(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184564
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】新規化合物
(51)【国際特許分類】
C07C 233/27 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
C07C233/27 CSP
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023177000
(22)【出願日】2023-10-12
(62)【分割の表示】P 2020531344の分割
【原出願日】2019-07-17
(31)【優先権主張番号】P 2018134457
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(71)【出願人】
【識別番号】504179255
【氏名又は名称】国立大学法人 東京医科歯科大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】土居 久志
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 恭良
(72)【発明者】
【氏名】立石 宇貴秀
(72)【発明者】
【氏名】加納 大輔
(57)【要約】
【課題】脳内のTRPV1受容体のイメージングに好適な化合物の標識前駆体を提供する。
【解決手段】下記式(IA)にて示される化合物、またはその塩を用いる:
【化1】
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(IA)で示される化合物またはその塩。
【化1】
【請求項2】
下記式(IB)で示される化合物またはその塩。
【化2】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規化合物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、生体内の情報を得るための種々の技術に関する研究がなされており、とりわけ、目的の分子挙動を調べることができる技術である「分子イメージング」が注目されている。分子イメージングは、種々の疾患の早期発見、および、有効かつ副作用の少ない医薬の短期間での開発に有用であると考えられる。
【0003】
生体内の情報を得るための分子イメージングとしては、陽電子放射断層画像撮影法(PET:Positron Emission Tomography)がよく知られている。PETは、陽電子が電子と衝突することによって放射されるγ線を用いて断層画像を撮影する技術である。具体的に、ポジトロン(陽電子)を放出する放射性核種で標識した分子(いわゆる、PET分子プローブ)を生体内に投与し、その放射性核種の崩壊時に放出される陽電子が近傍の電子と衝突すると、511KeVのエネルギーを持つ2本のγ線が180度方向に放出される。このγ線を検出することによって、PET分子プローブの生体内における存在位置と、その物質量とを定量的に調べることができる。現在、PET法は、病気の診断や創薬研究の促進に向けた分子イメージング技術として広く利用されている。
【0004】
疼痛の治療現場においては、緩和ケアが主流であり、根治療法は存在しない。除痛効果の評価については、主観的指標はあるものの、より正確な客観的指標およびサロゲートマーカーは存在せず、除痛効果の評価は、問診、視診および触診などの定性的手法に限られている。除痛効果を客観的に評価する一つの手段として、画像診断があげられ、近年、画像診断のなかでも、特にPETを除痛効果の評価に用いようとする試みがなされている。その理由は、PETの解像度が良好であり、PETに使用できる薬剤が多様であり、かつ、PETによって機能診断が可能であるからである。除痛効果の評価にPETを利用することができれば、根治療法のない疼痛の診断および/または治療にかかわる医療技術を大幅に向上させることが可能となる。
【0005】
TRPV1(Transient Receptor Potential Vanilloid 1)受容体は、侵害受容体として知られ、その機能の1つとして、痛み受容体としての機能が挙げられる。よって、TRPV1受容体アンタゴニストは、鎮痛剤の開発につながると期待され、製薬企業により、TRPV1受容体アンタゴニストの候補化合物の開発が進められている。また、放射性同位体標識されたTRPV1受容体アンタゴニストについて、PETプローブとしての応用も提案されている。これまで報告されているTRPV1受容体アンタゴニストを利用したPETプローブとして、例えば、非特許文献1には、TRPV1受容体アンタゴニストであるSB-366791の11C-標識PETプローブ([11C]SB-366791)が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Daisy van Veghel et al., Nuclear Medicine and Biology, 40, 141-147, 2013
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述の[11C]SB-366791を用いて脳内のTRPV1受容体のイメージングを行ったところ、脳内に存在することが知られているTRPV1受容体を、効果的にイメージングすることができなかった。
【0008】
本発明の一態様は、脳内のTRPV1受容体のイメージングに好適な化合物の標識前駆体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る化合物、またはその塩は、前記課題を解決するために、下記式(IA)もしくは式(IB)にて示される化合物、またはその塩であることを特徴としている:
【0010】
【0011】
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、脳内のTRPV1受容体をイメージングすることができる化合物の標識前駆体を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】従来技術に係る化合物(14)を用いた場合における、PET測定による脳(A)および全身(B)の像である。
【
図2】本発明の一態様に係る化合物(15)を用いた場合における、PET測定による脳(A)および全身(B)の像である。
【
図3】本発明の一態様に係る化合物(16)を用いた場合における、PET測定による脳(A)および全身(B)の像である。
【
図4】本発明の一態様に係る化合物(17)を用いた場合における、PET測定による脳(A)および全身(B)の像である。
【
図5】本発明の一態様に係る化合物(18)を用いた場合における、PET測定による脳(A)および全身(B)の像である。
【
図6】本発明の一態様に係る化合物(19)を用いた場合における、PET測定による脳(A)および全身(B)の像である。
【
図7】本発明の一態様に係る化合物と従来技術に係る化合物とを用いた場合における、脳内のPET測定での時間経過によるSUVの変化を示すグラフである。
【
図8】本発明の一態様に係る化合物と従来技術に係る化合物とを用いた場合における、体表のPET測定での時間経過によるSUVの変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の一実施形態について説明すると以下の通りであるが、本発明はこれに限定されない。本発明は、以下に説明する各構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態および実施例にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態および実施例についても本発明の技術的範囲に含まれる。また、本明細書中に記載された文献の全てが、本明細書中において参考文献として援用される。
【0015】
〔実施形態1〕
本実施の形態に係る化合物、またはその塩は、下記式(I)にて示される化合物、またはその塩である:
【0016】
【0017】
[式(I)中、
R1は、水素または任意の有機基であり、
R2は、R1が水素の場合は炭素数2以上の有機基であり、R1が水素以外である場合は任意の有機基であり、
R1および/またはR2は、放射性同位体を有するものである]。
【0018】
式(I)にて示される化合物、またはその塩は、SB-366791内の部分構造であって、SB-366791とTRPV1受容体との結合に必要な部分構造を有している。それ故に、前記化合物は、TRPV1受容体に対して選択的な親和性を示す。また、前記化合物は、代謝に対して安定な部位に放射性同位体(例えば、短寿命の放射性同位体)を有する。それ故に、前記化合物は、TRPV1受容体の分布を可視化できるだけでなく、TRPV1受容体を精度高く定量できる。また、前記化合物は、生体内での代謝安定性が高い。それ故に、前記化合物は、生体への投与に好適である。また、前記化合物は、脳内に集積しやすい。それ故に、前記化合物は、脳を含む中枢神経系のイメージングに好適である。
【0019】
ここで、式(I)中におけるR1は、水素または任意の有機基であり、式(I)中におけるR2は、R1が水素の場合は炭素数2以上の有機基であり、R1が水素以外である場合は任意の有機基である。なお、本明細書では、水素のみからなる置換基は、「有機基」に包含されない。
【0020】
R1および/またはR2における有機基は、特に限定されるものではないが、例えば、アリール基、複素環基、アルキル基、フルオロアルキル基、アルケニル基、フルオロアルケニル基、アルキニル基、フルオロアルキニル基、アルコキシル基、フルオロアルコキシル基、アセチル基、カルボキシアルキル基、および、アルキルアミド基が挙げられる。
【0021】
前記R1における有機基は、アルキル基が好ましく、なかでも、炭素数が20以下であるものが好ましく、炭素数が10以下であるものがより好ましく、炭素数5以下であるものがより好ましく、炭素数3以下であるものがより好ましく、メチル基が特に好ましい。R1がこのような有機基であれば、式(I)で表される化合物、およびその塩において、構造が安定化し、かつ、生体内での代謝安定性が向上する。
【0022】
前記R2における有機基は、アルキル基が好ましく、なかでも、炭素数が20以下であるものが好ましく、炭素数が10以下であるものがより好ましく、炭素数5以下であるものがより好ましく、炭素数3以下であるものがより好ましい。前記R2における有機基は、フルオロアルキル基であることが好ましく、具体的には、フルオロエチル基、フルオロプロピル基、フルオロブチル基などが例示できる。また、R1が水素である場合、R2はメチル基であってもよい。R2がこのような有機基であれば、式(I)で表される化合物、およびその塩において、構造が安定化し、かつ、生体内での代謝安定性が向上する。
【0023】
前記R1および/または前記R2では、任意の原子が放射性同位体であり得る。放射性同位体は特に限定されないが、短寿命の放射性同位体が好ましい。短寿命の放射性同位体としては、例えば、炭素の放射性同位体、フッ素の放射性同位体が挙げられ、なかでも11C、18Fが好ましい。長寿命の放射性同位体としては、14Cが好ましい。
【0024】
11C(半減期:20.4分)は、半減期が短いので、患者に投与された場合の被爆を最小限とすることができる。18F(半減期:109.8分)は、半減期が11Cと比較して長いので、患者の被爆は若干上昇するが、18Fを有する化合物を合成してから使用するまでの、時間的な余裕を得ることができる。本実施形態に係る化合物が、必ずしも使用される場での用事調製が可能であるとは限らないため、18Fを有する化合物は、合成専用施設等にて合成した後、当該化合物を使用する場に取り寄せて使用することが可能となる点で、優れている。
【0025】
上記式(I)にて示される化合物の塩は、特に限定されず、あらゆる塩であり得る。当該塩としては、例えば、金属塩(ナトリウム塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、および、カリウム塩)を挙げることができる。
【0026】
〔実施形態2〕
本実施の形態に係るTRPV1受容体のイメージング剤は、本発明の実施形態1に係る、化合物またはその塩を有効成分として含んでいる。本実施の形態に係るTRPV1受容体のイメージング剤は、TRPV1受容体とは無関係に、脳を可視化(例えば、脳の特定の領域を可視化)するために用いられてもよい。この場合、本実施の形態に係るTRPV1受容体のイメージング剤は、脳イメージング剤であり得る。
【0027】
本実施の形態に係るイメージング剤は、TRPV1受容体の発現量に影響を及ぼす(換言すれば、TRPV1受容体の発現量と相関を有する)病態の評価に使用され得る。前記病態として、例えば、疼痛、癌、変形性関節炎、帯状疱疹後神経痛、肺疾患(例えば、咳発作、および、気管支喘息)、炎症性腸疾患、および、過敏性腸症候群などが挙げられるが、これらに限定されず、痛みを伴うあらゆる病態が挙げられる。前記癌は、あらゆる固形癌および血液癌を包含する。当該癌としては、特に激しい痛みを伴う例として、骨肉腫および骨転移した癌などの、骨に発生する癌が挙げられる。
【0028】
本実施の形態に係るイメージング剤は、TRPV1受容体を定量的にイメージングすることができる。それ故に、本実施の形態に係るイメージング剤であれば、前記病態の重篤度を定量的に診断することができる。
【0029】
前記病態を評価する方法としては、PETが好適だが、これに限定されず、例えば、SPECT(Single photon emission computed tomography)などでもよい。また、用いられる化合物またはその塩が、13C-標識体である場合は、LC-MS(Liquid chromatography-mass spectrometry)による代謝物質量分析が、用いられる化合物またはその塩が、14C-標識体である場合は、AMS(Accelerator mass spectrometry)による代謝物質量分析が、病態を評価する方法として使用可能である。
【0030】
本実施の形態に係るイメージング剤は、PETイメージングに使用され得る。イメージング剤がPETにおいて使用される場合、被検者に対するイメージング剤の投与量が微量でよいため、TRPV1受容体の阻害による薬理作用(除痛、熱傷感覚の惹起など)が被検者に表れず、安全である。また、本実施の形態に係るイメージング剤であれば、放射性同位体による被爆を最小限とすることができる。
【0031】
前記イメージング剤の投与方法は、特に限定されない。具体的に、投与方法としては、注射投与(例えば、経静脈投与、および、経動脈投与)、経口投与、鼻腔投与、口腔粘膜投与、および、経皮投与などが例示できる。それ故に、本実施の形態に係るTRPV1受容体のイメージング剤は、注射剤、内服薬、経鼻薬、または、外用薬であり得る。前記イメージング剤は、溶液または懸濁液のいずれかの液状製剤として調製されていてもよいし、液体(例えば、緩衝液)に溶解もしくは懸濁するために適切な固形製剤として調製されていてもよい。
【0032】
TRPV1受容体は痛み受容体として機能することから、鎮痛剤等のターゲット分子として知られている。それ故に、前記イメージング剤は、TRPV1受容体を標的とする医薬品のスクリーニングに活用することができる。前記スクリーニング方法として、例えば、前記イメージング剤にてTRPV1受容体を可視化し、投与によってTRPV1受容体の発現量が変化する薬品候補物質を、医薬品としてスクリーニングする方法が考えられる。前記医薬品候補物質および医薬品としては、低分子化合物、核酸、ペプチド、および、抗体などのタンパク質が挙げられるが、限定されない。前記スクリーニングは、試験管内、または、生体内のいずれによっても実施することができる。
【0033】
本実施の形態のイメージング剤における有効成分の量は、特に限定されず、例えば、イメージング剤に対して、0.001重量%~100重量%であってもよく、0.01重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~100重量%であってもよく、0.1重量%~95重量%であってもよく、0.1重量%~90重量%であってもよく、0.1重量%~80重量%であってもよく、0.1重量%~70重量%であってもよく、0.1重量%~60重量%であってもよく、0.1重量%~50重量%であってもよく、0.1重量%~40重量%であってもよく、0.1重量%~30重量%であってもよく、0.1重量%~20重量%であってもよく、0.1重量%~10重量%であってもよい。
【0034】
本実施の形態のイメージング剤は、有効成分以外の成分(薬学的に受容可能なキャリア)を含んでいてもよい。有効成分以外の成分としては、本実施の形態のイメージング剤が固形製剤として提供される場合には、賦形剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤を挙げることができ、実施の形態のイメージング剤が液状製剤として提供される場合には、溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤および無痛化剤を挙げることができる。その他、有効成分以外の成分として、防腐剤、抗酸化剤および安定化剤も挙げることができる。
【0035】
上記「賦形剤」としては、例えば、乳糖、白糖、D-マンニトール、キシリトール、ソルビトール、エリスリトール、デンプンおよび結晶セルロースを挙げることが、これらに限定されない。
【0036】
上記「滑沢剤」としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ワックス、タルクおよびコロイドシリカを挙げることが、これらに限定されない。
【0037】
上記「結合剤」としては、例えば、α化デンプン、メチルセルロース、結晶セルロース、白糖、D-マンニトール、トレハロース、デキストリン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースおよびポリビニルピロリドンを挙げることが、これらに限定されない。
【0038】
上記「崩壊剤」としては、例えば、デンプン、カルボキシメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、クロスカルメロースナトリウムおよびカルボキシメチルスターチナトリウムを挙げることが、これらに限定されない。
【0039】
上記「溶剤」としては、例えば、注射用水、アルコール、プロピレングリコール、マクロゴール、ゴマ油、トウモロコシ油およびトリカプリリンを挙げることが、これらに限定されない。
【0040】
上記「溶解補助剤」としては、例えば、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、D-マンニトール、トレハロース、安息香酸ベンジル、エタノール、トリスアミノメタン、コレステロール、トリエタノールアミン、炭酸ナトリウムおよびクエン酸ナトリウムを挙げることが、これらに限定されない。
【0041】
上記「懸濁剤」としては、例えば、界面活性剤(例えば、ステアリルトリエタノールアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリルアミノプロピオン酸、レシチン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、モノステアリン酸グリセリン)および親水性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース)を挙げることが、これらに限定されない。
【0042】
上記「等張化剤」としては、例えば、塩化ナトリウム、グリセリンおよびD-マンニトールを挙げることが、これらに限定されない。
【0043】
上記「緩衝剤」としては、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩およびクエン酸塩を挙げることが、これらに限定されない。
【0044】
上記「無痛化剤」としては、例えば、ベンジルアルコールを挙げることが、これに限定されない。
【0045】
上記「防腐剤」としては、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸およびソルビン酸を挙げることが、これらに限定されない。
【0046】
上記「抗酸化剤」としては、例えば、亜硫酸塩およびアスコルビン酸を挙げることが、これらに限定されない。
【0047】
上記「安定化剤」としては、製薬分野において通常用いられるものであればよく、特に限定されない。
【0048】
本実施の形態のイメージング剤における有効成分以外の成分の量は、特に限定されず、例えば、イメージング剤に対して、0重量%~99.999重量%であってもよく、0重量%~99.99重量%であってもよく、0重量%~99.9重量%であってもよく、5重量%~99.9重量%であってもよく、10重量%~99.9重量%であってもよく、20重量%~99.9重量%であってもよく、30重量%~99.9重量%であってもよく、40重量%~99.9重量%であってもよく、50重量%~99.9重量%であってもよく、60重量%~99.9重量%であってもよく、70重量%~99.9重量%であってもよく、80重量%~99.9重量%であってもよく、90重量%~99.9重量%であってもよい。
【0049】
〔実施形態3〕
本実施の形態に係るTRPV1受容体のイメージングキットは、上述した〔実施形態1〕にて説明した化合物、またはその塩を備えている。本実施の形態に係るTRPV1受容体のイメージングキットは、TRPV1受容体とは無関係に、脳を可視化(例えば、脳の特定の領域を可視化)するために用いられてもよい。この場合、本実施の形態に係るTRPV1受容体のイメージングキットは、脳イメージングキットであり得る。
【0050】
本実施の形態に係るTRPV1受容体のイメージングキットを用いれば、TRPV1受容体のイメージング剤を容易に調整できる、および/または、TRPV1受容体のイメージング剤を容易に被検者に投与できる。
【0051】
本実施の形態のキットに備えられている化合物およびその塩については、〔実施形態1〕にて説明したので、ここではその説明を省略する。
【0052】
上記イメージングキットは、上述した〔実施形態1〕にて説明した化合物、またはその塩(換言すれば、TRPV1受容体のイメージング剤における有効成分)以外の構成を備えていてもよい。
【0053】
上記構成としては、例えば、賦形剤、滑沢剤、結合剤および崩壊剤を挙げることができる。この場合、本実施の形態のイメージングキットを用いて、固形製剤であるTRPV1受容体のイメージング剤を、容易に調製することができる。また、当該構成として、溶剤、溶解補助剤、懸濁剤、等張化剤、緩衝剤および無痛化剤を挙げることができる。この場合、本実施の形態のイメージングキットを用いて、液状製剤であるTRPV1受容体のイメージング剤を、容易に調製することができる。また、当該構成として、防腐剤、抗酸化剤および安定化剤を挙げることができる。この場合、本実施の形態のイメージングキットを用いて、長期保存が可能なTRPV1受容体のイメージング剤を、容易に調製することができる。
【0054】
また、上記構成として、注射器を挙げることができる。この場合、本実施の形態のイメージングキットを用いて、TRPV1受容体のイメージング剤を、容易に被検者へ投与することができる。
【0055】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係る化合物、またはその塩は、前記課題を解決するために、下記式(I)にて示される化合物、またはその塩であることを特徴としている:
【0056】
【0057】
[式(I)中、
R1は、水素または任意の有機基であり、
R2は、R1が水素の場合は炭素数2以上の有機基であり、R1が水素以外である場合は任意の有機基であり、
R1および/またはR2は、放射性同位体を有するものである]。
【0058】
本発明の一態様に係るTRPV1受容体のイメージング剤は、前記課題を解決するために、本発明の一態様に係る化合物、またはその塩を有効成分として含んでいることを特徴としている。
【0059】
本発明の一態様に係るTRPV1受容体のイメージング剤は、PETイメージング、または、TRPV1受容体の発現量に影響を及ぼす病態の評価に使用されるものであることが好ましい。
【0060】
本発明の一態様に係るTRPV1受容体のイメージング剤では、前記病態が、疼痛、癌、変形性関節炎、帯状疱疹後神経痛、肺疾患、炎症性腸疾患、または、過敏性腸症候群であることが好ましい。
【0061】
本発明の一態様に係るTRPV1受容体のイメージングキットは、前記課題を解決するために、下記式(I)にて示される化合物、またはその塩を備えていることを特徴としている:
【0062】
【0063】
[式(I)中、
R1は、水素または任意の有機基であり、
R2は、R1が水素の場合は炭素数2以上の有機基であり、R1が水素以外である場合は任意の有機基であり、
R1および/またはR2は、放射性同位体を有するものである]。
【実施例0064】
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0065】
〔化合物の合成〕
(I)標識前駆体の合成
化合物(4)((2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-(4-methoxyphenyl)-2-propenamide)(SB366791)、化合物(5)((2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(2-fluoroethoxy)-phenyl]-2-propenamide)、化合物(6)((2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(3-fluoropropoxy)-phenyl]-2-propenamide)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0066】
【0067】
化合物(7)((2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(tetrahydropyran-2-yl)oxyphenyl]-2-propenamide)、化合物(8)((2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(hydroxyphenyl)-N-methyl-2-propenamide)、化合物(9)(2-Fluoroethyl methanesulfonate)、化合物(10)(3-Fluoropropyl methanesulfonate)、化合物(11)((2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-(4-methoxyphenyl)-N-methyl-2-propenamide)、化合物(12)((2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(3-fluoroethoxyphenyl)-N-methyl-2-propenamide)、化合物(13)((2E)- 3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(3-fluoropropoxyphenyl)-N-methyl-2-propenamide)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0068】
【0069】
以下に、各化合物についての合成方法について具体的に説明する。
【0070】
(i)化合物(1)((2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-(4-hydroxyphenyl-2-propenamide)の合成
化合物(1)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0071】
【0072】
乾燥したナスフラスコ(200mL)に、4-chlorocinnamic acid(3.1g,17mmol)を加え、更に、無水DMF(70mL)を加えた。このナスフラスコを氷水冷しながら、WSCI HCL(Water Soluble Carbodiimide hydrochloride: 1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)carbodiimide hydrochloride)(3.6g,19mmol)を、更に加えた。約10分同温でナスフラスコ内の溶液を撹拌した後、ナスフラスコを氷水浴から取り出し、当該ナスフラスコへ、HOBt(2.5g,19mmol)、および、DMAP(2.3g,18.7mmol)を加えた。添加後、ナスフラスコ内の溶液を約20分撹拌し、続いて、当該ナスフラスコへ3-hydroxyaniline(2.5g,19mmol)を加え、ナスフラスコ内の溶液を室温で終夜撹拌し、反応させた。この反応混合物を精製水(200mL)に投入し、酢酸エチルを用いて抽出した。抽出液を精製水および飽和食塩水で洗浄し、当該抽出液を無水硫酸マグネシウムで乾燥させた後、減圧濃縮し、粗生成物を得た。当該粗生成物を酢酸エチル:n-ヘキサンを用いて再結晶化させ、化合物(1)(2.8g,61%)を得た。
【0073】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 10.09 (1H, br. s), 9.43 (1H, s), 7.65 (2H d, J = 8.8 Hz, 4 Hz), 7.56 (1H, d, J = 14.8 Hz), 7.51 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.30 (1H, t, J = 2 Hz), 7.09 (1H, dd, J = 8.0 Hz, 7.6 Hz), 7.05 (1H, dt, J =8.4 Hz, 1.6 Hz), 6.88 (1H, d, J = 8.4 Hz), 6.47 (1H, dt, J = 8.0 Hz, 1.6 Hz), 13C-NMR (DMSO-d6) δ: 163. 1, 157.6, 140.2, 138.5, 134.1, 133.7, 129.4, 129.3, 129.0, 123.3, 110.6, 110.0, 106.4.:。
【0074】
(ii)化合物(2)(2-Fluoroethyl p-toluenesulfonate)の合成
化合物(2)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0075】
【0076】
氷水冷下に攪拌した、2-Fluoroethanol(1.0g,15mmol)を含むCHCL3(10mL)溶液に、Et3N(2.38mL,17mmol)を加えた。当該溶液を同温にて暫く攪拌し、続いて、撹拌後の溶液にp-TsCl(p-Toluenesulfonyl chloride)(3.3g,17mmol)を約50分かけて加えた。添加完了後、当該溶液を室温で終夜攪拌し、反応させた。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(20mL)に再溶解し、溶解液を、精製水および飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水MgSO4を用いて乾燥させた後、この溶解液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;AcOEt:n-ヘキサン)を用いて精製し、油状の化合物(2)(2.1g,63%)を得た。
【0077】
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.8 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.36 (2H, d, J = 8.4 Hz), 4.65-4.61 (1H, m), 4.53-4.49 (1H, m), 4.32-4.28 (1H, m), 4.25-4.21 (1H, m), 2.46 (3H, s):。
【0078】
(iii)化合物(3)(3-Fluoropropyl p-toluenesulfonate)の合成
化合物(3)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0079】
【0080】
氷水冷下に攪拌した、3-fluoropropanol(1.6g,20mmol)を含む塩化メチレン(13mL)溶液に、Et3N(3.17mL,23mmol)を加えた。当該溶液を同温にて暫く攪拌し、続いて、撹拌後の溶液にp-TsCl(4.2g,22mmol)を約50分かけて加えた。添加完了後、当該溶液を室温で終夜攪拌し、反応させた。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(50mL)に再溶解し、溶解液を、精製水および飽和食塩水を用いて洗浄し、次いで無水MgSO4を用いて乾燥させた後、この溶解液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル:n-ヘキサン)を用いて精製し、油状の化合物(3)(2.1g,63%)を得た。
【0081】
1H-NMR (CDCl3) δ: 7.8 (2H, d, J = 8, 4 Hz), 7.36 (2H d, J = 8.4 Hz), 4.65-4.61 (1H, m), 4.53-4.49 (1H, m), 4.32-4.28 (1H, m), 4.25-4.21 (1H, m), 2.46 (3H, s).:。
【0082】
(iv)化合物(4)(SB366791)の合成
化合物(4)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0083】
【0084】
乾燥したスクリューキャップバイアル(10mL)に、化合物(1)(500mg,1.8mmol)と、K2CO3(127mg,0.9mmol)と、無水DMF(6.3mL)とを加えた。この懸濁液を、室温下、約20分攪拌した後、当該懸濁液にCH3I(125μL,2mmol)を加え、スクリューキャップバイアルを80℃の油浴に入れ、15.5時間攪拌反応させた。反応混合物を放冷後、冷精製水中に投じ、生じた固形物を濾取し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液CHCL3:CH3OH=100:0→95:5)に供し、目的とする化合物(4)(214mg,40%)を得た。
【0085】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 9.75 (1H, 7.49 H, d, J = 15. 6Hz), 7.45-7.37 (4H, m, Ar-H), 7.25 (1H, t, J= 7.8 Hz), 6.78 (1H, dq, J = 8 Hz, 2 Hz), 6.72 (1H, dq, J = 8 Hz, 2 Hz), 6.68 (1H, t, J = 2 Hz), 6.43 (1H, d, J = 15.6 Hz), 3.25 (3H, s); 13C-NMR (DMSO-d6) δ: 164.4, 158.2, 144.2, 139.0, 134.0, 133.6, 130.2, 129.3, 129.0, 128.9, 119.9, 117.6, 114.6, 113.9.:。
【0086】
(v)化合物(5)の合成
化合物(5)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0087】
【0088】
スクリューキャップバイアル(10mL)に、化合物(1)(400mg,1.5mmol)と、K2CO3(111mg,0.8mmol)と、無水DMF(4mL)とを入れて懸濁液とし、この懸濁液を室温下約20分攪拌した後、当該懸濁液に化合物(2)(349mg,1.6mmol)を含む無水DMF(1mL)溶液を加え、当該懸濁液を80℃の油浴中にて26時間攪拌して反応させた。反応混合物を放冷後、冷水中に投じ、生じた固形物を濾取し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液CHCl3:CH3OH100:0→99:1)に供し、目的とする化合物(5)(214mg,45%)を得た。
【0089】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 10.21 (1H, br. s), 7.66 (2H, d, J = 15.6 Hz ), 7.58 (1H, d, J = 15.6 Hz), 7.51 (2H, m) 7.46 (1H, m), 4.21 (dt, 30 Hz, 4 Hz), 4.75 (dt, 48 Hz, 4 Hz). 13C-NMR (DMSO-d6) δ: 163.3, 158.4, 140.3, 138.8, 134.2, 133.6, 129. 7, 123.0, 112.0, 109.3, 105.8, 82.9, 81.3, 67.1, 66.9.:。
【0090】
(vi)化合物(6)の合成
化合物(6)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0091】
【0092】
スクリューキャップバイアル(10mL)に、化合物(1)(400mg,1.5mmol)と、K2CO3(111mg,0.8mmol)と、無水DMF(5mL)とを加えた。この懸濁液を室温下にて約20分攪拌した後、当該懸濁液に化合物(3)(371mg,1.6mmol)を含む無水DMF(1mL)溶液を加え、当該懸濁液を80℃の油浴中にて24時間攪拌して反応させた。なお原料の残留が認められたので、3-fluoropropyl tosylate(123mg,0.5mmol)、および、K2CO3(37mg,0.27mmol)を追加し、反応を続けた(20時間)。反応混合物を放冷後、冷精製水中に投じ、生じた固形物を濾取し、粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;CHCl3:CH3OH=100:0→80:20)に供し、目的とする化合物(6)(145mg,30%)を得た。
【0093】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 10.2 (1H, br. s), 7.67-7.63 (2H, m, Ar-H), 7.56 (1H, d, J = 5. 6 Hz), 7.53-7.49 (2H, m, Ar-H), 7.45 (1H, m), 7.26-7.17 (2H, m, Ar-H), 6.82 (1H, d, J = 15.6 Hz), 6.70-6.66 (1H, m), 4.62 (2H, dt, J H-F = 47.2 Hz, J H-H = 6.0 Hz), 4.06 (1H, t, J = 6Hz), 2.12 (2H, dq, JH-F = 26 Hz, JH-H = 6 Hz,); 13C-NMR (DMSO-d6) δ: 163.3, 158.4, 140.3, 138.8, 134.2, 133.6, 129.4, 129.0, 123.0, 112.0, 109.3, 105.8, 82.9, 81.3, 67.0, 66.9.:。
【0094】
(vii)化合物(7)の合成
化合物(7)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0095】
【0096】
化合物(1)(2.0g,7.3mmol)とDHP(dihydropyrane)(1.5g,17.8mmol)との混合溶液(CH2Cl2,25mL)に、PPTS(Pyridinium p-toluenesulfonate)(80mg,0.3mmol)を加え、室温下にて24時間攪拌して反応させた。なお原料の残留が認められたので、さらに24時間攪拌して反応させた。反応溶液をCH2Cl2(75mL)にて希釈し、当該反応溶液をNaOH aq.(1mol/L)、精製水、および、飽和食塩水にて洗浄し、無水MgSO4にて乾燥させた後、減圧濃縮することにより、粗生成物(2.3g)を得た。粗成生物を酢酸エチルとn-ヘキサンとを用いて再結晶化させることにより、化合物(7)(1.8g,68%)を得た。
【0097】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 10.20 (1H, br. s), 7.67-7.63 (2H, m, Ar-H), 7.56 (1H, d, 16 Hz), 7.53-7.45 (3H, m), 7.32-7.18 (3H, m, Ar-H), 6.81 (1H, d, J = 16 Hz), 6.76-6.69 (1H, m, Ar-H), 3.82-3.70 (1H, m), 3.61-3.49 (1H, m), 1.94-1.44 (6H, m), 13C-NMR (DMSO-d6) δ: 163.3, 156.9, 140.2, 138.7, 134.2, 133.7, 129.3, 129.0, 123.1, 112.5, 111.4, 107.5, 95.9, 61.6, 29.9, 24.6, 18.6.:。
【0098】
(viii)化合物(8)の合成
化合物(8)は、以下のスキームに示す方法によって合成した。
【0099】
【0100】
アルゴンが封入された、風船付き三方コック、セプタムラバー、および、攪拌子を装着した二径フラスコに、化合物(7)(500mg,1.4mmol)、および、KOH(235mg,4mmol/乳鉢粉砕品)を加え、当該二径フラスコを氷水浴に浸けた状態にて、更に、無水DMF(6mL)をシリンジにて加えた。同温で約10分攪拌した後、CH3I(263μL,4.2mmol)を加えた。同温で約10分、室温で30分攪拌した後、二径フラスコを60℃の油浴に移し、15.5時間反応させた。反応混合物を室温にまで放冷し、当該反応混合物を精製水中に投入し、酢酸エチルにて抽出した。抽出液を、精製水および飽和食塩水を用いて洗浄した後、無水MgSO4を用いて乾燥させた。この抽出液を濃縮乾固して得られたペースト状の粗生成物(414mg)を、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液CHCl3:CH3OH=100:1→50:1)に供し、化合物(8)を365mg(90%)得た。
【0101】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 9.75 (1H, s), 7.49 (1H, d, J = 15.6 Hz), 7.45-6.37 (4H, m, Ar-H), 7.25 (1H, m), 6.81-6.75 (1H, m), 6.74-6.69 (1H, m), 6.68-6.67 (1H, m), 6.43 (1H, d, J = 15.6 Hz), 3.25 (2H, s); 13C-NMR (DMSO-d6) δ: 164.4, 158.2, 144.2, 139.0, 134.0, 133.6, 130.2, 129.3, 128.8, 119.9, 117.6, 114.6, 113.9.:。
【0102】
(ix)化合物(9)の合成
化合物(9)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0103】
【0104】
氷水冷下にて攪拌した、2-fluoroethanol(1.0g,15mmol)を含むCH2Cl2(20mL)溶液に、Et3N(2.6mL,18.7mmol)を加えた。当該溶液を同温で暫く攪拌し、続いて、当該溶液に、methanesulfonyl chloride(2.1g,19mmol)を含む塩化メチレン(10mL)溶液を、約5分をかけて滴下した。滴下後、当該溶液を室温にて終夜攪拌して反応させた。反応終了後、反応混合物を、希塩酸(0.1mol/L)、精製水、および、飽和食塩水を用いて洗浄し、無水MgSO4を用いて乾燥させた。この溶液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;AcOEt:n-ヘキサン)に供し、淡褐色油状の化合物(9)(1.8g,80%)を得た。本法で得られた化合物(9)は、更なる精製をすることなく、次工程(O-アルキル化反応)に使用できた。
【0105】
1H-NMR (CDCl3) δ: 4.61 (2H, dm, JH-F= 47.6 Hz), 4.35 (2H, dm, JH-F = 28.4 Hz), 3.01 (3H, S):。
【0106】
(x)化合物(10)の合成
化合物(10)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0107】
【0108】
氷水冷下にて攪拌した、3-Fluoropropanol(1.2g,15mmol)を含むCH2Cl2(20mL)溶液に、Et3N(1.9mL,19mmol)を加えた。当該溶液を同温で暫く攪拌し、続いて、当該溶液に、p-MsCl(2.1g,19mmol)を、約50分かけて加えた。添加後、当該溶液を室温にて終夜攪拌して反応させた。反応混合物を減圧濃縮し、残渣を酢酸エチル(20mL)に再溶解し、当該溶解液を、精製水および飽和食塩水を用いて洗浄し、無水MgSO4を用いて乾燥させた後、この抽出液を減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液 AcOEt/n-ヘキサン)に供し、定量的収量にて、油状の化合物(10)(2.0g,83%)を得た。
【0109】
1H-NMR (CDCl3) δ: 4.59 (2H, dt, JH-F= 46.8 Hz, J H-H = 6.0 Hz), 4.38 (2H, d, J = 6.0 Hz), 3.04 (3H, s), 2.15 (2H, dq, J H,F = 25.6 Hz, J H,H = 6.0 Hz):。
【0110】
(xi)化合物(11)の合成
化合物(11)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0111】
【0112】
スクリューキャップバイアル(10mL)に、化合物(8)(200mg,0.7mmol)と、KOH(62mg,1.1mmol)と、乾燥DMFとを加え、乾燥DMF中に化合物(8)とKOHとを懸濁させた。この溶液を氷水冷下にて攪拌しながら、当該溶液にmethyl iodide(156mg,1.1mmol)を加えた。当該溶液を同温度にて暫時攪拌した後、60℃の油浴中にて16時間攪拌して反応させた。反応混合物を、放冷し、精製水中に投入し、酢酸エチルにて抽出した。この抽出液を、精製水および飽和食塩水を用いて洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、減圧濃縮し、ペースト状の粗生成物を得た。粗成生物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液 酢酸エチル:n-ヘキサン)に供し、化合物(11)(178mg,84%)を得た。
【0113】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.49 (1H, d, J = 15.6 Hz), 7.46-7.33 (4H, m, Ar-H), 6.97-6.92 (2H, m, Ar-H), 6.88-6.85 (1H, m, Ar-H), 6.44 (1H, d, J = 15.6 Hz), 3.77 (3H, s), 3.28 (3H, s), ; 13C-NMR (DMSO-d6) δ : 164.4, 160.0, 144.4, 139.1, 134.0, 133.6, 130.2, 129.3, 128.9, 119.9, 113.2, 112.7, 55.3, 37.0.:。
【0114】
(xii)化合物(12)の合成
化合物(12)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0115】
【0116】
スクリューキャップバイアル(10mL)中にて、化合物(8)(150mg,0.55mmol))、化合物(9)(85mg,0.6mmol)、および、tetrabutyl ammonium hydroxide(1M soln.660μL,0.6mmol)を乾燥DMF中に溶解させた溶液を調製した。この溶液を60℃の油浴中で約24時間攪拌して反応させた。反応混合物を、放冷し、精製水中に投入し、酢酸エチルを用いて抽出した。この抽出液を、精製水および飽和食塩水を用いて洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、減圧濃縮し、ペースト状の粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液 酢酸エチル:n-ヘキサン)に供し、化合物(12)(120mg,68%)を得た。併せて、未反応原料19mgも回収した。
【0117】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.49 (1H, d, J = 15.6 Hz), 7.46-7.34 (4H, m, Ar-H), 7.02-6.96 (2H, m, Ar-H), 6.91-6.86 (1H, m, Ar-H), 6.44 (1H, br.d, J = 12.8 Hz), 4.73 (2H, dm, JH-F = 48 Hz), 4.26 (2H, dm, JH-F = 30.4 Hz), 3.28 (3H, s); 13C-NMR (DMSO-d6) δ: 164.4, 158.9, 144.4, 139.1, 134.0, 133.6, 130.2, 129.3, 128.9, 119.9, 119.8, 113.8, 113.3, 82.8, 81.2, 67.3, 67.1, 37.0.:。
【0118】
(xiii)化合物(13)の合成
化合物(13)は、以下の合成スキームに従って合成した。
【0119】
【0120】
スクリューキャップバイアル(10mL)に、化合物(8)(200mg,0.7mmol)と、tetrabutyl ammonium hydroxide(62mg,1.1mmol)と、乾燥DMFとを加え、乾燥DMFに化合物(8)とtetrabutyl ammonium hydroxideとを懸濁させた。この溶液を氷水冷下にて攪拌しながら、当該溶液に化合物(10)(164mg,1.1mmol)を加えた。当該溶液を同温度にて暫時攪拌した後、60℃の油浴中にて約16時間攪拌して反応させた。反応混合物を、放冷し、精製水中に投入し、酢酸エチルを用いて抽出した。この抽出液を、精製水および飽和食塩水を用いて洗浄し、硫酸マグネシウムを用いて乾燥させた後、減圧濃縮し、ペースト状の粗生成物を得た。粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶離液;酢酸エチル:n-ヘキサン)に供し、化合物(13)(104mg,43%)を得た。併せて、未反応原料59mgも回収した。
【0121】
1H-NMR (DMSO-d6) δ: 7.52 (1H, d, J = 15.6 Hz), 7.46-7.33 (4H, m, Ar-H), 6.97-6.92 (2H, m, Ar-H), 6.88-6.85 (1H, m, Ar-H), 6.44 (1H, d, J = 15.6 Hz), 3.77 (3H, s), 3.28 (3H, s); 13C-NMR (DMSO-d6) δ: 164.4, 160.0, 144.4, 139.1, 134.0, 133.6, 130.2, 129.3, 128.9, 119.9, 113.2, 112.7, 55.3, 37.0.:。
【0122】
(II)標識化合物の合成
(i)化合物(14)([11C]SB366791)の合成
化合物(14)は、以下の合成スキームにしたがって合成した。
【0123】
【0124】
11C核の製造は、住友重機械工業社製サイクロトロンCYPRIS HM-12Sを使用した14N(p,α)11Cの核合成反応(電流値50μA、照射時間51分)にて行った。[11C]ヨウ化メチルの合成は、専用の標識用合成装置(住友重機械工業株式会社製)を用いて行った。具体的に、11CO2ガスを出発物質として用い、第1反応容器内にて、11CO2、11CH3OH、11CH3Iの順にて材料を変換して、11CH3Iを合成した。第2反応容器内にあらかじめフェノール前駆体(0.4mg,1.5μmol)と、炭酸セシウム(Cs2CO3)(4.0mg,12.3μmol)と、DMF(300μL)とを入れ、次いで、第1反応容器内にて合成された11CH3Iを第2反応容器内に、蒸留移送した。続いて、第2反応容器内の溶液を90℃、4分間加熱して反応を行った。加熱反応後、第2反応容器を室温にまで冷却し、反応物をHPLC(High performance liquid chromatography)に供した。HPLCにおける分取条件は、カラム:COSMOSIL 5-C18 AR-II 10×20 mm, 10×250 mm、展開溶媒:CH3CN:H2O=60:40、流速:6.0mL/min、保持時間:8.7min、検出:UV254nm,RIとした。分取した溶液をエバポレーターにて濃縮した後、当該溶液を希釈した後、メンブレンフィルターに通し、目的の化合物(14)(424MBq,62GBq/μmol)をバイアル中に回収した。
【0125】
(ii)化合物(15)([18F] (2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(2-fluoroethoxy)-phenyl]-2-propenamide)の合成
化合物(15)は、以下の合成スキームにしたがって合成した。
【0126】
【0127】
[18F]フッ素イオンは、住友重機械工業株式社製サイクロトロンCYPRIS HM-12Sを使用して、12MeVの電子ビームを[18O]水(太陽日酸株式会社、約2mL)に照射し(電流値35μA、照射時間40分)、18O(p,n)18Fの核合成反応により、製造した。約40GBqの[18F]フッ素イオンを含む[18O]水溶液を、ホットセル内に設置した標識用合成装置(住友重機械工業株式会社製)に移送し、陰イオン交換樹脂カートリッジ(Sep-Pak light QMA, Waters製)に[18F]フッ素イオンを吸着させた。このカートリッジに、クリプトフィックス222(K222)(14mg,37μmol)と炭酸カリウム(5.8 mg,42μmol)とを含むアセトニトリル水溶液(アセトニトリル:水=700μL:200μL溶液,900μL)を通し、[18F]KFを溶出し、当該[18F]KFを含む溶液を第1反応容器内に加えた。この溶液を、減圧下、Heガスを流しながら120℃にて加熱して、乾固させた。続いて、第1反応容器にアセトニトリル(1mL)を加え、残存する水とアセトニトリルとを共沸させて除去した。
【0128】
第1反応容器に2-ブロモエチルトシラート(10μL,36μmol)、および、1,2-ジクロロベンゼン(400μL)を加え、150℃、4分間加熱し、蒸留物を第2反応容器内に回収した。フェノール前駆体(1.7mg,6.2μmol)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(1Mメタノール溶液2.5μL,2.5μmol)、および、DMSO(500μL)を第2反応容器に加え、更に、2-[18F]フルオロエチルブロマイドを第2反応容器に蒸留移送し、当該第2反応容器を130℃、7分加熱した。第2反応容器を室温にまで冷却し、反応物をHPLCに供した。HPLCにおける分取条件は、カラム:COSMOSIL 5C18-AR-II 10×20 mm, 10×250 mm、展開溶媒:CH3CN:H2O=57:43、保持時間:10分、流速:6mL/min、検出:UV254nm,RIとした。分取した溶液をエバポレーターにて濃縮し、当該溶液を希釈した後、メンブレンフィルターに通し、目的の化合物(15)(2.04GBq,317GBq/μmol)をバイアル中に回収した。
【0129】
(iii)化合物(16)([18F](2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(3-fluoropropoxy)- phenyl]-2-propenamide)の合成
化合物(16)は、以下の合成スキームにしたがって合成した。
【0130】
【0131】
[18F]フッ素イオンは、住友重機械工業株式社製サイクロトロンCYPRIS HM-12Sを使用して、12MeVの電子ビームを[18O]水(太陽日酸株式会社、約2mL)に照射し(電流値35μA、照射時間40分)、18O(p,n)18Fの核合成反応により、製造した。約40GBqの[18F]フッ素イオンを含む[18O]水溶液を、ホットセル内に設置した標識用合成装置(住友重機械工業株式会社製)に移送し、陰イオン交換樹脂カートリッジ(Sep-Pak light QMA, Waters製)に[18F]フッ素イオンを吸着させた。このカートリッジに、クリプトフィックス222(K222)(14mg,37μmol)と炭酸カリウム(5.8mg,42μmol)とを含むアセトニトリル水溶液(アセトニトリル:水=700μL:200μL溶液,900μL)を通し、[18F]KFを溶出し、当該[18F]KFを含む溶液を第1反応容器内に加えた。この溶液を、減圧下、Heガスを流しながら120℃にて加熱して、乾固させた。続いて、第1反応容器にアセトニトリル(1mL)を加え、残存する水とアセトニトリルとを共沸させて除去した。
【0132】
第1反応容器に3-ブロモプロピルトシラート(10μL,34mmol)、および、1,2-ジクロロベンゼン(400μL)を加え、150℃、4分間加熱し、蒸留物を第2反応容器内に回収した。フェノール前駆体(2.0mg,7.3μmol)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(1Mメタノール溶液2.5μL,2.5μmol)、および、DMSO(500μL)を第2反応容器に加え、更に、3-[18F]フルオロプロピルブロマイドを第2反応容器に蒸留移送し、当該第2反応容器を130℃、7分加熱した。第2反応容器を室温にまで冷却し、反応物をHPLCに供した。HPLCにおける分取条件は、カラム:COSMOSIL 5C18-AR-II 10×20 mm, 10×250 mm、展開溶媒:CH3CN:H2O=57:43、保持時間:13分、流速:6mL/min、検出:UV254nm,RIとした。分取した溶液をエバポレーターにて濃縮し、当該溶液を希釈した後、メンブレンフィルターに通し、目的の化合物(16)(1.18GBq,247GBq/μmol)をバイアル中に回収した。
【0133】
(iv)化合物(17)([11C](2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-(4-methoxyphenyl)-N-methyl-2-propenamide)の合成
化合物(17)は、以下の合成スキームにしたがって合成した。
【0134】
【0135】
11C核の製造は、住友重機械工業社製サイクロトロンCYPRIS HM-12Sを使用した14N(p,α)11Cの核合成反応(電流値50μA、照射時間52分)にて行った。[11C]ヨウ化メチルの合成は、専用の標識用合成装置(住友重機械工業株式会社製)を用いて行った。具体的に、11CO2ガスを出発物質として用い、第1反応容器にて11CO2、11CH3OH、11CH3Iの順にて材料を変換して、11CH3Iを合成した。第2反応容器内にあらかじめフェノール前駆体(0.86mg,3.0μmol)と、炭酸セシウム(Cs2CO3)(2.0mg,6.1μmol)と、DMF(300μL)とを入れ、次いで、第1反応容器内で合成された11CH3Iを第2反応容器内に、蒸留移送した。続いて、第2反応容器内の溶液を90℃、4分間加熱して反応を行った。加熱反応後、第2反応容器を室温にまで冷却し、反応物をHPLCに供した。HPLCにおける分取条件は、カラム:COSMOSIL 5-C18 AR-II 10×20 mm, 10×250 mm、展開溶媒:CH3CN:H2O=60:40、流速:6.0mL/min、保持時間:10.2min、検出:UV254nm,RIとした。分取した溶液をエバポレーターにて濃縮した後、当該溶液を希釈した後、メンブレンフィルターに通し、目的の化合物(17)(4060MBq,48GBq/μmol)をバイアル中に回収した。
【0136】
(v)化合物(18)([18F](2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(3-fluoroethoxyphenyl) -N-methyl-2-propenamide)の合成
化合物(18)は、以下の合成スキームにしたがって合成した。
【0137】
【0138】
[18F]フッ素イオンは、住友重機械工業株式社製サイクロトロンCYPRIS HM-12Sを使用して、12MeVの電子ビームを[18O]水(太陽日酸株式会社、約2mL)に照射し(電流値35μA、照射時間40分)、18O(p,n)18Fの核合成反応により、製造した。約40GBqの[18F]フッ素イオンを含む[18O]水溶液を、ホットセル内に設置した標識用合成装置(住友重機械工業株式会社製)に移送し、陰イオン交換樹脂カートリッジ(Sep-Pak light QMA, Waters製)に[18F]フッ素イオンを吸着させた。このカートリッジに、クリプトフィックス222(K222)(14mg,37μmol)と炭酸カリウム(5.8mg,42μmol)とを含むアセトニトリル水溶液(アセトニトリル:水=700μL:200μL溶液,900μL)を通し、[18F]KFを溶出し、当該[18F]KFを含む溶液を第1反応容器内に加えた。この溶液を、減圧下、Heガスを流しながら120℃にて加熱して、乾固させた。続いて、第1反応容器にアセトニトリル(1mL)を加え、残存する水とアセトニトリルとを共沸させて除去した。
【0139】
第1反応容器に2-ブロモエチルトシラート(10μL,36μmol)、および、1,2-ジクロロベンゼン(400μL)を加え、150℃、4分間加熱し、蒸留物を第2反応容器内に回収した。フェノール前駆体(1.4mg,4.7μmol)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(1Mメタノール溶液2.5μL,2.5μmol)、および、DMSO(500μL)を第2反応容器に加え、更に、2-[18F]フルオロエチルブロマイドを第2反応容器に蒸留移送し、当該第2反応容器を130℃、7分加熱した。第2反応容器を室温にまで冷却し、反応物をHPLCに供した。HPLCにおける分取条件は、カラム:COSMOSIL 5C18-AR-II 10×20 mm, 10×250 mm、展開溶媒:CH3CN:H2O=57:43、保持時間:10分、流速:6mL/min、検出:UV254nm,RIとした。分取した溶液をエバポレーターにて濃縮し、当該溶液を希釈した後、メンブレンフィルターに通し、目的の化合物(18)(2.81GBq,669GBq/μmol)をバイアル中に回収した。
【0140】
(vi)化合物(19)([18F](2E)-3-(4-Chlorophenyl)-N-[4-(3-fluoropropoxyphenyl)-N-methyl-2-propenamide)の合成
化合物(19)は、以下の合成スキームにしたがって合成した。
【0141】
【0142】
[18F]フッ素イオンは、住友重機械工業株式社製サイクロトロンCYPRIS HM-12Sを使用して、12MeVの電子ビームを[18O]水(太陽日酸株式会社、約2mL)に照射し(電流値35μA、照射時間40分)、18O(p,n)18Fの核合成反応により、製造した。約40GBqの[18F]フッ素イオンを含む[18O]水溶液を、ホットセル内に設置した標識用合成装置(住友重機械工業株式会社製)に移送し、陰イオン交換樹脂カートリッジ(Sep-Pak light QMA, Waters製)に[18F]フッ素イオンを吸着させた。このカートリッジに、クリプトフィックス222(K222)(14mg,37μmol)と炭酸カリウム(5.8mg,42μmol)とを含むアセトニトリル水溶液(アセトニトリル:水=700μL:200μL溶液,900μL)を通し、[18F]KFを溶出し、当該[18F]KFを含む溶液を第1反応容器内に加えた。この溶液を、減圧下、Heガスを流しながら120℃にて加熱して、乾固させた。続いて、第1反応容器にアセトニトリル(1mL)を加え、残存する水とアセトニトリルとを共沸させて除去した。
【0143】
第1反応容器に3-ブロモプロピルトシラート(10μL,34mmol)、および、1,2-ジクロロベンゼン(400μL)を加え、150℃、4分間加熱し、蒸留物を第2反応容器内に回収した。フェノール前駆体(1.9mg,6.6μmol)、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド(1Mメタノール溶液2.5μL,2.5μmol)、および、DMSO(500μL)を第2反応容器に加え、更に、3-[18F]フルオロプロピルブロマイドを第2反応容器に蒸留移送し、当該第2反応容器を130℃、7分加熱した。第2反応容器を室温にまで冷却し、反応物をHPLCに供した。HPLCにおける分取条件は、カラム:COSMOSIL 5C18-AR-II 10×20 mm, 10×250 mm、展開溶媒:CH3CN:H2O=57:43、保持時間:15分、流速:6mL/min、検出:UV254nm,RIとした。分取した溶液をエバポレーターにて濃縮し、当該溶液を希釈した後、メンブレンフィルターに通し、目的の化合物(19)(1.93GBq,410GBq/μmol)をバイアル中に回収した。
【0144】
〔化合物の評価〕
(PET測定)
9週齢のオスのSDラットを用いてPET測定を行った。装置は(microPET F220、Siemens社製)を用いた。
【0145】
PET測定では、30分間のトランスミッションスキャン後、尾静脈に化合物(14)~(19)のいずれか1種類の被験物質を静脈注射により注入し、90分間スキャンを行った。表1に、それぞれの化合物の投与条件を示した。
【0146】
【0147】
脳内における各化合物の集積は、MAP(Maximum a posterior)を用いて、3-20分の積算画像により評価した。全身における各化合物の集積は、MIP(Minimum intensity projection)を用いて、0-90分の積算画像により評価した。
【0148】
(試験結果)
図1~
図6は、各々、従来技術に係る対照標識化合物[
11C]SB366791(化合物(14))、化合物(15)、化合物(16)、化合物(17)、化合物(18)および化合物(19)を用いたPET測定の結果を示す像である。より具体的に、各図の(A)は、脳内におけるPET測定の結果を示す像であり、各図の(B)は、全身におけるPET測定の結果を示す像である。
【0149】
各図の(A)から明らかなように、化合物(15)~(19)は、何れも、化合物(14)と比較して、脳内への集積が向上した。
【0150】
全身における化合物の集積は、各図の(B)から明らかなように、特に化合物(17)~(19)において顕著に改善が見られた。R1にメチル基を導入することで、生体内で分解されやすいアミド基がメチルアミド基に変換され、代謝安定性が改善したことが原因と考えられる。その他、いずれの化合物においても、肝臓、腸管、膀胱(腎臓)への集積が見られた。これは、生体内で肝臓を経て、腸管や膀胱(腎臓)へと局在が変化し、さらに再吸収されている様子が観察されたと考えられる。
【0151】
また、化合物(15)~(19)は、体表部への集積および、頸部、腋窩部、大腿部などの、触覚に鋭敏な部位に集積が見られた。これらの部位はTRPV1受容体の高発現部位であると考えられることから、TRPV1受容体を正確にイメージング出来た結果であると考えられる。
【0152】
図7および
図8は、化合物(14)~(19)において、脳内および皮膚についてSUV(Standard uptake alue)を算出し、時間放射能曲線を描いた結果を示している。SUVは、下記式に従い、動物の体重と投与放射能により正規化することによって算出した:
SUV=(組織放射能(Bq)/組織重量(g))/(投与放射能(Bq)/体重(g))。
【0153】
図7から明らかなように、対照となる化合物(14)と比較して、化合物(15)、(16)、(19)は脳への集積の向上が見られた。
図8から明らかなように、対照となる化合物(14)と比較して、化合物(16)~(19)は、体表部への蓄積の向上が見られた。
【0154】
このように、本発明を用いれば、TRPV1受容体の分布を可視化できるのみならず、TRPV1受容体を精度よく定量し得る。本発明によって、脳内への集積性および皮膚等の全身への集積性がより向上した、精度の高いTRPV1受容体のイメージングおよび定量が可能となった。