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特開2023-184499シリコーン組成物、放熱部材、及び電子機器
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184499
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】シリコーン組成物、放熱部材、及び電子機器
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20231221BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231221BHJP
   C08L 83/05 20060101ALI20231221BHJP
   C09K 5/14 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C08L83/07
C08K3/013
C08L83/05
C09K5/14 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099088
(22)【出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2022098433
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100129746
【弁理士】
【氏名又は名称】虎山 滋郎
(72)【発明者】
【氏名】乾 靖
(72)【発明者】
【氏名】西澤 英人
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CP033
4J002CP042
4J002CP053
4J002CP121
4J002DA016
4J002DA026
4J002DA036
4J002DB007
4J002DE077
4J002DE086
4J002DE096
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DF016
4J002DJ016
4J002DK006
4J002DM006
4J002EC019
4J002EX018
4J002EX048
4J002EX068
4J002EX078
4J002EX088
4J002GQ00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】熱伝導性を高めつつ、柔軟性を良好にし、かつ低温における硬化速度が向上したシリコーン組成物を提供する。
【解決手段】(a1)分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(b)分子鎖両末端のみにケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(c)熱伝導性充填材と、(d)硬化触媒と、を含有し、アルケニル基の数に対する、ケイ素原子に直接結合した水素原子の数の比(H/Vi)が、0.5以上1.5以下の範囲である、シリコーン組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a1)分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、
(b)分子鎖両末端のみにケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、
(c)熱伝導性充填材と、
(d)硬化触媒と、を含有し、
アルケニル基の数に対する、ケイ素原子に直接結合した水素原子の数の比(H/Vi)が、0.5以上1.5以下の範囲である、シリコーン組成物。
【請求項2】
さらに(a2)分子鎖両末端のみにアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有する、請求項1に記載のシリコーン組成物。
【請求項3】
前記(a1)成分において、分子鎖側鎖のアルケニル基の数が1~10個である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項4】
ケイ素原子に直接結合した水素原子の数に対する、分子鎖末端のケイ素原子に直接結合した水素原子の数の比(末端のSi-H/全Si-H)が0.5以上である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項5】
付加反応基を有さない有機ケイ素化合物を含有する、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項6】
前記付加反応基を有さない有機ケイ素化合物が、(e)付加反応基を有さないオルガノポリシロキサン、及び(f)シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項5に記載のシリコーン組成物。
【請求項7】
前記付加反応基を有さない有機ケイ素化合物が、分子鎖末端に加水分解性シリル基を有する有機ケイ素化合物である、請求項5に記載のシリコーン組成物。
【請求項8】
前記(e)成分として、(e-1)分子鎖末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンを含有する、請求項6に記載のシリコーン組成物。
【請求項9】
前記(e)成分として、以下の式(1)で表される化合物、及び以下の式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項6に記載のシリコーン組成物。
【化1】
【化2】
式(1)及び(2)それぞれにおいて、Rはそれぞれ独立に炭素原子数が1~20のアルキル基、炭素原子数が1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基のいずれであり、各式において複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基であり、各式においてRが複数の場合は、該複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基、及び炭素原子数2~4のアシル基のいずれかであり、各式においてRが複数の場合は、該複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~8のアルキル基である。式(1)においてRはそれぞれ独立に炭素原子数2~20の二価の炭化水素基であり、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。式(2)においてRは酸素原子又は炭素原子数2~20の二価の炭化水素基である。式(1)、(2)それぞれにおいて、aは0~2の整数である。式(1)においてnは4~150の整数であり、式(2)においてmは15~315の整数である。
【請求項10】
シリコーン組成物に含まれるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が、20mPa・s以上100,000mPa・s以下である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項11】
前記(c)熱伝導性充填材の含有量が、シリコーン組成物に含有されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して、1000質量部以上4000質量部以下である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項12】
前記(d)硬化触媒の含有量が、0.1質量ppm以上500質量ppm以下である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項13】
(g)硬化抑制剤をさらに含有する、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項14】
前記(c)熱伝導性充填材が、酸化物、窒化物、炭化物、炭素系材料、及び金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項15】
前記(c)熱伝導性充填材が、アルミナ、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項16】
前記(c)熱伝導性充填材の一次粒子の平均粒子径が0.1μm以上である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項17】
前記(c)の熱伝導性充填材が、一次粒子の平均粒子径の異なる2種以上の粒子を含有する、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項18】
シリコーン組成物を硬化して得られた硬化物のタイプE硬度が70未満である、請求項1又は2に記載のシリコーン組成物。
【請求項19】
請求項1又は2に記載のシリコーン組成物より形成された放熱部材。
【請求項20】
電子部品と前記電子部品の上に配置される請求項19に記載の放熱部材とを含む電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコーン組成物、該組成物により形成された放熱部材、及び該放熱部材を備える電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子機器においては、集積された電子部品が熱を発生し、故障の原因となるため、電子部品から発生する熱を機器外部に放熱するための放熱部材が広く使用されている。放熱部材は、例えば、電子部品などの発熱体と、筐体やヒートシンクなどの放熱体の間に配置される。放熱部材としては、例えば、特許文献1~3に開示されるように、シリコーン樹脂と熱伝導性充填材とを含有するシリコーン組成物を硬化して形成することが多い。
近年、放熱部材は、電気機器の小型化及び高性能化に伴い、駆動に伴い発生する熱を効率よく放散させるために、熱伝導性を高めることが求められている。熱伝導性を高めるためには、熱伝導性充填材の充填率を高めることが検討されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-53140号公報
【特許文献2】特開2005-15679号公報
【特許文献3】特開2009-292928号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱伝導性充填材の充填率を高めると、硬化前のコンパウンドの粘度が高くなって流動性が低下したり、硬化後に硬度が高くなって、周辺の電子部品への応力が高くなり、電子部品を損傷させたりすることがある。また、硬化促進の観点から、シリコーン組成物を高温下で硬化させることがあるが、電子部材と放熱部材(シリコーン組成物の硬化物)の熱膨張性係数の違いから、放熱部材が剥離しやすくなり、放熱性能が低下する懸念がある。そのため、低温においても硬化速度の速いシリコーン組成物が望まれる。
【0005】
従来のシリコーン組成物では、熱伝導性充填材を高充填にする際の不具合を解消するための様々な検討がなされている。例えば、特許文献1では、脂肪族不飽和炭化水素基を有するオルガノポリシロキサン、オルガノハイドロジェンポリシロキサン、熱伝導性充填材などを含み、かつケイ素原子に直接結合した水素原子の数と脂肪族不飽和炭化水素基の数の比などを一定範囲としたシリコーン組成物が提案されている。そして、該組成物によれば、熱伝導性充填剤を多量に含有しても良好な接着性を有することが記載されている。
しかし、従来のシリコーン組成物では、熱伝導性を高めつつ、柔軟性を良好とし、かつ低温における硬化速度を向上させることは難しい。
【0006】
そこで、本発明は、得られる放熱部材の熱伝導性を高めつつ、柔軟性を良好にし、かつ低温における硬化速度が向上したシリコーン組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討した。その結果、分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、分子鎖両末端のみにケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンとを含有し、かつ組成物中のSi-Hとアルケニル基の比を一定にすることで、上記課題が解決できることを見出し、以下の本発明を完成させた。
本発明は、以下の[1]~[20]を提供する。
【0008】
[1](a1)分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンと、(b)分子鎖両末端のみにケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンと、(c)熱伝導性充填材と、(d)硬化触媒と、を含有し、アルケニル基の数に対する、ケイ素原子に直接結合した水素原子の数の比(H/Vi)が、0.5以上1.5以下の範囲である、シリコーン組成物。
[2]さらに(a2)分子鎖両末端のみにアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有する、上記[1]に記載のシリコーン組成物。
[3]前記(a1)成分において、分子鎖側鎖のアルケニル基の数が1~10個である、上記[1]又は[2]に記載のシリコーン組成物。
[4]ケイ素原子に直接結合した水素原子の数に対する、分子鎖末端のケイ素原子に直接結合した水素原子の数の比(末端のSi-H/全Si-H)が0.5以上である、上記[1]~[3]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[5]付加反応基を有さない有機ケイ素化合物を含有する、上記[1]~[4]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[6]前記付加反応基を有さない有機ケイ素化合物が、(e)付加反応基を有さないオルガノポリシロキサン、及び(f)シランカップリング剤からなる群から選択される少なくとも1種である、上記[5]に記載のシリコーン組成物。
[7]前記付加反応基を有さない有機ケイ素化合物が、分子鎖末端に加水分解性シリル基を有する有機ケイ素化合物である、上記[5]又は[6]に記載のシリコーン組成物。
[8]前記(e)成分として、(e-1)分子鎖末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンを含有する、上記[6]に記載のシリコーン組成物。
[9]前記(e)成分として、以下の式(1)で表される化合物、及び以下の式(2)で表される化合物からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[6]に記載のシリコーン組成物。
【化1】
【化2】
式(1)及び(2)それぞれにおいて、Rはそれぞれ独立に炭素原子数が1~20のアルキル基、炭素原子数が1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基のいずれであり、各式において複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基であり、各式においてRが複数の場合は、該複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基、及び炭素原子数2~4のアシル基のいずれかであり、各式においてRが複数の場合は、該複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~8のアルキル基である。式(1)においてRはそれぞれ独立に炭素原子数2~20の二価の炭化水素基であり、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。式(2)においてRは酸素原子又は炭素原子数2~20の二価の炭化水素基である。式(1)、(2)それぞれにおいて、aは0~2の整数である。式(1)においてnは4~150の整数であり、式(2)においてmは15~315の整数である。
[10]シリコーン組成物に含まれるアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンの23℃における粘度が、20mPa・s以上100,000mPa・s以下である、上記[1]~[9]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[11]前記(c)熱伝導性充填材の含有量が、シリコーン組成物に含有されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して、1000質量部以上4000質量部以下である、上記[1]~[10]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[12]前記(d)硬化触媒の含有量が、0.1質量ppm以上500質量ppm以下である、上記[1]~[11]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[13](g)硬化抑制剤をさらに含有する、上記[1]~[12]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[14]前記(c)熱伝導性充填材が、酸化物、窒化物、炭化物、炭素系材料、及び金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上である、上記[1]~[13]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[15]前記(c)熱伝導性充填材が、アルミナ、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上である、上記[1]~[14]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[16]前記(c)熱伝導性充填材の一次粒子の平均粒子径が0.1μm以上である、上記[1]~[15]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[17]前記(c)の熱伝導性充填材が、一次粒子の平均粒子径の異なる2種以上の粒子を含有する、上記[1]~[16]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[18]シリコーン組成物を硬化して得られた硬化物のタイプE硬度が70未満である、上記[1]~[17]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物。
[19]上記[1]~[18]のいずれか1項に記載のシリコーン組成物より形成された放熱部材。
[20]電子部品と前記電子部品の上に配置される上記[19]に記載の放熱部材とを含む電子機器。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、熱伝導性を高めつつ、柔軟性を良好にし、かつ低温における硬化速度が向上したシリコーン組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[シリコーン組成物]
以下、本発明のシリコーン組成物について詳しく説明する。
本発明のシリコーン組成物は、以下の(a1)成分、(b)成分、(c)成分、及び(d)成分を有するものである。また、本発明のシリコーン組成物は、以下の(e)成分及び(f)成分の少なくともいずれかを含有することが好ましい。以下、各成分について詳細に説明する。
【0011】
<(a1)成分>
(a1)成分は、分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンである。シリコーン組成物は、(a1)成分を含有することで、後述するオルガノハイドロジェンポリシロキサン((b)成分)と付加反応することで、シリコーン組成物を硬化させることができる。(a1)成分及び後述する(b)成分は、それぞれ末端に官能基を有しているため反応しやすく、低温(室温~50℃程度)における硬化速度が速くなる。
【0012】
(a1)成分として使用されるオルガノポリシロキサンは、直鎖状でも分岐状であってもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば炭素数2~8のものが挙げられ、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などが挙げられ、これらの中では合成の容易性、反応性の観点などから、ビニル基が好ましい。また、アルケニル基は、ケイ素原子に直接結合したアルケニル基であるとよい。
【0013】
(a1)成分は、分子鎖の両末端及び側鎖にアルケニル基を有するため、一分子中のアルケニル基の数は3個以上となる。
(a1)成分において一分子中の側鎖のアルケニル基の数は、シリコーン組成物の硬化性向上の観点から、1個以上であり、そしてシリコーン組成物の硬化物が硬くなりすぎることを防止する観点から、好ましくは20個以下であり、より好ましくは15個以下であり、さらに好ましくは10個以下である。
【0014】
(a1)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合する残余の基としては、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。置換基を有してもよい炭化水素基としては、炭素原子数が1~20程度のものが挙げられ、具体的には、炭素原子数が1~20のアルキル基、炭素原子数が1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基などが挙げられる。
アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、環状構造を有してもよい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、2-メチルウンデシル基、1-ヘキシルヘプチル基等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の環状アルキル基が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基としては、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)プロピル基等が挙げられる。
これらのうち、アルキル基が好ましく、合成のし易さなどの観点からメチル基が好ましい。また、ケイ素原子に結合する残余の基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがより好ましく、100モル%がメチル基であることがさらに好ましい。なお、(a1)成分は、ケイ素原子に結合する残余の基として、水素原子を有さず、すなわち、(a1)成分は、ヒドロシリル基を含有しないとよい。
【0015】
(a1)成分としては、具体的には、以下の式(A1)で表される化合物が挙げられる。
【化3】
【0016】
式(A1)において、R11はそれぞれ独立にアルケニル基以外の置換基を有してもよい炭化水素基である。R12はそれぞれ独立にアルケニル基である。置換基を有してもよい炭化水素基、及びアルケニル基の詳細は上記の通りである。R11としては、アルキル基が好ましく、中でもメチル基がより好ましく、式(A1)のR11のうち80%以上がメチル基であることが好ましく、90%以上がメチル基であることがより好ましく、100%がメチル基であることがさらに好ましい。R12はビニル基が好ましい。
式(A1)において、pは繰り返し単位の数であり、例えば1~20の整数、好ましくは1~15の整数、より好ましくは1~10の整数である。また、qは繰り返し単位の数であり、1以上の整数であるが、23℃における粘度が後述する範囲内となるような繰り返し単位の数になるとよく、例えば20~1500程度である。
式(A1)において、-SiR1112O-で表される構成単位と、-SiR1111O-で表される構成単位は、ランダムに重合されてもよいし、ブロックで重合されてもよい。
(a1)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
(a1)成分の23℃における粘度は、特に限定されないが、好ましくは20mPa・s以上100,000mPa・s以下である。(a1)成分の粘度を上記下限値以上とすることで、硬化物において架橋密度が高くなりすぎることを防止して、硬化後の柔軟性を維持しやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、シリコーン組成物が高粘度となることを防止できる。さらに、粘度を上記範囲内とすることで、(a1)成分の分子量を適度な大きさにして反応性を適切にしやすくなる。(a1)成分の23℃における粘度は、より好ましくは40mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは60mPa・s以上1,000mPa・s以下である。
なお、(a1)成分の23℃における粘度は、ブルックフィールドB型粘度計により測定することができる。ブルックフィールドB型粘度計において、スピンドルはトルクが10~80%となるよう適切に選択して用いるとよい。後述する(a2)成分、(b)成分の各粘度についても同様である。
【0018】
(a1)成分の含有量は、後述する比(H/Vi)などを所望の範囲内に調整できるように適宜選択すればよく、特に限定されないが、シリコーン組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量に対して、例えば5質量%以上80質量%以下、好ましくは10質量%以上60質量%以下、より好ましくは15質量%以上50質量%以下である。
【0019】
<(a2)成分>
本発明のシリコーン組成物は、(a2)分子鎖両末端のみにアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンを含有してもよい。(a2)成分を用いることで、低温での硬化速度を高めやすくなり、また柔軟性と伸びをより高めることができる。柔軟性が高まることで、シリコーン組成物の硬化物の発熱体及び放熱体との密着性などが良好となり、熱抵抗値が長期間低く維持され、長期信頼性が向上する。
(a2)成分として使用されるオルガノポリシロキサンは、直鎖状でも分岐状であってもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば炭素数2~8のものが挙げられ、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基などが挙げられ、これらの中では合成の容易性、反応性の観点などから、ビニル基が好ましい。また、アルケニル基は、ケイ素原子に直接結合したアルケニル基であるとよい。
(a2)成分は、分子鎖両末端のみにアルケニル基を有するため、一分子中のアルケニル基の数は2個である。
【0020】
(a2)成分のオルガノポリシロキサンにおいて、アルケニル基以外のケイ素原子に結合する残余の基としては、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。置換基を有してもよい炭化水素基としては、炭素原子数が1~20程度のものが挙げられ、具体的には、炭素原子数が1~20のアルキル基、炭素原子数が1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基などが挙げられる。アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、アラルキル基の詳細は、上記(a1)成分で述べたとおりである。
残余の基としては、アルキル基が好ましく、合成のし易さなどの観点からメチル基が好ましい。また、ケイ素原子に結合する残余の基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがより好ましく、100モル%がメチル基であることがさらに好ましい。なお、(a2)成分は、ケイ素原子に結合する残余の基として、水素原子を有さず、すなわち、(a2)成分は、ヒドロシリル基を含有しないとよい。
【0021】
(a2)成分としては、具体的には、以下の式(A2)で表される化合物が挙げられる。
【化4】
【0022】
式(A2)において、R16はそれぞれ独立にアルケニル基以外の置換基を有してもよい炭化水素基である。R17はそれぞれ独立にアルケニル基である。置換基を有してもよい炭化水素基、及びアルケニル基の詳細は上記の通りである。R16としては、アルキル基が好ましく、中でもメチル基がより好ましく、式(A2)のR16のうち80%以上がメチル基であることが好ましく、90%以上がメチル基であることがより好ましく、100%がメチル基であることがさらに好ましい。R17はビニル基が好ましい。
式(A2)において、vは繰り返し単位の数であり、1以上の整数であるが、23℃における粘度が後述する範囲内となるような繰り返し単位の数になるとよく、例えば20~1500程度である。
(a2)成分のオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0023】
(a2)成分の23℃における粘度は、特に限定されないが、好ましくは20mPa・s以上100,000mPa・s以下である。(a2)成分の粘度を上記下限値以上とすることで、硬化物において架橋密度が高くなりすぎることを防止して、硬化後の柔軟性を維持しやすくなる。また、上記上限値以下とすることで、シリコーン組成物が高粘度となることを防止できる。さらに、粘度を上記範囲内とすることで、(a2)成分の分子量を適度な大きさにして反応性を適切にしやすくなる。(a2)成分の23℃における粘度は、より好ましくは40mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは60mPa・s以上1,000mPa・s以下である。
【0024】
(a2)成分を用いる場合において、(a2)成分の含有量は、後述する比(H/Vi)などを所望の範囲内に調整できるように適宜選択すればよい。(a2)成分の含有量は、特に限定されないが、シリコーン組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量に対して、例えば1質量%以上30質量%以下、好ましくは3質量%以上30質量%以下、より好ましくは5質量%以上25質量%以下である。
なお、(a2)成分は、本発明のシリコーン組成物において必須の成分ではないため、オルガノポリシロキサン全量に対して0質量%であってもよい。
【0025】
<(b)成分>
(b)成分は、分子鎖両末端のみにケイ素原子に直接結合した水素原子(以下、「Si-H」ということがある)を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。すなわち、(b)成分は、分子鎖側鎖にSi-Hを有さない。
本発明のシリコーン組成物は、上記した(a1)成分及び(b)成分を含有することで、鎖延長及び架橋しながら硬化することが可能である。そして、(a1)成分及び(b)成分は共に末端に官能基(アルケニル基又はSi-H)を有するため、反応性が高く、低温での硬化速度が向上する。また、(b)成分は分子鎖両末端にのみSi-Hを有し、側鎖にSi-Hを有しないため、過度に架橋しすぎず、(c)熱伝導性充填材を高充填しても、硬化後の柔軟性を確保することができる。
【0026】
(b)成分として使用されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、直鎖状でも分岐状であってもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0027】
(b)成分において、Si-H以外のケイ素原子に結合する残余の基としては、置換基を有してもよい炭化水素基が挙げられる。置換基を有してもよい炭化水素基としては、炭素原子数が1~20程度のものが挙げられ、具体的には、炭素原子数が1~20のアルキル基、炭素原子数が1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基などが挙げられる。アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基、及びアラルキル基の詳細は、上記(a1)成分で述べたとおりである。
残余の基としては、アルキル基が好ましく、合成のし易さなどの観点からメチル基が好ましい。また、ケイ素原子に結合する残余の基のうち、80モル%以上がメチル基であることが好ましく、90モル%以上がメチル基であることがより好ましく、100モル%がメチル基であることがさらに好ましい。
なお、(b)成分は、ケイ素原子に結合する残余の基として、アルケニル基を有さず、すなわち、(b)成分は、アルケニル基を含有しないものであるとよい。
【0028】
(b)成分としては、具体的には、以下の式(B)で表される化合物が挙げられる。
【化5】
【0029】
式(B)において、R13はそれぞれ独立に、置換基を有してもよい炭化水素基である。置換基を有してもよい炭化水素基の詳細は上記の通りである。R13としては、アルキル基が好ましく、中でもメチル基がより好ましい。そして、式(B)のR13のうち80%以上がメチル基であることが好ましく、90%以上がメチル基であることがより好ましく、100%がメチル基であることがさらに好ましい。
式(B)において、sは繰り返し単位の数であり、1以上の整数であるが、23℃における粘度が後述する範囲内となるような数になるとよく、例えば20~1500程度である。
(b)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0030】
(b)成分の23℃における粘度は、特に限定されないが、好ましくは20mPa・s以上100,000mPa・s以下である。(b)成分の粘度を上記範囲内とすることで、架橋密度が高くなりすぎることを防止して、硬化後の柔軟性を維持しつつ、シリコーン組成物が高粘度となることを防止できる。さらに、粘度を上記範囲内とすることで、(b)成分の分子量を適度な大きさにして反応性を適切にしやすくなる。(b)成分の23℃における粘度は、より好ましくは30mPa・s以上10,000mPa・s以下、さらに好ましくは40mPa・s以上1,000mPa・s以下である。
【0031】
(b)成分の含有量は、後述する比(H/Vi)、比(末端のSi-H/全Si-H)などを所望の範囲内に調整できるように適宜選択すればよく、特に限定されない。(b)成分の含有量は、シリコーン組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量に対して、例えば20質量%以上95質量%、好ましくは25質量%以上90質量%以下、より好ましくは30質量%以上80質量%以下である。
【0032】
<(c)成分>
(c)成分は熱伝導性充填材である。シリコーン組成物は、熱伝導性充填材を含有することでシリコーン組成物、およびシリコーン組成物を硬化してなる硬化物(放熱部材)の熱伝導性が向上する。
(c)熱伝導性充填材としては、特に限定されないが、酸化物、窒化物、炭化物、炭素系材料、及び金属水酸化物からなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
酸化物としては、例えば、酸化鉄、酸化亜鉛、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化セリウム、酸化ジルコニウムなどの金属酸化物、酸化ケイ素(シリカ)などの金属酸化物以外の酸化物が挙げられる。
窒化物としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化ガリウム、窒化クロム、窒化タングステン、窒化マグネシウム、窒化モリブデン、窒化リチウムなどの金属窒化物、窒化ケイ素、窒化ホウ素など金属窒化物以外の窒化物が挙げられる。
炭化物としては、例えば、炭化アルミニウム、炭化チタン、炭化タングステンなどの金属炭化物、炭化ケイ素、炭化ホウ素などの金属炭化物以外の炭化物が挙げられる。
炭素系材料としては、例えば、ダイヤモンド粒子、カーボンブラック、黒鉛、グラフェン、フラーレン、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバーなどが挙げられる。
金属水酸化物としては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウムなどが挙げられる。
これら、熱伝導性充填材は、単独で使用してもよいし、2種類以上併用してもよい。
熱伝導性充填材としては、上記した中でも、熱伝導性を向上させ易い観点から、アルミナ、ダイヤモンド、及び窒化アルミニウムからなる群から選択される少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0033】
(c)熱伝導性充填材の一次粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.1μm以上であることが好ましい。0.1μm以上とすることで、シリコーン組成物の熱伝導性を高くしやすくなり、シリコーン組成物の粘度を低くしやすくなる。(c)熱伝導性充填材の一次粒子の平均粒子径は、0.2μm以上であることがより好ましく、0.5μm以上であることがさらに好ましい。
(c)熱伝導性充填材の一次粒子の平均粒子径は、200μm以下であることが好ましい。200μm以下とすることで、シリコーン組成物に適切に分散させて、高い充填率で(c)熱伝導性充填材を含有させることが可能になる。(c)熱伝導性充填材の一次粒子の平均粒子径は、より好ましくは150μm以下、さらに好ましくは100μm以下である。
なお、一次粒子の平均粒子径は、例えば、堀場製作所社製「レーザー回折式粒度分布測定装置」を用いて測定することができ、累積体積が50%であるときの粒子径(d50)を一次粒子の平均粒子径とすればよい。
【0034】
(c)熱伝導性充填材は、一次粒子の平均粒子径の異なる2種以上の粒子を含むことが好ましい。一次粒子の平均粒子径が異なる2種類以上の粒子を使用すると、平均粒子径が小さいほうの粒子が、平均粒子径が大きいほうの粒子の間に入り込み、熱伝導性充填材をオルガノポリシロキサン中に適切に分散させつつ、熱伝導性充填材の充填率も高めやすくなる。なお、シリコーン組成物は、熱伝導性充填材の粒度分布において、ピークが2つ以上現れることで一次粒子の平均粒子径が異なる2種類以上の粒子を有すると判断できる。
【0035】
(c)熱伝導性充填材が、一次粒子の平均粒子径が異なる2種類以上の粒子を含む場合、その具体的な粒子径は、熱伝導性充填材の種類に応じて選択することができる。例えば、一次粒子の平均粒子径が10μm以上200μm以下の熱伝導性充填材と、一次粒子の平均粒子径が0.1μm以上10μm未満の熱伝導性充填材を併用してもよい。
また、例えば、一次粒子の平均粒子径が1μm以上100μm以下の熱伝導性充填材(大粒径熱伝導性充填材)と、一次粒子の平均粒子径が0.1μm以上1μm未満の熱伝導性充填材(小粒径熱伝導性充填材)とを併用してもよい。この場合、大粒径熱伝導性充填材の一次粒子の平均粒子径は2μm以上80μm以下であることが好ましく、2μm以上50μm以下であることがより好ましい。また、小粒径熱伝導性充填材の一次粒子の平均粒子径は0.1μm以上0.8μm以下であることが好ましい。
【0036】
シリコーン組成物における(c)熱伝導性充填材の含有量は、シリコーン組成物に含有されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば500質量部以上であり、好ましくは800質量部以上、より好ましくは1000質量部以上である。(c)熱伝導性充填材の含有量を500質量部以上とすることで熱伝導性を良好にでき、また、1000質量部以上とすることで熱伝導性を十分に高めることができる。
(c)熱伝導性充填材の含有量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば4000質量部以下、好ましくは3000質量部以下、より好ましくは2500質量部以下である。(c)熱伝導性充填材の含有量をこれら上限値以下とすることで、シリコーン組成物において熱伝導性充填材を適切に分散できる。また、シリコーン組成物の粘度が必要以上に高くなったりすることも防止できる。
【0037】
(c)熱伝導性充填材は、後述する(e-1)成分又は(f)成分を用いて、表面処理された熱伝導性充填材とすることができる。これらの中では、(c)熱伝導性充填材は、(e-1)成分により表面処理されることが好ましい。
表面処理された熱伝導性充填材は、後述する(e-1)成分又は(f)成分と(c)熱伝導性充填材を混合することで得ることができる。また、混合する際に、表面処理を促進させやすくする観点から、湿式処理法、乾式処理法などを用いることが好ましい。
湿式処理法では、例えば、後述する(e-1)成分又は(f)成分を分散又は溶解した溶液中に、(c)熱伝導性充填材を加えて混合し、その後、加熱処理することで、熱伝導性充填材の表面に(e-1)成分又は(f)成分を結合ないし付着させるとよい。
乾式処理法は、溶液を使用せずに表面処理する方法であり、具体的には、(c)熱伝導性充填材と(e-1)成分又は(f)成分とを混合しミキサー等で攪拌し、その後、加熱処理することで、熱伝導性充填材の表面に(e-1)成分又は(f)成分を結合ないし付着させる方法である。なお、(c)熱伝導性充填材と(e-1)成分又は(f)成分とを混合して行う表面処理は、上記した(a1)成分、(a2)成分、(b)成分、又は後述する(e-2)成分の存在下において行うこともできる。
【0038】
<(d)成分>
(d)成分は、硬化触媒である。シリコーン組成物は、硬化触媒を含有することで、アルケニル基を含有するオルガノポリシロキサン((a1)成分、(a2)成分)と、オルガノハイドロジェンポリシロキサン((b1)成分)との付加反応を促進して、シリコーン組成物を適切に硬化させることができる。
硬化触媒としては、白金系触媒、パラジウム系触媒、ロジウム系触媒などが挙げられ、これらの中では白金系触媒が好ましい。白金系触媒としては、特に限定されないが、塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィン類、ビニルシロキサン又はアセチレン化合物との錯化合物などが挙げられる。
【0039】
シリコーン組成物における硬化触媒の含有量は、付加反応を促進できる量であればよく特に限定されないが、シリコーン組成物全量基準で、0.1質量ppm以上500質量ppm以下であることが好ましく、0.5質量ppm以上200質量ppm以下がより好ましく、1質量ppm以上100質量ppm以下がさらに好ましい。
硬化触媒の含有量が上記下限値以上であると、付加反応を促進し、硬化速度を向上させやすくなる。硬化触媒の含有量が上記上限値以下であると、生産コストを低減でき、さらに得られる硬化物の耐熱性などの物性低下を抑制することができる。
【0040】
<(e)、(f)成分>
本発明のシリコーン組成物は、付加反応基を有さない有機ケイ素化合物を含有することが好ましい。付加反応基を有さない有機ケイ素化合物としては、具体的には、付加反応基を有さないオルガノポリシロキサン((e)成分)及びシランカップリング剤((f)成分)の少なくともいずれかであることが好ましい。
付加反応基を有さない有機ケイ素化合物としては、分子鎖末端に加水分解性シリル基を有する有機ケイ素化合物が好ましく、具体的には、後述する、分子鎖末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサン((e-1)成分)、又はシランカップリング剤((f)成分)が好ましい。分子鎖末端に加水分解性シリル基を有する有機ケイ素化合物を使用することで、充填材を分散させやすくなり、その結果、(c)熱伝導性充填材を高充填できるようになり、熱伝導性が高くなる。
【0041】
<(e)成分>
(e)成分は、付加反応基を有さないオルガノポリシロキサンである。本発明のシリコーン組成物は、(e)成分を含有することにより、硬化物において、一定量以上の成分が架橋構造に組み込まれず、柔軟性を向上させやくなる。また、シリコーン組成物の粘度を低下させやすくなり、取扱い性を向上させやすくなる。なお、付加反応基は、付加反応により反応する官能基を意味し、代表的には、アルケニル基、メタクリロイル基、アクリロイル基、ヒドロシリル基などが挙げられる。
【0042】
(e)成分としては、(e-1)分子鎖末端に加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサン及び(e-2)シリコーンオイルが挙げられる。(e)成分は、(e-1)成分又は(e-2)成分のいずれか1種を含有すればよいが、少なくとも(e-1)成分を含有することが好ましい。(e-1)成分を含有することで、シリコーン組成物の粘度をより一層低下させやすくなる。また、充填材を分散させやすくなり、その結果、(c)熱伝導性充填材を高充填できるようになり、熱伝導性が高くなる。
なお、(e-1)成分は、上記した(c)熱伝導性充填材を表面処理していてもよく、(e-1)成分が(c)熱伝導性充填材を表面処理することで、充填材の分散性をより向上させることができる。
シリコーン組成物は、(e-1)成分を含有する場合には、さらに(e-2)成分を含有してもよい。
【0043】
(e-1)成分は、直鎖状でも分岐状でもよいし、直鎖状と分岐状の混合物でもよいが、直鎖状であることが好ましい。また、(e-1)成分としては、分子鎖末端に少なくとも1つの加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンが好ましく、片末端のみに少なくとも1つの加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンがより好ましく、片末端に3つの加水分解性シリル基を有するオルガノポリシロキサンがさらに好ましい。ここで、加水分解性シリル基は、好ましくはアルコキシシリル基であり、より好ましくは、メトキシシリル基である。
(e-1)成分は、末端に加水分解性シリル基を有することで、熱伝導性充填材の表面に存在する官能基などと反応ないし相互作用しやすく、かつポリシロキサン構造を備えることも相まって、充填材の分散性が良好になり、シリコーン組成物の粘度を低下させやすくなると推定される。また、充填材の分散性を良好にして、その結果、(c)熱伝導性充填材を高充填できるようになり、熱伝導性を高くしやすくなる。
【0044】
(e-1)成分としては、具体的には、下記式(1)で表される化合物、式(2)で表される化合物が挙げられる。これらの中では、下記式(1)で表される化合物が好ましい。式(1)で表される化合物は、シリコーン組成物の高温時の物性変化を抑制することができ、分散性も良好にできる。これは、式(1)で表される化合物が有するエステル構造に起因すると推察される。
【0045】
【化6】
【化7】
【0046】
式(1)及び(2)それぞれにおいて、Rはそれぞれ独立に炭素原子数が1~20のアルキル基、炭素原子数が1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、及び炭素原子数7~20のアラルキル基のいずれであり、各式において複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基であり、各式においてRが複数の場合は、該複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基、及び炭素原子数2~4のアシル基のいずれかであり、各式においてRが複数の場合は、該複数のRは同一であっても異なっていてもよい。Rはそれぞれ独立に炭素原子数1~8のアルキル基である。式(1)においてRはそれぞれ独立に炭素原子数2~20の二価の炭化水素基であり、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。式(2)においてRは酸素原子又は炭素原子数2~20の二価の炭化水素基である。式(1)、(2)それぞれにおいて、aは0~2の整数である。式(1)においてnは4~150の整数であり、式(2)においてmは15~315の整数である。
【0047】
上記式(1)、(2)それぞれにおいて、Rとしては炭素原子数が1~20のアルキル基、炭素原子数が1~20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアラルキル基が挙げられる。複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよく、環状構造を有してもよい。より具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基等の直鎖状アルキル基、イソプロピル基、ターシャリーブチル基、イソブチル基、2-メチルウンデシル基、1-ヘキシルヘプチル基等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロドデシル基等の環状アルキル基が挙げられる。
ハロゲン化アルキル基としては、クロロメチル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基、3-クロロプロピル基等が挙げられる。アリール基としては、フェニル基、トリル基、キシリル基等などが挙げられる。アラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基、2-(2,4,6-トリメチルフェニル)プロピル基等が挙げられる。
これらの中でもRは、炭素原子数1~20のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~4のアルキル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0048】
上記式(1)、(2)それぞれにおいて、Rは炭素原子数1~4のアルキル基であり、Rが複数の場合(すなわち、aが2の場合)は、該複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。また、該アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。中でもRは、炭素原子数1~2のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。また、aは0~2の整数であり、aは0又は1であることが好ましく、0であることがより好ましい。
【0049】
上記式(1)、(2)それぞれにおいて、Rは炭素原子数1~4のアルキル基、炭素原子数2~4のアルコキシアルキル基、炭素原子数2~4のアシル基であり、Rが複数の場合(すなわち、aが0又は1の場合)は、該複数のRは同一であっても異なっていてもよい。また、Rにおけるアルキル基、アルコキシアルキル基、及びアシル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。これらの中でもRは、炭素原子数1~4のアルキル基であることが好ましく、中でもメチル基であることがより好ましい。
【0050】
上記式(1)、(2)それぞれにおいて、Rは炭素原子数1~8のアルキル基であり、好ましくは炭素原子数2~6のアルキル基であり、より好ましくはブチル基である。
上記式(1)において、Rは炭素原子数が1~20の二価の炭化水素基であり、複数のRはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。二価の炭化水素基は、好ましくはアルキレン基であり、該アルキレン基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。Rは炭素原子数2~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2~8のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数2~4のアルキレン基がさらに好ましく、‐CH-CH-CH-、又は-CH(CH)-CH-で表されるアルキレン基が更に好ましい。
【0051】
上記式(2)において、Rは酸素原子または炭素原子数1~20の2価の炭化水素基であり、二価の炭化水素基であることが好ましい。二価の炭化水素基は、好ましくはアルキレン基であり、該アルキレン基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。Rは炭素原子数2~10のアルキレン基が好ましく、炭素原子数2~8のアルキレン基がより好ましく、炭素原子数2~4のアルキレン基がさらに好ましく、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、メチルエチレン基などが挙げられ、中でもエチレン基が好ましい。
【0052】
式(1)において、nは繰り返し数を表し、4~150の整数であり、好ましくは5~120の整数であり、より好ましくは5~50の整数である。
式(2)におけるmは繰り返し数を表し、15~315の整数であり、好ましくは18~280の整数であり、より好ましくは20~220の整数である。
【0053】
上記式(1)、(2)で表される化合物の中でも、熱伝導性充填材の分散性を高め、高温下において物性変化の少ないシリコーン組成物を得る観点から、以下の式(1-1)、又は式(2-1)に示す化合物が好ましく、特に以下の式(1-1)に示す化合物が好ましい。
【化8】
なお、nは前記のとおりである。
【0054】
【化9】
なお、mは前記のとおりである。
(e-1)成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0055】
(e-2)シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンオイル、フェニルメチルシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルの他、ポリシロキサン構造を有する主鎖、主鎖に結合する側鎖、又は主鎖の末端に非反応性の有機基を導入した、非反応性の変性シリコーンオイル等が挙げられる。非反応性の有機基とは、付加反応基を有しない有機基である。非反応性の変性シリコーンオイルとしては、例えば、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、及びフェニル変性シリコーンオイルが挙げられる。上記の中でも、シリコーンオイルとしてはストレートシリコーンオイルが好ましく、ストレートシリコーンオイルの中でも、ジメチルシリコーンオイルがより好ましい。
(e-2)シリコーンオイルは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0056】
(e)成分のシリコーン組成物における含有量は、シリコーン組成物に含有されるオルガノポリシロキサン全量基準で、例えば1質量%以上50質量%以下である。(e)成分の含有量を上記下限値以上とすることで、シリコーン組成物から得られる硬化物の柔軟性を高めやすくなり、(e)成分によってシリコーン組成物の粘度も低減させやすくなる。また、(e)成分の含有量を上記上限値以下とすることで、シリコーン組成物に一定の硬化性を付与でき所望の物性の硬化物を得やすくなり、硬化後のブリードアウトも防止しやすくなる。(e)成分のシリコーン組成物における含有量は、4質量%以上45質量%以下が好ましく、6質量%以上40質量%以下がより好ましく、10質量%以上35質量%以下がさらに好ましい。
【0057】
<(f)成分>
シリコーン組成物は、さらに(f)シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤としては、公知のものが特に制限なく使用され、例えば、ジメチルジメトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルアミノプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。
シランカップリング剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
シリコーン組成物は、(f)シランカップリング剤を含有することで、充填材を分散させやすくなり、その結果、(c)熱伝導性充填材を高充填できるようになり、熱伝導性が高くなる。また、(f)成分は、上記した(c)熱伝導性充填材を表面処理していてもよく、(f)成分が(c)熱伝導性充填材を表面処理することで、充填材の分散性をより向上させることができる。
シリコーン組成物における(f)シランカップリング剤の含有量は、シリコーン組成物に含有されるオルガノポリシロキサン100質量部に対して、例えば、0.1質量以上10質量部以下であり、好ましくは0.5質量以上5質量部以下である。
(f)シランカップリング剤は、上記(e)成分と併用してもよいが、併用しなくてもよい。
【0058】
<(g)硬化抑制剤>
シリコーン組成物は、(g)硬化抑制剤を含有してもよい。(g)硬化抑制剤は、付加反応硬化型シリコーン組成物に用いられる公知の付加反応制御剤を使用でき、特に制限されるものでない。例えば、1-エチニル-1-ヘキサノール、1-エチニル-2-シクロヘキサノール、3-ブチン-1-オール、2-メチル-3-ブチン-2-オール、エチニルメチリデンカルビノール、3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オールなどのアセチレン化合物や各種窒素化合物、有機リン化合物、オキシム化合物、及び有機クロロ化合物、有機イオウ化合物等が挙げられる。これらの中では、アセチレン化合物が好ましい。
シリコーン組成物における(g)硬化抑制剤の含有量は、特に限定されないが、シリコーン組成物全量基準で、1質量ppm以上5000質量ppm以下であることが好ましく、10質量ppm以上2000質量ppm以下がより好ましく、20質量ppm以上1000質量ppm以下がさらに好ましい。
【0059】
本発明のシリコーン組成物において、(a1)、(a2)、(b)、(e)成分の合計含有量は、シリコーン組成物全量に対して、好ましくは2質量%以上40質量%以下である。(a1)、(a2)、(b)、(e)成分の合計量を一定量以上とすることで、これら成分がバインダー樹脂としての機能を適切に発揮でき、これら成分によって(c)熱伝導性充填材を適切に保持することができる。また、上記合計含有量を一定量以下とすることで、(c)熱伝導性充填材を多量に含有させることが可能になる。
(a1)、(a2)、(b)、(e)成分の合計含有量は、シリコーン組成物全量に対して、より好ましくは3質量%以上30質量%以下、さらに好ましくは3.5質量%以上20質量%以下、よりさらに好ましくは4質量%以上12質量%以下である。
【0060】
本発明のシリコーン組成物におけるオルガノポリシロキサンは、本発明の効果を損なわない範囲で、(a1)、(a2)及び(b)以外のオルガノポリシロキサンを含有してもよい。(a1)、(a2)及び(b)以外のオルガノポリシロキサンとしては、(a1)及び(a2)以外のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン、又は(b)成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる
【0061】
(b)成分以外のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、(b’)分子鎖側鎖にケイ素原子に直接結合した水素原子を有するオルガノハイドロジェンポリシロキサンが挙げられる。
ただし、(b’)成分は、シリコーン組成物の硬化速度の低下や、硬化物が硬くなることを抑制する観点から、含有されていても少量であることが好ましく、含有されないことがより好ましい。そのため、シリコーン組成物における(b)成分の含有量は、オルガノハイドロジェンポリシロキサン全量基準で、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0062】
(a1)及び(a2)以外のアルケニル基含有オルガノポリシロキサンとしては、例えば(a3)分子鎖側鎖のみにアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンが挙げられる。
ただし、(a3)成分は、シリコーン組成物の硬化速度の低下を抑制する観点から、含有されていても少量であることが好ましく、含有されないことがより好ましい。そのため、シリコーン組成物における(a1)成分及び(a2)成分の合計量は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサンン全量基準で、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは100質量%である。
【0063】
本発明のシリコーン組成物中には、上記以外にも種々の添加剤を含有させることができる。添加剤としては、例えば、分散剤、難燃剤、可塑剤、酸化防止剤、着色剤などが挙げられる。なお、各添加剤は、2液硬化型のシリコーン組成物においては、第1剤及び第2剤のいずれか一方に含有させればよいが、両方に含有させてもよい。添加剤は、これらから1種又は2種以上を適宜選択して使用すればよい。
【0064】
<比(H/Vi)>
本発明のシリコーン組成物は、該組成物に含有されるアルケニル基の数に対するSi-Hの数の比(H/Vi)が、0.5以上1.5以下の範囲である。シリコーン組成物において、比(H/Vi)が0.5未満となると、シリコーン組成物の硬化性が低下して、低温環境下において硬化速度が遅くなる。また、比(H/Vi)が1.5より大きくなると、硬化が進行しすぎて硬化後の硬化物の硬度が高くなり、硬化物の柔軟性が低下するおそれがある。
比(H/Vi)は、低温環境下における硬化速度の向上、及び柔軟性を良好にする観点から、0.55以上1.3以下が好ましく、0.65以上1.2以下がさらに好ましく、0.75以上1.1以下がよりさらに好ましい。
なお、比(H/Vi)におけるアルケニル基の数は、シリコーン組成物に含有される全成分のアルケニル基の数の合計である。各成分のアルケニル基の数は、各成分における官能基量(mmol/g)と、各成分の含有量から算出することができる。Si-Hの数も同様である。
【0065】
<(末端のSi-H/全Si-H)>
本発明のシリコーン組成物は、ケイ素原子に直接結合した水素原子の数(全Si-H)に対する、分子鎖末端のケイ素原子に直接結合した水素原子の数(末端のSi-H)の比(末端のSi-H/全Si-H)が0.5以上であることが好ましい。「ケイ素原子に直接結合した水素原子の数(全Si-H)」とは、分子鎖末端のSi-Hと、分子鎖側鎖のSi-Hの数の合計である。
比(末端のSi-H/全Si-H)が0.5以上であると、シリコーン組成物の低温での硬化速度が向上しやすくなる。このような観点から、比(末端のSi-H/全Si-H)は0.65以上であることがより好ましく、1であることがさらに好ましい。
【0066】
<タイプE硬度>
本発明のシリコーン組成物は、シリコーン組成物を硬化して得られた硬化物のタイプE硬度が70未満であることが好ましい。上記タイプE硬度が、70未満となると、シリコーン組成物から得られる硬化物が柔軟になる。そのため、得られた硬化物が、放熱体や発熱体などから剥離して熱抵抗が高くなったり、周辺の電子部品への応力が高くなったりすることが抑制される。シリコーン組成物を硬化して得られた硬化物のタイプE硬度は、60未満であることがより好ましく、50未満であることがさらに好ましい。
また、シリコーン組成物を硬化して得られた硬化物のタイプE硬度は、10以上であることが好ましい。上記タイプE硬度を一定値以上とすることで、例えば硬化物の上部に設置した部材の重量を十分に支持することができ、使用時に硬化物が厚さ方向に圧縮したりすることを防止できる。
なお、タイプE硬度は、シリコーン組成物を実施例に記載される方法で硬化させることで得られた硬化物に対して測定するとよい。
【0067】
<1液硬化型>
本発明のシリコーン組成物は、1液硬化型、2液硬化型のいずれでもよい。シリコーン組成物は、必要に応じて加熱などすることで硬化し、硬化物とすることができる。
本発明の1液硬化型のシリコーン組成物は、シリコーン組成物を構成する成分を全て混合して樹脂組成物を調製することができる。この場合、シリコーン組成物を構成する各成分の配合の順番は特に限定されない。ただし、(c)熱伝導性充填材が(e-1)成分又は(f)成分により表面処理される場合には、まず(e-1)成分又は(f)成分と(c)熱伝導性充填材を混合して、上記(e-1)成分又は(f)成分を(c)熱伝導性充填材の表面に付着又は表面と反応させ、その後、さらに他の成分を混合し、1液硬化型のシリコーン組成物を調製するとよい。
【0068】
<2液硬化型>
2液硬化型のシリコーン組成物は、第1剤と第2剤を組み合わせてなるものである。2液硬化型のシリコーン組成物は、第1剤と第2剤を混合させることで得ることができる。
2液硬化型のシリコーン組成物において、第1剤と第2剤の質量比(第2剤/第1剤)は、1又は1に近い値であることが好ましく、0.8以上1.2以下が好ましく、0.9以上1.1以下がより好ましく、0.95以上1.05以下がより好ましい。このように、第1剤と第2剤の質量比を1又は1に近い値とすることで、シリコーン組成物の調製が容易になる。
【0069】
第1剤及び第2剤は、それぞれ別の容器に保管されて、使用直前に容器から取り出されて混合させるとよい。容器は特に限定されないがシリンジなどであってもよい。シリンジを使用すると、各シリンジから吐出した第1剤及び第2剤を容易に混合させることができる。また、上記の通り、質量比1又は1に近い質量比で第1剤と第2剤を容易に混合させることができる。第1剤及び第2剤は室温(23℃)で流動性を有するとよい。室温で流動性を有すると、取扱い性が良好となる。
【0070】
2液硬化型のシリコーン組成物を調製する場合には、第1剤と第2剤に分けて調製される。具体的には、第1剤又は第2剤それぞれを構成する成分を全て混合して第1剤及び第2剤それぞれを調製するとよい。この場合、第1剤及び第2剤を構成する各成分の配合の順番は特に限定されるものではない。ただし、(c)熱伝導性充填材が表面処理される場合には、1液硬化型の場合と同様に、まず、上記(e-1)成分又は(f)成分を(c)熱伝導性充填材の表面に付着又は表面と反応させて、その後、さらに他の成分を混合して、第1剤及び第2剤それぞれを調製するとよい。
【0071】
2液硬化型のシリコーン組成物において、第1剤と第2剤それぞれは、第1剤と第2剤とを混合させる前には実質的に反応が進行しないように調製されるとよい。
具体的には、2液硬化型のシリコーン組成物において、第1剤は、アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン(アルケニル基含有オルガノポリシロキサン)と、(d)硬化触媒とを含むが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有しない。また、第2剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有するが、(d)硬化触媒を含有しない。より具体的には、第1剤は、(a1)成分と(d)成分を含むが、(b)成分を含有しない。一方で、第2剤は、(b)成分を含むが、(d)成分を含有しない。
以上の構成を有する第1剤は、付加反応を促進する(d)硬化触媒を含有するが、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有しないので、第2剤と混合する前に付加反応が進行することを防止することができる。第2剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンを含有するが、付加反応を促進する(d)硬化触媒を含有しないので、第1剤と混合する前に付加反応が進行することを防止できる。
【0072】
2液硬化型の場合、(c)熱伝導性充填材は、第1剤及び第2剤の一方に配合されていてもよいし、両方に配合されていてもよいが、両方に配合されることが好ましい。
したがって、第1剤は、(a1)成分と(c)成分と(d)成分を含むが、(b)成分を含有せず、かつ第2剤は、(b)成分と(c)成分を含むが、(d)成分を含有しないことが好ましい。
(c)熱伝導性充填材を第1剤及び第2剤の両方に含有させると、第1剤と第2剤の比重を同程度にして、第1剤及び第2剤の混合性を向上させることができる。また、第1剤と第2剤の質量比を1又は1に近似しやすくなる。
【0073】
シリコーン組成物を構成するアルケニル基含有オルガノポリシロキサンは、全てが、第1剤に含有されてもよいが、一部が第1剤に含有され、残りが第2剤に含有されることが好ましい。より具体的には、シリコーン組成物における(a1)成分は、全てが第1剤に含有されてもよいが、一部が第1剤に含有され、残りが第2剤に含有されることが好ましい。また、(a2)成分を使用する場合も同様に、(a2)成分の全てが第1剤に含有されてもよいが、一部が第1剤に含有され、残りが第2剤に含有されることが好ましい。
このように、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを第1剤と、第2剤に分割して含有させることで、第1剤及び第2剤の粘度を所望の範囲に調整しやすくなり、また、第1剤と第2剤の質量比を1又は1に近い値にしやすくなる。なお、第2剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンも含有するが、(d)硬化触媒を含有しないので、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンを含有しても、保管時などにおいて、付加反応を実質的に進行させなくすることができる。
【0074】
シリコーン組成物を構成するオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、全てが第2剤に含有され、第1剤には含有されない。したがって、(b)成分は、全てが第2剤に含有される。
【0075】
シリコーン組成物は、(e)成分を含有することが好ましいが、(e)成分は、第1剤及び第2剤の少なくともいずれかに含有させるとよいが、第1剤及び第2剤の両方に含有させることがより好ましい。第1剤及び第2剤の両方に(e)成分を含有させると、第1剤及び第2剤の粘度を(e)成分によって調整でき、第1剤及び第2剤の両方を比較的低い粘度にすることも可能である。
また、(e)成分は、(e-1)成分を含有する場合、(c)熱伝導性充填材を含有する剤(第1剤、第2剤、又はその両方)に(e-1)成分を含有させることがより効果的であり好ましい。すなわち、第1剤及び第2剤はいずれも、(c)熱伝導性充填材及び(e)成分の両方含有することが好ましいが、中でも第1剤及び第2剤がいずれも、(c)熱伝導性充填材及び(e-1)成分を含有することがより好ましい。
【0076】
シリコーン組成物は、(f)成分(シランカップリング剤)を含有してもよいが、(f)成分は、第1剤及び第2剤の少なくともいずれかに含有させるとよい。(f)成分は、(c)熱伝導性充填材を含有する剤(第1剤、第2剤、又はその両方)に含有させることがより効果的であり好ましい。すなわち、シリコーン組成物が(f)成分(シランカップリング剤)を含有する場合、第1剤及び第2剤はいずれも、(c)熱伝導性充填材及びシランカップリング剤の両方を含有することが好ましい。
【0077】
シリコーン組成物は、(g)成分(硬化抑制剤)を含有してもよいが、(g)成分は、第1剤及び第2剤の一方に含有させてもよいし、両方に含有させてもよい。ただし、第2剤が、オルガノハイドロジェンポリシロキサン(例えば、(b)成分)とアルケニル基含有オルガノポリシロキサン(例えば、(a1)成分)の両方を含有する場合には、第2剤に硬化抑制剤を含有させることが好ましい。第2剤は、オルガノハイドロジェンポリシロキサンとアルケニル基含有オルガノポリシロキサンの両方を含有しても、(g)反応制御剤をさらに含有することで、第2剤においてこれらの反応が進行することを防止できる。
【0078】
[放熱部材]
本発明のシリコーン組成物を原料として用いて、シリコーン組成物により形成された放熱部材を作製することができる。例えば、シリコーン組成物を所定の形状にした後、適宜加熱などして硬化させることで所定の形状に成形された放熱部材とすることができる。放熱部材は、発熱体と放熱体との間に介在させられ、発熱体で発した熱を熱伝導して放熱体に移動させ、放熱体から放熱させる。ここで、発熱体としては、電子機器内部で使用されるCPU、パワーアンプ、電源などの各種の電子部品が挙げられる。また、放熱体は、ヒートシンク、ヒートポンプ、電子機器の金属筐体などが挙げられる。
該放熱部材は、電子機器内部に使用することができ、例えば、電子部品と、該電子部品上に配置される放熱部材とを備える電子機器とすることができる。具体的には、前記放熱部材を、半導体素子などの電子部品とヒートシンクなどの放熱体との間に配置して、電子部品から発生する熱を効果的に放熱することができる。
【実施例0079】
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0080】
各物性の測定方法、及び評価方法は、以下のとおりである。
[粘度]
粘度は、23℃において、ブルックフィールドB型粘度計により測定した。測定装置としては、英弘精機社製「HB DVE」により測定した。回転速度10rpmに設定し、回転を始めて3分後の値を粘度とした。B型粘度計による測定において、スピンドルはトルクが10~80%となるよう適切に選択した。
【0081】
[熱伝導率]
熱伝導率は、23℃において、ASTM D5470に従って測定した。測定装置としてはMentor, a Siemens Business社の「T3Ster DynTIM Tester」により測定し、以下の評価基準により評価した。
OK:3W/m・K以上
NG:3W/m・K未満
【0082】
[硬化速度(50℃):突き刺し荷重測定]
サンプル瓶に、各実施例、比較例で得られたシリコーン組成物を入れ、50℃のオーブンで所定の時間(0.5h、1h、2h、4h、6h)加熱した。所定の時間加熱した後のそれぞれのシリコーン組成物について、突き刺し荷重測定を行った。突き刺し荷重は、針を試料に突き刺して、表面から6mmの深さまで到達した際の荷重を測定することにより行った。
なお、突き刺し荷重の測定は、突き刺し荷重測定機、IMADA社製デジタルフォースゲージ「ZTS-5N」により行い、押込みは針径2.5mmφ、押込み速度10mm/分、測定温度23℃の条件で測定した。最終の6h加熱した後の突き刺し荷重から、以下の式により、変化率を求め、突き刺し荷重の変化率が85%以上になった時点の加熱時間に基づき硬化速度を評価した。表1には、突き刺し荷重の変化率が85%以上になった時点の加熱時間を示しており、この時間が短いほど、硬化速度が速いことを意味する。
突き刺し荷重変化率(%)=(所定時間加熱した後の突き刺し荷重/6h加熱した後の突き刺し荷重)×100
【0083】
[硬度測定]
硬度の測定は、自動硬度測定装置、テクロック社製「GX-02E」により、温度25℃、タイプEで測定した。なお、各実施例、比較例で得られた硬化物は、初期の硬度を測定して以下の評価基準にて評価した。
A:硬度が10以上50未満
B:硬度が50以上70未満
C:硬度70以上
【0084】
各実施例、比較例で用いた各成分は以下のとおりである。なお、アルケニル基含有オルガノポリシロキサンのビニル基含有量、及びオルガノハイドロジェンポリシロキサンのSiH含有量は、表1の官能基量の欄に記載の通りであった。また、各成分の23℃における粘度も表1に示す。
【0085】
[アルケニル基含有オルガノポリシロキサン]
<(a1)成分>
A1-1:分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にビニル基を有し、式(A1)で表されるオルガノポリシロキサン、一分子中のビニル基の数=3個(末端2個、側鎖1個)
A1-2:分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にビニル基を有し、式(A1)で表されるオルガノポリシロキサン、一分子中のビニル基の数=5個(末端2個、側鎖3個)
A1-3:分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にビニル基を有し、式(A1)で表されるオルガノポリシロキサン、一分子中のビニル基の数=7個(末端2個、側鎖5個)
A1-4:分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にビニル基を有し、式(A1)で表されるオルガノポリシロキサン、一分子中のビニル基の数=10個(末端2個、側鎖8個)
A1-5:分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にビニル基を有し、式(A1)で表されるオルガノポリシロキサン、一分子中のビニル基の数=12個(末端2個、側鎖10個)
A1-6:分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にビニル基を有し、式(A1)で表されるオルガノポリシロキサン、一分子中のビニル基の数=17個(末端2個、側鎖15個)
<(a2)成分>
A2-1:分子鎖両末端のみにビニル基を有し、式(A2)で表されるオルガノポリシロキサン、一分子中のビニル基の数=2個(末端2個、側鎖0個)
<その他のアルケニル基含有オルガノポリシロキサン>
A3-1:側鎖にのみビニル基を有するオルガノポリシロキサン、一分子中のビニル基の数=4個(末端0個、側鎖4個)
【0086】
[オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
<(b)成分>
B-1:分子鎖両末端のみにSi-Hを有し、式(B)で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサン、一分子中のSi―H数=2個(末端2個、側鎖0個)
B-2:分子鎖両末端と分子鎖側鎖の両方にSi-Hを有し、一分子中のSi―H数=12個(末端2個、側鎖10個)
【0087】
[熱伝導性充填材]
C-1:アルミナ1(一次粒子の平均粒子径3μm)
C-2:アルミナ2(一次粒子の平均粒子径0.5μm)
C-3:窒化アルミニウム(一次粒子の平均粒子径10μm)
C-4:ダイヤモンド(一次粒子の平均粒子径12μm)
[硬化触媒]
D-1:白金系触媒
[付加反応基非含有オルガノポリシロキサン]
E-1(1):式(1-1)に示す化合物、なお、nは10~11である。
E-1(2):式(2-1)に示す化合物、なお、mは30である。
[硬化抑制剤]
G-1:硬化抑制剤:3,5-ジメチル-1-ヘキシン-3-オール
【0088】
[実施例1~12、比較例1~4]
表1に示す配合に従って、シリコーン組成物を調製した。得られたシリコーン組成物を用いて、熱伝導率、硬化速度(50℃)を測定した。得られたシリコーン組成物を室温で24時間の条件で硬化させ、硬化物を得た。得られた硬化物を用いて、硬度測定を評価し、評価結果を表1に示した。
【0089】
【表1】
※表1において、白金系触媒及び硬化抑制剤の量(ppm)は、シリコーン組成物に対する質量ppmである。それ以外の量は、オルガノポリシロキサン100質量部に対する各成分の質量部である。
【0090】
以上の実施例1~12のシリコーン組成物は、(a1)、(b)、(c)、及び(d)成分を含有し、かつアルケニル基の数に対するSiHの数の比(H/Vi)が所定の範囲内であったため、熱伝導率が高く熱伝導性が良好であるにもかかわらず、初期硬度が低く柔軟性が良好であり、さらに低温における高い硬化速度を有していた。
それに対して、比較例1、2のシリコーン組成物は、(a1)及び(b)成分のいずれか一方を含有しなかったため、硬化速度が低い結果となった。比較例3では、比(H/Vi)が低すぎたため、硬化不良が生じた。また、比較例4では、比(H/Vi)が高すぎたため、硬化物の硬度が高くなり、柔軟性に劣る結果となった。