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特開2023-184480二次電池及び負極活物質層の作製方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184480
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】二次電池及び負極活物質層の作製方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/13 20100101AFI20231221BHJP
   H01M 4/62 20060101ALI20231221BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20231221BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20231221BHJP
   H01M 10/0568 20100101ALI20231221BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/62 Z
H01M4/38 Z
H01M4/48
H01M4/587
H01M10/052
H01M4/139
H01M10/0566
H01M10/0568
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097406
(22)【出願日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2022097849
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000153878
【氏名又は名称】株式会社半導体エネルギー研究所
(72)【発明者】
【氏名】木村 将之
(72)【発明者】
【氏名】荒井 謙二
(72)【発明者】
【氏名】中尾 泰介
(72)【発明者】
【氏名】栗城 和貴
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AL02
5H029AL07
5H029AL11
5H029AM07
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029EJ04
5H029EJ12
5H029HJ01
5H029HJ05
5H050AA07
5H050BA16
5H050BA17
5H050CB03
5H050CB08
5H050CB11
5H050DA03
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA10
5H050EA23
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
【課題】負極活物質、負極活物質層、およびこれらを有する二次電池、またはこれらの作製方法を提供する。
【解決手段】本発明の一態様は、負極活物質として炭素粒子と、シリコン系材料と、を混合して用いる。また、バインダとしてカルボキシ基をはじめとする極性置換基を有するポリマーを用いる。具体的には、これらのバインダとして、グルタミン酸を有するポリマーを用いる。シリコン系材料としては、1μm未満の粒子径であるナノシリコン粒子を用いる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極と、
負極と、
前記正極と前記負極との間にセパレータと、
前記正極と前記負極との間に電解液と、を有する二次電池であり、
前記負極は、黒鉛粒子と、前記黒鉛粒子よりも粒子径の小さいシリコン粒子と、バインダと、を有し、
前記バインダは、グルタミン酸を有する、二次電池。
【請求項2】
請求項1において、前記シリコン粒子の平均粒子径は1μm未満である二次電池。
【請求項3】
請求項1において、前記黒鉛粒子の平均粒子径は5μm以上である二次電池。
【請求項4】
請求項1において、
前記シリコン粒子の重量比は、前記黒鉛粒子の重量比よりも少ない二次電池。
【請求項5】
請求項1において、前記負極は、さらにアセチレンブラックを有し、
前記アセチレンブラックの重量比は前記シリコン粒子の重量比よりも少ない、または同じ二次電池。
【請求項6】
請求項1において、前記電解液はイオン液体を含む二次電池。
【請求項7】
請求項1において、前記電解液は有機溶媒を含む二次電池。
【請求項8】
グルタミン酸を有するバインダと、
黒鉛粒子、及びシリコン粒子と、を混ぜて混合物を形成し、前記混合物と溶媒を混ぜてスラリーを用意し、前記スラリーを集電体上に塗布する負極活物質層の作製方法。
【請求項9】
請求項8において、前記シリコン粒子の重量比は、前記黒鉛粒子の重量比よりも少ない作製方法。
【請求項10】
請求項8において、前記バインダの重量比は前記黒鉛粒子の重量比よりも少なく、
前記黒鉛粒子と前記バインダの和に対する前記バインダの重量比は5wt%よりも多い、作製方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の一様態は、物、方法、又は、製造方法に関する。または、本発明は、プロセス、マシン、マニュファクチャ、又は、組成物(コンポジション・オブ・マター)に関する。本発明の一態様は、二次電池を含む蓄電装置、半導体装置、表示装置、発光装置、照明装置、電子機器またはそれらの製造方法に関する。
【0002】
なお、本明細書中において電子機器とは、蓄電装置を有する装置全般を指し、蓄電装置を有する電気光学装置、蓄電装置を有する情報端末装置などは全て電子機器である。
【背景技術】
【0003】
近年、リチウムイオン二次電池、リチウムイオンキャパシタ、空気電池、全固体電池等、種々の蓄電装置の開発が盛んに行われている。特に高出力、高容量であるリチウムイオン二次電池は半導体産業の発展と併せて急速にその需要が拡大し、充電可能なエネルギーの供給源として現代の情報化社会に不可欠なものとなっている。
【0004】
リチウムイオン二次電池の高容量化および充放電サイクル特性の向上のため、正極、負極ともに種々の研究開発が行われている。負極活物質としては、シリコン系材料が黒鉛系材料と比較して容量が高いことが知られており、シリコン系材料を用いた負極の検討が行われている(たとえば特許文献1および特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-113870号公報
【特許文献2】特開2019-165005号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
リチウムイオン二次電池には、充放電容量、充放電サイクル特性、信頼性、安全性、又はコストといった様々な面で改善の余地が残されている。
【0007】
そのためこれに用いられる負極および負極活物質にも、二次電池に用いたときに、充放電容量、充放電サイクル特性、信頼性、安全性、又はコスト等の課題が改善できる材料が求められている。
【0008】
本発明の一態様は、リチウムイオン二次電池に用いることができ、充放電容量および充放電サイクル特性に優れた負極を提供することを課題の一とする。または、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することを課題の一とする。
【0009】
また本発明の一態様は、負極活物質、負極合剤、負極活物質層、およびこれらを有する二次電池、またはこれらの作製方法を提供することを課題の一とする。
【0010】
なお、これらの課題の記載は、他の課題の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、これらの課題の全てを解決する必要はないものとする。なお、明細書、図面、請求項の記載から、これら以外の課題を抽出することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様は、負極活物質として炭素粒子と、シリコン系材料と、を混合して用いる。またこれらのバインダとして、グルタミン酸を有する高分子化合物を用いる。具体的にはバインダとしてグルタミン酸を有するポリマーを用いる。
【0012】
リチウムイオン二次電池は、正極活物質層が形成された正極用の集電体と、セパレータと、負極活物質層が形成された負極用の集電体とを重ねた積層構造を有する。負極用の集電体の片面または両面に負極活物質層を形成する。負極用の集電体上にスラリーを塗布して負極活物質層を形成する。スラリーは、炭素粒子と、シリコン粒子と、バインダとを混合し、混合物に水を加えて作製する。同時または一度に炭素粒子と、シリコン粒子と、バインダとを混合する場合には工程を短縮できる。
【0013】
炭素粒子としては、黒鉛、黒鉛のような層構造を持つ炭素、アモルファスカーボン、またはハードカーボンを用いる。また、炭素粒子に代えて炭素繊維を用いてもよい。本明細書で用いる炭素粒子として具体的には黒鉛粒子を指しており、自然界に豊富に存在しているため安価であり、負極の活物質として好ましい。
【0014】
本明細書で開示する発明の構成は、正極と、負極と、正極と負極との間にセパレータと、正極と負極との間にイオン液体または有機溶媒と、を有する二次電池であり、負極は、黒鉛粒子と、黒鉛粒子よりも粒子径の小さいシリコン粒子と、バインダと、を有し、バインダは、グルタミン酸を有する、二次電池である。
【0015】
シリコンの容量は4200mAh/gであり、黒鉛372mAh/gの10倍以上であるが、シリコンのみを用いた負極とすると、充放電時における粒子の膨張及び収縮により急激なサイクル劣化が生じる問題がある。サイクル劣化を改善するためには、シリコン粒子を微細化したものを用いることが好ましい。
【0016】
上記構成において、シリコン粒子とは、リチウムイオン二次電池の負極活物質の材料としてのシリコン粉末であり、粒度分布の平均粒径、即ち、平均粒子径が100nm近傍のものを指しており、ナノシリコン粒子と呼ぶ場合がある。用いるシリコン粒子は、シリコン原料を粉砕し、均一な粒子径に調節することが好ましい。シリコン粒子は、シリコン、シリコン酸化物、シリコン合金のうち、少なくとも一つを含んでもよい。
【0017】
上記構成において、シリコン粒子と混ぜる黒鉛粒子の平均粒子径は1μm以上、好ましくは5μm以上30μm以下とすることが好ましい。粒子の大きさの測定は、代表的にはレーザー回折式粒度分布測定を用いることができるが、レーザー回折式粒度分布測定に限定されず、SEMまたはTEM(Transmission Electron Microscope、透過電子顕微鏡)などの分析によって、粒子断面の長径を測定してもよい。
【0018】
本明細書においては、負極活物質は黒鉛粒子及びシリコン粒子の両方を含む。シリコン粒子を混合して負極に用いるため、エネルギー密度の高い二次電池を実現できる。
【0019】
なお、本明細書における重量比は、後述する電極スラリーを作製した際の配合比すなわち、活物質、導電助剤及びバインダの総重量(混合した粉末)におけるそれぞれの重量比(wt%)を指している。従って二次電池とした後におけるそれぞれの重量比とは一致しない場合がある。
【0020】
具体的には、負極活物質を構成する粉末材料の総重量に対するシリコン重量比を7.5wt%以上、37.5wt%以下とする。また、負極活物質層において、シリコン粒子の重量比は、黒鉛粒子の重量比よりも少ないことも特徴の一つである。
【0021】
また、負極活物質層を形成する際に、導電助剤を加えてもよい。導電助剤として用いられる炭素材料として代表的なものにアセチレンブラック(ABとも呼ぶ)がある。アセチレンブラックは、平均粒子径が数十nmから数百nmの嵩高い粒子であり、他の材料と面接触させることが困難であり、点接触となりやすい。このため、活物質とアセチレンブラックとを混合させた場合、活物質とアセチレンブラックとの接触抵抗は高くなってしまう。接触抵抗を低下させるためにアセチレンブラックを多く使用すると、電極全体に対する活物質の割合が低下して、二次電池の放電容量が低下してしまう。
【0022】
また、アセチレンブラックは、凝集しやすい材料であり、均一に分散するように混合させることが好ましい。アセチレンブラックの重量比はシリコン粒子の重量比よりも少ない、または同じとする。勿論、導電助剤(アセチレンブラック)を加えなくとも二次電池を作製することはできる。
【0023】
二次電池の負極として、金属箔などの集電体と、活物質と、を固着させるために、バインダを混合している。バインダは結着剤とも呼ばれる。バインダは高分子材料であり、バインダを多く含ませると負極における活物質の割合が低下して、二次電池の放電容量が小さくなる。従って、従来では、スラリーを作製する際のバインダの量は最小限に混合させている。
【0024】
本明細書では、負極に用いるバインダとして、グルタミン酸を有する高分子化合物を少なくとも有する材料を用いることが好ましい。また、用いるグルタミン酸を有する高分子化合物は、親水性を有し、生分解性を有する。グルタミン酸を有する高分子化合物に含まれるカルボキシ基には、酸素に非共有電子対を有しており、電解液中のリチウムイオンが脱溶媒和して負極活物質に入るのを非共有電子対が助ける可能性がある。
【0025】
また、負極に用いるバインダとして、中でも、カルボキシ基を有する高分子化合物を少なくとも有する材料を用いることが好ましく、ポリグルタミン酸が特に好ましい。グルタミン酸を有する高分子化合物に含まれるカルボキシ基をはじめとする極性の置換基が、電解液中のリチウムイオンが脱溶媒和して負極活物質に入るのを助ける可能性がある。なお、カルボキシ基をはじめとする置換基は、FT-IR等で分析することができる。ポリグルタミン酸の化学式を以下に示す。
【0026】
【化1】
【0027】
ポリグルタミン酸の作製方法は特に限定されず、γ-グルタミン酸を主体とする材料であり、微細な粉粒体であればよい。ポリグルタミン酸を溶媒に入れ、撹拌させることで凝集剤として機能させることができる。ポリグルタミン酸の作製方法によっては、他の元素(例えば、Ca、Al、Na、Mg、Fe、Si、S)を含むγ-グルタミン酸とも言える。凝集剤として機能するのであれば、γ-グルタミン酸に他の元素(例えば、Ca、Al、Na、Mg、Fe、Si、S)を含ませてもよい。また、ポリグルタミン酸は架橋物であってもよい。架橋物であるポリグルタミン酸の重量平均分子量は数千万とすることができる。重量平均分子量は粘度法(毛細管粘度計により固有粘度を求め、粘度式から算出する方法)またはゲル浸透クロマトグラフィーを用いて測定される、重量分率を考慮した平均分子量である。また、負極に用いるバインダとしてカルボキシ基を有する高分子化合物を用いる場合、重量平均分子量は80万以上、好ましくは150万以上、さらに好ましくは250万よりも大きいものを用いる。
【0028】
また、バインダの重量比は、黒鉛粒子の重量比よりも少なくすることが好ましい。また、バインダの重量比が少なすぎると効果が小さくなるため、バインダは黒鉛粒子とバインダの和に対して5wt%よりも多くすることが好ましい。
【0029】
また、負極活物質層の作製方法も本発明の構成の一つであり、その構成は、バインダと、黒鉛粒子と、シリコン粒子と、を混ぜて混合物を形成し、混合物と溶媒とを混ぜてスラリーを用意し、スラリーを集電体上に塗布する負極活物質層の作製方法である。
【0030】
ポリグルタミン酸、黒鉛粒子、シリコン粒子、及びアセチレンブラックの重量比を調節した後、それらを混合し、その後、溶媒(例えば脱イオン水)と混ぜることでスラリーを用意する。スラリーを負極集電体の片面または両面に塗布し、乾燥させ、プレスすることで負極活物質層を作製すると、サイクル特性に優れた二次電池を提供することができる。
【0031】
また、シリコン粒子は、酸化させないように負極に用いることが好ましく、ポリグルタミン酸、黒鉛粒子、及びアセチレンブラックと混合する際にもシリコン粒子が酸化しないように、混合処理することが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
バインダの量を増すと、二次電池の容量の大幅な低下、充放電サイクルの特性の急激な劣化が発生するため、従来では、スラリーを作製する際のバインダの量は最小限に混合させていたが、本発明の一態様により、バインダの量を増やしても、ポリグルタミン酸がナノシリコンを包み、ナノシリコンの膨張収縮が生じたとしても負極の劣化を抑え、二次電池の容量の大幅な低下、充放電サイクルの特性の急激な劣化が見られない二次電池を実現できる。
【0033】
本発明の一態様により、リチウムイオン二次電池に用いることができ、充放電容量および充放電サイクル特性に優れた負極を提供することができる。または、安全性又は信頼性の高い二次電池を提供することができる。
【0034】
また本発明の一態様は、負極活物質、負極合剤、負極活物質層、およびこれらを有する二次電池、またはこれらの作製方法を提供することができる。
【0035】
なお、これらの効果の記載は、他の効果の存在を妨げるものではない。なお、本発明の一態様は、必ずしも、これらの効果の全てを有する必要はない。なお、これら以外の効果は、明細書、図面、請求項などの記載から、自ずと明らかとなるものであり、明細書、図面、または請求項の記載から、これら以外の効果を抽出することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
図1】本発明の一態様を示す負極活物質層の上面からの写真図及びその模式図である。
図2】本発明の一態様を示す、集電体上の負極活物質層の断面写真である。
図3】本発明の一態様を示す負極活物質層の作製フローの一例を示す図である。
図4図4(A)はコイン型二次電池の分解斜視図であり、図4(B)はコイン型二次電池の斜視図であり、図4(C)はその断面斜視図である。
図5】実施例1の充放電特性を示す図である。
図6】実施例2のサイクル特性を示す図である。
図7図7(A)は、円筒型の二次電池の例を示す。図7(B)は、円筒型の二次電池の例を示す。図7(C)は、複数の円筒型の二次電池の例を示す。図7(D)は、複数の円筒型の二次電池を有する蓄電システムの例を示す。
図8図8(A)乃至図8(C)は、二次電池の例を説明する図である。
図9図9(A)、及び図9(B)は、二次電池の外観を示す図である。
図10図10(A)乃至図10(C)は、二次電池の作製方法を説明する図である。
図11図11(A)乃至図11(D)は、輸送用車両の一例を説明する図である。
図12図12(A)及び図12(B)は、本発明の一態様に係る蓄電装置を説明する図である。
図13図13(A)は電動自転車を示す図であり、図13(B)は電動自転車の二次電池を示す図であり、図13(C)は電動バイクを説明する図である。
図14図14(A)乃至図14(D)は、電子機器の一例を説明する図である。
図15】比較例の負極の上面写真図である。
図16】比較例のサイクル特性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下では、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。ただし、本発明は以下の説明に限定されず、その形態および詳細を様々に変更し得ることは、当業者であれば容易に理解される。また、本発明は以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0038】
(実施の形態1)
本実施の形態では、負極活物質層の一例と、負極活物質層を有する負極の作製方法の一例について以下に説明する。
【0039】
本実施の形態の負極活物質層の上面写真図を図1(A)に示し、その模式図を図1(B)に示す。また、負極活物質層の断面写真を図2に示す。
【0040】
図1(A)は、負極集電体上にスラリーを塗布し、乾燥させた状態での負極活物質層の上面の様子を示している。図1(B)に示すように黒鉛粒子100の表面の一部が露出している。また、黒鉛粒子100の間には、バインダ102、またはシリコン粒子101の凝集体、またはAB103の凝集体を確認できる。
【0041】
バインダ102としては、カルボキシ基を有するポリマーを少なくとも有する材料を用いることが好ましく、本実施の形態では、ポリグルタミン酸を用いる。
【0042】
また、本実施の形態の負極活物質層の作製フローの一例を図3に示す。
【0043】
まず、黒鉛粒子100、シリコン粒子101、バインダ102、及びAB103を用意する。次いで、それぞれ秤量して第1の混合を行う。具体的には、第1の混合で混合する粉末の総重量に対するシリコン粒子101の重量比の範囲は、7.5wt%以上37.5wt%以下とし、総重量に対するバインダ102の重量比の範囲は10wt%以上50wt%以下とする。また、総重量に対するAB103の重量比の範囲は0wt%以上20wt%以下とする。
【0044】
例えば、シリコン粒子101と黒鉛粒子100とバインダ102とAB103が重量比で3:5:1:1となるように秤量する。また、ABを用いず、例えば、シリコン粒子101と黒鉛粒子100とバインダ102が重量比で3:5:1となるように秤量する。また、シリコン粒子101と黒鉛粒子100とバインダ102が重量比で1:9:1となるように秤量してもよい。
【0045】
第1の混合を行った後、粉末である混合物104に溶媒105を加えて第2の混合を行い、スラリー106を作成する。溶媒105としては脱イオン水を用いる。第2の混合はスラリー調製と呼ばれることもある。
【0046】
スラリー106とは、集電体上に活物質層を形成するために用いる材料液であり、少なくとも活物質とバインダと溶媒を含有し、必要であればさらに導電助剤を混合させたものを指している。スラリーは電極用スラリーまたは活物質スラリーと呼ばれることもあり、正極活物質層を形成する場合には正極用スラリーと呼ばれることもあり、負極活物質層を形成する場合には負極用スラリーと呼ばれることもある。
【0047】
そして、負極集電体107上にスラリー106を塗布する。その後、乾燥させる。乾燥後、さらにプレス処理を行う。プレス処理と同時に加熱を行ってもよい。
【0048】
以上の工程で、負極集電体107上に負極活物質層を有する負極108を作製することができる。
【0049】
こうして得られた負極108を用いた二次電池は、放電容量が大きく、優れたサイクル特性を示す。
【0050】
(実施の形態2)
本実施の形態では、実施の形態1で説明した作製方法によって作製された負極を有する二次電池に関し、形状の例を説明する。
【0051】
[コイン型二次電池]
コイン型の二次電池の一例について説明する。図4(A)はコイン型(単層偏平型)の二次電池の分解斜視図であり、図4(B)は、外観図であり、図4(C)は、その断面図である。コイン型の二次電池は主に小型の電子機器に用いられる。
【0052】
なお、図4(A)では、わかりやすくするために部材の重なり(上下関係、及び位置関係)がわかるように模式図としている。従って図4(A)と図4(B)は完全に一致する対応図とはしていない。
【0053】
図4(A)では、正極304、セパレータ310、負極307、スペーサ322、ワッシャー312を重ねている。これらを負極缶302と正極缶301とガスケットで封止している。なお、図4(A)において、封止のためのガスケットは図示していない。スペーサ322、ワッシャー312は、正極缶301と負極缶302を圧着する際に、内部を保護または缶内の位置を固定するために用いられている。スペーサ322、ワッシャー312はステンレスまたは絶縁材料を用いる。
【0054】
正極集電体305上に正極活物質層306が形成された積層構造を正極304としている。
【0055】
図4(B)は、完成したコイン型の二次電池の斜視図である。
【0056】
コイン型の二次電池300は、正極端子を兼ねた正極缶301と負極端子を兼ねた負極缶302とが、ポリプロピレンで形成されたガスケット303で絶縁シールされている。正極304は、正極集電体305と、これと接するように設けられた正極活物質層306により形成される。また、負極307は、負極集電体308と、これに接するように設けられた負極活物質層309により形成される。また、負極307は、積層構造に限定されず、リチウム金属箔またはリチウム金属とアルミニウムの合金箔を用いてもよい。
【0057】
なお、コイン型の二次電池300に用いる正極304及び負極307は、それぞれ活物質層は片面のみに形成すればよい。
【0058】
正極缶301、負極缶302には、電解液に対して耐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタンの金属、若しくはこれらの合金又はこれらと他の金属との合金(例えばステンレス鋼)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケルまたはアルミニウムを被覆することが好ましい。正極缶301は正極304と、負極缶302は負極307とそれぞれ電気的に接続する。
【0059】
これら負極307、正極304及びセパレータ310を電解液またはイオン液体に浸し、図4(C)に示すように、正極缶301を下にして正極304、セパレータ310、負極307、負極缶302をこの順で積層し、正極缶301と負極缶302とをガスケット303を介して圧着してコイン形の二次電池300を製造する。
【0060】
セパレータ310としては、例えば、紙をはじめとするセルロースを有する繊維、不織布、ガラス繊維、セラミックス、或いはナイロン樹脂(ポリアミド)、ビニロン樹脂(ポリビニルアルコール系繊維)、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂を用いた合成繊維で形成されたものを用いることができる。
【0061】
セパレータは多層構造であってもよい。例えばポリプロピレン、ポリエチレン等の有機材料フィルムに、セラミックス系材料、フッ素系材料、ポリアミド系材料、またはこれらを混合したもの等をコートすることができる。セラミックス系材料としては、例えば酸化アルミニウム粒子、酸化シリコン粒子等を用いることができる。フッ素系材料としては、例えばPVDF、ポリテトラフルオロエチレン等を用いることができる。ポリアミド系材料としては、例えばナイロン、アラミド(メタ系アラミド、パラ系アラミド)等を用いることができる。
【0062】
セラミックス系材料をコートすると耐酸化性が向上するため、高電圧充放電の際のセパレータの劣化を抑制し、二次電池の信頼性を向上させることができる。またフッ素系材料をコートするとセパレータと電極が密着しやすくなり、出力特性を向上させることができる。ポリアミド系材料、特にアラミドをコートすると、耐熱性が向上するため、二次電池の安全性を向上させることができる。
【0063】
例えばポリプロピレンのフィルムの両面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートしてもよい。また、ポリプロピレンのフィルムの、正極と接する面に酸化アルミニウムとアラミドの混合材料をコートし、負極と接する面にフッ素系材料をコートしてもよい。
【0064】
多層構造のセパレータを用いると、セパレータ全体の厚さが薄くても二次電池の安全性を保つことができるため、二次電池の体積あたりの容量を大きくすることができる。
【0065】
上記の構成を有することで、サイクル特性に優れたコイン型の二次電池300とすることができる。また、本実施の形態は実施例1と組み合わせることができる。
【0066】
(実施の形態3)
円筒型の二次電池の例について図7(A)を参照して説明する。円筒型の二次電池616は、図7(A)に示すように、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0067】
図7(B)は、円筒型の二次電池の断面を模式的に示した図である。図7(B)に示す円筒型の二次電池は、上面に正極キャップ(電池蓋)601を有し、側面及び底面に電池缶(外装缶)602を有している。これら正極キャップ601と電池缶(外装缶)602とは、ガスケット(絶縁パッキン)610によって絶縁されている。
【0068】
中空円柱状の電池缶602の内側には、帯状の正極604と負極606とがセパレータ605を間に挟んで捲回された捲回体が設けられている。図示しないが、捲回体は中心軸を中心に捲回されている。電池缶602は、一端が閉じられ、他端が開いている。電池缶602には、電解液に対して耐腐食性のあるニッケル、アルミニウム、チタンの金属、又はこれらの合金、これらと他の金属との合金(例えば、ステンレス鋼)を用いることができる。また、電解液による腐食を防ぐため、ニッケル及びアルミニウムを電池缶602に被覆することが好ましい。電池缶602の内側において、正極、負極及びセパレータが捲回された捲回体は、対向する一対の絶縁板608、609により挟まれている。また、捲回体が設けられた電池缶602の内部は、非水電解液(図示せず)が注入されている。非水電解液は、コイン型の二次電池と同様のものを用いることができる。
【0069】
円筒型の蓄電池に用いる正極及び負極は捲回するため、集電体の両面に活物質を形成することが好ましい。
【0070】
実施の形態1で得られる負極活物質層を負極606に用いることで、サイクル特性に優れた円筒型の二次電池616とすることができる。
【0071】
正極604には正極端子(正極集電リード)603が接続され、負極606には負極端子(負極集電リード)607が接続される。正極端子603及び負極端子607は、ともにアルミニウムなどの金属材料を用いることができる。正極端子603は安全弁機構613に、負極端子607は電池缶602の底にそれぞれ抵抗溶接される。安全弁機構613は、PTC(Positive Temperature Coefficient)素子611を介して正極キャップ601と電気的に接続されている。安全弁機構613は電池の内圧の上昇が所定の閾値を超えた場合に、正極キャップ601と正極604との電気的な接続を切断するものである。また、PTC素子611は温度が上昇した場合に抵抗が増大する熱感抵抗素子であり、抵抗の増大により電流量を制限して異常発熱を防止するものである。PTC素子には、チタン酸バリウム(BaTiO)系半導体セラミックスを用いることができる。
【0072】
図7(C)は蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有する。それぞれの二次電池の正極は、絶縁体625で分離された導電体624に接触し、電気的に接続されている。導電体624は配線623を介して、制御回路620に電気的に接続されている。また、それぞれの二次電池の負極は、配線626を介して制御回路620に電気的に接続されている。制御回路620として、充放電制御回路、または過充電もしくは/及び過放電を防止する保護回路を適用することができる。
【0073】
図7(D)は、蓄電システム615の一例を示す。蓄電システム615は複数の二次電池616を有し、複数の二次電池616は、導電板628及び導電板614の間に挟まれている。複数の二次電池616は、配線627により導電板628及び導電板614と電気的に接続される。複数の二次電池616は、並列接続されていてもよいし、直列接続されていてもよいし、並列に接続し、その集合同士を直列に接続されていてもよい。複数の二次電池616を有する蓄電システム615を構成することで、大きな電力を取り出すことができる。
【0074】
複数の二次電池616が、並列に接続された後、さらに直列に接続されてもよい。
【0075】
また、複数の二次電池616の間に温度制御装置を有していてもよい。二次電池616が過熱されたときは、温度制御装置により冷却し、二次電池616が冷えすぎているときは温度制御装置により加熱することができる。そのため蓄電システム615の性能が外気温に影響されにくくなる。
【0076】
また、図7(D)において、蓄電システム615は制御回路620に配線621及び配線622を介して電気的に接続されている。配線621は導電板628を介して複数の二次電池616の正極に、配線622は導電板614を介して複数の二次電池616の負極に、それぞれ電気的に接続される。
【0077】
[二次電池の他の構造例]
二次電池の構造例について図8を用いて説明する。
【0078】
図8(A)に示すような捲回体950aを有する二次電池913としてもよい。図8(A)に示す捲回体950aは、負極931と、正極932と、セパレータ933と、を有する。負極931は負極活物質層931aを有する。正極932は正極活物質層932aを有する。
【0079】
セパレータ933は、負極活物質層931a及び正極活物質層932aよりも広い幅を有し、負極活物質層931a及び正極活物質層932aと重畳するように捲回されている。また正極活物質層932aよりも負極活物質層931aの幅が広いことが安全性の点で好ましい。またこのような形状の捲回体950aは安全性及び生産性がよく好ましい。
【0080】
実施の形態1で得られる負極活物質層を負極931に用いることで、サイクル特性に優れた二次電池913とすることができる。
【0081】
図8(B)に示すように、負極931は、超音波接合、溶接、または圧着により端子951と電気的に接続される。端子951は端子911aと電気的に接続される。また正極932は、超音波接合、溶接、または圧着により端子952と電気的に接続される。端子952は端子911bと電気的に接続される。
【0082】
図8(C)に示すように、筐体930により捲回体950a及び電解液が覆われ、二次電池913となる。筐体930には安全弁、過電流保護素子を設けることが好ましい。筐体930としては、金属材料(例えばアルミニウム)又は樹脂材料を用いることができる。安全弁は、電池破裂を防止するため、筐体930の内部が所定の内圧で開放する弁である。
【0083】
図8(B)に示すように二次電池913は複数の捲回体950aを有していてもよい。複数の捲回体950aを用いることで、より放電容量の大きい二次電池913とすることができる。
【0084】
<ラミネート型二次電池>
次に、ラミネート型の二次電池の例について、外観図の一例を図9(A)及び図9(B)に示す。図9(A)及び図9(B)は、正極503、負極506、セパレータ507、外装体509、正極リード電極510、及び負極リード電極511を有する。
【0085】
図10(A)は正極503及び負極506の外観図を示す。正極503は正極集電体501を有し、正極活物質層502は正極集電体501の表面に形成されている。また、正極503は正極集電体501が一部露出する領域(以下、タブ領域という)を有する。負極506は負極集電体504を有し、負極活物質層505は負極集電体504の表面に形成されている。また、負極506は負極集電体504が一部露出する領域、すなわちタブ領域を有する。なお、正極及び負極が有するタブ領域の面積または形状は、図10(A)に示す例に限られない。
【0086】
<ラミネート型二次電池の作製方法>
図9(A)に外観図を示すラミネート型二次電池の作製方法の一例について、図10(B)及び図10(C)を用いて説明する。
【0087】
まず、負極506、セパレータ507及び正極503を積層する。図10(B)に積層された負極506、セパレータ507及び正極503を示す。ここでは負極を5組、正極を4組使用する例を示す。負極とセパレータと正極からなる積層体とも呼べる。次に、正極503のタブ領域同士の接合と、最表面の正極のタブ領域への正極リード電極510の接合を行う。接合には、例えば超音波溶接を用いればよい。同様に、負極506のタブ領域同士の接合と、最表面の負極のタブ領域への負極リード電極511の接合を行う。
【0088】
次に、外装体509上に、負極506、セパレータ507及び正極503を配置する。
【0089】
次に、図10(C)に示すように、外装体509を破線で示した部分で折り曲げる。その後、外装体509の外周部を接合する。接合には例えば熱圧着を用いればよい。この時、後に電解液を入れることができるように、外装体509の一部(または一辺)に接合されない領域(以下、導入口という)を設ける。
【0090】
次に、外装体509に設けられた導入口から、電解液を外装体509の内側へ導入する。電解液の導入は、減圧雰囲気下、或いは不活性雰囲気下で行うことが好ましい。そして最後に、導入口を接合する。このようにして、ラミネート型の二次電池500を作製することができる。
【0091】
実施の形態1で得られる負極活物質層を負極506に用いることで、サイクル特性に優れた二次電池500とすることができる。また、実施の形態2と自由に組み合わせることができる。
【0092】
(実施の形態4)
次に、本発明の一態様である負極を有する二次電池を車両、代表的には輸送用車両に実装する例について説明する。
【0093】
また、図7(A)、図8(C)、図9(A)、図9(B)のいずれか一に示した二次電池を車両に複数搭載すると、ハイブリッド車(HV)、電気自動車(EV)、又はプラグインハイブリッド車(PHV)等の次世代クリーンエネルギー自動車を実現できる。また、農業機械、電動アシスト自転車を含む原動機付自転車、自動二輪車、電動車椅子、電動カート、小型又は大型船舶、潜水艦、固定翼機および回転翼機等の航空機、ロケット、人工衛星、宇宙探査機、惑星探査機、宇宙船の輸送用車両に二次電池を搭載することもできる。本発明の一態様の二次電池は安全性の高い二次電池とすることができる。そのため本発明の一態様の二次電池は、長寿命であり、輸送用車両に好適に用いることができる。
【0094】
図11(A)乃至(D)において、本発明の一態様を用いた輸送用車両を例示する。図11(A)に示す自動車2001は、走行のための動力源として電気モータを用いる電気自動車である。または、走行のための動力源として電気モータとエンジンを適宜選択して用いることが可能なハイブリッド自動車である。二次電池を車両に搭載する場合、実施の形態3で示した二次電池の一例を一箇所または複数個所に設置する。図11(A)に示す自動車2001は、電池パック2200を有し、電池パックは、複数の二次電池を接続させた二次電池モジュールを有する。さらに二次電池モジュールに電気的に接続する充電制御装置を有すると好ましい。
【0095】
また、自動車2001は、自動車2001が有する二次電池にプラグイン方式または非接触給電方式等により外部の充電設備から電力供給を受けて、充電することができる。充電に際しては、充電方法およびコネクタの規格等はCHAdeMO(登録商標)またはコンボ等の所定の方式で適宜行えばよい。充電設備は、商用施設に設けられた充電ステーションでもよく、また家庭の電源であってもよい。例えば、プラグイン技術によって、外部からの電力供給により自動車2001に搭載された蓄電装置を充電することができる。充電は、ACDCコンバータ等の変換装置を介して、交流電力を直流電力に変換して行うことができる。
【0096】
また、図示しないが、受電装置を車両に搭載し、地上の送電装置から電力を非接触で供給して充電することもできる。この非接触給電方式の場合には、道路または外壁に送電装置を組み込むことで、停車中に限らず走行中に充電を行うこともできる。また、この非接触給電の方式を利用して、2台の車両どうしで電力の送受電を行ってもよい。さらに、車両の外装部に太陽電池を設け、停車時および走行時に二次電池の充電を行ってもよい。このような非接触での電力の供給には、電磁誘導方式または磁界共鳴方式を用いることができる。
【0097】
図11(B)は、輸送用車両の一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車2002を示している。輸送車2002の二次電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下の二次電池を4個セルユニットとし、48セルを直列に接続した170Vの最大電圧とする。電池パック2201の二次電池モジュールを構成する二次電池の数が違う以外は、図11(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
【0098】
図11(C)は、一例として電気により制御するモータを有した大型の輸送車両2003を示している。輸送車両2003の二次電池モジュールは、例えば公称電圧3.0V以上5.0V以下の二次電池を百個以上直列に接続した600Vの最大電圧とする。実施の形態1で示した負極活物質を正極負極に用いた二次電池を用いることで、レート特性および充放電サイクル特性の良好な二次電池を製造することができ、輸送車両2003の高性能化および長寿命化に寄与することができる。また、電池パック2202の二次電池モジュールを構成する二次電池の数が違う以外は、図11(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
【0099】
図11(D)は、一例として燃料を燃焼するエンジンを有した航空機2004を示している。図11(D)に示す航空機2004は、離着陸用の車輪を有しているため、輸送車両の一部とも言え、複数の二次電池を接続させて二次電池モジュールを構成し、二次電池モジュールと充電制御装置とを含む電池パック2203を有している。
【0100】
航空機2004の二次電池モジュールは、例えば4Vの二次電池を8個直列に接続した32Vの最大電圧とする。電池パック2203の二次電池モジュールを構成する二次電池の数が違う以外は、図11(A)と同様な機能を備えているので説明は省略する。
【0101】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることができる。
【0102】
(実施の形態5)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を建築物に実装する例について図12(A)および図12(B)を用いて説明する。
【0103】
図12(A)に示す住宅は、本発明の一態様である二次電池を有する蓄電装置2612と、ソーラーパネル2610を有する。蓄電装置2612は、ソーラーパネル2610と配線2611等を介して電気的に接続されている。また蓄電装置2612と地上設置型の充電装置2604が電気的に接続されていてもよい。ソーラーパネル2610で得た電力は、蓄電装置2612に充電することができる。また蓄電装置2612に蓄えられた電力は、充電装置2604を介して車両2603が有する二次電池に充電することができる。蓄電装置2612は、床下空間部に設置されることが好ましい。床下空間部に設置することにより、床上の空間を有効的に利用することができる。あるいは、蓄電装置2612は床上に設置されてもよい。
【0104】
蓄電装置2612に蓄えられた電力は、住宅内の他の電子機器にも電力を供給することができる。よって、停電により商用電源から電力の供給が受けられない時でも、本発明の一態様に係る蓄電装置2612を無停電電源として用いることで、屋内での電子機器の利用が可能となる。
【0105】
図12(B)に、本発明の一態様に係る蓄電装置の一例を示す。図12(B)に示すように、建物799の床下空間部796には、本発明の一態様に係る蓄電装置791が設置されている。また、蓄電装置791として、実施の形態1で示した負極活物質層を負極に用いた二次電池を用いることで放電容量の高い蓄電装置791とすることができる。
【0106】
蓄電装置791には、制御装置790が設置されており、制御装置790は、配線によって、分電盤703と、蓄電コントローラ705(制御装置ともいう)と、表示器706と、ルータ709と、に電気的に接続されている。
【0107】
商業用電源701から、引込線取付部710を介して、電力が分電盤703に送られる。また、分電盤703には、蓄電装置791と、商業用電源701と、から電力が送られ、分電盤703は、送られた電力を、コンセント(図示せず)を介して、一般負荷707及び蓄電系負荷708に供給する。
【0108】
一般負荷707は、例えば、テレビおよびパーソナルコンピュータなどの電気機器であり、蓄電系負荷708は、例えば、電子レンジ、冷蔵庫、空調機などの電気機器である。
【0109】
蓄電コントローラ705は、計測部711と、予測部712と、計画部713と、を有する。計測部711は、一日(例えば、0時から24時)の間に、一般負荷707、蓄電系負荷708で消費された電力量を計測する機能を有する。また、計測部711は、蓄電装置791の電力量と、商業用電源701から供給された電力量と、を計測する機能を有していてもよい。また、予測部712は、一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量に基づいて、次の一日の間に一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費される需要電力量を予測する機能を有する。また、計画部713は、予測部712が予測した需要電力量に基づいて、蓄電装置791の充放電の計画を立てる機能を有する。
【0110】
計測部711によって計測された一般負荷707及び蓄電系負荷708で消費された電力量は、表示器706によって確認することができる。また、ルータ709を介して、テレビおよびパーソナルコンピュータなどの電気機器において、確認することもできる。さらに、ルータ709を介して、スマートフォンおよびタブレットなどの携帯電子端末によっても確認することができる。また、表示器706、電気機器、携帯電子端末によって、予測部712が予測した時間帯ごと(または一時間ごと)の需要電力量なども確認することができる。
【0111】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることができる。
【0112】
(実施の形態6)
本実施の形態では、二輪車、自転車に本発明の一態様である蓄電装置を搭載する例を示す。
【0113】
また、図13(A)は、本発明の一態様の蓄電装置を用いた電動自転車の一例である。図13(A)に示す電動自転車8700に、本発明の一態様の蓄電装置を適用することができる。本発明の一態様の蓄電装置は例えば、複数の蓄電池と、保護回路と、を有する。
【0114】
電動自転車8700は、蓄電装置8702を備える。蓄電装置8702は、運転者をアシストするモータに電気を供給することができる。また、蓄電装置8702は、持ち運びができ、図13(B)に自転車から取り外した状態を示している。また、蓄電装置8702は、本発明の一態様の蓄電装置が有する蓄電池8701が複数内蔵されており、そのバッテリ残量を表示部8703で表示できるようにしている。また蓄電装置8702は、二次電池の充電制御または異常検知が可能な制御回路8704を有する。制御回路8704は、蓄電池8701の正極及び負極と電気的に接続されている。また、制御回路8704に小型の固体二次電池を設けてもよい。小型の固体二次電池を制御回路8704に設けることで制御回路8704の有するメモリ回路のデータを長時間保持することに電力を供給することもできる。
【0115】
また、図13(C)は、本発明の一態様の蓄電装置を用いた二輪車の一例である。図13(C)に示すスクータ8600は、蓄電装置8602、サイドミラー8601、方向指示灯8603を備える。蓄電装置8602は、方向指示灯8603に電気を供給することができる。また、実施の形態1で示した負極を用いた二次電池が複数収納された蓄電装置8602は高容量とすることができ、小型化に寄与することができる。
【0116】
また、図13(C)に示すスクータ8600は、座席下収納8604に、蓄電装置8602を収納することができる。蓄電装置8602は、座席下収納8604が小型であっても、座席下収納8604に収納することができる。
【0117】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることができる。
【0118】
(実施の形態7)
本実施の形態では、本発明の一態様である二次電池を電子機器に実装する例について説明する。二次電池を実装する電子機器として、例えば、テレビジョン装置(テレビ、又はテレビジョン受信機ともいう)、コンピュータ用などのモニタ、デジタルカメラ、デジタルビデオカメラ、デジタルフォトフレーム、携帯電話機(携帯電話、携帯電話装置ともいう)、携帯型ゲーム機、携帯情報端末、音響再生装置、パチンコ機などの大型ゲーム機などが挙げられる。携帯情報端末としてはノート型パーソナルコンピュータ、タブレット型端末、電子書籍端末、携帯電話機などがある。
【0119】
図14(A)は、携帯電話機の一例を示している。携帯電話機2100は、筐体2101に組み込まれた表示部2102の他、操作ボタン2103、外部接続ポート2104、スピーカ2105、マイク2106などを備えている。なお、携帯電話機2100は、二次電池2107を有している。実施の形態1で示した負極を用いた二次電池2107を備えることで高容量とすることができ、筐体の小型化に伴う省スペース化に対応できる構成を実現することができる。
【0120】
携帯電話機2100は、移動電話、電子メール、文章閲覧及び作成、音楽再生、インターネット通信、コンピュータゲームなどの種々のアプリケーションを実行することができる。
【0121】
操作ボタン2103は、時刻設定のほか、電源のオン、オフ動作、無線通信のオン、オフ動作、マナーモードの実行及び解除、省電力モードの実行及び解除など、様々な機能を持たせることができる。例えば、携帯電話機2100に組み込まれたオペレーティングシステムにより、操作ボタン2103の機能を自由に設定することもできる。
【0122】
また、携帯電話機2100は、通信規格された近距離無線通信を実行することが可能である。例えば無線通信可能なヘッドセットと相互通信することによって、ハンズフリーで通話することもできる。
【0123】
また、携帯電話機2100は外部接続ポート2104を備え、他の情報端末とコネクタを介して直接データのやりとりを行うことができる。また外部接続ポート2104を介して充電を行うこともできる。なお、充電動作は外部接続ポート2104を介さずに無線給電により行ってもよい。
【0124】
携帯電話機2100はセンサを有することが好ましい。センサとして例えば、指紋センサ、脈拍センサ、体温センサ等の人体センサ、タッチセンサ、加圧センサ、加速度センサ、等が搭載されることが好ましい。
【0125】
図14(B)は複数のローター2302を有する無人航空機2300である。無人航空機2300はドローンと呼ばれることもある。無人航空機2300は、本発明の一態様である二次電池2301と、カメラ2303と、アンテナ(図示しない)を有する。無人航空機2300はアンテナを介して遠隔操作することができる。実施の形態1で示した負極を用いた二次電池はサイクル特性が良好であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、無人航空機2300に搭載する二次電池として好適である。
【0126】
図14(C)は、ロボットの一例を示している。図14(C)に示すロボット6400は、二次電池6409、照度センサ6401、マイクロフォン6402、上部カメラ6403、スピーカ6404、表示部6405、下部カメラ6406および障害物センサ6407、移動機構6408、演算装置等を備える。
【0127】
マイクロフォン6402は、使用者の話し声及び環境音等を検知する機能を有する。また、スピーカ6404は、音声を発する機能を有する。ロボット6400は、マイクロフォン6402およびスピーカ6404を用いて、使用者とコミュニケーションをとることが可能である。
【0128】
表示部6405は、種々の情報の表示を行う機能を有する。ロボット6400は、使用者の望みの情報を表示部6405に表示することが可能である。表示部6405は、タッチパネルを搭載していてもよい。また、表示部6405は取り外しのできる情報端末であっても良く、ロボット6400の定位置に設置することで、充電およびデータの受け渡しを可能とする。
【0129】
上部カメラ6403および下部カメラ6406は、ロボット6400の周囲を撮像する機能を有する。また、障害物センサ6407は、移動機構6408を用いてロボット6400が前進する際の進行方向における障害物の有無を察知することができる。ロボット6400は、上部カメラ6403、下部カメラ6406および障害物センサ6407を用いて、周囲の環境を認識し、安全に移動することが可能である。
【0130】
ロボット6400は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6409と、半導体装置または電子部品を備える。実施の形態1で示した負極を用いた二次電池はサイクル特性が良好であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、ロボット6400に搭載する二次電池6409として好適である。
【0131】
図14(D)は、掃除ロボットの一例を示している。掃除ロボット6300は、筐体6301の上面に配置された表示部6302、側面に配置された複数のカメラ6303、ブラシ6304、操作ボタン6305、二次電池6306、各種センサなどを有する。図示されていないが、掃除ロボット6300には、タイヤ、吸い込み口等が備えられている。掃除ロボット6300は自走し、ゴミ6310を検知し、下面に設けられた吸い込み口からゴミを吸引することができる。
【0132】
例えば、掃除ロボット6300は、カメラ6303が撮影した画像を解析し、壁、家具または段差などの障害物の有無を判断することができる。また、画像解析により、配線などブラシ6304に絡まりそうな物体を検知した場合は、ブラシ6304の回転を止めることができる。掃除ロボット6300は、その内部領域に本発明の一態様に係る二次電池6306と、半導体装置または電子部品を備える。実施の形態1で示した負極を用いた二次電池はサイクル特性が良好であり、安全性が高いため、長期間に渡って長時間の安全な使用ができ、掃除ロボット6300に搭載する二次電池6306として好適である。
【0133】
本実施の形態の内容は、他の実施の形態の内容と適宜組み合わせることが可能である。
【実施例0134】
本実施例では、バインダとしてポリグルタミン酸を用いてハーフセルを作製し、そのサイクル特性を測定した。
【0135】
まず、シリコン粒子、黒鉛粒子、バインダを用意し、それぞれ秤量する。
【0136】
本実施例のシリコン粒子としては、BET法による比表面積が12.7715m/gであり、粒子径が100nmのシリコン粒子(アルドリッチ社製:製品番号633097)を用いた。
【0137】
シリコン粒子のBET法による比表面積は、窒素ガス吸着式によるBET一点法により測定される値であり、測定機としては自動比表面積/細孔分布測定装置トライスターツー3020(島津製作所製)を使用して測定することができる。
【0138】
本実施例の黒鉛粒子としては、平均粒子径20μmの黒鉛(FormulaBT 1520T、Superior Graphite製)を用いた。この黒鉛は天然黒鉛を球状化したものに、低結晶性炭素をコーティングしたものである。
【0139】
本実施例のバインダとしては、ポリグルタミン酸(日本ポリグル株式会社製)を用いた。ポリグルタミン酸(PGAとも呼ぶ)は中和せずに用いた。このポリグルタミン酸は親水性を有する。また、γ-ポリグルタミン酸を主体とする。また、架橋物であるポリグルタミン酸を用いる。架橋物はγ-ポリグルタミン酸またはその塩に放射線を照射することによって調製することができる。放射線を照射することによって脱水素反応を生じさせ、分子量の大きな放射線架橋体を得ることができる。ポリグルタミン酸を架橋させることで平均分子量を数千万とすることもできる。
【0140】
負極は、黒鉛粒子とシリコン粒子と、バインダと、アセチレンブラックをそれぞれ所定の量で混合し、脱イオン水を加えてスラリーを作製し、集電体(銅箔)に塗工して乾燥、プレスを行って作製する。ポリグルタミン酸は極性ポリマーであり、親水性を有するため、脱イオン水に溶かすことができる。
【0141】
本実施例では、シリコン粒子を9wt%、黒鉛粒子を81wt%、バインダを7.5wt%、アセチレンブラックを2.5wt%とし、各粉体同士を混合させた後、脱イオン水を加えてスラリーを作製し、集電体に塗工した負極を用いたハーフセルのサンプル1を用意した。なお、塗工後に十分な加熱を行って溶媒成分(水分)を蒸発させた。負極の担持量は3.8mg/cm以上4.2mg/cm以下の範囲となるように調節した。また、本明細書において、担持量とは、負極集電体の表面単位面積あたりの負極活物質の重量である。
【0142】
以下にハーフセルの条件を説明する。
【0143】
正極缶及び負極缶には、ステンレス(SUS)で形成されているものを用いた。
【0144】
対極にはリチウム金属を用意して、上記負極構成を用いたコイン型のハーフセルを作製した。ハーフセルにおいては、リチウム金属が負極、上記負極が正極となるよう組み合わせる。コインセルのサンプルは12個作製した。
【0145】
また、シリコン粒子を8.5wt%、黒鉛粒子(GP)を76.5wt%、バインダを10wt%、アセチレンブラックを5wt%としたサンプル2を用意し、シリコン粒子を9wt%、黒鉛粒子を81wt%、バインダを10wt%、アセチレンブラックを0%としたサンプル3を用意した。また、シリコン粒子を8wt%、黒鉛粒子を72wt%、バインダを14wt%、アセチレンブラックを6wt%としたサンプル4を用意した。シリコン粒子7.6wt%、黒鉛粒子68.4wt%、バインダを18wt%、アセチレンブラックを6wt%としたサンプル5を用意し、シリコン粒子6.8wt%、黒鉛粒子61.2wt%、バインダ24wt%、アセチレンブラックを8wt%としたサンプル6をそれぞれ用意し、測定した結果が表1である。
【0146】
【表1】
【0147】
表1においてABを用いないサンプル3以外は、充電容量が600mAh/gを超えており、良好な値を示している。
【0148】
また、シリコン粒子(Si)を9wt%、黒鉛粒子(GP)を81wt%、バインダ(PGA)を10wt%としたサンプル7を用意した。また、シリコン粒子を20wt%、黒鉛粒子を70wt%、バインダを10wt%としたサンプル8を用意した。また、シリコン粒子を30wt%、黒鉛粒子を50wt%、バインダを20wt%としたサンプル9を用意した。また、シリコン粒子を30wt%、黒鉛粒子を50wt%、バインダを10wt%とし、ABを10wt%としたサンプル10を用意した。それぞれ用意し、測定した結果が表2である。
【0149】
【表2】
【0150】
表2において、サンプル10は、充電容量が1700mAh/gを超えており、良好な値を示している。
【0151】
また、シリコン粒子と黒鉛粒子とポリグルタミン酸とアセチレンブラックとの重量比は8:72:14:6とした、サンプル11の充放電曲線を図5に示す。また、サンプル11の負極の上面写真図が図1(A)に相当し、断面写真が図2に相当する。図5に示す充放電曲線は、サンプル11を用いたハーフセルを室温にて、1Vから放電レート0.1Cで0.01Vまで所定電流で放電し、0.01Vに達すると定電圧に切り替えて放電させた(1回目の放電)。その後、1回目の充電レート0.1Cで1Vになるまで充電させた(1回目の充電)。これを1サイクルとする。その後、1時間休止時間を設け、2回目の放電は放電レート0.2Cとし、その後、所定電流で放電させた。その後、2回目の充電は充電レート0.2Cで1Vになるまで充電させた。なお、サンプル11の充電レート1Cは754mAh/gとした。
【0152】
図5では1回目(0.1C)の充電及び放電と、2回目(0.2C)の充電及び放電のみを図示した。即ち、サンプル11の充放電試験の2サイクル分を図示している。サンプル11の初回充電量は、614.7mAh/gであった。なお、黒鉛の理論容量は372mAh/gであり、ナノシリコンを混合することによって容量が大きくなっていることが確認できる。
【0153】
なお、サンプル1~11のセパレータは、PP(多孔質ポリプロピレン)を用いた。サンプル1~11の電解液は、イオン液体として、LiFSI(リチウムビス(フルオロスルホニル)イミド)を溶解させたEMI-FSI(1-エチル-3-メチルイミダゾリウム ビス(フルオロスルホニル)イミド)を用いた。該イオン液体のカチオンであるEMIは末端にフッ素を有さない。電解液に対するリチウム塩の濃度は、2.15mol/Lとした。
【実施例0154】
本実施例では、実施例1のサンプル11のサイクル特性を測定した。
【0155】
<充放電サイクル試験>
上記で作製したコイン型ハーフセルを用いて、充放電サイクル試験を行った。実施例1では2サイクルまで行ったが、50サイクルまで行った結果を図6に示す。
【0156】
実施例1にも示したが、1回目と2回目の休止時間は1時間とした。2回目と3回目の休止時間は10分とした。3回目以降の休止時間は10分とした。また、3回目以降の充電レートは0.2C、放電レートも0.2Cとしてサイクル試験を行った。
【0157】
また、ポリグルタミン酸が18wt%としたサンプル12のサイクル特性も図6に示す。サンプル12においてシリコン粒子と黒鉛粒子とポリグルタミン酸とアセチレンブラックとの重量比は7.6:68.4:18:6である。サンプル12の初回充電量は、591.7mAh/gであった。初回充電量はサンプル11のほうが高いが、サンプル11よりもサンプル12のサイクル維持率が良好である結果となった。
【0158】
図6に示すように、バインダであるポリグルタミン酸の割合を高めても容量の低下がみられず、顕著な特性向上が確認できる。
【0159】
本実施例ではハーフセルの試験結果を示したが、フルセルでの試験結果であっても同様の効果が得られる。なお、フルセルの場合には、正極活物質を用いた正極と、上記負極構成を有する負極を組み合わせて作製する。
【0160】
また本明細書において、特に記載ない限り充電電圧および放電電圧は対極リチウムの場合の電圧を述べる。ただし同じ負極であっても、正極に用いる材料によって二次電池の充放電電圧は変化する。
【0161】
また、比較例として、以下の比較サンプルを作製した。
【0162】
平均粒子径が10μmの黒鉛(G10)と、平均粒子径が5μm以上のシリコン粒子とを混合し、バインダとしてポリイミドを用いてスラリーを作製し、該スラリーを銅の集電体に塗工した。シリコン粒子と黒鉛とポリイミドとアセチレンブラックとの重量比は9.6:86.4:3:1となるように調節した。
【0163】
スラリーの溶媒としてN-メチル-2-ピロリドン(NMP)を用いた。集電体にスラリーを塗工した後、溶媒を揮発させた。以上の工程により、負極を得た。負極の上面写真図を図15に示す。
【0164】
セパレータには多孔質ポリイミドを1枚用いた。
【0165】
正極にはリチウム金属を用いた。なお、電解液は、1mol/Lの六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を溶解させたエチレンカーボネート(EC)、ジエチルカーボネート(DEC)の混合液を用いた。混合比はEC:DEC=3:7(体積比)とした。
【0166】
比較サンプルのサイクル特性を図16に示す。図16に示すように、比較サンプルは急激に特性が低下していることがわかる。
【符号の説明】
【0167】
100:黒鉛粒子
101:シリコン粒子
102:バインダ
103:AB
104:混合物
105:溶媒
106:スラリー
107:負極集電体
108:負極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16