(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184531
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】貼付剤
(51)【国際特許分類】
A61K 9/70 20060101AFI20231221BHJP
A61K 47/20 20060101ALI20231221BHJP
A61K 47/34 20170101ALI20231221BHJP
A61L 15/00 20060101ALI20231221BHJP
A61K 31/196 20060101ALI20231221BHJP
A61P 17/02 20060101ALI20231221BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61K9/70 401
A61K47/20
A61K47/34
A61L15/00
A61K31/196
A61P17/02
A61P29/00
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023174989
(22)【出願日】2023-10-10
(62)【分割の表示】P 2022002170の分割
【原出願日】2017-12-26
(31)【優先権主張番号】P 2016256702
(32)【優先日】2016-12-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000160522
【氏名又は名称】久光製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100126653
【弁理士】
【氏名又は名称】木元 克輔
(72)【発明者】
【氏名】田中 亮
(72)【発明者】
【氏名】大橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】三好 就英
(72)【発明者】
【氏名】島 滝登
(72)【発明者】
【氏名】藤田 直子
(72)【発明者】
【氏名】道中 康也
(57)【要約】
【課題】長時間適用しても剥がれ落ちにくい貼付剤を提供する。
【解決手段】本発明の貼付剤は、支持体層と支持体層上に積層された粘着剤層とを備え、支持体層の透湿度が400g/m2・24時間以上であり、粘着剤層が、薬物と、ジメチルスルホキシドと、粘着剤とを含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体層と支持体層上に積層された粘着剤層とを備え、
支持体層の透湿度が400g/m2・24時間以上であり、
粘着剤層が、薬物と、ジメチルスルホキシドと、粘着剤とを含む、貼付剤であって、
貼付直前のジメチルスルホキシドの濃度が、粘着剤層の全質量に対して2質量%~8質量%であり、
支持体層が、ジメチルスルホキシドの濃度の低下速度が0.08質量%/時間~0.325質量%/時間となるような支持体層である、貼付剤。
【請求項2】
粘着剤層のプローブタック値が30gF以上である、請求項1に記載の貼付剤。
【請求項3】
支持体層の縦方向及び横方向の50%モジュラスが1N/50mm~12N/50mmである、請求項1又は2に記載の貼付剤。
【請求項4】
支持体層が、ポリウレタンからなるフィルムとポリウレタン繊維からなる不織布との積層体、ポリエチレンテレフタレートからなる編布、ポリウレタンからなるフィルム、ポリウレタン繊維からなる不織布、又はゴム組成物でコーティングされたポリエステルの布である、請求項1~3のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項5】
支持体層の透湿度が2000g/m2・24時間以上である、請求項1~4のいずれか一項に記載の貼付剤。
【請求項6】
薬物がジクロフェナクナトリウムである、請求項1~5のいずれか一項に記載の貼付剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は貼付剤に関する。
【背景技術】
【0002】
ジメチルスルホキシド(DMSO)は、製剤において、薬物を溶解させるために使用される。例えば、特許文献1には、DMSOを溶解剤として用いるジクロフェナクナトリウムの貼付剤が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般に、貼付剤の付着性は時間ともに徐々に低下する。本発明者らは、DMSOを貼付剤の粘着剤層に配合すると、貼付剤に粘着性をもたらす組成物が可塑化し、粘着剤層の粘着性が低下することを見出した。そして、DMSOを含有する貼付剤を長時間(例えば、24時間)適用すると、十分な付着性が最後まで持続せず、治療が完了する前に貼付剤が剥がれてしまうおそれがあることを、本発明者らは見出した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、DMSOを含有する粘着剤層を、特定の透湿性を備える支持体と組み合わせることで、長時間貼付後の貼付剤の付着性が大幅に向上することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明の貼付剤は、支持体層と支持体層上に積層された粘着剤層とを備え、支持体層の透湿度は400g/m2・24時間以上であり、粘着剤層は、薬物と、DMSOと、粘着剤とを含む。支持体層の透湿度は、750g/m2・24時間以上であってよく、2000g/m2・24時間以上であってよい。
【0007】
粘着剤層は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤及びシリコーン系粘着剤から選択される少なくとも一つの粘着剤を含んでもよく、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体を含んでもよい。
【0008】
薬物は、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム、及びインドメタシンからなる群より選択される1種以上の薬物であってよい。また、粘着剤層は有機酸を含んでもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の貼付剤によれば、高い透湿度を有する支持体層を用いることにより、十分な付着性が長時間持続する。そのため、長時間(例えば、24時間)適用しても貼付剤が剥がれ落ちにくい。その結果、薬物が鎮痛かつ抗炎症作用を有する薬物、例えば、ケトプロフェン、ジクロフェナクナトリウム又はインドメタシンである場合には、貼付剤を24時間患者の皮膚に貼付したときに十分な累積皮膚透過量がより確実に得られる。また、薬物の最大血漿中濃度Cmaxがより確実に達成される。したがって、本発明の貼付剤によれば、より効果的な薬物治療が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】支持体層の透湿度と、粘着剤層の全質量に対するDMSOの質量%濃度(以下、「DMSO濃度」という)の低下速度との関係を示すグラフである(試験例1)。
【
図2】支持体層の透湿度と、粘着剤層の全質量に対するDMSOの質量%濃度の半減期との関係を示すグラフである(試験例1)。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の貼付剤は、支持体層と支持体層上に積層された粘着剤層とを備える。粘着剤層は、通常、支持体層の一方の面に積層され、必要に応じて、粘着剤層のもう一方の面に剥離可能なフィルムが積層される。
【0012】
まず、粘着剤層について説明する。粘着剤層は、貼付剤適用時に皮膚に圧着する部位であり、薬物と、DMSOと、粘着剤とを少なくとも含む。
【0013】
薬物はDMSOに溶解性の成分である。薬物は、ロキソプロフェン、フェルビナク、フルルビプロフェン、インドメタシン、ケトプロフェン、及び、ジクロフェナクナトリウム等の鎮痛かつ抗炎症作用を有する薬物であってよく、ブプレノルフィン、フェンタニル、及び、ブトルファノールなどの鎮痛薬又は麻薬、クロニジン、エストラジオール、ツロブテロール、オキシブチニンなどその他の薬物であってよい。薬物の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、例えば、1質量%~20質量%又は2質量%~10質量%である。
【0014】
DMSOは薬物を溶解させて、薬物の皮膚透過性を向上させる一方、粘着剤層の粘着性の低下を招く。これらのバランスをとる点から、DMSOの含有量は、粘着剤層の全質量に対して、1質量%~20質量%であることが好ましく、1質量%~15質量%であることがより好ましく、2質量%~10質量%であることがさらに好ましく、3質量%~10質量%であることが特に好ましい。
【0015】
薬物とDMSOの比は薬物によって異なるが、例えば薬物としてジクロフェナクナトリウムを含有する場合、貼付直前の貼付剤における粘着剤層において、含有されるジクロフェナクナトリウムの質量とDMSOの質量の比は、ジクロフェナクナトリウムの皮膚透過性を向上させる点、及びジクロフェナクナトリウムの結晶の析出を防止する点から、1:0.3~1:4であることが好ましく、1:0.4~1:3であることがより好ましく、1:0.6~1:3であることがさらに好ましく、1:0.72~1:3であることが特に好ましい。
【0016】
粘着剤は、ゴム系粘着剤、アクリル系粘着剤及びシリコーン系粘着剤から選択される少なくとも一つの粘着剤を含んでもよい。ゴム系粘着剤は、例えば、ポリイソプレン、ポリイソブチレン(PIB)、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレン(SIS)ブロック共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、又はこれらの組み合わせである。このうち、薬物の皮膚透過性を高め、また、貼付剤の粘着性をより高めるという点から、SISブロック共重合体、PIB、又はこれらの組み合わせが好ましく、SISブロック共重合体とPIBの混合物であることがより好ましい。アクリル系粘着剤は、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル等の(メタ)アクリルモノマーのうちの少なくとも1種を重合又は共重合させた粘着剤である。シリコーン系粘着剤は、例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルビニルシロキサン、及びポリメチルフェニルシロキサン等のシリコーンゴムを主成分とする。
【0017】
粘着剤の含有量は、ゴム系粘着剤の場合、貼付剤の粘着性の点から、粘着剤層の全質量に対して、10質量%~70質量%、10質量%~40質量%、15質量%~50質量%、15質量%~35質量%、又は30質量%~40質量%であってよい。アクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤の場合、粘着剤の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、50質量%~90質量%であってよい。
【0018】
粘着剤層は、薬物の経皮吸収を促進するため、又は薬物の結晶が経時的に析出するのを防止するため等の目的で、さらに有機酸を含有してよい。有機酸としては、脂肪族モノカルボン酸(ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ノナン酸、カプリン酸、ラウリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、イソステアリン酸、ソルビン酸、ピルビン酸等)、脂肪族ジカルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、マレイン酸、フマル酸、オキサロ酢酸等)、及び脂肪族トリカルボン酸(アコニット酸、プロパントリカルボン酸等)等の脂肪族カルボン酸、ヒドロキシ酸(グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、イソクエン酸、糖酸、グルコン酸、グルクロン酸、アスコルビン酸、エリソルビン酸等)、芳香族カルボン酸(安息香酸、没食子酸、サリチル酸、アセチルサリチル酸、フタル酸等)、その他の有機酸(メシル酸、ペシル酸等)、又は、これらの塩(例えば、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩)が例示される。これら有機酸の中でも、薬物がジクロフェナクナトリウムである場合には、ジクロフェナクナトリウムの経皮吸収を促進し、ジクロフェナクナトリウムの結晶が経時的に析出するのを防止する点から、特に、クエン酸、オレイン酸、メシル酸、又はこれらのアルカリ金属塩が好ましい。これらの有機酸を含有することにより、十分な薬物の累積皮膚透過量がより確実に得られる。これらの有機酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。薬物の皮膚透過性を向上させ、かつ薬物の結晶が経時的に析出するのを防止する点から、有機酸の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、0.01質量%~20質量%であってよく、0.1質量%~15質量%であってよく、0.2~13質量%であってよい。
【0019】
粘着剤層は、粘着付与剤、可塑剤又はその他の添加剤をさらに含んでいてよい。粘着付与剤は、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂、水添ロジンエステル、テルペン樹脂、又はこれらの組み合わせである。粘着付与剤の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、例えば、5質量%~60質量%、10質量%~50質量%、25質量%~45質量%、又は30質量%~35質量%である。可塑剤は、例えば、流動パラフィン又は液状ポリブテンである。可塑剤の含有量は、粘着剤層の全質量に対して、例えば、7質量%~70質量%、10質量%~60質量%、又は11質量%~25質量%である。
【0020】
粘着剤層は、1種の組成からなる単層であってよく、組成の異なる複数の層が積層してなる複層であってもよい。粘着剤層の全体の厚みは、貼付剤を適切に皮膚へ粘着させる点から、10μm~1000μmが好ましく、30μm~300μmがより好ましい。
【0021】
粘着剤層のプローブタック値は、30gF以上であることが好ましく、40gF以上であることがより好ましい。粘着剤層のプローブタック値は、例えば、43gF以上、44gF以上、53gF以上、61gF以上、68gF以上、又は71gF以上であってよい。プローブタック値が高いほど、貼付剤の付着性は向上する。皮膚への刺激を低減する観点から、プローブタック値は、2000gF以下、1500gF以下、又は1000gF以下であってよい。本明細書において、粘着剤層のプローブタック値は、ASTM D2979のプローブタック試験方法に準じて測定される。
【0022】
次に、支持体層について説明する。支持体層は、粘着剤層を保持する。支持体層の透湿度は400g/m2・24時間以上である。このような高い透湿度の支持体層を用いると、皮膚に適用した貼付剤からDMSOが徐々に揮散するため、貼付剤の粘着性が向上し、貼付剤を長時間適用しても、剥がれ落ちにくい。透湿度は本来、水の透過性についての指標であるが、本発明者らは、透湿度の高い支持体は、高いDMSOの透過性(揮発性)をも有することを見出した。支持体層の透湿度は、例えば、422g/m2・24時間以上、750g/m2・24時間以上、2000g/m2・24時間以上、2077g/m2・24時間以上、4000g/m2・24時間以上、5500g/m2・24時間以上、5667g/m2・24時間以上、又は8408g/m2・24時間以上であってよい。透湿度の上限値は、20000g/m2・24時間であってよい。支持体層の透湿度がこのような範囲にあると、DMSOが粘着剤層からより揮散しやすいため、貼付剤の粘着性の向上に、より効果的である。
【0023】
なお、本発明における支持体層の透湿度は、JIS Z0208:1976の規格(防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法))において定義される、40℃における透湿度を意味する。
【0024】
支持体層は、繊維を布状(織布、不織布、又は編布)にしたものの、又は無孔性若しくは多孔性のフィルム(シート)の、単層体又は積層体であることが好ましい。支持体層の材質は、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート、ポリブチレンテレフタレート、又はポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(エチレン、プロピレン、酢酸ビニル、又はアクリロニトリル等のビニル系モノマーの重合体又は共重合体)、ポリアミド(ナイロン又は絹等)、ポリウレタン(PU)、又はセルロース(木綿又は麻等)から選ばれる1種以上の材質であることが好ましい。布(織布、不織布、又は編布)にはゴム組成物がコーティングされていてもよい。ゴム組成物は、ゴム系粘着剤を含む。ゴム系粘着剤は、例えば、ポリイソプレン、PIB、ポリブタジエン、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、SISブロック共重合体、スチレン-ブタジエンゴム、スチレン-イソプレンゴム、又はこれらの組み合わせである。ゴム組成物は、粘着付与剤を含んでもよい。粘着付与剤は、例えば、脂環族飽和炭化水素樹脂、水添ロジンエステル、テルペン樹脂、又はこれらの組み合わせである。また、ゴム組成物は、可塑剤、充填剤等の添加剤をさらに含んでもよい。支持体層の厚みは、例えば、0.1mm~2mmである。支持体層の目付けは、例えば、30g/m2~200g/m2である。本明細書において、支持体層の厚み及び目付けは、JIS L 1906:2000の規格に準じて測定される。
【0025】
支持体層が布状である場合、支持体層の縦方向(材料流れ方向)及び横方向(材料幅方向)のいずれの方向の50%モジュラス(JIS L 1018:1999)も、1N/50mm~12N/50mmであることが好ましい。50%モジュラスが12N/50mm以下である場合、皮膚の伸縮により貼付剤が受けるストレスがより小さいため、皮膚への付着性が良好となる。
【0026】
支持体層がフィルムである場合、材質はポリウレタンのような、高透湿性(高DMSO透過性)であることが好ましい。ポリウレタンからなるフィルムは、伸縮性に優れるため、貼付剤の、皮膚への付着性及び伸縮追従性を高める点から好ましい。
【0027】
支持体層は、例えば、ポリウレタンからなる不織布若しくはフィルム、ポリエチレンテレフタレートからなる編布、ゴム組成物でコーティングされたポリエステルの布又はこれらの組み合わせであることが好ましい。より具体的には、支持体層は、ポリウレタンからなるフィルムとポリウレタン繊維からなる不織布との積層体、PET繊維からなる不織布、又はゴム組成物でコーティングされたポリエステルの布であることが好ましい。
【0028】
未使用の貼付剤において薬物が析出するのを防ぐ点から、貼付直前の貼付剤におけるDMSO濃度は、例えば、粘着剤層の全質量に対して、1質量%~20質量%、2質量%~12質量%、2質量%~10質量%、又は2質量%~8質量%であってよい。また、24時間貼付後の貼付剤におけるDMSO濃度は、0.1質量%~4質量%であることが好ましく、0.1質量%~1.5質量%であることがより好ましい。支持体層としては、このようなDMSO濃度の低下を達成することができるものが好ましい。より具体的には、貼付直前の貼付剤におけるDMSO濃度が2質量%~8質量%である場合、DMSO濃度の低下速度が0.08質量%/時間~0.16質量%/時間(すなわち、24時間あたりでは1.92質量%~3.84質量%の減少)となるような支持体層が好ましい。別の観点から、貼付直前の貼付剤におけるDMSO濃度が2質量%~8質量%である場合、DMSO濃度の半減期が5時間~24時間となるような支持体層が好ましい。このような条件を満たす支持体層であれば、24時間貼付後であっても、十分な付着性が維持される傾向にある。なお、上記の貼付剤のDMSO濃度の低下速度及び半減期は、いずれも30℃、65%RHの条件下で、支持体層が上向きになるように貼付剤を配置して、貼付剤のDMSO濃度の推移をガスクロマトグラフ法(GC)により測定することにより算出される。
【0029】
貼付剤は、例えば、次の方法により製造することができるが、これに限定されず、公知の方法を使用することができる。まず、粘着剤層を構成する各成分を所定の割合で混合して均一な溶解物を得る。次に、剥離可能なフィルム(剥離フィルム、離形ライナー)上に溶解物を所定の厚みで塗布して粘着剤層を形成する。次いで、粘着剤層が離形ライナーと支持体層とに挟まれるように、粘着剤層に支持体層を圧着する。最後に、所望の形状に切断することにより、貼付剤を得ることができる。この場合、離形ライナーは、貼付剤の適用時に除去される。
【実施例0030】
(貼付剤の調製)
以下の例において、別段の記載がない限り、貼付剤は次のように調製した。
1)粘着剤層の各成分を混和し、剥離フィルム(離型処理をしたPETフィルム)上に塗布した。これを乾燥させることでDMSOを所定量まで除去し、厚み100μmの粘着剤層(100g/m2)を形成した。
2)粘着剤層上に支持体層を積層し、貼付剤を得た。貼付剤は適当な大きさに適宜裁断した。
【0031】
(支持体層の透湿度の測定)
以下の例において、使用した支持体層の透湿度は、JIS Z0208に準じて、40℃、90%RHの測定条件で測定した。
【0032】
(貼付剤の粘着性の評価)
以下の例において、別段の記載がない限り、貼付剤の粘着性は、次に示す180°剥離試験により評価した。
1)貼付剤から1cm×5cmの試験片を準備し、所定条件で所定時間保存した。
2)試験片から剥離フィルムを除去し、試験片をステンレス板に貼付した。
3)インストロン型引張試験機を用いて、試験片を30cm/分の速度でステンレス板から180°の方向に引き剥がし、剥離力(gF/cm)を測定した。
4)定常な剥離を示した区間での剥離力の積分値から、平均の剥離力(gF/cm)を算出した。高い剥離力は、優れた粘着性を意味する。
【0033】
(貼付剤の付着性の評価)
以下の例において、貼付剤の皮膚への付着性は、次に示す方法により評価した。被験者の皮膚に貼付剤を貼付した。24時間後、貼付剤の付着の程度を目視で観察した。貼付剤の面積の90%以上が皮膚に付着している状態である場合を「A」、それ以外の場合を「B」として評価した。
【0034】
(試験例1)
表1に示す構成の貼付剤(プラセボ貼付剤)を調製した。表中、「PETフィルム」、「PETフィルム/PET不織布」、「PUフィルム/PU不織布」、及び「PET編布」とは、それぞれ、PETからなるフィルム、PETからなるフィルムとPET繊維からなる不織布との積層体、PUからなるフィルムとPU繊維からなる不織布との積層体、及びPETからなる編布を意味する。また、表1におけるゴム系粘着剤は、SISブロック共重合体とPIBの混合物であって、SISブロック共重合体とPIBを19:7の質量比で含む。「PET編布」としては、透湿度が5667g/m2・24時間であり、縦方向の50%モジュラスが3.9N/50mmであり、かつ横方向の50%モジュラスが3.4N/50mmであるものを使用した(以下の例において同じ)。貼付剤を、30℃、65%RHのインキュベーター内に、支持体層が上向きになり、剥離フィルムが下向きになるように配置し、保存した。24時間後、貼付剤からDMSOを抽出し、GCにより定量した。この保存条件は、貼付剤を皮膚に24時間貼付した場合の環境を模した条件である。
【0035】
結果を表1、
図1、及び
図2に示す。支持体層の透湿度が400g/m
2・24時間以上である参考例3及び4の貼付剤は、支持体層の透湿度が400g/m
2・24時間未満である参考例1及び2の貼付剤と比べて、24時間保存後のDMSO濃度が大きく低下した。透湿度の高い支持体層を有する貼付剤は、粘着剤層中におけるDMSO濃度の低下速度が高く(
図1)、DMSO濃度の半減期が短い(
図2)という関係がみられた。
【0036】
また、24時間同条件下に保存した貼付剤の粘着性を評価した。結果を表1に示す。支持体層の透湿度が400g/m2・24時間以上である参考例3及び4の貼付剤は、支持体層の透湿度が400g/m2・24時間未満である参考例1及び2の貼付剤と比べて、24時間保存後の粘着性(剥離力)が良好であった。
【0037】
さらに、表1に示す構成の貼付剤の24時間後の付着性を評価した。結果を表1に示す。支持体層の透湿度が400g/m2・24時間以上である参考例3及び4の貼付剤は、24時間貼付後の付着性が良好であった。
【0038】
【0039】
(試験例2)
表2に示す構成の貼付剤を調製した。表2におけるゴム系粘着剤は、SISブロック共重合体とPIBの混合物であって、SISブロック共重合体とPIBを19:7の質量比で含む。実施例2、7~9の貼付剤の粘着性を、ASTM D2979のプローブタック試験方法に準じて以下の条件で測定したプローブタック値により評価した。高いプローブタック値は、優れた粘着性を意味する。
試験機:タッキング試験機(レスカ)
プローブ部先端材質:ステンレス
接着面の直径:5mm
引離し速度:2mm/秒
接着荷重:200gF/cm2
接着時間:1秒
【0040】
また、実施例1~15及び比較例1~3の貼付剤を、健常な成人男性の腰背部に1枚ずつ貼付し、24時間後の付着性を評価した。結果を表2に示す。支持体層の透湿度が400g/m2・24時間以上である実施例1~15の貼付剤は、24時間貼付後の付着性が良好であった。
【0041】
さらに、実施例2の貼付剤を、30℃、65%RHのインキュベーター内に、支持体層が上向きになるように配置し、保存した。24時間経過後、粘着剤層中のDMSO濃度(質量%)をGCにより定量し、DMSO濃度の推移を調べた。24時間経過後のDMSO濃度は、粘着剤層の全質量に対して1.2質量%であり、これは、初期(保存前)のDMSO濃度100%に対して33%である。DMSO濃度の変化から算出したDMSO濃度の低下速度は0.1質量%/時間であり、半減期は15時間であった。
【0042】
【0043】
(試験例3)
表3に示す構成の貼付剤を調製した。表3に示す構成の貼付剤について、試験例2と同様の方法でプローブタック値を測定し、粘着性を評価した。表3におけるゴム系粘着剤は、SISブロック共重合体とPIBの混合物であって、SISブロック共重合体とPIBを19:7の質量比で含む。表3における「ゴム/ポリエステル布」とは、ゴム組成物でコーティングされたポリエステルの布を意味する。実施例16の貼付剤におけるPUフィルム(透湿度786g/m2・24時間)、並びに、実施例17、19及び20の貼付剤におけるPUフィルム(透湿度8408g/m2・24時間)は、それぞれ3M社の「3M CoTran 9701 Backing」及び「3M CoTran 9700」である。
【0044】
実施例16~19、並びに比較例4及び5の貼付剤について、24時間後の付着性を評価した。結果を表3に示す。また、これらの実施例及び比較例の貼付剤を、30℃、65%RHのインキュベーター内に、支持体層が上向きになるように配置し、保存した。24時間経過後、粘着剤層中のDMSO濃度(質量%)をGCにより定量し、DMSO濃度の推移を調べた。結果を表3に示す。支持体層の透湿度が400g/m2・24時間以上である実施例16~19の貼付剤は、24時間貼付後の付着性が良好であった。
【0045】