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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023184780
(43)【公開日】2023-12-28
(54)【発明の名称】信号処理装置及び多重放音装置
(51)【国際特許分類】
   H04R 3/00 20060101AFI20231221BHJP
   H04R 3/12 20060101ALI20231221BHJP
【FI】
H04R3/00 310
H04R3/12 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023193232
(22)【出願日】2023-11-13
(62)【分割の表示】P 2018109686の分割
【原出願日】2018-06-07
(71)【出願人】
【識別番号】517198436
【氏名又は名称】鈴木 真吾
(74)【代理人】
【識別番号】110000752
【氏名又は名称】弁理士法人朝日特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】米谷 淳一
(57)【要約】
【課題】アナログ信号の伝送路上に直流域成分を除去する回路が含まれていても、直流域
成分の除去されない原波形に忠実な波形を再現する手段を提供する。
【解決手段】第1生成部13は、アナログ信号源1から入力された音の波形を示す音信号
S0をいずれも標本化された時刻が連続しない標本値列に分割して、それぞれが孤立波状
態となった複数のアナログ信号である音信号S31、S32、S33を生成する。第2生
成部14は音信号S31、S32、S33に増幅処理を施した音信号S41、S42、S
43を生成する。加算器215は音信号S41、S42、S43を加算して音信号S5を
生成する。放音装置22は音信号S5が示す音を放音する。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原波形を示す第1アナログ信号をいずれも標本化された時刻が連続しない標本値列に分
割して、それぞれが孤立波状態となった複数の第2アナログ信号を生成する第1生成部
を備える信号処理装置。
【請求項2】
前記複数の第2アナログ信号は、前記第1アナログ信号の複数の標本値を所定の順番で
複数に割り振った標本値列である
請求項1に記載の信号処理装置。
【請求項3】
前記第1生成部は複数のD/A変換部を備え、
前記第1アナログ信号の複数の標本値を示すデジタル信号を、前記複数のD/A変換部
から順次選択したD/A変換部によりアナログ信号に変換して、前記複数の第2アナログ
信号を生成する
請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項4】
前記第1生成部は、
前記第1アナログ信号の複数の標本値を示す第1デジタル信号から、いずれも標本化さ
れた時刻が連続しない標本値が並ぶ複数の標本値列を示す複数の第2デジタル信号を生成
するデジタル信号生成部と、
前記デジタル信号生成部により生成された複数の第2デジタル信号の各々をアナログ信
号に変換して前記複数の第2アナログ信号を生成する複数のD/A変換部と
を備える請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項5】
前記第1生成部は、
各々がアナログ信号の通過と遮断を切り替える複数のスイッチ部であって、前記第1ア
ナログ信号がそれぞれ入力される複数のスイッチ部を備え、
前記第1アナログ信号の標本値の標本化周期ごとにアナログ信号を通過させるスイッチ
部を順番に切り替えて前記複数の第2アナログ信号を生成する
請求項1又は2に記載の信号処理装置。
【請求項6】
前記第1生成部により生成された複数の第2アナログ信号に応じた波形を示す第3アナ
ログ信号をそれぞれ生成する複数の第2生成部と、
前記複数の第2生成部により生成された複数の前記第3アナログ信号を加算して放音装
置に出力する加算出力部と
を備える
請求項1から5のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項7】
前記第1生成部により生成された複数の第2アナログ信号に応じた波形を示す第3アナ
ログ信号をそれぞれ生成する複数の第2生成部であって、各々が生成した前記第3アナロ
グ信号をそれぞれ別の放音装置に出力する複数の第2生成部を備える
請求項1から5のいずれか1項に記載の信号処理装置。
【請求項8】
請求項7に記載の信号処理装置と、
前記複数の第2生成部の各々に対応して設けられ、対応する第2生成部から出力されて
きた前記第3アナログ信号が示す音を放音する複数の放音装置と
を備える多重放音装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、信号処理装置及び多重放音装置に関する。
【背景技術】
【0002】
音の波形を示すアナログ信号に対し増幅等の処理が施される際、伝送路上で温度変動等
に起因する原波形にはなかった直流域成分がアナログ信号に付加される場合がある。その
ような直流域成分の付加されたアナログ信号が、回路部品やスピーカ等の機器に入力され
ると、過大な電流が流れ、機器が故障する等の不都合が生じる危険性がある。
【0003】
そのような不都合を回避するために、アナログ信号から直流域成分を除去することが広
く行われている。例えば、特許文献1には、オーディオ用パワーアンプにおいて、ローパ
スフィルタを含む回路によりアナログ信号から直流域成分を抽出し、PWM変調部からの
出力信号に基づいてオンオフ制御されるゲート部に所定の電圧を供給する両極電源部に抽
出した直流域成分を与え、出力されるアナログ信号の直流域成分が小さくなるように両極
電源部のマイナス側の電源電圧を制御する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004―88245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
音の波形を示すアナログ信号に増幅等の処理を施す伝送路上でアナログ信号から直流域
成分を除去すると、その除去に用いたフィルタの過渡応答特性によって、原信号にはなか
った振動が追加され、信号を変形させず忠実に増幅するという増幅器本来の目的から離れ
てしまう。
【0006】
そこで、本発明は、アナログ信号の伝送路上に直流域成分を除去する回路が含まれてい
ても、直流域成分が除去されない原波形に忠実な波形を再現する手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、原波形を示す第1アナログ信号をいずれも
標本化された時刻が連続しない標本値列に分割して、それぞれが孤立波状態となった複数
の第2アナログ信号を生成する第1生成部を備える信号処理装置を提供する。
【0008】
本発明において、前記複数の第2アナログ信号は、前記第1アナログ信号の複数の標本
値を所定の順番で複数に割り振った標本値列であってもよい。
【0009】
また、本発明において、前記第1生成部は複数のD/A変換部を備え、前記第1アナロ
グ信号の複数の標本値を示すデジタル信号を、前記複数のD/A変換部から順次選択した
D/A変換部によりアナログ信号に変換して、前記複数の第2アナログ信号を生成しても
よい。
【0010】
また、本発明において、前記第1生成部は、前記第1アナログ信号の複数の標本値を示
す第1デジタル信号から、いずれも標本化された時刻が連続しない標本値が並ぶ複数の標
本値列を示す複数の第2デジタル信号を生成するデジタル信号生成部と、前記デジタル信
号生成部により生成された複数の第2デジタル信号の各々をアナログ信号に変換して前記
複数の第2アナログ信号を生成する複数のD/A変換部とを備えてもよい。
【0011】
また、本発明において、前記第1生成部は、各々がアナログ信号の通過と遮断を切り替
える複数のスイッチ部であって、前記第1アナログ信号がそれぞれ入力される複数のスイ
ッチ部を備え、前記第1アナログ信号の標本値の標本化周期ごとにアナログ信号を通過さ
せるスイッチ部を順番に切り替えて前記複数の第2アナログ信号を生成してもよい。
【0012】
また、本発明において、前記第1生成部により生成された複数の第2アナログ信号に応
じた波形を示す第3アナログ信号をそれぞれ生成する複数の第2生成部と、前記複数の第
2生成部により生成された複数の前記第3アナログ信号を加算して放音装置に出力する加
算出力部とを備えてもよい。
【0013】
また、本発明において、前記第1生成部により生成された複数の第2アナログ信号に応
じた波形を示す第3アナログ信号をそれぞれ生成する複数の第2生成部であって、各々が
生成した前記第3アナログ信号をそれぞれ別の放音装置に出力する複数の第2生成部を備
えてもよい。
【0014】
また、本発明は、上記の信号処理装置と、前記複数の第2生成部の各々に対応して設け
られ、対応する第2生成部から出力されてきた前記第3アナログ信号が示す音を放音する
複数の放音装置とを備える多重放音装置を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、アナログ信号の伝送路上に直流域成分を除去する回路が含まれていて
も、その伝送路上を伝送される孤立波化した複数のアナログ信号を最終的に合成すること
により、直流域成分の除去されない波形が再現される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】従来技術に係る音響装置の構成を示した図。
図2】音信号に含まれる直流域成分と交流成分を示したグラフ。
図3】従来技術に係る音響装置においてアンプが増幅した音信号(直流域成分の除去前)を示したグラフ。
図4】従来技術に係る音響装置においてアンプが増幅した音信号(直流域成分の除去後)を示したグラフ。
図5】本発明の一実施形態に係る音響装置の構成を示した図。
図6】本発明の一実施形態に係る音響装置においてデジタル信号に変換された音信号を示したグラフ。
図7】本発明の一実施形態に係る音響装置においてアナログ信号に変換された音信号を示したグラフ。
図8】本発明の一実施形態に係る音響装置においてアンプが増幅した音信号を示したグラフ。
図9】本発明の一実施形態に係る音響装置において加算器が加算した後の音信号を示したグラフ。
図10】本発明の一実施形態に係る音響装置において用いられるイネーブル信号の組み合わせパターンの遷移規則を示した図。
図11】本発明の一実施形態に係る音響装置が行う処理のフローを示した図。
図12】本発明の一変形例に係る音響装置の構成を示した図。
図13】本発明の一変形例に係る音響装置の外観を例示した図。
図14】本発明の一変形例に係る音響装置の構成を示した図。
図15】本発明の一変形例に係る音響装置の構成を示した図。
図16】本発明の一変形例に係る音響装置の構成を示した図。
図17】本発明の一変形例に係る音響装置の構成を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る信号処理装置を備える音響装置を一実施形態として説明する。本実
施形態に係る音響装置は、入力されたアナログの音信号に増幅処理を施した後、当該音信
号が示す音を放音する装置である。
【0018】
[従来技術]
本発明の一実施形態に係る音響装置を説明する前に、対比のため、従来技術に係る音響
装置を説明する。
【0019】
図1は、従来技術に係る音響装置9の構成を示した図である。音響装置9は、外部のア
ナログ信号源1から入力された音信号(音の波形を示す信号)に増幅処理を施し、増幅し
た音信号が示す音を放音する装置である。アナログ信号源1は、例えばマイクロフォンや
エレキギターなどの、アナログの音信号S0(本発明の「第1アナログ信号」の一例)を
発生させる装置である。
【0020】
以下の説明において参照する図面では、便宜上、音信号S0は正弦波に一定の直流域成
分が付加された音信号であるものとするが、音信号S0の波形はこれに限られず、様々に
変化し得る。
【0021】
音響装置9は、アナログ信号源1から入力された音信号S0を増幅し音信号S9を生成
する信号処理装置91と、音信号S9が示す音を放音する放音装置22を備える。信号処
理装置91の入力端P8はアナログ信号源1の出力端と接続されており、信号処理装置9
1の出力端P9は放音装置22の入力端と接続されている。すなわち、信号処理装置91
はアナログ信号源1から放音装置22に向かう音信号の伝送路を形成する。なお、本実施
形態において「接続」とは電気的な接続をいう。
【0022】
信号処理装置91はアンプ214-9を備える。アンプ214-9は、アナログ信号源
1から入力された音信号S0を増幅する機能に加え、増幅した音信号に含まれる直流域成
分を除去する機能を備えている。
【0023】
アンプ214-9が備える直流域成分を除去する機能は、例えばコンデンサ(キャパシ
タ)、トランス等を用いた回路によって実現されるが、それらに限られない。
【0024】
図2は、音信号S0に含まれる直流域成分と交流成分を示したグラフである。なお、図
2及び後述の説明において参照する図3図4図6図9のグラフの横軸は時刻を表し
、縦軸はレベル(振幅値)を表す。音信号S0は、直流域成分S0(DC)と交流成分S
0(AC)が加算された信号とみなすことができる。なお、直流域成分S0(DC)は基
準値を示す概ね値が一定の成分であり、交流成分S0(AC)は直流域成分S0(DC)
が示す基準値を中心に上下に振動する成分である。
【0025】
図3は、アンプ214-9が音信号S0を増幅して生成する音信号S8(直流域成分の
除去前)を示したグラフである。図3のS8(DC)は音信号S8の直流域成分を示し、
S8(AC)は音信号S8の交流成分を示す。図3の例では、例えばアンプ214-9の
温度変化等の影響を受けて、直流域成分S8(DC)が時刻t1から時刻t2までの間、
上昇している。
【0026】
図4は、アンプ214-9が音信号S8の直流域成分S8(DC)を除去した後の音信
号S9を示したグラフである。音信号S9は、大まかに捉えた場合、音信号S8に対し、
音信号S8の直流域成分S8(DC)の正負を反転させた音信号を加算した信号とみなす
ことができる。ただし、アンプ214-9が直流域成分S8(DC)を除去する場合、音
信号S8の直流域成分S8(DC)に変化が生じた直後の過渡応答期間において、音信号
にアンプ214-9に固有の過渡振動が付加されてしまう。すなわち、音信号S9は、音
信号S8に対し、直流域成分S8(DC)の正負を反転させた音信号に過渡振動が付加さ
れた音信号S8(DC-R)を加算した信号とみなすことができる。
【0027】
上記のように、従来技術に係る音響装置9は、入力される音信号S0に対し意図する処
理である増幅処理を施した信号ではなく、意図しない過渡振動が付加された信号を出力す
る。また、音響装置9が行う直流域成分を除去する機能は、例えば放音装置等の保護や、
温度変化等による直流域成分の変動による音信号の変化の低減、という観点からは望まし
いが、入力される音信号S0に含まれる直流域成分S0(DC)が、出力される音信号に
反映されない、換言すれば、意図しない過渡振動による変形が追加されてしまう、という
観点からは望ましくない。
【0028】
[実施形態]
続いて、本発明の一実施形態に係る音響装置を説明する。図5は、本発明の一実施形態
に係る音響装置2の構成を示した図である。図5において、図1に示した音響装置9の構
成要素の符号と同じ符号の付された構成要素は、音響装置9と共通する構成要素である。
音響装置2は、音響装置9と同様に、アナログ信号源1から入力された音信号S0を増幅
し、増幅した音信号が示す音を放音する装置である。
【0029】
音響装置9は、アナログ信号源1から入力された音信号S0に増幅処理を施す信号処理
装置21と、信号処理装置21が備える複数のD/A変換器(後述)の駆動の開始及び終
了を制御する制御装置20と、信号処理装置21により増幅処理の施された音信号S5が
示す音を放音する放音装置22を備える。信号処理装置21の入力端P1はアナログ信号
源1の出力端と接続されており、信号処理装置21の出力端P2は放音装置22の入力端
と接続されている。すなわち、信号処理装置21はアナログ信号源1から放音装置22に
向かう音信号の伝送路を形成する。
【0030】
信号処理装置21は、A/D変換器211と、D/A変換器212-1、212-2、
212-3(以下、これらを互いに区別しない場合は「D/A変換器212」と総称する
)と、LPF(Low Pass Filter)213-1、213-2、213-3
(以下、これらを互いに区別しない場合は「LPF213」と総称する)と、アンプ21
4-1、214-2、214-3(以下、これらを互いに区別しない場合は「アンプ21
4」と総称する)と、加算器215を備える。
【0031】
A/D変換器211は、入力端P1を介してアナログ信号源1と接続され、アナログ信
号である音信号S0をデジタル信号である音信号S1に変換する。具体的には、A/D変
換器211は、音信号S0を所定のサンプリング周波数(例えば44.1kHz)でサン
プリング(標本化)した離散信号の各々を量子化することで音信号S1を生成する。図6
は音信号S1を示したグラフである。
【0032】
A/D変換器211(図5)の出力端に接続されている配線は3つに分岐しており、分
岐後の配線の各々には3つのD/A変換器212のいずれかの入力端が接続されている。
3つのD/A変換器212の各々は、入力されたデジタル信号をアナログ信号に変換して
出力する。
【0033】
3つのD/A変換器212の各々は、制御装置20の制御(後述)に従い、A/D変換
器211の変換におけるサンプリング周波数に応じた互いに異なるタイミングで駆動の開
始と終了を繰り返し、駆動している期間中のみ、入力される音信号S1をアナログ信号に
変換して出力する。D/A変換器212-1は音信号S21を出力し、D/A変換器21
2-2は音信号S22を出力し、D/A変換器212-3は音信号S23を出力する。
【0034】
D/A変換器212-1の出力端はLPF213-1の入力端と接続され、D/A変換
器212-2の出力端はLPF213-2の入力端と接続され、D/A変換器212-3
の出力端はLPF213-3の入力端と接続されている。3つのLPF213の各々は、
入力された音信号(アナログ信号)にローパスフィルタ処理(所定の周波数以上の高周波
成分を除去する処理)を施した音信号を出力する。
【0035】
LPF213は、例えば、D/A変換において生じる折り返し雑音等の高周波成分を除
去する役割を果たす。LPF213-1は音信号S21にローパスフィルタ処理を施した
音信号S31を出力し、LPF213-2は音信号S22にローパスフィルタ処理を施し
た音信号S32を出力し、LPF213-3は音信号S23にローパスフィルタ処理を施
した音信号S33を出力する。
【0036】
図7は音信号S31、S32、S33を示したグラフである。具体的には、図7(a)
は音信号S31を示し、図7(b)は音信号S32を示し、図7(c)は音信号S33を
示している。
【0037】
音信号S31は、音信号S1(図6)から抜き出された(3n-2)番目のサンプル(
ただし、nは自然数)(第1サンプル、第4サンプル、第7サンプル、・・・)が示す値
がサンプリング周波数に応じた1周期分の期間(例えば、1/44,100秒)だけ維持
された後に立ち下がる櫛形の波形を示す。
【0038】
音信号S32は、音信号S1から抜き出された(3n-1)番目のサンプル(第2サン
プル、第5サンプル、第8サンプル、・・・)が示す値がサンプリング周波数に応じた1
周期分の期間(例えば、1/44,100秒)だけ維持された後に立ち下がる櫛形の波形
を示す。
【0039】
音信号S33は、音信号S1から抜き出された(3n)番目のサンプル(第3サンプル
、第6サンプル、第9サンプル、・・・)が示す値がサンプリング周波数に応じた1周期
分の期間(例えば、1/44,100秒)だけ維持された後に立ち下がる櫛形の波形を示
す。
【0040】
LPF213-1(図5)の出力端はアンプ214-1の入力端と接続され、LPF2
13-2の出力端はアンプ214-2の入力端と接続され、LPF213-3の出力端は
アンプ214-3の入力端と接続されている。アンプ214-1は音信号S31を増幅し
た音信号S41を出力し、アンプ214-2は音信号S32を増幅した音信号S42を出
力し、アンプ214-3は音信号S33を増幅した音信号S43を出力する。
【0041】
アンプ214-1、アンプ214-2、アンプ214-3は、アンプ214-9と同様
に、入力された音信号を増幅する機能に加え、増幅した音信号から直流域成分を除去する
機能を備えている。
【0042】
しかしながら、アンプ214の各々に入力される音信号S31、S32、S33は、図
7に示したように、複数の孤立波(継続時間が短く、パルス波に近い波)が所定の時間(
本実施形態においてはサンプリング周波数に応じた2周期分の時間)を空けて並んだ波形
を示す。すなわち、音信号S31、S32、S33はいずれも、直流域成分を含まず、実
質的に高周波成分のみで構成される音信号である。
【0043】
従って、アンプ214が直流域成分を除去する機能を有していても、アンプ214に入
力された音信号S31、S32、S33にはその機能は働かない。また、アンプ214に
おいて、入力された音信号が温度変化等により直流域の変動が追加されるなどの影響を受
けるとしても、音信号S31、S32、S33には直流域成分が含まれないので、実質的
に音信号S31、S32、S33が温度変化等による影響を受けることはない。より正確
にいえば、音信号S31、S32、S33において直流域成分の変動が生じたり、過渡振
動の付加が行われたりしても、それらによる波形の変化は音信号S31、S32、S33
に含まれる孤立波の継続時間内(例えば、1/44,100秒内)に収まるため、その影
響はサンプリング周波数より高い周波数帯にしか現れない。
【0044】
従って、アンプ214-1から出力される音信号S41はアンプ214-1に入力され
た音信号S31を単純に増幅した音信号とみなすことができ、アンプ214-2から出力
される音信号S42はアンプ214-2に入力された音信号S32を単純に増幅した音信
号とみなすことができ、アンプ214-3から出力される音信号S43はアンプ214-
3に入力された音信号S33を単純に増幅した音信号とみなすことができる。図8は音信
号S41、S42、S43を示したグラフである。具体的には、図8(a)は音信号S4
1を示し、図8(b)は音信号S42を示し、図8(c)は音信号S43を示している。
【0045】
アンプ214-1(図5)の出力端、アンプ214-2の出力端、及びアンプ214-
3の出力端はいずれも、加算器215が有する3つの入力端のいずれかに接続されている
。加算器215は、音信号S41、S42、S43を加算した音信号S5を出力する。
【0046】
図9は音信号S5を示したグラフである。音信号S5は、音信号S0(図2)を増幅し
た音信号と近似の階段状の波形を示すアナログ信号である。音信号S5が示す波形の階段
の幅は、A/D変換器211が行う変換におけるサンプリング周波数に応じた1周期分の
時間(例えば1/44,100秒)である。従って、音信号S0を単純に増幅した音信号
と音信号S5との差異は、サンプリング周波数より高い周波数(可聴域の上限値より高い
周波数)にしか現れない。そのため、音信号S5が示す音は、音信号S0を単純に増幅し
た音信号が示す音と聴覚上、同じ音を示す。
【0047】
すなわち、信号処理装置21により生成される音信号S5は、音信号S0に対し、意図
された増幅処理のみが施され、意図しない直流域成分の除去、すなわち過渡振動の付加は
行われていない音信号とみなすことができる。
【0048】
加算器215は、信号処理装置21の出力端P2を介して放音装置22と接続されてい
る。放音装置22は音信号S5が示す音を放音する。信号処理装置21に接続された放音
装置22から放音される音は、上述したように、音信号S0が示す音を単純に増幅した音
として聴者により聴覚される。なお、放音装置22がサンプリング周波数より高い周波数
の音を放音できない場合、放音装置22がローパスフィルタの役割を果たし、放音装置2
2から放音される音は、音信号S0が示す音を単純に増幅した音そのものとなる。以上が
信号処理装置21の説明である。
【0049】
続いて、制御装置20の説明を行う。制御装置20は、イネーブル信号書換部201と
イネーブル信号出力部202を備える。
【0050】
イネーブル信号出力部202は、D/A変換器212-1に出力されるイネーブル信号
EN1を格納するレジスタR1と、D/A変換器212-2に出力されるイネーブル信号
EN2を格納するレジスタR2と、D/A変換器212-3に出力されるイネーブル信号
EN3を格納するレジスタR3を備える。
【0051】
イネーブル信号書換部201は、A/D変換器211が用いるクロック信号と同じクロ
ック信号を用いて、A/D変換器211のサンプリングのタイミングに同期するタイミン
グでレジスタR1、R2、R3に格納されるイネーブル信号EN1、EN2、EN3を書
き換える。イネーブル信号出力部202は、レジスタR1、R2、R3の各々に関し、当
該レジスタに格納されているイネーブル信号が書き換えられると、書き換えられた後のイ
ネーブル信号を対応するD/A変換器212に出力する。
【0052】
図10は、イネーブル信号の組み合わせパターンの切換規則を示した図である。図10
において、値「1」はD/A変換器212の駆動の開始を示し、値「0」はD/A変換器
212の駆動の終了を示す。
【0053】
パターン1は、D/A変換器212-1に駆動の開始を指示し、D/A変換器212-
2及び212-3に駆動の終了を指示するイネーブル信号の組み合わせを示している。パ
ターン2は、D/A変換器212-2に駆動の開始を指示し、D/A変換器212-1及
び212-3に駆動の終了を指示するイネーブル信号の組み合わせを示している。パター
ン3は、D/A変換器212-3に駆動の開始を指示し、D/A変換器212-1及び2
12-2に駆動の終了を指示するイネーブル信号の組み合わせを示している。そして、図
10は、パターン1、パターン2、パターン3、パターン1、・・・というように、3つ
のパターンがその順序で巡回的に繰り返し選択されることを示している。
【0054】
イネーブル信号書換部201は、図10の切換規則に従い、A/D変換器211による
サンプリングの処理のタイミング毎にイネーブル信号の組み合わせパターンを順次選択し
、選択した組み合わせパターンのイネーブル信号EN1、EN2、EN3を、イネーブル
信号出力部202のレジスタR1、R2、R3に書き込む。この書き込みに伴い、イネー
ブル信号出力部202からD/A変換器212-1にイネーブル信号EN1が、D/A変
換器212-2にイネーブル信号EN2が、D/A変換器212-3にイネーブル信号E
N3が出力される。
【0055】
D/A変換器212の各々は、イネーブル信号出力部202から入力されるイネーブル
信号の値が「1」であれば駆動を開始し、「0」であれば駆動を終了する。その結果、D
/A変換器212の各々に接続されたLPF213の各々からは、図7に示した音信号S
31、S32、S33が出力されることになる。
【0056】
上述したA/D変換器211、制御装置20、複数のD/A変換器212、及び複数の
LPF213は、アナログ信号源1から入力された音信号S0(音の波形を示す第1アナ
ログ信号の一例)をいずれも標本化された時刻が連続しない標本値列に分割してそれぞれ
が孤立波状態となった音信号S31、S32、S33(複数の第2アナログ信号の一例)
を出力する第1生成部13を構成する。
【0057】
ここでいう複数の標本値列は、上述した制御装置20のイネーブル信号を用いた制御に
よって、音信号S0をサンプリング周波数に応じた周期で標本化して得られる複数の標本
値を所定の順番で繰り返し割り振って得られた複数の標本値列である。
【0058】
本実施形態において、上述した第1生成部13は、音信号S0の複数の標本値を示すデ
ジタル信号がそれぞれ入力される複数のD/A変換器212(D/A変換器212-1、
22-2、22-3)を備え、標本化周期ごとに複数の標本値を示すデジタル信号の入力
先を、D/A変換器212-1、22-2、及び22-3から選択されたD/A変換器2
12に切り替えて音信号S21、S22、S23を生成し、さらに各LPF213が高周
波を除去することで、音信号S31、S32、S33を生成する。ここで、D/A変換器
212及びLPF213は、本発明の「D/A変換部」の一例を構成する。
【0059】
アンプ214-1、214-2、214-3の各々は、第1生成部13により生成され
た音信号S31、S32、S33に応じた波形を示す音信号S41、S42、S43(第
3アナログ信号の一例)を生成する第2生成部14-1、14-2、14-3(以下、こ
れらを互いに区別しない場合は「第2生成部14」と総称する)を構成する。
【0060】
また、加算器215は、複数の第2生成部14により生成された音信号S41、S42
、S43を加算して放音装置22に出力する。加算器215は本発明の「加算出力部」の
一例である。
【0061】
図11は音響装置2が行う処理のフローを示した図である。音響装置2は、A/D変換
器211を用いて音信号S0を音信号S1に変換する(ステップS1)。続いて、音響装
置2は制御装置20と複数のD/A変換器212を用いて、音信号S1を音信号S21、
S22、S23に変換する(ステップS2)。続いて、音響装置2は、複数のLPF21
3を用いて、音信号S21、S22、S23にローパスフィルタ処理を施して音信号S3
1、S32、S33を生成する(ステップS3)。
【0062】
続いて、音響装置2は、複数のアンプ214を用いて、音信号S31、S32、S33
を増幅した音信号S41、S42、S43を生成する(ステップS4)。続いて、音響装
置2は、加算器215を用いて、音信号S41、S42、S43を加算して音信号S5を
生成する(ステップS5)。続いて、音響装置2は、放音装置22を用いて、音信号S5
が示す音を放音する(ステップS6)。
【0063】
上述した音響装置2によれば、入力される音信号に含まれている直流域成分が伝送路上
で除去されることがなく、また、直流域成分の除去に伴う過渡信号が入力された音信号に
付加されることがなく、意図した信号処理(上述した実施形態においては増幅処理)のみ
が施された音信号が出力される。
【0064】
なお、D/A変換器212、LPF213及びアンプ214により信号を伝送し、D/
A変換器212が制御装置20の制御に応じたタイミングで駆動を開始及び終了する構成
は、チョッパー型アンプの構成と類似している。音響装置2は、この構成を複数並べ、加
算すると1つの波形信号を表す複数のアナログ信号を個別の経路で並行して伝送すること
で、伝送路上で直流域成分が除去されないように、換言すれば、過渡振動が付加されない
ように構成した点に特徴がある。
【0065】
[変形例]
上述した実施形態は様々に変形されてよい。以下にそれらの変形の例を示す。なお、以
下に示す変形例の2以上が適宜、組み合わされてもよい。
【0066】
[2-1]第2生成部
第2生成部の構成は上述した実施形態の構成に限られない。例えば、第2生成部が、L
PF(ローパスフィルタ)の代わりにバンドパスフィルタを備えてもよい。また、第2生
成部が、アンプ214の代わりに、又は、アンプ214に加えて、音信号に対し増幅以外
の処理を施す回路を備えてもよい。その場合、音信号に対し増幅以外の処理を施す回路が
直流域成分を除去する機能を有していてもよい。
【0067】
また、上述した実施形態では音響装置2が3つの第2生成部を備えるものとしたが、第
2生成部の各々が孤立波の列を生成する限り、音響装置が備える第2生成部の数は2以上
のいずれであってもよい。なお、第1生成部は、第2生成部と同じ数のアナログ信号を生
成して出力する。いずれの場合も、上述した実施形態と同様に、第1生成部によって生成
された複数のアナログ信号からは直流域成分が除去されず、過渡振動の付加もないので、
音響装置から出力される音信号は、音響装置に入力される音信号に対し意図した処理のみ
を施したものとなる。
【0068】
[2-2]放音装置
放音装置及びその上流の構成は上述した実施形態と異なっていてもよい。図12は本変
形例に係る音響装置2aの構成を示した図である。音響装置2aが備える信号処理装置2
1aは3つの出力端、すなわち、出力端P21、P22、P23を備える。また、音響装
置2aは3つの放音装置、すなわち、放音装置22-1、22-2、22-3を備える。
また、音響装置2aは加算器215を備えない。
【0069】
アンプ214-1は出力端P21を介して放音装置22-1に接続され、アンプ214
-2は出力端P22を介して放音装置22-2に接続され、アンプ214-3は出力端P
23を介して放音装置22-3に接続されている。
【0070】
図13は音響装置2aの外観を例示した図である。図13(a)に示す音響装置2aは
、板状の基台23を備え、基台23の一方の面上に放音装置22-1、22-2、22-
3が配置されている。この場合、複数の放音装置は1次元のアレイ状に並べられている。
【0071】
図13(b)に示す音響装置2aは、円柱状の基台23を備え、基台23の外周面上に
放音装置22-1、22-2、22-3が配置されている。この場合、複数の放音装置は
円周上に並べられている。
【0072】
図13(c)に示す音響装置2aは、球状の基台23を備え、基台23の外面上に放音
装置22-1、22-2、22-3が配置されている。この場合、複数の放音装置は球面
上に並べられている。
【0073】
このように、音響装置2aは、複数の第2生成部14の各々が生成したアナログ信号を
加算せず、放音装置22-1、22-2、22-3を用いてそれらのアナログ信号が示す
音を個別に放音する。放音装置22-1、22-2、22-3によって放音された音は空
間において加算される。その結果、聴者は音響装置2に入力された音信号S0が示す音に
対し、増幅等の意図された処理は施されているが、直流域成分の除去、すなわち過渡振動
の付加といった意図しない変更の加えられていない音を聴覚することができる。
【0074】
[2-3]第1生成部
第1生成部の構成は上述した実施形態の構成に限られない。図14は本変形例に係る音
響装置2bの構成を示した図である。音響装置2bには、アナログ信号源1から出力され
るアナログの音信号S0に代えて、デジタルオーディオ機器3から出力されるデジタルの
音信号S1が入力される。音信号S1は、上述した実施形態における音信号S1(図6
と同様の信号である。音響装置2bの信号処理装置21b及び第1生成部13bは、A/
D変換器211及び制御装置20に代えて、デジタル信号生成部216を備える。
【0075】
デジタル信号生成部216は、複数の標本値を示すデジタル信号である音信号S1から
、それら複数の標本値を割り振った複数の標本値列であっていずれも標本化された時刻が
連続しない標本値が並ぶ複数の標本値列をそれぞれ孤立波の列で示す複数のデジタル信号
である音信号S11、S12、S13を生成する。音信号S1は本発明の「第1デジタル
信号」の一例であり、音信号S11、S12、S13は本発明の「複数の第2デジタル信
号」の一例である。デジタル信号生成部216は、生成した音信号S11、S12、S1
3を、LPF213-1、212-2、212-3に出力する。
【0076】
音信号S11は、音信号S1(図6)の(3n-2)番目のサンプル(ただし、nは自
然数)(第1サンプル、第4サンプル、第7サンプル、・・・)を抜き出した値の列を示
す。音信号S12は、音信号S1の(3n-1)番目のサンプル(第2サンプル、第5サ
ンプル、第8サンプル、・・・)を抜き出した値の列を示す。音信号S13は、音信号S
1の(3n)番目のサンプル(第3サンプル、第6サンプル、第9サンプル、・・・)を
抜き出した値の列を示す。
【0077】
D/A変換器212-1、212-2、212-3は音信号S11、S12、S13を
アナログ信号に変換した音信号S21、S22、S23を生成する。第1生成部13bは
、D/A変換器212を用いて生成した音信号S21、S22、S23に対し、LPF2
13を用いてローパスフィルタ処理を行うことで、上述した複数の標本値列を個別に示す
音信号S31、S32、S33を生成する。本変形例によれば、デジタル信号を入力信号
として用いることができる。
【0078】
図15は他の変形例に係る音響装置2cの構成を示した図である。音響装置2cの信号
処理装置21c及び第1生成部13cは、A/D変換器211を備えず、また、D/A変
換器212-1、212-2、212-3に代えて、スイッチ部217-1、217-2
、217-3(以下、これらを互いに区別しない場合は「スイッチ部217」と総称する
)を備える。
【0079】
スイッチ部217は、アナログ信号の通過と遮断を切り替える。具体的には、スイッチ
部217は、イネーブル信号書換部201から値が「1」のイネーブル信号の入力を受け
ると、自身の状態を「遮断」から「通過」に切り替え、イネーブル信号書換部201から
値が「0」のイネーブル信号の入力を受けると、自身の状態を「通過」から「遮断」に切
り替える。
【0080】
スイッチ部217の各々にはアナログ信号源1から音信号S0が入力される。制御装置
20は、所定の周期(例えば、1/44100秒の周期)で、図10に示した順序でイネ
ーブル信号の組み合わせパターンを順次選択し、選択した組み合わせパターンのイネーブ
ル信号EN1、EN2、EN3をスイッチ部217-1、スイッチ部217-2、スイッ
チ部217-3に出力する。その結果、スイッチ部217-1からは音信号S21が出力
され、スイッチ部217-2からは音信号S22が出力され、スイッチ部217-3から
は音信号S23が出力される。
【0081】
LPF213-1はスイッチ部217-1から出力された音信号S21にローパスフィ
ルタ処理を施して音信号S31を生成し、LPF213-2はスイッチ部217-2から
出力された音信号S22にローパスフィルタ処理を施して音信号S32を生成し、LPF
213-3はスイッチ部217-3から出力された音信号S23にローパスフィルタ処理
を施して音信号S33を生成する。
【0082】
上記のように、第1生成部13cは、アナログ信号である音信号S0を通過させるスイ
ッチ部を所定の周期で順番に切り替えて音信号S21、S22、S23を生成し、それら
の音信号にローパスフィルタ処理を行うことで、音信号S31、S32、S33を生成す
る。図15の例によれば、A/D変換器及びD/A変換器を用いることなく、直流域成分
が保持され、過渡振動を伴わない信号処理が行われる。
【0083】
[2-4]第1生成部及び第2生成部
上述した実施形態及び変形例においては、第1生成部がローパスフィルタ(LPF21
3)を備えるものとしたが、第1生成部は必ずしもローパスフィルタを備えなくてもよい
。例えば、第1生成部に代えて第2生成部がローパスフィルタを備えることで、折り返し
雑音等を生じさせる高周波の除去が行われてもよい。
【0084】
図16は本変形例に係る音響装置2dの構成を示した図である。音響装置2dの第1生
成部13dは、A/D変換器211、制御装置20、複数のD/A変換器212を備え、
複数の第2生成部14dの各々は、LPF213及びアンプ214を備える。
【0085】
第1生成部13dは、複数のD/A変換器212の各々が生成した音信号S21、S2
2、S23を、標本化された時刻が連続しない標本値が並ぶ複数の標本値列を個別に示す
複数のアナログ信号として出力する。このように、第1生成部が上記のように複数の標本
値列を個別に示す複数のアナログ信号を出力する構成となっている限り、これらのアナロ
グ信号をD/A変換器212が出力しても、LPF213が出力しても、他の信号処理回
路が出力してもよい。
【0086】
[2-5]標本値列
上述の実施形態では、第1生成部13が生成する複数のアナログ信号は、音信号S0の
複数の標本値を所定の順番で繰り返し割り振って得られた複数の標本値列を示したが、こ
れに限らない。例えば、複数の標本値を標本値列1、2、3に割り振る場合に、標本値列
1、2、3、2、1、2、3、2、1、2、・・・といように標本値列を往復させながら
割り振ってもよい。
【0087】
また、複数のアナログ信号は、標本化された時刻が連続する標本値は同じ標本値列には
割り振らない、という条件下で複数の標本値を複数の標本値列にランダムに割り振ること
により生成されてもよい。すなわち、第1生成部13が生成する複数のアナログ信号の各
々が、標本化された時刻が連続しない標本値が並ぶ複数の標本値列を示す限り、音響装置
2によって、直流域成分が保持され、過渡振動を伴わない信号処理が行われる。
【0088】
[2-6]多重放音装置
図12に示した変形例に係る音響装置2aにおいては、複数の第2生成部14の各々に
接続される放音装置の数は1つであるが、その数が2以上であってもよい。
【0089】
図17は本変形例に係る音響装置2eの構成を示した図である。音響装置2eは、各々
が複数の放音装置の集まりである放音装置群24-1、放音装置群24-2、放音装置群
24-3(以下、これらを互いに区別しない場合は「放音装置群24」と総称する)を備
える。なお、音響装置2eは本発明の「多重放音装置」の一例である。
【0090】
放音装置群24-1はアンプ214-1を有する第2生成部14-1と接続され、放音
装置群24-2はアンプ214-2を有する第2生成部14-2と接続され、放音装置群
24-3はアンプ214-3を有する第2生成部14-3と接続されている。放音装置群
24-1に属する複数の放音装置は第2生成部14-1から出力される音信号S41が示
す音を放音し、放音装置群24-2に属する複数の放音装置は第2生成部14-2から出
力される音信号S41が示す音を放音し、放音装置群24-3に属する複数の放音装置は
第2生成部14-3から出力される音信号S43が示す音を放音する。
【0091】
[2-7]その他の変形例
本発明の適用範囲は放音を行う装置に限られず、音信号の伝送路を備える様々な種類の
装置に本発明を適用することができる。また、本発明は、波形を示す信号であれば、音以
外を示す信号の伝送にも適用することができる。伝送する信号の種類によっては、LPF
をD/A変換器の直後に設けない構成等が採用されてもよい。
【0092】
また、上述した音響装置又は信号処理装置の構成要素の一部が外部装置として構成され
てもよい。例えば、音響装置2が放音装置22を内蔵しなくてもよい。
【0093】
上述した実施形態の制御装置20又は信号処理装置21が実現する機能は、複数のプロ
グラムの組み合わせによって実現されてもよいし、複数のハードウェア資源の連係によっ
て実現されてもよい。制御装置20又は信号処理装置21の機能がプログラムを用いて実
現される場合、このプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスク(HDD(
Hard Disk Drive)、FD(Flexible Disk))等)、光記
録媒体(光ディスク等)、光磁気記録媒体、半導体メモリ等のコンピュータ読み取り可能
な記録媒体に記憶した状態で提供されてもよいし、ネットワークを介して配信されてもよ
い。また、本発明は、上述した音響装置2が行う信号伝送方法も提供する。
【符号の説明】
【0094】
1…アナログ信号源、2…音響装置、3…デジタルオーディオ機器、9…音響装置、13
…第1生成部、14…第2生成部、20…制御装置、21…信号処理装置、22…放音装
置、23…基台、24…放音装置群、91…信号処理装置、201…イネーブル信号書換
部、202…イネーブル信号出力部、211…A/D変換器、212…D/A変換器、2
13…LPF、214…アンプ、215…加算器、216…デジタル信号生成部、217
…スイッチ部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17