(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184457
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】磁性粒子、及び免疫検査用粒子
(51)【国際特許分類】
G01N 33/553 20060101AFI20231221BHJP
H01F 1/34 20060101ALI20231221BHJP
G01N 33/545 20060101ALI20231221BHJP
G01N 33/552 20060101ALI20231221BHJP
G01N 33/543 20060101ALI20231221BHJP
H01F 1/36 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G01N33/553
H01F1/34
H01F1/34 140
H01F1/34 120
G01N33/545 Z
G01N33/552
G01N33/543 541A
H01F1/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023086755
(22)【出願日】2023-05-26
(31)【優先権主張番号】P 2022098318
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100101498
【弁理士】
【氏名又は名称】越智 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100106183
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 弘司
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(72)【発明者】
【氏名】笹栗 大助
(72)【発明者】
【氏名】山火 智
(72)【発明者】
【氏名】掛川 法重
(72)【発明者】
【氏名】安部 滋幹
(72)【発明者】
【氏名】中須 三奈子
【テーマコード(参考)】
5E041
【Fターム(参考)】
5E041AA11
5E041AA14
5E041AA17
5E041AB16
5E041BC01
5E041BD12
5E041CA10
5E041HB17
5E041NN06
(57)【要約】
【課題】検体から抗原や抗体などの測定対象物質を検出する際に、磁場応答性の高い磁性粒子を提供する。
【解決手段】磁性コア粒子と該磁性コア粒子の表面に樹脂層を有する磁性粒子であって、該磁性コア粒子は、複数の磁性ナノ粒子の会合体を含み、該樹脂層は、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂を有することを特徴とする磁性粒子。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性コア粒子と該磁性コア粒子の表面に樹脂層を有する磁性粒子であって、
該磁性コア粒子は、複数の磁性ナノ粒子の会合体を含み、
該樹脂層は、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂を有することを特徴とする磁性粒子。
【請求項2】
前記磁性ナノ粒子は、個数平均粒径が20nm以下であり、磁性酸化鉄を含む請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項3】
前記磁性酸化鉄が、マグネタイト(Fe3O4)、及びマグヘマイト(γ-Fe2O3)の少なくともいずれか一方からなる請求項2に記載の磁性粒子。
【請求項4】
前記磁性コア粒子の表面にシリカ層を介して形成された前記樹脂層を有する請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項5】
前記樹脂層は、少なくとも第一の樹脂層及び第二の樹脂層を含み構成される請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項6】
前記第一の樹脂層は疎水性樹脂を含む請求項5に記載の磁性粒子。
【請求項7】
前記第一の樹脂層上に形成された前記磁性粒子の最表面層である第二の樹脂層は、グリシジルメタクリレートに由来するユニットを有する樹脂を含む請求項5に記載の磁性粒子。
【請求項8】
前記磁性粒子の個数平均粒径が、0.1μm以上2.0μm以下である請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項9】
前記官能基が、リガンドと結合できる、請求項1に記載の磁性粒子。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか1項に記載の磁性粒子及びリガンドを有し、該リガンドと前記官能基とは化学結合を有する免疫検査用粒子。
【請求項11】
前記リガンドが抗体、又は抗原である、請求項10に記載の免疫検査用粒子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁性粒子、及び免疫検査用粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、磁性粒子は、多種多様な用途に使用されている。例えば、バイオ用途として、検体物質中の抗原や抗体などを捕捉又は分離するような使用例がある。また、診断に用いるための検体検査用として、磁性粒子が使用されている。具体的には、検体から抗原(抗体)を検出するために、抗原(抗体)と特異的に結合する抗体(抗原)を結合した磁性粒子、及び抗原(抗体)と特異的に結合する抗体(抗原)を固定化したセンサーを用いる方法がある。このような抗体(抗原)を結合した磁性粒子を、光や色等で識別することで陽性、陰性を判定する検査試薬として使用される。このような磁性粒子は、一般的にバイオセパレーション用磁性粒子と呼ばれる。
【0003】
これらの磁性粒子は、外部からの磁場で粒子を操作するため、高い磁場応答性を奏するような改良がなされている。例えば、磁性体粒子が内包する磁性体量を高めたり、磁化の高い磁性材料を内包させたりということがなされている。
【0004】
このようなバイオセパレーション用磁性粒子として、例えば、樹脂マトリックス中に磁性ナノ粒子を内包させた磁性粒子が提案されている(特許文献1参照)。
また、バイオセパレーション用磁性粒子として、シリカマトリックス中に磁性ナノ粒子を内包させた構造も提案されている(特許文献2参照)。
さらに、単一の磁性粒子表層に樹脂層を形成した粒子構造も提案されている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-292721号公報
【特許文献2】特開2013-19889号公報
【特許文献3】特開2012-177691号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
バイオセパレーション用磁性粒子は、溶液に分散させた状態で外部から磁場を印加し粒子を捕捉するが、速やかに粒子を移動させるためには個々の粒子内に高密度に磁性体を内包させる必要がある。本発明者らは、樹脂マトリックス中やシリカマトリックス中に磁性ナノ粒子を内包させた特許文献1及び2に記載の構造に相当する粒子について、磁場を印加し粒子の捕捉速度を調べたが、捕捉速度が遅く十分な性能が得られなかった。また、同様な操作を特許文献3に記載の構造の粒子では、捕捉速度は速くなるものの、いったん捕捉した粒子は印加磁場を停止しても粒子が持つ残留磁化により、容易に再分散させることができずその後の処理が困難であった。上記の検討は、光導波路型システムを備えた検査装置を用いて行われた。
したがって、本発明の目的は、磁場を印加して検体溶液から目的物質を速やかに捕集でき、さらに、磁場印加を停止すると磁性粒子を速やかに再分散させることができる磁性体含有率が高く残留磁化の無い磁性粒子を提供することにある。
【0007】
本発明は、磁性コア粒子と該磁性コア粒子の表面に樹脂層を有する磁性粒子であって、 該磁性コア粒子は、複数の磁性ナノ粒子の会合体を含み、
該樹脂層は、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂を有することを特徴とする磁性粒子に関する。
【0008】
また、本発明は、前記磁性粒子及びリガンドを有し、前記リガンドと前記官能基とは化学結合を有することを特徴とする免疫検査用粒子に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、検体溶液中の抗原や抗体などの目的物質を捕捉した磁性粒子を磁場で速やかに捕集でき、磁場停止後には速やかに再分散させることができる磁性粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施形態に係る磁性粒子の構成を示す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る磁性コア粒子のSEMの観察像である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に述べる。各種の物性値は、特に断りのない限り、25℃における値である。磁性粒子の個数平均粒径は、磁性粒子の表面に樹脂層も含んだ個数平均粒径のことである。以下、検体から検出する測定対象物質として、抗原を例に挙げて説明する。
【0012】
本発明の磁性粒子の一つの形態は、磁性コア粒子と該磁性コア粒子の表面に樹脂層を有する磁性粒子であって、該磁性コア粒子は、複数の磁性ナノ粒子の会合体を含み、該樹脂層は、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂を有することを特徴とする。
【0013】
検体溶液から目的物質(例えば抗原)を捕集する際には、抗原と特異的に結合する抗体を結合した磁性粒子を用いる。具体的には、抗原を含んだ検体溶液を入れた容器に抗原と特異的に結合する抗体を結合させた磁性粒子を入れ検体溶液中の抗原を磁性粒子に捕捉させる。抗原を捕捉した磁性粒子を容器外から磁石で捕集し上清溶液を除去すれば検体溶液から目的物質を分離することができる。
【0014】
従来は目的物質の捕捉に使用される磁性粒子は、磁性粒子に内包される磁性体成分の含有量が十分ではないため磁性粒子に作用する磁力が小さく、ネオジム磁石等による磁性粒子の捕集に時間がかかり目的物質の分離操作に時間を要していた。
【0015】
そこで本発明は、磁性粒子を磁場で素早く移動させることができるように、磁性粒子中の磁性体の含有率の向上が重要であると考えた。本発明において、磁性体の含有率の向上の手段として、磁性コア粒子は、磁性ナノ粒子の会合体を含むことが必要である。
【0016】
本発明に係る磁性ナノ粒子は、超常磁性であり、個数平均粒径が20nm以下であることが好ましい。また、特に、粒径の小さい磁性粒子を用いると粒子の比表面積を大きくすることができ抗原を捕捉する確率が上がるため、従来の磁性粒子構造と比較して目的物質の捕捉能力と磁性粒子の捕集速度の両方を向上することができるため好ましい。
【0017】
また、本発明は、磁性コア粒子と該磁性コア粒子の表面に樹脂層を有する磁性粒子である。さらに、樹脂層は、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂を有することが必要である。これらの官能基を有することで、抗体に結合することが可能となり、抗原を効果的に捕捉することが可能となる。
【0018】
(本実施形態に係る磁性粒子の構成の概要)
本実施形態に係る磁性粒子100は
図1に示すように、磁性ナノ粒子の会合体からなる磁性コア粒子101と、磁性コア粒子101の表面の無機被覆層102とを有し、無機被覆層102上には、樹脂層103が形成されている。樹脂層103は、2種の材料からなることがあり、その場合は、磁性コア粒子101に近い方から順に、樹脂層1031(第一の樹脂層)と、樹脂層1032(第二の樹脂層)と、を有する。樹脂層1032はリガンドを結合できる官能基(不図示)を含む。磁性粒子100の磁性コア粒子101は、複数の磁性ナノ粒子が実質的に単独で会合した構造を持つ。この構造であれば、特許文献1、2及び3のような樹脂やセラミックスの非磁性体をマトリックス成分とした媒質中に磁性ナノ粒子を分散させた構造と比較して、磁性成分の比率を向上することができる。その結果、本発明の磁性粒子は、従来構造と比較して磁場応答性を高めることができる。
【0019】
<磁性粒子>
本発明の磁性粒子は、磁性ナノ粒子の会合体を含む磁性コア粒子と、その表層に非磁性体の無機層が形成され、さらに樹脂層が無機層を介して形成された構造を有する場合が好ましい。本発明において、磁性コア粒子の外観は走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することができる。また、非磁性層の無機層や樹脂層の厚さは、透過型電子顕微鏡(TEM)で観察することができる。個数平均粒径は、乾燥粒子の場合はSEM観察で100個の粒子の長径の平均値から求めることができる。
【0020】
本発明の磁性粒子の個数平均粒径は、特に限定はされないが印加磁場への応答性等を考慮すると、0.1μm以上2.0μm以下が好ましい。個数平均粒径が0.1μm未満になると、磁性粒子の磁石等での捕集作業に時間がかかり過ぎ好ましくない。
【0021】
<磁性コア粒子>
本発明の磁性粒子は、磁性コア粒子が磁性を持つ磁性ナノ粒子の会合体を含むことを特徴とする。磁性体は、磁場の印加により磁化される材料のことである。磁性ナノ粒子は、金属、及び金属酸化物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
金属としては、鉄、マンガン、ニッケル、コバルト、クロムなどが挙げられる。金属酸化物としては、マグネタイト(Fe3O4)、マグヘマイト(γ-酸化鉄(III))(γ-Fe2O3)、フェライトなどの磁性酸化鉄が挙げられる。なかでも、磁化が大きく、かつ、溶液中での安定性等の観点から、マグネタイト(Fe3O4)、及びγ-酸化鉄(III)(γ-Fe2O3)の少なくともいずれか一方からなる場合が好ましい。また、個数平均粒径が20nm以下のマグネタイト微粒子は飽和磁化が大きく、かつ、超常磁性体であるため残留磁化が小さく好ましい。
【0022】
ここで、磁化とは、磁性体に外部磁場をかける際に、その磁性体が分極して磁気モーメントを持つ現象のことであり、飽和磁化とは、磁場の強さとともに増大する磁化が飽和する値のことである。飽和磁化は、磁性ナノ粒子の粒子径等により調整できる。また、残留磁化とは、磁性体に外部磁場をかけた後に磁場ゼロにした場合に、磁性体に残留する磁化のことである。本発明の磁性粒子の残留磁化はゼロとなることがより好ましい。
【0023】
(磁性コア粒子の合成方法)
酸化鉄、特にマグネタイトナノ粒子の会合体からなる磁性コア粒子の形成方法について説明する。マグネタイトナノ粒子の原料は、塩化鉄(FeCl2やFeCl3)、硝酸鉄(Fe(NO3)2)、硫酸鉄(FeSO4)、及びその水和物(FeCl2・4H2O、FeCl3・6H2O、Fe(NO3)2・6H2O、FeSO4・7H2O)等から選択することができ、特に好ましくは塩化鉄(FeCl2やFeCl3)、及びその水和物(FeCl2・4H2OやFeCl3・6H2O)から選択されるが、複数の鉄化合物を混合して用いることもできる。
【0024】
一例として、塩化鉄(III)水和物(FeCl3・6H2O)を用いた製法を説明する。塩化鉄(III)水和物を高沸点溶媒のエチレングリコールに十分撹拌し溶解する。この溶解液に、添加剤として酢酸ナトリウムやポリエチレングリコール(PEG)等を加えて原料溶液とする。原料溶液をガラス製容器に入れて、ガラス製容器ごとテフロン(登録商標)製内筒を備えた耐圧容器に封入する。
【0025】
その後、耐圧容器を溶媒の沸点より低い170~190℃の温度に設定した恒温槽内で加熱すると溶媒中にマグネタイトナノ粒子の会合体が形成される。溶媒を除去し、アルコールと水で十分洗浄した後、60℃で乾燥させるとマグネタイト会合体が得られる。加熱方式は、恒温槽に限らず、例えばオイルバス等いろいろな方法を採用することができる。
【0026】
得られたマグネタイト会合体は、SEMによる観察でナノ粒子が会合した構造であることを確認できる。また、X線回折測定(XRD)により、会合体の結晶構造がマグネタイトであることが確認できる。
【0027】
マグネタイト会合体の好ましい個数平均粒径は、印加磁場への応答性等を考慮すると0.05μm以上1.95μm以下が好ましい。磁性コア粒子の個数平均粒径は、上記磁性粒子と同様の方法で測定することができる。
【0028】
このようにして作製した磁性コア粒子は、従来の樹脂中やシリカ中に磁性ナノ粒子が分散した磁性粒子よりも磁性ナノ粒子の含有量を高くすることができ、印加磁場への応答性が向上する。
【0029】
<表面層形成>
本発明の磁性粒子は、磁性コア粒子の表面に樹脂層を有する。ここで、「磁性コア粒子表面に樹脂層を有する」とは、磁性コア粒子表面に樹脂層が、直接設けられた場合、又は磁性コア粒子に後述のシリカ層などの層を介して樹脂層が設けられた構成である。本発明の磁性粒子は、樹脂で形成された表面層を有する構成が好ましい。
【0030】
(無機被覆層の形成)
磁性ナノ粒子の会合体である磁性コア粒子の表面は、ナノ粒子の集合体のため微小な凹凸が生じる。その凹凸を緩和するために、無機のコーティング層を設けることが好ましい。材料は限定されることはないが、安定して形成できる材料としてシリカが好ましい。シリカ層は、例えば、水とエタノール等のアルコールの混合溶媒に磁性コア粒子を分散させて、TEOS(テトラエトキシシラン)と触媒としてアンモニア水を添加することで磁性コア粒子表面にシリカ層を形成することができる。
【0031】
シリカ層の厚さは特に限定はされないが、印加磁場への応答性等を考慮すると、5nm以上200nm以下が好ましく、10nm以上100nm以下がより好ましい。
【0032】
(樹脂層の形成)
以下、「(メタ)アクリレート」と記載した場合は、「アクリレート、又はメタクリレート」を表すものとする。
【0033】
樹脂表層には、抗体を結合することができる官能基を有する。抗体を結合できる官能基は、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0034】
樹脂層を形成する際は、(メタ)アクリル酸などのカルボキシル基を有するモノマー;(メタ)アクリルアミドなどのアミノ基を有するモノマー;グリシジル(メタ)アクリレートなどのエポキシ基を有するモノマー;N-スクシンイミジルアクリレートなどのスクシンイミジル基を有するモノマー;を用いることが好ましい。
【0035】
また、上記モノマー以外に、グリセロール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどの親水性基を有する(メタ)アクリレート類;スチレン、p-クロロスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類;なども用いることができる。磁性粒子への非特異的な吸着を抑制するために、親水性基を有する(メタ)アクリレート類を用いることが好ましい。
【0036】
樹脂層は、必要に応じて架橋することができる。非特異的な吸着の生じるような検体中で磁性粒子を使用する場合は、樹脂層の架橋が有効である。架橋剤としては、一般的に用いられている親水性架橋剤や疎水性架橋剤等を選択することができ、例えば、疎水性であればジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。また親水性の架橋剤であれば、例えば、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ポリビニルアルコールのポリ(メタ)アクリルエステル等が挙げられる。
【0037】
これらの樹脂層を形成する際は、下地処理とてシランカップリング剤処理を加えることで、樹脂層を均質に形成することができる。シランカップリング剤の種類は特に限定されないが、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)等が一般的に使用される。
【0038】
樹脂層は2種の層で形成することが好ましい。先述の樹脂層の下層に、あらかじめ1層目の樹脂を形成することができる。この場合、1層目の樹脂層を第一の樹脂層とし、2層目の樹脂層を第二の樹脂層とした場合、第二の樹脂層が磁性粒子の最表面層であることが好ましい構成である。第一の樹脂層は、磁性ナノ粒子のコア粒子の保護のために設けることができる。第一の樹脂層としては、疎水性樹脂が好ましくスチレン、p-クロロスチレン、α-メチルスチレンなどのスチレン類などを用いることが好ましい。又、前記第一の樹脂層上に形成された前記磁性粒子の最表面層である第二の樹脂層は、グリシジルメタクリレートに由来するユニットを有する樹脂を含むことが好ましい。第一の樹脂層も第二の樹脂層の最表面樹脂層と同様に架橋することができる。架橋剤種は特に限定はされないが、保護の目的としては疎水性の架橋剤が用いられ、例えば、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート等が挙げられる。
生体由来の目的物質(検体)を検出する用途で使用する場合、検体由来の目的物質以外の成分により凝集(非特異凝集)が生じることがあるが、磁性粒子の最表面層の樹脂層を架橋することで非特異凝集を抑制することができ好ましい。
【0039】
樹脂層の厚さは特に限定はされないが、印加磁場への応答性等を考慮すると、第一の樹脂層は5nm以上100nmが好ましく、第二の樹脂層は5nm以上200nm以下が好ましい。
【0040】
また、抗体を結合できる官能基は、樹脂の重合の後に付加することも可能である。例えば、グリシジル基を持つ樹脂層にメルカプトプロピオン酸やメルカプトコハク酸等のカルボキシル基を持つ試薬を作用させると、樹脂層にカルボキシル基を導入することができる。また、重合して得られる樹脂に、N-(2-ヒドロキシエチル)マレイミドを付加することでマレイミド基を導入することができる。
【0041】
<リガンド>
リガンドとは、特定の標的物質が有する受容体に特異的に結合する化合物のことである。リガンドが標的物質と結合する部位は決まっており、選択的又は特異的に高い親和性を有する。例えば、抗原と抗体、酵素タンパク質とその基質、ホルモンや神経伝達物質に代表されるシグナル物質とその受容体、核酸、アビジンとビオチンなどが挙げられるが、上記実施形態の目的を達成可能な範囲においてこれらに限定されない。リガンドとしては、具体的に、抗原、抗体、抗原結合フラグメント(例えば、Fab、F(ab’)2、F(ab’)、Fv、scFvなど)、天然由来核酸、人工核酸、アプタマー、ペプチドアプタマー、オリゴペプチド、酵素、補酵素などが挙げられる。
本発明に係る磁性粒子がリガンドを有し、リガンドと樹脂層の官能基とは化学結合を有する免疫検査用粒子が好ましい実施態様である
【実施例0042】
以下、参考例、実施例、及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。なお、成分量に関して「部」、及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0043】
<参考例1>
(磁性コア粒子の作製)
マグネタイトナノ粒子が会合した磁性コア粒子を作製した。まず、塩化鉄(III)六水和物(FeCl3・6H2O;キシダ化学製)1.217g、酢酸ナトリウム(CH3COONa;キシダ化学製)2.7g、ポリエチレングリコール(平均分子量2000;PEG2000;キシダ化学製)0.75gをそれぞれエチレングリコール(EG;HOCH2CH2OH;キシダ化学製)10mLに溶解した。FeCl3・6H2O/EGにCH3COONa/EG、PEG2000/EGを順番に添加して反応溶液を調製した。この反応溶液の調製は、ガラス製容器を用いた。
次に、この反応溶液をガラス製容器ごと、テフロン(登録商標)製内筒を備えた耐圧容器(耐圧硝子株式会社)中にセットし、180℃のオーブンで24時間加熱した。加熱終了後、室温まで冷却してから、生成物を水とエタノールでそれぞれ二回洗浄し、60℃に設定した乾燥機で乾燥した。得られた粒子は0.7gであった。
【0044】
(磁性コア粒子の分析)
作製した磁性コア粒子のSEM観察を行った(日立ハイテクノロジー社製、S-4800)。5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は423nmであった。倍率を50000倍に上げて粒子表面を観察すると、20nm以下の粒径のナノ粒子の会合体であることが確認できた。代表的なSEM観察像を
図2に示す。
【0045】
次に、XRD(Panalytical社製、X’PERT PRO)で得られた磁性コア粒子の結晶構造を分析した。その結果、マグネタイト(Fe3O4)の単一層であることを確認した。
【0046】
<参考例2>
参考例1で作製した磁性コア粒子を用いてシリカ層を有する磁性コア粒子(以下、単に「シリカ被覆のコア粒子」とも呼ぶ。)を作製した。
(シリカ層の形成)
参考例1で得られた磁性コア粒子0.5gをエタノール75mL(キシダ化学製)と純水75mLの混合溶液に分散させた。次に、TEOS(キシダ化学製)を1.5mL添加して、触媒として28%アンモニア水(キシダ化学製)を22.5mL追加して撹拌しながら1.5時間反応させた。反応後、粒子をネオジム磁石で捕集して溶媒を除去し、純水で7回洗浄した。粒子の一部を乾燥させてSEM観察すると、磁性コア粒子表面の観察でみられたナノ粒子の凹凸は無くなっており、磁性コア粒子の表面にシリカ層が形成できていることを確認した。また、5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は479nmであった。
【0047】
<実施例1>
(樹脂層の形成)
参考例2で得られたシリカ被覆のコア粒子に樹脂層を形成した。エタノール10mLと純水10mLの混合溶液に粒子を分散させて、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を100μL添加して十分に混合した。次に、28%のアンモニア水2mLを添加し1.5時間撹拌した。次に、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄した後60mLの窒素バブリングした純水を追加して水分散液を得た。
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングして200rpmの撹拌速度で撹拌しながら15分撹拌した。続いて、窒素バブリングを窒素フローに切り替た後、この分散液にスチレンモノマー(キシダ化学社製)を50μL添加した。
次に、0.02gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ社製)を予め窒素バブリングで脱気した純水2mLに溶解して1mLをフラスコ内に添加した。次に、オイルバスを用いて、35℃で30分加熱した後、60℃に昇温して1時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学社製)200μL添加して、さらに12時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して粒子を得た。
【0048】
(官能基の導入)
次に、官能基としてカルボキシル基を導入する処理を行った。得られた粒子10mgを5mLの純水に分散させた。この分散液とは別に、メルカプトコハク酸(キシダ化学製)350mgを純水5mLに溶解して、pH調整としてトリエチルアミン(東京化成工業製)を0.8mL添加した。この溶液を、粒子分散液に1mL添加して十分撹拌して60℃で3時間加熱処理した。この後、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄し磁性粒子分散液を得た。
【0049】
(磁性粒子の個数平均粒径)
作製した磁性粒子のSEM観察を行った。磁性粒子分散溶液の一部を乾燥させて5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は628nmであった。
得られた磁性粒子を熱分解ガスクロマトグラフィー(フロンティア・ラボ社製PY-3030D)を用いて、磁性粒子の樹脂層の構成成分を分析した。その結果、樹脂層の構成成分となる、スチレン、グリシジルメタクリレート由来の信号が検出された。
【0050】
<実施例2>
(樹脂層の形成)
参考例2で得られたシリカ被覆のコア粒子に樹脂層を形成した。エタノール10mLと純水10mLの混合溶液に粒子を分散させて、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を100μL添加して十分に混合した。次に、28%のアンモニア水2mLを添加し1.5時間撹拌した。次に、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄した後60mLの窒素バブリングした純水を追加して水分散液を得た。
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングして200rpmに撹拌速度で撹拌しながら15分撹拌した。続いて、窒素バブリングを窒素フローに切り替た後、この分散液にスチレンモノマー(キシダ化学社製)を50μL添加した。
次に、0.02gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ社製)を予め窒素バブリングで脱気した純水2mLに溶解して1mLをフラスコ内に添加した。次に、オイルバスを用いて、35℃で30分加熱した後、60℃に昇温して1時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学社製)200μLとアクリル酸モノマー200μL(東京化成工業製)を添加して、さらに12時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して粒子を得た。
【0051】
作製した磁性粒子のSEM観察を行った。磁性粒子分散溶液の一部を乾燥させて5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は572nmであった。
得られた磁性粒子を実施例1と同様に熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて、磁性粒子の樹脂層の構成成分を分析した。その結果、樹脂層の構成成分となる、スチレン、グリシジルメタクリレート、アクリル酸由来の信号が検出された。
【0052】
<実施例3>
(樹脂層の形成)
参考例2で得られたシリカ被覆のコア粒子に樹脂層を形成した。エタノール10mLと純水10mLの混合溶液に粒子を分散させて、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を100μL添加して十分に混合した。次に、28%のアンモニア水2mLを添加し1.5時間撹拌した。次に、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄した後60mLの窒素バブリングした純水を追加して水分散液を得た。
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングして200rpmに撹拌速度で撹拌しながら15分撹拌した。続いて、窒素バブリングを窒素フローに切り替た後、この分散液にスチレンモノマー(キシダ化学社製)50μLと架橋剤としてジビニルベンゼンモノマー(キシダ化学社製)2.5μLとを混合して添加した。
次に、0.02gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ社製)を予め窒素バブリングで脱気した純水2mLに溶解して1mLをフラスコ内に添加した。次に、オイルバスを用いて、35℃で30分加熱した後、60℃に昇温して1時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学社製)200μLと架橋剤としてジビニルベンゼンモノマー(キシダ化学社製)10μLとを混合して添加して、さらに12時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して粒子を得た。
【0053】
(官能基の導入)
次に、官能基としてカルボキシル基を導入する処理を行った。得られた粒子10mgを5mLの純水に分散させた。この分散液とは別に、メルカプトコハク酸(キシダ化学製)350mgを純水5mLに溶解して、pH調整としてトリエチルアミン(東京化成工業製)を0.8mL添加した。この溶液を、粒子分散液に1mL添加して十分撹拌して60℃で3時間加熱処理した。この後、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄し磁性粒子分散液を得た。
作製した磁性粒子のSEM観察を行った。磁性粒子分散溶液の一部を乾燥させて5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は619nmであった。
得られた磁性粒子を実施例1と同様に熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて、磁性粒子の樹脂層の構成成分を分析した。その結果、樹脂層の構成成分となる、スチレン、グリシジルメタクリレート、ジビニルベンゼン由来の信号が検出された。
【0054】
<実施例4>
(樹脂層の形成)
参考例2で得られたシリカ被覆のコア粒子に樹脂層を形成した。エタノール10mLと純水10mLの混合溶液に粒子を分散させて、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を100μL添加して十分に混合した。次に、28%のアンモニア水2mLを添加し1.5時間撹拌した。次に、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄した後60mLの窒素バブリングした純水を追加して水分散液を得た。
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングして200rpmに撹拌速度で撹拌しながら15分撹拌した。続いて、窒素バブリングを窒素フローに切り替た後、この分散液にスチレンモノマー(キシダ化学社製)50μLと架橋剤としてジビニルベンゼンモノマー(キシダ化学社製)5μLとを混合して添加した。
次に、0.02gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ社製)を予め窒素バブリングで脱気した純水2mLに溶解して1mLをフラスコ内に添加した。次に、オイルバスを用いて、35℃で30分加熱した後、60℃に昇温して1時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学社製)200μLと架橋剤としてジビニルベンゼンモノマー(キシダ化学社製)20μLとを混合して添加して、さらに12時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して粒子を得た。
【0055】
(官能基の導入)
次に、官能基としてカルボキシル基を導入する処理を行った。得られた粒子10mgを5mLの純水に分散させた。この分散液とは別に、メルカプトコハク酸(キシダ化学製)350mgを純水5mLに溶解して、pH調整としてトリエチルアミン(東京化成工業製)を0.8mL添加した。この溶液を、粒子分散液に1mL添加して十分撹拌して60℃で3時間加熱処理した。この後、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄し磁性粒子分散液を得た。
作製した磁性粒子のSEM観察を行った。磁性粒子分散溶液の一部を乾燥させて5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は604nmであった。
得られた磁性粒子を実施例1と同様に熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて、磁性粒子の樹脂層の構成成分を分析した。その結果、樹脂層の構成成分となる、スチレン、グリシジルメタクリレート、ジビニルベンゼン由来の信号が検出された。ジビニルベンゼン由来の信号は実施例3の粒子と比較して大きくなっていた。
【0056】
<実施例5>
(樹脂層の形成)
参考例2で得られたシリカ被覆のコア粒子に樹脂層を形成した。エタノール10mLと純水10mLの混合溶液に粒子を分散させて、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を100μL添加して十分に混合した。次に、28%のアンモニア水2mLを添加し1.5時間撹拌した。次に、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄した後60mLの窒素バブリングした純水を追加して水分散液を得た。
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングして200rpmに撹拌速度で撹拌しながら15分撹拌した。続いて、窒素バブリングを窒素フローに切り替た後、この分散液にスチレンモノマー(キシダ化学社製)50μLと架橋剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(東京化成工業社製)5μLとを混合して添加した。
次に、0.02gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ社製)を予め窒素バブリングで脱気した純水2mLに溶解して1mLをフラスコ内に添加した。次に、オイルバスを用いて、35℃で30分加熱した後、60℃に昇温して1時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学社製)200μLと架橋剤としてトリメチロールプロパントリメタクリレート(東京化成工業社製)20μLとを混合して添加して、さらに12時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して粒子を得た。
【0057】
(官能基の導入)
次に、官能基としてカルボキシル基を導入する処理を行った。得られた粒子10mgを5mLの純水に分散させた。この分散液とは別に、メルカプトコハク酸(キシダ化学製)350mgを純水5mLに溶解して、pH調整としてトリエチルアミン(東京化成工業製)を0.8mL添加した。この溶液を、粒子分散液に1mL添加して十分撹拌して60℃で3時間加熱処理した。この後、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄し磁性粒子分散液を得た。
作製した磁性粒子のSEM観察を行った。磁性粒子分散溶液の一部を乾燥させて5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は598nmであった。
得られた磁性粒子を実施例1と同様に、熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて磁性粒子の構成成分を分析した。その結果、樹脂層構成成分となる、スチレン、グリシジルメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート由来の信号が検出された。
【0058】
<実施例6>
(樹脂層の形成)
参考例2で得られたシリカ被覆のコア粒子に樹脂層を形成した。エタノール10mLと純水10mLの混合溶液に粒子を分散させて、シランカップリング剤として、3-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシラン(LS-3380、信越化学工業製)を100μL添加して十分に混合した。次に、28%のアンモニア水2mLを添加し1.5時間撹拌した。次に、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄した後60mLの窒素バブリングした純水を追加して水分散液を得た。
次に、この分散液を4つ口のフラスコ(200mL)に入れ、窒素バブリングして200rpmに撹拌速度で撹拌しながら15分撹拌した。続いて、窒素バブリングを窒素フローに切り替た後、この分散液にスチレンモノマー(キシダ化学社製)50μLと架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(東京化成工業社製)5μLとを混合して添加した。
次に、0.02gの過硫酸カリウム(シグマアルドリッチ社製)を予め窒素バブリングで脱気した純水2mLに溶解して1mLをフラスコ内に添加した。次に、オイルバスを用いて、35℃で30分加熱した後、60℃に昇温して1時間保持した。続いて、グリシジルメタクリレート(キシダ化学社製)200μLと架橋剤としてポリエチレングリコールジアクリレート(東京化成工業社製)20μLとを混合して添加して、さらに12時間保持して重合を終了した。重合終了後、純水で十分に洗浄して粒子を得た。
【0059】
(官能基の導入)
次に、官能基としてカルボキシル基を導入する処理を行った。得られた粒子10mgを5mLの純水に分散させた。この分散液とは別に、メルカプトコハク酸(キシダ化学製)350mgを純水5mLに溶解して、pH調整としてトリエチルアミン(東京化成工業製)を0.8mL添加した。この溶液を、粒子分散液に1mL添加して十分撹拌して60℃で3時間加熱処理した。この後、ネオジム磁石で粒子を捕集しながら溶媒を除去し、純水で十分洗浄し磁性粒子分散液を得た。
作製した磁性粒子のSEM観察を行った。磁性粒子分散溶液の一部を乾燥させて5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は622nmであった。
得られた磁性粒子を実施例1と同様に、熱分解ガスクロマトグラフィーを用いて磁性粒子の構成成分を分析した。その結果、樹脂層の構成成分となる、スチレン、グリシジルメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート由来の信号が検出された。
【0060】
<参考例3>
マグネタイトナノ粒子が会合した磁性コア粒子を作製した。マグネタイトの原料として、塩化鉄(II)四水和物(FeCl2・4H2O、キシダ化学製)0.30gと塩化鉄(III)六水和物(FeCl3・6H2O、キシダ化学製)0.81gを用いた以外は、参考例1と同様の手順で作製し、磁性コア粒子を作製した。
【0061】
作製した磁性コア粒子のSEM観察を行った。5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は519nmであった。
【0062】
<比較例1>
マグネタイトナノ粒子としてEMG1400(フェローテック社製)14gに、粒子を形成するためのモノマー、並びに架橋剤としてスチレン1.35g、ジビニルベンゼン0.15g及び2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.06gを加え、混合してモノマー混合液を作製した。次に、ドデシル硫酸ナトリウム0.75gを溶解させた水溶液75mLを、得られたモノマー混合液に加え、超音波ホモジナイザー(UD-200、TOMY社製)を用いて、氷冷下で、超音波分散処理(2分間の超音波照射(超音波出力:150W)と、その後の2分間の超音波照射の停止の繰り返しを10回)を行った。
次に、得られたエマルションを、70℃で7時間重合反応を行い、ネオジム磁石で捕集し純水で十分洗浄することで、ポリマー中にマグネタイトが分散した磁性粒子を得た。
【0063】
(磁性粒子の分析)
得られた磁性粒子100個のSEM観察による粒径サイズは約100nmであった。また、この磁性粒子を500℃の加熱による重量減少を熱分析装置(TGA日立ハイテクノロジー社製)で分析すると、磁性粒子中に13質量%の樹脂成分が含有されていた。
作製した磁性粒子のSEM観察を行った。5000倍の倍率で粒子100個の長径を測定すると個数平均粒径は687nmであった。
【0064】
<比較例2>
反応容器に塩化鉄(III)6水和物2.7g、塩化鉄(II)4水和物1.0g及び水375mLに溶解させて攪拌しながら、28%アンモニア水4mLと水100mLを混合した溶液を1時間かけて滴下し、滴下後1時間攪拌し、80℃に昇温後、オレイン酸10.5gを加え、2時間攪拌を継続した。室温に冷却後、ネオジム磁石で捕集して得られたオレイン酸が吸着したマグネタイト粒子を純水で十分洗浄した。得られたオレイン酸が吸着したマグネタイト粒子を、デカン5.7mL及びTEOS2.2mLを加えて混合し、分散液(A)を調製した。
反応容器に28%アンモニア水溶液39.0mL、イソプロパノール55.4mL、ソルビタンモノオレエート2.9mL(富士フイルム和光純薬製)及びポリオキシエチレンアルキルエーテル(三洋化成工業株式会社製)2.0mLを加えてホモジナイザー(UD-200、TOMY社製)を用いて混合し、50℃に昇温後、上記分散液(A)を1時間かけて滴下後、50℃で1時間反応させた。反応後、ネオジム磁石で捕集し、捕集できない微粒子が残存する上清を除いた。得られた粒子を純水で十分に洗浄して磁性シリカ粒子を得た。
【0065】
(磁性粒子の分析)
作製した磁性粒子をXRDで結晶構造を分析した。その結果、マグネタイト(Fe3O4)のピークと非晶質シリカのブロードなピークの混在した回折像が得られ、マグネタイトとシリカの複合層であることを確認した。
また、磁性粒子100個のSEM観察による粒径サイズは約488nmであった。
【0066】
(磁場応答性の比較)
参考例2、実施例1、2及び比較例1、2の粒子について、磁場応答性の違いを評価した。各粒子50mgを40mLの純水に混合し、50mL容量のガラス製スクリュー管内で分散させた。次に、円柱型ネオジム磁石(φ30mm×t18mm、ネオマグ株式会社製)をスクリュー管底部に配置して磁性粒子の捕捉が完了するまでの時間を比較した(表1)。本発明の磁性粒子は、従来構造の粒子と比較して磁場応答性が高いことを確認した。
【0067】
【0068】
本実施形態の開示は、以下の構成を含む。
(構成1)
磁性コア粒子と該磁性コア粒子の表面に樹脂層を有する磁性粒子であって、該磁性コア粒子は、複数の磁性ナノ粒子の会合体を含み、
該樹脂層は、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、エポキシ基、マレイミド基、及びスクシンイミジル基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基を有する樹脂を有することを特徴とする磁性粒子。
(構成2)
前記磁性ナノ粒子は、個数平均粒径が20nm以下であり、磁性酸化鉄を含む構成1に記載の磁性粒子。
(構成3)
前記磁性酸化鉄が、マグネタイト(Fe3O4)、及びマグヘマイト(γ-Fe2O3)の少なくともいずれか一方からなる構成1又は2に記載の磁性粒子。
(構成4)
前記磁性コア粒子の表面にシリカ層を介して形成された前記樹脂層を有する構成1~3のいずれか1項に記載の磁性粒子。
(構成5)
前記樹脂層は、少なくとも2種の第一の樹脂層及び第二の樹脂層を含み構成される構成1~4のいずれか1項に記載の磁性粒子。
(構成6)
前記第一の樹脂層は疎水性樹脂を含む構成5に記載の磁性粒子。
(構成7)
前記第一の樹脂層上に形成された前記磁性粒子の最表面層である第二の樹脂層は、グリシジルメタクリレートに由来するユニットを有する樹脂を含む構成5に記載の磁性粒子。
(構成8)
前記磁性粒子の個数平均粒径が、0.1μm以上2.0μm以下である構成1~7のいずれか1項に記載の磁性粒子。
(構成9)
前記官能基が、リガンドと結合できる、構成1~8のいずれか1項に記載の磁性粒子。
(構成10)
構成1~8のいずれか1項に記載の磁性粒子及びリガンドを有し、該リガンドと前記官能基とは化学結合を有する免疫検査用粒子。
(構成11)
前記リガンドが抗体、又は抗原である、構成10に記載の免疫検査用粒子。