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特開2023-184481車両用の快適ブレーキ制御システム及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184481
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】車両用の快適ブレーキ制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60T 8/17 20060101AFI20231221BHJP
   B60W 50/08 20200101ALI20231221BHJP
   B60W 50/06 20060101ALI20231221BHJP
   B60W 40/105 20120101ALI20231221BHJP
【FI】
B60T8/17 Z
B60W50/08
B60W50/06
B60W40/105
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023097495
(22)【出願日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】202210691325.3
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100177839
【弁理士】
【氏名又は名称】大場 玲児
(74)【代理人】
【識別番号】100172340
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 始
(74)【代理人】
【識別番号】100182626
【弁理士】
【氏名又は名称】八島 剛
(72)【発明者】
【氏名】ツァン,イン
(72)【発明者】
【氏名】ファン,チョンシー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,レンルイ
【テーマコード(参考)】
3D241
3D246
【Fターム(参考)】
3D241BA51
3D241BA57
3D241BB01
3D241BB02
3D241CC08
3D241DA49Z
3D241DB02Z
3D246DA01
3D246GA22
3D246GC16
3D246HA44A
3D246HA51A
3D246HA52A
3D246HA53A
3D246HA86A
3D246HA94A
3D246HC02
3D246JA12
3D246JB03
3D246JB27
3D246JB28
3D246JB32
3D246JB33
3D246JB47
3D246KA19
(57)【要約】      (修正有)
【課題】車両用の快適ブレーキ制御システム及びブレーキ方法を提供すること。
【解決手段】快適ブレーキ制御システムは、車両の現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために複数の快適ブレーキレベルの1つの選択を受信するように構成されている、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースであって、各快適ブレーキレベルが、その快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含み、ブレーキパラメータが、ブレーキシリンダのブレーキ圧力及び圧力変化率を含む、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースと、車両の現在の状態が所定の切り替え条件を満たしているかを決定するように構成されている。切り替え条件が満たされていると決定されたときに、選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得し、車両のビークルバスを使用して、取得されたブレーキパラメータを車両のブレーキシステムに送信する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の快適ブレーキ制御システムであって、
前記車両の複数の任意選択の快適ブレーキレベルのインターフェースを提供し、前記車両の現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために複数の快適ブレーキレベルの1つの選択を受信するように構成されている、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースであって、各快適ブレーキレベルが、前記快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含み、前記ブレーキパラメータが、前記車両の少なくとも一つのブレーキシリンダの少なくともブレーキ圧力及び/又はブレーキ圧力変化率を含む、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースと、
前記車両の現在の状態が所定の切り替え条件を満たしているかを決定するように構成されている、快適ブレーキモジュールであって、前記切り替え条件が満たされていると決定されたときに、選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得し、前記車両のビークルバスを使用して、前記取得されたブレーキパラメータを前記車両のブレーキシステムに送信する、快適ブレーキモジュールとを備える、車両用快適ブレーキ制御システム。
【請求項2】
前記所定の切り替え条件が、
前記車両が定常状態であることと、
前記車両が制動を開始する瞬間からの期間が、所定の期間よりも長いこととのうちの一つであり、前記所定の期間が前記ビークルバスを使用することによって前記ブレーキパラメータを前記ブレーキシステムに送信するために必要な期間と関連付けられる、請求項1に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項3】
前記快適ブレーキモジュールが、前記車両の制動プロセスにおいて、予想車両速度を記憶し、
前記快適ブレーキモジュールが、
前記制動プロセスでの前記車両の実際の車両速度を取得し、
前記実際の車両速度と前記予想車両速度との間の速度差を計算し、
前記速度差を減少させるために、前記計算された速度差に基づいて、前記ブレーキパラメータ内のブレーキ圧力を調整するようにさらに構成されている、請求項1又は2に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項4】
前記車両速度差を計算することが、制動が開始してから所定の期間が経過した後の所定の瞬間に、実際の車両速度と対応する予想車両速度との間の車両速度差を計算することを含み、
前記ブレーキ圧力を調節することが、前記所定の瞬間における前記車両速度差が正であり、かつ第一の車両速度差閾値を超えている場合に、前記ブレーキ圧力を上げることと、前記所定の瞬間における前記車両速度差が負であり、かつ第二の車両速度差閾値を超えている場合に、前記ブレーキ圧力を下げることとを含む、請求項3に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項5】
前記ブレーキ圧力を上げることが、前記ブレーキ圧力を、第一の増分単位又は前記第一の増分単位よりも大きい第二の増分単位分上げることを含み、
前記ブレーキ圧力を下げることが、第一の減分単位又は前記第一の減分単位よりも大きい第二の減分単位を使用することによって、前記ブレーキ圧力を下げることを含む、請求項4に記載の快適ブレーキシステム。
【請求項6】
前記ブレーキ圧力を調節することが、前記ブレーキ圧力を1回又は複数回調整することと、
複数回調整する場合に、調整のたびに前記実際の車両速度を再取得し、新しい車両速度差を計算し、前記新しい車両速度差に基づいて前記ブレーキ圧力を調整することと、を含む、請求項3~5のいずれか一項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項7】
前記快適ブレーキモジュールが、
前記車両速度差の前記予想車両速度に対する比率を計算し、
前記制動プロセス全体を複数のセクションに分割し、
各セクションの比率について比率閾値を設定し、
各セクションについて、前記セクションの前記比率と前記セクションの前記比率閾値との間の差を計算し、前記差に基づいて、前記ブレーキパラメータの前記ブレーキ圧力変化率を調整するようにさらに構成されている、請求項3~6のいずれか一項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項8】
前記ブレーキ圧力変化率を調節することが、
正の差を有するセクション数及び負の差を有するセクション数を決定することと、
前記正の差を有するセクション数が、前記負の差を有するセクション数よりも多い場合、前記ブレーキ圧力変化率を第三の減分単位分減少させることと、
前記正の差を有するセクション数が、前記負の差を有するセクション数よりも少ない場合、前記ブレーキ圧力変化率を第三の増分単位分増加させることとを含み、
前記第三の増分単位が、前記第三の減分単位よりも小さい、請求項7に記載の快適ブレーキシステム。
【請求項9】
各セクションに対して前記比率閾値を設定することが、車両速度がより低いセクションに対して、より大きな比率閾値を設定することを含む、請求項7又は8に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項10】
前記ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースが、前記車両が初期化された後で、
前記車両のユーザーに対し、前記車両が、快適ブレーキ機能を備え、前記複数の快適ブレーキレベルを有することを示す情報を提供するようにさらに構成され、
前記快適ブレーキモジュールが、前記ユーザーが前記快適ブレーキ機能を選択することに応答して起動されるようにさらに構成され、
前記初期化が、
新規車両の機能単位を前記車両の納品中に起動又は更新することと、
工場出荷時設定中に前記機能単位を起動又は更新すること、のうち少なくとも一つを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項11】
前記快適ブレーキ制御システムが、前記車両内に配置され、
前記ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースが、音声インタラクション・インターフェース、タッチスクリーン、及び物理的ボタンのうちの少なくとも一つを備え、
前記快適ブレーキモジュールが、前記車両の前記ブレーキシステムの制御ユニット内に配置されるか、または前記車両のドメインコントローラ内に配置される、請求項1~10のいずれか一項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項12】
車両用の快適ブレーキ制御方法であって、任意選択的に、請求項1~11のいずれか一項に記載の前記快適ブレーキ制御システムによって実施され、前記方法が、
前記車両の複数の任意選択の快適ブレーキレベルのインターフェースを提供することと、
前記車両の現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために、前記複数の快適ブレーキレベルの1つの選択を受信することであって、各快適ブレーキレベルが、前記快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含み、前記ブレーキパラメータが、前記車両の少なくとも一つのブレーキシリンダの少なくともブレーキ圧力及び/又はブレーキ圧力変化率を含む、受信することと、
前記車両の現在の状態が所定の切り替え条件を満たすかどうかを決定することと、
前記切り替え条件が満たされていると決定されたとき、選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得することと、
前記取得されたブレーキパラメータを、前記車両のビークルバスを使用して、前記車両のブレーキシステムに送信することと、を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、車両制動技術の分野に関し、特に、車両用の快適ブレーキ制御システム及び快適ブレーキ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では、自動運転車両用の制動技術に関する研究が非常に活発になっている。研究の主な焦点は安全性とブレーキ効率に置かれ、ユーザー体験に関する研究は比較的少ない。自動運転車のユーザー体験は、自動運転車両に対するユーザーの受け入れ及び信頼に直接影響を与え、自動運転車両の普及にさらに影響を与える。
自動運転車両用の既存のブレーキ制御ソリューションにおいて、ユーザー要件に従ったブレーキポリシーを設定するための最適なソリューションはない。さらに、自動運転車両の既存のブレーキ制御ソリューションでは、自動運転車両の実際の制動プロセスが予想制動プロセスから逸脱した場合に、タイムリーに検出できず、それゆえ、タイムリーに調整できない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
この文脈において、本開示は、ユーザー要件を満たす制動の快適さを実装できる、車両のための快適ブレーキ制御ソリューションを提供することを目的としている。
【0004】
本開示の態様によれば、車両用の快適ブレーキ制御システムが提供されており、これは、車両の複数の任意選択の快適ブレーキレベルのインターフェースを提供し、車両の現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために複数の快適ブレーキレベルの1つの選択を受信するように構成されている、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースであって、各快適ブレーキレベルが、その快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含み、ブレーキパラメータが、車両の少なくとも一つのブレーキシリンダの少なくともブレーキ圧力及び/又はブレーキ圧力変化率を含む、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースと、車両の現在の状態が所定の切り替え条件を満たしているかを決定するように構成されている、快適ブレーキモジュールであって、切り替え条件が満たされていると決定されたときに、選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得し、車両のビークルバスを使用して、取得されたブレーキパラメータを車両のブレーキシステムに送信する、快適ブレーキモジュールとを含む。
【0005】
本開示の別の態様によれば、車両用の快適ブレーキ制御方法が提供されており、任意選択で、方法は、前述の快適ブレーキ制御システムによって実行され、方法は、車両の複数の任意選択の快適ブレーキレベルのインターフェースを提供し、車両の現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために複数の快適ブレーキレベルの1つの選択を受信することであって、各快適ブレーキレベルが、その快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含み、ブレーキパラメータが、車両の少なくとも一つのブレーキシリンダの少なくともブレーキ圧力及び/又はブレーキ圧力変化率を含む、受信することと、車両の現在の状態が所定の切り替え条件を満たすかどうかを決定することと、切り替え条件が満たされると決定されたとき、選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得することと、取得されたブレーキパラメータを、車両のビークルバスを使用して、車両のブレーキシステムに送信することと、を含む。
【0006】
上記は、これらの態様の基本的な理解を可能にするために、本開示の主要な態様の概要を提供する。この概要は、本開示の任意の態様の主要な要素又は重要な要素を説明することを意図しておらず、本開示の任意の態様又はすべての態様の範囲を制限することも意図していない。この概要の目的は、後述する詳細な説明の前文として、これらの態様のいくつかの実施を簡略化した形式で提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0007】
本開示の技術的な解決策は、添付図面を参照して、以下の詳細な説明からより明確となる。当然のことながら、これらの添付図面は単に例示目的で使用され、本開示の保護範囲を限定することを意図するものではない。
図1図1は、本開示の実施形態による、車両用の快適ブレーキ制御システムの概略図である。
図2図2は、本開示の実施形態による、快適ブレーキレベルの概略図である。
図3図3は、本開示の実施形態による、快適ブレーキ制御プロセスのフローチャートである。
図4図4は、本開示の別の実施形態による、快適ブレーキ制御プロセスのフローチャートである。
図5図5は、本開示のさらに別の実施形態による、快適ブレーキ制御プロセスのフローチャートである。
図6図6は、図5の快適ブレーキ制御プロセスに使用される曲線グラフの例である。
図7図7は、本開示のさらに別の実施形態による、快適ブレーキ制御プロセスのフローチャートである。
図8図8は、図7の快適ブレーキ制御プロセスに使用される曲線グラフの例である。
図9図9は、本開示の実施形態による、快適ブレーキ制御方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本開示の実施形態は、ユーザーが快適ブレーキレベルを選択でき、ユーザーが選択した快適ブレーキレベルを実装することを可能にする、車両快適ブレーキ制御ポリシーに関する。本開示の実施形態によれば、車両の実際の制動プロセスが、予想制動プロセスから逸脱しているかどうかを、リアルタイムで監視することができ、逸脱が特定の度合いに達していることが検出された時、ブレーキパラメータを逸脱の状況に基づいて調整することができ、車両の実際の制動プロセスが、予想制動プロセスに可能な限り近くなるように調整される。
【0009】
以下に、添付図面を参照して、本開示の具体的な実施について説明する。
【0010】
図1は、本開示の実施形態による、車両V用の快適ブレーキ制御システム100を概略的に示す。快適ブレーキ制御システム100は、車両V上に搭載される。したがって、快適ブレーキ制御システム100はまた、車両内システムとも呼ばれうる。図1に示すように、快適ブレーキ制御システム100は、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース(HMI)10及び快適ブレーキモジュール(CST)20を含む。
ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、快適ブレーキモジュール20に通信可能に接続され、車両Vとユーザーによる車両内インフォテインメントシステムとの間の情報交換を実施するように構成されている。ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、ユーザー入力を受信し、ユーザー入力を快適ブレーキモジュール20に送信してもよい。ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、さらに車両快適ブレーキに関連する情報をユーザーに提供してもよい。例えば、ユーザーが快適ブレーキレベルを選択することを可能にするグラフィカル・ユーザー・インターフェースがユーザーに提示されるか、又は快適ブレーキに関連する音声がユーザーに放送される。
【0011】
ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、例えば、タッチスクリーン、音声、動作認識(例えば、ジェスチャー認識)、及び物理的ボタンのうちの一つ以上など、複数のヒューマン・マシン・インタラクション様式を使用することによって、車両内のユーザーと車両内インフォテインメントシステムとの間の情報交換を実施してもよい。
【0012】
一実施形態では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10が、車両Vの中央制御画面(例えば、ユーザーが、中央制御画面に触れることで、ユーザーの車両ブレーキ要件を表現する)と、音声制御システム(例えば、ユーザーが、音声を介して、ユーザーの車両ブレーキ要件を表現する)と、ジェスチャー認識システム(例えば、ユーザーが、あらかじめ定義されたジェスチャーを使用してユーザーの車両ブレーキ要件を表現する)と、車両内のユーザーが操作するのに都合の良い位置に配置されたボタン又はノブ(例えば、ユーザーが、ボタン又はノブを操作することで、ユーザーの車両ブレーキ要件を表現する)と、のうちの一つ以上を含む。
【0013】
快適ブレーキモジュール20は、ヒューマン・マシン・インターフェース10からの情報、及び一つ以上の車載センサー(図示せず)についての情報に基づいて快適ブレーキ機能を実施し、例えば、ユーザー要件に従って、快適ブレーキレベルを切り替え、実際の制動プロセスが予想制動プロセスから逸脱したときに、ブレーキパラメータを自己調整する。
【0014】
快適ブレーキモジュール20は、車両Vの自動運転システムの制御ユニット内に配置されてもよく、又は車両Vのドメインコントローラ内に配置されてもよく、又は車両Vのブレーキシステムの制御ユニット内に配置されてもよい。
【0015】
複数の快適ブレーキレベルが、快適ブレーキモジュール20に記憶されている。複数の快適ブレーキレベルは、予め定められており、車両Vの制動プロセスでの異なる快適性レベルにそれぞれ対応する。例えば、複数の快適ブレーキレベルは、快適性の高いブレーキレベル、快適性が中程度のブレーキレベル、及び快適性の低いブレーキレベルを含んでもよい。快適性の高いブレーキレベルは、制動時の快適さが最も高い(例えば、最もスムーズである)ことを示す。快適性が中程度のブレーキレベルは、制動時の快適さが中程度である(例えば、中程度のスムーズさである)ことを示す。快適性の低いブレーキレベルは、制動時の快適さが低い(例えば、停止中にまだわずかな揺れがある)ことを示す。
【0016】
一実施形態では、快適ブレーキレベルの数が予め定められており、例えば、6つの快適ブレーキレベルがあることが予め定められている。快適ブレーキレベルの数は、新規車両が工場から納品される前、又は車両が工場出荷時設定された後に、ユーザー要件に応じて、多かれ少なかれ調整可能である。
【0017】
各快適ブレーキレベルには、快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータが含まれる。例えば、快適性の高いブレーキレベルは、快適性の高いブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含む。快適性が中程度のブレーキレベルは、快適性が中程度のブレーキに対応するブレーキパラメータを含む。加えて、快適性の低いブレーキレベルは、快適性の低いブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含む。
【0018】
ブレーキパラメータは、車両制動に直接的又は間接的に関連する一つ以上のブレーキパラメータを含む。ブレーキパラメータは、車両Vの少なくとも一つのブレーキシリンダのブレーキ圧力及びブレーキ圧力変化率を含んでもよい。ブレーキ圧力は、車両Vの複数のブレーキシリンダのいずれか一つのブレーキ圧力であってもよく、又は複数のブレーキシリンダのブレーキ圧力の合計又は平均値であってもよい。ブレーキパラメータは、制動時の車両Vの速度及び制動時の車両Vの加速度をさらに含んでもよい。各ブレーキパラメータは、制動プロセス全体を通して可変であってもよく、例えば、ブレーキパラメータは、制動プロセス中に時間の経過とともに変化する曲線として表されてもよい。
【0019】
図2は、本開示の実施形態による、快適ブレーキレベルを概略的に示す。図2を参照すると、車両Vは、複数の任意選択の快適ブレーキレベルCST_L1、CST_L2、CST_L3、及びCST_Lnを有する。各快適ブレーキレベルは、そのレベルに対応するブレーキパラメータを含み、すなわち、快適ブレーキレベルCST_L1は、対応するブレーキパラメータm11、m12、m13、及びm1mを含む。快適ブレーキレベルCST_L2は、対応するブレーキパラメータm21、m22、m23、...及びm2mを含み、快適ブレーキレベルCST_Lnは、対応するブレーキパラメータmn1、mn2、mn3、...及びmnmを含む。
【0020】
一実施形態では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、タッチスクリーンとして実装される。複数の快適ブレーキレベルを含むグラフィカル・ユーザー・インターフェース200が、タッチスクリーン上に表示される。グラフィカル・ユーザー・インターフェース200は、複数のボタンを含み、各ボタンは1つの快適ブレーキレベルに対応する。これらのボタンは、ユーザー入力を受信することができ、すなわち、ユーザーは、ボタンをクリックして、ボタンに対応する快適ブレーキレベルを選択することができる。ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、ユーザー入力を受信し、受信したユーザー入力を快適ブレーキモジュール20に送信する。
別の実施形態では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、音声インタラクション・インターフェースとして実装される。音声インタラクション・インターフェースは、ユーザーが複数の快適ブレーキレベルのうちの一つを選択できるように、ユーザーの音声入力を受信してもよい。例えば、ユーザーは、「快適性の高いブレーキレベル」又は「高快適ブレーキに切り替えてください」という発話により、快適性の高いブレーキレベルを選択する。ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、音声入力を受信し、ユーザー入力を快適ブレーキモジュール20に送信する。
快適ブレーキモジュール20は、ハードウェア、ソフトウェア、又はソフトウェアとハードウェアの組み合わせを使用することによって実施されてもよい。ハードウェアによって実装される部分は、一つ以上の特定用途向け集積回路(ASIC)、デジタル信号プロセッサ(DSP)、データ信号処理装置(DSPD)、プログラマブル論理装置(PLD)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、プロセッサ、コントローラ、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、それらの機能を実行するように設計された電子ユニット、又はそれらの組み合わせで実装されてもよい。ソフトウェアによって実装される部分は、マイクロコード、プログラムコード、又はコードセクションを使用することによって実装されてもよく、又は記憶コンポーネントなどの機械可読記憶媒体に記憶されていてもよい。
【0021】
一実施形態では、快適ブレーキモジュール20は、メモリ及びプロセッサを含む。メモリは命令を含み、命令がプロセッサによって実行される時、プロセッサは、本開示のこの実施形態による、快適ブレーキ制御ポリシー/快適ブレーキ制御方法を実施する。
図3は、本開示の実施形態による、快適ブレーキ制御プロセス300を示す。プロセス300によると、ユーザーは、車両Vの快適ブレーキレベル、すなわち、車両Vの現在の快適ブレーキレベルを、別の快適ブレーキレベルに切り替えることができる。
【0022】
図3を参照すると、ブロック302で、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、複数の任意選択の快適ブレーキレベルを表すインターフェースを提供する。
【0023】
インターフェースは、グラフィカル・ユーザー・インターフェース(例えば、図2に示すグラフィカル・ユーザー・インターフェース200)であってもよい。例えば、グラフィカル・ユーザー・インターフェースは、タッチスクリーン上に提示され、複数の任意選択の快適ブレーキレベルのボタンアイコンを含む。現在の快適ブレーキレベルは、グラフィカル・ユーザー・インターフェース上で明示されている。例えば、現在の快適ブレーキレベルのボタンアイコンは、色を使用することによって別の快適ブレーキレベルのボタンアイコンと区別される。インターフェースはまた、音声インタラクション・インターフェースであってもよい。例えば、音声インタラクション・インターフェースは、「この車両には、6つの快適ブレーキレベルがあります。現在の快適ブレーキレベルはレベル3です」という音声を放送する。
【0024】
ブロック304では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、複数の快適ブレーキレベルの1つを選択するために、ユーザー入力を受信し、それによって現在の快適ブレーキレベルを切り替える。前述のインターフェース実装に対応して、ユーザー入力は、ユーザーが手を使用してボタンアイコンに触れ、ボタンアイコンに対応し、かつユーザーが切り替えたい快適ブレーキレベルを選択することを含む。また、ユーザー入力は、ユーザーの「快適ブレーキレベル5に切り替えてください」という発話を含めることもできる。
【0025】
当然のことながら、ユーザーが現在の快適ブレーキレベルを維持する場合、すなわち、現在の快適ブレーキレベルを切り替えない場合、プロセス300は終了する。ユーザーは、現在の快適ブレーキレベルを維持するというユーザーの意志を、「切り替えない」ボタンアイコンに触れることによって、又は「切り替えない」と発話することによって表現することができる。
【0026】
ブロック306では、現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために受信したユーザー入力に応答して、快適ブレーキモジュール20は、車両Vの現在の状態が所定の切り替え条件を満たすかどうかを決定する。
【0027】
切り替え条件は主に、車両Vが、ビークルバスを使用して車両Vのブレーキシステムに、車両Vが切り替えたいレベルのブレーキパラメータを送信するのに十分な時間があるかどうかが関与する。なぜなら、車両Vがブレーキパラメータを送信するのに十分な時間がない場合、快適ブレーキレベルの切り替えは実施できないためである。例えば、車両Vが直ちに制動を開始する必要があり、かつタイムリーにブレーキパラメータの送信を完了しない場合がそうで、この場合には、快適ブレーキモジュール20は、車両Vの現在の状態が所定の切り替え条件を満たさないものと決定する。
【0028】
一実施形態では、所定の切り替え条件は、車両Vが定常状態にあることである。
【0029】
この実施形態では、車両Vの現在の状態が定常状態である場合、快適ブレーキモジュール20は、現在の状態が所定の切り替え条件を満たすと決定する。車両Vの現在の状態が非定常状態である場合、快適ブレーキモジュール20は、現在の状態が所定の切り替え条件を満たさないと決定する。
【0030】
別の実施形態では、所定の切り替え条件は、車両Vが制動を開始する瞬間からの期間が、所定の期間(例えば、所定の第一期間、すなわち、制動の瞬間からの所定の期間)よりも長いことである。所定の期間は、ビークルバスを使用してブレーキパラメータをブレーキシステムに送信するために必要な期間と関連する。プリセット期間は、ビークルバスを使用してブレーキパラメータをブレーキシステムに送信するために必要な期間と等しくてもよく、又は特定の留保量が存在するように、その期間よりもわずかに長くてもよい。この実施形態では、車両Vが制動を開始する瞬間からの期間が所定の期間よりも長い場合、快適ブレーキモジュール20は、現在の状態が所定の切り替え条件を満たすと決定する。車両Vが制動を開始する瞬間からの期間が所定の期間を超えない場合、快適ブレーキモジュール20は、現在の状態が所定の切り替え条件を満たさないと決定する。
【0031】
本開示の実施形態では、「制動開始」は、車両が制動を開始する(すなわち、快適制動を開始する)瞬間を指す。例えば、車両がより高速で走行し、制動決定がなされた場合、速度は減少し、特定の速度まで減速されると制動が開始する。当然のことながら、「制動開始」の瞬間は、例えば、実際の車両試験結果及び/又はモデルに基づいて計算されるなど、予め定められている。「制動開始」の瞬間は、例えば、車両ブランド、ユーザー要件、又は特定用途シナリオに応じて調整されてもよい。
【0032】
車両Vが制動を開始する瞬間からの期間が所定の期間よりも長い場合は、車両は制動プロセス中ではなく、現在の車両速度は所定の車両速度よりも速く、その結果、現在の車両速度から制動が開始する車両速度までの期間が所定の期間よりも長い。言い換えれば、現在の車両速度が所定の車両速度よりも速い必要があり、その結果、現在の車両速度から制動が開始する車両速度までの期間がブレーキパラメータを送信するのに十分である。
【0033】
車両Vの自動運転システムは、車載センサーによって感知される車両状態情報に従って、車両Vが制動を開始する瞬間からの期間を計算しうることが理解されよう。期間を計算するための方法は、本開示に限定されない。
【0034】
ブロック306で、車両Vの現在の状態が所定の切り替え条件を満たさないと決定された場合、プロセス300はブロック308に進む。
【0035】
ブロック308では、快適ブレーキモジュール20は、快適ブレーキレベルの切り替えを禁止する。さらに、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、タッチスクリーン上又は音声を介して、ユーザーに、「車両Vの現在の状態は、快適ブレーキレベルの切り替えには適していない」という情報を提供する。
【0036】
ブロック306で、車両Vの現在の状態が所定の切り替え条件を満たすと決定された場合、プロセス300はブロック310に進む。
【0037】
ブロック310では、快適ブレーキモジュール20は、ユーザーによって選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得する。例えば、ユーザーが、快適ブレーキレベル5を選択した場合、快適ブレーキモジュール20は、快適ブレーキレベル5に対応するブレーキパラメータを取得する。
【0038】
ブロック312では、快適ブレーキモジュール20は、ビークルバスを使用して、取得されたブレーキパラメータを車両Vのブレーキシステムに送信し、ブレーキシステムがブレーキパラメータに従って車両Vの制動プロセスを誘導する。
【0039】
図4は、本開示の別の実施形態による、快適ブレーキ制御プロセス400を示す。プロセス400によると、ユーザーは、車両Vの快適ブレーキ機能の起動を完了させ、快適ブレーキ制御システム100の誘導により、快適ブレーキ機能の初期的な体験を完了させてもよい。
【0040】
図4を参照すると、ブロック402では、車両Vが初期化された後、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、車両Vのユーザーに、車両Vに快適ブレーキ機能を備え、複数の快適ブレーキレベルがあることを示す情報を提供する。初期化は、以下の場合のうちの少なくとも一つを含んでもよい。新規車両が納品される時、車両Vの機能単位(例えば、車両Vのブレーキシステムの機能単位及び車両Vの自動運転システムの機能単位)が起動又は更新され、また工場出荷時設定が実行される時、車両Vの機能単位(例えば、車両Vのブレーキシステムの機能単位及び自動運転システムの機能単位)が起動又は更新される。こうした初期化の後、車両Vの複数の機能及び対応する機能パラメータは、工場出荷時の設定状態にある。
【0041】
一実施形態では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、このような情報を、「この車両は、快適ブレーキ機能を備え、6つの任意選択の快適ブレーキレベルがあります」という音声を介してユーザーに放送する。
【0042】
別の実施形態では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、タッチスクリーン上に「この車両は、快適ブレーキ機能を有し、6つの任意選択の快適ブレーキレベルを有する」などの情報を提示する。
【0043】
ブロック404では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、ユーザーが、快適ブレーキ機能の有効化を表現するユーザー入力を受信する。例えば、ユーザーはタッチスクリーンで、「快適ブレーキ機能をオンにしてください」と入力又は発言する。
【0044】
ブロック406では、快適ブレーキモジュール20は、上記のユーザー入力に応答して起動される。快適ブレーキモジュール20が起動された後、車両Vの制動プロセスは快適ブレーキ機能を有する、すなわち、車両Vの制動プロセスは、快適ブレーキプロセスとして実施され得る。
【0045】
ブロック408では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、快適ブレーキの初期的な体験を通してユーザーを誘導する。例えば、快適ブレーキモジュール20が起動された後、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、グラフィカル・ユーザー・インターフェースの形態で、又は音声を介して、ユーザーに次の情報、車両の快適ブレーキ機能に含まれる態様、設定又は調整できるオプション、注意事項、及び緊急対応措置を提供しうる。さらに、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、グラフィカル・ユーザー・インターフェースの形態で、又は音声を介して、ユーザーを更に誘導して、快適ブレーキの初期的な体験を段階的に完了させてもよい。
【0046】
図5は、本開示のさらに別の実施形態による、快適ブレーキ制御プロセス500を示す。プロセス500によると、快適ブレーキモジュール20は、実際の車両速度が、予想車両速度に可能な限り近くなるように、車両Vの実際の車両速度と予想車両速度との間の速度差に基づいてブレーキ圧力を調整する。図6は、プロセス500で使用される曲線グラフの例である。図6では、横座標は、制動プロセスの時間を表す(例えば、制動プロセスは約7.585秒で始まり、約8.825秒で終了し、制動プロセス全体は約1.3秒持続する)。縦座標は、車両速度を表す。黒色の曲線は、制動時の車両Vの予想車両速度(V_Target)を示す。灰色の曲線は、制動時の車両Vの実際の車両速度(V_Actual)を示す。予想車両速度は、実際の車両試験結果及び/又はモデル計算を使用することによって、事前に取得されてもよい。予想車両速度(V_Target)は、例えば、予想車両速度が時間の経過とともに変化することを示す曲線として表され、また快適ブレーキモジュール20に予め記憶されている。
【0047】
以下に、図5及び図6を参照して、プロセス500を説明する。
【0048】
ブロック502では、快適ブレーキモジュール20は、例えば、図6の実際の車両速度曲線など、制動プロセスにある車両Vの実際の車両速度を取得する。実際の車両速度は、車載センサーによって測定されてもよく、ビークルバスを使用することによって、車載センサーから快適ブレーキモジュール20に送信される。
【0049】
ブロック504では、快適ブレーキモジュール20は、実際の車両速度と予想車両速度との間の速度差を計算する。例えば、図6の実際の車両速度曲線は、予想車両速度曲線から減算され、車両速度差が得られる。当然のことながら、車両速度差は、経時的に変化する車両速度差の曲線(図には示さず)として表されてもよい。
【0050】
ブロック506では、快適ブレーキモジュール20は、計算された速度差に基づいて、現在の快適ブレーキレベルでブレーキパラメータのブレーキ圧力を調整して、速度差を減少させる。
【0051】
制動中のある瞬間に、実際の車両速度がその時点での予想車両速度よりも高い場合、ブレーキ圧力が不十分であり、実際の車両速度がその時点で到達されるべき期待値まで減速していないことを示す。この場合には、ブレーキ圧力を上げるべきである。さらに、その瞬間における実際の車両速度が、その瞬間における予想車両速度よりも低い場合、ブレーキ圧力が過度に高く、実際の車両速度が、その瞬間に到達されるべき期待値よりも低い車両速度まで減速していることを示し、この場合には、ブレーキ圧力が低減されるべきである。さらに、その瞬間における実際の車両速度が、その瞬間における対応する予想車両速度と等しい場合、ブレーキ圧力は正に適切であり、調整する必要はないことを示す。
【0052】
一実施形態では、車両速度が所定の車両速度に減速される必要がある瞬間が、車両速度差を計算するためのサンプリング点として使用されてもよい。例えば、図6を参照すると、予想車両速度が0.4m/sである瞬間(すなわち、制動プロセスが終了するために車両速度がより低い値に減速されるべき瞬間)が、サンプリング点として使用される。サンプリング点は、次の方法で決定されてもよい。すなわち、車両Vが制動を開始した後の所定の期間(例えば、所定の第二期間、つまり、所定の制動期間)後の、所定の瞬間(例えば、図6の予想車両速度0.4m/sに対応する瞬間T1)。プリセット期間は、車両Vの自動運転システムによって事前に計算されてもよい。プリセット期間を計算する方法は、本開示には限定されない。
【0053】
この実施形態では、快適ブレーキモジュール20は、制動が開始した後の所定の期間後の所定の瞬間で、実際の車両速度と対応する予想車両速度との間の車両速度差を計算する。
【0054】
所定の瞬間での車両速度差が正であり、車両速度差の絶対値が第一の車両速度差閾値を超える場合、ブレーキ圧力を上げる。所定の瞬間での車両速度差が負であり、車両速度差の絶対値が第二の車両速度差閾値を超える場合、ブレーキ圧力を下げる。
【0055】
ここで、第一の車両速度差閾値及び第二の車両速度差閾値は、システムエラーなどの要因による小さな差による干渉を排除するために指定される。このようにして、小さな速度差が発生する際に、ブレーキ圧力調整はトリガーされない。第一の車両速度差閾値及び第二の車両速度差閾値は、実際の車両試験結果及び/又はモデル計算に基づいて事前に取得される。第一及び第二の車両速度差閾値は、同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0056】
この実施形態では、ブレーキ圧力を上げる場合、快適ブレーキモジュール20は、ブレーキ圧力を第一の増分単位又は第二の増分単位分1回以上上げうる。第一の増分単位は、第二の増分単位よりも小さい。このようにして、ブレーキ圧力を上げることを決定するとき、快適ブレーキモジュール20は、速度差に基づいて、ブレーキ圧力をより大きな増分(第二の増分単位)又はより小さな増分分(第一の増分単位)上げることをさらに選択してもよい。さらに、ブレーキ圧力を上げるたびに、快適ブレーキモジュール20は、新しい実際の車両速度を取得し、新しい速度差を計算し、その後、新しい速度差に基づいてブレーキ圧力を調整する。
【0057】
同様に、ブレーキ圧力を下げる場合、快適ブレーキモジュール20は、ブレーキ圧力を第一の減分単位又は第二の減分単位分1回以上下げうる。第一の減分単位は、第二の減分単位よりも小さい。このようにして、ブレーキ圧力を下げることを決定するとき、快適ブレーキモジュール20は、速度差に基づいて、ブレーキ圧力をより大きな減分(第二の減分単位)又はより小さな減分分(第一の減分単位)下げることをさらに選択してもよい。さらに、ブレーキ圧力を下げるたびに、快適ブレーキモジュール20は、新しい実際の車両速度を取得し、新しい速度差を計算し、その後、新しい速度差に基づいてブレーキ圧力を調整する。
【0058】
さらに、安全上の理由から、ブレーキ圧力はゆっくり下げるべきである。したがって、第一又は第二の減分単位は、安全性を十分に確保するために、より小さい値に設定されるべきである。
【0059】
図7は、本開示のさらに別の実施形態による、快適ブレーキ制御プロセス700を示す。プロセス700によれば、快適ブレーキモジュール20は、車両速度差の予想車両速度に対する前述の比率に基づいて、ブレーキ圧力変化率を調整する。図8は、プロセス700で使用される曲線グラフの例である。図8では、横座標は制動プロセスの時間を表す。縦座標は、比率を表す。曲線は、経時的な比率の変化を示す。
以下に、図7及び図8を参照して、プロセス700を説明する。
【0060】
ブロック702では、快適ブレーキモジュール20は、前述の車両速度差の予想車両速度に対する比率を計算する。例えば、予想車両速度曲線は、実際の車両速度曲線から減算されてから、予想車両速度曲線で除算され、図8の比率曲線が得られる。
【0061】
ブロック704では、快適ブレーキモジュール20は、制動プロセス全体を複数のセクションに分割する。分割によって得られるセクション数は調整されてもよく、各セクションの期間は同一であってもよく、又は異なっていてもよい。例えば、図8を参照すると、破線が使用され、プロセス全体が2つのセクション、すなわち、前半部分の高速セクションと後半部分の低速セクションに分割されていることを示す。高速セクションの期間は、低速セクションの期間と同じであってもよく、または異なってもよい。例えば、破線の位置は、制動プロセス全体の中間位置であってもよく、又は制動プロセス全体の1/3の位置であってもよい。
【0062】
一実施形態では、快適ブレーキモジュール20は、制動プロセス全体を、車両速度に応じて高速セクション、中速セクション、及び低速セクションに分割し、各セクションの期間は等しい。
【0063】
ブロック706では、快適ブレーキモジュール20は、各セクションに対する比率閾値を設定する。車両速度が遅いほど、セクションの比率閾値が高くなる。この設定の理由は、次のとおりである。より遅い車両速度は、より明白な変化率の変化を示す。例えば、図8を参照すると、快適ブレーキモジュール20は、前半部分の高速セクションに対する比率閾値TH_R1を設定し、後半部分の低速セクションに対する比率閾値TH_R2を設定し、TH_R2の絶対値はTH_R1の絶対値よりも大きい。
【0064】
一実施形態では、快適ブレーキモジュール20は、経時的に変化する比率閾値の曲線(図に示す)を生成する。
【0065】
ブロック708では、各セクションについて、快適ブレーキモジュール20は、セクションの比率とセクションの比率閾値との間の差を計算し、計算された差に基づいて、現在の快適ブレーキレベルでのブレーキパラメータのブレーキ圧力変化率を調整する。
【0066】
計算された差が正である場合、圧力除去が速すぎることを示し、ブレーキ圧力変化率を下げて、圧力除去を遅くするべきである。計算された差が負である場合、圧力除去が遅すぎることを示し、ブレーキ圧力変化率を上げて、圧力除去を早めるべきである。分割によって複数のセクションが得られるため、正の差を有するセクション数及び負の差を有するセクション数は統計的に決定されてもよく、より大きな数が使用される。
【0067】
一実施形態では、快適ブレーキモジュール20は、正の差を有するセクション数及び負の差を有するセクション数を決定する。正の差を有するセクション数が、負の差を有するセクション数よりも多い場合、ブレーキ圧力変化率を第三の減分単位分減少させる。正の差を有するセクション数が、負の差を有するセクション数よりも少ない場合、ブレーキ圧力変化率を第三の増分単位分増加させる。
【0068】
この実施形態では、正の差を有するセクション数が、負の差を有するセクション数と等しい場合、サンプリング点が加えられ、例えば、制動プロセスの中間の瞬間がサンプリング点として使用される。
【0069】
快適ブレーキモジュール20は、中間の瞬間の比率と、その瞬間の比率閾値との間の差を計算し(例えば、前述の比率閾値の曲線から、その瞬間の比率閾値を取得する)、差が正である場合、ブレーキ圧力変化率を第三の減分単位分減少させ、差が負である場合、ブレーキ圧力変化率を第三の増分単位分増加させる。
【0070】
車両は、圧力除去が過度に速い時にスリップするリスクがあることを考慮すると、圧力除去速度を増加させる第三の増分単位をより小さい値に設定すべきである。このようにして、圧力除去速度が速すぎるという理由で、車両がスリップするリスクはない。
【0071】
車両Vの使用中に、実際の制動プロセスと予想制動プロセスとの間の偏差が発生しうる。例えば、車両Vのソフトウェア更新、車両Vのハードウェアの摩耗、車両Vの機能単位の無線アップグレード、又は車両Vの車載センサーの劣化は、実際の制動プロセスと予想制動プロセスとの間の偏差を引き起こしうる。前述のプロセス500及びプロセス700によれば、偏差が発生したかどうかは検出することができ、偏差が発生したことが検出されたとき、ブレーキパラメータを調整することによって偏差の自己調整が実施される。このようにして、車両Vの快適ブレーキ機能は、長期間にわたり、良好な性能及び堅牢性を保つことができる。
【0072】
本開示のこの実施形態では、車両のユーザーは、車両の快適ブレーキレベルを切り替えることができる。例えば、ユーザーは、車両Vの運転手及び同乗者、4S店の運転者、及びOEMのエンジニアを含みうる。
【0073】
本開示の実施形態は、自動運転車両又は自動運転能力を有する車両に適用される。本明細書では、「自動運転車両」又は「自動運転能力を有する車両」とは、運転者からの連続的介入(例えば、ステアリング、加速、又は制動)なしに運転を行うよう構成されている車両を指す。「自動運転」には、部分自動運転(例えば、自動運転車に安全責任者が搭乗した、又は時折人間による介入を伴う自動運転)及び完全自動運転(例えば、自動運転車に安全責任者が搭乗していない、又は人間の運転手の介入を伴わない自動運転)が含まれてもよい。車両の自動運転能力は、車両上に搭載された先進運転支援システム又は自動運転システムを使用することによって実施されてもよい。
【0074】
図9は、本開示の実施形態による、快適ブレーキ制御方法900を示す。方法900は、前述のシステム100を使用することによって実施することができ、したがって、システム100に関する前述の説明もこの方法に適用可能である。
【0075】
図9を参照すると、ステップS902では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、車両Vの複数の任意選択の快適ブレーキレベルのインターフェースを提供する。
ステップS904では、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェース10は、車両の現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために、複数の快適ブレーキレベルのうちの一つの選択を受信する。各快適ブレーキレベルは、その快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含み、ブレーキパラメータは、車両Vの少なくとも一つのブレーキシリンダの少なくともブレーキ圧力及びブレーキ圧力変化率を含む。
【0076】
ステップS906では、快適ブレーキモジュール20は、車両Vの現在の状態が所定の切り替え条件を満たすかどうかを決定する。
【0077】
ステップS908では、切り替え条件が満たされていると決定されると、快適ブレーキモジュール20は、選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得する。
【0078】
ステップS910では、快適ブレーキモジュール20は、車両Vのビークルバスを使用して、取得されたブレーキパラメータを車両Vのブレーキシステムに送信する。
一部の実施は上述の通りであるが、これらの実施は例示としてのみ提供され、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。添付の特許請求の範囲及びそれらの均等物は、本開示の範囲及び主題内でなされるすべての修正、置換及び変更を網羅することが意図される。
【符号の説明】
【0079】
3 :レベル
5 :快適ブレーキレベル
10 :インターフェース
20 :快適ブレーキモジュール
200 :インターフェース
300 :快適ブレーキ制御プロセス
400 :快適ブレーキ制御プロセス
500 :快適ブレーキ制御プロセス
700 :快適ブレーキ制御プロセス
900 :快適ブレーキ制御方法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【手続補正書】
【提出日】2023-10-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の快適ブレーキ制御システムであって、
前記車両の複数の任意選択の快適ブレーキレベルのインターフェースを提供し、前記車両の現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために複数の快適ブレーキレベルの1つの選択を受信するように構成されている、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースであって、各快適ブレーキレベルが、前記快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含み、前記ブレーキパラメータが、前記車両の少なくとも一つのブレーキシリンダの少なくともブレーキ圧力及び/又はブレーキ圧力変化率を含む、ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースと、
前記車両の現在の状態が所定の切り替え条件を満たしているかを決定するように構成されている、快適ブレーキモジュールであって、前記切り替え条件が満たされていると決定されたときに、選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得し、前記車両のビークルバスを使用して、前記取得されたブレーキパラメータを前記車両のブレーキシステムに送信する、快適ブレーキモジュールとを備える、車両用快適ブレーキ制御システム。
【請求項2】
前記所定の切り替え条件が、
前記車両が定常状態であることと、
前記車両が制動を開始する瞬間からの期間が、所定の期間よりも長いこととのうちの一つであり、前記所定の期間が前記ビークルバスを使用することによって前記ブレーキパラメータを前記ブレーキシステムに送信するために必要な期間と関連付けられる、請求項1に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項3】
前記快適ブレーキモジュールが、前記車両の制動プロセスにおいて、予想車両速度を記憶し、
前記快適ブレーキモジュールが、
前記制動プロセスでの前記車両の実際の車両速度を取得し、
前記実際の車両速度と前記予想車両速度との間の速度差を計算し、
前記速度差を減少させるために、前記計算された速度差に基づいて、前記ブレーキパラメータ内のブレーキ圧力を調整するようにさらに構成されている、請求項1又は2に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項4】
前記車両速度差を計算することが、制動が開始してから所定の期間が経過した後の所定の瞬間に、実際の車両速度と対応する予想車両速度との間の車両速度差を計算することを含み、
前記ブレーキ圧力を調節することが、前記所定の瞬間における前記車両速度差が正であり、かつ第一の車両速度差閾値を超えている場合に、前記ブレーキ圧力を上げることと、前記所定の瞬間における前記車両速度差が負であり、かつ第二の車両速度差閾値を超えている場合に、前記ブレーキ圧力を下げることとを含む、請求項3に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項5】
前記ブレーキ圧力を上げることが、前記ブレーキ圧力を、第一の増分単位又は前記第一の増分単位よりも大きい第二の増分単位分上げることを含み、
前記ブレーキ圧力を下げることが、第一の減分単位又は前記第一の減分単位よりも大きい第二の減分単位を使用することによって、前記ブレーキ圧力を下げることを含む、請求項4に記載の快適ブレーキシステム。
【請求項6】
前記ブレーキ圧力を調節することが、前記ブレーキ圧力を1回又は複数回調整することと、
複数回調整する場合に、調整のたびに前記実際の車両速度を再取得し、新しい車両速度差を計算し、前記新しい車両速度差に基づいて前記ブレーキ圧力を調整することと、を含む、請求項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項7】
前記快適ブレーキモジュールが、
前記車両速度差の前記予想車両速度に対する比率を計算し、
前記制動プロセス全体を複数のセクションに分割し、
各セクションの比率について比率閾値を設定し、
各セクションについて、前記セクションの前記比率と前記セクションの前記比率閾値との間の差を計算し、前記差に基づいて、前記ブレーキパラメータの前記ブレーキ圧力変化率を調整するようにさらに構成されている、請求項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項8】
前記ブレーキ圧力変化率を調節することが、
正の差を有するセクション数及び負の差を有するセクション数を決定することと、
前記正の差を有するセクション数が、前記負の差を有するセクション数よりも多い場合、前記ブレーキ圧力変化率を第三の減分単位分減少させることと、
前記正の差を有するセクション数が、前記負の差を有するセクション数よりも少ない場合、前記ブレーキ圧力変化率を第三の増分単位分増加させることとを含み、
前記第三の増分単位が、前記第三の減分単位よりも小さい、請求項7に記載の快適ブレーキシステム。
【請求項9】
各セクションに対して前記比率閾値を設定することが、車両速度がより低いセクションに対して、より大きな比率閾値を設定することを含む、請求項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項10】
前記ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースが、前記車両が初期化された後で、
前記車両のユーザーに対し、前記車両が、快適ブレーキ機能を備え、前記複数の快適ブレーキレベルを有することを示す情報を提供するようにさらに構成され、
前記快適ブレーキモジュールが、前記ユーザーが前記快適ブレーキ機能を選択することに応答して起動されるようにさらに構成され、
前記初期化が、
新規車両の機能単位を前記車両の納品中に起動又は更新することと、
工場出荷時設定中に前記機能単位を起動又は更新すること、のうち少なくとも一つを含む、請求項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項11】
前記快適ブレーキ制御システムが、前記車両内に配置され、
前記ヒューマン・マシン・インタラクション・インターフェースが、音声インタラクション・インターフェース、タッチスクリーン、及び物理的ボタンのうちの少なくとも一つを備え、
前記快適ブレーキモジュールが、前記車両の前記ブレーキシステムの制御ユニット内に配置されるか、または前記車両のドメインコントローラ内に配置される、請求項に記載の快適ブレーキ制御システム。
【請求項12】
車両用の快適ブレーキ制御方法であって、任意選択的に、請求項に記載の前記快適ブレーキ制御システムによって実施され、前記方法が、
前記車両の複数の任意選択の快適ブレーキレベルのインターフェースを提供することと、
前記車両の現在の快適ブレーキレベルを切り替えるために、前記複数の快適ブレーキレベルの1つの選択を受信することであって、各快適ブレーキレベルが、前記快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを含み、前記ブレーキパラメータが、前記車両の少なくとも一つのブレーキシリンダの少なくともブレーキ圧力及び/又はブレーキ圧力変化率を含む、受信することと、
前記車両の現在の状態が所定の切り替え条件を満たすかどうかを決定することと、
前記切り替え条件が満たされていると決定されたとき、選択された快適ブレーキレベルに対応するブレーキパラメータを取得することと、
前記取得されたブレーキパラメータを、前記車両のビークルバスを使用して、前記車両のブレーキシステムに送信することと、を含む、方法。
【外国語明細書】