(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184569
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ドライアイ疾患及び瞼板腺炎の治療のための組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/202 20060101AFI20231221BHJP
A61K 31/232 20060101ALI20231221BHJP
A61K 35/60 20060101ALI20231221BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20231221BHJP
A61P 27/04 20060101ALI20231221BHJP
A23L 33/115 20160101ALI20231221BHJP
【FI】
A61K31/202
A61K31/232
A61K35/60
A61P27/02
A61P27/04
A23L33/115
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023177540
(22)【出願日】2023-10-13
(62)【分割の表示】P 2020570713の分割
【原出願日】2019-06-19
(31)【優先権主張番号】20180849
(32)【優先日】2018-06-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NO
(71)【出願人】
【識別番号】517393743
【氏名又は名称】エーパックス ノルウェー アクスイェ セルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(72)【発明者】
【氏名】ハーラル ブレイビク
(72)【発明者】
【氏名】ハーラル スベンセン
(72)【発明者】
【氏名】イーレン メレテ スクヨースタ ストークネス
(57)【要約】
【課題】本出願は眼障害、特にドライアイ疾患(DED)及び瞼板腺炎の治療における組成物の提供を目的とする。
【解決手段】その組成物は超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。さらに本発明は対象のDED及び瞼板腺炎の治療方法を提供し、天然オイル由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物を対象へ投与することを含んでいる。使用のための組成物は経口及び局所適用に適当である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドライアイ疾患(DED)及び瞼板腺炎の治療における使用のための天然オイル由来の少なくとも1質量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物。
【請求項2】
前記天然オイルが魚油、イカ油、オキアミ油、カイアシ油、及び藻類油の群より選択される、請求項1に請求される使用のための請求項1の組成物。
【請求項3】
前記組成物が少なくとも5質量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の使用のための請求項1又は2の組成物。
【請求項4】
前記組成物が少なくとも10質量%、例えば少なくとも20質量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の使用のための請求項1~3のいずれか一項の組成物。
【請求項5】
前記脂肪酸は遊離脂肪酸、脂肪酸塩、モノ-、ジ-、トリグリセリド、エチルエステル、ろうエステル、(O-アセチル化)-ω-ヒドロキシ脂肪酸(OAHFA)、コレステリルエステル、セラミド、リン脂質又はスフィンゴミエリンの単体又は組み合わせの任意の形態である。
【請求項6】
前記脂肪酸が遊離脂肪酸、脂肪酸塩、エチルエステル、グリセリド又はろうエステルの形態である、請求項1に記載の使用のための請求項1~5のいずれか一項の組成物。
【請求項7】
前記組成物がさらに少なくとも1質量%の一以上のVLCMUFAsを含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1~6のいずれか一項の組成物。
【請求項8】
前記組成物が少なくとも5質量%の一以上のC20~C22の多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1~7のいずれか一項の組成物。
【請求項9】
前記組成物が少なくとも25質量%のC20~C22の長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1~8のいずれか一項の組成物。
【請求項10】
前記組成物が少なくとも5質量%のオメガ-3系DPAを含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1~9のいずれか一項の組成物。
【請求項11】
前記組成物がエチルエステルの形態の超長鎖多価不飽和脂肪酸及び/又はC20~C22の長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1~10のいずれか一項の組成物。
【請求項12】
前記組成物がトリグリセリドの形態の超長鎖多価不飽和脂肪酸及び/又はC20~C22の長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1~10のいずれか一項の組成物。
【請求項13】
前記組成物がろうエステルの形態の超長鎖多価不飽和脂肪酸及び/又はC20~C22の長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、請求項1に記載の使用のための、請求項1~10のいずれか一項の組成物。
【請求項14】
前記使用がドライアイ(DED)及び眼瞼腺炎の症状の軽減のためである、請求項1~13のいずれか一項の組成物。
【請求項15】
前記使用が以下の任意の一以上のためである、請求項1~13のいずれか一項の組成物:眼又は眼組織の対症療法及び治療;薬物療法の副作用としてのドライアイの症状の治療;健康な目を維持するためかつヒトが加齢する又は環境条件、薬物療法若しくは健康関連因子を理由にドライアイ疾患にさらされるにつれて発症するドライアイ疾患及び不快感を防止するためのサプリメント;加齢、更年期及び他のホルモン変化、様々な疾病、例えば狼瘡、関節リウマチ、強皮症又はシェーグレン症候群のような自己免疫疾患、アレルギー、糖尿病、乾燥した環境、コンタクトレンズの使用、長いコンピュータ及びテレビの視聴時間に関連するドライアイの不快感の治療及び軽減。
【請求項16】
前記使用がさらに加齢黄斑変性(AMD)、シュタルガルト病、網膜症、未熟児網膜症(ROP)、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、鎌状赤血球網膜症、放射線網膜症、虹彩炎、又は結膜炎の群からの一以上の疾病の治療を含む方法である、請求項1~13のいずれか一項の組成物。
【請求項17】
前記組成物が経口摂取のための調製物における成分として利用される、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための、請求項1~13のいずれか一項の組成物。
【請求項18】
前記組成物が点眼調製物、噴霧剤、軟膏、クリーム、軟膏、ローション、ゲル又は眼内のミニタブレットにおける成分として利用される、請求項1~16のいずれか一項に記載の使用のための、請求項1~13のいずれか一項の組成物。
【請求項19】
前記組成物が少なくとも5質量%の天然オイル由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む、組成物を含む眼製剤。
【請求項20】
前記製剤が点眼、噴霧剤、軟膏、クリーム、軟膏、ローション、ゲル又は眼内のミニタブレットの形態である、請求項19において請求された製剤。
【請求項21】
対象のDED又は瞼板腺炎の治療のための方法であって、少なくとも5質量%の天然オイル由来のVLCPUFAsを含む組成物をその対象へ投与することを含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼障害の治療、特にドライアイ疾患(DED)及び瞼板腺炎の症状の軽減のための組成物に関し、ここでその組成物は超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む。さらに、本発明は対象のDED及び瞼板腺炎の治療のための方法を提供し、その対象への天然オイル由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物の投与を含んでいる。使用のためのその組成物は、経口及び局所適用の用途である。
【背景技術】
【0002】
長鎖多価不飽和脂肪酸(LCPUFAs)、及び特に長鎖オメガ3系脂肪酸(LCn3)の中で、C20~C22の鎖長の脂肪酸は文献において最も関心を受けている。(エイコサペンタエン酸について)その頭字語であるEPA及び(ドコサヘキサエン酸について)DHAは魚油及び他の原料からの役立つオメガ3系の酸を説明するおなじみの名前になった。また、植物原料からのα-リノール酸(ALA)の豊富な製品は商用利用可能である。この関連で、脂質は式X:YnZによって記載されることが知られており、式中Xはアルキル鎖の炭素原子数、そしてYはその鎖の二重鎖の数;そしてここで「nZ」は、メチル末端基からの第一の二重結合への炭素原子の数である。天然において、その二重鎖は全てcis型である。多価不飽和脂肪酸において、それぞれの二重結合は、一つのメチレン(-CH2)基によって次の二重結合から離れている。この命名法を用いて、EPAは20:5n3、DHAは22:6n3、そしてALAはC18:3n3である。また、さらに魚油のようなオメガ3系脂肪酸の天然の原料は、C20~C22よりもより短い及びより長い脂肪酸を含む。本明細書で用いられるように、超長鎖脂肪酸(又はVLCFAs)は22炭素原子より長い鎖長を有する脂肪酸(又はFAs)を意味することを意図している;超長鎖多価不飽和脂肪酸(又はVLCPUFAs)という用語は、22炭素原子より長い鎖長を有する多価不飽和脂肪酸(又はPUFAs)を意味することを意図している;超鎖一不飽和脂肪酸(又はVLCMUFAs)という用語は、22炭素原子より長い鎖長を有する一不飽和脂肪酸(又はMUFAs)を意味することを意図している;一方で、22炭素原子より長い鎖長を有するVLCn3は多価不飽和のオメガ3系脂肪酸を意味することを意図し、VLCn3はVLCPUFAのサブグループを示すことが理解されている。さらに、本明細書で用いられるように、超長鎖不飽和脂肪酸(又はVLCUSFAs)という用語は、22炭素原子より長い鎖長を有する、一価又は多価の、不飽和脂肪酸を意味することを意図している。超長鎖飽和脂肪酸(VLCSFAs)という用語は、22炭素原子より長い鎖長を有する、飽和脂肪酸を意味することを意図する。
【0003】
EPA及びDHAの豊富な海洋のオメガ3系濃縮物を産生するために、慣習的な産業上の工程がデザインされ、C22脂肪酸よりも短い鎖の脂肪酸及びより長い分子の両方を取り除くことによって、C20~C22の分画を濃縮する。そのような工程の例は、分子的な/ショートパス蒸留、尿素分画、抽出及びクロマトグラフ工程であり、それらの全てが利用されうり、海洋の脂肪酸及び他の原料由来の同様の材料のC20~22分画を濃縮する。これらの工程のレビューはBreivik H(2007)Concentrates.In:Breivik H(ed)Long-Chain Omega-3 Specialty Oils.The Oily Press,PJ Barnes&Associates,Bridgwater,UK,pp111-140に提供される。
【0004】
オメガ3系酸はとても酸化しやすい。オリゴマー/ポリマーの酸化産物のついての上限を課している薬局方及び自主基準に従うために、DHAの鎖長を超える鎖長を有する成分を、例えば、蒸留、抽出及び同様の工程によって、取り除くことが共通している。さらに、そのようなより大きい分子量の海洋オイルの成分は、コレステロールを含むそのようなオイルの典型的に所望されない不けん化の構成要素及びポリ臭化ジフェニルエーテルのような有機的な汚染物質と関連している。
【0005】
オメガ3系脂肪酸、並びに特にLCPUFAsのEPA及びDHAは広範な有益な健康への影響を有することが知られており、従って、異なる使用について知られている。また、眼障害及び疾患の治療においてこれらの脂肪酸を使用することが知られている。
【0006】
乾性角結膜炎(KCS)として知られている、ドライアイ疾患(DED)は、クォリティオブライフを減少する目の不快感及び視覚障害によって特徴づけられる一般的な慢性状態である。Dry Eye Assessment and Management(DREAM) Study Research Group(New England Journal of Medicine,April 13 2018,DOI:10.1056/NEJMoa1709691)に最近記載されたように、多くの臨床医はオメガ3系脂肪酸の使用をDEDの症状を軽減させるために推奨している。しかしながら、大型のDREAM StudyではDEDを有する患者の間で、12カ月間(トリグリセリド型の2000mgのEPA及び1000mgのDHAとして3000mgのn3脂肪酸の1日当たりの摂取による)オメガ3濃縮物としてサプリメントを受けるそれらの患者は、プラセボを受けた患者よりもより良い結果を有意に有しないと結論付けた。
【0007】
この研究とは対照的に、他の研究では魚油からのDEDへの肯定的な影響を示している。例えば、DREAM Study report,Deinema et al.(A randomize,double-masked,placebo controlled clinical trial of two forms of omega-3 supplements for treating dry eye disease.Ophthalmology 2017;124:43-52)において参考文献で挙げられる文献では、オメガ3系の原料として濃縮されていない魚油及びオキアミ油を用いることによってDEDへの有意な肯定的な影響を証明した。
【0008】
このDREAM研究では、抗炎症活性を有し、実質的な副作用との関わりがないので、多数の臨床医がオメガ3系脂肪酸の栄養補助食品を推奨したことを述べている。
【0009】
そのドライアイ疾患(DED)は往々にして、瞼板腺炎とも称される、マイボーム腺機能不全(MGD)に関連している。そのマイボーム腺は、それぞれの目の上眼瞼の周辺部分に約30腺及び下眼瞼の周辺部分に約25腺、眼瞼内に配置されている。これらの腺は(マイバム)油を分泌し、他の行為の間に、眼を閉じた場合に密封を作り出すことによって、そして涙膜と相互作用することによって、眼を保護し、均等にそれらを拡げることにより涙液を増強し、一貫した視力の質を維持し、そして涙膜を覆うことによって、それによって涙液の蒸発速度を下げる。
【0010】
MGDは変化した涙膜組成物、眼表面疾患、眼及び眼瞼の不快感、及び蒸発性ドライアイに繋がりうる(Chhadava P,Goldhardt R and Galor A(2017)meibomian Gland Disease.The role of gland dysfunction in Dry Eye Disease.Ophtalomology 124(11)Supplement,S20~S26)。環境的なストレスがそうであるように、加齢はMDGにおける既知のリスクファクターであり、加齢及び環境的なストレスの両方は、眼瞼幹細胞の欠乏に繋がることを示唆する。ホルモンはマイボーム腺上皮細胞(meibocytes)に影響する:MDGは抗アンドロゲン剤を投与しているヒト(良性前立腺過形成、前立腺がん)、完全なアンドロゲン不感性症候群、シェーグレン症候群を有する個人を含むアンドロゲン欠乏状態において記載されている。13-cis-レチノイン酸(Accytane,Hoffmann-La Roche)による薬物療法は、マイバム分泌不全に関連し、DED症状を導く。局所的なエピネフリン及び局所的な緑内障薬物療法(例えば、局所的なβ阻害薬、プロスタグランジン類似体、炭酸脱水酵素阻害薬)を含む、局所的な薬物療法はマイボーム腺への負の変化に関連している。Staphylococcus aureusのような常在細菌は眼瞼の組成物に負の影響を有しうる。コンタクトレンズの使用はマイボーム腺の機能の減少に関連する。また、マイボーム腺は誕生から減少されうる。Chhadava et.alは有極性の液体への性質の変化及びマイボーム腺分泌物の飽和脂肪酸含量の減少及びDEDを有する患者の眼表面の炎症の減少及び涙液中の炎症性脂質メディエーター特性の減少と関連するように、オメガ3系脂肪酸の経口摂取を指摘する。亜麻仁油、魚油及びオリーブ油はオメガ3系脂肪酸の潜在的に豊富な食べ物として言及され;また、DHAによる補給は都合が良いことを示すと考えられると言及されている。
【0011】
Macsai(MS Macsai(2008)The role of omega-3 dietary supplementation in blepharitis and meibomian gland dysfunction(an AOS thesis)Trans Am Ophthalmol Soc.2008;106:336-356)によるレビューは、オメガ6系とオメガ3系脂肪酸との比が体の全体の炎症状態に影響を与えることにおいて重要であることを述べている。オメガ3系FAsは、抗炎症性のプロスタグランジン合成へ向けたプロスタグランジンの代謝を調節する。眼瞼炎のように、MGD及びドライアイは炎症性疾患であると考えられ、全身炎症状態の減少は眼瞼炎、MGD及びドライアイに関連した不快感を軽減しうる。オメガ6系及びオメガ3系FAsの炎症性及び抗炎症性の効果を説明するための付随的な図において、著者は最大C20の鎖長を有するオメガ6系の酸(アラキドン酸)及び最大C22の鎖長を有するオメガ3系の酸(DHA)の効果を示す。追加の仮説のように、その著者は多量のオメガ3系FAsによって補給することは、マイボーム腺におけるFA組成物を変化する可能性があり、そしてこの変化が涙液安定性に有利でありうり、炎症がマイボーム腺管を塞ぐことを防止しうることを述べる。また、MGDを軽減すること及びドライアイに関連した不快感におけるオメガ3系FAsの効果に関するMacsaiの仮説はより最近の公開公報内に言及されている。
【0012】
US9,381,182 B2(Smith et al.)では、抗炎症薬として作用するオメガ3系の酸の増加を促進し、同時にオメガ6系の酸の量を減少するために、DED及びMGDに苦しむ患者においていわゆるオメガ3インデックスを高めることを教示している。Smith et al.は、再エステル化したトリグリセリドの形態におけるオメガ3系の脂肪酸の補給を利用し、オメガ3系の酸の十分な量を提供する。当業者は、このサプリメントの記載が、DREAM Studyにおいて利用された材料と同様の方法において魚油より濃縮されるオメガ3系の酸を意味することに気付くだろう。DREAM Studyにおいて利用されたオメガ3系の酸の量とかなり似ているが、Smith et al.は、EPA(1600~2500mg)及びDHA(500~900mg)の有効量を含む、2000~3000mgの間の1日あたりのオメガ3系の脂肪酸の使用を教示している。Smith et al.はいわゆるHS-オメガ3インデックスを言及する。そのHS-オメガ3インデックス試験では、乾燥血液スポットにおけるオメガ3脂肪酸のEPA及びDHAの濃度を測定する。HS-オメガ3インデックスに基づいたSmith et al.,によって開示されている表及び他の情報はオメガ3系の酸のEPA及びDHA、C20及びC22の鎖長を有するそれぞれのオメガ3系の酸の含量に関する。
【0013】
ごく最近の刊行物では、脂肪酸の状態及び臨床的に健康の結果を探索する適当な方法を評価する(Harris WS(2018)The Omega-6:Omega-3 ratio:a critical appraisal and possible successor,Prostaglandins,Leukotrienes and Essential Fatty Acids 132:34-40)。その要約では、「エイコサペンタエン酸(EPA及びDHA)の欠失-西洋食における主要な欠乏症に焦点を当てたより新しい測定基準を推奨している。そのオメガ3インデックス(赤血球細胞EPA+DHA)はこれに関して多くの推奨を有する。」としている。そのオメガ3インデックス、すなわち、EPA及びDHAの測定は、2016年の調査において世界中にオメガ3のステータスを示し、そしてその国の国民健康調査のためにカナダ保健省によって選択された。ヒトにおける血中のFA状態を出版した単一の最も大きいデータセットは、オメガ3インデックスを利用して、米国において約160,000人を含んだ。そのオメガ3インデックスは、世界中での複数の観察コホート研究及び介入研究において用いられた。冠状動脈性心臓病による心臓突然死、急性冠症候群、全死因死亡及び認知機能の障害、うつ病、攻撃的行動及び双極性疾患のような他の健康状態において、より低いリスクと関連している。オメガ3インデックスは米国において臨床医学において幅広い使用をもたらした第一のオメガ3ステータスの試験だった。その結論では、「2004年に生まれた測定基準のオメガ3インデックスは、本物のリスクファクターの多くの基準を満たし、21世紀における選択マーカーでありうる」と述べた。
【0014】
上記の参照は、科学界がC20~C22のオメガ3系の酸、特にEPA及びDHAの濃度がオメガ3系脂肪酸の組み合わされる有益な効果における尺度を示すことを認めることを例示する。
【0015】
上記の参照より、我々はC20~C22のオメガ3系の脂肪酸(EPA及びDHA)の摂取が臨床医によって推奨されること及び患者によって広く用いられDEDの症状を軽減することを理解し、加えて、ヒトの体において全ての健常人のオメガ3系の酸の影響を示すために評価されるEPAとDHAとを加算した。引用されているDEDへのEPA及びDHAの想定される正の効果における理由は、これらの脂肪酸の抗炎症活性のためであり;これらの脂肪酸は実質的な副作用と関連せず;これらの多価不飽和脂肪酸は、より良く流れるより低い粘度のマイバムをもたらし;DEDに苦しむ患者のいわゆるオメガ3インデックスの上昇によってオメガ3系の酸であるEPA及びDHAの増加を促進し、オメガ6系の酸の量を(相対的に)減らすためである。しかしながら、非常に残念なことに、上記で引用したように、大型のDREAM研究では、12カ月間オメガ3系の酸のEPA及びDHAの濃縮物を投与された者は、プラセボを投与された患者よりも有意なより良い結果を得られなかったことを結論付けた。
【0016】
上記に基づき、新規及び代替方法並びにDED及び瞼板腺炎の患者を治療における組成物、特に疾病と関連するそれらの症状を軽減することについて需要がある。
【発明の概要】
【0017】
それゆえ、本発明の対象はドライアイ及び瞼板腺炎及びそれと関連する状態の治療に有用である組成物を提供することである。本発明は眼障害の治療における使用のための組成物を提供し、ここでその組成物は超長鎖多価不飽和脂肪酸(VLCPUFA)を含む。第一の側面において、本発明はドライアイ疾患(DED)及び瞼板腺炎の治療における天然オイル由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物を提供する。本発明の組成物は超長鎖不飽和脂肪酸(VLCUSFAs)の豊富な量を含む。特に、その組成物は超長鎖一不飽和脂肪酸(VLCMUFAs)及び超長鎖多価不飽和脂肪酸(VLCPUFAs)の両方の豊富な量を含む。
【0018】
同等の側面において、本発明は対象のDED及び瞼板腺炎の治療のための方法を提供すし、天然オイル由来のVLCPUFAsを含む組成物を対象へ投与することを含む。その方法は、VLCPUFAを含む組成物の治療有効量を対象へ投与することを含む。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図2】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図3】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図4】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図5】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図6】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図7】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図8】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図9】
図1から9は異なる試験食を摂食したマウス由来のマイバム組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【0020】
【
図10】
図10から17は異なる試験食を摂食したマウス由来の眼(眼球)組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図11】
図10から17は異なる試験食を摂食したマウス由来の眼(眼球)組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図12】
図10から17は異なる試験食を摂食したマウス由来の眼(眼球)組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図13】
図10から17は異なる試験食を摂食したマウス由来の眼(眼球)組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図14】
図10から17は異なる試験食を摂食したマウス由来の眼(眼球)組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図15】
図10から17は異なる試験食を摂食したマウス由来の眼(眼球)組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図16】
図10から17は異なる試験食を摂食したマウス由来の眼(眼球)組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【
図17】
図10から17は異なる試験食を摂食したマウス由来の眼(眼球)組織内の異なる脂肪酸の含量を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0021】
オメガ3系脂肪酸を含む、生物学的に活性のPUFASは、EPA及びDHAのような長鎖脂肪酸に制限されない。Breivik and Svensen in WO2016/182452では、天然オイルから、超長鎖多価不飽和脂肪酸(VLCPUFAs)の組成物、特に超長鎖オメガ3系脂肪酸(VLCn3s)、及び、そのようなVLCn3sを高い濃度で含む組成物を製造する方法を開示している。Breivik及びSevensenはさらに、魚油のような天然オイル内にごく少量のVLCn3sがあることを開示し、そしてこれらの及び他の超長鎖脂肪酸が、伝統的な海洋性オメガ3濃縮物の産生時に実質的に取り除かれる理由を説明しており、ここでその目的はC20~C22の鎖長を有するオメガ3系脂肪酸をより濃縮することである。
【0022】
DEDの治療のためのオメガ3系脂肪酸の補給の最近公表されたメタアナリシス、Grannaccare et al.(2019)Efficacy of omega-3 fatty acid supplementation for treatment of Dry Eye Disease:A meta-analysis of randomized clinical trials,Cornea 38(5)565~573、の考察部分のはじめに、著者は、DEDの徴候及び症状への摂餌量及びオメガ3系脂肪酸の補給の両方の影響が未だに疑わしいと述べている。しかしながら、3363人の患者を含む17のランダム化した臨床研究を含むそれらの研究に基づき、著者らはオメガ3系脂肪酸の補給は、DEDを有する患者におけるドライアイ症状、涙膜の安定性及び涙液の産生を改善することを結論付けている。一方で、著者らは、全てのそれらの結果因子について、実質的な不均質が観察され、その結果が研究を通じて一貫していないことを伴うとコメントしている。考察部分において、我々はこの不均質に関する以下を含む多数の意見を見つける:「我々はメタ回帰分析及びサブグループ分析を実施したが、説明できない不均質が残存した。この不一致は報告された概算における我々の自信及びそれらの一般化可能性を制限する」、「我々は、その効率及びその投与量及び治療期間の間の任意の関係を定義できなかった」、「群の間の角膜の蛍光染色における差異は感度分析後に安定してなかった」、「それゆえ、この結果は注意して解釈されるべきである」。本出願の優先日後に公表された、Giannaccare et al.ではそれらの研究において、本発明の発明者によって開示されたものを気付いていなかったことが明らかになった。
【0023】
驚くべきことに、症状の軽減及びDEDの治療のための、C20~C22のオメガ3系酸(EPA+DHA)に焦点を当てることは、せいぜいDEDに苦しむ患者に限られる利益しかもたらさず、そして症状を軽減するためのより効率的な利益及びこの一般的でコストのかかる疾病の治療は、VLCn3sを含むVLCFAsを含む組成物の投与よって得られうることを本発明で発見した。さらに、経口及び局所適用に適当なVLCFAsを含む組成物は、DEDの治療における使用のために、開示されている。
【0024】
出願人が、Giannaccare et al.,によるメタアナリシス内に含まれる公開された研究を調べたところ、植物油及び海洋性オメガ3濃縮物に基づく研究では、所望されるC20~C22のオメガ3系酸を濃縮するために、VLCFAsが無い又は実質的に取り除かれていると推定される場合に、DEDに影響を与えない又は制限される正の影響を与えることを示す傾向があるが、一方で、濃縮されていない魚油及びオキアミ油に基づく研究ではDED患者における明らかな正の結果をもたらす傾向であるように見える。この驚くべきオメガ3系脂肪酸の原料及び効果のつながりは、メタアナリシスの著者、そしてまた、メタ研究に含まれる個々の研究の著者を逃れている。
【0025】
本明細書で使用されるように、「治療すること」又は「治療」という用語は1)疾病を阻害すること;例えば、疾病、状態又は障害の予防を含む、疾病、状態又は障害の病状又は症候を経験する又は示している個人における疾病、状態又は障害を阻害すること(すなわち、予防的治療、さらなる病状及び/又は症候の発生を停止すること)、又は2)例えばDEDの症状を軽減することによって、疾病の症状を軽減すること、又は3)疾病を回復させること;例えば、疾病、状態又は障害の病状又は症候を経験する又は示している個人の疾病、状態、障害を回復させること(すなわち、病状及び/又は症候を逆転させること)を意味する。特に、一の態様において、使用のための組成物は、VLCFAsを含む組成物を含むマイバムを提供することによって、予防的な治療、例えば通常のマイバムの機能を保持すること、又はマイバムの機能を改善することのためである。
【0026】
本明細書で使用される「投与する」、「投与」、及び「投与すること」という用語は、(1)医療関係者によって、本開示に従う組成物を提供すること、与えること、投与すること、及び/又は処方すること、及び(2)ヒトの患者若しくはヒトが彼自身又は彼女自身によって、又はヒト以外の哺乳類によって、本開示の組成物を入れること、投与すること、適用すること又は消費することを意味する。
【0027】
マイバムの液体組成物は、実質的にヒトの体の任意の他の組織の液体の組成物から異なる。Butovitch(Experimental Eye Research(2017)163:2~16)では、総脂質のそれらの割合と共に多数のヒトのマイバムの脂質成分を記載している:(O-アセチル化)-ω-ヒドロキシ脂肪酸(OAHFA)(1~5%)、コレステリルエステル(30~40%)、セラミド(少量)、OAHFAのコレステリルエステル(3%)、ジアセチルジオール(定量されず)、遊離脂肪酸(最大1%)、リン脂質及びスフィンゴミエリン(最大0.1%)、グリセリド(1%、大部分がトリオレインとして)、ろうエステル(30~48%)。マイボーム腺より分泌される主要な極性脂質は、OAHFAsであり、そしてこれらの脂肪酸は、マイボーム腺性の脂質の間で主要な界面活性剤として作用する(Millar et al.Meibomian Glands and Lipid Layer,update of Encyclopeaedia of the Eye,2010,Pages 13~20;Elsevier Inc.2017)。ヒトにおける、マイボーム腺性のろうエステルのたいていの脂質はC14~C20の脂肪酸に基づいているが、また少なくともC32の鎖長に到達するVLC脂肪酸も存在している。
【0028】
本発明は、ドライアイ疾患(DED)及び瞼板腺炎の治療のための、天然オイル由来の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物を提供する。第一の態様において、その組成物は少なくとも1%、例えば、少なくとも2%若しくは3%、又はより好ましくは少なくとも5質量%のVLCPUFA、例えば少なくとも10%、例えば少なくとも20%、例えば少なくとも25質量%のVLCPUFAsを含む。典型的に、そのような組成物は、10%より多く、20%より多く、30%より多く、40%より多く、50%より多く、60%より多く、又は70質量%より多く超長鎖多価不飽和脂肪酸を、例えば最大で約80%のVLCPUFAsを含みうる。また、その組成物は、VLCPUFAs/VLCn3sよりも他のVLCFAs、例えば超長鎖一不飽和脂肪酸(VLCMUFAs)を含みうる。ある態様において、そのようなVLCMUFAsの包含が好ましい。一の態様において、使用のための組成物は、少なくとも0.5%で、例えば少なくとも1%で、例えば少なくとも2質量%のVLCMUFAsを含む。さらに好ましくは、その組成物は、VLCMUFAsを少なくとも4質量%、例えば5%より多く、8%より多く、15%より多く、20%より多く、30%より多く、40%より多く、50%より多く又は60質量%よりさらに多く超長鎖一不飽和脂肪酸を含む。好ましくは、その組成物は異なるVLCUSFAsの混合物を含み、従って、一不飽和及び多価不飽和の両方の超長鎖脂肪酸を含む。一の態様において、VLCUSFAs含量は、すなわち、VLCMUFAs及びVLCPUFAsの併用の量は、少なくとも、5質量%の組成物である。組成物において存在しうるVLCMUFAsは、これらに限定されないが、以下の脂肪酸の群のいずれか一つより選択される:C24:1(テトラコサン酸(ネルボン酸))、C26:1(ヘキサコセン酸)、C28:1(オクタコセン酸)、C30:1及びC32:1。さらに、ある態様において、その組成物は超長鎖飽和脂肪酸(VLCSFAs)を含む。例えば、その組成物は1.0%より多く、例えば、2.0%より多いVLCSFAsを含む。
【0029】
上記の考察又は、他の特定の生物学的な機構に限定することなく、我々は、DEDを治療するために、例えばDEDの影響を軽減するために利用されうる天然原料より得たVLCPUFAs及び他のVLCFAsを含む組成物を本明細書で開示する。本発明に従う組成物は、とりわけ、特許出願WO2016/182452に開示される天然オイル及びそれらに従う方法に基づき製造されうるが、その出願に開示される出発オイル及び方法に限定されない。
【0030】
一の態様において、そのVLCUPFAsは魚油、イカ油、オキアミ油、カイアシ油及び藻類油の群より選択される天然オイルより生じる。以下により詳細に開示されるように、さらに本発明に従う、組成物における天然原料はカイアシのCalanus finmarchicus及び他のCalanus属並びにオキアミのEuphausia Cryustallorphias、そしてそれらの脂質クラスの中で高い相対量のろうエステルを含む他の海洋種である。一の態様において、組成物の、VLCPUFAsを含むVLCFAsは、天然原料より単離されたオイルと比較して未修飾である。それゆえ、一の態様において、VLCPUFAsの鎖長は未修飾であり、そして好ましくは、その天然のVLCPUFAsは、投与前に行われる任意の伸長工程なしで、その組成物内に含まれる。さらに、その組成物は、VLCPUFAsを分泌する又は産生する任意の液体産生細胞を含まない。むしろ、その組成物は、ある量のVLCFAs、例えば、VLCPUFAs及び随意にVLCMUFAsを含み、ここでそのVLCFAsは、商用使用のためのスケールアップ及び生産のための適当な方法を用いて、天然原料より単離され、濃縮される。調製のための一の適当な方法は、WO2016/182452において開示される。脂肪酸は一般的に不安定であり、そして使用のためのその脂肪酸は穏やかな条件(例えば低温及び低圧)が用いられ分解及び異性化を避ける、例えば天然の全てcisの脂肪酸がtrans脂肪酸又は複合化した脂肪酸に修正されることを避ける方法によって調製される。いくつかの天然オイルは、カイアシ類のような、Calanus finmarchicus及び他のCalanus属からのオイルを含み、同様に、オキアミのEuphausia crystallorphiasは多くの天然含量のろうエステルを有する。これにより、本発明に従って、ろうエステル組成物の製造に十分に適合するこれらの種由来のオイルを作製できた。これらのオイルからの豊富なろうエステル組成物の単離に続いて、分子サイズ及び/又は不飽和度に基づく付随的な画分化が、率先して脂肪酸誘導体の適当な濃縮物の単離を有することなく、本発明に従う、ろうエステル組成物を導き、続いてこれらの脂肪酸を脂肪アルコールによってエステル化し、ろうエステルを入手する。今まで、上述のような天然オイルがDEDの治療に利用されていることは開示されておらず、そしてまた、Calanus finmarchicus及びEuphausia Cryustallorphiasのようなカイアシ及びオキアミ種から、ろうエステルの公開された化学組成物がこれらのオイルのVLCFA含量の情報を開示しなかったことを指摘することは重要でありうる。
【0031】
本出願人は対象へ投与されるVLCFAsがマイバムに取り込まれること、正の健康への効果を提供することを発見した。さらに具体的に、その投与されるVLCFAsはそのマイバム、又は眼の他の関連した特定の組織へと移送され、VLCFAsの存在を正常に有するそのような組織に取り込まれる。従って、本発明はDED又は瞼板腺炎の治療における使用のためのVLCFAsを含む組成物を提供し、そしてその使用は特定の組織内のVLCFAsの濃度の増加を提供し、続いて、疾病を回復又はこの症状を軽減する取り込みが行われる。特定の組織は、例えば、網膜を含む眼球、又はマイバムの組織内であり、そして好ましくは眼瞼内のマイボーム腺を含むマイバムである。眼球の組織内において、目の表面に近い組織内の、すなわち、瞼板及び涙管を含む、涙液に接触しそうな組織において、取り込みは最も関連している。特に、その治療は、VLCFAsを有する組織を提供することによる正常の組織機能を維持するためでありうり、ここで、その投与したVLCFAsは、通常VLCFAsが存在しうると知られている組織内で良い機能を維持することに役立ちうる。例えば、異なる組織へのVLCFAsの添加は直接的に、細胞膜の流動性の修正又は改善に寄与する。以下の実施例1では、マウスにおける飼養研究を含み、そしてこれは経口的に投与される超長鎖脂肪酸がマイボーム腺に取り込まれることを示した。VLCPUFAsを含む食餌を与えたマウス由来の眼組織は、コントロール、VLCPUFAsの存在しない食餌の給餌よりも、マイボーム腺内のVLCPUFAsのより高い濃度を有した。これらの結果に基づき、オメガ3系脂肪酸がDEDを有する患者のドライアイの症状、涙膜安定性及び涙液産生を改善するという知識と組み合わせて、本出願人は超長鎖脂肪酸がドライアイ疾患及び瞼板腺炎の治療に有用であることを推論した。以下の実施例2では、マウスにおける飼養研究を含み、そしてこれは経口的に投与される超長鎖脂肪酸が眼全体の組織に取り込まれることを示した。それゆえ、本出願人は給餌を通じて補給されるVLCFAsが眼組織に取り込まれること、そしてそこで合成されるだけではないことを示した。その投与したVLCFAsは眼球表面に近い組織で特に取り込まれ、それゆえDED及び瞼板腺炎の治療に寄与しうる。
【0032】
VLCPUFAsに加えて、その組成物はさらに他の脂肪酸、例えばさらなる長鎖多価脂肪酸、及び/又はVLCMUFAsのようなさらなるVLCFAsを含みうる。一の態様において、使用のための組成物は、一以上のLCPUFA、例えば一以上のC20~C22のPUFAsを少なくとも5質量%含む。ある態様において、本発明のそのような組成物は少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、又は少なくとも70質量%の少なくとも一つのLCPUFA、例えば一以上のC20~C22の長鎖のPUFAsを含む。一の態様において、そのLCPUFAsは少なくとも一つのEPA、DHA及びオメガ3系DPA(all-cis-7、10、13、16、19-ドコサヘキサエン酸)を含む。さらに、他の態様において、本発明の組成物は少なくとも5%、少なくとも8%、又は少なくとも10質量%のDPAを含む(22:5n3)。本発明のある態様において、組成物のEPA:DHAの質量比は約1:15から約10:1、約1:10から約8:1、約1:8から約6:1、約1:5から約5:1、約1:4から約4:1、約1:3から約3:1、又は約1:2から約2:1に及ぶ。好ましくは、その組成物内にEPAより多くのDHAの存在があり、そして少なくとも一の態様において、その組成物のEPA:DHAの質量比は約1:3から約1:12に及ぶ。一の態様において、使用のための組成物は組成物の、5~30質量%のVLCPUFAs及び50~90%LCPUFAsを含む。
【0033】
組成物のそのVLCPUFAs、及び任意の他のVLCFAsは22炭素原子数より長い鎖長を有する;一の態様において、その組成物は24炭素数以上の鎖長を有する少なくとも一つのVLCPUFAを含む。好ましくは、その組成物は、VLCFAsのような異なるものの混合物を含む。これに関して、そのVLCFsは24、26、28、30、32、34、36、38、40又は42炭素数の鎖長を有しうる。好ましくは、VLCFAsの組成物は少なくとも二つのVLC脂肪酸の混合物を含み、そして具体的に24、26、28及び30の炭素数の鎖長を有する。特定の態様において、その組成物は、これらに限定されないが、24:5n3、24:6n3、28:8n3の脂肪酸の任意の一つから選択されるVLCPUFAsを含む。一の態様において、その組成物は少なくとも4%、例えば少なくとも5%、例えば約4~10%の28:8n3脂肪酸を含む。一の態様において、使用のための組成物は5~15%のEPA、5~15%のDPA、35~55%のDHA及び少なくとも5質量%のVLCPUFAsを含み、そしてさらに好ましくはその組成物のVLCPUFAsは28:8n3脂肪酸を含む。好ましくは、その組成物はさらにVLCMUFAs、例えば少なくとも0.5重量%のVLCMUFAsを含む。
【0034】
前記組成物の脂肪酸、VLCPUFAs及びその組成物の他の脂肪酸の両方は、遊離脂肪酸、脂肪酸塩、モノ-、ジ-、トリグリセリド、エチルエステル、ろうエステル、OAHFAs、コレステリルエステル、セラミド、リン脂質又はスフィンゴミエリンの単体又は組み合わせの形態でありうる。また、その脂肪酸は消化管に吸収されうる、又は局所適用によってマイボーム腺によって吸収されうる任意の形態でありうり、又は、ここでその脂肪酸は少なくとも部分的にそのマイバムの脂質に置換することで潤滑するように作用する。好ましくは、その脂肪酸は遊離脂肪酸、脂肪酸塩、エチルエステル、グリセリド又はろうエステルの形態である。局所適用において、そのVLCPUFAs/VLCFAs組成物を含む調製物を送達することは、その脂肪酸が遊離脂肪酸、脂肪酸塩、グリセリド(モノ-、ジ-、又はトリグリセリド単体又は組み合わせ)として、OHAFAs、コレステリルエステル、セラミド、リン脂質、スフィンゴミエリン又はろうエステルの形態であり、そしてさらにより好ましい態様において、そのVLCPUFAs/VLCFAsはろうエステルの形態である。一の態様において、その組成物の局所適用において、これは塩を含み、そして従って組成物の少なくともいくつかの脂肪酸、例えば少なくともいくつかのVLCPUFAsは、脂肪酸塩の形態でありうる。また、投与されたVLCFAsは、内因性の生物学的な機構がVLCFAsを別の形態、例えば(O-アシル)ω-ヒドロキシFAs(OAHFAs)を含むω-ヒドロキシ脂肪酸、又はコレステリルエステル、セラミド、遊離脂肪酸、リン脂質、スフィンゴミエリン及びろうエステルに移行しうるように、in vivoの形態を変化しうる。
【0035】
現在開示されている前記組成物は、少なくとも一つの非活性の医薬的な成分、すなわち賦形剤を含みうる。そのような賦形剤の選択は投与形態を含む、いくつかの因子に依存する。非活性成分は可溶化し、懸濁させ、増粘し、希釈し、乳化し、安定化し、保存し、保護し、着色し、香りづけし、並びに/又は使用において、安全、都合よく、及び/若しくは他の受容可能なものでありうるように、有効成分を適用可能及び有効な調製物に構成しうる。賦形剤の例は、これらに限定されないが、溶媒、担体、希釈剤、結合剤、充填剤、甘味料、芳香剤、pH調整剤、粘度調製剤、抗酸化剤、増量剤、保湿剤、崩壊剤、溶解遅延剤(solution-retarding agent)、吸収促進剤、湿潤剤、吸収剤、潤滑剤、着色剤、分散剤、乳化剤、界面活性剤及び保存剤を含む。賦形剤は、さらに一以上の役割又は機能を有しうり、又は一以上の群に分類されうる;分類は説明的であるのみであり、限定することを意図していない。ある態様において、例えば、その少なくとも一つの賦形剤は、コーンスターチ、ラクトース、グルコース、結晶セルロース、ステアリン酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、クエン酸、酒石酸、水、エタノール、グリセロール、ソルビトール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、セテアリルアルコール、カルボキシメチルセルロース、及び脂肪性物質、例えば固い脂肪又はその適当な混合物より選択されうる。眼の局所治療に適当な水性溶液は保存剤、界面活性剤、緩衝剤、塩、等張化剤、乳化剤及び水を含みうる。ある態様において、現在開示された組成物は、医薬的に許容可能な抗酸化剤、例えばトコフェロール、例えばアルファ・トコフェロール、ベータ・トコフェロール、ガンマ・トコフェロール、及びデルタ・トコフェロール、又はそれらの混合物、BHA、例えば2-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール及び3-tert-ブチル-4-ヒドロキシアニソール、又はその混合物、並びにBHT(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシトルエン)、又はパルミチン酸アスコルビル又はその混合物を含む。随意に、眼内又は眼への局所的な適用において、抗酸化剤及び保存剤の使用は、好ましくは避けられうる。例えば、使用のためのその組成物は保存剤を含まない点眼剤を調剤することに適当な単回単位用量、又は多数回用の容器として充填した製剤において含まれうる。従って、VLCFAsの組成物は例えば植物抽出物からの他の有効成分と組み合わされうる。正常の視力の維持に寄与しうる、ビタミンAの原料である、ベータカロテンのような天然の抗酸化剤は、有用な成分でありうる。同様に、酸化ダメージから細胞の保護に寄与しうるビタミンE(好ましくは天然のRRR-トコフェロール又はd-トコフェロール)を含めると有用でありうる。ルテイン及びゼアキサンチンは含まれうるカルテノイドであり、それは人体では網膜及び水晶体の黄斑で濃縮しうる。
【0036】
さらなる側面において、本発明は、対象へ天然オイル由来のVLCUPUFAsを含む、組成物を投与することを含む対象のDED及び瞼板腺炎の治療のための方法を提供する。その方法は対象へ少なくとも1%のVLCPUFAs、例えば少なくとも5%のVLCPUFAsを含む組成物の治療有効量を投与することを含む。
【0037】
使用のための前記組成物に向けられる第一の側面の文脈で記載された態様及び特徴は、また治療のための方法に向けられる本発明の他の側面にも適用する。
【0038】
個人が、これらの脂肪酸が個人の最適な健康を維持することに必要とされる特定の組織において、VLCMUFA及びVLCPUFA酸を含む、VLCFAsの内因的な合成能力を低下させる経験をしうることが既知である。しかしながら、我々の知る限り本出願までに、そのVLCFAsが実質的に除去されたC20~C22のオメガ3系脂肪酸の濃縮物が、DEDを軽減する有意な正の効果を示さない理由を説明すると考えられる方法において、一以上の伸長酵素機構の欠損がマイバムに、影響を与えうることは開示されなかった。一の態様において、使用のためのその方法又は組成物は眼の一以上の伸長酵素機構欠損を有する患者の治療用途、例えばVLCPUFAsの欠損した伸長酵素合成について補うことである。
【0039】
伸長酵素機構以外の内因的な生物学的な機構は、都合の良い、(O-アシル)-ω-ヒドロキシFAs(OAHFAs)、コレステリルエステル、セラミド、遊離脂肪酸、リン脂質、スフィンゴミエリン、及びろうエステルにVLCMUFAs及びVLCFAsを含むLCFAsを変換するために利用されうる。VLCFAsを含む、本発明に従う組成物は、その脂肪酸がω-ヒドロキシ脂肪酸と別の形態であるが、これらのとても重要な脂肪酸を関連性のある組織、例えばマイバムに提供するために用いられうる。従って、本明細書で用いられるようにVLCFAsという用語は、VLCFAsのin vivoでの変換をさらに含むと理解されるべきである。例として、その用語は、ω-ヒドロキシVLCFAsを含むin vivoで形成されるVLCFAsのヒドロキシ誘導体、そしてさらにω-ヒドロキシVLCFAsのin vivoでの変換を含む。
【0040】
本明細書で開示される使用のための組成物は、経口的に投与される又は眼及び眼瞼内又は周辺に局所的に適用されることを意図される。一の態様において、開示された組成物は局所適用のための調製物内の成分として含まれる。一の側面において、本発明は、開示された及び請求されたように組成物を含む眼製剤を提供する。従って、天然オイル由来の少なくとも1%、例えば少なくとも5質量%の超長鎖多価不飽和脂肪酸を含む組成物を含む眼製剤を提供する。第一の側面の文脈で記載された態様及び特徴は使用のための組成物に向けられ、また治療において使用のための製剤に向けられる本発明のこの他の側面に適用する。局所適用において、そのような眼製剤は、すなわち調製物は、例えば点眼剤、噴霧剤、軟膏、クリーム、軟膏、ローション、ゲル、眼内のミニタブレット等でありうる。眼又は眼組織へのそのような局所投与は、局所的にさらされる又はさらされうる眼の生体構造の任意の表面を含む。好ましくは、その組成物は角膜又は結膜に投与され、眼瞼辺縁の上部又は下部、マイボーム腺管、まつげ又は任意の眼又は眼瞼組織の領域へ投与される。そのような局所適用は例えば眼を閉じた場合に密封を作り出すこと、涙膜と相互作用することによって、均一にそれらを拡げることにより涙液を増強すること、及び一貫した視力の質を維持すること、そして涙膜を覆うことによって、それによって涙液の蒸発速度を下げること、そして眼及びマイボーム腺内又は周囲の炎症作用を軽減することにより誘導されうる。例えば、眼、眼瞼又は眼の周囲の皮膚への直接的な適用のための噴霧剤、点眼剤又はクリームの製剤のような眼製剤は、様々な成分及びVLCFsの濃度からなりうる。噴霧剤又は点眼剤のような眼製剤におけるVLCFsの典型的な濃度は、全体の局所製剤の0.1質量%から1%、又は最大2%のVLCPUFAs及び随意に0.01~1%のVLCMUFAsでありうる。他の成分は有効成分のヒアルロン酸ナトリウムでありうる。ヒアルロン酸は涙液の水への結合能力を補助し、損傷に対して細胞を保護する。精製水、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ソルビタンモノオレート、くえん酸一水和物、トロメタモール、塩化カリウム、及び塩化ナトリウムは液体としての適用のためのエマルジョンを作製することにおいて及び皮膚を滑らかにすることにおいて関連する成分である。
【0041】
眼瞼又は眼周辺の皮膚への直接的な適用のためのクリーム製剤は様々な成分及びVLCFsの濃度からなりうる。クリーム中の典型的なVLCFAsの濃度は総局所製剤の質量%で1%から2%、又は最大で5%、又はさらに最大で10%のVLCPUFAs及び随意に0.01~5%のVLCMUFAsでありうる。他の成分は有効成分のヒアルロン酸ナトリウムでありうる。また、クリームエマルジョンを作製し皮膚を滑らかにし強化する典型的な他の成分は関連しているだろう。そのような成分の例は水、セテアリルアルコール、ジカプリリルエーテル、乳酸ナトリウム、ポリソルベート、パルミチン酸セチル、ステアリン酸ソルビタン、デヒドロ酢酸、安息香酸ナトリウム及びオイル及び植物原料からの抽出物である。
【0042】
局所適用における本発明のある態様において、OAHFAs及びOAHFAsのコレステリルエステルは、単体又は他の界面活性剤及び/又は乳化剤と一緒のいずれかの、好ましい界面活性剤である。一の態様において、OAHFAsの形態のVLCPUFAsは使用のための組成物に含まれる。その付随的な他の界面活性剤及び/又は乳化剤は選択され、安定的な形態、例えば使用前に振とうする必要がなくてもよいことを提供する。ある態様において、本開示のその組成物はポリソルベートの群、例えばポリソルベート80、及びポリアクリル酸(例えばカルボマー)から選択される医薬的に許容可能な界面活性剤及び/又は乳化剤を含む。
【0043】
前記組成物は、眼障害の治療用途であり、そして、ドライアイ疾患(乾性角結膜炎)及びマイボーム腺機能障害を含む、眼障害又は状態に関する眼症状を軽減又は緩和する。さらなる態様において、本発明の組成物は眼又は眼組織の対症療法及び治療に用いられうる。また、本発明の背景で述べたように、いくつかの薬物療法はマイボーム腺に負の影響をもたらす。開示された組成物は、副作用としてドライアイ症状を有する薬物療法中の患者により用いられる場合に都合の良い効果を有する。さらに、その組成物は、ヒトが加齢する又は環境条件、薬物療法若しくは健康関連因子を理由に、ドライアイ疾患にさらされるにつれて、健康な眼を維持すること並びにドライアイ疾患及び不快感の発生を防ぐためのサプリメントとして提供されうる。そしてよりさらに、その組成物は加齢、更年期及び他のホルモン変化、様々な疾病例えば狼瘡、関節リウマチ、強皮症又はシェーグレン症候群のような自己免疫疾患、アレルギー、糖尿病、様々な薬物療法の副作用、乾燥した環境、コンタクトレンズの使用、長いコンピュータ及びテレビの視聴時間、に関連する不快感の治療及び軽減において用いられうる。開示された組成物は他の眼科学的な障害、例えば対象の血管新生に関連するそれら、ここで例えばその血管新生が角膜、網膜、脈絡膜、ブドウ膜、又は虹彩血管新生である治療に有用であることが、さらに推定される。ある態様において、その血管新生に関連する眼科学的な障害は年齢に関連した加齢黄斑変性(AMD)、シュタルガルト病、網膜症、未熟児網膜症(ROP)、糖尿病性網膜症、網膜静脈閉塞症、鎌状赤血球網膜症、放射線網膜症、虹彩炎、又は結膜炎である。
【0044】
開示される治療は、眼瞼洗浄、温罨法及び穏やかな眼瞼罨法(lid comprssion)及びマッサージのようなマイボーム腺の外用治療において推奨される工程と優先的に組み合わせられうる。
【0045】
経口使用について、本開示のその組成物は様々な形態、例えば経口投与形態、例えば、錠剤又はソフト若しくはハードカプセル剤、咀嚼カプセル若しくはビーズ、又は代わりに液体組成物として、製剤化されうる。天然オイルのVLCFA分画の濃縮物、すなわち、本発明の組成物の取り込みによって、非濃縮の形態において、魚油、オキアミ油、藻類油又はカイアシ油のような天然オイルを消費することによって患者はより高い正の効果及びより少ない量の薬物/サプリメントの恩恵を被る。同時に、患者は、カロリー摂取並びに潜在的な負の影響の脂肪酸並びにDED及び瞼板腺炎の軽減及び/又は治癒を促進しない脂質構成物のないことによる恩恵を被るだろう。一の態様において、開示したその組成物は経口摂取のための調製物に含まれる。経口投与において、その組成物は、例えばカプセル、錠剤又は任意の他の薬物送達の形態で投与されうる。例えば、その組成物はゼラチンカプセルのようにカプセル化されうる。本開示のある態様において、そのカプセルは約0.400gから約1.600gに及ぶ含量を満たす。例えば、ある態様において、そのカプセルは約0.400gから約1.300g、約0.600gから約1.200g、約0.600gから約0.800g、約0.800gから約1.000g、約1.000gから約1.200g、又はその間の任意の量に及ぶ含量を満たす。例えば、ある態様において、そのカプセルは約0.600g、約0.800g、約1.000g又は約1.200gの含量を満たす。
【0046】
局所適用において、濃縮していない天然オイルは、視覚をぼやけさせ、皮膚を染色することをもたらすと考えられる非実用的な及び/又は禁止された多量を示し、一方で開示された濃度の活性脂肪酸構成物は同様の問題なしに利用されうる。眼に局所投与されるその用量及びVLCPUFA-組成物の濃度は、調製物の追加成分によって調節されると考えられ、そして調製物の形態に依存している。当業者は試験及び調節し最適な用量及び濃度を同定できるだろう。眼への局所投与のための調製物は少なくとも一日一回適用されうり、例えば、朝及びよるである。
【0047】
当業者により本明細書で提供される開示と一貫性のある追加の態様が想像されるだろうと理解される。
【実施例0048】
実施例1:マウスにおけるVLCPUFAによる補給-マイボーム腺の脂肪酸組成物への影響
【0049】
二つの型の海洋性脂質濃縮物(Lipidmix1及びLipidmix2)をマウスの飼養研究で試験した。Lipidmix1及び2を標準のカタクチイワシの魚油より調製した。その加工されていない魚油を精製し、エチル化し、そしてエチル化したオイルを分画し、そして短行程蒸留及び尿素沈殿により限界まで濃縮し、そしてLipidmix1について、リチウム沈殿を実施し、所望される組成物を得た。その画分を最終的にグリセロールによる酵素反応によって再エステル化しトリグリセリドにした。
【0050】
Epax Norwayはマウスの餌のペレットに含まれる二つの異なるlipidmixを調製した。そのlipidmixの脂肪酸は、少量のモノ-及びジグリセリドを含むトリグリセリド(TG)の形態だった。
【0051】
Lipidmix1及び2の脂肪酸組成物をスプリット/スプリットレス注入(スプリットレスは1分間)によって、Restek Rxi-5msキャピラリーカラム(長さ30m、内径0.25mm、及び膜厚0.25μm)、水素炎イオン化型検出器及びTotalChrom Softwareを用いて、Scion 436-GCで分析した。そのキャリアガスは水素であった。脂肪酸の量をC23:0、EPA及びDHA標準を用いて計算した。標準が利用できなかったので、DHAとしての同様のレスポンスファクターをVLCPUFAsに仮定した。
【0052】
Lipidmix1及び2の脂肪酸組成物を表1に示した。
【表1】
【0053】
試験食:
試験食1:10%脂肪(5%大豆油、5%ラード)、17%タンパク質、5%繊維、62%炭水化物、ミネラル類、ビタミン類。
試験食2:10%脂肪(5%Lipidmix1、5%ラード)、17%タンパク質、5%繊維、62%炭水化物、ミネラル類、ビタミン類。
試験食3:10%脂肪(5%Lipidmix2、5%ラード)、17%タンパク質、5%繊維、62%炭水化物、ミネラル類、ビタミン類。
【0054】
従って、前記試験食1は標準のマウス食である。試験食2はVLCPUFAs及びVLCMUFAsを含む魚油濃縮物を含む。試験食3はVLCPUFAs又はVLCMUFAsを有しない魚油濃縮物を含む。
【0055】
全ての試験食を解凍して給餌するまで-20℃で貯蔵した。
【0056】
動物:
Charles RiverからのC57/bl6株由来のマウスを飼養研究に用いた。その体重は約25gだった。その動物を室温で餌及び水を自由に摂取できるケージに収容した。
【0057】
マイボーム腺:
各試験食群より5匹のマウスを飼養研究開始後33日で屠殺した。訓練された人材によってマイボーム腺をマウスの眼瞼より注意深く切開した。その試料を直ちにドライアイスで冷凍し、Epax Norwayへ輸送し脂肪酸分析をした。
【0058】
試料調製:
0.05157mg/mLのC23:0内部標準を含む1mLの溶液を試験管に添加し、その溶液を窒素流下で蒸発させた。同じ試験管に続いてマイボーム腺を加え、そして組織の重量を書き留めた。メタノール中に0.5Mのナトリウム・メトキシドを含む3.5mLの溶液を添加し、そしてその試験管を続いて1時間沸騰水浴内で加熱した。冷却後、5mLのBCl3を添加し、試験管を5分間沸騰水浴内で加熱した。冷却後試験管に0.6mLのイソオクタンを添加し、5mLの水中の飽和塩化ナトリウムによって洗浄した。そのイソオクタン相をマイクロバイアルに移し、GCに直接注入した。
【0059】
マイボーム腺組織の脂肪酸分析
マイボーム腺組織を含む抽出物の脂肪酸分析をAgilent CP Wax 52B(CP7713)カラムを用いてPerkin Elmer,Clarius680/600T GC-MSで行った。三つの単イオンスキャン(67、79及び91m/zのSIM)からのピーク面積をLC及びVLCPUDAsの定量化に用いた。(C23:0に対して)DHAにおけるレスポンスファクターを既知の濃度のDHA及びC23:0を有する標準溶液を用いることによって計算した。VLCPUFAsにおいて利用可能な標準は無いので、DHAに関しては同様のレスポンスファクターを推定し、そしてVLCPUFAにおけるmg脂肪酸/g組織を計算することに用いた。組織内のVLCMUFA C24:1の含量を完全スキャンクロマトグラムより計算し、C23:0に関する同様のレスポンスファクターを推定した。
【0060】
22炭素数以上を有するPUFAsの分析の結果を以下の表2に示す。各脂肪酸の結果をさらに
図1~9において示し、ここで、
図1は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるDHA(mg/g組織)の含量を提供する。
図2は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるDPA(mg/g組織)の含量を提供する。
図3は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるC24:5(mg/g組織)の含量を提供する。
図4は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるC24:6(mg/g組織)の含量を提供する。
図5は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるC26:6(mg/g組織)の含量を提供する。
図6は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるC26:7(mg/g組織)の含量を提供する。
図7は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるC28:7(mg/g組織)の含量を提供する。
図8は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるC28:8(mg/g組織)の含量を提供する。
図9は試験食1、2又は3を与えたマウスからのマイボーム腺におけるC24:1(mg/g組織)の含量を提供する。
【表2】
【0061】
上記の結果は試験食1を与えられたマウスよりも試験食2及び3を与えられたマウスのマイボーム組織においてDPA及びDHAの有意により高いレベルがあることを示す。これらの食餌はDPA及びDHAの同様の量を含む。
【0062】
(VLCPUFAs及びVLCMUFAsを含む)試験食2を与えられたマウスからのマイボーム腺は、試験食1及び3を与えられたマウスからのマイボーム腺よりもVLCPUFAsの有意に高いレベルを示す。特にVLCPUFAsのC26:6及びC28:8において、これはとても明白である。
図8はこれが、試験食1及び3におけるC28:8においてシグナルを有さず、試験食2において明らかなピークを有することがとても明白であることを例示している。
【0063】
マウスにおける飼養研究は経口的に投与されるVLC脂肪酸がマイボーム腺により取り込まれることを示した。食餌内にVLCPUFAを有するマウスからのこの眼組織は、コントロールよりもマイボーム腺内にVLCPUFAsのより高いレベルを有した。
【0064】
本実施例は、VLCFAsの組成物がマイボーム腺組織により取り込まれ、ドライアイ疾患及び瞼板腺炎の治療のために用いられうる本発明を裏付ける。
【0065】
実施例2:マウスにおけるVLCPUFAの補給-眼(眼球)の脂肪酸組成物への影響
【0066】
液体組成物:
実施例1で用いたように、同じ脂質混合物である、Lipidmix1及び2、並びに同じ試験食の試験食1、2及び3を本実施例で用いた。
【0067】
動物:
Charles RiverからのC57/bl6株由来のマウスを飼養研究に用いた。その体重は約25gだった。その動物を室温で餌及び水を自由に摂取できるケージに収容した。
【0068】
眼球の組織
試験食群2及び3からの試験食群1及び9の個体より8個体を飼養研究の開始後29~33日で屠殺した。熟練した人材により動物より網膜組織を含む全眼球を注意深く切開した。その試料を直ちにドライアイスで冷凍し、Nofima,Norwayへ配送し、リン脂質(PL)の抽出及び分離した。調製した試料の脂肪酸分析はEpax Norwayで行われた。総脂質をFolch,J.Lees,M,Sloane Stanley GH.A simple method for the isolation and purification of total lipids from animal tissue.J Biol Chem.1957;226(1):497-509.PMID:13428781による方法によってマウスの眼組織から抽出した。脂質を薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて分離した。そのリン脂質の画分を用いて脂肪酸分析した。
【0069】
全眼試料の脂肪酸分析:
脂肪酸分析をAgilent CP Wax52B(CP7713)カラムを用いてPerkin Elmer,Clarius680/ 600T GC-MSで行った。67、79及び91m/zの同時の単イオンスキャンよりクロマトグラムからのピーク領域をLC及びVLCPUFA脂肪酸の定量化のために用いた。(C23:0に対して)DHAにおけるレスポンスファクターを既知の濃度のDHA及びC23:0を有する標準溶液を用いることによって計算した。VLCPUFAsにおいて利用可能な標準は無いので、DHAに関しては同様のレスポンスファクターを推定し、そしてVLCPUFAにおけるmg脂肪酸/g組織を計算することに用いた。
【0070】
全眼組織分析からの結果:
22炭素数以上を有するPUFAsの分析結果を以下の表3に示し、各脂肪酸における結果を
図10~17に示し、ここで、
図10は試験食1、2又は3を与えられたマウスからの眼(眼球)のEPA(mg/g組織)含量。
図11は試験食1、2又は3を与えられたマウスからの眼(眼球)のDHA(mg/g組織)含量。
図12は試験食1、2又は3を与えられたマウスからの眼(眼球)のDPAn3(mg/g組織)含量。
図13は試験食1、2又は3を与えられたマウスからの眼(眼球)のC24:5n3(μg/g組織)含量。
図14は試験食1、2又は3を与えられたマウスからの眼(眼球)のC24:6n3(μg/g組織)含量。
図15は試験食1、2又は3を与えられたマウスからの眼(眼球)のC26:5n3(μg/g組織)含量。
図16は試験食1、2又は3を与えられたマウスからの眼(眼球)のC26:6n3(μg/g組織)含量。
図17は試験食1、2又は3を与えられたマウスからの眼(眼球)のC28:8n3(μg/g組織)含量。
【表3】
【0071】
内部標準の重量は0.0974mgである。
【0072】
眼球の組織分析の結果は、コントロール(試験食1)と比較して試験食2及び3を有する食餌を与えられたマウスの眼組織において有意により高いレベルのEPA、DPA及びDHAを示す。試験食2と3との間に有意な差は見られなかった。これらの食餌は同様の量のEPA、DPA及びDHAを含む。
【0073】
(VLCPUFAsを含む)試験食2を与えられたマウスからの、網膜組織を含む、眼の眼球からのPL-抽出物は試験食1及び3を与えられたマウスよりもより高いレベルを示す。特にVLCPUFAsのC26:6及びC28:8においてこれはとても明白である。
【0074】
結論:
超長鎖脂質成分は網膜及び網膜の機能において重要な役割を果たす。本実施例はVLCFAsが眼の組織によって取り込まれ、目の疾病の治療のために用いられうり、一般的に良い目の健康を維持する本発明を支持する。マウスの飼養研究は経口投与したVLC脂肪酸がマイバム及び眼球の組織に取り込まれたことを示した。VLCPUFAsを含む食餌を与えられたマウスはマイバム及び眼の組織内にコントロールよりもより高いレベルのVLCPUFAsを有した。