(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184435
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】電気式スタビライザ
(51)【国際特許分類】
B63B 39/02 20060101AFI20231221BHJP
H02K 41/03 20060101ALI20231221BHJP
B63B 35/34 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
B63B39/02
H02K41/03 A
B63B35/34 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023066857
(22)【出願日】2023-04-17
(31)【優先権主張番号】22275081.2
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】513132966
【氏名又は名称】ジーイー エナジー パワー コンバージョン テクノロジー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】GE Energy Power Conversion Technology Ltd.
【住所又は居所原語表記】Boughton Road,Rugby,Warwickshire CV21 1BU,United Kingdom
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(72)【発明者】
【氏名】リオネル・デュランテイ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・グローセラン
(72)【発明者】
【氏名】アルフレッド・パーミュイ
(72)【発明者】
【氏名】ケヴィン・シュミサー
【テーマコード(参考)】
5H641
【Fターム(参考)】
5H641BB06
5H641GG02
5H641GG07
5H641GG12
5H641HH03
5H641JA07
5H641JA09
(57)【要約】 (修正有)
【課題】浮体構造を安定化するための電気式スタビライザを提供する。
【解決手段】電気式スタビライザ1は、可動子6を案内するためのトラック2を含み、DCリニアモータ8は、トラックに沿って延在する平坦なステータ10と、スタビライザマスとしてトラックに沿って前後に移動するように適合された可動子とを含み、平坦なステータは、複数の相巻線を画定するように接続された複数の巻線コイル14を有する多相ステータ巻線16を含み、可動子は、トラック方向に沿って交互極性(N極およびS極)の複数の可動子極を画定する多相ステータ巻線に面する複数の永久モータ磁石40を含み、2つのアクティブ磁気軸受44、48は、可動子を選択的に浮上させるために、トラックと可動子の本体32の間に配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮体構造を安定化するための電気式スタビライザ(1)であって、
トラック方向に沿って移動するスタビライザマスをガイドするトラック(2)と、
前記トラック(2)に沿って延在する平坦なステータ(10)と、スタビライザマスとして前記トラック(2)に沿って前後に移動するように適合された可動子(6)とを備える直流DCリニアモータ(8)であって、前記平坦なステータ(10)は多相ステータ巻線(16)を備え、前記可動子(6)は、前記トラック方向に沿って交互極性の複数の可動子極を画定する前記多相ステータ巻線(16)に面する複数の永久モータ磁石(40)を備える、前記直流DCリニアモータ(8)と、
前記可動子(6)を選択的に浮上させるための少なくとも1つのアクティブ磁気軸受(44、48)と、
を備える、電気式スタビライザ(1)。
【請求項2】
前記トラックは、前記可動子(6)が配置されるチャネル(4)を画定するベース(2a)と一対の対向する側面(2b、2c)とを有し、前記可動子(6)の両側は、前記可動子が前記トラック(2)に沿って前後に移動するときに前記可動子(6)をガイドして配置するために前記トラック(2)の前記対向する側面(2b、2c)に接触するように適合される1つ以上のガイド部材(34)をさらに備える、請求項1に記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項3】
前記DCリニアモータが1つ以上の追加の平坦なステータをさらに備え、各平坦なステータが多相ステータ巻線を備え、前記可動子が、前記トラック方向に沿って交互の極性の追加の複数の可動子極を画定する1つ以上の追加の複数の永久モータ磁石をさらに備え、各追加の複数の永久モータ磁石がそれぞれの多相ステータ巻線に面する、請求項1または2に記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項4】
各多相ステータ巻線(16)は、複数の相巻線(18a、18b、...、18f)を備え、各相巻線(18a、18b、...、18f)は、多相ステータ巻線(16)の相を画定し、それぞれの平坦なステータ(10)の巻線スロット(12)内に受容される1つ以上の巻線コイル(14)を備える、請求項1乃至3のいずれかに記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項5】
前記可動子(6)が、前記永久モータ磁石(40)を取り付けるための1つ以上のモータマウント(42)をさらに備え、各モータマウント(42)が、好ましくは、前記永久モータ磁石(40)が取り付けられる取り付け面を有する平面的な取り付け構造を画定するように前記可動子(6)の横軸(38)に沿って積み重ねられ、電気絶縁層によって分離された透磁性材料の複数の薄いシートまたは積層体を備える、請求項1乃至4のいずれかに記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項6】
各平坦なステータ(10)が、
前記可動子(6)の下方で、前記可動子(6)の下方に設けられた前記複数の永久モータ磁石(40)に対抗する位置、
前記可動子(6)の上方で、前記可動子(6)の上方に設けられた前記複数の永久モータ磁石(40)に対抗する位置、
前記可動子(6)の側方で、前記可動子(6)の側方に設けられた前記複数の永久モータ磁石(40)に対抗する位置、
のいずれかに配置される、請求項1乃至5のいずれかに記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項7】
各アクティブ磁気軸受(44、48)は、複数の電磁石(46a、46bおよび50a、50b)のペアと、各電磁石に対向し、前記可動子(6)の下部に形成された複数の永久軸受磁石(52a、52bおよび54a、54b)とを備える、請求項1乃至6のいずれかに記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項8】
前記可動子(6)の前記下部は、前記可動子(6)の前記長手方向軸(36)に沿って延びる第1の極性の第1の軸受磁極を画定する第1の複数の永久軸受磁石(52a、54a)と、前記可動子(6)の前記長手方向軸(36)に沿って延びる第2の反対の極性の第2の軸受磁極を画定する第2の複数の永久軸受磁石(52b、54b)とをさらに備え、前記第1および第2の複数の永久軸受磁石(52a、52bおよび54a、54b)は、前記可動子(6)の横軸(38)に沿って並んで配置され、任意選択で離間され、前記第1の複数の永久軸受磁石(52a、54a)は、前記一対の電磁石(46a、48a)の一方に対向して配置され、前記第2の複数の永久軸受磁石(52b、54b)は、前記一対の電磁石(46b、48b)の他方に対向して配置される、請求項7に記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項9】
前記可動子(6)は、前記永久軸受磁石(52a、52bおよび54a、54b)を取り付けるための1つ以上の軸受マウント(56、58)をさらに備え、各軸受マウント(56、58)は、好ましくは、前記永久軸受磁石(52a、52bおよび54a、54b)が取り付けられる取り付け面を有する平面的な取り付け構造を画定するように前記可動子の長手方向軸に沿って積み重ねられた、電気絶縁層によって分離された透磁性材料の複数の薄いシートまたは積層体を備える、請求項7または8に記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項10】
前記可動子(6)は、前記可動子(6)が前記少なくとも1つのアクティブ磁気軸受(44、48)によって浮上していないときに前記トラック(2)に接触するように適合されている1つ以上の非磁性脚部(62)をさらに備える、請求項1乃至9のいずれかに記載の電気式スタビライザ。
【請求項11】
各非磁性脚部(62)が、可動子(6)の下部に形成された下方に延びる突出部として形成される、請求項10に記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項12】
前記可動子(64)は、好ましくは前記可動子(64)が関節式構造を有するように互いに接続された複数の個々のモジュール又はユニット(66a、66b、...、66d)から形成されている、請求項1乃至11のいずれかに記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項13】
各モジュールまたはユニット(66a、66b)は、それぞれが特定の極性を有する1つ以上の可動子極を画定する1つ以上の永久モータ磁石(72、74)を備え、個々のモジュールまたはユニット(66a、66b、...、66d)は、トラック方向に沿って交互の極性の可動子極を画定するように互いに接続される、請求項12に記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項14】
前記可動子(64)は、複数の接続ロッド(78,100)をさらに備え、各接続ロッド(78,100)は、隣接するモジュールまたはユニットのペアに回動可能に接続され、各接続ロッド(78,100)の長さは好ましくは、隣接するモジュールまたはユニットのペア(66a、66b、...、66d)間の横方向間隔を調整するように調整可能である、請求項12または請求項13に記載の電気式スタビライザ(1)。
【請求項15】
電気式スタビライザ(1)を使用して浮体構造を安定化させる方法であって、
前記電気式スタビライザ(1)は、
トラック(2)と、
前記トラック(2)に沿って延在する平坦なステータ(10)と可動子(6)とを備えるDCリニアモータ(8)と、
少なくとも1つのアクティブ磁気軸受(44、48)とを含み、
前記方法は、
前記少なくとも1つのアクティブ磁気軸受(44、48)を使用して前記可動子(6)を浮上させるステップと、
前記可動子(6)をスタビライザマスとして前記トラック(2)に沿って前後に移動させるように前記DCリニアモータ(8)を制御するステップと、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気式スタビライザ(electric stabilisers:電気安定器)に関し、特に、浮体構造(floating structure)を安定化するための電気式スタビライザに関する。
【0002】
「浮体構造:floating structure」という用語は、とりわけ、民間または軍用の船舶、浮体式プラットフォームまたは石油貯蔵施設、および洋上風力タービン(inter alia civilian or military marine vessels, floating platforms or oil storage facilities, and off-shore wind turbines)など、浮体式であり、使用時に安定化を必要とする任意の構造物を包含することが意図される。
【背景技術】
【0003】
海洋船舶(marine vessels)などの浮体構造において、スタビライザは、荒海におけるピッチおよび/またはロールを低減し、燃料消費を低減しながら速度を維持するのを助けるために使用することができる。(本明細書で使用される場合、「ピッチ:pitch」は、船舶の船首および船尾の上下運動、またはその横軸もしくは左舷-右舷軸の周りの回転を指し、「ロール:roll」は、船舶の左右運動、またはその長手方向軸もしくは船首-船尾軸の周りの回転を指す。より一般的な用語において、「ピッチ」及び「ロール」は、浮体構造の任意の2つの垂直軸の周りの回転を指すことができる。)
【0004】
船舶および他の浮体構造のための既知のスタビライザは、受動および能動バラスト、受動ビルジキール、能動フィン、能動ジャイロスコープ、任意選択で電気ダンパを含む機械的リニアシステム、および可動質量システム(passive and active ballasts, passive bilge keels, active fins, active gyroscopes, mechanical linear systems, optionally including electric dampers, and moving mass systems)を含む。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、浮体構造を安定化するために使用することができる「全電気式:all-electric」スタビライザを提供する。電気式スタビライザは、
トラック方向に沿って移動するスタビライザマスを案内するためのトラックと、
トラックに沿って(すなわち、トラック方向に)延在する平坦なステータ(planar stator)と、スタビライザマス(stabiliser mass)としてトラックに沿って前後に移動するように適合された可動子(mover:ムーバ)とを備える直流(DC)リニアモータであって、ステータが多相ステータ巻線(polyphase stator winding)を備え、可動子が、トラック方向に沿って交互極性(すなわち、N極性およびS極性)の複数の可動子極(plurality of mover poles of alternating polarity)を画定する、多相ステータ巻線に面する複数の永久モータ磁石を備える、直流(DC)リニアモータと、
可動子を選択的に浮上させるための少なくとも1つのアクティブ磁気軸受(active magnetic bearing)とを含む。
【0006】
トラックは、実質的にU字形状とすることができ、基部と、可動子が配置されるチャネルを画定する一対の対向する側部とを有することができる。トラックのための適切な材料は、例えば、鋼、鋳鉄、電気鋼ラミネーション(steel, cast iron, electrical steel laminations)を含み得る。可動子の両側は、可動子がトラックに沿って前後に移動するときに可動子をガイド(案内)して配置するためにトラックの対向する側に接触するように適合される1つ以上のガイド部材(guide members、例えば、複数のパッドまたはローラ:pads or rollers)をさらに備えることができる。
【0007】
動作要件(operational requirements)に応じて、実際の構成では、トラックは、約1m~約20mの幅および約5m~約100mの長さを有することができる。トラックの側面は、約0.4m~約2mの高さを有することができる。
【0008】
DCリニアモータはさらに、1つ以上の追加の平坦なステータを備えることができ、各追加の平坦なステータは多相ステータ巻線を備える。可動子は、トラック方向に沿って交互の極性の追加の複数の可動子極を画定する1つ以上の追加の複数の永久モータ磁石をさらに備えることができる。各追加の複数の永久モータ磁石(additional plurality of permanent motor magnets)は、それぞれの多相ステータ巻線に面する。各平坦なステータおよび可動子上の対応する対向する複数の永久モータ磁石は、DCリニアモータの機能部分であると考えることができ、平坦なステータは、可動子をトラックに沿って前後に移動させるように一緒に動作および制御される。
【0009】
各平坦なステータは、トラック上に取り付けられるか、またはトラックの一部を形成することができる。各平坦なステータは、モジュール構造を有することができ、すなわち、トラックに沿って一緒に組み立てられ、任意の適切な手段によって一緒に接続された複数のモジュールまたはユニットから構成することができる。各平坦なステータは、それぞれの多相ステータ巻線の巻線コイルを受け入れるために、トラックに沿って(すなわち、トラック方向に)離間した複数の巻線スロット(plurality of winding slots)を備えることができる。巻線スロットは、各平坦なステータの透磁性部分に形成することができる。各平坦なステータは、渦電流損失を最小限に抑えるために、トラックを横切って横方向に積み重ねられた、電気絶縁層によって分離された複数の薄いシートまたは積層体(plurality of thin sheets or laminations, separated by electrically insulating layers, stacked across the track in a transverse direction)を備えることができる。1つの構成では、薄いシート又は積層体は、例えば、絶縁ワニス又は酸化物層の薄いコーティング(thin coating of insulating varnish or an oxide layer)によって互いに電気的に絶縁することができる。
【0010】
各多相ステータ巻線は、任意の適切な数の相巻線を有することができる。各相巻線は、多相ステータ巻線の相を画定し、巻線スロット内に受容される1つ以上の巻線コイルを備える。各相巻線の巻線コイルを相互接続するためのバスバーまたはケーブル(Busbars or cables)は、各平坦なステータに沿って延びることができる。巻線コイルは、例えば、単層または2層(または2層)コイル(single-layer or two-layer (or double-layer) coils)とすることができる。各巻線コイルは、一対の巻線ラン(pair of winding runs)を含む。各巻線コイルの巻線ランは、対応する一対の巻線スロットに受け入れられる。単層巻線コイルの場合、これは、平坦なステータ内の各巻線スロットが単一巻線コイルの巻線ランを受けることを意味する。2層巻線コイルの場合、これは、平坦なステータ内の各巻線スロットが、通常は互いの上に配置されている一対の巻線コイルの巻線を受け入れることを意味する。各平坦なステータがモジュール構造(modular construction)を有し、トラックに沿って一緒に組み立てられる複数のモジュールまたはユニットから形成される1つの構成では、特定の巻線コイルの巻線ランのうちの一方は、一方のモジュールまたはユニットの巻線スロット内に受容され、他方の巻線ランは、平坦なステータの隣接するモジュールまたはユニットの巻線スロット内に受容され得る。言い換えれば、巻線コイルのうちの1つ以上は、平坦なステータの隣接する2つのモジュールまたはユニットにまたがることができる。
【0011】
各多相ステータ巻線がn個の相巻線で正常に動作するように設計されている場合、ステータ巻線、およびその関連する電力変換器システムは、より少ない相巻線、たとえば(n-1)または(n-2)相巻線で安全に動作するように適合され得る。これは、相巻線のうちの1つ以上における故障の場合に、改善された冗長性を提供する。より詳細には、これは、欠陥のある相巻線を分離することができ、電気式スタビライザは、欠陥のある相巻線が修復されるまで、安全性および性能に著しい影響を及ぼすことなく動作し続けることができることを意味する。1つの構成では、それぞれの多相ステータ巻線は、6相巻線を含むことができ、故障状態の間、5相(またはこれ未満)の巻線で動作するように適合させることができる。しかし、各多相ステータ巻線は、設計および性能要件に応じて任意の適切な数の相巻線を有することができることが容易に理解されよう。
【0012】
可動子は、各多相ステータ巻線内の切り替えられたDC電流によって生成される磁場と可動子上の対向する複数の永久モータ磁石によって生成される磁場との相互作用によって生成される双方向線形駆動力(または「推力:thrust」)によって、トラックに沿って前方または後方に選択的に駆動され得る。リニアモータ内の切り替えられたDC電流は、適切なコントローラによって制御することができる。特に、コントローラは、典型的には平坦なステータのスロットピッチに対応する位置決め精度で、可動子をトラックに沿って前方又は後方に移動させるために、各多相ステータ巻線(すなわち、整流を制御することができる。)の相巻線への電力の供給を制御することができる。
【0013】
各多相ステータ巻線は、コントローラによって制御され得る適切な電力変換器システム(suitable power converter system)に電気的に接続され得る。
【0014】
一構成では、多相ステータ巻線の各相巻線は、電力変換器システムのそれぞれの変換器ユニット(respective converter unit)に接続することができる。変換器ユニットは、少なくとも1つの電源に並列に電気的に接続可能であり、任意選択的に、介在するスイッチまたはブレーカ(interposing switch or breaker)によって接続可能である。各変換器ユニットは、各相巻線の巻線コイルを相互接続するための上述のバスバーまたはケーブル(busbars or cables)のうちの1つに電気的に接続することができる。変換器ユニットを2つ以上の電源に電気的に接続することは、電源のうちの1つに障害が発生した場合に、改善された冗長性を提供する。各電源は、浮体構造、例えば船舶配電網(marine vessel power distribution network)のための電源の一部であってもよく、又は電気式スタビライザのための別個の電源であってもよい。任意の適切なトポロジーを有する任意の適切な変換器ユニットを使用することができる。1つの構成において、各変換器ユニットは、少なくとも1つのAC電源に接続可能なAC入力端子と、多相ステータ巻線のそれぞれの相巻線に接続されたDC出力端子とを有するAC/DCコンバータを備えることができる。別の構成において、各変換器ユニットは、少なくとも1つのDC電源に接続可能なDC入力端子と、多相ステータ巻線のそれぞれの相巻線に接続されたDC出力端子とを有するDC/DCコンバータを備えることができる。
【0015】
別の構成では、多相ステータ巻線の各相巻線(または各個々の巻線コイル)は、電力電子スイッチングモジュールに電気的に接続され、スイッチングモジュールのDC端子を介して隣接する相巻線(または巻線コイル)に接続され得る。スイッチングモジュールのグループは、複数の並列DC回路を画定するために、DC負荷端子間に直列に一緒に電気的に接続され得る。DC負荷端子は、少なくとも1つの電源に電気的に接続可能であり得る。各スイッチングモジュールは、DC入力端子およびAC出力端子を有するHブリッジ(H-bridge with DC input terminals and AC output terminals)を含むことができる。AC出力端子は、対応する相巻線(または個々の巻線コイル)の端子に接続され、複数のHブリッジのDC入力端子は、DC回路を画定するように共に直列に接続される。各Hブリッジは、従来の方法で配置される4つの半導体スイッチングデバイス(four semiconductor switching devices)を含むことができる。サイリスタおよびゲート制御によってオンおよびオフにすることができるデバイス(thyristors and devices that can be turned on and off by gate control)を含む、任意の適切な半導体スイッチングデバイスを使用することができる。ゲート駆動信号は、関連するコントローラから各スイッチングモジュールに提供され得る。スイッチングモジュールは、電力変換器システムを形成し、各相巻線(または巻線コイル)は、トラックに沿って可動子を前方または後方に移動させるために、そのスイッチングモジュールを通してDC負荷端子に選択的に接続され得る。スイッチングモジュールは、それぞれの巻線コイルに容易に接続することができる各平坦なステータの隣に取り付けることができる。
【0016】
可動子の本体(main body of the mover)は、浮体構造のための安定化質量として機能するのに十分な質量を有する材料のブロックを備えることができる。実際の構成では、本体の質量は、動作要件に応じて約100kg~約250メートルトンの範囲内であり得る。本体に適した材料は、例えば、鋼、鋳鉄、電気鋼積層体を含むことができる。
【0017】
可動子は、トラックに沿って(すなわち、トラック方向に)前後に移動する方向と実質的に整列する長手方向軸(longitudinal axis)を有する。長手方向軸は、例えば、可動子が円形トラックに沿って移動するように成形されている場合、直線または曲線であり得ることが容易に理解されるであろう。この場合、可動子の側面は、通常、湾曲している。可動子は、トラックを横切る方向と実質的に整列する横軸を有する。任意の所与の質量について、可動子の寸法は、電気式スタビライザを収容するために利用可能な容積のサイズによって決定することができる。例えば、電気式スタビライザの全高に制限がある場合、可動子の長さすなわち長手方向の寸法を大きくする必要がある。実際の構成では、可動子は、約1m~約50mの長さおよび約0.3m~約2mの高さを有することができる。実際の構成では、可動子は、トラックチャネル内に適合するように約1m~約20mの幅、すなわち横方向におけるその寸法を有することができる。
【0018】
可動子は、永久モータ磁石を取り付け又は固定するための1つ以上のマウント(「モータマウント:motor mounts」)を備えることができる。特に、可動子は、第1の平坦なステータに対向する複数の永久モータ磁石(permanent motor magnets)を取り付けるための第1のモータマウント、第2の平坦なステータに対向する複数の永久モータ磁石を取り付けるための第2のモータマウントなどを備えることができる。各モータマウントは、可動子の長手方向軸に沿って延びることができる。各モータマウントは、電気絶縁層によって分離され、渦電流損失を最小化するように積層された磁気透過性(magnetically permeable、好ましくは強磁性:ferromagnetic)材料の複数の薄いシートまたは積層体を備えることができ、永久モータ磁石が取り付けられるか、または任意の適切な手段によって固定される取り付け面を有する平面取り付け構造を画定する。各モータマウントは、平坦なステータに面する可動子の表面の凹部(recess in a surface)、例えば可動子の本体の上面、下面、または側面(upper, lower or side surface)に配置することができる。永久モータ磁石はまた、凹部内に配置され、取り付け面上に取り付けられ、任意選択的に可動子表面と実質的に同一平面上(substantially flush )にあることができる。
【0019】
可動子は、可動子の剛性を高めるための1つ以上の補強部材(stiffening members)を含むことができる。各補強部材は、可動子がトラックベースの上に浮上するときの曲げを低減(reduce bending)するように設計することができる。1つの構成において、各補強部材は、実質的に可動子の横軸に沿って延びることができる。各補強部材は、例えば、可動子の上面にフランジ又はリブ(flange or rib)として形成することができる。
【0020】
DCリニアモータの各平坦なステータは、可動子の下方、可動子の上方、または可動子の側方に(below the mover, above the mover, or alongside the move)配置することができる。リニアモータは、任意の適切な数の平坦なステータを含むことができ、それらは、電気式スタビライザを収容するために利用可能な容積のサイズおよびその動作要件に応じて異なる方法で配置することができることが容易に理解されよう。平坦なステータはまた、可動子が浮揚されるときの曲げを低減するように意図的に配置され得る。例えば、1つ以上の平坦なステータを配置することができる。また、可動子の下側に、例えばトラックのベース上に、対向する永久モータ磁石が可動子の下側部分に設けることができる、および/または対向する永久モータ磁石が可動子の上部に設けられている可動子の上方、および/または、対向する永久モータ磁石が可動子の側部に設けることができる。
【0021】
複数の平坦なステータが提供される場合、それらは、ベースおよび/またはトラックの側面にわたって間隔を空けて配置されることができ、および/または可動子の上方の支持構造にわたって間隔を空けて配置されることができる。そのような支持構造は、例えば、電気式スタビライザの一部または浮体構造の一部であってもよい。
【0022】
電気式スタビライザは、任意の適切な数のアクティブ磁気軸受(any suitable number of active magnetic bearings)を含むことができる。各アクティブ磁気軸受は、トラックと可動子の本体の一部の間、例えばトラックベースと可動子の下部の間に配置されるのが好ましい。
【0023】
各アクティブ磁気軸受は、電磁石のペア(pair of electromagnets:一対の電磁石)と、各電磁石に面する複数の永久軸受磁石(permanent bearing magnets)とを備えることができる。従来のアクティブ磁気軸受は、通常、支持された構造体(例えば、回転シャフト)を電磁石に向かって「引っ張る:pulls」吸引磁力を生成するように設計されることが容易に理解されよう。したがって、従来のアクティブ磁気軸受の複数のペアは、互いに対向して配置され、支持された構造体の主な適切な位置決めまたは位置合わせのために互いに引っ張るように調整される。本発明において、各アクティブ磁気軸受について、可動子上の対向する永久軸受磁石は、電力が供給されたときに電磁石の対によって生成される磁場と相互作用する追加の磁場を生成する。相互作用は、可動子上の永久軸受磁石を電磁石から離れるように「押す」上向きに作用する反発磁力を生成する。したがって、可動子は、反発磁力によってトラックから離れるように上方に「押される:pushed」ことになる。
【0024】
永久軸受磁石の追加は、可動子をトラックから上方に「引っ張る」ために可動子の上方に1つ以上のアクティブ磁気軸受を配置する必要なく、可動子を選択的に浮上させることができることを意味する。また、可動子が浮上したときの電磁石と永久軸受磁石との対向面間の空隙を、実用的な構成において約2mm~約10mmまで大幅に増加させることができることを意味する。可動子が浮上中にわずかに曲がる場合であっても、増加した空隙は、トラックに沿った可動子の移動を妨げる可能性がある可動子の下部と電気式スタビライザの残りの部分との物理的接触がないことを確実にすることができる。
【0025】
複数の永久軸受磁石は、可動子、特に可動子の下部に形成される。
【0026】
各電磁石は、トラック上に取り付けられるか、またはトラックの一部を形成することができる。複数のアクティブ磁気軸受が設けられる場合、電磁石の対(pairs of electromagnets:電磁石の複数のペア)はトラックのベースを横切って離間(spaced across the base of the track)され得る。各電磁石は、モジュール構造(modular construction)を有することができ、すなわち、トラックに沿って一緒に組み立てられる複数のモジュールまたはユニットから構築することができる。各電磁石は、磁気コア上に形成される1つ以上のコイルを含むことができ、磁気コアは、渦電流損失を最小限に抑えるためにトラックに沿って積み重ねられた、電気絶縁層によって分離された磁気透過性(好ましくは強磁性)材料の複数の薄いシートまたは積層体を含むことができる。各電磁石対が磁場を生成するために、電流は、一方の電磁石対のコイルに第1の方向に供給されて極性が第1の電磁石極(例えば、N極性:north polarity)を画定し、他方の電磁石対のコイルに第2の反対方向に供給されて極性が第2の反対の第2の電磁石極(例えば、S極性:south polarity)を画定する。各アクティブ磁気軸受は、2つ以上の対の電磁石を含むことができる。
【0027】
各電磁石対に面して、可動子の下部は、可動子の長手方向軸に沿って延びる第1の極性(例えば、N極性)の第1の軸受極を画定する第1の複数の永久軸受磁石と、可動子の長手方向軸に沿って延びる第2の反対の極性(例えば、S極性)の第2の軸受極を画定する第2の複数の永久軸受磁石とを備えることができる。第1および第2の複数の永久軸受磁石は、並んで配置され、可動子の横軸に沿って離間することができる。第1の複数の永久軸受磁石は、電磁石の対の一方に対向して配置することができ、第2の複数の永久軸受磁石は、電磁石の対の他方に対向して配置することができる。
【0028】
可動子は、永久軸受磁石を取り付け又は固定するための1つ以上のマウント(「軸受マウント:bearing mounts」)を備えることができる。各軸受マウントは、可動子の長手方向軸に沿って延びることができる。各軸受マウントは、電気絶縁層によって分離され、可動子の長手方向軸に沿って積み重ねられた磁気透過性(好ましくは強磁性)材料の複数の薄いシートまたは積層体を含むことができ、渦電流損失を最小限に抑えて、永久軸受磁石が取り付けられるか、または任意の適切な手段によって固定される取り付け面を有する平面取り付け構造を画定する。各軸受マウントは、それぞれの電磁石に面する可動子の下面の凹部、例えば可動子の本体の下面に配置することができる。永久軸受磁石はまた、それぞれの凹部内に配置され、それぞれの取り付け面上に取り付けられ、任意選択で可動子表面と実質的に同一平面上にあることができる。
【0029】
第1および第2の複数の永久軸受磁石の各々によって生成される磁場は、対向する一対の電磁石の磁気コアに向かって永久軸受磁石を「引っ張る」下向きに作用する引力を生成する。
【0030】
一構成では、可動子は、可動子が少なくとも1つのアクティブ磁気軸受によって浮上していないときにトラックに接触するように適合される1つ以上の非磁性脚部を備えることができる。1つ以上の脚部(feet)がトラックと物理的に接触しているとき、可動子と平坦なステータの間または可動子と電磁石の間に物理的接触がないことが好ましい。
【0031】
各脚部は、下方に延びる突出部(downwardly extending protrusion)として形成することができる。各脚部は、長手方向リブ(longitudinal rib)のように可動子の長手方向軸に沿って延びることができ、可動子の下部、例えば可動子の本体に形成することができる。可動子は、可動子の横軸に沿って離間した複数の脚部を備えることができる。好ましくは、少なくとも一対の脚部が設けられ、一方の脚部は可動子の両側の近くに位置する。
【0032】
1つ以上の脚部は、それらがトラックと物理的に接触しているときに有意な磁束を搬送(carry)しないようなサイズおよび形状にすることができる。永久モータ磁石または永久軸受磁石によって生成される磁場は、好ましくは、平坦なステータおよび電磁石の磁気コアに限定される。これは、脚部とトラックの間のいかなる磁気引力も防止する。このような磁気吸引を積極的に防止しないと、可動子が繰り返し浮上することでトラック面に損傷を与えるおそれがある。
【0033】
1つ以上の脚部に適した非磁性材料は、例えば、ステンレス鋼を含むことができる。
【0034】
可動子に非磁性の脚を設けることの代替案は、例えば、可動子が少なくとも1つのアクティブ磁気軸受によって浮上していないときに可動子に接触する1つ以上の非磁性支持体をトラック上に設けることである。各支持体は、上方に延びる突出部として形成することができる。各支持体は、トラックの基部上に形成することができ、トラックに沿って延在することができる。トラックは、トラックの基部にわたって離間した複数の支持体を含むことができる。非磁性脚と同様に、1以上の支持体は、可動子の下部と物理的に接触しているときに有意な磁束を担持(carry)しないようなサイズ及び形状にすることができる。
【0035】
電気式スタビライザは2つの動作状態、すなわち、可動子が1つ以上のアクティブ磁気軸受によって浮上されないオフ状態、すなわち、電力が1つ以上の電磁石に供給されないかまたは不十分であるとき、および可動子が1つ以上のアクティブ磁気軸受によってトラックベースの上方に浮上されるオン状態、すなわち、十分な電力が1つ以上の電磁石に供給されるときに動作させることができる。
【0036】
オフ状態では、可動子は静止しており、その1つ以上の非磁性の脚部は、設けられている場合、トラックと物理的に接触している。
【0037】
可動子をトラックに沿って移動させる必要がある場合、例えば、浮体構造のローリング又はピッチング運動(rolling or pitching movement)に応答して、電力が電磁石に供給され、電気式スタビライザをオン状態に移行させる。可動子は、例えば、永久軸受磁石と電磁石とによって生成された磁場の相互作用によって生成された上向きに作用する反発磁力の合計が、可動子の総重量に、可動子の下に配置された平坦なステータと可動子の下部のそれぞれの対向する永久モータ磁石との間、および永久軸受磁石と対向する電磁石の磁気コアとの引力などの下向きに作用する力の合計を加えたものに等しい場合に浮揚する。いくつかの構成では、平坦なステータと永久モータ磁石の間に下向きに作用する吸引磁力は、例えば、対応する上向きに作用する吸引磁力を提供するために1つ以上の平坦なステータを可動子の上方に配置することによって、または1つ以上の平坦なステータを可動子の側部に配置することのみによって、低減または実質的にキャンセルされ得る。そのような構成はまた、可動子が浮揚されるときの可動子の曲げを低減するのに役立ち得る。
【0038】
各アクティブ磁気軸受は、可動子が静止しているとき、および可動子がトラックに沿って前方または後方に駆動されているときの両方で、安定した浮上を提供するために電磁石のうちの1つ以上に供給される電力を連続的に調整するために、適切な制御ループによって制御され得る。特に、各電磁石への電力の供給は、適切なコントローラによって制御することができる。
【0039】
オン状態では、可動子の1つ以上の非磁性脚部は、設けられている場合、トラックと接触しておらず、浮揚可動子は、トラックの上方で静止状態に保持(held stationary above the track)されることができ、またはDCリニアモータによってトラックに沿って前方または後方に駆動されることができる。トラックが傾斜している場合、例えば、浮体構造のローリング又はピッチング運動のために、リニアモータを使用して、可動子を移動させる準備としてトラックの上で静止状態に保持することができる。リニアモータ内の切り替えられたDC電流は、可動子をトラックに沿って前方又は後方に移動させるようにコントローラによって制御することができる。可動子がトラックに沿って必要な距離だけ移動すると、浮体構造のローリング又はピッチング運動を減衰させるために、リニアモータを使用して可動子を静止状態に保持することができ、電磁石への電力の供給を終了することによって電気式スタビライザがオフ状態に移行される。ローリング又はピッチング運動に対抗するために可動子がトラックに沿って移動する必要がある距離は、可動子の質量に依存する。
【0040】
電気式スタビライザがオフ状態に移行するとすぐに、静止した可動子は、可動子の総重量および可動子をトラックに向かって「引き下げる」上述の吸引磁力を含む、下向きに作用する力によってトラックと直接物理的に接触させられる。1つ以上の非磁性脚部とトラックの間(または1つ以上の非磁性支持体と可動子の下部の間)の摩擦接触は、油圧または機械的ブレーキ(hydraulic or mechanical brakes)を必要とすることなく可動子をトラック上の固定された静止位置に維持するのに十分である。利点は、例えば、電磁石への電力の供給を中断させる障害がある場合、可動子がトラックと直接物理的に接触(physical contact)し、固定された静止位置に維持されることである。これは、任意の理由で可動子の継続的な浮上を妨げる故障の場合に可動子に「フェイルセーフ:fail safe”」状態を提供する。
【0041】
可動子の本体は、一体構造または一体構造を有することができる。しかしながら、アクセスが制限されていると、一体構造または単一部品構造を有する物理的に大きな本体を浮体構造に容易に設置することができない場合がある。
【0042】
1つの構成では、可動子は、互いに接続された複数の個々のモジュールまたはユニットから形成することができる。そのような可動子は、関節構造を有することができ、すなわち、モジュールまたはユニットが互いに対して移動またはピボット(pivot:回動/枢動)することができる。各モジュールまたはユニットは、本体を含むことができる。各平坦なステータに面して、各モジュールまたはユニットは、特定の極性(例えば、N極性またはS極性:north polarity or south polarity)を有する可動子極を画定する1つ以上の永久モータ磁石を含むことができる。次いで、個々のモジュールまたはユニットは、トラック方向に沿って交互の極性(alternating polarit)の可動子極を画定するように互いに接続される。言い換えれば、第1のモジュールまたはユニット上の1つ以上の永久モータ磁石は、第1の極性(例えば、N極性)を有する可動子極を画定することができる。第1のモジュールまたはユニットは、その1つ以上の永久モータ磁石が第2および反対の極性(例えば、S極性)を有する可動子極を画定する第2のモジュールまたはユニットに接続することができる。第2のモジュールまたはユニットは、その1つ以上の永久モータ磁石が第1の極性を有する可動子極を画定する第3のモジュールまたはユニットなどに接続することができる。別の構成において、各モジュールまたはユニットは、交互の極性の2つ以上の可動子極、例えば、第1の極性(例えば、N極性)を有する可動子極および第2および反対の極性(例えば、S極性)を有する可動子極を画定する複数の永久磁石を含むことができる。各モジュールまたはユニットはまた、1つ以上の永久軸受磁石を含むことができる。モジュールまたはユニットが一緒に接続されるとき、各モジュールまたはユニット上の1つ以上の永久軸受磁石は、上述のように軸受極を画定する。
【0043】
各モジュールまたはユニットはまた、上述のような1つ以上の非磁性脚部を含むことができる。脚部は、各モジュールまたはユニットの本体に沿って離間することができる。
【0044】
関節式可動子の個々のモジュールまたはユニットは、接続ロッド(connecting rods)によって互いに接続することができる。各接続ロッドは、隣接するモジュールまたはユニットが互いに対して移動または回動することを可能にするように、隣接するモジュールまたはユニットのペアに回動可能に接続され得る。各接続ロッドの長さを調整して、隣接するモジュール又はユニットの対の横方向間隔を調整することができる。隣接するモジュールまたはユニットの各ペアは、例えば、可動子がトラックに沿って前方または後方に移動するときに、相対移動を可能にするように離間され得る。可撓性絶縁部材は、モジュールまたはユニットが互いに対して移動または回動することができることを妨げない限り、モジュールまたはユニットの各隣接する対の間に配置することができる。
【0045】
したがって、可動子は、任意の適切な数のモジュールまたはユニットから形成することができる。各モジュールまたはユニットは、実質的に同じ構造を有することができる。「標準的な:standard」モジュールまたはユニットとして製造される場合、上述のように、必要な数のモジュールまたはユニットを選択し、それらを一緒に接続することによって、異なる長さの可動子を構築することができる。各追加のモジュールまたはユニットは、可動子の質量を増加させる。これにより、「標準的な」幅トラックと共に使用するための複数の「標準的な」モジュール又はユニットから、異なる質量の可動子を構築することができる。
【0046】
トラックは、水平面内で実質的に直線または曲線であり得る(「水平トラックレイアウト:horizontal track layout」)。湾曲した(curved)トラックは、実質的に円形とすることができる。トラックが湾曲している場合、可動子はまた、トラックに沿って移動することを可能にするように成形され、直線ではなく湾曲した側面を有し得ることが理解されよう。湾曲トラックが実質的に円形である場合、例えば、トラックに沿って可動子を前方に駆動することは、時計回り方向に可動子を駆動することに対応することができ、トラックに沿って可動子を後方に駆動することは、反時計回り方向に可動子を駆動することに対応することができる。
【0047】
トラックは、垂直面(vertical plan)において実質的に平坦であるか、または傾斜しているか、または湾曲していることができる(「垂直トラックレイアウト:vertical track layout」)。
【0048】
電気式スタビライザは、浮体構造の軸の周りの回転を減衰させるために使用することができる。そうするために、電気式スタビライザのトラックは、通常、軸に対して実質的に垂直に配置される。
【0049】
2つの電気式スタビライザーを組み合わせて使用することで、それらが実質的に平行に配置されている場合は浮体構造の同じ軸の回転を減衰させ、それらが実質的に互いに垂直に配置されている場合は2つの垂直な軸の回転を減衰させることができる。
【0050】
例えば、船舶の特定の場合において、電気式スタビライザは、アンチロールスタビライザまたはアンチピッチスタビライザとして使用することができる。アンチロールスタビライザの場合、トラックは、トラックに沿った可動子の移動を使用して、長手方向軸または船首-船尾軸(bow-stern axis)の周りの船舶の回転を減衰させることができるように、船舶の横軸または左舷-右舷軸(port-starboard axis)に実質的に沿って配向される。アンチピッチスタビライザの場合、トラックは、実質的に船舶の長手方向軸または船首-船尾軸に沿って配向され、トラックに沿った可動子の移動を使用して、横軸または左舷-右舷軸の周りの船舶の回転を減衰させることができる。一対の電気式スタビライザは、それらのトラックが互いに実質的に垂直に配置されている場合、船舶の長手方向軸及び横方向軸の両方の周りの回転を減衰させるために組み合わせて使用することができる。
【0051】
既知のスタビライザと比較して、本発明の電気式スタビライザは、動作中に発生する騒音及び振動が低レベルである。電気式スタビライザはまた、例えば、浮体構造体が一定の減衰を必要とする一定のロールまたはピッチング運動を経験している場合、トラックに沿った可動子(すなわち、スタビライザ質量)の急速かつ非常に連続的な前後運動に対処することができる。過熱または機械的摩耗のリスクはなく、したがって、電気式スタビライザは最小限のメンテナンスの必要性を有する。船舶の特定の場合では、電気式スタビライザは、90%を超えるロール低減を提供することができる。これは、低い容器速度で、かつ高速の過渡圧延に有効である。電気式スタビライザは、好ましくは、船舶の船体内に取り付けられ、船舶の全水抵抗性(total vessel water resistance)を増加させない。電気式スタビライザは、例えば、クルーズライナー及び航空母艦などの物理的に大型の民間及び軍用船舶(physically large civilian and military marine vessels)に使用することができる。
【0052】
上記電気式スタビライザにおいて、DCリニアモータは、同期モータである。本発明は、DCリニアモータが、例えば「かご形:squirrel-cage」構造を有する誘導(または非同期)モータである代替の電気式スタビライザをさらに提供することができる。そのような非同期リニアモータは、電気式スタビライザが高い位置決め精度を必要としない場合、及び/又は可動子が、例えば、トラックに沿った限られた短い後方及び前方移動のみで約10m/s2より大きい加速度で動作され得る場合に好適であり得る。
【0053】
本発明は、浮体構造を安定化させるために使用することができる代替の「総電気式の:all-electric」スタビライザを提供する。代替の電気式スタビライザは、トラック方向に沿って移動するスタビライザマスをガイドするためのトラックと、トラックに沿って延在する平坦なステータと、スタビライザマスとしてトラックに沿って前後に移動するように適合された可動子とを備えるDCリニアモータとを備える。ステータは、多相ステータ巻線を備え、可動子は、トラック方向に沿って延在する一対の導電性短絡バー(short-circuit bars)と、多相ステータ巻線に面する複数の導電性の導電バー(conducting bars)とを備え、導電バーは、一対の短絡バー間に延在し、トラック方向に沿って離間して延在して、かご形構造を画定する。ステータは、トラック方向に沿って延在する一対の導電性短絡バーと、多相ステータ巻線に面する複数の導電性導電バーとを備える。代替の電気式スタビライザは、また、可動子を選択的に浮上させるための少なくとも1つのアクティブ磁気軸受を備える。
【0054】
複数の短絡バーは、可動子の側部に設けられる場合、横方向(すなわち、可動子の横軸に沿って)に離間するか、または垂直方向(すなわち、可動子の垂直軸に沿って)に離間することができる。
【0055】
複数の導電バーは、ステータに面する可動子の一部、例えば、可動子の本体の上部、下部、または側部に形成されたスロットまたは開口部に受容され得る。複数の導電バーは、渦電流損失を最小限に抑えるために積層された電気絶縁層によって分離された透磁性(magnetically permeable、好ましくは強磁性材料:ferromagnetic material)の複数の薄いシートまたは積層体を含むマウントまたはコアに収容することができる。マウントは、可動子の本体の一部を含むことができる。導電バーは、マウントの表面、すなわち平坦なステータに面する表面で少なくとも部分的に露出させることができる。
【0056】
短絡バー及び導電バーは、例えば、アルミニウム又は銅などの任意の適切な材料から形成することができる。
【0057】
可動子が、一緒に接続され、互いに対して移動または回動することができる複数の個々のモジュールまたはユニットから形成される関節式構造を有する場合、各短絡バーは、導電性可撓性コネクタによって物理的および電気的に一緒に接続される複数の別個のセクションに形成することができる。各可撓性コネクタは、例えば、ねじまたはボルトなどの適切な機械的固定(mechanical fixing)を使用して、隣接するセグメントのペアの間に固定することができる。
【0058】
関節式可動子の各モジュールまたはユニットは、短絡バーセグメントのペアと、セグメント間に接続される1つ以上の導電バーとを含むことができる。1つ以上の導電バーは、上述のようにマウントまたはコア内に受容することができ、すなわち、関節式可動子の各モジュールまたはユニットは、それぞれの導電バーを受容するためのマウントを含むことができる。
【0059】
代替の電気式スタビライザ(すなわち、トラック、平坦なステータなどに関する。)およびその動作方法の他の特徴は、一般的に上述の通りである。
【0060】
本発明は、電気式スタビライザを使用して浮体構造を安定化する方法をさらに提供する。前記電気式スタビライザは、トラックと、該トラックに沿って延在する平坦なステータと、可動子とを備えるDCリニアモータと、前記トラックと前記可動子の間に配置された少なくとも1つのアクティブ磁気軸受とを含み、前記方法は、前記少なくとも1つのアクティブ磁気軸受を使用して前記可動子を浮上させるステップと、前記可動子をスタビライザマスとして前記トラックに沿って前後に移動させるように前記リニアモータを制御するステップとを含む。
【0061】
電気式スタビライザは、本明細書に記載されている通りであり得る。特に、ステータは、多相ステータ巻線を備えることができ、可動子は、トラック方向に沿って交互の極性の複数の可動子極を画定する、多相ステータ巻線に面する複数の永久モータ磁石を備えることができる。あるいは、可動子は、トラック方向に沿って延びる一対の導電性短絡バーと、多相ステータ巻線に面する複数の導電性導電バーとを備えることができる。導電バーは、短絡バーのペアの間に延び、トラック方向に沿って離間して、かご構造(squirrel-cage construction)を画定する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1】本発明による電気式スタビライザの斜視図である。
【
図2】
図1の線A-Aに沿った電気式スタビライザの断面図である。
【
図3】
図1の電気式スタビライザのU字形トラックの斜視図である。
【
図4】
図1の電気式スタビライザの可動子の上方斜視図である。
【
図5】
図1の電気式スタビライザの可動子の下方斜視図である。
【
図6】
図1の電気式スタビライザのモジュール式の平坦なステータの詳細図である。
【
図7】多相ステータ巻線およびコンバータシステムの概略図である。
【
図8A】
図1の電気式スタビライザのアクティブ磁気軸受の詳細図である。
【
図8B】
図1の電気式スタビライザのアクティブ磁気軸受の詳細図である。
【
図9A】可動子の相対運動を示す電気式スタビライザのリニアモータの概略図である。
【
図9B】可動子の相対運動を示す電気式スタビライザのリニアモータの概略図である。
【
図10】本発明による異なる電気式スタビライザ構成の概略図である。
【
図11】本発明による異なる電気式スタビライザ構成の概略図である。
【
図12】本発明による異なる電気式スタビライザ構成の概略図である。
【
図13】本発明による異なる電気式スタビライザ構成の概略図である。
【
図14】本発明による異なる電気式スタビライザ構成の概略図である。
【
図15】関節式可動子の2つのモジュールまたはユニットの斜視図である。
【
図16】関節式可動子の2つのモジュールまたはユニットの斜視図である。
【
図18】多関節可動子の「ポールペア」の斜視図である。
【
図19A】関節式可動子の接続される2つの「ポールペア」の側面図である。
【
図19B】関節式可動子の接続される2つの「ポールペア」の側面図である。
【
図21】本発明による関節式可動子の下方斜視図である。
【
図23】
図22の電磁石を有するアクティブ磁気軸受の断面図である。
【
図24】電磁石のためのモジュールまたはユニットである。
【
図25】リニア電気式スタビライザの水平トラックレイアウトである。
【
図26】円形電気式スタビライザの水平トラックレイアウトである。
【
図27】DCリニアモータが「かご型」構造を有する誘導モータである、本発明による関節式可動子の下方斜視図である。
【
図28】
図27の関節式可動子の2つのモジュールまたはユニットの上方斜視図である。
【
図29】
図28のモジュールまたはユニットの下側斜視図である。
【
図30】
図29の両方のモジュールまたはユニットの詳細図である。
【
図31】
図27の関節式可動子の4つのモジュールまたはユニットの下側図である。
【
図32】線B-Bに沿った、
図31の関節式可動子の4つのモジュールまたはユニットの断面図である。
【
図33】線C-Cに沿った、
図31の関節式可動子の4つのモジュールまたはユニットの断面図である。
【
図34】可撓性コネクタを示す、
図31に示される関節式可動子の4つのモジュールまたはユニットの詳細な上方斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1から
図9Bを参照すると、船舶用の電気式スタビライザ1は、トラック方向(X軸に沿って)に延びるU字形トラック2を備える。トラック2の一部のみが
図1および3に示されている。トラック2は、ベース(基部)2aと、可動子6が配置されるチャネル4を画定する一対の直立対向側面(upstanding opposing sides)2b、2cとを含む。トラック2に適した材料は、例えば、鋼、鋳鉄、電気鋼積層体を含むことができる。動作要件に応じて、実際の構成では、トラック2は、約1m~約20mの幅および約5m~約100mの長さを有することができる。トラック2の側面2b、2cは約0.4m~約2mの高さを有することができる。
【0064】
電気式スタビライザ1は、直流(DC)リニアモータ8を備えている。リニアモータ8は、トラック2のベースの中央に取り付けられた平坦なステータ10を含む。平坦なステータ10は、トラック2に沿ってトラック方向に延びる。
【0065】
図6に示すように、平坦なステータ10は、モジュール構造を有し、すなわち、トラックに沿って一緒に組み立てられ、任意の適切な手段によって一緒に接続される複数のモジュールまたはユニットから構築される。平坦なステータ10は、多相ステータ巻線16の巻線コイル14を受け入れるために、トラック2に沿って離間した複数の巻線スロット12を有する。巻線スロット12は、平坦なステータ10の透磁性部分(magnetically permeable part)に形成されている。平坦なステータ10は、電気絶縁層によって分離され、トラック2を横切って横方向に(Y軸に沿って)積み重ねられ、渦電流損失を最小限に抑える複数の薄いシートまたは積層体を備える。薄いシート又は積層体は、例えば、絶縁ワニス又は酸化物層の薄いコーティング(thin coating of insulating varnish or an oxide layer)によって互いに電気的に絶縁することができる。
【0066】
図7を参照すると、多相ステータ巻線16は、6つの相巻線18a、18b、...、18fを有し、各相巻線は、多相ステータ巻線(すなわち、位相(フェーズ:phases)A、B、...、F)の相を画定し、巻線スロットに受け入れられる複数の巻線コイル14を備える。各相巻線18a、18b、...、18fの巻線コイル14を相互接続するためのバスバーまたはケーブル20は、平坦なステータ10に沿って延びる。巻線コイル14は二層コイルであり、各巻線コイルは、対応する一対の巻線スロットに受け入れられる一対の巻線ラン(winding runs)を含む。平坦なステータ10の各巻線スロット12は、互いの上に配置される一対の巻線コイルの巻線を受け入れる。これは、巻線コイル14の巻線ランが上層および下層に配置されている
図9Aおよび
図9Bに概略的に示されている。特定の巻線コイルは、陰影によって強調されており、第1の巻線スロットに下側巻線経路として受け入れられる第1の巻線経路と、第2の巻線スロットに上側巻線経路として受け入れられる第2の巻線経路とを有する。第1および第2の巻線スロットは、5つの中間巻線スロット(five intermediate winding slots)によって分離されている。強調表示された巻線コイルは、多相ステータ巻線の相Aを画定する相巻線18aの一部である。相A、B、...、Fは
図9Aおよび
図9Bにおいてラベル付けされている。
図9Aおよび
図9Bにおいて、各巻線走行を通る電流の流れ方向もラベル付けされており、プラス記号(+)は電流の第1の方向(例えば、正方向)の流れを示し、マイナス記号(-)は電流の第2および反対方向(例えば、負方向)の流れを示す。
【0067】
図6は、巻線コイルのいくつかが平坦なステータの隣接する2つのモジュールまたはユニットにどのように広がるかを示す。例えば、巻線コイル14a、14b、...、14fのうちの6つ巻線は、一方のモジュールまたはユニット10aの巻線スロットに下側巻線として受け入れられ、他方の巻線は、隣接するモジュールまたはユニット10bの巻線スロットに上側巻線として受け入れられる。
【0068】
多相ステータ巻線16は、通常、6つの相巻線18a、18b、...、18fで動作するように設計されているが、ステータ巻線及びその関連する電力変換器システムは、より少ない相巻線、例えば、5つの相巻線で安全に動作するように適合させることができる。これにより、一方の相巻線に故障が発生した場合の冗長性が向上する。
【0069】
多相ステータ巻線16は、コントローラ24によって制御され得る電力変換器システム22に電気的に接続される。
図7に示される電力変換器システム22において、多相ステータ巻線16の各相巻線18a、18b、...、18fの巻線コイル14は、それぞれのバスバーまたはケーブル20a、20b、...、20fに接続され、これは、電力変換器システムのそれぞれの変換器ユニット26a、26b、...、26fに接続される。特に、多相ステータ巻線の第1の相(または相A)を規定する第1の相巻線18aの巻線コイルは第1の変換器ユニット26aに接続される第1のバスバーまたはケーブル20aに接続され、多相ステータ巻線の第2の相(または相B)を規定する第2の相巻線18bの巻線コイルは第2の変換器ユニット26bに接続される第2のバスバーまたはケーブル20aに接続され、多相ステータ巻線の第3の相(または相C)を規定する第3の相巻線18cの巻線コイルは第3の変換器ユニット26cに接続される第3のバスバーまたはケーブル20cに接続され、その他の相巻線18d、...、18fについても同様である。変換器ユニット26a、26b、...、26cは、介在するスイッチまたはブレーカ30a、30b、...、30fによって2つの交流(AC)電源28a、28bに並列に電気的に接続される。上述のように、各変換器ユニット26a、26b、...、26fは、各相巻線18a、18b、...、18fの巻線コイル14を相互接続するためのバスバーまたはケーブル20a、20b、...、20fの一方に電気的に接続される。2つの別個のAC電源28a、28bに変換器ユニット26a、26b、...、26fを電気的に接続することにより、AC電源の一方に障害が発生した場合の冗長性が向上する。各変換器ユニット26a、26b、...、26fは、AC電源28a、28bに並列に接続されたAC入力端子と、それぞれのバスバーまたはケーブル20a、20b、...、20fに接続されたDC出力端子とを有するAC/DCコンバータである。
【0070】
可動子6は、トラック2のチャネル4内に配置され、スタビライザマスとしてトラックに沿って前後に移動するように適合される。可動子6は上面32a、下面32bおよび側面32c、32dを有する本体32を有する。本体32は、船舶用のスタビライザマスとして機能するのに十分な質量を有する材料のブロックを備える。実際的な構成では、本体32の質量は、動作要件に応じて約100kg~約250メトリックトンの範囲であり得る。本体32に適した材料は、例えば、鋼、鋳鉄、電気鋼積層体を含むことができる。
【0071】
本体32の両側面32c、32dは、ガイド部材として複数のローラ34を含む。ローラ34は、トラック2の対向する側2a、2bに接触して、トラックに沿って前後に移動するときに、浮揚した可動子6を案内して配置するように適合される。ローラ34は、図示されるように、上下二列に配置されている。他のガイド部材も使用できることは容易に理解されるであろう。
【0072】
可動子6は、トラック方向に沿った(かつX軸と平行である)長手方向軸36と、横軸38(Y軸と平行である)とを有する。
【0073】
可動子6は、多相ステータ巻線16に面する複数の永久モータ磁石(permanent motor magnets)40を含む。永久モータ磁石40は、その長手方向軸に沿って交互極性(すなわち、N極性およびS極性)の複数の可動子極を画定する。図において、永久モータ磁石40、したがって可動子極のそれぞれの極性は、明暗の陰影によって概略的に示されている。モータマウント42は、永久モータ磁石40を取り付けるために、本体32の下面32bの中央の凹部に形成される。モータマウント42は、可動子6の長手方向軸36に沿って延びる。モータマウント42は、渦電流損失(eddy current losses)を最小限に抑えるために、可動子6の横軸38に沿って積み重ねられた、電気絶縁層によって分離された透磁性(好ましくは強磁性)材料の複数の薄いシート又は積層体を備える。モータマウント42は、任意の適切な手段によって永久モータ磁石40が取り付けられる取り付け面を有する平面的な取り付け構造を画定する。永久モータ磁石40はまた、本体32の凹部内に位置し、可動子6の下面32bと実質的に同一平面上にある。
【0074】
電気式スタビライザ1は、可動子を選択的に浮上させるためにトラック2と可動子6の間に配置される一対のアクティブ磁気軸受44、48をさらに含む。第1のアクティブ磁気軸受44は可動子6の第1の側に配置され、そして第2のアクティブ磁気軸受48は可動子の第2の側に配置される。
【0075】
各アクティブ磁気軸受44、48は、電磁石のペアと、各電磁石に面する複数の永久軸受磁石とを含む。複数の永久軸受磁石は、可動子6の下部に形成され、それぞれの電磁石は、トラック2の基部に取り付けられる。特に、第1のアクティブ磁気軸受44は電磁石の第1のペア46a、46bを含み、第2のアクティブ磁気軸受48は電磁石の第2のペア50a、50bを含む。
【0076】
各電磁石はモジュール構造を有し、すなわち、
図1および
図3に示すようにトラック2に沿って一緒に組み立てられる複数のモジュールまたはユニットから構成される。各電磁石は、磁気コア上に形成される1つ以上のコイルを含み、磁気コアは、渦電流損失を最小限に抑えるためにトラックに沿って積み重ねられた、電気絶縁層によって分離された透磁性(好ましくは強磁性)材料の複数の薄いシートまたは積層体を含むことができる。
【0077】
電磁石の第1のペア46a、46bに面して、可動子6の下部は、可動子の長手方向軸36に沿って延びる第1の極性(例えば、N極性)の第1の軸受極を画定する第1の複数の永久軸受磁石52aと、可動子の長手方向軸に沿って延びる第2の反対の極性(例えば、S極性)の第2の軸受極を画定する第2の複数の永久軸受磁石52bとを含む。第1及び第2の複数の永久軸受磁石52a、52bは、並んで配置され、可動子6の横軸38に沿って離間される。図示のように、複数の永久磁石52aは、電磁石46aの一方に対向して配置され、複数の永久磁石52bは、電磁石46bの他方に対向して配置される。
【0078】
電磁石の第2のペア50a、50bに面して、可動子6の下部は、可動子の長手方向軸36に沿って延びる第1の極性(例えば、N極性)の第3の軸受極を画定する第3の複数の永久軸受磁石54aと、可動子の長手方向軸に沿って延びる第2及び反対極性(例えば、S極性)の第4の軸受極を画定する第4の複数の永久軸受磁石54bとを含む。第3及び第4の複数の永久軸受磁石54a、54bは、並んで配置され、可動子6の横軸38に沿って離間している。図示のように、複数の永久磁石54aは、電磁石50aの一方に対向して配置され、複数の永久磁石54bは、電磁石50bの他方に対向して配置される。
【0079】
可動子6は永久軸受磁石52a、52bおよび54a、54bを取り付けるための2つの軸受マウント56、58を含む。各軸受マウント56、58は、可動子6の長手方向軸36に沿って延びる。各軸受マウント56、58は、渦電流損失を最小限に抑えるために、可動子6の長手方向軸36に沿って積み重ねられた、電気絶縁層によって分離された透磁性(好ましくは強磁性)材料の複数の薄いシートまたは積層体を備える。各軸受マウント56、58は、永久軸受磁石52a、52bおよび54a、54bが任意の適切な手段によって取り付けられる取り付け面を有する平面的な取り付け構造を画定する。各軸受マウント56、58は、それぞれの電磁石に面する可動子6の下面のそれぞれの凹部内に位置する。永久軸受磁石52a、52bおよび54a、54bはまた、本体32のそれぞれの凹部内に位置し、可動子6の下面32bと実質的に同一平面上にある。
【0080】
可動子6を選択的に浮上させるための磁場を生成するための電磁石46a、46bおよび50a、50bの各ペアについて、電流が、電磁石のペアのうちの一方のコイルに第1の流れ方向に供給されて第1の極性の第1の電磁石極(例えば、N極性)を画定し、電磁石のペアのうちの他方のコイルに第2および反対の流れ方向に供給されて第1の極性の第1の電磁石極(例えば、S極性)を画定する。これは第1のアクティブ磁気軸受44について図に示されている。特に、第1のアクティブマグネット軸受44の各電磁石46a、46bを通る電流の流れの方向は、
図8Aにラベル付けされており、クロス(「X」)は第1の方向の電流の流れを示し、ドット(「・」)は第1の方向の電流の流れを示している。 電流が第 2の方向と反対方向に流れる。
図8Bでは、各電磁石46a、46bを流れる電流の欠如(lack of current flow)が「0」で示される。
【0081】
図8Aはまた、各アクティブ磁気軸受について、可動子6上の対向する永久軸受磁石52a、52bが、電力が供給されたときに電磁石46a、46bのペアによって生成される磁場Φ_emと相互作用する追加の磁場Φ_pmをどのように生成するかを示す。相互作用(interaction)は、永久軸受磁石52a、52bを電磁石46a、46bから「押す」上向きに作用する反発磁力を生成する。したがって、可動子6はこの相互作用によってトラック2から上方に「押される」ことになる。永久軸受磁石52a、52bを追加することは、可動子6を選択的に浮上させることができることを意味し、可動子をトラックから離れるように上方に「引っ張る」ために、可動子の上方に1つ以上のアクティブ磁気軸受を配置する必要はない。また、可動子が浮上したときの電磁石46a、46bと永久軸受磁石52a、52bとの対向面間の空隙(airgap:エアギャップ)60を、実用的な構成において約5mm~約10mmまで大幅に増加させることができることを意味する。可動子6が浮上中にわずかに曲がる場合であっても、増加した空隙は、可動子6の下部と電気式スタビライザの残りの部分の間に物理的接触がないことを確実にすることができる。
【0082】
図8Aにおいて、電磁石46a、46bが通電され(energised)、可動子6がトラック2の上方に浮上する。
【0083】
図8Bにおいて、電磁石46a、46bは通電されておらず、可動子6はトラック2と物理的に接触している。永久軸受磁石52a、52bによって生成される磁場Φ_pmを示す。この磁場は、対向する電磁石46a、46bの磁気コアに向かって永久軸受磁石52a、52bを「引っ張る」下向きに作用する引力磁力を生成する。
【0084】
可動子6は、可動子がアクティブ磁気軸受44、48によって浮上されないときにトラック2に接触するように適合される4つの非磁性脚(non-magnetic feet)62を備える。脚部62がトラック2と物理的に接触しているとき、可動子6と平坦なステータ10の間、または可動子と電磁石46a、46bおよび50a、50bの間に物理的接触はない。
【0085】
各脚部62は、下方に延びる突出部として形成される。各脚部62は、可動子6の長手方向軸36に沿って延び、可動子の下部に形成される。脚部62は、可動子の横軸38に沿って離間している。各脚部62は、トラック2と物理的に接触しているときに有意な磁束を担持しないようなサイズおよび形状である。永久モータおよび軸受磁石によって生成される磁場は、平坦なステータおよび電磁石の磁気コアに限定される。これにより、可動子6が繰り返し浮上することによってトラック面に損傷を与える可能性がある、脚部62とトラック2との磁気吸引が防止される。例えば、
図8Bは、永久軸受磁石52a、52bによって生成された磁場Φ_pmがどのように脚部62内に延びず、積層軸受マウント(laminated bearing mount)56および対向する電磁石46a、46bの磁気コア内に実質的に閉じ込められることを示す。
【0086】
1つ以上の脚部62に適した非磁性材料は、例えば、ステンレス鋼を含むことができる。
【0087】
電気式スタビライザ1は、可動子6がアクティブ磁気軸受44、48によって浮上されないオフ状態、すなわち、電力がアクティブ磁気軸受の電磁石に供給されないか、または不十分であるとき、および可動子がアクティブ磁気軸受によってトラックベース2aの上方に浮上されるオン状態、すなわち、十分な電力が電磁石に供給されるとき、という2つの動作状態で動作することができる。
【0088】
オフ状態では、可動子6は静止しており、その非磁性脚部62はトラック2と物理的に接触している。非磁性脚部62とトラック2との摩擦接触は、油圧または機械的ブレーキを必要とすることなく、可動子6をトラック上の固定された静止位置に維持するのに十分である。
【0089】
可動子6をトラック2に沿って移動させる必要がある場合、例えば、船舶のローリング又はピッチング運動に応答して、電力がアクティブ磁気軸受44、48の電磁石に供給され、電気式スタビライザ1をオン状態に移行させる。以下でより詳細に説明するように、可動子6は、例えば、永久軸受磁石とアクティブ磁気軸受の電磁石とによって生成される磁場の相互作用によって生成される上向きに作用する反発磁力の合計が、可動子の総重量に、可動子6の下に配置された平坦なステータ10と可動子の下側部分の対向する永久モータ磁石40との間で、永久軸受磁石52a、52bおよび54a、54bと対向する電磁石46a、46bおよび50a、50bの磁気コアとの吸引磁力などの任意の下向きに作用する力の合計を加えたものに等しい場合に浮揚する。他のいくつかの構成では、平坦なステータ10と永久モータ磁石40の間に下向きに作用する吸引磁力は、例えば、対応する上向きに作用する吸引磁力を提供するために1つ以上の平坦なステータを可動子の上方に配置することによって、または1つ以上の平坦なステータを可動子の側部にのみ配置することによって、低減または実質的に相殺され得る。そのような構成はまた、可動子が浮揚されるときの可動子の曲げを低減するのを助けることができ、いくつかの実施例は、
図11~
図14を参照して以下でより詳細に説明する。
【0090】
オン状態では、可動子6の非磁性脚部62はトラック2と接触しておらず、浮揚可動子は静止しているか、またはDCリニアモータ8によってトラックに沿って前方または後方に駆動され得る。トラック2が傾斜している場合、例えば、船舶のローリング又はピッチング運動のために、リニアモータ8を使用して、移動される準備として可動子6を静止状態に保持することができる。リニアモータ8内の切り替えられたDC電流は、コントローラ24によって制御され、可動子6をトラック2に沿って前方又は後方に移動させることができる。特に、可動子6は、多相ステータ巻線16内の切り替えられたDC電流によって生成される磁場と可動子6上の対向する複数の永久モータ磁石40によって生成される磁場との相互作用によって生成される双方向線形駆動力(または「推力:thrust」)によって、トラック2に沿って前方または後方に選択的に駆動され得る。コントローラ24は、多相ステータ巻線16の1つ以上の相巻線18a、18b、...、18f(すなわち、整流を制御することができる。)への電力の供給を制御して、典型的には平坦なステータ10のスロットピッチに対応する位置決め精度で、可動子6をトラック2に沿って前方又は後方に移動させることができる。これは、多相ステータ巻線16の相Aを画定する相巻線18aが整流されるとき、可動子6がスロットピッチに対応する距離Dだけ平坦なステータ10に対して移動する
図9Aおよび9Bに示されている。特に、相巻線18aの巻線コイルを通る電流の流れ方向が逆であることが図から分かる。位相B、C、...、F、A、B、C、...、Fを画定する相巻線の連続的な整流は、可動子6がトラック2に沿って必要な距離だけ移動されるまで継続することができる。
【0091】
可動子6がトラック2に沿って必要な距離だけ移動されたとき、船舶のローリング又はピッチング運動を減衰させるために、DCリニアモータ8を使用して可動子を静止状態に保持することができ、電磁石への電力の供給を終了することによって電気式スタビライザ1がオフ状態に移行される。ローリング又はピッチング運動に対抗するために可動子6をトラック2に沿って移動させる必要がある距離は、可動子の質量に依存し、コントローラ24によって、又は例えば、船舶のロール角又はピッチなどの他の入力を受信する船舶の別個の安定化コントローラによって決定することができる。
【0092】
電気式スタビライザ1がオフ状態に移行するとすぐに、静止した可動子6は、可動子の下向きに作用する力(総重量および可動子をトラックに向かって「引っ張る」上述の吸引磁力を含む)によってトラック2と直接物理的に接触する。既に上述したように、非磁性脚部62とトラック2との摩擦接触は、コスト及び複雑さを増大させることになる液圧式又は機械式ブレーキを必要とすることなく、可動子6を固定された静止位置に維持するのに十分である。さらなる利点は、例えば1つ以上の電磁石への電力の供給を中断させる故障がある場合に、可動子6がトラック2と直接物理的に接触し、それによって固定された静止位置に維持されることである。これは、可動子の継続的な浮上を妨げる故障の場合に可動子6に「フェイルセーフ」状態を提供する。
【0093】
図10は、
図1に示す電気式スタビライザの概略図である。
図10に示す電気式スタビライザ1Aは、低い高さ制約(すなわち、Z軸に沿って)がある場合に適している。任意の所与の質量について、可動子の寸法は、電気式スタビライザを収容するために利用可能な容積のサイズによって決定することができる。例えば、電気式スタビライザの全高に制限がある場合、可動子の長さすなわち長手方向の寸法を大きくする必要がある。実際の構成では、可動子は、約1m~約50mの長さおよび約0.3m~約2mの高さを有することができる。実際の構成では、可動子は、トラックチャネル内に適合するように約1m~約20mの幅、すなわち横方向におけるその寸法を有することができる。
【0094】
図10において、以下の表示(labels:ラベル)は、電気式スタビライザ1Aの構成部品(component parts)を示すために使用される。
「t」はトラック(例えば、トラック2)、
「m」は可動子(例えば、可動子6)、
「gm」はガイド部材(例えば、ローラ34)、
「f」は可動子の脚部(例えば、非磁性脚部62)、
「lm」はリニアモータ(例えば、DCリニアモータ8)、
「pmm」はDCリニアモータの永久モータ磁石(例えば、モータマグネット40)、
「ps」は、DCリニアモータの平坦なステータ(例えば、平坦なステータ10)、
「amb1」は第1のアクティブ磁気軸受(例えば、アクティブ磁気軸受44)、
「em1」は第1のアクティブ磁気軸受の電磁石(例えば、電磁石46a、46b)、
「pbm1」は第1のアクティブ磁気軸受の永久軸受磁石(例えば、軸受磁石52a、52b)、
「amb2」は第2のアクティブ磁気軸受(例えば、アクティブ磁気軸受48)、
「em2」は第2のアクティブ磁気軸受の電磁石(例えば、電磁石50a、50b)、
「pbm2」は第2のアクティブ磁気軸受の永久軸受磁石(例えば、軸受磁石54a、54b)である。
【0095】
便宜上、これらの表示(ラベル)は、以下の式の添え字に対応する。
【0096】
第1および第2のアクティブ磁気軸受amb1、amb2の電磁石em1、em2が通電されないとき、可動子mに作用する下向きに作用する制動力Fbrakeは、以下のように与えられ得る。
Fbrake=(Famb1_brake+Famb2_brake )+Flm+M・g
【0097】
ここで、Famb1_brake、Famb2_brakの永久軸受磁石pbm1、pbm2と第1および第2のアクティブ磁気軸受電磁石emb1、emb2、Flm1の間の下向きに作用する引力であり、平坦なステータpsとDCリニアモータlmの対向する永久モータ磁石pmm、Mは可動子mの質量であり、gは重力加速度である。DCリニアモータlmについては、以下の通りである。
Flm=((Blm)2Alm)/(2μ0)
ここで、Blmはリニアモータエアギャップ磁気誘導(linear motor airgap magnetic induction:リニアモータ空隙磁気誘導)、Almはリニアモータエアギャップ面積(linear motor airgap area:リニアモータ空隙面積)、μ0は真空透過率( vacuum permeability)である。
【0098】
各アクティブ磁気軸受amb1、amb2については、
Fambi_brake=(μ0(hpbmi・Hpbmi)2Aambi)/(lambi)2 i=1,2
ここで、hpbmiはそれぞれのアクティブ磁気軸受ambiの永久軸受磁石の高さであり、Hpbmiはそれぞれのアクティブ磁気軸受の永久軸受磁石の磁場であり、Aambiはそれぞれのアクティブ磁気軸受面積(active magnetic bearing area)であり、lambiはそれぞれのアクティブ磁気軸受の空隙(エアギャップ)であり、すなわち、電気式スタビライザ1Aがオフ状態にあり、可動子mがトラックtと接触しているときの永久軸受磁石とそれぞれのアクティブ磁気軸受の電磁石との距離である。
【0099】
電磁石が通電され、可動子mがトラックt上に浮上すると、可動子に作用する力は、以下のように与えられる。
-(Famb1_lev+Famb2_lev)=(Flm+M・g)
ここで、Famb1_levと Famb2_levは、電磁石em1、em2が励磁されたときに、第1および第2のアクティブ磁気軸受amb1、amb2によって生成される上向きに作用する引力である。
【0100】
アクティブ磁気軸受amb1、amb2ごとに、
Fambi_lev=(μ0(hpbmi・Hpbmi)2(N・I)Aambi)/(lambi+x)2
i=1,2
ここで、Nは、それぞれのアクティブ磁気軸受ambiの電磁石の巻数(number of electromagnet turns :電磁石ターン数)であり、Iは、それぞれのアクティブ磁気軸受の電磁石電流であり、xは、電気式スタビライザ1Aがオン状態にあり、可動子mがトラックtの上方に浮上しているときの浮上変位(levitation displacement)である。
【0101】
上記の式について、任意の強磁性部分における磁気飽和効果(magnetic saturation effects)は無視される。永久磁石の高さ(height)と磁場、電磁石の表面積を最大にすることで、磁気軸受力の振幅(amplitude of the active magnetic bearing force)を大きくすることができることがわかる。電磁石(すなわち、NxI)の励起磁場を増加させると、浮上距離(levitation distance)が増加する。電磁石を永久軸受磁石と組み合わせることにより、浮上距離(すなわちx)も増加する。
【0102】
電気式スタビライザ1AのDCリニアモータは、単一の平坦なステータを含む。他の構成では、リニアモータは2つ以上の平坦なステータを含むことができ、各平坦なステータは多相ステータ巻線を含む。可動子は、トラック方向に沿って交互極性の追加の複数の可動子極を画定する1つ以上の追加の複数の永久モータ磁石をさらに備えることができ、各追加の複数の永久モータ磁石は、それぞれの多相ステータ巻線に面する。各平坦なステータは、可動子の下方、可動子の上方、または可動子に沿って配置することができる。実際には、リニアモータは、電気式スタビライザを収容するために利用可能な容積のサイズ及び動作要件に応じて異なる方法で配置され得る、任意の好適な数の平坦なステータを含むことができることが容易に理解されるであろう。平坦なステータはまた、可動子が浮揚されるときの曲げを低減するように配置され得る。
【0103】
例えば、1つ以上の平坦なステータを以下の位置に配置することができる。
可動子の下側。例えばトラックのベース上で、可動子の下側部分に設けられている永久モータ磁石に面する位置。
および/または、
可動子の下側で、可動子の上部に設けられている永久モータ磁石に面する位置。
および/または、
可動子の側部。例えばトラックの複数の側面で、可動子の側部部分に設けられている永久モータ磁石に面する位置。
【0104】
図11は、浮揚時に可動子mの曲げを低減する代替の電気式スタビライザの概略図である。第1の平坦なステータ(「ps1」とラベル付けされる)は、可動子mの下方に配置され、かつ第1の多相ステータ巻線を含む。可動子mは、その長手方向軸に沿って交互の極性(すなわち、N極性およびS極性)を有する第1の複数の可動子極を画定する第1の多相ステータ巻線に面する第1の複数の永久モータ磁石(「pmm1」とラベル付けされる)を含む。第2の平坦なステータ(「ps2」とラベル付けされる)は、可動子mの上方に配置され、かつ第2の多相ステータ巻線を含む。可動子mは、その長手方向軸に沿って交互の極性(すなわち、N極性およびS極性)を有する第2の複数の可動子極を画定する第2の多相ステータ巻線に面する第2の複数の永久モータ磁石(「pmm2」とラベル付けされる)を含む。第1の平坦なステータps1および第1の複数の永久モータ磁石pmm1は、DCリニアモータの第1の部分(符号「lm1」)を画定し、第2の平坦なステータps2および第2の複数の永久モータ磁石pmm2は、DCリニアモータの第2の部分(符号「lm2」)を画定する。
【0105】
電磁石が通電されないとき、可動子mに作用する下向きに作用する制動力Fbrakeは、以下のように与えることができる。
Fbrake=(Famb1_brake+Famb2_brake )+(Flm1-Flm2)+M・g
【0106】
ここで、Flm1は、第1の平坦なステータps1と対向する永久モータ磁石pmm1との間で下向きに作用する引力であり、Flm2は、第2の平坦なステータps2と対向する永久モータ磁石pmm2との間で上向きに作用する引力である。
DCリニアモータlm1、lm2の各部分について、
Flmi=((Blmi)2Almi)/(2μ0) i=1,2
【0107】
DCリニアモータlm1の第1の部分のエアギャップは、距離xだけ減少し、DCリニアモータlm2の第2の部分のエアギャップは、距離xだけ増加するため、エアギャップ磁気誘導Blm1はBlm2は、吸引力の差よりも大きくなり、すなわち、(Flm1-Flm2)が制動力に寄与する。
【0108】
電磁石が通電され、可動子mがトラックt上に浮上すると、可動子に作用する力は、以下のように与えられる。
-(Famb1_lev+Famb2_lev)=(Flm1-Flm2)+M・g
【0109】
通常、引力Flm1とFlm2は実質的に等しくなる。これは、リニアモータlm1の第1の部分のエアギャップが、リニアモータlm2の第2の部分のエアギャップと実質的に等しいためである。
-(Famb1_lev+Famb2_lev)=M・g
【0110】
この代替的な電気式スタビライザ1Bにおいて、対応する上向きに作用する吸引磁力を提供するように第2の平坦なステータps2を可動子mの上方に配置することによって、第1の平坦なステータps1と複数の第1の永久モータ磁石pmm1の間に下向きに作用する吸引磁力が実質的に相殺される。これは、可動子が浮揚されるときの可動子の曲げを低減するのに役立つ。
図10~
図13において、可動子の屈曲は、可動子mの側面間に延びる破線によって概略的に示されている。
【0111】
図12は、浮揚時に可動子の曲げを低減する代替の電気式スタビライザ1Cの概略図である。第1の平坦なステータ(「ps1」とラベル付けされる)は、可動子mの下方に配置され、かつ第1の多相ステータ巻線を含む。可動子mは、その長手方向軸に沿って交互の極性(すなわち、N極性およびS極性)を有する第1の複数の可動子極を画定する第1の多相ステータ巻線に面する第1の複数の永久モータ磁石(「pmm1」とラベル付けされる)を含む。第2の平坦なステータ(「ps2」とラベル付けされている)は、可動子mの下方に配置され、かつ第2の多相ステータ巻線を含む。可動子mは、その長手方向軸に沿って交互の極性(すなわち、N極性およびS極性)を有する第2の複数の可動子極を画定する第2の多相ステータ巻線に面する第2の複数の永久モータ磁石(「pmm2」とラベル付けされる)を含む。第1の平坦なステータps1および第1の複数の永久モータ磁石pmm1は、DCリニアモータの第1の部分(符号「lm1」)を画定し、第2の平坦なステータps2および第2の複数の永久モータ磁石pmm2は、DCリニアモータの第2の部分(符号「lm2」)を画定する。第3のアクティブ磁気軸受(「amb3」とラベル付けされる)もトラックtの中心に設けられる。
【0112】
電磁石が通電されないとき、可動子mに作用する下向きに作用する制動力Fbrakeは、以下のように与えることができる。
Fbrake=(Famb1_brake+Famb2_brake+Famb3_brake)+(Flm1+Flm2)+M・g
【0113】
ここで、Famb3_brakは、永久軸受磁石pbm3と第3アクティブ磁気軸受amb3の電磁石em3の間の下向きに作用する引力である。
【0114】
電磁石が通電され、可動子mがトラックt上に浮上すると、可動子に作用する力は、以下のように与えられる。
-(Famb1_lev+Famb2_lev+Famb3_lev)=(Flm1+Flm2)+M・g
【0115】
ここで、Famb3_levは、電磁石が通電されたときに第3アクティブ磁気軸受amb3によって生成される上向きに作用する引力である。
【0116】
図13は、
図12に示す電気式スタビライザ1Cと同様であるが、浮揚時に可動子の曲げが実質的にない代替の電気式スタビライザ1Dの概略図である。第3および第4の平坦なステータ(「ps3」および「ps4」とラベル付けされる)は、可動子mの上方に配置され、かつ第3および第4の多相ステータ巻線を含む。可動子mは、その長手方向軸に沿って交互極性(すなわち、N極性およびS極性)の第3および第4の複数の可動子極を画定する第3および第4の多相ステータ巻線に面する第3および第4の複数の永久モータ磁石(「pmm3」および「pmm4」とラベル付けされる)を含む。第3の平坦なステータおよび第3の複数の永久モータ磁石は、DCリニアモータの第3部分(「lm3」とラベル付けされる)および第4の平坦なステータを画定し、第4の複数の永久モータ磁石は、DCリニアモータの第4部分(「lm4」とラベル付けされる)を画定する。
【0117】
電磁石が通電されないとき、可動子mに作用する制動力Famb3_levは、以下のように与えることができる。
Fbrake=(Famb1_brake+Famb2_brake+Famb3_brake)+(Flm1-Flm3)
+(Flm2-Flm4)+M・g
【0118】
ここで、Flm1及びFlm2は、第1および第2の平坦なステータps1、ps2と対向する永久モータ磁石pmm1、pmm2の間の下向きに作用する引力であり、Flm3及びFlm4は、第3および第4の平坦なステータps3、ps4と対向する永久モータ磁石pmm3、pmm4の間の上向きに作用する引力である。
【0119】
DCリニアモータlm1、1m2の第1および第2の部分の空隙は、距離xだけ減少し、DCリニアモータlm3、lm4の第3および第4部分の空隙は、距離xだけ増加するため、空隙磁気誘導Blm1およびBlm2は、Blm3およびBlm4よりも大きくなり、引力の差、つまり(Flm1-Flm3)と(Flm2-Flm4)が制動力に寄与する。
【0120】
電磁石が通電され、可動子mがトラックt上に浮上すると、可動子に作用する力は、以下のように与えられる。
-(Famb1_lev+Famb2_lev+Famb3_lev)
=(Flm1-Flm3)+(Flm2-Flm4)+M・g
【0121】
一般に、DCリニアモータlm1およびlm2の第1の部分および第2の部分の空隙は、第3部分および第4部分の空隙に実質的に等しいので、引力Flm1およびFlm3は実質的に等しくなり、引力Flm2およびFlm4は実質的に等しく、DCリニアモータlm3とlm4の一部で、次のようになりる。
-(Famb1_lev+Famb2_lev+Famb3_lev)=M・g
【0122】
図14は、低減された幅制約(すなわち、Y軸に沿って)がある場合に適した代替の電気式スタビライザ1Eの概略図である。単一のアクティブ磁気軸受(「amb1」とラベル付けされている)が、可動子mの下方に配置されている。第1の平坦なステータ(「ps1」とラベル付けされる)は、可動子mの第1側部に配置され、かつ第1の多相ステータ巻線を含む。第2の平坦なステータ(「ps2」とラベル付けされる)は、可動子mの第2側部に配置され、かつ第2の多相ステータ巻線を含む。可動子mは、その長手方向軸に沿って交互の極性(すなわち、N極性およびS極性)を有する第1の複数の可動子極を画定する第1の多相ステータ巻線に面する第1の複数の永久モータ磁石(「pmm1」とラベル付けされる)を含む。可動子mは、その長手方向軸に沿って交互の極性(すなわち、N極性およびS極性)を有する第2の複数の可動子極を画定する第2の多相ステータ巻線に面する第2の複数の永久モータ磁石(「pmm2」とラベル付けされる)を含む。第1の平坦なステータおよび第1の複数の永久モータ磁石は、DCリニアモータの第1の部分(「lm1」とラベル付けされる)および第2の平坦なステータを画定し、第2の複数の永久モータ磁石は、DCリニアモータの第2の部分(「lm2」とラベル付けされる)を画定する。
【0123】
電磁石が通電されないとき、可動子mに作用する制動力Fbrakeは、以下のように与えることができる。
Fbrake=(Famb1_brake)+M・g
【0124】
電磁石が通電され、可動子mがトラックt上に浮上すると、可動子に作用する力は、以下のように与えられる。
-(Famb1_lev)=M・g
【0125】
図1から
図9Bに示されている移動体の本体は、一体構造または単一部品構造を有する。しかしながら、アクセスが限られていると、一体構造または単一部品構造を有する物理的に大きな本体を船舶または他の浮体構造に容易に設置することができない場合がある。
【0126】
図15~
図21に示す代替的な構成では、可動子64は、互いに接続された複数の個々のモジュールまたはユニット66a、66b、...から形成される。そのような可動子は、関節式構造、すなわち、モジュールまたはユニット66a、66b、...が互いに対して移動または回動することができる構造を有し、
図1および
図2に示すトラックとともに、多相ステータ巻線16を含む平坦なステータ10とともに使用することができる。
【0127】
図15は、関節式可動子64の2つのモジュールまたはユニット66a、66bを示す。各モジュールまたはユニット66a、66bは、本体(main body)68を含む。平坦なステータ10に面して、各モジュール又はユニット66a、66bは、特定の極性(例えば、N極性またはS極性)を有する可動子極を画定する1つ以上の永久モータ磁石を含む。特に、
図15は、N極性を有する可動子極を画定する永久モータ磁石70を有する第1のモジュールまたはユニット66aと、S極性を有する可動子極を画定する永久モータ磁石72を有する第2のモジュールまたはユニット66bとを示す。各永久モータ磁石70、72は、各モジュールまたはユニット66a、66bの下面の中央の凹部に形成されたモータマウント74に取り付けられる。個々のモジュールまたはユニットは、トラック方向に沿って交互の極性の可動子極を画定するように互いに接続される。
図17A、
図17B及び
図18において、前記第1のモジュール又はユニット66aは、前記第2のモジュール又はユニット66bに接続されて「可動子磁極対(mover pole pair:可動子ポールペア)」76を画定するように示されている。
【0128】
可動子磁極対76を画定する第1および第2のモジュールまたはユニット66a、66bは、接続ロッド78によって互いに接続される。特に、各接続ロッド78は、軸方向の一端に第1の開口部80を有し、軸方向の他端に第2の開口部82を有する。各モジュールまたはユニット66a、66bの各側面は、突出部(protrusion:突起)84を含む。(各モジュール又はユニットの手前側には突出部が1つだけ示されているが、各モジュール又はユニットの奥側には同じ突出部が設けられていることが理解されよう。)第1の接続ロッド78は第1及び第2のモジュール又はユニット66a、66bの一方側に位置し、第1の開口部80は第1のモジュール又はユニット66aの突出部84を受け入れ、第2の開口部82は第2のモジュール又はユニット66bの突出部84を受け入れる。第2の接続ロッド(不図示)は第1及び第2のモジュール又はユニットの他方側に位置し、第1の開口部は第1のモジュール又はユニットの突出部を受け入れ、第2の開口部は第2のモジュール又はユニットの突出部を受け入れる。第1及び第2のモジュール又はユニット66a、66bは、接続ロッド78に回動可能に接続(pivotally connect)される。
【0129】
図17Aおよび
図17Bに示すように、各連結ロッド78の長さは、隣接するモジュールまたはユニットのペア間の横方向の間隔を調整するように、各接続ロッドの長さを調整することができる。
図17Aは、接続ロッド78が第1の距離D1だけ離間している第1及び第2のモジュール又はユニット66a、66bに接続された直後の初期位置を示す。次いで、接続ロッド78を短くして、第1および第2のモジュールまたはユニット66a、66bが第1の距離D1よりも小さい第2の距離D2だけ離間されるように、接続ロッド78は短くされる。第2の距離D2は例えば、可動子64がトラック2に沿って前方又は後方に移動するとき、第1及び第2のモジュール又はユニット66a、66b間の相対移動を可能にするのに十分である。可撓性絶縁部材(不図示)は、モジュールまたはユニットが必要な量だけ互いに対して移動または回動することができることを妨げない限り、隣接するモジュールまたはユニットの各対の間に配置することができる。
【0130】
各モジュールまたはユニット66a、66bは、下面に4つの非磁性脚86を含む。脚部86は、本体68に沿って離間している。
【0131】
各モジュールまたはユニット66a、66bはまた、下面に第1の複数の永久軸受磁石(first plurality of permanent bearing magnets)88および第2の複数の永久軸受磁石90を含む。第1の複数の永久軸受磁石88は、モジュールまたはユニット66a、66bの横軸に沿って交互の第1および第2の極性(例えば、N極性およびS極性)の複数の軸受極を画定する。第2の複数の永久軸受磁石90は、モジュールまたはユニット66a、66bの横軸に沿って交互の第1および第2の極性(例えば、N極性およびS極性)の複数の軸受極を画定する。より詳細には、第1の複数の永久軸受磁石88は、N極性の6つの軸受極およびS極性の6つの軸受極を画定し、第2の複数の永久軸受磁石90は、N極性の6つの軸受極およびS極性の6つの軸受極を画定する。
【0132】
永久軸受磁石88、90は、各モジュールまたはユニット66a、66bの下面のそれぞれの凹部に形成される2つの軸受マウント92、94に取り付けられる。
【0133】
各モジュールまたはユニット66a、66bは、その剛性を高めるために上方に延びるフランジ96を含む。フランジ96は、本体68の上面に形成され、それに沿って延びる。
【0134】
各モジュールまたはユニット66a、66bの両側は、モジュールまたはユニットがトラックに沿って前後に移動するときにモジュールまたはユニットを案内して配置するためにトラック2の対向する側に接触するように適合された案内部材として複数のローラ98を含む。ローラ98は、上下二列に配置されている。
【0135】
可動子磁極対76を画定する第1および第2のモジュールまたはユニット66a、66bは、各多相ステータ巻線内の切り替えられたDC電流によって生成される磁場と、永久モータ磁石72、74の対向する対によって生成される磁場との相互作用によって生成される双方向線形駆動力(または「推力」)によって、トラック2に沿って前方または後方に選択的に駆動され得る。可動子磁極対76は、実用的な可動子の最小構成(minimum construction)を表す。
【0136】
図19A、
図19B及び
図20は第1の可動子磁極対76aを画定する第1および第2のモジュールまたはユニット66a、66bが、個々のモジュールまたはユニットと同じ方法で、接続ロッド100の対によって第2の可動子磁極対76bを画定する第3および第4のモジュールまたはユニット66c、66dにどのように接続されるかを示す。特に、各接続ロッド100の長さを調整して、隣接する一対の可動子極ペア間の横方向間隔を調整することができる。
図19Aは、接続ロッド100が第1の距離D1だけ離間している第2及び第3のモジュール又はユニット66b、66cに接続された直後の初期位置を示す。次いで、連結ロッド100を短くして、第2および第3のモジュールまたはユニット66b、66cが第1の距離D1よりも小さい第2の距離D2だけ離間されるようする。第2の距離D2は例えば可動子64がトラック2に沿って前方又は後方に移動するとき、必要に応じて第2及び第3のモジュール又はユニット66b、66c間の相対移動を可能にするのに十分である。
【0137】
このように、関節式可動子64は、適切な数のモジュール又はユニットから構築することができる。各モジュールまたはユニット66a、66b、...は、実質的に同じ構造を有し、「標準」モジュールまたはユニットとして製造することができ、したがって、異なる長さの可動子は、必要な数のモジュールまたはユニット(または可動子磁極対)を選択し、上記のようにそれらを一緒に接続することによって構築することができる。各追加のモジュールまたはユニットは、可動子の質量を増加させる。これにより、「標準」幅トラックと共に使用するための複数の「標準」モジュール又はユニットから、異なる質量の可動子を構築することができる。
【0138】
図21は、連結ロッドによってより強固に連結された複数のモジュールまたはユニットを有する関節式可動子64の下面を示す。
図21から、永久モータ磁石70、72が、関節式可動子64の長手方向軸に沿って交互の極性(すなわち、N極性およびS極性)の複数の可動子極をどのように画定するかが明らかである。
図21はまた、各モジュールまたはユニットの第1および第2の複数の永久軸受磁石88、90によって画定される軸受磁極(bearing poles)がどのように可動子64の長手方向軸に沿って延びるかを示す。
【0139】
図22~
図24に示されるように、第1の複数の永久軸受磁石88は、トラックのベースを横切って配置される6対の電磁石102a、102b、...、102fに対向して配置される。各電磁石は、モジュール構造を有し、すなわち、トラックに沿って一緒に組み立てられる複数のモジュールまたはユニット104から構成され、特に
図24を参照されたい。第2の複数の永久軸受磁石90はまた、トラックのベースを横切って配置される6対の電磁石に対向して配置される。
図1から
図9Bに示されている電気式スタビライザでは、極性が交互の複数の軸受極を画定する永久軸受磁石と、複数対の電磁石との同様の配置を使用することもできる。
【0140】
上述のトラック2は、直線状の水平トラックレイアウトを有し、
図25を参照すると、トラックは「t」とラベル付けされ、可動子は「m」とラベル付けされている。しかし、トラックは、円形の水平トラックレイアウトを有することもできる。トラックが円形である場合、可動子は、トラックに沿って移動することを可能にするように成形され、湾曲した(curved)側面を有することになる。
図26を参照すると、トラックは「t」とラベル付けされ、可動子は「m」とラベル付けされている。トラックが円形である場合、例えば、トラックに沿って可動子を前方に駆動することは、時計回り方向に可動子を駆動することに対応することができ、トラックに沿って可動子を後方に駆動することは、反時計回り方向に可動子を駆動することに対応することができる。
【0141】
図25は、直線トラックを有する4つの電気式スタビライザ106a、106b、...、106dを組み合わせて使用して、船舶の垂直軸の周りの回転を減衰させることができる方法を示す。より詳細には、船舶の横軸または左舷-右舷軸に沿って平行に配置される2つの電気式スタビライザ106a、106bは、船舶の縦軸または船首-船尾軸周りの回転を減衰させるアンチロールスタビライザとして使用することができる。2つの電気式スタビライザ106c、106dは、船舶の長手方向軸または船首-船尾軸に沿って平行に配置され、船舶の横方向軸または左舷-右舷軸の周りの船舶の回転を減衰させるためのアンチピッチスタビライザとして使用することができる。
図25に示すように、電気式スタビライザは同一である必要はなく、例えば、異なるトラック幅及び異なるトラック長を有することができ、異なる軸に沿って異なる減衰を提供するように構成することができる。
【0142】
図26は、複数の湾曲セクション110a、110b、および110c内に構築することができる円形トラックを有する電気式スタビライザ108を示す。
【0143】
図27~
図34に示す電気式スタビライザの別の構成では、DCリニアモータは、「かご形」構造を有する誘導モータである。リスケージ構造は、
図15~
図21に示す関節式可動子64に適用され、同様の部品には同じ参照符号が付されている。上述の
図21に概ね対応する
図27から、同期モータの永久モータ磁石70、72が、可動子64の横軸に沿って離間している一対の導電性短絡バー112,114と、短絡バー112,114の間に平行に延在し、可動子64の縦軸に沿って離間している複数の導電性導体バー116とに置き換えられていることが容易に理解されよう。導体バー116は、各モジュールまたはユニットのマウントまたはコア122に形成された複数の開口に受け入れられる。短絡バー112、114及び導電バー116は、例えば、アルミニウム又は銅で形成することができる。導電バー116は、マウント122の下面で部分的に露出し、平坦なステータに面する。
【0144】
一対のモジュールまたはユニット66a、66bが
図28および
図29に示されている。図示のように、短絡バー112は複数のセグメント112a、112b、...に分割され、短絡バー114は複数のセグメント114a、114b、...に分割される。各モジュールまたはユニット66a、66bは、セグメントのペアを含む。特に、モジュールまたはユニット66aは、離間したセグメント112a、114aのペア(pair of spaced segments)を含み、モジュールまたはユニット66bは、図示のように、離間したセグメント112b、114bのペアを含む。各モジュールまたはユニット66a、66bは、複数の導電バー116を含む。各モジュールまたはユニット66a、66bはまた、上述のように複数の導電バー116を受け入れるためのマウント122を含む。各マウント122は、渦電流損失を最小限に抑えるために横方向に積み重ねられた、電気絶縁層によって分離された透磁性(好ましくは強磁性)材料の複数の薄いシートまたは積層体を備える。
【0145】
図33および
図34により明確に示されるように、セグメント112a、112b、...は、導電性可撓性コネクタ(electrically conductive flexible connectors)118によって物理的および電気的に接続される。同様に、セグメント114a、114b、...は、導電性可撓性コネクタ120によって物理的及び電気的に接続される。各可撓性コネクタ118,120は、機械的固定によってセグメントのペアの間に接続され、セグメント112a、112b、...が一緒に単一の短絡バー112を画定し、セグメント114a、114b、...が一緒に単一の短絡バー114を画定するように、電気的接触を維持しながら、可動子のモジュールまたはユニットが移動または回動することを可能にする。可動子が関節接合されない場合、短絡バーは代わりに単一部品構造を有することができることが容易に理解されるであろう。
【0146】
使用中、
図27から
図34に示される可動子64は、上述のトラック2のチャネル4内に配置され、スタビライザマスとしてトラックに沿って前後に移動するように適合される。特に、導電バー116は、トラック2のベースの中央に取り付けられた平坦なステータ10に面する。可動子は、上記でより詳細に説明したように、DCリニアモータによってトラック2に沿って前方または後方に駆動され得る。
【符号の説明】
【0147】
1、106、108:電気式スタビライザ 2:トラック 2a:ベース 2b、2c:側面 4:チャネル 6:可動子 8:直流リニアモータ 10:平坦なステータ 12:巻線スロット 14:巻線コイル 16:多相ステータ巻線 18:相巻線 20:バスバーまたはケーブル 22:電力変換システム 24:コントローラ 26:変換ユニット 28:AC電源 30:スイッチまたはブレーカ 32:本体 32a:上面 32b:下面 32c、32d:側面 34:ガイド部材 36:長手方向軸 38:横軸 40:永久モータ磁石 42:モータマウント 44、48:アクティブ磁気軸受 46、50:電磁石 52、54:永久軸受磁石 56、58:軸受マウント 60:空隙 62:非磁性脚部 64:関節式可動子 66、104:モジュール又はユニット 68:本体 70、72:永久モータ磁石 74:モータマウント 76:可動子磁極対 78、100:接続ロッド 80:第1の開口部 82:第2の開口部 84:突出部 86:脚部 88、90:永久軸受磁石 92、94:軸受マウント 96:フランジ 98:ローラ 102:電磁石 110:曲線部 112、114:短絡バー 116:導電バー 118、120:導電性可撓性コネクタ 122:マウント
【外国語明細書】