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特開2023-184620ポリペプチドを修飾するための組成物及び方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184620
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】ポリペプチドを修飾するための組成物及び方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 247/04 20060101AFI20231221BHJP
   C07C 327/22 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 49/16 20060101ALI20231221BHJP
   A61K 47/68 20170101ALI20231221BHJP
   A61P 19/02 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 17/06 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 3/10 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 1/04 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 25/28 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20231221BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
C07C247/04 CSP
C07C327/22
A61K39/395 C
A61K39/395 L
A61K49/16
A61K47/68
A61P19/02
A61P29/00 101
A61P31/04
A61P31/12
A61P37/02
A61P17/06
A61P25/00
A61P3/10
A61P1/04
A61P25/28
A61P35/00
A61P9/00
A61P1/16
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023186540
(22)【出願日】2023-10-31
(62)【分割の表示】P 2020544572の分割
【原出願日】2018-11-05
(31)【優先権主張番号】62/764,086
(32)【優先日】2018-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/707,474
(32)【優先日】2017-11-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】520156731
【氏名又は名称】アドバンスト・プロテオーム・セラピューティクス・インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】520156742
【氏名又は名称】アレクサンダー・クランツ
(71)【出願人】
【識別番号】520154841
【氏名又は名称】グレゴール・ライマルシック
(71)【出願人】
【識別番号】520156753
【氏名又は名称】アンジェイ・ウィルチンスキ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー・クランツ
(72)【発明者】
【氏名】グレゴール・ライマルシック
(72)【発明者】
【氏名】アンジェイ・ウィルチンスキ
(57)【要約】
【課題】ペイロードを抗体及び他のタンパク質に部位選択的に架橋するための方法を提供する。
【解決手段】本明細書に記載されている組成物及び方法を使用して標的タンパク質を生体直交反応性実体(ORE)で標識化するように設計されたトレースレス親和性標識を使用して達成することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本願明細書に記載の発明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照文献
この出願は、2017年11月4日に出願されたUSSN 62/707,474、及び2018年7月18日に出願されたUSSN 62/764,086に基づく優先権を請求する。これらの出願の内容は、それらの全体で参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、一般に、修飾されたタンパク質並びに修飾されたタンパク質を作製及び使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
タンパク質の化学的修飾技術における大きな弱点は、所望の部位での、例えば、抗体軽鎖のリジン残基での、タンパク質の部位選択的/化学特異的な標識化のための方法の欠如である。タンパク質における最もアクセス可能なリジンの部位選択的標識化のための単純な方法は有利である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Dommerholt J.ら、Strain-Promoted 1,3-Dipolar Cycloaddition of Cycloalkynes and Organic Azides.、Top Curr Chem (Cham). 2016 Apr;374(2):16)
【非特許文献2】Fluorogenic click reaction。Le Droumaguet C、Wang C、Wang Q. Chem Soc Rev. 2010 39(4):1233~9
【非特許文献3】Dovganら(Acyl Fluorides: Fast, Efficient, and Versatile Lysine-Based Protein Conjugation via Plug-and-Play Strategy、Bioconjugate Chem. 2017、28、1452~1457頁)
【非特許文献4】Hackerら(Global profiling of lysine reactivity and ligandability in the human proteome、Nature Chemistry)
【非特許文献5】Tsaiら、Anal.Chem、2014、86、2931~8
【非特許文献6】Click Chemistry: Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions、H.C. Kolb、M.G. Finn及びK.B. Sharpless、Angew. Chem. Int.編、2001、40、2004~2021頁
【非特許文献7】Dommerholtら、Top Curr Chem (Z) (2016) 374:16
【非特許文献8】H. C. Kolb、M. G. Finn及びK. B. Sharpless (2001)。Click Chemistry: Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions。Angewandte Chemie International編 40 (11): 2004~2021頁
【非特許文献9】Bergeら、J. Pharmaceutical Sciences 66:1~19、1977
【非特許文献10】Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use、(編集 P.H. Stahl及びC.G. Wermuth)、Wiley-VCH、2008
【非特許文献11】Banerjee S.ら、Lutetium-177 therapeutic radiopharmaceuticals: linking chemistry, radiochemistry, and practical applications。Chem Rev. 2015年4月22日;115(8):2934~74
【非特許文献12】Scheinberg, DA及びMcDevit MR、Actinium-225 in targeted alpha-particle therapeutic applications、Curr Radiopharm。2011、4、306~320頁
【非特許文献13】Dommerholt J.ら、Strain-Promoted 1,3-Dipolar Cycloaddition of Cycloalkynes and Organic Azides.、Top Curr Chem (Cham). 2016 Apr;374(2):16
【非特許文献14】Thiele NAら、An Eighteen-Membered Macrocyclic Ligand for Actinium-225 Targeted Alpha Therapy。Angew Chem Int編 Engl. 2017年11月13日;56(46):14712~14717頁
【非特許文献15】Anami Y.ら、Enzymatic conjugation using branched linkers for constructing homogeneous antibody-drug conjugates with high potency。Org Biomol Chem. 2017年7月5日;15(26):5635~5642頁
【非特許文献16】Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版(Mack Publishing社、Easton、Pa.、1990)
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
ある態様において、本開示は、式I
【0006】
【化1】
【0007】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、
Rは、反応性ハンドルであり;
qは、0~40であり;
rは、1~20であり;
Xは、O又はS又はSeであり:及び、
nは、0又は2~5である。
【0008】
実施形態において、反応性ハンドルは、アルキン、シクロアルキン(例えば、シクロオクチン、一又は二フッ化シクロオクチン、ジメトキシアザシクロオクチン、ジベンゾシクロオクチン、ジベンゾアザシクロオクチン、ビアリールアザシクロオクチノン、ビシクロノニン、2,3,6,7-テトラメトキシジベンゾシクロオクチン、スルホニル化ジベンゾシクロオクチン、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン、一又は二フッ化モノベンゾシクロオクチン、ピロロシクロオクチン)、アジド、ベンジルアジド、1,3-ジエン、ニトリルオキシド、ニトロン、テトラジン、trans-シクロオクテン、又は適切な対応する反応実体への生体直交性環化付加を受けることができるそれらの構造関連誘導体からなる群から選択される。
【0009】
実施形態において、反応性ハンドルは、trans-シクロオクテン又はテトラジンである。
【0010】
実施形態において、反応性ハンドルはアジドである。
【0011】
実施形態において、XはOである。
【0012】
実施形態において、XはSである。
【0013】
実施形態において、nは5である。
【0014】
実施形態において、反応性ハンドルは、trans-シクロオクテン又はアジドであり、XはOであり、nは、5である。
【0015】
さらなる態様において、本開示は、式II
【0016】
【化2】
【0017】
の化合物又はその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、
R1及びR2は、各々個々に、反応性ハンドルであり;
q1、q2及びq3は各々、独立して、0~40であり;
r1、r2及びr3は各々、独立して、1~20であり;
sは、1~6であり;
Xは、O又はS又はSeであり:並びに
nは、0又は2~5である。
【0018】
実施形態において、反応性ハンドルR1及びR2は、アルキン、シクロアルキン(例えば、シクロオクチン、一又は二フッ化シクロオクチン、ジメトキシアザシクロオクチン、ジベンゾシクロオクチン、ジベンゾアザシクロオクチン、ビアリールアザシクロオクチノン、ビシクロノニン、2,3,6,7-テトラメトキシジベンゾシクロオクチン、スルホニル化ジベンゾシクロオクチン、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン、一又は二フッ化モノベンゾシクロオクチン、ピロロシクロオクチン)、アジド、ベンジルアジド、1,3-ジエン、ニトリルオキシド、ニトロン、テトラジン、trans-シクロオクテン、又は適切な対応する反応実体に対する生体直交性環化付加を受けることができるそれらの構造関連誘導体からなる群から独立して選択される。
【0019】
実施形態において、反応性ハンドルは、trans-シクロオクテン又はテトラジンのいずれかである。
【0020】
実施形態において、R1又はR2のいずれか1つ又は両方の反応性ハンドルは、アジドである。
【0021】
実施形態において、XはOである。
【0022】
実施形態において、XはSである。
【0023】
またさらなる態様において、本開示は、式III
【0024】
【化3】
【0025】
のリンカー-抗体コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩を提供し、
式中、
R1及びR2は、各々独立して、反応性ハンドルであり;
q1、q2及びq3は各々、独立して、0~40であり;
r1、r2及びr3は各々、独立して、1~20であり;
sは、1~6であり;
mは、1~2であり;並びに、
ABは、抗体である。
【0026】
実施形態において、リンカーは、AB上のリジンに部位選択的に結合している。
【0027】
実施形態において、リジンは、リジン188である。
【0028】
実施形態において、リンカーは、リジン188に対して50~100%の間で部位選択的である。
【0029】
実施形態において、リンカーは、リジン188に対して75~100%の間で部位選択的である。
【0030】
実施形態において、リンカーは、リジン188に対して少なくとも90%で部位選択的である。
【0031】
実施形態において、反応性ハンドルR1及びR2は、アルキン、シクロアルキン(例えば、シクロオクチン、一又は二フッ化シクロオクチン、ジメトキシアザシクロオクチン、ジベンゾシクロオクチン、ジベンゾアザシクロオクチン、ビアリールアザシクロオクチノン、ビシクロノニン、2,3,6,7-テトラメトキシジベンゾシクロオクチン、スルホニル化ジベンゾシクロオクチン、カルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン、一又は二フッ化モノベンゾシクロオクチン、ピロロシクロオクチン)、アジド、ベンジルアジド、1,3-ジエン、ニトリルオキシド、ニトロン、テトラジン、trans-シクロオクテン、又は適切な対応する反応実体に対する生体直交性環化付加を受けることができるそれらの構造関連誘導体からなる群から独立して選択される。
【0032】
実施形態において、反応性ハンドルは、trans-シクロオクテン又はテトラジンである。
【0033】
実施形態において、反応性ハンドルはアジドである。
【0034】
別の態様において、本開示は、式IV
【0035】
【化4】
【0036】
のペイロード-リンカー-抗体コンジュゲート又はその薬学的に許容される塩を特色とし、
式中、
q1、q2及びq3は各々、独立して、0~40であり;
r1、r2及びr3は各々、独立して、1~20であり;
sは、1~6であり;
mは、1~2であり;
L1及びL2は、クリック反応の生成物である連結部分であり;
Y及びZは各々、独立して、毒素、薬物及びキレーターペイロードから選択され;並びに、
ABは、抗体である。
【0037】
実施形態において、L1及びL2は、アジドとシクロアルキン基との間のクリック反応の生成物である。
【0038】
実施形態において、形成されたL1基又はL2基は、式IVのY又はZ上のアジドを反応させた生成物である。
【0039】
実施形態において、形成されたL1基又はL2基は、式IVのY及び/又はZ上のシクロアルキンを反応させた生成物である。
【0040】
実施形態において、L1又はL2は、各々独立して、-C(O)C1~C30-複素芳香族-又は-C1~C30-複素芳香族-C(O)-から選択される。
【0041】
実施形態において、L1又はL2は、以下の構造の連結部分であり:
【0042】
【化5】
【0043】
式中、(A)又は(B)のいずれかは、毒素、薬物又はキレーターペイロードに結合している。
【0044】
実施形態において、リンカーは、リジンに部位選択的に結合している。
【0045】
実施形態において、リジンはリジン188である。
【0046】
実施形態において、リンカーは、リジン188に対して50~100%の間で部位選択的である。
【0047】
実施形態において、リンカーは、リジン188に対して75~100%の間で部位選択的である。
【0048】
実施形態において、ABは、アブシキシマブ、アダリムマブ、アダリムマブ-atto、アド-トラスツズマブエムタンシン、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ、ダクリズマブ(ゼナパックス)、ダクリズマブ(ジンブリタ)、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、ゴリムマブ、ゴリムマブ、イブリツモマブチウキセタン、イダルシズマブ、インフリキシマブ、インフリキシマブ-abda、インフリキシマブ-dyyb、イピリムマブ、イキセキズマブ、メポリズマブ、ナタリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レスリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、サリルマブ、リツキシマブ及びヒアルロニダーゼグセルクマブ、イノツズマブオゾガマイシン、アダリムマブ-adbm、ゲムツズマブオゾガマイシン、ベバシズマブ-awwb、ベンラリズマブ、及びエミシズマブ-kxwh、トラスツズマブ-dkst、インフリキシマブ-qbtx、イバリズマブ-uiyk、チルドラキズマブ-asmn、ブロスマブ-twza、及びエレヌマブ-aooeからなる群から選択される。
【0049】
実施形態において、(A)又は(B)は、キレーターである。
【0050】
実施形態において、キレーターは、放射性核種に結合している。
【0051】
実施形態において、キレーターは、macropa又はDOTAである。
【0052】
実施形態において、放射性核種は、アクチニウム-225又はルテチウム-177である。
【0053】
実施形態において、キレーターはmacropaであり、放射性核種はアクチニウム-225である。実施形態において、キレーターはDOTAであり、放射性核種はルテチウム-177である。
【0054】
一態様において、本開示は、タンパク質のアミノ基を部位選択的に官能化するための方法であって、
タンパク質と式Iの化合物を含む直交反応性部分とを接触させる工程;
直交反応性部分とタンパク質のアミノ基との間に共有結合を形成する工程;及び
直交反応性部分と反応性フェニル部分(脱離基として作用する)との間の共有結合を切断することで、部位選択的に官能化された(アシル化された)タンパク質を得る工程
を含む方法を特色とする。
【0055】
実施形態において、タンパク質は、ペイロードを含む。
【0056】
実施形態において、ペイロードは、抗体、毒素又はキレーターを含む。
【0057】
ペイロードが抗体である場合、抗体は、例えば、アブシキシマブ、アダリムマブ、アダリムマブ-atto、アド-トラスツズマブエムタンシン、アレムツズマブ、アリロクマブ、アテゾリズマブ、アベルマブ、バシリキシマブ、ベリムマブ、ベバシズマブ、ベズロトクスマブ、ブリナツモマブ、ブレンツキシマブベドチン、ブロダルマブ、カナキヌマブ、カプロマブペンデチド、セルトリズマブペゴール、セツキシマブ、ダクリズマブ(ゼナパックス)、ダクリズマブ(ジンブリタ)、ダラツムマブ、デノスマブ、ジヌツキシマブ、デュピルマブ、デュルバルマブ、エクリズマブ、エロツズマブ、エボロクマブ、ゴリムマブ、ゴリムマブ、イブリツモマブチウキセタン、イダルシズマブ、インフリキシマブ、インフリキシマブ-abda、インフリキシマブ-dyyb、イピリムマブ、イキセキズマブ、メポリズマブ、ナタリズマブ、ネシツムマブ、ニボルマブ、オビルトキサキシマブ、オビヌツズマブ、オクレリズマブ、オファツムマブ、オララツマブ、オマリズマブ、パリビズマブ、パニツムマブ、ペンブロリズマブ、ペルツズマブ、ラムシルマブ、ラニビズマブ、ラキシバクマブ、レスリズマブ、リツキシマブ、セクキヌマブ、シルツキシマブ、トシリズマブ、トシリズマブ、トラスツズマブ、ウステキヌマブ、ベドリズマブ、サリルマブ、リツキシマブ及びヒアルロニダーゼグセルクマブ、イノツズマブオゾガマイシン、アダリムマブ-adbm、ゲムツズマブオゾガマイシン、ベバシズマブ-awwb、ベンラリズマブ、及びエミシズマブ-kxwh、トラスツズマブ-dkst、インフリキシマブ-qbtx、イバリズマブ-uiyk、チルドラキズマブ-asmn、ブロスマブ-twza、及びエレヌマブ-aooeであってよい。
【0058】
一部の実施形態において、ペイロードは、毒素、例えば、メイタンシノイド、オーリスタチン、ドラスタチン、ツブリシン、カリケアマイシン、ピロロベンゾジアゼピン、ドキソルビシン、デュオカルマイシン、デュオカルマイシン誘導体CC-1065、カルボプラチン(パラプラチン)、シスプラチン、シクロホスファミド、イホスファミド、ニドラン、ナイトロジェンマスタード(メクロレタミンHCL)、ブレオマイシン、マイトマイシンC、シタラビン、フルオロウラシル、ゲムシタビン、トリメトレキセート、メトトレキセート、エトポシド、ビンブラスチン、ビノレルビン、アリムタ、アルトレタミン、プロカルバジン、パクリタキセル、ドセタキセル、トポテカン、イリノテカン、トリコテセン、アマニチン、例えば、アルファアマニチン、他のエンジイン抗生物質、又は外毒素、植物毒素、ジフテリア毒素、ボツリヌス毒素、破傷風毒素、赤痢毒素、コレラ毒素、ピロロベンゾジアゼピン、テトロドトキシン、ブレベトキシン、シガトキシン、リシン、AM毒素、ツブリシン、ゲルダナマイシン、メイタンシノイド、カリケアマイシン、ダウノマイシン、ドキソルビシン、ビンデシン、SG2285、ドラスタチン、オーリスタチン、クリプトフィシン、カンプトテシン、リゾキシン、デュオカルマイシン、エンジイン抗生物質、エスペラマイシン、エポシロン、アントラサイクリン、タキソール、カルボプラチン、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、カリケアマイシン、メイタンシン、ツブリシン、及びそれらの類似体である。
【0059】
一部の実施形態において、ペイロードは、キレーター、例えば、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン([12]aneN4); 1,4,7,10-テトラアザシクロトリデカン([13]aneN4); 1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン([14]aneN4); 1,4,8,12-テトラアザシクロペンタデカン([15]aneN4); 1,5,9,13-テトラアザシクロヘキサデカン([16]aneN4);エチレン-ジアミン-四酢酸(EDTA);ジエチレン-トリアミン-五酢酸(DTPA)、1,4-エタノ-1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン(et-シクラム); 1,4,7,11-テトラアザシクロテトラデカン(iso-シクラム); 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA); 2-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1-イル)アセテート(DO1A); 2,2'-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,7-ジイル)二酢酸(DO2A); 2,2',2''-(1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリイル)三酢酸(DO3A); 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-テトラ(メタンホスホン酸)(DOTP); 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,7-ジ(メタンホスホン酸)(DO2P); 1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7-トリ(メタンホスホン酸)(DO3P); 1,4,8,11-15テトラアザシクロテトラデカン-1,4,8,11-四酢酸(TETA); 2-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1-イル)酢酸(TE1A); 2,2'-(1,4,8,11-テトラアザシクロテトラデカン-1,8-ジイル)二酢酸(TE2A);エチレン-ジアミン-四酢酸(EDTA)、及び/又はMacropaである。
【0060】
さらなる態様において、本開示は、本明細書において記載されている方法によって生成される、部位選択的に官能化されたタンパク質を提供する。
【0061】
実施形態において、タンパク質は、タンパク質及び薬学的に許容される担体を含む医薬組成物の一部として提供される。
【0062】
また、本開示によって提供されるのは、状態又は疾患を処置する方法であり、該方法は、該医薬組成物を、それを必要とする対象に投与することを含む。
【0063】
さらなる態様において、本開示は、部位選択的標識化用化合物を同定するための方法であって、
複数の同一タンパク質を供給する工程であり、各タンパク質は、2個以上のアミノ(--NH2)基を含む、工程;
複数のタンパク質と複数の標識化用化合物とを接触させる工程;
1種又は複数のタンパク質の1個又は複数のアミノ基と1種又は複数の化合物の第1の直交反応性部分との間に共有結合を形成することで、1種又は複数の標識化タンパク質を得る工程;
最も高い選択性で標識化されたタンパク質を同定する工程;及び
対応する部位選択的標識化用化合物を同定する工程
を含む方法を提供する。
【0064】
ある実施形態において、本明細書において提供されるのは、Table 1 (表1)に示されている通りのタンパク質及び対応する試薬である。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】標的抗体(例えば、IgG1アイソタイプ)から、Lys188で部位選択的に標識化された生成物抗体-薬物コンジュゲートに至る方法を示す図である。
図2】試験された抗体コンジュゲートTzm-A及びTzm-B並びに対照ネイキッド抗体Tzm-C及びパリビズマブ(Synagis(登録商標))についての見かけ解離定数Kd [nM]を決定するために使用された結合曲線を示す図である。
図3】アジド標識化抗体への連結のためのチオ尿素前駆体を生じさせるために、H2macropa-NCS及び様々なDIBCO-アミンを用いる、抗体へのMacropaのコンジュゲーションのための一般的スキームを、構造I~IVにおいて示す図である。
図4】アジド標識化抗体との縮合のためのDIBCO-チオ尿素実体への経路として、様々なDIBCOアミンとH2macropa-NCSとの反応を、構造V~VIIIにおいて示す図である。
図5】アジド標識化抗体との縮合のためのDIBCO-チオ尿素実体への経路として、様々なDIBCOアミンとH2macropa-誘導イソチオシアネートの反応を、構造VI及びIX~XIにおいて示す図である。
図6】アジド標識化抗体との縮合のためのDIBCO-チオ尿素実体への経路として、様々なDIBCOアミンとDOTA-イソチオシアネートとの反応を、構造VI、XII、XIII及びXIVにおいて示す図である。
図7】アジド標識化抗体との縮合のためのDIBCO-チオ尿素実体への経路として、様々なDIBCOアミンとDOTA-NHSエステルとの反応を、構造VI、XV、XVI及びXVIIにおいて示す図である。
図8】アジド標識化抗体との縮合のためのDIBCO-チオ尿素実体への経路として、様々なDIBCOアミンと様々なDOTA-イソチオシアネートとの反応を、構造VI、XVIII、XIX及びXXにおいて示す図である。
図9】アジド標識化抗体との縮合のためのDIBCO-チオ尿素実体への経路として、様々なDOTA-イソチオシアネートの反応を、構造VI、XXI、XXII及びXXIIIにおいて示す図である。
図10】IgG1抗体に対するDOTA-キレーターの選択的コンジュゲーションのためのフェノール性及びチオフェノール性エステルを示す図である。
図11】DAR4、DAR6及びDAR2x2抗体コンジュゲートを得るための経路例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本開示は、ペイロードを抗体及び他のタンパク質に部位選択的に架橋するための方法を提供する。この目標は、本明細書に記載されている組成物及び方法を使用して標的タンパク質を生体直交反応性実体(ORE)で標識化するように設計された、トレースレス親和性標識を使用して、又は代替として高い化学選択性を可能にする特定のアシル化剤によって、達成することができる。
【0067】
一実施形態において、この開示の好ましい標的部位は、抗体の軽鎖である。本開示は、一般に、近位のリジン(例えば、表面リジン)を有する部位特異的にリガンド結合可能な部位についてタンパク質/抗体をスクリーニングする系統的方法、及びこうした選択的標識化に至る組成物にも関する。この態様において、スクリーニングする方法は、部位選択的標識化を達成し、親和性基(affinity group)はトレースレスであり、例えば、生体直交反応性実体で標識化された生成物に出現しない。
【0068】
本開示は、最初に、アジド等の生体直交反応性実体の導入、続いて、多種多様なペイロードのいずれか1つを保有する生体直交反応性パートナーの反応を可能にするステップ的プロセスを介する、ペイロードを用いる抗体の部位選択的標識化のための実用的な高度な方法を提供する。本開示は、一般に、特定された方式においてエステル等を用いるコンビナトリアルライブラリー方法によって抗体表面に部位選択的に結合した直交反応性実体(ORE)の働きを介する、又はOREに連結された選択的反応性の求電子試薬の使用を介する、抗体とペイロードとの化学特異的結合体に更に関する。本開示は、ペイロード(例えば、生物学的分子)の活性を増大又はモジュレートする目的での、及び/或いは抗体の安全性若しくは効力を改善する又は追加の活性若しくはペイロードをタンパク質フレームワーク上に導入するためにペイロード、例えば、ポリマー、薬物、巨大分子、イメージング剤を結合させる目的での、こうした組成物の特徴付け及び使用にも関する。本開示は、一般に、モノクローナル及びポリクローナル抗体、それらの断片(例えば、Fab、F(ab')2、sdAb(単一のドメイン抗体))、二重特異性抗体、ダイアボディ)等の部位選択的修飾のための方法を提供する。本明細書に記載されている修飾は、放射性標識化、分子イメージング、光学プローブ、及び多数の治療用抗体適用、並びに関節リウマチ、細菌性及びウイルス性疾患、ループス・エリテマトーデス、乾癬、多発性硬化症、1型糖尿病、クローン病、及び全身性硬化症、アルツハイマー病、がん、心臓及び肝臓疾患(例えば、アルコール性肝臓疾患)及び悪液質を含む多くの障害の処置における、ペイロードの結合のために使用することができる。
【0069】
図1は、標的抗体(例えば、IgG1アイソタイプ)から、Lys188で部位選択的に標識化された生成物抗体-薬物コンジュゲートに至る2ステップ方法を例示する。
【0070】
該2ステップアプローチは、以下をもたらす抗体薬物コンジュゲート(ADC)を合成するために使用することができる: 1.アミンの選択的標識化で、アミン選択的アシル化剤の単純な手段によって生成物均質性及び血液循環における化学的安定性を達成する; 2.汎用性のための及びある特定の例における抗体の保存部位の標的化、3.実体を標的化する際のトレースレス親和性基の革新的な使用で、修飾プロセスを標準化及び単純化する。
【0071】
第1の選択的ステップは、修飾される抗体の保存部位のLys188と主に反応するアジド連結フェノレート又はチオフェノレートを用いて達成される(図1)。一部の実施形態において、反応は、Lys188に対して部位選択的である。アジド基は、DIBCO官能化ペイロードに縮合することができる反応性ハンドルとして働き、生体直交反応性実体に一般化することができるプロトタイプを表す。例えば、DIBCO修飾抗体は、抗体とそれらの標的ペイロードとの間に安定な連結を築くために配置することができるクリック化学モチーフのレパートリーの代表として、アジド官能化ペイロードと組み合わせることができる。このレパートリーとしては、Dommerholt J.ら、Strain-Promoted 1,3-Dipolar Cycloaddition of Cycloalkynes and Organic Azides.、Top Curr Chem (Cham). 2016 Apr;374(2):16に記載されている通りのテトラジン/(BCN)が挙げられる。
【0072】
第1のステップにおいて、OREは、検出及びアッセイのためのハンドルを提供すると予想される。それらの中程度のサイズ及び構造の単純性は、抗体-薬物コンジュゲートを生成するための定量をスケールアップするのに主要な長所である。
【0073】
第2のステップにおいて、OREは、均質生成物に至る高収率「クリックケミストリー」反応である可能性が高いペイロードの導入のための特定のアタックポイントを提供する。シクロアルキンによって捕捉されたアジドを介してペイロードをタンパク質にコンジュゲートするという文献の前例は、このシナリオを強く支持する。
【0074】
本開示によって提供される利点の中には単純化された合成があり、なぜなら、多くのOREが多様なルーチン的合成方法によってアシル化部分に簡便に連結され得るからである。OREに関して、最も多い偶発事態に適応可能な単一の合成モチーフが用いられ得る。用いられたペイロードに依存して、合成方法は、抗体フレームワークに直接的に連結されたペイロードを利用して、より複雑な方法を実現するように個々に合わせられなければならない。
【0075】
第2に、OREの使用は、ユニバーサルスクリーニングライブラリー、例えば、いずれのタンパク質標的に対しても用いることができライブラリーの構築を可能にし、アミノ酸は多数のペプチド位置の中でランダム化されることで、非常に多様なライブラリーを得る。この特色は、部位特異的にリガンド結合可能な部位及びそれらの関連リガンドについてタンパク質を包括的にスクリーニングするのに非常に有利である。
【0076】
第3に、各々がペイロードを含有する完全負荷ライブラリーメンバー(fully-loaded library members)のスクリーニングは、最良のラベラー(labelers)を発見するのにOREを使用するよりもはるかに高価であり、なぜなら、薬物、ポリマー及びイメージング剤等は一般に、かなりコストがかかるからである。したがって、コンジュゲートへの2ステップアプローチを具体化するこの特色は、ライブラリー方法論の文脈において大いに活用することができる。
【0077】
第4に、OREの使用は、選別を容易にすることができる要素を導入し、なぜなら、方法は、OREからの光学プローブの発生のために存在するからである。こうした光学プローブは、部位特異的標識化実体の検出の基礎を提供する(Fluorogenic click reaction。Le Droumaguet C、Wang C、Wang Q. Chem Soc Rev. 2010 39(4): 1233~9)。
【0078】
第5に、結合ペイロードでライブラリーメンバーをスクリーニングすることは、かなりの課題を表し、なぜなら、ペイロードはコンジュゲートプロセスの全体にわたって収容されなければならず、ペプチド部分(可変要素)及びその潜在的な化学特異性の特定の効果を損なうことがあるからである。OREは、その中にアルキン及びアジドがあり、最も小さい官能基の1つであり、親和性基の固有の反応性及び特異性に対して重大な混乱を導入する可能性が低い。
【0079】
要するに、ORE保有ライブラリーは、ペイロード保有ライブラリーよりも優れたモチーフを表し、なぜなら、前者は標識化プロセスの標準化を可能にし、タンパク質へのペイロードの(ほぼ)定量的結合のための反応性実体を含み、活性化ペプチジル基Wの固有の結合及び標識化パターンに干渉する可能性が低いからである。
【0080】
ADCを製作するための抗体の化学的修飾は、現在まで、アミン反応性基質との非常に不均質な混合物、又はシステインが標的化されている場合には不安定でしばしば毒性のコンジュゲートのいずれかをもたらしている。これは、ADCの開発を厳しく制限してきた。部位選択的戦略を使用して生成された均質ADC生成物は、ADCの治療指数及び薬物動態学的特性を改善すると示された。部位特異的コンジュゲーションを達成するための現在の酵素及び分子生物学的アプローチは、プロセスを時間のかかる労働集約的及びしばしば非実用的にしている選択的反応性残基を組み込む候補抗体の再工学操作を必要とする。
【0081】
タンパク質は多数のリジンを含有するので、タンパク質における部位特異的にリガンド結合可能なアミンについての一般の選別は多数の点で有利であり、なぜなら、それは、コンジュゲート開発のための任意選択の多様な部位及びそれらの関連リガンドを提供することができるからである。
【0082】
その上、部位特異的にリガンド結合可能な部位発見のための一般の選別の恐るべき課題を考慮すると、抗原結合に干渉しない組合せにおいてリンカーの有用な配置を可能にし得る限られた数の部位を同定又は標的化することは得策である。
【0083】
化学的修飾の分野において、アミンを標的化する従来の戦略は、一般に、安定なアミド連結を達成するためにNHSエステル等で標識化することに頼ってきた。薬物カドサイラは、多数のリジン付加物を含有するようなアプローチの不均質の生成物である。NHSエステルは無差別なアシル化剤とみなされているが、Weilは、それらがタンパク質に少しずつ添加されるならば、リジンは、限られた数のリジンを含有するタンパク質においてではあるが部位特異的に修飾することができ、しかし、プロセスはスケーラブルでないことを示した。近年、Dovganら(Acyl Fluorides: Fast, Efficient, and Versatile Lysine-Based Protein Conjugation via Plug-and-Play Strategy、Bioconjugate Chem. 2017、28、1452~1457頁)は、小分子アシル化剤、酸フッ化物が、制御されたやり方で抗体リジンを標識化することができることを報告したが、選択性データは提示されなかった。Hackerら(Global profiling of lysine reactivity and ligandability in the human proteome、Nature Chemistry)は、リジンの包括的プロファイリングについて多数の活性エステルを試験し、タンパク質機能部位で富化されている反応性増大を有する多数の残基を識別した。想起することができる膨大な数のアシル化剤にもかかわらず、タンパク質/抗体を用いるそれらの選択性パターンについて殆ど知られていない。抗体を選択的に修飾するために使用することができる構造的に単純な分子を同定することは、それらが製造プロセスにおいてスケール化され得るそれらの低コスト及び簡便さにより非常に有利である。
【0084】
この開示は、直鎖並びに分岐鎖の立体配置におけるアジド(N3)等の”clickable” entitiesを保有する最小構造のアシル転移剤が、IgG抗体を選択的に修飾でき、多様なペイロードを保有する選択的標識化ADCへのアクセスを提供するという我々の発見に脚光を当てている。
【0085】
該ペイロードは、ポジトロン放出断層撮影(PET)、コンピューター断層撮影(CT)、単一光子放射コンピューター断層撮影(SPECT)、磁気共鳴イメージング(MRI)、核磁気イメージング(NMI)、蛍光透視法、超音波、X線放射線撮影、イメージを生成するように設計された内視鏡検査、例えば脳波記録(EEG)、脳磁気図検査(MEG)、心電図検査(ECG)等の診断技法、並びに他の適用可能な技法を用いることによって、体内の特定の部位又は区画の診断可視化を可能にする化合物であってよい。
【0086】
こうした用途のため、該ペイロードは、造影剤のようなイメージング剤、123I、125I、131I等を含めたヨウ素(I)、バリウム(Ba)、ガドリニウム(Gd)、99Tcを含めたテクネチウム(Tc)、31Pを含めたリン(P)、[19]-Fを含めたフッ素(F)、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、タリウム(Tl)、51Crを含めたクロム(Cr)、11Cを含めた炭素(C)等のような元素の放射性同位体、蛍光標識化化合物等を含むことができる。こうしたORE保有ペイロードは、混合物における分子を標識化するのにも有用であり、標的分子は相補的反応パートナーによって前標識化されている。
【0087】
蛍光性及びUV-Visプローブ等の光学剤、並びに近赤外染料は、潜在的なペイロードである。
【0088】
なお別の用途において、該ペイロードは、それが特異的標的結合性タンパク質の結合特異性を立体的に妨げる又は変えるように機能するように選択することができる。こうした実体は、当業者によって容易に決定可能であるとともにタンパク質上の官能部位に対して親和性を有する様々な化学基を含む多くの形態をとることができる。こうしたペイロードは、アミノ酸、まさにビオチン等のような標的分子に対する結合親和性をそれら自体が提供する働きをする構造を含むこともできる。こうしたペイロードは、例えば、タンパク質標的に結合するという結合性タンパク質の能力を阻害する際の、及びチャネル、酵素的タンパク質、特異的受容体等の細胞膜タンパク質を不活性化するための使用を見出す。こうしたペイロードは、研究調査目的、例えば、様々な表面膜タンパク質の機能の精査を可能にする際に、又は標識化標的分子の同定及び/若しくは精製のために働くこともできる。
【0089】
また別の用途において、該ペイロードは、薬物の薬物動態を、例えば、それの作用の持続時間を増加させること、それの免疫原性及び/又はそれの代謝速度を減少させることによって改善するように選択することができる。こうしたペイロードは、ポリエチレングリコール及びポリシアル酸ポリマー等のポリマー、並びに糸球体における排泄を制限することによって血液循環における高レベルを維持する働きをするヒト血清アルブミン等の様々なタンパク質を含む、いくつかの形態をとることができる。
【0090】
なお別の用途において、該ペイロードは、個々のモノマーよりも活性である及び/又は治療用途において有用な複数の生物学的活性を提供するホモ若しくはヘテロ二量体を形成するコンパニオンタンパク質であってよい。
【0091】
なお別の用途において、該ペイロードは、治療的有用性のある抗体-薬物コンジュゲートを提供する薬物又は毒素であってよい。
【0092】
また他の用途において、該ペイロード又はORE標識化タンパク質は、抗体-薬物コンジュゲートの場合における通り、治療的理由のため結合成分を標的細胞に送達する働きをする抗体であってよい。
【0093】
なお別の用途において、該ペイロード又はORE標識化タンパク質は、治療的利益のためにアポトーシス上昇の領域に実体を送達する働きをするアネキシンタンパク質であってよい。
【0094】
上記用途の各々において、アクセプターORE標識化タンパク質への該ペイロードの共有結合は、それの反応パートナーを含有する標的分子に生物学的機能を増大又は付加する働きをする。したがって、対象組成物を用いることによって、標的分子の性質を修飾すること、標的分子の特徴を変化させること、標的分子の同定及び/又は単離を可能にすること等ができる。
【0095】
可変要素は、共有結合を形成するための標的タンパク質部位で反応性官能基(例えば、アミノ)と反応する化学反応性官能基(例えば、チオエステル)を含む単位を介して直交反応性実体(ORE)に結合される。標的タンパク質での共有結合形成は、順じて、OREを標的部位に共有結合させることをもたらし、可変要素が同時に遊離する。
【0096】
本開示の組成物は、-S-CO-R-、-O-CO-R、-O-CS-R、-O-CSe-R、-S-R-CH2-、-O-R-CH2を含有する反応性官能基を含み、Rは、アリール又はアルキルである。反応性官能基は、一般に、第1の反応の時間枠内で水性環境において安定であり、通常、アシル基又はイミデートを含有し、それによって、標的タンパク質のアミノ基との共有結合を形成できることで、アミド又はアミジン誘導体が得られる。大部分において、反応性アシル転移剤は、チオール又は酸素のエステルであり、フェノール性又はチオフェノール性化合物を伴う、又はアルキルエステル等である。
【0097】
本開示の組成物は、OREと可変要素との間にリンカーを含むことができる。リンカーは、所望の特徴、例えば、水溶性、非特異的結合の低減、及び/又は反応性官能性に結合している基のために選択されることで、エステル、チオエステル、イミデート、チオイミン等を提供することができる。大部分において、リンカーは、単結合以外の場合、約1~30個の炭素原子、並びに約0~10個、より通常には1~8個の、大部分においてO、N、Se及びSであるヘテロ原子を有する。特別なリンカーの選択は、ORE及び可変構造群の性質に基づき、関連の生物学的環境の文脈において分子の配置に好都合な特徴を提供するように設計される。特別な関心対象であるのは、リンカー原子が反応性官能性の一部を構成する場合に、芳香族誘導体を有することであり、そのため反応性官能基のヘテロ原子は、芳香族炭素原子に直接的に結合される。代替として、アルキレン又はアルキレンオキシを含有するリンカー鎖を使用して、非アリールチオエステル等を活用することができる。
【0098】
該リンカーは、OREと断片求電子試薬との間に有用な連結基を提供することにより、下記の様々な機能を有することができる:断片求電子試薬の反応性を制御すること;水溶性増強を提供すること。実施形態において、リンカーは、原子が炭素、窒素、酸素、硫黄、セレン等であってよい、鎖に約1~50個、例えば、20個の炭素原子を含む。リンカーは、一般に2~16個、より通常には1~25個の炭素原子のアルキレン基、ポリオキシアルキレン基(アルキレン基が1~3個の炭素原子のものであるとともに、1~30個、より通常には約1~16個又は1~8個の単位を有する)、アルファ及びオメガアミノ酸を含めたアミノ酸、又は1~8種、通常1~6種のアミノ酸を有するオリゴペプチド(アミノ酸は、極性又は非極性、荷電又は非荷電、脂肪族、脂環式、芳香族又は複素環式、天然又は合成であってよい)を含有することができる。
【0099】
上記から明らかである通り、第1の標識化用分子として用いられる究極の急速標識化剤の様々な単位は、適合性のため、特にライブラリー成分の場合における安定性を付与するように選択される。
【0100】
タンパク質標的の選択的に標識化されたアミノ基の同定のため、定量的LC-MS方法論を含めたペプチドマッピング技法が用いられる。
【0101】
検出方法として質量分光分析(MS)の実施は、直接的に、タンパク質の標識化状態についての同時データ収集を可能にする。我々が発明したMS選別は、標的タンパク質の標識化の程度についての速やかな情報を送達し、標識化に関与する実体の速やかな及び明確な決定を提供する。
【0102】
タンパク質に架橋されたペイロードを含む対象生成物は、生理学的に投与される場合、ボーラスとして投与することができるが、メータドフロー(metered flow)等を使用する輸注によって時間をかけてゆっくり導入してもよい。代替として、あまり好ましくないが、血液を、宿主から除去し、生体外で親和性標識化合物と接触させ、宿主に戻すことができる。しかしながら、該投与方法は、特別な適用に依存し、ペイロード又はタンパク質の作用地点及び薬学特性に依存し得る。該架橋生成物は、生理学的に許容される媒体、例えば、脱イオン水、リン酸緩衝生理食塩水、生理食塩水、マンニトール、水性グルコース、アルコール、植物油等において投与される。通常、単回注射が用いられるが、所望であれば、1回超の注射が使用され得る。架橋生成物は、シリンジ、カテーテル等を含めて、任意の好都合な手段によって投与することができる。特別な投与方式は、単一のボーラスであっても逐次又は連続的投与等であっても、投与される量に依存して変動する。投与は、しばしば血管内であり、導入の部位がこの開示にとって決定的でない場合、好ましくは、急速な血流がある部位、例えば、静脈内、末梢又は中心静脈である。意図は、投与された化合物が血管系に有効に分布されることで、そこの標的分子と反応することができることである。
【0103】
該架橋生成物の投与量は、用いられている特定の実体に依存し、そのため、もしあれば関心対象の実体の有害作用、求められている適応症、血管成分による破壊に対する化合物の感受性、投与経路等に依存する。必要に応じて、架橋生成物の投与量は、最初は、通常投与される投与量の小倍数を使用して、及びより多くの経験が得られるにつれて投与量を増強して、経験的に決定することができる。投与量は、一般に1ng/Kgから10mg/Kgの範囲であり、通常、前臨床及び臨床研究において提供されている通りの公知のやり方に従って経験的に決定される。
【0104】
標的化動的標識化用ライブラリー及びトレースレス親和性標識
前述の説明は、抗体を処置するための単一試薬の使用、又は親和性要素がオリゴマー官能基のみを含有するライブラリーに基づき、標的タンパク質に対するリガンドについての情報が基本的にない。こうしたライブラリーは、いくつかの可変位置の中でアミノ酸をランダム化することによって構築され、それらがタンパク質の不偏の第一線の選別を表すという点において「ユニバーサル」動的標識化用ライブラリーである。特定部位に対する結合決定因子が利用可能である場合、こうした公知の親和性(ペプチジル又は非ペプチジル)要素をライブラリーに組み込む又は組み立てることが便宜的である。それらを、可変(例えば、ペプチジル)要素との組合せにおける親和性基の一定の特色とすることによって、ライブラリーは基本的に標的化され、標的化タンパク質部位に偏る。このシナリオでは、コンビナトリアルライブラリーの全体的な複雑性は低減され得る一方で、タンパク質標的に対するライブラリーメンバーの親和性は増強される。
【0105】
例えば、小ペプチドは、高い親和性(Kd=0.5nM、Tsaiら、Anal.Chem、2014、86、2931~8)で抗体のFc断片に結合することが報告されている。このRRGWペプチドは、本明細書に記載されている動的標識化用ライブラリーの反応性実体を保持することができる高い親和性のより長いペプチド(例えば、RRGWXXXX)を得るために、テトラペプチドフレームワークに組み立てる拡張のための基盤を形成することができる。
【0106】
再フォーマット(reformatted)又は再工学操作された親和性標識
動的標識化用ライブラリーの特徴的特色は、標的タンパク質にコンジュゲートされた実体が、トレースレスリンカー(又は代替としてトレースレス親和性標識)から誘導されることである。この特色は、それが、コンジュゲートされたタンパク質に出現しない親和性標識における広く多様な結合決定因子の存在を可能にするという点において、標識化にとって最大限に重要である。この設計要素は、しばしばかなり複雑であるとともに機能的役割も望ましい特性もない外来要素と同等である結合決定因子の保持に至るアプローチを超える重大な利点を提供する。
【0107】
その結果として、この開示は、結合決定因子を標的タンパク質に従来コンジュゲートする親和性標識の革新的な再フォーマットを介して適応され得る。
【0108】
定義
「親和性標識」という用語は、タンパク質又は他の巨大分子と潜在的に反応性である実体に連結された親和性基で構成された分子を記載するために本明細書において広域に使用されている。親和性基は(自然に又は幸運にも)、タンパク質表面上の近位の基の選択的標識化を可能にする、主にタンパク質又は他の巨大分子上の特定部位についての結合決定因子を有する。
【0109】
本明細書で使用される場合、「求電子性部分」という用語は、電子に誘引された分子を指す。こうした求電子性部分は、タンパク質及びペプチドのアミノ基等、求核試薬と反応できる。求電子性部分の好ましい実施形態としては、-C(O)O-、-C(O)S-、-C(O)Se-、-SO2O-、-SO2S-及び-SO2Se-が挙げられる。
【0110】
本明細書で使用される場合、「アルキル又はアルカノイル」という用語は、完全飽和の分岐又は非分岐の炭化水素部分を指す。好ましくは、アルキルは、1個から20個の炭素原子、より好ましくは1個から16個の炭素原子、1個から10個の炭素原子、1個から7個の炭素原子、又は1個から4個の炭素原子を含む。アルキルの代表例としては、以下に限定されないが、メチル、エチル、n-プロピル、iso-プロピル、n-ブチル、sec-ブチル、iso-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、ネオペンチル、n-ヘキシル、3-メチルヘキシル、2,2-ジメチルペンチル、2,3-ジメチルペンチル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシル等が含まれる。更に、xが1~5であり、yが2~10である「Cx~Cy-アルキル」という表現は、特別な範囲の炭素の特別なアルキル基(直鎖又は分岐鎖)を示す。例えば、C1~C4-アルキルという表現は、以下に限定されないが、メチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、tert-ブチル及びイソブチルを含む。
【0111】
「アルケニル」という用語は、単独で又は組合せで、少なくとも1つのオレフィン性結合及び表示数の炭素原子を含む直鎖、環式又は分岐の炭化水素残基を指す。好ましいアルケニル基は、最大8個まで、好ましくは最大6個まで、特に好ましくは最大4個までの炭素原子を有する。アルケニル基の例は、エテニル、1-プロペニル、2-プロペニル、イソプロペニル、1-ブテニル、2-ブテニル、3-ブテニル、イソブテニル、1-シクロヘキセニル、1-シクロペンテニルである。
【0112】
「アルキニル」という用語は、上に記載されているアルキルに長さが類似するが少なくとも1個の三重結合を含有する不飽和脂肪族基を含む。例えば、「アルキニル」という用語は、直鎖アルキニル基(例えば、エチニル、プロピニル、ブチニル、ペンチニル、ヘキシニル、ヘプチニル、オクチニル、ノニニル、デシニル等)、分岐鎖アルキニル基、及びシクロアルキル又はシクロアルケニル置換アルキニル基を含む。アルキニルという用語は、炭化水素骨格の1つ又は複数の炭素と置き換わる酸素原子、窒素原子、硫黄原子又はリン原子を含むアルキニル基を更に含む。ある特定の実施形態において、直鎖又は分岐鎖アルキニル基は、それの骨格に6個以下の炭素原子(例えば、直鎖にはC2~C6、分岐鎖にはC3~C6)を有する。C2~C6という用語は、2個から6個の炭素原子を含有するアルキニル基を含む。
【0113】
抗体という用語は、本明細書で使用される場合、モノクローナル及びポリクローナル抗体、それらの断片(例えば、Fab、F(ab')2、scFv(単鎖可変物)、sdAb(単一のドメイン抗体))、二重特異性抗体、ダイアボディ)等を指すことができる。
【0114】
「アリール」という用語は、芳香族単環式又は多環式の、例えば、水素及び炭素のみからなるとともに6個から19個の炭素原子、又は6個から10個の炭素原子を含有する三環式、二環式の炭化水素環系を含み、環系は部分飽和であってよい。アリール基としては、以下に限定されないが、フェニル、トリル、キシリル、アントリル、ナフチル及びフェナントリル等の基を含む。アリール基は、多環(例えば、テトラリン)を形成するために芳香族でない脂環式環又は複素環式環と縮合又は架橋させることもできる。
【0115】
「生体直交」又は「直交」という用語は、天然の生化学プロセスに干渉することなく生体系の内側で発生することができ、それゆえに、生理学的温度及びpHの条件下でタンパク質等の生物学的分子とともに発生することがない、任意の化学反応を指す。直交という用語は、本明細書において、反応性ハンドルのように、反応性の文脈において生体直交と相互交換可能に使用される。これらの用語は、(生体)直交反応性実体が、クリックケミストリー反応性であるが生化学物との反応に不活性であることを示すと意味される。
【0116】
「化学選択性」という用語は、化学的試薬と2個以上の同様の官能基の1個との優先的反応を指す。
【0117】
「化学特異性」という用語は、多数の同様の官能基の1個のみが修飾される反応を指す。
【0118】
「クリックケミストリー」という用語は、Click Chemistry: Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions、H.C. Kolb、M.G. Finn及びK.B. Sharpless、Angew. Chem. Int.編、2001、40、2004~2021頁に定義されている通りに使用され、アルキン、シクロアルキン、例えばシクロオクチン及びシクロノニン、例えば、ビシクロ[6.1.0]ノナ-4-イン-9-イルメタノール、trans-シクロオクテン、ニトロン、ニトリルオキシド、アジド等を含む。特に、本明細書において使用されているクリックケミストリーは、好ましくは、銅触媒の使用を回避するために歪みアルキンを使用する。「クリックケミストリー」という用語は、[3+2]環化付加、チオール-エン反応、ディールス・アルダー反応、[4+1]環化付加、及び歪み環上の求核性反応を意味することもできる。
【0119】
本明細書で使用される場合、「クリック反応の生成物」という成句は、上記で定義されている通りのクリックケミストリーの最終生成物を指す。特に、該生成物としては、1,4-二置換トリアゾール、1,5-二置換トリアゾール、1,4,5-三置換トリアゾール、ディールス・アルダー型オレフィン、及びチオール-エン生成物を含むことができる。好ましくは、該生成物としては、
【0120】
【化6】
【0121】
を含めて、1,4,5-三置換トリアゾールを含む。
【0122】
クリック反応に適当なシクロオクチンの例は、Dommerholtら、Top Curr Chem (Z) (2016) 374: 16に提供されており、OCTシクロオクチン、MOFO一フッ化シクロオクチン、DIFOジフルオロシクロオクチン、DIMACジメトキシアザシクロオクチン、DIBOジベンゾシクロオクチン、DIBACジベンゾアザシクロオクチン、BARACビアリールアザシクロオクチノン、BCNビシクロノニン、TMDIBO 2,3,6,7-テトラメトキシ-DIBO、S-DIBOスルホニル化DIBO、COMBOカルボキシメチルモノベンゾシクロオクチン、及びPYRROCピロロシクロオクチンを含む。
【0123】
「コンジュゲート」という用語は、2つ以上の実体の結合によって形成された化学化合物を指す。
【0124】
「保存配列」という用語は、基本的に未変化のままであり、そのため進化の全体にわたって保存されているDNA分子(又はタンパク質におけるアミノ酸配列)における塩基配列を指す。保存部位(コンセンサス結合部位とも称される)は、したがって、未変化配列又は極めて同様の相同性を有するものの進化的な帰結であり、したがって一般に同様の親和性を有する。
【0125】
「環化付加」という用語は、2つ以上の不飽和分子(又は同じ分子の一部)が、結合多重性の純減がある環式付加物の形成と組み合わさるペリ環状化学反応を指す。
【0126】
「薬物」という用語は、本明細書で使用される場合、少なくとも1種の薬学的に活性な化合物を含有する医薬製剤を意味する。一実施形態において、薬学的に活性な化合物は、最大1500Daまでの分子量を有し、及び/或いはペプチド、タンパク質、多糖類、ワクチン、DNA、RNA、酵素、抗体若しくはその断片、ホルモン若しくはオリゴヌクレオチド、又は上述の薬学的に活性な化合物の混合物である。
【0127】
「ヘテロアリール」という用語は、本明細書で使用される場合、5~14個の間の環員を有するとともに窒素、酸素及び硫黄からなる群から独立して選択される1個、2個、3個又は4個のヘテロ原子を含有する芳香族の(即ち、環系内に4n+2パイ電子を含有する)単環式、二環式又は三環式環を表す。例証的なヘテロアリールとしては、以下に限定されないが、ピロリル、ピロリニル、ピロリジニル、ピラゾリル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピリジル、ピペリジニル、ホモピペリジニル、ピラジニル、ピペラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリル、イソオキサゾリジニイル、モルホリニル、チオモルホリニル、チアゾリル、チアゾリジニル(例えば、1,3,4-チアジアゾール)、イソチアゾリル、イソチアゾリジニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、ベンズイミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾオキサゾリル、フリル、チエニル、チアゾリジニル、イソチアゾリル、イソインダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサジアゾリル、プリニル、チアジアゾリル、テトラヒドロフラニル、ジヒドロフラニル、テトラヒドロチエニル、ジヒドロチエニル、ジヒドロインドリル、テトラヒドロキノリル、テトラヒドロイソキノリル、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジチアゾリル、ベンゾフラニル、ベンゾチエニル等を含む。
【0128】
「直交反応性実体」(ORE)又は「直交反応性部分」という用語は、(1)本明細書において、それの相互排他的な化学的反応性を、実験室又は生理学的条件下での生物学的官能基の化学的反応性と区別するために、及び(2)それが、生物学的ポリマーが不活性であるクリックケミストリー反応に当てはまる通りに使用される。直交反応性実体の好ましい例としては、アルキン、シクロアルキン、アジド、1,3-ジエン、ニトリルオキシド、ニトロン、テトラジン、及びtrans-シクロオクテンを含む。
【0129】
「反応性ハンドル」という用語は、本明細書で使用される場合、生理学的条件下での結合形成反応に参加することができる反応性部分を指す。適当な反応性ハンドルの例は、例えば、クリックケミストリー反応に参加することができる化学的部分である(例えば、H. C. Kolb、M. G. Finn及びK. B. Sharpless (2001)。Click Chemistry: Diverse Chemical Function from a Few Good Reactions。Angewandte Chemie International編 40 (11): 2004~2021頁を参照されたい)。一部の適当な反応性ハンドルは本明細書に記載されており、追加の適当な反応性ハンドルは当業者に明らかであり、なぜなら、本開示はこの点において限定されないからである。異なって示されていない限り、反応性ハンドル及び生体直交反応性実体という用語は、本明細書において相互交換可能に使用される。
【0130】
「ペイロード」という用語は、潜在的な商業的又は医学的価値を有する任意の部分を指す。
【0131】
ペイロードの例としては、イメージング部分、抗体、抗体断片、タンパク質、光学剤、ビタミン、酵素、ペプチド、ペプトイド、毒素、薬物、プロドラッグ、バイオマーカーに対するリガンド、エフェロサイトーシスの刺激物、フォレート、EGFR、ALK、MET、PTK7及びKRAS又は任意の癌遺伝子産物からなる群から選択される受容体を標的化する化合物、アントラサイクリン、タキソール、オーリスタチン、アマニチン、カンプトテシン、ブレオマイシン、カルボプラチン、シタラビン、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、カリケアマイシン、メイタンシン、ツブリシン、エトポシド、デュオカルマイシン誘導体、例えばCC-1065、デュオカルマイシン及びエスペラマイシン、フォレート、ピロロベノジアゼピン、並びにRGD連結部分を含む。
【0132】
「ペプトイド」という用語は、ペプチド模倣物として作用するとともにタンパク質分解に抵抗性であるポリN置換グリカンとして定義されている。
【0133】
「エフェロサイトーシス」という用語は、死にゆく細胞/死んだ細胞がファゴサイトーシスによって除去されるプロセスを指す。「エフェロサイトーシスの刺激物」は、エフェロサイトーシスのプロセスを促進する任意の化合物である。「対象」という用語は、疾患、障害又は状態を患う又は苦しめられる可能性がある生物体、例えば、原核生物及び真核生物を含むと意図される。対象の例としては、哺乳動物、例えば、ヒト、イヌ、雌ウシ、ウマ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ネコ、マウス、ウサギ、ラット、及びトランスジェニック非ヒト動物を含む。ある特定の実施形態において、対象は、ヒト、例えば、がん、自己免疫疾患、関節炎、アテローム血栓又はプラーク破裂を患っている、患うリスクがある、又は患う可能性が潜在的にあるヒトである。別の実施形態において、対象は細胞である。
【0134】
「ペプチド」という用語は、ペプチド結合によって連結されたアミノ酸の鎖を含む。「ペプチド」という用語は、直鎖に配列されているとともに球状形態にフォールディングされたアミノ酸から作製された化合物である「タンパク質」又は「ポリペプチド」(例えば、アネキシンタンパク質、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子、ヒトスーパーオキシドジスムターゼ、レプチン、ミオグロビン、アルブミン、アビジン及び酵素)を指すこともできる。様々なポリペプチド又はタンパク質が、本明細書において提供される方法及び組成物の範疇内で使用され得る。ある特定の実施形態において、タンパク質は、抗原結合性部位を含有する抗体又は抗体の断片を含むことができる。本明細書で使用される場合、タンパク質、ポリペプチド又はペプチドは、一般に、以下に限定されないが、遺伝子から翻訳された最大全長配列までの、約200個超のアミノ酸のタンパク質;約100個超のアミノ酸のポリペプチド;及び/又は約3個から約100個のアミノ酸のペプチドを指す。便宜上、「タンパク質」、「ポリペプチド」及び「ペプチド」という用語は、本明細書において相互交換可能に使用される。ある特定の文脈において、タンパク質は、アミン又はチオールを含有する任意の巨大分子を表すことができる。したがって、「タンパク質又はペプチド」という用語は、天然のタンパク質に見出される共通のアミノ酸の少なくとも1つ又は少なくとも1つの修飾された又は非通常アミノ酸を含むアミノ酸配列を包含する。タンパク質又はペプチドは、標準的な分子生物学的技法を介するタンパク質、ポリペプチド若しくはペプチドの発現、天然供給源からのタンパク質若しくはペプチドの単離、又はタンパク質若しくはペプチドの化学合成を含めて、当業者に公知の任意の技法によって作製することができる。タンパク質、ポリペプチド及びペプチド配列は、当業者に公知のコンピューター化データベースで見出すことができる。1つのこうしたデータベースは、国立バイオテクノロジー情報センターのジェンバンク及びGenPeptデータベースである。代替として、タンパク質、ポリペプチド及びペプチドの様々な市販の調製物は、当業者に公知である。
【0135】
一部の実施形態において、「生理学的pH」は、7~8、7.2~7.6、7.3~7.5又は7.35~7.45のpHを指す。一部の実施形態において、「生理学的温度」は、36~38℃、又は36.5~37.5℃を指す。
【0136】
「医薬組成物」という用語は、本明細書で使用される場合、薬学的に許容される賦形剤で製剤化された、本明細書に記載されている化合物を含有する組成物を表す。一部の実施形態において、医薬組成物は、哺乳動物における疾患の処置のための治療的レジメンの一部として、政府規制当局の認可を得て製造又は販売される。医薬組成物は、例えば、単位剤形で経口投与のために(例えば、錠剤、カプセル、カプレット、ジェルキャップ又はシロップ);局所的投与のために(例えば、クリーム、ゲル、ローション又は軟膏として);静脈内投与のために(例えば、粒子状塞栓がない滅菌溶液として、及び静脈内使用に適当な溶媒系中で);又は本明細書に記載されている任意の他の製剤において製剤化することができる。
【0137】
「薬学的に許容される賦形剤」は、本明細書で使用される場合、本明細書に記載されている化合物以外の(例えば、活性化合物中に懸濁又は溶解できるビヒクル)及び患者において非毒性及び非炎症性であるという特性を有する任意の成分を指す。賦形剤としては、例えば:抗付着剤、抗酸化剤、バインダー、コーティング、圧縮助剤、崩壊剤、染料(色)、軟化薬、乳化剤、充填剤(希釈剤)、皮膜形成剤若しくはコーティング、香味、芳香、流動促進剤(流れ増強剤)、滑沢剤、保存料、印刷インク、収着剤、懸濁剤若しくは分散剤、甘味料、又は水和水を含むことができる。例証的な賦形剤としては、以下に限定されないが:ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(二塩基性)、ステアリン酸カルシウム、クロスカルメロース、架橋ポリビニルピロリドン、クエン酸、クロスポビドン、システイン、エチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース、ステアリン酸マグネシウム、マルチトール、マンニトール、メチオニン、メチルセルロース、メチルパラベン、微結晶性セルロース、ポリエチレングリコール、ポリビニルピロリドン、ポビドン、アルファ化デンプン、プロピルパラベン、パルミチン酸レチニル、セラック、二酸化ケイ素、カルボキシメチルセルロースナトリウム、クエン酸ナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ソルビトール、デンプン(コーン)、ステアリン酸、ステアリン酸、スクロース、タルク、二酸化チタン、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、及びキシリトールを含む。
【0138】
「防止する」という用語は、本明細書で使用される場合、予防処置又は本明細書に記載されている疾患、障害若しくは状態の1つ若しくは複数の症状若しくは状態を防止する処置を指す。防止的処置は、例えば、疾患、障害又は状態の発症に先行する事象の前に(「曝露前予防」)又は続いて(「曝露後予防」)開始することができる。本明細書に記載されている化合物若しくはその薬学的に許容される塩若しくは溶媒和物、又はその医薬組成物の投与を含む防止的処置は、急性、短期又は慢性であってよい。投与される用量は、防止的処置の過程中に変動することができる。
【0139】
本明細書で使用される及び同様に当技術分野において理解される通り、「処置」は、臨床結果等の有益な又は所望の結果を得るためのアプローチである。有益な又は所望の結果としては、以下に限定されないが、検出可能であろうと検出不可能であろうと、1つ又は複数の症状又は状態の軽減又は寛解;疾患、障害又は状態の程度の軽減;疾患、障害又は状態の安定化(即ち、悪化させないこと);疾患、障害又は状態の伝播を防止すること;疾患、障害又は状態の進行を遅延又は減速すること;疾患、障害又は状態の寛解又は緩和;及び寛解(部分的であろうと全体的であろうと)を含むことができる。疾患、障害又は状態を「緩和すること」は、処置の非存在下での程度又は時間経過と比較した場合に、疾患、障害若しくは状態の程度及び/又は望ましくない臨床病態が減らされること、並びに/或いは進行の時間経過が遅く又は長くされることを意味する。
【0140】
基が置換されている場合、該基は、1個、2個、3個、4個、5個又は6個の置換基で置換されていてよい。任意選択の置換基としては、以下に限定されないが: C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、アリール、ヘテロアリール、ハロゲン(-F、-Cl、-Br又は-I)、アジド(-N3)、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、アシルオキシ(-OC(=O)R')、アシル(-C(=O)R')、アルコキシ(-OR')、アミド(-NR'C(=O)R"又は-C(=O)NRR')、アミノ(-NRR')、カルボン酸(-CO2H)、カルボン酸エステル(-CO2R')、カルバモイル(-OC(=O)NR'R"又は-NRC(=O)OR')、ヒドロキシ(-OH)、イソシアノ(-NC)、スルホネート(-S(=O)2OR)、スルホンアミド(-S(=O)2NRR'又は-NRS(=O)2R')、又はスルホニル(-S(=O)2R)を含み、各R又はR'は、独立して、H、C1~6アルキル、C2~6アルケニル、C2~6アルキニル、アリール又はヘテロアリールから選択される。一部の実施形態において、置換基は、それら自体、本明細書において定義されている通りの例えば1個、2個、3個、4個、5個又は6個の置換基で更に置換されていてよい。例えば、C1~6アルキル基、フェニル基又はヘテロアリール基は、本明細書に記載されている通りの1個、2個、3個、4個、5個又は6個の置換基で更に置換されていてよい。
【0141】
本開示は、該化合物の全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何学的(又は立体配座))形態;例えば、syn異性体及びanti異性体、各不斉中心についてR及びS立体配置、Z及びE二重結合異性体、並びにZ及びE立体配座異性体を含む。そのため、本化合物の単一の立体化学異性体、並びにエナンチオマー、ジアステレオマー及び幾何学的(又は立体配座)混合物は、本開示の範疇内である。別段に明記されていない限り、化合物の全ての互変異性体形態も、本開示によって包含される。
【0142】
本開示は、1個又は複数の原子が、同じ原子番号であるが自然界に通常見出される原子質量又は質量数と異なる原子質量又は質量数を有する原子によって置き換えられている、この全ての薬学的に許容される同位体標識化化合物を含む。包含に適当な同位体の例は2H及び3H等の水素、11C、13C及び14C等の炭素、36Cl等の塩素、18F等のフッ素、123I及び125I等のヨウ素、13N及び15N等の窒素、15O、17O及び18O等の酸素、32P等のリン、及び35S等の硫黄の同位体である。
【0143】
適切な塩基から誘導される塩としては、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩及びアンモニウム塩が挙げられる。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等を含む。塩の1つのクラスは、薬学的に許容される塩を含む。「薬学的に許容される塩」という用語は、本明細書において使用される場合、健全な医学的判断の範疇内で過度の毒性、刺激性、アレルギー応答等がなくヒト及び動物の組織との接触における使用に適当であるとともに妥当な利益/リスク比に相応するような塩を表す。薬学的に許容される塩は、当技術分野において周知である。例えば、薬学的に許容される塩は: Bergeら、J. Pharmaceutical Sciences 66: 1~19頁、1977及びPharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use、(編集 P.H. Stahl及びC.G. Wermuth)、Wiley-VCH、2008に記載されている。該塩は、本明細書に記載されている化合物の最終の単離及び精製中にその場で、又は遊離塩基基と適当な有機酸とを反応させることによって別々に、調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重硫酸塩、ホウ酸塩、酪酸塩、樟脳酸塩、樟脳スルホン酸塩、クエン酸塩、シクロペンタンプロピオネート、ジグルコン酸塩、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、フマル酸塩、グルコヘプトン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸塩、ヘキサン酸塩、臭化水素酸塩、塩酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシ-エタンスルホン酸塩、ラクトビオン酸塩、乳酸塩、ラウリン酸塩、ラウリル硫酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2-ナフタレンスルホネート、ニコチン酸塩、硝酸塩、オレイン酸塩、シュウ酸塩、パルミチン酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオネート、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ステアリン酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トルエンスルホン酸塩、ウンデカン酸塩、吉草酸塩等を含む。代表的なアルカリ又はアルカリ土類金属塩としては、ナトリウム、リチウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等、同様に非毒性アンモニウム、第4級アンモニウム、及び以下に限定されないが、アンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、エチルアミン等を含めたアミンカチオンを含む。
【0144】
「薬学的に許容される溶媒和物」という用語は、本明細書で使用される場合、適当な溶媒の分子が結晶格子に組み込まれている本明細書に記載されている通りの化合物を意味する。適当な溶媒は、投与される投与量で生理学的に耐容性がある。例えば、溶媒和物は、有機溶媒、水、又はその混合物を含む溶液からの結晶化、再結晶化又は沈殿によって調製することができる。適当な溶媒の例は、エタノール、水(例えば、一、二及び三水和物)、N-メチルピロリジノン(NMP)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N,N'-ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N'-ジメチルアセトアミド(DMAC)、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン(DMEU)、1,3-ジメチル-3,4,5,6-テトラヒドロ-2-(1H)-ピリミジノン(DMPU)、アセトニトリル(ACN)、プロピレングリコール、酢酸エチル、ベンジルアルコール、2-ピロリドン、安息香酸ベンジル等である。水が溶媒である場合、該分子は「水和物」と称される。
【0145】
本明細書で使用される場合、「部位特異的」は、単一の生成物(例えば、タンパク質の特別な塩基性残基のアシル化)が、形成された全ての生成物の約100%、少なくとも約90%、又は少なくとも約80%を含む反応又は転換(例えば、タンパク質のアシル化)を指す。
【0146】
本明細書で使用される場合、「部位選択的」は、最も豊富な生成物(例えば、タンパク質の特別な塩基性残基のアシル化)が、形成された全ての生成物の少なくとも約70%、少なくとも約60%、少なくとも約50%、少なくとも約40%、少なくとも約30%、又は少なくとも約20%を含むとともに最も豊富な生成物対次の最も豊富な生成物の比が約1.1: 1から約1000: 1の範囲である反応又は転換(例えば、タンパク質のアシル化)を指す。特別な実施形態において、最も豊富な生成物対次の最も豊富な生成物の比は、約2: 1から100: 1の範囲である。別の特別な実施形態において、最も豊富な生成物対次の最も豊富な生成物の比は約10: 1である。
【0147】
「トレースレスリンカー」及び「トレースレス親和性標識」という用語は、標的分子、例えば、タンパク質との反応を指すために本明細書において相互交換可能に使用される。トレースレスリンカー又はトレースレス親和性標識は、部位選択的にコンジュゲートされた生成物の検査が、連結反応を容易にする結合決定因子のトレースを明らかにしないので、本明細書においてそう呼ばれている。
【0148】
ある実施形態において、本開示は、直交反応性実体(ORE)にコンジュゲートされ、アシル転移反応を介して抗体軽鎖に主として連結された抗体を提供する。例えば、アジド-アルカノイル又はアジド-ポリアルキレンオキシ部分を含む実体は、抗体軽鎖に共有結合的に連結され、解説の目的での本明細書における後続の記載において、OREを用いる一般的アプローチを反映する。
【0149】
本開示に含まれるのは、抗体を選択的に修飾することができるアシル転移が可能なアジド部分にPEG又は非PEG部分を介して連結された求電子試薬を含む化合物である。コンジュゲート及び架橋生成物は、それら自体、分子の診断的及び治療的用途を含めて多くの点において有用である。
【0150】
その上提供されるのは、こうしたアシル転移剤と標的抗体とを接触させることで、優先的に所望の標的、例えば抗体軽鎖にアジド基を共有結合的に連結する方法、並びにこうした方法に起因するコンジュゲートの組成物である。その上提供されるのは、クリックケミストリーに達する一連の2ステップにおいて前述の方法論を統合して抗体-薬物コンジュゲートを生成するための方法である。本開示は、本開示の治療用抗体薬物コンジュゲートの治療有効量を投与することを含む、哺乳動物における疾患、障害又は状態を処置、防止又は寛解させる方法を更に提供する。
【0151】
ある実施形態において、本開示は、タンパク質のアミノ基を部位選択的に官能化するための方法であって、
タンパク質と本明細書において開示されている化合物のいずれか1つとを接触させる工程;
タンパク質のアミノ基と化合物の直交反応性部分との間に共有結合を形成する工程;及び
標識化用化合物の第1の直交反応性部分と脱離基との間の共有結合を切断することで、部位選択的に官能化されたタンパク質を得る工程
を含む方法に関する。
【0152】
方法のある実施形態において、第1の直交反応性部分は、アジドを含む。
【0153】
ある実施形態において、タンパク質は抗体であり、アミノ基は、抗体のFab領域に位置している。ある実施形態において、抗体は、がん又は自己免疫疾患の処置に有用な治療用抗体である。
【0154】
ある実施形態において、化合物は、タンパク質の保存領域に対して親和性を有する。ある実施形態において、親和性は、100μM以下のKdによって表される。
【0155】
ある実施形態において、方法は、
OREに連結された部位選択的に官能化されたタンパク質とペイロード化合物とを接触させる工程であり、ペイロード化合物は、第2の直交反応性部分を含む、工程;及び
第1の直交反応性部分と第2の直交反応性部分との間に1つ又は複数の共有結合を形成する工程
を更に含む。
【0156】
ある実施形態において、第1の直交反応性部分はアジドを含み、第2の直交反応性部分は、アルキン又はシクロアルキンを含む。
【0157】
ある実施形態において、ペイロード化合物は、イメージング部分、抗体、抗体断片、タンパク質、光学剤、ビタミン、酵素、ペプチド、ペプトイド、毒素、薬物、プロドラッグ、バイオマーカーに対するリガンド、又はエフェロサイトーシスの刺激物、放射性核種キレーターである。
【0158】
ある実施形態において、ペイロード化合物は、フォレート、EGFR、ALK、MET、PTK7及びKRAS又は任意の癌遺伝子産物からなる群から選択される受容体を標的化する。
【0159】
ある実施形態において、ペイロード化合物は、アントラサイクリン、タキソール、オーリスタチン、アマニチン、カンプトテシン、ブレオマイシン、カルボプラチン、シタラビン、5-フルオロウラシル、タモキシフェン、カリケアマイシン、メイタンシン、ツブリシン、エトポシド、デュオカルマイシン誘導体、例えばCC-1065、類似体、デュオカルマイシン及びエスペラマイシン、フォレート、ピロロベノジアゼピン並びにRGD連結部分からなる群から選択される。
【0160】
ある実施形態において、ペイロード化合物は、放射性標識、分子イメージング剤、光学プローブ、ヌクレオチド、オリゴ糖類及びポリマーからなる群から選択される。
【0161】
ある実施形態において、第1の直交反応性部分と第2の直交反応性部分との間の1つ又は複数の共有結合の形成は、生理学的温度及びpHで発生する。
【0162】
ある実施形態において、生理学的温度は0~50℃であり、生理学的pHは5~9である。
【0163】
ある実施形態において、第1の直交反応性部分と第2の直交反応性部分との間の1つ又は複数の共有結合の形成は、約0℃で発生する。
【0164】
ある実施形態において、第2の直交反応性部分とペイロードとの間の1つ又は複数の共有結合の形成は、約15℃から100℃で発生する。
【0165】
ある実施形態において、第1の直交反応性部分と第2の直交反応性部分との間の1つ又は複数の共有結合の形成は、約0℃で発生する。
【0166】
ある実施形態において、間の1つ又は複数の共有結合の形成
【0167】
別の態様において、本明細書において提供されるのは、部位選択的にリガンド結合可能な部位及びそれらの相補的リガンドを発見するための方法であって、
複数の同一タンパク質を用意する工程であり、各タンパク質は、2個以上のアミノ(-NH2)基を含む、工程;
複数のタンパク質と、本開示による化合物から独立して選択される複数の標識化用化合物とを接触させる工程;
1種又は複数のタンパク質の1個又は複数の求核基と1種又は複数の化合物の第1の直交反応性部分との間に共有結合を形成することで、1種又は複数の標識化タンパク質を得る工程;
最も高い選択性で標識化されたタンパク質を同定する工程;及び
対応する部位選択的標識化用化合物を同定する工程
を含む方法である。
【0168】
ある実施形態において、方法は、最も高い選択性で及び最も高い収率で標識化されたタンパク質を同定することを更に含む。
【0169】
別の態様において、本開示は、部位選択的にリガンド結合可能な部位及びそれらの相補的リガンドを発見するための方法であって、
複数の同一タンパク質を提供する工程であり、各タンパク質は、2個以上のアミノ(-NH2)基を含む、工程;
複数のタンパク質と、本開示による化合物から独立して選択される複数の標識化用化合物とを接触させる工程;
1種又は複数のタンパク質の1個又は複数の求核基と1種又は複数の化合物の第1の直交反応性部分との間に共有結合を形成することで、1種又は複数の標識化タンパク質を得る工程;並びに
標識の最大量を組み込む標識化用化合物、及びそれらの好ましい結合部位を同定する工程
を含む方法を提供する。
【0170】
ある実施形態において、部位選択的標識化用化合物は、標的タンパク質における第1の直交反応性部分の組み込みの程度をモニタリングするためELISA技術と併せてクリックケミストリー反応を使用することで同定される。
【0171】
ある実施形態において、部位選択的標識化用化合物は、標的タンパク質における第1の直交反応性部分の組み込みの程度をモニタリングするため蛍光標識技術と併せてクリックケミストリー反応を使用して同定される。
【0172】
ある実施形態において、タンパク質は抗体である。ある実施形態において、抗体は、がん又は自己免疫疾患の処置に有用な治療用抗体である。
【0173】
ある実施形態において、求核基はアミノ基である。ある実施形態において、アミノ基は、抗体のFab領域に位置する。
【0174】
ある実施形態において、標識化用化合物は、タンパク質の保存領域に対する親和性を有する。
【0175】
別の実施形態において、標識化用化合物は、式(I):
【0176】
【化7】
【0177】
の構造を有し、式中、
Eは、ハロゲン、-CN、-NO2、-SO2、-SO2NH2、-S(O)2C1~C6アルキル、-S(O)2アリール、-SO3H及び-OC1~C6アルキルからなる群から選択される部分であり;
Xは、O、S又はSeであり;
Yは、アルキル、ポリアルキレンオキシド、及びその組合せからなる群から選択されるリンカーであり、例えばYは、式: -(CH2CH2O)m(CH2)n-を有し、mは0~30であり、nは1~20であり;
Rは、アルキン、シクロアルキン、アジド、1,3-ジエン、ニトリルオキシド、ニトロン、テトラジン及びtrans-シクロオクテンからなる群から選択され;
R'は、存在しない、又は-C(O)OH、-C(O)OC1~C6アルキル、-C(O)NH2、-C(O)NHC1~C6アルキル、-C(O)N(C1~C6アルキル)2、-SO2NH2、-SO3H、-SO2NHC1~C6アルキル、-SO2N(C1~C6アルキル)2、ニトロ、シアノ若しくはハロゲンであり;
qは、0、1、2、3又は4であり;
Zは、存在しない、又はR"N-、R"=H、アルキル、アリールである。
【0178】
別の実施形態において、標識化用化合物は、式(II):
【0179】
【化8】
【0180】
を有し、式中、
Rは、アルキン、シクロアルキン、アジド、1,3-ジエン、ニトリルオキシド、ニトロン、テトラジン及びtrans-シクロオクテンからなる群から選択され;
R1は、水素又はC1~C6-アルキルであり;
R2は、水素又はC1~C6-アルキルであり;
R3は、電子吸引性基であり;
qは、0~100であり; rは、1~20であり; mは、0~1であり; nは、0~4である。
【0181】
特別な実施形態において、標識化用化合物は、式(III)
【0182】
【化9】
【0183】
を有し、式中、
Rは、アルキン、シクロアルキン、アジド、1,3-ジエン、ニトリルオキシド、ニトロン、テトラジン及びtrans-シクロオクテンからなる群から選択され;
R1は、水素又はC1~C6-アルキルであり;
R2は、水素又はC1~C6-アルキルであり;
R3は、電子吸引性基、例えば、ハロゲン、-CN、-NO2、-SO2、-SO2NH2、-S(O)2C1~C6アルキル、-S(O)2アリール、-SO3H及び-OC1~C6アルキルからなる群から選択される部分であり; Yは、O、S又はSeであり; mは、0~1であり; nは、0~5である。
【0184】
別の態様において、本明細書において提供されるのは、式(IV):
【0185】
【化10】
【0186】
の化合物であり、式中、
Pは、タンパク質であり;
Lysは、Pにおけるリジン残基であり;
Rは、アルキン、シクロアルキン、アジド、1,3-ジエン、ニトリルオキシド、ニトロン、テトラジン及びtrans-シクロオクテンからなる群から選択される部分であり; Zは、存在しない、又はR'N-、R'=H、アルキル、アリール若しくはヘテロアリールであり; mは、0~40であり; nは、1~20である。
【0187】
ある実施形態において、Pは抗体である。
【0188】
別の態様において、本明細書において提供されるのは、式(V):
【0189】
【化11】
【0190】
の化合物であり、式中、
Pは、タンパク質であり;
Lysは、Pにおけるリジン残基であり;
Gは、ペイロード化合物を含む部分であり;
Zは、存在しない、又はR'N-、R'=H、アルキル、アリール若しくはヘテロアリールであり;
mは、0~40であり; nは、1~20である。
【0191】
ある実施形態において、Gは、トリアゾール部分を更に含む。
【0192】
別の態様において、本明細書において提供されるのは、式(V)の化合物及び薬学的に許容される担体又は賦形剤を含む医薬組成物である。
【0193】
別の態様において、本明細書において提供されるのは、式(V)の化合物の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む、患者におけるがんを処置する方法である。
【0194】
別の実施形態において、標識化用化合物は、式(VI):
【0195】
【化12】
【0196】
を有し、式中、
Eは、ハロゲン、-CN、-NO2、-SO2、-SO2NH2、-S(O)2C1~C6アルキル、-S(O)2アリール、-SO3H及び-OC1~C6アルキルからなる群から選択される部分であり;
qは、0、1、2、3又は4であり;
X=O、S又はSe;
mは、0~30であり、
nは、1~8であり、
p=1~8
R"=OR'''、SR'''、(R'''=アルキル、アリール); FmocNH、t-BocNH; HCCH2O; O=C-OR'''。
【0197】
別の実施形態において、標識化用化合物は、式(VII):
【0198】
【化13】
【0199】
を有し、
Eは、ハロゲン、-CN、-NO2、-SO2、-SO2NHW4、-S(O)C1~C6アルキル、-S(O)アリール及び-OC1~C6アルキルからなる群から選択される部分であり;
Xは、O、S又はSeであり;
R'は、-C(O)W1、-SO2W1、-CH2W2、-C(O)W3、-SO2W3、-C(O)W4又は-SO2W4であり;
W1は、N末端でC(O)又はSO2に結合している1~25個のアミノ酸残基の直鎖状ペプチドを含み;
W2は、O-チロシン残基又はS-チオチロシン残基でCH2に結合している1~25個のアミノ酸残基のペプチドを含み;
W3は、2,P-ジアミノ-n-アルカン酸残基のP-アミノ基でC(O)又はSO2に結合している1~25個のアミノ酸残基のペプチドを含み、Pは、3、4、5、6、7又は8であり;
W4は、N末端でC(O)又はSO2に連結された、最大25個までの残基のペプチドを含み;
qは、0、1、2、3又は4である。
【0200】
複数の成分を保有するコンストラクト
実施形態において、コンストラクトは、単一の同時ステップにおいて抗体部位に結合させることができる2種の成分(例えば、2種の薬物、2つの毒素、又は1つのキレーター及び1つの毒素、又は2種の異なる薬物、又は2つの異なる毒素)を担持する。これは、抗体-薬物コンジュゲート(ADC)モチーフを使用して、有効にペイロード、例えば、毒素又は薬物のサイズを倍増して、標的化された放射免疫療法及び標的化治療の組み合わせを容易にし、1抗体当たり最大4つ以上の治療的又は診断的に活性な実体を担持するコンジュゲートをもたらす。2つのアジド反応性ハンドルを担持する標識化剤は、例えば、好都合にも、下記の配列を介して調製されることで抗体を選択的に標識化し、それらを4のDARを有するADCに変換することができる。
【0201】
【化14】
【0202】
式中、Xは、S又はOいずれかのである。
【0203】
実施形態において、本明細書において提供される方法及び組成物は、4の薬物対抗体比(DAR)を有する抗体の選択的標識化を可能にする。型(2)の試薬を使用して、2つの抗体相当Lys188部位で抗体上に4つの同一ペイロードが結合し得る。下記に表されているスキームにおいて、(1)に類似したアミンは、Lys188で抗体を標識化する(2)(示されていない)に類似した薬剤への前駆体として使用されることで、多様な型の複数のペイロードを得ることができる。
【0204】
一般に、修飾される抗体は、効果的及び選択的な部位特異的標識化をもたらすように選択される。適当な標的は、軽鎖定常ドメイン内の単一のリジン(Lys188)でのヒトカッパ抗体によって提供される。実施形態において、ある特定の残基は、それらのKabat番号付けを受け;したがって、K188 CLカッパは、カッパ軽鎖の初めからカウントするKabat番号付けに従ってカッパ軽鎖の残基188を指す。当業者は、リジン残基の番号付けが、適用される特定の番号付け慣習に依存して、又はポリペプチド配列を短くする若しくは長くするアミノ酸配列における変更により、変化し得ることを認められよう。
【0205】
実際に、これらの薬剤の生体直交要素は、標準的な合成経路(Tsuchikama後)によって区別することができ、これは、上記でスキーム的に示されている通り標的標識化抗体上に異なるペイロードを置くことを可能にする。
【0206】
抗体の1つの分子上に同一ペイロード又は1つ超の型のペイロード若しくは薬物の複数分子を担持する抗体コンジュゲートを得るという能力を強調することは重要であるが、しかも、タンパク質上に1つのみの結合点を必要とすること(図11)は、現在利用可能な非部位選択的技術を超えて、いくつかの非常に重要な利点を提供する。第一に、抗体上に単一及びユニバーサルな結合点(Lys-188又はそれの同等物として)を有することは、抗体の表面及び全体的な構造の最も小さい可能な摂動で、効果的な、より高い能力の薬物/ペイロード送達システムを作り出すことを可能にする。当然、反応性ハンドルの分岐を導入する(構造(2)及び同様の物における通り)ことなく薬物/ペイロード対抗体比を増加させることは、抗体上の結合点の数を比例して増加させることを必要とし、コンジュゲートを熱力学的に不安定化するリスクを劇的に増加させ、標的エピトープに対するそれの親和性及びしたがって選択性を低下させる。これは、バイオコンジュゲートの有効性を低下させ、より高い毒性及びより低いtherapeutic windowにつながる。第2に、本明細書(試薬(2)及び同じようなもの)において表されているコンジュゲーション方法論及び構造は、単一の化学的事象において各抗体軽鎖上の単一の結合点に、1つ超の型の反応性ハンドルを結合させることを可能にするので、我々の開示は、単一の抗体分子において2個のリジン188残基(又はそれの同等物)の各1つに、2つ以上の型のペイロードの2つ以上のコピーを導入するための方法を提供する。これは、同じ分岐アシル化剤上で二重化された又はさらに多重化された相互直交反応性ハンドルを使用することによって達成することができる。こうしたアプローチは、同じ送達システムによって同じ標的細胞に同時に送達される場合、ペイロードの様々な対又はより大きい群の間に潜在的な相乗作用を用いる能力を提供する。このように、例えば、異なる及び非競合の作用機序を有する2つの細胞毒性ペイロードは、コンジュゲートの選択的な毒性を相乗的に増加させるために使用されて、薬物のtherapeutic windowを潜在的に広くすることができる。こうした二重ペイロード送達システムの第3の決定的な利点は、抗がん薬として使用される現在利用可能な抗体-薬物コンジュゲートの最も重要な欠点の1つ、すなわち、非常にしばしば腫瘍内で発達するADCによって担持された毒性弾頭に対する広範に及ぶ耐性に対処する潜在性である。これは、典型的には、腫瘍及びそれの環境の不均一性を増加させるとともに、その結果として薬物に耐性のがん細胞の選択をもたらす、がん細胞の高い突然変異速度によって加速される。2つ以上の型の毒素(ペイロード)、又は毒素及びDNA傷害性放射性核種が同時に送達されるならば、耐性のために選択する可能性はずっと低い。これは、各がん細胞が、生存するために、同じ時に2つの独立した耐性機序を発達させる必要があるからであり、このことは著しく可能性が低い。そのため、最も摂動されていない抗体表面を有する最も安定なコンジュゲートの形態で不均質及び相乗的なペイロードを保有する分岐された抗体-薬物コンジュゲートは、抗がん剤としてのそれらの有効性を劇的に改善するのに有望である。
【0207】
キレート-抗体コンジュゲート
その上提供されるのは、キレーター、例えば、放射性核種キレーターを抗体及び他のタンパク質に部位選択的に架橋するための方法である。これは、生体直交反応性実体(ORE)で標的タンパク質を標識化するように設計された二官能性キレーターの働きを介して達成される。一実施形態において、好ましい標的は、抗体の軽鎖である。
【0208】
本開示は、追加として、最初に抗体表面に生体直交反応性実体(例えば、アジド)を導入すること、続いて、次いで適切な放射性核種が充填され得るキレーターを保有する対応する生体直交反応性パートナー(例えば、DIBCO部分)を反応させることを含む段階的なプロセスを介して、放射性核種ペイロードを用いる抗体の部位選択的標識化のための実用的な高度な方法を提供する。
【0209】
本開示は、一般に、直交反応性実体(ORE)を介する抗体とペイロード、例えば、放射性核種ペイロードとの化学特異的な結合体に更に関する。実施形態において、OREは、特定されている方式で又はOREに連結された求電子試薬の使用を介して、フェノール性エステル又はチオエステル等のアミン反応性実体を使用して抗体表面に部位選択的に結合している。
【0210】
本開示は、診断的イメージング目的での又は放射性核種ペイロード(例えば、生物学的分子)の活性を増大若しくはモジュレートする目的での、或いは抗体フレームワークに追加の活性又はペイロードを導入するための、こうした組成物の特徴付け及び使用にも関する。
【0211】
本開示は、一般に、モノクローナル及びポリクローナル抗体、それらの断片(例えば、Fab、F(ab')2、sdAb(単一のドメイン抗体))、二重特異性抗体、ダイアボディ)等の部位選択的修飾のための方法を提供する。本明細書に記載されている修飾は、多数の診断的イメージング及び治療用抗体用途のために放射性標識化においてペイロードを結合させるために使用することができる。本明細書において開示されているキレーター組成物は、多くの障害、例えば、関節リウマチ、細菌性及びウイルス性疾患、ループス・エリテマトーデス、乾癬、多発性硬化症、1型糖尿病、クローン病、及び全身性硬化症、アルツハイマー病、がん、心臓及び肝臓疾患(例えば、アルコール性肝臓疾患)及び悪液質の処置のために使用することができる。
【0212】
本明細書において開示されている組成物は、放射性核種(「標的化放射性核種治療」)で標識化されたキレーターを使用する標的化治療薬においても使用することができる。標的細胞に治療薬又は毒素を送達するために共有結合的に標識化された抗体の使用は、抗体-薬物コンジュゲートのように周知である。治療的に実現可能な放射性同位体に対する高い親和性を有するキレーターへの抗体のコンジュゲーションを伴う同様のアプローチが現れた。例えば、β-エミッターとしてのルテチウム177(177Lu)標識化医薬品に、高レベルの関心がある(Banerjee S.ら、Lutetium-177 therapeutic radiopharmaceuticals: linking chemistry, radiochemistry, and practical applications。Chem Rev. 2015年4月22日; 115(8):2934~74)。同様に、軟組織転移についての標的化アルファ-粒子治療(TAT)の戦略が現れ(Scheinberg, DA及びMcDevit MR、Actinium-225 in targeted alpha-particle therapeutic applications、Curr Radiopharm。2011、4、306~320頁)、これによって、致死的α-放出放射性核種は、二官能性キレーターを使用して腫瘍標的化用ベクターにコンジュゲートされることで、細胞毒性アルファ放射線をがん細胞に選択的に送達する。アクチニウム-225(225Ac)は、抗体ベースの標的化用ベクターと適合性のあるそれの長い10日半減期及び細胞に極めて致死的である4つの高エネルギーα-放出により、TATにおける使用に非常に有望である。
【0213】
標的化治療のためのフレームワークとして働くことができる多数の二官能性キレーターが開発された。こうした二官能性キレーターは、抗体に接続するという選択肢を提供するが、抗体表面上での競合する求核試薬の無差別的反応に起因する生成物不均質性の問題は、これまで取り組まれてこなかった。
【0214】
ある実施形態において、抗体の部位選択的な共有結合性標識化は、1又は2ステップ機序を介してアクチニウム及びルテチウムのキレーターを使用して行われる。
【0215】
我々は、多様な及び予測不可能な範囲の反応性を有する可能性が高いシステムによって直接的な1つのステップ攻撃を不要にする2ステッププロセスを介して抗体へのキレーターの部位選択的結合を達成することができた。全体的なプロセスの選択性の事実上の決定因子になる第1のステップの選択性を最適化することによって、ペイロードコンジュゲーションの結果は、保証及び標準化され得る。原理的には、この作業を達成するために生体直交反応性対を用いることができ、これによって、第1の「クリックケミストリー」パートナーは、選択的にコンジュゲートされ、次いで、第2の相補的パートナーに定量的に連結され得る。
【0216】
実際に、例証的な方法は、抗体の保存部位のLys188と主に反応するアジド連結-フェノレート又はチオフェノレートを用いて達成することができる第1の選択的ステップを特色とする(図1)。アジド基は、DIBCO官能化ペイロードに縮合することができるとともに生体直交反応性実体のために一般化することができるプロトタイプを表す反応性ハンドルとして働く。例えば、DIBCO修飾された抗体は、抗体とそれらの標的ペイロードとの間の安定な連結を築くために配置することができるクリックケミストリーモチーフのレパートリーの代表として、アジド官能化ペイロードと組み合わせることもできる。このレパートリーは、Dommerholt J.ら、Strain-Promoted 1,3-Dipolar Cycloaddition of Cycloalkynes and Organic Azides.、Top Curr Chem (Cham). 2016 Apr;374(2): 16に記載されている通りのテトラジン/(BCN)を含む。
【0217】
この文脈において、H2macropaを用いるアクチニウムキレート化の動的及び熱力学的特性は、治療用抗体に部位選択的に連結されたアクチニウムキレートを調製する機会を提供する(Thiele NAら、An Eighteen-Membered Macrocyclic Ligand for Actinium-225 Targeted Alpha Therapy。Angew Chem Int編 Engl. 2017年11月13日;56(46): 14712~14717頁)。抗体は、図3に図示されている一般の配列を介してH2macropa実体に連結することができ、様々なDIBCOアミンIIは、最初にH2macropaイソチオシアネートIと縮合され、結果として得られたDIBCO-チオ尿素IIIは、アジド標識化抗体Ab-N=N=Nと縮合されることで、キレーター-抗体付加物が得られる。後者は、次いで、アクチニウムで処理されることで、所望の部位選択的にコンジュゲートされた放射標識化材料を生成する。図3図5は、抗体保有アクチニウムキレーターが、アジド保有実体の部位選択的コンジュゲーションを活用することによって部位選択的に生成され得る実施形態を例証している。
【0218】
類似した配列(図6図9)がDOTAイソチオシアネートとともに用いられて、Lys-188で部位選択的に修飾された様々なアジド連結抗体にコンジュゲートされ得るDIBCO連結DOTAキレーターを提供することができる。
【0219】
代替として、キレーターを保有するコンジュゲートから構成された式XXIV及びXXV(図10を参照されたい)に対応するある特定のADCは、微生物トランスグルタミナーゼ媒介交換を介して抗体に選択的に連結することもできる。この配列は、CAR=2を有するキレーターを提供するために使用することができる、又は前に記述のアシル化反応と組み合わされることで、CAR=4を得ることができる。CAR=4は、抗体連結キレーターへの上に記載されている経路に分岐リンカーを適応させることによって達成することもできる(Anami Y.ら、Enzymatic conjugation using branched linkers for constructing homogeneous antibody-drug conjugates with high potency。Org Biomol Chem. 2017年7月5日; 15(26):5635~5642頁)。
【0220】
方法
本明細書において提供されるのは、本開示による組成物を用いる処置から利益を得ると知られている又は思われる疾患又は状態を処置する方法である。
【0221】
本明細書において考えられる対象は、典型的にヒトである。しかしながら、対象は、処置が望ましい任意の哺乳動物であってよい。したがって、本明細書に記載されている方法は、ヒト及び獣医学用途の両方に適用することができる。
【0222】
投与/用量
治療組成物の製剤及びそれらの後続の投与(投薬)は、当業者の技能内である。投薬は、数日から数カ月続く処置の過程を用いて、又は疾患状態の十分な減少が達成されるまで、処置される疾患状態の重症度及び応答性に依存性である。最適な投薬スケジュールは、患者の体における薬物蓄積の測定から算出することができる。
【0223】
当業者は、最適な投与量、投薬方法論及び反復速度を簡便に決定することができる。最適な投与量は、本開示による個々の組成物の相対的効力に依存して変動することができ、一般に、インビトロ及びインビボ動物モデルにおいて有効であると見出されたEC50に基づいて推算することができる。一般に、投与量は、0.01μgから100g/体重kgであり、毎日、毎週、毎月若しくは毎年1回超、又は2年から20年毎に1回でさえ与えることができる。当業者は、体液又は組織中の薬物の残留時間及び濃度の測定に基づいて投薬するための反復速度を簡便に推算することができる。処置の成功に続いて、疾患状態の再発を防止するために患者に維持治療を受けさせることが望ましくあり得、本開示による組成物は、0.01μgから100g/体重kgを範囲とする維持量で、毎日1回超から20年毎に1回投与される。
【0224】
一部の実施形態において、医薬組成物は、単独で投与される。
【0225】
一部の実施形態において、医薬組成物は、治療有効量又は投与量で投与される。「治療有効量」は、それ自体患者に投与される場合、筋肉疾患、ウイルス感染又は細菌感染を有効に処置する量である。特別な対象について、所与の例において「治療有効量」であると証明する量は、こうした投与量が熟練した開業医によって「治療有効量」と見なされるとしても、検討中の疾患又は状態のために同様に処置された対象の100%に有効でなくてもよい。
【0226】
異なる実施形態において、該組成物は、筋肉疾患、ウイルス感染又は細菌感染に関与する遺伝子の発現をモジュレートすることができる。
【0227】
該量が、筋肉疾患、ウイルス感染又は細菌感染の有効な処置をもたらすべきである一方で、該量は、好ましくは、患者に対して過度に毒性でない(即ち、該量は、好ましくは、医療ガイドラインによって確立されている通りの毒性限界内である)。一部の実施形態において、過度の毒性を防止するか又は筋肉疾患、ウイルス感染若しくは細菌感染症のより効力のある処置を提供するかのいずれか、或いは両方のため、投与される総投与量に対する制限が提供される。典型的に、本明細書において考えられる量は、1日当たりであるが;しかしながら、半日及び2日又は3日サイクルも本明細書において考えられる。
【0228】
筋肉疾患、ウイルス感染又は細菌感染症を処置するために、異なる投与レジメンが使用され得る。一部の実施形態において、1日投与量、例えば上に記載されている例証的な投与量のいずれかは、1日1回、2回、3回又は4回、3日、4日、5日、6日、7日、8日、9日又は10日の間投与される。処置されている疾患の段階及び重症度に依存して、より短い処置時間(例えば、最大5日まで)は高投与量と一緒に用いることができる、又はより長い処置時間(例えば、10日若しくは10週超、又は1カ月以上)は低投与量と一緒に用いることができる。一部の実施形態において、1日1回又は2回の投与量は、隔日毎に投与される。
【0229】
本開示の化合物若しくはそれらの薬学的に許容される塩を有する医薬組成物又は溶媒和物形態は、純粋な形態で又は適切な医薬組成物中で、当技術分野において公知の許容投与モード又は薬剤のいずれかを介して投与することができる。該化合物は、例えば、経口的に、経鼻的に、非経口的に(静脈内、筋肉内又は皮下)、局所的に、経皮的に、膣内に、膀胱内に、大槽内に又は直腸的に投与することができる。剤形は、例えば、正確な投与量の単純な投与に適当な単位剤形において、例えば、固体、半固体、凍結乾燥粉末又は液体剤形、例えば、錠剤、丸剤、軟質弾性又は硬ゼラチンカプセル、粉末、溶液、懸濁液、坐剤、エアゾール等であってよい。特別な投与経路は、経口、特に、好都合な1日投与量レジメンが、処置される疾患の重症度の程度に従って調整され得るものである。
【0230】
助剤及びアジュバント剤としては、例えば、保存剤、湿潤剤、懸濁剤、甘味剤、香味剤、芳香剤、乳化剤及び分配剤を含むことができる。微生物体の作用の防止は、一般に、様々な抗細菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等によって提供される。等張剤、例えば糖、塩化ナトリウム等を含むこともできる。注射可能な医薬形態の持続吸収は、吸収を遅延させる薬剤、例えば、モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンの使用によってもたらすことができる。助剤としては、湿潤剤、乳化剤、pH緩衝剤、及び抗酸化剤、例えば、クエン酸、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン、ブチル化ヒドロキシトルエン等を含むこともできる。
【0231】
固体剤形は、コーティング及びシェル、例えば腸溶コーティング及び当技術分野において周知の他のものを用いて調製することができる。例えば、それらは鎮静剤を含有することができ、それらが遅延方法で腸管のある特定の部分において活性化合物を放出するような組成物であってよい。使用することができる包埋組成物の例は、ポリマー性物質及びワックスである。本開示によると活性薬剤は、適切な場合、上述の賦形剤の1種又は複数を用いるマイクロカプセル化形態であってもよい。
【0232】
経口投与のための液体剤形としては、薬学的に許容されるエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップ及びエリキシルを含む。こうした剤形は、例えば、本明細書に記載されているコンジュゲート又はその薬学的に許容される塩、及び任意選択の薬学的アジュバントを、例えば、水、生理食塩水、水性デキストロース、グリセロール、エタノール等;例えば、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド等の可溶化剤及び乳化剤;油、特に、綿実油、落花生油、コーン胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油及びゴマ油、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール、並びにソルビタンの脂肪酸エステル;又はこれらの物質の混合物等の担体中に溶解させること、分散させることなどによって、溶液又は懸濁液をそれによって形成することで調製される。
【0233】
一般に、意図される投与モードに依存して、薬学的に許容される組成物は、本明細書に記載されている組成物又はその薬学的に許容される塩を約1質量%から約99質量%、及び薬学的に許容される賦形剤を99質量%から1質量%含有する。一例において、該組成物は、本明細書に記載されている組成物又はその薬学的に許容される塩が約5質量%から約75質量%の間であり、残りは適当な医薬賦形剤である。
【0234】
こうした剤形を調製する実際の方法は公知である、又は当業者に明らかである。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences、第18版 (Mack Publishing社、Easton、Pa.、1990)が参照される。
【0235】
キット
他の実施形態において、キットが提供される。キットは、典型的に、本開示による組成物を含むパッケージを含む。
【0236】
「パッケージ」という成句は、本明細書において提示されているものを含有する任意の容器を意味する。一部の実施形態において、パッケージはボックス又はラッピングであってよい。医薬品生成物をパッケージする際における使用のためのパッケージ用材料は、当業者に周知である。医薬パッケージ用材料の例としては、以下に限定されないが、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、シリンジ、瓶、並びに選択された製剤、及び意図される投与及び処置モードに適当な任意のパッケージ用材料を含む。
【0237】
キットは、パッケージ内に含有されないがパッケージの外側に付着する物品、例えば、ピペットを含有することもできる。
【実施例0238】
例示の目的で、及び本開示のある特定の具体的な実施形態を説明するために、実施例を下記に記載する。しかしながら、請求項の範囲は、本明細書に記載されている実施例によって決して限定されるべきでない。開示されている実施形態に対する様々な変化及び修飾は、当業者に明らかであり、限定するものではないが、本開示の化学構造、置換基、誘導体、製剤又は方法に関するものを含めて、こうした変化及び修飾は、本開示の趣旨及び添付の請求項の範囲から逸脱することなく行うことができる。本明細書におけるスキームの中の構造における可変物の定義は、本明細書において表されている式において対応する位置のものに相応する。
【0239】
(実施例1)
エステル合成プロトコール
本明細書に記載されている組成物及び方法において使用されるエステルを以下の通りに調製した:
【0240】
【化15】
【0241】
N3-PEG5-(CH2)2-COOH 22mg (65uM)、HBTU 25mg (65uM)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン23uL (132uM)をDMF (0.5mL)中に溶解させ、30秒間振盪した。
【0242】
【化16】
【0243】
結果として得られた溶液に、ペンタフルオロフェノール6mg (42uM)を添加し、1時間の間室温で撹拌させておいた。粗製混合物をRP-HPLCによって精製した。
【0244】
N3-PEG5-(CH2)2-COOH 30mg (89uM)、pyBOP 44mg (85uM)及びN,N-ジイソプロピルエチルアミン30uL (173uM)をDMF (0.5mL)中に溶解させ、30秒間振盪した。結果として得られた溶液に、2,3,5,6-テトラチオフェノール7.6mg (42uM)を添加し、1時間の間室温で撹拌させておいた。粗製混合物をRP-HPLCによって精製した。
【0245】
【化17】
【0246】
ペンタフルオロチオフェノール20mg (100uM)及びN3-PEG8-CH2-COOH 45mg (100uM)をDCM (1mL)中に溶解させ、0℃に冷却した。結果として得られた溶液に、DCC 25mg (120uM)及びDMAP 36uL (10mg/mL)を添加し、0℃から室温で16時間の間撹拌させておいた。発生したDCUを濾過によって除去し、濾液を濃縮し、アセトニトリル/水中に溶解させ、RP-HPLCによって精製した。
【0247】
抗体への生体直交反応性ハンドルのコンジュゲーション
3つの異なる組換え抗体(トラスツズマブ、パリビズマブ及び抗体#247)のために使用されると本明細書において主張されているいくつかのアシル化試薬を使用する修飾プロトコールを、試薬最適条件下で様々な生体直交性ハンドルのコンジュゲーションの高部位選択的特徴を例証するために、ここに提示する。
【0248】
1. PBS緩衝液pH7.4中のタンパク質の溶液を、無水のアミン不含N,N-ジメチルホルムアミド中に調製された修飾用試薬Rの溶液に、タンパク質の最終濃度XμM及びタンパク質を超える修飾用試薬のモル過剰Y倍に達するまで添加することによって、抗体Pのアシル化を実施した。
【0249】
2. 下記の表に要約されている通りのZの温度(室温又は氷上)でT分間、アシル化反応を進行させておいた。
【0250】
3. 第2のステップコンジュゲーション(クリック反応)の目的で、第1のコンジュゲーション試薬(アシル化試薬)に以下のいずれかをした: a) Zeba Spin(商標)カラム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって若しくは限外濾過によって除去した、或いはb) pHを5.6に低下させること又はおよそ10~100×過剰のヒドロキシルアミン(pH7.4)若しくはガンマ-アミノ酪酸(pH7.4)の添加によってクエンチし、引き続いて、Zeba Spin(商標)カラム上のサイズ排除クロマトグラフィーによって又は限外濾過によって除去した。
【0251】
化合物AからNは、記載されているプロトコールに従って修飾された抗体の代表的なエレクトロスプレーイオン化法(ESI)LC-質量分光測定分析を示す。下記のTable 1 (表1)は、各アシル化反応のための実験パラメータを列挙している。全てのESI-MS分析は、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン塩酸塩(TCEP)で還元された抗体試料上で行い、通例のRPLC-MS分析を用いた。
【0252】
【表1-1】
【0253】
【表1-2】
【0254】
化合物A。アジドアセチル-4-メルカプトベンズアミドを使用するトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブをESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+83Daである。
化合物B。アジド-PEG8-CH2CH2-ペンタフルオロフェニルエステルを使用するトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブを>20倍過剰のジベンゾアザシクロオクチン-CO-CH2CH2-アミンと更に反応させ、引き続いて、ESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+725Daである。
化合物C。アジド-PEG8-CH2-ペンタフルオロフェニルエステルを使用するトラスツズマブの部位選択的修飾、及び所望のペイロードのDIBAC誘導体との効果的なクリック反応。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブを、キノコ毒素、アルファ-アマニチンの、約20倍過剰のジベンゾアザシクロオクチン誘導体と更に反応させ、引き続いて、ESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、それぞれアジド-トラスツズマブ及びクリック反応の最終生成物について、およそ+435Da及び+1916Daである。
化合物D。アジド-アセチル-テトラフルオロチオフェニルエステルを使用するトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブをESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+83Daである。
化合物E。アジド-アセチル-テトラフルオロチオフェニルエステルを使用するトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブを>20倍過剰のジベンゾアザシクロオクチン-CO-CH2CH2-アミンと更に反応させ、引き続いて、ESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+360Daである。
化合物F。アジド-アセチル-ペンタフルオロフェニルエステルを使用するトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブをESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+83Daである。
化合物G。アジド-PEG8-CH2-ペンタフルオロフェニルエステルを使用するトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブを>20倍過剰のジベンゾアザシクロオクチン-CO-CH2CH2-アミンと更に反応させ、引き続いて、ESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+712Daである。
化合物H。アジド-PEG8-CH2-ペンタフルオロフェニルエステルを使用するパリビズマブの部位選択的修飾、及び所望のペイロードのDIBAC誘導体との効果的なクリック反応。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-パリビズマブを、キノコ毒素、アルファ-アマニチンの、約20倍過剰のジベンゾアザシクロオクチン誘導体と更に反応させ、引き続いて、ESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、クリック反応の最終生成物についておよそ+1916Daである。
化合物I。アジド-PEG8-CH2-ペンタフルオロフェニルエステルを使用する抗体#247の部位選択的修飾、及び所望のペイロードのDIBAC誘導体との効果的なクリック反応。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-抗体#247を、キノコ毒素、アルファ-アマニチンの、約20倍過剰のジベンゾアザシクロオクチン誘導体と更に反応させ、引き続いて、ESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、クリック反応の最終生成物について、およそ+1916Daである。
化合物J。アジド-PEG8-CH2-ペンタフルオロフェニルエステルを使用する、氷上で及びより高いタンパク質濃度10uMでのトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブをESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+436Daである。
化合物K。6つの連続した同用量(IgGを超える、約6.7の合計モル過剰)のアジド-アセチル-テトラフルオロチオフェニルエステルを使用する、氷上でのトラスツズマブの部位選択的修飾。合計接触時間は約1時間であった。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブを>20倍過剰のジベンゾアザシクロオクチン-CO-CH2CH2-アミンと更に反応させ、引き続いて、ESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+360Daである。
化合物L。アジド-PEG8-CH2-ペンタフルオロチオフェニルエステルを使用する、氷上でのトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブを>20倍過剰のジベンゾアザシクロオクチン-CO-CH2CH2-アミンと更に反応させ、引き続いて、ESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+712Daである。
化合物M。分岐ビス-(アジド-PEG3)-リジル-PEG3-CH2CH2-ペンタフルオロフェニルエステルを使用する、氷上で及びより高いタンパク質濃度10uMでのトラスツズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-トラスツズマブをESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+776Daである。
化合物N。分岐ビス-(アジド-PEG3)-リジル-PEG3-CH2CH2-ペンタフルオロフェニルエステルを使用する、氷上で及びより高いタンパク質濃度10uMでのパリビズマブの部位選択的修飾。修飾条件がTable 1 (表1)において更に記載されている。結果として得られたアジド-パリビズマブをESI-MSによって分析した。修飾種についてのM/zシフトは、およそ+776Daである。
【0255】
抗体-ペイロードコンジュゲートの生物学的有効性の確認
いくつかの抗体-薬物コンジュゲートを、それらの生物学的活性(例えば、がん細胞上のそれらの標的エピトープへの結合)及び治療的可能性が保存されるというエビデンスを提供するために、機能性分析に適当なスケールで調製した。試験の1つにおいて、アシル化剤アジド-PEG8-CH2-ペンタフルオロフェノレートのために開発された我々のプロトコールを使用して、トラスツズマブを関心対象の2種の異なるキレート化剤の1つに部位選択的にコンジュゲートし(DIBAC-PEG4-チオ尿素-MacroPa及びDIBAC-DO3A、図2を参照されたい)、
【0256】
【化18】
【0257】
標準的な蛍光活性化細胞選別(FACS)分析を使用して、両方をHER-2陽性がん細胞株(OVCAR及びJIMT-1)へのそれらの結合について試験した。この分析は、コンジュゲートの両方についての見かけ解離定数(Kd)が、結合のための陽性対照として使用されるネイキッド(非修飾)トラスツズマブと実際的に区別不可能であることを示した。同様に、選択のDIBAC-毒素を保有するトラスツズマブの他のコンジュゲート(上記の表における試薬Aを使用して調製され、DIBAC-アマニチンのバリアントを保有するコンジュゲート)は、非修飾トラスツズマブと実際的に区別不可能な、NCI-N87、SKBR-3及びJIMT-1がん細胞への結合を呈した。興味深いことに、試験された細胞株上の標的に対するこのコンジュゲートのこの見かけ解離定数は、同じ毒素にコンジュゲートされ、その上安定なアミド結合を介しているが、非部位選択的な誘導体(NHSエステル、データは示されていない)を使用する直接的な(単一ステップ)修飾を使用するトラスツズマブと比較した場合、5.2~9倍だけ低かった。
【0258】
本明細書において表されている方法論を使用して得られた抗体-薬物コンジュゲートの完全細胞毒性潜在性は、およそ2のDARを有するキノコ毒素アルファ-アマニチンの例を保有するC型の抗体-薬物コンジュゲートによって例証され得る。このコンジュゲートは、いくつかのHER-2陽性がん細胞株に対して非常に高い細胞毒性活性を呈し、SKBR-3細胞株について12pMからSKOV3細胞について0.11nMのEC50の値を示した(滴定曲線は示されていない)。対応する陰性対照コンジュゲートである、およそ2のDARを有する同一毒素にコンジュゲートされたパリビズマブ(ヒト細胞に存在しないウイルスタンパク質を標的化する)は、活性トラスツズマブ-ベースのADCよりも3~4桁高い濃度で、同じ細胞に対していかなる毒性も示さなかった。
【0259】
J型のトラスツズマブADCを調製し、動物研究に十分な量で精製した。それのインビボ効力をヒト乳腺癌腫(JIMT-1モデル)及び胃癌腫(NCI-N87モデル)の2つの侵襲性マウス異種移植片モデルにおいて確認した。具体的には、完全腫瘍退縮を、JIMT-1モデルにおいて2mg/kg用量のADC(DAR=2)で及びNCI-N87モデルにおいて3mg/kg用量で注射された動物において観察した。
【0260】
参照による組み込み
この願書の全体にわたって引用されている全ての参照の内容(参照文献、発行特許、公開特許出願及び同時係属特許出願を含める)は、それらの全体で本明細書に本明細書によって明確に組み込まれる。別段に定義されていない限り、本明細書において使用されている全ての技術的及び科学的用語は、当業者に共通して知られている意味と一致する。
【0261】
同等物
当業者は、本明細書に記載されている本開示の特定の実施形態の多くの同等物を認識し又は日常的に過ぎない実験法を使用して確かめることができる。こうした同等物は、以下の請求項によって包含されることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【外国語明細書】