(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184733
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】交流電界生成を使用した癌腫治療のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
A61N 1/32 20060101AFI20231221BHJP
A61N 1/05 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
A61N1/32
A61N1/05
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023191834
(22)【出願日】2023-11-09
(62)【分割の表示】P 2021501284の分割
【原出願日】2019-07-17
(31)【優先権主張番号】62/699,146
(32)【優先日】2018-07-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514247827
【氏名又は名称】ディグニティー ヘルス
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(72)【発明者】
【氏名】ヘンドリックス、ベンジャミン
(72)【発明者】
【氏名】スミス、クリス
(57)【要約】
【課題】硬膜下に移植された交流電界生成装置を使用する脳癌腫の治療のためのシステム及び方法。
【解決手段】各々が患者の脳の硬膜下に移植される複数の硬膜下電極を含む電極アレイと、各々が患者の脳内に移植される複数の深部刺激電極と、を含み、複数の硬膜下電極及び複数の深部刺激電極を通じて脳の組織に交流電界を送達する、電極アレイと、電極アレイと通信するよう動作可能であり、電極アレイに送信される交流電界を表す波形を生成するように動作可能である、コントローラモジュールと、を含む、交流電界生成装置と、コントローラモジュールからフィードバックを受信し、コントローラモジュールにコマンドを送信するように動作可能である外部コンピュータと、を備え、コントローラモジュールは、電極アレイからのフィードバックを組み込み、フィードバックを外部コンピュータに通信するように動作可能である、脳癌腫の治療のためのシステム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々が患者の脳の硬膜下に移植される複数の硬膜下電極を含む電極アレイと、
各々が前記患者の前記脳内に移植される複数の深部刺激電極と、
を含み、前記複数の硬膜下電極及び前記複数の深部刺激電極を通じて前記脳の組織に交流電界を送達する、電極アレイと、
前記電極アレイと通信するよう動作可能であり、前記電極アレイに送信される前記交流電界を表す波形を生成するように動作可能である、コントローラモジュールと、
を含む、交流電界生成装置と、
前記コントローラモジュールからフィードバックを受信するように動作可能であり、前記コントローラモジュールにコマンドを送信するように動作可能である、外部コンピュータと、
を備え、
前記コントローラモジュールは、前記電極アレイからのフィードバックを組み込み、前記フィードバックを前記外部コンピュータに通信するように動作可能である、
脳癌腫の治療のためのシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月17日に出願された米国仮特許出願第62/699,146号からの利益を主張するPCT出願であり、その全体が参照により組み込まれる。
【0002】
本開示は、概して癌腫の治療に関し、具体的には電界生成を介した脳癌腫の治療に関する。
【背景技術】
【0003】
交流電界(AEF)療法は、脳癌腫瘍(特に膠芽細胞腫)を治療するために、低強度電界を使用する電磁界療法の一種である。従来の癌腫治療としては、化学療法及び放射線が挙げられ、これらは、治療関連毒性、及び高い腫瘍再発率と関連している。AEFは、交流電界を使用して癌細胞内の細胞分裂を破壊し、それによって細胞の複製を抑制し、アポトーシス(細胞死)を開始する。しかしながら、いくつかの局部AEF治療方法は、皮膚の炎症及び発疹だけでなく、剃った頭を維持するという患者の要件、ならびに身体活動の制限とも関連する。
【発明の概要】
【0004】
とりわけ、これらの所見を念頭に置いて、本開示の様々な態様が想定され、かつ開発された。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】本システムの電極アレイ及びコントローラモジュールを示す図であり、電極アレイは、脳の中に移植され、ワイヤを有するコントローラモジュールは、その電極アレイに動作可能に接続されている。
【
図2】患者の身体に関連する、
図1のシステムの説明図である。
【
図3】
図1のシステムの電極アレイの配設が、脳の癌性領域をどのように取り囲み得るかを示す説明図である。
【
図4】
図1のシステムのコントローラモジュール、外部コンピュータ、及び電極アレイのハードウエアがどのように連携するかを示す簡略化したブロック図である。
【
図5】
図1のシステムを使用する、患者のための治療及び最適化のプロセスを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0006】
対応する参照文字は、図面の図の中の対応する要素を示す。図中で使用される見出しは、特許請求の範囲の範囲を限定しない。
【0007】
交流電界の適用は、治療に関連する毒性を減らす可能性があり、急速に研究が進んでいる癌腫治療の1つの種類である。交流電界の適用では、交流電界が、脳の癌性領域に印加され、それによって、急速に分裂する癌細胞の細胞分裂を阻害する。交流電界治療を患者に施すために、対象治療位置において細胞分裂を阻害し、及び/又は癌細胞のアポトーシスを開始するために、体内の所望の位置において最適化された強度の交流電界を生成させるための、本明細書では「本システム」と称される、交流電界生成装置のためのシステム及び方法が、本明細書に開示される。
【0008】
本システムは、他の態様の中でも、硬膜下移植装置のシステム及び方法を提供しており、硬膜下に移植された硬膜下電極、及び脳組織の深部に移植された深部刺激電極のアレイの使用を通じて、対象交流電界が、急速に分裂する癌細胞の治療のために生成される。一態様では、刺激電極のアレイは、コントローラモジュールと動作可能に通信し、そのコントローラモジュールは、交流電界を作り出すための波形を生成し、刺激電極のアレイからフィードバックを受信する。図面を参照すると、本システムの実施形態が、概して、
図1~
図5中の100として示されている。
【0009】
図1及び
図2を参照すると、本システム100のいくつかの実施形態では、刺激電極103及び104を含む主アレイ101が、患者の脳の硬膜の下に配置されるように構成される。この主アレイ101は、ワイヤアレイ110を介して、コントローラモジュール120と動作可能に通信する。このコントローラモジュール120は、交流電界を生成させ、主アレイ101からフィードバックを受信し、かつ動作パラメータの受信だけでなく交流電界の強度に関連する動作データのエクスポートのためにも外部コンピュータ200と通信するように動作可能である。
【0010】
主アレイ101は、複数の硬膜下電極103だけでなく、複数の深部刺激電極104も含んでもよく、その結果、硬膜下電極103及び深部刺激電極104は、脳組織に印加される交流電界を生成するように動作可能である。一態様では、交流電界は、交流電界と接触する癌性細胞が分裂するのを阻害するように、適切な強度及び分布のために構成される。いくつかの実施形態では、1つ以上のワイヤ102は、各々、それぞれの遠位端を画定し、それぞれの硬膜下電極103から延在し、導電性接触部で終端する。1つの可能性のある適用では、複数の硬膜下電極103の各々は、脳の表面上に配置される。いくつかの実施形態では、硬膜下電極103は、硬膜と患者の脳との間に適合するほど十分薄くすることができ、一部の実施形態では、ゲルによって取り囲まれてもよい。各硬膜下電極103は、近位面105及び遠位面(図示せず)を画定し、近位面は、各ワイヤ102の遠位端と動作可能に関連付けられ、そして遠位面は、脳の外側に適用される変換接触部を含む。いくつかの実施形態では、深部刺激電極104は、導電性材料のセグメント化された細片を含む細長いロッド形状部材を有する。深部刺激電極104は、脳の中の深部に移植されて、交流電界の脳組織への浸透を容易にする。いくつかの実施形態では、深部刺激電極104の各々は、遠位端及び近位端を画定し、深部刺激電極104の各々の遠位端は、脳組織の中に移植され、深部刺激電極104の各々の近位端は、それぞれのワイヤ102と動作可能に関連付けられる。いくつかの実施形態では、深部刺激電極104は、主アレイ101によって脳内の様々な位置に印加される交流電界の態様を測定し、交流電界の測定された態様をコントローラモジュール120に通信して戻すように動作可能である。一態様では、各硬膜下電極103及び深部刺激電極104は、ワイヤ102を通じて電流波形を組織に印加するように動作可能である。多数のソースから波形を脳に印加することによって、交流電界が生成する。
【0011】
脳の癌性領域に対する硬膜下電極103及び深部刺激電極104の配置の1つの視覚的な例が、
図3に示される。硬膜下電極103及び深部刺激電極104の最適な配置及び数は、患者間で変化し得る。したがって、様々な撮像プラットフォームを使用し、脳をスキャンし、電極103及び104の最適な配置、種類、及び数量を決定して、アレイ101を一括して作り出してもよい。
【0012】
図4を参照すると、いくつかの実施形態では、コントローラモジュール120は、波形生成器124及び処理ユニット122を含み、波形生成器124は、1つ以上のワイヤ110によって、アレイ101と動作可能に通信する。コントローラモジュール120の波形生成器124は、処理ユニット122から一組の動作パラメータを受信し、波形を出力するように動作可能であり、その結果、波形がアレイ101全体にわたって分布されると、交流電界が、脳組織に印加される。マイクロプロセッサ又はマイクロコントローラなどのコントローラモジュール120の処理ユニット122は、波形生成器124に対して一組の動作パラメータを出力するように動作可能である。処理ユニット122はまた、交流電界の測定された態様に関するアレイ101からの入力を受信し、その入力を外部コンピュータ200に通信し、その一組の動作パラメータを更新し、そして更新された一組の動作パラメータを波形生成器124に通信するようにも動作可能である。
【0013】
TTF療法のための実証的な研究は、交流電界を生成させるには、波形生成器124により生成される200kHzの標準波形を推奨する。理想的な波形変調及び強度パラメータが、外部コンピュータ200によって決定され、処理ユニット122を通じて波形生成器124に送達される。
【0014】
コントローラモジュール120はまた、コントローラモジュール120の処理ユニット122と、外部コンピュータ200との間の通信を可能にする無線通信モジュール126も含むことができる。このようにして、コントローラモジュール120の処理ユニット122は、外部コンピュータ200からソフトウェア更新及び命令を無線で受信するだけでなく、検討及びシステム最適化のために、交流電界の測定された態様を外部コンピュータ200に伝送するようにも動作可能である。コントローラモジュール120はまた、埋め込み可能なバッテリー(図示せず)又は他の電源を含むこともできる。
【0015】
本システム100を使用した、癌腫の治療のための方法が、
図5に例示される。ステップ300において、疾患が発見され、ステップ302において、1つ以上の頭蓋マッピング技法を採用して、電極アレイ101のための最適な配置及び配設を決定する。ステップ304において、電極アレイ101、ワイヤ110、及びコントローラモジュール120は、手術によって取り付けられ、又は移植される。戻って
図2を参照すると、電極アレイ101は、患者の頭蓋内に移植され、硬膜下電極103は、脳の表面上の硬膜下に配置され、深部刺激電極104は、脳の中の深部に移植される。コントローラモジュール120は、手術によって、鎖骨下又は腹部内に移植又は取り付けられてもよい。他の場合では、コントローラモジュール120は、患者の解剖学的構造に応じて、身体の外側に取り付けられてもよい。
【0016】
戻って
図5を参照すると、電極アレイ101、ワイヤ102、及び制御モジュール120が、取り付けられ、又は移植されると、ステップ306において、電極アレイ101によって生成された交流電界は、パラメータの初期の組、ならびに患者の脳の上部又は内部の各硬膜下電極103及び深部刺激電極104の既知の位置を使用して最適化される。最適化プロセスは、外部コンピュータ200を使用して実施され、その外部コンピュータは、シミュレーション環境アプリケーションを実行して、コントローラモジュール120に対する最適な波形動作パラメータを決定する。このシミュレーション環境アプリケーションは、プログラム又はアプリケーションとして具現化されてもよく、また外部コンピュータ200上にインストールされ、かつ動作されてもよい。アレイ101からのフィードバック情報が利用可能である場合、そのフィードバックは、最適化ステップ306に組み込まれる。ステップ308において、最適な波形動作パラメータが、コントローラモジュール120に通信され、次いで、ステップ310において、最適化された交流電界は、アレイ101によって患者の脳に印加される。交流電界が送達されると、深部刺激電極104のうちの1つ以上が、交流電界の態様を測定し、このデータをコントローラモジュール120に通信する。コントローラモジュール120は、ステップ312において、その情報を記録し、及び/又は外部コンピュータ200にその情報を伝送する。このようにして、最適化プロセスは、交流電界がその最も有効な印加強度になるまで、交流電界の測定された態様に関するフィードバック、ならびに各硬膜下電極103及び深部刺激電極104の正確な位置を使用して、反復して繰り返すことができる。
【0017】
本システム100のいくつかの実施形態では、外部コンピュータ200を使用した最適化プロセスで使用されるシミュレーション環境は、入力として、硬膜下電極103及び深部刺激電極104の正確な位置を取得するだけでなく、深部刺激電極104によって測定された交流電界強度に関する情報を含むように動作可能である。さらに、シミュレーション環境アプリケーションは、ユーザが、任意の所与の電極103又は104に送達された波形の変化によって、脳に送達された交流電界の変化を観察するのを可能にするように動作可能である。送達された波形の変化がシミュレートされると、シミュレーション環境アプリケーションは、送達された波形、電極103及び104の正確な位置、ならびに/又は患者の脳の固有の解剖学的構造の各変化の結果として、脳全体にわたる交流電界強度の分布を計算及び表示することによって、交流電界生成を最適化するように動作可能である。これにより、ユーザが電極103及び104の電極刺激パラメータの最良の構成を決定して、対象領域での交流電界を最適化することを可能にする。次いで、リアルタイムデータが脳内の深部刺激電極104のうちの1つ以上によって獲得される間に、所与のパラメータは、患者内で初期化及び変更されて、適切な交流電界強度が確実に達成され得る。
【0018】
上記から当然のことながら、特定の実施形態が例示及び記載されている一方で、当業者にとって明らかなように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、それらの実施形態に対して様々な修正を行うことができる。そのような変更及び修正は、本明細書に添付された特許請求の範囲に定義された本発明の範囲及び教示の範囲内である。