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特開2023-184417電気電子機器収納用箱の特定システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184417
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電気電子機器収納用箱の特定システム
(51)【国際特許分類】
   G06F 30/20 20200101AFI20231221BHJP
   G06F 30/12 20200101ALI20231221BHJP
【FI】
G06F30/20
G06F30/12
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023021365
(22)【出願日】2023-02-15
(31)【優先権主張番号】P 2022098071
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000227401
【氏名又は名称】日東工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001977
【氏名又は名称】弁理士法人クスノキ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安部 雄太
(72)【発明者】
【氏名】中山 直樹
(72)【発明者】
【氏名】小田島 一郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 亮
(72)【発明者】
【氏名】秋山 祐樹
(72)【発明者】
【氏名】一丸 友希
【テーマコード(参考)】
5B146
【Fターム(参考)】
5B146AA21
5B146BA01
5B146DC05
5B146DG01
5B146DG07
5B146DL02
5B146DL08
(57)【要約】
【課題】電気電子機器収納用箱の構成を定めることが可能な電気電子機器収納用箱の特定システムにおいて、溶接で取り付ける被溶接部材の位置指定をできるようにすること。
【解決手段】キャビネット情報記憶部12と、形状パターン情報記憶部15と、演算手段21と、を備えた電気電子機器収納用箱の特定システム1であって、形状パターン情報記憶部には、キャビネットへ溶接する被溶接部材の形状パターンが記憶されるとともに、被溶接部材の周縁に設定する加工/配置禁止領域が記憶され、演算手段は、レイアウト画面上に被溶接部材の形状パターンを指定した場合に、被溶接部材または被溶接部材の加工/配置禁止領域と、他の被溶接部材、穴、キャビネットの加工/配置禁止領域のいずれかと、を対比させて配置可能の判定を行うことが可能な構成とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネット形状に関する情報を記憶させたキャビネット情報記憶部と、
キャビネットに加工される穴の形状パターンまたは配置されるパーツの形状パターンに関する情報を記憶させた形状パターン情報記憶部と、
利用者から入力された情報を用いて、キャビネット情報記憶部に記憶されたキャビネット形状に、形状パターン情報記憶部に記憶された形状パターンを組み合わせてレイアウト画面上に表示するように演算可能な演算手段と、
を備えた電気電子機器収納用箱の特定システムであって、
形状パターン情報記憶部には、キャビネットへ溶接する被溶接部材の形状パターンが記憶されるとともに、被溶接部材の周縁に設定する加工/配置禁止領域が記憶され、
演算手段は、レイアウト画面上に被溶接部材の形状パターンを指定した場合に、被溶接部材または被溶接部材の加工/配置禁止領域と、他の被溶接部材、穴、部品、キャビネットの加工/配置禁止領域のいずれかと、を対比させて配置可能の判定を行うことが可能な電気電子機器収納用箱の特定システム。
【請求項2】
キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具の侵入領域を設定可能とする領域設定手段を備えた請求項1に記載の電気電子機器収納用箱の特定システム。
【請求項3】
領域設定手段は、
キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具の侵入領域となる第1の加工/配置禁止領域を設定可能であり、
かつ、
第1の加工/配置禁止領域の周縁に、キャビネットと被溶接部材との接合部近傍から発生する熱、または、溶接治具から発生する熱への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域を設定可能である請求項2に記載の電気電子機器収納用箱の特定システム。
【請求項4】
領域設定手段は、溶接治具を位置合わせするために用いる位置合わせ部の配置の可否を判定するために用いることが可能な第3の加工/配置禁止領域の境界を、第1の加工/配置禁止領域、または、第2の加工/配置禁止領域の外側に設定可能であり、
第3の加工/配置禁止領域に、他の被溶接部材の設置ができないように規制する制御が可能である請求項3に記載の電気電子機器収納用箱の特定システム。
【請求項5】
被溶接部材の移動、または、追加の可否の選択をユーザが行うことを可能とし、
被溶接部材の移動、または、追加が選択された場合に、レイアウト画面上の被溶接部材の形状パターンの表示において、第3の加工/配置禁止領域が表示され、
被溶接部材の移動、または、追加が選択されない場合に、レイアウト画面上の被溶接部材の形状パターンの表示において、第1の加工/配置禁止領域、または、第2の加工/配置禁止領域が表示される
被溶接部材移動手段を備えた請求項4に記載の電気電子機器収納用箱の特定システム。
【請求項6】
領域設定手段は、穴の外周に穴加工の熱影響対策となる加工/配置禁止領域を設定可能であり、かつ、溶接治具から発生する熱への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域を設定可能であり、
キャビネットと被溶接部材との接合部近傍から発生する熱、または、溶接治具から発生する熱への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域の領域幅が、穴の外周に穴加工の熱影響対策として設定される加工/配置禁止領域の領域幅よりも長く設定される請求項2または請求項3に記載の電気電子機器収納用箱の特定システム。
【請求項7】
被溶接部材または被溶接部材の加工/配置禁止領域と、穴または穴の加工/配置禁止領域と、の重複を検出する領域判定手段を備えた請求項6に記載の電気電子機器収納用箱の特定システム。
【請求項8】
領域設定手段は、キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具の侵入領域となる第1の加工/配置禁止領域の境界を表示可能な請求項2又は請求項3に記載の電気電子機器収納用箱の特定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気電子機器収納用箱の特定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
電気電子機器収納用のキャビネットについては、その用途、構造、サイズ等に応じたメーカー標準品が非常に多数存在する。そこで、顧客や入力作業者が通信回線を通じてメーカー側のデータベースにアクセスしてキャビネットの構成を選択し発注することができるシステムが開発されている。また特許文献1に記載されているように、キャビネットに加工が必要な場合に、選択したキャビネットの面上に、加工しようとする穴形状を配置して、キャビネットデータベースのキャビネットに設定された加工禁止領域と対比して適否を判定した上で、メーカーに発注可能とする穴加工位置指定システムが利用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-182427号公報
【0004】
ところで、従来の上記したシステムは、パーツを固定するための穴形状の指定を行えるようにするという考え方で構築されており、部材の溶接を指定したい場合があっても、システム上で、そのような指定をすることができなかった。つまり、別途、システム外での対応が必要となっていた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本件の発明者は、この点について鋭意検討することにより、解決を試みた。本発明が解決しようとする課題は、電気電子機器収納用箱の構成を定めることが可能な電気電子機器収納用箱の特定システムにおいて、溶接で取り付ける被溶接部材の位置指定をできるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、キャビネット形状に関する情報を記憶させたキャビネット情報記憶部と、キャビネットに加工される穴の形状パターンまたは配置されるパーツの形状パターンに関する情報を記憶させた形状パターン情報記憶部と、利用者から入力された情報を用いて、キャビネット情報記憶部に記憶されたキャビネット形状に、形状パターン情報記憶部に記憶された形状パターンを組み合わせてレイアウト画面上に表示するように演算可能な演算手段と、を備えた電気電子機器収納用箱の特定システムであって、形状パターン情報記憶部には、キャビネットへ溶接する被溶接部材の形状パターンが記憶されるとともに、被溶接部材の周縁に設定する加工/配置禁止領域が記憶され、演算手段は、レイアウト画面上に被溶接部材の形状パターンを指定した場合に、被溶接部材または被溶接部材の加工/配置禁止領域と、他の被溶接部材、穴、部品、キャビネットの加工/配置禁止領域のいずれかと、を対比させて配置可能の判定を行うことが可能な電気電子機器収納用箱の特定システムとする。
【0007】
また、キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具の侵入領域を設定可能とする領域設定手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0008】
また、領域設定手段は、キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具の侵入領域となる第1の加工/配置禁止領域を設定可能であり、かつ、第1の加工/配置禁止領域の周縁に、溶接治具から発生する熱への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域を設定可能である構成とすることが好ましい。
【0009】
また、領域設定手段は、溶接治具を位置合わせするために用いる位置合わせ部の配置の可否を判定するために用いることが可能な第3の加工/配置禁止領域の境界を、第1の加工/配置禁止領域、または、第2の加工/配置禁止領域の外側に設定可能であり、第3の加工/配置禁止領域に、他の被溶接部材の設置ができないように規制する制御が可能である構成とするのが好ましい。
【0010】
また、被溶接部材の移動、または、追加の可否の選択をユーザが行うことを可能とし、被溶接部材の移動、または、追加が選択された場合に、レイアウト画面上の被溶接部材の形状パターンの表示において、第3の加工/配置禁止領域が表示され、被溶接部材の移動、または、追加が選択されない場合に、レイアウト画面上の被溶接部材の形状パターンの表示において、第1の加工/配置禁止領域、または、第2の加工/配置禁止領域が表示される被溶接部材移動手段を備えた構成とするのが好ましい。
【0011】
また、領域設定手段は、穴の外周に穴加工の熱影響対策となる加工/配置禁止領域を設定可能であり、かつ、溶接治具から発生する熱への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域を設定可能であり、キャビネットと被溶接部材との接合部近傍から発生する熱、または、溶接治具から発生する熱への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域の領域幅が、穴の外周に穴加工の熱影響対策として設定される加工/配置禁止領域の領域幅よりも長く設定される構成とすることが好ましい。
【0012】
また、穴、又は、穴の加工/配置禁止領域との重複を検出する領域判定手段を備えた構成とすることが好ましい。
【0013】
また、領域設定手段は、キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具の侵入領域となる第1の加工/配置禁止領域を表示可能な構成とするのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明では、電気電子機器収納用箱の構成を定めることが可能な電気電子機器収納用箱の特定システムにおいて、溶接で取り付ける被溶接部材の位置指定をできるようにすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態における電気電子機器収納用箱の特定システムの概念図である。
図2図1に示すシステムで端末のモニターに表示される画面の例を示す図である。
図3】キャビネット情報記憶部に記憶されているデータベースの例を示す図である。
図4】パーツ情報記憶部に記憶されているデータベースの例を示す図である。
図5】形状パターン情報記憶部に記憶されているデータベースの例を示す図である。
図6】選定した穴やパーツの周囲が加工/配置禁止領域となることを示す図である。
図7】電気電子機器収納用箱の穴加工の指定に利用される画面の例を示す図である。
図8】電気電子機器収納用箱の扉に設定された加工/配置禁止領域を避けて穴や被溶接部材の位置指定を行った例を示す図である。
図9】電気電子機器収納用箱の扉に設定された加工/配置禁止領域に被溶接部材の位置指定を行おうとした例を示す図である。ただし、警告のために位置指定しようとした部分の表示色を変えている。
図10】治具を用いて板材に対してスタッドボルトを溶接する手順の例を示す図である。
図11】被溶接部材の固定箇所と、被溶接部材の外形と、治具の利用のために確保されている領域(治具領域)と、溶接作業による熱影響が出る範囲として確保されている領域(熱影響領域)の位置づけの例を示す図である。
図12図11に示した位置づけの各部分のうち、被溶接部材の固定箇所と、治具領域を画面表示するが、被溶接部材の外形と熱影響領域については画面表示しない例を表す図である。ただし、熱影響領域については判定に利用している。
図13図11に示した位置づけの各部分のうち、被溶接部材の固定箇所と、被溶接部材の外形と、治具領域を画面表示するが、熱影響領域については画面表示しない例を表す図である。ただし、熱影響領域については判定に利用している。
図14】板材をレーザー加工機により溶断する例を示す図である。
図15】二つの被溶接部材の位置指定を行う際に、一方の被溶接部材と他方の第2の加工/配置禁止領域が重複したため、警告表示をすることを表す図である。
図16】二つの被溶接部材の位置指定を行う際に、一方の第2の加工/配置禁止領域と他方の第2の加工/配置禁止領域が重複したが、警告表示をしないことを表す図である。
図17】被溶接部材と穴加工の位置指定を行う際に、穴と被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域が重複したため、警告表示をすることを表す図である。
図18】被溶接部材と穴加工の位置指定を行う際に、穴の加工/配置禁止領域と被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域が重複したが、警告表示をしないことを表す図である。
図19】二つの被溶接部材の位置指定を行う際に、位置を近づけると警告表示がなされたことを示す図である。
図20】二つの被溶接部材の位置指定を行う際に、位置を近づけると警告表示がなされたことを示す図である。
図21】出力・表示手段を利用する例を示すフロー図である。ただし、被溶接部材を指定するか否かを確認する例についてだけ説明をする。
図22】被溶接部材の周りに、溶接治具を位置合わせするために用いる位置合わせ部を配置した例を示す図である。
図23】三本の棒状の部材を用いて位置合わせ部を構成した場合における、被溶接部材などと棒状の部材の配置例を示す図である。ただし、板材側からそれらを見た状態を簡易に表した図である。
図24】溶接治具と、位置合わせ部と、第2の加工/配置禁止領域と、第3の加工/配置禁止領域の関係例を示す図である。
図25】レイアウト画面上に表示可能な第2の加工/配置禁止領域と、第3の加工/配置禁止領域の双方を表示した例を示す図である。
図26】板材に座標設定をした例を示す図である。
図27】ある被溶接部材の第3の加工/配置禁止領域に、他の被溶接部材の一部が位置する状態となろうとしていることを表す図である。
図28】ある被溶接部材を板材に溶接しようとした際に、他の被溶接部材と位置合わせ部が衝突した状態を表す図である。
図29】他の被溶接部材に関する第2の加工/配置禁止領域が、配置しようとする被溶接部材に関する第3の加工/配置禁止領域と重複する例を示す図である。
図30】他の被溶接部材を溶接することにより板材が変形した部分付近に、位置合わせ部を配置しようとした状態を表す図である。
図31】被溶接部材の位置を移動させることで、第3の加工/配置禁止領域が加工/配置禁止領域に重なる状態となることを表す例を示す図である。
図32】「被溶接部材移動手段」を機能させるために利用される「溶接ナット変更・追加」と示された部分で、「あり」と「なし」のいずれかを選択することができるようにした例を示す図である。
図33図32に示す「溶接ナット変更・追加」と示された部分で、「あり」と「なし」の選択をした場合における画面表示の違いを示した図である。ただし、(a)は「あり」を選択した場合の画面表示であり、(b)は「なし」を選択した場合の画面表示である。
図34図33に示す表示の違いが、第2の加工/配置禁止領域の境界が表示されていることと第3の加工/配置禁止領域の境界が表示されていることの違いによりもたらされていることを示す図である。
図35】板材を加工する手順例を示すとともに、被溶接部材(溶接パーツ)の移動や追加がない場合とある場合で、第3の加工/配置禁止領域の境界の表示の必要性に差が生じることを表す図である。
図36】穴及び穴に関する加工/配置禁止領域と、被溶接部材に関する第3の加工/配置禁止領域とが重なる状態となることを表す例を示す図である。
図37図36に示す状態としたことにより、位置合わせ部の棒状の部分の一部が穴の上に位置していることを表す図である。
図38】被溶接部材が溶接される箇所の周りに複数の穴が設けられる例を示す図である。
図39】電気電子機器収納用箱に実装したルーバを保護するためにルーバに緩衝材を当てて電気電子機器収納用箱を梱包材に収納することを示す図である。ただし、電気電子機器収納用箱などを梱包材に収納する前の状態を表している。
図40】実装させるオプション品とは離れた位置に穴を設けている状態の例を示す図である。
図41】配送時にオプション品が実装される予定の穴の周囲に緩衝材のための加工/配置禁止領域を設定した例を示す図である。
図42】配送時にオプション品が実装される予定の穴の周囲に緩衝材のための加工/配置禁止領域と穴が重複した例を示す図である。ただし、この状態が生じたこと判定したことにより、警告表示を行っている例である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に発明を実施するための形態を示す。本実施形態の電気電子機器収納用箱の特定システム1は従来にない、さまざまな利用の仕方を可能にする。
【0017】
ここで、実施形態の電気電子機器収納用箱の特定システム1について説明をする。この電気電子機器収納用箱の特定システム1は、盤、ラック、制御盤、配電盤などの電気機器・電子機器を搭載した電気電子機器収納用箱の特定をするシステムとして用いたり、穴加工をする位置や部品を配置する位置を指定するシステムとして用いたりすることができる。特に、顧客などの利用者から入力された情報を用いて、電気電子機器収納用箱の構成を特定することができるシステムとして用いることができる。
【0018】
この電気電子機器収納用箱の特定システム1は、メーカー側で用意したサーバ3に備えられた出力・表示手段31を用いて利用者側の端末71に専用ソフトの画面を表示させることができるものである(図1及び図2参照)。また、この電気電子機器収納用箱の特定システム1は、利用者が入力手段73を操作することで、端末71に表示された画面を通じて、筐体のサイズや品番を入力したり、キャビネットの加工内容について定めたりすることができる。また、この電気電子機器収納用箱の特定システム1は、定めた内容に則り、ネットワークを介して設計や発注を可能とするものである。
【0019】
例えば、電気電子機器収納用箱の特定システム1を電気電子機器収納用箱の選定システムとして利用する場合は、ユーザが所望するキャビネットサイズなどの入力内容を基にメーカーの用意した記憶媒体11に記憶されたデータベースの中から入力情報に一致するキャビネットの選定を行う。また、システムを穴加工・パーツ位置指定システムとして利用する場合は、システムで選定したキャビネットに穴加工やパーツ位置を指定して所望するキャビネットを特定することができるシステムである。
【0020】
このシステムは、メーカーが用意したサーバ3が、ネットワークを介して利用者側のパソコンやタブレットなどの端末71とつながることで、利用環境の構築を可能とするものである。利用者側で利用する端末71には画面表示が可能なモニター72と、キーボードなどの入力手段73と、マウスやキーボードの矢印キーに代表される移動手段74と、が含まれていればよいが、これらはタッチパネルなどの周知の機器を用いることができる。
【0021】
図1に示す例では、メーカー側で管理するサーバ3は、データベースとなる情報を記憶可能な記憶媒体11と、演算手段21と、演算結果を端末71に向けて出力してモニター72に表示をさせる出力・表示手段31と、を備えている。演算手段21としては、入力手段73を用いて入力された入力情報によって記憶媒体11の各記憶部にアクセスしたり、得られた情報を基に演算したり、出力・表示手段31の表示を変えるように出力して、利用者側のモニター72に表示させることができるようなものであればよく、プロセッサが例示できる。
【0022】
電気電子機器収納用箱の特定システム1はキャビネット形状に関する情報を記憶させたキャビネット情報記憶部12と、キャビネットに加工される穴の形状パターンまたは配置されるパーツの形状パターンに関する情報を記憶させた形状パターン情報記憶部15と、利用者から入力された情報を用いて、キャビネット情報記憶部12に記憶されたキャビネット形状に、形状パターン情報記憶部15に記憶された形状パターンを組み合わせてレイアウト画面上に表示するように演算可能な演算手段21と、を備えている。
【0023】
また、電気電子機器収納用箱の特定システム1の形状パターン情報記憶部15には、キャビネットへ溶接する被溶接部材の形状パターンが記憶されるとともに、被溶接部材の周縁に設定する加工/配置禁止領域が記憶されるのが好ましい。また、演算手段21は、レイアウト画面上に被溶接部材の形状パターンを指定した場合に、被溶接部材または被溶接部材の加工/配置禁止領域と、他の被溶接部材、穴、部品、キャビネットの加工/配置禁止領域のいずれかと、を対比させて配置可能の判定を行うことが可能な構成とするのが好ましい。
【0024】
サーバ3に備えられた記憶手段である記憶媒体11に、キャビネットの形状の情報を記憶させたキャビネット情報記憶部12と、キャビネットに加工される穴の形状パターンやキャビネットに溶接で取り付けられる被溶接部材の形状パターンの情報などを記憶させた形状パターン情報記憶部15と、キャビネットに設置されるパーツの情報などを記憶させたパーツ情報記憶部13と、を備えるようにするのが好ましい。この記憶手段は、キャビネットやパーツのデータベースのほか、顧客側が作成した図形パターン、作成した図面などを記憶させることができるようにするのが好ましい。
【0025】
なお、代表的な例から仕様変更した情報が記憶される仕様変更情報記憶部14を備えるようにするのがより好ましい。仕様変更とは、通常のキャビネットとは異なるようにすることであり、異なる穴形状や穴の位置の指定、扉の位置の変更、片扉から両扉への変更、溶接パーツの追加、筐体に取り付けるパーツの追加などが例示できる。
【0026】
実施形態のキャビネット情報記憶部12やパーツ情報記憶部13は、メーカーが標準品としている多数のキャビネットやパーツのそれぞれについて、品番、形状、図面データ、価格等の情報を登録しているデータベースを備えている(図3及び図4参照)。データベース毎に記憶媒体11を用意しても良いが、それぞれのデータベースは1つの記憶媒体11に記憶されているものでもよい。
【0027】
また、実施形態の形状パターン情報記憶部15やパーツ情報記憶部13は、穴の形状やパーツの形状、パーツに対応する穴の形状の情報、穴の周縁やパーツの周縁に設定した加工/配置禁止領域42などの情報が記憶されている(図4から図6参照)。また、記憶媒体11は、利用者側が作成した図形パターン、作成した図面などを記憶させることができるものであることが好ましい。
【0028】
システムを利用する利用者は、モニター72に表示された画面を見ながら、キャビネットのサイズや品名を入力したり、キャビネットを構成するハンドル、基板、蝶番、アース端子、図面ホルダなどの構成部品の変更や、扉の形態の変更(逆扉、両扉など)などの仕様変更をしたりすることが可能である(図2参照)。このようなことを可能とするために、図1に示す例では、サーバ3に仕様変更情報記憶部14が備えられている。
【0029】
実施形態のシステムは、キャビネットの情報の入力や構成部品の情報の入力や、取り付けるオプションパーツの選択に利用することが可能な入力作業用表示部51をモニター72の画面に表示可能な入力画面表示手段32を備えている。また、選定したキャビネットの外形図、サイズ、構成部品、選択したパーツなどを表示する筐体イメージ表示部52を表示可能な筐体イメージ表示手段33をシステムに備えている。また、実施形態のシステムは、選定したキャビネットや加工における費用、パーツ費用を見積価格表示部53に表示する見積価格表示手段34を備えている。また、このシステムには画面に表示される表示内容を変更可能な表示変更手段35を備えている。
【0030】
ところで、顧客の入力手段により、キャビネットに穴位置やパーツ位置を指定する場合、穴位置やパーツを指定して筐体設計が可能な穴加工・パーツ指定設計支援システムの画面に移動させる。その後、利用者が入力手段で筐体情報の入力し、この入力内容から、キャビネットに穴位置やパーツ位置を指定する。このようなことを可能とするため、実施形態では、キャビネットの領域図を呼び出すことを可能とする対象選択手段22を備えている。また、呼び出したキャビネットの領域図上に配置する穴形状パターン、被溶接部材の形状を指定可能な形状パターン選択手段23を備えている。また、穴形状パターン、被溶接部材の位置を移動しながら指定可能な形状パターン移動手段24を備えている。更には、穴形状・被溶接部材が配置可能かを判定可能な領域判定手段(図示せず)を備えている。
【0031】
また、実施形態のレイアウト画面上にはキャビネットの六面図や構成部品に加工/配置可能領域と加工/配置禁止領域を視認可能に表示させ、被溶接部材の位置を指定することができる(図7図8参照)。図7に示す例では、キャビネットの正面を示す図に加工/配置可能領域41と加工/配置禁止領域42を視認可能に表示させている。位置指定した被溶接部材が加工/配置禁止領域42に重複する場合、配置できない旨などを表示させるのが好ましい(図8図9参照)。このように構成すれば、被溶接部材の設置可否判定を容易に行うことができる。また、穴と被溶接部材の双方について配置判定できる。また、穴と被溶接部材の双方を混在させても配置判定できる。
【0032】
ここで、キャビネットの板材92上に被溶接部材であるスタッドボルト91を溶接する際の溶接方法について説明をする(図10参照)。例えば、板材92にスタッドボルト91の先端に設けた突起91aを当て、その後スタットボルトを把持する溶接治具93を用いてアークを発生させ、スタッドボルト91及び/又は板材92を溶融させて接着(溶接)する。上記は一例であり、他の例では、板材92に溶接治具93を当接させない状態で、アークを発生させて溶接することもできる。
【0033】
実際には利用する溶接方法が、事前に確定していない場合もあるため、溶接しようとする箇所に穴が空いていた場合には溶接が困難となるおそれがある。このため、被溶接部材に対する考慮だけでなく、設備を考慮して禁止領域を領域設定手段25で、設定しておくのが好ましい。
【0034】
ところで、図7図8図11及び図13に示すことから理解されるように、被溶接部材の固定箇所と被溶接部材の外形を表示するようにする。この場合、被溶接部材と第1の加工/配置禁止領域や、他の部分の位置関係が把握しやすくなる。また、図7図8図11及び図12に示す例から理解されるように、画面への表示として、被溶接部材の固定箇所を表示するのが好ましい。このようにすれば、被溶接部材を溶接する部分が認識しやすくなる。また、また、図示はしないが被溶接部材の固定箇所は表示せずに被溶接部材の外形を表示するようにしても良い。
【0035】
図11から図13に示す例では、被溶接部材の固定箇所の回りに第1の加工/配置禁止領域、さらに外側に第2の加工/配置禁止領域を設定している。第1の加工/配置禁止領域は、溶接治具93を配置できるように確保される部分を表している。被溶接部材の溶接による取り付けでは、穴加工とは異なり、設定箇所周りの板材92に溶接治具93を接触させて作業を行う可能性があるため、その作業をスムーズに実施できるようにするために第1の加工/配置禁止領域が設定される。この第1の加工/配置禁止領域は被溶接部材の固定箇所の周縁に設定されることに限らず、キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁に設定されてもよい。
【0036】
このようなことから理解されるように、キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具93の侵入領域を設定可能とする領域設定手段25を備えた構成とするのが好ましい。
【0037】
また、第2の加工/配置禁止領域は溶接作業による影響が表れやすい部分であり、入熱による板材92のひずみや溶接によるスパッタなどが懸念される部分が例示できる。
【0038】
このようなことを可能とするため、領域設定手段25は、キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具93の侵入領域となる第1の加工/配置禁止領域を設定可能であり、かつ、第1の加工/配置禁止領域の周縁に、被溶接部材と板材92の接合部近傍から発生する熱、または、溶接治具93から発生する熱への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域を設定可能である構成とするのが好ましい。
【0039】
この例から理解されるように、作業のために確保される領域と、溶接による影響を考慮した領域を分けて制御に用いることが好ましいが、最も外側に位置することになる領域だけを制御に用いるようにしても良い。例えば、その領域の最も外側の境界よりも内側にあるか否かを、判定に利用するようにしても良い。
【0040】
ここで、キャビネットの板材92に穴加工を行う方法について説明をする。図14に示すことから理解されるように、通常、キャビネットを構成する板材92にレーザー加工機94で発生させたレーザーを当てて動かすことで部材を溶断し、穴加工を行う。なお、部材の端部などにはレーザーによる入熱・焼けなどがある。このため、領域設定手段25において、加工部分の外周側に加工/配置禁止領域を設定するようにしている(図6参照)。また、加工/配置禁止領域としては、隣接する穴があった場合にキャビネットの強度を保つ距離になるように設定している。
【0041】
穴加工で用いられるレーザー加工と、溶接作業に用いられる溶接加工では、溶接加工のほうが利用される熱量が大きくなり、熱影響が大きく生じる傾向にある。このため、レーザー加工の禁止領域の範囲と、溶接加工の禁止領域の範囲を異なるように設定する構成とするのが好ましい。
【0042】
このようなことを可能とするため、領域設定手段25は、穴の外周に穴加工の熱影響対策となる加工/配置禁止領域を設定可能であり、かつ、被溶接部材と板材92の接合部近傍から発生する熱、または、溶接治具から発生する熱、への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域を設定可能であり、被溶接部材と板材92の接合部近傍から発生する熱、または、溶接治具93から発生する熱への熱対策領域となる第2の加工/配置禁止領域の領域幅が、穴の外周に穴加工の熱影響対策として設定される加工/配置禁止領域の領域幅よりも長く設定される構成とするのが好ましい。
【0043】
ところで、例えば、被溶接部材同士や被溶接部材と穴が重複する位置に配置されようとする場合は、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。そのような場合だけではなく、既に設定されている被溶接部材の第1の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに被溶接部材が配置されようとする場合は、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。
【0044】
新たに配置されようとする被溶接部材の第1の加工/配置禁止領域が既に設定されている被溶接部材若しくは被溶接部材の第1の加工/配置禁止領域と重複する場合も、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。
【0045】
既に設定されている被溶接部材の第1の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに穴や穴の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合は、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。
【0046】
また、既に設定されている穴や穴の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに被溶接部材若しくは被溶接部材の第1の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合は、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。
【0047】
また、既に設定されている被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに被溶接部材が配置されようとする場合は(図15参照)、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。既に設定されている被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに被溶接部材の第1の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合は、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。
【0048】
既に設定されている被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合は(図16参照)、警告をしなかったり、軽度の警告をしたりするものとしても良いが、被溶接部材の第1の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合と同様の警告としても良い。また、既に設定されている被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域と重複するような配置は、そのような配置がそもそもできないように制御してもよいが、そのような配置はできるが警告をするように制御してもよい。この場合は、「メーカーとして性能保証はできない」という旨の警告をすることが例示できる。
【0049】
また、既に設定されている被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに穴が配置されようとする場合は(図17参照)、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。同様に、既に設定されている穴と重複するように、新たに被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合は、それができない旨を示す警告をしたり、そのような配置がそもそもできないように制御したりするのが好ましい。
【0050】
また、既に設定されている被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに穴の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合や、既に設定されている穴の加工/配置禁止領域と重複するように、新たに被溶接部材の第2の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合は(図18参照)、警告をしなかったり、軽度の警告をしたりするものとしても良いが、被溶接部材の第1の加工/配置禁止領域が配置されようとする場合と同様の警告としても良い。また、そのような配置がそもそもできないように制御してもよいが、そのような配置はできるが警告はするように制御するようにしてもよい。この場合は、「メーカーとして性能保証はできない」という旨の警告をすることが例示できる。
【0051】
これらの記載から理解されるように、被溶接部材または被溶接部材の加工/配置禁止領域と、穴または穴の加工/配置禁止領域と、の重複を検出する領域判定手段を備えた構成とするのが好ましい。
【0052】
ところで、実施形態では、被溶接部材の固定箇所の周縁に形成した第1の加工/配置禁止領域をモニター72に表示して視認可能としている。これは、警告表示がなされた場合に、その原因を理解しやすいようにするためである。
【0053】
例えば、第1の加工/配置禁止領域を用いて他の部材や穴などの設定箇所を制限しようとする一方、表示されているのが被溶接部材のみである場合、配置が制限される理由が把握しにくくなる可能性がある(図19参照)。一方、第1の加工/配置禁止領域を用いて他の部材や穴などの設定箇所を制限しようとする場合に、第1の加工/配置禁止領域が表示されていると、配置が制限される理由が直感的に把握しやすくなる(図20参照)。なお、第1の加工/配置禁止領域の外周側の境界を表示できるようにすれば、主な目的を達することができる。また、第1の加工/配置禁止領域が被溶接部材よりも幅広になる場合に視認可否の設定をできるようにすることが特に好ましい。
【0054】
これらの記載から理解されるように、領域設定手段25は、キャビネットへ溶接する被溶接部材の周縁または、被溶接部材の固定箇所の周縁に溶接治具93の侵入領域となる第1の加工/配置禁止領域の境界を表示可能な構成であるのが好ましい。
【0055】
ここで、被溶接部材を指定するか否かを確認するフローの例について説明をする(図21参照)。なお、穴加工などもあわせて検討することもあるが、ここでは、被溶接部材を指定するか否かを確認する例についてだけ説明をする。
【0056】
まず、キャビネットの仕様の入力を行う(S001)。その内容からキャビネットの特定を行う(S002)。この内容から被溶接部材の指定があるか否かを確認する(S003)。ステップ003で被溶接部材の指定があると確認されれば、その指定箇所がキャビネットの加工/配置禁止領域42と重複するか否かを確認する(S004)。
【0057】
ステップ004で被溶接部材の指定箇所がキャビネットの加工/配置禁止領域42と重複しないと確認されれば、他の被溶接部材の加工/配置禁止領域と重複するか否かを確認する(S005)。
【0058】
ステップ005で被溶接部材の指定箇所が他の被溶接部材の加工/配置禁止領域と重複しないと確認されれば、図面の作成を行う(S006)。その後、発注作業を行う(S007)。
【0059】
ステップ003で被溶接部材の指定があると確認されなければ、ステップ006に移行し図面作成を行う。また、ステップ004で被溶接部材の指定箇所がキャビネットの加工/配置禁止領域42と重複すると確認されたり、ステップ005で被溶接部材の指定箇所が他の被溶接部材の加工/配置禁止領域と重複すると確認されたりすれば、当該被溶接部材の配置の調整や、被溶接部材の変更や削除などの調整を行う(S008)。ステップ008で被溶接部材の調整が行われた後、ステップ003に進む。
【0060】
なお、第2の加工/配置禁止領域の領域幅については、被溶接部材と板材92の接合部近傍から発生する熱、または、溶接治具93から発生する熱への熱対策領域となるものであるが、溶接治具93やレーザー加工機の位置合わせ時による座標のズレ対策のため、熱対策領域よりも余裕を持った領域としておくものであっても良い。
【0061】
ところで、溶接治具93を用いた被溶接部材の溶接を精度よく行うようにするために、位置合わせのために使用可能な部品などにより構成された位置合わせ部96を用いるのが好ましい。位置合わせ部96は、スタッドボルト91などの被溶接部材が溶接される板材92と、溶接治具93と、の位置関係の調節又は確認が行えるようにするものであるため、溶接治具93の周りに配置される。
【0062】
図22及び図23に示す例は、棒状の部分96aを溶接治具93の周りに三本配置して位置合わせ部96としている。なお、棒状の部分96aを用いて位置合わせ部96を構成する場合であっても、位置合わせ部96を構成する棒状の部分96aは三本に限ることはない。棒状の部分96aは一本でもよいし、三本以外の複数本でもよい。
【0063】
位置合わせ部96の具体的な構成がどのようなものであるかに関わらず、位置合わせ部96を利用するために必要なスペースが存在する場合、特定システム1で、そのスペースが確保できるようにするのが好ましい。そうしないと、実際に溶接作業を行う場合に、位置合わせ部96の利用を断念しなくてはならないなどの支障が出るからである。
【0064】
図24に示すことから理解されるように、位置合わせ部96にとって必要なスペースは、通常、第1の加工/配置禁止領域、または、第2の加工/配置禁止領域よりも外側に広がるものであるため、電気電子機器収納用箱の特定システム1は、第1の加工/配置禁止領域、または、第2の加工/配置禁止領域の境界の外側に第3の加工/配置禁止領域の境界を設定できるようにするのが好ましい(図25参照)。
【0065】
このため、領域設定手段は、溶接治具93を位置合わせするために用いる位置合わせ部96の配置の可否を判定するために用いることが可能な第3の加工/配置禁止領域の境界を、第1の加工/配置禁止領域、または、第2の加工/配置禁止領域の外側に設定可能とすることが好ましい。また、第3の加工/配置禁止領域に、他の被溶接部材の設置ができないように規制する制御が可能である電気電子機器収納用箱の特定システム1とするのが好ましい。このようにすれば、電気電子機器収納用箱の特定システム1を用いて、溶接治具93を位置合わせするために用いる位置合わせ部96を配置するために必要となる条件を満たせるか否かの確認をすることができる。
【0066】
第3の加工/配置禁止領域は位置合わせ部96に最低限必要な部分だけをカバーできるようにしてもよいが、位置合わせ部96に最低限必要な部分よりも広めに第3の加工/配置禁止領域を設定できるようにするのが好ましい。例えば、位置合わせ部96の棒状の部分96aが複数存在する場合、各々の棒状の部分96aが配置される部分だけをカバーする第3の加工/配置禁止領域を複数設定できるようにするのではなく、一つの第3の加工/配置禁止領域で全ての棒状の部分96aが配置される部分をカバーできる広さに設定できるようにする。
【0067】
例えば図26に示すことから理解されるように、座標設定などをして、自動で板材92に被溶接部材を溶接する場合、被溶接部材の溶接作業などに対して人が調整を行うことは予定されていないため、第3の加工/配置禁止領域に、他の被溶接部材が配置される設定とすると、被溶接部材または位置合わせ部96が破損するおそれがある(図27及び図28参照)。このため、そのような設定はできないように判定するのが好ましい。
【0068】
ただし、部分的に人が溶接作業の調整を行うなどして、被溶接部材または位置合わせ部96の破損を回避できる場合もあるため、第3の加工/配置禁止領域に、他の被溶接部材が配置される設定はできるが、注意喚起がなされたり、その部分の溶接作業は自動でなされないように制御したりすることも考えられる。
【0069】
また、図29に示すことから理解されるように、他の被溶接部材に関する第2の加工/配置禁止領域が、配置しようとする被溶接部材に関する第3の加工/配置禁止領域と重複する場合も想定される。第2の加工/配置禁止領域は、他の被溶接部材を溶接した際に板材92が変形する可能性がある部分であり、実際に変形が生じた箇所に位置合わせ部96が載り、被溶接部材が板材92に対して傾いた状態となることも考えられる(図30参照)。
【0070】
このため、他の被溶接部材に関する第2の加工/配置禁止領域が、配置しようとする被溶接部材に関する第3の加工/配置禁止領域と重複する場合、注意喚起がなされたり、その部分の溶接作業は自動でなされないように制御したりすることが好ましい。もちろん警告表示とするものであってもよい。
【0071】
ところで、電気電子機器収納用箱81を選定した時点で被溶接部材が取り付けられることが定まっている場合であっても、その被溶接部材の位置を変更したい場合も生じ得る。このため、被溶接部材の位置を変更しようとする場合でも、第3の加工/配置禁止領域を利用できるようにするのが好ましい。例えば、図31に示す例では、被溶接部材の位置を移動させることで、第3の加工/配置禁止領域が加工/配置禁止領域42に重なることになる状態を示している。この場合、そのような位置に被溶接部材を変更することはできないようにしてもよいし、注意喚起をするようにしてもよい。
【0072】
ところで、被溶接部材を移動したり追加したりする場合に、第3の加工/配置禁止領域を利用するのは好ましいが、被溶接部材を移動したり、追加したりしない場合に、第3の加工/配置禁止領域が設定されていても影響は小さい。また、穴など溶接以外の設定との関係でいえば、第3の加工/配置禁止領域が設定されていることで、溶接以外の加工や配置ができる領域を狭めることになってしまう。
【0073】
このため、入力画面で、被溶接部材の位置変更や追加の有無を選択できるようにするのが好ましい。実施形態では、被溶接部材の位置変更や追加の有無を選択できるようにする「被溶接部材移動手段55」を備えている。図32に示す例では、「溶接ナット変更・追加」と示された部分が「被溶接部材移動手段55」を機能させるために利用される部分であり、「あり」と「なし」のいずれかを選択することができるようにしている。
【0074】
図33には、「溶接ナット変更・追加」と示された部分で「あり」と選択した場合の画面表示例と「なし」と選択した場合の画面表示例を示している。「あり」と選択した場合の方が「なし」と選択した場合よりも、円が大きくなっており、他の設定ができる領域を狭めていることが分かる。
【0075】
この違いは、被溶接部材と関連するように登録された第2の加工/配置禁止領域の境界までを利用するのか、第3の加工/配置禁止領域の境界までを利用するのかの違いである(図34参照)。第2の加工/配置禁止領域は、被溶接部材の外周の第1の加工/配置禁止領域から外側に設定されている溶接治具93から発生する熱に対する影響を考慮して配置/加工などできない領域として設定しているものである。このため、この第2の加工/配置禁止領域は、被溶接部材の位置変更や追加に関わらず設定が必要となる。したがって、被溶接部材の位置変更や追加をしない場合には、第2の加工/配置禁止領域の境界が最も外側の境界となる。通常、初期設定から変更がない場合は、第3の加工/配置禁止領域の設定は不要である(図35参照)。
【0076】
第3の加工/配置禁止領域は、位置合わせ部96が被溶接部材と接触しないように設定することを可能とする領域であり、被溶接部材の位置変更や追加を行う場合には、第3の加工/配置禁止領域の境界が最も外側の境界となる。
【0077】
実施形態においては、必要に応じて、加工/配置禁止領域の範囲を設定することができるため、別途設定したい穴の加工などにおける位置の制限などを抑制することができる。なお、実施形態の「被溶接部材移動手段55」は、被溶接部材などの位置変更や追加の有無にあわせて、加工/配置禁止領域を拡張したり、縮小したりすることを自由に変更することができる。
【0078】
これらの記載より理解されるように、電気電子機器収納用箱の特定システム1は、被溶接部材の移動、または、追加の可否の選択をユーザが行うことを可能とし、被溶接部材の移動、または、追加が選択された場合に、レイアウト画面上の被溶接部材の形状パターンの表示において、第3の加工/配置禁止領域が表示され、被溶接部材の移動、または、追加が選択されない場合に、レイアウト画面上の被溶接部材の形状パターンの表示において、第1の加工/配置禁止領域、または、第2の加工/配置禁止領域が表示される被溶接部材移動手段55を備えた構成とするのが好ましい。なお、被溶接部材の移動、または、追加が選択されない場合に、第1の加工/配置禁止領域として設定しておくものであっても良いが、熱影響や溶接治具93やレーザー加工機の位置合わせ時による座標のズレが生じる虞もあるため、第2の加工/配置禁止領域として設定しておくことが好ましい。
【0079】
ところで、穴の加工/配置禁止領域は穴を加工する際の熱影響を考慮した境界であるため、画面上で穴と被溶接部材が重複するような場合は、被溶接部材に傾きが生じる虞があることの注意表示をすることが好ましい。もちろん警告表示とするものであってもよい。
【0080】
また、穴の加工方法の選択によっては穴の周囲に変形が生じ難い場合があるため、第3の加工/配置禁止領域は、穴自体との重複をチェックすることは意味があるが、穴の加工/配置禁止領域との重複をチェックすることに意味がないことも想定される。穴の加工/配置禁止領域が変形していなければ、位置合わせ部96は穴の加工/配置禁止領域に載せることができ得るからである。
【0081】
このため、第3の加工/配置禁止領域との重複のチェックは、穴の加工/配置禁止領域に対してはおこなわず、穴に対しておこなうようにしてもよい。なお、穴に関しては、第3の加工/配置禁止領域との重複のチェックは行わないようにしてもよい。このようにしても、通常、位置合わせ部96や穴の損傷は生じない(図36及び図37参照)。
【0082】
ただし、被溶接部材を溶接しようとする部分の周囲に穴が複数あると、溶接しようとする被溶接部材の周縁の強度が確保できない場合がある(図38参照)。また、場合によっては、位置合わせ部96が設置できなくなる虞もある。このため、第2の加工/配置禁止領域の境界と、第3の加工/配置禁止領域の間の面積と、穴の面積が所定以上の場合、もしくは複数の穴が指定された場合などには、被溶接部材の配置ができないようにしてもよいし、第1から第3の加工/配置禁止領域のさらに外側に第4の加工/配置禁止領域を設定し、複数の穴が指定された場合でも問題ない領域として設定しておくものであっても良い。
【0083】
ところで、電気電子機器収納用箱の特定システム1を利用して、売買する電気電子機器収納用箱81が定まり、売買契約が進むと、該当する電気電子機器収納用箱81が梱包材83に詰められ、指定先に送付される。また、電気電子機器収納用箱81の送付は、穴加工がされた位置に窓部材やルーバなどのオプション品を実装させた状態で、なされる場合がある。
【0084】
その場合、実装させたオプション品が損傷しないように緩衝材82を入れたうえで梱包することがある(図39)。しかし、実装させたオプション品の回りにオプション品を取り付けない穴の加工を指定していた場合には、緩衝材82が近くの穴に落下することなどが生じ得る。例えば図40に示すように、オプション品を取り付けない穴の加工を、実装させたオプション品から遠い位置に指定していた場合には、このようなおそれが少ないが、実装させたオプション品の真横にオプション品を取り付けない穴の加工を指定していた場合には、このようなおそれが高まる。また、このようなことが生じることにより、緩衝材82とオプション品が擦れてオプション品に傷がついたりする虞などがある。
【0085】
そのため、輸送時にオプション品を実装させる穴を指定する場合には、穴の加工/配置禁止領域の外側に、緩衝材82のずれなどを抑止するために穴の配置を禁止する加工/配置禁止領域を設定できるようにするのが好ましい(図41及び図42参照)。このようにすることで輸送時に緩衝材82がずれて隣の穴に入り込んでしまうことを抑制することができる。
【0086】
このようなことを行えるようにするために、緩衝材82の配置を確保するための加工/配置禁止領域と他の穴や他の部材の緩衝材82の加工/配置禁止領域との干渉を確認するのが好ましい。このようなことがなされる場合、穴と緩衝材82の加工/配置禁止領域が重複している場合や、緩衝材82の加工/配置禁止領域同士が重複している場合は加工できない旨の「警告表示」を行うようにするのが好ましい(図42参照)。ただし、緩衝材82の配置は、電気電子機器収納用箱81の機能面などを大きく左右するものではないため、「注意喚起」などにしてもよい。
【0087】
また、緩衝材82の加工/配置禁止領域同士が重複する場合、その2つの実装させたオプション品を覆う緩衝材82が存在する場合には、配置可能と判断を変えることができるようにしてもよい。
【0088】
以上、実施形態を例に挙げて本発明について説明してきたが、本発明は上記実施形態に限定されることはなく、各種の態様とすることが可能である。例えば、被溶接部材に関するフローについて、フローの構成として上記した全部が、順番通りに存在している必要はない。発明の趣旨に背かない範囲で、その一部がなかったり、その他の要素が入っていたり、順番が入れ替えられしていても、問題はない。また、被溶接部材はスタッドボルト以外のものであってもよい。
【符号の説明】
【0089】
1 電気電子機器収納用箱の特定システム
12 キャビネット情報記憶部
15 形状パターン情報記憶部
21 演算手段
25 領域設定手段
55 被溶接部材移動手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
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