(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018442
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】区画貫通処理部材
(51)【国際特許分類】
E04B 1/94 20060101AFI20230201BHJP
H02G 3/22 20060101ALI20230201BHJP
F16L 5/04 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
E04B1/94 F
H02G3/22
F16L5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122581
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】栗山 英祐
【テーマコード(参考)】
2E001
5G363
【Fターム(参考)】
2E001DE04
2E001EA01
2E001FA03
2E001GA65
2E001HF12
2E001MA08
5G363AA05
5G363BA01
5G363BA07
5G363CA05
5G363CA07
5G363CA20
5G363CB12
(57)【要約】
【課題】簡素化した方法で区画貫通処理構造を施工することができ、かつ施工後においても性能にばらつきが少ない区画貫通処理構造を形成することができる区画貫通処理部材を提供する。
【解決手段】建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を防火構造とする区画貫通処理部材1であって、仕切り部11の外面11A
1と一方の面3Bが当接して配置され、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cを覆うカバー部3と、カバー部3の他方の面3A側に突出し、内部に耐火材41が設けられた筒状部位40を有し、筒状部位40の内部に挿通体21が挿通される胴体部4と、カバー部3の一方の面3B側に突出して設けられ、仕切り部11の内面11A
2と係合する係合部5とを備え、カバー部3と係合部5が仕切り部11を両側から挟み込むことで、区画貫通部15に固定される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理部材であって、
前記仕切り部の外面と一方の面が当接し、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口を覆うカバー部と、
前記カバー部の他方の面側に突出し、かつ内部に耐火材が設けられた筒状部位を有し、前記筒状部位の内部に前記挿通体が挿通される胴体部と、
前記カバー部の一方の面側に突出して設けられ、前記仕切り部の内面と係合する係合部とを備え、
前記カバー部と前記係合部が前記仕切り部を両側から挟み込むことで、前記区画貫通部に固定される、区画貫通処理部材。
【請求項2】
前記仕切り部に対する前記係合部の位置関係を調整するアジャスタ機構を備える、請求項1に記載の区画貫通処理部材。
【請求項3】
前記アジャスタ機構は、前記胴体部の内壁面又は外壁面に設けられている、請求項2に記載の区画貫通処理部材。
【請求項4】
前記アジャスタ機構は、前記カバー部に設けられている、請求項2に記載の区画貫通処理部材。
【請求項5】
前記アジャスタ機構は、前記仕切り部に対する前記係合部の位置関係を段階的に調整可能である、請求項2~4のいずれか1項に記載の区画貫通処理部材。
【請求項6】
分割可能である、請求項1~5のいずれか1項に記載の区画貫通処理部材。
【請求項7】
前記耐火材が、加熱により膨張する熱膨張性部材である、請求項1~6のいずれか1項に記載の区画貫通処理部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物などの仕切り部において形成される区画貫通処理構造を形成するための区画貫通処理部材に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、オフィスビル、学校等の建築物において、壁等の仕切り部には、ケーブル類、配管類などの長尺の挿通体を通すために、区画貫通部が設けられることがある。区画貫通部は、いずれかの区画で火災が発生した際に、他の区画への延焼を防止するために、防火措置を施した構造(防火構造)にすることが求められている。仕切り部は、2枚の壁部からなり、壁部間が中空部となっている中空壁が一般的である。仕切り部を構成する壁として他には、片壁、軽量気泡コンクリート壁(ALC壁)、躯体壁(RC壁)、及び、国土交通大臣が認めた60分耐火構造の壁(個別認定の壁)等を採用するものがある。
【0003】
区画貫通部を防火構造とする方法は、例えば、長尺の挿通体と貫通孔の間隙に、耐火パテなどを充填する方法が知られている。耐火パテを使用する場合、各壁部の貫通孔内部と、挿通体の間には、耐火材よりなる胴体部などが合わせて配設されることもある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に示されるように、各壁部の貫通孔の内周面と、挿通体の間を耐火パテによって塞ぐ場合には、作業性が悪く、作業者によって性能にばらつきが生じるという問題がある。
また、近年、建築現場においては、人手不足が深刻であり、また、熟練の技術者が年々少なくなる傾向にあり、区画貫通処理構造の施工も簡素化することが求められている。
【0006】
そこで、本発明は、簡素化した方法で区画貫通処理構造を施工することができ、かつ施工後においても性能にばらつきが少ない区画貫通処理構造を形成することができる区画貫通処理部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の要旨は、以下のとおりである。
[1]建築物の仕切り部に形成され、かつ内部に長尺の挿通体が挿通される区画貫通部を防火構造とする区画貫通処理部材であって、前記仕切り部の外面と一方の面が当接し、前記仕切り部に設けられる前記区画貫通部の開口を覆うカバー部と、前記カバー部の他方の面側に突出し、かつ内部に耐火材が設けられた筒状部位を有し、前記筒状部位の内部に前記挿通体が挿通される胴体部と、前記カバー部の一方の面側に突出して設けられ、前記仕切り部の内面と係合する係合部とを備え、前記カバー部と前記係合部が前記仕切り部を両側から挟み込むことで、前記区画貫通部に固定される、区画貫通処理部材。
[2]前記仕切り部に対する前記係合部の位置関係を調整するアジャスタ機構を備える、[1]に記載の区画貫通処理部材。
[3]前記アジャスタ機構は、前記胴体部の内壁面又は外壁面に設けられている、[2]に記載の区画貫通処理部材。
[4]前記アジャスタ機構は、前記カバー部に設けられている、[2]に記載の区画貫通処理部材。
[5]前記アジャスタ機構は、前記仕切り部に対する前記係合部の位置関係を段階的に調整可能である、[2]~[4]のいずれかに記載の区画貫通処理部材。
[6]分割可能である、[1]~[5]のいずれかに記載の区画貫通処理部材。
[7]前記耐火材が、加熱により膨張する熱膨張性部材である、[1]~[6]のいずれかに記載の区画貫通処理部材。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、簡素化した方法で区画貫通処理構造を施工することができ、かつ施工後においても性能にばらつきが少ない区画貫通処理構造を形成することができる区画貫通処理部材を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る区画貫通構造を構成する部材を示す分解斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る区画貫通構造を示す断面図である。
【
図3】実施形態における分割可能な区画貫通処理材の構造を示す断面図である。
【
図4】実施形態における係止部の構造を示す断面図である。
【
図5】
図5(a)は、実施形態におけるアジャスタ機構の構造を示す断面図であり、
図5(b)は、
図5(a)のA-A線方向の断面図である。
【
図6】
図6(a)は、実施形態におけるアジャスタ機構の構造を示す断面図であり、
図6(b)は、
図6(a)のA-A線方向の断面図である。
【
図7】
図7(a)は、実施形態におけるアジャスタ機構の構造を示す断面図であり、
図7(b)は、
図7(a)のA-A線方向の断面図である。
【
図8】実施形態における区画貫通構造の施工方法を説明するための断面図である。
【
図9】実施形態における区画貫通構造の施工方法を説明するための断面図である。
【
図10】実施形態における区画貫通構造の施工方法を説明するための断面図である。
【
図11】その他の実施形態における胴体部の変形例を示す断面図である。
【
図12】その他の実施形態における係合部の変形例を示す断面図である。
【
図13】参考形態に係る区画貫通構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[実施形態]
本発明の実施形態に係る区画貫通処理構造10は、
図1及び
図2に示すように、建築物の仕切り部11に形成され、かつ内部に長尺の挿通体21が挿通される区画貫通部15を防火構造とする。
そして、本発明の実施形態に係る区画貫通処理構造10に用いる区画貫通処理部材1は、カバー部3と、胴体部4と、係合部5とを備える。
【0011】
本発明の区画貫通処理構造における仕切り部11は、建築物の壁面において区画間(第1の区画Aと、第2の区画B)を仕切る部材であり、仕切り部11の一方の外面11A
1側から他方の外面11B
1側に貫通する区画貫通部15を有する。
図1及び
図2で示す仕切り部11は、中空壁であり、間隔(中空部13)を介して配置される2枚の壁材(仕切り材)12A,12Bから構成される。そのため、区画貫通部15は、一方の壁材12Aに形成された貫通孔13Aと、他方の壁材12Bに形成された貫通孔13Bと、これらの間にある中空部13によって構成される。そして、一方の壁材12Aの外面が仕切り部11の外面11Aを構成し、他方の壁材12Bの外面が仕切り部11の外面11Bを構成する。貫通孔13A,13Bは、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形又は、これらに近似する形状を有すればよい。なお、外面11A
1、11B
1それぞれにおいて貫通孔13A,13Bは、仕切り部11に設けられた区画貫通部15の開口13C,13Dを構成する。
仕切り部11を構成する壁材(仕切り材)12A,12Bとしては、石膏ボード、押出成形セメント板、軽量気泡コンクリート(ALC)板、プレキャストコンクリート(PC)板、ガラス繊維強化コンクリート(GRC)板、ケイ酸カルシウム板、高密度ロックウール成型板、コンクリートブロック、芯材と金属との複合パネル等が挙げられ、好ましくは石膏ボードである。石膏ボードとしては、例えば、硬質石膏ボード(GB-R-H)、強化石膏ボード(GB-F)及び普通石膏ボード(GB-R)等が挙げられる。
【0012】
以下では、仕切り部11の一方の開口13C側における区画貫通処理構造10の構成について説明するが、本実施形態では、他方の開口13D側における区画貫通処理構造10の構成も同様であるのでその説明は省略する。
【0013】
実施形態に係る区画貫通処理構造10は、区画貫通処理材1として、カバー部3と、胴体部4と、係合部5とを備え、カバー部3と係合部5が、両側から仕切り部11を挟み込むことで区画貫通部15に固定される。
【0014】
実施形態に係る区画貫通処理材1は、例えば、
図3(a)に示すように、2つに分割されて一対の分割片1A,1Bからなり、
図3(b)に示すように、分割片1A,1Bが突き合わされた状態で構成される。分割片1A,1Bは、例えば、互いの突き合わせ面それぞれに凸部、凹部などが設けられ、それらが嵌め合わされることなどで、互いに固定されてもよい。区画貫通処理材1は、分割可能である構成であることで、挿通体21を内部に容易に挿通させることができる。
なお、区画貫通処理材1は、上記した2分割可能な構成に限定されず、区画貫通処理構造10を形成し、挿通体21を内部に挿通させることができる部材であればいかなる形状であってもよい。例えば、区画貫通処理材1は、2つに分割しておらず、1体型のものであってもよく、3つ以上に分割可能な構成であってもよい。
【0015】
〔カバー部〕
カバー部3は、仕切り部11の外面11A1と一方の面3Bが当接して配置され、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cを覆う。カバー部3が仕切り部11に当接して配置することで、仕切り部11に設けられる区画貫通部15の開口13Cを覆うことになり、耐火性及び美観を向上させることができる。カバー部3は、不燃材料で形成されればよく、例えば、金属、樹脂などで形成されてもよいし、繊維強化プラスチックなどの複合材料から形成されてもよい。
【0016】
〔胴体部〕
胴体部4は、
図1及び
図2に示すように、カバー部3の他方の面3A側に突出し、内部に耐火材41が設けられた筒状部位40を有する。耐火材41の詳細については後述する。
胴体部4は、不燃材料で形成されればよく、例えば、金属、樹脂などで形成されてもよいし、繊維強化プラスチックなどの複合材料から形成されてもよい。胴体部4とカバー部3は互いに連設されて一体となっている。胴体部4は、カバー部3と一体的に成形してもよいし、カバー部3とは別々に成形した後、一体にしてもよい。
【0017】
胴体部4は、
図2に示すように、内部に挿通した挿通体21の動きを抑制し、また、開口13Cを閉鎖して見えなくするために、筒状部位40の内壁面40Aと挿通体21の隙間を充填部材45で充填する。充填部材45としては、挿通体21の動きを抑制することが可能なものであれば特に限定されず、充填容易性及び軽量化の観点から、ゴム状材料及びスポンジ状材料等が挙げられる。また、充填部材45は、ロックウール、ガラスウールなどの不燃材料でもよいし、遮煙性能及び遮音性能の向上を目的として耐熱シール材及び耐火パテなどを用いてもよい。
【0018】
〔係合部〕
係合部5は、
図1及び
図2に示すように、カバー部3の一方の面3B側に突出して設けられ、仕切り部11の内面11A
2と係合する。係合部5によって仕切り部11の内面11A
2と係合することで、カバー部3と係合部5が仕切り部11を両側から挟み込み、区画貫通部15に区画貫通処理部材1を固定する。
係合部5は、不燃材料で形成されればよく、例えば、金属、樹脂などで形成されてもよいし、繊維強化プラスチックなどの複合材料から形成されてもよい。
【0019】
係合部5は、仕切り部11の内面11A
2との係合を容易とするために、係合部位50を備える構成とするとよい。係合部位50は、仕切り部11の内面11A
2と係合可能であればよく、例えば、
図4(a)に示すように、係合部5の途中箇所を径方向外側に鋭角に折り返した第1返し部50Aと、第1の返し部50Aの途中箇所を径方向内側に折り返した第2返し部50Bとを備える構成とすることができる。第1返し部50Aは、係合部位50の貫通孔13Aへの進入方向における先端先細りのテーパ形状を形成し、係合部位50の貫通孔13Aへの進入性を高める。第2返し部50Bは、仕切り部11の内面11A
2と係合可能な面を形成し、仕切り部11の内面11A
2との係合を確実かつ容易に行うことができる。なお、係合部5は、貫通孔13Aへの進入性を高める観点から、貫通孔13Aに通す際に、係合部位50が貫通孔13Aの内周面に押圧され、貫通孔13Aの中心に向かって撓んで退避可能な材料及び形状であることが好ましい。
本実施形態において係合部位50の形状は、仕切り部11の内面11A
2と係合可能な形状であればよく、具体的には、係合部5から径方向外側に突き出る構造を有すればよい。例えば、
図4(b)に示すように、断面がH型形状のものであってもよく、
図4(c)に示すように、単に径方向外側に折り曲げられた形状のものであってもよく、
図4(d)に示すように、突起が設けられた形状のものであってもよい。さらに、
図4(a)の構成において、第2返し部50Bが省略されたものでもよい。
また、係合部位50Aは、
図4(a)~(c)に示すように、突出する係合部5の先端部に配置されることで、係合部5に余計な部分を設ける必要がなくなる。また、
図4(a)、(c)に示すように、先端部を折り曲げた形状とすることで、成形性なども向上する。
【0020】
係合部5において、
図3(b)及び
図4に示すように、カバー部3の一方の面3Bから係合部位50までの距離dは、仕切り部11の厚さと同等の長さとすることで、区画貫通部15に区画貫通処理部材1を安定して固定することができる。係合部5における距離dは、例えば、建設省告示第1399号で定められた耐火グレード、準耐火グレード及び省令準耐火グレード等の耐火構造となる仕切り部11の厚さとすることができる。距離dは、例えば、15mm、22mm、25mm、42mmなどである。また、距離dは、例えば、中空構造の壁の場合では、10~50mm程度とすることができ、密実構造の壁の場合では、70~250mm程度とすることができる。
【0021】
係合部5における距離dは、一定であってもよいが、可変としてもよい。距離dを可変とする場合、
図5~7に示すように、仕切り部11に対する係合部5の位置関係を調整するアジャスタ機構6を備えるとよい。アジャスタ機構6は、係合部5の係合部位50を仕切り部11の厚さ方向にスライド可能とし、係合部5における距離dを仕切り部11の厚さに合わせて調節可能とする機構である。
アジャスタ機構6は、仕切り部11に対する係合部5の位置関係を調整可能とする機構であればよく、例えば、段階的に調整可能としてもよく、無段階に調整可能としてもよいが、区画貫通処理部材1の設置容易性及び機械強度の観点から、段階的に調整可能な機構であることが好ましい。段階的に調整可能なアジャスタ機構6としては、例えば、ラチェットアジャスタ等が挙げられる。
アジャスタ機構6としてのラチェットアジャスタは、係合部5における距離dを仕切り部11の厚さに合わせて、仕切り部11の厚さ方向に沿って係合部位50を進退可能とする。例えば、係合部5は、仕切り部11の厚さ方向に沿って細長に延びるが、その長手方向に複数の爪を設け、アジャスタ機構6には、係合部5に設けられた爪を係止するストッパを設ける構成とするとよい。アジャスタ機構6のストッパは、係合部5の複数の爪のいずれかと選択的に係止状態とすることができ、また、その係止状態を解除したりすることで、係合部5における距離dを調節可能とする。ストッパは、公知のものを使用でき、例えば押圧することで揺動して係止状態を解除できる部材等が挙げられる。
【0022】
係合部5は、
図5及び
図6に示すように、例えば、筒状部位40の内壁面40A又は外壁面40Bに設けられるが、アジャスタ機構6もそれに合わせて内壁面40A又は外壁面40Bに設けられるとよい。また、内壁面40A又は外壁面40Bには例えば溝60が設けられ、その溝60の内部に係合部5が配置されるとよい。溝60が設けられることで、係合部5は、筒状部位40の外壁面40Bに設けられるような場合でも、カバー部3に干渉することなく、他方の面3A側に突出することが可能である。
ただし、内壁面40A又は外壁面40Bには、溝60が設けられる必要はなく、溝60が設けられない場合でも、係合部5及びアジャスタ機構6は、内壁面40A又は外壁面40Bに適宜取り付けられるとよい。
また、溝60は、
図5及び
図6に示すように、筒状部位40のカバー部3側の一方の端部から中途まで設けられてよいが、筒状部位40の一方の端部から他方の端部まで設けられるものでもよい。
また、係合部5は、例えば、
図7(a)及び(b)に示すように、カバー部3に設けてもよい。この際には、カバー部3には、アジャスタ機構6が設けられ、かつ係合部5を進退可能とするスペースを確保するブロック61を備えるとよい。
【0023】
<耐火材>
胴体部4に備える耐火材41としては、例えば、加熱により膨張する熱膨張性部材、焼結性を有するクロロプレン系ゴム等からなる部材、及び、吸熱性を有するパテ状の詰め物等からなる部材などが挙げられ、施工容易性及び軽量化の観点から、好ましくは熱膨張性部材である。熱膨張性部材は、火災時に膨張することで火災の延焼を防止でき、例えば、一方の区画で火災が発生した場合でも、他方の区画に延焼することを防止できる。
耐火材41は、
図2に示す通りに胴体部4の内壁面40Aに取り付けられるとよい。ただし、筒状部位40の内部に配置される限り必ずしも内壁面40Aに取り付けられる必要はない。耐火材41は、筒状部位40の内部において、例えば、挿通体21を取り巻くように筒状に配置されればよく、さらにその筒状の耐火材41が胴体部4の内壁面40Aに取り付けられていてもよい。耐火材41は、内壁面40Aに取り付けられることで施工時に胴体部4の内部に別途耐火材41を配置する必要がなくなる。
また、耐火材41は、筒状である必要はなく、例えば棒状、シート状の耐火材41が単数又は複数個適宜配置されてもよく、その耐火材41は適宜内壁面40Aに取り付けられてもよい。
【0024】
耐火材(内側耐火材)41を構成する熱膨張性部材は、熱膨張性樹脂組成物よりなる。熱膨張性樹脂組成物は、樹脂成分と、熱膨張性材料を含有する熱膨張性樹脂組成物からなる。熱膨張性材料としては、加熱することにより発泡する発泡剤、バーミキュライト、熱膨張性黒鉛などの熱膨張性層状無機物が挙げられ、中でも熱膨張性黒鉛が好ましい。熱膨張性黒鉛を使用することで、火災の加熱により適切に膨張され、また、膨張後の膨張残渣の機械強度が優れ、耐火性を良好にしやすくなる。なお、ここでいう熱膨張性材料とは、後述する成形などによって膨張せず、または膨張しても部分的であり、熱膨張性樹脂組成物は、熱膨張性部材において熱膨張性が維持される。
【0025】
熱膨張性材料の膨張開始温度は、特に限定されないが、例えば、150~350℃であることが好ましく、170~300℃であることがより好ましく、180~280℃であることが更に好ましい。これら下限値以下とすることで、火災以外の加熱により、熱膨張性材料が誤って膨張することを防止する。また、上限値以下とすることで、火災の加熱により確実に熱膨張性材料を膨張させやすくなる。
また、熱膨張性材料の膨張開始温度は、所定量(例えば、100mg)の熱膨張性材料を一定の昇温速度(例えば、10℃/分)で昇温させ、法線方向の力が立ち上がる温度を計測することにより測定可能である。測定装置としては測定温度制御が可能であり、かつ法線方向の応力を測定できるものであればよく、例えばレオメーターを使用すればよい。
【0026】
熱膨張性部材の膨張倍率は3倍以上であることが好ましく、10倍以上が好ましい。膨張倍率の上限は、特に限定されないが、例えば50倍である。なお、膨張倍率は、熱膨張性部材を電気炉に供給し、600℃で30分間加熱した後、試験片の厚さを測定し、(加熱後の試験片の厚さ)/(加熱前の試験片の厚さ)により算出するとよい。
【0027】
以下、熱膨張性材料が、熱膨張性黒鉛である場合の熱膨張性樹脂組成物について詳細に説明する。熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分としては、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマーが挙げられる。
熱可塑性樹脂の例としては、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩素化ポリ塩化ビニル樹脂(CPVC)、フッ素樹脂、ポリフェニレンエーテル、変性ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリレート、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリブタジエン、ポリイミド、アクリル樹脂、ポリアセタール、ポリアミド、ポリエチレン(PE)およびポリプロピレン(PP)、エチレン酢酸ビニル(EVA)等のポリオレフィン、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、クロロプレン(CR)、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン(PS)、ポリフェニレンサルファイド、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、アクリロニトリル-スチレン-アクリロニトリル共重合体(ASA)、アクリロニトリル/エチレン-プロピレン-ジエン/スチレン共重合体(AES)等が挙げられる。
硬化性樹脂の例としてはエポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ポリウレタン、熱硬化性ポリイミド等が挙げられる。
【0028】
エラストマーの例としては、天然ゴム、シリコーンゴム、スチレン・ブタジエンゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、クロロプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、ニトリルブタジエンゴム、ブチルゴム、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ジエンゴム、ウレタンゴム、シリコーンゴム、およびフッ素ゴム等のゴムが挙げられる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)、スチレン系熱可塑性エラストマー(TPS)、エステル系熱可塑性エラストマー、アミド系熱可塑性エラストマー、および塩化ビニル系熱可塑性エラストマー等の熱可塑性エラストマーも挙げられる。
熱膨張性樹脂組成物の樹脂成分は、1種であってもよいし2種以上を組み合わせてもよい。
【0029】
熱膨張性樹脂組成物は、可塑剤を含有してもよい。可塑剤は、樹脂成分がポリ塩化ビニル樹脂などの熱可塑性樹脂である場合に好ましく使用される。可塑剤の具体的としては、例えば、ジ-2-エチルヘキシルフタレート(DOP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジヘプチルフタレート(DHP)、ジイソデシルフタレート(DIDP)等のフタル酸エステル可塑剤、ジ-2-エチルヘキシルアジペート(DOA)、ジイソブチルアジペート(DIBA)、ジブチルアジペート(DBA)等のアジピン酸エステルや、アジピン酸ポリエステルなどの脂肪酸エステル可塑剤、エポキシ化大豆油等のエポキシ化エステル可塑剤、トリー2-エチルヘキシルトリメリテート(TOTM)、トリイソノニルトリメリテート(TINTM)等のトリメリット酸エステル可塑剤、トリメチルホスフェート(TMP)、トリエチルホスフェート(TEP)等の燐酸エステル可塑剤、鉱油等のプロセスオイルなどが挙げられる。
可塑剤は一種もしくは二種以上を使用することができる。
熱膨張性樹脂組成物が可塑剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における可塑剤の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば0.3質量部以上150質量部以下の範囲であり、好ましくは10質量部以上100質量部以下の範囲である。可塑剤は、これら下限値以上とすると、成形性が良好になりやすく、上限値以下となると、成形体に適度な強度が付与される。
【0030】
樹脂成分と可塑剤の合計含有量は、樹脂組成物全量基準で、10質量%以上90質量%以下が好ましく、25質量%以上80質量%以下がより好ましく、40質量%以上70質量%以下がさらに好ましい。これら下限値以上とすることで、熱膨張性部材の成形性などを良好にできる。また、上限値以下とすることで、熱膨張性黒鉛、無機充填剤などの成分を十分な量配合することが可能になる。
なお、樹脂成分と可塑剤の合計含有量とは、樹脂成分と可塑剤の両方が含有される場合には、これらの合計含有量を意味し、可塑剤を含有しない場合には樹脂成分単独の含有量を意味する。
【0031】
熱膨張性黒鉛は、従来公知の物質であり、天然鱗片状グラファイト、熱分解グラファイト、キッシュグラファイト等の粉末を、濃硫酸、硝酸、セレン酸等の無機酸と、濃硝酸、過塩素酸、過塩素酸塩、過マンガン酸塩、重クロム酸塩、過酸化水素等の強酸化剤とにより処理してグラファイト層間化合物を生成させたものである。生成された熱膨張性黒鉛は炭素の層状構造を維持したままの結晶化合物である。
本発明に使用される熱膨張性黒鉛は、酸処理して得られた熱膨張性黒鉛がアンモニア、脂肪族低級アミン、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物等で中和されたものなども使用することもできる。
脂肪族低級アミンとしては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン等が挙げられる。
アルカリ金属化合物およびアルカリ土類金属化合物としては、例えば、カリウム、ナトリウム、カルシウム、バリウム、マグネシウム等の水酸化物、酸化物、炭酸塩、硫酸塩、有機酸塩等が挙げられる。
【0032】
熱膨張性黒鉛の粒度は、特に限定されないが、20~200メッシュの範囲のものが好ましい。粒度は、下限値以上となると黒鉛の膨張度が大きくなりやすく、発泡性が良好になる。また、上限値以下とすることで、樹脂と混練する際の分散性が良好となり、成形性が向上する。
【0033】
熱膨張性樹脂組成物における熱膨張性黒鉛の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、例えば3質量部以上300質量部以下である。熱膨張性黒鉛の含有量は、3質量部以上となることで、熱膨張性が良好となる。また、300質量部以下となることで、成形性が良好となり、シール部材の表面性、機械的物性なども良好となる。これら観点から、熱膨張性黒鉛の含有量は、好ましくは10質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは15質量部以上100質量部以下の範囲である。
【0034】
熱膨張性樹脂組成物は、さらに無機充填材を含有してもよい。無機充填材は、一般に熱膨張性樹脂組成物に使用されている無機充填材であれば、特に限定はない。具体的には、例えば、シリカ、珪藻土、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化鉄、酸化錫、酸化アンチモン、フェライト類、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛、炭酸バリウム、ドーンナイト、ハイドロタルサイト、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、石膏繊維、ケイ酸カルシウム、タルク、クレー、マイ力、モンモリロナイト、ベントナイト、活性白土、セビオライト、イモゴライト、セリサイト、ガラス繊維、ガラスビーズ、シリカバルン、窒化アルミニウム、亜リン酸アルミニウム、窒化ホウ素、窒化ケイ素、カーボンブラック、グラファイト、炭素繊維、炭素バルン、木炭粉末、各種金属粉、チタン酸カリウム、硫酸マグネシウム、チタン酸ジルコニア鉛、アルミニウムボレート、硫化モリブデン、炭化ケイ素、ステンレス繊維、ホウ酸亜鉛、各種磁性粉、スラグ繊維、フライアッシュ、脱水汚泥等が挙げられる。無機充填材は一種もしくは二種以上を使用することができる。
無機充填剤を含有する場合、熱膨張性樹脂組成物における無機充填材の含有量は、樹脂成分100質量部に対して、好ましく3質量部以上200質量部以下の範囲であり、より好ましくは10質量部以上150質量部以下の範囲である。
【0035】
また本発明に使用する熱膨張性樹脂組成物には、その物性を損なわない範囲で、必要に応じて、熱安定剤、滑剤、加工助剤、酸化防止剤、帯電防止剤、顔料、架橋剤、架橋促進剤等の熱膨張性樹脂組成物に一般的に使用される添加剤が添加されてもよい。これらの中では加工助剤を使用することが好ましい。
【0036】
熱膨張性部材は、例えば下記のようにして製造することができる。まず、所定量の樹脂成分、熱膨張性材料、及びその他の必要に応じて配合される添加剤を、混練ロールなどの混練機で混練して、熱膨張性樹脂組成物を得る。次に、樹脂成分が熱可塑性樹脂、ゴム、エラストマー、又はこれらの組み合わせである場合、得られた熱膨張性樹脂組成物を、例えば、プレス成形、カレンダー成形、押出成形、射出成形等、公知の成形方法により所望の形状に成形することで熱膨張性部材を得る。
また、樹脂成分が熱硬化性樹脂を含む場合、得られた熱膨張性樹脂組成物を、例えばプレス成形などで加熱かつ加圧することで、シート状などの所望の形状にしつつ熱硬化して熱膨張性部材を得ることができる。
また、熱膨張性部材は、上記のようにして成形したものを適宜切断して所定の形状にしてもよい。
【0037】
(区画貫通構造の施工方法)
以下に、
図8~10を用いて、本実施形態の区画貫通構造の施工方法について説明する。本施工方法では、
図8に示すように、まず、仕切り部11の各壁材12A,12Bに貫通孔13A,13Bを開けて、区画貫通部15を形成する。また、上記した区画貫通処理部材1を用意する。
さらに、
図8では、区画貫通処理部材1を区画貫通部15に設置する前に、区画貫通部15に配管類又はケーブル類である内挿部材21が通される例を示すが、区画貫通処理部材1を区画貫通部15に設置させた後に区画貫通処理部材1の内部に内挿部材21を通してもよい。なお、区画貫通処理部材1を区画貫通部15に設置する前に、区画貫通部15に配管類又はケーブル類である内挿部材21が通された場合であっても、区画貫通処理材1が分割可能な構成とすることで、挿通体21を内部に挟むようにして一体化することで、挿通体21を内部に容易に挿通させることができる。
【0038】
次に、
図9に示すように、仕切り部11の外面11A
1から内面A
2まで、係合部5を区画貫通部15に挿通させる。このとき、一般的に、貫通孔13A,13Bの内径は、係合部5の外径よりも小さい。そのため、係合部5は、径方向内側に向かって退避させつつ、貫通孔13Aに挿入して、係合部位50を内面A
2の外側まで移動させる。この際、係合部5は、貫通孔13Aの内周面から押圧されつつ移動するが内面A
2の外側まで移動することで、係合部5は、貫通孔13Aの内周面からの押圧が解放され、係合部5の係合部位50は径方向外側に進出する。このことにより、仕切り部11の内面11A
2と係合部位50が当接することによって係合し、カバー部3と係合部5が仕切り部11を両側から挟み込むこととなり、区画貫通部15に区画貫通処理部材1を固定する。そして、筒状部位40の内壁面40Aと挿通体21の隙間を充填部材45で充填することで、区画貫通処理構造10とする。なお、耐火材41が筒状部位に取り付けられていないときには、筒状部位40の内部には、耐火材41を配置し、かつ充填部材45を充填するとよい。
また、
図9に示すとおり、係合部位50が、先端先細りのテーパ形状を有すると、係合部5を貫通孔13Aに通す際に、係合部5は、貫通孔13Aの内周面に押圧され、貫通孔13Aの中心に向かって撓むことで径方向内側に退避されため、係合部5が貫通孔13Aを容易に通ることが可能になる。
【0039】
次に、
図10に示すように、仕切り部11の一方の開口13C側における区画貫通処理構造10の施工方法と同様に、他方の開口13D側における区画貫通処理構造10の施工方法を実施する。
【0040】
以上の本実施形態によれば、区画貫通部15に係合部5を挿通し、カバー部3と係合部5が仕切り部11を両側から挟み込むことにより、区画貫通部15に区画貫通処理部材1を固定して設置することで、区画貫通構造10を形成できる。したがって、パテなどにより貫通孔の間隙の充填作業を要することなく、簡単な作業で区画貫通構造を形成できるうえ、施工に要する時間も短縮できる。また、区画貫通構造10を形成する作業が画一的であるため、熟練度が低い作業者であっても適切に区間貫通構造を施工できる。
【0041】
[その他の実施形態]
本発明は、以上の実施形態の構成に限定されず、本発明の技術思想を逸脱しない限りいかなる改良、変更を行ってもよい。
例えば、胴体部4の筒状部位40は、
図11に示すように、一端側に天面42を有し、天面42には挿通体21が通されるための孔42Aが設けられ、内部に挿通体21が挿通される形態であってもよい。胴体部4に天面42が設けられることで、耐火性及び美観を向上させることができる。孔42Aは、円形でもよいが、挿通体21の形状に応じて円形以外のいかなる形状でもよい。孔42Aは、挿通体21のサイズより小さいものでもよい。また、孔42Aの代わりに切り込みであってもよい。孔42Aのサイズが挿通体21より小さくても、また、孔42Aの代わりに切り込みが設けられても、筒状部位40の天面42がゴム、樹脂材料で形成される場合には、挿通体21が孔42A(又は切り込み)に挿入されると、天面42が撓んで孔42A(又は切り込み)内部に挿通体21を挿入できる。
また、胴体部4の筒状部位40の一端側は、胴体部4とは別体であるシート状などの遮蔽部材(図示せず)により遮蔽してもよい。遮蔽部材を設けたり、天面42を設けたりして一端側の開口を遮蔽すると、充填部材45を適宜省略することができる。
【0042】
また、以上の説明では、仕切り部11の貫通孔13A,13Bは、円形で示したが、正方形及び矩形であってもよく、その場合、胴体部4は、貫通孔13A,13Bの形状に合わせて正方形及び矩形とすることができる。胴体部4は、コの字型、L字型の別部材を係合させて一体化させることで正方形及び矩形とすることができる。
【0043】
また、以上の説明では、区画貫通処理部材1に備える係合部5は、2つとして示したが、2つに限られず、
図12に示すように、4つ等の多数であってもよい。係合部5の数が増えることに伴って、アジャスタ機構6も同様の数とするとよい。係合部5の数が増えることで、区画貫通部15に区画貫通処理部材1をより安定して固定することができる。
【0044】
また、以上の説明では、仕切り部11は、内部に中空部13がある中空壁であったが、中空壁に限定されず、中空が設けられない壁であってもよく、例えば1枚の壁材からなるものでもよい。また、仕切り部11は、建築物の壁に限定されず、建築物の天井、床であってもよい。仕切り部は、天井、床の場合でも、2枚の仕切り材の間に中空部を有する構造であってもよいし、中空部がない構造であり、例えば1枚の仕切り材から構成されてもよい。
【0045】
また、以上の説明では、区画貫通処理構造10は、建築物の仕切り部11としての壁、天井及び床のいずれかに形成されると示したが、天井と壁との接合部である取合い箇所、床と壁との接合部である取合い箇所に形成されてもよい。取合い箇所に形成される貫通孔13A,13Bは、例えば、円形、楕円形、正方形、矩形又は、これらに近似する形状の一部を欠いた形状を有するものであることから、区画貫通処理材1は、複数に分割された1つを配置することで耐火要求性能を満たすことができることがある。複数に分割された1つの区画貫通処理材1では、係合部5のみでは固定が不十分であるため、カバー部3を利用するなどして、接着、粘着及び物理固定等により仕切り部11に固定して区画貫通処理構造10とすることができる。
【0046】
また、以上の説明では、仕切り部11の両方の開口13C,13D(すなわち、仕切り部11の両側)に、いずれも同じ構造の区画貫通処理材1が設けられることを前提に説明したが、各開口13C,13Dには、別の構造の区画貫通処理構造10が設けられてもよい。
【0047】
[参考形態]
参考形態としての区画貫通構造は、
図13に示すように、スリーブ状に区画貫通部15に挿入され、かつスリーブ内部に挿通体21が通される挿入部材70を備える。
挿入部材70は、スリーブ状である、又は、スリーブ状に変形可能なものである。挿入部材4がスリーブ状に変形可能なものとは、シート状若しくはロール状のものを端部と端部とを向かい合わせてスリーブ状にして区画貫通部15に挿入するものをいう。挿入部材4の厚さは特に限定されないが、例えば0.01~10mm、好ましくは0.05~5mmである。挿入部材70は、スリーブ状に変形可能なように、柔軟性を有するとよい。また、挿入部材70は、耐火材及び不燃材料の少なくともいずれかより構成されるとよく、例えば、モルタル、鋼製スリーブなどの金属管、無機繊維やその成形体などが挙げられる。
挿入部材70は、外周面が貫通孔13A,13Bの内周面の形状に適合できるように、円形、楕円形、正方形及び矩形、又は、これらに近似する形状を有すればよい。挿入部材70の外周面が貫通孔13A,13Bの内周面の形状に適合することで、中空部13と仕切り部11の外部が連通することを防止することができる。
【0048】
参考形態に係る区画貫通処理構造の施工方法は、まず、区画貫通部15に挿入部材70を配置する。挿入部材70を区画貫通部15に固定する手段としては、接着、粘着及び物理固定等が挙げられる。
次いで、カバー部3と、胴体部4とを備える区画貫通処理材を区画貫通部15に、ネジ及び釘等の固定具71により設置する。
その後、筒状部位40の内壁面40Aと挿通体21の隙間を充填部材45で充填するとよい。また、耐火材41が筒状部位40に取り付けられていないときには、筒状部位40の内部には、耐火材41を配置し、かつ充填部材45を充填するとよい。
さらに本形態でも、筒状部位40の一端側には天面42を設けたり、遮蔽部材により遮蔽したりしてもよい。
以上の施工により、区画貫通部15に、一方の貫通孔13Aから他方の貫通孔13Bまで通される挿入部材70を設けることになり、中空部13と仕切り部11の外部が連通することを防止することができる。また、カバー部3及び胴体部4を備える区画貫通処理材により、区画貫通部15を区画貫通処理構造とすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 区画貫通処理部材
1A、1B 分割片
3 カバー部
4 胴体部
5 係合部
6 アジャスタ機構
10 区画貫通構造
11 仕切り部
11A1、11B1 外面
11A2、11B2 内面
12A,12B 壁材
13 中空部
13A,13B 貫通孔
13C,13D 開口
15 区画貫通部
21 挿通体
40 筒状部位
40A 内壁面
40B 外壁面
41 耐火材
42 天面
42A 孔
45 充填部材
50 係合部位
50A 第1返し部
50B 第2返し部
60 溝
61 ブロック
70 挿入部材
71 固定具