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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018490
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】踏切監視装置
(51)【国際特許分類】
   B61L 29/00 20060101AFI20230201BHJP
   H04N 7/18 20060101ALI20230201BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230201BHJP
【FI】
B61L29/00 A
H04N7/18 D
G06T7/00 350C
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122656
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000001292
【氏名又は名称】株式会社京三製作所
(71)【出願人】
【識別番号】000125369
【氏名又は名称】学校法人東海大学
(74)【代理人】
【識別番号】100124682
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100104710
【弁理士】
【氏名又は名称】竹腰 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100090479
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 一
(72)【発明者】
【氏名】金子 亮
(72)【発明者】
【氏名】村上 洋一
(72)【発明者】
【氏名】南部 修二
(72)【発明者】
【氏名】戸羽 拓馬
(72)【発明者】
【氏名】小室 翔嗣
(72)【発明者】
【氏名】村松 聡
【テーマコード(参考)】
5C054
5H161
5L096
【Fターム(参考)】
5C054CA04
5C054CC02
5C054CE12
5C054EA01
5C054EA05
5C054EA07
5C054FC01
5C054FC12
5C054FC14
5C054FF06
5C054GB01
5C054GB05
5C054HA19
5H161AA01
5H161MM05
5H161MM14
5H161NN10
5L096BA02
5L096DA02
5L096DA03
5L096HA09
5L096HA11
5L096KA04
(57)【要約】
【課題】踏切を監視する装置に必要となる設計や調整に係る条件設定を簡易化することができる新たな技術を提供すること。
【解決手段】踏切監視装置1は、所与の踏切画像を入力する画像入力部130と、判別の基準とする踏切画像である基準画像に基づく機械学習処理によって生成された単位画素別分類学習モデルであって、所定数の単位画素毎に、正常時に写る被写体のカテゴリを予め定めた所定のカテゴリ分類の中から特定する単位画素別分類学習モデルを用いて、判定対象の踏切画像である判定対象画像について、単位画素毎に当該単位画素に対して特定されたカテゴリの被写体が写っているか否かを判別する判別処理部143と、判別処理部143の判別結果に基づいて、踏切画像に写っている踏切道及び/又は遮断かんの異常の発生を検出する異常発生検出部145と、を備える。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所与の踏切画像を入力する画像入力部と、
判別の基準とする前記踏切画像である基準画像に基づく所定の機械学習処理によって生成された単位画素別分類学習モデルであって、所定数の画素を単位とする単位画素毎に、正常時に写る被写体のカテゴリを予め定めた所定のカテゴリ分類の中から特定する単位画素別分類学習モデルを用いて、判定対象の前記踏切画像である判定対象画像について、前記単位画素毎に当該単位画素に対して特定されたカテゴリの被写体が写っているか否かを判別する判別処理部と、
前記判別処理部の判別結果に基づいて、前記踏切画像に写っている踏切道及び/又は遮断かんの異常の発生を検出する異常発生検出部と、
を備える踏切監視装置。
【請求項2】
前記機械学習処理を実行するタイミングを判定する学習タイミング判定部と、
前記学習タイミング判定部によって判定されたタイミングにおいて前記画像入力部に入力された前記踏切画像を前記基準画像として前記機械学習処理を行うことで、前記単位画素別分類学習モデルを更新して生成する機械学習処理部と、
を更に備える請求項1に記載の踏切監視装置。
【請求項3】
前記踏切画像に基づいて、前記踏切道から列車が進出したことを判定する列車進出判定部、
を更に備え、
前記学習タイミング判定部は、前記列車進出判定部の判定結果に基づいて、前記機械学習処理を実行するタイミングを判定する、
請求項2に記載の踏切監視装置。
【請求項4】
前記機械学習処理部は、前記基準画像を複数の規定領域に分けた領域別に、前記単位画素毎の前記カテゴリの特定を行うことで、前記単位画素別分類学習モデルを生成する、
請求項2又は3に記載の踏切監視装置。
【請求項5】
前記複数の規定領域は、踏切道が写る領域である踏切道領域を少なくとも含む、
請求項4に記載の踏切監視装置。
【請求項6】
前記機械学習処理部は、前記踏切道領域について、前記踏切道を前記カテゴリとして前記踏切道が写っているか否かを前記単位画素毎に特定する前記単位画素別分類学習モデルを生成し、
前記判別処理部は、前記判定対象画像の前記踏切道領域について、前記単位画素毎に前記踏切道が写っているか否かを判別し、
前記異常発生検出部は、前記判定対象画像の前記踏切道領域のうち、前記踏切道が写っていないと判別された部位に基づいて前記踏切道における異常の発生を検出する、
請求項5に記載の踏切監視装置。
【請求項7】
前記複数の規定領域は、遮断状態の際に遮断かんが写る領域である遮断かん領域を少なくとも含む、
請求項4~6の何れか一項に記載の踏切監視装置。
【請求項8】
前記機械学習処理部は、前記遮断かん領域について、前記遮断かんを前記カテゴリとして前記遮断かんが写っているか否かを前記単位画素毎に特定する前記単位画素別分類学習モデルを生成し、
前記判別処理部は、前記判定対象画像の前記遮断かん領域について、前記単位画素毎に前記遮断かんが写っているか否かを判別し、
前記異常発生検出部は、前記判定対象画像の前記遮断かん領域のうち、前記遮断かんが写っていないと判別された部位に基づいて前記遮断かんの異常の発生を検出する、
請求項7に記載の踏切監視装置。
【請求項9】
前記判別処理部による判別を実行するタイミングを判定する判別タイミング判定部、
を更に備え、
前記判別処理部は、前記判別タイミング判定部によって判定されたタイミングにおいて前記画像入力部に入力された前記踏切画像を前記判定対象画像として前記判別を実行する、
請求項1~8の何れか一項に記載の踏切監視装置。
【請求項10】
前記踏切画像に基づいて、前記遮断かんの遮断状態を判定する遮断状態判定部、
を更に備え、
前記判別タイミング判定部は、前記遮断状態判定部の判定結果に基づいて、前記判別処理部による判別を実行するタイミングを判定する、
請求項9に記載の踏切監視装置。
【請求項11】
前記画像入力部に入力された前記踏切画像に基づいて、前記踏切道への列車の進入判定を行う列車進入判定部、
を更に備え、
前記判別タイミング判定部は、前記遮断状態判定部により遮断状態であると判定された後、前記列車進入判定部により列車が進入したと判定されるまでの間、前記判別処理部による判別を実行するタイミングであると判定する、
請求項10に記載の踏切監視装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、踏切監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、鉄道の踏切道において踏切の遮断中に人や車等の障害物を検知し、異常を監視する技術が知られている。例えば、特許文献1の技術では、画像センサによる監視と併せてミリ波レーダセンサ等の物体検知センサによる障害物検知を行うことで、検知性能の向上を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-132313号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、障害物を適切に検知するためのパラメータ(閾値)の調整といった条件設定が複雑になり得た。例えば、条件設定には、画像センサによる撮影画像に対する条件設定と、ミリ波レーダセンサ等の物体検知センサの検知結果に対する条件設定との2つが必要となる上、互いの検知結果を補完し合って適切な障害物検知を実現するための条件設定を行う必要がある。また、ミリ波レーダセンサ等の物体検知センサは、検知可能な距離や角度の問題から、設置位置や設置姿勢、設置個数等を踏切毎に個別に設計する必要がある。そのため、画像センサと、ミリ波レーダセンサ等の物体検知センサとを組み合わせて検知性能の向上を図る場合には、設計や調整に係る条件設定が複雑且つ煩雑となり得た。また、機器が増えることによるコストや、設計・調整に係るコストが増加し得た。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、踏切を監視する装置に必要となる設計や調整に係る条件設定を簡易化することができる新たな技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための第1の発明は、所与の踏切画像を入力する画像入力部と、判別の基準とする前記踏切画像である基準画像に基づく所定の機械学習処理によって生成された単位画素別分類学習モデルであって、所定数の画素を単位とする単位画素毎に、正常時に写る被写体のカテゴリを予め定めた所定のカテゴリ分類の中から特定する単位画素別分類学習モデルを用いて、判定対象の前記踏切画像である判定対象画像について、前記単位画素毎に当該単位画素に対して特定されたカテゴリの被写体が写っているか否かを判別する判別処理部と、前記判別処理部の判別結果に基づいて、前記踏切画像に写っている踏切道及び/又は遮断かんの異常の発生を検出する異常発生検出部と、を備える踏切監視装置である。
【0007】
第1の発明によれば、踏切画像の単位画素毎に、正常時に当該単位画素に写るはずの被写体のカテゴリと同じカテゴリの被写体が写っているか否かを、機械学習処理によって生成された単位画素別分類学習モデルを用いて判別することができる。そして、判別結果から踏切道や遮断かんの異常の発生を検出することができる。これによれば、踏切画像に写っているもの1つ1つの境界を判別するステップと、1つ1つのものが何かを認識するステップと、認識結果から異常を判定するステップと、といった各ステップに係る複雑且つ煩雑なパラメータ(閾値)の調整を不要とすることができる。すなわち、踏切を監視する装置に必要となる設計や調整に係る条件設定を簡易化することが可能となる。また、ミリ波レーダセンサ等の物体検知センサを必要としないため、特許文献1の技術に比べてコストを下げることができる。
【0008】
また、第2の発明は、前記機械学習処理を実行するタイミングを判定する学習タイミング判定部と、前記学習タイミング判定部によって判定されたタイミングにおいて前記画像入力部に入力された前記踏切画像を前記基準画像として前記機械学習処理を行うことで、前記単位画素別分類学習モデルを更新して生成する機械学習処理部と、を更に備える第1の発明の踏切監視装置である。
【0009】
第2の発明によれば、所定のタイミングで撮影された踏切画像を基準画像として用いて機械学習処理を行い、単位画素別分類学習モデルを生成することができる。したがって、単位画素別分類学習モデルの生成に必要となる基準画像を自動的に取得することができる。
【0010】
また、第3の発明は、前記踏切画像に基づいて、前記踏切道から列車が進出したことを判定する列車進出判定部、を更に備え、前記学習タイミング判定部は、前記列車進出判定部の判定結果に基づいて、前記機械学習処理を実行するタイミングを判定する、第2の発明の踏切監視装置である。
【0011】
第3の発明によれば、例えば、踏切画像から列車が進出した後のタイミングで撮影された踏切画像を基準画像として、機械学習処理を行うことが可能となる。
【0012】
また、第4の発明は、前記機械学習処理部が、前記基準画像を複数の規定領域に分けた領域別に、前記単位画素毎の前記カテゴリの特定を行うことで、前記単位画素別分類学習モデルを生成する、第2又は第3の発明の踏切監視装置である。
【0013】
第4の発明によれば、基準画像を複数の規定領域に分けた領域別に、正常時に写る被写体のカテゴリを当該規定領域の単位画素毎に特定する単位画素別分類学習モデルを生成することができる。
【0014】
また、第5の発明は、前記複数の規定領域は、踏切道が写る領域である踏切道領域を少なくとも含む、第4の発明の踏切監視装置である。
【0015】
第5の発明によれば、踏切道が写る踏切道領域を含む規定領域別に、正常時に写る被写体のカテゴリを当該規定領域の単位画素毎に特定する単位画素別分類学習モデルを生成することができる。
【0016】
また、第6の発明は、前記機械学習処理部が、前記踏切道領域について、前記踏切道を前記カテゴリとして前記踏切道が写っているか否かを前記単位画素毎に特定する前記単位画素別分類学習モデルを生成し、前記判別処理部が、前記判定対象画像の前記踏切道領域について、前記単位画素毎に前記踏切道が写っているか否かを判別し、前記異常発生検出部が、前記判定対象画像の前記踏切道領域のうち、前記踏切道が写っていないと判別された部位に基づいて前記踏切道における異常の発生を検出する、第5の発明の踏切監視装置である。
【0017】
第6の発明によれば、撮影された踏切画像のうち、踏切道が写る領域である踏切道領域を対象に、踏切道が写っているか否かをその単位画素毎に判別することができる。そして、踏切道が写っていない部位に基づいて、踏切道の異常の発生を検出することが可能となる。これによれば、例えば、正常時に写るはずの踏切道が写っていない部位について、それを障害物と捉えて異常を検出することが可能となる。したがって、障害物自体について機械学習処理を行うことなく、踏切道における異常の発生を検出することができる。
【0018】
また、第7の発明は、前記複数の規定領域は、遮断状態の際に遮断かんが写る領域である遮断かん領域を少なくとも含む、第4~第6の何れかの発明の踏切監視装置である。
【0019】
第7の発明によれば、遮断かんが写る踏切道領域を含む規定領域別に、正常時に写る被写体のカテゴリを当該規定領域の単位画素毎に特定する単位画素別分類学習モデルを生成することができる。
【0020】
また、第8の発明は、前記機械学習処理部が、前記遮断かん領域について、前記遮断かんを前記カテゴリとして前記遮断かんが写っているか否かを前記単位画素毎に特定する前記単位画素別分類学習モデルを生成し、前記判別処理部は、前記判定対象画像の前記遮断かん領域について、前記単位画素毎に前記遮断かんが写っているか否かを判別し、前記異常発生検出部は、前記判定対象画像の前記遮断かん領域のうち、前記遮断かんが写っていないと判別された部位に基づいて前記遮断かんの異常の発生を検出する、第7の発明の踏切監視装置である。
【0021】
第8の発明によれば、撮影された踏切画像のうち、遮断かんが写る領域である遮断かん領域を対象に、遮断かんが写っているか否かをその単位画素毎に判別することができる。そして、遮断かんが写っていない部位に基づいて、遮断かんの異常の発生を検出することが可能となる。これによれば、例えば、正常時に写るはずの遮断かんが写っていない部位について、それを障害物と捉えて異常を検出することが可能となる。したがって、障害物自体について機械学習処理を行うことなく、遮断かんの異常の発生を検出することができる。
【0022】
また、第9の発明は、前記判別処理部による判別を実行するタイミングを判定する判別タイミング判定部、を更に備え、前記判別処理部は、前記判別タイミング判定部によって判定されたタイミングにおいて前記画像入力部に入力された前記踏切画像を前記判定対象画像として前記判別を実行する、第1~第8の何れかの発明の踏切監視装置である。
【0023】
第9の発明によれば、所定のタイミングで撮影された踏切画像を判定対象画像として用いて、正常時に当該単位画素に写る被写体のカテゴリと同じカテゴリの被写体が写っているか否かを単位画素毎に判別することができる。
【0024】
また、第10の発明は、前記踏切画像に基づいて、前記遮断かんの遮断状態を判定する遮断状態判定部、を更に備え、前記判別タイミング判定部は、前記遮断状態判定部の判定結果に基づいて、前記判別処理部による判別を実行するタイミングを判定する、第9の発明の踏切監視装置である。
【0025】
第10の発明によれば、例えば、遮断かんが遮断状態となった後のタイミングで撮影された踏切画像を判定対象画像として、正常時に当該単位画素に写る被写体のカテゴリと同じカテゴリの被写体が写っているか否かを単位画素毎に判別することが可能となる。
【0026】
また、第11の発明は、前記画像入力部に入力された前記踏切画像に基づいて、前記踏切道への列車の進入判定を行う列車進入判定部、を更に備え、前記判別タイミング判定部は、前記遮断状態判定部により遮断状態であると判定された後、前記列車進入判定部により列車が進入したと判定されるまでの間、前記判別処理部による判別を実行するタイミングであると判定する、第10の発明の踏切監視装置である。
【0027】
第11の発明によれば、遮断かんが遮断状態となってから踏切道へ列車が進入するまでの間のタイミングで撮影された踏切画像を、判定対象画像とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】カメラの撮影範囲の設定例を示す図。
図2】判別処理の一例を示す図。
図3】判別処理の他の例を示す図。
図4】判別処理の他の例を示す図。
図5】判別処理の他の例を示す図。
図6】列車の進出判定を説明するための模式図。
図7】列車の進入判定を説明するための模式図。
図8】踏切監視装置の機能構成例を示すブロック図。
図9】踏切監視装置が行う処理の流れを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、以下説明する実施形態によって本発明が限定されるものではなく、本発明を適用可能な形態が以下の実施形態に限定されるものでもない。また、図面の記載において、同一部分には同一の符号を付す。
【0030】
本実施形態の踏切監視装置1(図8を参照)は、所与の踏切画像として遮断かん及び踏切道を撮影範囲に含むカメラ3で撮影された踏切画像を用い、当該踏切画像に写っている踏切道及び遮断かんの異常の発生を検知する。踏切画像は、監視対象の踏切を斜め上方から俯瞰する位置に設置されたカメラ3(図8を参照)で撮影され、踏切監視装置1に入力される。カメラ3は、監視対象の踏切の踏切道と、当該踏切に設置された踏切遮断機の遮断かんと、が撮影範囲に含まれるように設置される。
【0031】
図1は、カメラ3の撮影範囲の設定例を示す図である。図1では、上り線と下り線が並走し、列車の走行方向が予め決まっている踏切道5を例示している。例えば、カメラ3は、図1に示すように、踏切道5と、遮断状態の際の下降した遮断かん7と、カメラ3から見て踏切道5の前方(奥方)及び後方(手前方)の軌道部分9a,9bと、を含む監視エリア10が撮影されるようにその撮影範囲が設定される。したがって、このカメラ3で撮影された踏切画像は、踏切道5のエリア11が写る踏切道領域と、遮断かん7のエリア13が写る遮断かん領域と、軌道部分9a,9bのエリア15a,15bが写る列車進入出判定領域と、に分けることができる。列車進入出判定領域には、列車の通過時において、踏切道5へ進入する直前の列車や、踏切道5から進出した直後の列車が写る。本実施形態では、踏切道領域の画像に基づいて踏切道5に発生した異常を検出し、遮断かん領域の画像に基づいて遮断かん7に発生した異常を検出する。また、列車進入出判定領域の画像に基づいて、踏切道5への列車の進入判定と、踏切道5からの列車の進出判定とを行う。
【0032】
踏切監視装置1は、踏切道5及び遮断かん7の異常の発生を検知するため、例えば、1画素を単位画素とし、カメラ3から入力される判定対象の踏切画像である判定対象画像の単位画素毎に被写体のカテゴリを分類して、正常時の被写体が写っているのかを判別する判別処理を行う。またそのために、踏切監視装置1は、カメラ3から入力される踏切画像であって、判別処理での判別の基礎とする踏切画像である基準画像に基づいて、機械学習処理を行う。単位画素は、所定数の画素を単位としたものであり、本実施形態では1画素であることとして説明するが、縦2画素×横2画素の4画素を単位画素としてもよいし、縦3画素×横3画素の9画素を単位画素としてもよい。
【0033】
本実施形態では、正常時に写る被写体のカテゴリ分類として「踏切道」及び「遮断かん」の2種類のカテゴリを定めておく。そして、踏切道領域及び遮断かん領域の2つの規定領域別に機械学習処理を行うことで、単位画素毎にその被写体のカテゴリを特定する単位画素別分類学習モデル(以下単に「分類学習モデル」ともいう)を生成する。すなわち、(1)基準画像の踏切道領域について踏切道5が写っているか否かをその単位画素毎に特定する分類学習モデル(以下「踏切道分類学習モデル」ともいう)と、(2)基準画像の遮断かん領域について遮断かん7が写っているか否かをその単位画素毎に特定する分類学習モデル(以下「遮断かん分類学習モデル」ともいう)と、の2つの分類学習モデルを生成する。一方、判別処理では、踏切道領域については、踏切道分類学習モデルを用いてカテゴリ分類を行い、単位画素毎に踏切道5が写っているか否かを判別する。また、遮断かん領域については、遮断かん分類学習モデルを用いてカテゴリ分類を行い、単位画素毎に遮断かん7が写っているか否かを判別する。
【0034】
具体的には、踏切監視装置1は、画像セグメンテーション(セマンティック・セグメンテーションとも呼ばれる。)を実施することで、機械学習処理及び判別処理を実現する。セマンティック・セグメンテーションでは、単位画素毎にカテゴリを関連付ける深層学習によって、ニューラルネットワークの分類学習モデルを構築する。分類学習モデルは、画像を入力すると、入力された画像の単位画素毎にカテゴリの分類情報(その被写体のカテゴリを示すラベル)を付与したラベル画像を出力する。
【0035】
機械学習処理にあたっては、入力データである画像と、出力データである正解のラベル画像と、のデータセットを教師データとして用いる。本実施形態では、踏切道領域及び遮断かん領域の規定領域別に分類学習モデルを生成するので、基準画像の踏切道領域の画像と、当該踏切道領域の各単位画素に「踏切道」のラベルを付したラベル画像と、のデータセットを教師データとして用い、踏切道分類学習モデルを生成する。同様に、基準画像の遮断かん領域の画像と、当該遮断かん領域の各単位画素に「遮断かん」のラベルを付したラベル画像と、のデータセットを教師データとして用い、遮断かん分類学習モデルを生成する。
【0036】
図2図5は、踏切道分類学習モデル及び遮断かん分類学習モデルを用いた具体的な判別処理の例を示す図である。先ず、図2は、踏切道5に異常が無い時の踏切道領域の画像21を判定対象画像として判別処理をした例を示している。異常が無い時の踏切道領域の画像21を、踏切道分類学習モデルを用いて判別処理した場合、踏切道領域の各単位画素に「踏切道」のラベルが付されたラベル画像23が出力データとして得られる。図2中、ハッチングを付した各単位画素が「踏切道」のラベルが付された単位画素を示している。すなわち、図2の例では、得られたラベル画像23において踏切道領域全体にハッチングが施されていることから、当該判別処理によって、踏切道領域の各単位画素にカテゴリ「踏切道」の被写体が写っていると判別されている。
【0037】
これに対し、図3は、例えば人や車等の障害物が踏切道5に存在する等、踏切道5において何らかの異常が有る時の踏切道領域の画像31を判定対象画像とした場合の判別処理の例を示している。異常が有る時の踏切道領域の画像31を、踏切道分類学習モデルを用いて判別処理した場合、踏切道領域の単位画素には、「踏切道」のラベルが付されている単位画素と、「踏切道」のラベルが付されていない単位画素とを含むラベル画像33が出力データとして得られる。すなわち、踏切道領域においてカテゴリ「踏切道」の被写体が写っていないと判別された部位を含む判別結果が得られる。図3において、カテゴリ「踏切道」の被写体が写っていないと判別された単位画素にはハッチングが施されていない。図3においてラベル画像33中に破線で囲って示す部位331が、カテゴリ「踏切道」の被写体が写っていないと判別された部位である。
【0038】
以上のようにカテゴリ「踏切道」の被写体が写っていないと判別された部位がある場合には、踏切監視装置1は、当該部位331に基づいて踏切道5の異常の発生を検出する。例えば、当該部位331の大きさや形状、位置、フレーム間(連続して撮影された判定対象画像それぞれの間)での位置の変化、等からそれが障害物か否かを判定し、障害物と判定した場合に踏切道に異常が発生していることを検出する。
【0039】
判別処理では、踏切道5が写っているか否かの判別を踏切道領域の単位画素毎に行うため、例えば踏切道5で倒れている人等も精度良く検出することができる。加えて、踏切道領域におけるラベル付けは、1つのカテゴリ「踏切道」のみである。したがって、単位画素毎の判定は、カテゴリ「踏切道」の被写体が写っているか否かであるため、判別処理を短時間に実現することができる。
【0040】
また、判別処理は、後述するように、遮断かん7が遮断状態となってから踏切道5へと列車が進入するまでの間、所定のフレーム時間間隔(以下単に「フレーム」ともいう)で繰り返し行う。そのため、検出された障害物が動く物体であるかどうかも判定できる。
【0041】
次に、図4は、遮断かん7に異常が無い時の遮断かん領域の画像41を判定対象画像として判別処理をした例を示している。異常が無い時の遮断かん領域の画像41を、遮断かん分類学習モデルを用いて判別処理した場合、遮断かん領域の各単位画素に「遮断かん」のラベルが付されたラベル画像43が出力データとして得られる。すなわち、図4の例では、得られたラベル画像43において遮断かん領域全体にハッチングが施されていることから、当該判別処理によって、遮断かん領域の各単位画素にカテゴリ「遮断かん」の被写体が写っていると判別されている。
【0042】
これに対し、図5は、遮断かん7が折損している等、遮断かん7に何らかの異常が有る時の遮断かん領域の画像51を判定対象画像とした場合の判別処理の例を示している。異常が有る時の遮断かん領域の画像51を、遮断かん分類学習モデルを用いて判別処理した場合、遮断かん領域の単位画素には、「遮断かん」のラベルが付されている単位画素と、「遮断かん」のラベルが付されていない単位画素とを含むラベル画像53が出力データとして得られる。すなわち、遮断かん領域においてカテゴリ「遮断かん」の被写体が写っていないと判別された部位を含む判別結果が得られる。図5において、カテゴリ「遮断かん」の被写体が写っていないと判別された単位画素にはハッチングが施されていない。図5においてラベル画像53中に破線で囲って示す部位531が、カテゴリ「遮断かん」の被写体が写っていないと判別された部位である。
【0043】
以上のようにカテゴリ「遮断かん」の被写体が写っていないと判別された部位がある場合には、踏切監視装置1は、当該部位531に基づいて遮断かん7の異常の発生を検出する。当該部位531の大きさや形状、位置、フレーム間(連続して撮影された判定対象画像それぞれの間)での位置の変化、等からそれが折損によるものと判定した場合に遮断かんに異常が発生していることを検出する。
【0044】
次に、機械学習処理及び判別処理のタイミングについて説明する。踏切監視装置1は、機械学習処理を行うタイミングを学習タイミングとして判定する。そして、学習タイミングにおける踏切画像を基準画像として機械学習処理を行い、踏切道分類学習モデル及び遮断かん分類学習モデルを随時更新して生成する。本実施形態では、踏切道5から列車が進出した後、所定の学習時間が経過するまでの間を学習タイミングと判定する。学習時間の長さは、列車の通過後、遮断かん7が上昇し始めるまでの時間や、遮断かん7が上昇して開放状態となるまでの時間等に基づいて予め設定しておく。列車が通過した後は、遮断かん7が上昇して開放状態となる前であれば踏切道5に人や車等の障害物は存在していないと考えられ、正常時の踏切画像を取得可能だからである。これによれば、踏切道分類学習モデル及び遮断かん分類学習モデルの生成・更新に必要となる正常時の踏切画像を自動的に取得することが可能となる。
【0045】
踏切道5からの列車の進出判定は、例えば、画像処理による物体検知技術を用いて行う。図6は、列車の進出判定を説明するための模式図である。先ず、フレーム毎に入力される踏切画像から軌道部分9a,9bのエリア15a,15bが写る列車進入出判定領域を切り取る。踏切画像の撮影範囲は固定であるため、エリア15a,15bが写る列車進入出判定領域も固定的に決まっており、上り方向/下り方向も固定的に決まっている。また、列車の大きさや、画像中のどの部分を通過するかも固定的に決まっている。
【0046】
そして、進出方向が上り方向となるエリア15aの列車進入出判定領域の画像部分を対象に、進出方向である矢印A61の方向に移動する物体71を検知する。そして、その大きさや形状、位置、移動の速度等をもとにそれが列車なのかを判定し、列車と判定した場合は、次のフレームの踏切画像中のエリア15aの画像部分に、当該列車が存在しないことを判定することで、踏切道5から上り線の列車が進出したと判定する。また、進出方向が下り方向となるエリア15bの列車進入出判定領域の画像部分を対象に、進出方向である矢印A63の方向に移動する物体73を同様に検知する。検知した物体73を列車と判定した場合は、次のフレームの踏切画像中のエリア15bの画像部分に当該列車が存在しないことを判定することで、踏切道5から下り線の列車が進出したと判定する。
【0047】
進出判定の結果、上り/下りの双方ともに踏切道5から列車が進出した状態にあると判定した場合に、その後学習時間が経過するまでの間、フレーム毎に入力される踏切画像を基準画像として用いて、機械学習処理を行う。
【0048】
また、踏切監視装置1は、判別処理を行うタイミングを判別タイミングとして判定する。そして、踏切監視装置1は、判別タイミングにおける踏切画像を判定対象画像として判別処理を行い、踏切道5及び遮断かん7の異常の発生を検出する。本実施形態では、遮断かん7が遮断状態となった後、踏切道5へ列車が進入する直前までの間を判別タイミングとする。したがって、列車が進入する前の踏切道5における障害物を監視できる。
【0049】
踏切道5への列車の進入判定は、進出判定と同様、画像処理による物体検知技術を用いて行う。図7は、列車の進入判定を説明するための模式図である。先ず、フレーム毎に入力される踏切画像から軌道部分9a,9bのエリア15a,15bが写る列車進入出判定領域を切り取る。そして、進入方向が下り方向となるエリア15aの列車進入出判定領域の画像部分を対象に、進入方向である矢印A65の方向に移動する物体75を検知する。検知した物体75を列車と判定した場合は、踏切道5へ下り線の列車が進入したと判定する。また、進入方向が上り方向となるエリア15bの列車進入出判定領域の画像部分を対象に、進入方向である矢印A67の方向に移動する物体77を検知する。検知した物体77を列車と判定した場合には、踏切道5へ上り線の列車が進入したと判定する。
【0050】
遮断かん7が遮断状態となった後の進入判定の結果において、上り/下りの双方ともに踏切道5への列車が進入する前の状態(進入していない状態)にあると判定した場合に、その後学習時間が経過するまでの間、フレーム毎に入力される踏切画像を判定対象画像として判別処理を行い、踏切道5及び遮断かん7の異常の発生を検出する。
【0051】
[機能構成]
図8は、踏切監視装置1の機能構成例を示すブロック図である。図8に示すように、踏切監視装置1は、操作部110と、表示部120と、画像入力部130と、演算処理部140と、記憶部150と、通信部190とを備え、一種のコンピュータとして構成することができる。
【0052】
操作部110は、プッシュスイッチやダイヤル等を有して構成され、表示部120は、LEDや小型の液晶表示装置等を有して構成される。操作部110及び表示部120は、主に作業員によってメンテナンス時に利用されるものである。
【0053】
画像入力部130は、カメラ3と接続され、フレーム毎に図1を参照して説明した撮影範囲の踏切画像を入力する。入力した踏切画像は、踏切画像データ153として撮影日時と関連付けて記憶部150に格納される。
【0054】
演算処理部140は、例えばCPU(Central Processing Unit)やDSP(Digital Signal Processor)等のプロセッサ、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)等の電子部品によって実現され、装置各部との間でデータの入出力制御を行う。そして、所定のプログラムやデータ、画像入力部130に入力された踏切画像等に基づいて各種の演算処理を行い、踏切監視装置1の動作を制御する。この演算処理部140は、領域切り取り部141と、機械学習処理部142と、判別処理部143と、遮断状態判定部144と、異常発生検出部145と、列車進入出判定部146と、学習タイミング判定部147と、判別タイミング判定部148と、を含む。これらの機能部は、プログラムを実行することによりソフトウェアとして実現される処理ブロックであってもよいし、ASICやFPGA等のハードウェア回路によって実現される回路ブロックであってもよい。本実施形態では、演算処理部140が踏切監視プログラム151を実行することによりソフトウェアとして実現される処理ブロックとして説明する。
【0055】
領域切り取り部141は、画像入力部130に入力された踏切画像から、踏切道領域及び遮断かん領域の2つの規定領域と、列車進入出判定領域と、を切り取る。
【0056】
機械学習処理部142は、機械学習処理を行う機能部であり、学習タイミング判定部147によって判定された学習タイミングにおいて画像入力部130に入力された踏切画像を基準画像として機械学習処理を行い、随時分類学習モデル(単位画素別分類学習モデル)を更新して生成する。本実施形態では、領域切り取り部141によって基準画像から切り取られた踏切道領域の画像について機械学習処理を行い、踏切道分類学習モデルを生成して踏切道分類学習モデルデータ157を更新する。また、領域切り取り部141によって基準画像から切り取られた遮断かん領域の画像について機械学習処理を行い、遮断かん分類学習モデルを生成して遮断かん分類学習モデルデータ159を更新する。
【0057】
判別処理部143は、判別処理を行う機能部であり、判別タイミング判定部148によって判定された判別タイミングにおいて画像入力部130に入力された踏切画像を判定対象画像とし、機械学習処理部142によって生成された分類学習モデルを用いて単位画素毎にカテゴリ分類を行う。そして、カテゴリ分類結果によって、単位画素毎に正常時のカテゴリの被写体が写っているか否かを判別する。本実施形態では、領域切り取り部141によって判定対象画像から切り取られた踏切道領域を対象に踏切道分類学習モデルを用いてカテゴリ分類を行い、単位画素毎に踏切道5が写っているか否かを判別する。また、領域切り取り部141によって判定対象画像から切り取られた遮断かん領域を対象に遮断かん分類学習モデルを用いてカテゴリ分類を行い、単位画素毎に遮断かん7が写っているか否かを判別する。
【0058】
遮断状態判定部144は、領域切り取り部141によって踏切画像から切り取られた遮断かん領域について遮断かん分類学習モデルを用いてカテゴリ分類を行い、単位画素毎に遮断かん7が写っているか否かを判別することで遮断かん7の遮断状態を判定する。例えば、カテゴリ分類結果として得られたラベル画像において遮断かん領域の全ての単位画素に「遮断かん」のラベルが付されていることにより、全ての単位画素にカテゴリ「遮断かん」の被写体が写っていると判別された場合は、遮断かん7を遮断状態と判定する。遮断かん領域の全ての単位画素に「遮断かん」のラベルが付されていないことにより、全ての単位画素にカテゴリ「遮断かん」の被写体が写っていないと判別された場合は、遮断かん7が開放状態と判定する。
【0059】
なお、遮断状態判定部144は、通信部190を介して踏切遮断機の駆動を制御する踏切制御装置と通信を行い、遮断状態であるか開放状態であるかを随時取得・判定することとしてもよい。
【0060】
異常発生検出部145は、判別処理部143の判別結果に基づいて、踏切道5及び/又は遮断かん7の異常の発生を検出する。本実施形態では、判別処理部143による判別処理の結果、踏切道領域において踏切道5が写っていないと判別された部位がある場合に、当該部位に基づいて踏切道5の異常の発生を検出する。例えば、当該部位を構成する単位画素の数(当該部位の大きさ)、当該部位の形状、位置、フレーム間(連続して撮影された判定対象画像それぞれの間)での当該部位の位置の変化、等に基づいて定められた所定の踏切道異常判定条件を満たす場合に、踏切道5の異常の発生を検出する。
【0061】
また、異常発生検出部145は、遮断かん領域において遮断かん7が写っていないと判別された部位がある場合に、当該部位に基づいて遮断かん7の異常の発生を検出する。例えば、当該部位を構成する単位画素の数(当該部位の大きさ)、当該部位の形状、位置、フレーム間(連続して撮影された判定対象画像それぞれの間)での当該部位の位置の変化、等に基づいて定められた所定の遮断かん異常判定条件を満たす場合に、遮断かん7の異常の発生を検出する。
【0062】
そして、異常発生検出部145は、それら異常の発生を検出した場合に、通信部190を介してその旨を外部出力する制御を行う。外部出力の内容は特に限定されないが、例えば監視対象の踏切に向かって運行中の列車の車上装置に異常の発生を通知する警報信号を出力して運転士に報知する他、駅装置や中央装置に異常の発生を通知したり、踏切道5の周囲に警報音を出力する、等が挙げられる。
【0063】
列車進入出判定部146は、領域切り取り部141によって踏切画像から切り取られた列車進入出判定領域の画像を画像処理することで、踏切道5への列車の進入判定を行う列車進入判定部の機能と、踏切道5からの列車の進出判定を行う列車進出判定部の機能と、を実現する。
【0064】
学習タイミング判定部147は、列車進入出判定部146による列車の進出判定結果に基づいて、機械学習処理を実行する学習タイミングを判定する。
【0065】
判別タイミング判定部148は、遮断状態判定部144による遮断かん7の遮断状態の判定結果に基づいて、判別処理部143による判別を実行する判別タイミングを判定する。本実施形態では、列車進入出判定部146による列車の進入判定結果を併せて用いて、判別タイミングを判定する。
【0066】
記憶部150は、ICメモリやハードディスク、光学ディスク等の記憶媒体により実現される。この記憶部150には、踏切監視装置1を動作させ、踏切監視装置1が備える種々の機能を実現するためのプログラムや、当該プログラムの実行中に使用されるデータ等が予め記憶され、或いは処理の都度一時的に記憶される。例えば、記憶部150には、踏切監視プログラム151と、踏切画像データ153と、分類学習モデルデータ155とが格納される。分類学習モデルデータ155は、踏切道分類学習モデルデータ157と、遮断かん分類学習モデルデータ159とを含む。
【0067】
踏切監視プログラム151は、演算処理部140を領域切り取り部141、機械学習処理部142、判別処理部143、遮断状態判定部144、異常発生検出部145、列車進入出判定部146、学習タイミング判定部147、及び判別タイミング判定部148として機能させるためのプログラムである。
【0068】
通信部190は、有線通信又は無線通信によって外部装置と通信を行う装置である。例えば、異常発生検出部145により異常の発生が検出された場合に警報信号を列車の車上装置や駅装置に送信したり、踏切道5の周囲に警報音を出力する所定の警報発出装置に警報発動要請信号を送信する。また、踏切遮断機の駆動を制御する踏切制御装置から遮断かん7の状態を取得する場合には、当該踏切制御装置とのやり取りを担う。
【0069】
[処理の流れ]
図9は、踏切監視装置1が行う処理の流れを示すフローチャートである。ここで説明する処理は、踏切監視装置1において、演算処理部140が記憶部150から踏切監視プログラム151を読み出して実行することで実現できる。
【0070】
図9に示すように、先ず、遮断状態判定部144が、フレーム毎に踏切画像の遮断かん領域の画像部分に基づいて遮断かん7の遮断状態を判定する。そして、遮断かん7が遮断状態の場合は(ステップS1:YES)、続いて列車進入出判定部146が、列車の進入判定を開始する。例えば、フレーム毎に踏切画像の列車進入出判定領域を画像処理し、進入判定を繰り返す。そして、踏切道5へ列車が進入したことを判定するまでの間は(ステップS2:NO)、判別タイミング判定部148が判別タイミングであると判定し(ステップS3)、判別処理部143がそのときの踏切画像を判定対象画像として判別処理を行って、正常時のカテゴリの被写体が写っているか否かを単位画素毎に判別する(ステップS5)。踏切道領域については踏切道分類学習モデルを用いたカテゴリ分類を行い、遮断かん領域については遮断かん分類学習モデルを用いたカテゴリ分類を行うことで判別処理を実行する。
【0071】
続いて、異常発生検出部145が、ステップS5での判別処理の結果、踏切道領域に踏切道5が写っていないと判別された部位があるときは、当該部位に基づいて踏切道5の異常の発生を検出する。異常の発生を検出した場合は(ステップS7:YES)、異常発生検出部145は、当該踏切道5の異常の発生の旨を外部出力する(ステップS9)。
【0072】
また、異常発生検出部145は、ステップS5での判別処理の結果、遮断かん領域に遮断かん7が写っていないと判別された部位があるときは、当該部位に基づいて遮断かん7の異常の発生を検出する。異常の発生を検出した場合は(ステップS11:YES)、異常発生検出部145は、当該遮断かん7の異常の発生の旨を通信部190を介して外部出力する(ステップS13)。
【0073】
一方、列車進入出判定部146が踏切道5へ列車が進入したことを判定した場合は(ステップS2:YES)、列車の進出判定を開始する。例えば、フレーム毎に踏切画像の列車進入出判定領域を画像処理し、進出判定を繰り返す。そして、踏切道5から列車が進出したことを判定した場合は(ステップS17:YES)、学習タイミング判定部147が学習タイミングであると判定し(ステップS19)機械学習処理部142がそのときの踏切画像を基準画像として機械学習処理を行い、踏切道分類学習モデル及び遮断かん分類学習モデルを生成・更新する(ステップS21)。
【0074】
その後は、ステップS17での進出判定の時点から所定の学習時間が経過するまでの間は(ステップS23:NO)、ステップS19に戻って学習タイミングと判定することで、ステップS21の機械学習処理を繰り返す。そして、学習時間が経過した後は(ステップS23:YES)、遮断状態判定部144が、フレーム毎に踏切画像の遮断かん領域の画像部分に基づいて遮断かん7の開放状態を判定する。遮断かん7が開放状態の場合は(ステップS25:YES)、ステップS1に戻って遮断かん7の遮断状態を待機し、上記した処理を繰り返す。
【0075】
以上説明したように、本実施形態によれば、従来の踏切監視装置のような、踏切毎に踏切監視に必要となる設計や調整に係る条件設定を簡易化することが可能となる。具体的には、踏切道領域に踏切道5が写っていない部位があるときは、踏切道5に障害物が存在する等の踏切道5の異常の発生を検出し、遮断かん領域に遮断かん7が写っていない部位があるときは、遮断かん7が折損した等の遮断かん7の異常の発生を検出することができる。したがって、踏切道5における障害物の監視と併せて、遮断かんの折損等の監視が可能となる。また、ミリ波レーダセンサ等の物体検知センサを必要とせず、カメラ3で撮影された撮影画像を用いて監視を行うことができるため、物体検知センサを必要とする踏切監視装置に比べて、コストを下げることができる。
【0076】
なお、本発明を適用可能な形態は上記した実施形態に限定されるものではなく、適宜構成要素の追加・省略・変更を施すことができる。
【0077】
[変形例1]
例えば、上記実施形態では、踏切道領域及び遮断かん領域の規定領域別に分類学習モデル(単位画素別分類学習モデル)を生成・更新し、規定領域別の分類学習モデルを用いて判別処理を行うこととした。すなわち、踏切道領域の分類学習モデルは1つのカテゴリ「踏切道」のみをラベル付けし、遮断かん領域の分類学習モデルは1つのカテゴリ「遮断かん」のみをラベル付けすることとして例示した。これに対し、踏切道領域及び遮断かん領域の規定領域別に分けずに、撮影画像全体に対して、カテゴリ「踏切道」と、カテゴリ「遮断かん」とをラベル付け可能な1つの分類学習モデルを生成・更新する構成としてもよい。その場合の判別処理では、判定対象画像から踏切道領域及び遮断かん領域を切り取ることなく、判定対象画像全体に対して、当該分類学習モデルを用いて単位画素毎にカテゴリ分類を行う。そして、判定対象画像のうちの踏切道領域の単位画素毎に踏切道5が写っているか否かを判別するとともに、判定対象画像のうちの遮断かん領域の単位画素毎に遮断かん7が写っているか否かを判別すればよい。
【0078】
[変形例2]
また、機械学習処理や判別処理のために踏切画像(基準画像及び判定対象画像)から踏切道領域と遮断かん領域の各規定領域を切り取る機能は、機械学習処理部142や判別処理部143がそれぞれ備えた構成としてもよい。
【0079】
[変形例3]
また、上記実施形態では、踏切道5と遮断かん7の両方についてその異常の発生を検出する例を説明したが、何れか一方の異常を検出する構成としてもよい。例えば、踏切道5を撮影範囲に含むカメラで撮影された踏切画像を、踏切道5のエリアが写る踏切道領域と、それ以外の領域とに分ける。そして、踏切道領域の画像に基づいて、踏切道5に発生した異常を検出する構成としてもよい。また、遮断かん7を撮影範囲に含むカメラで撮影された踏切画像を、遮断かん7のエリアが写る遮断かん領域と、それ以外の領域とに分ける。そして、遮断かん領域の画像に基づいて、遮断かん7に発生した異常を検出する構成としてもよい。
【0080】
[変形例4]
また、上記実施形態では、学習タイミングにおける踏切画像を基準画像として機械学習処理を行い、踏切道分類学習モデル及び遮断かん分類学習モデルを随時更新する例を説明した。これに対し、事前に機械学習処理を行って生成しておいた学習済みの踏切道分類学習モデル及び/又は遮断かん分類学習モデルを用い、単位画素毎に踏切道5が写っているか否かの判別や、単位画素毎に遮断かん7が写っているか否かを判別する構成としてもよい。
【0081】
[変形例5]
また、上記実施形態では、1画素を単位画素とする例を説明した。これに対し、例えば、縦2画素×横2画素の4画素を単位画素としたり、縦3画素×横3画素の9画素を単位画素とする等、所定数の画素を単位画素としてもよい。単位画素とする画素数を予め設定しておくことで実現できる。
【0082】
[変形例6]
また、分類学習モデル(踏切道分類学習モデル及び遮断かん分類学習モデル)は、時間帯や天候等の環境条件別に生成・更新し、そのときの環境に適したものを選択的に用いる構成としてもよい。例えば、日中の時間帯に適用する分類学習モデルと、夜間の時間帯に適用する分類学習モデルとを別個に生成・更新する構成としてもよい。その場合は、学習タイミングが日中の時間帯のときは日中用の分類学習モデルを生成・更新する。そして、日中の判別タイミングでは、当該日中用の分類学習モデルを用いて判別処理を行う。一方、学習タイミングが夜間の時間帯のときは夜間用の分類学習モデルを生成・更新する。そして、夜間の判別タイミングでは、当該夜間用の分類学習モデルを用いて判別処理を行う。
【0083】
或いは、晴れ、曇り、雨、雪等の天候毎に別個に分類学習モデルを生成・更新する構成としてもよい。その場合は、例えば、踏切道5において天候を判定するための各種環境計測用センサを設置し、当該センサの計測値に基づいてそのときの気候を判定する。そして、学習タイミングでの天候に応じて該当する天候用の分類学習モデルを生成・更新する。また、判別タイミングでの天候に応じて、該当する天候用の分類学習モデルを用いて判別処理を行う。なお、環境計測用センサを設置することで踏切道5の天候を判定する構成に限らず、外部装置から気象情報を随時取得する構成としてもよい。
【0084】
本変形例によれば、学習タイミングでの時刻や天候等の環境に応じて環境条件別の分類学習モデルを随時更新して生成しつつ、判定タイミングでの環境に応じて分類学習モデルを切り替えて用いて判別処理を行うことができる。したがって、踏切道5や遮断かん7の異常の発生をより精度良く検出することが可能となる。
【0085】
[変形例7]
また、上記実施形態では、図1において上り線と下り線が並走する踏切道5を例示したが、単線の踏切道や、3線以上を跨ぐ踏切道にも同様に適用が可能である。上記実施形態と同様の要領で踏切道への進入方向に移動する物体を検出して列車の進入判定を行うとともに、踏切道からの進出方向に移動する物体を検出して列車の進出判定を行うことで、対象の踏切道への列車の進入や当該踏切道からの列車の進出を判定できる。
【0086】
[変形例8]
また、列車の進入判定や進出判定は、列車進入出判定領域の画像を画像処理することで行う構成に限定されない。例えば、対応する踏切遮断機が遮断かん7の下降指令を受けて遮断かん7を下降させ始めた後、所定の進入判定時間が経過したタイミングを踏切道5への列車の進入タイミングとみなして、列車が踏切道5へ進入したことを検出する構成としてもよい。対応する踏切遮断機の駆動を制御する踏切制御装置から、通信部190を介して、遮断かん7の下降指令や上昇指令の信号を、踏切監視装置1へ入力することで実現できる。進入判定時間は、下降指令後、実際に列車が踏切道5に進入し始めるまでの時間をもとに予め設定しておく。
【0087】
遮断かん7の遮断状態についても同様に、遮断かん7の下降指令や上昇指令のタイミングに基づき判定することができる。例えば、踏切遮断機が遮断かん7を下降させ始めてから(つまり下降指令のタイミングから)所定の下降時間が経過したタイミングを遮断かん7が遮断状態に至ったとみなす判定をする構成としてもよい。また、踏切遮断機が遮断かん7を上昇させ始めてから(つまり上昇指令のタイミングから)所定の上昇時間が経過したタイミングを遮断かん7が開放状態に至ったとみなす判定をするようにしてもよい。このときの上昇時間をゼロとして、上昇指令のタイミングで開放状態に至ったと判定することとしてもよい。
【符号の説明】
【0088】
1 踏切監視装置、110 操作部、120 表示部、130 画像入力部、140 演算処理部、141 領域切り取り部、142 機械学習処理部、143 判別処理部、144 遮断状態判定部、145 異常発生検出部、146 列車進入出判定部、147 学習タイミング判定部、148 判別タイミング判定部、150 記憶部、151 踏切監視プログラム、153 踏切画像データ、155 分類学習モデルデータ、157 踏切道分類学習モデルデータ、159 遮断かん分類学習モデルデータ、3 カメラ、5 踏切道、7 遮断かん
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9