(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184598
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】制振材
(51)【国際特許分類】
B32B 3/12 20060101AFI20231221BHJP
B32B 7/02 20190101ALI20231221BHJP
B60R 13/08 20060101ALN20231221BHJP
【FI】
B32B3/12 Z
B32B7/02
B60R13/08
【審査請求】有
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023183829
(22)【出願日】2023-10-26
(62)【分割の表示】P 2020562308の分割
【原出願日】2019-01-24
(31)【優先権主張番号】P 2018241305
(32)【優先日】2018-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000182454
【氏名又は名称】寿屋フロンテ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(72)【発明者】
【氏名】福井 一貴
(57)【要約】
【課題】 優れた制振性能を発揮することができるとともに、高い剛性を有しつつ、軽量化を図ることが可能な制振材を提供する。
【解決手段】 自動車のパネル300に設置するようにして使用される本発明の制振材は、粘弾性層200と、粘弾性層200の一方の面に設けられた拘束層100とを備え、拘束層100が、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層10と、コア層10の両面にそれぞれ設けられたフィルム層40、50とを備える複層構造を有し、拘束層100の粘弾性層とは反対側の面100aのひずみεaと、拘束層100の粘弾性層と接する側の面100bのひずみεbとの関係が、0<εa/εb<1である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘弾性層と、
前記粘弾性層の一方の面に設けられた拘束層と
を備える制振材であって、
前記拘束層が、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層を少なくとも備える複層構造を有し、
前記拘束層が、前記コア層の両面にそれぞれ設けられたフィルム層を更に備え、
前記拘束層の前記粘弾性層とは反対側の面のひずみεaと、前記拘束層の前記粘弾性層と接する側の面のひずみεbとの関係が、0<εa/εb<1である制振材。
【請求項2】
前記粘弾性層の厚さが0.5~2mmの範囲にある請求項1に記載の制振材。
【請求項3】
前記拘束層が、パネルに設置される側の粘弾性層の厚みが均一となるように、前記パネルの形状に合わせて成形されている構造を有する請求項1又は2に記載の制振材。
【請求項4】
前記ひずみεaと前記ひずみεbとの関係が、0.2<εa/εb<0.7である請求項1~3のいずれか一項に記載の制振材。
【請求項5】
前記フィルム層がそれぞれ、層を貫通する複数の開孔を有する請求項1~4のいずれか一項に記載の制振材。
【請求項6】
前記粘弾性層が、前記拘束層の前記粘弾性層と接する側の表面において部分的に設けられている請求項1~5のいずれか一項に記載の制振材。
【請求項7】
前記拘束層が、前記拘束層の前記粘弾性層と接する側に、繊維層を備える複層構造を有する請求項1~6のいずれか一項に記載の制振材。
【請求項8】
前記拘束層が、前記拘束層の前記粘弾性層と接する側とは反対側に、金属層を備える複層構造を有する請求項1~7のいずれか一項に記載の制振材。
【請求項9】
前記コア層の前記セルの各々が、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記開放端が、前記コア層の一方の面において、一列おきに配置されており、且つ前記コア層の他方の面において、上記とは異なるセルの列に、前記セルの前記開放端が配置されている請求項1~4及び6~8のいずれか一項に記載の制振材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制振材に関し、より詳しくは、自動車用の制振材に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車や電気製品などには、一般的に、薄鋼板やアルミニウム板などの金属板が構造部材として用いられている。自動車や電気製品の振動を低減するために、この金属板の表面に粘弾性材料を貼ることによって、構造部材に振動減衰性能(制振性能)を付与することが可能である。このような制振構造としては、大別すると、金属板の一方の表面または両方の表面に粘弾性材料を貼っただけの非拘束形と呼ばれる構造と、金属板とは反対側の粘弾性材料の表面に更に金属板や高分子材料などの拘束板を貼った拘束形と呼ばれる構造の2つのタイプがある(非特許文献1)。
【0003】
また、高分子材料の拘束板を用いた拘束形の制振構造として、特許文献1には、第1の炭素繊維強化プラスチック層と、第1の炭素繊維強化プラスチック層の一方の面上に積層された第2の炭素繊維強化プラスチック層と、第1の炭素繊維強化プラスチック層と第2の炭素繊維強化プラスチック層との間に配置された第1の制振層とを備え、第2の炭素繊維強化プラスチック層の厚さは、第1の炭素繊維強化プラスチック層の厚さよりも薄く、第1の制振層には、前記第2の炭素繊維強化プラスチック層に含まれる炭素繊維の配向方向に交差する方向に延びる空隙が設けられていることを特徴とする炭素繊維強化プラスチック成形体が記載されている。そして、このように第1の炭素繊維強化プラスチックを相対的に厚くすると共に第2の炭素繊維強化プラスチック層を相対的に薄くすることによって、第1の制振層が炭素繊維強化プラスチック成形体の中心よりも表面側に配置されるため、炭素繊維強化プラスチック成形体の曲げ弾性率の低下が抑制されるとともに、所定の空隙を設けたため、炭素繊維強化プラスチック層の膨張と制振層の収縮とに起因する応力が、その空隙によって緩和され、その結果、第2の炭素繊維強化プラスチック層を薄く構成しても、炭素繊維強化プラスチック成形体の成型時に、第2の炭素繊維強化プラスチック層の表面に歪みが発生することが防止されることが記載されている。
【0004】
一方で、自動車の構造として、前方にエンジン室があり、後方にはトランク室があり、その中間に客室を設ける構造が一般的である。客室には、運転席、助手席および後部座席といった座席を設けている。また、客室には、自動車内装の外側を覆うようにダッシュインシュレータ、フロアーカーペット、フロアースペーサ、トランクトリム、及びトランクフロアーが設置されており、これら部品は、車体の形状や部品のデザインに合わせた凹凸状の形状に成形されている。更に、車体下の外装には、フロントフェンダーライナー、リアフェンダーライナー、及び空気の流れを制御する凹凸形状に成形されたアンダーカバーが設置されている。これら部品の多くは、材料として熱可塑性樹脂が使用され、この材料を加熱して当該部品の形状の型によりプレス成形し、厚みが異なる複数の部分を有する凹凸形状の部品に仕上げられる。
【0005】
自動車開発の最近の動向として車内の静寂性が重要視されている。自動車の車内に伝わる騒音としては、ウインドウからの騒音、タイヤからの騒音、車体下からの騒音、エンジン音からの騒音、モータ音からの騒音などがある。自動車から発生する騒音は車室内に、空気の振動を介して伝達したり、物体の振動を介して伝達するが、主に物体の振動を介して伝達する騒音を、上述した制振構造体によって遮ることから、自動車で発生する騒音に対して十分な音響性能を発揮することができる。一方で、燃費削減も重要であり、自動車の内外装部品の軽量化も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】制振工学ハンドブック編集委員会編、「制振工学ハンドブック」、株式会社コロナ社、2008年5月13日、p.84-86
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1に記載されているように、非拘束形の制振構造では、粘弾性材料の厚みが大きい程、制振性能が高いことから、望ましい制振性能を得るためには、粘弾性材料の厚みが非常に大きくなり、実用性に欠けるという問題がある。一方、拘束形の制振構造では、拘束板として用いる金属板と基板の金属板とを同じ厚さの時に制振性能が最大になることから、望ましい制振性能を得るためには、拘束板の重量が大きくなり、剛性は高いものの、軽量化が難しいという問題がある。また、特許文献1に記載されている炭素繊維強化プラスチック成形体は、自動車のパネルに設置してパネルの制振に用いる場合は、炭素繊維強化プラスチック成形体とパネルとの間にも制振層(粘弾性層)を更に設ける必要があるため、パネル上に複数のCFRP層と複数の粘弾性層を積層させることとなり、やはり軽量化が難しいという問題がある。
【0009】
そこで本発明は、優れた制振性能を発揮することができるとともに、軽量化を図ることが可能な制振材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明は、粘弾性層と、前記粘弾性層の一方の面に設けられた拘束層とを備える制振材であって、前記拘束層の前記粘弾性層とは反対側の面のひずみεaと、前記拘束層の前記粘弾性層と接する側の面のひずみεbとの関係が、0<εa/εb<1である。
【0011】
前記拘束層は、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層を少なくとも備える複層構造を有してもよい。前記筒状のセルは、略四角筒状や略六角筒状などの多角筒状であってもよいし、略円筒状や略楕円筒状などの曲線筒状であってもよい。前記コア層の前記セルの各々は、一方の端に閉鎖面、他方の端に開放端を有し、前記セルの前記解放端によって前記セルの内部空間が外部と連通しており、前記セルの前記解放端は、前記コア層の両面において、隣接したセルの列が一列おきに配置されていることが好ましい。前記解放端、前記一方側閉鎖面、および前記他方側閉鎖面は、前記セルの形状に従い、略四角形状や略六角形状などの多角形状であっても、略円形状や略楕円形状などの曲線形状であってもよい。前記拘束層は、前記コア層の両面にそれぞれ設けられたフィルム層を更に備えてもよい。前記フィルム層はそれぞれ、層を貫通する複数の開孔を有していてもよい。
【0012】
前記粘弾性層の厚さは、0.5~2mmの範囲であってよい。前記拘束層は、粘弾性層の厚みが均一となるように、パネル形状に合わせて成形されていてもよい。すなわち、前記拘束層は、平らな形状に限定されず、パネルの形状に対応した湾曲形状や波型形状などの形状を有していてもよい。前記ひずみεaと前記ひずみεbとの関係は、0.2<εa/εb<0.7が好ましい。
【0013】
前記粘弾性層は、前記拘束層の前記粘弾性層と接する側の表面において部分的に設けられていてもよい。また、前記拘束層は、前記拘束層の前記粘弾性層と接する側に、繊維層を備える複層構造を有していてもよい。前記拘束層は、前記拘束層の前記粘弾性層と接する側とは反対側に、金属層を備える複層構造を有していてもよい。
【発明の効果】
【0014】
このように本発明に係る制振材は、粘弾性層に設けられる拘束層の粘弾性層とは反対側の面のひずみεaと、粘弾性層と接する側の面のひずみεbとのひずみ比εa/εbを、0<εa/εb<1の式を満たすようにすることで、拘束層の曲げ中心軸が、拘束層の厚みの中心位置よりも、粘弾性層とは反対側の方向に移動し、よって、制振材の制振性能を向上させることができる。したがって、拘束層を厚い金属板にすることなく、樹脂材料で拘束層を構成しても、優れた制振性能を発揮することでき、よって、高い剛性を有しつつ、軽量化を図ることが可能となる。
【0015】
特に、拘束層を、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層を少なくとも備える複層構造を有するものとすることで、優れた制振性能を発揮することができるとともに、高い剛性を有しつつ、軽量化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(a)は、本発明に係る制振材の一実施の形態を示す断面図であり、(b)は、この制振材が曲がった際の曲げ中立軸の位置を示す模式図である。
【
図2】本発明に係る制振材の別の実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図3】
図2に示す制振材の実施の形態の概略断面図である。
【
図4】本発明に係る制振材におけるコア層に用いるコア材料の製造過程を示す斜視図である。
【
図5】本発明に係る制振材におけるコア層を示す概略平面図である。
【
図6】VI-VI線に沿って
図5のコア層を示す概略断面図である。
【
図7】(a)~(c)は、本発明に係る制振材の各種の実施の形態を示す裏面図である。
【
図8】本発明に係る制振材のまた別の実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図9】
図8に示す制振材の実施の形態の部分的な断面を拡大して示す模式図である。
【
図10】本発明に係る制振材のひずみの測定方法を説明する模式図である。
【
図11】(a)は、本発明に係る制振材の損失係数の測定方法を説明する模式図であり、(b)は、測定値から損失係数を求めるグラフである。
【
図12】本発明に係る制振材の実施例および比較例における損失係数の測定結果を示すグラフである。
【
図13】本発明に係る制振材の更に別の実施の形態を示す分解斜視図である。
【
図14】(a)は、自動車の車体を模式的に示す斜視図であり、(b)は、(a)に示す車体のパネルの形状に合わせて成形した本発明に係る制振材が設置されている状態の一例を模式的に示す線B-Bに沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付の図面を参照して、本発明に係る制振材の一実施の形態について説明する。なお、各実施の形態は、制振材が自動車に用いられる場合について説明しているが、これに限定されず、電気製品などにも用いることができる。また、図面は、別段の定めがない限り、縮尺通りに描くことを意図してはいない。
【0018】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の制振材は、
図1(a)に示すように、拘束層100と、その一方の面に設けられた粘弾性層200とを備える。なお、本発明の制振材は、騒音の発生源の側に粘弾性層200側が位置するように用いられ、すなわち、本発明の制振材は、粘弾性層200を車体のパネル300側に設置して車室内側に設けられる。
【0019】
拘束層100は、粘弾性層200とは反対側の面100aのひずみεaと、粘弾性層200と接する側の面100bのひずみεbとの比εa/εbが、0<εa/εb<1の式を満たすものである。拘束層100が上記の式を満たすひずみ比εa/εbを有することで、
図1(b)に示すように、パネル300に設置された制振材が曲げられた際に(すなわち、振動を受けた際に)、拘束層100の曲げ中心軸NAが、拘束層100の厚みの中心位置よりも、粘弾性層200とは反対側の方向に移動し、よって、制振材の制振性能を向上させることができる。
【0020】
拘束層100は、ひずみ比εa/εbが上記の式を満たすものであれば、特に限定されないが、例えば、2層以上の複層構造体としてもよい。この複層構造体の各層は、例えば、金属材料や、合成樹脂材料、繊維強化樹脂材料などの素材を用いてもよく、また、これら素材で、例えば、中実のフィルム層にしたり、中空のコア層にしたり、不織布層にしたり、発泡層にしたりして構成してもよい。全ての層を同じ素材にしてもよいし、異なる素材にしてもよい。また、全ての層を同じ構成にしてもよいし、異なる構成にしてもよい。拘束層100は、例えば、各層で素材を変えたり、各層で構成や厚さを変えたり、表面処理したりすることで、ひずみ比εa/εbが上記の式を満たすようにすることができる。εa/εbの下限は、0.1以上が好ましく、0.15以上がより好ましく、0.2以上が更に好ましい。また、εa/εbの上限は、0.95以下が好ましく、0.7以下がより好ましく、0.5以下が更に好ましい。
【0021】
粘弾性層200は、制振材において粘弾性層に通常用いられる素材であれば、特に限定されないが、例えば、ゴム材料や、エラストマー材料などを用いてもよい。ゴム材料としては、例えば、ブチル系ゴムや、アクリル系ゴム、クロロプレン系ゴムなどが挙げられる。エラストマー材料としては、オレフィン系エラストマーやイソブチレン系エラストマーなどが挙げられる。拘束層100と粘弾性層200とは、粘弾性層200が有する粘性により接着することができる。
【0022】
粘弾性層200の厚みの下限は、パネル追従性の観点から、例えば、0.5mm以上が好ましく、1mm以上がより好ましく、2mm以上が更に好ましい。また、粘弾性層200の厚みの上限は、質量効率の観点から、例えば、5mm以下が好ましく、4mm以下がより好ましく、3mm以下が更に好ましく、2mm以下が最も好ましい。
【0023】
第1の実施形態によれば、0<εa/εb<1の式を満たすひずみ比εa/εbを有する拘束層100を粘弾性層200に設けることによって、制振性能を向上させることができ、主に物体の振動を介して伝達する騒音を遮ることができ、十分な遮音性能を発揮することができる。
【0024】
(第2の実施形態)
第2の実施形態の制振材は、
図2及び
図3に示すように、中空構造を有するコア層10と、このコア層10の一方の面に設けられた第1のフィルム層40と、コア層10の他方の面に設けられた第2のフィルム層50と、この第2のフィルム層50に接する粘弾性層200とを備える。コア層10と第1及び第2のフィルム層40、50の複層構造体が、上述した第1の実施形態の拘束層100となる。すなわち、拘束層100の第1のフィルム層40側の面のひずみεaと、第2のフィルム層50側の面のひずみεbとの比εa/εbが、0<εa/εb<1の式を満たす。なお、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0025】
コア層10は、筒状のセルが複数の列をなして配置されているコア層などの、防音材や吸音材に通常用いられるコア層であれば特に限定されないが、以下に説明する構造のコア層を用いることが好ましい。
【0026】
図4は、コア層10となるコア材料の製造過程を示す斜視図である。なお、このコア材料は、ここに引用することで本明細書の記載の一部をなすものとする国際公開第2006/053407号にその製造方法が詳細に記載されている。
【0027】
図4に示すように、このコア材料1は、平坦な材料シートを所定の型を有するローラ(図示省略)によって熱成形され、実質的にシートを切ることなく塑性変形により形成されたものである。コア材料1の素材は、これらに限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)などの熱可塑性樹脂や、繊維との複合材料、紙、金属等を用いることができ、特に熱可塑性樹脂が好ましい。本実施の形態では、熱可塑性樹脂を用いた場合について説明する。材料シートの厚みは、これに限定されないが、例えば、0.05mmから0.50mmの範囲が好ましく、熱成形後のコア材料1の厚みもほぼ同様である。
【0028】
コア材料1は、製造方向Yに対して直交する幅方向Xに向かって、山部11と谷部12が交互に配置される三次元構造を有している。山部11は、2つの側面13とその間の頂面17とで構成され、谷部12は、隣接する山部11と共有する2つの側面13とその間の底面14とで構成される。なお、本実施の形態では、
図4に示すように山部11の形状が台形の場合について説明するが、本発明はこれに限定されず、三角形や長方形などの多角形の他、正弦曲線や弓形などの曲線形にしてもよい。
【0029】
コア材料1は、上記の三次元構造を、製造方向Yに向かって連続するように備える。すなわち、
図4に示すように、製造方向Yに向かって複数の山部11a、11b、11c、11dが連続して形成される。谷部12も同様に連続して形成される。そして、山部11間の接続および谷部12間の接続は、2種類の接続方法を交互に繰り返すことでなされている。
【0030】
第1の接続方法は、
図4に示すように、幅方向の第1の折り畳み線X1において、隣接する2つの山部11b、11cの頂面17b、17cが、それぞれ台形状の山部接続面15b、15cを介して接続するというものである。山部接続面15は頂面17に対して直角の角度で形成されている。この幅方向の第1の折り畳み線X1において、隣接する2つの谷部の底面14b、14cは、直接に接続している。第2の接続方法は、
図4に示すように、幅方向の第2の折り畳み線X2において、隣接する2つの谷部の底面14a、14b(又は14c、14d)が、それぞれ台形状の谷部接続面16a、16b(又は16c、16d)を介して接続するというものである。谷部接続面16は底面14に対して直角の角度で形成されている。この幅方向の第2の折り畳み線X2において、隣接する2つの山部の頂面12a、12b(又は12c、12d)は、直接に接続している。
【0031】
このようにコア材料1は、複数の三次元構造(山部11、谷部12)が接続領域(山部接続面15、谷部接続面16)を介して接続されており、接続領域を折り畳むことで、本発明の制振材のコア層が形成される。具体的には、第1の折り畳み線X1では山折りで、隣接する2つの谷部の底面14b、14c同士が、その裏面を介して重なり合い、隣接する2つの山部の山部接続面15b、15cのなす角度が180度まで開くように折り畳む。また、第2の折り畳み線X2では谷折りで、隣接する2つの山部の頂面17a、17b(又は17c、17d)同士が重なり合い、隣接する2つの谷部の谷部接続面16a、16b(又は16c、16d)のなす角度が180度まで閉じるように折り畳む。このようにコア材料1を折り畳むことで得られた本発明の制振材のコア層10を、
図5及び
図6に示す。
【0032】
図5及び
図6に示すように、コア層10は、複数の列をなして配置されている略六角筒状のセル20を備え、一列おきに、隣接する2つの山部から形成されたセル20A、20C、20Eと、隣接する2つの谷部から形成されたセル20B、20Dが配置される。
図6中の破線18は、コア材料の裏面であった面であり、略六角筒状のセル20の内壁を概ね示すものである。
【0033】
山部から形成されたセル20A、20C、20Eは、それぞれ略六角筒状を形成する6つのセル側壁を備え、これらセル側壁は、セル材料における2つ頂面17と4つの側面13から形成されたものである。また、これらセル20A、20C、20Eは、コア層10の一方の面10a(
図5での表側の面)のセル端部において、それぞれセル端部を閉塞する略六角筒状の閉鎖面21A、21C、21Eを備え、これら一方側の閉鎖面21は、それぞれセル材料における2つの台形の山部接続面15によって形成されたものである。更に、これらセル20A、20C、20Eは、コア層10の反対側である他方の面10bのセル端部において、略六角形状に開口された解放端22A、22C、22Eを備える。この解放端22A、22C、22Eによって、セル20A、20C、20Eのそれぞれの内部空間が外部と連通している。
【0034】
谷部から形成されたセル20B、20Dも、それぞれ略六角筒状を形成する6つのセル側壁を備え、これらセル側壁は、セル材料における2つ底面14と4つの側面13から形成されたものである。また、これらセル20B、20Dは、コア層10の前記一方の面10aのセル端部において、略六角形状に開口された解放端22B、22Dを備える。この解放端22B、22Dによって、セル20B、20Dのそれぞれの内部空間が外部と連通している。更に、これらセル20B、20Dは、コア層10の反対側である他方の面10bのセル端部において、それぞれセル端部を閉塞する略六角筒状の閉鎖面21B、21Dを備え、これら他方側の閉鎖面21は、それぞれセル材料における2つの台形の谷部接続面16によって形成されたものである。
【0035】
このようにコア層10は、一方の面10aのセル端部には、一列おきに、セル材料における山部から形成された一方側閉鎖面21A、21C、21Eを有し、他方の面10bのセル端部には、上記とは異なるセルの列に、セル材料における谷部から形成された他方側閉鎖面21B、21Dを有しているが、別段の記載がない限り、一方側閉鎖面、他方側閉鎖面のどちらの閉鎖面21も実質的に同一の機能を発揮するものである。
【0036】
コア層10全体の厚みは、制振材を自動車のどこの部品に用いるかで変わるため、以下に限定されないが、コア層10自体の吸音性能、コア層10の強度、重量の観点から、3mmから50mmの範囲が好ましく、5mmから30mmの範囲がより好ましい。
【0037】
コア層10の目付け(単位面積当たりの重さ)は、制振材を自動車のどこの部品に用いるかで変わるため、これらに限定されないが、400g/m2から4000g/m2の範囲が好ましく、500g/m2から3000g/m2の範囲がより好ましい。コア層10の厚みが大きく、目付けが大きい程、概ね、コア層10の強度が高くなる。
【0038】
コア層10の目付けは、コア層10の素材の種類や、コア層10全体の厚み、セル20の壁厚(材料シートの厚み)の他に、コア層10のセル20間のピッチPcx、Pcy(セルの中心軸間の距離)によっても調整することができる。コア層10の目付けを上記の範囲とするためには、例えば、コアの製造方向Yであるセル20が隣接して列をなす方向のセル20間のピッチPcyを、2mmから20mmの範囲とすることが好ましく、3mmから15mmの範囲とすることがより好ましく、4mmから10mmの範囲とすることが更に好ましい。
【0039】
拘束層100としてコア層10を用いる場合、拘束層100のひずみ比εa/εbが0<εa/εb<1の式を満たすようにするためには、第1及び第2のフィルム層40、50の素材や、厚み、ヤング率を変える等を行う。
【0040】
第1及び第2のフィルム層40、50の素材は、これらに限定されないが、例えば、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリアミド(PA)などの樹脂フィルムを用いることができる。第1のフィルム層40と第2のフィルム層50とで同じ素材を用いてもよいし、異なる素材を用いてひずみ比εa/εbが上記式を満たすようにしてもよい。
【0041】
第1及び第2のフィルム層40、50の厚みは、特に限定されないが、例えば、その下限は、0.03mm以上が好ましく、0.04mm以上がより好ましく、0.05mm以上が更に好ましい。また、厚みの上限は、0.5mm以下が好ましく、0.4mm以下がより好ましく、0.3mm以下が更に好ましい。第1のフィルム層40と第2のフィルム層50とで同じ厚みにしてもよいし、異なる厚みにしてひずみ比εa/εbが上記式を満たすようにしてもよい。
【0042】
第1及び第2のフィルム層40、50は、コア層10に対して、熱溶着させて接着させてもよいし、接着剤(図示省略)を介して接着させてもよい。接着剤としては、特に限定されないが、例えば、エポキシ系やアクリル系等の接着剤を用いることができる。また、第1及び第2のフィルム層40、50はそれぞれ、三層構造にして、中央の層と、その両側の面に位置する2つの接着層とを備えるようにしてもよい。この場合、接着層の素材は、中央の層に用いる素材の融点よりも低い融点を有する素材を用いる。例えば、中央の層に190℃から220℃の融点を有するポリアミドを用い、接着層に90℃から130℃の融点を有するポリエチレンを用いることで、第1及び第2のフィルム層40、50をコア層10又は粘弾性層200に貼り合わせる際の加熱時の温度や制振材の所定の形状に熱成形する温度を150℃から160℃程とすれば、中央の層は溶融せずに、接着層のみを溶融してコア層10と強固に接着することができる。接着層のポリエチレンよりも融点の高い樹脂としては、ポリアミドの他に、ポリプロピレンがある。
【0043】
第1及び第2のフィルム層40、50はそれぞれ、層を貫通する複数の開孔を有する通気性のものでもよいし、このような開孔のない非通気性のものでもよい。開孔を設けることで、開孔を設けたフィルム層側の面のひずみεを大きくすることができ、上述したひずみ比εa/εbを容易にコントロールすることができる。開孔を有する場合、開孔は第1又は第2のフィルム層40、50がコア層10に貼り合わされる前に予め行われるものであり、例えば、熱針やパンチ加工(オス型とメス型を用いたパンチ加工)で開け、孔が塞がることを防止するため、孔のバリを極力抑えた孔形状とすることが好ましい。開孔パターンは、特に限定されないが、千鳥配列や格子配列で配置することが好ましい。第1又は第2のフィルム層40、50の開孔率は、特に限定されないが、0.2%から5%の範囲が好ましい。開孔の直径は、0.25mmから2.5mmの範囲が好ましく、0.3mmから2.0mmの範囲がより好ましい。なお、第1又は第2のフィルム層40、50の開孔のピッチは、
図5に示すコア層10のセル20のピッチPcx、Pcyと、必ずしも一致させなくてもよく、また、第1又は第2のフィルム層40、50をコア層10に貼り合わせる際に必ずしも開孔とセル20の位置合わせをしなくてもよい。これは、第1又は第2のフィルム層40、50の開孔とコア層10のセル20の解放端22の位置がランダムに重なることで、適度に内外の連通が確保されるようになるからである。第1又は第2のフィルム層40、50の開孔のピッチは、コア層10のセル20のピッチよりも少なくともX方向あるいはY方向のどちらかを小さくすることが好ましい。
【0044】
第2の実施形態によれば、一列おきに解放端と閉鎖面が配置されるコア層10の両面に第1および第2のフィルム層40、50を設ける拘束層100とすることで、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、高い剛性を付与しても軽量化を図ることができる制振材を提供することができる。
【0045】
(第3の実施形態)
第1及び第2の実施形態では、粘弾性層200が拘束層100に接する面が、拘束層100の粘弾性層200側の面と同じ面積の場合について説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではない。第3の実施形態の制振材は、
図7(a)~(c)の各例に示すように、粘弾性層200が、拘束層100の粘弾性層と接する側の面100bにおいて部分的に設けられているものである。なお、第1及び第2の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0046】
例えば、
図7(a)に示すように、複数の線状の粘弾性層200Aを、拘束層100の粘弾性層と接する側の面100bに平行に並べてもよい。また、
図7(b)に示すように、S字形状などの曲線状の粘弾性層200Bを、拘束層100の粘弾性層と接する側の面100bに設けてもよい。更に、
図7(c)に示すように、複数の長方形の粘弾性層200Cを、拘束層100の粘弾性層と接する側の面100bに格子状に配置してもよいし、又は千鳥状に配置してもよい。このようにして、例えば、粘弾性層200が拘束層100に接する面の面積を、拘束層100の粘弾性層200側の面の面積の5%~50%の範囲にすることが好ましく、10%~20%の範囲にすることがより好ましい。
【0047】
第3の実施形態によれば、粘弾性層200を、拘束層100の粘弾性層と接する側の面100bにおいて部分的に設けることによって、粘弾性層200の使用量を抑えても、第1及び第2の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0048】
(第4の実施形態)
第4の実施形態の制振材は、
図8及び
図9に示すように、コア層10と、このコア層10の一方の面に設けられた第1のフィルム層40と、コア層10の他方の面に順に設けられた第2のフィルム層50と繊維層60と、この繊維層60に接する粘弾性層200とを備える。コア層10と第1及び第2のフィルム層40、50と繊維層60の複層構造体が、上述した第1の実施形態の拘束層100となる。すなわち、拘束層100の第1のフィルム層40側の面のひずみεaと、繊維層60側の面のひずみεbとの比εa/εbが、0<εa/εb<1の式を満たす。なお、第1から第3の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0049】
第4の実施形態では、第2のフィルム層50と粘弾性層200との間に繊維層60が設けられている。繊維層60は、上述したひずみ比εa/εbを所定の範囲内に維持するものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などの樹脂製繊維を用いたスパンボンド、スパンレース、又はニードルパンチなどの各種不織布を用いることが好ましい。繊維層60の目付けは、上述したひずみ比εa/εbを所定の範囲内に維持する範囲であれば特に限定されないが、例えば、10g/m2から600g/m2の範囲が好ましく、20g/m2から500g/m2の範囲がより好ましく、30g/m2から300g/m2の範囲が更に好ましい。
【0050】
繊維層60と第2のフィルム層50とは、第2のフィルム層50の熱溶着性により又は接着剤を用いることにより接着することができる。繊維層60と粘弾性層200とは、粘弾性層200が有する粘性によって接着することができる。
【0051】
第4の実施形態によれば、粘弾性層200に繊維層60が接するように拘束層100を設けることによって、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、
図9に示すように、拘束層100の繊維層60の繊維62が粘弾性層200の内部に入り込んで接着されることから、粘弾性層200に繊維が混ざることで制振効果が向上するとともに、拘束層100と粘弾性層200との接着強度も向上するという効果を得ることができる。
【0052】
(第5の実施形態)
第5の実施形態の制振材は、
図13に示すように、コア層10と、このコア層10の一方の面に順に設けられた第1のフィルム層40及び金属層70と、コア層10の他方の面に設けられた第2のフィルム層50と、この第2のフィルム層50に接する粘弾性層200とを備える。コア層10と第1及び第2のフィルム層40、50と金属層70の複層構造体が、上述した第1の実施形態の拘束層100となる。すなわち、拘束層100の金属層70側の面のひずみεaと、第2のフィルム層50側の面のひずみεbとの比εa/εbが、0<εa/εb<1の式を満たす。なお、第1から第3の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0053】
第5の実施形態では、第1のフィルム層40の表面側に金属層70が設けられている。金属層70は、上述したひずみ比εa/εbを所定の範囲内に維持するものであれば特に限定されないが、例えば、鋼板や、アルミニウム箔、銅箔などの金属薄膜を用いることが好ましい。金属層70の厚みは、上述したひずみ比εa/εbを所定の範囲内に維持する範囲であれば特に限定されないが、例えば、下限として、5μm以上が好ましく、7μm以上がより好ましく、10μm以上が更に好ましく、上限としては、1mm以下が好ましく、0.5mm以下がより好ましく、0.1mm以下が更に好ましい。金属層70と第1のフィルム層40とは、第1のフィルム層40の熱溶着性により又は接着剤を用いることにより接着することができる。
【0054】
第5の実施形態によれば、拘束層100の粘弾性層200とは反対側の面に金属層70を設けることで、第1の実施形態と同様の効果が得られるとともに、拘束層100の粘弾性層200とは反対側の面のひずみεaを顕著に小さくすることができ、ひずみ比εa/εbを容易にコントロールすることができる。
【0055】
(第6の実施形態)
第6の実施形態の制振材は、
図14に示すように、拘束層100Rが、粘弾性層200Rの厚みが均一となるように、自動車のルーフのパネル300Rの形状に合わせて成形されている構造を有する。なお、第1の実施形態と同様の構成については同様の符号を付し、ここでの詳細な説明は省略する。
【0056】
このように成形された制振材の場合、上述したひずみ比εa/εbについては、
図14(b)に示すように、成形後の拘束層100Rにおいて、粘弾性層200Rとは反対側であるの面のひずみεaと、粘弾性層200Rと接する側の面のひずみεbとの比εa/εbが、0<εa/εb<1の式を満たす。
【0057】
第6の実施形態によれば、制振材の拘束層100Rが、平らな形状ではなく、パネル300Rの形状に対応した湾曲形状や波型形状などの形状を有していても、粘弾性層200Rの厚みが均一であれば、上記式を満たすひずみ比εa/εbを有する拘束層100Rによって、第1の実施形態と同様に制振性能を向上させることができ、主に物体の振動を介して伝達する騒音を遮ることができ、十分な遮音性能を発揮することができる。なお、
図14では、自動車のルーフのパネルに設ける制振材を示したが、本発明はこれに限定されず、自動車のダッシュ、フロア、ドア等の平らではない各種形状のパネルでも同様の効果を得ることができる。
【実施例0058】
以下、本発明の実施例および比較例について説明する。
【0059】
実施例1として、
図2に示す拘束層および粘弾性層を備える制振材を作製した。先ず、
図5及び
図6に示す構造を有するコア層(素材:ポリプロピレン(PP)樹脂、セル間のピッチPcy:8mm、コア層の厚み:10mm)の一方の面に、第1のフィルム層(素材:ポリプロピレン(PP)フィルム、厚み:350μm)を貼り、他方の面に、第2のフィルム層(素材:ポリプロピレン(PP)フィルム、厚み:300μm)を貼って、拘束層を作製した。そして、この拘束層について、万能材料試験機(インストロン社製、型式5900)を用いて3点曲げを行い、ひずみの測定を行った。試験片としては60mm×200mmの寸法とした。
図10に示すように、試験片100Sを100mm間隔で位置する2点の支点102で支持し、その中央位置に圧子104で曲げ0.5mmの負荷をかけた。ひずみの測定には、ひずみ計測器(共和電業社製、PCD-400A)を用いて、拘束層の両面のひずみεa、εbをそれぞれ測定した。その結果、ひずみ比εa/εbは0.91であった。
【0060】
次に、この拘束層の第2のフィルム層側に粘弾性層(素材:ブチル系ゴム、厚み:1mmシート)を貼って制振材を作製した。更に、この制振材の粘弾性層側にパネル(素材:鋼板、厚さ:0.5mm)を貼った。そして、このパネルに制振材を貼った状態で、その損失係数を測定した。試験片としては、
図11(a)に示すように、拘束層100S及び粘弾性層200Sは60mm×180mmの寸法とし、パネル300Sは60mm×200mmの寸法とした。パネルのはみ出した20mmの長さ部分は、固定器具112に固定して、試験片を片側支持した。そして、固定器具112から40mm離れた試験片のパネル300Sの上にFFTアナライザー116(小野測器社製、DS-3200)を置き、試験片の自由端側を、ハンディー電磁加振器114(B&K社製、TYPE5961)で負荷をかけた。損失係数は、得られた共振特性の測定結果から半値幅法により計算して求めた。
図11(b)に示すように、試験片の振幅に対する周波数のグラフを作成し、最大振幅の周波数f
0と、最大振幅から3dBの間の周波数f
1及びf
2とから、η=(f
2-f
1)/f
0の式から、損失係数ηを算出した。その結果を表1及び
図12に示す。
【0061】
なお、比較のため、拘束層としてPPフィルム(厚み:300μm)のみを用いたことを除いて実施例1と同様に作製した比較例1についても、実施例1と同様にして、ひずみ及び損失係数を測定した。その結果を表1及び
図12に示す。
【0062】
また、実施例2~6として、表1に示すように、拘束層の粘弾性側の層および反対側のフィルム層の厚さを変えたり、フィルム層に更に金属層(素材:鋼板、厚み:0.5mm、又は素材:アルミニウム箔、厚み:30μm)を設けたりした点を除き、実施例1と同様にして作製し、ひずみ及び損失係数を測定した。これらの結果を表1及び
図12に示す。
【0063】
【0064】
表1及び
図12に示すように、拘束層の粘弾性層とは反対側の面のひずみεaと粘弾性層と接する側の面のひずみεbとのひずみ比εa/εbを1未満にした実施例1~6は、ひずみ比εa/εbを1である比較例1に比べて、損失係数を大幅に向上することができた。
本発明の制振材によれば、優れた制振性能(遮音性能)を発揮しつつ、高剛性を有し、軽量化を図ることができるので、本発明の制振材は、具体的には、例えば、ダッシュ、フロア、ドア、ルーフ、ホイルハウス、フェンダー各パネルなどの騒音発生源と自動車室内との間でパネル振動を減衰させる部品に有用である。