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特開2023-184446靭性及び強度が改善されたマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184446
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】靭性及び強度が改善されたマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb
(51)【国際特許分類】
   C22C 38/00 20060101AFI20231221BHJP
   C22C 38/48 20060101ALI20231221BHJP
   F01D 25/00 20060101ALI20231221BHJP
   C21D 6/00 20060101ALN20231221BHJP
   C21D 9/00 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
C22C38/00 302Z
C22C38/48
F01D25/00 L
C21D6/00 102J
C21D9/00 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023080161
(22)【出願日】2023-05-15
(31)【優先権主張番号】202210679727.1
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】515322297
【氏名又は名称】ゼネラル エレクトリック テクノロジー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】General Electric Technology GmbH
【住所又は居所原語表記】Brown Boveri Strasse 8, 5400 Baden, Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(72)【発明者】
【氏名】リー、ユアンピン
(72)【発明者】
【氏名】リー、チャン
【テーマコード(参考)】
4K042
【Fターム(参考)】
4K042AA25
4K042BA01
4K042BA02
4K042CA07
4K042CA08
4K042CA09
4K042CA10
4K042CA13
4K042CA16
4K042DA02
4K042DB07
4K042DC02
4K042DC03
4K042DD03
4K042DD05
4K042DE02
4K042DE03
(57)【要約】
【課題】マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの靭性及び強度を改善する
【解決手段】マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの靭性及び強度の向上につながる材料特性を改善する下限及び上限を含む組成範囲を特定する。さらに、クロム-ニッケル当量バランス(CNB)を適切なレベル内に制御される。靭性及び強度の増加によって、焼戻し脆性に対する感受性が低下する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.60
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.20
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になるマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
【請求項2】
ニッケルの重量%が約0.53であり、モリブデンの重量%が約0.04である、請求項1に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
【請求項3】
ニッケル/モリブデン重量比が3を超える、請求項1に記載のグレード403Cbのマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼。
【請求項4】
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが740MPa~800MPaの範囲内の降伏強さを有する、請求項1に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
【請求項5】
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが880MPa~950MPaの範囲内の引張強さを有する、請求項1に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
【請求項6】
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが50J以上の衝撃靭性を有する、請求項1記載のマイクロ合金化マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
【請求項7】
重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.6
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.2
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になり、50J超の衝撃靭性を有する、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
【請求項8】
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが740MPa~800MPaの範囲内の降伏強さを有する、請求項7に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
【請求項9】
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが880MPa~950MPaの範囲内の引張強さを有する、請求項7に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
【請求項10】
ニッケル/モリブデン重量比が3を超える、請求項7に記載のグレード403Cbのマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼。
【請求項11】
重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.60
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.20
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になり、ニッケル/モリブデン重量比が3を超えるマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbを含むタービン部品。
【請求項12】
前記マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが50J超の衝撃靭性を有する、請求項11記載のタービン部品。
【請求項13】
前記マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが740MPa~800MPaの範囲内の降伏強さを有する、請求項11記載のタービン部品。
【請求項14】
前記マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが880MPa~950MPaの範囲内の引張強さを有する、請求項11記載のタービン部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の実施形態は、一般にマルテンサイト系ステンレス鋼合金に関し、特に靭性及び強度を改善するためマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金のマイクロアロイング(微量元素添加)に関する。
【背景技術】
【0002】
マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は、高い強度及び耐食性を要する用途で主にタービン及び圧縮機部品に使われる特殊マルテンサイト系ステンレス鋼種である。例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbは、機械的特性とコストのバランスに優れているので、回転部品に常用される。通例、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbを構成する元素で組成範囲が特定されるのは一部だけである。例えば、炭素、マンガン、クロム、ニオブの組成範囲は特定されるが、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbを構成する他の合金元素の下限は特定されないのが一般的である。ニッケル、モリブデン及びバナジウムは、組成の下限が特定されていない元素の具体例である。コストを削減するために、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金においてこのように組成の下限が特定されていない元素は略零まで減らされることが多い。
【発明の概要】
【0003】
以下、本明細書に記載された様々な実施形態の幾つの態様の基本的な理解を図るため、本願で開示する技術的内容について簡単に要約する。この要約は、様々な実施形態を幅広くまとめたものではない。これは、特許請求の範囲に記載された発明の基本的又は本質的特徴を特定するものでも、特許請求の範囲に記載された発明の技術的範囲を定めるのに資するためのものでもない。その唯一の目的は、以下の詳細な説明の前置きとして、本発明の幾つかの概念を簡潔に紹介することである。
【0004】
本発明者らは、ニッケル、モリブデン及びバナジウムのように、幾つかの組成元素が略零に特定されているマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbでは、靭性及び強度/硬さが低下してしまうという知見を得た。靭性及び強度/硬さの低下は、焼戻し脆性に対する感受性の増大に対応する。その結果、かかるマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は熱処理が難しくなって、材料の再加工が必要となり、ひいては不要なコストが発生する。
【0005】
本発明者らは、略零とされてきた微量元素の幾つかの微量元素を特定することによって従来のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの短所を解消できることを発見した。例えば、本発明者らは、ニッケル及びモリブデンのような微量元素について靭性及び強度を高める組成を特定することを提案する。一実施形態では、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbのニッケル及びモリブデンは、下限及び上限を含む組成範囲で特定される。例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金におけるニッケルの組成量は0.3%~0.6%の範囲に特定でき、モリブデンの量は0.05%~0.2%の範囲に特定できる。さらに、クロム-ニッケル当量バランス(CNB)は、CNB=(Cr+1.5W+4Mo+5Nb+6Si+9Ti+11V+12Al)-(40C+30N+4Ni+2Mn+Cu)という式に基づいて所定の範囲内に制御することができる。例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金のCNBは、5.0~7.5の範囲で制御することができる。
【0006】
マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbをこのようにマイクロアロイングすることによって、靭性及び強度の増加につながる。靭性及び強度の増加によって、焼戻し脆性に対する感受性が低下する。全般的に、これらの実施形態のマイクロアロイングによってマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金の安定性が改善される。その結果、本明細書に記載されるマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbで作られた回転部品は、この合金の安定性の向上により性能の信頼性が向上する。
【0007】
一実施形態では、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbを提供する。マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbは、重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.60
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.20
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になる。
【0008】
別の実施形態では、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbについて開示する。マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbは、重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.6
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.2
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になり、50J超の衝撃靭性を有する。
【0009】
第3の実施形態では、タービン部品を提供する。タービン部品は、重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.60
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.20
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になり、ニッケル/モリブデン重量比が3を超えるマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbを含む。
【0010】
非限定的な実施形態に関する以下の詳細な説明を添付の図面と併せて参照することによって、本発明の理解を深めることができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、組成を種々変更したマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbのプロットであり、該403Cb合金の様々な元素の重量%組成を変更したものを示す。
図2図2は、図1に示すマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbで実施したシャルピーVノッチ(CVN)衝撃試験のプロットである。
図3図3は、図1に示すマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの降伏強さ及び引張強さのプロットである。
図4図4A図4Cは、ニッケル量及びモリブデン量並びにクロム-ニッケル当量バランス(CNB)レベルが本発明の実施形態で特定されるものに適合しないマルテンサイト系ステンレス鋼種403CbでのCVN衝撃試験、降伏強さ、引張強さ及び硬さのプロットである。
図5図5A図5Cは、本発明の実施形態で特定される量及びレベルに適合しない別の組成のマルテンサイト系ステンレス鋼種403CbでのCVN衝撃試験、降伏強さ、引張強さ及び硬さのプロットである。
図6図6A図6Cは、本発明の実施形態で特定されるニッケル量及びモリブデン量並びにクロム-ニッケル当量バランス(CNB)を有するマルテンサイト系ステンレス鋼種403CbでのCVN衝撃試験、降伏強さ、引張強さ及び硬さのプロットである。
図7図7A図7Dは、ニッケル及びモリブデン組成の異なるマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金で得られたCVN衝撃試験サンプルのフラクトグラフィを示す。
図8図8A図8C及び図8D~8Fは、それぞれ、図7A及び図7Dに示すフラクトグラフィで観察された様々な走査型電子顕微鏡(SEM)写真を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの化学組成は、数多くの異なる元素を含む。マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの化学組成の主要元素としては、炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、ニッケル、クロム、モリブデン、ニオブ、バナジウム、鉄が挙げられる。マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの化学組成の残余の元素としては、鉛、スズ、アルミニウムが挙げられる。
【0013】
マルテンサイトステンレス鋼種403Cbは、合金元素の添加が最小であることから靭性及び強度の組合せが向上したコスト競争力に優れる合金として知られているが、本発明者らは、この合金の材料特性は靭性及び強度/硬さを始めとして改善の余地があるとの結論を得た。特に、本発明者らは、現在市販されているマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbは、その主要な化学組成元素の幾つが略零の重量%で配合されていることを明らかにした。本明細書で用いる「略零」という用語は、クロム-ニッケル当量バランス(CNB)に対する添加合金元素の絶対寄与が0.5未満であることを意味する。フェライト形成及びオーステナイト形成元素の重量%を考慮すると、CNBは、CNB=(Cr+1.5W+4Mo+5Nb+6Si+9Ti+11V+12Al)-(40C+30N+4Ni+2Mn+Cu)という式で計算できる。例えば、Ni<0.125%、Mo<0.125%、Si<0.10%、V<0.05%は大体零とみなすことができるが、合金元素の実際の機能は非常に複雑で相互に影響し合うため、これらが絶対的な臨界値であることを意味しない。これらの元素の重量%が略零である理由は、それらの下限が特定されていないからである。その結果、供給元はコスト削減策を講じ、これらの元素の重量%が略零のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbを生産する。ニッケル、モリブデン及びバナジウムは、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの化学組成において下限が通例特定されていない元素の一部であり、そのためマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの供給品では略零重量%で配合されている。
【0014】
本発明者らは、ニッケル及びモリブデンが略零である化学組成を有するマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの供給品は、靭性及び強度/硬さが低下しているという知見を得た。例えば、図1は、組成を種々変更したマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbのプロットであり、403Cb合金を構成する各種元素の重量%組成を種々変更したものを示している。特に、図1は、様々な期間(期間1、期間2、期間3及び期間4)に受領したマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの4種類の異なる供給品における炭素、マンガン、ケイ素、リン、硫黄、ニッケル、モリブデン、ニオブ、バナジウム、鉛、スズ及びアルミニウムの重量%を示す。これらの期間のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの様々な供給品で、ニッケルの重量%値は0.32、0.19、0.16及び0.43であったのに対して、モリブデンの重量%値は0.05、0.04、0.04及び0.14であった。
【0015】
図1に示すマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb供給品の各々で、室温(RT)シャルピーVノッチ(CVN)衝撃試験を実施した。図2に示すように、期間3に供給されたマルテンサイト系ステンレス鋼種403CbのRTCVN衝撃試験の結果は、期間1、期間2及び期間4に供給されたもののRTCVN衝撃試験の結果よりも大幅に低い。期間1、期間2及び期間4の供給品のRTCVN衝撃試験の結果と、期間3の供給品のRTCVN衝撃試験の結果の低下とを対比すると、期間3のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb供給品が、期間1、期間2及び期間4のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb供給品よりも靭性が低いことが分かる。期間3に供給されたマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの低い靭性は、図1に示すように合金中のニッケル及びモリブデンの重量%が低いことに帰すことができる。
【0016】
図1に示すマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb供給品で実施したRTCVN衝撃試験に加えて、RT強度試験も実施した。マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb供給品の各々についてRT強度試験の結果を降伏強さ及び引張強さの形態で図3に示す。図3に示すように、期間3のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb供給品は、期間1、期間2及び期間4のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb供給品と対比すると、低い降伏強さと低い引張強さを有していた。期間1、期間2及び期間4の供給品の結果と対比して期間3の供給品で得られたマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの低い降伏強さ及び低い引張強さも、図1に示すように合金中のニッケル及びモリブデンの重量%が低いことに帰すことができる。
【0017】
図1図3に示す結果の解析に基づいて、本発明者らは、合金の靭性及び強度が高まるようにマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbのニッケル及びモリブデンをマイクロアロイングすることを提案する。物理金属学の観点から、ニッケルはオーステナイトの安定化及び焼入れ性の向上に役立ち、モリブデンは有害な偏析を遅らせ、脆性を抑えるのに役立つ。どちらの元素も固溶強化をもたらし、不純物元素の偏析及び結晶粒成長を防ぐなど拡散抵抗を高める。このように、ニッケルとモリブデンのマイクロアロイングの組合せは、靭性及び強度の向上をもたらす。
【0018】
マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの靭性及び強度の向上は、様々な実施形態に則してニッケル及びモリブデンをマイクロアロイングすることによって達成できる。例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbにおけるニッケル及びモリブデンの組成は、各々、下限及び上限を有する範囲として特定できる。一実施形態に係るマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbは、重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.3~0.6
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.2
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
から本質的になる。
【0019】
上記に特定した量に加えて、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbは、他の残余の元素を含んでいてもよい。例えば、残余の元素としては、鉛、スズ及びアルミニウムが挙げられる。一実施形態では、これらの残余の元素の量は、
鉛 0.005以下
スズ 0.05以下
アルミニウム 0.05以下
を含むことができる。
【0020】
別の実施形態では、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbにおけるクロム-ニッケル当量バランスレベル(CNB)を、合金の強靱化及び強化効果を促進するように制御できる。例えば、前述のCNB=(Cr+1.5W+4Mo+5Nb+6Si+9Ti+11V+12Al)-(40C+30N+4Ni+2Mn+Cu)という式を用いて、上記マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403CbにおけるCNBを5.0~7.5の範囲に制御することができる。マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403CbにおけるCNBを5.0~7.5の範囲にすると、オーステナイトとフェライトの微妙なバランスを維持できるので靭性及び強化の促進に役立つ。特に、オーステナイト及びフェライトはいずれも強度の低い微細組織である。CNBが高い(>7.5)とフェライト形成のリスクが高まり、CNBが低い(5.0<)と、残留オーステナイトが過剰になるリスクが高まる。CNBを5.0~7.5のような適切な範囲内に制御すると、高温でのオーステナイトの安定化に役立つとともに、低温に急冷したときの効果的なマルテンサイト変態を担保する。
【0021】
なお、ニッケル及びモリブデンは、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金の靭性及び強度を向上させるための特定量に特定することができ、合金の材料特性が一段と安定になる。この限りにおいて、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbは、焼戻し脆性に対する感受性が低下し、熱処理性が高まる。さらに、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbをこのように並びに他の実施形態に従ってマイクロアロイングすると、生産プロセスのばらつきの影響が最小限に抑制される。一実施形態では、ニッケルは約0.51重量%とすることができ、モリブデンは約0.04重量%とすることができる。別の実施形態では、ニッケルは約0.44重量%とすることができ、モリブデンは約0.16重量%とすることができる。ニッケル及びモリブデンに関するこれらの組成量はいずれも、靭性及び強度を向上させる。本明細書に記載の組成量とは対照的に上記の範囲に適合しないニッケル及びモリブデン量は、低下した靭性を有することがある。例えば、ニッケル約0.12%及びモリブデン0.02%のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は、許容範囲内の強度は有しているものの、靭性が明らかに低下してしまうおそれがある。本明細書で用いる「約」という用語は、表記の値の±10%の値を包含する。
【0022】
ニッケル及びモリブデンのマイクロアロイングは、数多くの公知の技術のいずれかを用いて実施することができる。例えば、マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は、上記の方法で、アルゴン酸素(AOD:Argon-Oxygen-Decarburization)精錬又は真空取鍋脱ガス(VLD:Vacuum Ladle Degassing)を用いる基本電気炉(BEF)プロセス及びそれに続くエレクトロスラグ再溶解(ESR)又は真空アーク再溶解(VAR)プロセスによってマイクロアロイングすることができる。CNBは、製鋼時にCNB=(Cr+1.5W+4Mo+5Nb+6Si+9Ti+11V+12Al)-(40C+30N+4Ni+2Mn+Cu)の式に従って5.0~7.5の範囲内に制御され、かかるマイクロアロイ法の強靱化及び強化効果を高めるのに役立つ。
【0023】
ニッケル及びモリブデンの両者について上述の下限及び上限で規定される範囲及び特定の組成量並びにCNB範囲は、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの靭性及び強度を向上させる上で臨界的重要性をもつ。特に、Ni及びMoの両者、特にNiが略零まで低減すると、靭性及び強度の不均衡を回避するのが難しい。基本的に、C、Cr、Nb、Si、Vのようなすべての合金元素は強度の向上にしか作用せず、脆性は依然として容易に起こる。
【0024】
図4A図4Cは、ニッケル量及びモリブデン量並びにクロム-ニッケル当量バランスレベルが本発明の実施形態で特定されるものに適合しないマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金でのCVN衝撃試験結果、降伏強さ、引張強さ及び硬さのプロットである。例えば、第1のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は0.14%Ni、0.04%Mo、CNB=8.74(実験1)で特定され、第2のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は0.12%Ni、0.02%Mo及びCNB=7.43(実験2)で特定される。室温CVN衝撃結果は、複数の焼戻し冷却法を用いて得た。例えば、第1の焼戻し法は、静止空気を用いることを含む。具体的には、材料又は部材を、炉内で700~720℃で十分な時間焼戻した後、取り出して静止空気中で室温まで自然冷却する。第2の焼戻し法は高速空気を用いることを含む。具体的には、炉内で同様に焼戻した後の材料又は部材を室温に冷却するため、(例えば、空気ファンによって)高速で移動する空気を当てる。第3の焼戻し法は、油の使用を含む。具体的には、材料又は部材を675℃で焼戻した後で室温油に浸漬して冷却する。第4の焼戻し法は、水の使用を含んでいた。具体的には、材料又は部材を700~720℃で焼戻した後、室温の水に浸漬して冷却する。これらの焼戻し法において、CVN衝撃結果は、標準シャルピーVノッチ試験片をASTM規格A370による専用試験機で一撃で衝撃を加えて破壊したときの吸収エネルギーを測定することによって得た。
【0025】
CVN衝撃結果のプロットを図4Aに示す。図4Aに示すように、焼戻し後の従来の空冷(静止空気及び高速空気)、さらには油冷であっても、試験した2種類の合金中のNi(<0.14%)及びMo(<0.04%)含有量が非常に低いことから、脆性を解消するのが難しいことが分かる。図4B及び図4Cは、高速空気を利用した焼戻し冷却後に得られた第1及び第の2マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金のさらなる結果を示す。具体的には、図4Bは、第1及び第2のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金で得られた降伏強さ及び引張強さの結果を示す。降伏強さ及び引張強さの結果は、ASTM規格A370による標準丸型試験片の引張試験によって得た。図4B及び図4Cに示すように、空冷で高い又は低い硬さ/強度レベルに熱処理しても、図4Aに示すように靭性を向上させるのは依然として困難である。図4Aから明らかな通り、焼戻し後の水冷で靭性の改善がみられるが、これはNi及びMoが低い場合の可逆的な焼戻し脆性を示している。
【0026】
図5A図5Cは、本発明の実施形態で特定される量及びレベルに適合しない別の組成のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金でのCVN衝撃試験、降伏強さ、引張強さ及び硬さのプロットである。具体的には、このマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は、0.53%Ni、0.04%Mo及びCNB=4.9で規定されるものであった。このマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金の結果は、空冷法を用いて合金を焼戻しすることによって得られた。例えば、このマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は、1140℃で30分間オーステナイト化して室温まで空冷し、710℃で60分間焼戻して室温まで空冷するという熱処理に付した後で試験した。マルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金について、同じオーステナイト化処理及び空気冷却に付した後、720℃で60分間焼戻して室温まで空冷した。
【0027】
図5A図5Cに示すように、Niを0.53%に増加させたこのマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は、空冷による710℃の焼戻しで靭性が大幅に向上し、強度/硬さとのバランスが非常によい。ただし、焼戻し温度が10℃上昇すると、靭性が大幅に改善されるにもかかわらず、強度は著しく低下しており、これは焼戻し耐性の低下を意味する。図5A図5Cに示すこれらの結果は、Niが鋭敏な強靱化及び強化元素であるが、焼戻し耐性を低下させてしまうおそれがあり、Moの添加でバランスをとることができることを示している。そこで、他の特性をさほど変化させずに403Cb合金の靭性及び強度を改善するには、Ni及びMoの両方の範囲を特定する必要がある。ベストプラクティスを達成するため、本発明の一実施形態では、Niを0.3~0.6%以内、Moを0.05~0.2%以内、Ni/Mo>3.0及びCr-Ni当量バランスレベルを5.0~7.5以内に制御することを提案する。
【0028】
このように、一実施形態では、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金は、3超のニッケル/モリブデン重量比を有していてもよい。Moと比べると、Niは靭性及び強度の両者を改善する上で主要な役割を果たすが、焼戻し耐性も低下させてしまう。例えば、Niが0%から2%に増加すると、0.15%Cを含む鋼の臨界変態温度(Ac3)は50℃低下することが報告される。換言すると、0.5%のNiは、焼戻し耐性を約15℃低下させてしまうおそれがある。そこで、かかる低下と均衡させるためにMoが添加されるが、Niの強靱化及び強化効果を最大限に活用するためNi/Mo>3に維持される。
【0029】
上述のニッケル及びモリブデン量、クロム-ニッケル当量バランスレベル並びにニッケル/モリブデン比でマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbをマイクロアロイングすることによって達成できる靭性及び強度の改善は、従来のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbと対比すると顕著である。例えば、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの降伏強さを、740MPa~800MPaとすることができる。マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb引張強さを、880MPa~950MPaとすることもできる。マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbは、50J超の衝撃靭性を有することができる。マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbによって達成される靭性及び強度の向上によって、靭性及び強度の向上に伴って焼戻し脆性に対する感受性が低下するので、合金の熱処理性が高まる。例えば、可逆的な焼戻しの焼戻し脆性を回避するには、高温焼戻し後の高速空気冷却、さらには静止空気冷却であっても十分である。
【実施例0030】
以下、本明細書に記載の実施形態に則して配合されたマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbの具体例を示す。
【0031】
図6A図6Cは、本発明の実施形態で特定されるニッケル及びモリブデン量、CNBレベル並びにニッケル/モリブデン比を有するマルテンサイト系ステンレス鋼種403CbでのCVN衝撃試験、降伏強さ、引張強さ及び硬さのプロットである。具体的には、これらの例のプロットは、0.46%Ni、0.14%Mo及びCNB=6.7に制御された第1のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金、並びに0.56%Ni、0.12%Mo及びCNB=7.0に制御された第2のマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb合金で得られた。これらの合金はいずれも、1140℃/40分間のオーステナイト化処理と室温までの高速空冷、718℃/90分間の焼戻しと室温までの空冷という熱処理に付した。いずれの場合も、図4A図4C及び図5A図5Cに示す従前の事例に比べて、靭性、強度/硬さ及び焼戻し耐性の組合せが格段に優れている。焼戻し後の空冷で良好な靭性を達成するのに十分であり、これは、本明細書に記載の実施形態によって焼戻し脆性を効果的に抑制できることを意味する。
【0032】
さらに、様々な組成に制御したCVN衝撃試料のフラクトグラフィでは、図7A図7Dに示すように、Ni及びMo添加量の増加に伴って脆性から延性への破壊モード遷移が認められた。図7A図7Dのフラクトグラフィでは、各々の事例の脆性域を破線で囲んである。図7A及び図7Dのフラクトグラフィで観察された走査型電子顕微鏡(SEM)写真を、それぞれ図8A図8C及び図8D図8Fに示す。SEM観察は、図7A及び図7Bについてはへき開+IG(粒間)破壊が主要な破壊メカニズムであるのに対して、本明細書に記載の実施形態で特定される範囲内のNi及びMoを添加した図7C及び図7Dについては延性引裂き(ディンプル)+へき開破壊機構へと変化している。これらの結果は、従来の403Cb合金の本明細書に記載の実施形態による強靱化及び強化が効果的であることを示している。
【0033】
本願で開示した例示的な実施形態についての説明は、要約書に記載したものを含めて、開示す実施形態を開示す正確な形態に限定するものでも、網羅的なものでもなければ、開示した実施形態を開示した形態のままに限定するものでもない。例示のため特定の実施形態及び実施例を記載してきたが、当業者には、様々な修正が可能であって、かかる実施形態及び実施例の範囲内とみなされることが明らかであろう。例えば、様々な実施形態における分量、成分、工程及び態様を組合せて、本明細書及び図面に記載されていない別の実施形態で用いるのに適したものとすることができる。このように、本発明の技術的思想及び技術的範囲から逸脱せずに、上述の発明に変更を加えることができることから、本願明細書及び図面に記載された技術的内容はすべて本発明の思想を例示するための例にすぎず、本発明を限定するものではない。
【0034】
この観点から、本願で開示する技術的内容について、様々な実施形態及び適用できる場合には対応する図面に関連して説明してきたが、他の同様の実施形態を用いることもできるし、開示した技術的内容から逸脱せずに同一の、類似の、代替的又は置換的機能を果たすために、記載された実施形態に修正及び追加を加えることができる。したがって、本願で開示する技術的内容は、本明細書に記載したいかなる実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された範囲及び技術的範囲で解釈すべきである。例えば、本発明の「一実施形態」という場合、記載された特徴を備える追加の実施形態の存在を除外するものとして解釈すべきではない。
【0035】
特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、「第3」、「上」、「下」、「底部」及び「頂部」のような用語は符号にすぎず、その目的物に数的又は位置的要件を課すものではない。「実質的」、「概略」及び「約」という用語は、部品又はアセンブリの機能目的を達成するのに適した理想的な所望条件に対して、合理的に達成できる製造及び組立て公差内にある条件を示す。さらに、特許請求の範囲の限定は、機能的記載では記載されておらず、特許請求の範囲の限定が構造についての記載を伴わずに機能に関する記載に続いて「手段」という語句を明示的に用いていない限り、そのように解釈すべきではない。
【0036】
以上の記載は、本願で開示する技術的内容の例示的なシステム及び方法の具体例を包含する。いうまでもなく、本願で構成成分又は方法のすべての組合せを説明しつくすことはできない。当業者には明らかであろうが、特許請求の範囲に記載されたされた技術的内容について数多くの追加の組合せ及び置換が可能である。さらに、発明の詳細な説明、特許請求の範囲及び図面において「含む」、「有する」、「もつ」などの用語が用いられている場合、これらの用語は、「含む」及び「備える」という用語の解釈と同様に内包的なものである。換言すると、別途明示されていない限り、特定の性質を有する1以上の構成要素を「備える」、「含む」又は「有する」実施形態は、その性質をもたない追加の構成要素を含んでいてもよい。
【0037】
本明細書では、本発明を最良の形態を含めて開示するとともに、装置又はシステムの製造・使用及び方法の実施を始め、当業者が本発明を実施できるようにするため、例を用いて説明してきた。本発明の特許性を有する範囲は、特許請求の範囲によって規定され、当業者に自明な他の例も包含する。かかる他の例は、特許請求の範囲と文言上の差のない構成要素を有しているか、或いは特許請求の範囲の文言と実質的な差のない均等な構成要素を有していれば、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に属する。
【0038】
本発明のその他の態様を、以下の実施態様として示す。
[実施態様1]
重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.60
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.20
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になるマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様2]
ニッケルの重量%が約0.53であり、モリブデンの重量%が約0.04である、実施態様1に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様3]
ニッケル/モリブデン重量比が3を超える、実施態様1又は実施態様2に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様4]
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが740MPa~800MPaの範囲内の降伏強さを有する、実施態様1乃至実施態様3のいずれか1項に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様5]
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが880MPa~950MPaの範囲内の引張強さを有する、実施態様1乃至実施態様4のいずれか1項に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様6]
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが50J超の衝撃靭性を有する、実施態様1乃至実施態様5のいずれか1項に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様7]
重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.6
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.2
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になり、50J超の衝撃靭性を有する、マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様8]
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが740MPa~800MPaの範囲内の降伏強さを有する、実施態様8に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様9]
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが880MPa~950MPaの範囲内の引張強さを有する、実施態様8又は実施態様9に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様10]
ニッケル/モリブデン重量比が3を超える、実施態様8乃至実施態様9のいずれか1項に記載のマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cb。
[実施態様11]
重量%で、
炭素 0.13~0.18
マンガン 0.40~0.60
ケイ素 0.50以下
リン 0.025以下
硫黄 0.010以下
ニッケル 0.30~0.60
クロム 11.5~13.0
モリブデン 0.05~0.20
ニオブ 0.15~0.25
バナジウム 0.10以下
鉄 残部
CNB(Cr-Ni当量バランス) 5.0~7.5
から本質的になり、ニッケル/モリブデン重量比が3を超えるマイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbを含むタービン部品。
[実施態様12]
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが50J超の衝撃靭性を有する、実施態様11に記載のタービン部品。
[実施態様13]
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが740MPa~800MPaの範囲内の降伏強さを有する、実施態様11又は実施態様12に記載のタービン部品。
[実施態様14]
当該マイクロアロイドマルテンサイト系ステンレス鋼種403Cbが880MPa~950MPaの範囲内の引張強さを有する、実施態様11乃至実施態様13のいずれか1項に記載のタービン部品。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【外国語明細書】