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特開2023-184509変色性液状組成物およびそれを用いてなる変色性積層体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184509
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】変色性液状組成物およびそれを用いてなる変色性積層体
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/20 20060101AFI20231221BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231221BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20231221BHJP
   C08K 5/00 20060101ALI20231221BHJP
   C09D 11/02 20140101ALI20231221BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20231221BHJP
   C09D 123/20 20060101ALI20231221BHJP
   C09D 125/04 20060101ALI20231221BHJP
   A63H 9/00 20060101ALI20231221BHJP
   A63H 33/22 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C08L23/20
B32B27/32 Z
C08L25/04
C08K5/00
C09D11/02
C09D11/30
C09D123/20
C09D125/04
A63H9/00 Q
A63H33/22 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023099535
(22)【出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2022098355
(32)【優先日】2022-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000111890
【氏名又は名称】パイロットインキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】堀山 英杜
【テーマコード(参考)】
2C150
4F100
4J002
4J038
4J039
【Fターム(参考)】
2C150FB13
2C150FB14
2C150FB22
2C150FB43
2C150FD31
4F100AK03B
4F100AK08
4F100AK08B
4F100AK08C
4F100AK12B
4F100AR00C
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4F100BA07
4F100CA13
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4F100EH61B
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4F100GB84
4F100HB31
4F100HB31B
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4F100JJ10B
4F100JK07
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4F100JN28
4F100JN28B
4F100YY00B
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4J002BB141
4J002BB171
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4J002EH127
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4J039FA06
4J039GA02
4J039GA03
4J039GA10
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】 4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される基材に適用可能であり、熱や光により色変化し、かつ、基材に対する接着性に優れると共に、変形に対して良好な追従性を有する変色層を形成できる変色性液状組成物を提供する。また、形状を変形させても変色層が剥離したり、破断したりすることがなく、変色層全体が均一に変色する機能を保持し続ける変色性積層体を提供する。
【解決手段】 4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成され、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度が少なくとも10~100℃の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5~3.5である基材に用いられる変色性液状組成物であって、変色性材料と、少なくとも4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、溶剤とを含むビヒクルとからなる、変色性液状組成物。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成され、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度が少なくとも10~100℃の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5~3.5である基材に用いられる変色性液状組成物であって、
変色性材料と、
少なくとも4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、溶剤とを含むビヒクルと、
からなる変色性液状組成物。
【請求項2】
前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)が、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位とを含んでなる、請求項1記載の液状組成物。
【請求項3】
前記ビヒクルが、さらにスチレン系オリゴマーを含んでなる、請求項1又は2記載の液状組成物。
【請求項4】
前記変色性材料が、可逆熱変色性材料又は可逆光変色性材料である、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項5】
前記可逆熱変色性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料である、請求項4記載の液状組成物。
【請求項6】
印刷用インキ、塗料、インクジェット用インキ、紫外線硬化型インキからなる群から選ばれる、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の液状組成物。
【請求項7】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成され、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度が少なくとも10~100℃の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5~3.5である基材上に、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の液状組成物からなる変色層を設けてなる、変色性積層体。
【請求項8】
前記基材の、前記変色層が設けられる反対の面に粘着抑制層を設けてなる、請求項7記載の積層体。
【請求項9】
前記粘着抑制層が、粘着抑制剤と、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、前記溶剤とを少なくとも含む液状組成物からなる、請求項8記載の積層体。
【請求項10】
請求項7乃至9のいずれか一項に記載の積層体を用いてなる、変色性変形性物品。
【請求項11】
前記変色性変形性物品が玩具である、請求項10記載の変色性変形性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変色性液状組成物およびそれを用いてなる変色性積層体に関する。さらに詳細には、基材に対する接着性に優れると共に、伸縮や屈曲等の変形に対して良好な追従性を有する変色層を形成できる変色性液状組成物、および液状組成物からなる変色層を基材上に設けた変色性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特定のブロック共重合体エラストマー成形物からなる支持体の表面に、該支持体と同組成のブロック共重合体エラストマー中に、電子供与性呈色性有機化合物、電子受容性化合物、呈色反応を可逆的に生起させる有機化合物媒体の三成分からなる可逆熱変色性組成物を内包したマイクロカプセル顔料を含有した着色層を積層した、エラストマー積層体が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
上記のエラストマー積層体は、高い伸び率と高強度を有して形状の変形が可能であると共に、熱による可逆的な色変化を示すものである。そして、積層体を伸縮させた後であっても着色層(可逆熱変色層)の剥離が発生しないため、例えば玩具分野等の多彩な分野へ適用することができるものである。
【0003】
上記したエラストマー成形物からなる支持体のように形状の変形が可能な支持体として、4-メチル-1-ペンテンを構成モノマーとする4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いたシートが開示されている(例えば、特許文献2参照)。
上記のシートは、特定の温度域で柔軟性を有し、さらに形状の変形と、変形形状の保持が可能なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004-160989号公報
【特許文献2】国際公開第2018/143411号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記した4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される基材に適用可能であり、熱や光により色変化する変色性液状組成物について検討した結果、特定の化合物を含有するビヒクルを用いることにより、変色性材料の変色特性に影響することなく、基材に対する接着性に優れると共に、伸縮や屈曲等の変形に対して良好な追従性を有する変色層を形成できる変色性液状組成物を見出した。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成され、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度が少なくとも10~100℃の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5~3.5である基材に用いられる変色性液状組成物であって、
変色性材料と、
少なくとも4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、溶剤とを含むビヒクルと、
からなる変色性液状組成物を要件とする。
さらには、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)が、4-メチル-1-ペンテンに由来する構成単位と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位とを含んでなること、前記ビヒクルが、さらにスチレン系オリゴマーを含んでなること、前記変色性材料が、可逆熱変色性材料又は可逆光変色性材料であること、前記可逆熱変色性材料が、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)前記(イ)、(ロ)の呈色反応をコントロールする反応媒体とから少なくともなる可逆熱変色性組成物を内包した可逆熱変色性マイクロカプセル顔料であること、前記液状組成物が、印刷用インキ、塗料、インクジェット用インキ、紫外線硬化型インキからなる群から選ばれることを要件とする。
また、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成され、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度が少なくとも10~100℃の範囲に1つ以上あり、かつ、前記損失正接の極大値が0.5~3.5である基材上に、前記液状組成物からなる変色層を設けてなる変色性積層体を要件とする。
さらには、前記基材の、前記変色層が設けられる反対の面に粘着抑制層を設けてなること、前記粘着抑制層が、粘着抑制剤と、前記4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、前記溶剤とを少なくとも含む液状組成物からなることを要件とする。
また、前記積層体を用いてなる変色性変形性物品、前記変色性変形性物品が玩具であることを要件とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成される基材に適用可能な変色性液状組成物であって、熱や光により色変化し、かつ、基材に対する接着性に優れると共に、伸縮や屈曲等の変形に対して良好な追従性を有する変色層を形成できる変色性液状組成物を提供できる。さらに、この変色性液状組成物により形成される変色層を基材上に設けた変色性積層体は、形状を変形させても変色層が剥離したり、破断したりすることがなく、変色層全体が均一に変色する機能を保持し続けるものであり、玩具分野、工業分野、文具分野、装飾分野、デザイン分野等、変形自在性と変色特性が要求される多様な分野に適用可能な変色性積層体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
図2】色彩記憶性を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
図3】加熱発色型の可逆熱変色性組成物の色濃度-温度曲線におけるヒステリシス特性を説明するグラフである。
図4】本発明による液状組成物を用いた変色性積層体の一実施例である。
図5】本発明による液状組成物を用いた変色性積層体の他の実施例である。
図6】本発明による液状組成物を用いた変色性積層体の一応用例である。
図7】本発明による液状組成物を用いた変色性積層体の他の応用例である。
図8】本発明による液状組成物を用いた変色性積層体の他の応用例である。
図9図8のX-X線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明による変色性液状組成物(以下、「液状組成物」と表すことがある)は、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成され、後述する要件(i)を満たす基材に用いられるものである。以下に、本発明による液状組成物が用いられる基材について説明する。
【0010】
本発明による液状組成物が用いられる、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成される基材は、(i)昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度が少なくとも10~100℃の範囲に1つ以上あり、かつ、損失正接の極大値が0.5~3.5である。
【0011】
上記(i)を満たす基材における、動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度は、いわゆるガラス転移温度(Tg)である。4-メチル-1-ペンテン系重合体のような高分子は一般的に、ガラス転移温度未満の温度域では弾性率が高く剛性的性状を示し、ガラス転移温度以上の温度域では弾性率が低く粘性的性状を示す。つまり、基材は温度変化により弾性率が変化する感温性を有し、ガラス転移温度を境にして柔軟性が変化する。
【0012】
基材は、温度上昇に伴って弾性率が低下して剛性的性状を示さなくなる。すなわち基材は、温度上昇に伴って柔軟性を発現し、ガラス転移温度以上の温度域では外部応力(以下、「外力」と表すことがある)の適用により任意形状に変形させることができるため、形状変形性を有する。さらに基材は、外力の適用により任意形状へ変形させた後、外力を適用したままガラス転移温度未満の温度域まで冷却することにより、再び弾性率が高くなって剛性的性状を示すようになる。すなわち基材は、温度低下に伴って柔軟性を失い、外力を除去しても変形形状で保持させることができるため、形状保持性も有する。
【0013】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成される基材の損失正接の極大値を示す温度が特定の範囲内にあり、かつ、損失正接の極大値が特定の範囲内にあることにより、基材の感温性、形状変形性、および形状保持性の性能バランスを優れるものとすることができる。
【0014】
動的粘弾性測定により求められる損失正接(tanδ)は、例えば、基材を縦30mm×幅15mmに切り出して試験片とし、チャック間距離20mm、周波数1.59Hz、歪量0.1%、昇温速度4℃/min、引張モードの条件で、動的粘弾性測定装置(DMA)やレオメーターにより測定することができる。
【0015】
損失正接の極大値を示す温度は、少なくとも10~80℃の範囲に1つ以上あることが好ましく、10~60℃の範囲に1つ以上あることがより好ましく、10~50℃の範囲に1つ以上あることがさらに好ましく、15~40℃の範囲に1つあることが特に好ましい。
損失正接の極大値は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.2以上である。また、損失正接の極大値は、好ましくは3.0以下、より好ましくは2.8以下である。
損失正接の極大値を示す温度、および損失正接の極大値がこれらの範囲を満たすことにより、基材の感温性、形状変形性、および形状保持性の性能バランスをより優れるものとすることができる。ここで、損失正接の極大値が大きいほど基材の粘性的性質が強くなり、基材が変形する際に吸収されるエネルギーが大きいことを意味する。基材の粘性的性質が強くなると、基材を変形させる際に与えられる力(力学的エネルギー)がより多く熱(熱エネルギー)に変換されて散逸するため、基材に与えられる力を除去した際に元の形状に復元する復元速度が緩やかになる。よって、基材の感温性、形状変形性、形状保持性の性能バランスを高度に並立することができると考えられる。
【0016】
損失正接の極大値を示す温度が15~40℃(好ましくは20~40℃、より好ましくは25~38℃)にある場合、基材は生活環境温度(例えば、25℃)下で柔軟性を発現するようになる。また、人の体温付近の温度で柔軟性が変化するため、例えば、人の手で基材に外力を適用することにより容易に変形させることができる。外力により変形した基材は、一定時間変形形状を保持した後、緩やかに元の形状に復元する。
【0017】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)(以下、「重合体(A)」と表すことがある)としては特に限定されるものではないが、例えば、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(a1)と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位(a2)を含む、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)(以下、「共重合体(a)」と表すことがある)が挙げられる。ここで、「炭素数2~20のα-オレフィン」は、特に断らない限り、4-メチル-1-ペンテンを含まないことを意味する。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、基材の感温性、形状変形性、形状保持性の性能バランスを高度に並立できるため、本発明による液状組成物が適用される基材を構成する材料として好適に用いられる。
【0018】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)において、構成単位(a1)と構成単位(a2)の配合割合は特に限定されるものではない。基材の感温性、形状変形性、および形状保持性を良好とすることができることから、構成単位(a1)と構成単位(a2)との合計を100mol%とした場合、構成単位(a1)が10~90mol%であり、構成単位(a2)が10~90mol%であることが好ましい。
基材の感温性、形状変形性、および形状保持性をよりいっそう良好とすることができることから、構成単位(a1)と構成単位(a2)との合計を100mol%とした場合、構成単位(a1)が30~90mol%であり、構成単位(a2)が10~70mol%であることがより好ましく、構成単位(a1)が50~90mol%であり、構成単位(a2)が10~50mol%であることがさらに好ましく、構成単位(a1)が60~90mol%であり、構成単位(a2)が10~40mol%であることが特に好ましく、構成単位(a1)が65~90mol%であり、構成単位(a2)が10~35mol%であることが最も好ましい。
【0019】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)に用いられる、炭素数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、直鎖状または分岐状α-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、官能基化ビニル化合物等を例示できる。
【0020】
直鎖状α-オレフィンの炭素数としては、好ましくは2~15、より好ましくは2~10、さらに好ましくは2または3である。
直鎖状α-オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等を例示できる。これらの中でも好ましくは、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンであり、より好ましくは、エチレンまたはプロピレンである。
【0021】
分岐状α-オレフィンの炭素数としては、好ましくは5~20、より好ましくは5~15である。
分岐状α-オレフィンとしては、例えば、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン等を例示できる。
【0022】
環状オレフィンの炭素数としては3~20であり、好ましくは5~15である。
環状オレフィンとしては、例えば、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロへプテン、ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、テトラシクロドデセン、ビニルシクロヘキサン等を例示できる。
【0023】
芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メチルスチレン、o,p-ジメチルスチレン、o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等の、モノまたはポリアルキルスチレン等を例示できる。
【0024】
共役ジエンの炭素数としては4~20であり、好ましくは4~10である。
共役ジエンとしては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチルブタジエン、4-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、1,3-オクタジエン等を例示できる。
【0025】
官能基化ビニル化合物としては、例えば、炭素数2~20の、直鎖状または分岐状の末端水酸基化α-オレフィン等の水酸基含有オレフィン;周期表第17族原子を有する、炭素数2~20の、直鎖状または分岐状のハロゲン化α-オレフィン等のハロゲン化オレフィン;(メタ)アクリル酸、プロピオン酸、3-ブテン酸、4-ペンテン酸、5-ヘキセン酸、6-ヘプテン酸、7-オクテン酸、8-ノネン酸、9-デセン酸、10-ウンデセン酸等の不飽和カルボン酸;アリルアミン、5-ヘキセンアミン、6-へプテンアミン等の不飽和アミン;(2,7-オクタジエニル)コハク酸無水物、ペンタプロペニルコハク酸無水物等のコハク酸無水物;上記不飽和カルボン酸から得られる無水物等の不飽和カルボン酸無水物;上記不飽和カルボン酸から得られるハロゲン化物等の不飽和カルボン酸ハライド;不飽和エポキシ化合物;エチレン性不飽和シラン化合物等を例示できる。
【0026】
α-オレフィンは、一種または二種以上を併用して用いることもできる。
【0027】
α-オレフィンとしては、炭素数2~10の直鎖状α-オレフィンが好ましい。基材の感温性、形状変形性、および形状保持性の性能バランスをより良好とすることができることから、エチレンまたはプロピレンがより好ましく、プロピレンがさらに好ましい。
【0028】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)における、4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィン等の配合割合は、例えば、13C NMRにより測定することができる。
【0029】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)は、後述する要件(ii)~(iii)を満たすことが好ましい。
【0030】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)は、(ii)135℃のデカリン中での極限粘度[η]が、好ましくは0.01~5.0dL/g、より好ましくは0.1~4.0dL/g、さらに好ましくは0.5~3.0dL/g、特に好ましくは1.0~2.8dL/gである。極限粘度[η]が上記の範囲内にあることにより、基材の感温性、形状変形性、および形状保持性の性能バランスを良好とすることができる。極限粘度[η]は、共重合体(a)を調製する際の、重合工程における水素の添加量により調整することができる。
極限粘度[η]は、デカリンを用いて135℃で測定した値であり、下記の方法により測定することができる。
【0031】
(極限粘度の測定方法)
1.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体約20mgをデカリン15mlに溶解させてデカリン溶液とし、135℃のオイルバス中で比粘度(ηsp)を測定する。
2.デカリン溶液に、さらにデカリン5mlを加えて希釈し、比粘度(ηsp)を同様に測定する。
3.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体の単位濃度(C)あたりの粘度の増加量、すなわち還元粘度(ηred=ηsp/C)を求める。
4.濃度と還元粘度との関係をプロットし、濃度(C)を0に外挿したときの切片から極限粘度[η]を求める。あるいは、下記式(I)により極限粘度[η]を求める。
【数1】
【0032】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)は、(iii)ASTM D 1505(水中置換法)により測定される密度が、好ましくは0.81~0.85g/cm、より好ましくは0.82~0.85g/cm、さらに好ましくは0.83~0.85g/cmである。密度は、共重合体(a)における、炭素数2~20のα-オレフィンの種類、あるいは、4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィンの配合割合により調整することができる。
【0033】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)の製造方法は特に限定されるものではなく、種々の方法により製造することができる。例えば、重合用触媒の存在下で、4-メチル-1-ペンテンと、炭素数2~20のα-オレフィンとを重合することにより製造することができる。
【0034】
基材には、その他必要に応じて、各種添加剤を配合させることもできる。
添加剤としては、例えば、発泡剤、耐熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料、帯電防止剤、銅害防止剤、難燃剤、中和剤、可塑剤、造核剤、耐候安定剤、耐光安定剤、老化防止剤、脂肪酸金属塩、軟化剤、分散剤、着色剤、滑剤、天然油、合成油、ワックス等を例示できる。これらの中でも、可塑剤、軟化剤、天然油、および合成油の種類、あるいは配合量により、損失正接の極大値を示す温度、および損失正接の極大値を調整することができる。
【0035】
基材の形状としては特に限定されるものではないが、シート状であることが好ましい。
基材がシート状である場合、厚みは、好ましくは0.1~30mm、より好ましくは0.2~20mm、さらに好ましくは0.3~12mmの範囲である。厚みが上記の範囲内にあることにより、基材が軽量であり取り扱い性に優れると共に、外観や肌触りが良好であり、感温性、形状変形性、形状保持性、成形性、耐湿性等の性能バランスを良好とすることができる。
【0036】
シート状の基材の製造方法としては特に限定されるものではないが、例えば、4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)を含む樹脂組成物を、従来知られている成形手段により成形することにより製造することができる。
【0037】
成形手段としては、汎用の押出成形、インフレーション成形、カレンダーリング成形等が挙げられる。これらの中でも、押出成形が好適である。
基材を多層構造とする場合には、マルチダイを使用した押出成形である共押出成形や、各種ラミネート法等の成形手段を用いることができる。
基材を発泡体とする場合には、例えば、発泡剤を含む樹脂組成物を特定の形状に発泡成形することにより発泡体を製造することができる。このように製造される発泡体は肌触り等の触感に優れるものである。
【0038】
本発明による液状組成物は、変色性材料とビヒクルとからなり、ビヒクルは少なくとも、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、溶剤とを含有してなる。以下に、本発明による液状組成物を構成する各材料について説明する。
【0039】
本発明に適用される変色性材料としては、温度変化により色変化する熱変色性材料や、光の照射により色変化する光変色性材料が挙げられ、これらの色変化は、可逆的であっても不可逆的であってもよい。温度変化あるいは光の照射により繰り返し色変化を発現できることができることから、変色性材料としては、可逆熱変色性材料や可逆光変色性材料が好適である。
【0040】
可逆熱変色性材料としては、(イ)電子供与性呈色性有機化合物、(ロ)電子受容性化合物、(ハ)(イ)成分および(ロ)成分の呈色反応の生起温度を決める反応媒体から少なくともなる可逆熱変色性組成物が挙げられる。
【0041】
可逆熱変色性組成物としては、特公昭51-44706号公報、特公昭51-44707号公報、特公平1-29398号公報等に記載された、ヒステリシス幅(ΔH)が比較的小さい特性(ΔH=1~7℃)を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を用いることができる。加熱消色型とは、加熱により消色し、冷却により発色することを意味する。この可逆熱変色性組成物は、所定の温度(変色点)を境としてその前後で変色し、高温側変色点以上の温度域で消色状態、低温側変色点以下の温度域で発色状態を呈し、両状態のうち常温域では特定の一方の状態しか存在せず、もう一方の状態は、その状態が発現するのに要した熱または冷熱が適用されている間は維持されるが、熱または冷熱の適用がなくなれば常温域で呈する状態に戻る(図1参照)。
【0042】
可逆熱変色性組成物としては、特公平4-17154号公報、特開平7-179777号公報、特開平7-33997号公報、特開平8-39936号公報、特開2005-1369号公報等に記載されているヒステリシス幅が大きい特性(ΔH=8~80℃)を有する加熱消色型の可逆熱変色性組成物を用いることもできる。加熱消色型とは、加熱により消色し、冷却により発色することを意味する。この可逆熱変色性組成物は、温度変化による発色濃度の変化をプロットした曲線の形状が、温度を変色温度域より低温側から上昇させていく場合と、逆に変色温度域より高温側から下降させていく場合とで大きく異なる経路を辿って変色し、完全発色温度t以下の温度域での発色状態、または完全消色温度t以上の高温域での消色状態が、特定温度域〔発色開始温度t~消色開始温度tの間の温度域(実質二相保持温度域)〕で色彩記憶性を有する(図2参照)。
【0043】
以下に、各(イ)成分、(ロ)成分、(ハ)成分について具体的に説明する。
【0044】
(イ)成分、すなわち電子供与性呈色性有機化合物は、色を決める成分であって、顕色剤である(ロ)成分に電子を供与し、発色する化合物である。
【0045】
電子供与性呈色性有機化合物としては、フタリド化合物、フルオラン化合物、スチリノキノリン化合物、ジアザローダミンラクトン化合物、ピリジン化合物、キナゾリン化合物、ビスキナゾリン化合物等が挙げられる。
フタリド化合物としては、例えば、ジフェニルメタンフタリド化合物、フェニルインドリルフタリド化合物、インドリルフタリド化合物、ジフェニルメタンアザフタリド化合物、フェニルインドリルアザフタリド化合物、およびそれらの誘導体等が挙げられる。これらの中でも、フェニルインドリルアザフタリド化合物、ならびにそれらの誘導体が好ましい。
また、フルオラン化合物としては、例えば、アミノフルオラン化合物、アルコキシフルオラン化合物、ならびにそれらの誘導体が挙げられる。
【0046】
以下に、(イ)成分に用いることができる化合物を例示する。
3,3-ビス(4-ジメチルアミノフェニル)-6-ジメチルアミノフタリド、
3-(4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)フタリド、
3,3-ビス(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-4-アザフタリド、
3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-n-ヘキシルオキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-〔2-エトキシ-4-(N-エチルアニリノ)フェニル〕-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3-(2-アセトアミド-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-プロピル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド、
3,6-ビス(ジフェニルアミノ)フルオラン、
3,6-ビス(N-フェニル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3,6-ジメトキシフルオラン、
3,6-ジ-n-ブトキシフルオラン、
2-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
3-クロロ-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-メチル-6-シクロヘキシルアミノフルオラン、
2-クロロアミノ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(2-クロロアニリノ)-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-(3-トリフルオロメチルアニリノ)-6-ジ-n-ペンチルアミノフルオラン、
2-ジベンジルアミノ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-N-メチルアニリノ-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
1,3-ジメチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-クロロ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メトキシ-6-ジ-n-ブチルアミノフルオラン、
2-キシリジノ-3-メチル-6-ジエチルアミノフルオラン、
2-アニリノ-3-メチル-6-(N-エチル-N-p-トリルアミノ)フルオラン、
6-ジエチルアミノ-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソブチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
6-(N-エチル-N-イソペンチルアミノ)-1,2-ベンゾフルオラン、
2-(3-メトキシ-4-ドデコキシスチリル)キノリン、
2-ジエチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ブチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジエチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-(N-エチル-N-イソアミルアミノ)-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
2-ジ-n-ブチルアミノ-8-ジ-n-ペンチルアミノ-4-メチルスピロ[5H-[1]ベンゾピラノ[2,3-d]ピリミジン-5,1′(3′H)-イソベンゾフラン]-3′-オン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジメチルアミノ-2-メトキシフェニル)-3-(1-n-ブチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-エトキシフェニル)-3-(1-n-ペンチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
4,5,6,7-テトラクロロ-3-(4-ジエチルアミノ-2-メチルフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-1(3H)-イソベンゾフラノン、
3′,6′-ビス〔フェニル(2-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-メチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
3′,6′-ビス〔フェニル(3-エチルフェニル)アミノ〕スピロ[イソベンゾフラン-1(3H),9′-[9H]キサンテン]-3-オン、
2,6-ビス(2′-エチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2′,4′-ジエチルオキシフェニル)-4-(4′-ジメチルアミノフェニル)ピリジン、
2,6-ビス(2,4-ジエチルオキシフェニル)-4-〔4-ビス(4-メチルオキシフェニル)アミノフェニル〕ピリジン、
2-(4′-ジメチルアミノフェニル)-4-メトキシキナゾリン、
4,4′-エチレンジオキシ-ビス〔2-(4-ジエチルアミノフェニル)キナゾリン〕
【0047】
なお、フルオラン類としては、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有する化合物のほか、キサンテン環を形成するフェニル基に置換基を有すると共にラクトン環を形成するフェニル基にも置換基(例えば、メチル基等のアルキル基、塩素原子等のハロゲン原子)を有する青色や黒色を呈する化合物であってもよい。
【0048】
(ロ)成分、すなわち電子受容性化合物は、(イ)成分から電子を受け取り、(イ)成分の顕色剤として機能する化合物である。
電子受容性化合物としては、活性プロトンを有する化合物群、偽酸性化合物群〔酸ではないが、可逆熱変色性成物中で酸として作用して(イ)成分を発色させる化合物群〕、および電子空孔を有する化合物群等から選択される化合物が挙げられる。上記の(ロ)成分の中でも、活性プロトンを有する化合物群から選択される化合物が好ましい。
【0049】
活性プロトンを有する化合物群としては、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物およびその誘導体、カルボン酸およびその誘導体、酸性リン酸エステルおよびその誘導体、アゾ-ル系化合物およびその誘導体、1,2,3-トリアゾールおよびその誘導体、環状カルボスルホイミド類、炭素数2~5のハロヒドリン類、スルホン酸およびその誘導体、ならびに無機酸類等が挙げられる。カルボン酸およびその誘導体としては、芳香族カルボン酸およびその誘導体、または、炭素数2~5の脂肪族カルボン酸およびその誘導体が好ましい。
偽酸性化合物群としては、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物の金属塩、カルボン酸の金属塩、酸性リン酸エステルの金属塩、スルホン酸の金属塩、芳香族カルボン酸無水物、脂肪族カルボン酸無水物、芳香族カルボン酸とスルホン酸の混合無水物、シクロオレフィンジカルボン酸無水物、尿素およびその誘導体、チオ尿素およびその誘導体、グアニジンおよびその誘導体、ならびにハロゲン化アルコール類等が挙げられる。
電子空孔を有する化合物群としては、硼酸塩類、硼酸エステル類、および無機塩類等が挙げられる。
【0050】
上記の(ロ)成分の中でも、より有効に熱変色特性を発現させることができることから、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物が好ましい。
フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物には、モノフェノール化合物からポリフェノール化合物まで広く含まれ、さらに、ビスフェノール化合物およびトリスフェノール化合物、フェノール-アルデヒド縮合樹脂等もこれに含まれる。フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物は、少なくともベンゼン環を2個以上有することが好ましい。また、フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物は、アルキル基、アリール基、アシル基、アルコキシカルボニル基、カルボキシ基およびそのエステルまたはアミド基、ハロゲン原子等の置換基を有していてもよい。
【0051】
フェノール性ヒドロキシ基を有する化合物等の金属塩が含む金属としては、例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、コバルト、スズ、銅、鉄、バナジウム、チタン、鉛、およびモリブデン等を例示できる。
【0052】
以下に、(ロ)成分に用いることができる化合物を例示する。
フェノール、o-クレゾール、4-n-p-ノニルフェノール、4-n-オクチルフェノール、4-n-ドデシルフェノール、4-n-ステアリルフェノール、4-クロロフェノール、4-ブロモフェノール、2-フェニルフェノール、4-ヒドロキシ安息香酸n-ブチル、4-ヒドロキシ安息香酸n-オクチル、レゾルシン、4-tert-ブチルカテコール、2,4-ジヒドロキシ-4′-tert-ブチルベンゾフェノン、没食子酸ドデシル、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-メチルプロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3-メチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,3-ジメチルペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルブタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2-エチルヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,7-ジメチルオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1-フェニル-1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-へプタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-オクタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ノナン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-デカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)n-ドデカン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチルプロピオネート、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルペンタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルヘキサン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)ブタン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、1,3-ビス〔2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル〕ベンゼン、ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン、4,4′-ジヒドロキシジフェニルスルホン、4-イソプロポキシ-4′-ヒドロキシジフェニルスルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド、1,1,1-トリス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、4,4′-[1-{4-〔1-(4-ヒドロキシフェニル)-1-メチルエチル〕フェニル}エチリデン]ビスフェノール、4,4′-〔4-(4-ヒドロキシフェニル)-sec-ブチリデン〕ビス(2-メチルフェノール)
【0053】
(イ)成分および(ロ)成分による電子授受反応を特定温度域において可逆的に生起させる反応媒体の(ハ)成分について説明する。
(ハ)成分としては、アルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類が挙げられる。
本発明による可逆熱変色性組成物をマイクロカプセル化および二次加工に応用する場合は、低分子量のものは高熱処理を施すとカプセル外に蒸散するので、安定的にカプセル内に保持させるために炭素数10以上の化合物が好適に用いられる。
【0054】
アルコール類としては、炭素数10以上の脂肪族一価の飽和アルコールが有効である。
【0055】
エステル類としては、炭素数10以上のエステル類が有効であり、脂肪族および脂環あるいは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族および脂環あるいは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族および脂環あるいは芳香環を有する多価カルボン酸と、脂肪族および脂環あるいは芳香環を有する一価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類、脂肪族および脂環あるいは芳香環を有する一価カルボン酸と、脂肪族および脂環あるいは芳香環を有する多価アルコールの任意の組み合わせから得られるエステル類が挙げられる。
【0056】
また、飽和脂肪酸と分枝脂肪族アルコールとのエステル、不飽和脂肪酸または分枝もしくは置換基を有する飽和脂肪酸と、分岐状であるかまたは炭素数16以上の脂肪族アルコールとのエステル、酪酸セチル、酪酸ステアリルおよび酪酸ベヘニルから選ばれるエステル化合物も有効である。
【0057】
さらに、色濃度-温度曲線に関して大きなヒステリシス特性を示して変色し、温度変化に依存して色彩記憶性を与えるためには、特公平4-17154号公報に記載された5℃以上50℃未満のΔT値(融点-曇点)を示すカルボン酸エステル化合物を例示できる。
【0058】
また、炭素数9以上の奇数の脂肪族一価アルコールと炭素数が偶数の脂肪族カルボン酸から得られる脂肪酸エステル化合物、n-ペンチルアルコールまたはn-ヘプチルアルコールと、炭素数10~16の偶数の脂肪族カルボン酸より得られる総炭素数17~23の脂肪酸エステル化合物も有効である。
【0059】
ケトン類としては、総炭素数が10以上の脂肪族ケトン類が有効であり、総炭素数が12~24のアリールアルキルケトン類が挙げられる。
【0060】
エーテル類としては、総炭素数10以上の脂肪族エーテル類が有効である。
【0061】
上記のアルコール類、エステル類、ケトン類、エーテル類、酸アミド類としては、例えば、特開2020-100710号公報に記載された化合物を例示できる。
【0062】
また、(ハ)成分として下記式(1)で示される化合物であってもよい。
【化1】
〔式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、mは0~2の整数を示し、XおよびXのいずれか一方は-(CHOCORまたは-(CHCOOR、他方は水素原子を示し、nは0~2の整数を示し、Rは炭素数4以上のアルキル基またはアルケニル基を示し、YおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、rおよびpはそれぞれ独立して、1~3の整数を示す〕
式(1)で示される化合物のうち、Rが水素原子の場合、より広いヒステリシス幅を有する可逆熱変色性組成物が得られるため好ましく、さらにRが水素原子であり、かつ、mが0の場合がより好ましい。
なお、式(1)で示される化合物のうち、より好ましくは下記式(2)で示される化合物である。
【化2】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基またはアルケニル基を示し、好ましくは炭素数10~24のアルキル基であり、より好ましくは炭素数12~22のアルキル基である)
【0063】
さらに、(ハ)成分として下記式(3)で示される化合物であってもよい。
【化3】
(式中、Rは炭素数8以上のアルキル基またはアルケニル基を示し、mおよびnはそれぞれ独立して、1~3の整数を示し、XおよびYはそれぞれ独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
【0064】
さらに、(ハ)成分として下記式(4)で示される化合物であってもよい。
【化4】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1~3の整数を示し、nは1~20の整数を示す)
【0065】
さらに、(ハ)成分として下記式(5)で示される化合物であってもよい。
【化5】
(式中、Rは炭素数1~21のアルキル基またはアルケニル基を示し、nは1~3の整数を示す)
【0066】
さらに、(ハ)成分として下記式(6)で示される化合物であってもよい。
【化6】
(式中、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、mは1~3の整数を示し、nは1~20の整数を示す)
【0067】
さらに、(ハ)成分として下記式(7)で示される化合物であってもよい。
【化7】
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0または1を示す)
【0068】
さらに、(ハ)成分として下記式(8)で示される化合物であってもよい。
【化8】
(式中、Rは炭素数3~18のアルキル基または炭素数3~18の脂肪族アシル基を示し、Xは水素原子、炭素数1~3のアルキル基、炭素数1または2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子またはメチル基を示し、Zは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1または2のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
【0069】
さらに、(ハ)成分として下記式(9)で示される化合物であってもよい。
【化9】
(式中、Rは炭素数4~22のアルキル基、炭素数4~22のアルケニル基、シクロアルキルアルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは0または1を示す)
【0070】
さらに、(ハ)成分として下記式(10)で示される化合物であってもよい。
【化10】
(式中、Rは炭素数3~18のアルキル基、炭素数6~11のシクロアルキルアルキル基、炭素数5~7のシクロアルキル基、炭素数3~18のアルケニル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~3のアルコキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、Yは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示す)
【0071】
さらに、(ハ)成分として下記式(11)で示される化合物であってもよい。
【化11】
(式中、Rは炭素数3~8のシクロアルキル基または炭素数4~9のシクロアルキルアルキル基を示し、nは1~3の整数を示す)
【0072】
さらに、(ハ)成分として下記式(12)で示される化合物であってもよい。
【化12】
(式中、Rは炭素数3~17のアルキル基、炭素数3~8のシクロアルキル基、炭素数5~8のシクロアルキルアルキル基のいずれかを示し、Xは水素原子、炭素数1~5のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、ハロゲン原子のいずれかを示し、nは1~3の整数を示す)
【0073】
式(2)~(12)で示される化合物としては、例えば、特開2020-100710号公報に記載された化合物を例示できる。
【0074】
可逆熱変色性組成物として、特公昭51-44706号公報、特開2003-253149号公報等に記載された、没食子酸エステルを用いた加熱発色型の可逆熱変色性組成物を用いることもできる。加熱発色型とは、加熱により発色し、冷却により消色することを意味する(図3参照)。
【0075】
可逆熱変色性組成物は、上記の(イ)成分、(ロ)成分、および(ハ)成分を必須成分とする相溶体であり、各成分の割合は、濃度、変色温度、変色形態や各成分の種類に左右されるが、一般的に所望の特性が得られる成分比は、(イ)成分1に対して、(ロ)成分0.1~100、好ましくは0.1~50、より好ましくは0.5~20、(ハ)成分1~800、好ましくは5~200、より好ましくは5~100、さらに好ましくは10~100の範囲である(上記した割合はいずれも質量部である)。
【0076】
可逆光変色性材料としては、太陽光、紫外光、またはピーク発光波長が400~495nmの範囲にある青色光を照射すると発色し、照射を止めると消色する従来公知のスピロオキサジン誘導体、スピロピラン誘導体、およびナフトピラン誘導体等のフォトクロミック化合物が挙げられ、例えば、特開2021-120493号公報、国際公開第2020/137469号パンフレットに記載された化合物を例示できる。
【0077】
さらに、光メモリー性(色彩記憶性光変色性)を有するフォトクロミック化合物を用いることもできる。このようなフォトクロミック化合物としては、ジアリールエテン誘導体等が挙げられ、例えば、特開2021-120493号公報に記載された化合物を例示できる。
【0078】
可逆光変色性材料として、上記のフォトクロミック化合物を各種オリゴマーに溶解した可逆光変色性組成物を用いることもできる。
オリゴマーとしては、スチレン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、テルペン系オリゴマー、テルペンフェノール系オリゴマー等が挙げられる。
フォトクロミック化合物を各種オリゴマーに溶解させることにより耐光性と共に発色濃度を向上させることができ、さらには変色感度を調整することができる。
【0079】
スチレン系オリゴマーとしては、質量平均分子量が200~6000のものが好ましく、200~4000のものがより好ましい。質量平均分子量が6000を超えると、光照射により色残りが発生すると共に発色濃度が低くなり易く、また、変色感度の調整が困難となり易くなる。一方、質量平均分子量が200未満では、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、耐光性が損なわれ易くなる。
スチレン系オリゴマーは、スチレン骨格を有する化合物またはその水添物であり、例えば、低分子量ポリスチレン、スチレン・α-メチルスチレン共重合体、α-メチルスチレン重合体、α-メチルスチレン・ビニルトルエン共重合体等を例示できる。
【0080】
アクリル系オリゴマーとしては、質量平均分子量が12000以下のものが好ましく、1000~8000のものがより好ましく、1500~6000のものがさらに好ましい。質量平均分子量が12000を超えると、変色感度の調整が困難となり易くなる。一方、質量平均分子量が1000未満では、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、発色濃度が低くなり易くなると共に、耐光性が損なわれ易くなる。
アクリル系オリゴマーとしては、例えば、アクリル酸エステル共重合体等を例示できる。
【0081】
テルペン系オリゴマーとしては、質量平均分子量が250~4000のものが好ましく、300~4000のものがより好ましい。質量平均分子量が4000を超えると、光照射により色残りが発生すると共に発色濃度が低くなり易く、また、変色感度の調整が困難となり易くなる。一方、質量平均分子量が250未満では、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、耐光性を損ない易くなる。
テルペン系オリゴマーは、テルペン骨格を有する化合物であり、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、d-リモネン重合体等を例示できる。
【0082】
テルペンフェノール系オリゴマーとしては、質量平均分子量が200~2000のものが好ましく、500~1200のものがより好ましい。テルペンフェノール系オリゴマーの質量平均分子量が2000を超えると、変色感度の調整が困難となり易くなる。一方、質量平均分子量が200未満では、含有モノマーが多くなり安定性に欠けるため、発色濃度が低くなり易くなる。
テルペンフェノール系オリゴマーは、環状テルペンモノマーとフェノール類とを共重合させた化合物またはその水添物であり、例えば、α-ピネン・フェノール共重合体等が挙げられる。
【0083】
上記のスチレン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、テルペン系オリゴマー、テルペンフェノール系オリゴマーの質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0084】
オリゴマーは、一種または二種以上を併用して用いることができる。
【0085】
可逆光変色性組成物における、フォトクロミック化合物:スチレン系オリゴマー、または、フォトクロミック化合物:アクリル系オリゴマーの質量比は、好ましくは1:1~1:10000、より好ましくは1:5~1:500である。
可逆光変色性組成物における、フォトクロミック化合物:テルペン系オリゴマーの質量比は、好ましくは1:1~1:5000、より好ましくは1:5~1:500である。
可逆光変色性組成物における、フォトクロミック化合物:テルペンフェノール系オリゴマーの質量比は、好ましくは1:1~1:50、より好ましくは1:2~1:30である。
フォトクロミック化合物とオリゴマーの質量比が上記の範囲内にあることにより、フォトクロミック化合物が発消色機能を満たすと共に、十分な発色濃度を示し易くなる。
【0086】
可逆熱変色性組成物または可逆光変色性組成物は、マイクロカプセルに内包させて可逆熱変色性マイクロカプセル顔料または可逆光変色性マイクロカプセル顔料(以下、「マイクロカプセル顔料」と表すことがある)を形成したり、熱可塑性樹脂または熱硬化性樹脂中に分散させて可逆熱変色性樹脂粒子または可逆光変色性樹脂粒子を形成したりして、可逆熱変色性材料または可逆光変色性材料として使用することができる。可逆熱変色性組成物または可逆光変色性組成物はマイクロカプセルに内包させてマイクロカプセル顔料として使用することが好ましい。これは、マイクロカプセルに内包させることにより、化学的、物理的に安定な顔料を構成することができ、種々の使用条件において、可逆熱変色性組成物または可逆光変色性組成物は同一の組成に保たれ、同一の作用効果を奏することができるからである。
【0087】
マイクロカプセル化は、公知のイソシアネート系の界面重合法、メラミン-ホルマリン系等のin Situ重合法、液中硬化被覆法、水溶液からの相分離法、有機溶媒からの相分離法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法等があり、用途に応じて適宜選択される。
【0088】
マイクロカプセルの表面には、目的に応じてさらに二次的な樹脂皮膜を設けて耐久性を付与させたり、表面特性を改質させて実用に供したりすることもできる。
【0089】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料または可逆光変色性マイクロカプセル顔料は、内包物:壁膜の質量比が7:1~1:1であることが好ましく、内包物と壁膜の質量比が上記の範囲内にあることにより、発色時の色濃度および鮮明性の低下を防止することができる。より好ましくは、内包物:壁膜の質量比は6:1~1:1である。
【0090】
液状組成物の総質量に対する変色性材料の配合割合は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。変色性材料の配合割合が40質量%を超えると、ビヒクル中への分散に際して分散安定性や加工適性に欠け易くなり、また発色濃度の顕著な向上は認められ難く、さらに消色状態において残色を生じ易くなる。一方、配合割合が0.5質量%未満では、所望の発色濃度を示し難くなり、変色機能を十分に満たし難くなる。
【0091】
なお、マイクロカプセル化の際に、一般の染料や顔料等の非変色性着色剤を配合することにより、マイクロカプセル顔料に有色(1)から有色(2)への互変的色変化をもたらすこともできる。
【0092】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料または可逆光変色性マイクロカプセル顔料の平均粒子径は、好ましくは0.5~10μm、より好ましくは0.5~5μm、さらに好ましくは1~3μmの範囲が実用を満たす。平均粒子径が10μmを超えると、液状組成物中へのブレンドに際して、分散安定性や加工適性に欠け易くなる。一方、平均粒子径が0.5μm未満では、高濃度の発色性を示し難くなる。
【0093】
平均粒子径は、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア〔(株)マウンテック製、製品名:マックビュー〕を用いて粒子の領域を判定し、粒子の領域の面積から投影面積円相当径(Heywood径)を算出し、その値による等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定した値である。
また、全ての粒子あるいは大部分の粒子の粒子径が0.2μmを超える場合は、粒度分布測定装置〔ベックマン・コールター(株)製、製品名:Multisizer 4e〕を用いて、コールター法により等体積球相当の粒子の平均粒子径として測定することも可能である。
さらに、上記のソフトウェアまたはコールター法による測定装置を用いて計測した数値を基にして、キャリブレーションを行ったレーザー回折/散乱式粒子径分布測定装置〔(株)堀場製作所製、製品名:LA-300〕を用いて、体積基準の粒子径および平均粒子径を測定してもよい。
【0094】
本発明による基材は感温性を有するため、変色性材料としては温度変化により色変化する熱変色性材料を用いることが好適である。これは後述する積層体における、基材の形状変形性および形状保持性、ならびに、変色層の色変化を、温度変化のみで発現させることができるためである。繰り返し色変化させることができることから、熱変色性材料としては上記した可逆熱変色性材料が好ましく、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料がより好ましい。
【0095】
損失正接の極大値を示す温度(T)は、可逆熱変色性材料(可逆熱変色性組成物)の完全発色温度tあるいは完全消色温度tと略同一であることが好ましい。これにより後述する積層体において、基材の柔軟性が変化する温度と、変色層が色変化する温度を同調させることができ、基材の柔軟性が変化する温度に達したかどうかを、変色層の色変化により判別することができる。
【0096】
ここで「略同一」とは、温度Tと温度t、あるいは温度Tと温度tが全く同一の温度であることを含み、また本発明においては、温度Tと温度tの差(Δt=T-t)が2℃以下を満たすこと、あるいは、温度Tと温度tの差(Δt=t-T)が2℃以下を満たすことも含まれる。すなわち本発明における「略同一」とは、0≦Δt≦2、あるいは、0≦Δt≦2を満たすことである。
ΔtあるいはΔtに関して、好ましくは0≦Δt≦1、あるいは、0≦Δt≦1、より好ましくは0≦Δt<1、あるいは、0≦Δt<1、さらに好ましくはΔt=0(T=t)、あるいは、Δt=0(T=t)である。
【0097】
損失正接の極大値を示す温度が可逆熱変色性材料の完全発色温度tと同一である、すなわちΔt=0(T=t)である場合について、以下に一例を示す。
発色状態の積層体を温度t以上に加熱すると、積層体は消色状態になる。この時、基材は柔軟性を有しており、外力の適用により積層体を任意形状に変形させることができる。積層体を外力の適用により任意形状に変形させた後、外力を適用したまま温度T(温度t)未満に冷却すると、積層体は発色状態になると共に、外力を除去しても積層体を変形形状で保持させることができる。よって、積層体の柔軟性が変化して、外力を適用することなく積層体を変形形状で保持させることができる温度に達したことを、積層体の消色状態から発色状態への変化、すなわち、変色層の色変化により判別することができる。
【0098】
損失正接の極大値を示す温度が可逆熱変色性材料の完全消色温度tと同一である、すなわちΔt=0(T=t)である場合について、以下に一例を示す。
発色状態の積層体を温度T(温度t)以上に加熱すると、積層体は消色状態になると共に、外力の適用により積層体を任意形状に変形させることができる。よって、積層体の柔軟性が変化して、外力の適用により積層体を任意形状に変形させることができる温度に達したことを、積層体の発色状態から消色状態への変化、すなわち、変色層の色変化により判別することができる。
【0099】
損失正接の極大値を示す温度(T)は、可逆熱変色性材料(可逆熱変色性組成物)の完全発色温度tと完全消色温度tの間にあり、Δt≧5またはΔt≧5の少なくとも一方を満たすことが好ましく、Δt≧5およびΔt≧5を満たすことがより好ましい。これにより、後述する積層体において、基材の柔軟性が変化する温度より十分高い温度に達して、外力の適用により容易に任意形状に変形させることができること、あるいは、外力の適用により積層体を任意形状に変形させた後で、基材の柔軟性が変化する温度より十分低い温度に達して、外力を適用することなく変形形状が良好に保持されることを、変色層の色変化により判別することができる。
ΔtあるいはΔtに関して、好ましくはΔt≧10、あるいは、Δt≧10である。
【0100】
損失正接の極大値を示す温度が、可逆熱変色性材料の完全発色温度tと完全消色温度tの間にあり、Δt≧5およびΔt≧5を満たす場合について、以下に一例を示す。
積層体は温度Tにおいて発色状態であり、この発色状態の積層体を温度t以上に加熱すると、積層体は消色状態になると共に、外力の適用により積層体を容易に任意形状に変形させることができる。よって、基材の柔軟性が変化する温度より十分高い温度に達して、積層体を外力の適用により容易に任意形状に変形させることができることを、積層体の発色状態から消色状態への変化、すなわち、変色層の色変化により判別することができる。
外力の適用により積層体を任意形状に変形させた後、外力を適用したまま温度t以下に冷却すると、積層体は発色状態になると共に、外力を除去しても積層体の変形形状が良好に保持される。よって、基材の柔軟性が変化する温度より十分に低い温度に達して、外力を適用することなく積層体の変形形状が良好に保持されることを、積層体の消色状態から発色状態への変化、すなわち、変色層の色変化により判別することができる。
ここで、温度t以上に加熱されて任意形状に変形させた積層体を、外力を適用したまま温度tを超え温度T未満の温度域に冷却すると、積層体を消色状態として、外力を適用することなく変形形状で保持させることができる。そして、温度t以下に冷却しない限り、消色状態のままで、任意形状への変形と変形形状の保持を繰り返し行うことができる。また、温度t以下に冷却すると積層体は発色状態となり。温度T以上温度t未満の温度域に加熱すると、積層体を発色状態として、外力の適用により任意形状へ変形させることができる。そして、温度t以上に加熱しない限り、発色状態のままで、任意形状への変形と変形形状の保持を繰り返すことができる。
つまり、積層体を発色状態または消色状態のいずれかを選択して保持させつつ、任意形状への変形と変形形状の保持を繰り返し行うことができる。
【0101】
本発明に適用されるビヒクルは少なくとも、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)(以下、「重合体(B)」と表すことがある)と、溶剤とを含有してなる。ここで、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)は、本発明による液状組成物において、バインダー樹脂としての効果を奏するものである。また、4-メチル-1-ペンテン系重合体は、変色性材料の発色、消色、変色等に影響しない。
【0102】
基材を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)と、ビヒクルに含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)は、共に4-メチル-1-ペンテンを構成モノマーとして含むものである。その結果、重合体(A)および重合体(B)の性質は似ており、液状組成物は、基材に対する親和性が高い。よって、本発明による液状組成物を用いることにより、基材に対する接着性に優れると共に、伸縮や屈曲等の変形に対して良好な追従性を有する変色層を形成することができる。
【0103】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)としては特に限定されるものではないが、例えば、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位(b1)と、4-メチル-1-ペンテン以外の炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位(b2)を含む、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)(以下、「共重合体(b)」と表すことがある)が挙げられる。ここで、「炭素数2~20のα-オレフィン」は、特に断らない限り、4-メチル-1-ペンテンを含まないことを意味する。
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体は、液状組成物により形成される変色層の、基材に対する接着性と、伸縮や屈曲等の変形に対する追従性をよりいっそう良好とすることから、液状組成物を構成する材料として好適に用いられる。
【0104】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)において、構成単位(b1)と構成単位(b2)の配合割合は特に限定されるものではない。後述する溶剤に対する溶解性が良好であり、液状組成物の安定性に優れることから、構成単位(b1)と構成単位(b2)との合計を100mol%とした場合、構成単位(b1)が50~95mol%であり、構成単位(b2)が5~50mol%であることが好ましく、構成単位(b1)が70~90mol%であり、構成単位(b2)が10~30mol%であることがより好ましい。
【0105】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)に用いられる、炭素数2~20のα-オレフィンとしては、例えば、直鎖状または分岐状α-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、官能基化ビニル化合物等を例示できる。
直鎖状または分岐状α-オレフィン、環状オレフィン、芳香族ビニル化合物、共役ジエン、官能基化ビニル化合物としては、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(a)に用いられる炭素数2~20のα-オレフィンで例示される化合物と同様のものを用いることができる。
【0106】
α-オレフィンは、一種または二種以上を併用して用いることができる。
【0107】
α-オレフィンとしては、炭素数2~4の直鎖状α-オレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等を例示できる。共重合体(b)の共重合性および物性に優れることから、エチレンまたはプロピレンがより好ましく、プロピレンがさらに好ましい。
【0108】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)における、4-メチル-1-ペンテンおよびα-オレフィン等の配合割合は、例えば、13C NMRにより測定することができる。
【0109】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)は、後述する要件(iv)~(vii)を満たすことが好ましい。
【0110】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)は、(iv)135℃のデカリン中での極限粘度[η]が、好ましくは0.5~5.0dL/g、より好ましくは0.6~4.0dL/g、さらに好ましくは1.0~2.5dL/gである。極限粘度[η]が上記の範囲内にあることにより、液状組成物の安定性を良好とすることができる。極限粘度[η]は、共重合体(b)を調製する際の、重合工程における水素の添加量により調整することができる。
極限粘度[η]は、前述と同様の方法により測定することができる。
【0111】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)は、(v)示差走査熱量測定(DSC)により測定した融点(Tm)が、200℃以下、または実質的に融点がないことが好ましく、融点が110~180℃、または実質的に融点がないことがより好ましく、融点が160℃未満、または実質的に融点がないことがさらに好ましい。融点(Tm)は、共重合体(b)における炭素数2~20のα-オレフィンの配合割合により調整することができる。
融点(Tm)は、下記の示差走査熱量測定により測定することができる。
【0112】
(示差走査熱量測定)
1.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体約5mgをアルミニウム製容器に入れ蓋をして密封し、測定用試料とする。
2.測定用試料を測定装置にセットし、10℃/minの昇温速度で290℃まで昇温させ、290℃で5分間保持し、10℃/minの冷却速度で-50℃まで降温させる。
3.得られるDSC曲線における融解による吸熱ピークの頂点の温度から、融点(Tm)を求める。
【0113】
DSC曲線において、吸熱ピークの面積は融解エンタルピー(ΔH)を表す。融点が存在しない場合は吸熱ピークが観測されないことから、吸熱ピークの面積、すなわち融解エンタルピー(ΔH)は求められない。
本発明において「実質的に融点が存在しない」とは、DSC曲線における融解エンタルピーが実質的に存在しないことを意味する。「融解エンタルピーが実質的に存在しない」とは、融解エンタルピー(ΔH)が0~10J/gであることも含み、好ましくは0~5J/gである。
【0114】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)は、(vi)密度が、好ましくは820~850kg/m、より好ましくは825~850kg/m、さらに好ましくは825~845kg/m、特に好ましくは825~840kg/mである。密度は、共重合体(b)における炭素数2~20のα-オレフィンの種類、あるいは、4-メチル-1-ペンテンおよび炭素数2~20のα-オレフィンの配合割合により調整することができる。
密度は、JIS K7112に準拠した方法により測定することができる。
【0115】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)は、(vii)ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した分子量分布(Mw/Mn)が、好ましくは1.0~3.5、より好ましくは1.3~3.0、さらに好ましくは1.5~2.5である。ここで、分子量分布(Mw/Mn)とは、質量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比を表す。分子量分布(Mw/Mn)が上記の範囲内にあることにより、後述する溶剤に対する溶解性を良好とすることができる。分子量分布(Mw/Mn)は、共重合体(b)を調製する際に用いられる重合用触媒の種類により調整することができる。
分子量分布(Mw/Mn)は、下記のゲル浸透クロマトグラフィーにより質量平均分子量(Mw)および数平均分子量(Mn)を測定し、求めることができる。
【0116】
(ゲル浸透クロマトグラフィー)
1.カラム温度を140℃とし、移動相にはo-ジクロロベンゼンおよび酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン)0.025質量%を用い、1.0mL/minで移動させる。
2.4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体の濃度を15mg/10mLに調整し、500μL注入し、示差屈折計を用いて検出する。
【0117】
4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)の製造方法は特に限定されるものではなく、種々の方法により製造することができる。例えば、重合用触媒の存在下で、4-メチル-1-ペンテンと、炭素数2~20のα-オレフィンとを重合することにより製造することができる。
【0118】
溶剤としては、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)を溶解できると共に、変色性材料の発色、消色、変色等に影響がないものであれば特に限定されるものではない。溶剤としては、例えば、脂肪族炭化水素系溶剤、芳香族系溶剤、テトラヒドロフラン、シンナー、リモネン等を例示できる。
【0119】
脂肪族炭化水素系溶剤としては、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン等のアルカン系溶剤;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、エクソールシリーズ(エクソンモービル社製)等のナフテン系溶剤;IPソルベントシリーズ〔出光興産(株)製〕、MCシリーズ〔東部ケミカル(株)製〕、アイソパーシリーズ(エクソンモービル社製)等のイソパラフィン系溶剤を例示できる。
【0120】
芳香族系溶剤としては、トルエン、キシレン、ソルベッソシリーズ(エクソンモービル社製)、イプゾールシリーズ〔出光興産(株)製〕、ミネラルスピリット等を例示できる。
【0121】
溶剤の沸点としては特に限定されるものではないが、好ましくは20~300℃、より好ましくは50~250℃、さらに好ましくは70~230℃、特に好ましくは100~220℃である。沸点が上記の範囲内にあることにより、液状組成物の安定性とハンドリング性を良好とすることができる。
【0122】
本発明によるビヒクルには、各種オリゴマーを含有させることにより液状組成物中における変色性材料の分散性を向上させることができる。これにより、液状組成物により形成される変色層の濃度が均一となり、分散不良に伴うざらつきがなく、外観に優れる変色層を得ることができる。
【0123】
オリゴマーとしては、例えば、スチレン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、テルペン系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー等を例示できる。これらの中でも、4-メチル-1-ペンテン系重合体との相溶性に優れることから、スチレン系オリゴマーが好ましい。
【0124】
4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)の中でも相溶性に優れることから、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体が好ましい。4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体とスチレン系オリゴマーとを併用させることにより、変色性材料の分散性が向上し、変色層の外観をよりいっそう優れるものとすることができる。
【0125】
スチレン系オリゴマーとしては、質量平均分子量が200~6000のものが好ましく、200~4000のものがより好ましい。質量平均分子量が上記の範囲内にあることにより、変色性材料の分散性をよりいっそう向上させることができる。なお、質量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0126】
スチレン系オリゴマーは、スチレン骨格を有する化合物またはその水添物であり、例えば、スチレン・α-メチルスチレン共重合体、α-メチルスチレン重合体、α-メチルスチレン・ビニルトルエン共重合体等を例示できる。
【0127】
スチレン・α-メチルスチレン共重合体としては、例えば、ピコラスチックA-5(イーストマンケミカル社製、質量平均分子量:317)、ピコラスチックA-75(イーストマンケミカル社製、質量平均分子量:917)等を例示できる。
【0128】
α-メチルスチレン重合体としては、例えば、クリスタレックス3085(イーストマンケミカル社製、質量平均分子量:664)、クリスタレックス3100(イーストマンケミカル社製、質量平均分子量:1020)、クリスタレックス1120(イーストマンケミカル社製、質量平均分子量:2420)等を例示できる。
【0129】
α-メチルスチレン・ビニルトルエン共重合体としては、ピコテックスLC(イーストマンケミカル社製、質量平均分子量:950)、ピコテックス100(イーストマンケミカル社製、質量平均分子量:1740)等を例示できる。
【0130】
オリゴマーは、一種または二種以上を併用して用いることができる。
【0131】
本発明による液状組成物における、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B):スチレン系オリゴマーの質量比は特に限定されるものではないが、好ましくは1:0.5~1:5、より好ましくは1:1~1:2である。質量比が上記の範囲内にあることにより、変色性材料の分散性を良好とすることが容易となる。
【0132】
ビヒクルには、その他必要に応じて、各種添加剤を配合させることもできる。
添加剤としては、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、潤滑剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等を例示できる。
【0133】
液状組成物中に、一般の染料及び顔料等の非変色性着色剤を配合することにより、液状組成物により形成される変色層に、有色(1)から有色(2)への互変的色変化をもたらすこともできる。
【0134】
本発明による液状組成物における、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B):変色性材料の質量比は特に限定されるものではないが、好ましくは1:0.5~1:5、より好ましくは1:0.5~1:2、さらに好ましくは1:1~1:2である。質量比が上記の範囲内にあることにより、変色性材料のビヒクル中への分散に際して、変色性材料を安定的に分散させ易くなると共に、液状組成物により形成される変色層が所望の色濃度を示し易くなる。
【0135】
本発明による液状組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、上記した各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、もしくはホモミキサー等の各種撹拌機で攪拌することにより、またはビーズミル等の各種分散機等で分散することにより、液状組成物を製造することができる。
【0136】
液状組成物により形成される変色層の、基材に対する接着性、および、伸縮や屈曲等の変形に対する追従性の観点から、重合体(A)および重合体(B)が共に、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含むことが好ましい。そして、α-オレフィンがプロピレンである、すなわち、重合体(A)および重合体(B)が共にプロピレン由来の構成単位を含むことがより好ましい。
【0137】
上記した4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、溶剤と、必要により各種添加剤を含有してなるビヒクル中に、変色性材料を分散させることで、
スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷等に用いられる印刷用インキ;刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料;インクジェット用インキ;紫外線硬化型インキ等の変色性液状組成物とすることができる。
【0138】
本発明による液状組成物を印刷用インキとして用いる場合、液状組成物の総質量に対する溶剤の配合割合は特に限定されるものではないが、好ましくは50~80質量%、より好ましくは60~80質量%である。
本発明による液状組成物を塗料として用いる場合、液状組成物の総質量に対する溶剤の配合割合は特に限定されるものではないが、好ましくは70~90質量%、より好ましくは75~85質量%である。
溶剤の配合割合が上記の範囲内にあることにより、液状組成物の安定性とハンドリング性を良好とすることができる。
【0139】
本発明による変色性積層体は、上記した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成される基材上に、本発明による液状組成物から溶剤が揮発して形成される変色層を設けてなる構成である。変色性積層体の製造方法としては特に限定されるものではないが、例えば、基材上に液状組成物を印刷あるいは塗布し、液状組成物から溶剤を揮発させて変色層を形成することにより、製造することができる。
【0140】
本発明による変色性積層体は、熱や光により色変化すると共に、基材由来の感温性、形状変形性、および形状保持性を有する。また、基材に対する変色層の接着性に優れると共に、積層体の伸縮あるいは屈曲等の変形に対して変色層が剥離したり、破断したりすることがなく、変色層の追従性にも優れるものである。
【0141】
変色層はベタ柄であってもよいが、円形、楕円形、正方形、長方形等の図形、各種文字、記号、模様等のほか、人、動物、植物、果実、食料品、乗物、建物、天体等の像(変色像)であってもよい。
なお、変色層あるいは変色像は、液状組成物中の溶剤が揮発してそれ以外の化合物により形成されるものである。
【0142】
本発明による積層体の変色層上には透明性樹脂層を設けてもよく、積層体を変形させる際の外力や、擦過等の外的要因による変色層の損傷を防止して、変色層の耐久性を良好とすることができる。
【0143】
透明性樹脂層としては、下層に位置する変色層の発色、消色、変色機能に影響を及ぼさず、変色層の色変化が視認でき、積層体の変形に対して追従性を有するものであれば特に限定されるものではない。例えば、透明性樹脂を含む印刷インキや塗料等の液状組成物を、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、転写印刷等の印刷方法、または、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の塗布方法により、変色層上に印刷または塗布することによって、変色層上に透明性樹脂層を設けることができる。
なお、透明性樹脂層は、液状組成物中の溶剤等の揮発成分が揮発して、透明性樹脂により形成される層である。
【0144】
透明性樹脂としては特に限定されるものではなく、汎用の透明性樹脂を用いることができる。変色層に対する接着性、および、積層体の変形に対する追従性の観点から、透明性樹脂としては、4-メチル-1-ペンテン系重合体を用いることが好ましい。
4-メチル-1-ペンテン系重合体は、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含むことが好ましく、α-オレフィンがプロピレンであること、すなわち4-メチル-1-ペンテン系重合体が、4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位と、プロピレン由来の構成単位を含むことがより好ましい。
【0145】
透明性樹脂中には、光安定剤または透明性金属光沢顔料の少なくとも一方を含有させることもでき、変色層の耐光性を向上させることができる。
光安定剤としては、紫外線吸収剤、酸化防止剤、一重項酸素消光剤、スーパーオキシドアニオン消光剤、オゾン消光剤等が挙げられる。
透明性金属光沢顔料としては、芯物質として天然雲母、合成雲母、ガラス片、アルミナ、透明性フィルム片の表面を酸化チタン等の金属酸化物で被覆した顔料等が挙げられる。
【0146】
透明性樹脂層として、透明性樹脂フィルムを用いることも好適である。透明性樹脂フィルムは、積層体を変形させる際の外部応力や、擦過等の外的要因による変色層の損傷を防止する効果によりいっそう優れ、変色層の耐久性をさらに良好とすることができる。
透明性樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;酢酸セルロース等のセルロース誘導体;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂;ポリアミド樹脂;ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のビニルアルコール樹脂;塩化ビニル樹脂;塩化ビニリデン樹脂;アクリル酸エステル樹脂;ポリアクリル酸;レーヨン;キュプラ等の汎用の樹脂からなるフィルムを例示できる。
【0147】
透明性樹脂フィルムの厚みは特に限定されるものではないが、好ましくは3~50μm、より好ましくは5~25μm、さらに好ましくは10~20μmである。透明性樹脂フィルムの厚みが上記の範囲内にあることにより、変色層の耐久性を高める効果に優れながらも、基材の形状変形性や形状保持性を損なうことがなく、積層体の変形に対しても追従させることができる。
【0148】
透明性樹脂層として透明性樹脂フィルムを用いる場合には、透明性樹脂フィルムと変色層の間に接着剤による接着層を設ける、あるいは、接着剤による接着層を備えた透明性樹脂フィルムを用いることが好適である。
【0149】
本発明による積層体において基材は、ガラス転移温度以上の温度域で弾性率が低くなり、粘性的性状を示すため粘着性を帯びやすい。そのため、ガラス転移温度付近の温度で積層体同士を直接接触させると、基材同士あるいは基材と変色層が密着(いわゆる、ブロッキング)し、密着部分を剥がそうとすると積層体が元の形状に戻らないことがある。そのため、基材の、変色層が設けられる反対の面に粘着抑制層を設けることも好適である。
【0150】
粘着抑制層としては、基材の粘着性を抑制することができるものであれば特に限定されるものではない。例えば、汎用の樹脂フィルム等を用いることができるが、積層体の保管時に基材と樹脂フィルムとの間でズレが生じるおそれがあることから、印刷インキや塗料等の液状組成物を、スクリーン印刷、オフセット印刷、グラビヤ印刷、コーター、転写印刷等の印刷方法、または、刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等の塗布方法により、基材の、変色層が設けられる反対の面に印刷または塗布して形成される粘着抑制層が好適である。
【0151】
粘着抑制層を形成するための液状組成物(以下、「粘着抑制層形成用液状組成物」と表すことがある)は、粘着抑制剤と、上記の4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、溶剤とを少なくとも含むことが好ましい。
粘着抑制層形成用液状組成物に含まれる4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、基材を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)は、共に4-メチル-1-ペンテンを構成モノマーとして含むものである。その結果、重合体(A)および重合体(B)の性質は似ており、粘着抑制層形成用液状組成物は、基材に対する親和性が高い。よって、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)を含む粘着抑制層形成用液状組成物を用いることにより、基材に対する接着性に優れ、ガラス転移温度付近の温度において発現する基材の粘着性を抑制することができると共に、伸縮や屈曲等の変形に対して良好な追従性を有する粘着抑制層を形成することができる。
【0152】
基材の粘着性を抑制しながらも、基材に対する接着性と、伸縮や屈曲等の変形に対する追従性をよりいっそう良好とすることから、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)としては、上記の4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体(b)が好ましい。
α-オレフィンとしては、炭素数2~4の直鎖状α-オレフィンが好ましく、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン等を例示できる。共重合体(b)の共重合性および物性に優れることから、エチレンまたはプロピレンがより好ましく、プロピレンがさらに好ましい。
【0153】
粘着抑制剤としては、例えば、マイクロクリスタリンワックス等のワックス類;EO/PO共重合体;脂肪酸アミド;シリコーン樹脂、シリコーンオイル等のシリコーン類;有機顔料;樹脂粒子等の有機物や、タルク、ゼオライト等のケイ酸塩;カオリン、アタパルジャイト等のクレー(粘土);炭酸カルシウム;珪藻土;フュームドシリカ、沈降法シリカ等のシリカ;無機顔料等の無機物を例示できる。
【0154】
有機顔料としては、例えば、アゾ系顔料、フタロシアニン系顔料、キナクリドン系顔料、ペリレン系顔料、ペリノン系顔料、イソインドリノン系顔料、イソインドリン系顔料、ジオキサジン系顔料、チオインジゴ系顔料、アントラキノン系顔料、キノフタロン系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、スレン系顔料、インジゴ系顔料、フタロン系顔料、メチン・アゾメチン系顔料、金属錯体系顔料等を例示できる。
【0155】
無機顔料としては、例えば、カーボンブラック、酸化チタン、鉄黒、黄色酸化鉄、弁柄、群青等を例示できる。
【0156】
樹脂粒子は、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、スチレン-アクリル共重合体等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、グアナミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂を原料とした粒子である。樹脂粒子には、粒子内部に隙間のない中実樹脂粒子や、粒子内部に空隙のある樹脂粒子も含まれる。また、粒子表面に孔(細孔)が空いていない無孔質樹脂粒子であっても、粒子表面に孔が空いている多孔質樹脂粒子であってもよい。
【0157】
樹脂粒子は、染料や顔料、あるいは、熱変色性材料や光変色性材料等の変色性材料を含有してもよい。
【0158】
染料としては、酸性染料、塩基性染料、直接染料、油溶性染料、分散染料等が挙げられる。
染料を含有させた樹脂粒子としては、樹脂粒子中に染料が均質に溶解あるいは分散された樹脂粒子や、樹脂粒子に染料が染着された樹脂粒子等が挙げられる。
【0159】
顔料としては、上記の有機顔料または無機顔料を適用することができる。
顔料を含有させた樹脂粒子としては、樹脂粒子中に顔料が均質に分散された樹脂粒子や、樹脂粒子の表面が顔料で被覆された樹脂粒子等が挙げられる。ここで顔料は、樹脂粒子を構成する樹脂に対する分散性や吸着性を向上させる目的で、従来公知の種々の方法により表面処理したものであってもよい。
【0160】
変色性材料としては、上記の熱変色性材料または光変色性材料を適用することができる。
熱変色性材料または光変色性材料を含有させた樹脂粒子としては、樹脂粒子中に熱変色性材料が均質に分散された樹脂粒子や、樹脂粒子中に光変色性材料が均質に分散された樹脂粒子が挙げられ、上記の可逆熱変色性樹脂粒子または可逆光変色性樹脂粒子を適用することもできる。
【0161】
樹脂粒子は、粉砕法、スプレードライング法、あるいは、水性または油性媒体中において染料、顔料、あるいは熱変色性材料や光変色性材料の存在下で重合する重合法により製造することができる。重合法としては、懸濁重合法、懸濁重縮合法、分散重合法、乳化重合法等が挙げられる。
【0162】
樹脂粒子の形状としては特に限定されるものではなく、真球状、楕円球状、略球状等の球状、多角形状、偏平状、針状、繊維状等の樹脂粒子を用いることができる。これらの中でも、球状の樹脂粒子が好適である。
【0163】
なお、マイクロカプセル顔料は壁膜が樹脂により構成されるものであるから、染料または顔料を内包させたマイクロカプセル顔料や、上記の可逆熱変色性マイクロカプセル顔料、可逆光変色性マイクロカプセル顔料は、樹脂粒子として適用することもできる。
【0164】
粘着抑制層形成用液状組成物の総質量に対する粘着抑制剤の配合割合は特に限定されるものではないが、好ましくは0.5~40質量%、より好ましくは1~30質量%、さらに好ましくは5~15質量%である。粘着抑制剤の配合割合が40質量%を超えると、液状組成物中における粘着抑制剤の分散安定性に劣り易くなる。一方、配合割合が0.5質量%未満では、粘着性抑制剤の、ガラス転移温度付近の温度において発現する基材の粘着性を抑制する効果が乏しくなり易くなる。
【0165】
粘着抑制剤として用いる材料の平均粒子径は、好ましくは10nm~15μm、より好ましくは100nm~10μmの範囲である。平均粒子径が上記の範囲内にあることにより、液状組成物中における粘着抑制剤の分散安定性に優れ、液状組成物のハンドリング性が良好となる。
平均粒子径は、前述の測定方法以外にも、走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)を用いた観察によっても測定することができる。
【0166】
溶剤としては、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)を溶解できると共に、粘着抑制剤に影響がないものであれば特に限定されるものではなく、上記の溶剤と同様のものを適用することができる。
【0167】
粘着抑制層形成用液状組成物には、各種オリゴマーを含有させることにより液状組成物中における粘着抑制剤の分散性を向上させることができる。これにより、ガラス転移温度付近の温度において発現する基材の粘着性を抑制する効果によりいっそう優れる粘着抑制層を得ることができる。
【0168】
オリゴマーとしては、例えば、スチレン系オリゴマー、アクリル系オリゴマー、テルペン系オリゴマー、シリコーン系オリゴマー等を例示できる。これらの中でも、4-メチル-1-ペンテン系重合体、特に4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体との相溶性に優れることから、スチレン系オリゴマーが好ましい。
スチレン系オリゴマーとしては、上記のものと同様のものを適用することができる。
【0169】
粘着抑制層形成用液状組成物における、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B):スチレン系オリゴマーの質量比は特に限定されるものではないが、好ましくは1:0.5~1:5、より好ましくは1:1~1:2である。質量比が上記の範囲内にあることにより、粘着抑制剤の分散性を良好とすることが容易となる。
【0170】
粘着抑制層形成用液状組成物には、その他必要に応じて、各種添加剤を配合させることもできる。
添加剤としては、架橋剤、硬化剤、乾燥剤、可塑剤、粘度調整剤、分散剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、沈降防止剤、平滑剤、ゲル化剤、消泡剤、つや消し剤、浸透剤、pH調整剤、発泡剤、カップリング剤、保湿剤、潤滑剤、防黴剤、防腐剤、防錆剤等を例示できる。
【0171】
粘着抑制層形成用液状組成物における、4-メチル-1-ペンテン系重合体(B):粘着抑制剤の質量比は特に限定されるものではないが、好ましくは1:0.5~1:5、より好ましくは1:0.5~1:2、さらに好ましくは1:1~1:2である。質量比が上記の範囲内にあることにより、液状組成物中における粘着抑制剤の分散安定性を良好とすることが容易となる。
【0172】
粘着抑制層形成用液状組成物は、従来知られている任意の方法により製造することができる。具体的には、上記した各成分を必要量配合し、プロペラ攪拌、ホモディスパー、もしくはホモミキサー等の各種撹拌機で攪拌することにより、またはビーズミル等の各種分散機等で分散することにより、製造することができる。
【0173】
粘着抑制層の基材に対する接着性、および、伸縮や屈曲等の変形に対する追従性の観点から、重合体(A)および重合体(B)が共に、炭素数2~20のα-オレフィン由来の構成単位を含むことが好ましい。そして、α-オレフィンがプロピレンである、すなわち、重合体(A)および重合体(B)が共にプロピレン由来の構成単位を含むことがより好ましい。
【0174】
上記の4-メチル-1-ペンテン系重合体(B)と、溶剤と、必要により各種添加剤を含有してなるビヒクル中に、粘着抑制剤を分散させることで、
スクリーン印刷、オフセット印刷、プロセス印刷、グラビヤ印刷、コーター、タンポ印刷等に用いられる印刷用インキ;刷毛塗り、スプレー塗装、静電塗装、電着塗装、流し塗り、ローラー塗り、浸漬塗装等に用いられる塗料;インクジェット用インキ;紫外線硬化型インキ等の粘着抑制層形成用液状組成物とすることができる。
【0175】
粘着抑制層形成用液状組成物を印刷用インキとして用いる場合、液状組成物の総質量に対する溶剤の配合割合は特に限定されるものではないが、好ましくは50~80質量%、より好ましくは60~80質量%である。
粘着抑制層形成用液状組成物を塗料として用いる場合、液状組成物の総質量に対する溶剤の配合割合は特に限定されるものではないが、好ましくは70~90質量%、より好ましくは75~85質量%である。
溶剤の配合割合が上記の範囲内にあることにより、液状組成物の安定性とハンドリング性を良好とすることができる。
【0176】
本発明による変色性積層体は、上記した4-メチル-1-ペンテン系重合体(A)から構成される基材上に、本発明による液状組成物から溶剤が揮発して形成される変色層を設けてなると共に、基材の、変色層が設けられる反対の面に、粘着抑制層形成用液状組成物から溶剤が揮発して形成される粘着抑制層を設けてなる構成とすることもできる。このような変色性積層体の製造方法としては特に限定されるものではないが、例えば、基材上に液状組成物を印刷あるいは塗布し、液状組成物から溶剤を揮発させて変色層を形成した後、基材の、変色層が設けられる反対の面に粘着抑制層形成用液状組成物を印刷あるいは塗布し、液状組成物から溶剤を揮発させて粘着抑制層を形成することにより、製造することができる。
【0177】
本発明による積層体には、さらに部材を設けて複合体とすることもでき、基材が有する感温性、形状変形性、および形状保持性、ならびに、変色層が有する変色性を部材に付与することができる。つまり、複合体は、積層体由来の特性と、部材由来の特性の両方を併せ持つものとなる。
【0178】
部材としては、積層体の感温性、形状変形性、形状保持性、変色性等の特性を損なわなければ特に限定されるものではなく、例えば、紙、合成紙、繊維、編布、織布、不織布等の布帛、人工皮革、合成皮革、レザー、プラスチック、エラストマー、ゴム、発泡体、メッシュ構造体、ガラス、陶磁材、金属、木材、石材、セラミック等を例示できる。形態としては凹凸状であってもよいが、シート状のものが好適である。
【0179】
複合体の製造方法は特に限定されるものではなく、種々の方法により製造することができる。例えば、積層体と部材の間に接着剤による接着層を設けて接合したり、積層体と部材の間に熱融着フィルムを介在させて加熱圧着により接合したりすることにより製造することができる。
【0180】
本発明による変色性積層体、あるいは変色性積層体を用いてなる複合体は、温度変化あるいは光の照射により変色すると共に、形状変形性および形状保持性を有することから、変色性変形性物品として用いることができる。変色性変形性物品としては、具体的に以下のものを例示できる。
(1)玩具類
人形および動物形象玩具;人形および動物形象玩具用毛髪;人形の家および家具;衣類、帽子、鞄、靴等の人形用付属品;アクセサリー玩具;ぬいぐるみ;描画玩具;玩具用絵本;ジグソーパズル等のパズル玩具;積木玩具;ブロック玩具;粘土玩具;流動玩具;こま;凧:楽器玩具;料理玩具;鉄砲玩具;捕獲玩具;背景玩具;お面玩具;折り紙;乗物、動物、植物、建築物、食品等を模した玩具等、
(2)衣類
Tシャツ、トレーナー、ブラウス、ドレス、水着、レインコート、スキーウェア等の被服;下着;靴等の履物;靴紐;インソール、アウトソール、ミッドソール等の靴部材;ハンカチ、タオル、ふろしき等の布製身の回り品;手袋;ネクタイ;帽子;スポーツウェア等、
(3)モビリティー用品
ハンドル、サドル、シフトレバー、バンパー、シート、シートベルト、ヘッドレスト、アームレスト、ドアトリム、インストルメントパネル、各種サポーター、各種クッション、制震材等、
(4)屋内装飾品
絨毯、カーテン、カーテン紐、テーブル掛け、敷物、クッション、座布団、額縁、造花、写真立て等、
(5)家具
布団、枕、マットレス、ベッド等の寝具、椅子、座椅子、ソファ、照明器具、冷暖房器具等、
(6)電子機器
携帯電話、スマートフォン、スマートウォッチ、スマートグラス、イヤホン、ヘッドホン、パソコン、マウス、カメラ(例えば、グリップ部分)、スピーカー、ゲーム、各種電子機器の保護ケース、各種電子機器のカバー等、
(7)装飾品
指輪、腕輪、ティアラ、ネックレス、イヤリング、髪止め、付け爪、リボン、スカーフ、時計(例えば、バンド)、眼鏡(例えば、鼻あてや耳あて)、キーホルダー等、
(8)文房具類
筆記具(例えば、グリップ);手帳、ノート、本等のカバー;粘着テープ等、
(9)日用品
紙おむつ等のトイレタリー用品、バス用品、歯ブラシ、保冷・保温用バッグ、カイロ、温度計、ジョウロ、バケツ、掃除用具、マスク(例えば、ノーズフィッター)、顔用パック、ファンデーションテープ、化粧品等、
(10)台所用品
調理器具(例えば、包丁の持ち手)、弁当箱、水筒、コップ、皿、箸、スプーン、フォーク、フライパン、コースター、鍋、鍋敷き、ランチョンマット等、
(11)医療・介護用品
サポーター、ギブス、包帯、絆創膏、腰痛用座椅子、車いす、健康器具等、
(12)その他
カレンダー、ラベル、カード、記録材、偽造防止用の各種印刷物;絵本等の書籍;テニスラケット、野球バット等のグリップ用テープ、グローブ、プロテクター、ネット等のスポーツ用品;鞄;包装用容器;刺繍糸;釣り具;楽器;蓄冷剤;財布等の袋物;傘;乗物;建造物;温度検知用インジケーター;絵本、地図等の教習具;ペット用品等。
【実施例0181】
以下に実施例を示す。なお、特に断らない限り、実施例中の「部」は、「質量部」を示す。
【0182】
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aの調製
(イ)成分として、3-(2-エトキシ-4-ジエチルアミノフェニル)-3-(1-エチル-2-メチルインドール-3-イル)-4-アザフタリド1.5部と、(ロ)成分として、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン5部と、(ハ)成分として、ステアリン酸シクロヘキシルメチル50部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Aを得た。
マイクロカプセル顔料Aは、完全発色温度tが13℃、完全消色温度tが38℃であり、温度変化により青色から無色に可逆的に変化した。
【0183】
可逆光変色性マイクロカプセル顔料aの調製
3,3,9,9-テトラフェニル-3H,9H-ナフト[2,1-b:6,5-b′]-ジピラン1部を、スチレン・α-メチルスチレン共重合体(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)50部中に均一に加温溶解した可逆光変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー20部と、酢酸エチル20部とからなる混合溶液に投入した後、15%ゼラチン水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により、可逆光変色性マイクロカプセル顔料aを得た。
マイクロカプセル顔料aは、光照射により橙色から無色に可逆的に変化した。
【0184】
実施例1
液状組成物の調製
マイクロカプセル顔料A(予め13℃以下に冷却して青色に発色させたもの)13部を、4-メチル-1-ペンテン系重合体(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体)〔三井化学(株)製、製品名:アブソートマーEP-1001〕9部と、溶剤(キシレン)78部とからなるビヒクル中に均一に混合し、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである液状組成物(可逆熱変色性液状組成物)を調製した。
【0185】
積層体の作製(図4参照)
4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成され、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度が少なくとも10~100℃の範囲に1つ以上あり、かつ、損失正接の極大値が0.5~3.5である、白色基材〔厚さ:0.5mm〕の表面に、上記印刷用インキを用いて、80メッシュのスクリーン版によりベタ柄を印刷し、乾燥して硬化させて変色層を設けて、積層体を得た。なお、基材を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、下記要件を満たす4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体である。
・4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の配合割合:72mol%、プロピレン由来の構成単位の配合割合:28mol%
・損失正接の極大値を示す温度:28℃
・損失正接の極大値:2.6
・極限粘度[η]:1.5dL/g
・密度:0.84g/cm
【0186】
実施例1の積層体は、生活環境温度(例えば、25℃)下では青色のベタ柄が視認され、柔軟性を有していた。そして、人の体温等により28℃以上の温度に達すると、外力の適用により積層体を任意形状に変形させることができた。38℃以上に加熱しない限り積層体は発色状態を保持し、28℃を境にして、任意形状への変形と変形形状の保持が繰り返し可能であった。
積層体を38℃以上に加熱すると、マイクロカプセル顔料Aが完全に消色して青色のベタ柄が視認されなくなった。このとき積層体は、基材の柔軟性が変化する温度より十分高い温度であり、外力の適用により容易に任意形状に変形させることができることを、積層体の発色状態から消色状態への変化により判別することができた。
次いで、積層体に外力を適用して任意形状に変形させた後、外力を適用したまま28℃未満の温度に冷却すると、外力を除去しても積層体を変形形状で保持させることができた。13℃以下に冷却しない限り積層体は消色状態を保持し、28℃を境にして、任意形状への変形と変形形状の保持が繰り返し可能であった。なお、生活環境温度下では、一定時間変形形状を保持した後、緩やかに元の形状に復元した。
積層体を13℃以下に冷却すると、マイクロカプセル顔料Aが完全に発色して青色のベタ柄が視認された。このとき積層体は、基材の柔軟性が変化する温度より十分低い温度であり、外力を適用することなく変形形状が良好に保持されることを、積層体の消色状態から発色状態への変化により判別することができた。
【0187】
実施例2~5、ならびに、比較例1
配合する材料の種類と配合量を以下の表1に記載したものに変更した以外は、実施例1と同様にして、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである液状組成物を調製した。
実施例2の積層体は、実施例1と同様にして作製した。また、実施例3~5、ならびに、比較例1の積層体は、実施例1で用いた80メッシュのスクリーン版を180メッシュのスクリーン版に変更したこと以外は、実施例1と同様にして作製した。
【0188】
実施例6
液状組成物の調製
マイクロカプセル顔料A(予め13℃以下に冷却して青色に発色させたもの)6.5部を、4-メチル-1-ペンテン系重合体(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体)〔三井化学(株)製、製品名:アブソートマーEP-1001〕4.5部と、スチレン系オリゴマー(α-メチルスチレン共重合体)(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)6.5部と、溶剤(キシレン)82.5部とからなるビヒクル中に均一に混合し、スプレー塗装に用いられる塗料である液状組成物(可逆熱変色性液状組成物)を調製した。
【0189】
積層体の作製(図4参照)
実施例1で用いた基材と同様の基材の表面に、上記塗料を用いてスプレー塗装を施し、乾燥して硬化させて変色層を設けて、積層体を得た。
【0190】
実施例7~9、ならびに、比較例2
配合する材料の種類と配合量を以下の表1に記載したものに変更した以外は、実施例6と同様にして、スプレー塗装に用いられる塗料である液状組成物を調製した。
実施例7~9、ならびに、比較例2の積層体は、実施例6と同様にして作製した。
【0191】
【表1】
【0192】
表1中の材料の内容を、注番号に沿って説明する。
(1)予め13℃以下に冷却して青色に発色させたもの
(2)4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体
〔三井化学(株)製、製品名:アブソートマーEP-1001〕
・4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の配合割合:72mol%、プロピレン由来の構成単位の配合割合:28mol%
・極限粘度[η]:1.4dL/g
・融点(Tm):なし
・密度:840kg/cm
・分子量分布(Mw/Mn):2.1
(3)4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体
〔三井化学(株)製、製品名:アブソートマーEP-1013〕
・4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の配合割合:85mol%、プロピレン由来の構成単位の配合割合:15mol%
・極限粘度[η]:1.5dL/g
・融点(Tm):130℃
・密度:838kg/cm
・分子量分布(Mw/Mn):2.0
(4)50%アクリル樹脂/キシレン溶液
(5)α-メチルスチレン共重合体
〔イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5(質量平均分子量:317)〕
(6)キシレン
(7)ソルベッソ100
(8)酢酸エチル
(9)メチルイソブチルケトン
【0193】
[分散性評価]
実施例1~9、ならびに、比較例1および2で調製した液状組成物、および液状組成物を用いて作製した積層体の変色層を目視にて確認し、変色性材料の分散性を下記基準で評価した。評価結果は、以下の表2に記載した。
A:液状組成物中に変色性材料の凝集体が見られず、変色性材料は均一に分散していた。また、変色層の濃度が均一で、外観は良好であった。
B:液状組成物中に変色性材料の凝集体がやや見られたが、変色層の濃度の均一性や外観は実用上問題のないレベルであった。
C:液状組成物中に変色性材料の凝集体が多くみられ、変色性材料は分散が不十分であった。また、変色層の濃度が不均一で、分散不良によるざらつきがあった。
【0194】
[接着性試験]
JIS K 5600-5-6に記載されたクロスカット法に準拠して、実施例1~9、ならびに、比較例1および2で作製した各積層体における変色層の、基材に対する接着性を、下記基準で評価した。評価結果は、以下の表2に記載した。
A:変色層のクロスカット部分に、剥離は見られなかった。
B:変色層のクロスカット部分に僅かに剥離が見られたが、実用上問題のないレベルであった。
C:変色層のクロスカット部分に、大きな剥離が見られた。
【0195】
[追従性試験]
実施例1~9、ならびに、比較例1および2で作製した各積層体の変色層が設けられる箇所から、縦50mm×幅10mmの長方形を切り出し、試験片を作製した。
試験片の両端を、チャック間の距離が30mmとなるように引張試験機に取り付け、30℃の温度環境下で、チャック間の距離が60mmになるまで一定速度で引張荷重を加えた。次いで、試験片を引張試験機から取り外し、30℃の温度環境下に静置させて元の形状に復元させた。試験後の試験片における変色層の外観から、変形に対する変色層の追従性を、下記基準で評価した。評価結果は、以下の表2に記載した。
A:変色層に、剥離あるいは破断は見られなかった。
B:変色層に、剥離あるいは破断が僅かに見られたが、実用上問題のないレベルであった。
C:変色層に、剥離あるいは破断が多数見られた。
【0196】
【表2】
【0197】
応用例1
可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bの調製
(イ)成分として、2-アニリノ-3-メチル-6-ジブチルアミノフルオラン3部、と、(ロ)成分として、4,4′-(2-メチルプロピリデン)ビスフェノール6部と、(ハ)成分として、セチルアルコール25部、カプリン酸ステアリル25部とからなる可逆熱変色性組成物を、壁膜材料として芳香族イソシアネートプレポリマー30部と、助溶剤50部とからなる混合溶液に投入した後、8%ポリビニルアルコール水溶液中で乳化分散し、加温しながら攪拌を続けた後、水溶性脂肪族変性アミン2.5部を加え、さらに攪拌を続けてマイクロカプセル分散液を調製した。上記のマイクロカプセル分散液から遠心分離法により可逆熱変色性マイクロカプセル顔料Bを得た。
マイクロカプセル顔料Bは、完全発色温度tが28℃、完全消色温度tが30℃であり、温度変化により黒色から無色に可逆的に変化した。
【0198】
液状組成物の調製
実施例3で用いたマイクロカプセル顔料Aをマイクロカプセル顔料Bに変更した以外は、実施例3と同様にして、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである液状組成物を調製した。
【0199】
積層体の作製(図5参照)
4-メチル-1-ペンテン系重合体から構成され、昇温速度4℃/min、周波数1.59Hz、歪量0.1%の条件での動的粘弾性測定により求められる損失正接の極大値を示す温度が少なくとも10~100℃の範囲に1つ以上あり、かつ、損失正接の極大値が0.5~3.5である、透明性を有する基材〔厚さ:0.6mm〕の表面に、上記印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版によりドット柄を印刷し、乾燥して硬化させて変色層を設けた。次いで、接着層を有する厚さ16μmの透明PETフィルムを、接着層を介して変色層に貼着させ、積層体を得た。なお、基材を構成する4-メチル-1-ペンテン系重合体は、下記要件を満たす4-メチル-1-ペンテン・プロピレン共重合体である。
・4-メチル-1-ペンテン由来の構成単位の配合割合:72mol%、プロピレン由来の構成単位の配合割合:28mol%
・損失正接の極大値を示す温度:28℃
・損失正接の極大値:2.6
・極限粘度[η]:1.5dL/g
・密度:0.84g/cm
【0200】
応用例1の積層体は、生活環境温度(例えば、25℃)下では黒色のドット柄が視認されると共に、ドット柄の濃度が均一で外観に優れ、柔軟性を有していた。そして、人の体温等により30℃以上の温度に達すると、外力の適用により積層体を任意形状に変形させることができた。このとき、マイクロカプセル顔料Bが完全に消色して黒色のドット柄が視認されなくなった。よって、外力の適用により任意形状に変形させることができる温度に達したことを、積層体の発色状態から消色状態への変化により判別することができた。
次いで、積層体を外力の適用により任意形状に変形させた後、外力を適用したまま28℃未満に冷却すると、外力を除去しても積層体を変形形状で保持させることができた。このとき、マイクロカプセル顔料Bが完全に発色して黒色のドット柄が視認された。よって、積層体の柔軟性が変化して、外力を適用することなく変形形状で保持させることができる温度に達したことを、積層体の消色状態から発色状態への変化により判別することができた。なお、生活環境温度下では、一定時間変形形状を保持した後、緩やかに元の形状に復元した。
上記積層体は、変色層上に透明PETフィルム(透明性樹脂フィルム)が設けられるため、変色層の耐久性に優れるものであった。また、基材の形状変形性や形状保持性を損なうことなく、積層体の変形に対しても追従した。
【0201】
応用例2
液状組成物の調製
桃色の一般顔料(非変色性着色剤)9部を、4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体〔三井化学(株)製、製品名:アブソートマーEP-1001〕11部と、スチレン系オリゴマー(α-メチルスチレン共重合体)(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)13.5部と、キシレン66.5部とからなるビヒクル中に均一に混合し、スクリーン印刷に用いられる印刷用インキである液状組成物(非変色性液状組成物)を調製した。
【0202】
積層体の作製(図6参照)
実施例1で用いた基材と同じ基材の表面に、上記印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版によりドット柄を印刷し、乾燥して硬化させて非変色層を設けた。次いで、非変色層上に、実施例4の印刷用インキを用いて、180メッシュのスクリーン版により、非変色層のドット柄と重なるようにしてドット柄を印刷し、乾燥して硬化させて変色層(可逆熱変色層)を設けて、積層体を得た。
【0203】
応用例2の積層体は、生活環境温度(例えば、25℃)下では、紫色のドット柄が視認されると共に、ドット柄の濃度が均一で外観に優れ、柔軟性を有していた。そして、人の体温等により28℃以上の温度に達すると、外力の適用により任意形状に変形させることができた。38℃以上に加熱しない限り積層体は紫色のドット柄が視認される状態を保持し、28℃を境にして、任意形状への変形と変形形状の保持が繰り返し可能であった。
積層体を38℃以上に加熱すると、マイクロカプセル顔料Aが完全に消色してドット柄が紫色から桃色に変化した。このとき積層体は、基材の柔軟性が変化する温度より十分高い温度であり、外力の適用により容易に任意形状に変形させることができることを、積層体のドット柄の色変化により判別することができた。
次いで、積層体に外力を適用して任意形状に変形させた後、外力を適用したまま28℃未満の温度に冷却すると、外力を除去しても積層体を変形形状で保持させることができた。13℃以下に冷却しない限り積層体は桃色のドット柄が視認される状態を保持し、28℃を境にして、任意形状への変形と変形形状の保持が繰り返し可能であった。なお、生活環境温度下では、一定時間変形形状を保持した後、緩やかに元の形状に復元した。
積層体を13℃以下に冷却すると、マイクロカプセル顔料Aが完全に発色してドット柄が桃色から紫色に変化した。このとき積層体は、基材の柔軟性が変化する温度より十分低い温度であり、外力を適用することなく変形形状が良好に保持されることを、積層体のドット柄の色変化により判別することができた。
【0204】
応用例3
人形用衣服(人形用付属品)の作製
実施例6の積層体を裁断し、縫製して人形用衣服を作製した。
【0205】
応用例3の衣服は、13℃以下に冷却するとマイクロカプセル顔料Aが完全に発色して、マイクロカプセル顔料Aによる青色を呈し、38℃以上に加熱しない限りこの状態を保持した。また、38℃以上に加熱するとマイクロカプセル顔料Aが完全に消色して、基材による白色を呈し、13℃以下に冷却しない限りこの状態を保持した。よって、加熱あるいは冷却により、衣服を繰り返し色変化させることができ、生活環境温度(例えば、25℃)下では、いずれか一方の状態で保持させることができた。
また衣服は、人の体温等により28℃以上の温度に達すると外力により変形させることができるため、手で温めて伸縮させることにより人形へ容易に装着させることができた。また、手で温めて再度28℃以上にして伸縮させることにより、人形から容易に脱衣させることもできた。
【0206】
応用例4
変色性玩具(光変色性折り紙)の作製
応用例1で用いた基材と同様の基材の表面に、実施例9の塗料を用いてスプレー塗装を施し、乾燥して硬化させて変色層を設けて、積層体を得た。この積層体を10cm四方に裁断し、変色性玩具(光変色性折り紙)を作製した。
【0207】
応用例4の折り紙は、青色LED(ピーク波長:430nm)を備えた照射具により光を照射すると、マイクロカプセル顔料aが完全に発色して、マイクロカプセル顔料aによる橙色を呈し、光の照射を止めない限りこの状態を保持した。また、光の照射を止めるとマイクロカプセル顔料aが完全に消色して折り紙は透明となり、照射具により光を照射しない限りこの状態を保持した。よって、光を照射する、あるいは、光の照射を止めることにより、折り紙を繰り返し色変化させることができた。
また折り紙は、人の体温等により28℃以上の温度に達すると外力により変形させることができるため、手で温めながら折り紙を折ることにより、例えば、鶴、風船、手裏剣等を作製することができた。そして、生活環境温度下では作製後の形状で保持させることができた。また、手で温めて再度28℃以上とすることにより折り紙を元の平面形状に復元することができ、繰り返し折り紙で遊ぶことができた。
【0208】
応用例5
筆記具の作製
実施例7の積層体の、変色層が設けられる面と反対の面に、接着剤による接着層を設けた。そしてこの積層体を発色状態として、接着層を介して筆記具(ボールペン)の軸筒の把持部に巻き付けて固定し、変色性グリップ付き筆記具を作製した。
【0209】
応用例5の筆記具のグリップを持つと、指先が触れている箇所において、指先からの熱によりマイクロカプセル顔料Aが消色し、部分的にグリップが青色から白色に変化した。その後筆グリップから指先を離して筆記具を放置しても、13℃以下に冷却しない限りグリップは部分的に消色状態を保持した。よって、筆記具のグリップに触れた箇所のみが色変化し、生活環境温度下において色変化した状態が保持されるため、グリップの色の様相から、筆記具を正しい持ち方で持つことができているかを確認することができた。
またグリップは、指先が触れている箇所が指先の熱により変形するため、上記筆記具は、手に持った際のフィット感に優れるものであった。
【0210】
応用例6
液状組成物の調製
マイクロカプセル顔料A(予め13℃以下に冷却して青色に発色させたもの)6.5部と、黄色の一般顔料(非変色性着色剤)0.5部を、4-メチル-1-ペンテン系重合体(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体)〔三井化学(株)製、製品名:アブソートマーEP-1001〕4.5部と、スチレン系オリゴマー(α-メチルスチレン共重合体)(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)6.5部と、溶剤(キシレン)82.5部とからなるビヒクル中に均一に混合し、スプレー塗装に用いられる塗料である液状組成物(可逆熱変色性液状組成物)を調製した。
【0211】
粘着抑制層形成用液状組成物の調製
酸化チタン8部を、4-メチル-1-ペンテン系重合体(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体)〔三井化学(株)製、製品名:アブソートマーEP-1001〕4.5部と、スチレン系オリゴマー(α-メチルスチレン共重合体)(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)6.5部と、溶剤(キシレン)82.5部とからなるビヒクル中に均一に混合し、スプレー塗装に用いられる塗料である粘着抑制層形成用液状組成物を調製した。
【0212】
積層体の作製(図7参照)
応用例1で用いた基材と同じ基材の表面に、上記の可逆熱変色性液状組成物を用いてスプレー塗装を施し、乾燥して硬化させて変色層を設けた。
次いで、上記基材の、変色層が設けられる反対の面に、上記の粘着抑制層形成用液状組成物を用いてスプレー塗装を施し、乾燥して硬化させて粘着抑制層を設けて、積層体を得た。
【0213】
応用例6の積層体は、生活環境温度(例えば、25℃)下では、緑色のベタ柄が視認されると共に、ベタ柄の濃度が均一で外観に優れ、柔軟性を有していた。そして、人の体温等により28℃以上の温度に達すると、外力の適用により任意形状に変形させることができた。38℃以上に加熱しない限り積層体は緑色のベタ柄が視認される状態を保持し、28℃を境にして、任意形状への変形と変形形状の保持が繰り返し可能であった。
積層体を38℃以上に加熱すると、マイクロカプセル顔料Aが完全に消色してベタ柄が緑色から黄色に変化した。このとき積層体は、基材の柔軟性が変化する温度より十分高い温度であり、外力の適用により容易に任意形状に変形させることができることを、積層体のベタ柄の色変化により判別することができた。
次いで、積層体に外力を適用して任意形状に変形させた後、外力を適用したまま28℃未満の温度に冷却すると、外力を除去しても積層体を変形形状で保持させることができた。13℃以下に冷却しない限り積層体は黄色のベタ柄が視認される状態を保持し、28℃を境にして、任意形状への変形と変形形状の保持が繰り返し可能であった。なお、生活温度環境下では、一定時間変形形状を保持した後、緩やかに元の形状に復元した。
積層体を13℃以下に冷却すると、マイクロカプセル顔料Aが完全に発色してベタ柄が黄色から緑色に変化した。このとき積層体は、基材の柔軟性が変化する温度より十分低い温度であり、外力を適用することなく変形形状が良好に保持されることを、積層体のベタ柄の色変化により判別することができた。
上記積層体は、基材の、変色層が設けられる面とは反対の面に粘着抑制層が設けられるため、基材の粘着性が抑制され、ガラス転移温度付近(28℃付近)の温度で積層体同士を直接接触させても密着することはなかった。なお、粘着抑制層は粘着抑制剤の分散性に優れ、ガラス転移温度付近の温度において発現する基材の粘着性を抑制する効果によりいっそう優れるものであった。
変色層および粘着抑制層はそれぞれ、基材に対する接着性に優れ、基材の形状変形性や形状保持性を損なうことなく、積層体の変形に対しても追従するものであった。
【0214】
応用例7
人形用衣服(人形用付属品)の作製
応用例6の積層体を裁断し、粘着抑制層が内側(変色層が外側)となるように縫製して人形用衣服(スカート)を作製した。
【0215】
応用例7のスカートは、13℃以下に冷却するとマイクロカプセル顔料Aが完全に発色して、マイクロカプセル顔料Aによる青色と一般顔料による黄色が混色となった緑色を呈し、38℃以上に加熱しない限りこの状態を保持した。また、38℃以上に加熱するとマイクロカプセル顔料Aが完全に消色して、一般顔料による黄色を呈し、13℃以下に冷却しない限りこの状態を保持した。よって、加熱あるいは冷却により、スカートを繰り返し色変化させることができ、生活環境温度(例えば、25℃)下では、いずれか一方の状態で保持させることができた。
またスカートを人形に装着させると、スカートは人の体温等により28℃以上の温度に達すると外力により変形させることができるため、手で温めて任意の箇所を変形させることによりスカートにシワ加工を施すことができた。なお、応用例6の積層体は粘着抑制層が設けられているため、シワ加工を施した際にスカート(積層体)同士が接触しても互いに密着せず、容易に剥がすことが可能であり、手で温めて再度28℃以上とすることによりスカートを元の形状に戻したり、再度シワ加工を施したりすることができた。上記の衣服(スカート)は、繰り返し形状を変形させることが可能である点で、玩具としての商品性に優れるものであった。
【0216】
応用例8
人形用衣服(人形用付属品)の作製
応用例6の積層体を裁断し、粘着抑制層が内側(変色層が外側)となるように縫製して人形用衣服(マント)を作製した。
【0217】
応用例8のマントは、13℃以下に冷却するとマイクロカプセル顔料Aが完全に発色して、マイクロカプセル顔料Aによる青色と一般顔料による黄色が混色となった緑色を呈し、38℃以上に加熱しない限りこの状態を保持した。また、38℃以上に加熱するとマイクロカプセル顔料Aが完全に消色して、一般顔料による黄色を呈し、13℃以下に冷却しない限りこの状態を保持した。よって、加熱あるいは冷却により、マントを繰り返し色変化させることができ、生活環境温度(例えば、25℃)下では、いずれか一方の状態で保持させることができた。
またマントを人形に装着させると、マントは人の体温等により28℃以上の温度に達すると外力により変形させることができるため、手で温めて任意の箇所を変形させることによりマントにシワ加工を施し、マントが風になびく様相を再現することができた。なお、応用例6の積層体は粘着抑制層が設けられているため、シワ加工を施した際にマント(積層体)同士が接触しても互いに密着せず、容易に剥がすことが可能であり、手で温めて再度28℃以上とすることによりマントを元の形状に戻したり、再度シワ加工を施したりすることができた。上記の衣服(マント)は、繰り返し形状を変形させることが可能である点で、玩具としての商品性に優れるものであった。
【0218】
応用例9
液状組成物の調製
マイクロカプセル顔料B6.5部と、桃色の一般顔料(非変色性着色剤)0.5部を、4-メチル-1-ペンテン系重合体(4-メチル-1-ペンテン・α-オレフィン共重合体)〔三井化学(株)製、製品名:アブソートマーEP-1001〕4.5部と、スチレン系オリゴマー(α-メチルスチレン共重合体)(イーストマンケミカル社製、製品名:ピコラスチックA-5)6.5部と、溶剤(キシレン)82.5部とからなるビヒクル中に均一に混合し、スプレー塗装に用いられる塗料である液状組成物(可逆熱変色性液状組成物)を調製した。
【0219】
スクイーズ玩具の作製(図8および図9参照)
応用例1で用いた基材と同じ基材を、猫の手を模した形状の型(すなわち、肉球部分が上部に開口部を有する凹状となっており、5箇所に凹状部を有する型)に載せ、40℃に加熱して、自重により基材を部分的に型に沿わせて凹状に変形させた。次いで、基材の5箇所の凹状部の内面に、上記の液状組成物を用いてスプレー塗装を施し、乾燥して硬化させて変色層を設けた。次いで、基材の平面部(変形していない箇所)に、ウレタン系樹脂と酢酸エチルからなる接着剤を塗布し、酢酸エチルを蒸発させて接着層を設けて、シート1とした。
上記基材とは別の、応用例1で用いた基材と同じ基材の表面に、応用例6の粘着抑制層形成用液状組成物を用いてスプレー塗装を施し、乾燥して硬化させて粘着抑制層を設けて、シート2とした。シート2を、粘着抑制層を下側として型全体を覆うように載せ、ロールで圧接してシート1とシート2を貼り合わせた。
シート1およびシート2を型の形状に沿って切断して余分な部分を除去し、シート間に空気が封入された空間部を有するスクイーズ玩具を作製した。
【0220】
応用例9のスクイーズ玩具は、28℃以下に冷却にする、あるいは生活環境温度(例えば、25℃)では、マイクロカプセル顔料Bが完全に発色して、肉球部分が黒色を呈した。また、30℃以上に加熱するとマイクロカプセル顔料Bが完全に消色して、肉球部分が一般顔料による桃色を呈した。よって、加熱あるいは冷却により、スクイーズ玩具の肉球部分を繰り返し色変化させることができた。
またスクイーズ玩具は、肉球部分の濃度が均一で外観に優れ、柔軟性を有していた。そして、人の体温等により28℃以上の温度に達すると、肉球部分の柔軟性が変化してよりいっそう柔軟となり、肉球部分を指で押し潰したときの感触(触感)に優れ、肉球部分から指を離すと元の形状に復元した。なお、応用例9のスクイーズ玩具は、空間部においてシート1の変色層とシート2の粘着抑制層が対面する構造であり、変色層は粘着抑制層としての役割も果たすため、肉球部分を押し潰してシート同士が接触しても互いに密着せず、自然に元の形状に復元することができる。上記のスクイーズ玩具は指で押し潰した後、指を離すと元の形状に戻ることから繰り返し遊ぶことができ、玩具としての商品性に優れるものであった。
【符号の説明】
【0221】
完全発色温度
発色開始温度
消色開始温度
完全消色温度
完全消色温度
消色開始温度
発色開始温度
完全発色温度
ΔH ヒステリシス幅
1 積層体
2 基材
3 変色層
3′ 変色層
4 透明性樹脂層
5 非変色層
6 粘着抑制層
7 接着層
8 空間部
11 スクイーズ玩具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9