑になるとともに、凸部の加工により、板状の弁座部の上面に反りや歪みが生じ、弁体とのシール性が損なわれるおそれがあった(以下、「従来の第1の問題点(弁座部の位置決め手段により生じる問題)」という)。
【0006】
また、特許文献1(特に、第7頁第20行-第8頁第1行参照)では、位置決めされた弁座部及び弁座受部との固定手段として、溶接固定を採用しているが、溶接固定による熱影響で、弁座部の表面が変形するため、この変形した弁座部の表面に対して平面加工を施す必要があった(以下、「従来の第2の問題点(弁座部の固定手段により生じる問題)」という)。
【0007】
本発明の目的は、このような課題に鑑みてなされたものであり、弁座部の固定手段を工夫することにより、弁座部の位置決めのための加工コストを抑制し、弁体と弁座部とのシール性を向上させ得るスライド式切換弁を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、軸線方向に沿って延在する中空筒状の弁本体と、前記弁本体の内部に軸線方向に沿ってスライド自在に設けられた弁体と、前記弁本体の固定面に固定されて、前記弁体が摺接する板状の弁座部と、を備え、前記弁座部は、軸線方向に並ぶ複数の弁ポートと、前記弁体が摺接する摺接面と、前記摺接面の反対側に位置する接着面と、を有し、前記弁本体の前記固定面における、軸線方向の一端側、及び、軸線と直交する方向の一対の側方の少なくとも一方には、前記固定面から垂直方向に立設し、前記弁座部と当接可能なガイド部がそれぞれ設けられ、前記弁座部は、前記ガイド部に位置決めされるとともに、前記接着面が前記固定面に接着固定され、前記ガイド部及び前記弁座部の少なくとも一方の対向面には、前記接着面から前記摺接面上へと接着剤がはみ出さないように、接着剤溜め部が形成されるスライド式切換弁である。
【0009】
また、上記スライド式切換弁であって、前記接着剤溜め部の全容積が、前記弁座部の前記固定面への固定に用いられる接着剤の塗布量以上であるものとしてもよい。
【0010】
また、上記スライド式切換弁であって、軸線と直交する方向において、前記ガイド部及び前記弁座部の少なくとも一方の対向面に形成される前記接着剤溜め部は、前記ガイド部と前記弁座部との最大取り付け間隙より大きい幅を有し、前記接着剤溜め部の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤が配置されるものとしてもよい。
【0011】
また、上記スライド式切換弁であって、軸線方向において、前記ガイド部及び前記弁座部の少なくとも一方の対向する接着面に形成される前記接着剤溜め部は、前記ガイド部と前記弁座部との取り付け間隙より大きい幅を有し、前記接着剤溜め部の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤が配置されるものとしてもよい。
【0012】
また、上記スライド式切換弁であって、前記ガイド部は、軸線方向の一端側、及び、軸線と直交する方向の一対の側方の両側に設けられ、前記固定面と、前記一対の側方の両側に設けられる前記ガイド部と、を接続する接着剤溜め部の隅部には、前記軸線方向に沿って延在する隅Rが設けられているものとしてもよい。
【0013】
また、上記スライド式切換弁であって、前記接着剤溜め部の前記弁本体の軸心から最も離れた最離間半径を有する位置における、前記隅Rの曲率半径は、前記弁座部の板厚の0.5倍以上、かつ、前記最離間半径以下であるものとしてもよい。
【0014】
また、上記スライド式切換弁であって、前記軸心から最も離れた最離間半径を有する位置において、前記隅Rの曲率半径は、前記最離間半径であるものとしてもよい。
【0015】
また、上記スライド式切換弁であって、前記隅Rは、少なくとも前記固定面に対して窪んだ領域を有するものとしてもよい。
【0016】
上記課題を解決するために、軸線方向に沿って延在する中空筒状の弁本体と、前記弁本体の内部に軸線方向に沿ってスライド自在に設けられた弁体と、前記弁本体の固定面に固定されて、前記弁体が摺接する板状の弁座部と、を備え、前記弁座部は、軸線方向に並ぶ複数の弁ポートと、前記弁体が摺接する摺接面と、前記摺接面の反対側に位置する接着面と、を有し、前記弁本体の前記固定面における、軸線方向の一端側、及び、軸線と直交する方向の一対の側方の少なくとも一方には、前記固定面から垂直方向に立設し、前記弁座部と当接可能なガイド部がそれぞれ設けられ、前記弁座部は、前記ガイド部に位置決めされるとともに、前記接着面が前記固定面に接着固定され、前記ガイド部に対向する前記弁体の外周面には、前記接着面から前記摺接面上へとはみ出した接着剤が前記弁体と干渉しないように、接着剤回避空間が形成されるスライド式切換弁である。
【0017】
また、上記スライド式切換弁であって、軸線と直交する方向において、前記ガイド部に対向する前記弁体の外周面に形成される前記接着剤回避空間は、前記摺接面上の接着剤のはみ出し幅より大きく、前記弁体から突出するとともに、前記ガイド部と摺接する摺接部により形成されるものとしてもよい。
【0018】
また、上記スライド式切換弁であって、軸線方向において、前記ガイド部に対向する前記弁体の外周面に形成される前記接着剤回避空間は、前記摺接面上の接着剤のはみ出し幅より大きく、前記弁体から突出するとともに、前記ガイド部と当接する突出部により形成されるものとしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、弁座部の固定手段を工夫することにより、弁座部の位置決めのための加工コストを抑制し、弁体と弁座部とのシール性を向上させ得るスライド式切換弁を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスライド式切換弁の断面図である。
図2】本発明の冷凍サイクルシステムを示す図である。
図3図1に示される弁本体の断面図であり、(a)は、弁本体の全体図、(b)は、(a)に示されるIIIb-IIIb線に沿った断面図、(c)は、(a)に示されるIIIc-IIIc線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図4図1に示される弁本体に弁座部を取り付ける工程を説明する図であり、(a)は、図1に示される弁座部の全体図、(b)は、(a)に示される矢印IVb方向から見た矢視図、(c)は、図3(a)に示される弁本体に(a)に示される弁座部を取り付けた全体図、(d)は、(c)に示されるIVd-IVd線に沿った断面図を、それぞれ表す。
図5】第1の実施形態における弁本体及び弁座部に対して、弁体の摺接状態を説明する図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるVb-Vb線に沿った断面図、(c)は、比較例における(a)に示される破線Vcで囲まれた領域の拡大図、(d)は、比較例における(b)に示される破線Vdで囲まれた領域の拡大図を、それぞれ表す。
図6】第1の実施形態における図5(c)に対応する拡大図であり、(a)は、第1の実施形態の様態1-1、(b)は、第1の実施形態の様態1-2、(c)は、第1の実施形態の様態1-3を、それぞれ表す。
図7】第1の実施形態における図5(d)に対応する拡大図であり、(a)は、第1の実施形態の様態2-1、(b)は、第1の実施形態の様態2-2、(c)は、第1の実施形態の様態2-3を、それぞれ表す。
図8】第1の実施形態における図5(b)に対応する拡大図であり、(a)は、第1の実施形態の様態3-1、(b)は、(a)に示される破線VIIIbで囲まれた領域の拡大図、(c)は、(b)に対応する第1の実施形態の様態3-2を、それぞれ表す。
図9】第1の実施形態における図8(a)に対応する拡大図であり、(a)は、第1の実施形態の様態4-1、(b)は、(a)に示される破線IXbで囲まれた領域の拡大図、(c)は、(b)に対応する第1の実施形態の様態4-2を、それぞれ表す。
図10】第2の実施形態における弁本体及び弁座部に対して、弁体の摺接状態を説明する図であり、(a)は、全体図、(b)は、(a)に示されるXb-Xb線に沿った断面図、(c)は、第2の実施形態における(a)に示される破線Xcで囲まれた領域の拡大図、(d)は、第2の実施形態におけるにおける(b)に示される破線Xdで囲まれた領域の拡大図を、それぞれ表す。
図11】第2の実施形態における弁体の斜視図であり、(a)は、上方斜視図、(b)は、下方斜視図を、それぞれ表す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について、図1から図11を参照しながら詳細に説明する。ただし、本発明は本実施形態の態様に限定されるものではない。
【0022】
<用語について>
本明細書および特許請求の範囲の記載において、「左」、「右」、「上」、「下」とは、図1図2図3(a)、図4(a),(c)、図5(a),(c)、図6図10(a),(c)に示される方向を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「一端側」、「他端側」とは、「軸線方向の左側(X軸方向のマイナス側)」、「軸線方向の右側(X軸方向のプラス側)」をそれぞれ示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「側方」とは、「軸線と直交する方向(Y軸方向)」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「一側方」、「他側方」とは、「Y軸方向のプラス側」、「Y軸方向のマイナス側」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「垂直方向」とは、「Z軸方向」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「水平方向」とは、「XY平面方向」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「最大取り付け間隙」とは、「軸線Lと直交する方向における、一対の側方ガイド部と弁座部とのそれぞれの取り付け間隙を合計した値」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「凹型表面」とは、「下方に窪んだ表面」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「最離間半径」とは、「弁本体の軸心から最も離れた半径」を示す。本明細書および特許請求の範囲の記載において、「最離間半径位置」とは、「弁本体の軸心から最も離れた半径を有する位置」を示す。
【0023】
(第1の実施形態)
<スライド式切換弁について>
図1を用いて、第1の実施形態のスライド式切換弁100について説明する。スライド式切換弁100は、中空筒状のハウジング1、中空筒状の弁本体2、弁本体2に設けられ、軸線L方向に並ぶ複数の弁ポートを有する弁座部3、弁本体2の内部である弁室2aにスライド自在に設けられる弁体4、弁体4をスライド駆動する駆動部5、から主に構成される。以下、スライド式切換弁100のそれぞれの構成を順に説明する。ここで、図中の軸線Lは、ハウジング1、弁本体2、駆動部5の中心軸である。なお、本実施形態におけるスライド式切換弁100は、説明のために、四方切換弁とするものであるが、これに限らず、例えば、二方弁や三方切換弁であってもよい。
【0024】
ハウジング1は、アルミ製の材料からなり、有底筒状に形成される。ハウジング1において、左側壁には、入口経路1dが形成され、右側壁には、弁本体2を挿入するための挿入口1aが形成される。また、ハウジング1の底壁には、複数の円筒状の流路として、第1経路1e、出口経路1s、第2経路1cが、軸線L方向に沿って順に形成される。ここで、詳細は後述するが、入口経路1d及び出口経路1sは、圧縮機200(図2参照)の吐出口及び吸入口にそれぞれ接続され、第1経路1e及び第2経路1cは、凝縮器及び蒸発器の何れか一方にそれぞれ接続される。
【0025】
弁本体2は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製の材料からなり、軸心Oを有する有底筒状に形成され、内周壁2b(図3(a)参照)、一端側壁部2c(図3(a)参照)、及び、他端側開口部2d(図3(a)参照)を備え、内部に弁室(弁本体の内部)2aが画定される。弁本体2の一端側壁部2cには、弁室2aに連通する入口ポート20が形成される。また、弁本体2の下方の内周壁2bには、水平方向に沿って平坦な固定面2bf(図3(a)参照)が形成されており、この固定面2bfには、複数の円筒状の流路からなる、第1接続流路21、出口接続流路22、第2接続流路23が、軸線L方向に沿って順に形成される。ここで、入口ポート20及び出口接続流路22は、入口経路1d及び出口経路1sにそれぞれ接続され、第1接続流路21及び第2接続流路23は、第1経路1e及び第2経路1cにそれぞれ接続される。さらに、弁本体2の右側の端部には、金属製の筒状の下蓋24がインサート成形にて固定される。詳細は後述するが、この下蓋24には、隔壁部材54にインサート成形にて固定された上蓋25が、溶接等により固定される。加えて、弁本体2の外周壁及びハウジング1の内周壁のいずれかに、軸線L方向に沿って、所定間隔で複数の溝部Gに配置されたOリング26を備える。よって、弁本体2が、ハウジング1の挿入口1aより、ハウジング1の内部に挿入され、C型形状の止め輪27により、上蓋25を介してハウジング1に固定された際、Oリング26により、弁本体2とハウジング1との間の、入口経路1d、第2経路1c、出口経路1s、第1経路1e、ハウジング1の外側(大気)の各間がシールされる。なお、詳細は後述するが、弁本体2に弁座部3は接着固定されている。
【0026】
弁座部3は、薄型金属板からなり、弁本体2の固定面2bf(図3(a)参照)に接着固定される。この弁座部3は、第1接続流路21に連通する第1ポート30、出口接続流路22に連通する出口ポート31、第2接続流路23に連通する第2ポート32がそれぞれ軸線L方向に所定の間隔を空けて形成される。第1ポート30、出口ポート31、及び、第2ポート32は、第1接続流路21、出口接続流路22、第2接続流路23よりも内径の寸法が小さい円筒状に形成される。また、弁座部3における弁室2aに対向する面は、摺接面33を構成する。
【0027】
弁体4は、主に、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製の材料からなり、椀状の容器を裏返した形状である弁体本体40と、右側の端部から軸線L方向に突出する連結部44と、を備える。この弁体4は、弁座部3の摺接面33に対して、下面を当接させながら摺接し、弁座部3との間で空間を形成する。
【0028】
弁体本体40は、弁座部3の摺接面33と対向し、軸線L方向に延びる長円形状の開口縁部40aと、開口縁部40aから弁室2a側に突出する椀状部(弁体の外周面)40bと、椀状部40bの内部に設けられる椀状凹部40cと、を備える。
【0029】
開口縁部40aは、摺接面33に摺接可能なシール部sを構成する。椀状部40bの頂部と弁本体2の内周壁との間には、ばね部材42が挟持され、このばね部材42により、弁体本体40が弁座部3に付勢され、椀状部40bの外部の弁室2aと椀状部40bの内部の椀状凹部40cとの間はシールされる。
【0030】
連結部44は、駆動部5に連結されるようにフック状に形成される。詳細は後述するが、連結部44は、軸材59を介して、駆動部5と連結される。
【0031】
駆動部5は、弁体4をスライド駆動する部分であり、回転可能なロータを有する電動モータとしてのステッピングモータ5aと、ステッピングモータ5aの回転を直線運動に変換して弁体4に伝達する直動機構5bと、を備える。
【0032】
ステッピングモータ5aは、有底筒状を有するキャン50と、マグネットロータ51と、ステータコイル52と、を備える。
【0033】
キャン50は、薄板状の金属製の材料からなり、有底筒状に形成される。
【0034】
マグネットロータ51は、回転子であり、キャン50の内部に配置される。
【0035】
ステータコイル52は、固定子であり、キャン50を挟んでマグネットロータ51の外周を軸線L回りに取り囲むように配置される。
【0036】
直動機構5bは、軸受け部材53と、隔壁部材54と、雄ねじ部材55と、雌ねじ部材56と、を備える。
【0037】
軸受け部材53は、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等の樹脂製の材料からなり、キャン50の底側の内部に配置され、軸線Lと同軸上に、雄ねじ部材55の右側端部を軸支する第一軸受孔53aを有する。
【0038】
隔壁部材54は、樹脂製の材料からなり、有底筒状に形成される。隔壁部材54の外周側には、金属製の材料からなり、テーパー状に形成される上蓋25が、インサート成形にて固定される。ここで、上蓋25の小径部25aが、キャン50に溶接等により固定され、駆動部5内を密閉する。また、上蓋25の大径部25bが、下蓋24に溶接等により固定される。これにより、隔壁部材54、キャン50、軸受け部材53、及び、弁本体2の中心軸は、軸線Lと同軸に配置される。さらに、隔壁部材54の底部である仕切壁54dは、軸線Lと同軸上に、雄ねじ部材55の左側端部を軸支する第二軸受孔54aと、第二軸受孔54aを挟んで配置される一対の隔壁孔54b(図1には片側のみ図示)と、を有する。
【0039】
雄ねじ部材55は、外周面に雄ねじ部55dを有するロータ軸であり、マグネットロータ51の中心に固定部材55aを介して間接的に固定される。
【0040】
雌ねじ部材56は、内周面に雌ねじ部56a1が形成され、隔壁部材54内に径方向の隙間を有して収容されるねじ筒部56aと、隔壁部材54の一対の隔壁孔54bに挿通することにより、雌ねじ部材56の軸線L回りの回転を規制する一対の連結腕部56b(図1には片側のみ図示)と、を備える。この一対の連結腕部56bは、軸材59を介して、弁体4と連結される。ここで、雌ねじ部56a1及び雄ねじ部55dが互いに螺合することにより、ねじ送り機構を構成する。ここで、雌ねじ部56a1と雄ねじ部55dとの螺合領域Saは、常に、キャン50及び隔壁部材54により画定されるねじ収容空間Ss内に収容される。
【0041】
駆動部5において、ステッピングモータ5aにより、雄ねじ部材55が回転すると、ねじ送り機構により、雄ねじ部材55の回転が、雌ねじ部材56の直線運動に変換される。この雌ねじ部材56の直線運動によって、雌ねじ部材56と連結する弁体4が、軸線L方向にスライドするように進退駆動される。
【0042】
本実施形態において、弁体4を進退駆動する駆動部5は、雄ねじ部材55がマグネットロータ51に間接的に固定されるものであるが、これに限らず、例えば、雄ねじ部材55が、マグネットロータ51に直接的に固定されたものであってもよい。また、本実施形態における直動機構5bは、雄ねじ部材55がハウジング1に対して、回転可能に固定されるとともに、雌ねじ部材56が軸線L方向に進退可能にスライドする様態である。しかしながら、これに限らず、例えば、雌ねじ部材56がハウジング1に対して、回転可能に固定されるとともに、雄ねじ部材55が軸線L方向に進退可能にスライドする様態であってもよい。さらに、本実施形態におけるスライド式切換弁100は、長手方向の軸線Lを水平方向とし、弁体4を水平方向にスライドさせる使用様態としているが、これに限らず、例えば、長手方向の軸線Lを垂直方向とし、弁体4を垂直方向にスライドさせる使用様態であってもよい。
【0043】
<スライド式切換弁の動作について>
スライド式切換弁100は、図2に示すように、冷凍サイクルシステムに用いられ、入口経路1d、第2経路1c、出口経路1s、第1経路1eには、D継手管1D、C継手管1C、S継手管1S、E継手管1Eがそれぞれ取り付けられる。スライド式切換弁100は、駆動部5により、弁体4を軸線L方向にスライドするように進退駆動させることにより、圧縮機200の吐出口と接続されるD継手管1D、及び、圧縮機200の吸入口と接続されるS継手管1Sを、室外熱交換機300に接続されるC継手管1C、及び、室内熱交換機400に接続されるE継手管1Eのいずれか一方に、それぞれ連通させる。これにより、スライド式切換弁100は、冷凍サイクルシステムの流体経路を切り換える。
【0044】
<冷凍サイクルシステムの動作について>
まず、暖房運転時では、図2に示すように、スライド式切換弁100は、駆動部5を駆動し、弁体4を軸線L方向の左側位置へとスライドさせると、弁体本体40と弁座部3により、C継手管1CとS継手管1Sとが、椀状凹部40cを介して連通するとともに、D継手管1DとE継手管1Eとが、弁室2a及び第1ポート30を介して連通する。これにより、圧縮機200で圧縮された高圧の冷媒は、図2中の実線で示すように、D継手管1Dから弁室2aを介して、E継手管1Eに流入され、室内熱交換機400、絞り装置500、室外熱交換機300の順に流れ、C継手管1Cから椀状凹部40cを介して、S継手管1Sへ流入された後、圧縮機200へと循環する。この際、室外熱交換機300は、蒸発器(エバポレータ)として機能するとともに、室内熱交換機400は、凝縮器(コンデンサ)として機能する。
【0045】
次に、冷房運転時では、図1に示すように、スライド式切換弁100は、駆動部5を駆動し、弁体4を軸線L方向の右側位置へとスライドさせると、弁体本体40と弁座部3により、S継手管1SとE継手管1Eとが、椀状凹部40cを介して連通するとともに、D継手管1DとC継手管1Cとが、弁室2a及び第2ポート32を介して連通する。これにより、圧縮機200で圧縮された高圧の冷媒は、図2中の破線矢印で示すように、D継手管1Dから弁室2aを介して、C継手管1Cに流入され、室外熱交換機300、絞り装置500、室内熱交換機400の順に流れ、E継手管1Eから椀状凹部40cを介して、S継手管1Sへ流入された後、圧縮機200へと循環する。この際、冷房運転時には、冷媒が暖房運転時とは逆に循環されており、室外熱交換機300は、凝縮器(コンデンサ)として機能するとともに、室内熱交換機400は、蒸発器(エバポレータ)として機能する。
【0046】
<弁座部の位置決め手段について>
従来のスライド式切換弁では、前述したように、弁座部の位置決め手段として、弁座部に形成した凸部と、弁座受部に形成した凹溝とを互いに嵌合させるものであったため、弁座部の上面である摺接面に、反りや歪みが生じることにより、弁体とのシール性が損なわれるおそれがあった。これにより、従来のスライド式切換弁では、従来の第1の問題点(弁座部の位置決め手段により生じる問題)を有していた。
【0047】
これに対して、詳細は後述するが、本実施形態におけるスライド式切換弁100では、まず、第1の問題点(弁座部の位置決め手段により生じる問題)を解消するために、弁座部の位置決め手段を、弁座部に形成される凸部に代え、弁本体に設ける弁座部の位置決め用のガイド部を採用する。
【0048】
<ガイド部について>
弁本体2の固定面2bfには、図3(b)に示すように、固定面2bfにおける3辺の周縁部から、固定面2bfの垂直方向に向かって立設するガイド部2bg,2cgがそれぞれ形成される。このガイド部2bg,2cgは、固定面2bfの周縁部における軸線L方向の一端側に形成される一端側ガイド部(ガイド部)2cg(図3中のハッチング模様参照)と、固定面2bfの周縁部における軸線Lと直交する方向の一対の側方に形成される一対の側方ガイド部(ガイド部)2bg(図3中のドット模様参照)と、を備える。なお、図3(a)~(c)に示すように、一端側ガイド部2cgは、一端側壁部2cの弁室2a側を利用したものである一方、一対の側方ガイド部2bgは、内周壁2bの下方側に形成される。ここで、軸線Lと直交する方向において、一対の側方ガイド部2bgの間隔は、取り付け誤差を考慮し、弁座部3の幅より、僅かに大きく設定される。また、一端側ガイド部2cg及び一対の側方ガイド部2bgを、弁座部3と当接可能とするために、一端側ガイド部2cg及び一対の側方ガイド部2bgの垂直方向の形成領域を、図4(c)に示すように、弁座部3より上方の領域を含むように設定する。
【0049】
なお、本実施形態のガイド部2bg,2cgは、固定面2bfにおける3辺の周縁部から立設するものであるが、これに限らず、共通の角部を介する2辺の周縁部により、弁座部3の位置決めは可能であるため、例えば、一対の側方ガイド部2bgにおける一側方(Y軸方向のプラス側)又は他側方(Y軸方向のマイナス側)のいずれか一方と、一端側ガイド部2cgとによる2辺の周縁部から立設するものとしてもよい。また、固定面2bfにおける全て(4辺)の周縁部から立設するものであってもよい。ここで、固定面2bfにおける3辺の周縁部から立設させた形態が、後述の弁座部3を弁本体2の固定面2bfへの挿入、位置決めが容易となるので好ましい。
【0050】
<弁座部の固定手段について>
従来のスライド式切換弁では、弁座部の固定手段として、溶接固定を採用し、この溶接固定による熱影響で変形する弁座部の上面である摺接面に対して、平面加工を施す必要があった。これにより、従来のスライド式切換弁では、従来の第2の問題点(弁座部の固定手段により生じる問題)を有していた。
【0051】
これに対して、本実施形態におけるスライド式切換弁100では、まず、第2の問題点(弁座部の固定手段により生じる問題)を解消するために、弁座部3の固定手段として、溶接固定に代えて、接着固定を採用する。ここで、接着固定に採用する接着剤は、エポキシ樹脂系、アクリル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン系、酢酸ビニル系を含む。
【0052】
<弁座部の取り付け工程について>
図4を用いて、弁座部3の弁本体2への取り付け工程を説明する。この弁座部3は、図4(a),(b)に示すように、弁体4が摺接する摺接面33と、摺接面33の反対側に位置し、接着剤が塗布される接着面34と、を備える。まず、接着面34に接着剤が塗布される。その後、弁座部3を、図4(c)の挿入方向Mに、弁本体2の他端側開口部2dを介して、弁室2a内に挿入させ、弁座部3の接着面34を弁本体2の固定面2bfに押圧させながら接着固定させる。この際、弁座部3は、一対の側方ガイド部2bgにより、軸線Lと直交する方向に位置決めされた状態で、軸線L方向の一端側へとスライドし、最終的に、弁座部3が一端側ガイド部2cgと当接することにより、軸線L方向の位置決めがなされる。このように、本実施形態において、弁座部3ではなく、弁本体2に弁座部3の位置決め手段を設けることにより、弁座部3に反りや歪みが生じず、摺接面33の平坦度を維持したままで、弁本体2への位置決めが可能となるため、従来の第1の問題点(弁座部の位置決め手段により生じる問題)を解消することができる。なお、本実施形態において、弁座部3の軸線L方向の他端側の形状が、図4(b),(d)に示すように、非直線形状を有しているため、目視により、取り付け方向(軸線L方向及び表裏方向)の間違いを防止することができる。また、本実施形態において、説明のために、弁座部3に接着剤を塗布するものを用いたが、これに限らず、例えば、弁本体2の固定面2bfに接着剤を塗布するものであってもよい。
【0053】
<弁座部の固定手段(接着固定)の新たな問題点について>
ここから、図5を用いて、弁座部3の固定手段として、接着固定を採用することにより生じる新たな問題点について述べる。なお、図5(a)は、説明のために、弁体4に接続される直動機構5bなどを省略して示している。また、図5(c)及び図5(d)は、接着剤Adを強調するために、弁座部3と弁本体2との隙間を誇張して示している(特に、弁座部3の接着面34と弁本体2の接着面34とは当接状態である)。
【0054】
図5(a),(b)に示すように、弁本体2の固定面2bfに弁座部3を接着固定した後、弁体4を、弁本体2の他端側開口部2dより弁室2a内に挿入し、弁体4の開口縁部40aを弁座部3の摺接面33に、摺接可能に当接させる。ここで、弁体4の軸線L方向への円滑なスライドを可能とするために、一対の側方ガイド部2bgの間隔は、軸線Lと直交する方向における弁体4の幅より僅かに大きく設定される。
【0055】
比較例である図5(c),(d)に示すように、弁座部3を弁本体2に固定する際に、接着剤Adが、弁座部3の接着面34から、弁座部3と弁本体2との隙間を介して、垂直方向の上側、及び、水平方向へと押し出される。このため、接着剤Adは、移動方向A,Bへと押し出され、弁座部3と弁本体2との隙間から、弁座部3の摺接面33へとはみ出た状態で硬化することが生じていた。
【0056】
このように、弁座部3の固定手段として、接着固定を採用することにより、弁座部3に対してスライドする弁体4の開口縁部40aが、接着剤Adに乗り上げてしまい、シール性が損なわれること、及び、接着剤Adを噛み込んでしまい、弁体4が弁座部3に弁体固着されるなどの作動不良が生じるおそれがあった。
【0057】
これに対し、第1の実施形態では、弁座部3の接着面34から摺接面33上へと接着剤Adがはみ出ることを回避するために、接着剤溜め部61~66を形成する。なお、詳細は後述するが、第1の実施形態において、接着剤溜め部61~66の形成位置により、様態1(一端側接着剤溜め部61~63)と、様態2(側方接着剤溜め部64~66)とに大別する。以下、第1の実施形態について、第1の実施形態の様態1、第1の実施形態の様態2の順で説明する。
【0058】
(第1の実施形態の様態1)
図6(a)~(c)に示すように、第1の実施形態の様態1は、一端側接着剤溜め部61~63が形成される部材及び接着剤溜め部の形状により、様態1-1から様態1-3までの3つの様態からなる。
【0059】
(様態1-1)
図6(a)に示すように、一端側ガイド部2cgの下端部には、軸線L方向の一端側に窪むとともに、軸線Lと直交する方向に延在する窪み部2crが形成される。一端側接着剤溜め部61は、窪み部2crと、窪み部2crに対向する弁座部3の対向面との間に画定され、矩形形状断面を有する。なお、本実施形態の様態1-1における一端側接着剤溜め部61は、弁本体2Aの固定面2bfと水平方向に連続するように形成されているが、これに限らず、例えば、弁座部3に対向する一端側ガイド部2cgの対向面のいずれかに形成されるものであればよい。
【0060】
この一端側接着剤溜め部61は、軸線L方向に幅X1、垂直方向に高さZ1、軸線Lと直交する方向に奥行D1(不図示)を有しており、全容積は、X1×Z1×D1である。この一端側接着剤溜め部61の全容積が、弁座部3の固定面2bfへの固定に用いられる接着剤Adの塗布量以上となるように設定されるため、一端側接着剤溜め部61に接着剤Adが溜められても、一端側接着剤溜め部61が全て接着剤Adで満たされることはない。また、軸線L方向において、一端側接着剤溜め部61は、一端側ガイド部2cgと弁座部3との取り付け間隙G1より、大きい幅X1を有している(X1>G1)。これにより、弁座部3の固定面2bfへの取り付けの際、接着剤Adの圧力が局所的に高くなり、接着剤Adが、一端側ガイド部2cgと弁座部3との隙間を、比較的大きい速度で上昇しようとした場合でも、その経路中に、一端側接着剤溜め部61が介されているため、接着剤Adの速度は抑制され、結果、接着剤Adを、一端側接着剤溜め部61の内部に安定した状態で収容することができる。
【0061】
ここで、取り付け間隙G1≠0の場合、つまり、一端側ガイド部2cgと弁座部3とが当接していない場合には、一端側接着剤溜め部61の上部空間は、弁室2aに連通している。この際、接着剤Adに生じる表面張力により、接着剤Adは、一端側接着剤溜め部61の内部に引き込まれた状態となる。その後、一端側接着剤溜め部61の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adが配置される。
【0062】
一方、取り付け間隙G1=0の場合、つまり、一端側ガイド部2cgと弁座部3とが当接している場合には、一端側接着剤溜め部61の上部空間は、後述の一対の側方ガイド部2bgと弁座部3との軸線Lと直交する方向の間隙を介し、弁室2aに連通しているので、接着剤Adに生じる表面張力により、接着剤Adは、取り付け間隙G1≠0の場合と同様に、一端側接着剤溜め部61の内部に引き込まれた状態となる。その後、一端側接着剤溜め部61の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adが配置される。
【0063】
このように、本実施形態の様態1-1では、弁座部3の固定手段として、溶接固定に代えて、一端側ガイド部2cg及び接着固定を採用していることから、第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を解消することができるとともに、図5(c)の比較例とは異なり、一端側接着剤溜め部61を採用することにより、弁座部3の接着面34から摺接面33上へと接着剤がはみ出ることを回避するため、弁座部の固定手段(接着固定)の新たな問題点も解消することができる。
【0064】
以上より、本実施形態の様態1-1において、一端側接着剤溜め部61を採用することにより、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を全て解消することができる。
【0065】
(様態1-2)
図6(b)に示すように、弁座部3Aの下方角部には、軸線Lと直交する方向に延在するように、面取り加工が施された切り欠き部3c1が形成される。一端側接着剤溜め部62は、切り欠き部3c1と、一端側ガイド部2cgと、固定面2bfとの間に画定され、三角形形状断面を有する。なお、本実施形態の様態1-2において、一端側接着剤溜め部62は、弁座部3Aの下方角部に形成されているが、これに限らず、例えば、弁座部3Aの上方角部に形成されるものであってよい。
【0066】
この一端側接着剤溜め部62は、軸線L方向に幅X2、垂直方向に高さZ2、軸線Lと直交する方向に奥行D2(不図示)を有しており、全容積は、(X2×Z2×D2)/2である。この一端側接着剤溜め部62の全容積が、弁座部3Aの固定面2bfへの固定に用いられる接着剤Adの塗布量以上となるように設定されるため、一端側接着剤溜め部62に接着剤Adが溜められても、一端側接着剤溜め部62が全て接着剤Adで満たされることはない。また、軸線L方向において、一端側接着剤溜め部62は、一端側ガイド部2cgと弁座部3との取り付け間隙G1より、大きい幅X2を有している(X2>G1)。これにより、様態1-1と同様に、接着剤Adが、一端側ガイド部2cgと弁座部3との隙間を、比較的大きい速度で上昇しようとした場合でも、その経路中に、一端側接着剤溜め部62が介されているため、接着剤Adの速度は抑制され、結果、接着剤Adを、一端側接着剤溜め部62の内部に安定した状態で収容することができる。
【0067】
ここで、取り付け間隙G1≠0の場合には、様態1-1と同様に、一端側接着剤溜め部62の上部空間は、弁室2aに連通しているため、接着剤Adは、接着剤Adに生じる表面張力により、一端側接着剤溜め部62の内部に引き込まれた状態となる。その後、一端側接着剤溜め部62の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adが配置される。
【0068】
一方、取り付け間隙G1=0の場合は、様態1-1と同様に、一端側接着剤溜め部61の上部空間は、後述の一対の側方ガイド部2bgと弁座部3との軸線Lと直交する方向の間隙を介し、弁室2aに連通しているので、接着剤Adは、接着剤Adに生じる表面張力により、一端側接着剤溜め部61の内部に引き込まれた状態となる。その後、一端側接着剤溜め部61の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adが配置される。
【0069】
このように、本実施形態の様態1-2において、一端側接着剤溜め部62を採用することにより、本実施形態の様態1-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を全て解消することができる。加えて、本実施形態の様態1-2において、一端側接着剤溜め部62は、複雑な形状を有する弁本体2ではなく、板状の弁座部3Aへの面取り加工により設けられることから、加工コストを抑制することができる。
【0070】
(様態1-3)
図6(c)に示すように、弁座部3Bの上方角部には、軸線L方向の他端側に窪むとともに、軸線Lと直交する方向に延在する段部3s1が形成される。一端側接着剤溜め部63は、段部3s1と、段部3s1に対向する一端側ガイド部2cgの対向面との間に画定され、矩形形状断面を有する。なお、本実施形態の様態1-3において、一端側接着剤溜め部63は、弁座部3Bの上方角部に形成されているが、これに限らず、例えば、一端側ガイド部2cgに対向する弁座部3Bの対向面のいずれかに形成されるものであればよい。
【0071】
この一端側接着剤溜め部63は、軸線L方向に幅X3、垂直方向に高さZ3、軸線Lと直交する方向に奥行D3(不図示)を有しており、全容積は、(X3×Z3×D3)である。この一端側接着剤溜め部63の全容積が、弁座部3Bの固定面2bfへの固定に用いられる接着剤Adの塗布量以上となるように設定されるため、一端側接着剤溜め部63に接着剤Adが溜められても、一端側接着剤溜め部63が全て接着剤Adで満たされることはない。また、軸線L方向(X軸方向)において、一端側接着剤溜め部63は、一端側ガイド部2cgと弁座部3Bとの取り付け間隙G1より、大きい幅X3を有している(X3>G1)。これにより、様態1-1と同様に、接着剤Adが、一端側ガイド部2cgと弁座部3との隙間を、比較的大きい速度で上昇しようとした場合でも、その経路中に、一端側接着剤溜め部63が介されているため、接着剤Adの速度は抑制され、結果、接着剤Adを、一端側接着剤溜め部63の内部に安定した状態で収容することができる。
【0072】
ここで、様態1-3では、取り付け間隙G1≠0及びG1=0のいずれの場合においても、一端側接着剤溜め部63の上部空間は、弁室2aに連通しているため、接着剤Adは、接着剤Adに生じる表面張力により、一端側接着剤溜め部63の内部に引き込まれた状態となる。その後、一端側接着剤溜め部63の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adが目視可能に配置される。また、一端側接着剤溜め部63が、一端側ガイド部2cgと弁座部3との隙間の上方に設けられていることから、一端側ガイド部2cgと弁座部3との接着面積が比較的大きくなるため、弁本体2に対する弁座部3の接着強度を向上させることができる。
【0073】
このように、本実施形態の様態1-3において、一端側接着剤溜め部63を採用することにより、本実施形態の様態1-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を全て解消することができる。また、本実施形態の様態1-3において、本実施形態の様態1-2と同様の効果、つまり、一端側接着剤溜め部63は、板状の弁座部3Bへの段付き加工により設けられることから、加工コストを抑制することができる。加えて、本実施形態の様態1-3において、一端側接着剤溜め部63の内部に配置される凹型表面を有する硬化した接着剤Adは、目視可能であるため、より確実に、摺接面33上へと接着剤Adがはみ出ることを回避することができる。さらに、本実施形態の様態1-3において、一端側ガイド部2cgと弁座部3との接着面積が比較的大きくなるため、弁本体2に対する弁座部3の接着強度を向上させることができる。
【0074】
(第1の実施形態の様態2)
図7(a)~(c)に示すように、第1の実施形態の様態2は、側方接着剤溜め部64~66が形成される部材及び接着剤溜め部の形状により、様態2-1から様態2-3までの3つの様態からなる。なお、一対の側方ガイド部2bgの間隔は、取り付け誤差を考慮し、軸線Lと直交する方向における弁座部3の幅より、僅かに大きく設定される。ここで、最大取り付け間隙G2は、軸線Lと直交する方向において、弁座部3が一対の側方ガイド部2bgの片方に偏って取り付けられた場合に生じる隙間、つまり、一対の側方ガイド部2bgと弁座部3とのそれぞれの取り付け間隙を合計した値であり、ゼロより大きい値(G2>0)に設定される。
【0075】
(様態2-1)
図7(a)に示すように、側方ガイド部2bgの下端部には、軸線Lと直交する方向の一側方(Y軸方向のプラス側)に窪むとともに、軸線L方向に延在する窪み部2brが形成される。側方接着剤溜め部64は、窪み部2brと、窪み部2brに対向する弁座部3の対向面との間に画定され、矩形形状断面を有する。なお、本実施形態の様態2-1において、側方接着剤溜め部64は、弁本体2Bの固定面2bfと水平方向に連続するように形成されているが、これに限らず、例えば、弁座部3に対向する側方ガイド部2bgの対向面のいずれかに形成されるものであればよい。
【0076】
この側方接着剤溜め部64は、軸線Lと直交する方向に幅Y1、垂直方向に高さZ4、軸線L方向に奥行D4(不図示)を有しており、全容積は、Y1×Z4×D4である。この側方接着剤溜め部64の全容積が、弁座部3の固定面2bfへの固定に用いられる接着剤Adの塗布量以上となるように設定されるため、側方接着剤溜め部64に接着剤Adが溜められても、側方接着剤溜め部64が全て接着剤Adで満たされることはない。また、軸線Lと直交する方向において、側方接着剤溜め部64は、側方ガイド部2bgと弁座部3との最大取り付け間隙G2より、大きい幅Y1を有している(Y1>G2)。これにより、弁座部3の固定面2bfへの取り付けの際、接着剤Adの圧力が局所的に高くなり、接着剤Adが、側方ガイド部2bgと弁座部3との隙間を、比較的大きい速度で上昇しようとした場合でも、その経路中に、側方接着剤溜め部64が介されているため、接着剤Adの速度は抑制され、結果、接着剤Adを、側方接着剤溜め部64の内部に安定した状態で収容することができる。
【0077】
図7(a)に示すように、側方接着剤溜め部64の上部空間は、弁室2aに連通している。この際、接着剤Adに生じる表面張力により、接着剤Adは、側方接着剤溜め部64の内部に引き込まれた状態となる。その後、側方接着剤溜め部64の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adが配置される。
【0078】
このように、本実施形態の様態2-1において、側方接着剤溜め部64を採用することにより、本実施形態の様態1-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を全て解消することができる。加えて、本実施形態の様態2-1において、窪み部2brが形成されている側方ガイド部2bgは、図4(d)に示すように、軸線L方向の他端側(図中の右側)に開放されているため、側方接着剤溜め部64に溜められた接着剤Adは、硬化前に、側方接着剤溜め部64の開放側から流出させることができる。これにより、摺接面33上へと接着剤Adがはみ出ることをより確実に回避することができる。なおこの時、接着剤Adは、弁座部3の摺接面33から下方側に離間した固定面2bf(図4(c)参照)上へと、流出することから、弁体4の開口縁部40aが、接着剤Adに干渉する問題は生じない。
【0079】
(様態2-2)
図7(b)に示すように、弁座部3Cの軸線Lと直交する方向の一側方(Y軸方向のプラス側)の下方角部には、軸線L方向に延在するように、面取り加工が施された切り欠き部3c2が形成される。側方接着剤溜め部65は、切り欠き部3c2と、側方ガイド部2bgと、固定面2bfとの間に画定され、三角形形状断面を有する。なお、本実施形態の様態2-2において、側方接着剤溜め部65は、弁座部3Cの下方角部に形成されているが、これに限らず、例えば、弁座部3Cの上方角部に形成されるものであってよい。
【0080】
この側方接着剤溜め部65は、軸線Lと直交する方向に幅Y2、垂直方向に高さZ5、軸線L方向に奥行D5(不図示)を有しており、全容積は、(Y2×Z5×D5)/2である。この側方接着剤溜め部65の全容積が、弁座部3の固定面2bfへの固定に用いられる接着剤Adの塗布量以上となるように設定されるため、側方接着剤溜め部65に接着剤Adが溜められても、側方接着剤溜め部65が全て接着剤Adで満たされることはない。また、軸線Lと直交する方向において、側方接着剤溜め部65は、側方ガイド部2bgと弁座部3Cとの最大取り付け間隙G2より、大きい幅Y2を有している(Y2>G2)。これにより、様態2-1と同様に、接着剤Adが、側方ガイド部2bgと弁座部3との隙間を、比較的大きい速度で上昇しようとした場合でも、その経路中に、側方接着剤溜め部65が介されているため、接着剤Adの速度は抑制され、結果、接着剤Adを、側方接着剤溜め部65の内部に安定した状態で収容することができる。
【0081】
図7(b)に示すように、様態2-1と同様に、側方接着剤溜め部65の上部空間は、弁室2aに連通しているため、接着剤Adは、接着剤Adに生じる表面張力により、側方接着剤溜め部65の内部に引き込まれた状態となる。その後、側方接着剤溜め部65の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adが配置される。
【0082】
このように、本実施形態の様態2-2において、側方接着剤溜め部65を採用することにより、本実施形態の様態2-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を全て解消するとともに、接着剤Adを側方接着剤溜め部65の開放側から流出させ、摺接面33上へと接着剤Adがはみ出ることをより確実に回避することができる。加えて、本実施形態の様態2-2において、側方接着剤溜め部65は、複雑な形状を有する弁本体2ではなく、板状の弁座部3Cへの面取り加工により設けられることから、加工コストを抑制することができる。
【0083】
(様態2-3)
図7(c)に示すように、弁座部3Dの軸線Lと直交する方向の一側方(Y軸方向のプラス側)の上方角部には、軸線Lと直交する方向の他側方(Y軸方向のマイナス側)に窪むとともに、X軸方向に延在する段部3s2が形成される。側方接着剤溜め部66は、段部3s2と、段部3s2に対向する側方ガイド部2bgの対向面との間に画定され、矩形形状断面を有する。なお、本実施形態の様態2-3において、側方接着剤溜め部66は、弁座部3Dの上方角部に形成されているが、これに限らず、例えば、側方ガイド部2bgに対向する弁座部3Dの対向面のいずれかに形成されるものであればよい。
【0084】
この側方接着剤溜め部66は、軸線Lと直交する方向に幅Y3、垂直方向に高さZ6、軸線L方向に奥行D6(不図示)を有しており、全容積は、Y3×Z6×D6である。この側方接着剤溜め部66の全容積が、弁座部3Dの固定面2bfへの固定に用いられる接着剤Adの塗布量以上となるように設定されるため、側方接着剤溜め部66に接着剤Adが溜められても、側方接着剤溜め部66が全て接着剤Adで満たされることはない。また、軸線Lと直交する方向(Y軸方向)において、側方接着剤溜め部66は、側方ガイド部2bgと弁座部3Dとの最大取り付け間隙G2より、大きい幅Y3を有している(Y3>G2)。これにより、様態2-1と同様に、接着剤Adが、側方ガイド部2bgと弁座部3との隙間を、比較的大きい速度で上昇しようとした場合でも、その経路中に、側方接着剤溜め部66が介されているため、接着剤Adの速度は抑制され、結果、接着剤Adを、側方接着剤溜め部66の内部に安定した状態で収容することができる。
【0085】
図7(c)に示すように、様態2-1と同様に、側方接着剤溜め部66の上部空間は、弁室2aに連通しているため、接着剤Adは、接着剤Adに生じる表面張力により、側方接着剤溜め部66の内部に引き込まれた状態となる。その後、側方接着剤溜め部66の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adが目視可能に配置される。また、側方接着剤溜め部66が、側方ガイド部2bgと弁座部3との隙間の上方に設けられていることから、側方ガイド部2bgと弁座部3との接着面積が比較的大きくなるため、弁本体2に対する弁座部3の接着強度を向上させることができる。
【0086】
このように、本実施形態の様態2-3において、側方接着剤溜め部66を採用することにより、本実施形態の様態2-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を全て解消するとともに、接着剤Adを側方接着剤溜め部66の開放側から流出させ、摺接面33上へと接着剤Adがはみ出ることをより確実に回避することができる。また、本実施形態の様態2-3において、本実施形態の様態2-2と同様の効果、つまり、側方接着剤溜め部66は、板状の弁座部3Dへの段付き加工により設けられることから、加工コストを抑制することができる。加えて、本実施形態の様態2-3において、側方接着剤溜め部66の内部に配置される凹型表面を有する硬化した接着剤Adは、目視可能であるため、より確実に、摺接面33上へと接着剤Adがはみ出ることを回避することができる。さらに、本実施形態の様態2-3において、側方ガイド部2bgと弁座部3との接着面積が比較的大きくなるため、弁本体2に対する弁座部3の接着強度を向上させることができる。
【0087】
以上の本実施形態において、説明のために、様態2-1から様態2-3について、一対の側方ガイド部2bgの軸線Lと直交する方向の一側方(Y軸方向のプラス側)のみに側方接着剤溜め部64~66形成させたが、これに限らず、例えば、一対の側方ガイド部2bgの軸線Lと直交する方向の他側方(Y軸方向のマイナス側)のみに形成してもよいし、両側方に形成させてもよい。また、本実施形態において、様態1-1から様態1-3、及び、様態2-1から様態2-3をそれぞれ別々に設けるものとしているが、これに限らず、例えば、様態1-1から様態1-3、及び、様態2-1から様態2-3を適宜組み合わせてもよい。なお、本実施形態において、様態1-1から様態1-3、及び、様態2-1から様態2-3を組み合わせた場合においても、組み合わせた接着剤溜め部61~66の全容積が、弁座部3,3A,3B,3C,3Dの固定面2bfへの固定に用いられる接着剤Adの塗布量以上となるように設定されるとともに、組み合わせた接着剤溜め部61~66の内部には、凹型表面を有する硬化した接着剤Adがそれぞれ配置されるように設定される。また、様態1-1から様態1-3、及び、様態2-1から様態2-3を組み合わせる場合は、一端側接着剤溜め部61~63と側方接着剤溜め部64~66とが連通し易いように組み合わせると好ましい。
【0088】
<側方接着剤溜め部の新たな問題点について>
ここから、図7(a)を用いて、側方接着剤溜め部64に生じる新たな問題点について述べる。
【0089】
まず、一般的に、薄肉円筒圧力容器においては、内圧が加わると、これに耐える応力として、円周方向の円周応力及び軸方向の軸応力が発生する。詳細な説明は割愛するが、この円周応力は、軸応力の2倍である。この説明は、略円筒形状を有している弁本体2に対しても同様に行うことができる。
【0090】
例えば、図6(a)及び図7(a)に示すように、一端側接着剤溜め部61、及び、側方接着剤溜め部64は、固定面2bfとの間に、それぞれ隅部を有している。よって、弁室2a内の圧力が上昇した際に、一端側接着剤溜め部61の隅部には、内角が拡大する方向に軸応力が生じるとともに、側方接着剤溜め部64の隅部C1には、内角が拡大する方向に円周応力が生じる。ここで、前述したように、円周応力が、軸応力より2倍大きいことから、特に、側方接着剤溜め部64の隅部C1には、比較的大きい応力集中が発生し、場合によっては、クラックが生じ、弁本体2が破断するおそれがあった。
【0091】
これに対し、第1の実施形態の様態3及び様態4では、側方接着剤溜め部67,67’,68,68’の隅部に、軸線L方向に延在し、R形の断面形状を有する隅Rを形成することにより、隅部における応力集中を緩和し、弁本体2’,2’’,2’’’,2’’’’の耐圧強度を高めることができ、結果、側方接着剤溜め部の新たな問題点を解消することができる。
【0092】
また、側方接着剤溜め部67,67’,68,68’の隅部は、弁本体2’,2’’,2’’’,2’’’’の軸心Oから最も離れた半径(以下、「最離間半径」という)R0を有する位置(以下、「最離間半径位置」という)P1far,P2farにあることから、応力集中の起点となる。よって、この側方接着剤溜め部67,67’,68,68’の隅部における隅Rの曲率半径を、所定範囲(0.5T以上かつ最離間半径R0以下)とすることにより、応力集中をより確実に緩和し、弁本体の耐圧強度をさらに高めることができる。ここで、Tは、弁座部の板厚を示す。なお、側方接着剤溜め部67,67’,68,68’の隅部における曲率半径が、0.5T未満である場合は、応力集中の緩和効果が小さくなることから、他の曲線との組み合わせの必要が生じる。また、側方接着剤溜め部67,67’,68,68’の隅部における曲率半径が、最離間半径R0を超える場合は、側方接着剤溜め部67,67’,68,68’の隅部は、もはや、最離間半径位置ではなくなるため、新たに形成される最離間半径位置に対して隅Rを形成する必要が生じる。
【0093】
よって、具体的な例として、最離間半径位置P1far,P2farに形成される隅Rの曲率半径が、所定範囲のうち、比較的小さい値を選択する様態3(側方接着剤溜め部67,67’)と、比較的大きい値を選択する様態4(側方接着剤溜め部68,68’)とに大別する。以下、図8及び図9を用いて、第1の実施形態の様態3、第1の実施形態の様態4の順で説明する。なお、図8及び図9における、弁本体2’,2’’,2’’’,2’’’’に沿って示される一点鎖線は、最離間半径R0を有する円又は円弧を示す。
【0094】
(第1の実施形態の様態3)
図8(b)及び(c)に示すように、第1の実施形態の様態3は、側方接着剤溜め部67,67’の最離間半径位置P1farにおける隅Rの曲率半径が、0.5T以上かつ最離間半径R0以下の範囲のうち、比較的小さい値(ここでは、最小値である0.5T)を選択するものである。側方接着剤溜め部の形状により、様態3-1及び様態3-2の2つの様態からなる。
【0095】
(様態3-1)
図8(a)及び(b)に示すように、軸線Lと直交する方向における、一対の側方ガイド部2bgと固定面2bfを接続する側方接着剤溜め部67の隅部は、最離間半径位置P1farとなっており、応力集中の起点となることから、この応力集中を緩和するために、0.5T1の曲率半径を有する第1曲線Cu1からなる隅Rが、最離間半径位置P1farに形成される。ここで、T1は、弁座部3’の板厚を示す。これにより、側方接着剤溜め部67における隅Rは、1つの曲線(第1曲線Cu1のみ)から構成される窪み部2brを有する。
【0096】
このように、本実施形態の様態3-1において、1つの曲線(第1曲線Cu1のみ)からなる隅Rを備える側方接着剤溜め部67を採用することにより、本実施形態の様態2-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を全て解消することができる。また、本実施形態の様態3-1では、最離間半径位置P1farに、第1曲線Cu1からなる隅Rを形成することにより、応力集中を確実に緩和することができるため、側方接着剤溜め部の新たな問題点も解消することができる。さらに、第1曲線Cu1の曲率半径R1を、比較的小さい曲率半径を選択することにより、側方接着剤溜め部67の容積の大きさを適切に設定でき、側方ガイド部2bgの領域を確保することができる。加えて、側方接着剤溜め部67における隅Rは、1つの曲線(第1曲線Cu1のみ)から構成することができるため、比較的容易に形成することができる。
【0097】
(様態3-2)
図8(c)に示すように、最離間半径位置P1farには、様態3-1と同様に、応力集中の起点となることから、この応力集中を緩和するために、0.5T2の曲率半径を有する第1曲線Cu1’からなる隅Rが、最離間半径位置P1farに形成される。ここで、T2は、弁座部3’’の板厚を示す。また、側方ガイド部2bgの領域を広げるために、第1曲線Cu1’の一側方(Y軸方向のプラス側)には、接続部P1を介して、第2曲線Cu2(曲率半径R2:0.5T2未満)が連続的かつ滑らかに接続され、この第2曲線Cu2は、側方ガイド部2bgの下端部に接続される。なお、図8(c)では、第2曲線Cu2の曲率半径R2は、0.3T2とし、弁座部3’’の板厚T2は、弁座部3’の板厚T1より、小さな値(T2<T1)となる。これにより、側方接着剤溜め部67’における隅Rは、2つの曲線(第1曲線Cu1’及び第2曲線Cu2)から構成される窪み部2brを有する。
【0098】
このように、本実施形態の様態3-2において、2つの曲線(第1曲線Cu1’及び第2曲線Cu2)からなる隅Rを備える側方接着剤溜め部67’を採用することにより、本実施形態の様態3-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)と、側方接着剤溜め部の新たな問題点とを全て解消することができる。また、本実施形態の様態3-2では、第1曲線Cu1’の一側方に、第2曲線Cu2(第1曲線Cu1’より小さい曲率半径R2を有する)が、連続的かつ滑らかに接続されるため、本実施形態の様態3-1と比べ、側方接着剤溜め部67’の高さを低くし、側方ガイド部2bgの領域をさらに確実に確保することに加え、弁座部3’’の板厚T2を、薄板化(T2<T1)させることができる。
【0099】
本実施形態の様態3-2では、第1曲線Cu1’の曲率半径R1’として、比較的小さい値を選択するものであるが、具体的には、第1曲線Cu1’の曲率半径R1’の上限値を、最離間半径R0×1/4以下とすることにより、固定面2bfの領域を確保することができる。また、本実施形態の様態3-2では、側方ガイド部2bgの下端部と、固定面2bfの端部との間に隅Rを形成するために、2つの曲線(第1曲線Cu1’及び第2曲線Cu2)を接続するものであるが、曲線の数や、曲率半径や、曲線の組み合わせなどは、これに限らない。例えば、隅Rは、第1曲線Cu1’の両側方の少なくとも一方に、1つ以上の曲線を連続的かつ滑らかに接続するものであってもよい。
【0100】
(第1の実施形態の様態4)
図9(b)及び(c)に示すように、第1の実施形態の様態4は、側方接着剤溜め部68,68’の最離間半径位置P2farにおける隅Rの曲率半径が、0.5T以上かつ最離間半径R0以下の範囲のうち、比較的大きい値(ここでは、最大値である最離間半径R0)を選択するものである。側方接着剤溜め部の形状により、様態4-1及び様態4-2の2つの様態からなる。なお、第1の実施形態の様態4は、第1の実施形態の様態3とは、側方接着剤溜め部の形状以外にも、弁座部3’’’の形状及び一対の側方ガイド部2bgの形成領域が若干異なる。
【0101】
まず、弁座部3’’’は、板状で板厚が均一のステンレス鋼等からなり、プレス加工により一体成形されており、水平方向(XY平面方向)に沿って配置され、矩形形状を有する平板部3a’’’と、平板部3a’’’の側方(Y軸方向)両端縁から立ち上がる一対の補強部3b’’’と、を備える。また、弁本体2’’’,2’’’’における一対の側方ガイド部2bg(図9中のドット模様参照)は、内周壁2bの下方側に形成されるとともに、一対の補強部3b’’’と対向する位置に、垂直方向の形成領域を有する。
【0102】
(様態4-1)
図9(a)及び(b)に示すように、軸線Lと直交する方向における、一対の側方ガイド部2bgと固定面2bfを接続する側方接着剤溜め部68の隅部は、最離間半径位置P2farとなっており、応力集中の起点となることから、この応力集中を緩和するために、最離間半径R0の曲率半径を有する第1曲線Cu1’’からなる隅Rが、最離間半径位置P2farに形成される。ここで、T3は、弁座部3’’’の板厚を示す。また、第1曲線Cu1’’の一側方(Y軸方向のプラス側)には、接続部P2を介して、第2曲線Cu2’’(曲率半径R2’’は、いかなる値でもよい)が連続的かつ滑らかに接続され、この第2曲線Cu2’’は、側方ガイド部2bgの下端部に接続される。さらに、第1曲線Cu1’’の他側方(Y軸方向のマイナス側)には、接続部P3を介して、第3曲線Cu3(曲率半径R3:0.5T3以上かつ最離間半径R0×1/4以下)が連続的かつ滑らかに接続される。この第3曲線Cu3の曲率半径R3は、第1曲線Cu1’’の曲率半径R1’’より小さく設定される(R3<R1’’)。なお、図9(b)では、第1曲線Cu1’’の曲率半径R1’’は、13T3とし、第2曲線Cu2’’の曲率半径R2’’は、1.5T3とし、第3曲線Cu3の曲率半径R3は、1.0T3とする。これにより、側方接着剤溜め部68における隅Rは、3つの曲線(第1曲線Cu1’’、第2曲線Cu2’’及び第3曲線Cu3)から構成される窪み部2brを有する。
【0103】
このように、本実施形態の様態4-1において、3つの曲線(第1曲線Cu1’’、第2曲線Cu2’’及び第3曲線Cu3)からなる隅Rを備える側方接着剤溜め部68を採用することにより、本実施形態の様態3-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)と、側方接着剤溜め部の新たな問題点とを全て解消することができる。特に、本実施形態の様態4-1のように、第1曲線Cu1’’の曲率半径R1’’を、最離間半径R0とすることにより、最離間半径位置P2farを、円周方向に沿った領域へと広げること、つまり、応力集中の起点となる領域を広げることができるため、より効果的に応力集中を分散させることができる。加えて、本実施形態の様態4-1では、第1曲線Cu1’’の他側方に、第3曲線Cu3(第1曲線Cu1’’より小さい曲率半径R3を有する)が、連続的かつ滑らかに接続されるため、固定面2bfの領域を確実に確保することができる。
【0104】
本実施形態の様態4-1では、側方ガイド部2bgの下端部と、固定面2bfの端部との間に隅Rを形成するために、3つの曲線(第1曲線Cu1’’、第2曲線Cu2’’及び第3曲線Cu3)を接続するものであるが、曲線の数や、曲率半径や、曲線の組み合わせなどは、これに限らない。例えば、隅Rは、第1曲線Cu1’’の両側方に、それぞれ、1つ以上の曲線を連続的かつ滑らかに接続するものであってもよい。
【0105】
(様態4-2)
図9(c)に示すように、最離間半径位置P2farには、様態4-1と同様に、応力集中の起点となることから、この応力集中を緩和するために、最離間半径R0の曲率半径を有する第1曲線Cu1’’からなる隅Rが、最離間半径位置P2farに形成される。また、様態4-1と同様に、第1曲線Cu1’’の一側方には、接続部P2を介して、第2曲線Cu2’’(曲率半径R2’’は、いかなる値でもよい)が連続的かつ滑らかに接続されるとともに、第1曲線Cu1’’の他側方には、接続部P3を介して、第3曲線Cu3(曲率半径R3:0.5T3以上かつ最離間半径R0×1/4以下、及び、曲率半径R3<曲率半径R1’’)が連続的かつ滑らかに接続される。加えて、固定面2bfの端部には、側方接着剤溜め部68’の境界を画定する垂直壁Vpが窪むように形成される。この垂直壁Vpの下端部、及び、第3曲線Cu3の他側方には、接続部P5及び接続部P4を介して、第4曲線Cu4(曲率半径R4:0.5T3以下)が連続的かつ滑らかに接続される。なお、図9(b)では、第1曲線Cu1’’の曲率半径R1’’は、13T3とし、第2曲線Cu2’’の曲率半径R2’’は、1.5T3とし、第3曲線Cu3の曲率半径R3は、1.0T3とし、第4曲線Cu4の曲率半径R4は、0.3T3とする。これにより、側方接着剤溜め部68’における隅Rは、4つの曲線(第1曲線Cu1’’、第2曲線Cu2’’、第3曲線Cu3及び第4曲線Cu4)から構成される窪み部2brを有する。
【0106】
このように、本実施形態の様態4-2において、4つの曲線(第1曲線Cu1’’、第2曲線Cu2’’、第3曲線Cu3及び第4曲線Cu4)からなる隅Rを備える側方接着剤溜め部68’を採用することにより、本実施形態の様態4-1と同様の効果、つまり、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)と、側方接着剤溜め部の新たな問題点とを全て解消することができる。また、本実施形態の様態4-2では、本実施形態の様態4-1と同様に、第1曲線Cu1’’の曲率半径R1’’を、最離間半径R0とすることにより、最離間半径位置P2farを、円周方向に沿った領域へと広げること、つまり、応力集中の起点となる領域を広げることができるため、より効果的に応力集中を分散させることができる。加えて、本実施形態の様態4-2では、垂直壁Vpにより、側方接着剤溜め部68’の境界を画定することにより、側方接着剤溜め部68’の幅を適切に調整し、固定面2bfの領域をより確実に確保することができる。
【0107】
本実施形態の様態4-2では、側方ガイド部2bgの下端部と、垂直壁Vpの下端部との間に隅Rを形成するために、4つの曲線(第1曲線Cu1’’、第2曲線Cu2’’、第3曲線Cu3及び第4曲線Cu4)を接続するものであるが、曲線の数や、曲率半径や、曲線の組み合わせなどは、これに限らない。例えば、隅Rは、第1曲線Cu1’’の両側方に、それぞれ、1つ以上の曲線を連続的かつ滑らかに接続するものであってもよい。
【0108】
以上、本実施形態の様態3及び様態4では、側方接着剤溜め部67,67’,68,68’の隅部に、軸線L方向に延在し、R形の断面形状を有する隅Rを形成することにより、隅部における応力集中を緩和し、弁本体2の破断の発生を抑制すること、つまり、弁本体2の耐圧強度を高めることができる。また、本実施形態の様態3及び様態4では、側方接着剤溜め部67,67’,68,68’の隅部における隅Rの曲率半径を、所定範囲(弁座部の板厚の0.5倍以上かつ最離間半径R0以下)とすることにより、より確実に、応力集中を緩和することができる。
【0109】
なお、本実施形態の様態3及び様態4における隅Rは、弁座部3’,3’’,3’’’の対向する部分と干渉しないように、少なくとも固定面2bfに対して、窪んだ領域を有するものであるが、これに限らない。例えば、図7(b)に示すように、弁座部3Cの下方角部に、切り欠き部3c2が形成される場合、隅Rは、弁座部3Cと干渉しないように、隅部C2の角の部分を丸めて、固定面2bf及び側方ガイド部2bgに対して、連続的かつ滑らかに接続するように形成してもよい。
【0110】
(第2の実施形態)
図10及び図11を用いて、第2の実施形態に係るスライド式切換弁について説明する。第1の実施形態に係るスライド式切換弁100は、弁座部3の摺接面33上に接着剤Adがはみ出ることを回避するために、接着剤溜め部61~66を形成しているのに対し、第2の実施形態に係るスライド式切換弁は、弁座部3の摺接面33上にはみ出た接着剤Adを回避するために、接着剤回避空間71,72を形成している点で相違する。なお、第2実施形態におけるその他の基本構成は、第1の実施形態と同一である。ここで、同一構成には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0111】
図10及び図11に示すように、弁体4Aは、椀状部40bを有する弁体本体40Aを備える。この椀状部40bは、軸線L方向へと突出するとともに、軸線Lと直交する方向に延在する突出部40Pと、軸線Lと直交する方向へと突出するとともに、軸線L方向に延在する一対の摺接部40Sと、を備える。この一対の摺接部40Sは、弁体4Aが弁座部3に対して円滑にスライドできるように、一対の側方ガイド部2bgとの間に僅かな隙間を有している。ここで、図10(c)に示すように、軸線L方向において、突出部40Pの突出量WPは、弁座部3の摺接面33上の接着剤Adのはみ出し幅Wa1より大きく(WP>Wa1)設定される。同様に、図10(d)に示すように、軸線Lと直交する方向において、摺接部40Sの突出量WSは、弁座部3の摺接面33上の接着剤Adのはみ出し幅Wa2より大きく(WS>Wa2)設定される。また、図11(b)に示すように、突出部40Pと開口縁部40aとの間、及び、摺接部40Sと開口縁部40aとの間には、一側段差部4As1及び側方段差部4As2がそれぞれ形成される。ここで、本実施形態における弁座部3の摺接面33上の接着剤Adのはみ出し幅Wa1,Wa2は、予め実験により計測された値に基づくものであり、安全側に構えるために、所定のマージンを加えた値とする。
【0112】
<接着剤回避空間について>
接着剤回避空間71,72は、一端側接着剤回避空間71、及び、側方接着剤回避空間72からなる。ここで、一端側接着剤回避空間71は、図10(c)に示すように、突出部40Pと、一側段差部4As1と、弁座部3の摺接面33と、一端側ガイド部2cgとの間に画定され、矩形形状断面を有する。同様に、側方接着剤回避空間72は、図10(d)に示すように、摺接部40Sと、側方段差部4As2と、弁座部3の摺接面33と、側方ガイド部2bgとの間に画定され、矩形形状断面を有する。なお、本実施形態において、一端側接着剤回避空間71、及び、側方接着剤回避空間72の全容積が、弁座部3の固定面2bfへの固定に用いられる接着剤Adの塗布量以上となるように設定される。
【0113】
これにより、図10(c)に示すように、弁体4Aが、移動方向M1へと移動する際に、突出部40Pが、当接領域Caを介して、一端側ガイド部2cg(図3(c)参照)に当接する。この際、突出部40Pの突出量WP、つまり、一端側接着剤回避空間71は、弁座部3の摺接面33上の接着剤Adのはみ出し幅Wa1より大きく(WP>Wa1)設定されているため、一端側接着剤回避空間71の内部に、摺接面33上へとはみ出した接着剤Adが確実に収容され、弁体4Aの開口縁部40aが接着剤Adと干渉することはない。
【0114】
同様に、図10(d)に示すように、弁体4Aが、移動方向M2へと移動する際に、摺接部40Sが、当接領域Caを介して、側方ガイド部2bgに当接する。この際、摺接部40Sの突出量WS、つまり、側方接着剤回避空間72は、弁座部3の摺接面33上の接着剤Adのはみ出し幅Wa2より大きく(WS>Wa2)設定されているため、側方接着剤回避空間72の内部に、摺接面33上へとはみ出した接着剤Adが確実に収容され、弁体4Aの開口縁部40aが接着剤Adと干渉することはない。
【0115】
このように、本実施形態では、弁座部3の固定手段として、溶接固定に代えて、一端側ガイド部2cg、側方ガイド部2bg及び接着固定を採用していることから、第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を解消することができるとともに、接着剤回避空間71,72を採用することにより、弁体4Aが弁座部3の接着面34から摺接面33上にはみ出た接着剤Adを確実に回避するため、弁座部の固定手段(接着固定)の新たな問題点も解消することができる。
【0116】
以上より、本実施形態において、接着剤回避空間71,72を採用することにより、従来の第1及び第2の問題点(弁座部の位置決め手段、弁座部の固定手段により生じる問題)を全て解消することができる。
【0117】
なお、第1の実施形態における接着剤溜め部61~66と、第2の実施形態における接着剤回避空間71,72とは、別々に設けるものとして説明しているが、これに限らず、第1の実施形態における接着剤溜め部61~66と、第2の実施形態における接着剤回避空間71,72とを組み合わせることにより、仮に、接着剤溜め部61~66を設けているにも関わらず、弁座部3の接着面34から摺接面33上に接着剤Adがはみ出てしまった場合でも、接着剤回避空間71,72がフェールセーフとして機能するため、弁体4Aの開口縁部40aが接着剤Adと干渉することはない。
【0118】
<その他>
本実施形態のスライド式切換弁100は、例示する冷凍サイクルシステムだけでなく、あらゆる流体装置及び流体回路に適用可能であることは言うまでもない。また、本発明は、上述した各形態や、各実施形態、随所に述べた変形例に限られることなく、本発明の技術的思想から逸脱しない範囲で、適宜の変更や変形が可能である。
【符号の説明】
【0119】
100 スライド式切換弁
1 ハウジング
1a 挿入口
1c 第2経路
1d 入口経路
1e 第1経路
1s 出口経路
1C C継手管
1D D継手管
1E E継手管
1S S継手管
2,2’,2’’,2’’’,2’’’’,2A,2B 弁本体
2a 弁室(弁本体の内部)
2b 内周壁
2bf 固定面
2bg 側方ガイド部(ガイド部)
2br 窪み部
2c 一端側壁部
2cg 一端側ガイド部(ガイド部)
2cr 窪み部
2d 他端側開口部
20 入口ポート
21 第1接続流路
22 出口接続流路
23 第2接続流路
24 下蓋
25 上蓋
25a 小径部
25b 大径部
26 Oリング
27 止め輪
3,3’,3’’,3’’’,3A,3B,3C,3D, 弁座部
3a’’’ 平板部
3b’’’ 一対の補強部
3c1,3c2 切り欠き部
3s1,3s2 段部
30 第1ポート
31 出口ポート
32 第2ポート
33 摺接面
34 接着面
4,4A 弁体
4As1 一側段差部
4As2 側方段差部
40,40A 弁体本体
40a 開口縁部
40b 椀状部(弁体の外周面)
40c 椀状凹部
40P 突出部
40S 摺接部
42 ばね部材
44 連結部
45 締結バンド
5 駆動部
5a ステッピングモータ
5b 直動機構
50 キャン
51 マグネットロータ
52 ステータコイル
53 軸受け部材
53a 第一軸受孔
54 隔壁部材
54a 第二軸受孔
54b 一対の隔壁孔
54d 仕切壁
55 雄ねじ部材
55a 固定部材
55d 雄ねじ部
56 雌ねじ部材
56a ねじ筒部
56a1 雌ねじ部
56b 一対の連結腕部
59 軸材
61~63 一端側接着剤溜め部(接着剤溜め部)
64~68,67’,68’ 側方接着剤溜め部(接着剤溜め部)
71 一端側接着剤回避空間(接着剤回避空間)
72 側方接着剤回避空間(接着剤回避空間)
200 圧縮機
300 室外熱交換機
400 室内熱交換機
500 絞り装置

A,B 接着剤の移動方向
C1,C2 隅部
Ca 当接領域
Cu1,Cu1’,Cu1’’ 第1曲線
Cu2,Cu2’’ 第2曲線
Cu3 第3曲線
Cu4 第4曲線
G 溝部
G1 一端側ガイド部と弁座部との取り付け間隙
G2 側方ガイド部と弁座部との最大取り付け間隙
L 軸線
M 挿入方向
M1 移動方向
M2 移動方向
O 軸心
P1,P2,P3,P4,P5 接続部
P1far,P2far 最離間半径位置
R0 最離間半径
s シール部
Sa 螺合領域
Ss ねじ収容空間
T1,T2,T3 弁座部の板厚
Vp 垂直壁
Wa1 軸線方向の摺接面上の接着剤のはみ出し幅
Wa2 軸線と直交する方向の摺接面上の接着剤のはみ出し幅
WP 突出部の突出量
WS 摺接部の突出量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11