(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184483
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】半導体基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20231221BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H01L21/304 647A
H01L21/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023097628
(22)【出願日】2023-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2022098408
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】山田 晃平
【テーマコード(参考)】
5F157
【Fターム(参考)】
5F157AA96
5F157BC03
5F157BF32
5F157BF38
5F157BF59
5F157BF72
(57)【要約】
【課題】一態様において、接着剤の除去性に優れる洗浄剤組成物を用いた半導体基板の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示は、(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、(2)ウエハの固定部材との接着面の裏面を研磨する工程と、(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、(5)分離されたウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程とを含む半導体基板の製造方法であって、前記工程(3)は、固定部材に接着剤で固定されたウエハを230℃以上の温度で加熱処理することを含み、前記工程(5)で用いる前記洗浄剤が、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である洗浄剤組成物である、半導体基板の製造方法に関する。
R-O-(EO)n-H (I)
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、
(2)ウエハの固定部材との接着面の裏面を研磨する工程と、
(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、
(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、
(5)分離されたウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程と、
を含む半導体基板の製造方法であって、
前記工程(3)は、固定部材に接着剤で固定されたウエハを230℃以上の温度で加熱処理することを含み、
前記工程(5)で用いる前記洗浄剤が、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である洗浄剤組成物である、半導体基板の製造方法。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【請求項2】
固定部材に接着剤で接着され、230℃以上の温度での加熱処理を経たウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程を含み、
前記洗浄剤が、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である洗浄剤組成物である、洗浄方法。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【請求項3】
加熱処理されたウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤組成物であって、
アルカノールアミン(成分A)と、下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)と、を含有し、
成分Aの含有量が、35質量%以上85質量%以下である、接着剤用洗浄剤組成物。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【請求項4】
水を含有しないか、水の含有量が15質量%以下である、請求項3に記載の洗浄剤組成物。
【請求項5】
成分Bの含有量が、15質量%以上65質量%以下である、請求項3又は4に記載の洗浄剤組成物。
【請求項6】
成分Aが、下記式(II)で表される化合物を含む、請求項3から5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【化1】
上記式(II)中、R
1は、炭素数2以上4以下の直鎖のアルカノール基を示し、R
2は、炭素数2以上4以下の直鎖のアルカノール基、メチル基又は水素原子を示し、R
3は、メチル基又は水素原子を示す。
【請求項7】
成分Bの含有量に対する成分Aの含有量の質量比A/Bが、0.6以上5.5以下である、請求項3から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項8】
前記接着剤は、3次元集積回路の製造工程で用いられる接着剤である、請求項3から7のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
【請求項9】
加熱処理されたウエハに残留する接着剤を除去するための接着剤除去剤であって、
アルカノールアミン(成分A)と、下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)と、を含有し、
成分Aの含有量が、35質量%以上85質量%以下である、接着剤除去剤。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【請求項10】
固定部材に接着剤で接着され、230℃以上の温度での加熱処理を経たウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を接着剤除去剤で除去する工程を含み、
前記接着剤除去剤が、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である、洗浄方法。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体基板の製造方法、洗浄方法、接着剤用洗浄剤組成物及び接着剤除去剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体デバイスの高集積化が飛躍的に進んでおり、3次元集積回路(3DIC)技術が注目されている。3DIC技術は、ウエハをシリコン貫通電極(TSV)等によって結線しながら多層に積層する技術である。ウエハを多層に積層する際、回路が形成されたウエハの裏面(回路が形成されていない面)を研磨によって薄型化し、さらに裏面に電極形成を行うなどの加工が必要である。
薄型化前のウエハは固定部材(支持体)に接着剤で接着(仮接着)されており、研磨や電極形成等の加工を経た後、ウエハが固定部材から分離される。固定部材から分離されたウエハには接着剤が残留していることが多く、その後の工程に不具合を生じることがある。そのため、ウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄工程が行われており、洗浄工程で用いる洗浄剤組成物が各種開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、剥離した半導体回路形成基板または支持基板に付着した接着剤層を洗浄するリワーク溶剤(洗浄剤)であって、少なくともアミン系溶媒、および特定のグリコールエーテル系溶媒を含有するリワーク溶剤が開示されている。そして実施例では、モノエタノールアミン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル及びN-メチル-2-ピロリドンからなるリワーク溶剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
3次元集積回路(3DIC)の製造過程において、固定部材(支持体)に接着剤で接着(仮接着)されたウエハを研磨した後の電極形成等の加工は、150℃以上の高温下で行われることがあり、接着剤が加熱によって変質すると、除去し難しい傾向にある。洗浄剤組成物には、このような接着剤に対する除去性(洗浄性)に優れたものが要求される。
特許文献1で提案されている洗浄剤組成物では、ウエハに残留する接着剤に対する除去性に改善の余地があった。また、N-メチル-2-ピロリドンは、高い溶解性、高沸点、低凝固点等で優れた有機溶剤であるが、毒性などの安全性の観点から、使用量を制限することが望まれる。
【0006】
そこで、本開示は、接着剤の除去性に優れる接着剤用洗浄剤組成物及び接着剤除去剤を用いた半導体基板の製造方法及び洗浄方法、並びに接着剤の除去性に優れる接着剤用洗浄剤組成物及び接着剤除去剤を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、一態様において、(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、(2)ウエハの固定部材との接着面の裏面を研磨する工程と、(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、(5)分離されたウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程とを含む半導体基板の製造方法であって、前記工程(3)は、固定部材に接着剤で固定されたウエハを230℃以上の温度で加熱処理することを含み、前記工程(5)で用いる前記洗浄剤が、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である洗浄剤組成物である、半導体基板の製造方法に関する。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【0008】
本開示は、一態様において、固定部材に接着剤で接着され230℃以上の温度での加熱処理を経たウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程を含み、前記洗浄剤が、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である洗浄剤組成物である、洗浄方法に関する。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【0009】
本開示は、一態様において、加熱処理されたウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤組成物であって、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である、接着剤用洗浄剤組成物に関する。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【0010】
本開示は、一態様において、加熱処理されたウエハに残留する接着剤を除去するための接着剤除去剤であって、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である、接着剤除去剤に関する。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【0011】
本開示は、一態様において、固定部材に接着剤で接着され、230℃以上の温度での加熱処理を経たウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を接着剤除去剤で除去する工程を含み、前記接着剤除去剤が、アルカノールアミン(成分A)と下記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である、洗浄方法に関する。
R-O-(EO)n-H (I)
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、接着剤の除去性に優れる接着剤用洗浄剤組成物及び接着剤除去剤を用いる半導体基板の製造方法及び洗浄方法、並びに接着剤の除去性に優れる接着剤用洗浄剤組成物及び接着剤除去剤を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、本開示の半導体基板の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
【
図2】
図2は、本開示の半導体基板の製造方法の一実施形態における各工程を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本開示は、含有量が35質量%以上85質量%以下のアルカノールアミンと、特定のグリコールエーテルとを含む洗浄剤組成物又は接着剤除去剤を用いることで、230℃以上の温度で加熱処理されたウエハに残留する接着剤を効率よく除去できるという知見に基づく。
【0015】
本開示は、一態様において、(1)ウエハを固定部材に接着剤で接着する工程と、(2)ウエハの固定部材との接着面の裏面を研磨する工程と、(3)ウエハの研磨された面を加工する工程と、(4)加工されたウエハと固定部材とを分離する工程と、(5)分離されたウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程とを含む半導体基板の製造方法であって、前記工程(3)は固定部材に接着剤で固定されたウエハを230℃以上の温度で加熱処理することを含み、前記工程(5)で用いる前記洗浄剤が、アルカノールアミン(成分A)と上記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である洗浄剤組成物である、半導体基板の製造方法(以下、「本開示の半導体基板製造方法」ともいう)に関する。
本開示は、その他の態様において、加熱処理されたウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤組成物であって、アルカノールアミン(成分A)と上記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である、接着剤用洗浄剤組成物(以下、「本開示の洗浄剤組成物」ともいう)に関する。
本開示は、その他の態様において、加熱処理されたウエハに残留する接着剤を除去するための接着剤除去剤であって、アルカノールアミン(成分A)と上記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である、接着剤除去剤(以下、「本開示の接着剤除去剤」ともいう)に関する。
【0016】
本開示によれば、一又は複数の実施形態において、接着剤の除去性に優れる洗浄剤組成物を用いることで、高い収率で高品質の半導体基板を得ることができる。本開示によれば、その他の一又は複数の実施形態において、接着剤の除去性に優れる洗浄剤組成物及び接着剤除去剤を提供できる。
【0017】
本開示の半導体基板製造方法並びに洗浄剤組成物及び接着剤除去剤における効果発現の作用メカニズムの詳細は不明な部分があるが、以下のように推定される。
ウエハに残留する接着剤は、加熱によって変質すると、強固になって除去し難い傾向にある。
本開示の半導体基板製造方法並びに本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤では、所定量のアルカノールアミン(成分A)が加熱処理されたウエハに残留する強固になった接着剤内に浸透し、接着剤内に存在する反応点と反応することで接着剤の硬度を下げることができると考えられる。硬度が下がった状態の接着剤に浸透力の高いグリコールエーテル(成分B)が作用することで接着剤の膨潤や溶解が進行し、接着剤が除去されると考えられる。さらに、グリコールエーテル(成分B)の含有量、グリコールエーテル(成分B)の含有量に対するアルカノールアミン(成分A)の含有量の質量比(A/B)が特定の値の場合、アルカノールアミン(成分A)及びグリコールエーテル(成分B)の浸透性が相乗的に高まると考えられる。
但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
【0018】
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、接着剤が付着したウエハから接着剤を除去するために使用される。すなわち、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤の、接着剤が付着したウエハから接着剤を除去するための使用に関する。
ウエハとしては、例えば、半導体基板が挙げられる。半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ等のウエハが挙げられる。また、ウエハとしては、一又は複数の実施形態において、接合、実装のための部位であるパッド及び/又はランドを有する基板であってもよい。
接着剤としては、例えば、ウエハを固定部材に接合でき、研磨工程及び加工工程に耐えることが可能な耐久性を有し、かつ、分離工程でウエハを固定部材から容易に分離できるものが挙げられる。接着剤としては、例えば、ポリイミド系、ポリシロキサン系、アクリル系、又はメタクリル系接着剤(接着剤組成物)等が挙げられる。
【0019】
[半導体基板の製造方法]
本開示の半導体基板の製造方法について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、本開示の半導体基板の製造方法の各工程を示すフローチャートである。
図2は、本開示の半導体基板の製造方法の一実施形態における各工程を説明するための概略図である。
【0020】
<工程(1):接着工程>
工程(1)は、ウエハ3を固定部材1に接着剤2で接着する工程(接着工程)である(ステップS1)。工程(1)は、一又は複数の実施形態において、ウエハ又は固定部材の表面に接着剤を塗布して接着剤層を形成する工程(1-1)と、ウエハと固定部材とを接着剤層を介して貼り合わせ、加熱処理して接合する工程(1-2)と、を含む。
【0021】
工程(1)に用いるウエハとしては、例えば、直径100~500mm、厚さ500~2000μmのシリコンウエハやガラスウエハ等が挙げられる。
【0022】
工程(1)に用いる固定部材としては、特に限定されないが、例えば、直径100~500mm、厚さ500~20000μmのシリコンウエハ、ガラス板等の基板が挙げられる。
【0023】
工程(1)に用いる接着剤としては、ウエハを固定部材に接合でき、研磨工程及び加工工程に耐えることが可能な耐久性を有し、かつ、分離工程でウエハを固定部材から容易に分離できるものであれば特に限定されないが、例えば、3DICの製造工程で用いられる接着剤が挙げられる。3DICの製造工程で用いられる接着剤としては、例えば、ポリイミド系、ポリシロキサン系、アクリル系、又はメタクリル系接着剤(接着剤組成物)等が挙げられる。具体的には、特開2021-161196号公報に記載された接着剤組成物等が挙げられる。
工程(1)で用いる接着剤組成物は、一又は複数の実施形態において、接着剤成分としてポリシロキサン、アクリル酸エステル、又はメタクリル酸エステルを含むものが挙げられ、さらに白金族金属触媒、剥離剤成分、溶媒等を含むものであってもよい。
工程(1)で用いる接着剤組成物の粘度は、塗布方法、膜厚等に応じて、含有成分の濃度等を適宜変更することで調整できる。
【0024】
工程(1-1)において、接着剤(接着剤組成物)の塗布方法としては、特に限定されないが、例えば、スピンコート法等が挙げられる。
接着剤(接着剤組成物)の塗布層(接着剤層)の膜厚は、例えば、5~500μmが挙げられる。
【0025】
工程(1-2)において、加熱処理の温度は、例えば、80℃以上が挙げられ、接着剤が過度に硬化するのを抑制する観点から、150℃以下が好ましい。
加熱処理の時間は、例えば、30秒以上が挙げられ、接着剤層やその他の部材の変質を抑制する観点から、10分以下が好ましい。
加熱は、ホットプレート、オーブン等を用いて行うことができる。
加熱処理後の接着剤層の膜厚としては、例えば、5μm以上100μm以下が挙げられる。
【0026】
<工程(2):研磨工程>
工程(2)は、ウエハ3の固定部材1との接着面の裏面(接着面とは反対側の面)3aを研磨する工程(研磨工程)である(ステップS2)。
研磨方法としては、例えば、砥粒等による機械研磨、化学機械研磨等の研磨方法が挙げられる。
工程(2)において、研磨後のウエハ(薄型化されたウエハ)の厚さは、200μm以下が好ましく、例えば、50μm~200μmが挙げられる。
【0027】
<工程(3):加工工程>
工程(3)は、ウエハ3の研磨された面(薄型化されたウエハの裏面)3aを加工する工程(加工工程)である(ステップS3)。
工程(3)としては、一又は複数の実施形態において、電極形成工程、金属配線形成工程、保護膜形成工程等が挙げられる。例えば、電極等の形成のための金属スパッタリング、ウェットエッチング、レジスト塗布、パターン形成、レジスト剥離、ドライエッチング、金属メッキ形成、シリコン貫通電極(TSV)形成のためのシリコンエッチング、シリコン表面の酸化膜形成などの従来公知の加工工程が挙げられる。
工程(3)において、前記加工は、一又は複数の実施形態において、150℃以上の高温下で行われる。前記加工は、一又は複数の実施形態において、固定部材に接着剤で固定されたウエハを、230℃以上の温度で加熱処理することを含む。TSV等の電極形成を行う場合、前記加工は、例えば、250℃以上350℃以下の加熱処理が行われることがある。
【0028】
<工程(4):分離工程>
工程(4)は、加工されたウエハ3と固定部材1とを分離する工程(分離工程)である(ステップS4)。
分離方法としては、例えば、溶剤剥離、レーザ剥離、機械的な剥離等が挙げられる。
【0029】
<工程(5):洗浄工程>
工程(5)は、分離されたウエハ3に残留する接着剤(接着剤残渣)2aを洗浄剤で除去する工程(洗浄工程)である(ステップS5)。
工程(5)で用いる洗浄剤としては、後述する本開示の洗浄剤組成物又は接着剤除去剤が挙げられる。
洗浄工程における洗浄方法(接着剤の除去方法)としては、例えば、浸漬洗浄が挙げられる。浸漬洗浄の浸漬条件としては、例えば、洗浄剤の温度は、20℃以上70℃以下又は40℃以上70℃以下が好ましく、浸漬時間は、1分以上60分以下が好ましい。洗浄剤に超音波振動が付与されていると好ましく、例えば、25~50kHzが好ましく、ウエハへのダメージを抑制する観点から35~45kHzがより好ましい。
洗浄後のウエハは、水洗い又はアルコールによるリンスを行い、乾燥させてもよい。
【0030】
[洗浄剤組成物及び接着剤除去剤]
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、加熱処理されたウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤又は接着剤除去剤として使用される。
【0031】
<アルカノールアミン(成分A)>
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、アルカノールアミン(アミノアルコール)(以下、「成分A」ともいう)を含有する。成分Aとしては、例えば、下記式(II)で表される化合物を含むことが挙げられる。成分Aは、1種でもよいし、2種以上の組合せもよい。成分Aは、一又は複数の実施形態において、分岐炭素鎖を有さない化合物である。成分A中の下記式(II)で表される化合物の含有量は、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【化1】
【0032】
上記式(II)中、R1は、炭素数2以上4以下の直鎖のアルカノール基を示し、R2は、炭素数2以上4以下の直鎖のアルカノール基、メチル基又は水素原子を示し、R3は、メチル基又は水素原子を示す。
上記式(II)において、R1は、接着剤の除去性向上の観点から、炭素数2又は3の直鎖のアルカノール基が好ましい。R2は、同様の観点から、水素原子が好ましい。R3は、同様の観点から、水素原子が好ましい。
【0033】
成分Aとしては、例えば、モノエタノールアミン、N-メチルモノエタノールアミン、N-エチルモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N-ジメチルモノエタノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N-ジエチルモノエタノールアミン、N-エチルジエタノールアミン、N-(β-アミノエチル)エタノールアミン、N-(β-アミノエチル)ジエタノールアミン、から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。これらの中でも、接着剤の除去性向上の観点から、アルキルモノアルカノールアミン又はモノアルカノールアミンが好ましく、モノエタノールアミンがより好ましい。
【0034】
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の成分Aの含有量は、接着剤の除去性向上の観点から、35質量%以上であって、37.5質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、そして、接着剤の除去性向上、部材ダメージ、及び含窒素量低減の観点から、85質量%以下であって、75質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の成分Aの含有量は、35質量%以上85質量%以下であって、37.5質量%以上75質量%以下が好ましく、40質量%以上65質量%以下がより好ましい。成分Aが2種以上の組合せである場合、成分Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0035】
本開示において「洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の各成分の含有量」とは、洗浄時、すなわち、洗浄剤組成物及び接着剤除去剤の洗浄への使用を開始する時点での各成分の含有量とすることができる。
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の各成分の含有量は、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の各成分の配合量とみなすことができる。
【0036】
<グリコールエーテル(成分B)>
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、下記式(I)で表されるグリコールエーテル(以下、「成分B」ともいう)を含有する。成分Bは、1種でもよいし、2種以上の組合せでもよい。
R-O-(EO)n-H (I)
【0037】
上記式(I)中、Rは、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、EOはエチレンオキシ基を示し、nはEOの付加モル数であって1以上3以下の数である。
【0038】
成分Bとしては、接着剤の除去性向上の観点から、炭素数1以上4以下のアルキル基を有する(ポリ)エチレングリコールモノアルキルエーテルが好ましく、炭素数1以上4以下のアルキル基を有する、エチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテルから選ばれる少なくとも1種がより好ましく、エチレングリコールモノブチルエーテル(BG)、及びジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)から選ばれる少なくとも1種が更に好ましい。
【0039】
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の成分Bの含有量は、接着剤の除去性向上及び相溶性の観点から、15質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、45質量%以上が更に好ましく、そして、接着剤の除去性向上の観点から、65質量%以下が好ましく、62.5質量%以下がより好ましく、60質量%以下が更に好ましい。より具体的には、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の成分Aの含有量は、15質量%以上65質量%以下が好ましく、30質量%以上62.5質量%以下がより好ましく、45質量%以上60質量%以下が更に好ましい。成分Bが2種以上の組合せである場合、成分Bの含有量はそれらの合計含有量をいう。
【0040】
成分Bの含有量に対する成分Aの含有量の質量比A/Bは、洗浄性および安定性の観点から、0.6以上が好ましく、0.625以上がより好ましく、0.65以上が更に好ましく、そして、洗浄性および安定性の観点から、5.5以下が好ましく、3以下がより好ましく、1未満が更に好ましい。より具体的には、質量比A/Bは、0.6以上5.5以下が好ましく、0.625以上3以下がより好ましく、0.65以上1未満が更に好ましい。
【0041】
<水(成分C)>
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、水を含有しないか、水の含有量は15質量%以下が好ましい。水(以下、「成分C」ともいう)としては、一又は複数の実施形態において、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水等が挙げられる。
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤が成分Cを含有する場合、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の成分Cの含有量は、成分A、成分B、及び後述する任意成分を除いた残余とすることができる。具体的には、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の成分Cの含有量は、接着剤の除去性向上の観点から、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5質量%以下が更に好ましく、3質量%以下が更に好ましく、1質量%以下が更に好ましく、本質的には0質量%(すなわち、含まないこと)がより更に好ましい。
【0042】
<その他の成分>
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、前記成分A~B以外に、必要に応じて水(成分C)又はその他の成分をさらに含有することができる。その他の成分としては、通常の洗浄剤に用いられうる成分を挙げることができ、例えば、成分C以外の溶媒、成分A以外のアルカリ剤、成分A以外のアミン、界面活性剤、キレート剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、高分子化合物、可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤等が挙げられる。
【0043】
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、N-メチル-2-ピロリドンを含有しないか、N-メチル-2-ピロリドンの含有量が1質量%以下であることが好ましい。
本開示の洗浄剤組成物がN-メチル-2-ピロリドンを含有する場合、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中のN-メチル-2-ピロリドンの含有量は、毒性などの安全性や各種規制に対応する観点から、1質量%以下が好ましく、0.5質量%以下がより好ましく、0.01質量%以下が更に好ましく、本質的には0質量%(すなわち、含まないこと)がより更に好ましい。
【0044】
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、分岐炭素鎖を有するアルカノールアミンを実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の分岐炭素鎖を有するアルカノールアミンの含有量は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、ノニオン性界面活性剤を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中のノニオン性界面活性剤の含有量は、好ましくは1質量%未満、より好ましくは0.5質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。ノニオン性界面活性剤としては、例えば、炭素数8~10の脂肪族炭化水素又は芳香族炭化水素に任意のエチレンオキサイド又はプロピレンオキサイドを付加したものが挙げられる。
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、炭素数9~16の脂肪族炭化水素を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の炭素数9~16の脂肪族炭化水素の含有量は、好ましくは5質量%以下、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、ヒドロキシルアミンを実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中のヒドロキシルアミンの含有量は、好ましくは5質量%未満、好ましくは1質量%以下、更に好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、グリオキシル酸を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中のグリオキシル酸の含有量は、好ましくは0.05質量%未満、好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、N,N-ジメチルアセトアミン(DMAC)を実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中のN,N-ジメチルアセトアミン(DMAC)の含有量は、好ましくは0.1質量%未満、好ましくは0.01質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、第4級アンモニウムヒドロキシドを実質的に含まないものとすることができる。例えば、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤中の第4級アンモニウムヒドロキシドの含有量は、好ましくは1質量%未満、好ましくは0.1質量%以下、更に好ましくは0質量%である。
【0045】
[洗浄剤組成物及び接着剤除去剤の製造方法]
本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、一又は複数の実施形態において、前記成分A~B及び必要に応じて上述の任意成分(成分C、その他の成分)を公知の方法で配合することにより製造できる。例えば、本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤は、少なくとも前記成分A~Bを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、少なくとも前記成分A~Bを配合する工程を含む、洗浄剤組成物及び接着剤除去剤の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A~B及び必要に応じて上述した任意成分(成分C、その他の成分)を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤の製造方法において、各成分の好ましい配合量は、上述した本開示の洗浄剤組成物及び接着剤除去剤の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
【0046】
[被洗浄物]
被洗浄物としては、例えば、接着剤が付着したウエハが挙げられる。ウエハとしては、例えば、半導体基板が挙げられる。半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、ガリウム-ヒ素ウエハ、ガリウム-リンウエハ、ガリウム-ヒ素-アルミニウムウエハ等のウエハが挙げられる。また、ウエハとしては、一又は複数の実施形態において、接合、実装のための部位であるパッド及び/又はランドを有する基板であってもよい。パッド及びランドの部材としては、例えば、金や銅等の金属が挙げられる。
接着剤が付着したウエハとしては、一又は複数の実施形態において、固定部材に接着剤で接着(固定)されたウエハを固定部材から分離した後のウエハ、固定部材に接着剤で接着(固定)され、230℃以上の温度での加熱処理を経たウエハを固定部材から分離した後のウエハ等が挙げられる。したがって、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物又は接着剤除去剤の、固定部材に接着剤で接着(固定)されたウエハを固定部材から分離した後にウエハに残留する接着剤を除去するための洗浄剤としての使用に関する。固定部材に接着剤で接着(固定)されたウエハは、一又は複数の実施形態において、230℃以上の温度での加熱処理を経たものである。前記加熱処理は、一又は複数の実施形態において、後述する加工工程における加熱処理が挙げられる。
接着剤が付着したウエハとしては、一又は複数の実施形態において、3次元集積回路(3DIC)の製造工程で用いられる接着剤が付着したウエハが挙げられる。したがって、本開示は、一態様において、本開示の洗浄剤組成物又は接着剤除去剤の、3次元集積回路の製造工程で用いられる接着剤を除去するための洗浄剤としての使用に関する。
接着剤が付着したウエハは、一又は複数の実施形態において、230℃以上の温度での加熱処理を経たものである。前記加熱処理は、一又は複数の実施形態において、後述する加工工程における加熱処理が挙げられる。
【0047】
[洗浄方法]
本開示は、一態様において、固定部材に接着剤で接着され、230℃以上の温度での加熱処理を経たウエハを固定部材から分離した後に、ウエハに残留する接着剤を洗浄剤で除去する工程(洗浄工程)を含み、前記洗浄剤が、アルカノールアミン(成分A)と上記式(I)で表されるグリコールエーテル(成分B)とを含有し、成分Aの含有量が35質量%以上85質量%以下である洗浄剤組成物である、洗浄方法(以下、「本開示の洗浄方法」ともいう)に関する。前記洗浄剤は、一又は複数の実施形態において、上述した本開示の洗浄剤組成物又は接着剤除去剤である。
本開示の洗浄方法の洗浄工程における洗浄方法(接着剤の除去方法)は、上述した本開示の半導体基板製造方法における工程(5)の洗浄方法(除去方法)と同じ方法が挙げられる。
本開示の洗浄方法において、固定部材に接着剤で接着され、230℃以上の温度での加熱処理を経たウエハは、一又は複数の実施形態において、好ましくは270℃以上の温度での加熱処理を経たものである。230℃以上の温度での加熱処理としては、例えば、回路が形成された基板に、半導体チップなどのデバイス及び別の回路が形成された基板等を、はんだ又は金属微粒子を用いて接合するための加熱処理が挙げられる。加熱処理の工程は、工程(3)の加工工程の後、工程(4)の前で行うことが挙げられる。
本開示の洗浄方法にける被洗浄物としては、一又は複数の実施形態において、本開示の半導体基板製造方法における工程(1)~(4)を経た後のウエハが挙げられる。
【0048】
[キット]
本開示は、一態様において、本開示の洗浄方法及び本開示の半導体基板製造方法のいずれかに使用するためのキット(以下、「本開示のキット」ともいう)に関する。本開示のキットは、一又は複数の実施形態において、本開示の洗浄剤組成物又は接着剤除去剤を製造するためのキットである。本開示のキットによれば、接着剤の除去性に優れる洗浄剤組成物又は接着剤除去剤を得ることができる。
【0049】
本開示のキットとしては、一又は複数の実施形態において、成分Aを含有する溶液(第1液)と、成分Bを含有する溶液(第2液)とを、相互に混合されない状態で含み、第1液と第2液とは使用時に混合される、キット(2液型洗浄剤組成物)が挙げられる。第1液と第2液とが混合された後、必要に応じて水(成分C)で希釈されてもよい。第1液及び第2液の各々には、必要に応じて上述した任意成分が含まれていてもよい。
【実施例0050】
以下に、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0051】
1.実施例1~3及び比較例1の洗浄剤組成物の調製
表1に示す各成分を表1に記載の配合量(質量%、有効分)で配合し、それを攪拌して混合することにより、実施例1~3及び比較例1の洗浄剤組成物を調製した。
【0052】
実施例1~3及び比較例1の洗浄剤組成物の調製には、下記のものを使用した。
(成分A)
モノエタノールアミン[日本触媒株式会社製]
(成分B)
BDG:ブチルジグリコール[日本乳化剤株式会社製、ジエチレングリコールモノブチルエーテル]
BG:ブチルグリコール[日本乳化剤株式会社製、エチレングリコールモノブチルエーテル]
(非成分B)
ジプロピレングリコールジメチルエーテル[日本乳化剤株式会社製]
(成分C)
水[オルガノ株式会社製純水装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
【0053】
2.実施例1~3及び比較例1の洗浄剤組成物の評価
調製した実施例1~3及び比較例1の洗浄剤組成物について下記評価を行った。
【0054】
[洗浄性(接着剤の除去性)の評価]
200mLビーカーに実施例1~3及び比較例1の洗浄剤組成物を200mL添加して、テストピースを常温(25℃)の洗浄剤組成物に10分間浸漬させる。そして、テストピースを洗浄剤組成物から取り出し、室温下でPGME:1-メトキシ-2-プロパノール[富士フィルム和光純薬株式会社製、特級]及びブチルグリコール[富士フィルム和光純薬株式会社製、一級]を約20秒間流しかけてすすいだ後、室温で静置乾燥させる。
テストピース上の接着剤の残存有無を目視にて観察して洗浄率を算出し、下記の評価基準に基づき洗浄性(接着剤の除去性)を評価する。結果を表1に示した。
洗浄率(%)=(洗浄後で接着剤が除去された面積)/(テストピースの面積)×100
<評価基準>
A:目視観察において、残渣がみられない又は残渣面積が1%未満
B:目視観察において、残渣面積が1%以上25%未満
C:目視観察において、残渣面積が25%以上40%未満
D:目視観察において、残渣面積が40%以上50%未満
E:目視観察において、残渣面積が50%以上
なお、テストピースは、30mm×30mmのサイズで、シリコンウエハ上に接着剤残渣を有している。接着剤残渣は、厚さ20μmでテストピース全面に存在している。また、接着剤はテストピースに貼付後、窒素下、250℃で60分間加熱処理が行われた後の状態のものを使用した。接着剤には、ポリイミド系を用いた。
【0055】
[Al電極ダメージの評価]
100mLビーカーに実施例1~3及び比較例1の洗浄剤組成物を100mL添加して60℃に加温し、超音波洗浄器(アズワン株式会社製、ASU―20M)で超音波(40kHz、360W)を当てながら、テストピースを60℃の洗浄剤組成物に30分間浸漬させる。そして、テストピースを洗浄剤組成物から取り出し、室温下でエタノール(富士フィルム和光純薬株式会社製、特級)を約20秒間流しかけてすすいだ後、室温で静置乾燥させる。
光学顕微鏡「デジタルマイクロスコープVHX-2000」(株式会社キーエンス製)を用いて、洗浄試験後のテストピースを100倍に拡大して目視で確認し、下記の評価基準に基づきAl電極へのダメージ性を評価する。結果を表1に示した。
なお、テストピースは、15mm×15mmのサイズで、シリコンウエハ上に3mm×2.5mmのサイズのAl電極を隙間なく有している。
<評価基準>
A:電極に変色は見られない
B:電極に変色は見られないが、光沢がわずかに減少
C:電極に変色は見られないが、光沢が減少
D:電極に変色が見られる
【0056】
【0057】
表1に示すとおり、実施例1~3の洗浄剤組成物は、成分Bを含まない比較例1に比べて、接着剤の除去性に優れていることがわかった。また、Al電極は極性溶剤によりダメージを受ける場合があるところ、実施例1~3の洗浄剤組成物は、Al電極へのダメージを抑制できていることもわかった。さらに、実施例1~3の洗浄剤組成物は、N-メチル-2-ピロリドンを含有しないことから、安全性の高い洗浄剤組成物であるといえる。