(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018466
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】振動発電装置及び移動体
(51)【国際特許分類】
H02N 2/18 20060101AFI20230201BHJP
B06B 1/20 20060101ALI20230201BHJP
B06B 1/18 20060101ALI20230201BHJP
F03G 1/10 20060101ALI20230201BHJP
F03G 7/00 20060101ALI20230201BHJP
B63J 99/00 20090101ALI20230201BHJP
B62J 45/00 20200101ALI20230201BHJP
【FI】
H02N2/18
B06B1/20
B06B1/18 Z
F03G1/10
F03G7/00 B
B63J99/00 A
B62J45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122619
(22)【出願日】2021-07-27
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504160781
【氏名又は名称】国立大学法人金沢大学
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】木綿 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】上野 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】北島 和幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 学
【テーマコード(参考)】
5D107
5H681
【Fターム(参考)】
5D107EE04
5H681BB08
5H681DD30
5H681EE10
5H681EE20
(57)【要約】
【課題】発電効率をより向上させることができる。
【解決手段】振動発電装置10は、壁面26に沿って流れる流体に起因して振動が生じる振動励起体11と、振動励起体11に接続された揺動可能なフレーム12のアーム部12cと、アーム部12cの揺動に起因して発電する磁歪板13及びコイル14と、を備え、振動励起体11は壁面26に近接して配置される。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に沿って流れる流体に起因して振動が生じる振動励起体と、前記振動励起体に接続された揺動可能な被振動体と、前記被振動体の揺動に起因して発電する発電部と、を備え、
前記振動励起体は前記壁面に近接して配置される、振動発電装置。
【請求項2】
前記壁面と直交する方向に関する前記振動励起体の長さをHとし、前記壁面及び前記振動励起体の間の距離をSとした場合、隙間間隔比S/H≦3を満たす、請求項1に記載の振動発電装置。
【請求項3】
前記振動励起体の断面であって、前記流体の流れの方向に平行であり且つ前記壁面に直交する断面の形状が円形である、請求項1又は2に記載の振動発電装置。
【請求項4】
前記流体の前記壁面に対する流速をUとし、前記振動励起体及び前記被振動体からなる振動系の固有振動数をfcとし、前記壁面と直交する方向に関する前記振動励起体の長さをHとした場合、Vr=U/(fc×H)で示される前記流体の換算流速Vrが4.0以上である、請求項3に記載の振動発電装置。
【請求項5】
前記振動励起体の断面であって、前記流体の流れの方向に平行であり且つ前記壁面に直交する断面の形状が矩形である、請求項1又は2に記載の振動発電装置。
【請求項6】
前記壁面と直交する方向に関する前記振動励起体の長さをHとし、前記流体の流れの方向に平行な方向に関する前記振動励起体の長さをDとした場合、前記振動励起体の縦横比D/H≦1を満たし、
前記流体の前記壁面に対する流速をUとし、前記振動励起体及び前記被振動体からなる振動系の固有振動数をfcとした場合、Vr=U/(fc×H)で示される前記流体の換算流速Vrが2.0以上である、請求項5に記載の振動発電装置。
【請求項7】
前記縦横比D/Hが0.2であり、前記流体の換算流速Vrが2.0以上である、請求項6に記載の振動発電装置。
【請求項8】
前記縦横比D/Hが0.5であり、前記流体の換算流速Vrが3.0以上である、請求項6に記載の振動発電装置。
【請求項9】
前記縦横比D/Hが1.0であり、前記流体の換算流速Vrが4.0以上である、請求項6に記載の振動発電装置。
【請求項10】
前記被振動体は前記壁面に取り付けられ、前記壁面は振動しない、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の振動発電装置。
【請求項11】
前記発電部は、前記被振動体の揺動に応じて伸縮を繰り返す磁歪材と、前記磁歪材に巻回されたコイルと、有する、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の振動発電装置。
【請求項12】
前記振動励起体は長尺状部材であり、前記振動励起体の長手方向が前記壁面に平行であり且つ前記流体の流れの方向と直交し、
前記振動励起体に複数の前記被振動体が接続され、複数の前記被振動体の各々には前記発電部が取り付けられる、請求項1乃至11のいずれか1項に記載の振動発電装置。
【請求項13】
前記壁面は、前記流体の流れに追従して向きを変更する流体追従板の表面である、請求項1乃至12のいずれか1項に記載の振動発電装置。
【請求項14】
流体に接する表面と、前記表面に配置される振動発電装置と、を備える移動体であって、
前記振動発電装置は、前記流体に起因して振動が生じる振動励起体と、前記振動励起体に接続された揺動可能な被振動体と、前記被振動体の揺動に起因して発電する発電部と、を有し、
前記振動励起体は前記表面に近接して配置される、移動体。
【請求項15】
前記表面と直交する方向に関する前記振動励起体の長さをHとし、前記表面及び前記振動励起体の間の距離をSとした場合、隙間間隔比S/H≦3を満たす、請求項14に記載の移動体。
【請求項16】
前記移動体は船舶であり、前記振動発電装置が配置される表面は前記船舶の船体の表面である、請求項14又は15に記載の移動体。
【請求項17】
前記振動発電装置が配置される表面は、前記船体における水面下の表面である、請求項16に記載の移動体。
【請求項18】
前記移動体は船舶であり、前記水面下の表面は前記船体のフィン状部材の表面である、請求項17に記載の移動体。
【請求項19】
前記移動体は船舶であり、前記振動発電装置が配置される表面は前記船舶の船体に取り付けられたトリムタブの表面である、請求項14又は15に記載の移動体。
【請求項20】
前記移動体は船舶であり、前記振動発電装置が配置される表面は前記船舶の船体に取り付けられた船外機のアンチベンチレーションプレートの表面である、請求項14又は15に記載の移動体。
【請求項21】
前記移動体は船舶であり、前記振動発電装置が配置される表面は前記船舶のダクトプロペラ機構におけるダクトの表面である、請求項14又は15に記載の移動体。
【請求項22】
前記移動体は航空機であり、前記振動発電装置が配置される表面は前記航空機の表面である、請求項14又は15に記載の移動体。
【請求項23】
前記移動体は列車であり、前記振動発電装置が配置される表面は前記列車の車両の表面である、請求項14又は15に記載の移動体。
【請求項24】
前記移動体は鞍乗り型車両であり、前記振動発電装置が配置される表面は前記鞍乗り型車両の表面である、請求項14又は15に記載の移動体。
【請求項25】
前記移動体は自動車であり、前記振動発電装置が配置される表面は前記自動車の表面である、請求項14又は15に記載の移動体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、振動発電装置及び移動体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、振動を利用した電磁誘導や圧電現象によって発電を行う種々の振動発電装置が開発されている。例えば、コイルを巻回した磁歪棒の先端に錘を設け、錘の振動によって磁歪棒を振動させることにより、磁歪棒を部分的に伸縮させ、逆磁歪効果によって発電を行う振動発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
ところで、このような振動発電装置において錘を振動させる方法として、錘を流体中に配置してカルマン渦を生じさせ、錘を自励振動させることが考えられる。この場合、カルマン渦によって生じる錘の振動周波数(渦放出周波数)と、錘や磁歪棒からなる振動系の固有振動数が一致するとロックイン現象が生じ、錘が大きく振動するため、振動発電装置の発電効率を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、錘が円柱からなる場合、ストローハル数がほぼ一定であることが知られており、流体の流速が変化すると渦放出周波数も変化する。その結果、渦放出周波数と錘や磁歪棒からなる振動系の固有振動数が一致する状態を維持するのは困難であり、振動発電装置の発電効率が低下することがある。したがって、従来の振動発電装置は依然として発電効率の面で改善の余地がある。
【0006】
本発明は、発電効率をより向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一態様による振動発電装置は、壁面に沿って流れる流体に起因して振動が生じる振動励起体と、前記振動励起体に接続された揺動可能な被振動体と、前記被振動体の揺動に起因して発電する発電部と、を備え、前記振動励起体は前記壁面に近接して配置される。
【0008】
この構成によれば、振動励起体が壁面に近接して配置されることにより、振動励起体の振動が助長されるため、ロックイン現象が伴う流速範囲以外においても、振動励起体の振動を大きくすることできる。すなわち、振動励起体の渦放出周波数と、振動励起体及び被振動体からなる振動系の固有振動数とを一致させなくても、振動励起体を十分に振動させることができるため、発電効率をより向上させることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、発電効率をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施の形態に係る振動発電装置の構成を説明するための図である。
【
図2】
図1の振動発電装置による発電を説明するための側面図である。
【
図3】振動発電装置の振動励起体を壁面に近接した場合に生じる流体振動現象を観測するための実験に用いられた回流水槽の構成を概略的に示す図面である。
【
図4】円柱状部材を柱状体として用いた場合の流体振動現象の観測結果を説明するための図である。
【
図5】四角柱状部材を柱状体として用いた場合の流体振動現象の観測結果を説明するための図である。
【
図6】四角柱状部材を柱状体として用いた場合の流体振動現象の観測結果を説明するための図である。
【
図7】振動発電装置が適用された風向追従板を示す図である。
【
図8】振動発電装置が適用された航空機を示す図である。
【
図9】振動発電装置が適用された列車の一部を示す図である。
【
図10】振動発電装置が適用された自動車を示す図である。
【
図11】振動発電装置が適用された鞍乗り型車両としての二輪車を示す図である。
【
図12】振動発電装置が適用された船舶を示す図である。
【
図13】振動発電装置が適用された船外機を示す図である。
【
図14】振動発電装置が適用された船舶の一部を示す図である。
【
図15】振動発電装置が適用された船舶のダクトプロペラ機構を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。まず、本発明の実施の形態に係る振動発電装置について説明する。
図1は、本発明の実施の形態に係る振動発電装置の構成を説明するための図である。なお、
図1(A)は振動発電装置の側面図であり、
図1(B)は振動発電装置の平面図であり、
図1(C)は振動発電装置の変形例の側面図である。
【0012】
図1(A)及び
図1(B)において、振動発電装置10は、長尺状の錘である振動励起体11と、該振動励起体11に一端が接続された長板状の2つのフレーム12とを有する。各フレーム12は平面視において互いに平行に配置される。また、各フレーム12には、棒状の磁歪板13が取り付けられ、さらに、フレーム12と磁歪板13へコイル14が巻回される。なお、磁歪板13とコイル14は発電部を構成する。
【0013】
フレーム12は、磁性材料で構成され、例えば、炭素鋼(SS400材、SC材やSK材)やフェライト系ステンレス(SUS430等)からなる。また、フレーム12は、側面視においてU字状を呈する。フレーム12では、屈曲部12aを挟んで対向する各部がそれぞれベース部12bとアーム部12c(被振動体)を構成する。ベース部12bは構造体や移動体に取り付けられて固定される。なお、本実施の形態では、ベース部12bが取り付けられる構造体や移動体は積極的に振動しない。アーム部12cの先端には振動励起体11が取り付けられ、さらに、アーム部12cには、振動励起体11とフレーム12の屈曲部12aの間において上述した磁歪板13やコイル14が取り付けられるが、アーム部12cは構造体や移動体へ固定されない。したがって、フレーム12では、アーム部12cが屈曲部12a側を固定端とし、振動励起体11側を自由端とする片持ち梁として機能する。したがって、振動励起体11が、
図1(A)中において上下方向に振動すると、振動励起体11の振動に起因して、アーム部12cは固定端を中心として
図1(A)中の上下方向に揺動する。なお、フレーム12は側面視でコ字状やV字状を呈してもよい。
【0014】
磁歪板13は、延性を有する磁歪材料で構成され、例えば、鉄ガリウム合金、鉄コバルト合金、Fe-Al合金やFe-Si-B合金からなる。さらには、磁歪板13を構成する材料として予め応力焼きなまし処理を施すことによって圧縮応力を付加した磁歪材料を用いてもよい。磁歪板13を構成する磁歪材料は、結晶状態だけでなく、アモルファス状態であってもよい。また、磁歪板13は、アーム部12cの外面(
図1(A)においてアーム部12cの図中上面)へ、例えば、はんだ接合、蝋付け、抵抗溶接、レーザー溶接、若しくは、超音波接合によって取り付けられる。
【0015】
振動励起体11を構成する材料は特に限定されないが、低い流速から振動励起体11を振動させるためには、高比重材、例えば、アンビロイを用いるのが好ましい。振動励起体11は円柱状部材からなるが、複数のフレーム12を取り付けられる長尺状部材であればよく、例えば、四角柱状部材(
図1(C))であってもよい。
【0016】
図2は、
図1の振動発電装置10による発電を説明するための側面図である。
図2において、振動励起体11が図中上下方向に振動する際、
図2(A)に示すように、振動励起体11が上方向に移動すると、アーム部12cは上方へ反り、アーム部12cの上面に取り付けられた磁歪板13はアーム部12cの長手方向に圧縮される(図中矢印参照)。また、
図2(B)に示すように、振動励起体11が下方向に移動すると、アーム部12cは下方へ反り、アーム部12cの上面に取り付けられた磁歪板13はアーム部12cの長手方向に伸長される(図中矢印参照)。すなわち、振動励起体11が上下方向に振動すると、磁歪板13の伸縮が繰り返される。このとき、磁歪板13には圧縮応力と引っ張り応力が交互に作用するため、逆磁歪効果によって磁歪板13を流れる磁束の変化が繰り返される。これにより、コイル14を貫く磁束の変化が継続し、コイル14に起電力が生じて発電が行われる。
【0017】
ところで、振動励起体11を上下方向に振動させる方法としては種々の方法が考えられるが、振動励起体11を流体中に配置して下流にカルマン渦を生じさせ、振動励起体11を渦振動(渦励振)させる方法が考えられる。しかしながら、流体中において振動励起体11を構造体等の壁面に近接して配置した場合、振動励起体11にどのような流体振動現象が生じるかは知られていない。一方、物体を壁面等へ近接させて物体と壁面の間の流路を狭くすると、様々な流体的効果が得られることが知られている。
【0018】
そこで、本発明者等は、流体中において振動励起体11を壁面に近接して配置した場合、振動励起体11にどのような流体振動現象が生じるかを解明すべく、回流水槽を用いて実験を行った。
【0019】
図3は、振動発電装置10の振動励起体11を壁面に近接した場合に生じる流体振動現象を観測するための実験に用いられた回流水槽の構成を概略的に示す図面である。
図3において、図中矢印で示す水の一様流が生じている回流水槽15の平面状の壁面16へ、振動発電装置10を模した振動実験装置17を固定した。振動実験装置17は、振動励起体11を模した柱状体18と、フレーム12を模した2つのU字形フレーム19と、を備える。振動実験装置17では、各U字形フレーム19が柱状体18へ直接取り付けられず、柱状体18には2つのアーム20が取り付けられ、各アーム20と各U字形フレーム19の間にブロック状の高さ調整治具21が挟み込まれた。振動実験装置17は、柱状体18の長手方向が水流に対して直交し、柱状体18が壁面16に対して平行となり、且つ各U字形フレーム19の長手方向が水流と平行になるように、回流水槽15へ配置された。なお、本実験は流体振動現象を観測することが目的であったため、振動実験装置17には磁歪板13やコイル14に相当する構成要素は設けられなかった。また、回流水槽15の壁面16は振動しないため、柱状体18に生ずる振動は、壁面16の振動によって生じたものではなく、渦の発生等、流体の作用のみによって生じたものである。
【0020】
実験では、複数の高さが異なる高さ調整治具21が準備され、高さ調整治具21を交換することにより、柱状体18と壁面16の間の距離Sが変更された。さらに、柱状体18として、円柱状部材(試料1)と、断面の縦横比が互いに異なる3種類の四角柱状部材(試料2~4)が準備され、試料1~4のそれぞれについて、柱状体18と壁面16の間の距離Sが変更されたときに振動実験装置17へ生じる振動が観測された。なお、試料1と試料4はステンレスで構成され、試料2と試料3はアンビロイで構成された。
【0021】
回流水槽15は、レーザー変位計22と、レーザードップラー流速計(LDV)23と、ピトー管24とを備える。レーザー変位計22は、壁面16に対する柱状体18の振動変位を計測し、LDV23は柱状体18の後方における水流の速度変動を計測し、ピトー管24は水の壁面16に対する流速Uを計測した。また、コンピュータ25は、レーザー変位計22、LDV23及びピトー管24の計測結果を集計し、柱状体18に生じる振動の振れ角θ、渦放出周波数fwや後述する換算流速Vrを算出した。
【0022】
(実験1)
まず、
図4に示すように、試料1である円柱状部材を柱状体18として用いた。柱状体18の長手方向の長さは200mmであり、水の流れの方向に平行であり且つ壁面16に直交する断面形状は円形であり、その直径Hは20mmであった。また、柱状体18、U字形フレーム19のアーム部、高さ調整治具21及びアーム20で構成される振動系(以下、「実験振動系」という。)の全長r(
図4(A)参照)は142mmであった。
【0023】
実験1では、水の流速Uを0.4m/s~2.6m/sの範囲で変化させるとともに、壁面16及び柱状体18の間の隙間Sを段階的に変化させ、柱状体18に生じる振動を観測し、具体的には、隙間間隔比S/Hを0.5、1.0、2.0及び3.0の4段階に変化させ、振動の観測結果を、
図4(B)のグラフに示した。ここでは、振動角θが0.05deg以上となる波形の振動が観測されたとき、柱状体18に振動が生じていると判定した。
【0024】
図4(B)のグラフの横軸は換算流速Vrであり、縦軸は実験振動系の振動角θ(
図2(A)及び
図2(B)参照)である。換算流速Vrは、壁面16と柱状体18の間を流れる水のブロッケージの影響を補正した水の無次元流速である。実験振動系の固有振動数をfcとすると、換算流速Vrは下記式(1)で示される。
【0025】
Vr=U/(fc×H) … (1)
また、隙間間隔比S/H=3.0において柱状体18に振動が生じていないときの渦放出周波数f
wから共振換算流速を算出し、約5.3という値を得た。共振換算流速の近傍では渦励振により、柱状体18の振動が大きくなることが期待されるが、共振換算流速は、
図4(B)のグラフにおいて、破線で示される。
【0026】
観測の結果、
図4(B)のグラフに示すように、いずれの隙間間隔比S/Hにおいても、共振換算流速の近傍である換算流速Vr≒4.0から柱状体18に振動が生じていることから、円柱状部材では主として渦励振によって振動が生じることが分かった。
【0027】
また、隙間間隔比S/H=0.5では換算流速Vrが5.0を超えたあたりから振動角θが急激に増えて柱状体18が壁面16へ衝突したため、実験を中止した。隙間間隔比S/H=1.0では、換算流速Vrが6.5となるまで振動角θが増加し、その後、振動角θは減少するものの、換算流速Vrが8.0を超えても柱状体18には振動が生じていた。隙間間隔比S/H=2.0では、換算流速Vrが6.8となるまで振動角θが増加し、その後、振動角θは減少するものの、換算流速Vrが8.0を超えても柱状体18には振動が生じていた。隙間間隔比S/H=3.0では、換算流速Vrが6.8となるまで振動角θが増加し、その後、振動角θは減少するものの、換算流速Vrが8.0となるまで柱状体18には振動が生じていた。
【0028】
図4(B)のグラフから分かるように、隙間間隔比S/Hが小さくなるほど、振動角θは大きくなり、且つ柱状体18に振動が生じる換算流速Vrの範囲が広くなるが、これは、円柱状部材である柱状体18を壁面16に近づけるほど、下記式(2)で示される最大隙間Smaxに対する最大隙間Smaxと最小隙間Sminの差分の比である隙間変動比が大きくなるため、柱状体18へ作用する水流の圧力の変動も大きくなり、振動が助長されるためだと考えられた。
隙間変動比=(Smax-Smin)/Smax … (2)
なお、最大隙間Smaxは柱状体18が壁面16から最も離れたときの隙間Sであり、最小隙間Sminは柱状体18が壁面16へ最も接近したときの隙間Sである。
【0029】
(実験2)
次に、
図5に示すように、試料2である四角柱状部材を柱状体18として用いた。柱状体18の長手方向の長さは200mmであり、水の流れの方向に平行であり且つ壁面16に直交する断面形状は矩形であった。また、
図5(A)に示す、壁面16と直交する方向に関する柱状体18の長さHは20mmであり、水の流れの方向に平行な方向に関する長さDは4mmであった。すなわち、柱状体18の縦横比D/Hは0.2に設定された。また、実験振動系の全長rは172mmであった。
【0030】
実験2でも、実験1と同様に、水の流速Uを0.4m/s~2.6m/sの範囲で変化させるとともに、隙間間隔比S/Hを0.5、1.0、2.0及び3.0の4段階に変化させ、柱状体18に生じる振動を観測した。また、実験2でも、振動角θが0.05deg以上となる波形の振動が観測されたとき、柱状体18に振動が生じていると判定した。
【0031】
図5(B)は、柱状体18の縦横比D/Hが0.2である場合の柱状体18の振動の観測結果を示すグラフである。
図5(B)の縦軸及び横軸は、
図4(B)のグラフの縦軸及び横軸と同じである。なお、実験2における共振換算流速は約7.3であり、
図5(B)のグラフにおいて、破線で示される。
【0032】
図5(B)のグラフに示すように、隙間間隔比S/H=0.5では、換算流速Vrが2.0を超えると柱状体18に振動が発生し、その後、振動角θが急激に増えて柱状体18が壁面16へ衝突したため、実験を中止した。隙間間隔比S/H=1.0では、換算流速Vrが2.0を超えると柱状体18に振動が発生し、その後、換算流速Vrが6.8となるまで振動角θが急激に増加し、さらに、換算流速Vrが8.5となるまで振動角θはほぼ維持された。隙間間隔比S/H=2.0では、換算流速Vrが2.0を超えると柱状体18に振動が発生し、その後、換算流速Vrが5.0を超えると振動角θが急激に増え、さらに、換算流速Vrが7.0を超えると振動角θが減少し、換算流速Vrが9.0を超えると柱状体18に振動が生じなくなった。隙間間隔比S/H=3.0でも、換算流速Vrが2.0を超えると柱状体18に振動が発生し、その後、換算流速Vrが7.0を超えると振動角θが急激に増え、さらに、換算流速Vrが8.0を超えると振動角θが急激に減少し、換算流速Vrが9.5を超えると柱状体18に振動が生じなくなった。
【0033】
図5(B)のグラフから分かるように、実験2では、隙間間隔比S/H=3.0の場合を除き、共振換算流速より随分と低い換算流速から柱状体18に大きな振動が発生している。これは、四角柱状部材である柱状体18を壁面16に近づけるほど、上述した壁面16及び柱状体18の間の隙間変動比が大きくなるため、柱状体18へ作用する水流の圧力の変動が大きくなり、その結果、低速ギャロッピング振動が発生しやすくなったためだと考えられた。また、比較的、壁面16から離れて柱状体18が配置される隙間間隔比S/H=3.0の場合、低速ギャロッピング振動が発生していないことは、この考察を裏付けるものと考えられた。
【0034】
(実験3)
次に、試料3である四角柱状部材を柱状体18として用いた。柱状体18の長手方向の長さは200mmであり、水の流れの方向に平行であり且つ壁面16に直交する断面形状は矩形であった。また、
図5(A)に示す、柱状体18の長さHは20mmであり、長さDは10mmであった。すなわち、柱状体18の縦横比D/Hは0.5に設定された。また、実験振動系の全長rは142mmであった。
【0035】
実験3でも、実験1と同様に、水の流速Uを0.4m/s~2.6m/sの範囲で変化させるとともに、隙間間隔比S/Hを0.5、1.0、2.0及び3.0の4段階に変化させ、柱状体18に生じる振動を観測した。また、実験3でも、振動角θが0.05deg以上となる波形の振動が観測されたとき、柱状体18に振動が生じていると判定した。
【0036】
図6(A)は、柱状体18の縦横比D/Hが0.5である場合の柱状体18の振動の観測結果を示すグラフである。
図6(A)の縦軸及び横軸は、
図4(B)のグラフの縦軸及び横軸と同じである。なお、実験3における共振換算流速は約7.2であり、
図6(A)のグラフにおいて、破線で示される。
【0037】
図6(A)のグラフに示すように、隙間間隔比S/H=0.5では、換算流速Vrが3.0を超えると柱状体18に振動が発生し、さらに、換算流速Vrが8.0を超えると一旦振動角θが減少するものの、そこから振動角θは大きく減少することなく、換算流速Vrが10.0となるまで微増した。隙間間隔比S/H=1.0では、換算流速Vrが3.0を超えると柱状体18に振動が発生し、その後、換算流速Vrが10となるまで振動角θが増加した。隙間間隔比S/H=2.0では、換算流速Vrが4.0を超えると柱状体18に振動が発生し、その後、換算流速Vrが11.0となるまで振動角θが増加した。隙間間隔比S/H=3.0でも、換算流速Vrが4.0を超えると柱状体18に振動が発生し、その後、換算流速Vrが9.0となるまで振動角θが増加し、換算流速Vrが9.0を超えると、振動角θは急減した。
【0038】
図6(A)のグラフから分かるように、実験3では、いずれの隙間間隔比でも、共振換算流速より随分と低い換算流速から柱状体18に振動が発生している。これは、実験2と同様、四角柱状部材である柱状体18の壁面16への近接により、低速ギャロッピング振動が発生しやすくなったためだと考えられた。
図6(A)のグラフに示すように、隙間間隔比S/Hが小さくなり、柱状体18が壁面16へ近接するほど、換算流速Vrが低い領域から低速ギャロッピング振動が励起されることは、この考察を裏付けるものと考えられた。また、隙間間隔比S/H=1.0や隙間間隔比S/H=2.0では、共振換算流速を超えた後も振動角θが減少することが無かったが、これは、渦励振が支配的になる共振換算流速の近傍を超えると、高速ギャロッピング振動が発生したためだと考えられた。
【0039】
(実験4)
次に、試料4である四角柱状部材を柱状体18として用いた。柱状体18の長手方向の長さは200mmであり、水の流れの方向に平行であり且つ壁面16に直交する断面形状は正方形であった。すなわち、
図5(A)に示す、柱状体18の長さHと長さDはともに20mmであり、柱状体18の縦横比D/Hは1.0に設定された。また、実験振動系の全長rは142mmであった。
【0040】
実験4でも、実験1と同様に、水の流速Uを0.4m/s~2.6m/sの範囲で変化させるとともに、隙間間隔比S/Hを0.5、1.0、2.0及び3.0の4段階に変化させ、柱状体18に生じる振動を観測した。また、実験4でも、振動角θが0.05deg以上となる波形の振動が観測されたとき、柱状体18に振動が生じていると判定した。
【0041】
図6(B)は、柱状体18の縦横比D/Hが1.0である場合の柱状体18の振動の観測結果を示すグラフである。
図6(B)の縦軸及び横軸は、
図4(B)のグラフの縦軸及び横軸と同じである。なお、実験4における共振換算流速は約7.3であり、
図6(B)のグラフにおいて、破線で示される。
【0042】
図6(B)のグラフに示すように、隙間間隔比S/H=0.5では、換算流速Vrが4.0を超えると柱状体18に振動が発生したものの、換算流速Vrが6.4を超えるまで振動角θが増加することが無く、共振換算流速付近で振動角θが多少増加するものの、その後は換算流速の増加に伴って振動角θは減少した。一方、隙間間隔比S/H=1.0,2.0及び3.0のいずれでも、換算流速Vrが4.0を超えると柱状体18に振動が発生し、その後、換算流速Vrが10を超えても振動角θが増加した。
【0043】
図6(B)のグラフから分かるように、実験4でも、いずれの隙間間隔比において、四角柱状部材である柱状体18の壁面16への近接により、低速ギャロッピング振動が励起されることが確認された。また、隙間間隔比S/H=0.5では、共振換算流速を超えた後に振動角θが減少しており、実験3の隙間間隔比S/H=0.5でも同様の傾向が観察される一方、隙間間隔比S/H=1.0,2.0や3.0では、共振換算流速を超えた後も振動角θが増加しており、実験3の隙間間隔比S/H=1.0や2.0でも同様の傾向が観察されたことから、高速ギャロッピング振動を発生させるためには、柱状体18を壁面16へ近接させすぎるのは好ましくないことも分かった。
【0044】
実験1~4の観測結果から、水流中に存在する柱状体18を壁面16へ近接して配置することにより、隙間変動比が大きくなり、柱状体18へ作用する水流の圧力の変動も大きくなるため、共振換算流速付近で生じる渦励振だけでなく、低い換算流速から低速ギャロッピング振動を発生させることができ、さらに、条件によっては、換算流速が共振換算流速を超えても、高速ギャロッピング振動を発生させることができ、その結果、水の流速が変化しても、柱状体18の振動を維持することができるという知見を得た。
【0045】
この知見を振動発電装置10に適用し、本発明の実施の形態では、気体や水等の流体の流れの中において、振動励起体11を、フレーム12のベース部12bが取り付けられる構造体や移動体の壁面26へ近接して配置する。特に、壁面26及び振動励起体11の間の距離を隙間Sとし、壁面26と直交する方向に関する振動励起体11の長さを長さHとしたとき、実験1~4の観測結果から、隙間間隔比S/Hが3.0以下とすることにより、隙間変動比が大きくなり、柱状体18へ作用する流体の圧力の変動も大きくなるため、低い換算流速から低速ギャロッピング振動を発生させることができ、流体の流速が変化しても、振動励起体11の振動を維持することができる。その結果、振動発電装置10の発電効率をより向上させることができる。
【0046】
より具体的に、本発明の実施の形態では、振動励起体11の流体の流れの方向に平行であり且つ壁面に直交する断面の形状が円形である場合、実験1の観測結果に示すように、流体の換算流速Vrを4.0以上に保つことにより、振動励起体11に振動を生じさせることができ、振動発電装置10の発電効率をより向上させることができる。
【0047】
また、振動励起体11の流体の流れの方向に平行であり且つ壁面に直交する断面の形状が矩形であり、当該断面の縦横比D/Hが0.2である場合、実験2の観測結果に示すように、流体の換算流速Vrを2.0以上に保つことにより、振動励起体11に振動を生じさせることができ、振動発電装置10の発電効率をより向上させることができる。
【0048】
さらに、上述した振動励起体11の断面の形状が矩形であり、当該断面の縦横比D/Hが0.5である場合、実験3の観測結果に示すように、流体の換算流速Vrを3.0以上に保つことにより、振動励起体11に振動を生じさせることができ、振動発電装置10の発電効率をより向上させることができる。
【0049】
また、上述した振動励起体11の断面の形状が矩形であり、当該断面の縦横比D/Hが1.0である場合、実験4の観測結果に示すように、流体の換算流速Vrを4.0以上に保つことにより、振動励起体11に振動を生じさせることができ、振動発電装置10の発電効率をより向上させることができる。
【0050】
なお、本実施の形態は、縦横比D/Hが1.0以下の柱状体18を用いて行われた実験1~4の知見に基づくため、振動励起体11の縦横比D/Hも1.0以下であることが好ましい。また、本実施の形態は、回流水槽15の壁面16が振動しない実験1~4の知見に基づくため、フレーム12のベース部12bが取り付けられる構造体や移動体の壁面は振動しないことを前提とする。
【0051】
本実施の形態によれば、上述したように、振動励起体11を壁面へ近接して配置することにより、低い換算流速から低速ギャロッピング振動を発生させることができるため、固有振動数が低下する大型の振動発電装置10においても、振動励起体11を振動させることができる。その結果、大型の振動発電装置10を用いることにより、振動発電装置10の大型化と振動励起体11が振動する換算流速の範囲の拡大との相乗効果からさらに発電効率を向上させることができる。
【0052】
また、本実施の形態では、振動発電装置10が2つのフレーム12を有するが、フレーム12の数は2つに限られず、1つであってもよく、3つ以上であってもよい。なお、フレーム12の数が3つ以上である場合、各フレーム12に磁歪板13とコイル14を設けることにより、発電効率を向上させることができる。
【0053】
以上、本発明の好ましい実施の形態について説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0054】
例えば、振動発電装置10ではアーム部12cの揺動を利用して磁歪板13を伸縮させて発電を行ったが、磁歪板13の代わりに圧電素子を設け、アーム部12cの揺動を利用して圧電素子を変形させることにより発電を行ってもよく、磁歪板13の代わりに磁性材を設け、アーム部12cの揺動を利用して磁性材をコイルに対して相対移動させるように構成し、電磁誘導によって発電を行ってもよい。なお、振動発電装置10のアーム部12cそのものを磁歪材で構成し、磁歪板13を廃してもよい。
【0055】
また、振動発電装置10の振動励起体11は、断面が円形や矩形の柱状体に限られず、断面が四角形以外の多角形を呈する柱状体であってもよい。
【0056】
さらに、実験1~4では、U字形フレーム19の屈曲部が水流の下流側に配置されるように、振動実験装置17が壁面16に取り付けられたが、屈曲部の配置箇所は特に限られず、例えば、振動発電装置10において、フレーム12の屈曲部12aが振動励起体11よりも流体の上流側に配置されてもよい。
【0057】
なお、本実施の形態では、
図1に示すように、フレーム12のアーム部12cを壁面26に対して平行に配置するが、振動励起体11が壁面26に近接して配置され、且つアーム部12cが揺動可能であれば、アーム部12cを壁面26に対して平行に配置しなくてもよい。また、同様に、アーム部12cを流体の流れの方向に対して平行に配置しなくてもよい。
【0058】
次に、本実施の形態に係る振動発電装置10の適用例について説明する。
【0059】
図7は、振動発電装置10が適用された風向追従板を示す図である。
図7(A)において、風向追従板27は、円板状のベース28に対して垂直に立設され、ベース28の中心軸周りに回動可能に構成される。風向追従板27の回転軸は、風向追従板27の中心からオフセットして設定されるため、風向追従板27を流体の流れ、例えば、大気の流れの中に配置した際、風向追従板27は、その表面が大気の流れ(図中の白矢印参照)の方向と平行となるように向きを変更する。すなわち、風向追従板27は大気の流れに追従して向きを変更する。風向追従板27の両面のそれぞれに、振動励起体11の長手方向が大気の流れに対して略直交し、振動励起体11が風向追従板27の表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が大気の流れと略平行になるように、振動発電装置10が配置される。
【0060】
風向追従板27は大気の流れに追従するため、風向追従板27の表面に大気の流れが存在する確率を高めることができる。これにより、振動発電装置10の振動励起体11が振動する頻度を向上させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。
【0061】
各振動発電装置10が有するフレーム12やコイル14の数は2つに限られず、
図7(B)に示すように、各振動発電装置10は3つ以上のフレーム12やコイル14を有していてもよい。なお、
図7(A)及び
図7(B)では、磁歪板13の図示が省略される。
【0062】
図8は、振動発電装置10が適用された航空機を示す図である。
図8において、振動発電装置10は航空機29の両主翼30の表面に配置される。なお、
図8では、磁歪板13やコイル14の図示が省略される。
【0063】
航空機29では、振動励起体11が、その長手方向が主翼30の前縁に沿うように、主翼30の前縁の近傍に配置される。また、振動発電装置10は、振動励起体11が主翼30の表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が大気の流れと略平行になるように、主翼30へ配置される。航空機29の飛行中、両主翼30の表面には常時大気の流れが存在するため、振動励起体11を常時振動させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。また、長尺状の振動励起体11が主翼30の前縁の近傍に配置されるため、振動励起体11はボルテックスジェネレーターとしても機能し、大気の抵抗を低下させることもできる。なお、振動発電装置10が配置される位置は両主翼30の表面に限られず、飛行や離着陸に支障がない位置であれば、航空機29のいずれの表面にも配置することができる。
【0064】
図9は、振動発電装置10が適用された列車の一部を示す図である。
図9において、振動発電装置10は、列車31のパンタグラフ32の風切り音を遮音する遮音板33の表面に配置される。なお、
図9では、磁歪板13やコイル14の図示が省略される。
【0065】
列車31では、振動励起体11の長手方向が列車31の運行中に生じる大気の流れに対して略直交し、振動励起体11が遮音板33の表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が上記大気の流れと略平行になるように、遮音板33へ配置される。列車31の運行中、遮音板33の表面には常時大気の流れが存在するため、振動励起体11を常時振動させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。なお、振動発電装置10が配置される位置は遮音板33の表面に限られず、運行に支障がない位置であれば、列車31の車両表面のいずれにも配置することができる。
【0066】
図10は、振動発電装置10が適用された自動車を示す図である。
図10において、振動発電装置10は、自動車34の車両表面に配置される。なお、
図10では、磁歪板13の図示が省略される。また、振動励起体11、フレーム12やコイル14の符号も省略される。
【0067】
自動車34では、振動励起体11の長手方向が自動車34の走行中に生じる大気の流れに対して略直交し、振動励起体11が車両表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が上記大気の流れと略平行になるように、車両表面へ配置される。自動車34の走行中、車両表面には常時大気の流れが存在するため、振動励起体11を常時振動させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。なお、自動車34は
図10に示すような四輪車に限られず、三輪車やその他の多輪車であってもよい。
【0068】
図11は、振動発電装置10が適用された鞍乗り型車両としての二輪車を示す図である。
図11において、振動発電装置10は、二輪車35の車両表面に配置される。なお、
図11では、磁歪板13の図示が省略される。また、振動励起体11、フレーム12やコイル14の符号も省略される。
【0069】
二輪車35では、振動励起体11の長手方向が二輪車35の走行中に生じる大気の流れに対して略直交し、振動励起体11が車両表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が上記大気の流れと略平行になるように、車両表面へ配置される。二輪車35の走行中も、車両表面には常時大気の流れが存在するため、振動励起体11を常時振動させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。なお、振動発電装置10が適用される鞍乗り型車両は、
図11に示すような二輪車35に限られず、三輪車やATV(All Terrain Vehicle)であってもよい。
【0070】
図12は、振動発電装置10が適用された船舶を示す図である。
図12において、振動発電装置10は、船舶36の船体37や船室38の表面に配置される。なお、
図12では、磁歪板13の図示が省略される。また、振動励起体11、フレーム12やコイル14の符号も省略される。
【0071】
船舶36では、振動励起体11の長手方向が船舶36の航行中に生じる大気や水の流れに対して略直交し、振動励起体11が船体37や船室38の表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が大気や水の流れと略平行になるように、船体37や船室38の表面へ配置される。船舶36の航行中は、船体37や船室38の表面に常時大気や水の流れが存在するため、振動励起体11を常時振動させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。特に、振動発電装置10が水面下の船体37の表面に配置される場合、振動励起体11に作用する流体は水であり、大気よりも密度が高いため、振動励起体11に作用する圧力の変動が大きく、振動励起体11を効率良く振動させることができ、結果として、振動発電装置10の発電効率をさらに向上させることができる。なお、振動発電装置10が配置される位置は船体37や船室38の表面に限られず、姿勢制御のためのトリムタブ39の表面であってもよい。
【0072】
図13は、振動発電装置10が適用された船外機を示す図であり、
図13(A)は船外機の側面図であり、
図13(B)は船外機の底面図である。
図13において、振動発電装置10は、船外機40のアンチベンチレーションプレート41の下側表面に配置される。なお、
図13では、磁歪板13の図示が省略される。また、振動励起体11、フレーム12やコイル14の符号も省略される。
【0073】
船外機40では、振動励起体11の長手方向が、船外機40が取り付けられた船舶の航行中に生じる水の流れに対して略直交し、振動励起体11がアンチベンチレーションプレート41の下側表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が水の流れと略平行になるように、アンチベンチレーションプレート41の下側表面へ配置される。船外機40の航行中は、アンチベンチレーションプレート41の下側表面に常時水の流れが存在するため、振動励起体11を常時振動させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。
【0074】
図14は、振動発電装置10が適用された船舶の一部を示す図である。
図14において、振動発電装置10は、推進力を発生するプロペラ42の上流側に配置され、プロペラ42へ流れ込む水流を制御してプロペラ42の回転流を減少させるフィン状部材である複数のステータ43の表面に配置される。なお、
図14では、磁歪板13の図示が省略される。また、振動励起体11、フレーム12やコイル14の符号も省略される。
【0075】
図14の船舶では、振動励起体11の長手方向が、船舶の航行中に生じる水の流れに対して略直交し、振動励起体11が各ステータ43の表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が水の流れと略平行になるように、各ステータ43の表面へ配置される。船舶の航行中は、各ステータ43の表面に常時水の流れが存在するため、振動励起体11を常時振動させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。
【0076】
図15は、振動発電装置10が適用された船舶のダクトプロペラ機構を示す図であり、
図15(A)はダクトプロペラ機構を示す斜視図であり、
図15(B)はダクトプロペラ機構の断面図である。
図15において、振動発電装置10は、ダクトプロペラ機構45のダクト46の内表面に配置される。なお、
図15では、磁歪板13の図示が省略される。また、振動励起体11、フレーム12やコイル14の符号も省略される。
【0077】
ダクトプロペラ機構45では、振動励起体11の長手方向が、ダクト46の内部を流れる水の流れに対して略直交し、振動励起体11がダクト46の内表面に対して略平行となり、且つ各フレーム12の長手方向が水の流れと略平行になるように、ダクト46の内表面へ配置される。船舶の航行中は、ダクト46の内表面に常時水の流れが存在するため、振動励起体11を常時振動させることができ、もって、振動発電装置10による発電効率をさらに向上させることができる。
【0078】
なお、振動発電装置10の適用例は上述したものに限られない。例えば、振動発電装置10を、水が流れるダムや堤の表面、若しくは、取水管、導水管や水道管の内表面に設けてもよい。また、振動発電装置10を、常時、風に晒されて大気の流れが存在する高層ビルやタワーの表面に設けてもよい。
【符号の説明】
【0079】
10 振動発電装置、11 振動励起体、12 フレーム、12a 屈曲部、12c アーム部、13 磁歪板、14 コイル、17 振動実験装置、18 柱状体、19 U字形フレーム、26 壁面、27 風向追従板、29 航空機、30 主翼、31 列車、33 遮音板、34 自動車、35 二輪車、 36 船舶、37 船体、38 船室、39 トリムタブ、40 船外機、41 アンチベンチレーションプレート、43 ステータ、45 ダクトプロペラ機構、46 ダクト