(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018461
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】差動型レゾルバの調整方法及び差動型レゾルバ
(51)【国際特許分類】
G01D 5/20 20060101AFI20230201BHJP
【FI】
G01D5/20 110Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122612
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢野 宏樹
【テーマコード(参考)】
2F077
【Fターム(参考)】
2F077AA11
2F077FF34
2F077PP26
2F077UU20
(57)【要約】
【課題】励磁巻線から出力される信号のバラツキによる位置検出精度の低下を抑制することができる差動型レゾルバの調整方法及び差動型レゾルバを提供すること。
【解決手段】レゾルバロータとレゾルバステータの間のリラクタンスがレゾルバロータの位置により変化し、レゾルバステータに対するレゾルバロータの位置に応じて360[deg]/N(Nは2以上の整数)ずつずれたN相の第1出力信号と、各相ごとの第1出力信号に対して位相反転した逆相の第2出力信号との差信号に基づき、各相の励磁巻線に交流電力を供給したときのリラクタンス変化による電流変化を検出する差動型レゾルバの調整方法であって、N相の第1出力信号を加算した信号の交流成分が略ゼロとなるように調整する第1手順と、第1手順の後に、第1出力信号と第2出力信号を加算した信号の交流成分が略ゼロとなるように調整する第2手順と、を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レゾルバロータとレゾルバステータの間のリラクタンスが前記レゾルバロータの位置により変化し、前記レゾルバステータに対する前記レゾルバロータの位置に応じて360[deg]/N(Nは2以上の整数)ずつずれたN相の第1出力信号と、各相ごとの前記第1出力信号に対して位相反転した逆相の第2出力信号との差信号に基づき、各相の励磁巻線に交流電力を供給したときのリラクタンス変化による電流変化を検出する差動型レゾルバの調整方法であって、
N相の前記第1出力信号を加算した信号の交流成分が略ゼロとなるように調整する第1手順と、
前記第1手順の後に、前記第1出力信号と前記第2出力信号を加算した信号の交流成分が略ゼロとなるように調整する第2手順と、
を有する、
差動型レゾルバの調整方法。
【請求項2】
前記第1手順において、前記第1出力信号と前記第2出力信号との差信号を出力する差動増幅回路の前記第2出力信号の入力端を接地して、N相の前記第1出力信号を加算する、
請求項1に記載の差動型レゾルバの調整方法。
【請求項3】
レゾルバロータとレゾルバステータの間のリラクタンスが前記レゾルバロータの位置により変化し、前記レゾルバステータに対する前記レゾルバロータの位置に応じて360[deg]/N(Nは2以上の整数)ずつずれたN相の第1出力信号と、各相ごとの前記第1出力信号に対して位相反転した逆相の第2出力信号との差信号に基づき、各相の励磁巻線に交流電力を供給したときのリラクタンス変化による電流変化を検出する差動型レゾルバであって、
複数の励磁巻線が直列に接続されて単相交流電源に接続されると共に、抵抗を介して接地されており、複数の励磁巻線と抵抗との接続点から前記第1出力信号が出力され、
複数の励磁巻線が直列に接続されて前記単相交流電源に接続されると共に、抵抗を介して接地されており、複数の励磁巻線と抵抗との接続点から前記第2出力信号が出力され、
2N個の前記抵抗のうち、少なくとも2N-1個の抵抗が可変抵抗である、
差動型レゾルバ。
【請求項4】
2N個の前記抵抗の全てが可変抵抗である、
請求項3に記載の差動型レゾルバ。
【請求項5】
前記第1出力信号と前記第2出力信号との差信号を出力する差動増幅回路を備える、
請求項3又は4に記載の差動型レゾルバ。
【請求項6】
前記差動増幅回路の前記第2出力信号の入力端を接地するスイッチ回路をさらに備える、
請求項5に記載の差動型レゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、差動型レゾルバの調整方法及び差動型レゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
モーメント荷重が加わった場合に、回転センサの誤検出を防止するのに好適な差動型レゾルバが知られている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数相の差動信号の差信号に基づき位置検出を行う差動型レゾルバでは、励磁巻線から出力される信号にバラツキが生じた場合、位置検出精度が低下する可能性がある。
【0005】
本開示は、上記の課題に鑑みてなされたものであって、励磁巻線から出力される信号のバラツキによる位置検出精度の低下を抑制することができる差動型レゾルバの調整方法及び差動型レゾルバを提供すること、を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る差動型レゾルバの調整方法は、レゾルバロータとレゾルバステータの間のリラクタンスが前記レゾルバロータの位置により変化し、前記レゾルバステータに対する前記レゾルバロータの位置に応じて360[deg]/N(Nは2以上の整数)ずつずれたN相の第1出力信号と、各相ごとの前記第1出力信号に対して位相反転した逆相の第2出力信号との差信号に基づき、各相の励磁巻線に交流電力を供給したときのリラクタンス変化による電流変化を検出する差動型レゾルバの調整方法であって、N相の前記第1出力信号を加算した信号の交流成分が略ゼロとなるように調整する第1手順と、前記第1手順の後に、前記第1出力信号と前記第2出力信号を加算した信号の交流成分が略ゼロとなるように調整する第2手順と、を有する。
【0007】
上記構成によれば、励磁巻線から出力される信号のバラツキによる位置検出精度の低下を抑制することができる。
【0008】
差動型レゾルバの調整方法の望ましい態様として、前記第1手順において、前記第1出力信号と前記第2出力信号との差信号を出力する差動増幅回路の前記第2出力信号の入力端を接地して、N相の前記第1出力信号を加算することが好ましい。
【0009】
これにより、差動増幅回路によるバラツキを吸収することができる。
【0010】
上記の目的を達成するため、本開示の一態様に係る差動型レゾルバは、レゾルバロータとレゾルバステータの間のリラクタンスが前記レゾルバロータの位置により変化し、前記レゾルバステータに対する前記レゾルバロータの位置に応じて360[deg]/N(Nは2以上の整数)ずつずれたN相の第1出力信号と、各相ごとの前記第1出力信号に対して位相反転した逆相の第2出力信号との差信号に基づき、各相の励磁巻線に交流電力を供給したときのリラクタンス変化による電流変化を検出する差動型レゾルバであって、複数の励磁巻線が直列に接続されて単相交流電源に接続されると共に、抵抗を介して接地されており、複数の励磁巻線と抵抗との接続点から前記第1出力信号が出力され、複数の励磁巻線が直列に接続されて前記単相交流電源に接続されると共に、抵抗を介して接地されており、複数の励磁巻線と抵抗との接続点から前記第2出力信号が出力され、2N個の前記抵抗のうち、少なくとも2N-1個の抵抗が可変抵抗である。
【0011】
上記構成によれば、励磁巻線から出力される信号のバラツキによる位置検出精度の低下を抑制することができる。また、調整作業を効率化することができる。
【0012】
差動型レゾルバの望ましい態様として、2N個の前記抵抗の全てが可変抵抗であっても良い。
【0013】
差動型レゾルバの望ましい態様として、前記第1出力信号と前記第2出力信号との差信号を出力する差動増幅回路を備える。
【0014】
差動型レゾルバの望ましい態様として、前記差動増幅回路の前記第2出力信号の入力端を接地するスイッチ回路をさらに備えても良い。
【発明の効果】
【0015】
本開示によれば、励磁巻線から出力される信号のバラツキによる位置検出精度の低下を抑制することができる差動型レゾルバの調整方法及び差動型レゾルバを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、実施形態1に係る差動型レゾルバを適用するモータの縦方向断面図である。
【
図2】
図2は、実施形態1に係る差動型レゾルバの断面図である。
【
図3】
図3は、実施形態1に係る差動型レゾルバの回路構成を示す回路図である。
【
図4A】
図4Aは、第1A相出力信号の波形例を示す図である。
【
図4B】
図4Bは、第1B相出力信号の波形例を示す図である。
【
図4C】
図4Cは、第1C相出力信号の波形例を示す図である。
【
図5A】
図5Aは、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第1手順を説明する図である。
【
図5B】
図5Bは、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第1手順を説明する図である。
【
図6A】
図6Aは、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第2手順を説明する図である。
【
図6B】
図6Bは、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第2手順を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施形態2に係る差動型レゾルバの回路構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、発明を実施するための形態(以下、実施形態という)につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、下記の実施形態により本開示が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0018】
(実施形態1)
図1は、実施形態1に係る差動型レゾルバを適用するモータの縦方向断面図である。モータ100は、
図1に示すように、固定子であるステータ22と、回転子であるロータ12と、ロータ12とステータ22の間に介在してロータ12を回転可能に支持するクロスローラ軸受14と、ロータ12に回転トルクを付与するモータ部16と、ロータ12の回転角度位置を検出するレゾルバ30とを有して構成されている。ここで、レゾルバ30、クロスローラ軸受14及びモータ部16は、径方向内側からその順序で径方向の同一平面上に配置されている。
【0019】
ステータ22には、軸方向上方(
図1の上方向)に突出した円環状の内壁体22aが形成され、内壁体22aよりも径方向外側には、軸方向上方に突出した円環状の外壁体22bが形成されている。一方、ロータ12には、軸方向下方(
図1の下方向)に突出した円環状の内壁体12aが形成され、内壁体12aよりも径方向外側には、軸方向下方に突出した円環状の外壁体12bが形成されている。そして、ステータ22及びロータ12は、ステータ22の内壁体22aがロータ12の内壁体12aと外壁体12bの間に、ロータ12の外壁体12bがステータ22の内壁体22aと外壁体22bの間に位置するように互いに跨って配置されている。
【0020】
クロスローラ軸受14は、内輪14aと、外輪14bと、内輪14a及び外輪14bの間で転動可能に設けられた複数のクロスローラ(ころ)14cとを有して構成されている。クロスローラ14cは、直径が長さよりわずかに大きな略円状で、軌道上偶数番目の回転軸と、軌道上奇数番目の回転軸が互いに90°傾斜している。
【0021】
内輪14aは、その下面がステータ22の内壁体22aの上面に接着されることにより固定されている。外輪14bは、その上面がロータ12の外壁体12bの下面に接着されることにより固定されている。
【0022】
ステータ22は、ボルト24aにより固定板24に固定され、ロータ12は、出力軸の外周面に嵌合している。
【0023】
モータ部16は、永久磁石16aと、永久磁石16aと所定間隔をもって対向して配置されるコイル16bとを有して構成されている。永久磁石16aは、外輪14bの外周面に接着されることにより部材を介さずに外輪14bに直接固定されている。一方、コイル16bは、ボルト16cによりステータ22の外壁体22bに取り付けられている。
【0024】
レゾルバ30は、モータ100の位置検出を行う。レゾルバ30は、中空環状の成層鉄心からなるレゾルバロータ18と、レゾルバロータ18と所定間隔をもって対向して配置され、複数のステータポールが円周方向に等間隔に形成された環状の成層鉄心からなるレゾルバステータ20とを有して構成されるアウターロータ式の差動型レゾルバである。
【0025】
2つのレゾルバ30のレゾルバロータ18は、ロータ間座42を介して微小な間隔をもって配置され、ボルト18aによりロータ12の内壁体12aの外周面に取り付けられている。一方、2つのレゾルバ30のレゾルバステータ20は、内輪14aの内周面に接着されることにより部材を介さずに内輪14aに直接固定されている。
【0026】
そして、コイル16bに通電することにより、ロータ12及びレゾルバロータ18が一体に回転し、レゾルバステータ20によりリアクタンス変化を検出し、制御器(不図示)により回転速度や位置決めの制御を行う構造となっている。
【0027】
図2は、実施形態1に係る差動型レゾルバの断面図である。
図3は、実施形態1に係る差動型レゾルバの回路構成を示す回路図である。
【0028】
レゾルバステータ20の内周面には、
図2に示すように、半径方向に突出するN相例えば3相18極の第1の磁極A11~A16、B11~B16、C11~C16が所定間隔を保ってその順に形成され、これら第1の磁極A11~A16、B11~B16、C11~C16のそれぞれの磁極の中間位置に3相18極の第2の磁極A21~A26、B21~B26、C21~C26が形成され、これらの各磁極が、A11-21-B11-A21-C11-B21-A12-C22-・・・の順序で配列されている。そして、各磁極A11~C26には、内周面側の端面に3つの歯TS1~TS3が形成されているとともに、中央部に1つの励磁巻線LA11~LC26が巻装されている。そのため、180度の位置の磁極は互いに同相となる。
【0029】
レゾルバロータ18は、外周面に等間隔で150歯のスロット歯TRが形成されている。ここで、レゾルバロータ18のスロット歯TRのピッチは、例えば、レゾルバロータ18の隣接する3つの歯TRがレゾルバステータ20の磁極A11の歯TS1~TS3と一致しているものとすると、隣接する磁極C21の歯TS1~TS3はレゾルバロータ18のスロット歯TRに対して1/36ピッチ分機械的位相ずれを生じるように形成されている。
【0030】
そして、各磁極A11~C26の励磁巻線LA11~LC26が、
図3に示すように、各第1の磁極i11~i16(i=A,B,C)の励磁巻線Li11~Li16が直列に接続されて励磁巻線LA11~LC11が単相交流電源63に接続され、かつ、励磁巻線LA16~LC16が抵抗RA1~RC1を介して接地されているとともに、残りの第2の磁極i21~i26の励磁巻線Li21~Li26が直列に接続されて励磁巻線LA21~LC21が同様に単相交流電源63に接続され、かつ、励磁巻線LA26~LC26が抵抗RA2~RC2を介して接地されている。本実施形態において、抵抗RA1~RC1及び抵抗RA2~RC2は、後述する信号調整用の可変抵抗である。
【0031】
励磁巻線LA16~LC16及びLA26~LC26と抵抗RA1~RC1及びRA2~RC2との接続点から各磁極とレゾルバロータ18のスロット歯TRとの間のリラクタンス変化による電流変化に応じた第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1が出力される出力端子TA1,TB1,TC1、及び、第2A相出力信号A2、第2B相出力信号B2、第2C相出力信号C2が出力される出力端子TA2,TB2,TC2が設けられ、これらがオペアンプで構成される3つの差動増幅回路65A,65B,65Cに接続されている。
【0032】
差動増幅回路65A,65B,65Cのそれぞれは、オペアンプOPの非反転入力側が抵抗RI1を介して出力端子TA1に接続されているとともに抵抗REを介して接地され、反転入力側が抵抗RI2を介して出力端子TA2,TB2,TB2に接続され、かつ、反転入力側と出力側との間に帰還抵抗RFが介挿されている。差動増幅回路65Aに入力される第1A相出力信号A1と第2A相出力信号A2との差信号が出力される出力端子TAが設けられ、差動増幅回路65Bに入力される第1B相出力信号B1と第2B相出力信号B2との差信号が出力される出力端子TBが設けられ、差動増幅回路65Cに入力される第1C相出力信号C1と第2C相出力信号C2との差信号が出力される出力端子TCが設けられる。
【0033】
これら差動増幅回路65A,65B,65Cから出力される励磁電流に応じた3相交流電圧が3相を2相に変換する相変換回路66に供給され、相変換回路66から出力される2相信号が信号処理回路67に供給される。
【0034】
図4Aは、第1A相出力信号の波形例を示す図である。
図4Bは、第1B相出力信号の波形例を示す図である。
図4Cは、第1C相出力信号の波形例を示す図である。
【0035】
図4A、
図4B、
図4Cに示すように、第1i(i=A,B,C)相出力信号i1は、各磁極とレゾルバロータ18のスロット歯TRとの間のリラクタンス変化による電流変化に応じた略正弦波信号(交流信号)に対し、実線で示す単相交流電源63の交流波形が重畳した波形となる。ここで、略正弦波信号とは、具体的に、例えばモータ100が等速回転している状態において、理想的な正弦波形に酷似した波形形状を有する。略正弦波信号は、実線で示す単相交流電源63の交流波形の包絡線として現れる。また、第1B相出力信号B1は、第1A相出力信号A1に対して、略正弦波信号の120[deg]遅れた信号となる。また、第1C相出力信号C1は、第1A相出力信号A1に対して、略正弦波信号の240[deg]遅れた信号となる。すなわち、第1i相出力信号i1(i=A,B,C)は、レゾルバステータ20に対するレゾルバロータ18の位置に応じて360[deg]/3(=120[deg])ずつずれている。
【0036】
一方、第2i(i=A,B,C)相出力信号i2は、単相交流電源63の交流波形が重畳した第1i相出力信号の略正弦波信号が位相反転した逆相信号となる。これにより、第2B相出力信号B2は、第2A相出力信号A2に対して、略正弦波信号の120[deg]遅れた信号となる。また、第2C相出力信号C2は、第2A相出力信号A2に対して、略正弦波信号の240[deg]遅れた信号となる。
【0037】
第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1、第2A相出力信号A2、第2B相出力信号B2、第2C相出力信号C2の略正弦波信号にバラツキが生じた場合、位置検出精度が低下する可能性がある。第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1、第2A相出力信号A2、第2B相出力信号B2、第2C相出力信号C2の略正弦波信号のバラツキの要因としては、例えば、各励磁巻線のバラツキや、差動増幅回路65A,65B,65Cの各抵抗のバラツキ等が挙げられる。
【0038】
本実施形態では、可変抵抗である信号調整用の抵抗RA1~RC1及び抵抗RA2~RC2を調整することで、第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1、第2A相出力信号A2、第2B相出力信号B2、第2C相出力信号C2の略正弦波信号のバラツキを抑制し、位置検出精度の向上を図る。以下、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法について説明する。
【0039】
図5A及び
図5Bは、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第1手順を説明する図である。
【0040】
本実施形態では、まず、第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1の調整を行う。第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1は、それぞれ、下記(1)式、(2)式、(3)式で表せる。下記(1)式、(2)式、(3)式において、Aは、第1A相出力信号A1の直流成分を示し、Bは、第1B相出力信号B1の直流成分を示し、Cは、第1C相出力信号C1の直流成分を示している。
【0041】
A1=(A+sinθ)×sinωt・・・(1)
【0042】
B1={B+sin(θ-120)}×sinωt・・・(2)
【0043】
C1={C+sin(θ-240)}×sinωt・・・(3)
【0044】
第1A相出力信号A1の直流成分Aは、抵抗RA1により調整することができる。第1B相出力信号B1の直流成分Bは、抵抗RB1により調整することができる。第1C相出力信号C1の直流成分Cは、抵抗RC1により調整することができる。
【0045】
第1A相出力信号A1の直流成分A、第1B相出力信号B1の直流成分B、第1C相出力信号C1の直流成分Cが下記(4)式を満たすとき、下記(5)式が成立し、
図5Aに示すように、第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1を加算した信号の略正弦波信号の成分がゼロとなる。
【0046】
A=B=C・・・(4)
【0047】
A1+B1+C1=0・・・(5)
【0048】
第1A相出力信号A1の直流成分A、第1B相出力信号B1の直流成分B、第1C相出力信号C1の直流成分Cが上記(4)式を満たさない場合には、下記(6)式となり、
図5Bに示すように、第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1を加算した信号に略正弦波信号が現れる。
【0049】
A1+B1+C1≠0・・・(6)
【0050】
実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第1手順では、出力端子TA2,TB2,TC2を接地する。これにより、出力端子TA、出力端子TB、出力端子TCにそれぞれ第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1が出力される。そして、出力端子TA、出力端子TB、出力端子TCから出力される第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1を加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号(交流信号)が所定範囲Δv1内となるように、抵抗RA1、抵抗RB1、抵抗RC1を調整する。より好ましくは、第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1を加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号(交流信号)が略ゼロとなるように、抵抗RA1、抵抗RB1、抵抗RC1を調整する。
【0051】
なお、
図3では、出力端子TA2,TB2,TC2を接地する各スイッチ回路SWA,SWB,SWCをレゾルバ30に設けた例を示したが、これに限らず、出力端子TA2,TB2,TC2に接続した調整治具等のレゾルバ30の外部で接地する態様であっても良い。
【0052】
図6A及び
図6Bは、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第2手順を説明する図である。
【0053】
本実施形態では、第1手順に続いて、第2A相出力信号A2、第2B相出力信号B2、第2C相出力信号C2の調整を行う。
【0054】
第2A相出力信号A2、第2B相出力信号B2、第2C相出力信号C2の包絡線に現れる略正弦波信号は、それぞれ、第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1の包絡線に現れる略正弦波信号に対して位相反転した逆相信号である。
【0055】
第2A相出力信号A2の直流成分A’は、抵抗RA2により調整することができる。第2B相出力信号B2の直流成分B’は、抵抗RB2により調整することができる。第2C相出力信号C2の直流成分C’は、抵抗RC2により調整することができる。
【0056】
第1A相出力信号A1の直流成分A、及び第2A相出力信号A2の直流成分A’が下記(7)式を満たすとき、下記(8)式が成立し、
図6Aに示すように、第1A相出力信号A1、第2A相出力信号A2を加算した信号の略正弦波信号の成分がゼロとなる。
【0057】
A=A’・・・(7)
【0058】
A1+A2=0・・・(8)
【0059】
第1A相出力信号A1の直流成分A、及び第2A相出力信号A2の直流成分A’が上記(7)式を満たさない場合には、下記(9)式となり、
図6Bに示すように、第1A相出力信号A1、及び第2A相出力信号A2を加算した信号に略正弦波信号が現れる。
【0060】
A1+A2≠0・・・(9)
【0061】
実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第2手順では、出力端子TA1から出力される第1A相出力信号A1と出力端子TA2から出力される第2A相出力信号A2とを加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号(交流信号)が所定範囲Δv2内となるように、抵抗RA2を調整する。より好ましくは、第1A相出力信号A1と第2A相出力信号A2を加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号(交流信号)が略ゼロとなるように、抵抗RA2を調整する。
【0062】
また、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第2手順では、出力端子TB1から出力される第1B相出力信号B1と出力端子TB2から出力される第2B相出力信号B2とを加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号(交流信号)が所定範囲Δv2内となるように、抵抗RB2を調整する。より好ましくは、第1B相出力信号B1と第2B相出力信号B2を加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号(交流信号)が略ゼロとなるように、抵抗RB2を調整する。
【0063】
また、実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第2手順では、出力端子TC1から出力される第1C相出力信号C1と出力端子TC2から出力される第2C相出力信号C2とを加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号(交流信号)が所定範囲Δv2内となるように、抵抗RC2を調整する。より好ましくは、第1C相出力信号C1と第2C相出力信号C2を加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号(交流信号)が略ゼロとなるように、抵抗RC2を調整する。
【0064】
上述した実施形態1に係る差動型レゾルバの調整方法の第1手順及び第2手順により、励磁巻線から出力される信号のバラツキによる位置検出精度の低下を抑制することができる。
【0065】
(実施形態2)
図7は、実施形態2に係る差動型レゾルバの回路構成を示す回路図である。本実施形態において、抵抗RA1~RC1及び抵抗RA2~RC2のうち、抵抗RB1を固定抵抗としている。
【0066】
本実施形態に係る差動型レゾルバの調整方法の第1手順では、出力端子TA2,TB2,TC2を接地し、出力端子TA、出力端子TB、出力端子TCから出力される第1A相出力信号A1、第1B相出力信号B1、第1C相出力信号C1を加算した信号の包絡線に現れる略正弦波信号が所定範囲Δv1内となるように、抵抗RA1及び抵抗RC1を調整する。これにより、調整作業を効率化することができる。
【0067】
なお、上述した実施形態では、第1i相出力信号i1(i=A,B,C)が、レゾルバステータ20に対するレゾルバロータ18の位置に応じて360[deg]/3(=120[deg])ずつずれており、第2i相出力信号i2(i=A,B,C)が、第1i相出力信号i1に対して位相反転した逆相信号である例について説明したが、これに限らず、360[deg]/N(Nは2以上の整数)ずつずれたN相の第1出力信号と、各相ごとの第1出力信号に対して位相反転した逆相の第2出力信号との差信号に基づき、各相の励磁巻線に交流電力を供給したときのリラクタンス変化による電流変化を検出する態様に適用することも可能である。
【0068】
また、上述で使用した図は、本開示に関して定性的な説明を行うための概念図であり、これらに限定されるものではない。また、上述の実施形態は本開示の好適な実施の一例ではあるが、これに限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々変形実施可能である。
【符号の説明】
【0069】
30 レゾルバ
63 単相交流電源
65A,65B,65C 差動増幅回路
66 相変換回路
67 信号処理回路
A1 第1A相出力信号
A2 第2A相出力信号
B1 第1B相出力信号
B2 第2B相出力信号
C1 第1C相出力信号
C2 第2C相出力信号
LA11~LA16,LA21~LA26,LB11~LB16,LB21~LB26,LC11~LC16,LC21~LC26 励磁巻線
RA1,RB1,RC1,RA2,RB2,RC2 抵抗
SWA,SWB,SWC スイッチ回路
TA,TB,TC 出力端子
TA1,TB1,TC1 出力端子
TA2,TB2,TC2 出力端子
100 モータ