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特開2023-184429二次電池成長因子を豊富に含む乾燥粉末が炎症または損傷を緩和する一種の用途
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  • 特開-二次電池成長因子を豊富に含む乾燥粉末が炎症または損傷を緩和する一種の用途 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184429
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】二次電池成長因子を豊富に含む乾燥粉末が炎症または損傷を緩和する一種の用途
(51)【国際特許分類】
   A61K 38/18 20060101AFI20231221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 17/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 19/04 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61K38/18
A61P29/00
A61P17/00
A61P19/00
A61P19/02
A61P19/04
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023049460
(22)【出願日】2023-03-27
(31)【優先権主張番号】17/841,941
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】111150685
(32)【優先日】2022-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】523109699
【氏名又は名称】スピリット サイエンティフィック カンパニー リミテッド
(71)【出願人】
【識別番号】523109703
【氏名又は名称】ダオ ルン スティーブン リン
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チン-ホ チェン
(72)【発明者】
【氏名】ダオ ルン スティーブン リン
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA06
4C084CA26
4C084MA44
4C084NA14
4C084ZA89
4C084ZA94
4C084ZA96
4C084ZB11
(57)【要約】      (修正有)
【課題】炎症や損傷(injury)を効果的に緩和または治療できる成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を提供すること。
【解決手段】成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の炎症または損傷を緩和するための一種の用途を提供し、その中、1グラムあたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)は、PDGF-BBを9×10pg以上で含む。
【選択図】図2A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一種成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の製造方法であって、製造工程に
(a)血小板を含む溶液を一ユニット(unit)取り、血小板の純化プロセス(process purifying platelets)を実行して純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得るプロセス;
(b)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を活性化(activation)し、成長因子を放出させて血小板成長因子抽出液(platelet growth factor extract solution)を得るプロセス;
(c)血小板関連構造物(platelet-associated structure)を除去するプロセスを実行して、成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を得るプロセス;および
(d)成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を乾燥(drying)させて、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を得るプロセス
を含む成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の製造方法。
【請求項2】
前記乾燥プロセスが凍結乾燥(freeze-drying)である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ステップ(a)において、血小板精製プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の白血球濃度が1mLあたり10個未満になるように白血球を除去するプロセスをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ステップ(a)において、血小板精製プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のアルブミン(albumin)濃度が3g/dL未満になるように血漿を除去するプロセス;または、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のグロブリン(globulin)濃度が2g/dL未満になるように血漿を除去するプロセス;または、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のフィブリノーゲン(fibrinogen)濃度が100μg/mL未満になるように血漿を除去するプロセスをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記血小板を含む溶液が全血であり、且つステップ(a)には
(a1)血小板を含む溶液を一ユニット(unit)取ること;
(a2)一次沈降プロセス(sedimentation process)を実行し、血小板を含む溶液を血漿層(Plasma layer)、バッフィーコート層(Buffy coat layer)および赤血球層に分離すること;
(a3)バッフィーコート層(Buffy coat layer)と赤血球層(Red blood cells layer)を除去して、血漿層溶液(Plasma layer solution)を得ること;
(a4)血小板が沈殿してペレット(pellet)を形成させるため、二次沈降プロセス(sedimentation process)を実行すること;
(a5)上清液を除去し、沈殿物を溶媒と混合して、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得ること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記活性化(activation)プロセスが凍結後解凍(freezing and then thawing)プロセス、カルシウムイオンの添加(addition of Ca2+)プロセス、トロンビンの添加(addition of thrombin)プロセス、コラーゲンの添加(addition of collagen)プロセス、またはアデノシン二リン酸の添加(addition of ADP)プロセス、またはその任意の組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記活性化(activation)プロセスが凍結後解凍(freezing and then thawing)プロセス(すなわち、凍結融解工程(freeze-thaw procedure))であり、前記凍結後解凍プロセス(凍結融解工程)の手順には、
(b1)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を含む容器を液体窒素(liquid nitrogen)中に入れ、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を凍結すること;および
(b2)容器の温度を上げて、凍結した純粋血小板溶液(frozen ultra-pure platelet solution)を解凍すること
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の製造方法であって、
(1)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のPDGF-BBの含有量が10 pg ~ 3×10 pgである;または、
(2)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のVEGFの含有量が2×10 pg ~3×10pgである;または、
(3)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のFGFの含有量が10 pg ~1×10 pgである;または、
(4)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のTGF-β1の含有量が2×10 pg ~1.2×10pgである;または、
(5)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のEGFの含有量が1×10 pg ~6×10pgである、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記凍結乾燥プロセスが、温度を-35℃以下に調整し、圧力を80mTorr以下に調整することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記血小板を含む溶液が、全血(whole blood)、血漿交換血小板(apheresis platelet)、白血球除去済み血小板(leukocytes-reduced platelets apheresis)、もしくは血小板リッチプラズマ(Platelet-Rich Plasma, PRP)、もしくはその任意の組み合わせであり;または、前記血小板を含む溶液が、自己の血液検体(Autologous blood sample)、もしくは異種の検体(allogeneic blood sample)、もしくはその組み合わせである、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記ステップ(a5)における溶媒は、無菌生理食塩水、注射用水、0.45%NaCl、4.5%高張食塩水、無菌温泉水、もしくは等張食塩水である;または、ステップ(a5)における純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の血小板濃度は1×10個/mL~10×10個/mLである、請求項5に記載の方法。
【請求項12】
前記ステップ(c)は、(c1)沈降プロセス(sedimentation process)を実行し、血小板関連構造物(platelet-associated structure)を沈降させて血小板関連構造物の沈澱物(platelet-associated structure pellet)を形成すること;
(c2)血小板関連構造物の沈澱物(platelet-associated structure pellet)を除去して、成長因子を豊富に含む溶液を得ること、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
一種の製造方法により製造される成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)であって、当該製造方法は、
(a) 血小板を含む溶液を一ユニット(unit)取り、血小板の純化プロセス(process purifying platelets)を実行して純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得るプロセス;
(b)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を活性化(activation)し、成長因子を放出させて血小板成長因子抽出液(platelet growth factor extract solution)を得るプロセス;
(c)血小板関連構造物(platelet-associated structure)を除去するプロセスを実行して、成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を得るプロセス;および
(d)成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を乾燥(drying)させて、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を得るプロセス;その中、前記凍結乾燥プロセスには、温度を-30℃以下に調整し、圧力を100 mTorr以下に調整することが含まれ、
を含み、グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末中のPDGF-BB含有量は10 pg ~3×10 pgである。
【請求項14】
前記活性化(activation)プロセスが凍結後解凍(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解工程(freeze-thaw procedure))であり、前記凍結後解凍プロセス(凍結融解工程)の手順には、
(b1)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を含む容器を液体窒素(liquid nitrogen)中に入れ、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を凍結すること;および
(b2)容器の温度を上げて、凍結した純粋血小板溶液(frozen ultra-pure platelet solution)を解凍すること
を含む、請求項13に記載の成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)。
【請求項15】
個体の一部に有効量を投与し個体の一部の炎症または損傷(injury)の程度を緩和(relieve)するための医薬組成物または健康補助剤を製造するための、請求項13に記載の成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の使用。
【請求項16】
前記破砕プロセスが凍結後解凍(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解工程(freeze-thaw procedure))であり、前記凍結後解凍プロセス(凍結融解工程)は、
(b1)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を含む容器を液体窒素(liquid nitrogen)中に入れ、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を凍結すること;および
(b2)容器の温度を上げて、凍結した純粋血小板溶液(frozen ultra-pure platelet solution)を解凍すること
を含む、請求項15に記載の成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の使用。
【請求項17】
前記ステップ(a)において、血小板精製プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の白血球濃度が1mLあたり10個未満になるように白血球を除去するプロセスをさらに含む、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
前記ステップ(a)において、血小板精製プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のアルブミン(albumin)濃度が3g/dL未満になるように血漿を除去するプロセス;または、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のグロブリン(globulin)濃度が2g/dL未満になるように血漿を除去するプロセス;または、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のフィブリノーゲン(fibrinogen)濃度が100μg/mL未満になるように血漿を除去するプロセスをさらに含む、請求項15に記載の使用。
【請求項19】
前記成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の使用であって、
(1)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のVEGFの含有量が2×10 pg ~3×10pgである;または、
(2)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のFGFの含有量が10 pg ~1×10 pgである;または、
(3)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のTGF-β1の含有量が2×10 pg ~1.2×10pgである;または、
(4)グラム(g)当たりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中のEGFの含有量が1×10 pg ~6×10pgである、
ことを特徴とする請求項15に記載の使用。
【請求項20】
個体の呼吸器部位、皮膚部位、筋肉部位、腱部位、骨格部位、関節部位もしくは靭帯部位の炎症または損傷(injury)を緩和(relieve)するための医薬組成物または健康補助剤を製造するための、請求項15に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)に関するものであり、とりわけ成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)が炎症または損傷を緩和するための一種の用途に関するものである。
【背景技術】
【0002】
炎症は人体の防御メカニズムである。身体部位は、感染 (infection)、外傷(trauma)、または過敏症(hypersensitivity)によって炎症反応を引き起こし、有害刺激を除去し、病原体を除去し、組織修復を促進する。炎症は、急性炎症(acute inflammation)と慢性炎症(chronic inflammation )に分類される。例えば、皮膚炎(Dermatitis))、アレルギー性鼻炎(Allergic Rhinitis)、肺炎(Pneumonia)、肝炎(Hepatitis)、腸炎(Enteritis)が挙げられる。皮膚炎は、刺激性接触皮膚炎(Irritant contact dermatitis、ICD)およびアレルギー性接触皮膚炎(Allergic contact dermatitis)に分けられる。重度の肺炎は、慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease, COPD)や肺線維症(pulmonary fibrosis)などの疾患を引き起こす。重度の肝炎は、肝硬変(Liver cirrhosis)やがん(Cancer)などの疾患を引き起こす。
【0003】
高濃度血小板血漿(Platelet-Rich Plasma, PRP)は、血液由来の製品(blood-derived products)であり、血小板濃度は通常の血液の1.5~5倍である。血小板(platelet)には、血小板関連の成長因子(platelet-related growth factors)が含まれる。血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor, PDGF)、血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor, VEGF)、表皮成長因子(Epidermal Growth Factor, EGF)、線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor, FGF)およびβ型転換成長因子(Transforming Growth Factor Beta 1, TGF-β1)などが挙げられる。
【0004】
高濃度血小板血漿(Platelet-Rich Plasma, PRP)には、抗炎症特性(anti-inflammatory properties)がある(文献1、2を参照)。しかし、臨床研究では、高濃度血小板血漿(Platelet-Rich Plasma, PRP)の抗炎症効果は不十分であることが判明しており、その原因は、高濃度血小板血漿(Platelet-Rich Plasma, PRP)中の成長因子濃度が低く、品質が不安定であり、保存が困難であることである。また、異種移植において高濃度血小板血漿(Platelet-Rich Plasma, PRP)を使用すると、アレルギー反応を引き起こす可能性があり、臨床使用のリスクが増大する。
【0005】
マーケットにおいては、現在の技術の限界を突破することができる、各部位の炎症または損傷を緩和または治療するために医薬組成物が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
従来技術の欠点に鑑み、本発明の目的は、炎症や損傷(injury)を効果的に緩和または治療できる成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を提供することである。
【0007】
本発明のもう一つの目的は、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を製造する方法を提供することである。
【0008】
本発明のもう一つの目的は、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)が炎症や損傷(injury)を効果的に緩和するための使用を提供することである。
【0009】
本発明のもう一つの目的は、炎症や損傷(injury)を緩和または治療するための医薬組成物または健康補助剤を調製するための使用を提供することである。
【0010】
成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を製造する一種の方法、そのうち(a) 血小板を含む溶液を一ユニット(unit)取り、血小板の純化プロセス(process purifying platelets)を実行して純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得るプロセス;(b) 純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を活性化(activation)し、成長因子を放出させて血小板成長因子抽出液(platelet growth factor extract solution)を得るプロセス;(c) 血小板関連構造物(platelet-associated structure)を除去するプロセスを実行して、成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を得るプロセス;および(d) 成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を乾燥(drying)させて、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を得るプロセスを含む。
【0011】
一部の実施例において、乾燥プロセスは凍結乾燥(freeze-drying)プロセスである。一部の実施例において、乾燥プロセスは凍結乾燥(freeze-drying)プロセスであり、この凍結乾燥プロセスには複数の操作ステップが含まれている。この複数の操作ステップにより、成長因子を豊富に含む溶液中の複数の成分が凍結し、少なくとも1つの凍結した成分が直接昇華して気体に蒸発し、それにより(1)成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)内に複数の孔隙(例えば、複数の気体収容孔隙または複数の気体蒸発孔隙)が形成されるか、または(2)成長因子を豊富に含む溶液から成長因子を豊富に含む乾燥粉末に変化させる過程で、生理反応が変化する程度の変化が生じる。一部の実施例において、これらの凍結した成分には、凍結した溶質、凍結した血小板関連成長因子、および複数の凍結した他の成分が含まれ、かつ直接昇華して気体に蒸発する凍結した成分は、(1’)凍結した溶質または(1’’)凍結した溶質と少なくとも1種類の凍結した他の成分が含まれる。一部の実施例において、電子顕微鏡または他の方法で、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)内の複数の孔隙(例えば、複数の気体収容孔隙または複数の気体蒸発孔隙)の形態を観察する。
【0012】
一部の実施例において、乾燥プロセスは凍結乾燥(freeze-drying)、低温乾燥(low temperature drying)、または真空乾燥(vacuum drying)である。
【0013】
一部の実施例において、ステップ(a)の血小板純化プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の白血球の数が10個未満になるよう、白血球を除去するプロセスがさらに含まれる。
【0014】
一部の実施例において、ステップ(a)の血小板純化プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の白血球の数が50、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1,000、2,000、3,000、4,000、5,000、6,000、7,000、8,000、9,000、10,000、20,000、30,000、40,000、50,000、60,000、70,000、80,000、90,000、100,000、200,000、300,000、400,000、500,000、600,000、700,000、または800,000個未満になるよう、白血球を除去するプロセスがさらに含まれる。
【0015】
一部の実施例において、ステップ(a)の血小板純化プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のアルブミン濃度(albumin)が3g/dL未満になるように、血漿を除去するプロセスが含まれる。一部の実施例において、ステップ(a)の血小板純化プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のグロブリン濃度(globulin)が2g/dL未満になるように、血漿を除去するプロセスが含まれる。一部の実施例において、ステップ(a)の血小板純化プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のフィブリノーゲン濃度(fibrinogen)が100μg/mL未満になるように、血漿を除去するプロセスが含まれる。
【0016】
一部の実施例において、ステップ(a)の血小板純化プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のアルブミン濃度(albumin)が0.25、0.5、0.75、1、1.25、1.5、1.75、2、2.25、2.5、または2.75 g/dL未満になるように、血漿を除去するプロセスがさらに含まれる。
【0017】
一部の実施例において、ステップ(a)の血小板純化プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のグロブリン濃度(globulin)が0.25、0.5、0.75、1、または1.25g/dL未満になるように、血漿を除去するプロセスがさらに含まれる。
【0018】
一部の実施例において、ステップ(a)の血小板純化プロセス(process purifying platelets)には、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中のフィブリノーゲン濃度(fibrinogen)が10、20、30、40、50、60、70、80または90μg/mL未満になるように、血漿を除去するプロセスがさらに含まれる。
【0019】
一部の実施例において、血小板を含む溶液は全血であり、かつステップ(a)には、(a1)血小板を含む溶液を一ユニット(unit)取る、(a2)血小板を含む溶液を血漿層(Plasma layer)、バッフィーコート層(Buffy coat layer)、および赤血球層(Red blood cells layer)に分離するための一回目の沈降プロセスを施す、(a3)血小板をバッフィーコート層(Buffy coat layer)および赤血球層(Red blood cells layer)を除去して血漿層溶液(Plasma layer solution)を得る、(a4)血小板が沈殿してペレット(pellet)を形成させるための沈降プロセスを施す、および(a5)上清液を除去し、該ペレットを溶媒と混合して純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得るステップが含まれる。
【0020】
一部の実施例において、活性化(activation)プロセスは凍結後に解凍する(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解プロセス(freeze-thaw procedure))、カルシウムイオンの添加(addition of Ca2+)プロセス、トロンビンの添加(addition of thrombin)プロセス、コラーゲンの添加(addition of collagen)プロセス、またはアデノシン二リン酸の添加(addition of ADP)プロセス、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0021】
一部の実施例において、活性化(activation)プロセスは凍結後に解凍する(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解工程(freeze-thaw procedure))であり、かつ当該凍結後に解凍する(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解工程(freeze-thaw procedure))には、(b1)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を含む容器を液体窒素(liquid nitrogen)中に置き、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を凍結する、および(b2)容器の温度を上げて凍結した純粋血小板溶液(frozen ultra-pure platelet solution)を解凍するステップを含む。
【0022】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、PDGF-BBの含量は10 pg ~ 3×10pgである。
【0023】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、PDGF-BBの含量は10、20、30、40、50、60、70、80、90、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、または1×10pgである。
【0024】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、VEGFの含量は2×10pg ~3×10pgである。
【0025】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、VEGFの含量は4×10、8×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、または1×10pgである。
【0026】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、FGFの含量は10 pg ~1×10pgである。
【0027】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、FGFの含量は10、20、30、40、50、60、70、80、90、1×10、5×10、1×10、または5×10pgである。
【0028】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、TGF-β1の含量は2×10pg~1.2×10pgである。
【0029】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、TGF-β1の含量は3×10、5×10、1×10、5×10、または1×10pgである。
【0030】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、EGFの含量は1×10pg~6×10pgである。
【0031】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、EGFの含量は2×10、5×10、1×10、5×10、1×10、5×10、1×10、または5×10pgである。
【0032】
一部の実施例において、凍結乾燥プロセスは温度を-35℃以下に調整し、圧力を80mTorr以下に調整することを含む。
【0033】
一部の実施例において、凍結乾燥プロセスは温度を-40、-45、-50、-60、-65、または-70℃以下に調整することを含む。
【0034】
一部の実施例において、凍結乾燥プロセスは圧力を70、60、50、40、または30 mTorr以下に調整することを含む。
【0035】
一部の実施例において、血小板を含む溶液は、全血(whole blood)、アフェレーシス血小板、(apheresis platelet)白血球除去アフェレーシス血小板(leukocytes-reduced platelets apheresis)、プレートレットリッチプラズマ(Platelet-Rich Plasma, PRP)、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる;もしく、血小板を含む溶液は自己血液検体(Autologous blood sample)または同種検体(allogeneic blood sample)から派生し、またはその組み合わせである。
【0036】
一部の実施例において、ステップ(a5)における溶媒は、無菌の生理食塩水、注射用水、45%NaCl、4.5%高張性食塩水、無菌温泉水、または等張性食塩水である;もしく、ステップ(a5)における純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の血小板濃度は1×10個/mL~10×10個/mLである。
【0037】
一部の実施例において、ステップ(a5)における純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の血小板濃度は2×10個/mL、3×10個/mL、4×10個/mL、5×10個/mL、6×10個/mL、7×10個/mL、8×10個/mL、または9×10個/mLである。
【0038】
一部の実施例において、ステップ(c)は、(c1)血小板関連構造物(platelet-associated structure)を沈降させ、血小板関連構造物沈殿物(platelet-associated structure pellet)を形成する沈降プロセス(sedimentation process)を実行、(c2)血小板関連構造物沈殿物(platelet-associated structure pellet)を除去して、成長因子濃縮溶液(growth factor enriched solution)を得ることを含む。
【0039】
本発明はさらに、製造方法で製造した細胞成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を提供し、該製造方法は、(a)血小板を含む溶液を一ユニット(unit)取り、血小板の純化プロセス(process purifying platelets)を実行して純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得る;(b)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)の血小板溶液中の血小板を活性化(activation)して細胞成長因子を放出させ、血小板成長因子抽出溶液(platelet growth factor extract solution)を得る活性化(activation)プロセス;(c)血小板関連構造物(platelet-associated structure)を除去するプロセスを実行して、成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を得る;および(d)成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を乾燥(drying)させて、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を得ることを含む。この凍結乾燥プロセスには、温度を-30℃以下に調整し、圧力を100 mTorr以下に調整することを含み、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、PDGF-BBの含量は10 pg ~ 3×10pgである。
【0040】
一部の実施例において、活性化(activation)プロセスは凍結後に解凍する(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解プロセス(freeze-thaw procedure))であり、かつ該凍結後に解凍する(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解プロセス(freeze-thaw procedure))には、(b1)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を含む容器を液体窒素(liquid nitrogen)中に置き、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を凍結する、および(b2)容器の温度を上げて凍結した純粋血小板溶液(frozen ultra-pure platelet solution)を解凍するステップを含む。
【0041】
本発明はさらに、有効量で個体の一部位に用いて、当該個体の当該部位の炎症や損傷(injury)を緩和(relieve)するための医療組成物または機能性組成物を調製するための、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の使用を提供する。
【0042】
一部の実施例において、前記個体は人間または他の哺乳動物である。
【0043】
一部の実施例において、活性化(activation)プロセスは凍結後に解凍する(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解工程(freeze-thaw procedure))であり、かつ該凍結後に解凍する(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解工程(freeze-thaw procedure))には、(b1)純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を含む容器を液体窒素(liquid nitrogen)中に置き、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を凍結する、および(b2)容器の温度を上げて凍結した純粋血小板溶液(frozen ultra-pure platelet solution)を解凍するステップをさらに含む。
【0044】
一部の実施例において、ステップ(a)は、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中白血球数が10個未満になるように、血小板の精製プロセス(process purifying platelets)に白血球を除去するプロセスがさらに含まれる。
【0045】
一部の実施例において、ステップ(a)は、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中グロブリン(albumin)濃度が3g/dL未満になるように、血小板の精製プロセス(process purifying platelets)に血漿を除去するプロセスが含まれる;もしくは、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中グロブリン(albumin)濃度が2g/dL未満になるように、血小板の精製プロセス(process purifying platelets)に血漿を除去するプロセスが含まれる;もしくは、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中フィブリノーゲン濃度(fibrinogen)が100μg/mL未満になるように、血小板の精製プロセス(process purifying platelets)に血漿を除去するプロセスがさらに含まれる。
【0046】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、VEGFの含量は2×10pg~3×10pgである。
【0047】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、FGFの含量は10pg ~1×10pgである。
【0048】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、TGF-β1の含量は2×10pg~1.2×10pgである。
【0049】
一部の実施例において、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中、EGFの含量は1×10pg~6×10pgである。
【0050】
一部の実施例において、個体の呼吸器部位、皮膚部位、筋肉部位、腱部位、骨格部位、関節部位、もしくは靭帯部位の炎症や損傷(injury)を緩和(relieve)するための医薬組成物または健康補助剤を調製するための使用である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1図1は、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の製造プロセスのフローチャートを示す。
図2A図2Aは、異なる活性化(activation)方法が成長因子の放出倍数に及ぼす影響の棒グラフ図を示す。
図2B図2Bは、異なる凍結解凍プロセスが成長因子の放出倍数に及ぼす影響の棒グラフを示す。
図3A図3Aは、成長因子を豊富に含む乾燥粉末が人間の皮膚線維芽細胞の増殖に及ぼす影響の棒グラフを示す。
図3B図3Bは、成長因子を豊富に含む乾燥粉末が人間の皮膚線維芽細胞の炎症を和らげる効果の棒グラフを示す。
図4図4は、異なる種類の成長因子を豊富に含む乾燥粉末溶液が人間の皮膚線維芽細胞の炎症を和らげる効果の棒グラフを示す。
図5図5は、凍結乾燥(freeze-drying)プロセスが製品の抗炎症効果に及ぼす影響の棒グラフを示す。
図6図6は、製造プロセス中の血小板濃度が成長因子の総量に及ぼす影響の棒グラフを示す。
【実施例0052】
以下は、本発明の実施形態、ならびに本発明の技術および特徴について詳細に説明する。しかしながら、本実施例は本発明を制限するものではなく、この技術に熟知している者は、本発明の精神と範囲を超えない範囲内での様々な変更や改善は、本発明の特許範囲に含まれる。
【0053】
本発明において、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)は、血小板関連の成長因子(platelet-related growth factors)が豊富に含まれる乾燥粉末を指す。例えば、血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor、PDGF)が豊富に含まれる乾燥粉末、血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor、VEGF)が豊富に含まれる乾燥粉末、表皮成長因子(Epidermal Growth Factor、EGF)が豊富に含まれる乾燥粉末、線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor、FGF)が豊富に含まれる乾燥粉末、または変換成長因子ベータ1(Transforming Growth Factor Beta 1、TGF-β1)が豊富に含まれる乾燥粉末、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0054】
本発明において、「血小板関連の成長因子が豊富に含まれた」乾燥粉末(“enriched platelet-related growth factors”dry powder)は、その分離源液よりも高濃度の血小板関連の成長因子を有する。
【0055】
本発明において、成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)は、血小板関連の成長因子(platelet-related growth factors)が豊富に含まれる溶液を指す。例えば、血小板由来成長因子(Platelet-Derived Growth Factor、PDGF)が豊富に含まれる溶液、血管内皮成長因子(Vascular Endothelial Growth Factor、VEGF)が豊富に含まれる溶液、表皮成長因子(Epidermal Growth Factor、EGF)が豊富に含まれる溶液、線維芽細胞成長因子(Fibroblast Growth Factor、FGF)が豊富に含まれる溶液、または変換成長因子ベータ1(Transforming Growth Factor Beta 1、TGF-β1)が豊富に含まれる溶液、またはそれらの任意の組み合わせが含まれる。
【0056】
本発明において、「血小板関連の成長因子が豊富に含まれた」溶液(“enriched platelet-related growth factors”solution)は、その分離源液よりも高濃度の血小板関連の成長因子を有する。
【0057】
本発明において、「1ユニット(unit)」の血小板溶液は、血小板を含む溶液を含む容器の任意の大きさを指す。例えば、血小板を含む溶液を含む袋の容量が250mLである場合、50mLの遠心管に含まれる血小板を含む液体の容量が50mLである場合、または1mLの容器に含まれる血小板を含む液体の容量が1mLである場合があります。
【0058】
本発明において、超純化血小板溶液(ultra-pure platelet solution)は、血小板を含む溶液を純化した、より高純度の血小板溶液を指す。
【0059】
本発明において、血小板関連の構造物(platelet-associated structure)は、血小板、血小板破片、または血小板間凝集によって形成される血小板構造物、またはそれらの任意の組み合わせを指す。
【0060】
本発明において、沈降プロセス(sedimentation process)は、物質を沈降させ集積させるプロセスを指す。例えば、重力、遠心力、または電磁力を利用して物質を沈降させ集積させるプロセスである。
【0061】
本発明において、「健康組成物」または「健康補助剤」は、栄養補助食品、個体の組織を正常な生理機能を維持するよう促進するために個体に投与される組成物、または個体の症状(symptom)を緩和するために個体に投与される組成物を指す。
【0062】
図1を参照し、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を製造する過程は以下の手順を含む:
(S11) 血小板溶液を1ユニット(unit)取り、血小板を純化するプロセスを実行(process purifying platelets)して、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得る;
(S12) 活性化(activation)プロセスを実行して、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の血小板を活性化(activation)し、成長因子を放出させ、血小板増殖因子抽出液(platelet growth factor extract solution)を得る;
(S13) 血小板関連構造体(platelet-associated structure)を除去するプロセスを実行して、生長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を得る;および
(S14) 生長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を凍結乾燥処理(freeze-drying)し、生長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)を得る。
【0063】
一部の実施例において、血小板を含む溶液は全血(whole blood)、血漿交換術による血小板(apheresis platelet)、白血球除去血漿交換術による血小板(leukocytes-reduced platelets apheresis)、または血小板リッチプラズマ(Platelet-Rich Plasma, PRP)、またはその任意の組み合わせである。一部の実施例において、血小板を含む溶液は自己の血液検体(Autologous blood sample)または異種の検体(allogeneic blood sample)、またはその組み合わせから得る。
【0064】
一部の実施例において、ステップ(S11)にはサブステップが含まれる:
(S111) 血小板を含む溶液の1ユニット(unit)を取る;および
(S112) 少なくとも1回の沈殿プロセス(sedimentation process)を実行し、血小板層(第一血小板層など)と白血球層を含む複数の層に分離する。白血球層を除去して、白血球数が1mLあたり10個未満の純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得る。もしく、少なくとも1回の沈殿プロセス(sedimentation process)を実行し、血小板層(第二血小板層など)と血漿・血漿蛋白層を含む複数の層に分離する。血漿・血漿蛋白層を除去して、アルブミン濃度が3g/dL以下であるか、グロブリン濃度が2g/dL以下であるか、フィブリノーゲン濃度が100μg/mL以下になるような純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得る。
【0065】
一部の実施例において、ステップ(S112)にはサブステップが含まれる:
(S1121) 第一次沈降プロセス(sedimentation process)を実行し、血小板を含む溶液を第一血小板層(例えば血漿層(Plasma layer))と白血球層(例えば血沈棕色層(Buffy coat layer))および赤血球層(Red blood cells layer)に分離し、
(S1122) 血沈棕色層(Buffy coat layer)および赤血球層( Red blood cells layer )を除去し、血漿層溶液(Plasma layersolution)を得る;
(S1123) 第二次沈降プロセス(sedimentation process)を実行し、血小板を沈降させ、沈殿物(pellet)を形成する。この沈殿物は第二血小板層であり、上澄液は血漿および血漿蛋白層である;および
(S1124) 上澄液を除去し、沈殿物を溶媒と混合して、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得る。
【0066】
一部の実施例において、溶媒は無菌の生理食塩水、注射用水、45%NaCl、4.5%高張ソルト水、無菌温泉水、または等張ソルト水、またはその任意の組み合わせである。一部の実施例において、純粋血小板溶液の血小板濃度は1×10/mL~10×10/mLである。
【0067】
一部の実施例において、ステップ(S12)の破砕プロセスは、凍結後に解凍するプロセス(freezing and then thawing)、カルシウムイオンの添加(addition of Ca2+)プロセス、トロンビンの添加(addition of thrombin)プロセス、コラーゲンの添加(addition of collagen)プロセス、またはアデノシン二リン酸の添加(addition of ADP)プロセス、またはその任意の組み合わせである。
【0068】
一部の実施例において、ステップ(S12)の活性化(activation)プロセスは凍結後に解凍する(freezing and then thawing)プロセス(すなわち凍結融解プロセス(freeze-thaw procedure))であり、ステップ(S12)には以下のサブステップが含まれる。
【0069】
(S121) 純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を含む容器を液体窒素(liquid nitrogen)に置き、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を凍結する;および。
【0070】
(S122) 容器の温度を上げて、凍結した純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を解凍し、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の血小板を活性化(activation)させ成長因子を放出し、血小板成長因子抽出液(platelet growth factor extract solution)を得る。
【0071】
一部の実施例において、ステップ(S13)には以下のサブステップが含まれる。
【0072】
(S131) 沈降プロセス(sedimentation process)を実行し、血小板関連構造物(platelet-associated structure)が沈降して血小板関連構造物ペレット(platelet-associated structure pellet)を形成する;および
(S132) 血小板関連構造物ペレット(platelet-associated structure pellet)を除去し、成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)を得る。
【0073】
一部の実施例において、ステップ(S14)の凍結乾燥プロセスには、温度を-30℃以下に調整し、圧力を100 mTorr以下に調整することが含まれる。一部の実施例において、ステップ(S14)の凍結乾燥プロセスには、温度を-35℃以下に調整し、圧力を80 mTorr以下に調整することが含まれる。
【0074】
実験1:成長因子を豊富に含む乾燥パウダー(growth factor enriched dry powder)の製造と成長因子濃度分析
実験1-1:成長因子を豊富に含む乾燥パウダー(growth factor enriched dry powder)の製造
本実験は以下のステップ(S11’)~(S14’)に従って、成長因子を豊富に含む乾燥パウダー(growth factor enriched dry powder)を製造した。
【0075】
(S11’) 純粋血小板溶液を調製する手順は、以下のサブステップが含まれる:
(S111’) 250 mLのヒト全血(Whole Blood)を抗凝血剤が含まれた血袋に入れる;
(S112’) 血小板の精製工程(process purifying platelets)を実行する。この工程には、以下のサブステップが含まれる:
(S1121’) 遠心分離機を使用し、ヒト全血を遠心分離し(500~1,200g、5~8分間;これは一回目の遠心分離)、ヒト全血が上から順に血漿層(Plasma layer)、バッファー層(Buffy coat layer、白血球はこの層に分布する)、赤血球層(Red blood cells layer)の三層に分かれる(参考文献3~6参照)。離心後の血球の分離状況は、一般的な知識を持つ技術分野の人々によく知られていて、かつ一回目の遠心分離条件は、300~1,500g、3~10分間に拡大しうる。遠心分離後、血小板(platelet)は血漿層(Plasma layer)に分布し、バッファー層(Buffy coat layer)の近くに位置する。
(S1122’) 無菌操作により、血漿層(Plasma layer)を取り出し、白血球と赤血球を完全に除去し、これを高濃度血小板血漿(Platelet-Rich Plasma, PRP)と呼ぶ。本発明では、血漿層溶液(Plasma layer solution)とも呼ぶ;
(S1123’) 自動血球分析器(モデルXP-300、ブランドSYSMEX)を使用して、血漿層溶液(Plasma layer solution)中の血小板(platelet)の総数を測定する。遠心分離機を使用して、血漿層溶液を再度遠心分離する(1,000~2,500、5分間;これは二回目の遠心分離)。これにより、血小板が沈殿物(pellet)を形成し、沈殿物が血小板層となる。上清液は血漿層と血漿蛋白層である。二回目遠心分離の条件は500~3,000g、5~20分間に拡大可能であり、上述の一回目遠心分離(300~1,500g、3~10分間)で使用された実際の離心速度よりも高速である必要がある;
(S1124’) 上清液を完全に除去することで血漿(plasma)および血漿(plasma)中のタンパク質を完全に除去し、注射用水(Water for Injection)を使用して血小板層中の血小板を懸濁させる(血小板濃度が1×10/mになるように、10~20 mLにする)ことで、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を得る。
【0076】
(S12’) 活性化(activation)プロセスを実行し、次のサブステップを含む:
(S121’) 純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を入れた冷凍管に液体窒素(liquid nitrogen)を入れ、20~30分間静置し(冷凍時間は5~120分間に拡大しうる)。このため、この冷凍管には1×10個の血小板が含まれており、純粋血小板溶液中の血小板濃度は1×10/mLである。
(S122’) 冷凍された純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)を37℃の水浴槽で解凍し、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)中の血小板を活性化(activation)させ、成長因子を放出することで、血小板成長因子抽出液(platelet growth factor extract solution)を得る。
【0077】
(S13’) 血小板関連構造物(platelet-associated structure)を除去するプロセスを実行し、次のサブステップを含む:
(S131’) 血小板成長因子抽出液(platelet growth factor extract solution)を遠心分離機で遠心分離し(10,000~15,000g、5~10分間)、血小板関連構造物(platelet-associated structure)が血小板関連構造物沈殿物(platelet-associated structure pellet)として沈む。遠心条件は、8,000~20,000g、3~15分間に拡大しうる。
(S132’) 慎重に上清液を検体瓶に移し、血小板関連の構造物の沈殿物(platelet-associated structure pellet)を完全に取り除き、上清液が成長因子を豊富に含む溶液(growth factor enriched solution)である。検体瓶には、約1mLの成長因子を豊富に含む溶液が含まれており、この約1mLの成長因子を豊富に含む溶液には、1×10個の血小板によって放出された成長因子が含まれている。
【0078】
(S14’) 凍結乾燥プロセスを実行し、次のサブステップを含む:
(S141’) 予冷却(-30~-50℃、少なくとも5時間);
(S142’) 一次乾燥(温度はステップS141’の温度勾配から10℃まで上昇し、10~20時間、真空値は100mTorr以下);および
(S143’) 二次乾燥(20℃、3~5時間、真空値は100mTorr以下)。凍結乾燥後の乾燥物が成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)である。
【0079】
上記の製造プロセスから、成長因子が豊富な乾燥パウダーを製造するプロセスには、白血球(WBC)および血漿の除去ステップ、血小板の刺激ステップ(例えば凍結および解凍を介して)、血小板関連構造体(platelet-associated structure)の除去ステップ、および乾燥ステップ(例えば冷凍、極低温、または真空乾燥ステップ)が含まれていることがわかる。したがって、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)には、白血球 (WBC)、血漿、血小板が低濃度含むまたはまったく含まれていない。
【0080】
一部の実施例において、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)には、アルブミン(albumin)が低濃度含むまたはまったく含まれていない。
【0081】
一部の実施例において、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)には、グロブリン(globulin)が低濃度含むまたはまったく含まれていない。
【0082】
一部の実施例において、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)には、フィブリノーゲン(fibrinogen)が低濃度含むまたはまったく含まれていない。
【0083】
実験1-2:成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)の構成成分分析
精密電子天秤(モデルME204、メトラー社製)を使用して、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)3本の重量で測定した。成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)3本をそれぞれ1mLの生理食塩水と混合して、成長因子を豊富に含む乾燥粉末溶液(growth factor enriched dry power solution/suspension)を3本作成します。自動血球分析装置(モデルXP-300、SYSMEX社製)を使用して、各成長因子を豊富に含む乾燥粉末溶液(growth factor enriched dry power solution/suspension)の白血球(WBC)数を分析し、顕微鏡とカウント方式で成長因子を豊富に含む乾燥粉末溶液(growth factor enriched dry power solution/suspension)の血小板数を検出し、さらに酵素連結免疫吸着測定法(Enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)を使用して、成長因子が豊富な乾燥パウダー溶液中の各種成長因子(PDGF-BB、VEGF、EGF、FGF、TGF-β1を含む)の濃度を分析した。次に、成長因子を豊富に含む乾燥粉末溶液(growth factor enriched dry power solution/suspension)中の各種成長因子の濃度、白血球(WBC)の濃度、および血小板の数を用いて、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末溶液(growth factor enriched dry power solution/suspension)中の各種成長因子の重量、白血球(WBC)の数、および血小板の数を推定した。実験結果は表1に示される通り。
【0084】
【表1】
【0085】
表1から、成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)一本あたりの平均重量は0.0030gであり、1グラム(g)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中には、平均3,446,200pgのPDGF-BB、379,787.01pgのVEGF、253,430pgのEGF、4,515.05pgのFGF、および819,530pgのTGF-β1が含まれている。また、平均1ナノグラム(ng)あたりの成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder)中には、白血球(WBC)が未検出(もしく、約0~100個の白血球(WBC)を含む)または血小板が未検出(もしく、約0~1,000個の血小板(platelet)を含む)である。
【0086】
実験2:凍結解凍(活性化(activation)プロセス)が成長因子放出倍数に与える影響
実験1-1の手順(S11’)を実行して、純粋な血小板溶液を作成し、その純粋な血小板溶液中の血小板濃度は1×10/mLである。上述純粋な血小板溶液を冷蔵グループと凍結解凍グループに分ける。
【0087】
凍結解凍グループ:1mLの純粋な血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)~(S14’)を実行して、凍結解凍グループの乾燥粉末(すなわち、本発明の成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder))を作成した。
【0088】
冷蔵グループ:1mLの純粋な血小板溶液を取り、活性化プロセスの実験1-1の手順(S12’)を実行せず、すなわち、純粋な血小板溶液(ultra-pure platelet solution)が液体窒素(liquid nitrogen)に置かれて凍結解凍されなかった状態で、4℃に冷蔵された。その後、実験1-1の手順(S13’)および(S14’)を実行して、冷蔵グループの乾燥粉末を作成した。
【0089】
冷蔵グループ乾燥粉末と凍結解凍グループ乾燥粉末をそれぞれ1mLの注射用水(Water for injection)に混合して、冷蔵グループ乾燥粉末溶液および凍結解凍グループ乾燥粉末溶液を作成し、酵素連結免疫吸着法(Enzyme-linked immunosorbent assay, ELISA)を用いて各溶液中の成長因子濃度を分析し、以下の式を用いて各グループの成長因子放出倍数を計算した。
【0090】
凍結解凍グループの成長因子放出倍数=(凍結解凍グループ溶液の成長因子濃度×凍結解凍グループ溶液の体積)÷(冷蔵グループ溶液の成長因子濃度×冷蔵グループ溶液の体積)
冷蔵グループの成長因子放出倍数=(冷蔵グループ溶液の成長因子濃度×冷蔵グループ溶液の体積)÷(冷蔵グループ溶液の成長因子濃度×冷蔵グループ溶液の体積)
【0091】
【表2】
【0092】
表2の実験結果を参照。表2からは、凍結解凍グループ乾燥粉末溶液の成長因子総量が冷蔵グループ乾燥粉末溶液の成長因子総量の1.8~15倍であることがわかった。これにより、凍結後に再解凍する活性化(activation)プロセスによって成長因子放出量が1.8~15倍大幅に増加することがわかり、予期しない効果があると言える。
【0093】
実験3:成長因子放出の倍増に対する異なる活性化(activation)方法の影響
実験3-1:成長因子放出の倍増に対する異なる活性化(activation)方法の影響
実験1-1の手順(S11’)を実行して、血小板濃度が1×10/mLの純粋血小板溶液を調製した。次に、この純粋血小板溶液を対照群とカルシウムイオン群、コラーゲン群、アデノシン二リン酸(ADP)群、および-196℃(液体窒素)群の4つの実験群に分けた。
【0094】
対照群:1 mLの純粋血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを行わずに、実験1-1の手順(S13’)~(S14’)を実行して、活性化されていない成長因子粉末を調製し、1 mLの注射用水(Water for injection)と混合し、これを対照群溶液とした。
【0095】
-196℃(液体窒素)群:1 mLの純粋血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)~(S14’)を実行して、-196℃(液体窒素)群粉末(すなわち本発明の成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder))を調製し、1 mLの注射用水(Water for injection)と混合して、-196℃(液体窒素)群溶液を調製した。
【0096】
カルシウムイオン群:1 mLの純粋血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを行わずに、すなわち純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)が液体窒素(liquid nitrogen)で凍結解凍されていなく、塩化カルシウムと混合して、混合液中のカルシウムイオン濃度が4.54 mg/mLになるようにし、20~30分間静置する(活性化時間は5~120分間に拡張でき、静置時間は-196℃(液体窒素)群が手順(S121’)を実行したときと同じである)。次に、実験1-1の手順(S13’)および(S14’)を実行して、カルシウムイオン群粉末を調製し、1 mLの注射用水と混合して、カルシウムイオン群溶液を調製した。
【0097】
コラーゲン群:1 mLの純粋血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを行わずに、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)が液体窒素(liquid nitrogen)で凍結解凍されていなく、コラーゲン(C7661、Sigma-Aldrich製)と混合して、混合液中のコラーゲン濃度が25μg/mLになるようにし、20~30分間静置した(活性化時間は5~120分間に拡張でき、静置時間は-196℃(液体窒素)群が手順(S121’)を実行したときと同じである)。次に、実験1-1の手順(S13’)および(S14’)を実行して、コラーゲン群粉末を調製し、1 mLの注射用水と混合して、コラーゲン群溶液を調製した。
【0098】
アデノシン二リン酸(ADP)群:1 mLの純粋血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを行わずに、純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)が液体窒素(liquid nitrogen)で凍結解凍されていなくアデノシン二リン酸(ADP)と混合して、混合液中のアデノシン二リン酸(ADP)濃度が0.8mMになるようにし、20~30分間静置した(活性化時間は5~120分間に拡張でき、静置時間は-196℃(液体窒素)群が手順(S121’)を実行したときと同じである)。次に、実験1-1の手順(S13’)および(S14’)を実行して、アデノシン二リン酸(ADP)群粉末を調製し、1 mLの注射用水と混合して、アデノシン二リン酸(ADP)群溶液を調製した。
【0099】
酵素連結免疫吸着分析法(Enzyme-linked immunosorbent assay、ELISA)を使用して、各溶液中の成長因子濃度を分析し、以下の式を使用して各組の成長因子放出倍数を計算した。
【0100】
対照群の成長因子放出倍数 =(対照群溶液の成長因子濃度×対照群溶液の体積)÷(対照群溶液の成長因子濃度×対照群溶液の体積)。
【0101】
実験群の成長因子放出倍数 =(実験群溶液の成長因子濃度×実験群溶液の体積)÷(対照群溶液の成長因子濃度×対照群溶液の体積)。
【0102】
実験結果は表3および図2Aに示されたとおりである。
【0103】
【表3】
【0104】
図2Aを参照されたい。図2Aは異なる活性化(activation)方法が成長因子放出倍数に与える影響の棒グラフである。
【0105】
表3および図2Aの結果から、カルシウムイオン溶液、コラーゲン溶液、およびアデノシン二リン酸溶液の成長因子総量はそれぞれ対照溶液の成長因子総量の0.63倍、0.23倍、および0.19倍であり、これらの処理方法が成長因子総量を大幅に低下させることを示した。予期しなかったことは、-196℃(液体窒素)溶液の成長因子総量が対照溶液の成長因子総量の1.8倍であること。すなわち、-196℃(液体窒素)で凍結した後に再凍結解凍することで、カルシウムイオン溶液、コラーゲン溶液、およびアデノシン二リン酸溶液の成長因子放出量を2.9~9.5倍(1.8÷0.63≒2.9、1.8÷0.19≒9.5)に大幅に増加させることができるという予期しない効果がある。
【0106】
実験3-2:異なる凍結解凍プロセスが成長因子放出倍数に与える影響
実験1-1の手順(S11’)を実行して、血小板濃度が1×10/mLの純粋血小板溶液を作成した。次に、純粋血小板溶液を対照群と-20℃群、-30℃群、-40℃群、-80℃群、および-196℃(液体窒素)群の5つの実験群に分けた。
【0107】
対照群:1mLの純粋な血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを実行せずに、直接実験1-1の手順(S13’)~(S14’)を実行して活性化プロセスを行わずに成長因子乾燥粉末を作成し、1mLの注射用水(Water for injection)と混合し、これを対照群溶液とした。
【0108】
-196℃(液体窒素)群:1mLの純粋な血小板溶液を取り、手順1-1(S12’)~(S14’)を実行して-196℃(液体窒素)群乾燥粉末を作成した(すなわち、本発明における成長因子を豊富に含む乾燥粉末(growth factor enriched dry powder))。
【0109】
-20℃群:1mLの純粋な血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを実行せずに、すなわち純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)が液体窒素(liquid nitrogen)で凍結解凍されていなく、-20℃の冷凍庫に入れて冷凍解凍した。その後、実験1-1の手順(S13’)および(S14’)を実行して-20℃群乾燥粉末を作成した。
【0110】
-30℃群:1mLの純粋な血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを実行せずに、すなわち純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)が液体窒素(liquid nitrogen)で凍結解凍されていなく、-30℃の冷凍庫に入れて冷凍解凍した。その後、実験1-1の手順(S13’)および(S14’)を実行して-30℃群乾燥粉末を作成した。
【0111】
-40℃群:1mLの純粋な血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを実行せずに、すなわち純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)が液体窒素(liquid nitrogen)で凍結解凍されていなく、-40℃の冷凍庫に入れて冷凍解凍した。その後、実験1-1の手順(S13’)および(S14’)を実行して-40℃群乾燥粉末を作成した。
【0112】
-80℃群:1mLの純粋な血小板溶液を取り、実験1-1の手順(S12’)の活性化(activation)プロセスを実行せずに、すなわち純粋血小板溶液(ultra-pure platelet solution)が液体窒素(liquid nitrogen)で凍結解凍されていなく、-80℃の冷凍庫に入れて冷凍解凍した。その後、実験1-1の手順(S13’)および(S14’)を実行して-80℃群乾燥粉末を作成した。
【0113】
-20℃群乾燥粉末、-30℃群乾燥粉末、-40℃群乾燥粉末、-80℃群乾燥粉末、および-196℃(液体窒素)群乾燥粉末をそれぞれ1mLの注射用水(Water for injection)と混合し、各溶液中の成長因子濃度を酵素連結免疫吸着測定(Enzyme-linked immunosorbent assay, ELISA)法を用いて分析し、以下の式で各グループの成長因子放出倍数を計算した。
【0114】
対照組成長因子放出倍数=(対照組溶液中の成長因子濃度×対照組溶液の体積)÷(対照組溶液中の成長因子濃度×対照組溶液の体積)。
【0115】
実験組成長因子放出倍数=(実験組溶液中の成長因子濃度×実験組溶液の体積)÷(対照組溶液中の成長因子濃度×対照組溶液の体積)。
【0116】
実験結果は表4および図2Bに示され通りである。
【0117】
【表4】
【0118】
図2Bを参照されたい。図2Bは異なる冷凍解凍プロセスが成長因子放出倍数に及ぼす影響を示す棒グラフである。
【0119】
表4および図2Bの結果は、-20℃群溶液、-30℃群溶液、-40℃群溶液、および-80℃群溶液の成長因子総量がそれぞれ対照組溶液の成長因子総量の1.04倍、0.97倍、0.88倍、および1.02倍であることを示す。すなわち、-20℃から-80℃での凍結解凍によって得られた成長因子総量は未凍結解凍群(対照群)の1±0.12倍であり、-20℃から-80℃での凍結解凍プロセスでは成長因子総量を著しく増加させることができない。予期しなかったことに、-196℃(液体窒素)群の成長因子総量は対照組溶液の成長因子総量の1.8倍である。すなわち、-196℃(液体窒素)の冷凍後の活性化(activation)プロセスにより、成長因子放出量が1倍から大幅に1.8倍に増加することができ、予期しない効果を持つ。
【0120】
実験4:成長因子を豊富に含む乾燥粉末が組織修復と抗炎症効果に対する影響
実験4-1:成長因子を豊富に含む乾燥粉末が組織修復に対する影響
人間の皮膚線維芽細胞(human dermal fibroblast、HDF)(ScienCell Sesearch Laboratories, Inc. から購入、製品番号2320)を1%の人間血小板溶解液(Human platelet lysate、HPL)を含むイーグル最小限度必要培地(Dulbecco’s Modified Eagle medium、DMEM、Corning 10-013CV)中で培養後、新しい培地に交換した。上述皮膚線維芽細胞(HDF)は接着細胞(adherent cell)である。
【0121】
96ウェルプレートを未処理ウェル(対照群ウェル)および実験1-1で作製された成長因子を豊富に含む乾燥粉末ウェル(RD2201ウェル)に分割し、二重複をする。人間の皮膚線維芽細胞(HDF)を未処理ウェル(対照群ウェル)とRD2201ウェルにそれぞれ加え、各ウェルに同じ数の細胞を含ませ、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide,CO)の培養器で24時間培養した。
【0122】
古い培地(used medium)を取り除いた。実験1-2の成長因子を豊富に含む乾燥粉末1本(平均1本あたり0.0030グラム(g)の成長因子を豊富に含む乾燥粉末を含む)と1mLのDMEM培地液(1%HPL含有)と混合し、高濃度の混合液を得る。その後、高濃度の混合液をDMEM培地液(1%HPL含有)と混合し(高濃度の混合液とDMEM培地液の体積比は1:19)、成長因子を豊富に含む乾燥粉末培養液を調製した。成長因子を豊富に含む乾燥粉末培養液でRD2201ウェル中の細胞を懸濁させ、DMEM培地液(1%HPL含有)で未処理ウェル(対照群ウェル)中の細胞を懸濁させ、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide, CO)の培養器で24時間培養した。
【0123】
古い培地(used medium)を取り除く。各ウェルに、90μLのDMEMと10μlのCCK-8緩衝液(buffer)(DOJINDO、製品番号CK04)を加えた。37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide, CO)の培養器で3時間培養した。多機能マイクロプレート分光光度計(モデルVarioskan LUX、Thermo Scientific製)を用いて、吸光値を450nmに設定し分析した。CCK-8緩衝液(buffer)の製品説明書に従い、吸光値と細胞数の回帰曲線を作成し、吸光値を生存細胞数に換算した。
【0124】
平均値±SDでデータを表示し、T検定(T TEST)を使用して統計分析を行った。 「*」標記された群は未処理ウェル(対照群ウェル)と統計的に有意差(p <0.05)があることを示す。
【0125】
図3Aを参照されたい。図3Aは、本発明の成長因子を豊富に含む乾燥粉末が人間の皮膚線維芽細胞の増殖に及ぼす影響を示す棒グラフである。図3Aから、対照群ウェル中の細胞数が5,000であり、RD2201群ウェル中の細胞数が6,203であり、両者間に有意差(p <0.05)があった。したがって、成長因子を豊富に含む乾燥粉末は、皮膚線維芽細胞の増殖を促進し、皮膚組織修復を促進する。発明者は成長因子を豊富に含む乾燥粉末が、他の人間の組織の線維芽細胞の増殖を促進し、それにより当該他の組織の修復を促進することができると予測した。
【0126】
実験4-2:成長因子を豊富に含む乾燥粉末が炎症反応を緩和する影響
実験4-1と同じ人間の皮膚線維芽細胞(Human Dermal Fibroblast、HDF)を実験に用いた。人間の皮膚線維芽細胞を、2%の胎牛血清(Fetal Bovine Serum、FBS)を含むイーグル最小限度必要培地(Dulbecco’s Modified Eagle medium、DMEM、Corning 10-013CV)に培養し、その後新鮮な培地に交換した。
【0127】
96ウェルプレートを未処理ウェル(対照群ウェル)と成長因子を豊富に含む乾燥粉末ウェル(RD2201ウェル)に分け、それぞれ3回繰り返した。3回繰り返しの検体は、3つの異なる人間の全血からのものである。人間の皮膚線維芽細胞(HDF)を未処理ウェル(対照組ウェル)およびRD2201ウェルにそれぞれ加え、同じ細胞数を含むようにし、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide,CO)の培養器で24時間培養した。
【0128】
古い培地(used medium)を取り除く。実験1-2の成長因子を豊富に含む乾燥粉末1本(平均1本あたり0.0030グラム(g)の成長因子を豊富に含む乾燥粉末を含む)と1mLのDMEM培地液(2%HPL含有)と混合し、高濃度の混合液を得る。その後、高濃度の混合液をDMEM培地液(2%HPL含有)と混合し(高濃度の混合液とDMEM培地液の体積比は1:19)、成長因子を豊富に含む乾燥粉末培養液を調製した。成長因子を豊富に含む乾燥粉末培養液でRD2201ウェル中の細胞を懸濁させ、DMEM培地液(2%HPL含有)で未処理ウェル(対照群ウェル)中の細胞を懸濁させ、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide, CO)の培養器で24時間培養した。
【0129】
未処理ウェル(対照群ウェル)およびRD2201ウェルの細胞培地をそれぞれ微量遠心管に移し、インターロイキン(IL-6、炎症因子の1つ)ELISA試薬キット(Human IL-6 ELISA Kit)(製品番号ab178013、Abcam製)を使用して、細胞培地中の人間のインターロイキン(Human IL-6)濃度を測定した。多機能マイクロプレート分光光度計(モデルVarioskan LUX、ブランドThermo Scientific)を用いて、吸光値を450nmに設定し分析した。インターロイキン(IL-6)ELISA試薬キットの製品説明書に従って、吸光値と炎症因子IL-6濃度の回帰曲線を作成し、各群の炎症因子放出率を以下の式で計算した。
【0130】
対照群炎症因子放出率=(対照群炎症因子IL-6濃度÷対照群炎症因子IL-6濃度)×100%。
【0131】
RD2201群炎症因子放出率=(RD2201群炎症因子IL-6濃度÷対照群炎症因子IL-6濃度)×100%。
【0132】
平均値±SDでデータを表示し、T検定(T TEST)を使用して統計分析を行った。「*」標記された群は未処理ウェル(対照群ウェル)と統計的に有意差(p <0.05)があることを示す。
【0133】
【表5】
【0134】
表5および図3Bを参照されたい。図3Bは、本発明の成長因子を豊富に含む乾燥粉末が人間の皮膚線維芽細胞の炎症反応を緩和する影響を示す棒グラフである。表5および図3Bの結果から、対照群の平均炎症因子放出率は100%であり、RD2201群の平均炎症因子放出率は36.98%で、対照群と比較して有意差があり(p<0.05)、減少率は63%に達した。これにより、成長因子を豊富に含む乾燥粉末は人間の皮膚線維芽細胞の炎症反応を抑制し、皮膚の炎症を緩和することができることがわかった。発明者は、刺激物(例えばLPS)によって人間の他の組織の線維芽細胞の炎症反応を誘発した後、成長因子を豊富に含む乾燥粉末は誘発された炎症反応を緩和させ、その他の組織の炎症を緩和することができると予測した。
【0135】
実験5:異なる種類の成長因子を豊富に含む乾燥粉末が炎症反応を緩和する影響
実験4-2の手順に従って、必要な人間の皮膚線維芽細胞を準備した。96ウェルプレートを未処理ウェル(対照群のウェル)、成長因子を豊富に含む乾燥粉末のウェル(RD2201ウェル)、および血漿とRD2201の混合物のウェルに分け、それぞれ3回繰り返した。3回繰り返しの検体は、3つの異なる人間の全血からのものである。人間の皮膚線維芽細胞(HDF)を未処理ウェル(対照群ウェル)、RD2201ウェル、および血漿とRD2201の混合物のウェルにそれぞれ添加し、同じ細胞数を含むようにし、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide,CO)の培養器で24時間培養した。
【0136】
古い培地(used medium)を取り除く。血液検体を取り、実験1-1の手順で、同じ重量の2本の成長因子を豊富に含んだ乾燥粉末を得た。成長因子を豊富に含んだ乾燥粉末1本を1mLの血漿(plasma)(すなわち、S1123’の手順で得られる血漿と血漿タンパク質層の溶液)と混合して、成長因子を豊富に含んだ血漿溶液を作成した。もう1本の成長因子を豊富に含んだ乾燥粉末を1 mLのDMEM培地(2%FBS含有)と混合して、成長因子を豊富に含んだ培地を作成した。次に、各群で以下の手順を実行した。
【0137】
未処理ウェル(対照群ウェル):DMEM培地(2%FBS含有)を使用して未処理ウェル(対照群ウェル)の細胞を懸濁し、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide,CO)の培養器で24時間培養した。
【0138】
RD2201ウェル:成長因子を豊富に含んだ培地とDMEM培地(2%FBS含有)を混合し(成長因子を豊富に含んだ培地とDMEM培地の体積比は1:19)、成長因子を豊富に含んだ乾燥粉末培地(成長因子の乾燥粉末濃度は1.5×10-4 g/mL)を作成し、RD2201ウェルの細胞をその成長因子を豊富に含んだ乾燥粉末培地で懸濁し、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide,CO)の培養器で24時間培養した。
【0139】
血漿とRD2201の混合物のウェル:成長因子を豊富に含んだ血漿溶液とDMEM培地(2%FBS含有)を混合し(富含成長因子の血漿溶液とDMEM培地の体積比は1:19)、成長因子を豊富に含んだ乾燥粉末と血漿の培地を作成し(成長因子の乾燥粉末濃度は1.5×10-4 g/mL)、血漿とRD2201の混合物のウェルの細胞をその成長因子を豊富に含んだ乾燥粉末と血漿の培地で懸濁し、37℃、5%二酸化炭素(carbon dioxide,CO)の培養器で24時間培養した。
【0140】
未処理ウェル(対照群ウェル)、RD2201ウェル、および血漿とRD2201の混合物のウェルの細胞培養液をそれぞれ微量遠心管に移し、インターロイキン(IL-6、炎症因子の1種)ELISA試薬キット(Human IL-6 ELISA Kit)(製品番号ab178013、Abcam製)を使用して、細胞培養液中の人間IL-6濃度を測定します。次に、多機能マイクロプレートスペクトロメーター(モデルVarioskan LUX、Thermo Scientific製)を用いて分析し、吸光値を450nmに設定した。インターロイキン(IL-6)ELISA試薬キットの製品説明書に従って、吸光値と炎症因子IL-6濃度の回帰曲線を作成し、吸光値を炎症因子IL-6の濃度に変換し、各群の炎症因子放出率を以下の式で計算した。
【0141】
対照群の炎症因子放出率=(対照群の炎症因子IL-6濃度÷対照群の炎症因子IL-6濃度)×100%。
【0142】
RD2201群の炎症因子放出率=(RD2201群の炎症因子IL-6濃度÷対照群の炎症因子IL-6濃度)×100%。
【0143】
血漿とRD2201の混合物の炎症因子放出率=(血漿とRD2201の混合物の炎症因子IL-6濃度÷対照群の炎症因子IL-6濃度)×100%。
【0144】
平均値±SDでデータを表示し、T検定(T TEST)を使用して統計分析を行った。「+」標記された群は成長因子を豊富に含んだ乾燥粉末ウェル(RD2201)と統計的に有意差(p <0.05)があることを示す。「*」標記された群は未処理ウェル(対照群ウェル)と統計的に有意差(p <0.05)があることを示す。
【0145】
【表6】
【0146】
図4を参照されたい。図4は、異なる種類の成長因子を含む乾燥粉末溶液が人間の皮膚線維芽細胞の炎症を和らげる影響を示す棒グラフである。図4の結果は、対照群の平均炎症因子放出率は100%であり、RD2201群の平均炎症因子放出率は36.98%であり、血漿とRD2201の混合群の平均炎症因子放出率は494.46%であることを示した。RD2201群は、対照群と比較して、炎症因子放出率が有意に低下し(p <0.05)、低下率は63%に達した。一方、血漿とRD2201の混合群の炎症因子放出率は有意に上昇し(p <0.05)、上昇率は394%に達しました。RD2201群と比較して、血漿とRD2201の混合群の炎症因子放出率も有意に上昇し(p <0.05)、上昇率は457%に達しました。上記の実験から、血漿および血漿蛋白層を含む成長因子を豊富に含む乾燥粉末溶液は、人間の皮膚線維芽細胞の炎症を効果的に緩和することができず、炎症を大幅に悪化させてしまうことがわかった。したがって、本件において血漿および血漿蛋白を除去することは重要な技術的特徴であり、製品が炎症反応を大幅に緩和することができ、予期せぬ効果があることを示した。
【0147】
発明者は、刺激物(例えばLPS)を用いて他の人間組織の炎症反応を誘発し実験を行っても類似した結果、すなわち、本発明において血漿および血漿蛋白を除去することで、製品が誘発された炎症反応を大幅に緩和できることを予測した。
【0148】
実験6:凍結乾燥(freeze-drying)プロセスが製品の抗炎症効果に与える影響
実験4-2の手順に従って、人間の皮膚線維芽細胞を準備した。96ウェルプレートを未処理ウェル(対照群ウェル)、成長因子を豊富に含む乾燥粉末ウェル(RD2201ウェル)、成長因子を豊富に含む溶液ウェル(RD2201非凍結乾燥ウェル)に分け、それぞれ3回繰り返した。3回繰り返しの検体は、3つの異なる人間の全血からのものである。人間の皮膚線維芽細胞(HDF)を未処理ウェル(対照群ウェル)、RD2201ウェル、およびRD2201非凍結乾燥ウェルにそれぞれ加え、同じ細胞数を含むようにし、37℃、5%の二酸化炭素(carbon dioxide,CO)の培養器で24時間培養した。
【0149】
古い培地(used medium)を取り除く。実験1-1の手順(S11’)~(S13’)を実行して、成長因子を豊富に含む溶液を得た。次に、各群は、以下の手順をそれぞれ実行した。
【0150】
未処理ウェル(対照群ウェル):DMEM培地(2%FBS含有)を使用して、未処理ウェル(対照群ウェル)の細胞を懸濁し、37℃、5%の二酸化炭素(carbon dioxide, CO)の培養器で24時間培養した。
【0151】
RD2201ウェル:成長因子を豊富に含む溶液1mLを取り、実験1-1の手順(S14’)を実行して、成長因子を豊富に含む乾燥粉末を得た。その乾燥粉末を1mLの注射用水と混合して、成長因子を豊富に含む乾燥粉末溶液を調製した。その乾燥粉末溶液をDMEM培地(2%FBS含有)と混合し、成長因子を豊富に含む乾燥粉末培地液(成長因子の乾燥粉末濃度は1.5×10-4 g/mL)を得た。その乾燥粉末培地液を使用して、RD2201ウェルの細胞を懸濁し、37℃、5%の二酸化炭素(carbon dioxide,CO)の培養器で24時間培養した。
【0152】
RD2201非凍結乾燥ウェル:成長因子を豊富に含む溶液1mLとDMEM培地(2%FBS含有)を混合し、成長因子を豊富に含む混合液(成長因子の乾燥粉末濃度は1.5×10-4 g/mL)を得た。その混合液を使用して、RD2201非凍結乾燥ウェルの細胞を懸濁し、37℃、5%の二酸化炭素(carbon dioxide, CO)の培養箱で24時間培養した。
【0153】
未処理ウェル(対照群ウェル)、RD2201ウェル、およびRD2201非凍結乾燥ウェルの細胞培養液をそれぞれ微量遠心管に移し、インターロイキン(IL-6、炎症因子の一種)ELISAキット(Human IL-6 ELISA Kit)(製品番号ab178013、Abcam製)を使用して、細胞培養液中の人間IL-6濃度を測定した。多機能マイクロプレート分光光度計(モデルVarioskan LUX、Thermo Scientific製)を使用して分析を行い、吸光値を450nmに設定した。インターロイキン(IL-6)ELISAキットの製品説明書に従って、吸光値と炎症因子IL-6濃度の回帰曲線を作成し、吸光値をIL-6濃度に変換して、各群の炎症因子放出率を以下の式で計算した。
【0154】
対照群炎症因子放出率=(対照群炎症因子IL-6濃度÷対照群炎症因子IL-6濃度)×100%。
【0155】
RD2201群炎症因子放出率=(RD2201群炎症因子IL-6濃度÷対照群炎症因子IL-6濃度)×100%。
【0156】
RD2201非凍結乾燥群炎症因子放出率=(RD2201非凍結乾燥群炎症因子IL-6濃度÷対照群炎症因子IL-6濃度)×100%
平均値±SDでデータを表示し、T検定(T TEST)を使用して統計分析を行った。「*」標記された群は未処理ウェル(対照群ウェル)と統計的に有意差(p <0.05)があることを示す。
【0157】
【表7】
【0158】
表7および図5を参照されたい。図5は凍結乾燥(freeze-drying)プロセスが製品の抗炎症効果に及ぼす影響の棒グラフである。図5の実験結果は、対照群の平均発炎因子放出率が100%であるのに対し、RD2201群の平均発炎因子放出率が36.98%、RD2201非凍結乾燥群の平均発炎因子放出率が75.69%であることを示した。対照群と比較して、RD2201群の発炎因子放出率は有意に低下し(p <0.05)、低下率は63%に達した。一方、対照群と比較して、RD2201非凍結乾燥群の発炎因子放出率は有意に低下していない(p> 0.05)。上述の実験から、RD2201非凍結乾燥群では人間の皮膚線維芽細胞の炎症を有効に緩和できないことがわかった。したがって、RD2201非凍結乾燥群は人間の皮膚線維芽細胞の炎症を効果的に緩和することができないため、本発明において凍結乾燥ステップは重要な技術特徴であり、製品が炎症反応を大幅に緩和することができ、予期しない効果を持つ。
【0159】
発明者は、刺激物(例えばLPS)を用いて他の人間組織の炎症反応を誘発し実験を行っても類似した結果、すなわち、本発明の凍結乾燥ステップは、製品が誘発された炎症反応を大幅に緩和し、組織の炎症を緩和することができると予測した。
【0160】
実験7:製剤手順中血小板濃度が成長因子総量に与える影響
本実験は、血小板濃度に基づいてグループ分けし、低濃度群、中濃度群、高濃度群に分けた。実験1-1の手順(S11’)に従って、純血小板溶液を調製し、その純血小板溶液中の血小板濃度は1×10/mLである。次に、以下の手順に従って各群の乾燥粉末を調製した。
【0161】
高濃度群:10mLの純血小板溶液を取り、遠心分離機を使用して純血小板溶液を遠心分離(1,000~2,500、5分)、血小板が沈降して沈殿物(pellet)を形成させた。上清液を除去し、1mLの注射用水を加え、高濃度群の純血小板溶液(血小板濃度は10×10/mL)を得た。次に、実験1-1の手順(S12’)~(S14’)に従って、高濃度群の乾燥粉末を調製した。
【0162】
中濃度群:10mLの純血小板溶液を取り、遠心分離機を使用して純血小板溶液を遠心分離(1,000~2,500、5分)、血小板が沈降して沈殿物(pellet)を形成させた。上清液を除去し、2mLの注射用水を加え、中濃度群の純血小板溶液(血小板濃度は5×10/mL)を得た。次に、実験1-1の手順(S12’)~(S14’)に従って、中濃度群の乾燥粉末を調製した。
【0163】
低濃度群:10mLの純血小板溶液を取り、遠心分離機を使用して純血小板溶液を遠心分離(1,000~2,500、5分)、血小板が沈降して沈殿物(pellet)を形成させた。上清液を除去し、3mLの注射用水を加え、中濃度群の純血小板溶液(血小板濃度は3.3×10/mL)を得た。次に、実験1-1の手順(S12’)~(S14’)に従って、中濃度群の乾燥粉末を調製した。
【0164】
高濃度群の溶液、中濃度群の溶液、および低濃度群の溶液を、それぞれ1、2、および3mLの注射用水と混合し、高濃度群溶液、中濃度群溶液、および低濃度群溶液を得た。次に、酵素連結免疫吸着分析法(Enzyme-linked immunosorbent assay, ELISA)を使用して、3つの群の成長因子濃度を分析し、以下の式を使用して各群の成長因子放出総量を計算した。
高濃度群の成長因子放出総量=高濃度群溶液中の成長因子濃度×高濃度群溶液の体積
中濃度群の成長因子放出総量=中濃度群溶液中の成長因子濃度×中濃度群溶液の体積
低濃度群の成長因子放出総量=低濃度群溶液中の成長因子濃度×低濃度群溶液の体積
【0165】
【表8】
【0166】
図6を参照されたい。図6は、製剤手順中血小板濃度が成長因子総量に与える影響の棒グラフである。図6の結果から、純血小板溶液中の血小板濃度が3.3×10/mLの場合、成長因子放出総量は109.5ngであり、純血小板溶液中の血小板濃度が5×10/mLの場合、成長因子放出総量は126.3ngであり、純血小板溶液中の血小板濃度が10×10/mLの場合、成長因子放出総量は264ngであることがわかった。図6から、純血小板溶液中の血小板濃度が5×10/mL~10×10/mLの場合、成長因子の放出総量が有意に増加し、上昇率が15%~141%に達し、予期せぬ効果があることがわかった。
【0167】
上記は本発明の好ましい実施形態にすぎず、本発明の特許範囲を限定するものではない。したがって、本発明が開示された精神から逸脱しないその他のすべての変更または修正は、本件の特許範囲に含まれるものとすべきである。
【0168】
【表9】
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5
図6
【外国語明細書】