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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184630
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】送風装置
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/44 20060101AFI20231221BHJP
   F04D 29/54 20060101ALI20231221BHJP
   F04D 25/16 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
F04D29/44 D
F04D29/54 D
F04D25/16
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023188222
(22)【出願日】2023-11-02
(62)【分割の表示】P 2020035064の分割
【原出願日】2020-03-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 千鶴
(72)【発明者】
【氏名】今井 洋輔
(57)【要約】
【課題】送風装置において、ファン内部の羽根車が見えるのを抑制し、ユーザに与える機械的な印象を低減する。
【解決手段】送風装置(10)は、マトリクス状に配列された複数の送風ファン(12)を備える。送風ファンは、空気を吹き出す吹出口(22)が設けられたケーシング(14)と、ケーシングに収容されて吹出口側に面する羽根車(16)とを有する。ケーシングには、吹出口の正面視で羽根車を隠蔽する目隠し部(28)が設けられる。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも縦方向に配列された複数のファン(12)を備え、
前記ファン(12)は、空気を吹き出す吹出口(22)が設けられたケーシング(14)と、該ケーシング(14)に収容されて前記吹出口(22)側に面する羽根車(16)とを有する送風装置であって、
前記ケーシング(14)には、前記吹出口(22)の正面視で前記羽根車(16)を隠蔽する目隠し部(28)が設けられる
ことを特徴とする送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載された送風装置において、
前記目隠し部(28)は、前記羽根車(16)の回転により送られる空気を通す通風部材(30)によって構成される
ことを特徴とする送風装置。
【請求項3】
請求項2に記載された送風装置において、
前記通風部材(30)として、互いに平行に配置された複数の第1ガイド板(36)を有する第1グリル(32)と、互いに平行に配置された複数の第2ガイド板(40)を有する第2グリル(34)とを備え、
前記第1ガイド板(36)の向きと前記第2ガイド板(40)の向きとは、互いに異なる
ことを特徴とする送風装置。
【請求項4】
請求項1に記載された送風装置において、
前記ファン(12)は、前記ケーシング(14)の内部で前記羽根車(16)が回転により空気を径方向における外側へ送るターボファンであり、
前記目隠し部(28)は、前記ケーシング(14)の外側の空間と前記羽根車(16)との間を仕切る板状部材(50)によって構成され、
前記板状部材(50)の外周面と前記ケーシング(14)の内面との間には、前記羽根車(16)の回転により送られる空気を通す空気通路(24)が形成される
ことを特徴とする送風装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、送風装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、人間に向けて風を送る送風装置が開示される。この送風装置は、マトリックス状に配列された複数の送風ファンを備える。各送風ファンは、羽根車と、羽根車を駆動するモータと、羽根車およびモータを収容するケーシングとを備える。羽根車は、プロペラファンであり、ケーシングの前面に設けられた吹出口に面している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-143631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されるものを含む従来の送風装置では、各ファンから吹き送られた風を受ける人間(ユーザ)が正面側に位置するため、ファン内部の羽根車が吹出口を通してユーザから見える。そのことで、送風装置は、ユーザに機械的な印象を与えてしまう。
【0005】
本開示の目的は、送風装置において、ファン内部の羽根車が見えるのを抑制し、ユーザに与える機械的な印象を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、少なくとも縦方向に配列された複数のファン(12)を備える送風装置(10)を対象とする。前記ファン(12)は、空気を吹き出す吹出口(22)が設けられたケーシング(14)と、該ケーシング(14)に収容されて前記吹出口(22)側に面する羽根車(16)とを有する。前記ケーシング(14)には、前記吹出口(22)の正面視で前記羽根車(16)を隠蔽する目隠し部(28)が設けられる。
【0007】
第1の態様では、吹出口(22)の正面視においてファン(12)内部の羽根車(16)がケーシング(14)に設けられた目隠し部(28)により隠蔽されるので、ユーザ(Us)からファン(12)内部の羽根車(16)が見えるのを抑制し、送風装置(10)がユーザ(Us)に与える機械的な印象を低減できる。
【0008】
本開示の第2の態様は、第1の態様の送風装置(10)において、前記目隠し部(28)が、前記羽根車(16)の回転により送られる空気を通す通風部材(30)によって構成される、送風装置である。
【0009】
第2の態様では、目隠し部(28)が通風部材(30)によって構成されるので、羽根車(16)の回転により送られる空気が目隠し部(28)を通過する。よって、送風装置(10)は、ファン(12)内部の羽根車(16)を隠蔽しつつ、目隠し部(28)を迂回する空気通路を設けなくとも、好適な送風を行える。
【0010】
本開示の第3の態様は、第2の態様の送風装置(10)において、前記通風部材(30)として、互いに平行に配置された複数の第1ガイド板(36)を有する第1グリル(32)と、互いに平行に配置された複数の第2ガイド板(40)を有する第2グリル(34)とを備える、送風装置である。前記第1ガイド板(36)の向きと前記第2ガイド板(40)の向きとは、互いに異なる。
【0011】
第3の態様では、第1グリル(32)の各第1ガイド板(36)と第2グリル(34)の各第2ガイド板(40)とが互いに異なる向きで設けられるので、それら第1ガイド板(36)と第2ガイド板(40)との組合せによれば、吹出口(22)を正面から見たときのみならず、他の方向から見たときにも、送風ファン(12)内部の羽根車(16)を隠蔽できる。
【0012】
本開示の第4の態様は、第1の態様の送風装置(10)において、前記ファン(12)が、前記ケーシング(14)の内部で前記羽根車(16)が回転により空気を径方向における外側へ送るターボファンである、送風装置である。前記目隠し部(28)は、前記ケーシング(14)の外側の空間と前記羽根車(16)との間を仕切る板状部材(50)によって構成される。前記板状部材(50)の外周面と前記ケーシング(14)の内面との間には、前記羽根車(16)の回転により送られる空気を通す空気通路(24)が形成されている。
【0013】
第4の態様では、ケーシング(14)内おける板状部材(50)の外周に空気通路(24)が設けられ、羽根車(16)の回転により送られる空気がその空気通路(24)を通して吹き出されるので、ファン(12)は目隠し部(28)への気流の衝突を回避して送風できる。これにより、ファン(12)の通風抵抗を抑えながら、目隠し部(28)を板状部材(50)からなるシンプルな構成で実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、実施形態1の送風装置の概略構成を示す正面図である。
図2図2は、図1のII-II線に沿う箇所における送風装置の断面図である。
図3図3は、実施形態1の送風装置の使用状態を示す図である。
図4図4は、実施形態2の送風装置の概略構成を示す正面図である。
図5図5は、図4のV-V線に沿う箇所における送風装置の断面図である。
図6図6は、実施形態3の送風装置の概略構成を示す正面図である。
図7図7は、図6のVII-VII線に沿う箇所における送風装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態では、説明の便宜上、送風装置について、空気を吹き送る側を「前」または「正面」、空気を吹き送る方向とは反対側を「後」または「背面」と称し、正面側から見たときの左右方向における左側を「左」、右側を「右」と称し、高さ方向における上側を「上」、下側を「下」と称する。
【0016】
《実施形態1》
この実施形態1では、本開示の技術に係る送風装置について、複数の軸流ファンを備える送風装置を例に挙げて説明する。
【0017】
-送風装置の構成-
送風装置(10)は、室内空間に設置されてユーザ(Us)(在室者)に風を送る装置である。図1および図2に示すように、送風装置(10)は、前後方向の奥行きが比較的短い直方体状に形成される。送風装置(10)における左右方向の幅と上下方向の高さはそれぞれ、概ね1.6m程度である。送風装置(10)は、複数の送風ファン(12)(図示する例では9個の送風ファン)からなる装置本体(11)と、装置本体(11)における複数の送風ファン(12)の動作を制御する制御装置(70)とを備える(図3参照)。
【0018】
〈送風ファン〉
図1に示すように、複数の送風ファン(12)は、上下方向に相当する縦方向と左右方向に相当する横方向のそれぞれに同じ個数ずつ(図示する例では3個ずつ)マトリックス状に配列されている。全ての送風ファン(12)は、互いに同じ側、つまり送風装置(10)の前側を向いている。送風装置(10)の前面には、各送風ファン(12)が空気を吹き出す吹出領域(13)が設けられている。
【0019】
図2に示すように、各送風ファン(12)は、ケーシング(14)と、羽根車(16)と、ファンモータ(18)とを備えたプロペラファンである。羽根車(16)およびファンモータ(18)は、ケーシング(14)に収容される。
【0020】
ケーシング(14)は、正面視で正方形の直方体状のボックスである。ケーシング(14)の後面には、空気を吸い込む吸込口(20)が形成される。ケーシング(14)の前面には、空気を吹き出す吹出口(22)が形成される。ケーシング(14)の内部には、吸込口(20)と吹出口(22)とを連通させる空気通路(24)が形成される。空気通路(24)には、羽根車(16)を収容する収容空間(25)が設けられている。ケーシング(14)には、収容空間(25)で羽根車(16)の周囲を囲うシュラウド(26)が設けられる。
【0021】
羽根車(16)は、プロペラ形の羽根車である。羽根車(16)は、回転軸を前後方向に向けた姿勢で収容空間(25)に配置される。羽根車(16)は、空気通路(24)において吹出口(22)に面している。ファンモータ(18)は、羽根車(16)の後側に配置される。ファンモータ(18)は、羽根車(16)を回転させるための駆動原である。羽根車(16)は、ファンモータ(18)の出力軸に取り付けられる。羽根車(16)は、ファンモータ(18)の駆動で回転することにより後側から吸い込んだ空気を前側へ送る。
【0022】
〈目隠し部〉
ケーシング(14)には、吹出口(22)の正面視で羽根車(16)を隠蔽する目隠し部(28)が設けられる。目隠し部(28)は、羽根車(16)の回転により送られる空気を通す通風部材(30)によって構成される。送風装置(10)は、通風部材(30)として、第1グリル(32)と第2グリル(34)とを備える。第1グリル(32)と第2グリル(34)とは、吹出口(22)に設けられ、前後方向に重ね合わせられている。
【0023】
第1グリル(32)は、吹出口(22)を覆うようにケーシング(14)に取り付けられる。第1グリル(32)は、互いに平行に配置された複数の第1ガイド板(36)を有する。複数の第1ガイド板(36)のそれぞれは、左右方向に水平に延びる帯板状に形成された固定式のガイド板である。各第1ガイド板(36)は、上面を斜め前方に臨ませ、下面を斜め後方に臨ませる向きに設けられる。
【0024】
隣り合う第1ガイド板(36)の間には、羽根車(16)の回転により空気通路(24)内で前方へ送られる空気を通す第1スリット(38)が形成される。第1スリット(38)は、第1グリル(32)において、左右方向に水平に延び、上下方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。各第1ガイド板(36)は、第1スリット(38)を通過する空気を前方へ向けて斜め下側に案内する。
【0025】
第2グリル(34)は、第1グリル(32)を覆うように第1グリル(32)の前側に配置される。第2グリル(34)は、互いに平行に配置された複数の第2ガイド板(40)を有する。複数の第2ガイド板(40)のそれぞれは、左右方向に水平に延びる帯板状に形成された固定式のガイド板である。各第2ガイド板(40)は、板厚方向を上下方向に一致させる向きに設けられる。
【0026】
隣り合う第2ガイド板(40)の間には、羽根車(16)の回転により送られて第1グリル(32)を通過した空気を通す第2スリット(42)が形成される。第2スリット(42)は、第2グリル(34)において、左右方向に水平に延び、上下方向に互いに間隔をあけて複数設けられる。各第2ガイド板(40)は、第2スリット(42)を通過する空気を水平方向において前方へ案内する。
【0027】
第1ガイド板(36)の向きと第2ガイド板(40)の向きとは、互いに異なっている。第1ガイド板(36)は、前後方向において第2スリット(42)と対応している。隣り合う第1ガイド板(36)は、下側の第1ガイド板(36)の上端縁と上側の第1ガイド板(36)の下端縁とが前後方向において一致するか、または前後方向において互いにオーバーラップする位置関係にある。
【0028】
図1に示すように、ユーザ(Us)が送風装置(10)の吹出領域(13)を正面から見たときには、第1スリット(38)からは第2ガイド板(40)が見えるのみであり、ケーシング(14)内の羽根車(16)は見えない。第1グリル(32)および第2グリル(34)は、ユーザ(Us)が送風装置(10)の吹出領域(13)を前方斜め上側、前方斜め左側および前方斜め右側から見たときにも、羽根車(16)を隠蔽する。すなわち、ユーザ(Us)がそれらの方向から吹出領域(13)を見たときにも、第1スリット(38)からは第2ガイド板(40)が見えるのみであり、ケーシング(14)内の羽根車(16)は見えない。
【0029】
〈制御装置〉
制御装置(70)は、プログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、制御プログラムおよびそれを実行するのに必要なデータなどを格納するメモリとを備える。図3に示すように、制御装置(70)は、装置本体(11)とは別体に設けられる。制御装置(70)は、通信線(75)を介して送風装置(10)と通信可能に接続される。通信線(75)は、有線である。通信線(75)は、無線であってもよい。制御装置(70)は、装置本体(11)に組み込まれて一体に設けられてもよい。
【0030】
制御装置(70)は、インターネットなどの通信回線(55)を介して、遠隔地の屋外に設置されたセンサユニット(80)と通信可能に接続される。センサユニット(80)は、設置された屋外の自然環境において吹いている風(自然風)の速度を計測する風速センサを有する。センサユニット(80)は、風速センサの計測値をリアルタイムで通信回線(85)を介して制御装置(70)へ送信する。センサユニット(80)から制御装置(70)へ送られるデータは、設置場所における自然風の変動パターンを記録した風速データである。
【0031】
制御装置(70)は、センサユニット(80)から受信した風速データに基づいて、送風装置(10)における複数の送風ファン(12)を回転させると共に、送風データに含まれる風速の変動パターンとなるように各送風ファン(12)の回転速度を制御する。その際、制御装置(70)は、全ての送風ファン(12)の回転速度を同じ値に設定する。なお、制御装置(70)は、各送風ファン(12)を制御するために用いる風速データとして、予め計測された風速データを利用してもよい。
【0032】
-送風装置の動作-
送風装置(10)では、各送風ファン(12)の羽根車(16)が互いに同じ回転速度で回転する。したがって、複数の送風ファン(12)におけるそれぞれの吹き出し時の風速は、互いに概ね一致する。送風装置(10)の前面に設けられた吹出領域(13)からは、複数の送風ファン(12)から前方へ向かって空気が吹き出される。複数の送風ファン(12)から吹き出された空気は、吹出領域(13)から離れるに従って拡散し、それぞれの風速が平均化される。
【0033】
送風装置(10)によって送られる風は、送風装置(10)の前方で吹出領域(13)と向かい合う比較的広い所定の対象仮想面(Vp)において風速分布の小さな風となる。具体的には、送風装置(10)によって送られる風の、当該対象仮想面(Vp)における風速の最小値Vminに対する最大値Vmaxの比Vmax/Vminは、1以上且つ10以下であり、1以上且つ5以下であることが望ましく、1以上且つ3以下であることがさらに望ましく、1以上且つ2以下であることがよりいっそう望ましい。
【0034】
送風装置(10)では、センサユニット(80)から受信した風速データに含まれる風速の計測値が上昇すると、各送風ファン(12)の羽根車(16)の回転速度が増加し、風速データに含まれる風速の計測値が低下すると、各送風ファン(12)の羽根車(16)の回転速度が減少する。その結果、吹出領域(13)と向かい合う対象仮想面(Vp)において、センサユニット(80)の設置場所における自然風の変動パターンが再現される。これにより、送風装置(10)は、ユーザ(Us)に対して室内に居ながら自然風を浴びているような感覚を与えられる。
【0035】
-実施形態1の特徴-
本実施形態の送風装置(10)では、吹出口(22)の正面視において送風ファン(12)内部の羽根車(16)がケーシング(14)に設けられた目隠し部(28)により隠蔽される。これによれば、ユーザ(Us)から送風ファン(12)内部の羽根車(16)が見えるのを抑制し、送風装置(10)がユーザ(Us)に与える機械的な印象を低減できる。
【0036】
本実施形態の送風装置(10)では、目隠し部(28)が通風部材(30)である第1グリル(32)および第2グリル(34)によって構成される。第1グリル(32)および第2グリル(34)は、羽根車(16)の回転により送られる空気を通す。よって、送風装置(10)は、送風ファン(12)内部の羽根車(16)を隠蔽しつつ、自然風の再現に好適な送風を行える。
【0037】
本実施形態の送風装置(10)では、第1グリル(32)の各第1ガイド板(36)と第2グリル(34)の各第2ガイド板(40)とが互いに異なる向きで設けられている。これら第1ガイド板(36)と第2ガイド板(40)とは、互いに異なる方向からの視線を遮る。よって、第1ガイド板(36)と第2ガイド板(40)との組合せによれば、吹出口(22)を正面から見たときのみならず、他の方向から見たときにも、送風ファン(12)内部の羽根車(16)を隠蔽できる。
【0038】
-実施形態1の変形例-
第1グリル(32)の各第1ガイド板(36)は、上面を斜め後方に臨ませ、下面を斜め前方に臨ませる向きに設けられてもよい。この場合、第1グリル(32)と第2グリル(34)とは、ユーザ(Us)が送風装置(10)の吹出領域(13)を正面、前方斜め下側、前方斜め左側および前方斜め右側から見たときに、羽根車(16)を隠蔽する。
【0039】
また、第1グリル(32)の各第1ガイド板(36)は、上下左右の方向に対して傾斜する斜め方向に延びる帯板状であってもよい。第1グリル(32)の各第1ガイド板(36)は、上下方向に鉛直に延びる帯板状であってもよい。この場合において、各第1ガイド板(36)は、左面を斜め前方に臨ませるか、または右面を斜め前方に臨ませる向きに設けられる。
【0040】
第2グリル(34)の各第2ガイド板(40)は、上下方向に鉛直に延びる帯板状であってもよく、上下左右の方向に対して傾斜する斜め方向に延びる帯板状であってもよい。第1ガイド板(36)と第2ガイド板(40)とは、第1スリット(38)および第2スリット(42)を通して羽根車(16)が見えるのを抑制する観点から、互いに平行に配置されることが好ましい。第1ガイド板(36)と第2ガイド板(40)とは、互いに交差するように配置されてもよい。
【0041】
複数の第1ガイド板(36)はそれぞれ、角度が可変な可動式であってもよい。複数の第2ガイド板(40)はそれぞれ、角度が可変な可動式であってもよい。第1ガイド板(36)および第2ガイド板(40)は、一方が固定式であり他方が可動式であってもよく、両方ともが可動式であってもよい。この場合、目隠し部(28)は、第1ガイド板(36)および第2ガイド板(40)のうち可動式のガイド板により、吹出口(22)の正面視で羽根車(16)が隠蔽される状態と、羽根車(16)が視認される状態とを切り換えられるようになっていてもよい。
【0042】
送風装置(10)は、通風部材(30)として、第1グリル(32)および第2グリル(34)に加え、例えば第2グリル(34)の後側に配置された第3グリルを備えるなど、3つ以上の通風部材(30)を備えてもよい。
【0043】
《実施形態2》
この実施形態2では、本開示の技術に係る送風装置について、複数の遠心ファンを備える送風装置を例に挙げて説明する。
【0044】
本実施形態の送風装置(10)は、各送風ファン(12)の種類および装置本体(11)の外観が上記実施形態1の送風装置(10)と異なる。本実施形態の送風装置(10)について、装置本体(11)以外の構成は、上記実施形態1と同様に構成されている。
【0045】
-送風装置の構成-
図4に示すように、送風装置(10)は、上下方向に相当する縦方向と左右方向に相当する横方向とにマトリクス状に配列された複数の送風ファン(12)(図示する例では9個の送風ファン)を備える。これら複数の送風ファン(12)の配列とそれぞれの向きは、上記実施形態1と同様である。図5に示すように、各送風ファン(12)は、ケーシング(14)と、羽根車(16)と、ファンモータ(18)とを備えたターボファンである。羽根車(16)およびファンモータ(18)は、ケーシング(14)に収容される。
【0046】
ケーシング(14)は、正面視で正方形の直方体状のボックスである。ケーシング(14)の後面には、空気を吸い込む吸込口(20)が形成される。ケーシング(14)の前面には、空気を吹き出す円環状の吹出口(22)が形成される。ケーシング(14)の内部には、吸込口(20)と吹出口(22)とを連通させる空気通路(24)が形成される。空気通路(24)には、吹出口(22)側に向かって広がった収容空間(25)が設けられている。ケーシング(14)には、吸込口(20)を塞ぐように吸込グリル(46)が取り付けられる。吸込グリル(46)と羽根車(16)との間には、シュラウド(48)が設けられる。
【0047】
羽根車(16)は、複数の後向き羽根が環状をなすように設けられた羽根車である。羽根車(16)は、回転軸を前後方向に向けた姿勢で収容空間(25)に配置される。羽根車(16)は、空気通路(24)において吹出口(22)側に面している。ファンモータ(18)は、羽根車(16)の前側に配置される。羽根車(16)は、ファンモータ(18)の出力軸に取り付けられる。羽根車(16)は、ファンモータ(18)の駆動で回転することにより、ケーシング(14)の内部で後側から吸い込んだ空気を径方向における外側へ送る。
【0048】
〈目隠し部〉
ケーシング(14)には、吹出口(22)の正面視で羽根車(16)を隠蔽する目隠し部(28)が設けられる。目隠し部(28)は、円盤形の板状部材(50)によって構成される。板状部材(50)は、ケーシング(14)の外側の空間と羽根車(16)との間を仕切る。板状部材(50)は、その周方向において互いに間隔をあけた複数の箇所で支持片(52)を介してケーシング(14)に支持されている。
【0049】
板状部材(50)の外周面とケーシング(14)の内面との間には、羽根車(16)の回転により送られる空気を通す空気通路(24)が形成される。空気通路(24)は、板状部材(50)の外周で前方に開放されて、円環状の吹出口(22)を構成する。板状部材(50)の直径は、羽根車(16)の直径よりも大きい。図4に示すように、ユーザ(Us)が送風装置(10)の吹出領域(13)を正面から見たときには、ケーシング(14)内の羽根車(16)は板状部材(50)により覆われて見えない。
【0050】
-実施形態2の特徴-
本実施形態の送風装置(10)では、吹出口(22)の正面視において送風ファン(12)内部の羽根車(16)がケーシング(14)に設けられた目隠し部(28)により隠蔽される。これによれば、ユーザ(Us)から送風ファン(12)内部の羽根車(16)が見えるのを抑制し、送風装置(10)がユーザ(Us)に与える機械的な印象を低減できる。
【0051】
本実施形態の送風装置(10)では、ケーシング(14)内おける板状部材(50)の外周に空気通路(24)が設けられ、羽根車(16)の回転により送られる空気がその空気通路(24)を通して吹き出されるので、送風ファン(12)は目隠し部(28)への気流の衝突を回避して送風できる。これにより、送風ファン(12)の通風抵抗を抑えながら、目隠し部(28)を板状部材(50)からなるシンプルな構成で実現できる。
【0052】
-実施形態2の変形例-
板状部材(50)は、矩形状やその他の多角形状など、円盤形以外の形状であってもよい。ケーシング(14)の吹出口(22)は、板状部材(50)の外周に沿う形状であればよく、円環状以外の形状であってもよい。当該吹出口(22)は、送風ファン(12)ごとに複数に分けて形成されてもよい。
【0053】
《実施形態3》
この実施形態3では、本開示の技術に係る送風装置について、複数の横流ファンを備える送風装置を例に挙げて説明する。
【0054】
本実施形態の送風装置(10)は、各送風ファン(12)の種類および装置本体(11)の外観が上記実施形態1の送風装置(10)と異なる。本実施形態の送風装置(10)について、装置本体(11)以外の構成は、上記実施形態1と同様に構成されている。
【0055】
-送風装置の構成-
図6および図7に示すように、送風装置(10)は、上下方向に相当する縦方向に配列された複数の送風ファン(12)(図示する例では3個の送風ファン)を備える。全ての送風ファン(12)は、互いに同じ側、つまり送風装置(10)の前側を向いている。各送風ファン(12)は、ケーシング(14)と、羽根車(16)と、ファンモータ(18)とを備えたクロスフローファンである。羽根車(16)およびファンモータ(18)は、ケーシング(14)に収容される。
【0056】
ケーシング(14)は、横長の直方体状のボックスである。ケーシング(14)の後面には、空気を吸い込む吸込口(20)が形成される。ケーシング(14)の前面における下側には、空気を吹き出す吹出口(22)が形成される。ケーシング(14)の内部には、吸込口(20)と吹出口(22)とを連通させる空気通路(24)が形成される。空気通路(24)の前後方向における中程には、ケーシング(14)の上側に広がった収容空間(25)が設けられている。
【0057】
羽根車(16)は、複数の前向き羽根が円筒状をなすように設けられた羽根車である。羽根車(16)は、回転軸を左右方向に向けた姿勢で収容空間(25)に配置される。羽根車(16)は、空気通路(24)において吹出口(22)側に面している。ファンモータ(18)は、羽根車(16)の左右方向における一方側(図示する例では左側)に配置される。羽根車(16)は、ファンモータ(18)の出力軸に取り付けられる。羽根車(16)は、ケーシング(14)の内部で回転により後側から吸い込んだ空気を前側へ送る。
【0058】
〈目隠し部〉
ケーシング(14)には、吹出口(22)の正面視で羽根車(16)を隠蔽する目隠し部(28)が設けられる。目隠し部(28)は、ケーシング(14)における吹出口(22)の上側部分によって構成される。目隠し部(28)は、羽根車(16)の上側部位を含む大半部分の前方に位置する。ユーザ(Us)が送風装置(10)の吹出領域(13)を見たときには、ケーシング(14)内の羽根車(16)は目隠し部(28)により覆われて大半部分が見えない。
【0059】
-実施形態3の特徴-
本実施形態の送風装置(10)では、吹出口(22)の正面視において送風ファン(12)内部の羽根車(16)がケーシング(14)に設けられた目隠し部(28)により隠蔽される。これによれば、ユーザ(Us)から送風ファン(12)内部の羽根車(16)が見えるのを抑制し、送風装置(10)がユーザ(Us)に与える機械的な印象を低減できる。
【0060】
《その他の実施形態》
上記各実施形態およびそれらの変形例の送風装置(10)において、送風ファン(12)の型式は、プロペラファン、ターボファン、クロスフローファンに限られない。例えば、送風ファン(12)は、斜流ファンやシロッコファンであってもよい。
【0061】
上記各実施形態およびそれらの変形例の送風装置(10)において、装置本体(11)が備える送風ファン(12)の数は、8個以下であってもよく、10個以上であってもよい。複数の送風ファン(12)は、縦方向(上下方向)と横方向(左右方向)のそれぞれに異なる個数でマトリックス状に配列されてもよい。複数の送風ファン(12)は、少なくとも縦方向に配列されていればよい。
【0062】
上記実施形態3およびその変形例の送風装置(10)において、装置本体(11)が備える送風ファン(12)の数は、2個以下であってもよく、4個以上であってもよい。複数の送風ファン(12)は、マトリックス状に配列されてもよい。
【0063】
上記各実施形態およびそれらの変形例の送風装置(10)において、各送風ファン(12)が個別にケーシング(14)を備えるとしたが、これに限られない。ケーシング(14)は、複数の送風ファン(12)で一体であってもよい。
【0064】
上記各実施形態およびそれらの変形例の送風装置(10)において、複数の送風ファン(12)は、互いに同じ側に向いていなくてもよい。例えば、複数の送風ファン(12)は、マトリックス状をなす行ごとまたは列ごとに互いに異なる方向に向いていてもよい。
【0065】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
以上説明したように、本開示は、送風装置について有用である。
【符号の説明】
【0067】
10 送風装置
12 送風ファン(ファン)
14 ケーシング
16 羽根車
22 吹出口
24 空気通路
28 目隠し部
30 通風部材
32 第1グリル
34 第2グリル
36 第1ガイド板
40 第2ガイド板
50 板状部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【手続補正書】
【提出日】2023-12-01
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも縦方向に配列された複数のファン(12)を備え、
前記ファン(12)は、空気を吹き出す吹出口(22)が設けられたケーシング(14)と、該ケーシング(14)に収容されて前記吹出口(22)側に面する羽根車(16)とを有する送風装置であって、
前記ケーシング(14)には、前記吹出口(22)の正面視で前記羽根車(16)を隠蔽する目隠し部(28)が設けられ
前記目隠し部(28)は、前記羽根車(16)の回転により送られる空気を通す第1グリル(32)および第2グリル(34)を備え、
前記第1グリル(32)は、互いに平行に配置された複数の第1ガイド板(36)を有し、
前記第2グリル(34)は、互いに平行に配置された複数の第2ガイド板(40)を有し、
前記第1ガイド板(36)の向きと前記第2ガイド板(40)の向きとは、前記ファン(12)の空気の吹き出し方向に対して互いに異なる角度をとる
ことを特徴とする送風装置。
【請求項2】
請求項1に記載された送風装置において、
前記第1ガイド板(36)は、一方の面を斜め前方に臨ませ、他方の面を斜め後方に臨ませる向きに設けられ、
前記第2ガイド板(40)は、前後方向と直交する方向に板厚方向を一致させる向きに設けられる
ことを特徴とする送風装置。
【請求項3】
請求項2に記載された送風装置において、
前記第2グリル(34)は、前記第1グリル(32)の前側に配置される
ことを特徴とする送風装置。
【請求項4】
請求項2または3に記載された送風装置において、
互いに隣り合う前記第1ガイド板(36)は、一方の当該第1ガイド板(36)の端縁と他方の当該第1ガイド板(36)の端縁とが前後方向において一致するか、または前後方向において互いにオーバーラップする位置関係にある
ことを特徴とする送風装置。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載された送風装置において、
前記第1ガイド板(36)および前記第2ガイド板(40)は、前記ファン(12)の空気の吹き出し方向に対して交差する互いに同じ方向に延びる、
ことを特徴とする送風装置。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載された送風装置において、
前記第1ガイド板(36)は、固定式のガイド板であり、前記ファン(12)の空気の吹き出し方向に対して傾斜する向きに設けられる、
ことを特徴とする送風装置。