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特開2023-184422計測方法、計測装置、リソグラフィ装置および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184422
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】計測方法、計測装置、リソグラフィ装置および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 9/00 20060101AFI20231221BHJP
   G01B 11/00 20060101ALI20231221BHJP
   G01B 11/26 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G03F9/00 H
G01B11/00 B
G01B11/26 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023030136
(22)【出願日】2023-02-28
(31)【優先権主張番号】P 2022097424
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 渉
【テーマコード(参考)】
2F065
2H197
【Fターム(参考)】
2F065AA06
2F065AA37
2F065BB02
2F065BB28
2F065CC19
2F065FF49
2F065GG03
2F065GG04
2F065GG07
2F065GG25
2F065LL25
2F065LL30
2F065LL36
2F065LL37
2F065MM03
2F065PP12
2F065QQ42
2H197EA11
2H197EA15
2H197EA17
2H197EB16
2H197EB23
2H197HA03
2H197HA05
2H197HA10
(57)【要約】
【課題】高い計測精度を実現するために有利な技術を提供する。
【解決手段】計測方法は、互いに異なる複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら複数回にわたって予備計測を行う予備計測工程と、前記予備計測工程で得られた計測値に基づいて、前記複数の計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を得る処理工程と、前記複数の計測パラメータのそれぞれについての前記敏感度分布に基づいて、前記複数の計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定工程と、前記決定工程で決定された前記複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って本計測を行う本計測工程と、を含む。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら各組合せについて予備計測を行う予備計測工程と、
前記予備計測工程で得られた計測値に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を得る処理工程と、
前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについての前記敏感度分布に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定工程と、
前記決定工程で決定された前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って本計測を行う本計測工程と、
を含むことを特徴とする計測方法。
【請求項2】
前記予備計測工程および前記本計測工程では、ターゲットの位置情報を計測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項3】
前記少なくとも2つの計測パラメータは、前記ターゲットを照明する光の中心波長、および、前記光の波長幅を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の計測方法。
【請求項4】
前記少なくとも2つの計測パラメータは、前記ターゲットを照明する光の中心波長、波長幅、σ値、前記ターゲットを計測する計測装置の光路における偏光特性、前記光路に配置されたNDフィルタの透過率、前記ターゲットの位置、前記ターゲットの傾き、の少なくとも2つを含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の計測方法。
【請求項5】
前記少なくとも2つの計測パラメータの1つは、前記ターゲットの位置を検出する位置検出装置の光路に沿った方向における前記ターゲットの位置を含む、
ことを特徴とする請求項2に記載の計測方法。
【請求項6】
前記決定工程では、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについての前記敏感度分布と、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて与えられた重み関数とに基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする請求項2に記載の計測方法。
【請求項7】
前記予備計測工程は、計測値を得るための中間情報を計測対象から検出する検出工程と、前記中間情報に基づいて計測値を算出する算出工程と、を含み、
前記処理工程は、
前記中間情報に基づいて、前記予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値を推定する推定工程と、
前記予備計測工程で得られた計測値、および、前記推定工程で推定された計測値に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて前記敏感度分布を得る算出工程と、を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項8】
前記検出工程では、前記計測対象の画像を前記中間情報として検出し、
前記推定工程は、前記中間情報としての複数の画像から合成画像を生成し、前記合成画像に基づいて、前記予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値を推定する、
ことを特徴とする請求項7に記載の計測方法。
【請求項9】
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において所定の敏感度よりも鈍感であることを示すように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項10】
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において、所定の敏感度よりも小さいように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項11】
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において最小となるように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項12】
前記予備計測工程および前記本計測工程では、ターゲットの信号強度情報または波形評価値情報を計測する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項13】
前記決定工程では、複数の前記ターゲットのそれぞれの敏感度分布に基づいて、前記敏感度分布の平均値とばらつきの少なくとも一つを算出して、前記敏感度分布の平均値とばらつきの少なくとも一つにおける敏感度に基づいて、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする請求項2又は12に記載の計測方法。
【請求項14】
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において所定の敏感度よりも敏感であることを示すように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項15】
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において、所定の敏感度よりも大きいように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項16】
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において最大となるように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の計測方法。
【請求項17】
請求項1に記載の計測方法に従って基板のマークの位置を計測し、前記マークの位置に基づいて前記基板にパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記基板を処理することによって物品を得る工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【請求項18】
計測部および制御部を備える計測装置であって、
前記制御部は、互いに異なる少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら複数回にわたって予備計測を行うように前記計測部を制御し、前記予備計測によって得られた計測値に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を得て、前記敏感度分布に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定し、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて決定された前記パラメータ値に従って本計測を行うように前記計測部を制御する、
ことを特徴とする計測装置。
【請求項19】
計測対象を照明する光の波長を変更する波長可変部を更に備え、
前記制御部は、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて決定された前記パラメータ値に基づいて前記波長可変部を制御する、
ことを特徴とする請求項18に記載の計測装置。
【請求項20】
前記波長可変部は、所定方向に沿って透過波長が変化する波長可変素子と、前記波長可変素子を駆動する駆動機構と、を含む、
ことを特徴とする請求項19に記載の計測装置。
【請求項21】
前記波長可変部は、計測対象を照明する光の中心波長および波長幅を変更可能であり、
前記少なくとも2つの計測パラメータは、前記中心波長および前記波長幅を含む、
ことを特徴とする請求項20に記載の計測装置。
【請求項22】
前記計測部は、ターゲットの位置情報を計測する、
ことを特徴とする請求項18に記載の計測装置。
【請求項23】
リソグラフィ装置であって、
基板に設けられたマークの位置を計測するように構成された請求項18乃至22のいずれか1項に記載の計測装置と、
前記計測装置を使って計測された前記マークの位置に基づいて前記基板を位置決めする位置決め機構と、を備え、
前記基板のパターンを転写するように構成されたことを特徴とするリソグラフィ装置。
【請求項24】
請求項23に記載のリソグラフィ装置を使って基板にパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記基板を処理することによって物品を得る工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、計測方法、計測装置、リソグラフィ装置および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ工程で使用される露光装置等のリソグラフィ装置では、基板のショット領域と原版とのアライメント精度や、基板上の異なる層の間のオーバーレイ精度が重要である。基板上に形成されたマークを高精度に計測する方法の一つとして、マークおよびその周辺部の物理的または光学的特性に対して計測光の波長を適合させる方法がある。基板上のマークにおける材料の物性、構造、形状は、プロセスに応じて異なりうる。このため、マークに応じて最適な波長を選択することにより、マークからの検出信号における強度および品質を最大化し、高精度な計測を実現することができる。
【0003】
特許文献1には、波長とフォーカス位置との複数の組合せについて、それぞれ重ね合わせずれ量を求めて、重ね合わせずれ量のばらつきが最小となる波長とフォーカス位置を計測条件として設定することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4792833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板上に形成されたマークの計測に際して、計測パラメータのパラメータ値が最適値と異なる場合には、マークからの検出信号の強度および品質が低下して計測精度の低下を招きうる。
【0006】
本発明は、高い計測精度を実現するために有利な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの側面は、計測方法に係り、前記計測方法は、互いに異なる複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら複数回にわたって予備計測を行う予備計測工程と、前記予備計測工程で得られた計測値に基づいて、前記複数の計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を得る処理工程と、前記複数の計測パラメータのそれぞれについての前記敏感度分布に基づいて、前記複数の計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定工程と、前記決定工程で決定された前記複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って本計測を行う本計測工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高い計測精度を実現するために有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】第1実施形態の計測装置の構成を示す図。
図2】課題を説明するための図。
図3】第1実施形態の計測装置における波長可変部の構成および機能を説明するための図。
図4】第1実施形態の計測装置における計測シーケンスを説明するための図。
図5】第1実施形態の計測装置における具体的な計測処理を説明するための図。
図6】第1実施形態の計測装置における具体的な計測処理を説明するための図。
図7】第1実施形態の計測装置における具体的な計測処理を説明するための図。
図8】第2実施形態の計測装置における計測シーケンスを説明するための図。
図9】第2実施形態の計測装置における具体的な計測処理を説明するための図。
図10】第2実施形態の計測装置における具体的な計測処理を説明するための図。
図11】第3実施形態の計測装置における計測シーケンスを説明するための図。
図12】第4実施形態の計測装置における計測シーケンスを説明するための図。
図13】第5実施形態の露光装置の構成を説明するための図。
図14】基板を露光する露光処理のシーケンスを説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組合せられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
図1(a)は、第1実施形態の計測装置100の構成を概略的かつ例示的に示す図である。計測装置100は、基板73に設けられたターゲットあるいは計測対象の位置を計測あるいは検出する位置検出装置として構成されうる。あるいは、計測装置100、基板における互いに異なる層に設けられた複数のターゲットの相対位置を計測する重ね合わせ検査装置として構成されうる。計測装置100は、図1(a)に示すように、基板73を保持する基板ステージWSと、計測部50と、制御部1100とを有する。
【0012】
基板73は、計測装置100によって位置または重ね合わせ誤差が計測される計測対象部材である。基板73は、例えば、半導体素子や液晶表示素子などのデバイスを製造するのに用いられうる。基板73は、例えば、ウエハまたはガラス基板でありうる。基板ステージWSは、基板チャック(不図示)を介して基板73を保持し、基板駆動機構(不図示)によって駆動あるいは位置決めされうる。基板駆動機構は、リニアモータなどを含み、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向に基板ステージWSを駆動することで、基板ステージWSに保持された基板73を駆動あるいは位置決めすることができる。基板ステージWSの位置は、例えば、6軸のレーザ干渉計81などで監視され、制御部1100の制御下において、基板ステージWSは所定の位置に駆動される。なお、本明細書では、計測対象部材の表面の法線をZ軸方向とするXYZ座標系によって方向が表現される。6軸とは、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向、X軸周りの回転(ωX)、Y軸周りの回転(ωY)、Z軸周りの回転(ωZ)である。Z軸方向は、計測対象部材の表面における計測装置100の光軸方向として理解されてもよい。
【0013】
制御部1100は、CPUおよびメモリなどを含むコンピュータ(情報処理装置)で構成され、例えば、記憶部に記憶されたプログラムに従って計測装置100の構成要素を統括的に制御することによって計測装置100の機能を定義しうる。制御部1100は、計測装置100における計測処理、および、計測装置100で得られた計測値の補正処理(演算処理)を制御するように構成されうる。
【0014】
図1(b)を参照しながら計測部50の構成について説明する。計測部50は、光源61からの光を用いて基板73を照明する照明系と、基板73に設けられている計測パターン(マーク)72からの光を検出部75に結像させる結像系(検出系)とを含みうる。検出部75は、計測パターン72からの光を検出する複数の画素を含み、複数の画素によって計測パターン72を撮像するための撮像領域を形成する撮像部として機能する。ここで、計測対象あるいはターゲットしての計測パターン72は、基板73における位置合わせ誤差または重ね合わせ誤差を計測するためのパターンでありうる。計測対象あるいはターゲットは、複数の計測パターン72を含んでもよい。なお、計測対象は、基板に設けられた計測パターンに限定されるものではなく、例えば、ステージまたはその一部、あるいは、移動物体またはその一部であってもよい。また、計測によって得られる情報は、計測対象の絶対位置または相対位置等の位置情報に限定されず、例えば、計測対象の形状、速度、加速度、温度の少なくとも1つであってもよい。
【0015】
図1(b)より、光源61からの光は、照明光学系62を介して波長可変部40に導かれる。光源61は、例えば、レーザ光源、LEDまたはハロゲンランプでありうるが、これらに限定されるものではない。波長可変部40は、例えば、波長可変素子と、該波長可変素子を駆動する駆動機構とを含みうる。該駆動機構は、リニアモータなどを含み、所定方向(例えば、X軸方向)に沿って波長可変素子42を駆動することで、計測パターン72あるいはターゲットを照明する光の波長(例えば、中心波長および波長幅)を調整することができる。該波長可変素子の位置は、例えば、エンコーダまたは干渉計などのセンサを使って監視され、制御部1100の制御下において、目標位置に位置決めされうる。光源61から射出された広帯域な波長の光の光路に対する該波長可変素子の位置を該駆動機構によって調整することにより、該光が該波長可変素子に入射する領域を調整することができる。これにより目標とする波長の光が該波長可変素子を通過する。
【0016】
波長可変部40あるいはその波長可変素子を通過した光は、照明光学系63を透過して、照明開口絞り64に導かれる。照明開口絞り64での光束径は、光源61での光束径よりも小さくなる。照明開口絞り64を通過する光は、リレーレンズ67を介して、偏光ビームスプリッタ68に導かれる。偏光ビームスプリッタ68は、P偏光の光を透過し、S偏光の光を反射する。偏光ビームスプリッタ68を透過するP偏光の光は、開口絞り69およびλ/4板70を通過して円偏光に変換され、対物光学系71を介して、基板73に設けられた計測パターン72をケーラー照明する。
【0017】
なお、照明光学系63には、光量調整部(不図示)が設けられてもよい。例えば、光源61からの光に対して透過率が互いに異なる複数のNDフィルタが選択可能に配置された光量調整部を設けることで、基板73を照明する光の強度を調整することができる。
【0018】
基板73に設けられている計測パターン72で反射・回折・散乱される光は、対物光学系71を介して、λ/4板70を通過して円偏光からS偏光に変換され、開口絞り69に導かれる。ここで、計測パターン72からの光の偏光状態は、計測パターン72を照明する円偏光の光とは逆回りの円偏光となる。従って、計測パターン72を照明する光の偏光状態が右回りの円偏光であれば、計測パターン72からの光の偏光状態は左回りの円偏光となる。開口絞り69を通過する光は、偏光ビームスプリッタ68で反射され、結像光学系74を介して、検出部75に導かれる。
【0019】
このように、計測部50では、偏光ビームスプリッタ68によって、基板73を照明する光の光路と基板73からの光の光路とが分離され、基板73に設けられている計測パターン72の像が検出部75に形成される。制御部1100は、レーザ干渉計81で得られる基板ステージWSの位置情報と、計測パターン72の像を検出して得られる検出信号の波形とに基づいて、計測パターン72を構成するパターン要素の位置や計測パターン72の位置を取得することができる。
【0020】
偏光ビームスプリッタ68と検出部75との間には、複数のレンズおよび検出開口絞りが配置されてもよい。照明開口絞り64及び検出開口絞りのそれぞれに、照明系と検出系とで異なる開口数を設定可能な複数の開口絞りを設けもよい。これにより、照明系の開口数と検出系の開口数との比を表す係数であるσ値を調整することができる。
【0021】
続いて、計測装置100における計測パラメータについて説明する。計測装置100は、好ましくは、少なくとも2つのパラメータのそれぞれの設定されたパラメータ値に従って計測を実行しうる。少なくとも2つの計測パラメータは、例えば、計測パターンを照明または検出する光の中心波長、波長幅、σ値、偏光特性、透過率、計測部50に対する計測パターンの位置(X、Y、Z)および傾き(ωX、ωY、ωZ)のうち少なくとも2つを含みうる。偏向特性は、計測装置100あるいは計測部の光路における偏向特性でありうる。透過率は、該光路に配置されたNDフィルタの透過率でありうる。少なくとも2つの計測パラメータは、制御部によりターゲットの画像情報から計測値を算出する際に設定される各種の演算処理パラメータを含んでもよい。
【0022】
基板上の計測パターンの特性、例えば、材料の物性、構造、形状等は、その基板を得るために採用されたプロセスに応じて異なりうる。このため、高精度な計測を実現するためには、計測パターンの特性に対して計測パラメータを適合させることが重要となる。以下では、計測パラメータの一例として、計測に用いられる光の波長に関する計測パラメータについて説明する。
【0023】
計測に用いられる光の波長に関する計測パラメータとしては、例えば、中心波長と、波長幅と、の2つの計測パラメータを挙げることができる。図2(a)は、中心波長が互いに異なる光の波長特性を示す図であり、互いに異なる2つの中心波長はそれぞれWL1とWL2として示されている。図2(b)は、同一の中心波長を有するが、互いに異なる波長幅を有する光の波長特性を示す図であり、互いに異なる2つの波長幅はΔWL1とΔWL2として示されている。基板に形成された計測パターンに対して、適切な中心波長および波長幅を設定することにより、計測パターンからの信号の強度および品質を最大化して、高精度な計測を実現できる。
【0024】
実施形態における計測パラメータの設定方法の詳細を説明する前に、図2(c)を参照しながら、比較例の重ね合わせ検査装置(計測装置)における計測パラメータの設定方法について説明する。比較例の重ね合わせ検査装置では、複数のフォーカス位置Ziと波長WLjとの組合せのそれぞれについて計測パターンの重ね合わせ誤差Mijを計測することによって、図2(c)に示すような計測データが取得されうる。図2(c)は、複数のフォーカス位置Ziと波長WLjとの組合せのそれぞれについて取得された、計測パターンの重ね合わせ誤差Mの計測データの例を示す図である。例えば、フォーカス位置Z1において波長WL1の計測条件で取得される計測パターンの位置はM11と表現される。そして、図2(c)に示す計測データに基づいて、フォーカス位置に応じた重ね合わせ誤差のばらつきA1~Aj、及び波長に応じた重ね合わせ誤差のばらつきB1~Biが算出される。具体例として、重ね合わせ誤差のばらつきA1は、計測パターンの重ね合わせ誤差M11~Mi1のばらつき3σまたはレンジから算出される。また、重ね合わせ誤差のばらつきB1は、計測パターンの重ね合わせ誤差M11~M1jのばらつき3σまたはレンジから算出される。以上の結果を基に、重ね合わせ誤差のばらつきA1~Ajの中で最小となる波長と、重ね合わせ誤差のばらつきB1~Biの中で最小となるフォーカス位置とが、計測パラメータとして設定される。
【0025】
しかし、各計測条件における重ね合わせ誤差のばらつきの大小関係は、フォーカス位置および波長の双方に依存しうる。仮に、フォーカス位置Z1、波長WL1が最適なパラメータ値であったとしても、計測誤差M12、M21が大きい場合には、重ね合わせ誤差のばらつきA1およびB1は最小とならない。したがって、最適な条件(フォーカス位置Z1、波長WL1)がパラメータ値として設定されない。このため、単一の計測条件(例えば、中心波長のみ)における重ね合わせ誤差のばらつきを評価指標とする場合には、パラメータ値の最適値を精度良く決めることが難しい。また、波長特性を決定する中心波長と波長幅とのそれぞれをパラメータ値として評価しない場合には、計測パターンからの検出信号における強度および品質の最適化が不十分となり、高い計測精度の実現が困難となる。
【0026】
そこで、本実施形態の計測装置100は、互いに異なる複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら複数回にわたって予備計測を行う。そして、計測装置100は、これによって得られた計測値に基づいて、複数の計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を得る。そして、計測装置100は、その敏感度分布に基づいて、複数の計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定し、複数の計測パラメータのそれぞれについて決定されたパラメータ値に従って本計測を行う。以下では、本実施形態の計測装置における計測パラメータのパラメータ値の設定方法について説明する。
【0027】
図3(a)は、波長可変部40の構成例を示す図である。波長可変部40は、波長可変素子42と、波長可変素子42を保持する保持部材45と、保持部材45(波長可変素子42)を駆動する駆動機構47とを含みうる。駆動機構47によって波長可変部40を所定方向(例えば、X方向またはZ軸周りの回転)に駆動することにより、波長可変素子42に対する光の入射領域を調整することができる。これにより、光源61から射出された広帯域な波長の光は、波長可変部40に対する当該光の入射領域に応じた波長の光に変換され、基板73を照明する。換言すると、光源61から射出された広帯域な波長の光に基づいて、波長可変部40に対する当該光の入射領域に応じた波長の光が照明光として生成され、その照明光によって基板73が照明される。
【0028】
波長可変素子42には、例えば、透過波長可変フィルタまたは透過型回折格子であってよい。これにより、制御部1100によって、駆動機構47によって波長可変素子42の位置または角度を制御することによって、波長可変素子42を透過する光の波長を調整(変更)しうる。透過波長可変フィルタとは、例えば、基材の表面上に形成された多層積層膜を有するバンドパスフィルタであり、多層積層膜の厚さが波長変化方向の位置に応じて変化するように構成されうる。このような構造により、光の干渉によって透過する光の波長を連続的に変化させることができる。
【0029】
図3(b)は、駆動機構47により波長可変素子42を所定方向における複数の位置に移動させた場合において、波長可変素子42を透過する光の波長と信号強度の関係を例示した図である。例えば、波長可変素子42をX方向の位置を連続的に調整可能な場合、波長可変素子42に対して光が入射するX方向の位置の調整によって波長可変素子42を透過する光の中心波長を連続的に変化させることができる。また、波長可変部40においては、例えば、短波長カットの波長可変素子42と長波長カットの波長可変素子42とを配置して、それらを個別に駆動可能な構成としてもよい。これにより、短波長カットの波長可変素子42と長波長カットの波長可変素子42を制御することで、透過する光の中心波長と波長幅の両方を任意に変更することができる。
【0030】
続いて、図4を参照しながら第1実施形態における計測処理のシーケンスについて説明する。計測処理では、計測パラメータのパラメータ値が設定され、そのパラメータ値に従って計測が行われる。また、計測処理は、上述したように、制御部1100が計測装置100の各部を統括的に制御することで行われる。
【0031】
計測処理が開始されると、まず、S131において、制御部1100による制御の下で、基板73と計測部50との相対位置を合わせる処理が実行されうる。具体例として、計測部50における検出部75には撮像素子が用いられ、撮像素子の撮像領域に計測パターン72の像が形成されるように、基板73を保持した基板ステージWSが駆動されうる。計測部50に対する基板73のZ軸方向(光軸方向、あるいは光束に沿った方向)の位置の調整は、フォーカス調整と呼ばれうる。フォーカス調整では、例えば、計測パターン72を構成する少なくとも1つのパターンの信号強度を求め、信号強度およびその変化が目標値以上となるように、基板73を保持した基板ステージWSが位置決めされうる。フォーカス調整では、あるいは、計測パターン72を構成する複数のパターンのそれぞれの信号強度を求め、両者の信号強度やその変化が目標値以上となるように、基板73を保持した基板ステージWSが位置決めされてもよい。
【0032】
S132では、制御部1100による制御の下で、互いに異なる少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら、検出部75により基板73の計測パターン72の画像が複数回にわたって取得(撮像)されうる。これは、互いに異なる複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら各組合せについて予備計測を行う予備計測工程の一部として理解されうる。計測パターン72の画像は、計測値を得るための中間情報として理解されうる。互いに異なる複数の計測パラメータとしては、例えば、波長可変部40によって制御されうる中心波長と波長幅とを挙げることができる。以下では、互いに異なる複数の計測パラメータとして中心波長と波長幅とを選択した例を説明するが、他の計測パラメータが選択されてもよい。
【0033】
S133は、任意的に実施されうる工程である。S133では、S132で取得された複数の画像を使って合成画像を生成する合成処理を行う。S133は、S132で得られた中間情報としての画像に基づいて、予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値を推定する推定工程の一部として理解されうる。S133における合成処理については、後で詳しく説明する。
【0034】
S134では、制御部1100は、S132で取得された画像に基づいて計測パターンの位置(計測値)を算出する第1処理と、S133で生成された合成画像に基づいて計測パターンの位置(計測値)を算出する第2処理とを行う。また、S134においては、計測値は計測パターンの位置情報に限らず、計測パターンの信号強度情報、または、信号波形の特徴を示す波形評価値情報でもよい。計測パターンの信号強度情報や波形評価値情報については、後で詳しく説明する。なお、S133が実行されない場合には、S134の第2処理も実行されない。
【0035】
ここで、S132、および、S134における第1処理は、互いに異なる複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せについて予備計測を行う予備計測工程として理解されうる。また、S132は、計測値を得るための中間情報としての画像を計測対象から検出する検出工程として理解されうる。また、S134における第1処理は、中間情報としての画像に基づいて計測値を算出する算出工程として理解されうる。
【0036】
更に、S133、および、S134における第2処理は、S132で得られた中間情報としての画像に基づいて、予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値を推定する推定工程として理解されうる。ここで、検出工程では、計測対象の画像が中間情報として検出されうる。推定工程では、中間情報としての複数の画像から合成画像が生成され、その合成画像に基づいて、予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値が推定されうる。
【0037】
S135では、制御部1100は、S134で得られた計測値に基づいて、少なくとも2つの計測パラメータについて、パラメータ値の変化に対する計測パターンの計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を算出しうる。パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度分布として、例えば、中心波長の変化に対する計測値の変化を示す敏感度分布および波長幅の変化に対する計測値の変化を示す敏感度分布を求めてもよい。
敏感度分布は、少なくとも2つのパラメータ値にそれぞれ対応する少なくとも2つの敏感度を含む。敏感度分布の算出方法については、後で詳しく説明する。
【0038】
S136では、制御部1100は、S135で算出した敏感度分布に基づいて、少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値を決定しうる。これは、複数の計測パラメータのそれぞれについての敏感度分布に基づいて、複数の計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定工程として理解されうる。
この決定工程により、最適な中心波長と波長幅と(の組合せ)を決定することができる。
【0039】
S137では、制御部1100による制御の下で、S136で決定された複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って検出部75によって計測パターン72の画像情報が取得され、その画像情報に基づいて計測パターン72の位置が計測されうる。これは、S135(決定工程)で決定された複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って本計測を行う本計測工程として理解されうる。
【0040】
以下では、図5を参照しながら、S133における複数の画像の合成処理方法について説明する。ここでは、2つの計測パラメータ、具体的には、中心波長および波長幅を設定する方法を説明する。図5(a)は、中心波長480nm、波長幅±10nmの条件において、検出部75によって取得された計測パターン72aを含む画像76aを示している。図5(b)は、中心波長500nm、波長幅±10nmの条件において検出部75によって取得された画像76bを示している。図5(a)、図5(b)にそれぞれ示された画像76a、画像76bは、NDフィルタの透過率が40%、60%、検出部75の蓄積時間がいずれも10msecで取得された画像を模式的に示している。画像76a、画像76bは、パラメータ値の違いによって、パターン部および非パターン部の信号強度が互いに異なるという特徴を示す。
【0041】
図5(c)は、画像76aと画像76bとを基準輝度に基づいて合成処理して得られる合成画像76cを示している。ここで、基準輝度とは、それぞれの画像を検出する際に設定される、光量に関する計測条件(パラメータ値)から算出される基準となる輝度を意味し、合成処理を行う際に複数の画像の輝度を一致させる目的で求められる。合成処理に使用される2つの画像76a、76bを検出する際のNDフィルタの透過率をTa、Tb、蓄積時間をCa、Cbとした場合、画像76a、76bの輝度Sa、Sbは、以下の(式1)(式2)で表されうる。
【0042】
Sa=1/(Ca×Ta) (式1)
Sb=1/(Cb×Tb) (式2)
Ta<Tb、Ca<Cbの場合には、輝度が高いSaが基準輝度であり、(式1)(式2)、及び図5(b)に示す計測条件より、基準輝度Saに対する輝度Sbの比は0.67として求められる。そして、画像76bの画素出力に、基準輝度に対する輝度の比をそれぞれ掛け合わせた画像を生成し、基準輝度の画像76aと合成することにより、中心波長490nm、波長幅±20nmの条件で検出された画像に相当する合成画像76cを生成することができる。これにより、必要とされる複数の中心波長と必要とされる複数の波長幅との全ての組合せについて画像を取得する場合に比べて、最適な中心波長および波長幅の決定に要する時間を短縮可能となる。
【0043】
仮に、合成処理において使用する2つの画像の検出光量の基準値を一致させずに画像合成を行う場合には、実際に取得した画像と合成処理によって形成される画像とでは、パターン部および非パターン部の信号強度に違いが生じる。よって、最適な中心波長および波長幅の組合せを正確に求めることが難しい。このため、S133においては、2つの画像の検出光量の基準値を一致させて合成処理を行うことが好ましく、これにより、最適な中心波長と波長幅の組合せを精度良く決定することができる。なお、(式1)、(式2)では、NDフィルタの透過率と蓄積時間を用いて輝度を算出する方法について説明したが、これに限定されず、例えば光源61の出力を制御する電流値、および、検出部75に設定されるゲイン等を設定してもよい。
【0044】
続いて、S134における計測パターンの位置情報の算出方法について説明する。S133において取得された計測パターン72の画像を、例えば、テンプレートマッチング法を用いて処理することにより、計測パターン72の位置を算出することができる。テンプレートマッチング法では、S133で取得した信号と、事前に取得したモデル信号(テンプレート)との相関演算により、最も相関が高い位置が計測パターンの中心位置として検出されうる。相関値の関数においてピークとなる位置から、左右に数画素の領域の重心画素位置を求めることにより、1/10画素乃至1/50画素の分解能を実現することができる。
【0045】
以下では、図6を参照しながら、S135における敏感度分布の算出方法について説明する。敏感度分布の一例として、ここでは、中心波長の変化に対する計測値の変化を示す敏感度分布(簡略的に表現すれば、中心波長の変化に対する敏感度分布)について例示的に説明する。中心波長の変化に対する敏感度分布は、中心波長の変化に対する計測値の変化を示す敏感度の集合であり、少なくとも2つの敏感度を含む。中心波長の変化に対する敏感度分布は、S136において計測に採用する計測パラメータとしての中心波長の値を決定するための指標となる。
【0046】
図6(a)は、計測パターンの位置情報(計測値)と中心波長との関係を示す図であり、横軸に中心波長(「波長」と標記)、縦軸に計測パターンの位置情報(「計測値」と標記)が示されている。中心波長WL3および中心WL4は、光の中心波長を意味する。計測部50のベストフォーカス位置に基板73の表面を位置合わせした状態において、中心波長WL3の光で計測パターン72の位置を計測した際の計測値をM23、中心波長WL4の光で計測パターン72の位置を計測した際の計測値をM24とする。図6(b)は、中心波長の変化に対する計測パターン72の計測値の変化を示す波長敏感度分布を示す図であり、横軸に中心波長、縦軸に図6(a)に示す計測値から算出される計測値の変化を示す。一例として、中心波長dWL3と計測値変化dMw3はそれぞれ、(式3)と(式4)により表現される。
【0047】
dWL3=(WL3+WL4)÷2 (式3)
dMw3=(M24-M23)÷(WL4-WL3) (式4)
続いて、S136(決定工程)における計測パラメータのパラメータ値の決定方法について説明する。S136においては、S135で算出した敏感度分布に基づいて、採用すべきパラメータ値を決定する。S136における判断基準として、低い敏感度を示すパラメータ値を選定することが好ましい。他の観点では、S136(決定工程)では、敏感度分布における敏感度が、採用すべきパラメータ値において所定の敏感度よりも鈍感であることを示すように、該採用すべきパラメータ値を決定することが好ましい。別の観点では、S136(決定工程)では、敏感度分布における敏感度が、採用すべきパラメータ値において、所定の敏感度よりも小さいように、該採用すべきパラメータ値を決定することが好ましい。更に別の観点では、S136(決定工程)では、敏感度分布における敏感度が、採用すべきパラメータ値において最小となるように、該採用すべきパラメータ値を決定することが好ましい。
【0048】
以下では、図7を用いてパラメータ値の決定についての上記の理由を説明する。図7(a)は、基板73の断面において、計測パターン72と非パターン部とからの反射光を例示する図である。基板73には第一層L1と第二層L2から構成され、二つの境界面S1とS2を有する。境界面S1において計測パターン72は非パターン部に対して高さdの段差を有する。境界面S1における計測パターン72からの反射光をL1A、非パターン部からの反射光をL1Bとし、境界面S2における計測パターン72と非パターン部からの反射光をそれぞれL2A、L2Bとする。計測部50においては、反射光L1AとL2Aの干渉光、及び反射光L1BとL2Bの干渉光が、計測パターン72からの反射光LAと非パターン部からの反射光LBとなり、それぞれ検出される。
【0049】
図7(b)は、位置Xに対する信号強度情報の例を示す図であり、図7(a)に示すパターン部からの反射光LAと、非パターン部からの反射光LBとを含む。ここで、反射光LAとLBの信号強度の差が小さいほど、信号コントラストは低くなり、計測パターンの位置を検出することは困難となる。反射光L1とL2とにおける信号強度の差は、計測パターン72の段差dに起因する位相差Δに応じて変化し、位相差Δは、第二層L2の屈折率n、段差d、波長λを用いて、以下の(式5)で表される。
【0050】
Δ=2nd×2π/λ (式5)
(式5)より、仮に、計測パターン72において第二層L2の屈折率nや段差dにばらつきが生じる場合には、位相差Δが変化する。前述の様に、位相差Δの変化は信号コントラストの変化を招き、これに伴って計測誤差が発生して計測精度が低下する恐れがある。
【0051】
ここで、(式5)に示すように、中心波長の変化は位相差Δのばらつきに相当するため、中心波長の変化に対する計測値の変化を示す敏感度は、位相差ばらつきに対する計測値ばらつきに相当する。このため、本実施形態のS136においては、中心波長の変化に対する計測値の変化を支示す敏感度が小さいパラメータ値を選定することにより、プロセス変化に伴う計測誤差を低減させることができる。
【0052】
図7(c)は、信号強度情報の一例を示す図である。ここで、波形評価値情報は、検出部75の出力に基づいて生成される信号波形の品質を示す指標を意味する。波形評価値情報の一例として、計測パターンの信号波形の非対称性を定量化した値がある。例えば、図7(a)において、信号波形の左区間における信号強度の最大値をTL、最小値をBLとし、右区間における信号強度の最大値をTR、最小値をBRとし、信号波形の中央部の信号強度をML、MRとする。そして、以下の(式6)に示すように、信号波形における左区間と右区間の非対称性ESを、S134で計測値として求めてもよい。
【0053】
ES=(TL―BL)/(TL+BL)-(TR―BR)/(TR+BR) (式6)
非対称性の算出方法については、(式6)に限定されず、例えば、信号波形の中心位置を定義して、中心位置に対して左区間と右区間においてそれぞれ所定の位置範囲の信号強度を基に、信号波形の非対称性を定義してもよい。また、波形評価値情報は非対称性に限定されず、例えば、以下の(式7)に示すように、計測パターンのコントラストを評価してもよい。
【0054】
EC={(TL―BL)/(TL+BL)+(TR―BR)/(TR+BR)}/2 (式7)
上記のように、計測パターンの位置情報の代わりに、波形評価値情報を計測値として求めて、計測パターンの信号強度情報や波形評価値情報の敏感度に基づいて計測パラメータのパラメータ値を決定してもよい。
【0055】
以上のように、第1実施形態では、複数の計測パラメータのそれぞれについての敏感度分布を求めて、その敏感度分布に基づいて、該複数の計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値が決定される。これにより、計測対象を高速かつ高精度に計測することができる。
【0056】
以下、図8を参照しながら第2実施形態における計測装置および計測処理について説明する。第2実施形態と第1実施形態との差異は、計測パラメータのパラメータ値を設定するための敏感度の算出方法であり、それ以外の構成は第1実施形態と同じである。ここで言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。
【0057】
図8は、第2実施形態における計測処理のシーケンスを示す図である。この計測処理は、第1実施形態と同様に、図1に示す制御部1100が計測装置100の各部を統括的に制御することで行われる。計測処理が開始されると、まず、S231において、制御部1100による制御の下で、基板73と計測部50との相対位置を合わせる処理が実行されうる。S232では、制御部1100による制御の下で、互いに異なる少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら、検出部75により基板73に設けられた計測パターン72の画像が複数回にわたって取得(撮像)されうる。これは、互いに異なる複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら各組合せについて予備計測を行う予備計測工程の一部として理解されうる。互いに異なる複数の計測パラメータとしては、例えば、波長可変部40によって制御されうる中心波長と波長幅とを挙げることができる。以下では、互いに異なる複数の計測パラメータとして中心波長と波長幅とを選択した例を説明する。また、第2実施形態では、計測部50のベストフォーカス位置からの基板73の表面のずれ(デフォーカス)に対する計測値の敏感度が考慮される。そこで、S232は、基板73を保持した基板ステージWSをZ方向に所定の量だけ駆動する動作を含み、Z方向の互いに異なる位置のそれぞれで検出部75により計測パターン72の画像が取得(撮像)されうる。
【0058】
S233は、任意的に実施されうる工程である。S233では、制御部1100は、S232で取得された複数の画像情報を使って合成画像を生成する合成処理を行う。S234では、制御部1100は、制御部1100は、S232で取得された画像に基づいて計測パターンの位置(計測値)を算出する第1処理と、S233で生成された合成画像に基づいて計測パターンの位置(計測値)を算出する第2処理とを行う。
【0059】
ここで、S232、および、S234における第1処理は、互いに異なる複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せについて予備計測を行う予備計測工程として理解されうる。また、S232は、計測値を得るための中間情報としての画像を計測対象から検出する検出工程として理解されうる。また、S234における第1処理は、中間情報としての画像に基づいて計測値を算出する算出工程として理解されうる。
【0060】
更に、S233、および、S234における第2処理は、S232で得られた中間情報としての画像に基づいて、予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値を推定する推定工程として理解されうる。ここで、検出工程では、計測対象の画像が中間情報として検出されうる。推定工程では、中間情報としての複数の画像から合成画像が生成され、その合成画像に基づいて、予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値が推定されうる。
【0061】
S235では、制御部1100は、S234で得られた計測値に基づいて、少なくとも2つの計測パラメータについて、パラメータ値の変化に対する計測パターンの計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を算出しうる。パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度分布として、例えば、中心波長の変化に対する計測値の変化を示す敏感度分布および波長幅の変化に対する計測値の変化を示す敏感度分布を求めてもよい。
敏感度分布は、少なくとも2つの計測パラメータにそれぞれ対応する少なくとも2つの敏感度を含む。敏感度分布の算出方法については、後で詳しく説明する。
【0062】
S236では、制御部1100は、S235で算出した敏感度分布に基づいて、少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値を決定しうる。これは、複数の計測パラメータのそれぞれについての敏感度分布に基づいて、複数の計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定工程として理解されうる。
この決定工程により、最適な中心波長と波長幅と(の組合せ)を決定することができる。
【0063】
S237では、制御部1100による制御の下で、S236で決定された複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って検出部75によって計測パターン72の画像情報が取得され、その画像情報に基づいて計測パターン72の位置が計測されうる。これは、S235(決定工程)で決定された複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って本計測を行う本計測工程として理解されうる。
【0064】
第2実施形態では、フォーカス状態の変化(デフォーカスの変化)に対する計測値の変化(フォーカス敏感度)の、計測パラメータのパラメータ値の変化に対する敏感度が該パラメータ値の決定に使われうる。例えば、フォーカス状態の変化(デフォーカスの変化)に対する計測値の変化(フォーカス敏感度)の、中心波長の変化に対する敏感度(簡略的に表現すれば、中心波長の変化に対するフォーカス敏感度の敏感度)がパラメータ値の決定に使われうる。また、フォーカス状態の変化(デフォーカスの変化)に対する計測値の変化(フォーカス敏感度)の、波長幅の変化に対する敏感度(簡略的に表現すれば、波長幅の変化に対するフォーカス敏感度の敏感度)がパラメータ値の決定に使われうる。仮に、基板73の表面の法線と計測部50の光軸との相対角度ずれがある場合には、基板73と計測部50の相対的なフォーカス位置変動に伴って計測値が変化する。そこで、少なくとも2つの計測パラメータ(ここでは、中心波長および波長幅)について、フォーカス敏感度が小さいパラメータ値を選定することにより、計測値のばらつきを低減して、高精度な計測を実現することが可能となる。
【0065】
S232においては、例えば、Z軸方向の互いに異なる位置のそれぞれについて計測パターンの画像が取得されうる。S234では、S232で取得された画像情報、及びS233で生成された合成画像について、それぞれ計測パターンの位置(計測値)が算出されうる。図9(a)は、図6(a)と同様に、計測パターンの位置(計測値)と中心波長との関係を示す図であり、横軸に中心波長、縦軸に計測値が示されている。波長WL3とWL4は、基板を照明する光や基板から検出される光の中心波長を意味する。図9(a)の例では、図6(a)と同様に計測部50のベストフォーカスに基板73を位置合わせした状態に加えて、デフォーカス位置に基板73を位置合わせした状態において、中心波長の変化に対する計測値の変化が求められている。例えば、ベストフォーカス位置Z1とデフォーカス位置Z2とにおいて、中心波長WL4の光による計測パターン72の計測値を、それぞれM14、M24とする。同様にして、中心波長WL6の光による計測パターン72の計測値を、M16、M26とする。
【0066】
S235では、少なくとも2つの計測パラメータについて、計測パラメータのパラメータ値の変化に対する計測パターンの計測値の変化を示す敏感度を算出する。ここでは、パラメータ値の変化として、例えば、中心波長および波長幅の変化を考慮する。また、計測値の変化として、フォーカス敏感度の変化を考慮する。
【0067】
図9(b)は、フォーカス状態の変化に対する計測パターン72の計測値の変化(フォーカス敏感度)と中心波長との関係を示す図であり、横軸に中心波長、縦軸には図9(a)に示す計測値から算出される計測値変化を示す。計測値変化dMz4とdMz6は、以下の(式8)(式9)でそれぞれ表現される。
【0068】
dMz4=M14-M24 (式8)
dMz6=M16-M26 (式9)
S236では、制御部1100は、S235で算出した敏感度分布に基づいて、少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについてパラメータ値を決定しうる。各計測パラメータについて敏感度の小さなパラメータ値を選定することにより、例えば、パラメータ値の変動に起因する計測値の変化を最小化して、高精度な計測を実現することができる。
【0069】
各計測パラメータのパラメータ値の決定については、上記のように1つの指標に基づいて決定する方法に代えて、複数の指標に基づいて決定する方法が採用されてもよい。例えば、第1実施形態における中心波長の変化に対する敏感度分布、および、第2実施形態における中心波長の変化に対するフォーカス敏感度の双方の指標に基づいてパラメータ値が決定されてもよい。複数の指標(敏感度)に基づいてパラメータ値を決定する場合には、それぞれの敏感度の相対的な影響を調整するために重み関数を設定してもよい。例えば、プロセスばらつきにおける波長変化とフォーカス変化の影響度の違いを考慮して、上記2つの敏感度に重み付けしてもよい。これにより、プロセスばらつきに伴う波長変化とフォーカス変化に対する計測値変化(計測誤差)を抑制することができる。
【0070】
ここまでは、基板73上の一つの計測パターン72を用いた敏感度の算出について説明したが、複数の異なる位置に形成された計測パターン72を用いて敏感度を算出してもよい。例えば、図10(a)に示すように、基板73上に形成された複数の計測パターン72aと72bにおいてそれぞれ画像を検出して、取得した画像情報に基づいて計測値を算出して、波長敏感度やフォーカス敏感度を求めてもよい。そして、図10(b)に示すように、計測パターン72aと72bにおける敏感度SaとSbをそれぞれ求めてもよい。
【0071】
2つ以上のパラメータ値の候補から計測パラメータのパラメータ値を決定する際には、同じ波長における敏感度SaとSbの平均値、又は、ばらつきに基づいて、基板上の複数の計測パターンを計測する場合に生じる誤差が最小となるように、計測パラメータを決定することが好ましい。これにより、例えば、基板73の膜厚ばらつきに起因して基板73上の位置に応じた計測誤差を最小化してもよい。
【0072】
また、計測部50が使用する光の波長、σ値、偏光等の計測パラメータのそれぞれについて重み付けを行ってもよい。一例として、取得した計測値に基づいて波長敏感度分布を算出した後、図10(c)に示すような波長毎の重み関数W1を図10(b)に示す敏感度分布に積算することができる。重み付けの具体例としては、計測パターン72における波長に応じた信号コントラストの変化、および、σ値の違いに伴う計測精度や計測時間の違い等が挙げられる。これにより、計測パターン72について取得した計測値に対して、所定の重みを付加して敏感度を算出することにより、計測精度の低下や計測時間の増大を抑制することができる。
【0073】
以下、第3実施形態の計測装置について説明する。ここで言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第3実施形態として、図11を参照して、基板73上の異なる層に形成された複数の計測パターンの相対位置を計測する重ね合わせ計測装置(重ね合わせ検査装置)について説明する。
【0074】
図11(a)は、図1(b)に示す検出部75の検出面上に結像された計測パターン72の像を例示する図である。計測パターン72は、それぞれ異なる層に形成された第1パターン群P1と第2パターン群P2とを含みうる。検出部75は、X方向およびY方向に複数の画素を有する二次元撮像素子を含みうる。制御部1100は、検出部75からの出力に基づいて、第1パターン群P1と第2パターン群P2のそれぞれの信号波形を生成しうる。
【0075】
図11(b)は、図11(a)に示す検出部75の出力に基づいて生成される信号波形の一例として、図11(a)のY方向について検出部75の各画素におけるパターンの信号強度を積算することにより生成された信号波形SWを示している。検出部75の各画素における信号強度の積算については、パターンの寸法情報に基づいて、積算すべき画素数が設定されることが好ましい。図11(b)に示す波形S1と波形S2は、信号波形SWにおける第1パターン群P1と第2パターン群P2の信号強度の変化を意味する。また、計測値X1と計測値X2は、制御部1100により、波形S1と波形S2のそれぞれに基づいて算出された第1パターン群P1と第2パターン群P2の中心位置である。例えば、計測値X1と計測値X2との差分を計算することにより、X方向における第1パターン群P1と第2パターン群P2の相対位置ずれが算出される。Y方向の相対位置ずれの算出には、例えば、パターンの長手方向がX方向に等しく、かつY方向に沿って基板に形成された複数のパターンから構成される第1パターン群と第2パターン群が用いられうる。そして、X方向について各画素におけるパターンの信号強度を積算することにより信号波形を生成し、X方向の相対位置ずれと同様に、各パターン群の計測値の差分から相対位置ずれが算出される。
【0076】
図11(c)は、本実施形態において、計測パラメータを決定する計測処理のシーケンスを示す図である。計測処理は、図1に示す制御部1100が計測装置100の各部を統括的に制御することで行われる。計測処理が開始されると、S331において、基板73と計測部50との相対位置を合わせる処理が実行される。ここでは、図11(a)に示すように、第1パターン群P1と第2パターン群P2との両方が検出部75に対して位置合わせされる。S332では、互いに異なる少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら、検出部75により基板73に設けられた第1パターン群P1および第2パターン群P2の画像を複数回にわたって取得されうる。この処理は、例えば、S132またはS232と同様に行うことができる。S333では、制御部1100は、S332で取得された複数の画像情報を使って合成画像を生成する合成処理を行う。S334では、制御部1100は、S332で取得された画像情報とS333で生成された合成画像について、それぞれ第1パターン群P1および第2パターン群P2の位置(計測値)を算出する。S335では、制御部1100は、少なくとも2つの計測パラメータについて、パラメータ値の変化に対する第1パターン群P1および第2パターン群P2の計測値の敏感度を算出する。
【0077】
S336では、制御部1100は、S335で算出した敏感度分布に基づいて、少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについてパラメータ値を決定しうる。S337では、制御部1100による制御の下で、S336で決定された複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って検出部75によって第1パターン群P1および第2パターン群P2の画像情報が取得されうる。そして、その画像情報に基づいて第1パターン群P1および第2パターン群P2の位置が計測されうる。
【0078】
ここで、基板73上の異なる層に形成された第1パターン群P1と第2パターン群P2の位置計測方法について例示的に説明する。基板73と計測部50との位置合わせに関しては、2つの方法がある。第1の方法では、第1パターン群P1と第2パターン群P2のそれぞれを個別に計測部50のベストフォーカス位置に位置合わせして、第1パターン群P1と第2パターン群P2の位置がそれぞれ計測される。第2の方法では、あるフォーカス位置に基板73と検出部75を位置合わせした状態で、第1パターン群P1と第2パターン群P2の位置が計測されうる。
【0079】
第1の方法が採用される場合、S335では、第1パターン群P1と第2パターン群P2のそれぞれのベストフォーカス位置を基準として、第1実施形態または第2実施形態等にしたがって敏感度分布が求められうる。第2の方法が採用される場合は、S335においては、共通のフォーカス位置を基準として、第1実施形態または第2実施形態等にしたがって敏感度分布が求められうる。共通のフォーカス位置は、第1パターン群P1と第2パターン群P2からの検出信号における強度や品質に基づいて決定されうる。
【0080】
以上のように、第3実施形態においては、互いに異なる少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら基板73の互いに異なる層に形成された複数の計測パターンの位置がそれぞれ計測される。そして、これによって得られた計測値に基づいて敏感度分布が算出される。そして、その敏感度分布に基づいて少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値が決定される。これにより、例えば、波長変化またはフォーカス変化等のパラメータ値の変化に対して計測値変化の小さなパラメータ値を選定することにより、重ね合わせ計測における誤差を低減して、高精度な重ね合わせを実現することができる。このため、本実施形態では、基板上のパターンの重ね合わせ誤差を高速、且つ、高精度に計測可能な重ね合わせ検査装置を提供することができる。
【0081】
以下、第4実施形態として、基板上に形成された計測パターンの特性変化を計測する計測装置(計測パターンモニタ)について説明する。ここで言及しない事項は、第1実施形態に従いうる。第4実施形態として、図12を参照ながら、第4実施形態における計測装置および計測処理について説明する。第4実施形態と第1実施形態との差異は、計測パラメータのパラメータ値を決定する方法である。
【0082】
始めに、計測パターンの特性変化を計測する計測装置(計測パターンモニタ)の機能について説明する。仮に、基板の加熱や成膜等の処理工程において基板の変形や構造・特性の変化が生じた場合には、取得される計測パターンの信号強度情報が変化することによって計測値が変化して、基板の位置合わせ精度や基板上のパターンの重ね合わせ精度が悪化する。そこで、計測装置を用いて計測パターンの特性を計測(モニタ)することにより、各処理工程での異常の有無を検知し、計測パラメータの特性変化の原因となる処理装置を特定する。これにより、例えば、該当する処理装置のキャリブレーションや設定条件の変更、計測パターンの構造や処理工程の見直しを行うことにより、基板の位置合わせ精度低下やパターンの重ね合わせ精度悪化に伴う不良品の発生を減らすことができる。
【0083】
図12は、第4実施形態における計測処理のシーケンスを示す図である。S431からS435は、図4に示すS131からS135と同じである為、ここでは説明を省略する。
【0084】
続いて、S436(決定工程)における計測パラメータのパラメータ値の決定方法について説明する。S436においては、S435で算出した敏感度分布に基づいて、採用すべきパラメータ値を決定する。S436における判断基準として、高い敏感度を示すパラメータ値を選定することが好ましい。他の観点では、S436(決定工程)では、敏感度分布における敏感度が、採用すべきパラメータ値において所定の敏感度よりも敏感であることを示すように、該採用すべきパラメータ値を決定することが好ましい。別の観点では、S436(決定工程)では、敏感度分布における敏感度が、採用すべきパラメータ値において、所定の敏感度よりも大きいように、該採用すべきパラメータ値を決定することが好ましい。更に別の観点では、S436(決定工程)では、敏感度分布における敏感度が、採用すべきパラメータ値において最大となるように、該採用すべきパラメータ値を決定することが好ましい。
【0085】
なお、複数の計測パターンについて計測処理を実行する場合には、第2実施形態で図10(b)を用いて説明したように、複数の計測パターンにおけるそれぞれの敏感度を求める。そして、例えば、同じ波長における敏感度SaとSbの平均値、又は、ばらつきに基づいて、基板上の複数の計測パターンを計測する場合に生じる誤差が最大となるように、計測パラメータを決定することが好ましい。これにより、例えば、基板73の膜厚ばらつきに起因して基板73上の位置に応じた計測誤差を最大化してもよい。
【0086】
以下では、パラメータ値の決定についての上記の理由を説明する。第1実施形態のS136においては、プロセス変化に伴う計測誤差を低減させる目的で、中心波長の変化に対する計測値の変化を示す敏感度が小さいパラメータ値を選定した。一方で、本実施形態の計測装置(計測パターンモニタ)においては、プロセス変化に伴う計測値の変化を高精度に検知する必要がある。このため、中心波長の変化に対する計測値の変化を示す敏感度が高いパラメータ値を選定することにより、高い精度でプロセス変化を検知可能となる。
【0087】
S437では、制御部1100による制御の下で、S436で決定された複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って検出部75によって計測パターン72の画像情報が取得され、その画像情報に基づいて計測パターン72の特性情報が計測されうる。これは、S436(決定工程)で決定された複数の計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って本計測を行う本計測工程として理解されうる。計測パターン72の特性情報の例として、計測パターン72の位置や信号強度情報、波形評価値情報等が挙げられる。
【0088】
S438では、S437で取得した計測パターン72の特性情報と参照情報を比較して、計測パターンの特性情報について変化量を求める。参照情報の例としては、予め取得された計測パターン72の特性情報や設計値情報、シミュレーション結果が挙げられる。
【0089】
以上のように、第4実施形態では、計測パラメータのそれぞれについての敏感度分布を求めて、その敏感度分布に基づいて、該複数の計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値が決定される。これにより、本実施形態の計測装置(計測パターンモニタ)においては、計測パターンの物性情報における変化を高速かつ高精度に計測することができる。
【0090】
以下、上記の計測装置が組み込まれたリソグラフィ装置について説明する。リソグラフィ装置は、例えば、露光装置、インプリント装置または電子ビーム描画装置でありうる。図13は、リソグラフィ装置の一例としての露光装置EXAの構成を示す概略図である。露光装置EXAは、半導体素子または液晶表示素子等の物品またはデバイスの製造工程であるリソグラフィ工程に用いられ、基板83にパターンを形成するリソグラフィ装置である。露光装置EXAは、原版であるレチクル31を介して基板83を露光して、レチクル31のパターンを基板83に転写する。露光装置EXAは、本実施形態では、ステップ・アンド・スキャン方式を採用しているが、ステップ・アンド・リピート方式、その他の露光方式を採用することも可能である。
【0091】
露光装置EXAは、図13に示すように、照明光学系801と、レチクル31を保持するレチクルステージRSと、投影光学系32と、基板83を保持する基板ステージWSと、位置計測装置550と、制御部1200とを有する。
【0092】
照明光学系801は、光源部800からの光を用いて、被照明面を照明する光学系である。光源部800は、例えば、レーザを含む。レーザは、波長約193nmのArFエキシマレーザ、波長約248nmのKrFエキシマレーザなどを含むが、光源の種類をエキシマレーザに限定するものではない。例えば、光源部800は、光源として、波長約157nmのF2レーザや波長20nm以下のEUV(Extreme ultraviolet)を使用してもよい。
【0093】
照明光学系801は、本実施形態では、光源部800からの光を露光に最適な所定の形状を有するスリット光に成形し、レチクル31を照明する。照明光学系801は、レチクル31を均一に照明する機能や偏光照明する機能を有する。照明光学系801は、例えば、レンズ、ミラー、オプティカルインテグレータ、絞りなどを含み、コンデンサーレンズ、ハエの目レンズ、開口絞り、コンデンサーレンズ、スリット、結像光学系の順に配置することで構成される。
【0094】
レチクル31は、例えば、石英で構成される。レチクル31には、基板83に転写すべきパターン(回路パターン)が形成されている。
【0095】
レチクルステージRSは、レチクルチャック(不図示)を介してレチクル31を保持し、レチクル駆動機構(不図示)に接続されている。レチクル駆動機構は、リニアモータなどを含み、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向にレチクルステージRSを駆動することで、レチクルステージRSに保持されたレチクル31を移動させることができる。なお、レチクル31は、その位置が光斜入射系のレチクル位置計測部(不図示)によって計測され、レチクルステージRSを介して、所定の位置に配置される。
【0096】
投影光学系32は、物体面からの光を像面に結像する機能を有する。投影光学系32は、本実施形態では、レチクル31のパターンを経た光(回折光)を基板83に投影し、レチクル31のパターンの像を基板上に形成する。投影光学系32には、複数のレンズ素子からなる光学系、複数のレンズ素子と少なくとも1つの凹面ミラーとを含む光学系(カテディオプトリック光学系)、複数のレンズ素子とキノフォームなどの少なくとも1つの回折光学素子とを含む光学系などが用いられる。
【0097】
基板83には、フォトレジストが塗布されている。基板83は、レチクル31のパターンが転写される被処理体であって、ウエハ、液晶基板、その他の被処理基板などを含む。
【0098】
基板ステージWSは、基板チャック(不図示)を介して基板83を保持し、基板駆動機構(不図示)に接続される。基板駆動機構は、リニアモータなどを含み、X軸方向、Y軸方向、Z軸方向及び各軸の回転方向に基板ステージWSを駆動することで、基板ステージWSに保持された基板83を移動させることができる。また、基板ステージWSには、基準プレート39が設けられている。
【0099】
レチクルステージRSの位置及び基板ステージWSの位置は、例えば、6軸のレーザ干渉計91などで監視され、制御部1200の制御下において、レチクルステージRSと基板ステージWSとが一定の速度比率で駆動される。
【0100】
制御部1200は、CPUやメモリなどを含むコンピュータ(情報処理装置)で構成され、例えば、記憶部に記憶されたプログラムに従って露光装置EXAの各部を統括的に制御して露光装置EXAを動作させる。制御部1200は、レチクル31を介して基板83を露光して、レチクル31のパターンを基板83に転写する露光処理を制御する。また、制御部1200は、本実施形態では、位置計測装置550における計測処理や位置計測装置550で得られた計測値の補正処理(演算処理)も制御する。このように、制御部1200は、位置計測装置550の一部としても機能する。
【0101】
露光装置EXAにおいて、レチクル31を通過した光(回折光)は、投影光学系32を介して、基板83に投影される。レチクル31と基板83とは、光学的に共役の関係に配置されている。レチクル31と基板83とを投影光学系32の縮小倍率比の速度比で走査することによって、レチクル31のパターンが基板83に転写される。
【0102】
位置計測装置550は、対象物の位置を計測する計測装置である。位置計測装置550は、本実施形態では、基板83に設けられたアライメントマークなどのマーク82の位置を計測する。波長可変手段540は、波長可変素子と保持部材から構成され、制御部により、不図示の駆動機構を用いてX方向に駆動される。
【0103】
図14を参照して、レチクル31を介して基板83を露光して、レチクル31のパターンを基板83に転写する露光処理のシーケンスについて説明する。露光処理は、上述したように、制御部1200が露光装置EXAの各部を統括的に制御することで行われる。
【0104】
S101では、露光装置EXAに基板83を搬入する。S102では、形状計測装置(不図示)によって、基板83の表面(高さ)を検出して基板83の全域の表面形状を計測する。
【0105】
S103では、キャリブレーションを行う。具体的には、ステージ座標系における基準プレート39に設けられた基準マークの設計上の座標位置に基づいて、位置計測装置550の光軸上に基準マークが位置するように、基板ステージWSを駆動する。次いで、位置計測装置550の光軸に対する基準マークの位置ずれを計測し、位置ずれに基づいて、ステージ座標系の原点が位置計測装置550の光軸と一致するように、ステージ座標系を再設定する。次に、位置計測装置550の光軸と投影光学系32の光軸との設計上の位置関係に基づいて、基準マークが露光光の光軸上に位置するように、基板ステージWSを駆動する。そして、TTL(スルー・ザ・レンズ)計測系によって、投影光学系32を介して、露光光の光軸に対する基準マークの位置ずれを計測する。
【0106】
S104では、S103におけるキャリブレーションの結果に基づいて、位置計測装置550の光軸と投影光学系32の光軸とのベースラインを決定する。S105では、位置計測装置550によって、基板83に設けられたマーク82の位置を計測する。
【0107】
S106では、グローバルアライメントを行う。具体的には、S105における計測結果に基づいて、基板83のショット領域の配列に関して、シフト、マグニフィケーション(倍率)、ローテーション(回転)を算出し、ショット領域の配列の規則性を求める。そして、ショット領域の配列の規則性及びベースラインから補正係数を求め、補正係数に基づいて、レチクル31(露光光)に対して基板83を位置合わせ(アライメント)する。
【0108】
S107では、レチクル31と基板83とを走査方向(Y方向)に走査しながら基板83を露光する。この際、形状計測装置によって計測した基板83の表面形状に基づいて、Z方向及び傾き(チルト)方向に基板ステージWSを駆動して、基板83の表面を投影光学系32の結像面に逐次合わせ込む動作も行う。
【0109】
S108では、基板83の全てのショット領域に対する露光が完了したかどうか(即ち、未露光のショット領域が存在していないかどうか)を判定する。基板83の全てのショット領域に対する露光が完了していない場合には、S107に移行し、全てのショット領域に対する露光が完了するまで、S107及びS108を繰り返す。一方、基板83の全てのショット領域に対する露光が完了している場合には、S109に移行して、露光装置EXAから基板83を搬出する。
【0110】
本実施形態においては、異なる複数の計測パラメータを用いて、マーク82の位置をそれぞれ計測して、少なくとも2つ以上の計測パラメータ候補について、計測パラメータ変動に対する計測値の敏感度をそれぞれ算出する。そして、敏感度に基づいて、計測に採用する計測パラメータを決定する。これにより、位置合わせ計測における誤差を低減して、高精度な位置合わせを実現することができる。このため、本実施形態では、基板上のパターンの位置を高速、且つ、高精度に計測可能な位置計測装置を提供することができる。
【0111】
上記のリソグラフィ装置を用いて物品を製造する物品製造方法について例示的に説明する。物品製造方法は、例えば、デバイス(半導体素子、磁気記憶媒体、液晶表示素子など)などの物品を製造するのに好適である。製造方法は、露光装置EXAを用いて、感光剤が塗布された基板を露光する(パターンを基板に形成する)工程と、露光された基板を現像する(基板を処理する)工程を含む。また、製造方法は、他の周知の工程(酸化、成膜、蒸着、ドーピング、平坦化、エッチング、レジスト剥離、ダイシング、ボンディング、パッケージングなど)を含みうる。本実施形態における物品の製造方法は、従来に比べて、物品の性能、品質、生産性及び生産コストの少なくとも1つにおいて有利である。なお、上述した物品の製造方法は、インプリント装置や描画装置などのリソグラフィ装置を用いて行ってもよい。
【0112】
本明細書および図面の開示は、以下の計測方法、計測装置、リソグラフィ装置および物品製造方法を含む。
(項目1)
互いに異なる少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら各組合せについて予備計測を行う予備計測工程と、
前記予備計測工程で得られた計測値に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を得る処理工程と、
前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについての前記敏感度分布に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定工程と、
前記決定工程で決定された前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値に従って本計測を行う本計測工程と、
を含むことを特徴とする計測方法。
(項目2)
前記予備計測工程および前記本計測工程では、ターゲットの位置情報を計測する、
ことを特徴とする項目1に記載の計測方法。
(項目3)
前記少なくとも2つの計測パラメータは、前記ターゲットを照明する光の中心波長、および、前記光の波長幅を含む、
ことを特徴とする項目2に記載の計測方法。
(項目4)
前記少なくとも2つの計測パラメータは、前記ターゲットを照明する光の中心波長、波長幅、σ値、前記ターゲットを計測する計測装置の光路における偏光特性、前記光路に配置されたNDフィルタの透過率、前記ターゲットの位置、前記ターゲットの傾き、の少なくとも2つを含む、
ことを特徴とする項目2に記載の計測方法。
(項目5)
前記少なくとも2つの計測パラメータの1つは、前記ターゲットの位置を検出する位置検出装置の光路に沿った方向における前記ターゲットの位置を含む、
ことを特徴とする項目2に記載の計測方法。
(項目6)
前記決定工程では、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについての前記敏感度分布と、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて与えられた重み関数とに基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする項目2乃至5のいずれか1項に記載の計測方法。
(項目7)
前記予備計測工程は、計測値を得るための中間情報を計測対象から検出する検出工程と、前記中間情報に基づいて計測値を算出する算出工程と、を含み、
前記処理工程は、
前記中間情報に基づいて、前記予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値を推定する推定工程と、
前記予備計測工程で得られた計測値、および、前記推定工程で推定された計測値に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて前記敏感度分布を得る算出工程と、を含む、
ことを特徴とする項目1乃至6のいずれか1項に記載の計測方法。
(項目8)
前記検出工程では、前記計測対象の画像を前記中間情報として検出し、
前記推定工程は、前記中間情報としての複数の画像から合成画像を生成し、前記合成画像に基づいて、前記予備計測を行った組合せとは異なる組合せにおいて得られる計測値を推定する、
ことを特徴とする項目7に記載の計測方法。
(項目9)
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において所定の敏感度よりも鈍感であることを示すように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする項目1乃至8のいずれか1項に記載の計測方法。
(項目10)
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において、所定の敏感度よりも小さいように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする項目1乃至9のいずれか1項に記載の計測方法。
(項目11)
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において最小となるように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする項目1乃至9のいずれか1項に記載の計測方法。
(項目12)
前記予備計測工程および前記本計測工程では、ターゲットの信号強度情報または波形評価値情報を計測する、
ことを特徴とする項目1に記載の計測方法。
(項目13)
前記決定工程では、複数の前記ターゲットのそれぞれの敏感度分布に基づいて、前記敏感度分布の平均値とばらつきの少なくとも一つを算出して、前記敏感度分布の平均値とばらつきの少なくとも一つにおける敏感度に基づいて、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする項目2又は12に記載の計測方法。
(項目14)
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において所定の敏感度よりも敏感であることを示すように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする項目1に記載の計測方法。
(項目15)
前記決定工程では、前記敏感度分布における敏感度が、前記採用すべきパラメータ値において、所定の敏感度よりも大きいように、前記採用すべきパラメータ値を決定する、
ことを特徴とする項目1に記載の計測方法。(項目17)
項目1乃至16のいずれか1項に記載の計測方法に従って基板のマークの位置を計測し、前記マークの位置に基づいて前記基板にパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記基板を処理することによって物品を得る工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
(項目18)
計測部および制御部を備える計測装置であって、
前記制御部は、互いに異なる少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれのパラメータ値の組合せを異ならせながら複数回にわたって予備計測を行うように前記計測部を制御し、前記予備計測によって得られた計測値に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、パラメータ値の変化に対する計測値の変化を示す敏感度の分布である敏感度分布を得て、前記敏感度分布に基づいて、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて、採用すべきパラメータ値を決定する決定し、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて決定された前記パラメータ値に従って本計測を行うように前記計測部を制御する、
ことを特徴とする計測装置。
(項目19)
計測対象を照明する光の波長を変更する波長可変部を更に備え、
前記制御部は、前記少なくとも2つの計測パラメータのそれぞれについて決定された前記パラメータ値に基づいて前記波長可変部を制御する、
ことを特徴とする項目18に記載の計測装置。
(項目20)
前記波長可変部は、所定方向に沿って透過波長が変化する波長可変素子と、前記波長可変素子を駆動する駆動機構と、を含む、
ことを特徴とする項目19に記載の計測装置。
(項目21)
前記波長可変部は、計測対象を照明する光の中心波長および波長幅を変更可能であり、
前記少なくとも2つの計測パラメータは、前記中心波長および前記波長幅を含む、
ことを特徴とする項目20に記載の計測装置。
(項目22)
前記計測部は、ターゲットの位置情報を計測する、
ことを特徴とする項目18乃至21のいずれか1項に記載の計測装置。
(項目23)
リソグラフィ装置であって、
基板に設けられたマークの位置を計測するように構成された項目18乃至22のいずれか1項に記載の計測装置と、
前記計測装置を使って計測された前記マークの位置に基づいて前記基板を位置決めする位置決め機構と、を備え、
前記基板のパターンを転写するように構成されたことを特徴とするリソグラフィ装置。
(項目24)
項目23に記載のリソグラフィ装置を使って基板にパターンを転写する工程と、
前記パターンが転写された前記基板を処理することによって物品を得る工程と、
を含むことを特徴とする物品製造方法。
【0113】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0114】
40:波長可変部、50:計測部、100:計測装置、1100:制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14