(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184604
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】駆動装置
(51)【国際特許分類】
G02B 26/08 20060101AFI20231221BHJP
G02B 26/10 20060101ALI20231221BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
G02B26/08 E
G02B26/10 104Z
B81B3/00
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023184335
(22)【出願日】2023-10-27
(62)【分割の表示】P 2019122863の分割
【原出願日】2019-07-01
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】北澤 正吾
(57)【要約】
【課題】装置全体を小型化することができる駆動装置を提供する。
【解決手段】ヨーク部7A、7Bの延在部71、72がベース部4を挟み込み、その端部711、721が、中間フレーム3に設けられた磁気素子5A、5Bに対向することで、ヨーク部全体をベース部に対してZ方向の一面側に配置する構成と比較して、駆動装置1A全体のZ方向寸法を小さくすることができる。また、ベース部4がミラー2を略半周分囲むとともに開口していることで、全周分囲む構成と比較して、駆動装置1A全体のY方向寸法を小さくすることができる。このように、駆動装置1A全体を小型化することができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被駆動部と、
前記被駆動部を支持する一対の軸部と、
前記被駆動部を少なくとも半周分囲むように設けられて前記軸部を支持するベース部と、
前記被駆動部に設けられる磁気素子と、
前記ベース部を挟む一対の延在部を有し、前記一対の延在部の一対の端部が前記磁気素子に対向するように配置され、前記一対の端部に発生する磁界を前記磁気素子に作用させることにより、前記被駆動部を回動させるヨーク部と、
前記ヨーク部の前記一対の延在部の間を通過するように設けられるコイル部と、を備え、
前記ベース部は、前記被駆動部を基準として前記ヨーク部の反対側において開口していることを特徴とする駆動装置。
【請求項2】
前記被駆動部は、ミラーと、前記軸部によって支持されるとともに前記磁気素子が配置される磁気素子配置部と、前記軸部と同軸上に配置されて前記ミラーと前記磁気素子配置部とを接続する第2軸部と、を有することを特徴とする請求項1に記載の駆動装置。
【請求項3】
前記ミラーおよび前記第2軸部を含む第1振動系の共振周波数は、前記第1振動系と前記磁気素子配置部と前記磁気素子と前記軸部とを含む第2振動系の共振周波数とは異なり、
前記コイル部は、前記磁界として、前記第1振動系を共振させる周波数の交流磁界を発生することを特徴とする請求項2に記載の駆動装置。
【請求項4】
前記磁気素子は、前記軸部の軸方向に並んだ少なくとも一対の磁気素子対を含み、
前記軸方向において、前記磁気素子対の中間部と、前記ミラーの中央部と、が一致し、
前記ヨーク部は、前記一対の端部が前記磁気素子対のそれぞれに対向するように配置された少なくとも一対のヨーク対を含むことを特徴とする請求項2又は3に記載の駆動装置。
【請求項5】
前記磁気素子配置部は、前記ベース部と同じ側から前記ミラーを少なくとも半周部囲むように設けられるとともに、前記ベース部の開口と同じ側において開口していることを特徴とする請求項2~4のいずれか1項に記載の駆動装置。
【請求項6】
前記磁気素子および前記ヨーク部の端部は、それぞれ、前記磁気素子配置部と前記ベース部との最近接位置に配置されていることを特徴とする請求項5に記載の駆動装置。
【請求項7】
前記ヨーク部は、前記一対の延在部を連結する連結部を有し、
前記ベース部は、前記連結部が通過する通過部を有することを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の駆動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、枠体に対し、一対の梁部によって可動板を回転可能に支持するとともに、永久磁石の近傍にヨークを設けることにより、可動板を回転させる磁気力型駆動装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された磁気力型駆動装置では、ヨークの一対の端部に互いに異なる磁極が現れるように、ヨークに巻回されたコイルに導通することにより、可動部の振角を大きくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されたように枠体(ベース部)によって可動部(被駆動部)が支持され、永久磁石(磁気素子)と可動部とが板厚方向において対向する駆動装置においては、可動部を平面視した際の装置全体の寸法が、枠体の大きさ以上となり、装置全体の板厚方向寸法が、可動部と永久磁石との間隔以上となる。しかしながら、枠体と可動部との間、及び、可動部と永久磁石との間のそれぞれには、所定のクリアランスを確保する必要があり、各部品を小型化したとしても装置全体を小型化することが困難であった。
【0005】
したがって、本発明の課題は、装置全体を小型化することができる駆動装置を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の駆動装置は、被駆動部と、前記被駆動部を支持する一対の軸部と、前記被駆動部を少なくとも半周分囲むように設けられて前記軸部を支持するベース部と、前記被駆動部に設けられる磁気素子と、前記ベース部を挟む一対の延在部を有し、前記一対の延在部の一対の端部が前記磁気素子に対向するように配置され、前記一対の端部に発生する磁界を前記磁気素子に作用させることにより、前記被駆動部を回動させるヨーク部と、前記ヨーク部の前記一対の延在部の間を通過するように設けられるコイル部と、を備え、前記ベース部は、前記被駆動部を基準として前記ヨーク部の反対側において開口していることを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施例に係る駆動装置を示す斜視図である。
【
図2】前記駆動装置を下面側からみた様子を示す斜視図である。
【
図3】本発明の第2実施例に係る駆動装置を示す斜視図である。
【
図4】前記駆動装置を下面側からみた様子を示す斜視図である。
【
図5】本発明の第3実施例に係る駆動装置を示す斜視図である。
【
図6】前記駆動装置を下面側からみた様子を示す斜視図である。
【
図7】本発明の第4実施例に係る駆動装置を示す斜視図である。
【
図8】前記駆動装置を下面側からみた様子を示す斜視図である。
【
図9】本発明の第5実施例に係る駆動装置を示す斜視図である。
【
図10】前記駆動装置を下面側からみた様子を示す斜視図である。
【
図12】本発明の第6実施例に係る駆動装置を示す斜視図である。
【
図13】本発明の変形例に係る駆動装置の要部を示す平面図である。
【
図14】本発明の他の変形例に係る駆動装置の要部を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る光偏向器は、被駆動部と、被駆動部を支持する一対の軸部と、被駆動部を少なくとも半周分囲むように設けられて軸部を支持するベース部と、被駆動部に設けられる磁気素子と、ベース部を挟む一対の延在部を有し、一対の延在部の端部が磁気素子に対向するように配置され、一対の端部に発生する磁界を磁気素子に作用させることにより、被駆動部を回動させるヨーク部と、ヨーク部の一対の延在部の間を通過するように設けられるコイル部と、を備える。ベース部は、被駆動部を基準としてヨーク部の反対側において開口している。
【0009】
ヨーク部の延在部がベース部を挟み込み、その端部が、被駆動部に設けられた磁気素子に対向することで、ヨーク部全体をベース部に対する一面側に配置する構成と比較して、駆動装置全体の高さ(ベース部が延在する平面との直交方向における寸法)を小さくすることができる。また、ベース部が被駆動部を少なくとも半周分囲むとともに開口していることで、全周分囲む構成と比較して、駆動装置全体の平面視寸法(ベース部が延在する平面内の寸法)を小さくすることができる。このように、駆動装置全体を小型化することができる。
【0010】
被駆動部は、ミラーと、軸部によって支持されるとともに磁気素子が配置される磁気素子配置部と、軸部と同軸上に配置されてミラーと磁気素子配置部とを接続する第2軸部と、を有することが好ましい。これにより、ミラーに対して磁気素子が直接配置されないようにすることができる。従って、例えば被駆動部に対して磁気素子を接着により設ける場合に、ミラーにおいて接着による歪み等が発生することを抑制し、磁気素子を設けることによる光学特性の悪化を抑制することができる。尚、このような構成では、ヨーク部の端部に発生した磁界が磁気素子に作用することにより、磁気素子配置部が回動し、この回動力が第2軸部によってミラーに伝達され、ミラーが回動するようになっている。
【0011】
ミラーおよび第2軸部を含む第1振動系の共振周波数は、第1振動系と磁気素子配置部と磁気素子と軸部とを含む第2振動系の共振周波数とは異なり、コイル部は、磁界として、第1振動系を共振させる周波数の交流磁界を発生することが好ましい。これにより、ヨーク部の一端に磁界を発生させた際に、ミラーの振角を大きくするとともに磁気素子配置部の振角を小さくすることができる。従って、磁気素子とヨークの端部とを近接配置してもこれらが干渉しにくく、エネルギー損失を小さくすることができる。このように、小さな駆動エネルギーであってもミラーの振角を大きくすることができる。
【0012】
磁気素子は、軸部の軸方向に並んだ少なくとも一対の磁気素子対を含み、軸方向において、磁気素子対の中間部と、ミラーの中央部と、が一致し、ヨーク部は、端部が磁気素子対のそれぞれに対向するように配置された少なくとも一対のヨーク対を含むことが好ましい。これにより、一対のヨーク対に発生する磁界を一対の磁気素子対に作用させる際に、ミラーに対して対称な位置において駆動力を加えることができ、ミラーに対して捩れるような力が加わることを抑制することができる。
【0013】
磁気素子配置部は、ベース部と同じ側からミラーを少なくとも半周部囲むように設けられるとともに、ベース部の開口と同じ側において開口していてもよい。
【0014】
このとき、磁気素子およびヨーク部の端部は、それぞれ、磁気素子配置部とベース部との最近接位置に配置されていることが好ましい。これにより、小さな駆動エネルギーであってもミラーの振角を大きくすることができる。
【0015】
ヨーク部は、一対の延在部を連結する連結部を有し、ベース部は、連結部が通過する通過部を有することが好ましい。これにより、連結部が通過部を通過するようにヨーク部をベース部に組み付けることができ、組立性を向上させることができる。
【実施例0016】
以下、本発明の各実施例について具体的に説明する。尚、第2~6実施例においては、第1実施例で説明する構成部材と同じ構成部材及び同様な機能を有する構成部材には、第1実施例と同じ符号を付すとともに説明を省略する。
【0017】
[第1実施例]
本実施例の駆動装置1Aは、
図1、2に示すように、ミラー2と、中間フレーム3と、ベース部4と、2つの磁気素子5A、5Bと、コイル部6と、2つのヨーク部7A、7Bと、一対の内側トーションバー20と、一対の外側トーションバー30と、を備えた光偏向器である。駆動装置1Aは、例えば車両に搭載されて赤外線等の光を送受信することで他車両や設置物等との距離を検出する検出装置に用いられる。
【0018】
本実施例では、内側トーションバー20と外側トーションバー30とが同軸上に配置されており、これらの延在方向(軸方向)をX方向とし、ミラー2の板厚方向をZ方向とする。X方向およびZ方向の両方に直交する方向をY方向とし、即ち、ミラー2がXY平面に沿って延在しているものとする。
【0019】
ミラー2は、X方向を長手方向とする楕円板状に形成され、表面21が鏡面加工されて反射面となっている。以下では、駆動装置1Aの各部について、表面21と同じ側の面を単に上面と呼び、反対側の面を単に下面と呼ぶことがある。尚、ミラー2の両面が鏡面加工され、両面が使用される構成としてもよい。ミラー2のX方向における両端部には、内側トーションバー20が接続されている。
【0020】
中間フレーム3は、X方向に沿って延びる直線部31と、直線部31の両端から互いに離れるようにY方向に対して傾斜して延びる一対の傾斜部32、33と、を有し、Y方向における一方側からミラー2を半周分だけ囲むとともに、Y方向の他方側において開口した形状を有し、XY平面に沿って延在する。傾斜部32、33における直線部31とは反対側の端部34、35には、内側(ミラー2側)に内側トーションバー20が接続され、外側に外側トーションバー30が接続されている。即ち、ミラー2は、内側トーションバー20を介して、中間フレーム3によって回動可能に支持されている。
【0021】
ベース部4は、X方向に沿って延びる直線部41と、直線部41の両端から突出してY方向に沿って延びる一対の側部42、43と、直線部41に接続された付属枠部44と、を有し、Y方向における一方側からミラー2を略半周分だけ囲むとともに、Y方向の他方側において開口した形状を有し、XY平面に沿って延在する。中間フレーム3とベース部4とが、ミラー2に対して同じ側に設けられ、同じ側に開口している。
【0022】
側部42、43の内側には、外側トーションバー30が接続されており、中間フレーム3が、外側トーションバー30を介して、ベース部4によって回動可能に支持されている。このとき、側部42、43における直線部41とは反対側の端部421、431は、外側トーションバー30から突出し、且つ、Y方向においてミラー2のうち中間フレーム3とは反対側の端部よりも中間フレーム3側に位置している(X方向から見た際、端部421、431がミラー2から突出していない)。
【0023】
付属枠部44は、X方向に沿って延びる部分と、Y方向に沿って延びる部分と、を有して直線部41に接続されることにより、直線部41との間に長方形状の開口部45が形成される。ここで、ベース部4が延在する面を基準面とする。基準面は、XY平面に沿っており、ミラー2および中間フレーム3も基準面に沿って延在する。
【0024】
上記のようなミラー2と、中間フレーム3と、第2軸部としての内側トーションバー20と、が被駆動部を構成し、被駆動部は、軸部としての外側トーションバー30を介して、ベース部4によって回動可能に支持されている。また、ミラー2および内側トーションバー20が第1振動系を構成し、第1振動系と中間フレーム3と磁気素子5A、5Bと外側トーションバー30とが第2振動系を構成する。第1振動系と第2振動系とは、共振周波数が互いに異なっており、且つ、一方の共振周波数が他方の共振周波数の整数倍とはなっていない。
【0025】
磁気素子5A、5Bは、板状に形成された永久磁石であって、それぞれ、中間フレーム3の下面のうち、直線部31と傾斜部32、33との接続部36、37に配置されるとともに接着され、中間フレーム3が磁気素子配置部として機能する。中間フレーム3は、直線部31および接続部36、37においてベース部4と最も近接しており、接続部36、37が最近接位置となる。
【0026】
2つの磁気素子5A、5Bは、X方向に並んだ磁気素子対を構成し、X方向において、磁気素子対の中間部と、ミラー2の中央部と、が一致する。即ち、駆動装置1AをY方向から見た際に、2つの磁気素子5A、5Bの中間部と、ミラー2の中央部と、が重なる配置となっている。尚、X方向におけるミラー2の中央部は、寸法上の中央部であってもよいし、重心位置であってもよい。磁気素子5A、5Bは、磁極(N極及びS極)がY方向に並んでいる。
【0027】
コイル部6は、ベース部4の下面のうち、付属枠部44と直線部41とによって形成される長方形状枠部(開口部45の周囲)に沿って延びる配線61によって形成されている。即ち、配線61が、Z方向を軸方向として、X方向を長手方向とする長方形状に巻回されることによって、コイル部6が構成される。尚、コイル部6はベース部4の上面に設けられていてもよい。
【0028】
配線61の両端には、適宜な電源が接続され、必要に応じて電力が供給されるようになっている。即ち、配線61の両端には、ミラー2を含む第1振動系の共振周波数に応じた周波数の電圧が印加され、磁界が発生するようになっている。
【0029】
ヨーク部7A、7Bは、例えば鉄等の強磁性体金属によって構成され、それぞれ、Y方向に沿って延びる一対の延在部71、72と、Z方向に沿って延びて一対の延在部71、72を連結する連結部73と、を有する。ヨーク部7A、7Bは、連結部73が通過部としての開口部45を通過するように配置され、連結部73は、開口部45のX方向両端部に配置される。
【0030】
一対の延在部71、72は、ベース部4の直線部41およびコイル部6の一部をZ方向から挟み込み、即ち、一方の延在部71が基準面の上面側に配置され、他方の延在部72が下面側に配置される。一対の延在部71、72は、連結部73からミラー2側に向かって延び、その端部711、721が磁気素子5A、5Bと対向する(X方向位置が一致する)。一対のヨーク部7A、7Bは、その端部711、721が磁気素子対のそれぞれに対向するヨーク対を構成する。
【0031】
延在部71、72のY方向寸法は、開口部45のY方向寸法よりも小さく設定されている。これにより、一対の延在部71、72のうち一方が開口部45を通過するように、ベース部4に対してヨーク部7を組み付けることができるようになっている。
【0032】
ここで、ミラー2および中間フレーム3に加えられる駆動力の詳細について説明する。コイル部6に電流が流れて磁界が発生すると、ヨーク部7A、7B内を磁力線が通過しようとする。これにより、一対の端部711、721の一方から他方に向かって(Z方向に沿って)磁力線が通過しようとする。また、磁気素子5A、5Bは、磁極がY方向に並んでいる。
【0033】
これらの磁気的な相互作用により、磁気素子5A、5Bが設けられて外側トーションバー30によって支持された中間フレーム3には、X方向を軸方向として回動させるような駆動力が作用する。尚、磁気素子5Aに生じる駆動力と、磁気素子5Bに生じる駆動力と、は回転の向きが同じとなっている。コイル部6は、ミラー2を含む第1振動系を共振させる周波数の交流磁界を発生するため、中間フレーム3を含む第2振動系は、駆動力が加わっても大きく回動しないようになっている。
【0034】
中間フレーム3の回動が内側トーションバー20を介してミラー2に伝達されると、この回動の周波数と第1振動系の共振周波数とが略一致することから、ミラー2が中間フレーム3よりも大きく回動する。このように、中間フレーム3に加えられた駆動力は、ミラー2まで伝達される。
【0035】
上記の構成により、ヨーク部7A、7Bの延在部71、72がベース部4を挟み込み、その端部711、721が、中間フレーム3に設けられた磁気素子5A、5Bに対向することで、ヨーク部全体をベース部に対してZ方向の一面側に配置する構成と比較して、駆動装置1A全体のZ方向寸法を小さくすることができる。また、ベース部4がミラー2を略半周分囲むとともに開口していることで、全周分囲む構成と比較して、駆動装置1A全体のY方向寸法を小さくすることができる。このように、駆動装置1A全体を小型化することができる。
【0036】
また、磁気素子配置部としての中間フレーム3が設けられていることで、ミラー2に対して磁気素子5A、5Bが直接配置されないようにすることができる。従って、磁気素子5A、5Bを被駆動部に対して接着する場合に、ミラー2において接着による歪み等が発生することを抑制し、磁気素子5A、5Bを設けることによる光学特性の悪化を抑制することができる。
【0037】
また、ミラー2を含む第1振動系と中間フレーム3を含む第2振動系との共振周波数が異なるとともに、コイル部6が第1振動系を共振させる周波数の交流磁界を発生することで、ミラー2の振角を大きくするとともに中間フレーム3の振角を小さくすることができる。従って、磁気素子5A、5Bとヨーク部7A、7Bの端部とを近接配置してもこれらが干渉しにくく、エネルギー損失を小さくすることができる。このように、小さな駆動エネルギーであってもミラー2の振角を大きくすることができる。
【0038】
また、一対の磁気素子対および一対のヨーク対が設けられ、X方向において磁気素子対の中間部とミラー2の中央部とが一致することで、一対のヨーク対に発生する磁界を一対の磁気素子対に作用させる際に、ミラー2に対して対称な位置において駆動力を加えることができ、ミラー2に対して捩れるような力が加わることを抑制することができる。
【0039】
また、磁気素子5A、5Bおよびヨーク部7A、7Bの端部711、721が、それぞれ、中間フレーム3とベース部4との最近接位置に配置されていることで、小さな駆動エネルギーであってもミラー2の振角を大きくすることができる。
【0040】
また、ベース部4が、ヨーク部7A、7Bの連結部73が通過する開口部45を有することで、連結部73が開口部45を通過するようにヨーク部7A、7Bをベース部4に組み付けることができ、組立性を向上させることができる。
【0041】
[第2実施例]
本実施例の駆動装置1Bは、
図3、4に示すように、ミラー2と、中間フレーム3と、ベース部4Bと、2つの磁気素子5A、5Bと、コイル部6Bと、2つのヨーク部7A、7Bと、一対の内側トーションバー20と、一対の外側トーションバー30と、を備えた光偏向器である。本実施例においても、X方向、Y方向およびZ方向は、第1実施例と同様とする。
【0042】
本実施例の駆動装置1Bは、第1実施例の駆動装置1Aに対し、ベース部4Bの形状と、コイル部6Bの形状および配置と、ヨーク部7A、7Bの配置と、が異なっている。
【0043】
ベース部4Bは、第1実施例におけるベース部4から付属枠部44が取り除かれたものである。
【0044】
コイル部6Bは、Y方向を軸方向として配線61が巻回されることで形成されたものであり、ベース部4Bの直線部41に対して下面側に配置される。
【0045】
ヨーク部7A、7Bは、一方の延在部71が直線部41に対して上面側に配置され、他方の延在部72がコイル部6B内に配置される。連結部73は、直線部41に対してミラー2の反対側に配置される。
【0046】
上記の構成により、第1実施例と同様に、ヨーク部7A、7Bの延在部71、72がベース部4Bを挟み込み、ベース部4Bがミラー2を略半周分囲むとともに開口していることで、駆動装置1B全体を小型化することができる。さらに、付属枠部44が省略されていることで、Y方向寸法をさらに小さくすることができる。
【0047】
[第3実施例]
本実施例の駆動装置1Cは、
図5、6に示すように、ミラー2と、中間フレーム3と、ベース部4Cと、2つの磁気素子5A、5Bと、2つのコイル部6C、6Dと、2つのヨーク部7A、7Bと、一対の内側トーションバー20と、一対の外側トーションバー30と、を備えた光偏向器である。本実施例においても、X方向、Y方向およびZ方向は、第1実施例と同様とする。
【0048】
本実施例の駆動装置1Cは、第1実施例の駆動装置1Aに対し、ベース部4Cの形状と、コイル部6C、6Dの数および形状および配置と、ヨーク部7A、7Bの配置と、が異なっている。
【0049】
ベース部4Cは、第1実施例のベース部4Aの付属枠部44に代えて、2つの付属枠部44A、44Bが設けられたものである。2つの付属枠部44A、44Bは、それぞれ、中間フレーム3の接続部36、37(即ち磁気素子5A、5Bが配置される位置)に対してY方向において対向するように設けられている。直線部41と付属枠部44A、44Bとのそれぞれの間に、開口部45A、45Bが形成されている。
【0050】
2つのコイル部6C、6Dは、それぞれ、付属枠部44A、44Bと直線部41によって形成される(開口部45A、45B周囲の)2つの正方形状枠部に沿って延びる配線61によって形成されている。
【0051】
2つのヨーク部7A、7Bは、それぞれ、連結部73が開口部45A、45Bを通過するように設けられ、一対の延在部71、72によって直線部41およびコイル部6C、6Dの一部をZ方向から挟み込む。
【0052】
上記の構成により、第1実施例と同様に、ヨーク部7A、7Bの延在部71、72がベース部4Cを挟み込み、ベース部4Cがミラー2を略半周分囲むとともに開口していることで、駆動装置1C全体を小型化することができる。
【0053】
さらに、2つのコイル部6C、6Dが設けられていることで、1つのコイル部が設けられる構成と比較して、コイル部を構成する配線61の合計長さを短くすることができ、コイル部の合計抵抗値を低減し、発熱およびエネルギー損失を抑制することができる。
【0054】
[第4実施例]
本実施例の駆動装置1Dは、
図7、8に示すように、ミラー2と、中間フレーム3と、ベース部4Dと、2つの磁気素子5A、5Bと、コイル部6と、2つのヨーク部7A、7Bと、一対の内側トーションバー20と、一対の外側トーションバー30と、を備えた光偏向器である。本実施例においても、X方向、Y方向およびZ方向は、第1実施例と同様とする。
【0055】
本実施例の駆動装置1Dは、第1実施例の駆動装置1Aに対し、ベース部4Dの形状が異なっている。ベース部4Dは、第1実施例のベース部4Aが枠状に形成されているのに対し、全体が板状に形成されている。具体的には、板本体47に、中間フレーム3に沿った凹部48が形成されるとともに、凹部48とY方向に隣り合うように開口部45が形成されている。また、凹部48をX方向の両側から挟み込む位置には、一対の突出部49が形成されている。ベース部4Dは、ベース部4Aと同様に、ミラー2を略半周分囲むとともにY方向において開口している。
【0056】
上記の構成により、第1実施例と同様に、ヨーク部7A、7Bの延在部71、72がベース部4Dを挟み込み、ベース部4Dがミラー2を略半周分囲むとともに開口していることで、駆動装置1D全体を小型化することができる。
【0057】
さらに、ベース部4Dが板状に形成されていることで、枠状に形成されている構成と比較して、ベース部4Dの強度を向上させることができる。
【0058】
[第5実施例]
本実施例の駆動装置1Eは、
図9、10に示すように、ミラー2と、磁気素子配置部8A、8Bと、ベース部4Eと、4つの磁気素子5A、5Bと、4つのコイル部6C、6Dと、2つのヨーク部7A、7Bと、一対の内側トーションバー20と、一対の外側トーションバー30と、を備えた光偏向器である。本実施例においても、X方向、Y方向およびZ方向は、第1実施例と同様とする。
【0059】
本実施例の駆動装置1Eは、第1実施例の駆動装置1Aに対し、中間フレーム3に代えて磁気素子配置部8が設けられている点、ベース部4Eの形状、磁気素子5A、5Bの数、及び、コイル部6C、6Dの数が異なっている。
【0060】
磁気素子配置部8A、8Bは、Y方向を長手方向としてXY平面に沿って延びる長方形板状に形成され、ミラー2をX方向から挟み込む位置に配置される。ミラー2と磁気素子配置部8A、8Bとが内側トーションバー20によって接続され、磁気素子配置部8A、8Bとベース部4Eとが外側トーションバー30によって接続される。即ち、ミラー2と磁気素子配置部8A、8Bと内側トーションバー20とによって構成される被駆動部が、外側トーションバー30を介してベース部4Eによって回動可能に支持される。
【0061】
図11にも示すように、磁気素子配置部8Aの両面それぞれに磁気素子5Aが設けられ、同様に、磁気素子配置部8Bの両面それぞれに、磁気素子5Bが設けられる。このとき、磁気素子5A、5Bは、磁気素子配置部8A、8Bの各面全体を覆うことができる寸法を有していることが好ましい。
【0062】
ベース部4Eは、第4実施例のベース部4Dと同様に全体が板状に形成され、板本体47Eに被駆動部を配置可能な凹部48Eが形成されるとともに、2つの磁気素子配置部8A、8BのそれぞれとY方向に対向する位置に開口部45Eが形成されている。また、凹部48EをX方向の両側から挟み込む位置には、外側トーションバー30が接続される一対の突出部49が形成されている。ベース部4Eは、ベース部4Aと同様に、ミラー2を略半周分囲むとともにY方向において開口している。
【0063】
ベース部4Eの両面それぞれに、開口部45Eの周囲に沿って延びる配線61によって形成されたコイル部6C、6Dが配置される。2つのヨーク部7A、7Bは、それぞれ、連結部73が開口部45Eを通過するように設けられ、一対の延在部71、72によってベース部4Eおよび2つのコイル部6C、6Dの一部をZ方向から挟み込む。
【0064】
本実施形態においても、中間フレーム3を採用した第1実施例と同様に、ヨーク部7A、7Bと磁気素子5A、5Bとの磁気的な相互作用により、X方向を軸方向として磁気素子配置部8を回動させるような駆動力が生じ、この回動がミラー2に伝達されるようになっている。このとき、コイル部6C、6Dが発生する交流磁界は、ミラー2と内側トーションバー20とによって構成される第1振動系を共振させる周波数を有しており、ミラー2が中間フレーム3よりも大きく回動するようになっている。
【0065】
上記の構成により、第1実施例と同様に、ヨーク部7A、7Bの延在部71、72がベース部4Eを挟み込み、ベース部4Eがミラー2を略半周分囲むとともに開口していることで、駆動装置1E全体を小型化することができる。
【0066】
さらに、ミラー2のX方向両側に磁気素子配置部8A、8Bが配置されていることで、Y方向においてミラーとベース部との間に中間フレームが配置される構成と比較して、Y方向においてミラー2とベース部4Eとを接近させることができ、駆動装置1EのY方向寸法をさらに小さくすることができる。
【0067】
[第6実施例]
本実施例の駆動装置1Fは、
図12に示すように、ミラー2と、1つの磁気素子配置部8Aと、ベース部4Fと、2つの磁気素子5Aと、2つのコイル部6Eと、1つのヨーク部7Aと、1本の内側トーションバー20と、1本の外側トーションバー30と、1本の軸部40と、を備えた光偏向器である。本実施例においても、X方向、Y方向およびZ方向は、第1実施例と同様とする。
【0068】
本実施例の駆動装置1Fは、第5実施例の駆動装置1Eに対し、1つのみの磁気素子配置部8Aが設けられ、X方向の一方側からミラー2に駆動力が作用する点において異なっている。このとき、ミラー2には、磁気素子配置部8A側には内側トーションバー20が接続され、その反対側には軸部40が接続され、軸部40はベース部4Fに接続される。
【0069】
ベース部4Fの板本体47Fには、被駆動部を配置可能な凹部48Fが形成されるとともに、磁気素子配置部8Aに対応して1つの開口部45Eが形成されている。コイル部6Eは、Y方向を軸方向として配線61が巻回されることで構成されたものであり、ベース部4Fの両面それぞれにおいて、開口部45Eに対して磁気素子配置部8A側に配置される。ヨーク部7Aは、連結部73が開口部45Eを通過するように設けられ、一対の延在部71、72が、ベース部EをZ方向から挟み込むとともに、それぞれ上下のコイル部6Eに挿入される。
【0070】
ここで、ミラー2、内側トーションバー20、および磁気素子配置部8Aが、被駆動部を構成し、被駆動部は、一対の軸部としての外側トーションバー30および軸部40を介して、ベース部4Fによって回動可能に支持されている。また、ミラー2、内側トーションバー20、および軸部40が第1振動系を構成し、コイル部6Eが発生する交流磁界は第1振動系を共振させる周波数を有しており、ミラー2が磁気素子配置部8Aよりも大きく回動するようになっている。
【0071】
上記の構成により、第1実施例と同様に、ヨーク部7Aの延在部71、72がベース部4Fを挟み込み、ベース部4Fがミラー2を略半周分囲むとともに開口していることで、駆動装置1F全体を小型化することができる。
【0072】
さらに、磁気素子配置部8Aが1つのみ設けられていることで、ミラー2の両側に磁気素子配置部を設ける構成と比較して、磁気素子配置部が設けられない側においてミラー2とベース部4Fとを接近させることができ、駆動装置1FのX方向寸法をさらに小さくすることができる。
【0073】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0074】
例えば、前記第1~第6実施例では、ミラー2が楕円板状であるものとしたが、ミラーは、例えば円板状や多角形板状等の他の形状であってもよく、用途に応じた適宜な形状を有していればよい。
【0075】
また、前記第1~第6実施例では、内側トーションバー20と外側トーションバー30とが同軸上に配置されているものとしたが、内側トーションバー20の延在方向と外側トーションバー30の延在方向とは交差していてもよい。即ち、中間フレーム3、3Bが回動した際に、この回動がミラー2に伝達されるようにトーションバーが配置されていればよい。
【0076】
また、前記第1~第6実施例では、中間フレーム3と磁気素子配置部8A、8Bとのうちいずれを用いるか、ベース部の形状、磁気素子の配置および形状、コイル部の数および形状、ヨーク部の数および配置等が互いに異なっているが、これらの特徴は各装置に固有のものではなく、各々の特徴を適宜に組み合わせてもよい。例えば、第1実施例のような枠状のベース部を採用するとともに、第5実施例のような磁気素子配置部を採用してもよい。
【0077】
また、前記第5実施例では、コイル部6C、6Dを構成する配線61が開口部45Eの周囲に沿って延びるものとしたが、
図13に示すように、配線61が開口部45E上を通過する(Z方向から見て配線61が開口部45Eに重なる)構成としてもよい。このような構成によれば、配線61の全長をさらに短くし、低抵抗化して発熱およびエネルギー損失を抑制することができる。尚、このような構成では、まず開口部45Eにヨーク部7A、7Bの連結部73のみを通過させた後、ヨーク部7A、7Bにコイル部6C、6Dを組み付け、ヨーク部7A、7B及びコイル部6C、6Dを磁気素子5A、5Bに近づけるようにY方向にスライドさせればよい。
【0078】
また、
図14に示すように、開口部45Eに代えて、磁気素子5A、5Bとは反対側に開口した切欠き部451を形成してもよい。このような構成によれば、ベース部に対してヨーク部7A、7Bを容易に組み付けることができる。
【0079】
また、前記第1実施例では、ベース部4の側部42、43の端部421、431が、外側トーションバー30との接続位置から突出しているものとしたが、突出しない形状としてもよい。また、端部421、431からミラー2に近づくようにX方向に延びる延長部を設けてもよい。このとき、延長部は、ミラー2からX方向におけるヨーク部7A、7Bの反対側に突出しないことが好ましい。
【0080】
また、前記第1~第6実施例では、ミラー2と、中間フレーム又は磁気素子配置部と、内側トーションバー20と、によって被駆動部が構成されるものとしたが、ミラーのみによって被駆動部が構成されていてもよい。
【0081】
また、前記第1~第6実施例では、配線によってコイル部が形成され、コイル部とベース部とが別体であるものとしたが、ベース部の表面に例えば渦巻き状に金属メッキ加工を施すことにより、ベース部とコイル部とを一体に形成してもよい。
【0082】
また、前記第1~第6実施例では、磁気素子5A、5Bおよびヨーク部7A、7Bの端部711、721が、それぞれ、中間フレームとベース部との最近接位置に配置されるものとしたが、磁気素子およびヨーク部は、例えば駆動装置全体を小型化することができるように配置されていてもよく、最近接位置に配置されていなくてもよい。
【0083】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。