(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184633
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】コネクタ装置
(51)【国際特許分類】
H01R 24/54 20110101AFI20231221BHJP
H01R 12/91 20110101ALI20231221BHJP
H01R 12/71 20110101ALI20231221BHJP
【FI】
H01R24/54
H01R12/91
H01R12/71
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023189064
(22)【出願日】2023-11-06
(62)【分割の表示】P 2023003614の分割
【原出願日】2019-11-13
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅野 泰徳
(72)【発明者】
【氏名】小林 豊
(57)【要約】
【課題】組付けの際の作業性向上を図る。
【解決手段】コネクタ装置Aは、第1端子部16を有し、第1回路基板Bに実装される第1コネクタ10と、第2端子部43を有し、第2回路基板Cに実装される第2コネクタ30と、一対の接続端部50P,50Tを有するアダプター50とを備え、一対の接続端部50P,50Tは、第1端子部16と第2端子部43とが対向した状態で第1端子部16と第2端子部43とに接続され、かつ第1端子部16と第2端子部43とが対向する方向に関して対称な形態である。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端子部を有し、第1回路基板に実装される第1コネクタと、
第2端子部を有し、第2回路基板に実装される第2コネクタと、
一対の接続端部を有するアダプターとを備え、
前記第1端子部と前記第2端子部は、互いに対称な形態の接触部を有し、
前記一対の接続端部は、前記接触部に接触可能であり、前記第1端子部と前記第2端子部とが対向する方向に関して対称な形態であり、
前記第1端子部は、第1内導体を包囲する第1誘電体を含み、
前記第2端子部は、第2内導体を包囲する第2誘電体を含み、
前記第1誘電体と前記第2誘電体が同一の部品であるコネクタ装置。
【請求項2】
前記アダプターは、可動内導体と、前記可動内導体を収容する可動誘電体と、前記可動誘電体を包囲する可動外導体とを有し、
前記可動誘電体が、前記接続端部の端面に露出している請求項1に記載のコネクタ装置。
【請求項3】
前記アダプターは、可動誘電体と、前記可動誘電体を包囲する筒状の可動外導体とを有し、
前記可動誘電体の外周には係止溝が形成され、前記可動外導体には、内周側へ斜めに突出した弾性変形可能な係止爪が形成され、
前記係止爪が前記係止溝に係止することによって、前記可動誘電体と前記可動外導体との相対変位が規制されている請求項1又は請求項2に記載のコネクタ装置。
【請求項4】
前記可動誘電体の外周面には、対をなす前記係止溝が軸線方向に間隔を空けた2箇所に形成され、
対をなす前記係止爪が、軸線方向に間隔を空けて配置され、
前記対をなす係止爪は、互いに相手側の前記係止爪に向かって斜め方向へ突出している請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項5】
前記可動誘電体の外周面には、前記接続端部側に向かって前記可動外導体の内周面との対向間隔が次第に拡大するように傾斜したテーパ状摺接面が形成されている請求項3に記載のコネクタ装置。
【請求項6】
前記可動外導体は、内周側へ弾性変位した状態で前記第1端子部又は前記第2端子部に接続される弾性アーム部を有し、
前記弾性アーム部は前記テーパ状摺接面と対向する領域に配されている請求項5に記載のコネクタ装置。
【請求項7】
前記係止爪は、前記弾性アーム部とは異なる領域に形成されている請求項6に記載のコネクタ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、互いに対向する第1コネクタと第2コネクタを有し、第1コネクタと第2コネクタをアダプターを介して接続するコネクタ装置が開示されている。アダプターは、第1コネクタ及び第2コネクタに対して相対的に揺動し得るように取り付けられる。第1コネクタと第2コネクタが対向方向と交差する方向へ位置ずれしたときには、アダプターが傾くことによって両コネクタの位置ずれが吸収されるので、両コネクタを接続させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コネクタの組付けは、アダプターの一方の接続端部を第1コネクタに接続し、その後、第2コネクタをアダプターの他方の接続端部に接続するという手順で行う。このとき、他方の接続端部が第1コネクタに接続されないようにするためには、第1コネクタへの接続作業の前に、予め、アダプターの向きを確認しなければならない。そのため、組付けの作業性が良くないという問題がある。
【0005】
本開示のコネクタは、上記のような事情に基づいて完成されたものであって、組付けの際の作業性向上を図ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタ装置は、
第1端子部を有し、第1回路基板に実装される第1コネクタと、
第2端子部を有し、第2回路基板に実装される第2コネクタと、
一対の接続端部を有するアダプターとを備え、
前記第1端子部と前記第2端子部は、互いに対称な形態の接触部を有し、
前記一対の接続端部は、前記接触部に接触可能であり、前記第1端子部と前記第2端子部とが対向する方向に関して対称な形態であり、
前記第1端子部は、第1内導体を包囲する第1誘電体を含み、
前記第2端子部は、第2内導体を包囲する第2誘電体を含み、
前記第1誘電体と前記第2誘電体が同一の部品である。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコネクタ装置は、組付けの際の作業性に優れている。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図2は、第2コネクタにおいてアダプターを分離した状態をあらわす斜視図である。
【
図6】
図6は、第2コネクタにおいてアライメント部材を外した状態の平面図である。
【
図7】
図7は、第1コネクタと第2コネクタを嵌合した状態の正断面図である。
【
図8】
図8は、第2コネクタを上側に配置して、アダプターを第2コネクタに吊り下げて保持した状態をあらわす部分拡大側断面図である。
【
図10】
図10は、アダプターとアライメント部材の孔部とが同軸状に配置されている状態をあらわす部分拡大平面図である。
【
図11】
図11は、第1コネクタを上下反転させた状態をあらわす斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施形態を列記して説明する。
本開示のコネクタ装置は、
(1)第1端子部を有し、第1回路基板に実装される第1コネクタと、第2端子部を有し、第2回路基板に実装される第2コネクタと、一対の接続端部を有するアダプターとを備え、前記第1端子部と前記第2端子部は、互いに対称な形態の接触部を有し、前記一対の接続端部は、前記接触部に接触可能であり、前記第1端子部と前記第2端子部とが対向する方向に関して対称な形態であり、前記第1端子部は、第1内導体を包囲する第1誘電体を含み、前記第2端子部は、第2内導体を包囲する第2誘電体を含み、前記第1誘電体と前記第2誘電体が同一の部品である。本開示の構成によれば、アダプターに設けた一対の接続端部が対称な形態なので、アダプターを第1端部又は第2端子部に接続する際に、アダプターの向きを確認する必要がない。したがって、本開示のコネクタ装置は、組付けの際の作業性に優れている。
【0010】
(2)前記アダプターは、可動内導体と、前記可動内導体を収容する可動誘電体と、前記可動誘電体を包囲する可動外導体とを有し、前記可動誘電体が、前記接続端部の端面に露出していることが好ましい。この構成によれば、アダプターの接続端部を第1端子部又は第2端子部に接続する際に、可動誘電体を押し操作することができるので、作業性が良い。
【0011】
(3)前記アダプターは、可動誘電体と、前記可動誘電体を包囲する筒状の可動外導体とを有し、前記可動誘電体の外周には係止溝が形成され、前記可動外導体には、内周側へ斜めに突出した弾性変形可能な係止爪が形成され、前記係止爪が前記係止溝に係止することによって、前記可動誘電体と前記可動外導体との相対変位が規制されていることが好ましい。この構成によれば、可動誘電体に可動外導体を組み付ける過程では、係止爪が弾性変形した状態で可動誘電体の外周面に摺接する。可動外導体が可動誘電体に組み付けられると、係止爪が弾性復帰して係止溝に係止することによって、可動誘電体と可動外導体が組付け状態に保持される。
【0012】
(4)(3)において、前記可動誘電体の外周面には、対をなす前記係止溝が軸線方向に間隔を空けた2箇所に形成され、対をなす前記係止爪が、軸線方向に間隔を空けて配置され、前記対をなす係止爪は、互いに相手側の前記係止爪に向かって斜め方向へ突出していることが好ましい。この構成によれば、可動外導体を可動誘電体に組み付ける過程では、組付け方向前方の係止爪が、組付け方向手前側の係止溝を通過する。可動外導体が可動誘電体に組み付けられると、対をなす係止爪が弾性復帰して対をなす係止溝に個別に係止する。可動誘電体に対して、対をなす係止爪が互いに逆向きに係止するので、可動外導体と可動誘電体は、軸線に沿った正逆2方向における相対変位を規制される。
【0013】
(5)(3)又は(4)において、前記可動誘電体の外周面には、前記接続端部側に向かって前記可動外導体の内周面との対向間隔が次第に拡大するように傾斜したテーパ状摺接面が形成されていることが好ましい。この構成によれば、可動外導体を可動誘電体に組み付ける過程では、係止爪がテーパ状摺接面に摺接するので、係止爪の突出端が可動誘電体の外周面に引っ掛かるおそれがない。
【0014】
(6)(5)において、前記可動外導体は、内周側へ弾性変位した状態で前記第1端子部又は前記第2端子部に接続される弾性アーム部を有し、前記弾性アーム部は前記テーパ状摺接面と対向する領域に配されていることが好ましい。この構成によれば、テーパ状摺接面と弾性アーム部との間の空間が、弾性アーム部の弾性変位を許容するための撓み空間として機能するので、可動外導体の外径寸法を小さく抑えることができる。
【0015】
(7)(6)において、前記係止爪は、前記弾性アーム部とは異なる領域に形成されていることが好ましい。この構成によれば、係止爪を形成したことによって弾性アーム部の剛性が低下することがないので、第1端子部及び第2端子部に対する弾性アーム部の接続信頼性が高い。
【0016】
[本開示の実施形態の詳細]
[実施例1]
本開示のコネクタ装置Aを具体化した実施例1を、
図1~
図13を参照して説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。本実施例1において、前後の方向については、
図1~3における斜め右下方向方を前方と定義する。上下の方向については、1~5,7にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。左右の方向については、
図1~3における斜め左下方向を、左方と定義する。
【0017】
本実施例のコネクタ装置Aは、
図7に示すように、第1回路基板Bに実装される第1コネクタ10と、第2回路基板Cに実装される第2コネクタ30と、アダプター50とを有している。第1回路基板Bは、例えば、自動車の屋根(図示省略)に取り付けられるシャークフィンアンテナ(図示省略)に設けられるものである。第1回路基板Bは、実装面を下向き、つまり車内側に向けた状態で水平に配置される。第2回路基板Cは、例えば、自動車の屋根に取り付けられたECUに設けられるものであり、実装面を上向き、つまりシャークフィンアンテナ側に向けた状態で水平に配置される。第1回路基板Bと第2回路基板Cは、双方の実装面同士を平行に対向させた位置関係で配置される。
【0018】
第1コネクタ10と第2コネクタ30は、第1回路基板Bを第2回路基板Cに接近させることによって導通可能に嵌合される。両コネクタ10,30が嵌合することにより、第1回路基板Bと第2回路基板Cがワイヤーハーネスを介さずに接続され、第1回路基板Bと第2回路基板Cとの間で高速通信が可能となる。自動車の屋根におけるシャークフィンアンテナの取付部分では、屋根とシャークフィンアンテナとの間の組付け公差が比較的大きいため、両コネクタ10,30の嵌合方向と交差する水平方向において、第1回路基板Bと第2回路基板Cとの間で位置ずれが生じ得る。本実施例のコネクタ装置Aは、両回路基板B,Cの位置ずれを吸収しながら両コネクタ10,30の嵌合を行えるようになっている。
【0019】
第1コネクタ10は、
図7に示すように、第1ハウジング11と、複数の第1端子部16とを備えている。第1コネクタ10を第1回路基板Bに実装した状態では、第1ハウジング11の上面が第1回路基板Bに固定され、複数の第1端子部16の上端部が第1回路基板Bのプリント回路(図示省略)に接続される。第1ハウジング11は、直方形の第1端子保持部12と、角筒状の干渉回避部75と、方形の誘導部14とを有する合成樹脂製の単一部品である。
【0020】
第1端子保持部12には、第1端子保持部12を上下に貫通した形態の複数の第1端子収容室13が形成されている。第1端子収容室13は、第1端子保持部12の正面12S(下面)に開口している。第1コネクタ10を下から見た底面視において、第1端子収容室13は円形をなす。複数の第1端子収容室13は、前後方向及び左右方向に整列するように配置されている。
【0021】
第1端子保持部12の正面12Sのうち第1端子収容室13の開口縁部には、後述するアダプター50の先端部50Tを第1端子収容室13内に誘導するテーパ状の誘導面76が形成されている。第1端子保持部12の正面12Sにおける誘導面76の曲率半径は、隣り合う第1端子収容室13間のピッチの1/2よりも大きい寸法である。したがって、隣り合う第1端子収容室13間を仕切る隔壁部77は、第1端子保持部12の正面12Sに対して弧状に凹んだ形態となっている。
【0022】
干渉回避部75は、第1端子保持部12の正面12Sにおける外周縁から正面12Sと直角に下方へ突出した形態である。干渉回避部75は、第1端子保持部12の全周に亘って連続している。底面視において、干渉回避部75は、複数の第1端子収容室13の全てを包囲している。干渉回避部75の内周面は、第1コネクタ10と第2コネクタ30が対向する方向と平行な面である。
【0023】
誘導部14は、第1端子保持部12の正面12Sよりも下方(第2コネクタ30側)に位置している。誘導部14の基端14P(上端)は、干渉回避部75の下端縁の全周に亘って連なっている。誘導部14は、干渉回避部75の下端縁から斜め下方へ裾広がりとなるように傾斜した4つの傾斜した壁部によって構成されている。つまり、誘導部14は、誘導部14の基端14P(上端)から先端14T(下端)に向かってテーパ状に延出した形態である。
【0024】
誘導部14は、第1端子保持部12の全周に亘って連続している。底面視において、誘導部14は複数の第1端子収容室13の全てを包囲している。第1ハウジング11内のうち、第1端子保持部12の正面12Sよりも下方において干渉回避部75と誘導部14とによって包囲された空間は、第1揺動空間15として機能する。第1揺動空間15は第1ハウジング11の下方へ開放されている。
【0025】
複数の第1端子収容室13内には、複数の第1端子部16が個別に収容されている。
図12,13に示すように、第1端子部16は、金属製の第1内導体17と、合成樹脂製の第1誘電体21と、金属製の第1外導体22とを備えている。第1内導体17は、軸線を両コネクタ10,30の嵌合方向と平行に向けた筒形をなす。第1内導体17は、小径部18と、小径部18の外周から径方向に突出した爪部19と、小径部18よりも径寸法の大きい大径部20とを有する。小径部18と大径部20は軸線方向に連なっている。第1誘電体21は、中心孔を有する円盤形をなす。第1外導体22は、軸線を第1内導体17及び第1誘電体21と平行に向けた円筒形をなす。
【0026】
第1端子部16は、第1内導体17の小径部18を第1誘電体21で同軸状に包囲し、第1内導体17と第1誘電体21を第1外導体22で同軸状に包囲した形態である。第1誘電体21は第1外導体22の上端部に位置する。第1外導体22内のうち第1誘電体21よりも下方の空間は、下方へ開放された接続空間23として機能する。接続空間23内においては、第1内導体17の大径部20が下向きに突出している。各接続空間23は第1揺動空間15と連通している。第1内導体17は、誘導面76の奥端76E(上端)よりも奥方(上方)の領域のみに配置されている。
【0027】
図2に示すように、第2コネクタ30は、第2ハウジング31と、第1端子部16と同数の複数の第2端子部43と、第2端子部43と同数の複数のアダプター50とを備えている。第2コネクタ30を第2回路基板Cに実装した状態では、第2ハウジング31の下面が第2回路基板Cに固定され、複数の第2端子部43の下端部が第2回路基板Cのプリント回路(図示省略)に接続される。第2ハウジング31は、直方形の第2端子保持部32と、方形の周壁部34と、左右対称な一対の保持突起40とを有する合成樹脂製の単一部品である。
【0028】
第2端子保持部32には、第2端子部43と同数の複数の第2端子収容室33が形成されている。第2端子収容室33は、第2端子保持部32を上下に貫通した形態である。第2コネクタ30を上から見た平面視において、第2端子収容室33は円形をなす。複数の第2端子収容室33は、複数の第1端子収容室13と同じく、前後方向及び左右方向に整列するように配置されている。
【0029】
図2に示すように、周壁部34は、第2端子保持部32の上端における外周縁から、両コネクタ10,30の嵌合方向と平行に上方へ突出した形態である。平面視において、周壁部34は、複数の第2端子収容室33の全てを包囲している。第2ハウジング31のうち、第2端子保持部32よりも上方において周壁部34により区画された空間は、第2揺動空間35として機能する。第2揺動空間35は、第2ハウジング31の上方、即ち第1コネクタ10側へ開放されている。周壁部34を構成する左右両側壁部36には、切欠部37が形成されている。切欠部37は、側壁部36の上端縁から下方へ略方形に切り欠いた形態である。
【0030】
両側壁部36には、切欠部37を左右方向外方から覆う形態の支持壁部38が形成されている。支持壁部38の前後両端部は、屈曲形状をなしていて側壁部36の外側面に連なっている。支持壁部38によって区画された空間は、切欠部37を介して第2揺動空間35と連通した保持空間39として機能する。左右両支持壁部38の内側面には、保持突起40が形成されている。保持突起40は、支持壁部38の前後方向中央部から保持空間39内に突出している。
図5に示すように、保持突起40の上面には、支持壁部38側から第2揺動空間35側に向かって下るように傾斜したガイド斜面41が形成されている。保持突起40の下面は、両コネクタ10,30の嵌合方向と交差する固定側対向面42として機能する。
【0031】
図7に示すように、複数の第2端子収容室33内には、複数の第2端子部43が個別に収容されている。
図5,8に示すように、第2端子部43は、金属製の第2内導体44と、合成樹脂製の第2誘電体45と、金属製の第2外導体46とを備えている。第2内導体44は、第1内導体17と同一の部品であり、小径部18と爪部19と大径部20とを有する。第2内導体44は、軸線方向において第1内導体17とは逆向きに配置されている。第2誘電体45は、第1誘電体21と同一の部品であり、軸線方向において第1誘電とは逆向きに配置されている。第2外導体46は、軸線を第2内導体44及び第2誘電体45と平行に向けた円筒形をなす。第2端子部43におけるアダプター50との接触部は、縮径部48を除いて、第1端子部16におけるアダプター50との接触部と上下対称な形態である。
【0032】
第2端子部43は、第2内導体44の小径部18を第2誘電体45で同軸状に包囲し、第2内導体44と第2誘電体45を第2外導体46で同軸状に包囲した形態である。第2誘電体45は第2外導体46の下端部に位置する。第2外導体46内のうち第2誘電体45よりも上方の空間は、上方へ開放された支持空間47として機能する。支持空間47内においては、第2内導体44の大径部20が上向きに突出している。各支持空間47は第2揺動空間35と連通している。
【0033】
第2外導体46の上端部内周には、全周に亘って連続した縮径部48が形成されている。縮径部48は、支持空間47内に配置され、
図8に示すように、V字形に屈曲して径方向内側へV字形に膨らんだ形状である。縮径部48は、受け部78とテーパ状ガイド部79とを有する。受け部78は、第2端子部43の上端縁から全周にわたって、第2端子部43の軸線方向に対して斜め上方内周側へ突出した形態である。テーパ状ガイド部79は、受け部78の突出端縁から全周にわたって、第2端子部43の軸線方向に対して斜め上方外周側へ突出した形態である。
【0034】
図8に示すように、第2端子部43の軸線方向に対する受け部78の傾斜角度αは、第2端子部43の軸線方向に対するテーパ状ガイド部79の傾斜角度βよりも大きい。第2外導体46のうち第2誘電体45と縮径部48との間の領域は、第2端子部43の軸線方向と平行であって内径寸法が軸線方向において一定の定径部80となっている。
【0035】
図2,9に示すように、アダプター50は、全体として細長い形状をなす。アダプター50は、軸線方向両端部を反転させたときに同一の形状となる対称性を有している。
図9に示すように、アダプター50は、金属製の可動内導体51と、合成樹脂製の可動誘電体53と、金属製の可動外導体56とを備えて構成された部材である。アダプター50は、可動誘電体53の挿通孔54内に可動内導体51を挿通し、可動誘電体53の外周に可動外導体56を嵌合した形態である。アダプター50の軸線方向両端部である基端部50Pと先端部50Tは、第1端子部16及び第2端子部43に対して接続可能な一対の接続端部として機能する。基端部50Pの端面と先端部50Tの端面には、可動誘電体53の端面が露出している。可動内導体51の軸線方向両端部には、それぞれ、径方向へ弾性変形可能な一対の弾性爪片52が形成されている。
【0036】
可動誘電体53は、合成樹脂製であり、アダプター50の軸線と同軸状の円筒形をなす。可動誘電体53の中心部には、可動誘電体53を同軸状に貫通した形態の挿通孔54が形成されている。可動誘電体53の軸線方向両端部には、可動誘電体53の両端面を同軸状に凹ませた形態の円形の収容凹部55が形成されている。収容凹部55は、挿通孔54の軸線方向両端部を構成する空間である。収容凹部55の内径は挿通孔54の内径よりも大きい。収容凹部55内には、可動内導体51の弾性爪片52が収容されている。
【0037】
可動誘電体53の外周には、複数対の係止溝81が周方向に等角度ピッチで形成されている。対をなす係止溝81は、可動誘電体53の軸線方向に離隔した位置に配置されている。可動誘電体53の外周面のうち、係止溝81よりも基端部50P側と先端部50T側の領域には、テーパ状摺接面82が形成されている。テーパ状摺接面82は、可動誘電体53の軸線方向中央から端部側に向かって次第に縮径した形態である。基端部50P側のテーパ状摺接面82は、軸線方向中央から基端部50P側に向かって可動外導体56の内周面との対向間隔が次第に拡大するように傾斜している。先端部50T側のテーパ状摺接面82は、軸線方向中央から先端部50T側に向かって可動外導体56の内周面との対向間隔が次第に拡大するように傾斜している。
【0038】
可動外導体56は、全体として円筒形をなす。可動外導体56の軸線方向両端部には、周方向に間隔を空けて配された複数対の弾性アーム部57が形成されている。対をなす弾性アーム部57は、アダプター50の軸線方向に離隔した位置関係である。弾性アーム部57は、軸線方向端部側へ片持ち状に延出した形態であり、径方向へ弾性変形することが可能である。弾性アーム部57は、テーパ状摺接面82と対向する位置に配置されている。テーパ状摺接面82と弾性アーム部57との間の空間は、弾性アーム部57を径方向内側へ弾性変位させるための撓み空間59として機能する。
【0039】
弾性アーム部57の延出端部には、拡径部58が形成されている。拡径部58は、V字形に屈曲して径方向外側へ膨らんだ形状である。拡径部58は、引掛部83とテーパ状摺接部84とを有する。引掛部83は、アダプター50の軸線方向に対して外周側へ斜めに突出した形態である。テーパ状摺接部84は、引掛部83の突出端縁から、アダプター50の軸線方向に対して内周側へ斜めに突出した形態である。アダプター50の軸線方向に対する引掛部83の傾斜角度γは、第2端子部43の軸線方向に対する受け部78の傾斜角度αよりも小さい。アダプター50の軸線方向に対するテーパ状摺接部84の傾斜角度δは、第2端子部43の軸線に対するテーパ状ガイド部79の傾斜角度βと同じ角度である。
【0040】
可動外導体56には複数対の係止爪85が形成されている。係止爪85は、可動外導体56を部分的に切り起こした形態であり、径方向へ弾性変形可能である。複数対の係止爪85は、周方向において係止溝81と同じピッチで配置されている。対をなす係止爪85は、アダプター50の軸線方向に離隔した位置関係である。基端部50P側の係止爪85は、先端部50T側に向かって斜め内側へ突出している。先端部50T側の係止爪85は、基端部50P側に向かって斜め内側へ突出している。係止爪85は、アダプター50の軸線方向において弾性アーム部57よりも中央側の領域に配置されている。可動外導体56と可動誘電体53を組み付けると、係止爪85が係止溝81に係止することによって、可動誘電体53と可動外導体56とが組付け状態に保持される。
【0041】
アダプター50の一方の接続端部である基端部50Pは、第2コネクタ30の支持空間47内に挿入した状態で、第2端子部43に取り付けられている。基端部50Pを第2端子部43に接続する過程では、アダプター50のテーパ状摺接部84が第2端子部43のテーパ状ガイド部79に摺接することにより、弾性アーム部57が一時的に撓み空間59内へ弾性変形する。拡径部58が縮径部48を通過すると、弾性アーム部57が弾性復帰して、拡径部58のうち引掛部83とテーパ状摺接部84とが繋がる屈曲部が、第2外導体46のうち定径部80の内周面に対して弾性的に接触する。
【0042】
弾性アーム部57が弾性復帰して可動外導体56と第2外導体46とが接触すると、拡径部58の引掛部83が縮径部48の受け部78に対して軸線方向に係止する。この係止作用により、アダプター50が第2端子部43から離脱することを規制される。アダプター50が第2端子部43から下方へ突出するように上下反転させた向きにしても、拡径部58と縮径部48との係止状態が保たれる。アダプター50は、基端部50Pと第2端子部43との接触部分を支点として、個別に揺動することが可能である。アダプター50が第2端子部43に対して前後方向又は左右方向へ揺動しても、拡径部58と縮径部48との係止状態が保たれる。基端部50Pを第2端子部43に取り付けた状態では、収容凹部55内に第2内導体44の大径部20が収容され、可動内導体51の弾性爪片52が、第2内導体44の大径部20の内周に対し弾性的に接触する。
【0043】
第2端子部43に取り付けたアダプター50は、第2ハウジング31から上方へ突出した形態である。アダプター50の先端部50Tは、第1端子部16と接続するようになっている。ここで、1つのアダプター50は1つの第2端子部43のみに接触した状態で支持されているので、複数のアダプター50は、他のアダプター50とは異なる方向へ個別に揺動し得るようになっている。しかし、複数のアダプター50が互いに異なる方向へ揺動した状態では、第1コネクタ10と第2コネクタ30を嵌合するときに、複数のアダプター50の先端部50Tを、複数の第1端子部16に対して同時に接続させることができない。
【0044】
その対策として、第2コネクタ30には、アライメント部材60が設けられている。アライメント部材60は、金属製の板材からなる単一部品である。
図3に示すように、アライメント部材60は、板状本体部61と、左右対称な一対の弾性保持片68とを有する。板状本体部61は、板厚方向を両コネクタ10,30の嵌合方向と平行に向けた平板状をなす。板状本体部61は、平面視において第2ハウジング31の周壁部34と同じ形状をなしている。
【0045】
板状本体部61には、平面視において複数の第2端子部43と同じ配置の複数の孔部62が形成されている。孔部62は、可動外導体56の外径よりも内径寸法の大きい円形をなし、板状本体部61を上下方向に貫通した形態である。孔部62の内周には、周方向に間隔を空けた複数の固定突起部63が形成されている。固定突起部63は、孔部62の内周から径方向中心側へ延出した延出部の先端部を、下側へ折り返するように密着曲げして形成されている。
【0046】
固定突起部63の突出端部の外周面は、半円弧形の曲面状をなす固定当接部64として機能する。固定当接部64の全領域は、アライメント部材60の表面のうちプレス加工によって生じる破断面とは異なる非破断面のみによって構成されている。複数の固定突起部63の突出端、即ち複数の固定当接部64に内接する内接円の直径寸法は、可動外導体56の外径と同じ寸法か、それよりも僅かに大きい寸法である。
図10に示すように、周方向に隣り合う固定突起部63の間には、逃がし凹部86が形成されている。逃がし凹部86の内径寸法は、弾性アーム部57の拡径部58に接する仮想円(図示省略)の径寸法よりも大きい。
【0047】
板状本体部61には、板状本体部61の上面に重なるように配された複数の弾性接触片65が一体に形成されている。弾性接触片65の平面視形状は円弧形をなす。1つの弾性接触片65は、板状本体部61の外周縁を基点とし、1つの孔部62の開口縁に沿って片持ち状に延出した形態である。弾性接触片65の延出端部には、可動突起部66が形成されている。可動突起部66は、弾性接触片65の延出端部の内周から径方向中心側へ延出した延出部の先端部を、上側へ折り返するように密着曲げして形成されている。可動突起部66の突出端部の外周面は、半円弧形の曲面状をなす可動当接部67として機能する。可動当接部67の全領域は、固定当接部64と同様、非破断面のみによって構成されている。
【0048】
図3に示すように、弾性保持片68は、板状本体部61の側縁から板状本体部61と直角に下方へ延出した前後一対の脚部69と、両脚部69の延出端同士を連結する係止部70とを有する。係止部70は、板状本体部61と平行な板状をなす。
図3,6に示すように、係止部70の上面は、可動側対向面71となっている。可動側対向面71は、固定側対向面42に対し両コネクタ10,30の嵌合方向と平行な上下方向に対向するようになっている。弾性保持片68には、係止部70の内側の側縁から斜め下方へ張り出した被ガイド部72が形成されている。
【0049】
アライメント部材60は、第2ハウジング31に対し上方から接近させることによって、第2ハウジング31に取り付けられている。取り付ける過程では、一対の被ガイド部72が一対のガイド斜面41に摺接することにより、一対の弾性保持片68が互いに接近する方向へ弾性変形する。被ガイド部72と係止部70が保持突起40を通過すると、一対の弾性保持片68は弾性復帰して保持空間39内に収容される。弾性保持片68の可動側対向面71は、第2ハウジング31の固定側対向面42に対し下から対向する。以上により、第2ハウジング31に対するアライメント部材60の組付けが完了する。
【0050】
第2ハウジング31にアライメント部材60を取り付けた状態では、板状本体部61の外周縁部が周壁部34の上端面に載置され、脚部69と係止部70が保持空間39内に収容され、係止部70が保持突起40の下側に潜り込む。係止部70が保持突起40に係止することにより、アライメント部材60は第2ハウジング31からの離脱を規制される。板状本体部61の外周縁が周壁部34と整合する状態では、脚部69と支持壁部38との間及び係止部70と支持壁部38との間にクリアランスが確保されている。
【0051】
したがって、アライメント部材60は、第2ハウジング31に対し、板状本体部61と平行な方向への相対変位を許容された状態に保持される。板状本体部61と平行な方向は、両コネクタ10,30の嵌合方向と直角に交差する方向であり、両回路基板B,Cの位置ずれが想定される方向である。第2ハウジング31に対するアライメント部材60の相対変位量は、脚部69又は係止部70が支持壁部38に当接したときが最大となる。アライメント部材60の相対変位量が最大になった状態では、可動側対向面71の少なくとも一部が、固定側対向面42の少なくとも一部に対し上下方向に対向する状態を保つ。したがって、アライメント部材60の変位量が最大であっても、アライメント部材60は第2ハウジング31に取り付けられた状態に保持される。
【0052】
アライメント部材60を第2ハウジング31に取り付けた後、複数のアダプター50を第2端子部43に取り付ける。アダプター50を取り付ける際には、アダプター50の基端部50Pを、孔部62に挿通して第2揺動空間35内に進入させ、第2端子部43の支持空間47に嵌入する。第2ハウジング31に対するアライメント部材60の取付けは、アダプター50を第2端子部43に取り付けた後で行ってもよい。
図10に示すように、アダプター50の先端部50Tが孔部62を通過するとき、弾性アーム部57の拡径部58は逃がし凹部86を通過するので、拡径部58がアライメント部材60と干渉するおそれはない。
【0053】
第2ハウジング31にアダプター50とアライメント部材60を取り付けた状態では、可動外導体56の外周が、孔部62の孔縁部により全周にわたって包囲される。可動外導体56の外周には固定当接部64と可動当接部67が当接するので、アダプター50は、アライメント部材60に対し、板状本体部61と平行な方向への相対変位を規制された状態に保持される。アライメント部材60は導電性を有するので、可動外導体56の外周に固定当接部64と可動当接部67が当接すると、アライメント部材60と複数のアダプター50が、導通可能に接続される。
【0054】
可動外導体56に対してアライメント部材60が接触する部位は、アダプター50の軸線方向において基端部50P側の弾性アーム部57と先端部50T側の弾性アーム部57との間の領域である。したがって、弾性アーム部57には、固定当接部64も可動当接部67も接触しない。これにより、弾性アーム部57の損傷や変形が防止される。
【0055】
各アダプター50がアライメント部材60に対する相対変位を規制されることにより、アダプター50相互間の相対変位がアライメント部材60によって規制される。いずれか1つのアダプター50に対して揺動方向の外力が作用したときには、全てのアダプター50が、アライメント部材60と一体となって一斉に同じ方向へ同じ角度だけ揺動する。したがって、全てのアダプター50の先端部50Tの位置関係は、アダプター50の揺動方向と揺動角度に拘わらず一定の位置関係に保たれる。保たれた位置関係は、複数の第1端子部16と同じ配置である。アダプター50は、第2端子部43とアダプター50の基端部50Pとの接続部分を支点として揺動する。アダプター50の揺動角度は、アダプター50が周壁部34に当接するときに最大となる。つまり、アダプター50が周壁部34に当接すると、アダプター50の傾きが制限される。
【0056】
アダプター50が傾いたときのアライメント部材60の変位量は、アライメント部材60の接触位置がアダプター50の先端部50Tに近いほど大きくなる。誘導部14に摺接したアダプター50がアライメント部材60を水平方向へ押したときに、アダプター50とアライメント部材60との間に生じる押圧力は、アライメント部材60の接触位置がアダプター50の基端部50Pに近いほど大きくなる。本実施例では、アライメント部材60の接触位置が基端部50Pと先端部50Tとの中間位置なので、アダプター50が傾いたときのアライメント部材60の変位量を抑えつつ、アダプター50とアライメント部材60との間に生じる押圧力を低減することができる。
【0057】
第1コネクタ10と第2コネクタ30を嵌合するときに、第1回路基板Bと第2回路基板Cが相対変位していた場合には、いずれかのアダプター50の先端部50Tが誘導部14の内面に当接する。この状態から更に両コネクタ10,30の嵌合を進めると、アダプター50の先端部50Tが、誘導部14の傾斜した内面に摺接することにより、全てのアダプター50の先端部50Tが、一斉に揺動角度を変化させながら、第1端子部16との接続位置へ誘導される。この間、アダプター50の基端部50Pは第2揺動空間35内で揺動し、アダプター50の先端部50Tは第1揺動空間15内で揺動する。
【0058】
先端部50Tの最先端は、拡径部58のうち誘導部14との接点である引掛部83の突出端よりも第1端子部16へ突き出ている。そのため、誘導部14が先端部50Tを誘導する過程では、拡径部58が誘導部14の基端14Pに到達するよりも前に、先端部50Tの一部が、誘導部14の基端14Pよりも上方(第1端子保持部12側)へ進出する。特に、第1コネクタ10と第2コネクタ30が、両コネクタ10,30の対向方向と直角な水平面上で位置ずれしている場合、先端部50Tの先端面が、第1コネクタ10の第1端子保持部12の正面12Sに対して斜めになるので、先端部50Tの進出量が大きくなる。
【0059】
しかし、第1端子保持部12の正面12Sは、誘導部14の基端14Pよりも上方に位置しているので、先端部50Tが第1端子保持部12の正面12Sと干渉することはない。したがって、先端部50Tが第1端子保持部12の正面12Sと干渉することなく、拡径部58は誘導部14の基端14Pに到達することができる。拡径部58が誘導部14の基端14Pに到達すると、平面視において先端部50Tの中心が第1端子部16の軸線に接近する。
【0060】
この後、先端部50Tと第1端子部16との接続が進むと、拡径部58が誘導面76に摺接することによって、先端部50Tの中心が第1端子部16と同軸状に配置される。さらに、先端部50Tと第1端子部16との接続が進むと、拡径部58が第1外導体22の内周面に対して弾性的に接触するとともに、可動内導体51が第1内導体17に対して弾性的に接触する。上述のようにしてアダプター50の先端部50Tが第1端子部16に接続されると、第1コネクタ10と第2コネクタ30が正規の嵌合状態となる。両コネクタ10,30が正規嵌合されると、第1回路基板Bと第2回路基板Cが、第1端子部16とアライメント部材60と第2端子部43を介して接続される。
【0061】
可動内導体51は、可動誘電体53の挿通孔54に対してクリアランスを空けて挿通されている。したがって、可動内導体51は、可動誘電体53と可動外導体56に対して軸線を傾けるような形態で相対変位することができる。これにより、アダプター50が揺動し、アダプター50の軸線が第1端子部16及び第2端子部43の軸線に対して傾いた場合でも、揺動角度に拘わらず、第1内導体17及び第2内導体44に対する可動内導体51の良好な接触状態と、第1外導体22及び第2外導体46に対する可動外導体56の良好な接触状態を両立させることができる。
【0062】
本実施例1のコネクタ装置Aは、第1コネクタ10と、第2コネクタ30と、アダプター50とを備えている。第1コネクタ10は、第1端子部16を有し、第1回路基板Bに実装される。第2コネクタ30は、第2端子部43を有し、第2回路基板Cに実装される。アダプター50は、一対の接続端部として機能する基端部50Pと先端部50Tとを有する。
【0063】
第1端子部16と第2端子部43は、互いに対称な形態の接触部としての第1内導体17と第2内導体44とを有し、互いに対称な接触部としての第1外導体22と第2外導体46とを有する。アダプター50の基端部50Pと先端部50Tは、第1内導体17と第1外導体22と第2内導体44と第2外導体46とに接触可能である。基端部50Pと先端部50Tは、第1端子部16と第2端子部43とが対向する方向に関して対称な形態である。
【0064】
この構成によれば、アダプター50に設けた基端部50Pと先端部50Tが対称な形態なので、アダプター50を第1端子部16又は第2端子部43に接続する際に、アダプター50の向きを確認する必要がない。したがって、本実施例のコネクタ装置Aは、組付けの際の作業性に優れている。
【0065】
アダプター50は、可動内導体51と、可動内導体51を収容する可動誘電体53と、可動誘電体53を包囲する可動外導体56とを有している。可動誘電体53は、基端部50Pの端面と先端部50Tの端面に露出している。この構成によれば、基端部50Pと先端部50Tを第1端子部16又は第2端子部43に接続する際に、可動誘電体53を押し操作することができるので、作業性が良い。
【0066】
可動誘電体53の外周には、軸線方向に間隔を空けた少なくとも対をなす係止溝81が形成されている。可動外導体53には、軸線方向に間隔を空けた少なくとも対をなす係止爪85が形成されている。係止爪85は、内周側へ斜めに突出しており、径方向に弾性変形可能である。可動誘電体53に可動外導体56を組み付ける過程では、係止爪85が弾性変形した状態で可動誘電体53の外周面に摺接する。可動外導体56が可動誘電体53に対して適正に組み付けられると、弾性復帰した係止爪85が係止溝81に係止することによって、可動誘電体53と可動外導体56との軸線方向の相対変位が規制される。これにより、可動誘電体53と可動外導体56が組付け状態に保持される。
【0067】
対をなす係止爪85は、軸線方向に間隔を空けた2箇所に形成されており、対をなす係止爪85は、互いに相手側の係止爪85に向かって斜め方向へ突出している。この構成によれば、可動外導体56を可動誘電体53に組み付ける過程では、組付け方向前方の係止爪85が、組付け方向手前側の係止溝81を通過する。可動外導体56が可動誘電体53に正規に組み付けられると、対をなす係止爪85が弾性復帰して対をなす係止溝81に個別に係止する。可動誘電体53に対して、対をなす係止爪85が互いに逆向きに係止するので、可動外導体56と可動誘電体53は、軸線に沿った正逆2方向における相対変位を規制される。
【0068】
可動誘電体53の外周面には、基端部50P側及び先端部50T側に向かって可動外導体56の内周面との対向間隔が次第に拡大するように傾斜したテーパ状摺接面82が形成されている。この構成によれば、可動外導体56を可動誘電体53に組み付ける過程では、係止爪85がテーパ状摺接面82に摺接するので、係止爪85の突出端が可動誘電体53の外周面に引っ掛かるおそれがない。係止爪85は、アダプター50の軸線方向において弾性アーム部57とは異なる領域に形成されている。この構成によれば、係止爪85を形成したことによって弾性アーム部57の剛性が低下することがないので、第1端子部16及び第2端子部43に対する弾性アーム部57の接続信頼性が高い。
【0069】
可動外導体56は、内周側へ弾性変位した状態で第1端子部16又は第2端子部43に接続される弾性アーム部57を有している。弾性アーム部57はテーパ状摺接面82と対向する領域に配されている。この構成によれば、テーパ状摺接面82と弾性アーム部57との間の空間が、弾性アーム部57の弾性変位を許容するための撓み空間59として機能するので、可動外導体56の外径寸法を小さく抑えることができる。
【0070】
アダプター50の基端部50Pと先端部50Tには、可動外導体56から径方向に突出した引掛部83が形成されている。第2端子部43には、引掛部83を係止させることによってアダプター50を第2コネクタ30に保持する受け部78が形成されている。この構成によれば、引掛部83を受け部78に係止させることによって、アダプター50を第2コネクタ30に対して吊り下げ状態に保持することが可能である。したがって、アダプター50と第1コネクタ10を接続するまでの間に、アダプター50を手で支えておく必要がない。よって、作業性が良好である。
【0071】
第2端子部43の縮径部48は、基端部50Pを受け部78への係止状態へ誘導するテーパ状ガイド部79を有している。第2端子部43と基端部50Pとの接続方向に対する受け部78の傾斜角度αは、第2端子部43と基端部50P接続端部の接続方向に対するテーパ状ガイド部79の傾斜角度βよりも大きい角度である。この構成によれば、基端部50Pを受け部78への係止状態へ誘導するときの抵抗を低減しつつ、引掛部83と受け部78との係止機能を高めることができる。
【0072】
基端部50Pの可動外導体56には、引掛部83を受け部78に係止させる過程でテーパ状ガイド部79に摺接するテーパ状摺接部84が形成されている。第2端子部43と基端部50Pとの接続方向に対するテーパ状摺接部84の傾斜角度δは、第2端子部43と基端部50Pとの接続方向に対するテーパ状ガイド部79の傾斜角度βと同じ角度である。この構成によれば、テーパ状摺接部84がテーパ状ガイド部79に対して面接触しながらガイドされるので、テーパ状摺接部84とテーパ状ガイド部79との間で引っ掛かりを生じるおそれがなく、ガイド機能の信頼性に優れている。
【0073】
受け部78は、第2端子部43の内周から径方向内側へ突出している。基端部50Pは弾性アーム部57を有している。引掛部83と弾性アーム部57から径方向外側へ突出している。引掛部83の突出端は第2端子部43の内周に対して弾性的に接触している。この構成によれば、受け部78と引掛部83の径方向における係止代として、第2端子部43の内周からの受け部78の突出寸法分が確実に確保されるので、接触信頼性に優れている。
【0074】
引掛部83は、周方向に間隔を空けた複数の位置に配されている。第2端子部43の内周のうち引掛部83が接触可能な領域には、内径寸法が一定であって、第2端子部43と基端部50Pとの接続方向に連続する定径部80が形成されている。この構成によれば、アダプター50が第2コネクタ30に対して傾いても、複数の引掛部83が第2端子部43の内周の定径部80に対して確実に接触することができる。
【0075】
アダプター50は、可動誘電体53と、可動誘電体53を包囲する可動外導体56とを有する。可動外導体56には、弾性アーム部57と係止爪85が形成されている。係止爪85は、可動外導体56のうち弾性アーム部57以外の領域に形成され、係止溝81に係止することによって可動誘電体53と可動外導体56とを組付け状態に保持する。この構成によれば、係止爪85を形成したことによって弾性アーム部57の剛性が低下することがないので、第2端子部43と引掛部83との接触信頼性が高い。
【0076】
第2コネクタ30は、第2端子部43に基端部50Pを接続した状態でアダプター50を包囲する周壁部34を有している。アダプター50は、周壁部34に接触することによって傾きを規制される。この構成によれば、アダプター50の傾きが周壁部34によって制限されるので、引掛部83が第2端子部43の内周に対して確実に接触することができる。
【0077】
第1コネクタ10は、第1端子部16を有し、第1回路基板Bに実装される。第2コネクタ30は、第2端子部43を有し、第2端子部43を第1端子部16と対向させた状態で第2回路基板Cに実装される。可動端子部としてのアダプター50は、第2端子部43を支点として揺動可能であり、第1端子部16に接続される接続端部としての先端部50Tを有する。第1コネクタ10は、第1端子部16を収容する第1端子保持部12と、誘導部14とを有する。誘導部14は、第1端子保持部12の正面12Sよりも第2コネクタ30側に配されており、基端14Pから先端14Tに向かってテーパ状に延出している。第1端子保持部12の正面12Sの外周縁と、誘導部14の基端14Pとの間には、干渉回避部75が介在している。
【0078】
この構成によれば、第1コネクタ10と第2コネクタ30を接続する過程では、アダプター50の先端部50Tが、誘導部14に摺接することによってガイドされ、第1端子部16に接続される。第1コネクタ10と第2コネクタ30が、第1端子部16と第2端子部43との対向方向に対して交差する方向へ位置ずれしている場合、アダプター50の姿勢が両コネクタ10,30の対向方向に対して傾いた状態のままで、先端部50Tが誘導部14の基端14Pに到達し、誘導部14によるガイドが終了することになる。このとき、先端部50Tの先端面が、第1端子保持部12の正面12Sに対して斜めになるため、先端部50Tが、誘導部14の基端14Pに到達する直前で第1端子保持部12の正面12S側へ突出する。
【0079】
ここで、誘導部14の基端14Pと第1端子保持部12の正面12Sとの間には、干渉回避部75によって先端部50Tを収容する空間が確保されている。したがって、先端部50Tは、第1端子保持部12の正面12Sと干渉することなく誘導部14の基端14Pに到達し、第1端子部16と正対するようにガイドされ、第1端子部16に接続される。したがって、本実施例のコネクタ装置Aは、接続動作の信頼性が高い。
【0080】
第1端子保持部12には、第1端子保持部12の正面12Sに開口し、第1端子部16を収容する第1端子収容室13が形成されている。第1端子収容室13の開口縁部には、先端部50Tを第1端子収容室13内に誘導するテーパ状の誘導面76が形成されている。この構成によれば、先端部50Tを確実に第1端子収容室13内に誘い込むことができる。
【0081】
第1端子部16は、第1内導体17と、第1内導体17を包囲する第1外導体22とを有している。先端部50Tは、第1内導体17に接続される可動内導体51と、可動内導体51を包囲する可動誘電体53と、可動誘電体53を包囲して第1外導体22の内周に接続される可動外導体56とを備えている。可動誘電体53の先端面は先端部50Tの先端面に露出している。第1内導体17は、誘導面76の奥端76Eよりも奥方の領域のみに配置されている。
【0082】
この構成によれば、先端部50Tを第1端子部16に接続する過程では、可動外導体56と第1外導体22との接続が開始することによって、先端部50Tが第1端子部16に対して位置決めされるが、この時点では、第1内導体17は先端部50Tの先端と非接触である。したがって、先端部50Tと第1端子部16との接続を進める過程で、可動誘電体53が第1端子部16と干渉するおそれはない。
【0083】
第1端子部16と第2端子部43との対向方向と直角に切断したときの誘導面76の断面形状は、円形である。第1端子保持部12の正面12Sにおける誘導面76の曲率半径は、隣り合う第1端子収容室13間のピッチの1/2よりも大きい。この構成によれば、隣り合う第1端子収容室13間を仕切る隔壁部77が、第1端子保持部12の正面12Sよりも弧状に凹んだ形態となる。これにより、先端部50Tが第1端子保持部12の正面12Sと干渉し難くなっている。
【0084】
[他の実施例]
本発明は、上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示される。本発明には、特許請求の範囲と均等の意味及び特許請求の範囲内でのすべての変更が含まれ、下記のような実施形態も含まれることが意図される。
上記実施例では、アダプターが可動内導体と可動誘電体と可動外導体とを有しているが、アダプターは、可動外導体を有しない形態であってもよい。
上記実施例では、対をなす係止溝と対をなす係止爪を設けたが、係止溝と係止爪の数は、1つずつでもよく、3つ以上ずつでもよい。
上記実施例では、弾性アーム部がテーパ状摺接面と対向する領域に配されているが、弾性アーム部は、テーパ状摺接面と対向しない領域(例えば、テーパ状摺接面に対して周方向にずれた領域)に配されていてもよい。
上記実施例では、係止爪が弾性アーム部とは異なる領域に形成されているが、係止爪は、弾性アーム部に形成されていてもよい。
上記実施例では、アダプターの全体が軸線方向において対称な形態であるが、アダプターは、軸線方向両端部の一対の接続端子部だけが対称な形態であってもよい。
【符号の説明】
【0085】
10…第1コネクタ
11…第1ハウジング
12…第1端子保持部
12S…第1端子保持部の正面
13…第1端子収容室
14…誘導部
14P…誘導部の基端
14T…誘導部の先端
15…第1揺動空間
16…第1端子部
17…第1内導体
18…小径部
19…爪部
20…大径部
21…第1誘電体
22…第1外導体
23…接続空間
30…第2コネクタ
31…第2ハウジング
32…第2端子保持部
33…第2端子収容室
34…周壁部
35…第2揺動空間
36…側壁部
37…切欠部
38…支持壁部
39…保持空間
40…保持突起
41…ガイド斜面
42…固定側対向面
43…第2端子部
44…第2内導体
45…第2誘電体
46…第2外導体
47…支持空間
48…縮径部
50…アダプター
50P…アダプターの基端部(接続端子部)
50T…アダプターの先端部(接続端子部)
51…可動内導体
52…弾性爪片
53…可動誘電体
54…挿通孔
55…収容凹部
56…可動外導体
57…弾性アーム部
58…拡径部
59…撓み空間
60…アライメント部材
61…板状本体部
62…孔部
63…固定突起部
64…固定当接部
65…弾性接触片
66…可動突起部
67…可動当接部
68…弾性保持片
69…脚部
70…係止部
71…可動側対向面
72…被ガイド部
75…干渉回避部
76…誘導面
76E…誘導面の奥端
77…隔壁部
78…受け部
79…テーパ状ガイド部
80…定径部
81…係止溝
82…テーパ状摺接面
83…引掛部
84…テーパ状摺接部
85…係止爪
86…逃がし凹部
α…受け部の傾斜角度
β…テーパ状ガイド部の傾斜角度
γ…引掛部の傾斜角度
δ…テーパ状摺接部の傾斜角度
A…コネクタ装置
B…第1回路基板
C…第2回路基板