(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184541
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】燻煙装置
(51)【国際特許分類】
A01M 1/20 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
A01M1/20 Y
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023175630
(22)【出願日】2023-10-11
(62)【分割の表示】P 2019095909の分割
【原出願日】2019-05-22
(71)【出願人】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004152
【氏名又は名称】弁理士法人お茶の水内外特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】俵 加奈子
(72)【発明者】
【氏名】宮地 隆太
(57)【要約】
【課題】燻煙剤を収納する容器として、発火はもちろんのこと、炭化などの損傷がなく、焦げ臭などの不快な臭気を発生しない、安全かつ使用感の良好な燻煙装置を提供すること。
【解決手段】水和反応により発熱する発熱剤が充填され、底面部とそれに連なる側壁部を有し、全体が吸水性素材により形成された燻煙容器を備える燻煙装置において、前記燻煙容器が保持できる水の重量(保水量a)が、前記燻煙容器乾燥重量に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量aに対して、0.10倍以上の水を保持することを特徴とする、燻煙装置。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水和反応により発熱する発熱剤が充填され、底面部とそれに連なる側壁部を有し、全体が吸水性素材により形成された燻煙容器を備える燻煙装置において、
前記燻煙容器が保持できる水の重量(保水量a)が、前記燻煙容器乾燥重量に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量aに対して、0.10倍以上の水を保持することを特徴とする、燻煙装置。
【請求項2】
水和反応により発熱する発熱剤が充填され、底面部とそれに連なる側壁部を有し、全体が吸水性素材により形成された燻煙容器を備える燻煙装置を使用して、
前記燻煙容器が保持できる水の重量(保水量a)が、前記燻煙容器乾燥重量に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量aに対して、0.10倍以上の水を保持することを特徴とする、前記燻煙容器を損傷させることのない燻煙方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燻煙装置と燻煙方法に関する。
【背景技術】
【0002】
害虫防除剤や防菌・防カビ剤を有効成分として含む燻煙剤は、従来から屋内の害虫駆除や除菌・防カビのためによく使用されており、製剤中には有効成分の蒸散性、拡散性を高めるために、アゾジカルボンアミド等の有機発泡剤が含有されている。これは、使用時に有機発泡剤を燃焼または分解させて発生するガスおよび煙粒子により、製剤中の有効成分を短時間のうちに空気中に蒸散および拡散させて、有効成分を空間の隅々まで十分に行きわたらせて、優れた害虫駆除効果や除菌・防カビ効果を得るものである。
このような燻煙剤は、水和反応により発熱する発熱剤を利用して加熱することが多く、この水和反応熱が高温(約250~400℃)になることから、燻煙剤やこれを収納する容器が高温に晒される。このため、容器は不燃性のものが用いられており、材質としては、アルミニウムやブリキなどの金属製缶が汎用されている。
一方、燻煙剤やこれを収納する容器として金属製缶を使用することにより、焦げるような臭い(焦げ臭)が発生し、これが使用者の不快感を招く原因となっている。この焦げ臭を防止し、使用感を改善するために、焦げ臭防止剤として、特定の吸油量の鉱物性物質を燻煙剤中に存在させる技術や、燻煙剤に香料を配合することが報告(特許文献1、2等)されているものの、多くの使用者が満足する十分な臭気抑制効果は、未だ得られていない。
また、金属製缶を用いた燻煙装置は、使用後に不燃物として廃棄する必要があるため、その廃棄性の悪さも問題となっており、環境負荷の少ない廃棄処理の容易な燻煙装置が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-117950号公報
【特許文献2】特開2007-326851号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金属製缶の代わりに可燃性素材を使用した場合、水和反応熱が高温(約250~400℃)となることにより、容器が炭化して焦げるような臭い(焦げ臭)が発生し、使用者の不快感を招くほか、最悪の場合には、容器が発火して火災の危険性があるなど、安全性と良好な使用感を得る代替素材を見出すことが困難であった。
そこで、本発明は、発熱剤を収納する容器として、発火はもちろんのこと、炭化などの損傷がなく、焦げ臭などの不快な臭気を発生しない、安全かつ使用感の良い燻煙装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、吸水性素材により形成された燻煙容器が、特定量の水を吸水でき、かつ、燻煙時に特定量以上の水を保持していることで、燻煙時の水和反応熱に対しても、発火はもとより、炭化などにより容器が損傷することなく、燻煙装置として安全に利用できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明は、具体的には次の事項を要旨とする。
1.水和反応により発熱する発熱剤が充填され、底面部とそれに連なる側壁部を有し、全体が吸水性素材により形成された燻煙容器を備える燻煙装置において、前記燻煙容器が保持できる水の重量(保水量a)が、前記燻煙容器乾燥重量に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量aに対して、0.10倍以上の水を保持することを特徴とする、燻煙装置。
2.水和反応により発熱する発熱剤が充填され、底面部とそれに連なる側壁部を有し、全体が吸水性素材により形成された燻煙容器を備える燻煙装置を使用して、前記燻煙容器が保持できる水の重量(保水量a)が、前記燻煙容器乾燥重量に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量aに対して、0.10倍以上の水を保持することを特徴とする、前記燻煙容器を損傷させることのない燻煙方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の燻煙装置は、発熱剤が充填された燻煙容器の全体が吸水性素材により形成されており、金属製缶を使用していないため、燻煙装置使用後に一般ゴミとして廃棄することができ、環境負荷を低減することが可能である。
また、本発明の燻煙装置は、発熱剤が充填された燻煙容器が、特定量の水を吸水でき、かつ、燻煙時に特定量以上の水を保持していることで、燻煙時の水和反応熱に対しても、燻煙容器自体の温度が水の沸点温度以上に上昇することを抑制するため、発火はもとより、炭化などにより燻煙容器が損傷することがなく、安全に使用することができる。
さらに、本発明の燻煙装置における燻煙容器の素材は、吸水した水を保持すると同時に速やかに透水するため、発熱剤の水和反応が瞬時に開始され、目的とする燻煙を良好に行うことができる。
加えて、本発明の燻煙方法は、燻煙容器に「焦げ」や「穴あき」など損傷させることがないため、安全に燻煙させることができ有用である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の燻煙装置の第1実施態様を示す断面図である。
【
図3】本発明の燻煙装置の第2実施態様を示す断面図である。
【
図4】本発明の燻煙装置の第3実施態様を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明について、詳細に説明する。
本発明は、燻煙容器が保持できる水の重量(保水量a)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c)に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量aに対して、0.10倍以上の水を保持することを特徴とするものである。
ここで、保水量aは、燻煙容器全体を水に10分間浸漬後、取り出して自然に滴る水を除去した燻煙容器全体の重量と、燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c)との差分により表す数値である。すなわち、保水量aは、燻煙容器が保持できる水の重量を意味する。
また、本発明においては、燻煙時に「保水量aに対して0.10倍以上の水を保持する」ことが重要であり、少なくとも、燻煙時終了時に「保水量aに対して0.10倍以上の水を保持する」ことが不可欠である。この燻煙時終了時は、燻煙終了直後を意味する。具体的には、例えば、水和反応により発熱する発熱剤が10~100gの範囲で充填された燻煙容器の場合は、燻煙終了直後は、発熱剤が充填された燻煙容器を水につけた時点から10分後、水和反応により発熱する発熱剤が100gより多く300g以下の範囲で充填された燻煙容器の場合は、燻煙終了直後は、発熱剤が充填された燻煙容器を水につけた時点から20分後のことを意味する。
さらに、本発明において、燻煙終了時に燻煙容器の内容物を除いた燻煙容器の重量と、燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c)との差分を、燻煙終了時の燻煙容器が保持している水の重量(保水量b)とする。
本発明は、前記保水量aが前記乾燥重量cに対して1.5倍以上、すなわち、「保水量a÷乾燥重量c≧1.5」であり、かつ、前記保水量bが前記保水量aの0.10倍以上であること、すなわち、「保水量b÷保水量a≧0.10」であることを特徴とする。
【0010】
以下、本発明の燻煙装置、また燻煙容器について詳細に説明する。
<燻煙装置について>
本発明の燻煙装置は、燻煙容器を備える構成であり、この燻煙容器は、底面部とそれに連なる側壁部を有し、全体が吸水性素材により形成された容器形状のものである。
本発明の燻煙装置や燻煙容器の実施態様について、
図1~4を用いて説明する。
図1は、本発明の燻煙容器10の斜視図であり、燻煙容器10は、底面部14とそれに連なる側壁部12からなる構成である。
図2は、本発明の燻煙装置1の断面図であり、燻煙容器10の内部に、水和反応により発熱する発熱剤20と燻煙剤30が充填された、燻煙装置の第1実施態様を示す図である。詳しくは、燻煙容器10は、内部に発熱剤20と燻煙剤30とを、仕切部材40を介して上下に隣接するように設けたものであり、燻煙装置1は、水Wを入れることが可能な外容器70内に燻煙容器10を備えるものである。
図3、4は、本発明の燻煙装置1の断面図であり、燻煙容器10の内部に、水和反応により発熱する発熱剤のみが充填された、燻煙装置の第2または第3実施態様を示す図である。詳しくは、燻煙容器10は、内部に発熱剤20のみが充填されており、燻煙剤30は、燻煙容器10の上方に位置する燻煙容器10とは別の薬剤容器36に収納されている。
図3は、薬剤容器36は、図中に明示しない固定具により燻煙容器10と接することなく、上方に位置するように配された実施態様を示す図である。
これに対して、
図4は、燻煙容器10の上部開放面が薬剤容器36の底面部に接している実施態様を示す図である。
【0011】
<燻煙容器について>
燻煙容器10は、全体が吸水性素材により形成され、例えば、
図1に示すように、底面部14とそれに連なる側壁部12を有する容器である。底面部14の形状は、特に制限されないが、具体的には、例えば、円形、楕円形、正方形、長方形、星型などが挙げられる。側壁部12は底面部14に対して略垂直から180度より小さな角度をなして連なっていれば良い。燻煙容器10の形状は、水和反応により発熱する発熱剤20を充填できるものであれば良いが、中でも、略筒状やカップ状のものが好ましい。
また、燻煙容器10の上部開放面には、必要に応じて蓋部50(
図2~4)や天面部25(
図3)を設けてもよい。例えば、
図2の燻煙容器10の上部開放面は、蓋部50が設けられており、気化した燻煙剤30に含まれる薬剤を流出させる直径1~10mmの孔が1個あるいは複数個の通煙孔52が形成された蓋部材54が被冠されており、さらに蓋部材54の通煙孔52は、蓋部材54の下面に接する熱溶融フィルム60によって塞がれている。ここで、蓋部50は燻煙容器10に溶着もしくは接着剤等を用いて密閉できるものが好ましく、蓋部材54はプラスチック、アルミ、紙などの複合部材により形成されていることが好ましく、熱溶融フィルム60は、ポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリアクリル系のフィルムが好ましい。
図3の燻煙容器10の上部開放面は、蒸気を排出するための蒸気排出口22を有する天面部25を設けられている。
図4の燻煙容器10の上部開放面は、何も設けられていない態様である。
図2の第1実施態様における燻煙容器10内の下方には、発熱剤20が充填されており、発熱剤20の上面には、仕切部材40を介して燻煙剤30が積載されている。この燻煙剤30は、有機発泡剤を含有しており、目的に応じて薬剤を配合しても良い。
本発明の燻煙容器10は、燻煙時に燻煙容器10の重量に対して1.5~5倍程度の範囲の水を保持する、下記に説明する吸水性素材Aから形成されるものである。燻煙容器10としては、側壁部12と底面部14が一体成形されている形態が好ましい。
【0012】
<吸水性素材Aについて>
本発明の燻煙容器10を形成する吸水性素材Aについては、燻煙容器10が水Wの入った外容器70内に載置されると、瞬時に吸水し、燻煙容器10内に透水することができる素材であれば、特に限定されない。具体的には、燻煙容器10の乾燥時の重量に対して1.5倍以上の水を保持するものであることが重要であり、1.6倍以上が好ましく、1.8倍以上の水を保持できる素材がより好ましい。吸水性素材Aとしては、具体的に、例えば、紙などのパルプ、不織布、樹脂やその複合材料などが挙げられ、中でも、パルプ、不織布が好ましい。その材質は、発熱剤20の水和反応熱等を勘案して決定でき、具体的には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、レーヨン、パルプ、コットン等が挙げられる。不織布の種類は特に限定されず、例えば、スパンボンド、メルトブロー、サーマルボンド、ケミカルボンド、スパンレース、ニードルパンチ等の公知の製造方法により得られる不織布が挙げられる。中でも、ポリエステルや、ポリエステルとレーヨン、レーヨンとポリオレフィン等との混紡スパンボンドが好ましい。不織布の目付けは、100~400g/m2の範囲のものが好ましく、120~300g/m2の範囲のものがより好ましく、150~250g/m2の範囲のものが特に好ましい。不織布の厚さは、0.2~2.0mmの範囲のものが好ましい。
本発明の燻煙容器10は、燻煙容器10が保持できる水の重量(保水量a)が、前記燻煙容器乾燥重量に対して1.5倍以上であることが重要であり、1.6倍以上が好ましく、1.8倍以上がより好ましい。
さらに、本発明の燻煙容器10は、燻煙時に燻煙容器10が保持できる水の重量(保水量a)に対して0.10倍以上の水を保持していることが重要であり、0.20倍以上が好ましく、0.30倍以上がさらに好ましい。
【0013】
<発熱剤20について>
本発明の燻煙容器10に充填される発熱剤20は、水との水和反応により任意の温度に発熱するものであり、具体的には、例えば、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、酸化鉄等が挙げられ、中でも、取り扱いが容易であることから酸化カルシウムが好ましい。
燻煙容器10における発熱剤20の充填量は、燻煙容器10の大きさや有機発泡剤等の量を勘案して決定することができるが、その目安は、例えば、発熱剤/有機発泡剤の重量比が、1~20の範囲が好ましい。
【0014】
<燻煙剤30について>
本発明の燻煙容器10に充填される燻煙剤30は、有機発泡剤を含有するものである。この有機発泡剤は、加熱により熱分解して多量の熱を発生すると共に、炭酸ガスや窒素ガス等(以下、総じてガスという)を発生するものが用いられる。有機発泡剤としては、具体的には、例えば、アゾジカルボンアミド、ニトロセルロース、p,p’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、N,N’-ジニトロソペンタメチレンテトラミン、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。有機発泡剤の中でも、分解温度、ガス発生量等の観点から、アゾジカルボンアミドが好ましい。特に、本発明の燻煙装置で用いるアゾジカルボンアミドとしては、200℃前後で熱分解してガスを発生するものが好ましく、具体的には、例えば、ユニフォームAZ(大塚化学社製)や、セルマイク(三協化成社製)等が挙げられる。
これらの有機発泡剤は、1種単独又は2種以上を適宜組み合わせて使用することができる。
図3、4で示される第2または第3の実施態様において、燻煙剤30は薬剤容器36に収納されている。この薬剤容器36は、蒸気透過性を有しており、燻煙容器10と接触しない位置(例えば、
図3)に配置されても、接触する位置(例えば、
図4)に配置されても、どちらでも良い。
【0015】
燻煙剤30は、目的に応じて薬剤を配合しても良い。薬剤としては、例えば、殺虫剤、防虫剤、忌避剤、誘引剤、昆虫成長調節剤等の害虫駆除剤、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤等の微生物駆除剤、消臭剤、芳香剤等が挙げられる。
害虫防除剤としては、例えば、天然ピレトリン、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、ペルメトリン、フェノトリン、シフェノトリン、プラレトリン、ビフェントリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、イミプロトリン、エムペントリン、エトフェンプロックス、シラフルオフェン等のピレスロイド系殺虫剤;プロポクスル、カルバリル等のカーバメイト系殺虫剤;フェニトロチオン、DDVP等の有機リン系殺虫剤;メトキサジアゾン等のオキサジアゾール系殺虫剤;フィプロニル等のフェニルピラゾール系殺虫剤;イミダクロプリド、ジノテフラン等のネオニコチノイド系殺虫剤;アミドフルメト等のスルホンアミド系殺虫剤;ブロフラニリド等のベンズアミド系殺虫剤;クロルフェナピル等のピロール系化合物;メトプレン、ハイドロプレン等の昆虫幼若ホルモン様化合物;プレコセン等の抗幼若ホルモン様化合物;エクダイソン等の脱皮ホルモン様化合物;クロルフルアズロン、ジフルベンズロン、ヘキサフルムロン、ブプロフェジン等のキチン合成阻害剤、フィトンチッド、薄荷油、オレンジ油、桂皮油、丁子油等の精油類;イソボルニルチオシアノアセテート(IBTA)、イソボルニルチオシアノエチルエーテル(IBTE)、四級アンモニウム塩、サリチル酸ベンジル、ディート、ジ-n-ブチルサクシネート、ヒドロキシアニソール、ロテノン、エチル-ブチルアセチルアミノプロピオネート、イカリジン、3-(N-n-ブチル-N-アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル等の1種又は2種以上が挙げられる。
中でもピレスロイド系殺虫剤、カーバメイト系殺虫剤、オキサジアゾール系殺虫剤およびスルホンアミド系殺虫剤が、揮散がより向上されるので好ましく、特に、フェノトリン、シフェノトリン、ペルメトリン、メトキサジアゾン、プロポクスル、アミドフルメト、エトフェンプロックスが好ましい。
【0016】
微生物駆除剤としては、例えば、イソフタロニトリル、プロシミドン、バイレトン、モレスタン等の農薬用殺菌剤、サイアベンダゾール、3-ヨード-2-プロピニルブチルカーバメート(IPBC)、イソプロピルメチルフェノール(化学名;3-メチル-4-イソプロピルフェノール)、IF-1000等の環境衛生用殺菌剤等が挙げられる。
消臭剤としては、例えば、メタクリル酸ラウリル、ゲラニルクロリネート、カテキン、ポリフェノール、炭等が挙げられる。
芳香剤としては、目的に応じた種々の香料が使用できる。例えば、「Perfume and Flavor Materials of Natural Origin」,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1960)、「香りの百科」,日本香料協会編,朝倉書店(1989)、「Flower oils and Floral Compounds In Perfumery」,Danute Pajaujis Anonis,Allured Pub.Co.(1993)、「Perfume and Flavor Chemicals(aroma chem
icals)」,Vols.I and II,Steffen Arctander,Allured Pub.Co.(1994)、「香料と調香の基礎知識」, 中島基貴編著,産業図書(1995)、「合成香料 化学と商品知識」,印藤元一著,化学工業日報社(1996)、「香りの百科事典」、谷田貝光克編,丸善(2005)に記載の香料が使用できる。
【0017】
本発明の燻煙装置に使用する燻煙剤30は、有機発泡剤を50~99重量%、好ましくは60~90重量%、さらに好ましくは70~90重量%含有すると、目的に応じて配合する薬剤が効率よく揮散する。この有機発泡剤の含有量が99重量%を超えると、例えば顆粒など、成形するために別途溶剤などが必要となるため、好ましくない。
目的に応じて薬剤を配合する場合は、燻煙剤30に対して薬剤を0.5~80.0重量%、好ましくは3~70重量%、特に好ましくは5~50重量%となるように配合すればよい。
【0018】
本発明の燻煙装置に使用する燻煙剤30は、その製剤形態は特に限定されず、例えば、顆粒状、塊状、粒状、粉状、錠剤等の固形状等任意の形態とすることができる。
固形状の燻煙剤とする場合は、各成分を公知の造粒機や成形機を用いて所望の形状に成形すればよい。有機発泡剤と目的に応じた薬剤を混合し、結合剤や溶剤等を用いて造粒、乾燥させて、板状剤、顆粒剤、粉末剤、微細粒剤等とすればよい。これらを造粒する際には、例えば、顆粒剤であれば粒径を約1~10mm、長さを約1~30mmとするのがよい。
造粒の際に用いる結合剤として、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のセルロース類;α化デンプン、β化デンプン、デキストリン、スターチ等のデンプン系、アラビアゴム等の天然系高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン等の合成高分子化合物等の1種又は2種以上が挙げられる。
これらの結合剤は、燻煙剤に対して0.5~5.0重量%となるように配合すればよい。
溶剤としては、例えば、水、エタノール、プロパノール、ベンジルアルコール等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブタンジオール等の多価アルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコール-tert-ブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、フェニルカルビトール、フェニルセロソルブ、ベンジルカルビトール等のグリコールエーテル類、流動パラフィン、n-パラフィン等のパラフィン類、ジエチルフタレート、ベンジルベンゾエート、トリエチルシトレート、ミリスチン酸イソプロピル等のエステル類、その他3-メチル-4-メトキシブタノール、N-メチルピロリドン、炭酸プロピレン等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独で使用されても、また2種以上を任意に組み合わせて使用することもできる。
上記薬剤は、造粒時に混合、練り込む以外にも、造粒後に溶液として噴霧、浸漬させて造粒物に保持させることもできる。
【0019】
本発明の燻煙装置に使用する燻煙剤30には、本発明の効果を奏する限り、任意の成分を含んでいてもよい。その他の任意成分としては、例えば、蒸散補助剤、崩壊剤、防錆剤、安定化剤、賦形剤、色素等を用いることができる。
蒸散補助剤としては、例えば、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、酸化亜鉛、炭酸亜鉛、炭酸カルシウム、二酸化チタン、カーボンブラック、三酸化アンチモン、デカブロモジフェニレンオキサイド、無水トリメリット酸、無水マレイン酸、ベンゾトリアゾール、4,4’-オキシビス(ベンゼンスルホニルヒドラジド)、尿素等が挙げられる。これらを併用することで、薬剤の揮散効率を調整することができる。
崩壊剤としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル、ステアリン酸エステル、乳酸エチル、サリチル酸クロロフェニル等の有機酸エステル;乳酸、リンゴ酸、フマル酸、酒石酸、アジピン酸、コハク酸等の有機酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。崩壊剤を含有すると、加熱による製剤の崩壊が促進され、薬剤の揮散効率を高めることができる。
防錆剤としては、例えば、1,2,3-ベンゾトリアゾール、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト等が挙げられる。
安定化剤としては、例えば、ジブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、トコフェロール等が挙げられる。
賦形剤としては、例えば、パーライト、タルク、珪藻土、クレイ、ベントナイト、粘土鉱物などの鉱物、ショ糖、ブドウ糖などの糖、マルチトール、ソルビトール、キシリトールなどの糖アルコール等が挙げられる。
さらに必要であれば、各種界面活性剤、効力増強剤等を配合することができる。
【0020】
<仕切部材40について>
本発明の燻煙容器10内で使用する仕切部材40は、燻煙装置製造後における保管時や輸送時において、発熱剤20と燻煙剤30が混合することを防止する機能を有する。仕切部材40は、その側縁部が燻煙容器10の側壁部12に接する大きさとして、発熱剤20と燻煙剤30を完全に分離するものであってもよい。また、仕切部材40は、その側縁部が燻煙容器10の側壁部12に一部だけ接する態様や、また、仕切部材40の平面上に孔を1~複数個有する態様により、発熱剤20と燻煙剤30が一部接触していても、発熱剤20と燻煙剤30を概ね分離できるものであっても良い。また、発熱剤20と燻煙剤30の粒子径をコントロールすることにより、両剤の混合が防止できる場合には、仕切部材40を使用しなくても良い。
その材質としては、発熱剤20の発熱により溶融するものであり、発熱剤20の発熱温度に応じて選択することができる。具体的には、例えば、ポリエチレン(融点:105~115℃)、ポリプロピレン(融点:170℃)等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(融点:260℃)等のポリエステル、ポリスチレン(融点:230℃)等のプラスチック製のフィルムや不織布等が挙げられる。例えば、発熱剤20として酸化カルシウム(生石灰)を用いる場合、仕切部材40の材質は、融点:80~300℃のものが好ましい。融点が80℃未満であると、高温下での保存により、溶融・変形するおそれがあり、融点が300℃超であると、酸化カルシウムの水和反応熱で仕切部材40が溶融しにくいためである。
また、発熱剤20として酸化カルシウムを用いる場合、酸化カルシウムと水との反応により生じた水蒸気が、燻煙容器10内を上昇する。このため、仕切部材40としては、酸化カルシウムと水との反応初期に生じる水蒸気が、有機発泡剤30に接触するのを防ぐために、プラスチック製のフィルムを用いることが好ましい。なお、燻煙剤30に配合しても良い薬剤が、耐アルカリ性が低い物質である場合は、溶融しない部材により仕切部材40を構成することも可能である。
【0021】
本発明の燻煙装置1においては、燻煙剤30に対して発熱剤20を1~20重量倍を用いるのがよく、具体的には燻煙剤30を1~100gに対して、発熱剤20は10~300gを目安として用いるのがよい。
また、実際に本発明の燻煙装置を使用に際しては、燻煙容器10を水Wが入った外容器70に入れることにより、水Wが燻煙容器10の側壁部12の一部と底面部14から燻煙容器10内部に流入し、水Wは燻煙容器10の下部にある発熱剤10と接触する。発熱剤10と水Wとの水和反応熱により、仕切部材40が溶融し、さらに燻煙剤30が加熱される。有機発泡剤が加熱されることにより分解し、薬剤が配合されている場合には、この分解ガスと一緒に薬剤が揮散して、通煙孔52を通じて燻煙装置の外部に放出される。
この際、発熱剤20に対して水Wは0.5~3重量倍となるように使用すれば良く、発熱剤20に対する水Wのモル比が1.5~9.0倍となるようにすることでより良好に発熱させることができる。
【実施例0022】
以下の実施例において本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの例に限定されるものではない。なお、実施例において、特に明記しない限り、部は重量部を意味する。
【0023】
<実施例1~8、比較例1~3>
[試験検体の作製]
不織布(目付け:230g/m2)により側壁部と底面部が一体成形されたカップ型容器(上部開放面の直径:60mm、底面部直径:38mm、高さ:40mm、乾燥重量c1:0.9g)に、酸化カルシウム30gを充填したものを、各試験検体とした。充填した酸化カルシウムの上面は、試験検体の底面から概ね20mmの高さであった。また、試験検体の保水量aである「保水量a1」は2.33gであった。
この試験検体が保持できる水の重量(保水量a1)は、試験検体乾燥重量(乾燥重量c1)に対して、約2.6倍(「保水量a1」÷「乾燥重量c1」≒2.6)であった。
[試験方法]
ステンレスシャーレ(直径90mm×高さ20mm)に、下記表1に記載する水量A(mL)の水を満たし、これに試験検体を浸漬した。この浸漬した時点を、試験(評価)開始とした。
【0024】
[評価方法]
(1)容器の吸水量に関する評価
試験検体を水に浸漬してから10分後、試験検体から酸化カルシウム等の内容物を素早く取り出し、試験検体の重量を測定し、この重量から乾燥時の試験検体重量(0.9g)を引き算した値を、燻煙終了直後の試験検体が保持している水の量(保水量b)を算出した。試験は2回行い、平均値を「保水量b1」とした。
この「保水量b1」と、「保水量b1」を「保水量a1」で除した値を、表1に示した。
(2)容器損傷検証評価
試験検体を水に浸漬してから10分後、試験検体から酸化カルシウム等の内容物を素早く取り出した試験検体における「焦げ」や「穴あき」の有無について、目視で観察し、下記項目により評価した、この評価結果を表1に示した。
(評価項目)
〇:容器の損傷がない。
△:容器の損傷は、直径が概略1~2mm未満で、内容物の漏れがない。
×:容器の損傷は直径が概略2mm以上で、内容物の漏れがある。
上記「〇」の評価は、実用性があると判断した。
(3)燻煙温度評価
試験検体に充填した酸化カルシウムの表面中央部に温度計を設置し、データロガー(グラフテック社製、MT100)を用いて温度推移を1秒ごとに記録した。この記録から、最高到達温度と、350℃以上の温度の保持時間(秒)を抽出し、表1に示した。なお、実施例2は、この燻煙温度評価を行っておらず、表1には「-」と示した。
【0025】
試験検体(実施例1~8、比較例1~3)それぞれの上記(1)~(3)の評価結果を、表1に纏めて示した。
【表1】
【0026】
表1の結果より、試験検体が保持できる水の重量(保水量a1)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c1)に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量a1に対して、燻煙終了直後に0.10倍以上の水を保持している実施例1~8の燻煙容器は、「焦げ」や「穴あき」などの損傷がなく、また、焦げ臭などの不快な臭気を感じることもなく、安全に使用できることが明らかとなった。
これに対して、試験検体が保持できる水の重量(保水量a1)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c1)に対して1.5倍以上であるが、前記保水量a1に対して、燻煙終了直後に0.10倍より少ない水しか保持できなかった比較例1~3の燻煙容器は、「焦げ」や「穴あき」が起こり、安全に利用出来ないことが確認された。
特に、実施例1と比較例3の結果を詳細に検討すると、水量Aは相違するものの、最高到達温度と350℃保持時間は同じであることから、実施例1と比較例3の水和反応は良好であったことが理解できる。一方、比較例3の試験検体は容器損傷が認められた。すなわち、この結果より、水量Aという使用条件が変動したとしても、試験検体が保持できる水の重量(保水量a1)に対して、燻煙終了直後に0.10倍以上の水を保持することが、安全に使用できる燻煙装置の「不可欠な構成」であることが明らかとなった。
また、350℃保持時間が10秒以上であれば、有機発泡剤を分解温度まで導くことができ、薬剤を良好に揮散させることができるため、本発明の燻煙装置は良好な揮散効果が得られるものと考えている。
【0027】
<比較例4、5>
[試験検体の作製]
撥水性不織布(目付け:20g/m2)により側壁部と底面部を有し天面のない、一辺が40mmの立方体容器(乾燥重量c2:0.27g)に、酸化カルシウム30gを充填したものを、各試験検体とした。充填した酸化カルシウムの上面は、試験検体の底面から概ね18mmの高さであった。また、試験検体の保水量aである「保水量a2」は0.15gであった。
この試験検体が保持できる水の重量(保水量a2)は、試験検体乾燥重量(乾燥重量c2)に対して、約0.6倍(「保水量a2」÷「乾燥重量c2」≒0.6)であった。
この試験検体を使用して、上記試験方法と評価方法(1)、(2)と同様の試験及び評価を1回行った。
【0028】
試験検体(比較例4、5)それぞれの上記(1)、(2)の評価結果を、表2に纏めて示した。
【表2】
【0029】
表2の結果より、試験検体が保持できる水の重量(保水量a2)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c2)に対して約0.6倍である比較例4、5の燻煙容器は、「焦げ」や「穴あき」が起こり、安全に利用出来ないことが確認された。
【0030】
<実施例9~12、比較例6>
[試験検体の作製]
不織布(目付け:230g/m2)により側壁部と底面部が一体成形されたカップ型容器(上部開放面の直径:75mm、底面部直径:47mm、高さ:30mm、乾燥重量c3:1.24g)に、酸化カルシウム30gを充填したものを、各試験検体とした。充填した酸化カルシウムの上面は、試験検体の底面から概ね10mmの高さであった。また、試験検体の保水量aである「保水量a3」は2.48gであった。
この試験検体が保持できる水の重量(保水量a3)は、試験検体乾燥重量(乾燥重量c3)に対して、2.0倍(「保水量a3」÷「乾燥重量c3」=2.0)であった。
この試験検体を使用して、上記試験方法と評価方法(1)~(3)と同様の試験及び評価を行い、その結果を表3に纏めて示した。
【0031】
【0032】
表3の結果より、試験検体が保持できる水の重量(保水量a3)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c3)に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量a3に対して、燻煙終了直後に0.10倍以上の水を保持している実施例9~12の燻煙容器は、「焦げ」や「穴あき」などの損傷がなく、焦げ臭などの不快な臭気を感じることもなく、安全に使用できることが明らかとなった。
これに対して、試験検体が保持できる水の重量(保水量a3)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c3)に対して1.5倍以上であるが、前記保水量a3に対して、燻煙終了直後に0.10倍より少ない水しか保持できなかった比較例6の燻煙容器は、「焦げ」や「穴あき」が起こり、安全に利用出来ないことが確認された。
また、表1の結果と同様に、350℃保持時間が10秒以上であるため、本発明の燻煙装置は良好な揮散効果が得られるものと考えている。
【0033】
<実施例13~18、比較例7>
[試験検体の作製]
不織布(目付け:230g/m2)により側壁部と底面部が一体成形されたカップ型容器(上部開放面の直径:75mm、底面部直径:47mm、高さ:30mm、乾燥重量c4:1.24g)に、酸化カルシウム45gを充填したものを、各試験検体とした。充填した酸化カルシウムの上面は、試験検体の底面から概ね13mmの高さであった。また、試験検体の保水量aである「保水量a4」は2.48gであった。
この試験検体が保持できる水の重量(保水量a4)は、試験検体乾燥重量(乾燥重量c4)に対して、2.0倍(「保水量a4」÷「乾燥重量c4」=2.0)であった。
この試験検体を使用して、上記試験方法と評価方法(1)~(3)と同様の試験及び評価を行い、その結果を表4に纏めて示した。
【0034】
【0035】
表4の結果より、試験検体が保持できる水の重量(保水量a4)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c4)に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量a4に対して、燻煙終了直後に0.10倍以上の水を保持している実施例13~18の燻煙容器は、「焦げ」や「穴あき」などの損傷がなく、焦げ臭などの不快な臭気を感じることもなく、安全に使用できることが明らかとなった。
これに対して、試験検体が保持できる水の重量(保水量a4)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c4)に対して1.5倍以上であるが、前記保水量a4に対して、燻煙終了直後に0.10倍より少ない水しか保持できなかった比較例7の燻煙容器は、「焦げ」や「穴あき」が起こり、安全に利用出来ないことが確認された。
また、表1、3の結果と同様に、350℃保持時間が10秒以上であるため、本発明の燻煙装置は良好な揮散効果が得られるものと考えている。
【0036】
<実施例19~22>
[試験検体1の作製]
ろ紙(目付け:90g/m2)により側壁部と底面部を有し天面のない、一辺が40mmの立方体容器(乾燥重量c5:0.82g)に、酸化カルシウム30gを充填したものを、各試験検体(実施例19、20)とした。充填した酸化カルシウムの上面は、試験検体の底面から概ね18mmの高さであった。また、試験検体の保水量aである「保水量a5」は2.15gであった。
この試験検体が保持できる水の重量(保水量a5)は、試験検体乾燥重量(乾燥重量c5)に対して、約2.6倍(「保水量a5」÷「乾燥重量c5」≒2.6)であった。
[試験検体2の作製]
不織布(目付け:165g/m2)により側壁部と底面部を有し天面のない、一辺が40mmの立方体容器(乾燥重量c6:1.53g)に、酸化カルシウム30gを充填したものを、各試験検体(実施例21、22)とした。充填した酸化カルシウムの上面は、試験検体の底面から概ね18mmの高さであった。また、試験検体の保水量aである「保水量a6」は6.65gであった。
この試験検体が保持できる水の重量(保水量a6)は、試験検体乾燥重量(乾燥重量c6)に対して、約4.3倍(「保水量a6」÷「乾燥重量c6」≒4.3)であった。
これらの試験検体(実施例19~22)を使用して、上記試験方法と評価方法(1)、(2)と同様の試験及び評価を行い、その結果を表5に纏めて示した。
【0037】
【0038】
表5の結果より、試験検体が保持できる水の重量(保水量a5、6)が、前記燻煙容器乾燥重量(乾燥重量c5、6)に対して1.5倍以上であり、かつ、前記保水量a5、6に対して、燻煙終了直後に0.10倍以上の水を保持している実施例19~22の燻煙容器は、吸水性素材Aの種類に関わらず、「焦げ」や「穴あき」などの損傷がなく、焦げ臭などの不快な臭気を感じることもなく、安全に使用できることが明らかとなった。
本発明の燻煙装置は、発熱剤が充填された燻煙容器の全体が吸水性素材により形成されており、金属製缶を使用していないため、燻煙装置使用後に一般ゴミとして廃棄することができ、環境負荷を低減することが可能であるのみならず、発熱剤が充填された燻煙容器が、特定量の水を吸水でき、かつ、燻煙時に特定量以上の水を保持していることで、燻煙時の水和反応熱に対しても、容器自体の温度が水の沸点温度以上に上昇することを抑制するため、発火はもとより、炭化などにより燻煙容器が「焦げ」や「穴あき」などの損傷することがないため、安全に使用することができ有用である。