IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-転写フィルム及び防眩性成形体 図1
  • 特開-転写フィルム及び防眩性成形体 図2
  • 特開-転写フィルム及び防眩性成形体 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184593
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】転写フィルム及び防眩性成形体
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B32B27/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183400
(22)【出願日】2023-10-25
(62)【分割の表示】P 2021158205の分割
【原出願日】2021-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 沙織
(72)【発明者】
【氏名】古田 哲
(72)【発明者】
【氏名】秋田 泰宏
(57)【要約】
【課題】表面保護層を有する転写層を被転写体上に転写できる転写フィルムにおいて、透
明性と防眩性とを両立する。
【解決手段】基材フィルムと転写層とを有する転写フィルムであって、転写層が、表面保
護層及び接着層を有し、表面保護層が、転写層における基材フィルム側の表層を構成し、
転写層を厚さ2mmのポリカーボネート板に転写して得られる試験片のヘイズが5%以上
30%以下であり、試験片の表面保護層面について測定される60度鏡面光沢度が60%
以上120%以下である、転写フィルム。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材フィルムと転写層とを有する転写フィルムであって、
前記転写層が、表面保護層及び接着層を有し、
前記表面保護層が、前記転写層における前記基材フィルム側の表層を構成し、
前記転写層を厚さ2mmのポリカーボネート板に転写して得られる試験片のヘイズが5
%以上30%以下であり、前記試験片の前記表面保護層面について測定される60度鏡面
光沢度が60%以上120%以下である、
転写フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、転写フィルム及び防眩性成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
成形体に耐傷性等を付与するために、成形体の表面に表面保護層を設けることが行われ
ている。表面保護層は、例えば、コーティングにより、又は転写フィルムを用いて形成さ
れている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004-345228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
屋外で使用される成形体は、用途によっては透明性が必要とされており、また、透明性
に加えて、防眩性(アンチグレア性)をさらに有することが望ましい場合がある。本開示
者らは、防眩フィルムを使用することにより防眩性を高めることを検討した。しかしなが
ら、本開示者らの検討によれば、転写フィルムを用いて非常に高い防眩性を屋外用途の成
形体に付与した場合、屋外用途で必要とされる透明性が充分ではないことがわかった。
【0005】
本開示の一つの課題は、表面保護層を有する転写層を被転写体上に転写できる転写フィ
ルムにおいて、透明性と防眩性とを両立することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の転写フィルムは、基材フィルムと転写層とを有し、転写層が、表面保護層及び
接着層を有し、表面保護層が、転写層における基材フィルム側の表層を構成し、転写層を
厚さ2mmのポリカーボネート板に転写して得られる試験片のヘイズが5%以上30%以
下であり、試験片の表面保護層面について測定される60度鏡面光沢度が60%以上12
0%以下である。
本開示の防眩性成形体は、成形体と、成形体の表面の少なくとも一部上に設けられた表
面保護フィルムと、を有し、表面保護フィルムが、上記転写フィルムにおける転写層であ
り、転写層における表面保護層が、防眩性成形体の少なくとも一部の表層を構成する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、表面保護層を有する転写層を被転写体上に転写できる転写フィルムに
おいて、透明性と防眩性とを両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本開示の転写フィルムの一実施形態の模式断面図である。
図2図2は、本開示の転写フィルムの一実施形態の模式断面図である。
図3図3は、本開示の防眩性成形体の一実施形態の模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の転写フィルム等の実施形態について、詳細に説明する。本開示の転写フ
ィルム等は多くの異なる形態で実施でき、以下に例示する実施形態の記載内容に限定して
解釈されない。図面は、説明をより明確にするため、実施形態に比べ、各層の幅、厚さ及
び形状などについて模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の転
写フィルム等の解釈を限定しない。本明細書と各図において、既出の図に関してすでに説
明したものと同様の要素には、同一の符号を付して、詳細な説明を適宜省略することがあ
る。
【0010】
以下の説明において登場する各成分(例えば、樹脂材料、硬化性樹脂、粒子、添加剤、
耐候性向上剤、シリコーン化合物、接着性樹脂及び有機溶剤)は、それぞれ1種用いても
よく、2種以上を用いてもよい。
【0011】
本開示の転写フィルムは、基材フィルムと転写層とを有する。転写層は、基材フィルム
上に、剥離可能に設けられている。転写層は、表面保護層及び接着層を基材フィルムの側
から厚さ方向にこの順に有する。表面保護層は、転写層における基材フィルム側の表層を
構成する。
【0012】
本開示の転写フィルムの一実施形態の構成を、図1及び図2に示す。
図1の転写フィルム1は、基材フィルム10と、基材フィルム10上に剥離可能に設け
られた転写層20と、を有する。転写層20は、表面保護層22及び接着層24を基材フ
ィルム10の側から厚さ方向にこの順に有する。すなわち、基材フィルム10、表面保護
層22及び接着層24は、図1の紙面における上下方向となる厚さ方向に、重ねられてい
る。
【0013】
図2の転写フィルム1における転写層20は、表面保護層22と接着層24との間に、
プライマー層23を有する。転写層20は、表面保護層22、プライマー層23及び接着
層24を基材フィルム10の側から厚さ方向にこの順に有する。すなわち、基材フィルム
10、表面保護層22、プライマー層23及び接着層24は、図2の紙面における上下方
向となる厚さ方向に、重ねられている。
【0014】
本開示の転写フィルムにおいて、転写層は、表面保護層、プライマー層及び接着層とは
異なる他の層をさらに有してもよい。他の層としては、公知の層を適宜選択して用いるこ
とができる。
【0015】
本開示の転写フィルムは、転写層を厚さ2mmのポリカーボネート板に転写して得られ
る試験片のヘイズが5%以上30%以下であり、試験片の表面保護層面について測定され
る60度鏡面光沢度が60%以上120%以下であることを特徴とする。本開示の転写フ
ィルムを用いることにより、ヘイズ及び光沢度のバランスに優れるという光学特性を有す
る転写層を、被転写体である成形体上に形成でき、これにより、成形体の透明性を確保し
ながら防眩性を向上できる。
【0016】
上記光学特性は、屋外で使用され、透明性及び防眩性が要求される成形体に好適である
。例えば、一般道路及び高速道路等において設けられる防音壁又は風防壁を構成する透明
樹脂成形体は、透明性と防眩性とを兼ね備えることが望ましい。ここでの透明性とは、自
動車の運転手の居眠り等を抑制できるように背景の視認性に優れる程度であり、防眩性と
は、周辺環境等に影響を与える太陽光の反射を抑制できる程度である。本開示の転写フィ
ルムを用いて透明樹脂成形体上に上記転写層を転写することにより、透明樹脂成形体の透
明性を確保しながら、防眩性を向上できる。
【0017】
本開示において、転写フィルムにおける、ヘイズ、60度鏡面光沢度及び全光線透過率
などの光学特性は、以下の様にして測定される。まず、被転写体として、厚さ2mmのポ
リカーボネート板(ヘイズ:0.8%、全光線透過率:88.4%、60度鏡面光沢度:
170.0%)を準備する。このポリカーボネート板の片面に、転写フィルムの接着層が
ポリカーボネート板に接するように転写フィルムを貼付する。次に、転写フィルムの転写
層から基材フィルムを剥離する。このようにして、ポリカーボネート板と、ポリカーボネ
ート板上に転写された転写層と、を有する試験片を得る。上記表面保護層は、試験片の一
方側の表層を構成する。得られた試験片を用いて、ヘイズ、60度鏡面光沢度及び全光線
透過率などの光学特性を評価する。
【0018】
本開示の転写フィルムにおいて、後述する耐候性試験前の転写フィルムがヘイズ及び6
0度鏡面光沢度に係る要件を満たしていればよい。耐候性の観点から、本開示の転写フィ
ルムにおいて、後述する耐候性試験後の転写フィルムがヘイズ及び60度鏡面光沢度に係
る要件を満たしていることが好ましい。
【0019】
本開示の転写フィルムにおいて上記ヘイズは、5%以上30%以下であり、好ましくは
5%以上26%以下、より好ましくは5%以上20%以下、さらに好ましくは5%以上1
5%以下である。ヘイズが上記範囲にあると、例えば、表面保護層の防眩性及び透明性の
バランスが優れる。本開示においてヘイズは、JIS K7105に準拠して、ポリカー
ボネート板が受光器側を向き、表面保護層が光源側を向くように試験片を配置して測定す
る。
【0020】
本開示の転写フィルムにおいて上記60度鏡面光沢度(Gs60°)は、60%以上1
20%以下であり、好ましくは60%以上105%以下、より好ましくは80%以上10
5%以下である。Gs60°が上記範囲にあると、例えば、表面保護層による防眩性及び
透明性のバランスが優れる。本開示においてGs60°は、JIS Z8741に準拠し
て、入射角60度で、試験片の表面保護層面について測定する。
【0021】
本開示の転写フィルムにおいて上記全光線透過率は、好ましくは80%以上、より好ま
しくは82%以上、さらに好ましくは84%以上である。全光線透過率は高い方が透明性
の観点から好ましいが、その上限は例えば98%又は95%でもよい。本開示において全
光線透過率は、JIS K7105に準拠して測定する。
【0022】
本開示の転写フィルムにおいて表面保護層の基材フィルム側の表面における最大高さR
zは、好ましくは0.5μm以上3μm以下、より好ましくは0.6μm以上2.5μm
以下、さらに好ましくは0.7μm以上1.8μm以下である。これにより、例えば、表
面保護層による防眩性及び透明性のバランスをより向上できる。
【0023】
本開示の転写フィルムにおいて表面保護層の基材フィルム側の表面における算術平均粗
さRaは、好ましくは2μm以下、より好ましくは1.5μm以下、さらに好ましくは1
μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。Raの下限値は特に限定されないが、
例えば0.05μmでもよい。Raが上記範囲にあると、例えば、表面保護層の防眩性が
優れる。
【0024】
本開示の転写フィルムにおいて表面保護層の基材フィルム側の表面における粗さ曲線要
素の平均長さRSmは、好ましくは10μm以上60μm以下、より好ましくは20μm
以上55μm以下、さらに好ましくは30μm以上50μm以下である。
以上のRz、Ra及びRSmはJIS B0601-2001に準拠して測定される。
【0025】
本開示の転写フィルムでは、上記転写層が、被転写体である成形体上に表面保護フィル
ムとして転写される。本開示の転写フィルムを用いることにより、例えば、成形体に優れ
た防眩性、耐傷性及び耐候性などを付与できる。本開示の転写フィルムは、屋外用途の成
形体に対して、例えば、直射日光又は風雨に晒され、厳しい耐候性が求められる用途に用
いられる成形体に対して、好適に適用できる。
【0026】
本開示の転写フィルムを用いることにより、転写プロセスという有機溶剤の排出がない
環境にやさしいプロセスで、成形体の表面の少なくとも一部上に容易に表面保護層を形成
できる。
【0027】
以下、本開示の転写フィルムの構成について詳細に説明する。
【0028】
本開示の転写フィルムは、基材フィルムを有する。
基材フィルムとしては、例えば、樹脂材料により構成されるフィルム(以下「樹脂フィ
ルム」ともいう)を使用できる。樹脂材料としては、例えば、ポリエステル、ポリオレフ
ィン、ポリスチレン、ビニル樹脂、(メタ)アクリル樹脂、ポリアミド、ポリイミド及び
ポリカーボネートが挙げられる。本開示において、「(メタ)アクリル」は、「アクリル
」及び「メタクリル」の両方を包含し、「(メタ)アクリレート」は、「アクリレート」
及び「メタクリレート」の両方を包含する。
【0029】
基材フィルムとしては、ポリエステルフィルム及びポリオレフィンフィルムが好ましい
。基材フィルムがこれらのフィルムであることにより、例えば、該フィルム上に表面保護
層などを容易に形成できる。
【0030】
ポリエステルとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレ
ンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)及びポリエチレンテ
レフタレート-イソフタレート共重合体が挙げられる。これらの中でも、転写フィルムを
製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、PE
T及びPBTが好ましく、PETがより好ましい。
【0031】
ポリオレフィンとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチ
レン-プロピレン共重合体及びエチレン-プロピレン-ブテン共重合体が挙げられる。こ
れらの中でも、転写フィルムを製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生
じにくいという観点から、ポリプロピレンが好ましい。
【0032】
樹脂フィルムは、延伸フィルムでもよく、未延伸フィルムでもよいが、延伸フィルムで
あることが好ましい。延伸フィルムにおける機械方向(MD)及び/又は幅方向(TD)
における延伸倍率は、例えば5倍以上30倍以下である。樹脂フィルムが延伸フィルムで
あることにより、例えば、転写フィルムを製造する際の加熱処理に起因する樹脂フィルム
の熱収縮や、電離放射線の照射による架橋処理に起因する樹脂フィルムの収縮を抑制でき
、転写フィルムの寸法安定性を高められる。
【0033】
延伸フィルムは、一軸延伸フィルムでもよく、二軸延伸フィルムでもよい。転写フィル
ムを製造する際の熱収縮や、電離放射線の照射による収縮が生じにくいという観点から、
二軸延伸フィルムが好ましい。
【0034】
基材フィルムのヘイズは、好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上80%以
下、さらに好ましくは25%以上60%以下である。ヘイズが上記範囲にあると、例えば
、表面保護層へ良好な防眩性及び透明性を付与できる。
【0035】
基材フィルムの60度鏡面光沢度(Gs60°)は、好ましくは140%以下、より好
ましくは25%以上120%以下、さらに好ましくは30%以上110%以下、よりさら
に好ましくは40%以上100%以下である。Gs60°が上記範囲にあると、例えば、
表面保護層へ良好な防眩性及び透明性を付与できる。
【0036】
基材フィルムの全光線透過率は、好ましくは75%以上、より好ましくは80%以上、
さらに好ましくは82%以上である。全光線透過率の上限は特に限定されないが、例えば
98%又は95%でもよい。
【0037】
以上の光学特性を有する基材フィルム上に表面保護層を形成することにより、例えば、
表面保護層の表面を基材フィルムの表面形状により賦形でき、したがって表面保護層によ
る防眩性を向上できる。これにより、賦形エンボスロールを使用する場合などと比べて、
簡便な方法で防眩性を向上できる。
【0038】
基材フィルムにおける表面保護層が設けられる表面の最大高さRzは、好ましくは0.
4μm以上2.7μm以下、より好ましくは0.5μm以上2.3μm以下、さらに好ま
しくは0.7μm以上1.8μm以下である。
【0039】
基材フィルムにおける表面保護層が設けられる表面の算術平均粗さRaは、好ましくは
0.03μm以上0.4μm以下、より好ましくは0.05μm以上0.3μm以下、さ
らに好ましくは0.08μm以上0.2μm以下である。
【0040】
基材フィルムにおける表面保護層が設けられる表面の粗さ曲線要素の平均長さRSmは
、好ましくは30.0μm以上70.0μm以下、より好ましくは35.0μm以上60
.0μm以下、さらに好ましくは40.0μm以上50.0μm以下である。
以上のRz、Ra及びRSmはJIS B0601-2001に準拠して測定される。
【0041】
以上の凹凸構造を表面に有する基材フィルム上に表面保護層を形成することにより、例
えば、表面保護層の表面を上記凹凸構造により賦形でき、したがって表面保護層による防
眩性を向上できる。これにより、賦形エンボスロールを使用する場合などと比べて、簡便
な方法で防眩性を向上できる。
【0042】
基材フィルムは、単層構造を有してもよく、多層構造を有してもよい。基材フィルムは
、例えば、樹脂フィルムの単層体でもよく、樹脂フィルムの積層体でもよい。樹脂フィル
ムの積層体は、例えば、ドライラミネーション法、ウェットラミネーション法又はエクス
トリュージョン法を利用することにより作製できる。
【0043】
基材フィルムにおける表面保護層が設けられる表面には、必要に応じて、公知の離型処
理が施されていてもよく、シリコーン樹脂などの離型層が設けられていてもよい。これに
より、例えば、転写時における表面保護層と基材フィルムとの間の離型性を向上できる。
【0044】
基材フィルムの厚さは、好ましくは5μm以上200μm以下、より好ましくは10μ
m以上100μm以下である。基材フィルムが多層構造を有する場合は、多層構造全体で
上記厚さの範囲にあることが好ましい。
【0045】
本開示の転写フィルムは、表面保護層を有する。
表面保護層は、被転写体である成形体上に接着層を介して転写された後、得られる防眩
性成形体の表層を構成する層である。表面保護層は、例えば、被転写体に防眩性を付与す
る層であり、一実施形態においてさらに耐傷性及び耐候性を付与する層であってもよい。
表面保護層は、一実施形態において、基材フィルムと接している。
【0046】
表面保護層は、一実施形態において、硬化性樹脂の硬化物を含有する。表面保護層は、
一実施形態において、硬化性樹脂を含有する硬化性樹脂組成物の硬化物により構成される
。これにより、例えば、耐傷性を向上できる。
【0047】
硬化性樹脂としては、例えば、熱硬化性樹脂及び電離放射線硬化性樹脂が挙げられる。
これらの中でも、耐傷性及び耐候性の向上という観点から、電離放射線硬化性樹脂が好ま
しい。
【0048】
熱硬化性樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル、熱硬化性ポリウレタン、熱硬化
性(メタ)アクリル樹脂、エポキシ樹脂、アミノアルキッド樹脂、メラミン樹脂、グアナ
ミン樹脂及び尿素樹脂が挙げられる。
【0049】
電離放射線硬化性樹脂は、電離放射線の照射を受けて硬化する樹脂である。電離放射線
としては、例えば、紫外線(UV)、X線及びγ線などの電磁波;電子線(EB)、α線
及びイオン線などの荷電粒子線が挙げられる。これらの中でも、紫外線及び電子線が好ま
しく、電子線がより好ましい。すなわち、表面保護層は、電子線照射により硬化した樹脂
層であることが好ましい。
【0050】
電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、重合性オリゴマー及び重合性プレポリマーが
挙げられる。重合性オリゴマー及び重合性プレポリマーとしては、例えば、分子中にラジ
カル重合性不飽和基を有するオリゴマーやプレポリマーが挙げられ、具体的には、ポリエ
ーテル系ウレタン(メタ)アクリレート、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリレ
ート、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリレート及びカプロラクトン系ウレタン(メ
タ)アクリレートなどのウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート
、ポリエステル(メタ)アクリレート、ポリエーテル(メタ)アクリレート、アクリル(
メタ)アクリレート並びにポリブタジエン(メタ)アクリレートが挙げられる。これらの
中でも、ウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
【0051】
重合性オリゴマー及び重合性プレポリマーとしては、分子中にラジカル重合性不飽和基
を複数有する、多官能のオリゴマーやプレポリマーが好ましい。ラジカル重合性不飽和基
数は、耐傷性を向上でき、また硬化収縮が生じにくいという観点から、好ましくは2以上
15以下、より好ましくは2以上8以下、さらに好ましくは2以上6以下である。
【0052】
表面保護層における硬化性樹脂の硬化物の含有割合は、好ましくは50質量%以上、よ
り好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。これにより、例
えば、表面保護層の耐傷性及び耐候性をより向上できる。
【0053】
電離放射線硬化性樹脂として紫外線硬化性樹脂を用いる場合には、紫外線硬化性樹脂と
ともに光重合開始剤を用いることが好ましい。光重合開始剤としては、例えば、アセトフ
ェノン系化合物、ベンゾイン系化合物、アシルホスフィンオキシド系化合物、ベンゾフェ
ノン系化合物、チオキサントン系化合物及びアミノベンゾフェノン系化合物が挙げられる
。光重合開始剤の使用量は、紫外線硬化性樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1
質量部以上5質量部以下である。
【0054】
硬化性樹脂組成物の粘度を調整するなどの目的で、メチル(メタ)アクリレートなどの
単官能性(メタ)アクリレートを希釈剤として用いてもよい。希釈剤としては、単官能性
(メタ)アクリレートの他、通常の有機溶剤を用いてもよい。
【0055】
表面保護層は、粒子をさらに含有してもよい。表面保護層中に粒子を含有させることに
より、例えば、表面保護層の光沢度及びヘイズなどの光学特性、したがって防眩性を微調
整できる。例えば、基材フィルムの表面凹凸構造により表面保護層の表面を賦形して、表
面保護層による防眩性を調整し、さらに、表面保護層中に粒子を含有させて、表面保護層
による防眩性を微調整してもよい。
【0056】
粒子としては、例えば、有機粒子及び無機粒子が挙げられる。有機粒子としては、例え
ば、(メタ)アクリル樹脂粒子、ポリカーボネート樹脂粒子及びスチレン樹脂粒子などの
合成樹脂粒子が挙げられる。無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、ジルコニア
、チタニア、カオリナイト、酸化鉄、ダイヤモンド及び炭化ケイ素が挙げられる。粒子の
中でも、表面保護層による防眩性を好適に調整でき、透明性に優れ、耐傷性を向上できる
という観点から、(メタ)アクリル樹脂粒子が好ましい。
【0057】
粒子の形状は、例えば、球状、楕円体状、多面体状及び鱗片形状が挙げられる。表面保
護層による防眩性を調整しやすく、また耐傷性を向上しやすいという観点から、球状が好
ましい。
【0058】
粒子の平均粒子径は、好ましくは1μm以上10μm以下、より好ましくは1.5μm
以上8μm以下である。平均粒子径が上記範囲内であると、透明性が確保されるとともに
、優れた防眩性及び耐傷性が得られる。平均粒子径が大きい粒子を用いると、表面保護層
のヘイズが大きくなり、また光沢度が小さくなる傾向にある。
【0059】
本開示において、平均粒子径は、各層の厚さ方向の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)
で観察し、無作為に選択した100個の粒子の非凝集体について測定した粒子径の平均値
(算術平均径)を意味する。
【0060】
表面保護層の厚さは、粒子の平均粒子径の好ましくは0.3倍以上4倍以下、より好ま
しくは0.4倍以上3.5倍以下、さらに好ましくは0.5倍以上3倍以下である。この
ような設計であると、例えば、防眩性及び透明性のバランスをより向上できる。
【0061】
表面保護層における粒子の含有量は、硬化性樹脂の硬化物100質量部に対して、好ま
しくは1質量部以上20質量部以下、より好ましくは3質量部以上18質量部以下、さら
に好ましくは5質量部以上15質量部以下である。粒子の含有量が上記範囲内であると、
例えば、防眩性、耐傷性及び耐候性をより向上できる。粒子の含有量が上限値以下であれ
ば、例えば、耐候性の低下を抑制できる。
【0062】
表面保護層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、耐候性向上剤、シ
リコーン化合物、重合禁止剤、架橋剤、帯電防止剤、接着性向上剤、酸化防止剤、レベリ
ング剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、防汚剤、消泡剤及び充填剤が挙げら
れる。
【0063】
表面保護層は、耐候性向上剤(以下「耐候剤」ともいう)を含有してもよい。屋外用途
の成形体は直射日光や風雨に日々晒されることから、耐候性が求められる。耐候剤を用い
ることにより、例えば、表面保護層の耐候性を向上でき、よって表面保護層の凹凸感を維
持でき、黄変を抑制でき、層間密着性を向上できる。これにより、後述する防眩性成形体
を屋外において長期にわたって使用できる。
【0064】
耐候剤としては、例えば、紫外線吸収剤及び光安定剤が挙げられる。
紫外線吸収剤は、有害な紫外線を吸収し、防眩性成形体の長期にわたる耐候性を向上さ
せる。光安定剤は、これ自体は紫外線をほとんど吸収しないが、紫外線により生じる有害
なフリーラジカルを効率良く捕捉する。
【0065】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫
外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、オキシベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サ
リチル酸エステル系紫外線吸収剤及びシアノ(メタ)アクリレート系紫外線吸収剤などの
有機系紫外線吸収剤;二酸化チタン、酸化セリウム及び酸化亜鉛などの無機系紫外線吸収
剤が挙げられる。これらの中でも、有機系紫外線吸収剤が好ましく、トリアジン系紫外線
吸収剤がより好ましい。
【0066】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線
吸収剤が挙げられる。ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、
2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカルボニルエトキシ]フェニル)-4
,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2-[4-[(2-ヒ
ドロキシ-3-ドデシルオキシプロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6
-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[2-ヒ
ドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3,5
-トリアジン、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-トリデシルオキシプロピル)オキシ
]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,
5-トリアジン、2-(4,6-ジフェニル-1,3,5-トリアジン-2-イル)-5
-[2-(2-エチルヘキサノイルオキシ)エトキシ]フェノール、及び2-[4-[(
2-ヒドロキシ-3-(2’-エチル)ヘキシル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]
-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニル)-1,3,5-トリアジンが挙げられる。
【0067】
表面保護層における紫外線吸収剤の含有量は、硬化性樹脂の硬化物100質量部に対し
て、好ましくは0.1質量部以上10質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上7質
量部以下、さらに好ましくは0.3質量部以上5質量部以下である。これにより、例えば
、表面保護層の耐候性を向上できる。紫外線吸収剤の含有量が上限値以下であれば、例え
ば、表面保護層の透明性の低下や、紫外線吸収剤のブリードアウトによる表面保護層とプ
ライマー層との密着性の低下を抑制できる。
【0068】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)が挙げられる。
ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、1,2,2,6,6-ペンタメチル-
4-ピペリジニル(メタ)アクリレート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4
-ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セ
バケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、
メチル(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジニル)セバケート、2,4-
ビス[N-ブチル-N-(1-シクロヘキシルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピ
ペリジン-4-イル)アミノ]-6-(2-ヒドロキシエチルアミン)-1,3,5-ト
リアジン、2-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2'-n
-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)、ビス(
1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチロ
キシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、及びテトラキス(
2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,2,3,4-ブタンテトラカル
ボキシレートが挙げられる。
【0069】
表面保護層における光安定剤の含有量は、硬化性樹脂の硬化物100質量部に対して、
好ましくは1質量部以上10質量部以下、より好ましくは2質量部以上8質量部以下、さ
らに好ましくは3質量部以上6質量部以下である。これにより、例えば、表面保護層の耐
候性を向上できる。光安定剤の含有量が上限値以下であれば、例えば、表面保護層の透明
性の低下や、光安定剤のブリードアウトによる表面保護層とプライマー層との密着性の低
下を抑制できる。
【0070】
表面保護層は、シリコーン化合物を含有してもよい。これにより、例えば、表面保護層
の耐候性及び耐傷性を向上させ、優れた透明性を得ることができる。
【0071】
シリコーン化合物は、アミノ基、エポキシ基、メルカプト基、カルボキシ基、ヒドロキ
シ基、(メタ)アクリロイル基及びアリル基などの反応性官能基を有しないシリコーン化
合物でもよく、反応性官能基を有するシリコーン化合物でもよい。非反応性シリコーン化
合物としては、例えば、ポリシロキサンからなるシリコーンオイル、ポリエーテル変性シ
リコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイ
ル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高
級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、及びフェニル変性シリコーンオイルが挙げられる
。反応性官能基を有するシリコーン化合物としては、例えば、表面保護層を構成する樹脂
と結合でき、長期使用によるブリードアウトが抑制され長期耐候性を保持できるという観
点から、(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン化合物が挙げられる。
【0072】
表面保護層におけるシリコーン化合物の含有量は、硬化性樹脂の硬化物100質量部に
対して、好ましくは0.05質量部以上30質量部以下、より好ましくは0.05質量部
以上10質量部以下、さらに好ましくは0.1質量部以上5質量部以下である。
【0073】
硬化性樹脂組成物は、例えばその塗布性を向上させるという観点から、有機溶剤を含有
してもよい。有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、ヘキサン及びオクタンな
どの炭化水素系溶剤;エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノ
ール、オクタノール及びデカノールなどのアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケ
トン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン及びシクロヘキサノンなどのケトン
系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、酪酸エチル、酪酸ブチル、ステアリン酸
ブチル、安息香酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル及び乳酸ブチルなどのエステル系溶剤
が挙げられる。
【0074】
表面保護層の厚さは、好ましくは1μm以上20μm以下、より好ましくは2μm以上
10μm以下、さらに好ましくは2μm以上6μm以下である。これにより、例えば、被
転写体に優れた防眩性、耐傷性及び耐候性を付与できる。本開示において、各層の厚さは
、各層の断面の走査型電子顕微鏡(SEM)写真により測定できる。
【0075】
表面保護層は、例えば、以下のようにして形成する。基材フィルム上に硬化性樹脂組成
物を所望の厚さで塗布し、有機溶剤を用いた場合は乾燥して有機溶剤を除去して、塗膜(
未硬化樹脂層)を形成する。次いで、熱硬化性樹脂を用いた場合は、硬化に必要な温度で
該塗膜を加熱して硬化させる。電離放射線硬化性樹脂を用いた場合は、該塗膜に電離放射
線を照射して硬化させる。このようにして、表面保護層を形成できる。硬化処理は、硬化
性樹脂組成物の塗布後であって他の層の形成前に行ってもよく、他の層の形成後に行って
もよい。
【0076】
硬化性樹脂組成物を基材フィルム上に塗布する方法としては、例えば、ディッピング法
、フローコート法、スプレー法、スピンコート法、グラビアコート法、マイクログラビア
コート法、ダイコート法、スリットリバース法、ロールコート法、リバースロールコート
法、コンマコート法、ブレードコート法、エアーナイフコート法、オフセット法及びバー
コート法が挙げられる。
【0077】
電離放射線として電子線を用いる場合、その加速電圧については、用いる樹脂や層の厚
さに応じて適宜選定し得るが、70kV以上300kV以下の加速電圧で未硬化樹脂層を
硬化させることが好ましい。電子線の照射線量は、好ましくは0.5Mrad以上30M
rad以下、より好ましくは1Mrad以上20Mrad以下、さらに好ましくは3Mr
ad以上15Mrad以下である。
【0078】
電子線源としては、例えば、コックロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器
型、絶縁コア変圧器型、あるいは直線型、ダイナミトロン型、高周波型などの各種電子線
加速器を用いることができる。
【0079】
電離放射線として紫外線を用いる場合、例えば、波長190nm以上380nm以下の
紫外線を少なくとも照射することが好ましい。紫外線源としては、例えば、キセノンラン
プ、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク灯
及びタングステンランプが挙げられる。
【0080】
本開示の転写フィルムは、表面保護層と接着層との間に、プライマー層を有してもよい
。プライマー層は、例えば、表面保護層と接着層との密着性を向上させる機能を有する。
【0081】
プライマー層は、一実施形態において、樹脂材料を含有する。
樹脂材料としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ブチラール樹脂、
ポリオレフィン、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体及びポリエス
テルが挙げられる。これらの中でも、ウレタン樹脂が好ましい。
【0082】
ウレタン樹脂としては、耐候性及び耐久性という観点から、ポリウレタン高分子鎖中に
(メタ)アクリル骨格を有するウレタン樹脂が好ましい。ポリウレタン高分子鎖中に(メ
タ)アクリル骨格を有するウレタン樹脂としては、例えば、ウレタン成分と(メタ)アク
リル成分との共重合体であるウレタン(メタ)アクリル共重合体、ポリウレタンを構成す
るポリオール成分又はポリイソシアネート成分としてヒドロキシ基又はイソシアネート基
を有する(メタ)アクリル樹脂が用いられた樹脂が挙げられる。これらの中でも、ウレタ
ン(メタ)アクリル共重合体が好ましく、ウレタン(メタ)アクリル共重合体としては、
例えば、ウレタン(メタ)アクリルブロック共重合体が好ましい。
【0083】
プライマー層と表面保護層との密着性という観点から、ウレタン(メタ)アクリル共重
合体は、ポリウレタン高分子鎖中にポリカーボネート骨格又はポリエステル骨格をさらに
有してもよい。このようなウレタン(メタ)アクリル共重合体としては、例えば、ポリカ
ーボネート系ウレタン成分と(メタ)アクリル成分との共重合体であるポリカーボネート
系ウレタン(メタ)アクリル共重合体、及びポリエステル系ウレタン成分と(メタ)アク
リル成分との共重合体であるポリエステル系ウレタン(メタ)アクリル共重合体が挙げら
れる。
【0084】
ウレタン(メタ)アクリル共重合体は、例えば、1分子中に少なくとも2個のヒドロキ
シ基を有する(メタ)アクリル樹脂にポリオール及びポリイソシアネートを反応させる方
法(特開平6-100653号公報等参照)や、不飽和二重結合を両末端に有するウレタ
ンプレポリマーに(メタ)アクリルモノマーを反応させる方法(特開平10-1524号
公報等参照)によって得ることができる。
【0085】
ウレタンプレポリマーとしては、例えば、ポリカーボネートジオールとジイソシアネー
トとを反応させて得られるポリカーボネート系ウレタンプレポリマー、及びポリエステル
ジオールとジイソシアネートとを反応させて得られるポリエステル系ウレタンプレポリマ
ーが挙げられる。ジイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート
などの脂肪族系イソシアネート;イソホロンジイソシアネート及び水素添加キシリレンジ
イソシアネートなどの脂環式系イソシアネートが挙げられる。(メタ)アクリルモノマー
としては、例えば、(メタ)アクリル酸、及びアルキル基の炭素数が1以上6以下の(メ
タ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
【0086】
ウレタン樹脂としては、具体的には、ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共
重合体、ポリエステル系ウレタン(メタ)アクリル共重合体、ポリエーテル系ウレタン(
メタ)アクリル共重合体、及びカプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリル共重合体が挙
げられる。これらの樹脂材料は、耐候性、さらには表面保護層と接着層との密着性を向上
させる観点から好ましい。
【0087】
ウレタン樹脂において、ウレタン成分/(メタ)アクリル成分(質量比)は、好ましく
は20/80以上99/1以下、より好ましくは50/50以上95/5以下、さらに好
ましくは70/30以上95/5以下である。これにより、例えば耐候性をより向上でき
る。ウレタン樹脂における(メタ)アクリル成分の含有量は、ウレタン樹脂の総質量当た
り、(メタ)アクリル骨格を構成するモノマー単位が占める割合である。ウレタン樹脂に
おける(メタ)アクリル成分の含有量は、ウレタン樹脂のNMRスペクトルを測定し、全
ピーク面積に対する(メタ)アクリル成分に帰属されるピーク面積の割合を求めることに
よって算出される。
【0088】
ウレタン樹脂の重量平均分子量は、好ましくは10,000以上100,000以下、
より好ましくは30,000以上80,000以下である。これにより、例えば耐候性を
より向上できる。本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグ
ラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求める。
【0089】
プライマー層における樹脂材料の含有割合は、例えば50質量%以上である。
【0090】
プライマー層は、粒子をさらに含有してもよい。これにより、例えば、転写フィルムの
生産工程又は保管に際して、接着層と基材フィルムとが密着するブロッキング現象の発生
を抑制できる。
【0091】
粒子としては、例えば、無機粒子及び有機粒子が挙げられる。無機粒子としては、例え
ば、例えば、シリカ、アルミナ、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、炭酸カルシウム及
びタルクなどの無機粒子が挙げられる。
【0092】
粒子の粒子形状は、例えば、球状、楕円体状、多面体状及び鱗片形状が挙げられる。
【0093】
粒子の平均粒子径は、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.5
μm以上8μm以下、さらに好ましくは0.5μm以上5μm以下である。平均粒子径が
上記範囲内であると、透明性が確保されるとともに、優れたブロッキング防止性が得られ
る。
【0094】
プライマー層における粒子の含有量は、樹脂材料100質量部に対して、好ましくは0
.1質量部以上30質量部以下、より好ましくは1質量部以上25質量部以下、さらに好
ましくは3質量部以上20質量部以下である。
【0095】
プライマー層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、耐候剤、耐摩耗
性向上剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリング剤、チクソ性付与剤、
カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤及び着色剤が挙げられる。
【0096】
プライマー層は、耐候剤を含有してもよい。これにより、例えば、プライマー層の耐候
性を向上でき、得られる防眩性成形体を屋外において長期にわたって使用できる。耐候剤
としては、例えば、紫外線吸収剤及び光安定剤が挙げられる。紫外線吸収剤及び光安定剤
の詳細は上述したとおりである。
【0097】
紫外線吸収剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂材料100質量部に対して、好
ましくは0.1質量部以上50質量部以下、より好ましくは3質量部以上40質量部以下
、さらに好ましくは10質量部以上35質量部以下である。
【0098】
光安定剤の含有量は、プライマー層を構成する樹脂材料100質量部に対して、好まし
くは0.1質量部以上15質量部以下、より好ましくは1質量部以上15質量部以下、さ
らに好ましくは3質量部以上10質量部以下である。
【0099】
プライマー層用樹脂組成物は、樹脂材料の硬化を促進する観点から、例えば、イソシア
ネート硬化剤を含有してもよい。イソシアネート硬化剤としては、例えば、トリレンジイ
ソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、
キシリレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート及びナフタレ
ン-1,5-ジイソシアネートが挙げられる。
【0100】
プライマー層用樹脂組成物におけるイソシアネート硬化剤の使用量は、表面保護層と接
着層との密着性を向上させるという観点から、樹脂材料100質量部に対して、好ましく
は1質量部以上40質量部以下、より好ましくは3質量部以上30質量部以下、さらに好
ましくは5質量部以上30質量部以下である。
【0101】
プライマー層の厚さに、好ましくは0.1μm以上10μm以下、より好ましくは0.
1μm以上5μm以下である。これにより、例えば、表面保護層と接着層との密着性をよ
り向上できる。プライマー層の厚さは、接着層の厚さよりも小さいことが好ましい。
【0102】
プライマー層は、例えば、上述した成分及び必要に応じて有機溶剤を含有するプライマ
ー層用樹脂組成物を、公知の印刷方法又は塗布方法によって表面保護層上に塗布し、必要
に応じて乾燥及び硬化させることにより形成できる。
【0103】
表面保護層とプライマー層との間の接着性を向上させるために、プライマー層の形成前
に、表面保護層を表面処理してもよい。表面処理の方法としては、例えば、コロナ放電処
理、プラズマ処理、クロム酸化処理、火炎処理、熱風処理、及びオゾン/紫外線処理が挙
げられる。
【0104】
表面保護層とプライマー層との接着性を向上させるために、表面保護層の架橋硬化を半
硬化の状態にとどめ、その後、プライマー層用樹脂組成物を半硬化状態の表面保護層に塗
布した後、電離放射線を照射して表面保護層を完全硬化させてもよい。
【0105】
本開示の転写フィルムは、接着層を有する。
接着層は、転写フィルムを被転写体の表面に密着させる機能を有する。一実施形態にお
いて、接着層は、転写層における基材フィルム側とは反対側の表層を構成する。接着層は
、転写後に被転写体と接する層である。これにより、転写層を被転写体に良好に転写して
貼付できる。
【0106】
本開示において、転写フィルムを、接着層が被転写体の表面と接するように被転写体に
貼付し、次いで基材フィルムを剥離することにより、転写フィルムから表面保護層を被転
写体上に密着性良く転写できる。
【0107】
接着層に使用できる接着性樹脂としては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリオレフ
ィン、塩素化ポリオレフィン、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリアミド、ポリエス
テル、塩素化ゴム、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂及びスチレン樹脂などの熱融着性樹脂が
好ましい。これらの中でも、耐候性の向上という観点から、ポリメタクリル酸メチルなど
の(メタ)アクリル樹脂が好ましい。
【0108】
接着層における接着性樹脂の含有割合は、好ましくは50質量%以上、より好ましくは
60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
【0109】
接着層は、添加剤を含有してもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤及び光安
定剤等の耐候剤、耐摩耗性向上剤、赤外線吸収剤、帯電防止剤、接着性向上剤、レベリン
グ剤、チクソ性付与剤、カップリング剤、可塑剤、消泡剤、充填剤並びに着色剤が挙げら
れる。
【0110】
接着層は、耐候剤を含有してもよい。耐候剤の詳細は上述したとおりである。
接着層における紫外線吸収剤の含有量は、接着性樹脂100質量部に対して、0.1質
量部以上25質量部以下でもよく、1質量部以上20質量部以下でもよく、3質量部以上
15質量部以下でもよい。接着層における光安定剤の含有量は、接着性樹脂100質量部
に対して、0.05質量部以上7質量部以下でもよく、0.5質量部以上5質量部以下で
もよく、1質量部以上5質量部以下でもよい。
【0111】
接着層の厚さは、好ましくは1μm以上12μm以下、より好ましくは1μm以上6μ
m以下である。これにより、例えば、転写層を被転写体に良好に接着でき、また、優れた
透明性を確保できる。
【0112】
接着層の厚さは、プライマー層の厚さよりも大きいことが好ましい。
【0113】
接着層は、例えば、表面保護層又はプライマー層上に、接着層を構成する成分を含む組
成物(接着層用組成物)を塗布し、必要に応じて乾燥させることにより形成できる。
【0114】
本開示の転写フィルムは、接着層上にカバーフィルム(保護フィルム)を有してもよい
。具体的には、接着層上にカバーフィルムが貼付されていてもよい。これにより、接着層
表面を良好に保護でき、転写フィルムを保管する上で好ましい。転写フィルムの使用時に
は、カバーフィルムを接着層から剥がして接着層を露出させ、この接着層を介して被転写
体に転写フィルムを貼付する。
【0115】
カバーフィルムは、例えば、ポリオレフィン等の樹脂材料からなる。
【0116】
本開示の防眩性成形体は、成形体と、該成形体の表面の少なくとも一部上に設けられた
表面保護フィルムとを有する。表面保護フィルムは、本開示の転写フィルムにおける転写
層であり、転写層に含まれる表面保護層が、防眩性成形体の少なくとも一部の表層を構成
する。
【0117】
一実施形態において、図3に示すように、防眩性成形体2は、成形体30と、成形体3
0の表面上に設けられた転写層20とを有する。図3の実施形態では、転写層20は、接
着層24と、プライマー層23と、表面保護層22とを、成形体30の側からこの順に有
する。したがって、防眩性成形体2は、成形体30上に、接着層24、プライマー層23
及び表面保護層22をこの順に有する。基材フィルム10は、防眩性成形体2を使用する
際に剥離されていればよい。
【0118】
上記成形体は、本開示の転写フィルムの転写層が転写される被転写体である。
上記成形体において本開示の転写フィルムの転写層が転写される箇所の材質としては、
例えば、樹脂材料が挙げられる。樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート;ポリメ
チル(メタ)アクリレート及びポリ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル樹脂;
ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン;環状ポリオレフィン;ポリスチ
レン;アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)共重合体;ポリビニルアルコ
ール、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル及びポリフッ化ビニルなどのビニル樹脂;ポリエ
チレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル;ポリアミド、
ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン及びポリエーテ
ルイミドが挙げられる。
【0119】
上記成形体としては、樹脂材料により構成される樹脂成形体が好ましく、透明樹脂材料
により構成される透明樹脂成形体がより好ましい。透明樹脂成形体の全光線透過率は、例
えば50%以上であり、70%以上でもよく、80%以上でもよい。
【0120】
透明樹脂材料としては、例えば、ポリカーボネート;ポリメチルメタクリレートなどの
(メタ)アクリル樹脂;ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなど
のポリエステル;ABS共重合体が挙げられる。これらの中でも、ポリカーボネートは、
透明性及び耐衝撃性に優れていることから好ましい。
【0121】
上記成形体は、例えば、屋外用途、特に日々直射日光や風雨に晒されるために耐候性が
求められる用途の成形体である。上記成形体としては、例えば、建築構造物の外装材、車
両、船舶及び航空機の外装材、産業用機械の外装材、太陽電池カバー又は太陽電池基板の
部材、並びに各種レンズが挙げられる。
【0122】
建築構造物の外装材(建材)としては、例えば、一般道路及び高速道路等における防音
壁又は風防壁を構成する透明樹脂成形体、窓材、バルコニーの仕切り板、テラス又はカー
ポートにおける屋根部材、農業用ハウスを構成する透明樹脂成形体が挙げられる。
【0123】
本開示の防眩性成形体は、一実施形態において、透明性及び防眩性に優れることから、
一般道路及び高速道路等における防音壁又は風防壁を構成する透明樹脂成形体として特に
好適である。
【0124】
車両の外装材としては、例えば、サイドウインドウ、リアウインドウ、ルーフウインド
ウ、フロントウインドウ及びクォーターウインドウなどの窓材;ヘッドライトカバー、ウ
インカーランプレンズ、リフレクターが挙げられる。車両としては、例えば、自動車、鉄
道車両、建設機械、及びゴルフカートなどの軽車両が挙げられる。産業用機械の外装材と
しては、例えば、工作機械における視認用窓材が挙げられる。レンズとしては、例えば、
信号機のレンズが挙げられる。
【0125】
本開示の防眩性成形体は、例えば、本開示の転写フィルムを用いて、該転写フィルムの
転写層を成形体の表面の少なくとも一部上に転写することで得られる。より具体的には、
本開示の転写フィルムにおける接着層と成形体の表面とが接するように、該フィルムを成
形体の表面の少なくとも一部上に配置する。該配置は、加熱及び/又は加圧下において行
ってもよい。次いで、転写フィルムにおける基材フィルムを転写層から、具体的には表面
保護層から剥離する。このようにして、防眩性成形体が得られる。転写法としては、例え
ば、ロール転写法及びプレス転写法などの熱転写法、又はインモールド成形法を採用でき
る。
【0126】
基材フィルムは転写層からすぐに剥離せずに、防眩性成形体の保護フィルムとして利用
してもよい。そのような場合には、防眩性成形体を使用する前に基材フィルムを転写層か
ら剥離すればよい。
【0127】
転写フィルムを成形体の表面上に配置した後に、更に、得られた防眩性成形体を曲げ加
工などの加工処理に供してもよい。加工処理は、基材フィルムの剥離前又は後のいずれに
おいても行ってもよい。
【0128】
本開示の防眩性成形体は、例えば、成形体の形成と転写フィルムの配置とを同時に行う
ことにより製造してもよい。例えば、転写フィルムの接着層上に樹脂を射出させて転写フ
ィルムと樹脂成形体(射出成形体)とを一体化させる。次いで、基材フィルムを転写層か
ら剥離する。この場合、樹脂成形体の形成方法としては、例えば、インモールド成形法、
インサート成形法、射出成形同時加飾法、ブロー成形法及びガスインジェクション成形法
などの各種射出成形法が挙げられる。
【0129】
本開示は、例えば以下の[1]~[9]に関する。
[1]基材フィルムと転写層とを有する転写フィルムであって、転写層が、表面保護層
及び接着層を有し、表面保護層が、転写層における基材フィルム側の表層を構成し、転写
層を厚さ2mmのポリカーボネート板に転写して得られる試験片のヘイズが5%以上30
%以下であり、試験片の表面保護層面について測定される60度鏡面光沢度が60%以上
120%以下である、転写フィルム。
[2]基材フィルムと、転写層における表面保護層とが接している、上記[1]に記載
の転写フィルム。
[3]表面保護層の基材フィルム側の表面における最大高さRzが、0.5μm以上3
μm以下である、上記[1]又は[2]に記載の転写フィルム。
[4]表面保護層が、平均粒子径が1μm以上10μm以下の粒子を含有する、上記[
1]~[3]のいずれかに記載の転写フィルム。
[5]表面保護層と接着層との間に、プライマー層をさらに有する、上記[1]~[4
]のいずれかに記載の転写フィルム。
[6]表面保護層及び接着層のいずれか一方又は双方が、耐候性向上剤を含有する、上
記[1]~[5]のいずれかに記載の転写フィルム。
[7]プライマー層が、耐候性向上剤を含有する、上記[5]に記載の転写フィルム。
[8]屋外用途の成形体の表面の少なくとも一部上に上記転写層を転写するための、上
記[1]~[7]のいずれかに記載の転写フィルム。
[9]成形体と、成形体の表面の少なくとも一部上に設けられた表面保護フィルムと、
を有する防眩性成形体であって、表面保護フィルムが、上記[1]~[8]のいずれかに
記載の転写フィルムにおける転写層であり、転写層における表面保護層が、防眩性成形体
の少なくとも一部の表層を構成する、防眩性成形体。
【実施例0130】
以下、実施例に基づき本開示の転写フィルムを説明するが、本開示の転写フィルムは実
施例によって何ら限定されない。以下の記載において、「質量部」を単に「部」と記載す
る。
【0131】
[実施例1]
基材フィルムとして、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(PETフ
ィルム)を用いた。PETフィルムのヘイズ(Hz)は30%であり、全光線透過率(T
t)は85%であり、60度鏡面光沢度は86%であり、Raは0.1μmであり、Rz
は0.8μmであり、RSmは45.8μmである。
【0132】
基材フィルムの一方の面に、以下の表面保護層用硬化性樹脂組成物を塗布して、未硬化
樹脂層を形成した。90kV及び7Mrad(70kGy)の条件で電子線を未硬化樹脂
層に照射して該樹脂層を架橋硬化させ、厚さ3μmの表面保護層を形成した。表面保護層
の面にコロナ放電処理を施した後に、以下のプライマー層用樹脂組成物を塗布して、厚さ
3μmのプライマー層を形成した。プライマー層上に熱融着性樹脂(アクリル樹脂)を塗
布して厚さ4μmの接着層を形成した。このようにして、転写フィルムを得た。転写フィ
ルムは、基材フィルムとしてのPETフィルムと、該PETフィルム上に設けられた転写
層とを有し、該転写層は、表面保護層、プライマー層及び接着層を有する。
【0133】
<表面保護層用硬化性樹脂組成物>
硬化性樹脂
・6官能ウレタン(メタ)アクリレート 60部
・カプロラクトン系ウレタン(メタ)アクリレート 40部
上記硬化性樹脂100部に対して、以下の材料を添加した。
・紫外線吸収剤 1.5部
(チヌビン479(商品名)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカル
ボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-ト
リアジン、BASFジャパン株式会社)
・光安定剤 3部
(サノールLS-3410(商品名)、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペ
リジニルメタクリレート、日本乳化剤株式会社)
・非反応性シリコーン化合物 0.2部
(ポリエーテル変性シリコーンオイル)
・粒子 2部
(シリカ粒子、平均粒子径:2μm)
【0134】
<プライマー層用樹脂組成物>
・ポリカーボネート系ウレタン(メタ)アクリル共重合体 100部
(ポリカーボネート系ウレタンアクリル共重合体におけるウレタン成分と(メタ)アク
リル成分との質量比は、70/30である。)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤 17部
(チヌビン400(商品名)、2-[4-[(2-ヒドロキシ-3-ドデシルオキシプ
ロピル)オキシ]-2-ヒドロキシフェニル]-4,6-ビス(2,4-ジメチルフェニ
ル)-1,3,5-トリアジン、BASFジャパン株式会社)
・ヒドロキシフェニルトリアジン系紫外線吸収剤 13部
(チヌビン479(商品名)、2-(2-ヒドロキシ-4-[1-オクチルオキシカル
ボニルエトキシ]フェニル)-4,6-ビス(4-フェニルフェニル)-1,3,5-ト
リアジン、BASFジャパン株式会社)
・ヒンダードアミン系光安定剤 8部
(チヌビン123(商品名)、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチ
ル-4-ピペリジル)セバケート、BASFジャパン株式会社)
・ブロッキング防止剤 9部
(シリカ粒子、平均粒子径:3μm)
・硬化剤 25部
(ヘキサンメチレンジイソシアネート)
【0135】
[実施例2]
基材フィルムとして、ヘイズが72%、全光線透過率が85%、60度鏡面光沢度が4
9%、Raが0.2μm、Rzが1.4μm、RSmが67.1μmである、厚さ50μ
mのPETフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。
【0136】
[実施例3]
表面保護層用硬化性樹脂組成物にさらに(メタ)アクリル樹脂粒子(平均粒子径:2μ
m)10部を添加して用いたこと以外は実施例2と同様にして、転写フィルムを得た。
【0137】
[実施例4]
表面保護層用硬化性樹脂組成物にさらに(メタ)アクリル樹脂粒子(平均粒子径:6μ
m)10部を添加して用いたこと以外は実施例2と同様にして、転写フィルムを得た。
【0138】
[比較例1]
基材フィルムとして、ヘイズが2.3%、全光線透過率が88%、60度鏡面光沢度が
171%、Raが0μm、Rzが0.2μm、RSmが71.6μmである、厚さ50μ
mのPETフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。
【0139】
[比較例2]
基材フィルムとして、ヘイズが83%、全光線透過率が68%、60度鏡面光沢度が1
4%、Raが0.4μm、Rzが2.8μm、RSmが41.0μmである、厚さ50μ
mのPETフィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、転写フィルムを得た。
【0140】
[転写]
実施例及び比較例で得られた転写フィルムを、被転写体として厚さ2mmのポリカーボ
ネート板(ヘイズ:0.8%、全光線透過率:88.4%、60度鏡面光沢度:170.
0%)の片面に、転写フィルムの接着層がポリカーボネート板に接する状態で160℃の
熱をかけながら貼付した。これにより、ポリカーボネート板、接着層、プライマー層、表
面保護層及び基材フィルムを順に有する、基材フィルム付き防眩性成形体を得た。基材フ
ィルムを剥離して、防眩性成形体(試験片)を得た。
【0141】
[防眩性]
得られた試験片を、表面保護層側が上面となるようにテーブル上に載置し、防眩性(ア
ンチグレア性、AG性)として、38Wの蛍光灯の映り込みを目視により下記6段階で評
価した。蛍光灯と試験片との距離を2mとした。1がより良好であり、6が不良である。
1:蛍光灯の光の輪郭が全く判別できない。
2:蛍光灯の光の輪郭がほとんど判別できない。
3:蛍光灯の光の輪郭がわずかに判別できる。
4:蛍光灯の光はぼやけているが、輪郭は判別できる。
5:蛍光灯の光はほとんどぼやけず、輪郭も判別できる。
6:蛍光灯の光は全くぼやけず、輪郭も明確に判別できる。
【0142】
[透明性]
得られた試験片を、表面保護層が観察者側を向き、ポリカーボネート板が写真側を向く
ように、観察者と写真との間に配置した。観察者と試験片との距離を30cmとし、試験
片と写真との距離を1mとした。表面保護層側から試験片を介して写真を確認したときの
透明性として、写真の視認性を下記6段階で評価した。1がより良好であり、6が不良で
ある。
1:写真の画像を明瞭に確認できる。
2:写真の画像がほとんどぼやけていない。
3:写真の画像が若干ぼやけている。
4:写真の画像が全体的にぼやけている。
5:写真の画像が全体的に曇っているが、どのような画像か認識できる。
6:写真の画像が全体的に曇っており、どのような画像か認識できない。
【0143】
[耐候性試験]
超促進耐候性試験機(岩崎電気株式会社製、商品名:アイスーパーUVテスター、型番
:SUV-W23)を用いて、下記の(A)、(B)及び(C)を1サイクルとし、試験
片に対してこのサイクルを繰り返すことにより、耐侯性試験を行った。このサイクルを2
1回繰り返すことにより、耐候性試験を500時間行った。
(A)ブラックパネル温度:63℃、湿度:50%RHの雰囲気下で、試験片に対して
照度:100mW/cm2で紫外線を20時間照射する。
(B)試験片に対して散水処理(シャワー)を30秒間行う。
(C)試験片を、湿度:98%RHの雰囲気下で4時間保持する。
(紫外線の照射は無し)
【0144】
[光沢度]
基材フィルム及び試験片の60度鏡面光沢度(Gs60°)は、JIS Z8741に
準拠して、光沢計(BYK製「マイクロトリグロス」)を用いて、入射角60°で測定し
た。試験片の場合は、表面保護層の表面の光沢度を測定した。
【0145】
[全光線透過率、拡散光線透過率及びヘイズ]
基材フィルム及び試験片の全光線透過率(Tt)、拡散光線透過率(Td)及びヘイズ
(Hz)は、JIS K7105に準拠して、ヘイズメーター(株式会社東洋精機製作所
製「直読ヘイズメーター」)を用いて測定した。試験片の場合は、ポリカートネート板が
受光器側を向き、表面保護層が光源側を向くように配置した。
【0146】
[表面形状]
基材フィルム及び試験片の算術平均粗さRa、最大高さRz及び粗さ曲線要素の平均長
さRSmは、JIS B0601-2001に準拠し、形状解析レーザー顕微鏡[株式会
社キーエンス「VK-X1000」]を用いて、表面の凹凸形状を計測して得られた曲線
に基づいて求めた。試験片の場合は、表面保護層の表面について測定した。
【0147】
【表1】
【符号の説明】
【0148】
1 …転写フィルム
2 …防眩性成形体
10…基材フィルム
20…転写層
22…表面保護層
23…プライマー層
24…接着層
30…成形体(被転写体)
図1
図2
図3