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特開2023-184427エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物層を含む積層体およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184427
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物層を含む積層体およびその用途
(51)【国際特許分類】
   B32B 25/08 20060101AFI20231221BHJP
   B32B 1/08 20060101ALI20231221BHJP
   F16L 11/06 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B32B25/08
B32B1/08 B
F16L11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023046035
(22)【出願日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】P 2022098407
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
(72)【発明者】
【氏名】大久保 太一
(72)【発明者】
【氏名】駒澤 梢
(72)【発明者】
【氏名】神谷 幸紀
【テーマコード(参考)】
3H111
4F100
【Fターム(参考)】
3H111AA02
3H111BA15
3H111CB03
3H111DA26
3H111DB08
3H111DB11
3H111DB23
4F100AA17A
4F100AA17H
4F100AK17B
4F100AK75A
4F100AK75J
4F100AL01A
4F100AL05A
4F100AN02A
4F100AN02J
4F100BA02
4F100BA03
4F100CA032
4F100CA23A
4F100CA23H
4F100DA02
4F100DA11
4F100EC032
4F100GB51
4F100JD01
4F100JL11
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物層からなる更なる接着性に優れる積層体を得ることにある。
【解決手段】本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A):100質量部に対して、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7塩、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5塩、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、および1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(C)を1.0~6.0質量部、酸化マグネシウムを3~20質量部、酸化カルシウムを0.1~50質量部含むことを特徴とするエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層と、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とを含む積層体に係る。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A):100質量部に対して、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7塩、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5塩、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、および1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(C)を1.0~6.0質量部、酸化マグネシウムを3~20質量部、酸化カルシウムを0.1~50質量部、含むことを特徴とするエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層と、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とを含む積層体。
【請求項2】
上記化合物(C)が1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7塩及び/又は1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5塩であり、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A):100質量部に対して、1.5~6.0質量部含み、さらにジアルキルカルバミン酸金属塩を0.1~10質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
ジアルキルカルバミン酸金属塩が、ジメチルジチオカルバメートの銅塩またはジブチルジチオカルバメートの亜鉛塩である請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物が、さらに、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A):100質量部に対して、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルから選ばれた鉱物油系軟化剤(B)を1~200質量部、及び塩基性シリカを1~100質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物が、さらに、エチレン系重合体(D)を5~50質量部含むことを特徴とする請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
溶融成形可能なフッ素樹脂が、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン系共重合体、及び、テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン/フッ化ビニリデン共重合体からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載の積層体。
【請求項7】
溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層の両側にエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層が積層されてなる請求項1に記載の積層体。
【請求項8】
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層の両側に溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層が積層されている請求項1に記載の積層体。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の積層体を加硫処理して得られ両層が加硫接着されていることを特徴とする積層体。
【請求項10】
請求項1~8のいずれかに記載の積層体を含む燃料配管チューブ又はホース。
【請求項11】
請求項1~8のいずれかに記載の積層体を含む製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物層を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車、産業機械、建設機械、モーターバイク、農業機械等にはエンジンを冷却するためのラジエーターホース、ラジエーターオーバーフロー用ドレインホース、室内暖房用ヒーターホース、エアコンドレインホース、ワイパー送水ホース、ルーフドレインホース、プロラクトホース等の各種ホースが装着されている。これらのホースは耐オゾン性、耐候性、耐熱性の良いエチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)が使用されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、エチレン・α-オレフィン-非共役ジエン共重合体をゴム成分とする加硫ゴムであって、その30%圧縮時の体積電気抵抗率が105 Ω・cm以上である加硫ゴムを最外層に用いたラジエーターホースが提案されている。
【0004】
一方、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体などのオレフィン系重合体はガソリン等の揮発性物質に対する耐透過性が劣ることから、例えば、TPO(熱可塑性オレフィン)などの熱可塑性エラストマー層とフッ素系樹脂層とを積層することが提案されている(特許文献2)。
【0005】
さらに、特許文献3には、ゴム層とフッ素系樹脂層との接着性を改良する為に、未加硫ゴムに1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7塩、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5塩、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、及び、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(a2)等をより好ましい量として2.0質量部以下の量を配合することが提案されている。そして、特許文献3の実施例には、未加硫ゴムとしてNBRが使用され、化合物(a2)の混合物を最大で3.1質量部、DBUギ酸塩を最大で2.0質量部配合した例が記載されている。
【0006】
特許文献3には、未加硫ゴムの例として、エチレン・プロピレン・ターモノマー共重合体ゴム(エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体)も使用し得ると記載されているが、実施例に記載されているNBRに替えてエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を用いた場合の実施例の記載はない。
特許文献4には、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物層からなる接着性に優れる積層体が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平9-25374号公報
【特許文献2】特開2000-329266号公報
【特許文献3】特許第5482790号公報
【特許文献4】国際公開2020/090981号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献4に記載された積層体は、接着性に優れているが、用途によっては、更なる接着性の改良が望まれている。
そこで、本発明者等は、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物層からなる更なる接着性に優れる積層体を得ることを目的として、種々検討した。
【課題を解決するための手段】
【0009】
その結果、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体に、特定のジアザビシクロウンデセン系化合物、酸化カルシウム等を配合することにより、溶融成形可能なフッ素樹脂との接着性が改良されることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明は、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A):100質量部に対して、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7塩、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5塩、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、および1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5からなる群より選択される少なくとも1種の化合物(C)を1.0~6.0質量部、酸化マグネシウムを3~20質量部、酸化カルシウムを0.1~50質量部含むことを特徴とするエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層と、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とを含む積層体に係る。
【発明の効果】
【0011】
本発明の積層体は、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層間の接着強度に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
本発明の積層体は、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層間の接着強度に優れる。
【0013】
本発明の積層体は、また、溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層を含むので、耐ガソリン等の燃料の耐透過性に優れる。
本発明の積層体は、また、エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層を含むので、耐オゾン性、耐候性、耐熱性に優れる。
【0014】
《エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)》
本発明の積層体の一層を構成するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物(以下、「共重合体組成物」と略称する場合がある。)を含む層を構成するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)〔以下、「共重合体(A)」と略称する場合がある。〕はエチレンと、炭素数3~20のα-オレフィンと、非共役ポリエンとをランダム共重合して得られるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体である。
【0015】
上記α-オレフィンは通常、炭素数3~20のα-オレフィンであり、中でもプロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン等の炭素数3~10のα-オレフィンが好ましく、特にプロピレン、1-ブテンが好ましく用いられる。
【0016】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)の具体例としては、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体、エチレン・1-ブテン・非共役ポリエン共重合体が好ましく用いられる。
【0017】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、エチレンとα-オレフィンとのモル比(エチレン/α-オレフィン)が通常、40/60~90/10、好ましくは50/50~80/20、特に好ましくは55/45~70/30の範囲にあるものが望ましい。
【0018】
前記非共役ポリエンとしては、環状または鎖状の非共役ポリエンが用いられる。環状非共役ポリエンとしては、たとえば5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、5-ビニル-2-ノルボルネン、ノルボルナジエン、メチルテトラヒドロインデンなどがあげられる。また鎖状の非共役ポリエンとしては、たとえば1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエンなどがあげられる。これらの非共役ポリエンは、単独または2種以上混合して用いられ、その共重合量は、ヨウ素価表示で1~40、好ましくは2~35、より好ましくは3~30であることが望ましい。
【0019】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、少なくとも1種以上のバイオマス由来モノマー(エチレン、α-オレフィン、非共役ポリエン)に由来する構成単位を含んでいてもよい。
【0020】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、通常、135℃デカヒドロナフタレン中で測定した極限粘度〔η〕が0.8~4dl/g、好ましくは1~3.5dl/g、より好ましくは1.1~3dl/gの範囲にある。
【0021】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、不飽和カルボン酸またはその誘導体、例えば酸無水物などがグラフト共重合した変性物であってもよい。
【0022】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)としては、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体が最も好ましい。
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は1種単独で使用することもできるし、2種以上を組み合せて使用することもできる。上記のような特性を有するエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)は、「ポリマー製造プロセス((株)工業調査会発行、P.309~330)」などに記載されているような公知の方法により調製することができる。
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、密度が900kg/m3未満である。
【0023】
《化合物(C)》
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に含まれる成分の一つである化合物(C)は、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7塩(DBU塩)、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5塩(DBN塩)、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7(DBU)、及び、1,5-ジアザビシクロ(4.3.0)-ノネン-5(DBN)から選択される少なくとも1種の化合物である。
【0024】
DBU塩およびDBN塩としては、DBU又はDBNの炭酸塩、長鎖脂肪族カルボン酸塩、芳香族カルボン酸塩、オルトフタル酸塩、p-トルエンスルホン酸塩、フェノール塩、フェノール樹脂塩、ナフトエ酸塩、オクチル酸塩、オレイン酸塩、ギ酸塩、フェノールノボラック樹脂塩などがあげられ、1,8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)-7-ウンデセニウムクロライド(DBU-B)、ナフトエ酸塩、オルトフタル酸塩、フェノール塩、及び、ギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
【0025】
より具体的には、化合物(C)は、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7、1,8-ベンジル-1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)-7-ウンデセニウムクロライド、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7のナフトエ酸塩、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7のフェノール塩、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7のオルトフタル酸塩、及び、1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7のギ酸塩からなる群より選択される少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
これらの中でも、特に1,8-ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン-7のギ酸塩が好ましい。
【0026】
《酸化マグネシウム》
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に含まれる成分の一つである酸化マグネシウムは、一般に加硫助剤として使用されているマグネシウムの酸化物である。
【0027】
《酸化カルシウム》
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に含まれる成分の一つである酸化カルシウム(CaO)は、慣用名として、生石灰(せいせっかい)とも呼ばれるカルシウムの酸化物であり、白色の固体または粉末である。
【0028】
《エチレン系重合体(D)》
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に含まれる成分の一つであるエチレン系重合体(D)は、エチレンの単独重合体、およびエチレンとα-オレフィンとの共重合体であり、一般に高圧法低密度ポリエチレン(HP-LDPE)、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、超高分子量ポリエチレンと呼称されているエチレンを主体とする重合体である。 本発明に係るエチレン系重合体(D)は、共重合体である場合は、ランダム共重合体であってもブロック共重合体であってもよい。
【0029】
エチレンと共重合されるα-オレフィンは、好ましくは炭素数3~20のα-オレフィンであり、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチル-1-デセン、11-メチル-1-ドデセンおよび12-エチル-1-テトラデセンなどが挙げられる。これらα-オレフィンは、単独で、または2種以上組み合わせて用いられる。
【0030】
本発明に係るエチレン系重合体(D)は、単一の重合体であっても二種以上のエチレン系重合体の組成物(混合物)であってもよい。
本発明に係わるエチレン系重合体(D)は、通常、JIS K 7210に準拠して、測定温度190℃、荷重2.16kgで測定したメルトフローレート(MFR)が0.1~20g/10分の範囲にある。
本発明に係わるエチレン系重合体(D)は、密度が900kg/m3以上である。
【0031】
《金属塩》
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に配合される金属塩は、ジアルキルカルバミン酸金属塩であることが好ましく、特にジメチルジチオカルバメートの銅塩またはジブチルジチオカルバメートの亜鉛塩であることが好ましい。上記金属塩は、ジメチルジチオカルバメートの銅塩であることがより好ましい。
【0032】
《鉱物油系軟化剤(B)》
軟化剤としては、例えばプロセスオイル、潤滑油、パラフィン、流動パラフィン、石油アスファルト、ワセリンなどの石油系物質、コールタール、コールタールピッチなどのコールタール類、ヒマシ油、アマニ油、ナタネ油、ヤシ油などの脂肪油、トール油、サブ、密ロウ、カルナウバロウ、ラノリンなどのロウ類、リシノール類、パルミチン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウムなどの脂肪酸またはその金属塩、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、クマロンインデン樹脂などの合成高分子物質、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペートなどのエステル系可塑剤、その他マイクロクリスタンワックス、サブ(ファクチス)などを挙げることができる。
【0033】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に配合される鉱物油系軟化剤は、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル及び芳香族系プロセスオイルから選ばれる鉱物油系軟化剤である。
【0034】
パラフィン系プロセスオイルとしては、ダイアナプロセスオイルPW-32,PW-90,PW-150,PW-380,PS-32,PS-90,PS-430,PX-32,PX-90(以上、出光興産株式会社製商品名)、スタノール40,43N,52,69,149,LP40,LP69,フレクソン845(以上、エッソ石油株式会社製商品名)、シンタックPA-95,PA-100,PA-140(以上、神戸油化学工業株式会社製商品名)、コスモプロセス10,40,40C(以上、コスモ石油株式会社製商品名)、ルブフレックス26,100,400(以上、シェルジャパン株式会社製商品名)、共石プロセスP-200,P-300,P-500(以上、日鉱共石株式会社製商品名)、サンパー(Sunper)110,115,120,130,150,180,2100,2210,2280(以上、日本サンオイル株式会社製商品名)、フッコールP-200,P-400,P-500(以上、富士興産株式会社製商品名)、三菱10,三菱12(以上、三菱製油株式会社製商品名)などが挙げられる。
【0035】
ナフテン系プロセスオイルとしては、ダイアナプロセスオイルNS-24,NS-100,NM-26,NM-68,NM-150,NM-280,NP-24,NU-80,NF-90(以上、出光興産株式会社製商品名) 、エッソプロセスオイル725,765(以上、エッソ石油株式会社製商品名)、シンタックN-40,N-60,N-70,N-75,N-85(以上、神戸油化学工業株式会社製商品名)、シェルフレックス371JY,371N,451,N-40,22,22R,32R,100R,100S,100SA,220RS,220S,260,320R,680(以上、シェルジャパン株式会社製商品名)、共石プロセスR-50,R-200,R-1000(日鉱共石株式会社製商品名)、サンセン(Sunthene)310,380,410,415,420,430,450,480,3215,4130,4240,CiroLightR.P.O.(以上、日本サンオイル株式会社製商品名)、コウモレックス2号、コウモレックスF22(日本石油株式会社製商品名)、フッコール1150N,1400N(以上、富士興産株式会社製商品名)、三菱20(三菱石油株式会社製商品名)、ナプレックス32,38(以上、モービル石油株式会社製商品名)、ペトレックスPN-3(山文油化株式会社製商品名)等が挙げられる。
【0036】
芳香族系プロセスオイルとしては、ダイアナプロセスオイルAC-12,AC-460,AE-24,AE-50,AE-200,AH-16,AH-58(以上、出光興産株式会社製商品名)、エッソプロセスオイル110,120(以上、エッソ石油株式会社製商品名)、シンタックHA-10,HA-15,HA-30,HA-35(以上、神戸油化学工業株式会社製商品名)、コスモプロセス40A(コスモ石油株式会社製商品名)、デュートレックス729UK,739(以上、シェルジャパン株式会社製商品名)、共石プロセスX100-A,X100(以上、日鉱共石株式会社製商品名)、JSOAroma790(日本サン石油株式会社製商品名)、コウモレックス300,700(以上、日本石油株式会社製商品名)、アロマックス#1,#3,#5(以上、富士興産株式会社製商品名)、ヘビープロセス油 三菱34,三菱38,三菱44(以上、三菱石油株式会社製商品名)、モービルゾールK,22,30,130(以上、モービル石油株式会社製商品名)、ペトレックスLPO-R,LPO-V,PF-1,PF-2(以上、山文油化株式会社製商品名)等が挙げられる。
これらの中でもナフテン系プロセスオイルまたは芳香族系プロセスオイルが好ましい。
【0037】
《塩基性シリカ》
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に配合される塩基性シリカは、pHが8~14の範囲にあるシリカであることが好ましい。
【0038】
<エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物>
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、当該共重合体(A)100質量部に対して、上記化合物(C)を1.0~6.0質量部、好ましくは1.2~6.0質量部、さらに好ましくは1.5~6.0質量部、上記酸化マグネシウムを3~20質量部、好ましくは5~20質量部、さらに好ましくは7~15質量部、上記酸化カルシウムを0.1~50質量部、好ましくは0.3~25質量部、さらに好ましくは0.5~15質量部の範囲で含む組成物である。
【0039】
化合物(C)、酸化マグネシウム、酸化カルシウムを上記範囲の量で含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、溶融成形可能なフッ素樹脂との接着強度がより優れる。
【0040】
さらに、上記エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物に、エチレン系重合体(D)を5~50質量部、好ましくは10~30質量部、さらに好ましくは15~25質量部の範囲で含む組成物の加硫物は、溶融成形可能なフッ素樹脂との接着強度を低下させることなく、機械的強度が良好である。
【0041】
本発明に係わるエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、上記化合物(C)、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、および、エチレン系重合体(D)に加え、上記ジアルキルカルバミン酸金属塩を好ましくは0.1~10質量部、さらに好ましくは0.2~5質量部、上記鉱物油系軟化剤(B)を好ましくは1~200質量部、より好ましくは5~150質量部、さらに好ましくは10~100質量部、最も好ましくは15~50質量部、上記塩基性シリカを好ましくは1~100質量部、より好ましくは5~70質量部、さらに好ましくは10~60質量部含む。
【0042】
鉱物油系軟化剤(B)を含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、燃料バリア性重合体層との接着強度に優れる。
さらに、ジアルキルカルバミン酸金属塩、鉱物油系軟化剤(B)及び塩基性シリカを含むエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物は、溶融成形可能なフッ素樹脂との接着強度がさらに改良される。
【0043】
本発明に係わる共重合体組成物には、上記成分に加え、所望の目的に応じて他の成分を本発明の効果を損なわない範囲で配合することができる。他の成分としては、例えば、フィラー、架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤、加硫助剤、老化防止剤、加工助剤、活性剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、着色剤、滑剤、増粘剤、発泡剤および発泡助剤から選ばれる少なくとも1種を含有してもよい。また、それぞれの添加剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
〈フィラー〉
本発明に係わる共重合体組成物を構成するフィラーは、ゴム組成物に配合される公知のゴム補強剤であり、通常、カーボンブラック、無機補強剤と呼称されている無機物である。
【0045】
本発明に係わるフィラーとしては、具体的には、旭#55G、旭#60G(以上、旭カーボン(株)製)、シースト(SRF、GPF、FEF、MAF、HAF、ISAF、SAF、FT、MT等)(東海カーボン(株)製)のカーボンブラック、これらカーボンブラックをシランカップリング剤等で表面処理したのもの、および活性化炭酸カルシウム、微粉タルク、微粉ケイ酸、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が挙げられる。
【0046】
〈架橋剤、架橋助剤、加硫促進剤および加硫助剤〉
架橋剤としては、有機過酸化物、フェノール樹脂、硫黄系化合物、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等の、ゴムを架橋する際に一般に使用される架橋剤が挙げられる。これらのうちでは、有機過酸化物、硫黄系化合物(以下「加硫剤」ともいう)が好適である。
【0047】
有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド(DCP)、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、ert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシドが挙げられる。
【0048】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合、共重合体組成物中のその配合量は、共重合体(A)100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部である、さらに好ましくは0.5~10質量部である。有機過酸化物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体表面へのブルームなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示すので好適である。
【0049】
架橋剤として、有機過酸化物を用いる場合、架橋助剤を併用することが好ましい。架橋助剤としては、例えば、イオウ;p-キノンジオキシム等のキノンジオキシム系架橋助剤;エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート等のアクリル系架橋助剤;ジアリルフタレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル系架橋助剤;マレイミド系架橋助剤;ジビニルベンゼン;亜鉛華(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種(JIS規格(K-1410))、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華〔例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛〕等の金属酸化物が挙げられる。
【0050】
架橋助剤を用いる場合、共重合体組成物中の架橋助剤の配合量は、有機過酸化物1モルに対して、通常0.5~10モル、好ましくは0.5~7モル、より好ましくは1~6モルである。
【0051】
硫黄系化合物(加硫剤)としては、例えば、硫黄、塩化硫黄、二塩化硫黄、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレンが挙げられる。
【0052】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、共重合体組成物中のその配合量は、共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部、さらに好ましくは0.7~5.0質量部である。硫黄系化合物の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームがなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。
【0053】
架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫促進剤を併用することが好ましい。
加硫促進剤としては、例えば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、サンセラーM(商品名;三新化学工業社製))、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、ノクセラーMDB-P(商品名;大内新興化学工業社製))、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾールおよびジベンゾチアジルジスルフィド(例えば、サンセラーDM(商品名;三新化学工業社製))などのチアゾール系加硫促進剤;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジンおよびジオルソトリルグアニジンなどのグアニジン系加硫促進剤;アセトアルデヒド・アニリン縮合物およびブチルアルデヒド・アニリン縮合物などのアルデヒドアミン系加硫促進剤;2-メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系加硫促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド(例えば、サンセラーTS(商品名;三新化学工業社製))、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTT(商品名;三新化学工業社製))、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTET(商品名;三新化学工業社製))、テトラブチルチウラムジスルフィド(例えば、サンセラーTBT(商品名;三新化学工業社製))およびジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(例えば、サンセラーTRA(商品名;三新化学工業社製))などのチウラム系加硫促進剤;およびジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系加硫促進剤;エチレンチオ尿素(例えば、サンセラーBUR(商品名;三新化学工業社製)、サンセラー22-C(商品名;三新化学工業社製))、N,N'-ジエチルチオ尿素およびN,N'-ジブチルチオ尿素などのチオウレア系加硫促進剤;ジブチルキサトゲン酸亜鉛などのザンテート系加硫促進剤が挙げられる。
【0054】
加硫促進剤を用いる場合、共重合体組成物中のこれらの加硫促進剤の配合量は、共重合体(A)100質量部に対して、一般に0.1~20質量部、好ましくは0.2~15質量部、さらに好ましくは0.5~10質量部である。加硫促進剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面へのブルームなく、共重合体組成物が優れた架橋特性を示す。架橋剤として硫黄系化合物を用いる場合、加硫助剤を併用することができる。
【0055】
加硫助剤としては、例えば、亜鉛華(例えば、ZnO#1・酸化亜鉛2種、ハクスイテック(株)製)、酸化マグネシウム、活性亜鉛華〔例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業(株)製)などの酸化亜鉛〕等の金属酸化物が挙げられる。
加硫助剤を用いる場合、共重合体組成物中の加硫助剤の配合量は、共重合体(A)100質量部に対して、通常1~20質量部である。
【0056】
〈老化防止剤(安定剤)〉
本発明に係わる共重合体組成物に、老化防止剤(安定剤)を配合することにより、これから形成されるシールパッキンの寿命を長くすることができる。このような老化防止剤として、従来公知の老化防止剤、例えば、アミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤などがある。
【0057】
老化防止剤としては、例えば、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p―フェニレンジアミン等の芳香族第2アミン系老化防止剤;ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス[メチレン(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ)ヒドロシンナメート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等がある。
【0058】
共重合体組成物が老化防止剤を含有する場合には、老化防止剤の配合量は、共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部である。老化防止剤の配合量が上記範囲内であると、得られる成形体の表面のブルームがなく、さらに加硫阻害の発生を抑制することができる。
【0059】
〈加工助剤〉
加工助剤としては、一般に加工助剤としてゴムに配合されるものを広く使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸亜鉛またはエステル類等が挙げられる。これらのうち、ステアリン酸が好ましい。
【0060】
共重合体組成物が加工助剤を含有する場合は、共重合体(A)100質量部に対して、通常1~3質量部の量で適宜配合することができる。加工助剤の配合量が前記範囲内であると、混練加工性、押出加工性、射出成形性等の加工性に優れるので好適である。
前記加工助剤は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0061】
〈活性剤〉
活性剤としては、例えば、ジ-n-ブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、モノエラノールアミン等のアミン類;ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、レシチン、トリアリルートメリレート、脂肪族カルボン酸または芳香族カルボン酸の亜鉛化合物等の活性剤;過酸化亜鉛調整物;クタデシルトリメチルアンモニウムブロミド、合成ハイドロタルサイト、特殊四級アンモニウム化合物が挙げられる。
【0062】
共重合体組成物が活性剤を含有する場合には、活性剤の配合量は、共重合体(A)100質量部に対して、通常は0.2~10質量部、好ましくは0.3~5質量部である。
【0063】
本発明に係わる共重合体組成物の製造方法としては、たとえばバンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー(密閉式混合機)類により、共重合体(A)、化合物(C)、酸化マグネシウム、更にはジアルキルカルバミン酸金属塩、鉱物油系軟化剤(B)、塩基性シリカに加え、必要に応じて、フィラー、加工助剤、架橋助剤などを、80~170℃の温度で2~20分間混練する。次いで、得られたブレンド物に、架橋剤、軟化剤、架橋助剤加硫促進剤等の添加剤をオープンロールのようなロール類、あるいはニーダーを使用して、必要に応じて加硫促進剤、架橋助剤を追加混合し、ロール温度40~80℃で5~30分間混練した後、分出しすることにより調製することができる。
また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、共重合体ゴム(A)などとともにジクミルペルオキシドを同時に混練してもよい。
【0064】
《溶融成形可能なフッ素樹脂》
「溶融成形可能」であるとは、溶融流動性を示すことを意味する。
「溶融流動性を示す」とは、荷重5kgの条件下、樹脂の融点以上の温度において、MFR(Melt Flow Rate)が0.1~1,000g/10分の範囲内にある温度が存在することを意味する。
「融点」とは、示差走査熱量測定(DSC)法で測定した融解ピークの極大値に対応する温度を意味する。
【0065】
本発明の積層体の一層を形成する溶融成形可能なフッ素樹脂(以下、「フッ素樹脂」と呼称する場合がある。)を含む層を構成する溶融成形可能なフッ素樹脂は種々公知の溶融成形可能なフッ素樹脂、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を有する共重合体(CTFE共重合体)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、クロロトリフルオロエチレン・エチレン共重合体(ECTFE)、ポリビニリデンフルオライド(PVDF)、およびポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体等が挙げられる。
【0066】
これら溶融成形可能なフッ素樹脂の中でも、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を有する共重合体(CTFE共重合体)、テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体(THV)、テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体が好ましく、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を有する共重合体(CTFE共重合体)およびテトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体(THV)がより好ましく、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を有する共重合体(CTFE共重合体)が最も好ましい。
【0067】
上記PCTFEは、クロロトリフルオロエチレンの単独重合体である。
CTFE共重合体としては、CTFEに由来する共重合単位(CTFE単位)と、テトラフルオロエチレン(TFE単位)、へキサフルオロプロピレン(HFP単位)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE単位)、フッ化ビニリデン(VdF単位)、フッ化ビニル、へキサフルオロイソブテン、式:CH2=CX1(CF2)nX2(式中、X1はHまたはF、X2はH、FまたはCl、nは1~10の整数である)で示される単量体、エチレン、プロピレン、1-ブテン、2-ブテン、塩化ビニル、及び、塩化ビニリデンからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する共重合単位と、を含むことが好ましい。
【0068】
CTFE共重合体としては、CTFE単位と、TFE、HFP及びPAVEからなる群より選択される少なくとも1種の単量体に由来する共重合単位と、を含むことがより好ましく、実質的にこれらの共重合単位のみからなることが更に好ましい。また、燃料低透過の観点から、エチレン、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル等のCH結合を有するモノマーを含まないことが好ましい。パーハロポリマーはゴムとの接着が通常困難であるが、本発明の構成によれば、フッ素樹脂がパーハロポリマーであっても、フッ素樹脂を含む層とエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体組成物を含む層との層間の接着は強固である。
【0069】
CTFE共重合体は、全単量体単位の10~90モル%のCTFE単位を有することが好ましい。
CTFE共重合体としては、CTFE単位、TFE単位およびこれらと共重合可能な単量体(α)に由来する単量体(α)単位を含むものが特に好ましい。
【0070】
前記「CTFE単位」および「TFE単位」は、CTFE共重合体の分子構造上、それぞれ、CTFEに由来する部分(-CFCl-CF2-)、TFEに由来する部分(-CF2-CF2-)であり、前記「単量体(α)単位」は、同様に、CTFE系共重合体の分子構造上、単量体(α)が付加してなる部分である。
【0071】
前記単量体(α)としては、CTFEおよびTFEと共重合可能な単量体であれば特に限定されず、エチレン(Et)、ビニリデンフルオライド(VdF)、CF2=CF-ORf1(式中、Rf1は、炭素数1~8のパーフルオロアルキル基)で表されるパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、CX34=CX5(CF2)nX6(式中、X3、X4およびX5は同一もしくは異なって、水素原子またはフッ素原子;X6は、水素原子、フッ素原子または塩素原子;nは、1~10の整数)で表されるビニル単量体、CF2=CF-OCH2-Rf2(式中、Rf2は、炭素数1~5のパーフルオロアルキル基)で表されるアルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体などがあげられ、なかでも、PAVE、上記ビニル単量体、及び、アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、PAVE及びHFPからなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましい。
【0072】
前記アルキルパーフルオロビニルエーテル誘導体としては、Rf2が炭素数1~3のパーフルオロアルキル基であるものが好ましく、CF2=CF-OCH2-CF2CF3がより好ましい。
【0073】
CTFE共重合体における、CTFE単位とTFE単位との比率は、CTFE単位が15~90モル%に対し、TFE単位が85~10モル%であり、より好ましくは、CTFE単位が20~90モル%であり、TFE単位が80~10モル%である。また、CTFE単位15~25モル%と、TFE単位85~75モル%とから構成されるものがより好ましい。
【0074】
CTFE共重合体は、CTFE単位とTFE単位との合計が90~99.9モル%であり、単量体(α)単位が0.1~10モル%であるものが好ましい。単量体(α)単位が0.1モル%未満であると、成形性、耐環境応力割れ性および耐燃料クラック性に劣りやすく、10モル%を超えると、燃料低透過性、耐熱性、機械特性に劣る傾向にある。
【0075】
本発明に係わるフッ素樹脂は、PCTFE又はCTFE-TFE-PAVE共重合体であることが好ましく、CTFE-TFE-PAVE共重合体であることが最も好ましい。
上記CTFE-TFE-PAVE共重合体とは、実質的にCTFE、TFE及びPAVEのみからなる共重合体である。PCTFE及びCTFE-TFE-PAVE共重合体は、主鎖を構成する炭素原子に直接結合した水素原子が存在せず、脱フッ化水素化反応が進行しない。
【0076】
前記PAVEとしては、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)(PEVE)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)(PPVE)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)などがあげられ、なかでもPMVE、PEVE及びPPVEからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0077】
PAVE単位は、全単量体単位の0.5モル%以上であることが好ましく、5モル%以下であることが好ましい。
CTFE単位などの構成単位は、19F-NMR分析を行うことにより得られる値である。
【0078】
テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体(THV)としては、VdF含有率が少ないと燃料低透過性が優れることから、TFE、HFP及びVdFの共重合割合(モル%比)が、TFE/HFP/VdF=50~95/0.1~10/0.1~40であることが好ましく、TFE/HFP/VdF=70~90/0.1~10/0.1~25であることがより好ましい。また、TFE/HFP/VdF共重合体はその他のモノマーを0~20モル%含んでいてもよい。他のモノマーとしては、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、クロロトリフルオロエチレン、2-クロロペンタフルオロプロペン、過フッ素化されたビニルエーテル(例えばCF3OCF2CF2CF2OCF=CF2などのペルフルオロアルコキシビニルエーテル)などのフッ素含有モノマー、ペルフルオロアルキルビニルエーテル、ペルフルオロ-1,3、-ブタジエン、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブテン、フッ化ビニル、エチレン、プロピレン、および、アルキルビニルエーテルからなる群より選択される少なくとも一種のモノマー等が挙げられ、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)であることが好ましい。テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン・ビニリデンフロライド共重合体の融点としては、燃料低透過性が優れることから、110℃~300℃であることが好ましく、160℃~300℃であることがより好ましく、200℃~280℃であることがさらに好ましい。
【0079】
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)としては、TFE単位とエチレン単位とのモル比(TFE単位/エチレン単位)が、20/80以上90/10以下である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は40/60以上70/30以下であり、さらに好ましいモル比は53/47以上66/44以下である。上記ETFEは、TFE、エチレン、並びにTFEおよびエチレンと共重合可能な単量体からなる共重合体であってもよい。エチレン及びTFEと共重合可能な単量体としては、例えば、下記式(1):
CH2=CX1Rf1 (1)
で表される単量体、
下記式(2):
CF2=CFRf1 (2)
で表される単量体、
下記式(3):
CF2=CFORf1 (3)
で表される単量体、及び、
下記式(4):
CH2=C(Rf12 (4)
で表される単量体からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素ビニルモノマー(d)が好ましい。式(1)~(4)中、X1は水素原子又はフッ素原子、Rf1はエーテル結合性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基を表す。Rf1としては炭素数1~8のエーテル結合性酸素原子を含んでいてもよいフルオロアルキル基であることが好ましい。Rf1としては、炭素数1~6のフルオロアルキル基であることが更に好ましく、炭素数1~4のフルオロアルキル基が特に好ましい。
【0080】
上記式(1)~(4)で示される含フッ素ビニルモノマー(d)の具体例としては、1,1-ジヒドロパーフルオロプロペン-1、1,1-ジヒドロパーフルオロブテン-1、パーフルオロ(1,1,5-トリヒドロ-1-ペンテン)、1,1,7-トリヒドロパーフルオロへプテン-1、1,1,2-トリヒドロパーフルオロヘキセン-1、1,1,2-トリヒドロパーフルオロオクテン-1、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロペンチルビニルエーテル、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、ヘキサフルオロプロペン、パーフルオロブテン-1、3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロペン-1等を挙げることができる。
【0081】
上記エチレン及びTFEと共重合可能な単量体としては、中でも、下記式(5):
CH2=CF-(CF2)n-X2 (5)
(式中、X2はH又はFである。nは、1~10の整数である。)で表される含フッ素ビニルモノマー(e)が好ましい。上記nは、1~3の整数であることがより好ましい。上記エチレン及びTFEと共重合可能な単量体としては、パーフルオロ(1,1,5-トリヒドロ-1-ペンテン)、及び、1,1-ジヒドロパーフルオロプロペン-1からなる群より選択される少なくとも1種の含フッ素ビニルモノマーがより好ましい。
【0082】
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)としては、エチレン/TFE共重合体、及び、エチレン/TFE/含フッ素ビニルモノマー(d)共重合体からなる群より選択される少なくとも1種のポリマーが好ましい。
【0083】
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)としては、エチレン/テトラフルオロエチレン/(式(1)で表される含フッ素ビニルモノマー)共重合体であることが好ましく、エチレン/テトラフルオロエチレン/含フッ素ビニルモノマー(e)共重合体であることがより好ましい。なお、本明細書中で、エチレン/テトラフルオロエチレン/含フッ素ビニルモノマー(e)共重合体は、エチレンに由来する重合単位、TFEに由来する重合単位、及び含フッ素ビニルモノマー(e)に由来する重合単位からなる共重合体を意味する。
【0084】
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)において、エチレン及びTFEに由来する重合単位が全重合単位に対して合計で90~99.9モル%であることが好ましく、95~99.9モル%であることがより好ましく、96~99.8モル%であることが更に好ましい。
【0085】
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)において、上記エチレン及びTFEと共重合可能な単量体に由来する重合単位は、全重合単位に対して、0.1~10モル%が好ましく、0.1~5モル%がより好ましく、0.2~4モル%が特に好ましい。
【0086】
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)がエチレン及びTFEと共重合可能な単量体に由来する重合単位を有するものである場合、エチレン単位は、全重合単位に対して、30~39.9モル%であることが好ましい。
【0087】
テトラフルオロエチレン・エチレン共重合体(ETFE)は、ポリマーの主鎖末端および/または側鎖に、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヘテロ環基、およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を導入したものであってもよい。
【0088】
TFE単位とエチレン単位とのモル比(TFE単位/エチレン単位)が20~90/80~10である共重合体が好ましい。より好ましいモル比は37~85/63~15であり、更に好ましいモル比は38~80/62~20である。
【0089】
テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体としては、ビニリデンフルオライド単位を含み、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0~100モル%である。ビニリデンフルオライド単位は、上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0~70.0モル%であることが好ましい。
【0090】
テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体としては、更にテトラフルオロエチレン単位を含むことが好ましい。この場合、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0~70.0モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の30.0~85.0モル%であることが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の15.0~60.0モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の40.0~85.0モル%である。
【0091】
テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体としては、更にテトラフルオロエチレン単位、並びに、式(1)及び式(2)で表されるエチレン性不飽和モノマーからなる群より選択される少なくとも1種のエチレン性不飽和モノマー単位を含むことが好ましい。
【0092】
式(1): CX1112=CX13(CX1415)n1116
(式中、X11~X16は同一または異なってH、F又はClを表し、n11は0~8の整数を表す。但し、テトラフルオロエチレン及びビニリデンフルオライドを除く。)
式(2): CX2122=CX23-O(CX2425)n2126
(式中、X21~X26は同一または異なってH、F又はClを表し、n21は0~8の整数を表す。)
式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、CF2=CFCl、CF2=CFCF3、下記式(3):
CH2=CF-(CF2)n1116 (3)
(式中、X16及びn11は上記と同じ。)、及び、下記式(4):
CH2=CH-(CF2)n1116 (4)
(式中、X16及びn11は上記と同じ。)からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、CF2=CFCl、CH2=CFCF3、CH2=CH-C49、CH2=CH-C613、CH2=CF-C36H及びCF2=CFCF3からなる群より選択される少なくとも1種であることがより好ましく、CF2=CFCl、CH2=CH-C613、CH2=CF-C36H及びCH2=CFCF3から選択される少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0093】
式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体としては、CF2=CF-OCF3、CF2=CF-OCF2CF3及びCF2=CF-OCF2CF2CF3からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0094】
上記フッ素樹脂が更にテトラフルオロエチレン単位及び上記エチレン性不飽和モノマーを有する場合、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の10.0~49.9モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の50.0~85.0モル%であり、エチレン性不飽和モノマー単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の0.1~5.0モル%であることが好ましい。より好ましくは、ビニリデンフルオライド単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の25.0~49.9モル%であり、テトラフルオロエチレン単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の50.0~70.0モル%であり、エチレン性不飽和モノマー単位が上記フッ素樹脂を構成する全モノマー単位の0.1~5.0モル%である。
【0095】
テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体としては、は、55.0~90.0モル%のテトラフルオロエチレン、5.0~44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、0.1~10.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であることが好ましい。より好ましくは、55.0~85.0モル%のテトラフルオロエチレン、10.0~44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、0.1~5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体である。さらに好ましくは、55.0~85.0モル%のテトラフルオロエチレン、13.0~44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、0.1~2.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体である。
【0096】
フッ素樹脂の低透過性が特に優れることから、式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体がCH2=CH-C49、CH2=CH-C613及びCH2=CF-C36Hからなる群より選択される少なくとも1種の単量体であることが好ましい。より好ましくは、式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体がCH2=CH-C49、CH2=CH-C613及びCH2=CF-C36Hからなる群より選択される少なくとも1種の単量体であり、かつ、フッ素樹脂が、55.0~80.0モル%のテトラフルオロエチレン、19.5~44.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、0.1~0.6モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であることである。
【0097】
テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体としては、58.0~85.0モル%のテトラフルオロエチレン、10.0~41.9モル%のビニリデンフルオライド、及び、0.1~5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であってもよい。
【0098】
テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体としては、55.0~90.0モル%のテトラフルオロエチレン、9.2~44.2モル%のビニリデンフルオライド、及び、0.1~0.8モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であることも好ましい。より好ましくは、58.0~85.0モル%のテトラフルオロエチレン、14.5~41.5モル%のビニリデンフルオライド、及び、0.1~0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体である。
【0099】
テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体としては、55.0~90.0モル%のテトラフルオロエチレン、5.0~44.8モル%のビニリデンフルオライド、0.1~10.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、0.1~0.8モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であることも好ましい。より好ましくは、55.0~85.0モル%のテトラフルオロエチレン、9.5~44.8モル%のビニリデンフルオライド、0.1~5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、0.1~0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体である。さらに好ましくは55.0~80.0モル%のテトラフルオロエチレン、19.8~44.8モル%のビニリデンフルオライド、0.1~2.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、0.1~0.3モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体である。本発明のフッ素樹脂がこの組成を有する場合、低透過性に特に優れる。
【0100】
テトラフルオロエチレン・ビニリデンフルオライド共重合体としては、58.0~85.0モル%のテトラフルオロエチレン、9.5~39.8モル%のビニリデンフルオライド、0.1~5.0モル%の式(1)で表されるエチレン性不飽和単量体、及び、0.1~0.5モル%の式(2)で表されるエチレン性不飽和単量体、の共重合単位を含む共重合体であってもよい。
本発明に係わるフッ素樹脂は、ポリマーの主鎖末端および/または側鎖に、カルボニル基、ヒドロキシル基、ヘテロ環基、およびアミノ基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性官能基を導入したものであってもよい。
【0101】
本明細書において、「カルボニル基」は、炭素-酸素二重結合から構成される炭素2価の基であり、-C(=O)-で表されるものに代表される。前記カルボニル基を含む反応性官能基としては特に限定されず、たとえばカーボネート基、カルボン酸ハライド基(ハロゲノホルミル基)、ホルミル基、カルボキシル基、エステル結合(-C(=O)O-)、酸無水物結合(-C(=O)O-C(=O)-)、イソシアネート基、アミド基、イミド基(-C(=O)-NH-C(=O)-)、ウレタン結合(-NH-C(=O)O-)、カルバモイル基(NH2-C(=O)-)、カルバモイルオキシ基(NH2-C(=O)O-)、ウレイド基(NH2-C(=O)-NH-)、オキサモイル基(NH2-C(=O)-C(=O)-)等、化学構造上の一部としてカルボニル基を含むものがあげられる。
【0102】
アミド基、イミド基、ウレタン結合、カルバモイル基、カルバモイルオキシ基、ウレイド基、オキサモイル基等においては、その窒素原子に結合する水素原子は、たとえばアルキル基等の炭化水素基で置換されていてもよい。
【0103】
反応性官能基は、導入が容易である点、フッ素樹脂が適度な耐熱性と比較的低温での良好な接着性とを有する点から、アミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましく、さらにはアミド基、カルバモイル基、ヒドロキシル基、カーボネート基、カルボン酸ハライド基、酸無水物結合が好ましい。
【0104】
溶融成形可能なフッ素樹脂の融点としては、150℃~320℃が好ましく、160℃~270℃がより好ましく、180℃~260℃が最も好ましい。
本発明において、溶融成形可能なフッ素樹脂の融点は、セイコー型DSC装置を用い、10℃/minの速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度として得られる値である。
【0105】
溶融成形可能なフッ素樹脂のMFRは、荷重5kgの条件下、フッ素樹脂の種類によって定められた測定温度(例えば、THVの場合は265℃、ETFEやCTFE単位を有する重合体の場合は297℃)において、好ましくは1g/10分~100g/10分であり、より好ましくは5g/10分~60g/10分であり、さらに好ましくは11g/10分~40g/10分であり、最も好ましくは20g/10分~35g/10分である。
【0106】
本発明において、MFRは、ASTM D1238に従って、メルトインデクサーを用いて、内径2mm、長さ8mmのノズルから10分間あたりに流出するポリマーの質量(g/10分)として得られる値である。
【0107】
またフッ素樹脂は、懸濁重合、溶液重合、乳化重合、塊状重合等、従来公知の重合方法により得ることができる。前記重合において、温度、圧力等の各条件、重合開始剤やその他の添加剤は、フッ素系重合体の組成や量に応じて適宜設定することができる。
【0108】
フッ素樹脂は、さらに、目的や用途に応じてその性能を損なわない範囲で、無機質粉末、ガラス繊維、炭素粉末、炭素繊維、金属酸化物等の種々の充填剤を配合したものであってもよい。
【0109】
たとえば、燃料透過性をさらに低減させるために、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ノントロナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチブンサイト等のスメクタイト系の層状粘度鉱物や、雲母等の高アスペクト比を有する微小層状鉱物を添加してもよい。
【0110】
また、導電性を付与するために、導電性フィラーを添加してもよい。導電性フィラーとしては特に限定されず、たとえば金属、炭素等の導電性単体粉末又は導電性単体繊維;酸化亜鉛等の導電性化合物の粉末;表面導電化処理粉末等があげられる。導電性フィラーを配合する場合、溶融混練して予めペレットを作製することが好ましい。
【0111】
導電性単体粉末又は導電性単体繊維としては特に限定されず、たとえば銅、ニッケル等の金属粉末;鉄、ステンレススチール等の金属繊維;カーボンブラック、炭素繊維、特開平3-174018号公報等に記載の炭素フィブリル等があげられる。
【0112】
表面導電化処理粉末は、ガラスビーズ、酸化チタン等の非導電性粉末の表面に導電化処理を施して得られる粉末である。
表面導電化処理の方法としては特に限定されず、たとえば金属スパッタリング、無電解メッキ等があげられる。
【0113】
導電性フィラーのなかでもカーボンブラックは、経済性や静電荷蓄積防止の観点で有利であるので好適に用いられる。
導電性フィラーを配合してなるフッ素樹脂組成物の体積抵抗率は、1×100~1×109Ω・cmであることが好ましい。より好ましい下限は、1×102Ω・cmであり、より好ましい上限は、1×108Ω・cmである。
また、充填剤以外に、熱安定化剤、補強剤、紫外線吸収剤、顔料、その他任意の添加剤を配合してもよい。
【0114】
<積層体>
本発明の積層体は、上記共重合体組成物を含む層と上記溶融成形可能なフッ素樹脂を含む層とが積層されてなる積層体である。
本発明の積層体は、共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層を積層することにより製造できる。本発明の積層体は、フッ素樹脂を含む層の両側に共重合体組成物を含む層が積層されていてもよいし、共重合体組成物を含む層の両側にフッ素樹脂を含む層が積層されていてもよい。
【0115】
共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層の積層は、共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層を別々に成形した後に圧着などの手段で積層する方法、共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層を同時に成形して積層する方法、共重合体組成物を含む層にフッ素樹脂を含む層を塗布する方法のいずれでもよい。
【0116】
共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層を別々に成形した後に圧着などの手段で積層する方法では、フッ素樹脂の成形方法と共重合体組成物それぞれ単独での成形方法が採用できる。
【0117】
共重合体組成物を含む層の成形は、共重合体組成物を加熱圧縮成形法、トランスファー成形法、押出成形法、射出成形法、カレンダー成形法、塗装法などにより、シート状、チューブ状などの各種形状の成形体とすることができる。
【0118】
フッ素樹脂を含む層は、加熱圧縮成形、溶融押出成形、射出成形、塗装(粉体塗装を含む)などの方法により成形できる。成形には通常用いられるフッ素樹脂の成形機、たとえば射出成形機、ブロー成形機、押出成形機、各種塗装装置などが使用でき、シート状、チューブ状など、各種形状の積層体を製造することが可能である。これらのうち、生産性が優れている点から、溶融押出成形法が好ましい。
【0119】
また、後述するように、フッ素樹脂を含む層に他のポリマー層を積層する場合は、多層押出成形、多層ブロー成形、多層射出成形などの成形方法を適用でき、多層チューブ、多層ホース、多層タンクなどの多層成形品とすることができる。
【0120】
共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層を同時に成形して積層する方法としては、共重合体組成物およびフッ素樹脂を含む層を形成するフッ素樹脂を用いて、多層圧縮成形法、多層トランスファー成形法、多層押出成形法、多層射出成形法、ダブリング法などの方法により成形と同時に積層する方法があげられる。この方法では、未加硫成形体である共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層とを同時に積層できるため、共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層とを密着させる工程が特に必要ではなく、また、後の加硫工程において強固な接着を得るのに好適である。
【0121】
本発明の積層体は、未加硫の共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層との積層体であってもよいが、さらにこの未加硫積層体を加硫することにより、強固な層間接着力が得られる。
【0122】
すなわち本発明は、本発明の未加硫積層体を加硫処理して得られる共重合体組成物を含む層とフッ素樹脂を含む層が加硫接着されている加硫積層体にも関する。
本発明の積層体は、種々公知の製品、たとえば、自動車用エンジンのエンジン本体、主運動系、動弁系、潤滑・冷却系、燃料系、吸気・排気系等、駆動系のトランスミッション系等、シャーシのステアリング系、ブレーキ系等、電装品の基本電装部品、制御系電装部品、装備電装部品等の、耐熱性・耐油性・耐燃料油性・耐LLC性・耐スチーム性が要求されるガスケットや非接触型及び接触型のパッキン類(セルフシールパッキン、ピストンリング、割リング形パッキン、メカニカルシール、オイルシール等)等のシール、ベローズ、ダイヤフラム、ホース、チューブ、電線等として好適な特性を備えている。
【0123】
具体的には、以下に列記する用途に使用可能である。
エンジン本体の、シリンダーヘッドガスケット、シリンダーヘッドカバーガスケット、オイルパンパッキン、一般ガスケット等のガスケット、O-リング、パッキン、タイミングベルトカバーガスケット等のシール、コントロールホース等のホース、エンジンマウントの防振ゴム、水素貯蔵システム内の高圧弁用シール材等。主運動系の、クランクシャフトシール、カムシャフトシール等のシャフトシール等。動弁系の、エンジンバルブのバルブステムシール等。潤滑・冷却系の、エンジンオイルクーラーのエンジンオイルクーラーホース、オイルリターンホース、シールガスケット等や、ラジエータ周辺のウォーターホース、バキュームポンプのバキュームポンプオイルホース等。
【0124】
燃料系の、燃料ポンプのオイルシール、ダイヤフラム、バルブ等、フィラー(ネック)ホース、燃料供給ホース、燃料リターンホース、ベーパー(エバポ)ホース等の燃料ホース、燃料タンクのインタンクホース、フィラーシール、タンクパッキン、インタンクフューエルポンプマウント等、燃料配管チューブのチューブ本体やコネクターO-リング等、燃料噴射装置のインジェクタークッションリング、インジェクターシールリング、インジェクターO-リング、プレッシャーレギュレーターダイヤフラム、チェックバルブ類等、キャブレターのニードルバルブ花弁、加速ポンプピストン、フランジガスケット、コントロールホース等、複合空気制御装置(CAC)のバルブシート、ダイヤフラム等。中でも、燃料ホース及び燃料タンクのインタンクホースとして好適である。
【0125】
吸気・排気系の、マニホールドの吸気マニホールドパッキン、排気マニホールドパッキン等、EGR(排気際循環)のダイヤフラム、コントロールホース、エミッションコントロールホース等、BPTのダイヤフラム等、ABバルブのアフターバーン防止バルブシート等、スロットルのスロットルボディパッキン、ターボチャージャーのターボオイルホース(供給)、ターボオイルホース(リターン)、ターボエアホース、インタークーラーホース、タービンシャフトシール等。
【0126】
トランスミッション系の、トランスミッション関連のベアリングシール、オイルシール、O-リング、パッキン、トルコンホース等、ATのミッションオイルホース、ATFホース、O-リング、パッキン類等。
【0127】
ステアリング系の、パワーステアリングオイルホース等。
ブレーキ系の、オイルシール、O-リング、パッキン、ブレーキオイルホース等、マスターバックの大気弁、真空弁、ダイヤフラム等、マスターシリンダーのピストンカップ(ゴムカップ)等、キャリパーシール、ブーツ類等。
【0128】
基本電装部品の、電線(ハーネス)の絶縁体やシース等、ハーネス外装部品のチューブ等。
制御系電装部品の、各種センサー線の被覆材料等。
装備電装部品の、カーエアコンのO-リング、パッキン、クーラーホース、外装品のワイパーブレード等。
【0129】
また自動車用以外では、たとえば、船舶、航空機等の輸送機関における耐油、耐薬品、耐熱、耐スチーム、あるいは耐候用のパッキン、O-リング、ホース、その他のシール材、ダイヤフラム、バルブ、芝刈り機などの小型機器における燃料ホース、チューブ、ガソリンスタンドで使用される燃料給油ホース、チューブ、また化学プラントにおける同様のパッキン、O-リング、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ホース、ロール、チューブ、耐薬品用コーティング、ライニングに、化学処理分野におけるホースまたはガスケットに、食品プラント機器及び食品機器(家庭用品を含む)における同様のパッキン、O-リング、ホース、シール材、ベルト、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブに、原子力プラント機器における同様のパッキン、O-リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、チューブに、OA機器、一般工業部品における同様のパッキン、O-リング、ホース、シール材、ダイヤフラム、バルブ、ロール、チューブ、ライニング、マンドレル、電線、フレキシブルジョイント、ベルト、ゴム板、ウエザーストリップ、PPC複写機のロールブレード等への用途に好適である。たとえば、PTFEダイヤフラムのバックアップゴム材は滑り性が悪いため、使用している間にすり減ったり、破れたりする問題があったが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。
【0130】
また、食品ゴムシール材用途においては、従来ゴムシール材において着香性やゴムの欠片等が食品中に混入するトラブルがあるが、本発明の積層体を用いることにより、この問題を改善でき、好適に使用できる。医薬・ケミカル用途のゴムシール材溶剤を使用する配管のシール材としてゴム材料は溶剤に膨潤する問題があるが、本発明の積層体を用いることにより、樹脂を被覆する事で改善される。一般工業分野では、ゴム材料の強度、すべり性、耐薬品性、透過性を改善する目的において、たとえば、ゴムロール、O-リング、パッキン、シール材等に好適に用いることができる。特に、リチウムイオン電池のパッキン用途には耐薬品性とシールの両方を同時に維持できることから好適に使用できる。その他、低摩擦による摺動性が要求される用途においては、好適に使用できる。
【0131】
また、医療用用途としては、薬栓、ボトルのキャップシール、缶シール、薬用テープ、薬用パッド、注射器シリンジパッキン、経皮吸収薬用基材、ほ乳びん等の吸い口、医療用バッグ、カテーテル、輸液セット、混注管、キャップライナー、真空採血管のキャップ、シリンジ用ガスケット、輸液チューブ、医療機器のガスケット・キャップ、シリンジチップ、グロメット、採血管キャップ、キャップシール、バッキング、O-リング、シースイントロデューサー、ダイレーター、ガイディングシース、血液回路、人工心肺回路、ロ-タブレーター用チューブ、留置針、インフュージョンセット、輸液チューブ、閉鎖式輸液システム、輸液バッグ、血液バッグ、血液成分分離バッグ、血液成分分離バッグ用チューブ、人工血管、動脈カニューレ、ステント、内視鏡処置具保護チューブ、内視鏡スコープチューブ、内視鏡トップオーバーチューブ、咽頭部通過用ガイドチューブ、冠動脈バイパス術用チューブ、イレウスチューブ、経皮経肝胆道ドレナージ術用チューブ、電気メス外装チューブ、超音波メス外装チューブ、剥離鉗子外装チューブ、細胞培養用バッグ等が挙げられる。
【0132】
また、本発明の積層体が適用できるオフショア用成形品としては、海底油田用チューブ若しくはホース(インジェクションチューブ、原油移送チューブ含む)が挙げられる。これらの中でも、特に上記積層体は、チューブ又はホースとして好適に用いられる。すなわち、上記積層体は、チューブ又はホースでもあることが好ましい。チューブの中でも、耐熱性、燃料低透過性の点で自動車用の燃料配管チューブ又はホースとして好適に利用できる。
【0133】
本発明における前記積層体からなる燃料配管は通常の方法によって製造することができ、特に制限されることはない。
本発明の積層体は、上記共重合体組成物を含む層と上記フッ素樹脂を含む層から構成されるが、用途によっては、上記層に加え、他の層、例えば、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)またはその水素化物(HNBR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、クロロプレンゴム(CR)、ブタジエンゴム(BR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)などのジエン系ゴム、シリコーンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム(ECO)、ポリアクリルエステル(ACM)、フッ素ゴム(FKM)等が挙げられる。
【0134】
これらゴムの中でも、耐油性に優れるNBR、HNBR、ECO、ACMおよびFKMが特に好ましい。
これらゴムには、上記燃料バリア性重合体層との接着強度を改良するために、上記化合物(C)、さらには、酸化マグネシウム、ジアルキルカルバミン酸金属塩等を加えておくことが好ましい。
【実施例0135】
以下に、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
実施例および比較例で用いたエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体を以下に示す。
【0136】
〈エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体〉
エチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)として、以下の市販のエチレン・α-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(EPDM)を使用した。
(1)三井EPT 9090M:ML(1+4)125℃(ASTM D 1646)が58、エチレン含量(ASTM D 3900)が41wt%、ENB含量(ASTM D 6047)が14.0wt%、三井化学(株)製
【0137】
〈エチレン系重合体(D)〉
エチレン系重合体として、以下のエチレン系重合体を用いた。
(1)高圧法低密度ポリエチレン:MFR=1.3g/10分、密度=920kg/m3、融点=111℃(商品名:DND2450 NUC社製)。
(2)線状低密度ポリエチレン:MFR=2.0g/10分、密度=919kg/m3、融点=121℃(商品名:UZ2022F プライムポリマー社製)。
(3)高密度ポリエチレン:MFR=5.2g/10分、密度=964kg/m3、融点=133℃(商品名:HZ2208J プライムポリマー社製)。
【0138】
実施例および比較例で用いた溶融成形可能なフッ素樹脂として、以下のフッ素樹脂を用いた。
(1)フッ素樹脂(1)
組成(モル%):CTFE/TFE/PPVE共重合体=21.3/76.3/2.4
融点(℃):248
MFR(g/10min):29.2(297℃)
燃料透過係数(g・mm/m2/day):0.4
シート厚み:120μm
上記記載のフッ素樹脂(1)の物性は、以下の測定方法で測定した。
【0139】
<フッ素樹脂の物性評価>
(1)フッ素樹脂の組成
19F-NMR分析により測定した。
(2)融点
セイコー型DSC装置を用い、10℃/minの速度で昇温したときの融解ピークを記録し、極大値に対応する温度を融点とした。
(3)MFR(Melt Flow Rate)
メルトインデクサー(東洋精機製作所(株)製)を用い、各種温度、5kg加重下で直径2mm、長さ8mmのノズルから単位時間(10分間)に流出するポリマーの重量(g)を測定した。
(4)単層の燃料透過係数の測定
フッ素樹脂(1)のペレットを、それぞれ、直径120mmの金型に入れ、300℃に加熱したプレス機にセットし、約2.9MPaの圧力で溶融プレスして、厚さ0.12mmのシートを得た。CE10(イソオクタンとトルエンとの容量比50:50の混合物にエタノール10容量%を混合した燃料)を18mL投入した内径40mmφ、高さ20mmのSUS316製の透過係数測定用カップに得られたシートを入れ、60℃における質量変化を1000時間まで測定した。時間あたりの質量変化、接液部のシートの表面積およびシートの厚さから燃料透過係数(g・mm/m2/day)を算出した。
【0140】
[実施例1]
(EPDMを含む共重合体組成物の調製)
第一段階として、BB-2型バンバリーミキサー(神戸製鋼所製)を用いて、100質量部の三井EPT9090Mを30秒間素練りし、次いでこれに、20質量部のDND2450(株式会社NUC製)、70質量部のSRFカーボンブラック(旭#50G、旭カーボン(株)社製)、20質量部の塩基性シリカ(カープレックス(登録商標)1120、EVONIK社製)、5質量部の亜鉛華(ハクスイテック社製)、1質量部のステアリン酸、10質量部の酸化マグネシウム(キョーワマグ150、協和化学工業株式会社)および35質量部のナフテン系プロセスオイル(サンセン4240、日本サン石油(株)製)を加え、140℃で2分間混練した。その後、ラムを上昇させ掃除を行ない、さらに、1分間混練を行ない、約150℃で排出し、第一段階の配合物を得た。
【0141】
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物を、8インチロ-ル(日本ロール(株)社製、前ロールの表面温度50℃、後ロールの表面温度50℃、前ロールの回転数16rpm、後ロールの回転数18rpm)に巻き付けて、これに、4.0質量部のDBUギ酸塩(U-CAT SA(登録商標)603、サンアプロ(株)社製)、1.4質量部のN-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(ノクセラー MSA-G、大内新興化学工業(株)製)、0.28質量部のチアゾール系架橋促進剤(ノクセラー MZ、大内新興化学工業(株)製)、1.4質量部のジメチルジチオカルバミン酸銅(ノクセラー TTCU、大内新興化学工業(株)製)、1.0質量部の硫黄(硫黄、純正化学株式会社)、1.5質量部の4,4'-ジチオジモルホリン(バルノックR、大内新興化学工業(株)製)、1.0質量部の酸化カルシウム(ベスタ18、井上石灰工業株式会社製)を加え10分間混練して未加硫の共重合体組成物(共重合体配合物)を得た。
次いでプレス成形機を用いて160℃で60分間プレス処理を行って、厚さ2mmの架橋体シートを作製した。得られた架橋体シートについて、硬さ試験(デュロ-A硬度)および引張り試験を行った。得られた測定結果を表1に示す。
【0142】
(1)硬さ試験(デュロ-A硬度)
JIS K 6253に従い、架橋シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0143】
(2)引張り試験
JIS K 6251に従い、測定温度23℃、引張速度500mm/分の条件で引張試験を行い、シートの破断強度(TB)〔MPa〕および破断伸び(EB)〔%〕を測定した。すなわち、シート状の架橋成形体を打抜いてJIS K 6251(2001年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製した。この試験片を用いて同JIS K 6251に規定される方法に従い、測定温度25℃、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
【0144】
次いで、上記未加硫の共重合体組成物を用いて厚さ約1mmのシートを作成し、当該シートと表1に示す厚みのフッ素樹脂(1)のシートを重ね合わせ、片方の端部に幅約10~15mmのルミラー(商品名:ポリエステルシート、東レ株式会社製)シート(厚さ:10μm)を両シートの間に挟んだ後、得られるシートが厚み1mmになるよう金属製スペーサーを入れた金型に挿入し、160℃で45分間プレスして積層体を得た。
【0145】
得られた積層体を幅10mm×長さ40mm×3セットの短冊状に切断し、フッ素樹脂(1)のシートを剥がして掴みしろとした試験片を作製した。この試験片について、JIS K 6854-3(T型剥離試験)に記載の方法に準拠し、25℃において200mm/minの引張速度で剥離試験を行い、接着強度(剥離強度)(N/cm)を測定し、得られたN=3のデータの平均値を算出し、接着強度とした。また、得られた測定結果を表1に示す。
【0146】
次いで、上記未加硫の共重合体組成物を用いて厚さ約1mmのシートを作成し、当該シートと表1に示す厚みのフッ素樹脂(1)のシートを重ね合わせ、片方の端部に幅約10~15mmのルミラー(商品名:ポリエステルシート、東レ株式会社製)シート(厚さ:10μm)を両シートの間に挟んだ後、得られるシートが厚み1mmになるよう金属製スペーサーを入れた金型に挿入し、予備成形として常温で1分間プレスして積層体を得た。
【0147】
得られた積層体を、クラッチ式加硫缶(株式会社フカテツ製、最大使用圧力0.981MPa、最大内径450mmφ、内容積0.09m3)に入れ、150℃で30分間の条件で加硫を行った。
【0148】
得られた積層体を幅10mm×長さ40mm×3セットの短冊状に切断し、フッ素樹脂(1)のシートを剥がして掴みしろとした試験片を作製した。この試験片について、JIS K 6854-3(T型剥離試験)に記載の方法に準拠し、25℃において200mm/minの引張速度で剥離試験を行い、接着強度(剥離強度)(N/cm)を測定し、得られたN=3のデータの平均値を算出し、接着強度とした。得られた測定結果を表1に示す。
【0149】
[実施例2~7]
実施例1で用いた共重合体組成物に替えて、表1に示す配合剤等を用いて実施例1に記載の方法で共重合体組成物を得た後、架橋体シートの硬さ試験(デュロ-A硬度)、および引張り試験を行った。また、フッ素樹脂(1)との積層体を作製し、接着強度を求めた。
得られた測定結果を表1に示す。
なお、実施例7では、実施例1で用いたフッ素樹脂(1)に替えて以下のフッ素樹脂(2)を用いた。
(1)フッ素樹脂(2)
組成(モル%): CTFE=100
融点(℃): 212℃
フロー値(ml/S): 1.5×10-3
燃料透過係数(g・mm/m2/day): 4.5
シート厚み: 75μm
上記記載のフッ素樹脂(2)の物性は、上記フッ素樹脂(1)と同様の測定方法で測定した。
ただし、フロー値はフローテスター(島津製作所製)を用い、230℃、100kg加重下で直径1mmのダイから単位時間に流出するポリマーの体積を測定した。
【0150】
[比較例1、2]
実施例1で用いた共重合体組成物に替えて、表1に示す配合剤等を用いて実施例1に記載の方法で共重合体組成物を得た後、架橋体シートの硬さ試験(デュロ-A硬度)、および引張り試験を行った。また、フッ素樹脂(1)との積層体を作製し、接着強度を求めた。
得られた測定結果を表1に示す。
【0151】
【表1】
【0152】
表1から分かるように、本願発明によると、酸化カルシウムを添加することで、加硫缶を用いた150℃、30分という弱い架橋条件でも十分な接着強度を有する積層体を製造可能である。