(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184464
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】潤滑油組成物、潤滑油組成物の製造方法及び引火点向上方法
(51)【国際特許分類】
C10M 155/02 20060101AFI20231221BHJP
C10N 20/00 20060101ALN20231221BHJP
C10N 20/04 20060101ALN20231221BHJP
C10N 30/00 20060101ALN20231221BHJP
C10N 40/25 20060101ALN20231221BHJP
C10N 40/04 20060101ALN20231221BHJP
C10N 40/08 20060101ALN20231221BHJP
C10N 40/12 20060101ALN20231221BHJP
C10N 40/00 20060101ALN20231221BHJP
C10N 40/20 20060101ALN20231221BHJP
C10N 40/30 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
C10M155/02
C10N20:00 A
C10N20:04
C10N30:00 Z
C10N40:25
C10N40:04
C10N40:08
C10N40:12
C10N40:00 A
C10N40:20 Z
C10N40:30
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023093282
(22)【出願日】2023-06-06
(31)【優先権主張番号】P 2022097405
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004444
【氏名又は名称】ENEOS株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】田村 千晴
(72)【発明者】
【氏名】山本 拓海
(72)【発明者】
【氏名】山岸 純也
(72)【発明者】
【氏名】宮島 誠
(72)【発明者】
【氏名】菖蒲 紀子
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04A
4H104BA07A
4H104BB08A
4H104BB33A
4H104BB34A
4H104BB41A
4H104CA04A
4H104CB14A
4H104CJ01C
4H104DA02A
4H104EA03C
4H104EA04A
4H104EB09
4H104LA20
4H104PA02
4H104PA03
4H104PA05
4H104PA07
4H104PA09
4H104PA20
4H104PA21
4H104PA41
(57)【要約】
【課題】分子量が300未満の酸化防止剤を用いる場合であっても十分な引火点向上効果を得ることが可能な、潤滑油組成物、潤滑油組成物の製造方法及び引火点向上方法を提供すること。
【解決手段】本発明の一側面は、引火点が230℃以上である潤滑油基油と、分子量が300未満である酸化防止剤と、ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物と、を含有する、潤滑油組成物である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
引火点が230℃以上である潤滑油基油と、
(A)分子量が300未満である酸化防止剤と、
(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物と、
を含有する、潤滑油組成物。
【請求項2】
引火点が230℃以上である潤滑油基油及び(A)分子量が300未満である酸化防止剤を含有する油類組成物に、(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物を添加して潤滑油組成物を得る工程を備える、引火点が向上された潤滑油組成物の製造方法。
【請求項3】
引火点が230℃以上である潤滑油基油及び(A)分子量が300未満である酸化防止剤を含有する油類組成物に、(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物を添加する工程を備える、引火点向上方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油組成物、潤滑油組成物の製造方法及び引火点向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
潤滑油は、その引火点が高いほど安全性が高くなり、貯蔵や管理も容易になる。そのため、潤滑油の引火点を向上させる種々の方法が検討されている。
【0003】
例えば特許文献1には、引火点が220℃以上のエステル油に、分子量が300以上の酸化防止剤を添加することにより、エステル油の引火点を上昇させる方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1には、比較例として、分子量が300未満の酸化防止剤の添加前後で、引火点が変化しないエステル油及び引火点が低下したエステル油が開示されている。そこで本発明者らが検討したところ、分子量が300未満の酸化防止剤を用いると、潤滑油基油の種類によらず十分な引火点向上効果が得られにくいことが判明した。
【0006】
そこで、本発明の一側面は、分子量が300未満の酸化防止剤を用いる場合であっても十分な引火点向上効果を得ることが可能な、潤滑油組成物、潤滑油組成物の製造方法及び引火点向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、引火点が230℃以上である潤滑油基油に、分子量が300未満である酸化防止剤に加え、ポリジメチルシロキサン構造を有し且つ特定の重量平均分子量を有する化合物を更に添加することによって、十分な引火点向上効果が得られることを見出した。
【0008】
本発明は、以下の[1]~[3]の側面を含む。
[1]引火点が230℃以上である潤滑油基油と、(A)分子量が300未満である酸化防止剤と、(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物と、を含有する、潤滑油組成物。
[2]引火点が230℃以上である潤滑油基油及び(A)分子量が300未満である酸化防止剤を含有する油類組成物に、(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物を添加して潤滑油組成物を得る工程を備える、引火点が向上された潤滑油組成物の製造方法。
[3]引火点が230℃以上である潤滑油基油及び(A)分子量が300未満である酸化防止剤を含有する油類組成物に、(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物を添加する工程を備える、引火点向上方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一側面によれば、分子量が300未満の酸化防止剤を用いる場合であっても十分な引火点向上効果を得ることが可能な、潤滑油組成物、潤滑油組成物の製造方法及び引火点向上方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[潤滑油組成物]
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明の一実施形態は、引火点が230℃以上である潤滑油基油と、(A)分子量が300未満である酸化防止剤(以下、「(A)成分」ともいう)と、(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物(以下、「(B)成分」ともいう)と、を含有する、潤滑油組成物である。
なお、本明細書においては、特に断らない限り、数値XおよびYについて「X~Y」という表記は「X以上Y以下」を意味するものとする。かかる表記において数値Yのみに単位を付した場合には、当該単位が数値Xにも適用されるものとする。
【0011】
<潤滑油基油>
潤滑油基油としては、その引火点が230℃以上である限りにおいて、潤滑油分野で使用される各種潤滑油基油を使用することができる。潤滑油基油としては、具体的には、鉱油系基油、合成系基油、又は鉱油系基油と合成系基油との混合基油が挙げられる。
【0012】
鉱油系基油としては、原油を常圧蒸留して得られる留出油を使用することができる。また、この留出油をさらに減圧蒸留して得られる留出油を、各種の精製プロセスで精製した潤滑油留分も使用することができる。
精製プロセスとしては、水素化精製、溶剤抽出、溶剤脱ろう、水素化脱ろう、硫酸洗浄、及び白土処理等を、適宜組み合わせることができる。これらの精製プロセスを適宜の順序で組み合わせて処理することにより、鉱油系基油を得ることができる。
また、異なる原油又は留出油を異なる精製プロセスの組合せに供することにより得られた、性状の異なる複数の精製油の混合物を用いてもよい。これらの鉱油系基油は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0013】
鉱油系基油の15℃における密度は、好ましくは0.825g/cm3以上、より好ましくは0.835g/cm3以上であり、また、好ましくは0.925g/cm3以下、より好ましくは0.900g/cm3以下である。本明細書において、15℃における密度は、JIS K2249-1:2011に準拠して測定された15℃での密度を意味する。
【0014】
鉱油系基油の流動点は、好ましくは-5℃以下、より好ましくは-10℃以下である。本明細書における流動点は、JIS K2269:1987に準拠して測定された流動点を意味する。
【0015】
鉱油系基油のパラフィン分(%CP)は、潤滑油組成物の引火点をより向上させる観点から、好ましくは60以上、より好ましくは65以上であり、添加剤の溶解性の観点から、好ましくは99以下、より好ましくは97以下である。
【0016】
鉱油系基油のナフテン分(%CN)は、添加剤の溶解性の観点から、好ましくは1以上、より好ましくは3以上であり、また潤滑油組成物の引火点をより向上させる観点から、好ましくは40以下、より好ましくは35以下である。
【0017】
鉱油系基油の芳香族分(%CA)は、潤滑油組成物の引火点をより向上させる観点から、好ましくは5以下、より好ましくは0である。
【0018】
本明細書における鉱油系基油の%CP、%CN、及び%CAは、それぞれASTM D3238に準拠した方法(n-d-m環分析)により測定される値を意味する。
【0019】
鉱油系基油の硫黄分は、好ましくは2000質量ppm以下、より好ましくは10質量ppm以下である。本明細書における硫黄分は、JIS K2541-6:2013で規定される紫外蛍光法によって測定される硫黄分を意味する。
【0020】
鉱油系基油の窒素分は、好ましくは20質量ppm以下、より好ましくは1質量ppm以下である。本明細書における窒素分は、JIS K2609:1998(化学発光法)に準拠して測定された値を意味する。
【0021】
鉱油系基油の初留点は、潤滑油組成物の引火点をより向上させる観点から、好ましくは300℃以上、より好ましくは330℃以上、また、上限に特に制限はないが、例えば500℃以下、又は450℃以下である。本明細書における初留点は、JIS K2254:2018の常圧法に準拠して測定される値を意味する。
【0022】
合成系基油としては、例えば、ポリα-オレフィン又はその水素化物;プロピレンオリゴマー、イソブチレンオリゴマー、ポリブテン、1-オクテンオリゴマー、1-デセンオリゴマー、エチレン-プロピレンオリゴマー等のオレフィンオリゴマー又はその水素化物;アルキルベンゼン;アルキルナフタレン;ジエステル(ジトリデシルグルタレート、ジ-2-エチルヘキシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルアゼレート、ジイソデシルアジペート、ジトリデシルアジペート、ジ-2-エチルヘキシルセバケート等);ポリオールエステル(トリメチロールプロパンカプリレート、トリメチロールプロパンペラルゴネート、トリメチロールプロパンカプレート、トリメチロールプロパンオレート、ペンタエリスリトール2-エチルヘキサノエート、ペンタエリスリトールペラルゴネート等);ポリオキシアルキレングリコール、ジアルキルジフェニルエーテル、ポリフェニルエーテル等が挙げられる。これらの合成系基油は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を任意の割合で組み合わせて使用してもよい。
【0023】
合成系基油の15℃における密度は、好ましくは0.880g/cm3以上、より好ましくは0.900g/cm3以上であり、また、好ましくは1.000g/cm3以下、より好ましくは0.990g/cm3以下である。
【0024】
合成系基油の流動点は、好ましくは-40℃以下、より好ましくは-45℃以下である。
【0025】
合成系基油の初留点は、潤滑油組成物の引火点をより向上させる観点から、好ましくは300℃以上、より好ましくは330℃以上、また、上限に特に制限はないが、例えば600℃以下、又は700℃以下である。
【0026】
潤滑油基油の引火点は、十分に高い引火点を有する潤滑油組成物を得る観点から、230℃以上であり、好ましくは235℃以上、より好ましくは240℃以上である。また、潤滑油基油の引火点の上限値には特に制限はないが、例えば400℃以下、又は350℃以下であってよい。潤滑油基油の引火点は、上記の観点から好ましくは230~400℃、より好ましくは235~400℃、さらに好ましくは240~350℃である。
本明細書における引火点は、JIS K2265-4:2007によるクリーブランド開放式自動引火点測定装置によって5回の繰り返しを行い、5回の平均値の小数第1位を四捨五入した値を意味する。引火点の測定において、JIS K2265-4:2007に規定された室内併行精度(許容差:8℃)を超えた測定値は除外される。また、測定値については、JIS K2265-4:2007の規定に従って各種補正がなされる。
【0027】
潤滑油基油の40℃における動粘度は、潤滑油組成物の引火点をより向上させる観点から、好ましくは15mm2/s以上、より好ましくは18mm2/s以上、さらに好ましくは30mm2/s以上である。また、潤滑油基油の40℃における動粘度の上限値に特に制限はないが、例えば、550mm2/s以下、500mm2/s以下、又は480mm2/s以下であってよい。潤滑油基油の40℃における動粘度は、上記の観点から好ましくは15~550mm2/s、より好ましくは18~500mm2/s、さらに好ましくは30~480mm2/sである。
本明細書において、40℃における動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して40℃で測定した値を意味する。
【0028】
潤滑油基油の100℃における動粘度は、潤滑油組成物の引火点をより向上させる観点から、好ましくは3.0mm2/s以上、より好ましくは4.0mm2/s以上、さらに好ましくは5.0mm2/s以上である。また、潤滑油基油の100℃における動粘度の上限値に特に制限はないが、例えば100mm2/s以下、90mm2/s以下、又は80mm2/s以下である。潤滑油基油の100℃における動粘度は、上記の観点から好ましくは3.0~100mm2/s、より好ましくは4.0~90mm2/s、さらに好ましくは5.0~80mm2/sである。
本明細書において、100℃における動粘度は、JIS K2283:2000に準拠して100℃で測定した値を意味する。
【0029】
潤滑油基油の粘度指数は、80以上、85以上、又は90以上であってよい。潤滑油基油の粘度指数の上限は特に制限されないが、例えば300以下であってよい。
本明細書における粘度指数は、JIS K2283:2000に準拠して測定した値を意味する。
【0030】
潤滑油基油の15℃における密度は、好ましくは0.825g/cm3以上、より好ましくは0.835g/cm3以上であり、また、好ましくは0.985g/cm3以下、より好ましくは0.975g/cm3以下である。
【0031】
潤滑油基油の流動点は、好ましくは-5℃以下、より好ましくは-10℃以下である。
【0032】
潤滑油組成物における潤滑油基油の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上であり、好ましくは99.9質量%以下、より好ましくは99.7質量%以下、さらに好ましくは99.5質量%以下である。潤滑油組成物における潤滑油基油の含有量は、上記の観点から好ましくは60~99.9質量%、より好ましくは70~99.7質量%、さらに好ましくは80~99.5質量%である。
【0033】
<(A)成分>
(A)成分としては、その分子量が300未満である限りにおいて、潤滑油分野で使用される各種酸化防止剤を使用することができる。酸化防止剤が芳香族環を有する場合、当該芳香族環は、無置換であってもよく、又は適宜アルキル基で置換されていてもよい。(A)成分としては、具体的には、2,6-ジ-tert.―ブチル-p-クレゾール(分子量;220)、ジ-tert.―ブチル-p-フェノール(分子量;206)等のフェノール系酸化防止剤、及びフェニル-α-ナフチルアミン(分子量:219)等のアミン系酸化防止剤などが挙げられる。(A)成分は、好ましくはフェノール系酸化防止剤を含み、より好ましくは2,6-ジ-tert.―ブチル-p-クレゾール及びジ-tert.―ブチル-p-フェノールから選択される少なくとも1種を含む。
【0034】
(A)成分の分子量は、引火点を向上させる観点から、好ましくは150以上、より好ましくは180以上、さらに好ましくは200以上であり、300未満、好ましくは280以下、より好ましくは260以下である。(A)成分の分子量は、上記の観点から好ましくは150~300未満、より好ましくは180~280、さらに好ましくは200~260である。
【0035】
(A)成分の含有量は、引火点をより向上させる観点から、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは0.005質量%以上、より好ましくは0.01質量%以上、さらに好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは2.0質量%以下、より好ましくは1.7質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下である。(A)成分の含有量は、潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは0.005~2.0質量%、より好ましくは0.01~1.7質量%、さらに好ましくは0.05~1.5質量%である。
【0036】
<(B)成分>
(B)成分としては、ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である限りにおいて、潤滑油分野で使用される各種化合物を使用することができる。
【0037】
(B)成分において、ポリジメチルシロキサン構造は化合物の主鎖又は側鎖のいずれに含まれていてもよい。ポリジメチルシロキサン構造が主鎖に含まれる化合物としては、ポリジメチルシロキサン、フッ素変性ポリジメチルシロキサン(ポリジメチルシロキサンのメチル基の少なくとも一部がフッ素で置換された化合物)、アルキル変性ポリジメチルシロキサン(ポリジメチルシロキサンのメチル基の少なくとも一部がメチル基以外のアルキル基で置換された化合物)、アルコキシ変性ポリジメチルシロキサン(ポリジメチルシロキサンのメチル基の少なくとも一部がアルコキシ基で置換された化合物)等が挙げられる。ポリジメチルシロキサン構造が側鎖に含まれる化合物としては、アクリレート又はメタクリレートのカルボキシル基にポリジメチルシロキサン基が結合した単量体の単独重合体、前記単量体と他の単量体との共重合体等が挙げられる。
【0038】
ポリジメチルシロキサン構造が側鎖に含まれる化合物は、下記一般式(1)で表される構造単位と、下記一般式(2)で表される構造単位とを含む重合体であってよい。
【0039】
【化1】
(一般式(1)中、X
1はエチレン性不飽和基の重合により得られる3価の基であり;Y
1は直鎖状または分枝状のポリシロキサン構造を有する1価の基であり;Z
1は構造単位X
1と側鎖Y
1とを連結する2価の基である。)
【0040】
【化2】
(一般式(2)中、X
2はエチレン性不飽和基の重合により得られる3価の基であり;Y
2は炭素数1~30の1価のヒドロカルビル基であり;Z
2は構造単位X
2と側鎖Y
2とを連結する2価の基である。)
【0041】
一般式(1)中のX1は、エチレン性不飽和基の重合により得られる3価の基を示す。エチレン性不飽和基としては、アクリロイル基、メタクリロイル基などが挙げられる。一般式(1)で表される構造単位の重合度が2以上である場合、重合体に含まれる複数のX1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0042】
Y1は直鎖状または分枝状のポリシロキサン構造を有する1価の基である。ポリシロキサン構造の重合度は、5以上、10以上、30以上であってよく、また、300以下、250以下、200以下であってよい。ポリシロキサン構造の重合度は、ポリシロキサン構造に含まれるSi原子の総数に等しい。一般式(1)で表される構造単位の重合度が2以上である場合、重合体に含まれる複数のY1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0043】
直鎖状のポリシロキサン構造としては、例えば、下記一般式(3)で表される構造が挙げられる。
【化3】
(一般式(3)中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に炭素数1~18の有機基を示し、R
3は1価の基を示し、nは重合度を示す。)
【0044】
R1及びR2で示される炭素数1~18の有機基としては、置換または無置換アルキル基、置換または無置換フェニル基、フルオロアルキル基、及びポリエーテル基等を挙げることができ、置換アルキル基および置換フェニル基における置換基としてはヒドロキシ基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合等が挙げられる。R1及びR2の炭素数は1~18、1~12又は1~6であってよい。該有機基の好ましい例としてはメチル基、フェニル基、フルオロアルキル基等が挙げられ、これらの中でもメチル基が特に好ましい。
【0045】
R3で示される1価の基としては、R1及びR2について上記説明した基と同様の基を採用することができる。R3は、炭素数1~12のヒドロカルビル基であってもよく、1以上の官能基(例えばヒドロキシ基、アミノ基、エーテル結合、エステル結合、アミド結合等)を有する炭素数1~12の1価の有機基であってもよく、ヒドロキシ基と結合していてもよい。
【0046】
nは重合度を示し、5以上、10以上、30以上であってよく、また、300以下、250以下、200以下であってよい。
【0047】
分枝状のポリシロキサン構造としては、例えば、一般式(3)において、n個のR1及び/又はn個のR2のうち少なくとも1つが、一般式(3)で表されるポリシロキサン構造(ポリシロキサン側鎖)で置換された構造が挙げられる。分枝状のポリシロキサン構造において、ポリシロキサン側鎖は、さらに1以上の分岐を有していてもよい。
【0048】
一般式(1)中のZ1は、X1とY1とを連結できる限りにおいて特に限定されるものではない。Z1としては例えば、エステル結合(-COO-)、アミド結合(-CO-NR-、Rは水素又は有機基を示す)、エーテル結合(-O-)、チオエーテル結合(-S-)、チオエステル結合(-CO-S-)、チオノエステル結合(-CS-O-)、チオアミド結合(-CS-NR-、Rは水素又は有機基を示す)、又はイミド結合(-CO-NR-CO-、Rは水素又は有機基を示す)を有する2価の基を好ましく採用できる。また、Z1は、上記化学結合に加えて、直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基あるいはアルキレン基、脂環式基、及び芳香族基等から選ばれる1以上の基を含んでもよい。Z1の炭素数は特に制限されるものではなく、0以上、1以上であってよく、また、12以下、6以下であってよい。一般式(1)で表される構造単位の重合度が2以上である場合、重合体に含まれる複数のZ1は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0049】
上記一般式(2)中のX2としては、X1について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。一般式(2)で表される構造単位の重合度が2以上である場合、重合体に含まれる複数のX2は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0050】
Y2は炭素数1~30の1価のヒドロカルビル基である。炭素数1~30のヒドロカルビル基としては、具体的には、アルキル基(環構造を有していてもよい。)、アルケニル基(二重結合の位置は任意であり、環構造を有していてもよい。)、アリール基(アルキル基又はアルケニル基を有していてもよい。)、アリールアルキル基、アリールアルケニル基等が挙げられる。
アルキル基としては、直鎖又は分枝の各種アルキル基が挙げられる。アルキル基が有し得る環構造としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等の炭素数5以上7以下のシクロアルキル基を例示できる。なお環構造に鎖式炭化水素基が置換する場合、環構造上の置換位置は任意である。
アルケニル基としては、直鎖又は分枝の各種アルケニル基が挙げられる。アルケニル基が有し得る環構造としては、上記シクロアルキル基のほか、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基、シクロヘプテニル基等の炭素数5以上7 以下のシクロアルケニル基を例示できる。なお環構造に鎖式炭化水素基が置換する場合、環構造上の置換位置は任意である。
アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基等を挙げることができる。またアルキルアリール基、アルケニルアリール基、アリールアルキル基、及びアリールアルケニル基において、芳香環上の置換位置は任意である。
Y2の炭素数は、1以上、8以上、12以上であってよく、また、30以下、22以下、18以下であってよい。Y2は脂肪族ヒドロカルビル基であることが好ましく、鎖式脂肪族ヒドロカルビル基であることがより好ましく、アルキル基であることが特に好ましい。
一般式(2)で表される構造単位の重合度が2以上である場合、重合体に含まれる複数のY2は互いに同一でも異なっていてもよい。
【0051】
一般式(2)中のZ2としては、Z1について上記説明した基と同様の基を採用でき、その好ましい態様についても上記同様である。一般式(2)で表される構造単位の重合度が2以上である場合、重合体に含まれる複数のZ2は互いに同一でも異なっていてもよい。
い。
【0052】
ポリジメチルシロキサン構造が側鎖に含まれる化合物は、例えば、一般式(1)で表される構造単位を与える(メタ)アクリル酸誘導体と、一般式(2)で表される構造単位を与える(メタ)アクリル酸誘導体と、の共重合により得ることができる。
【0053】
(B)成分の重量平均分子量は、引火点を向上させる観点から、20,000以上、好ましくは30,000以上、より好ましくは40,000以上であり、また、(B)成分の分散性の観点から、300,000以下、好ましくは270,000以下、より好ましくは250,000以下である。(B)成分の重量平均分子量は、上記の観点から好ましくは20,000~300,000、より好ましくは30,000~270,000、さらに好ましくは40,000~250,000である。
本明細書における重量平均分子量は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)解析の方法(ポリスチレン換算値)により以下の条件で測定される値を意味する。
≪GPC測定条件≫
装置:Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC UV RIシステム
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT900A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本、及び、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT200A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本を直列に接続
カラム温度:40℃
試料溶液:試料濃度1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:20.0μL
流量:0.8mL/min
検出装置:示差屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiVial(登録商標) PS-H)を用いて較正曲線を作成する。なおこの際、較正曲線から求められる推定値が、基準物質の実際の分子量から10%以上離れているデータは除外するものとする。
【0054】
(B)成分の含有量は、引火点をより向上させる観点から、潤滑油組成物から(B)成分を除いた油類組成物の全量を基準として、好ましくは0.1質量ppm以上、より好ましくは0.3質量ppm以上、更に好ましくは0.5質量ppm以上、一層好ましくは1質量ppm以上、特に好ましくは3質量ppm以上であり、また、(B)成分の分散性の観点から、当該油類組成物の全量を基準として、好ましくは100質量ppm以下、より好ましくは80質量ppm以下、さらに好ましくは50質量ppm以下である。(B)成分の含有量は、上記の観点から、当該油類組成物の全量を基準として、好ましくは0.1~100質量ppm、より好ましくは1~80質量ppm、さらに好ましくは3~50質量ppmであることが好ましい。
【0055】
<その他の添加剤>
潤滑油組成物は、その目的に応じて、(A)成分及び(B)成分に加えてその他の添加剤を更に含有することができる。その他の添加剤としては、例えば、粘度指数向上剤、金属系清浄剤、無灰分散剤、摩耗防止剤(極圧剤、油性剤等)、摩擦調整材、流動点降下剤、抗乳化剤等が挙げられる。その他の添加剤の含有量の合計は、潤滑油組成物全量を基準として、0.1~30質量%、0.2~25質量%、又は0.3~20質量%とすることができる。
【0056】
潤滑油組成物の引火点は、安全性の観点から、好ましくは250℃以上、より好ましくは252℃以上、さらに好ましくは254℃以上である。また、潤滑油組成物の引火点の上限は特に制限されないが、400℃以下、380℃以下、又は350℃以下であってよい。
【0057】
潤滑油組成物は、潤滑油を使用する幅広い分野で用いることができる。潤滑油組成物の用途としては、エンジン油、自動変速機又は手動変速機等の駆動系装置用潤滑油、油圧作動油、タービン油、圧縮機油、金属加工油、圧縮機油、冷凍機油等が挙げられる。
【0058】
[潤滑油組成物の製造方法]
本発明の一実施形態に係る潤滑油組成物の製造方法は、引火点が230℃以上である潤滑油基油及び(A)分子量が300未満である酸化防止剤を含有する油類組成物に、(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物を添加して潤滑油組成物を得る工程を備える。
【0059】
油類組成物の調製は、公知の手段によって行われてよい。潤滑油基油と(A)成分との混合は、冷却下、室温、又は加熱下において行われてもよい。また、混合時の雰囲気は、大気下であってもよく、又は不活性ガス(窒素、アルゴン等)の気流中であってもよい。
【0060】
(B)成分の油類組成物への添加の際には、(B)成分のみを単独で添加してもよく、又は、予め(B)成分を溶解できる溶剤を用いて(B)成分の希釈溶液を調製し、その希釈溶液を油類組成物に添加してもよい。希釈溶液の
調製に用いられる溶剤としては、灯油、トルエン、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。溶剤の使用量は、引火点をより向上させる観点から、得られる潤滑油組成物全量を基準として、好ましくは1.0質量%以下、より好ましくは0.5質量%以下、さらに好ましくは0.3質量%である。
【0061】
また、(B)成分を添加した後の油類組成物を加熱攪拌してもよく、又は、ホモジナイザーを用いて(B)成分を油類組成物に溶解又は分散させてもよい。
【0062】
また、(A)成分及び(B)成分に加えてその他の添加剤を更に含有する潤滑油組成物を製造する場合、引火点が230℃以上である潤滑油基油、(A)成分及びその他の添加剤を含有する油類組成物を調製し、次いで当該油類組成物に(B)成分を添加することによって、上記の潤滑油組成物を得ることができる。
【0063】
[引火点向上方法]
油類組成物は、潤滑油組成物の製造における中間生成物の他、潤滑油の市販品等であってもよい。すなわち、本発明の一実施形態に係る引火点向上方法は、引火点が230℃以上である潤滑油基油及び(A)分子量が300未満である酸化防止剤を含有する油類組成物に、(B)ポリジメチルシロキサン構造を有し、重量平均分子量が20,000~300,000である化合物を添加して潤滑油組成物を得る工程を備える。
【0064】
潤滑油が、引火点が230℃以上の潤滑油基油及び(A)成分を含有し、(B)成分を含有しない場合、当該潤滑油を油類組成物としてそのまま用い、当該潤滑油に(B)成分を添加することによって、引火点を十分に向上させることができる。
【0065】
潤滑油が、引火点が230℃以上の潤滑油基油を含有し、(A)成分及び(B)成分を含有しない場合、当該潤滑油に(A)成分を添加して油類組成物を調製し、次いで油類組成物に(B)成分を更に添加することによって、引火点を十分に向上させることができる。
【実施例0066】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0067】
[実施例1~11、比較例1~4]
以下に示す基油及び酸化防止剤を用いて、表1~3に示す組成を有する油類組成物を調製した。
(潤滑油基油)
基油1:鉱油系基油(米国石油協会(API)潤滑油基油カテゴリーのグループIIIに該当する水素化精製基油、引火点:254℃、40℃動粘度:47.7mm
2/s、100℃動粘度:7.79mm
2/s、粘度指数:129、15℃密度:0.845g/cm
3、流動点:-15℃、%C
P:79.8、%C
N:20.2、%C
A:0、硫黄分:<1質量ppm、窒素分:<10質量ppm、初留点:350℃)
(酸化防止剤)
A1:ジ-tert.-ブチル-p-クレゾール(分子量:220)
A2:ジ-tert.-ブチル-フェノール(分子量:206)
a3:下記式(4)で表される化合物(分子量:390)
【化4】
【0068】
実施例1~11及び比較例3、4の各油類組成物に、以下に示すポリジメチルシロキサン構造を有する化合物を添加し、潤滑油組成物を得た。比較例1、2においては、ポリジメチルシロキサン構造を有する化合物を添加せず、油類組成物をそのまま潤滑油組成物として用いた。表1~3中、B1~B4の添加量は、油類組成物の全量を100質量%とするときの割合(out mass ppm)である。
(ポリジメチルシロキサン構造を有する化合物)
B1:ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量:90,000)
B2:ポリジメチルシロキサン(重量平均分子量:257,000)
B3:メタクリレートのカルボキシル基にポリジメチルシロキサン基が結合した単量体の単独重合体(重量平均分子量:74,000、単量体の重量平均分子量:4,600)
B4:メタクリレートのカルボキシル基にポリジメチルシロキサン基が結合した単量体の単独重合体(重量平均分子量:32,000、単量体の重量平均分子量:4,600)
【0069】
B1~B4の重量平均分子量は、以下の手順で測定した。
[GPC測定条件]
装置:Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC UV RIシステム
カラム:上流側から順に、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT900A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)2本、及び、Waters Corporation製 ACQUITY(登録商標) APC XT200A(ゲル粒径2.5μm、カラムサイズ(内径×長さ)4.6mm×150mm)1本を直列に接続
カラム温度:40℃
試料溶液:試料濃度1.0質量%のテトラヒドロフラン溶液
溶液注入量:20.0μL
流量:0.8mL/min
検出装置:示差屈折率検出器
基準物質:標準ポリスチレン(Agilent Technologies社製Agilent EasiVial(登録商標) PS-H)を用いて較正曲線を作成した。なおこの際、較正曲線から求められる推定値が、基準物質の実際の分子量から10%以上離れているデータは除外した。
【0070】
[引火点の測定]
比較例1、2の油類組成物、並びに、実施例1~5及び比較例3、4の潤滑油組成物について、JIS K2265-4:2007によるクリーブランド開放式自動引火点測定装置によって5回の繰り返しを行い、5回の平均値の小数第1位を四捨五入して引火点を求めた。引火点の測定においては、JIS K2265-4:2007に規定された室内併行精度(許容差:8℃)を超えた測定値を除外した。また、測定値については、JIS K2265-4:2007の規定に従って各種補正をした。
各潤滑油組成物について、基油からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-基油の引火点、℃)及び油類組成物からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-油類組成物の引火点、℃)を求めた。得られた結果を表1~3に示す。なお、基油からの引火点向上幅は、比較例1の油類組成物の引火点を基準とした潤滑油組成物の引火点上昇幅と同義である。
【0071】
【0072】
【0073】
【0074】
[実施例12、比較例5]
潤滑油基油として以下に示す基油2を用いたこと以外は上記と同様にして、油類組成物の調製及び潤滑油組成物の調製を実施した。油類組成物の組成、並びに、ポリシロキサン構造を有する化合物の種類及び油類組成物に対する添加量を表4に示す。
(潤滑油基油)
基油2:鉱油系基油(米国石油協会(API)潤滑油基油カテゴリーのグループIIIに該当する水素化精製基油、引火点:242℃、40℃動粘度:36.1mm2/s、100℃動粘度:6.40mm2/s、粘度指数:129、15℃密度:0.845g/cm3、流動点:-15℃、%CP:78.3、%CN:21.7、%CA:0、硫黄分:<1質量ppm、窒素分:<10質量ppm、初留点:330℃)
【0075】
実施例12及び比較例5の潤滑油組成物について、上記と同様にして引火点を測定し、基油からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-基油の引火点、℃)及び油類組成物からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-油類組成物の引火点、℃)を求めた。得られた結果を表4に示す。なお、基油からの引火点向上幅は、比較例5の油類組成物の引火点を基準とした潤滑油組成物の引火点上昇幅と同義である。
【0076】
【0077】
[実施例13、比較例6]
潤滑油基油として上記の基油1及び以下に示す基油3を用いたこと以外は上記と同様にして、油類組成物の調製及び潤滑油組成物の調製を実施した。油類組成物の組成、並びに、ポリシロキサン構造を有する化合物の種類及び油類組成物に対する添加量を表5に示す。
(潤滑油基油)
基油3:エステル系基油(トリメチロールプロパンと炭素数8の脂肪酸及び炭素数10の脂肪酸とのエステル、引火点:254℃、40℃動粘度:16.0mm2/s、100℃動粘度:3.78mm2/s、粘度指数:129、15℃密度:0.956g/cm3、流動点:<-45℃、初留点:434℃)
【0078】
実施例13及び比較例6の潤滑油組成物について、上記と同様にして引火点を測定し、基油からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-基油の引火点、℃)及び油類組成物からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-油類組成物の引火点、℃)を求めた。得られた結果を表5に示す。なお、基油からの引火点向上幅は、比較例6の油類組成物の引火点を基準とした潤滑油組成物の引火点上昇幅と同義である。
【0079】
【0080】
[実施例14、比較例7]
潤滑油基油として上記の基油3を用いたこと以外は上記と同様にして、油類組成物の調製及び潤滑油組成物の調製を実施した。油類組成物の組成、並びに、ポリシロキサン構造を有する化合物の種類及び油類組成物に対する添加量を表6に示す。
【0081】
実施例14及び比較例7の潤滑油組成物について、上記と同様にして引火点を測定し、基油からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-基油の引火点、℃)及び油類組成物からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-油類組成物の引火点、℃)を求めた。得られた結果を表6に示す。なお、基油からの引火点向上幅は、比較例7の油類組成物の引火点を基準とした潤滑油組成物の引火点上昇幅と同義である。
【0082】
【0083】
[実施例15、比較例8]
潤滑油基油として以下に示す基油4を用いたこと以外は上記と同様にして、油類組成物の調製及び潤滑油組成物の調製を実施した。油類組成物の組成、並びに、ポリシロキサン構造を有する化合物の種類及び油類組成物に対する添加量を表7に示す。
(潤滑油基油)
基油4:ポリ-α-オレフィン(米国石油協会(API)潤滑油基油カテゴリーのグループIVに該当する合成系基油、引火点:244℃、40℃動粘度:30.2mm2/s、100℃動粘度:5.77mm2/s、粘度指数:136、15℃密度:0.8269cm3、流動点:<―45℃、初留点:406.7℃)
【0084】
実施例15及び比較例8の潤滑油組成物について、上記と同様にして引火点を測定し、基油からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-基油の引火点、℃)及び油類組成物からの引火点向上幅(潤滑油組成物の引火点-油類組成物の引火点、℃)を求めた。得られた結果を表7に示す。なお、基油からの引火点向上幅は、比較例8の油類組成物の引火点を基準とした潤滑油組成物の引火点上昇幅と同義である。
【0085】
【0086】
実施例1~11において、引火点が230℃以上である潤滑油基油に(A)成分を添加した油類組成物は、潤滑油基油単独(比較例1)よりも低い引火点を示した。ところが、各油類組成物に(B)成分を更に添加した潤滑油組成物の引火点は、潤滑油基油の引火点及び油類組成物の引火点を大きく上回った。
一方、潤滑油基油に(A)成分のみを添加した比較例2の潤滑油組成物は、潤滑油基油単独(比較例1)よりも低い引火点を示した。また、潤滑油基油に(B)成分のみを添加した比較例3の潤滑油組成物、並びに、潤滑油基油に分子量が300以上である酸化防止剤及び(B)成分を添加した比較例4の潤滑油組成物は、実施例1~11の潤滑油組成物よりも低い引火点を示した。
実施例12~15においても、実施例1~11と同様に、潤滑油組成物の引火点が、潤滑油基油単独(比較例5~8)の引火点及び油類組成物の引火点を大きく上回った。
これらの結果から、引火点が230℃以上である基油に(A)成分及び(B)成分を添加することにより、優れた引火点向上効果が奏されることが分かる。