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▶ オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツングの特許一覧

特開2023-184493外科ツールおよびハンドヘルド電気外科器具ならびに外科ツールを検出する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184493
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】外科ツールおよびハンドヘルド電気外科器具ならびに外科ツールを検出する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/14 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A61B18/14
【審査請求】有
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023098454
(22)【出願日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/352,715
(32)【優先日】2022-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】510320416
【氏名又は名称】オリンパス・ウィンター・アンド・イベ・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100169018
【弁理士】
【氏名又は名称】網屋 美湖
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・ミュックナー
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KK03
4C160KK16
4C160KK22
4C160KK36
4C160MM43
4C160MM54
(57)【要約】      (修正有)
【課題】単純で、かつ、独特の方法で識別することができる外科ツールを提供する。
【解決手段】外科ツールがツール固有の電子シグネチャを有する電気導体素子を有している点で達成される。このツール固有の電子シグネチャを介して、ツールの一意の識別が可能である。したがって個々の外科ツールは、その外科ツールを一意に識別することができるシグネチャを有している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科ツール、特に電気外科ハンドヘルド器具、好ましくは切除鏡(10)のための電極(18)であって、前記ツールは前記ハンドヘルド器具に取外し可能に結合でき、かつ、HF発生器(20)に電気的に接続可能である、外科ツールにおいて、前記ツールの一意の識別を可能にするツール固有の電子シグネチャを有する電気導体素子(22)を特徴とする、外科ツール。
【請求項2】
前記電気導体素子(22)が前記ツールに直接配置され、好ましくは外壁に一体化されることを特徴とする、請求項1に記載の外科ツール。
【請求項3】
前記電気導体素子(22)が、前記ツールに電気エネルギーを供給するための電気線路(21)に一体化されるか、または前記線路と接触していることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科ツール。
【請求項4】
前記電気導体素子(22)が蛇行状構造(23)を有し、前記構造(23)が好ましくは長さおよび/または距離が異なる個々の数のループからなり、それによりツール固有の電子シグネチャを獲得し、前記ツールの一意の識別が可能であることを特徴とする、請求項1から3のいずれか1項に記載の外科ツール。
【請求項5】
前記電気導体素子(22)が好ましくは個別のエンボス(24)として前記ツール上に形成され、それによりツール固有の電子シグネチャを獲得し、前記ツールの一意の識別が可能であることを特徴とする、請求項1から4のいずれか1項に記載の外科ツール。
【請求項6】
前記電気導体素子(22)が好ましくは個別の放射特性を有するアンテナ(25)として設計され、それによりツール固有の電子シグネチャを獲得し、前記ツールの一意の識別が可能であることを特徴とする、請求項1から5のいずれか1項に記載の外科ツール。
【請求項7】
前記電気導体素子(22)がチップレスRFID素子として形成されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載の外科ツール。
【請求項8】
前記電気導体素子(22)が特に個別の構造(23)による特徴的な電気抵抗すなわちインピーダンスを有することを特徴とする、請求項1から7のいずれか1項に記載の外科ツール。
【請求項9】
前記ツールが単極ツールまたは双極ツールとして設計されていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか1項に記載の外科ツール。
【請求項10】
電気外科ハンドヘルド器具、好ましくは切除鏡(10)であって、前記電気外科ハンドヘルド器具に外科ツール、特に請求項1に記載の電極(18)を取外し可能に結合でき、前記ツールが近位端を使用してツールホルダ、特に電極ホルダ(15)の遠位端に結合可能であり、かつ、RF発生器(20)に接続可能である、電気外科ハンドヘルド器具。
【請求項11】
前記ツールホルダがコイル、好ましくはアンテナ(26)を有し、前記コイルを介して電磁パルス(29)、特に励起信号(27)を制御ユニット、好ましくは前記RF発生器(20)を介して放出できるように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の電気外科ハンドヘルド器具。
【請求項12】
請求項10に記載の電気外科ハンドヘルド器具のための、請求項1に記載の外科ツールを認識するための方法であって、前記ハンドヘルド器具に接続されたRF発生器(20)によって少なくとも1つの電磁パルス(29)、特に励起信号(27)が生成され、前記励起信号(27)が前記ツールの電気導体素子(22)によって受信され、かつ、特性または個別の出力信号(28)として反射または再放出され、前記出力信号(28)が前記RF発生器(20)によって受信されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記電気導体素子(22)によって放出または反射された前記信号(28)が解析され、かつ、前記ツールを認識するためにデータベース上に記憶されているツール識別データと照合されることを特徴とする、請求項12に記載の外科ツールを認識するための方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電磁パルス(29)が電気供給線路(21)、特にケーブルを介して前記ツールの前記電気導体素子(22)に供給され、かつ、好ましくはエンボス(24)、蛇行状構造(23)、またはチップレスRFID素子(24)である前記電気導体素子(22)で反射された前記信号が受信され、かつ、解析されることを特徴とする、請求項12または13に記載の外科ツールを検出するための方法。
【請求項15】
時間領域リフレクトメトリ(TDR)方法を使用して前記ツールの前記電気導体素子(22)の特徴的な特性が決定され、かつ、前記特徴的な特性が特定のツールと結合されることを特徴とする、請求項12から14のいずれか1項に記載の外科ツールを識別する方法。
【請求項16】
少なくとも1つの電磁パルス(29)が前記電気外科ハンドヘルド器具のコイルまたはアンテナ(26)に印加され、電磁信号(27)が前記コイルまたはアンテナ(26)によって放出され、前記信号が前記電気導体素子(22)によって受信され、かつ、再放出または反射されることを特徴とする、請求項12から15のいずれか1項に記載の外科ツールを検出する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1に記載されている外科ツールに関する。さらに、本発明は、請求項10に記載されているハンドヘルド電気外科器具、および請求項12に記載されている、外科ツールを認識するための方法に関する。
【0002】
電気外科ハンドヘルド器具、特にここに記載のタイプの切除鏡は、膀胱の部位、特に前立腺の部位における治療のために使用されることが好ましい。しかしながらこれらの器具を適用する分野はこれらの部位に限定されず、むしろ、好ましくはヒトの腹部に位置する他の臓器の治療をも含む。
【背景技術】
【0003】
罹患した臓器を治療するために、ハンドヘルド器具または切除鏡は、通常、患者の身体に挿入される細長いシャフトを有している。このシャフトの遠位端に様々な外科ツールを結合することができる。例えば高周波外科手術のための切除鏡は、高周波交流電流を受けることができる電極を有している。この電極は、外科手術のためにシャフト様電極キャリアの遠位端に取り付けられる。本明細書に記載のタイプの外科電極は、例えばループ、ボール、半球などの形態であってもよい。電極は、切除鏡の電極またはシャフトの近位端の電気導体を介して、対応する電極接点を介して無線周波数源すなわちRF発生器と接続することができる。
【0004】
単極または双極切除鏡上で使用するための様々なトランスポータが従来技術で知られている。双極切除鏡の場合、おそらくは高周波発生器の両方の極が切除鏡またはトランスポータに接続される。高周波電流を伝送しているRF線路またはRF電極すなわち能動電極に加えて、中性電極または中性導体、もしくは戻り電極または戻り導体が切除鏡の上に提供され、これは、治療されるべき組織に電流が導入された後、出力電流を高周波源に戻すか、または分流させる。能動電極および中性電極の電気接触は、2本の個別のケーブルによって実施することができ、または別法としてYケーブルによって、もしくはRF発生器に接続することができるツーエンデッドケーブルホイップによって、もしくは両方が1つのコネクタ上で接触する二芯ケーブルによって実施することができる。
【0005】
高周波外科手術のためのツール、すなわち高周波ツールまたは外科ツール、特に電極は、コンベアまたはキャリッジに結合またはラッチすることができる。電極は、しばしば、個々の治療後に交換しなければならない、いわゆる単回使用器具または使い捨て電極である。これまでのところ、このような電極にはロット番号が記されているが、このロット番号では、これらの電極を明確に識別することはできない。電極上または電極の中で直接的なツール識別は、それによって、使用される電極が器具と両立する電極であるかどうか、または電極がどのタイプの電極であるかを認識することができるが、この電極が既に使用済みであるかどうかは、この従来技術では分からない。特に電極の一意の識別は、ツールの製造ならびに適用のために極めて有用であり得る。例えばツールの明瞭な識別により、許可されていない複数使用を検出し、かつ、回避することができる。他の技術領域からアイテムを一意に識別する手段は、医療器具に課される要件ならびにそれらの寸法のため、適用することができない。例えばバーコードは、対象に一意に印を付け、かつ、対応する読取りデバイスによってそれらの対象を一意に識別する実際的な手段を表している。このような解決法は、ここに記載のツールのためには全く適していない。ツール上の限られた空間に加えて、小型化されたバーコードの読取りは、実装するのが技術的に困難であることも判明している。
【発明の概要】
【0006】
以上に鑑みて、本発明は、外科ツール、電気外科ハンドヘルド器具および外科ツールを識別するための方法を創出する問題に基づいており、この本発明により、単純で、かつ、明瞭な方法で外科ツールを識別することができる。
【0007】
このタスクを解決するための外科ツールは、請求項1の特徴を有している。したがってツール固有の電子シグネチャを有する電気導体素子を有する外科ツールが提供される。このツール固有の電子シグネチャを介して、ツールの一意の識別が可能である。したがって特許請求されるタイプの個々の外科ツールは、その外科ツールを一意に識別することができるシグネチャを有している。電気外科ハンドヘルド器具のための外科ツールは電気的に接触させることができるため、単純な方法で、ツールの電気導体素子によって与えられるシグネチャを読み出すことができる。この一意の識別により、タイプ、タイプおよび個々のツールを識別することができるだけでなく、このツールが既に使用済みであるかどうかを識別することができ、既に使用済みである場合、そのツールが再処理済みであるかどうかをも識別することができる。したがって技術的な観点から受け入れ難いツールの複数使用を回避することができ、したがって手術中における患者の安全性も向上する。
【0008】
好ましくは、ツールの上に直接配置され、好ましくは外壁の中に一体化される電気導体素子を提供することができる。ここに記載のタイプの知られているツールは、少なくともいくつかの領域にワイヤまたはロッド様導体を有している。電気導体素子はこのワイヤの外壁に配置されることを想定することができる。ツールが何らかのプレート様の形、すなわち平らな表面を有している限り、電気導体素子をこれらの表面にも配置することができる。同様に、電気導体素子は、例えば異なる電気特性すなわち導電率または抵抗を有する異なる材料を使用することによってツールの中に一体化されることを想定することができる。
【0009】
特に、電気導体素子は、ツールに電気エネルギーを供給するための電気線路の中に一体化されること、またはこの線路と接触することを想定することができる。したがって電気導体は、特許請求される電気導体素子が一体化され、かつ、ツールの明瞭な識別を可能にする点で、線路、特に内部線路を有することを完全に想定することができる。同様に、電気導体素子は、ツールを供給するための導体、好ましくは供給線路と電気接触することを想定することができる。いずれにせよツールには電気エネルギーが供給され、また、ツールはHF発生器と直接接触するため、これは特に有利である。供給導体との電気導体素子の非接触結合、すなわち容量性または誘導性結合も想定することができる。この場合、ツールは、供給線路またはHF発生器へのケーブルを介して、誘導的または容量的に一意に識別される。
【0010】
好ましくは他の実施形態例は、蛇行状構造を有する電気導体素子を備えており、この蛇行状構造は、好ましくは長さおよび/または距離が異なる個々の数のループからなっており、それによりツール固有の電子シグネチャを獲得し、したがってツールの一意の識別が可能である。個々のツール毎の蛇行の個々のループのループ数および/または長さおよび距離を変えることにより、それらを一意に識別することができる。特徴的な電気特性によって得られる一意の識別は、ツールを製造している間に決定され、データベースに記憶される。オペレータは、ツールが購入される際にこの情報を受け取る。ツールが使用されると、データが手動で、または例えばHF発生器であってもよいオペレーティングデバイスによって自動的に読み取られる。
【0011】
本発明の別の実施形態は、エンボスとして、好ましくは個別のエンボスとしてツール上に形成される電気導体素子を提供することができ、それによりツール固有の電子シグネチャが得られ、したがってツールの一意の識別が可能である。ツールをエンボス加工することにより、電気抵抗すなわちインピーダンスなどの電気特性を変えることができる。これらの変更された電気特性を読み取って識別することができる。次に、識別された特性すなわちシグネチャをすべてのツールのシグネチャが記憶されているデータベースと比較することができる。インプリントをわずかに変えることにより、対応する様々なツールに対して様々な異なる電子シグネチャを作り出すことができる。エンボスにおける最も小さい変化は異なる電子特性すなわちシグネチャをもたらすことが分かっている。
【0012】
さらに、好ましくは個別の放射特性を有するアンテナとして設計され、それによりツール固有の電子シグネチャを獲得し、したがってツールの一意の識別が可能である電気導体素子が、本発明の別の可能実施形態を表している。このアンテナは、例えば電気外科ハンドヘルド器具またはHF発生器から電磁波を受け取ることができる。ツールのサイズが小さく、数ミリメートルになり得るため、アンテナもそれに応じてサイズ設定しなければならない。したがって入力電磁放射および出力電磁放射としてテラヘルツ範囲の電磁波を考慮することができる。アンテナの個別の構造化により、アンテナは、励起されると、一意の電子シグネチャを表すことができる信号を放出する。このような放射の送信および受信は知られているため、外科ツールのこのような識別は特に単純であり、また、既存のシステムの中に容易に一体化することができる。
【0013】
さらに、特に有利な実施形態では、電気導体素子がチップレスRFID素子として設計される。このようなRFID素子は、特に安価で、製造が容易で、かつ、小型化が可能である。このような素子は、例えば、適切な構造化を介したレーザ技術によって型に適用することができる。最後に、チップレスRFID素子は、アンテナのように信号を受信し、かつ、それらの信号を修正された方法で再び送信する導電素子でもある。このタイプのコンポーネントは受動的であるため、追加エネルギー貯蔵が不要である。また、導電素子を直接ツールの中に一体化することにより、その導電素子の特性に影響を及ぼすことなく導電素子を処理することも可能である。
【0014】
冒頭で言及したタスクを解決するための電気外科ハンドヘルド器具は、請求項10によって説明されている。したがって請求項1に記載されているツールを備えたハンドヘルド器具が提供される。このツールは、電気外科ハンドヘルド器具のツールホルダ、特に電極ホルダの遠位端で近位端に解放可能に結合することができる。さらに、ハンドヘルド電気外科器具は、ツールに高周波AC電圧を供給するためにRF発生器に接続することができる。
【0015】
電気外科ハンドヘルド器具の好ましい実施形態は、コイル、好ましくはアンテナを備えたツールホルダを提供することができ、このアンテナを介して、制御ユニット、好ましくはRF発生器を介して電磁パルス、特に励起信号を放出することができる。このコイルはツールの直ぐ近くに配置される。ツールは、このコイルに対する相手側の素子として、対応する導体素子すなわちコイルを有することができる。コイルとツールの間が非常に近いため、ツール上の電気導体素子が受信することができる電磁波を生成するために必要な送信電力の量はごくわずかである。ツール上の電気導体素子すなわちコイルがツールホルダからの電磁波によって励起されると、ツールホルダのRF発生器またはコイルのいずれかによって受信される出力信号がツールから生成される。ツールの導電素子のツール固有の電子シグネチャは一意に識別することができる。そのためには制御ユニットによってツールの出力信号を解析しなければならない。信号のスペクトルはツールの電子指紋を表し、この電子指紋を制御ユニットに記憶されているデータベースと比較することができる。
【0016】
上で言及したタスクを解決するための外科ツールを認識するための方法は請求項12によって説明されている。したがって請求項10に記載されている電気外科ハンドヘルド器具のための、請求項1に記載されている外科ツールが認識される。本発明は、ハンドヘルド器具に接続されたRF発生器によって生成される少なくとも1つの電磁パルス、特に励起信号を提供し、この励起信号はツールの電気導体素子によって受信され、特性すなわち個別の出力信号として反射または再放出され、この出力信号はRF発生器によって受信される。RF発生器によって生成される信号は電気導体素子に合わされる。励起信号は、電気導体素子のタイプに応じて、電気パルスであっても、電流であっても、もしくは電磁波であってもよい。同様に、RF発生器によって特定のパルス幅を有する複数の連続するパルスが放出されることを想定することができる。電気導体素子によって反射すなわち戻され、または放出される信号は、特定のスペクトルすなわち特性スペクトルを有している。この信号は、対応する読取りユニットまたはRF発生器のアンテナによって受信され、かつ、解析される。例えばスペクトル解析を使用してツールの個々のシグネチャを識別することができる。
【0017】
HF発生器によって受信されたツールの出力信号または反射信号は、データベース上に記憶されている基準データと比較される。これらの基準データは、使用されるツールの記憶された認識データである。これにより、どのツールが使用されているのかを直接識別することができる。記憶されているデータに応じて、動作電圧などの動作パラメータをそのツールに対して自動的に設定することができる。同様に、オペレータは、このツールが既に使用済みであるか、および/または準備されたものであるかどうかを認識する。特殊な実施形態は、電気導体素子上に記憶されている、例えばツールのさらなる使用を示すために変更されるデータを提供することも可能である。
【0018】
本発明の好ましい実施形態は、電気供給導体、特にケーブルを介してツールの電気導体素子に供給される少なくとも1つの電磁パルスを提供することができ、好ましくはエンボス、蛇行状構造またはチップレスRFIDであってもよい電気導体素子で反射する、受信され、かつ、解析される信号を提供することができる。
【0019】
方法の別の有利な実施形態は、時間領域リフレクトメトリ(TDR)を使用してツールの導電素子の特徴的な特性が決定され、また、これらの特徴的な特性が特定のツールに割り当てられる方法を提供することができる。導電素子の特性についての正確な言及は、時間インターバルで受け取られ、かつ、導電素子から反射した電気パルスから引き出すことができる。導体構造毎に固有であるこれらの特性により、ツールを一意に識別することができる。導体構造における、または導電素子のタイプにおける最も小さい変化は、TDRによって正確な方法で決定することができる。
【0020】
また、電気外科ハンドヘルド器具のコイルすなわちアンテナは少なくとも1つの電磁パルスにさらされること、また、電磁信号はコイルすなわちアンテナによって放出され、電気導体素子によって受信されて再び放出されることをも想定することができる。ハンドヘルド器具のコイルすなわちアンテナは、RF発生器に対する電気導体と直接接触しているか、または電磁波を介してRF発生器によって同じく励起されるかのいずれかである。電磁パルスまたは電磁波の特性は、必要に応じて、HF発生器の制御ユニットを介して調整することができる。導電素子によって放出された信号は、今度はRF発生器の制御ユニットによって受け取られ、かつ、解析される。例えばスペクトル解析により、信号の中で輸送された情報を読み出すことができる。
【0021】
以下、高周波外科手術のための切除鏡の好ましい実施形態について、図面を参照してより詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】外科ツールを有するRF切除鏡の略図である。
図2】電気導体素子を有するツールの詳細拡大図である。
図3】電気導体素子の他の実施形態を有するツールの詳細拡大図である。
図4】電気導体素子の他の実施形態を有するツールの詳細拡大図である。
図5図2によるツールを検出するための方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
ハンドヘルド電気外科器具の例として切除鏡10が図1に示されている。このような切除鏡10は、本質的に、内部管12およびシャフト11を取外し可能に結合することができるトランスポータ13からなっている。光学系ユニット14および電極キャリア15は、いずれも内部管12の中に配置することができる。ここで示されている実施形態例では、電極キャリア15は内部管12の外壁に対して配置されている。光学系ユニット14は切除鏡10の長さ全体に沿って展開している。知られている実施形態では、光学系ユニット14はライトガイドまたはロッドレンズシステムによって形成されている。それにより外科医は、トランスポータ13に対して近位に配置された接眼レンズ19によって切除鏡10の遠位端の前方の部位を観察することができる。
【0024】
外科ツールは、電極サポート15の遠位端に取外し可能に取り付けられている。ここで示されている実施形態例では、ツールはループ様電極18として形成されている。しかしながら異なるツールが電極キャリア17に取り付けられること、または電極18が異なる形を有することをも想定することができる。電極18は電極キャリア15を介してスレッド16に接続されている。スレッド16は内部管12に沿って並進移動させることができる。切除鏡10の縦方向の軸に沿ったこの動きにより、処置されるべき組織を通して電極18を導くことができる。電極18にRF電圧を印加することによって組織が処置される。内部管12に沿った電極キャリア15の安定した支持ならびに動きのために、電極キャリア15は案内要素17によって支持され、または安定化される。
【0025】
電極18を動作させるための電気エネルギーすなわちHF電圧は発生器20によって提供される。このHF発生器20は、電気線路21を介して器具または切除鏡10もしくはトランスポータ13に接続されている。この電気線路21は、通常は、プラグ接続を介してトランスポータ13に接続されている。双極切除鏡10では、電極18は、2本の電気線路21、すなわちRF線路および中性線路または電極を介して発生器20に接続される。例えば単極切除鏡10では、中性電極は患者の身体によって形成される。本明細書において説明されているタイプの切除鏡10の動作および構造に関するさらなる詳細については、関連する従来技術を参照されたい。
【0026】
本発明によれば、個々のそれぞれの電極18は、電極18を認識すなわち識別するための電気導体素子22を備えている。この電気導体素子22は、個々の電極18に対して固有で、唯一無二であり、したがって個々の電極18を一意に識別することができる。図2には切除鏡10の遠位端の断面拡大図が示されている。ここでは電極18は、近位端を使用して電極ホルダ15の遠位端に差し込まれている。電極18は、このプラグイン接続を介して、機械的ならびに電気的に電極キャリア15に結合されている。電極18は、図には示されていないが電極キャリア15の内部導体にのみ電気接続されており、一方、電極キャリア15の外壁は電極18から電気的に絶縁されている。
【0027】
図2に示されている電極18の上には、電気導体素子22の極端に概略化ならびに例示化された形態の可能実施形態が示されている。この電気導体素子22は、電極18の表面に直接配置されるか、または絶縁体によって電極18から絶縁されるかのいずれかである電気導体構造23であってもよい。ここで示されている例示的導体構造23は、可変長さおよび幅の複数のループの蛇行(波形)を表している。ループの数を変え、また、これらのループの長さおよび幅を変えることにより、個々の導体構造23は個別の電子特性を示す。
【0028】
電気導体素子22は電極キャリア15を介してRF発生器20に電気接続されている。電気導体素子22の電気導体構造23はツール固有の形状ならびに特性形状を有しているため、電気導体構造23は、特徴的な電気抵抗などの独特の電気特性をも有している。この電気抵抗は、電気導体21および発生器20を介して決定することができる。そのために、RF発生器20は対応する制御ユニットならびに対応する測定デバイスを有している。電気抵抗の決定は、例えば切除鏡10を操作している間に実施することができ、または切除鏡10が取り外されてから実施することができる。例えば、外科手順を開始する前に電極18が電極キャリア15の中に挿入され、また、電気導体素子22が発生器20によって読み出されることを想定することができる。発生器20の制御ユニットは、利用可能なすべてのツールまたは電極18の電気シグネチャが記憶されているデータベースを有することができる。オペレータは、データ比較を介して、どの電極18が含まれているか、また、どのデータがこの電極18のために記憶されているかを学習する。
【0029】
本発明の別の実施形態では、図3による電極18は個別のエンボス24を有している。このエンボス24は電極18の電気特性をわずかに変化させ、ツール固有の電子シグネチャをもたらす。このシグネチャは、図2による実施形態例に対して既に正確に説明したように、発生器20の制御ユニットまたは測定ユニットによって読み出すことができる。例えば個別のエンボスパターンの形および数を変えることによってエンボス24を変化させることにより、電極18を一意に識別するための複数の異なるエンボスシグネチャを作ることができる。特許請求される電気導体素子22のこの実施形態は、多くの努力を必要とすることなく、電極18の上に直接電気導体素子22を作ることができるため、特に有利である。電極18の電気特性を発生器20のデータベースに適切に記憶することにより、この実施形態例ではデータ比較によって同じく電極18を一意に識別することができる。
【0030】
図4に示されている概略実施形態では、電気導体素子22はコイルすなわちアンテナ25として形成されている。このアンテナ25は電極18から電気的に絶縁されている。このアンテナ25は、レーザによって電極18の中にエッチングされるか、または電極18の材料の中に書き込まれ、もしくはアンテナプレートとして電極18に加えられることを想定することができる。同様に、アンテナ25は電極18の表面にスタンプされることを想定することができる。それに応じてアンテナ25を構造化することにより、様々な情報をアンテナ25の上に記憶することができる。この情報は、例えばタイプおよび性質、タイプ、認識番号、ならびに適用領域(field of application)であってもよい。このアンテナ25を読み出すために、または励起するために、コイルすなわちアンテナ26が電極キャリア15の遠位端と結合されている。このアンテナ26は、今度は発生器20に接続されている。励起信号27は、発生器20の制御ユニットを介してアンテナ26によって生成することができる。この励起信号27はアンテナ25によって受信され、また、出力信号28として再送信される。この出力信号28は固有であり、上記の情報を含むことができる。出力信号28は、アンテナ26または発生器20内の対応する受信ユニットのいずれかによって受信し、読み出すことができる。
【0031】
アンテナ26は、例えばチップレスRFIDコンポーネントであってもよい。別法としては、チップを有する、すなわちデータキャリアを有するRFIDコンポーネントが使用されることをも想定することができる。サイズが極めて小さく、また、電極18を一意に識別することができるようにするために十分な量のデータを記憶することができるため、チップレスRFIDコンポーネントの使用は特に有利である。
【0032】
図5は、電極18を検出するための方法の別の実施形態を示したものである。ここでは、発生器20または制御ユニットは、電磁パルス29、または複数のパルス29を含むパルス列を生成しており、この電磁パルス29は、図2に示されている電気導体素子22に印加される。このパルス29は、導電素子22の上に衝突して、導電構造23に応じて個別に修正され、かつ、反射される。反射したこれらの出力信号28は電気線路21を介して発生器20にフィードバックされ、そこで読み出される。この時間領域リフレクトメトリ(TDR)では、幅が数nsのパルスが使用される。これらのパルス29の間隔は十分に広く、したがってパルス29および出力信号28が重畳することはない。パルス29および出力信号28が異なる線路を介して経路化される実施形態を想定することができる。これは、同軸ケーブルを有する双極切除鏡10のために特に適している。
【符号の説明】
【0033】
10 切除鏡
11 シャフト
12 内部管
13 トランスポータ
14 光学ユニット
15 電極キャリア
16 スレッド
17 案内要素
18 電極
19 接眼レンズ
20 発生器
21 電気線路
22 電気導体素子
23 電気導体構造
24 エンボス
25 アンテナ
26 アンテナ
27 電磁信号
28 信号
29 パルス
図1
図2
図3
図4
図5
【手続補正書】
【提出日】2023-08-15
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外科ツール、特に電気外科ハンドヘルド器具、好ましくは切除鏡(10)のための電極(18)であって、前記ツールは前記ハンドヘルド器具に取外し可能に結合でき、かつ、HF発生器(20)に電気的に接続可能である、外科ツールにおいて、前記ツールの一意の識別を可能にするツール固有の電子シグネチャを有する電気導体素子(22)を特徴とする、外科ツール。
【請求項2】
前記電気導体素子(22)が前記ツールに直接配置され、好ましくは外壁に一体化されることを特徴とする、請求項1に記載の外科ツール。
【請求項3】
前記電気導体素子(22)が、前記ツールに電気エネルギーを供給するための電気線路(21)に一体化されるか、または前記線路と接触していることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科ツール。
【請求項4】
前記電気導体素子(22)が蛇行状構造(23)を有し、前記構造(23)が好ましくは長さおよび/または距離が異なる個々の数のループからなり、それによりツール固有の電子シグネチャを獲得し、前記ツールの一意の識別が可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科ツール。
【請求項5】
前記電気導体素子(22)が好ましくは個別のエンボス(24)として前記ツール上に形成され、それによりツール固有の電子シグネチャを獲得し、前記ツールの一意の識別が可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科ツール。
【請求項6】
前記電気導体素子(22)が好ましくは個別の放射特性を有するアンテナ(25)として設計され、それによりツール固有の電子シグネチャを獲得し、前記ツールの一意の識別が可能であることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科ツール。
【請求項7】
前記電気導体素子(22)がチップレスRFID素子として形成されることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科ツール。
【請求項8】
前記電気導体素子(22)が特に個別の構造(23)による特徴的な電気抵抗すなわちインピーダンスを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の外科ツール。
【請求項9】
前記ツールが単極ツールまたは双極ツールとして設計されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の外科ツール。
【請求項10】
電気外科ハンドヘルド器具、好ましくは切除鏡(10)であって、前記電気外科ハンドヘルド器具に外科ツール、特に請求項1に記載の電極(18)を取外し可能に結合でき、前記ツールが近位端を使用してツールホルダ、特に電極ホルダ(15)の遠位端に結合可能であり、かつ、RF発生器(20)に接続可能である、電気外科ハンドヘルド器具。
【請求項11】
前記ツールホルダがコイル、好ましくはアンテナ(26)を有し、前記コイルを介して電磁パルス(29)、特に励起信号(27)を制御ユニット、好ましくは前記RF発生器(20)を介して放出できるように構成されていることを特徴とする、請求項10に記載の電気外科ハンドヘルド器具。
【請求項12】
請求項10に記載の電気外科ハンドヘルド器具のための、請求項1に記載の外科ツールを認識するための方法であって、前記ハンドヘルド器具に接続されたRF発生器(20)によって少なくとも1つの電磁パルス(29)、特に励起信号(27)が生成され、前記励起信号(27)が前記ツールの電気導体素子(22)によって受信され、かつ、特性または個別の出力信号(28)として反射または再放出され、前記出力信号(28)が前記RF発生器(20)によって受信されることを特徴とする、方法。
【請求項13】
前記電気導体素子(22)によって放出または反射された前記信号(28)が解析され、かつ、前記ツールを認識するためにデータベース上に記憶されているツール識別データと照合されることを特徴とする、請求項12に記載の外科ツールを認識するための方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの電磁パルス(29)が電気供給線路(21)、特にケーブルを介して前記ツールの前記電気導体素子(22)に供給され、かつ、好ましくはエンボス(24)、蛇行状構造(23)、またはチップレスRFID素子(24)である前記電気導体素子(22)で反射された前記信号が受信され、かつ、解析されることを特徴とする、請求項12に記載の外科ツールを検出するための方法。
【請求項15】
時間領域リフレクトメトリ(TDR)方法を使用して前記ツールの前記電気導体素子(22)の特徴的な特性が決定され、かつ、前記特徴的な特性が特定のツールと結合されることを特徴とする、請求項12に記載の外科ツールを識別する方法。
【請求項16】
少なくとも1つの電磁パルス(29)が前記電気外科ハンドヘルド器具のコイルまたはアンテナ(26)に印加され、電磁信号(27)が前記コイルまたはアンテナ(26)によって放出され、前記信号が前記電気導体素子(22)によって受信され、かつ、再放出または反射されることを特徴とする、請求項12から15のいずれか1項に記載の外科ツールを検出する方法。
【外国語明細書】