(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184717
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】キャップと容器
(51)【国際特許分類】
B65D 41/34 20060101AFI20231221BHJP
【FI】
B65D41/34 112
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191565
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2020001979の分割
【原出願日】2020-01-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100186060
【弁理士】
【氏名又は名称】吉澤 大輔
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 倫寿
(72)【発明者】
【氏名】原田 拓治
(57)【要約】
【課題】キャッピング時には、不正開封防止バンドのブリッジが破断せず、正規な開封操作で開栓方向にキャップを回したときには、全てのブリッジが破断されるようにして、開封後にイタズラなどでキャップを再びスパウトに取り付けた場合でも、ブリッジが既に破断していて隣り合う分割バンドの間の状態から開封済みであることが目視にて簡単に判断できるキャップを得る。
【解決手段】キャップ1の不正開封防止バンド3が、四つの分割バンド7、8とこの分割バンド7、8を連結する破断可能な四つのブリッジ9とからなり、分割バンド7、8には、スパウトの係止突起に係止して開栓方向Xへの回転を規制する係止爪10が設けられて、分割バンド7、8の開栓方向Xの回転を規制されるときに、ブリッジ9が破断されるものであり、ブリッジ9の高さをブリッジ9の幅より大きくした。
【選択図】
図19
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトに螺合して取り付けられるキャップ本体と、このキャップ本体の下部に連結部を介して位置している不正開封防止バンドとを備えていて、
前記キャップ本体は、天板と、前記天板の周辺から下方に延設される周壁と、を有しており、
前記周壁には、張り出し量が大である指掛け用の突条と、前記張り出し量が大である指掛け用の突条より張り出し量が小である指掛け用の突起と、が設けられていて、
前記張り出し量が大である指掛け用の突条を四方に配置し、張り出し量が大である指掛け用の突条の間に、前記張り出し量が小である指掛け用の突起が配置され、
前記不正開封防止バンドは、破断可能なブリッジを介して複数の分割バンドが分離可能に連結されたもので、かつ、不正開封防止バンドには、スパウトの係止突起に開栓方向への回転時に係止して開栓方向への回転を規制する係止爪が設けられていて、
前記係止突起に前記係止爪が係止して分割バンドの開栓方向の回転を規制されるときに、前記ブリッジが破断されるものであることを特徴とするキャップ。
【請求項2】
前記指掛け用の突条は、キャップ本体の径方向外方に向けて凸となっていて、周壁の上部側から下部側にかけて直線状に形成されている
請求項1に記載のキャップ。
【請求項3】
前記張り出し量が大である指掛け用の突条より張り出し量が小である指掛け用の突起は、張り出し量が中の突条と、この張り出し量が中の突条より張り出し量が小の突条とを含んでいて、
前記張り出し量が中の突条の間に、前記張り出し量が小の突条が配置されている
請求項1または2に記載のキャップ。
【請求項4】
前記連結部が、前記張り出し量が大となる指掛け用の突条の下方に位置している
請求項1から3のいずれか一項に記載のキャップ。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載のキャップと、スパウトと、を有し、
前記スパウトは、前記キャップの前記係止爪が係止する前記係止突起を有する
ことを特徴とする容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は容器の口部であるスパウトに螺合してスパウトを閉じるキャップ、特に不正開封防止バンドを備えるキャップと容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来からPETボトルに代表される飲料容器の口部には、いたずらなどによる不正開封を抑止するための機能を備えたキャップが取り付けられていて、口部の外ネジに螺合する内ネジを有するキャップ本体と、このキャップ本体の周壁の下部に環状の不正開封防止バンドとからなるものが多く利用されている。
【0003】
不正開封防止バンドは、バンドの内側に、口部の外ネジ部分の下方となる部分に外方に向けて突設された係止突起に係止する複数の係止爪を備え、係止爪それぞれは開栓方向に向けて延びていて、バンド内面に伏す変形が可能とされている。飲料容器の口部に最初に
取り付けるときのような閉栓方向の回転に際しては、キャップ本体とともに不正開封防止バンドが閉栓方向に回転し、前記係止爪が、口部側の係止突起を乗り越えるように移動し、係止突起に対して係止することがない。
【0004】
螺着したキャップを開栓方向に回転させるときには、キャップ本体とともに不正開封防止バンドが開栓方向に回転しかけるが、口部側の係止突起にバンド側の係止爪が係止して、不正開封防止バンド自体の開栓方向への回転が規制されるようにしている。
【0005】
キャップ本体は開栓方向へ回転して上昇すると、開栓方向への回転が規制された不正開封防止バンドとキャップ本体との間を繋ぐ連結部分が分断され、口部側に不正開封防止バンドが残る仕組みとなっていた。
【0006】
そして、再度キャップ本体を口部にネジ付けて戻したときには、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間が開いて、開封済であることを目視にて確認できるようになる。さらにキャップ本体を口部に戻しても、キャップ本体と不正開封防止バンドとの間が開くようになることを理解することで、いたずらなどでの不正開封を抑止する効果を奏するものとなっている。
【0007】
飲料やゼリー飲料などを収容する容器には、口径が小さく直接に口を当てて飲料やゼリー飲料を飲用できるようにしたスパウトを容器の口部として用いるものも多く流通している。この口部の口径が小さいスパウトに取り付けるキャップにも、上述した不正開封防止バンドを設けるタイプがあるが、開封した際にスパウト側に不正開封防止バンドが残ると、その不正開封防止バンドを誤飲する可能性がある。
【0008】
特許文献1、2に示されているように不正開封防止バンドが予め二つに分割された構成であり、そして隣り合う分割バンドの間それぞれでは、上下で対となっている破断可能なブリッジを二つ配置しており、隣り合う分割バンドの部分は前記上下二つのブリッジを介して連続させている構造とし、開封操作時に前記ブリッジが破断されるようにするとともに、分割バンド部分が連結部を介した状態で連続しているキャップ本体と共にスパウトから外れるようにした工夫が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2013-103721号公報
【特許文献2】特開2015-217966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1、2にて示されているような構成のキャップを口径が小さいスパウトに取り付けている容器形態の商品では、消費者が開封時にキャップを回してもブリッジ全てが破断するとは限らなかった。そして、必ずしも全てのブリッジが破断するとは限らないことから、破断していないブリッジが存在するキャップをスパウトに戻して閉栓し、その閉栓状態のキャップを見たときには、既に開封操作が行なわれた後のキャップであるか否かの判断が難しいものであった。
【0011】
例えば、商品をイタズラする目的などで一旦開封し、スパウトの部分を通して異物を容器本体内に入れて、再度キャップにより閉栓したとしても、商品を購入しようとする消費者側でその商品が既に開封されているものであるかどうかは判り難い。
【0012】
一方、商品の製造に際し、スパウトのねじ部分に最初にキャップを取り付けるとき、即ち、キャッピング時には、閉栓方向にキャップを回転させてスパウトに螺着している。このとき、不正開封防止バンドの内側にある係止爪はスパウトの係止突起を乗り越えるようにして移動していて、不正開封防止バンドの周方向に沿う引っ張りや縦方向(キャップ高さ方向)に沿う剪断がブリッジに加わるようになるが、これらの力によってブリッジの破断が生じてはいけない。そのため、商品製造でのキャッピング時には、ブリッジが破断せず、商品を購入した消費者が開栓操作するときには、ブリッジが全て破断されるようにすることが重要である。
【0013】
しかし、現状のキャップでは、キャッピング時にブリッジの破断を発生させない点に重きが置かれていて、ブリッジの断面積を過剰に大きくして製造されるものが多い。よって上述したように開封時に全てのブリッジが破断するとは限らないという問題があった。
【0014】
そこで本発明は上記事情に鑑み、キャッピング時には、不正開封防止バンドのブリッジが破断せず、正規な開封操作で開栓方向にキャップを回したときには、全てのブリッジが破断されるようにすることを課題とし、開封後にイタズラなどでキャップを再びスパウトに取り付けた場合でも、ブリッジが既に破断していて隣り合う分割バンドの間の状態から開封済みであることが目視にて簡単に判断できるキャップを得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(請求項1の発明)
本発明は上記課題を考慮してなされたもので、スパウトに螺合して取り付けられるキャップ本体と、このキャップ本体の下部に連結部を介して位置している不正開封防止バンドとを備えていて、
前記キャップ本体は、天板と、前記天板の周辺から下方に延設される周壁と、を有しており、
前記周壁には、張り出し量が大である指掛け用の突条と、前記張り出し量が大である指掛け用の突条より張り出し量が小である指掛け用の突起と、が設けられていて、
前記張り出し量が大である指掛け用の突条を四方に配置し、張り出し量が大である指掛け用の突条の間に、前記張り出し量が小である指掛け用の突起が配置され、
前記不正開封防止バンドは、破断可能なブリッジを介して複数の分割バンドが分離可能に連結されたもので、かつ、不正開封防止バンドには、スパウトの係止突起に開栓方向への回転時に係止して開栓方向への回転を規制する係止爪が設けられていて、
前記係止突起に前記係止爪が係止して分割バンドの開栓方向の回転を規制されるときに、前記ブリッジが破断されるものであることを特徴とするキャップを提供して、上記課題を解消するものである。
【0016】
(請求項2の発明)
また、本発明において、前記指掛け用の突条は、キャップ本体の径方向外方に向けて凸となっていて、周壁の上部側から下部側にかけて直線状に形成されていることが良好である。
【0017】
(請求項3の発明)
また、本発明において、前記張り出し量が大である指掛け用の突条より張り出し量が小である指掛け用の突起は、張り出し量が中の突条と、この張り出し量が中の突条より張り出し量が小の突条とを含んでいて、
前記張り出し量が中の突条の間に、前記張り出し量が小の突条が配置されていることが良好である。
【0018】
(請求項4の発明)
また、本発明において、前記連結部が、前記張り出し量が大となる指掛け用の突条の下方に位置していることが良好である。
【0019】
(請求項5の発明)
また、もう一つの発明は、請求項1から4のいずれか一項に記載のキャップと、スパウトと、を有し、
前記スパウトは、前記キャップの前記係止爪が係止する前記係止突起を有する
ことを特徴とする容器であり、この容器を提供して上記課題を解消するものである。
【発明の効果】
【0020】
容器商品の製造におけるキャッピングでは、キャップを閉栓方向に回してスパウトのねじ部分に螺着しており、キャップが回転しながら降下するとき、分割バンドの内側に設けられている係止爪が、分割バンドの内面に伏せる弾性変形をしながらスパウトの係止突起を乗り越えて閉栓方向に移動する。
【0021】
係止突起を乗り越えるときの弾性変形で係止爪には復元力が生じていて、分割バンド自体が不正開封防止バンドの径方向外方に向けて付勢される。この付勢によって、不正開封防止バンドを拡径させるごとくに隣り合う分割バンドの間に位置するブリッジに引っ張り力が作用するようになる。
【0022】
また、係止爪が係止突起を乗り越えるときに摩擦などによって係止爪の移動に抵抗が生じ、係止爪が係止突起に乗っている分割バンドでは、閉栓方向とキャップの高さ方向での下方に向けて移動もし難い状態となる。即ち、係止突起側からの反作用として前記係止爪に対して上方に向けた力も加わって、僅かな時間ではあるが分割バンドが下方への移動もし難くなる。
【0023】
しかし、係止突起に係止爪が乗った分割バンドに隣り合う分割バンドでは、必ずしも同時に下方に向けて移動し難くなるとは限らない。一方の分割バンドが閉栓(キャッピング)の回転をしながら降下するキャップ本体と共に下がる移動をすると、隣り合う分割バンドの相対する端部同士の位置が上下方向にズレるようになる。
【0024】
特に、閉栓方向の下流となる分割バンドの端部側に係止爪があって、その係止爪が係止突起に乗り、閉栓方向の上流となる分割バンドの端部側が連結部などによって直接的にキャップ本体に連結されているような場合、その隣り合う分割バンドで相対する端部同士の位置が上下にズレて、その間に位置するブリッジに対して剪断力が作用し、上記引っ張り力も加わって破断される可能性がある。
【0025】
このようにキャッピングを行なうときに、隣り合う分割バンドの間に位置するブリッジには、不正開封防止バンドの周方向に沿った引っ張り力(分割バンドを径方向外方に向けて付勢することにより生じる引っ張り力)や、不正開封防止バンドの縦方向(キャップ高さ方向)に沿う剪断力(隣り合う分割バンドの相対し合う端部が上下方向にズレることにより生じる剪断力)が加わるようになる。
【0026】
キャッピング時の不正開封防止バンドの周方向に沿った引っ張り力と縦方向に沿う剪断力とに抗して、ブリッジの破断を防ぐにはブリッジの断面積を大きくすることが対策として考えられる。しかし、ブリッジの断面積を大きくすると、上述したように開封操作するときにブリッジが破断しなくなってしまう。
【0027】
そこで、本発明によれば、不正開封防止バンドの縦方向であるブリッジの高さをブリッジの幅(不正開封防止バンドの径方向での厚さ)より大としているので、ブリッジの断面形状が縦長となり、ブリッジの断面積を大きくしなくとも、分断バンドの相対する端部が上下にズレようとする際の剪断力に抗することができる。そして、キャッピング時に生じる引っ張り力に対しては、その引っ張り力に抗する範囲で断面積を必要最小限にしていけばよく、ブリッジの成形が簡単になる。
【0028】
不正開封防止バンドにおいては、キャッピングされたキャップを開栓方向に回す開封操作をしたときにはブリッジが分断されるようにしている。そして、ブリッジが破断することによって、例えば、分割バンドの部分が不正開封防止バンドの径方向外方に向けて張り出て、不正開封防止バンドの環形状を未開封時とは異なる形態にしたり分割バンドの間が開いている点を強調できれば、開封した後に閉栓されたキャップであることを目視にてより一層簡単に確認できる。
【0029】
上記不正開封防止バンドに、ブリッジが切れることで分割バンドを径方向外方に向けて押し出す仕組みを設けることができる。しかし、この仕組みを不正開封防止バンドに設けるようにすることで、キャッピング時に、上述のように隣り合う分割バンド同士が上下方向にズレて、前記仕組みに近いブリッジが剪断にて破断される可能性がある。
【0030】
本発明によれば、分割バンドの間に位置する四つのブリッジの内の二つのブリッジについては、不正開封防止バンドの第一の径方向に対向する位置にして配置され、残りの二つのブリッジは、前記第一の径方向とは異なる第二の径方向に対向する位置にして配置されている。そして、第二の径方向に対向する位置にして配置されている二つのブリッジにおけるブリッジの幅に対するブリッジの高さの比率と、第一の径方向で対向する位置にして配置されている二つのブリッジにおけるブリッジの幅に対するブリッジの高さの比率とは相違していて、第二の径方向に対向する位置にして配置されている二つのブリッジにおけるブリッジの幅に対するブリッジの高さの比率が、第一の径方向で対向する位置にして配置されている二つのブリッジにおけるブリッジの幅に対するブリッジの高さの比率より大である。
【0031】
このように第二の径方向に対向する位置にして配置された二つのブリッジは、第一の径方向に対向する位置にして配置された二つのブリッジに比べて剪断(キャッピング時の剪断)に対する抗力が大きくなる。そのため、第二の径方向に対向する位置にあるブリッジに近接する部分に、上述した分割バンドを外方に押し出すような仕組みを設けることができる。
【0032】
よって、上記仕組みを設けることで、隣り合う分割バンドが上下にズレして、ブリッジに剪断力が作用し易くなったとしても、キャッピング時の剪断によるブリッジの破断を防止できる。そのため、正規の開封操作によってブリッジが切れて、前記仕組みを生かして不正開封防止バンドが異形状態となったり分割バンドが外方に張り出るようになる。従って、開封操作が行なわれたことを明確にする工夫を設け易くなる。
【0033】
本発明によれば、スパウトに取り付けられたキャップ本体を開栓方向に回す初期開封操作をしたときに、前記第二の径方向に対向する位置にして配置されている二つのブリッジにおける破断と、前記第一の径方向に対向する位置にして配置されている二つのブリッジにおける破断とを非同時にしているので、開封操作するときのブリッジを分断する力を四つのブリッジに分散させずに、先に分断のブリッジに集中させるようになるとともに、遅れて分断されることになるブリッジに対しても分断するための力を集中させるようになる。
【0034】
このようにブリッジを分断するための力が二つずつのブリッジに加わるようになるため、分断するときのブリッジ側からの抵抗が小さくなり、開封時にキャップを回す操作が簡単に行なえるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明の実施の形態におけるキャップを斜め上方から見た状態で示す説明図である。
【
図2】実施の形態を側方から見た状態で示す説明図である。
【
図3】実施の形態を上方から見た状態で示す説明図である。
【
図5】実施の形態での不正開封防止バンドを下方から見た状態で示す説明図である。
【
図6】キャップがスパウトに取り付けられた未開封の状態を断面で概略的に示す説明図である。
【
図7】実施の形態での不正開封防止バンドを上方から見た状態で示す説明図である。
【
図8】実施の形態での不正開封防止バンドを側方から見た状態で示す説明図である。
【
図9】実施の形態でのキャップ本体を下方から見た状態で示す説明図である。
【
図10】実施の形態での不正開封防止バンドを斜視の状態で示す説明図である。
【
図11】実施の形態でのキャップ未開封時での不正開封防止バンドの係止爪とスパウトの係止突起とバネ部材との位置を平面で概略的に示す説明図である。
【
図12】実施の形態でのバネ部材を縦断面の形態で概略的に示す説明図である。
【
図13】実施の形態でのバネ部材を平面で概略的に示す説明図である。
【
図14】バネ部材に抗力未発生状態でのバンド径方向のバネ部材位置とスパウトの係止突起の位置とをキャップ本体をオーバーラップさせて概略的に示す説明図である。
【
図15】バネ部材により長分割バンドが外方に押し出された状態を平面で示す説明図である。
【
図16】検討したキャップの閉栓時と開栓時のブリッジ切れ評価結果を表1と表2にして示す説明図である。
【
図17】検討したキャップのブリッジの幅と高さの平均、最大、最小と比率の平均、最大、最小を表3~表5として示す説明図である。
【
図18】比率・閉栓時破断率相関を散布図で示す説明図である。
【
図19】閉栓時の開栓方向の力と上方への力と押し下げの力とを矢印にて示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
つぎに本発明を
図1から
図19に示す実施の形態に基づいて詳細に説明する。図中1は容器の口部であるスパウトaに取り付けられるキャップで、該キャップ1はスパウトaにネジ付けて取り付けられるキャップ本体2と、キャップ本体2の下方に位置する環状の不正開封防止バンド3とからなるもので、キャップ本体2と不正開封防止バンド3とが一体になった状態で合成樹脂材により成形されている。
図1参照
【0037】
(キャップ本体)
キャップ本体2は、下面側でスパウトaの注出口部分を塞ぐことができるようにした天板4の周辺から下方に周壁5が延設されていて、周壁5で構成される筒状の部分は下方に向けてやや開いたテーパー状に設けられている。周壁5の内面側には、スパウトaの外ネジに螺合する内ネジを有している。さらに周壁5の下辺の断面形状はキャップ径方向外方に向けて張り出るように厚肉とされ、周壁5の側面から前記厚肉部分にかけて斜面を形成している。
図4参照
【0038】
上記天板4の下面にはインナーリング4aが下垂する状態にして設けられている。このインナーリング4aは、キャップ1をスパウトaに取り付けたときに、スパウトaの内側に入ってスパウト内面に摺接可能にして密に接して、容器の収納物が漏れ出ないようにするものである。
【0039】
図1と
図2に示すように上記周壁5の外周側には、キャップの開け閉めに際してキャップを回す指先に滑りが生じないようにするために、指掛け用の複数本の突条5aが一体に配置されている。図示されているように、指掛け用の突条5aそれぞれは、キャップ本体の径方向外方に向けて凸となって周壁5の上部側から下部側にかけて直線状に形成されている。そしてこの実施形態の場合、前記突条5aは径方向外方に向けての張り出し量が全て同一とされているものではなく、張り出し量が大となる突条5aを四方に配置し、その張り出し量が大とした突条5aの間に、張り出し量が中とされた二つの突条5aが配置され、さらに張り出し量を中とした二つの突条5aの間に、張り出し量が最小とされた突条5aが配置されている。
【0040】
(不正開封防止バンド)
不正開封防止バンド3は上述したようにキャップ本体2の周壁5の下部に位置しているが、周壁5の下辺全周に亘って一体となっているものではなく、以下に示す四カ所の連結部6を介して周壁5の下部に連続している。
図7、
図9、
図10参照
【0041】
さらに不正開封防止バンド3は、スパウトaにキャップ1を螺合させて正規位置(スパウトaの注出口部分を閉じる位置)となったときに、スパウトaの高さ方向での上記外ネジの部分より下位の高さ位置に対応するものであり、スパウトaの周方向での等間隔の四カ所に外方に向けて突設した係止突起bが存在する部分に対応するように配置される。
図6参照
【0042】
(長分割バンド、短分割バンド)
不正開封防止バンド3は四本の分割バンド部分に区分されるように成形されていて、環状になるようにして四本の分割バンド部分が配置されている。四本の分割バンド部分は、二本の長分割バンド7とバンド周方向の長さが長分割バンド7より短かい二本の短分割バンド8とからなる。そして長分割バンド7と短分割バンド8とがバンド周方向に交互に位置している。長分割バンド7と短分割バンド8とは、長分割バンド7と短分割バンド8とのそれぞれの開栓方向Xの上流側端部12、14の部分で上記連結部6を介してキャップ本体2の周壁5の下部に連続している。
図7、
図10参照
【0043】
また、長分割バンド7と短分割バンド8とのそれぞれは、
図4に示すようにバンド周壁3aとこのバンド周壁3aの上端から不正開封防止バンド3の中心側に向けて張り出るバンド天板3bとからなるもので、バンド周壁3aとバンド天板3bとで縦断面形状を逆さの略L字状に設けられている。
【0044】
(ブリッジ)
バンド周方向で隣り合う長分割バンド7と短分割バンド8とは、破断可能であって開封の際の開栓方向の回転操作が行なわれるときに破断するブリッジ9を介して分離可能に連結されている。そして、不正開封防止バンド3は、隣り合う長分割バンド7と短分割バンド8とを破断可能な前記ブリッジ9を介して連続させて環状に形成されている。
図7参照
【0045】
(係止爪)
不正開封防止バンド3の内側には、
図5と
図6とに示すようにこの不正開封防止バンド3の内面に沿うようにするとともに開栓方向に向けて延設されている係止爪10が設けられている。係止爪10は後述するように長分割バンド7の内側と短分割バンド8の内側と位置していて、係止爪10の基端部分が、長分割バンド7と短分割バンド8とのバンド周壁3aに一体とされているとともに、係止爪10の上端部分が、長分割バンド7と短分割バンド8とのバンド天板3bに一体とされている。
【0046】
係止爪10は、開封に際して開栓方向Xへの回転移動時に係止突起bに係止して、不正開封防止バンド3の開栓方向Xの回転を規制する働きをするものである。即ち、係止爪10は不正開封防止バンド3が開栓方向Xの回転をしかけるときに係止突起bと係止するように設けられている。また係止爪10自体は閉栓方向Yの回転移動をするときに係止突起bを乗り越えることができる可撓性を備えていて、スパウトに最初にキャップ1を取り付けるための閉栓方向Yへの回転移動をするときに、係止突起bをスムーズに乗り越えて移動する。
【0047】
係止爪10自体は、スパウトに最初にキャップ1を取り付ける際(キャッピング時)に、上述したように分割バンド(長分割バンド7と短分割バンド8)の内側面に伏すように撓んで係止突起bを乗り越えるように変形して、係止突起bの乗り越えが終わったときに、元の形状に復元する弾性変形をするものである。
【0048】
そのため、係止突起bを乗り越えるときに復元力が係止突起b側に作用し、この係止突起bからの反力として分割バンド(長分割バンド7と短分割バンド8)自体を外方に押し出すように付勢することになる。そして、不正開封防止バンド3が拡径するようにこの不正開封防止バンド3の周方向に沿って引っ張り力が生じて、その引っ張り力がブリッジ9に加わることになるが、この引っ張り力が加わっても、後述するようにブリッジ9に切れが生じないように設けられている。
【0049】
(係止爪の配置)
開封するためにキャップ1を開栓方向Xに回すことで四カ所の破断可能な上記ブリッジ9が破断するように設けられているが、実施の形態のキャップ1では、開封操作時に、四カ所のブリッジ9全てを同時には破断しない。不正開封防止バンド3の第一の径方向R1に対向する一組のブリッジ9が、前記第一の径方向R1と異なる径方向である第二の径方向R2に対向するもう一組のブリッジ9の破断の後で破断するように、即ち、破断タイミングを僅かながらズレるように設けられていて、キャップ本体2を開栓方向Xに回すときの回転力に大きな力を要しない。
図7参照
【0050】
係止爪10は、
図5、
図11、
図14に示されているように長分割バンド7の内側と短分割バンド8の内側とのそれぞれに二つずつにして設けられている。破断タイミングがズレるようにするために、係止爪10のバンド周方向での配置は、開封に際し、キャップ本体2が開栓方向Xに回される動きに伴なって不正開封防止バンド3も開栓方向Xに回転しかけて、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側に設けられた係止爪10が係止突起bに係止する位置になるときに、この長分割バンド7に対して開栓方向Xの下流側で隣り合う短分割バンド8であって、この短分割バンド8の開栓方向Xの下流側に設けられた係止爪10が係止突起bに非係止状態で近接する位置となる配置としている。なお
図14において、非係止状態とするための配置をズレ量Aで示した。
【0051】
開封時、長分割バンド7の係止爪10が係止する係止突起bは、
図11に示されているように前記長分割バンド7の二つの係止爪10の内、開栓方向下流側の係止爪10に対し、その開栓方向下流側に位置する係止突起bである。また短分割バンド8の係止爪10が上述のように非当接で近接する係止突起bは、短分割バンド8の二つの係止爪10の内、開栓方向下流側の係止爪10に対し、その開栓方向下流側に位置する係止突起bである。
【0052】
なお、長分割バンド7と短分割バンド8とのそれぞれに二つずつ係止爪10が配置されているが、これは対応する係止突起bに近い位置にある係止爪10が係止し損ねた場合に、係止し損ねた前記係止爪10の開栓方向上流側の係止爪10を係止突起bに係止させてブリッジの破断が行なわれるようにしているものであって、ブリッジの破断をより確実に行なうために二つずつにして係止爪10が配置されている。
【0053】
(先破断のブリッジ 第二の径方向R2)
開封のために開栓方向Xへキャップ本体2を回転させると、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側の係止爪10と上記係止突起bとが係止し、この係止によって長分割バンド7の開栓方向Xの回転が規制されて停止する。また、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側端部11に隣り合う短分割バンド8と、さらにこの短分割バンド8に開栓方向Xの下流側として隣り合う長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12とには、上記連結部6を介してキャップ本体2の動きに伴なって開栓方向Xに回転する力が加わる。
【0054】
上記開封のための開栓方向Xへキャップ本体2を回転させる操作が続くので、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側端部11(係止突起係止対応部分から開栓方向Xの下流側の部分)と、これに開栓方向Xの下流側として隣り合う上記短分割バンド8と、この短分割バンド8に開栓方向Xの下流側として隣り合う長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12とに、開栓方向Xに回転させようとする力が加わり続けることになる。
【0055】
そして、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側端部11とこの下流側端部11に並ぶ前記短分割バンド8の開栓方向Xの上流側端部14との間に位置するブリッジ9と、短分割バンド8の開栓方向Xの下流側端部13と長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12との間に位置するブリッジ9とに引っ張り力が加わっている状態となる。
【0056】
さらに、本実施の形態では、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側端部11とこの下流側端部11に並ぶ前記短分割バンド8の開栓方向Xの上流側端部14との間に位置する上記ブリッジ9と、短分割バンド8の開栓方向Xの下流側端部13と長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12との間に位置する上記ブリッジ9との内、短分割バンド8の開栓方向Xの下流側端部13と長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12との間に位置するブリッジ9が、先に破断するように設けられている。
【0057】
(後破断のブリッジ 第一の径方向R1)
長分割バンド7の開栓方向Xの上記上流側端部12と短分割バンド8の開栓方向Xの上記下流側端部13との間の上記ブリッジ9(先破断ブリッジ)が先に破断すると、二つに割れた不正開封防止バンド3は、後述するバネ部材15の働きによって、長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12が最も外方に出る部分として不正開封防止バンド3の径方向外方に張り出る。そして、長分割バンド7が不正開封防止バンド3の径方向外方に向けて位置が変わることによって、この長分割バンド7の開栓方向Xの下流側の係止爪10が係止突起bから外れ易くなるようにしている。
【0058】
上述のように長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12と短分割バンド8の開栓方向Xの下流側端部13との間のブリッジ9が先に破断した後も、キャップ本体2の開栓方向Xへの回転が行われる。
【0059】
短分割バンド8は、この短分割バンド8の上流側端部14に位置する連結部6を介してキャップ本体2に連結されているので、キャップ本体2の開栓方向Xへの上述した継続する回転操作で、キャップ本体2から開栓方向Xに回転する力が加わっている。そして、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側端部11の近くにある上記係止爪10と係止突起bとが係止していることから、この係止(長分割バンド7の移動停止)と短分割バンド8の開栓方向Xへの回転とで、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側端部11と短分割バンド8の開栓方向Xの上流側端部14との間のブリッジ9に引っ張り力が加わり、このブリッジ9が後破断ブリッジとして破断する。また、前記ブリッジ9の破断によって、長分割バンド7の開栓方向Xの下流側の係止爪10は係止突起bから外れるようにしている。
【0060】
このようにブリッジ9全てを同時に破断するものではなく、不正開封防止バンド3での第二の径方向R2に対向する一組のブリッジ9が、先破断ブリッジとして先に破断し、前記第二の径方向R2とは異なる径方向である第一の径方向R1に対向するもう一組のブリッジ9が、後破断ブリッジとして前記先破断ブリッジの破断後に遅れて破断するようにしていて、破断タイミングがずれるように設けられている。
【0061】
そして開封に際して、開栓方向Xの回転を行なうと、不正開封防止バンド3の周方向に沿う引っ張り力が先に加わることになる先破断のブリッジ9からの抗力が、四カ所のブリッジの同時破断の場合に比べて小さくなるとともに、先破断のブリッジ9が切れた後に、つぎに引っ張り力が加わることになる後破断のブリッジ9(未切断のブリッジ)からの抗力も四カ所同時破断の場合に比べて小さくなり、ブリッジ9を切るためにキャップ本体2に加える回転力を小さくすることができて、開封操作に大きな力を要することなく簡単に開封することができる。
【0062】
なお、先破断ブリッジが切れるときと後破断ブリッジが切れるときの破断タイミングのズレ時間は極めて短時間になるように設けられており、スムーズな開封操作が損なわれないように図られている。
以降、二つ一組の先破断ブリッジと二つ一組の後破断ブリッジとの配置を図上で明確にするために、後破断ブリッジである第一の径方向R1に対向する二つのブリッジ9について、符号を92、94とも記載し、先破断ブリッジである第二の径方向R2に対向する二つのブリッジ9について、符号を91、93とも記載する。
【0063】
(バネ部材)
本発明のキャップ1では、不正開封防止バンド3が破断して開封されていることが、スパウトaに取り付けられている状態のときに容易に目視確認できるようにした工夫を備えている。その工夫は、不正開封防止バンド3に、該不正開封防止バンド3側から上記係止突起bのスパウト径方向の外端部cに掛かる状態で当接し、不正開封防止バンド3をスパウトaの径方向外方に向けて付勢するバネ部材15を設けることで構成されている。
図12、
図13参照
【0064】
まず、長分割バンド7それぞれの開栓方向Xの上流側端部12は、バンド周壁3aの上辺側から切り欠いた形状にしたバンド下辺16と上記バネ部材15とからなるものである。そしてバンド下辺16とこのバンド下辺16に隣り合う短分割バンド8の開栓方向Xの下流側端部13とが、先破断ブリッジであるブリッジ9(91、93)を介して連続している。
【0065】
また、長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12は上記連結部6と対応するものであって、バンド下辺16がこの連結部6と対応位置している。そしてバンド下辺16と連結部6との間にバネ部材15が位置するように設けられている。
【0066】
バネ部材15は、該バネ部材15の下端部分がバンド下辺16と一体となって連続しながら立ち上がるとともにスパウトa側(不正開封防止バンドの中心側)に傾斜する斜め支柱17と、この斜め支柱17の上端部分に連続していてスパウトa側(不正開封防止バンドの中心側)に臨む平面を備えた板状の受け板18とからなるものである。そして、バネ部材15の受け板18の上端部分が、上記連結部6に連続している。
【0067】
(バネ部材の斜め支柱)
バネ部材15の斜め支柱17は、不正開封防止バンド3の径方向外方(スパウト径方向外方)に向けて撓み変形可能な支柱である。そしてバンド下辺16に並ぶ先破断のブリッジ9(91、93)が破断していない状態であって、上記受け板18に対して不正開封防止バンド3の径方向外方に向けて押し出す力が加えられた状態のときに、この斜め支柱17が撓むようになり、この撓みを元に戻そうとする復元力にて、バンド下辺16の部分、即ち、長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12を、不正開封防止バンド3の径方向外方に向けて付勢する付勢力を生じさせるようにしている。
【0068】
後述するように、キャッピングを行なった後の未開封の状態のときにも、後破断のブリッジ9を含む四つのブリッジ9(91、92、93、94)は破断していないことから、撓みを元に戻そうとする斜め支柱17の復元力にて、長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12を、不正開封防止バンド3の径方向外方に向けて付勢する付勢力が生じさせている。
【0069】
(バネ部材の受け板)
バネ部材15の受け板18は、上述したようにその上端部分が連結部6に連続している。そして上記斜め支柱が17が撓み変形する状態のときにも、受け板18の上端部分は連結部6に連続し、上記先破断のブリッジ9が破断している状態のときにも連結部6に連続する。
【0070】
受け板18自体はバンド周壁3aの位置より不正開封防止バンド3の中心側に偏倚している。また、キャップ1をスパウトaに取り付けて未開封の状態での不正開封防止バンド3の径方向上の位置関係において、前記受け板18のスパウトa側に臨む平面19とスパウトaの係止突起b以外の外周面dとは接合せずに離間する配置となる。
図14参照
【0071】
同様にキャップ1をスパウトaに取り付けて未開封の状態での不正開封防止バンド3の径方向上の位置関係において、受け板18のスパウトa側に臨む平面19の位置は、係止突起bのスパウト径方向外端部cの位置より不正開封防止バンド3の中心側(スパウトaの中心側)となるように設けられている。
【0072】
そして、キャップ1をスパウトaに取り付けて未開封の状態であって、キャップ1がスパウトaに対して適正な閉止位置にあるときには、上記バネ部材15が係止突起bの外側に位置するように設定されている。
【0073】
また受け板18は、上述したようにバンド周壁3aの位置より不正開封防止バンド3の中心側に偏倚していて、係止突起bが位置するスパウトaの断面形状に不正開封防止バンド3をオーバーラップさせた状態を示している
図14で示されているように、受け板18の平面19の位置が前記係止突起bの領域に入り込むようにこの受け板18が形成されている。
【0074】
そのため、未開封の状態であってバネ部材15が係止突起bの外側にあるときには、受け板18の平面19と係止突起bのスパウト径方向外端部cとが対応して受け板18が係止突起bの前記スパウト径方向外端部cに当接して、この係止突起bにより受け板18がスパウト径方向外方に向けて押し出されている。
図6、
図11参照
【0075】
係止突起bによって受け板18がスパウト径方向外方に向けて押し出されることで上記斜め支柱17が撓み変形する。そして撓み変形に対する抗力としての復元力が生じて、その復元力によってバネ部材15はバンド下辺16を不正開封防止バンド3の径方向外方に向けて押し出すように付勢する。そのため、バネ部材15によって、先破断のブリッジ9が破断しない状態において長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12に、この上流側端部12を不正開封防止バンド3の径方向外方に向けて付勢する付勢力が常時加わるようにしている。
【0076】
受け板18は
図13に示されているようにバンド周方向に対向する端部それぞれがR付けされて断面円弧の表面形状を呈するように設けられていて、キャップ1の開け閉めに際して、不正開封防止バンド3が開栓方向Xや閉栓方向Yに移動するときに、受け板18が係止突起bにスパウト外周面方向から係止しないようにしていて、係止突起bを乗り越えたりその係止突起bのスパウト径方向外端面に適正に位置することができるように図られている。
【0077】
実施の形態においては、未開封の状態を含めてキャップ本体2がスパウトaを適正に閉栓する角度位置にしたときには、スパウト周方向での位置関係において係止突起bとバネ部材15とが対応し、係止突起bとバネ部材15とがスパウト径方向に並ぶように設定されている。
図6参照
【0078】
なお、受け板18自体は、キャップ1の初期の取り付けに際して不正開封防止バンド3が閉栓方向Yに回転するときに係止突起bとの係止が生じない形状であればよく、上述した形状に限定されない。
【0079】
(バネ部材による分割バンドの押し出し)
本実施の形態では、未開封のキャップ1を開栓方向Xに回転させることで、上述したように先分断のブリッジ9(91、93)が破断するとともに、その先破断のブリッジ9(91、93)が破断してから後破断のブリッジ9(92、94)が破断するように設けられている。後破断のブリッジ9(92、94)が破断してスパウトaから取り外したキャップ本体2を、再度スパウトaに取り付けて閉じるようにネジ付けると、上述したようにスパウトa側の係止突起bと四つに切れた不正開封防止バンド3の内の上記長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12とが対応位置する。
【0080】
そして長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12の上記バネ部材15の受け板18が係止突起bのスパウト径方向外端部cに対応して、バネ部材15はその係止突起bによってスパウト径方向外方に向けて押し出される。即ち、バネ部材15は長分割バンド7の一部分であり、キャップ本体2に連続しているバネ部材15の受け板18がバンド周壁3aより中心側に位置し、斜め支柱17が撓むことなく傾斜した直線状となっているので、長分割バンド7が不正開封防止バンド3の径方向外方(スパウト径方向外方)に向けて張り出る状態となる。
図15参照
【0081】
一旦開封した後にキャップ1をスパウトaに取り付けても、上述したように長分割バンド7が外方に張り出る状態となるため、開封済みであることが目視にて簡単に確認できる。
【0082】
また張り出た長分割バンド7を押し込んだとしても、係止突起bに重なっているバネ部材15側からの復元力の作用によって長分割バンド7が押し出されてしまい、未破断の不正開封防止バンド3の状態に復元させることが不可能となる。よって開封済みであることが判断し易い形態を保つことができるものとなる。
【0083】
(ブリッジの高さと幅)
本実施の形態のキャップ1は上述した課題を解決することができるものであって、フレキシブルな容器などに設けられているスパウトaにこのキャップ1を取り付ける製品の製造時、即ち、キャッピング時には、不正開封防止バンド3の四つのブリッジ9(91、92、93、94)が破断せず、さらに、容器製品を取り扱う使用者(例えば購入者)が開封する場合のように、正規な開封操作で開栓方向Xに回したときには、全てのブリッジ9(91、92、93、94)が破断されるように設けられているものである。
【0084】
このようにキャッピング時に四つのブリッジ91~94に破断が生じず、開封に際して四つのブリッジ91~94が全て破断されるようにするために、本発明においては、四つのブリッジ91~94それぞれは、このブリッジ91~94の高さHがブリッジの幅Tより大としている。
【0085】
上記ブリッジ91~94の高さHは、このブリッジ91~94の上端面の位置から下端面の位置までの距離を指すものであり、例えば
図2と
図8に符号Hを用いて示されている。このブリッジ91~94の高さHとブリッジ91~94に加わる引っ張り力との向きで説明すれば、キャッピング時及び開封時に、不正開封防止バンド3の周方向に沿ってブリッジ9に引っ張り力が加わっており、この引っ張り力が加わる方向に直交して、かつキャップ高さ方向での前記距離を、ブリッジ91~94の高さHとしている。
【0086】
ブリッジ91~94の幅Tは、例えば不正開封防止バンド3を下方から見た状態を表現している
図5において、符号Tを用いて示されている。第一の径方向R1に対向する後破断の二つのブリッジ92、94の幅Tについて説明すれば、ブリッジ92、94の外側面(不正開封防止バンドの周方向に沿う曲面)の位置に接する接線と内側面(不正開封防止バンドの周方向に沿う曲面)の位置に接する接線とが、不正開封防止バンド3の径方向に離れている距離を指すものであり、引っ張り力が加わる方向(不正開封防止バンド3の周方向に沿った方向)に直交して、かつ不正開封防止バンド3の径方向に離れている距離を指すものとしている。
【0087】
第二の径方向R2に対向する先破断の二つのブリッジ91、93の幅Tについて説明すれば、ブリッジ91、93の外側面の位置に接する接線とブリッジ91、93の短分割バンド8の下流側端部13に対する境界の位置とが、不正開封防止バンド3の径方向に離れている距離を示すものであり、引っ張り力が加わる方向に直交して、かつ不正開封防止バンド3の径方向に離れている距離を指す。先破断のブリッジ91、93では、前記下流側端部13に向けて厚みが漸次小さくなる形状に成形されており、幅Tについては厚みが最小となる部分の距離を示すものとしている。
【0088】
(幅に対する高さの比率の相違)
本実施の形態のキャップ1では、先破断の二つのブリッジ91、93(第二の径方向R2に対向する位置にして配置のブリッジ9)の幅Tに対する高さHの比率と、後破断の二つのブリッジ92、94(第一の径方向R1で対向する位置にして配置のブリッジ9)の幅Tに対する高さHの比率とは相違していて、前記先破断のブリッジ91、93の幅Tに対する高さHの比率が、後破断のブリッジ92、94の幅Tに対する高さHの比率より大とされている。
【0089】
図示されているように、先破断のブリッジ91、93は、バネ部材15があるバンド下辺16と短分割バンド8の下流側端部13との間に位置していて、バネ部材15に近接する位置にあるブリッジであり、後破断のブリッジ92、94に比べて剪断力に抗することができるように形成されている。
【0090】
(幅に対する高さの比率の範囲)
また、本実施の形態のキャップ1において、キャッピング時にブリッジ9の破断が生じないとともに、開封時に全てのブリッジ9が破断するキャップ1を得るために、ブリッジ9の幅Tに対する高さHの良好な比率を求める検討を以下のように行なった。
【0091】
(1)上記検討に際し、四個取りの成形金型から成形したキャップと、現在流通しているキャップ(以下、流通品と表記する)とを用いた。
(2)これらのキャップを用いて閉栓(キャッピング)時と開栓(開封)時にブリッジ切れの評価(破断の有無)を行ない、
図16とする表1の閉栓時ブリッジ切れ評価結果と表2の開栓時ブリッジ切れ評価結果とに評価結果を示した。
(3)閉栓(キャッピング)は、東洋自動機株式会社製充填装置にて行った。その後、目視にてブリッジ切れの評価を行なった。
(4)開栓(開封)は、上記閉栓したものを、複数人の手で回して行なった。その後、目視にてブリッジ切れの評価を行なった。
【0092】
(検討に用いるキャップの成形金型)
(1)検討用のキャップを成形する上で、予め、四個取りの四つのキャビティ♯1、♯2、♯3、♯4が同一の成形金型を用意した。そして、上記比率に変化を持たせてブリッジ切れの評価をする検討用のキャップを成形するために、まず、現行品を成形できるキャビティ♯4を基準とし、その他のキャビティ(♯1~3)ではブリッジ成形箇所について以下の加工を施した。
(2)キャビティ♯1では、ブリッジ91、93の高さHが、基準キャビティ♯4にて成形されたキャップでのブリッジ91、93の高さHより0.06mm高くなるキャップを成形することを狙う加工を施した。
(3)キャビティ♯2では、ブリッジ91、92、93、94の高さHが、基準キャビティ♯4にて成形されたキャップでのブリッジ91、92、93、94の高さHより0.03mm高くなるキャップを成形することを狙う加工を施した。
(4)このように四個取りとして四つのキャビティを有する成形金型を製造し、この成形金型を用いて検討用のキャップを成形した。なお、キャビティ♯2で成形したキャップについては検討用としては使用しなかった。
(5)同じく検討用とした流通品は、上述した容器のスパウトaに取り付けることのできる不正開封防止機能を有したキャップである。そして、この流通品は、キャッピング時にはブリッジの部分が破断せず、開封に際してはブリッジが破断することを目指して製造されているものであり、不正開封防止バンドの周方向の四箇所にブリッジが配置されているキャップである。
なお、流通品は、本発明での不正開封防止バンド3におけるバネ部材に相当する部分は有していない。また、この検討に際して新たに成形したものではない。
【0093】
(閉栓時におけるブリッジ切れの評価)
四種のキャップを用いて上述したように東洋自動機株式会社製充填装置にてキャッピングを行ない、この四種のキャップにおける閉栓時のブリッジ切れの有無を評価し、ブリッジ切れの有無について表1(
図16)に示した。なお、表1と表2中、キャップ1、キャップ2、キャップ3、キャップ4は検討用の四種のキャップである。
【0094】
(表中のキャップ1)
表中のキャップ1は、ブリッジ91、93に相当する位置にあるブリッジの高さHが、基準キャビティ♯4におけるキャップのブリッジ91、93に相当する位置のブリッジの高さHより0.06mm高くなるキャップを成形することを目指して加工されたキャビティ♯1を用いており、このキャビティ♯1によって成形されたキャップである。
上述したようにブリッジ91、93は、第二の径方向R2に対向する位置のブリッジである。よって、このブリッジ91、93に相当する位置にあるブリッジも、第二の径方向R2に対向する位置にあり、ブリッジ91に相当するブリッジについて(1)の符号を付け、ブリッジ93に相当するブリッジについて(3)の符号を付けて表した。
同じく、ブリッジ92、94は、第一の径方向R1に対向する位置のブリッジであるので、このブリッジ92、94に相当するブリッジも、第一の径方向R1に対向する位置にあり、ブリッジ92に相当するブリッジについて(2)の符号を付け、ブリッジ94に相当するブリッジについて(4)の符号を付けて表した。
【0095】
(表中のキャップ2)
表中のキャップ2は、ブリッジ91、92、93、94に相当する位置にあるブリッジの高さHが、基準キャビティ♯4におけるキャップのブリッジ91~94に相当する位置のブリッジの高さHより0.03mm高くなるキャップを成形することを目指して加工されたキャビティ♯3を用いており、このキャビティ♯3にて成形されたキャップである。
【0096】
(表中のキャップ3、キャップ4)
表中のキャップ3は、基準としたキャップであり、表中のキャップ4は、上述の流通品である。
【0097】
(閉栓時-評価結果)
閉栓時におけるブリッジ切れについては、表1に示されているようにキャビティ♯1から成形したキャップ1においては全ブリッジが破断しなかった。また、後破断ブリッジ(第一の径方向R1)に対応するブリッジ(2)、(4)では、検討用のキャップ1~4の全てで破断しなかった。
よって、閉栓時のブリッジ切れの防止に関しては、キャップ1、4が良好であると判断できる。
【0098】
(開栓時におけるブリッジ切れの評価)
四種のキャップを用いてキャッピングを行なわれた容器のキャップに対し、上述したように複数人の手で回して開栓した。その後、目視にてブリッジ切れの評価をし、ブリッジ切れの有無について表2(
図16)に示した。
【0099】
(開栓時-評価結果)
開栓時におけるブリッジ切れについては、表2に示されているようにキャップ1は、全ブリッジが破断した。そして、キャップ2、3においては、ブリッジ(2)のみが破断しない事象が発生した。また、キャップ4は全てのブリッジそれぞれにおいて、破断しない事象が多く確認された。
この開栓時の評価結果から、開栓時のブリッジ切れに関しては、キャップ1は全ブリッジが破断して良好であると判断できる。また、キャップ4(流通品)については、キャッピングに際してブリッジが破断しない点に重きを置いて成形されていると判断できる。
【0100】
以上から閉栓時と開栓時とのブリッジ切れの評価結果においてキャップ1が良好である判断できる。そのため、キャビティ♯1の条件からキャップを成形することで、閉栓時にブリッジ切れが発生せず開栓時には全てのブリッジが破断する良好なキャップが得られると判断できる。
【0101】
通常、一つの成形金型から合成樹脂製品を連続的に数多く成形する場合、成形品には僅かながらも成形誤差を有して成形が行なわれる。そして、上記四個取りの成形金型を用いて成形する合成樹脂製のこのキャップにおいても、成形ごとに成形誤差を有した状態で成形され、ブリッジ(1)同士、ブリッジ(2)同士、ブリッジ(3)同士、ブリッジ(4)同士の幅、高さは全く同一となるものではなく、僅かながらも成形誤差がある。そのため、ブリッジ破断(閉栓)とブリッジ非破断(開栓)の両方で良好とされたキャップ1において、ブリッジ(1)、(2)、(3)、(4)の幅、高さの値から、幅に対する高さの比率に良好な範囲を導き出すことができる。
【0102】
そこで、次にキャビティ♯1により成形するキャップ1のブリッジ(1)、(2)、(3)、(4)の幅と高さを測定し、幅に対する高さの比率の良好な範囲を検討した。併せて、キャビティ♯3とキャビティ♯4とから成形するキャップ2、3についても、ブリッ
ジ(1)、(2)、(3)、(4)の幅と高さを測定し、幅に対する高さの比率の範囲を導き出した。その結果を以下に説明する。
【0103】
(検討キャップに対するブリッジの幅・高さの測定)
キャビティ♯1、♯3、♯4から成形したキャップ1、2、3のブリッジ(1)、(2)、(3)、(4)の幅と高さを測定し、得られた値の平均(幅、高さAve)、最大(幅、高さMax)、最小(幅、高さMin)を、
図17とする表3幅、高さAve、表4幅、高さMax、表5幅、高さMinにて示し、併せて、幅に対する高さの比率の平均、最大、最小も表3~表5に示した。
長さ寸法は、株式会社キーエンス製 画像寸法測定器KEYENCE IM7030を用い、投下光源の条件の下で測定した。試料数(n数)は10である。
【0104】
(散布図)
測定された値から、キャップ1、キャップ2、キャップ3のブリッジ(1)、(3)における幅に対する高さの比率(高さ/幅)と、キャップ1、キャップ2、キャップ3のブリッジ(1)、(3)の閉栓時切れ率(%)を、散布図にして相関の有無を確認した。その結果、
図18で表す散布図に示されているように、閉栓時の破断率とブリッジ(1)、(3)の比率(高さ/幅)で相関があることが認められた。
【0105】
そして、上記キャップ1のブリッジ(1)、(3)での比率(高さ/幅)の範囲は、上記相関上での極めて良好な破断率(%)の範囲に収まることを確認できた。
【0106】
閉栓時に破断しないブリッジの比率(高さ/幅)は、測定結果に基づいて、ブリッジ(1)、(3)について1.11~1.30の範囲が良好と判断できる。また、ブリッジ(2)、(4)の比率(高さ/幅)については、キャップ1の実績に基づいて、1.01~1.22の範囲が良好と判断できる。
【0107】
以上から本実施の形態で示したように、四つのブリッジ9(91、92、93、94)それぞれは、ブリッジの高さHがブリッジの幅Tより大とすることが良好である。
さらに、第二の径方向R2で対向する位置の先破断のブリッジ91、93におけるブリッジの幅Tに対するブリッジの高さHの比率が、第一の径方向R1で対向する位置の後破断のブリッジ92、94におけるブリッジの幅Tに対するブリッジの高さHの比率より大であることが良好である。
なお、先破断のブリッジと後破断のブリッジとの比率の範囲として、後破断のブリッジ92、94では1.01~1.22、先破断のブリッジ91、93では1.11~1.30を挙げたが、上述したように、先破断のブリッジ91、93の比率(高さ/幅)が、後破断のブリッジ92、94の比率(高さ/幅)より大きくなるようにする。
【0108】
(剪断)
本発明の実施の形態でのキャップ1にあっては、上述したように先破断のブリッジ91、93の幅Tに対する高さHの比率が、後破断のブリッジ92、94の幅Tに対する高さHの比率より大とされている。そして、先破断のブリッジ91、93は、長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12にあるバンド下辺16と短分割バンド8の開栓方向Xの下流側端部13との間であって近傍に斜め支柱17が存在する位置にあるブリッジであり、後破断のブリッジ92、94に比べて剪断力(キャップ高さ方向に沿う力)に抗する効果の高いブリッジとして成形されているものである。
【0109】
ここで、先破断のブリッジ91、93が、キャッピング(閉栓)に際して加わる剪断力に抗するブリッジとして成形されていることを分かり易く説明するために、バンド下辺16が存在する上記長分割バンド7の開栓方向Xの上流側端部12を、長分割バンド7の閉栓方向Yの下流側端部12として表現を言い換える(符号12として示される部分自体は変わらない)。また、上記短分割バンド8の開栓方向Xの下流側端部13を、短分割バンド8の閉栓方向Yの上流側端部13と表現を言い換える(同様に符号13として示される部分自体は変わらない)。
【0110】
図5や
図7に示すように長分割バンド7の閉栓方向Yの下流側端部12であるバンド下辺16は、連結部6、斜め支柱17を介してキャップ本体2に上下方向にして連結されている部分であり(
図12参照)、バンド下辺16はキャップ本体2に上方から直接的に支持された部分である。また、短分割バンド8の閉栓方向Yの上流側端部13の内側には係止爪10が配置されている。そして、図示されているようにブリッジ91、93は、キャップ本体2に連続するバネ部材15に近接する配置としているとともに、前記係止爪10に対して近接する配置としている。
【0111】
キャッピングにおいて、短分割バンド8の係止爪10が係止突起bを乗り越えるときに係止爪10の移動に抵抗が生じ、係止爪10が係止突起bに乗った分割バンド8は閉栓方向Yと下方とに向けて移動がし難い状態となる。
このとき、
図19に示すように係止突起b側からの反作用として係止爪10に対して開栓方向Xに向けた力F1と上方に向けた力F2が加わって、分割バンド8の閉栓方向Yの上流側端部13が下方へ移動し難くなる。
【0112】
一方、上記短分割バンド8に隣り合う長分割バンド7での閉栓方向Yの下流側端部12であるバンド下辺16には、閉栓の回転をしながら降下するキャップ本体2から連結部6とバネ部材15(斜め支柱17)を介して下向きの力F3が加わっていて、キャップ本体2と共に閉栓方向Yの回転をしながら下方へ移動をする動きとなる。そのため、隣り合う短分割バンド8の上流側端部13と長分割バンド7の下流側端部12(バンド下辺16)との位置が上下方向にズレる。
【0113】
上記上向きの力F2によって下方へ移動し難い短分割バンド8の上流側端部13と、下向きの力F3が作用して下方へ移動する長分割バンド7の下流側端部12との位置が上下方向にズレることから、上記先破断のブリッジ91、93にはキャップ高さ方向に沿う力である剪断力が加わるようになる。
しかしながら、上述したように先破断のブリッジ91、93は、ブリッジの幅Tに対するブリッジの高さHの比率が1より大とされて、キャッピング時に剪断力に抗してブリッジ91、93が破断することがないように設けられている。
【0114】
上記後破断のブリッジ92、94についてもキャッピング時には剪断力が加わる。即ち、キャッピング時に長分割バンド7の係止爪10が係止突起bを乗り越えるときに、開栓方向Xに向けた力F1と上方に向けた力F2が加わり、短分割バンド8の係止爪10が係止突起bを乗り越えるときに、開栓方向Xに向けた力F1と上方に向けた力F2が加わる。そして、それぞれ上向きの力F2が加わるタイミングのズレることで、後剪断のブリッジ92、94を間にして相対する長分割バンド7の端部(開栓方向Xの下流側端部11)と短分割バンド8の端部(開栓方向Xの上流側端部14)とも、やはり位置が上下方向にズレる。
【0115】
そして、後破断のブリッジ92、94も、ブリッジの幅Tに対するブリッジの高さHの比率が1より大とされて、キャッピング時に剪断力に抗してブリッジ92、94が破断することがないように設けられている。
【0116】
キャップ本体2から連結部6とバネ部材15を介して支持されたバンド下辺16に連続した配置とされて、このバンド下辺16がキャッピング時にキャップ本体2に押される状態で下方に移動する。そして、上記先破断のブリッジ91、93のキャッピング時の上下方向のズレは、後破断のブリッジ92、94での上下方向のズレより大きくなる可能性が高い。
しかし、先破断のブリッジ91、93はブリッジの幅Tに対するブリッジの高さHの比率を、後破断のブリッジ92、94の比率より大きくして、キャッピング時に下向きの力F3が加わるバンド下辺16に連続する位置の前記ブリッジ91、93を、剪断力に抗する性能を高めているので、キャッピング時に先破断のブリッジ91、93が破断することはない。
よって、本実施の形態のキャップ1は、キャッピング時に四つのブリッジ9に分断が生じず、開封時の操作で四つ全てのブリッジ9が適正に分断されるキャップとなり、不正開封防止に頗る高い効果を備えるものである。
【符号の説明】
【0117】
1…キャップ
2…キャップ本体
3…不正開封防止バンド
6…連結部
7…長分割バンド
8…短分割バンド
9…ブリッジ
91…先破断のブリッジ(第二の径方向に配置)
92…後破断のブリッジ(第一の径方向に配置)
93…先破断のブリッジ(第二の径方向に配置)
94…後破断のブリッジ(第一の径方向に配置)
10…係止爪
11…開栓方向の下流側端部(長分割バンド)
12…開栓方向の上流側端部(長分割バンド)
13…開栓方向の下流側端部(短分割バンド)
14…開栓方向の上流側端部(短分割バンド)
15…バネ部材
16…バンド下辺
17…斜め支柱
18…受け板
X…開栓方向
Y…閉栓方向
A…ズレ量
a…スパウト
b…係止突起
R1…第一の径方向(後破断のブリッジ92、94配置)
R2…第二の径方向(先破断のブリッジ91、93配置)
T…ブリッジの幅
H…ブリッジの高さ
F1…係止突起側からの開栓方向に向かう力
F2…係止突起側からの上方に向かう力
F3…キャップ本体から下方に向けて加わる力