(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023001853
(43)【公開日】2023-01-06
(54)【発明の名称】豆腐類製造装置
(51)【国際特許分類】
A23L 11/45 20210101AFI20221226BHJP
【FI】
A23L11/45 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022013701
(22)【出願日】2022-01-31
(31)【優先権主張番号】P 2021102657
(32)【優先日】2021-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021195527
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591162631
【氏名又は名称】株式会社高井製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】高井 東一郎
(72)【発明者】
【氏名】粟津 透
(72)【発明者】
【氏名】天野 原成
(72)【発明者】
【氏名】地黄 誠
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸 裕介
(72)【発明者】
【氏名】松本 敏綺
(72)【発明者】
【氏名】時長 克也
(72)【発明者】
【氏名】由田 陸
【テーマコード(参考)】
4B020
【Fターム(参考)】
4B020LB02
4B020LC09
4B020LC10
4B020LG01
4B020LQ01
4B020LQ02
4B020LQ03
4B020LQ04
4B020LR01
(57)【要約】
【課題】大豆を短時間で浸漬可能な豆腐類製造装置を提供する。
【解決手段】豆腐類の製造装置は、原料大豆を挽き割ることで挽き割り大豆を得る挽き割り装置と、挽き割り大豆を水に浸漬させて少なくとも1.2倍~2.4倍まで膨潤した膨潤大豆を得る浸漬装置と、膨潤大豆を磨砕して生呉を得る磨砕装置と、を備える。浸漬装置において、挽き割り大豆が短時間で浸漬される。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料大豆を挽き割ることで挽き割り大豆を得る挽き割り装置と、
前記挽き割り大豆を水に浸漬させて少なくとも1.2倍~2.4倍まで膨潤した膨潤大豆を得る浸漬装置と、
前記膨潤大豆を磨砕して生呉を得る磨砕装置と、
を備える、豆腐類の製造装置であって、
前記浸漬装置において、前記挽き割り大豆が短時間で浸漬される
ことを特徴とする豆腐類製造装置。
【請求項2】
前記挽き割り装置は、加水しながら前記原料大豆を挽き割る、加水装置が1つ以上設けられる、
請求項1に記載の豆腐類製造装置。
【請求項3】
前記浸漬装置には、前記挽き割り大豆の膨潤速度に応じて水を加える加水装置が少なくとも一つ設けられる、
請求項1又は2に記載の豆腐類製造装置。
【請求項4】
前記浸漬装置は、前記挽き割り大豆を水に浸漬しながら搬送する搬送流路を有し、
前記搬送流路は、前記挽き割り大豆の膨潤による体積膨張に応じて、その断面積が増大する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項5】
前記浸漬装置は、前記挽き割り大豆を水に浸漬しながら搬送する搬送流路を有し、
前記搬送流路は、前記挽き割り大豆を重力方向において下方から上方に向かって搬送する
請求項1~4のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項6】
前記浸漬装置は、
前記挽き割り大豆を水に浸漬しながら搬送する搬送流路を構成するパイプと、
前記挽き割り大豆及び前記水を前記パイプに向かって供給するポンプと、
を有する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項7】
前記パイプは、前記挽き割り大豆が重力方向において下側から上側に向かうように形成される、
請求項6に記載の豆腐類製造装置。
【請求項8】
前記パイプは、角度が180度以下の折り返し部を有する
請求項6又は7に記載の豆腐類製造装置。
【請求項9】
前記パイプの前記折り返し部には、前記パイプの内部に向かってエアを吹き付けるエア噴出機が設けられる
請求項8に記載の豆腐類製造装置。
【請求項10】
前記パイプには、前記水を加熱する加熱装置が設けられる
請求項6~9のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項11】
前記パイプ内には、スタティックミキサーが設けられる
請求項6~10のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項12】
前記浸漬装置は、
前記挽き割り大豆が水に浸漬しながら搬送される搬送流路を構成するトラフと、
前記トラフの内部に設けられたスクリューと、
を有し、
前記トラフ内に供給された前記挽き割り大豆及び水は、前記スクリューが回転することで前記トラフ内を進行する、
請求項1~5のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項13】
前記トラフは、前記挽き割り大豆が重力方向において下側から上側に向かうように形成される、
請求項12に記載の豆腐類製造装置。
【請求項14】
前記トラフの内部には、前記スクリューが1本ないしは複数本設けられることを特徴とする、
請求項12又は13に記載される豆腐類製造装置。
【請求項15】
前記浸漬装置は、前記トラフと前記スクリューとを有するトラフ・スクリュー装置を、複数有し、
複数の前記トラフ・スクリュー装置は、重力方向における上下方向に多段に設けられ、
前記挽き割り大豆及び水は、下段の前記トラフ・スクリュー装置から上段の前記トラフ・スクリュー装置に搬送される、
請求項12~14のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項16】
前記浸漬装置は、前記スクリューに付着した前記挽き割り大豆をエアで吹き落とすエア噴出装置を備える、
請求項12~15のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項17】
前記挽き割り装置で得られた前記挽き割り大豆と、水と、が供給される回転容積式一軸偏心ねじポンプをさらに備え、
前記回転容積式一軸偏心ねじポンプは、前記挽き割り大豆と前記水とを混ぜ合わせながら前記浸漬装置に供給する、
請求項12~16のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項18】
前記浸漬装置は、前記挽き割り大豆を水に浸漬するための複数の浸漬槽を有するバッチ式連続浸漬装置である
請求項1~3のいずれか一項に記載の豆腐類製造装置。
【請求項19】
前記浸漬装置は、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部で互いに間隔を空けて配置された複数の壁部材と、
を備え、
隣り合う前記壁部材の間には、前記複数の浸漬槽が形成され、
前記複数の壁部材が移動することにより、前記複数の浸漬槽は、前記挽き割り大豆を搬送しながら水に浸漬する
請求項18に記載の豆腐類製造装置。
【請求項20】
原料大豆を挽き割ることで挽き割り大豆を得る挽き割り工程と、
前記挽き割り大豆を水に浸漬させて少なくとも1.2倍~2.4倍まで膨潤した膨潤大豆を得る浸漬工程と、
前記膨潤大豆を磨砕して生呉を得る磨砕工程と、
を備える、豆腐類製造方法であって、
前記浸漬工程において、前記挽き割り大豆が短時間で浸漬される
ことを特徴とする豆腐類製造方法。
【請求項21】
前記挽き割り工程は、加水しながら前記原料大豆を挽き割る、
請求項20に記載の豆腐類製造方法。
【請求項22】
前記原料大豆は洗浄若しくは殺菌を行ってある状態の物、又は洗浄・殺菌装置を通過した物を使用する、
請求項20又は21に記載の豆腐類製造方法。
【請求項23】
前記原料大豆は表面が湿潤している状態の物を使用する、
請求項20~22のいずれか一項に記載の豆腐類製造方法。
【請求項24】
前記原料大豆を前記挽き割り工程で挽き割った際に発生する種皮を全て又は一部を利用することを特徴とする、
請求項20~23のいずれか一項に記載の豆腐類製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐、油揚げ、豆乳等の豆腐類を製造するための豆腐類製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
豆腐類である豆腐は、一般的に、特許文献1に記載されるような工程で製造されている。すなわち、原料大豆を水に約20時間浸漬した後、ひき水を加えながら粉砕機で細かく粉砕して生呉とする。次に生呉を煮沸して呉とし、呉を豆乳とオカラに分離する。次に分離した豆乳のpHを測定してから、脱気しながら撹拌して豆乳中に含まれる空気を除去する。その後、豆乳を冷却して、ここに凝固剤を添加し、これを容器に所定量充填して包装する。そして、容器に充填した状態で加熱して熱凝固させると共に殺菌した後、水温まで冷却して絹漉し豆腐が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来の製造工程では、原料大豆を水に約20時間という長時間にわたって浸漬しており、生産効率が悪く、さらには急なオーダーが入った場合にはどうしても対応できなかった。また、1日に生産する分の原料大豆を浸漬するだけの広いスペースが必要であった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、大豆を短時間で効率よく浸漬可能な省スペースになる豆腐類製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 原料大豆を挽き割ることで挽き割り大豆を得る挽き割り装置と、
前記挽き割り大豆を水に浸漬させて少なくとも1.2倍~2.4倍まで膨潤した膨潤大豆を得る浸漬装置と、
前記膨潤大豆を磨砕して生呉を得る磨砕装置と、
を備える、豆腐類の製造装置であって、
前記浸漬装置において、前記挽き割り大豆が短時間で浸漬される
ことを特徴とする豆腐類製造装置。
(2) 前記挽き割り装置は、加水しながら前記原料大豆を挽き割る、加水装置が1つ以上設けられる、
(1)に記載の豆腐類製造装置。
(3) 前記浸漬装置には、前記挽き割り大豆の膨潤速度に応じて水を加える加水装置が少なくとも一つ設けられる、
(1)又は(2)に記載の豆腐類製造装置。
(4) 前記浸漬装置は、前記挽き割り大豆を水に浸漬しながら搬送する搬送流路を有し、
前記搬送流路は、前記挽き割り大豆の膨潤による体積膨張に応じて、その断面積が増大する、
(1)~(3)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(5) 前記浸漬装置は、前記挽き割り大豆を水に浸漬しながら搬送する搬送流路を有し、
前記搬送流路は、前記挽き割り大豆を重力方向において下方から上方に向かって搬送する
(1)~(4)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(6) 前記浸漬装置は、
前記挽き割り大豆を水に浸漬しながら搬送する搬送流路を構成するパイプと、
前記挽き割り大豆及び前記水を前記パイプに向かって供給するポンプと、
を有する、
(1)~(5)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(7) 前記パイプは、前記挽き割り大豆が重力方向において下側から上側に向かうように形成される、
(6)に記載の豆腐類製造装置。
(8) 前記パイプは、角度が180度以下の折り返し部を有する
(6)又は(7)に記載の豆腐類製造装置。
(9) 前記パイプの前記折り返し部には、前記パイプの内部に向かってエアを吹き付けるエア噴出機が設けられる
(8)に記載の豆腐類製造装置。
(10) 前記パイプには、前記水を加熱する加熱装置が設けられる
(6)~(9)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(11) 前記パイプ内には、スタティックミキサーが設けられる
(6)~(10)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(12) 前記浸漬装置は、
前記挽き割り大豆が水に浸漬しながら搬送される搬送流路を構成するトラフと、
前記トラフの内部に設けられたスクリューと、
を有し、
前記トラフ内に供給された前記挽き割り大豆及び水は、前記スクリューが回転することで前記トラフ内を進行する、
(1)~(5)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(13) 前記トラフは、前記挽き割り大豆が重力方向において下側から上側に向かうように形成される、
(12)に記載の豆腐類製造装置。
(14) 前記トラフの内部には、前記スクリューが1本ないしは複数本設けられることを特徴とする、
(12)又は(13)に記載される豆腐類製造装置。
(15) 前記浸漬装置は、前記トラフと前記スクリューとを有するトラフ・スクリュー装置を、複数有し、
複数の前記トラフ・スクリュー装置は、重力方向における上下方向に多段に設けられ、
前記挽き割り大豆及び水は、下段の前記トラフ・スクリュー装置から上段の前記トラフ・スクリュー装置に搬送される、
(12)~(14)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(16) 前記浸漬装置は、前記スクリューに付着した前記挽き割り大豆をエアで吹き落とすエア噴出装置を備える、
(12)~(15)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(17) 前記挽き割り装置で得られた前記挽き割り大豆と、水と、が供給される回転容積式一軸偏心ねじポンプをさらに備え、
前記回転容積式一軸偏心ねじポンプは、前記挽き割り大豆と前記水とを混ぜ合わせながら前記浸漬装置に供給する、
(12)~(16)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(18) 前記浸漬装置は、前記挽き割り大豆を水に浸漬するための複数の浸漬槽を有するバッチ式連続浸漬装置である
(1)~(3)のいずれか一つに記載の豆腐類製造装置。
(19) 前記浸漬装置は、
ハウジングと、
前記ハウジングの内部で互いに間隔を空けて配置された複数の壁部材と、
を備え、
隣り合う前記壁部材の間には、前記複数の浸漬槽が形成され、
前記複数の壁部材が移動することにより、前記複数の浸漬槽は、前記挽き割り大豆を搬送しながら水に浸漬する
(18)に記載の豆腐類製造装置。
(20) 原料大豆を挽き割ることで挽き割り大豆を得る挽き割り工程と、
前記挽き割り大豆を水に浸漬させて少なくとも1.2倍~2.4倍まで膨潤した膨潤大豆を得る浸漬工程と、
前記膨潤大豆を磨砕して生呉を得る磨砕工程と、
を備える、豆腐類製造方法であって、
前記浸漬工程において、前記挽き割り大豆が短時間で浸漬される
ことを特徴とする豆腐類製造方法。
(21) 前記挽き割り工程は、加水しながら前記原料大豆を挽き割る、
(20)に記載の豆腐類製造方法。
(22) 前記原料大豆は洗浄若しくは殺菌を行ってある状態の物、又は洗浄・殺菌装置を通過した物を使用する、
(20)又は(21)に記載の豆腐類製造方法。
(23) 前記原料大豆は表面が湿潤している状態の物を使用する、
(20)~(22)のいずれか一つに記載の豆腐類製造方法。
(24) 前記原料大豆を前記挽き割り工程で挽き割った際に発生する種皮を全て又は一部を利用することを特徴とする、
(20)~(23)のいずれか一つに記載の豆腐類製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、大豆を短時間で効率よく浸漬可能な省スペースになる豆腐類製造装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の豆腐類製造装置における、豆腐類の製造工程を示すフロー図である。
【
図2】
図2は、第一実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図3】
図3は、第一実施形態の第一変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図4】
図4は、第一実施形態の第二変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図5】
図5は、第一実施形態の第三変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図6】
図6は、第二実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置、磨砕装置及び豆乳製造装置を示す模式図である。
【
図7】
図7は、第三実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置、磨砕装置及び豆乳製造装置を示す模式図である。
【
図8】
図8は、第四実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るトラフを示す図である。
【
図13】
図13は、変形例に係るトラフを軸方向から見た図である
【
図14】
図14は、変形例に係る浸漬装置を示す模式図である。
【
図15】
図15は、第四実施形態の参考例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図16】
図16は、第四実施形態の変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置のスクリュー43を示す図である。
【
図17】
図17は、第四実施形態の変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図18】
図18は、第五実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図19】
図19は、第五実施形態の変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図20】
図20は、第五実施形態の変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を示す模式図である。
【
図21】
図21は、第六実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置の斜視図である。
【
図22】
図22は、第六実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置を重力方向上方から見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る豆腐類製造装置の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の豆腐類製造装置における、豆腐類の製造工程を示すフロー図である。先ず、
図1を参照し、豆腐類の製造工程の概略を説明する。
【0011】
図1に示すように、最初に原料丸大豆10を選別し(ステップS1)、洗浄・殺菌装置3に供給して表面の種皮13を洗浄もしくは殺菌する(ステップS2)。洗浄または殺菌方法については乾式・湿式と方法は問わず、水(熱水)、バブリング、薬液、研磨、エア、UV殺菌、オゾン、過熱水蒸気、乾熱(熱風)・・・など特に限定はしない。なお、ステップS2では1回以上洗浄もしくは殺菌を行うことが好ましいが、必要に応じて省略しても構わない。また、原料丸大豆10が仕入れの段階で洗浄もしくは殺菌が行われているものである場合もステップS2を省略しても構わない。また、洗浄・殺菌装置3で使用された水を排水しても構わない(ステップS2A)。
【0012】
次に、洗浄・殺菌した丸大豆が挽き割り装置5によって乾式ないしは湿式で粗く挽き割られ(ステップS3)、挽き割り大豆11を得る(ステップS4)。挽き割り大豆11の一粒の体積は、例えば、原料丸大豆10の一粒の体積の1/2から1/64であり、好ましくは1/2~1/32である。なお、ステップS4で得られる挽き割り大豆11は、胚軸15を有する。
【0013】
原料丸大豆10は乾式であることが好ましいが、洗浄・殺菌の方法によっては表面の種皮13が湿るため、半乾式(大豆表面のみ湿潤している状態の物)となっている丸大豆を利用しても良い。
【0014】
また、挽き割り装置5に加水装置を設け、加水を行いながら湿式で挽き割り大豆11を得てもよい(ステップS3A)。
【0015】
豆腐類製造装置が剥皮装置7を備える場合は、挽き割り大豆11は剥皮装置7に供給され(ステップS6)、豆腐類製造装置が剥皮装置7を備えない場合は、ステップS6~S8を省略し、挽き割り大豆11は胚軸15を有した状態で浸漬装置30に供給される(ステップS9)。なお、挽き割り装置5ないし剥皮装置7によって原料大豆が挽き割られる際に剥ぎ取られた種皮13は、剥皮装置7又は浸漬装置30には供給してもしなくてもよい。種皮13をすべて供給する場合、歩留まりの低下を防ぐことができる。ただし、種皮13をすべて供給する場合は洗浄・殺菌装置3にて洗浄・殺菌を行うことが好ましい。原料丸大豆10の種皮13には土壌やほこりなどの汚れがついていたり、雑菌や芽胞菌などが付着していたりするため、未洗浄もしくは未殺菌で生産した場合、豆腐類製品の日持ちの低下や最悪の場合食中毒につながる可能性もある。種皮13を供給しない場合は廃棄されるか、別用途(例えば飼料)に利用される(ステップS5)。廃棄される種皮13は元の原料丸大豆10の重量に対して1%以上、15%以下であることが好ましく、15%より多いと歩留まりが著しく低下する。
【0016】
豆腐類製造装置が剥皮装置7を備える場合、以下のステップS6~S8が適用される。ステップ6で剥皮装置7に供給された挽き割り大豆11は、剥皮装置7によって種皮13及び胚軸15が取り除かれた状態で浸漬装置30に供給される(ステップS7)。剥皮装置7で取り除く種皮13以外の胚軸の重量割合は、元の原料丸大豆10の重量に対して、1%以上、10%以下であることが好ましい。1%未満であると脱胚軸効果が少なくなり好ましくなく、10%より多いと歩留まりが低下するので好ましくない。
【0017】
剥皮装置7によって取り除かれた種皮13及び胚軸15は、廃棄されるか、別用途(例えば飼料)に利用される(ステップS8)。このように、挽き割り大豆11から種皮13及び胚軸15を取り除くことにより、雑味のないスッキリした風味の豆乳や豆腐類にすることができる上に、加熱前の生呉の初発菌数が減少し、完成品の豆腐類の日持ちが向上する。また、従来の丸大豆を洗浄するための水や浸漬した後の排水も節約できる。
【0018】
浸漬装置30には、挽き割り大豆11に加えて、水が供給される(ステップS10)。なお、明細書中の「水」には、常温よりも温かい「温水」が含まれる。浸漬装置30に豆乳される水の温度は、例えば20~95℃であり、好ましくは30~80℃であり、より好ましくは40~70℃である。水質は特に限定しないが、飲料用清水であればいい。浸漬装置30は、挽き割り大豆11を水に浸漬させて少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17を得る(ステップS11)。なお、浸漬装置30は、挽き割り大豆11を水に浸漬しながら搬送する搬送流路を有するような連続搬送式が好ましいが、一時的に滞留・停止・停留する部分があってもよく、その滞留部を切り替えて搬送させる形態でもよく、バッチ連続式断続的搬送式であってもよい。
【0019】
また、膨潤大豆17は、挽き割り大豆11が完全に十分吸水して膨潤したもののみならず、少し吸水して半膨潤したものも含むができるだけ少ない方が良い。具体的には、膨潤大豆17の膨潤率は、十分な膨潤でなくても、挽き割り大豆11を1とした場合、1.2倍~2.4倍の膨潤率であればよく、1.3倍~2.3倍の膨潤率が好ましく、1.5倍~2.2倍の膨潤率がさらに好ましい。膨潤大豆17は、完全にふやけなくても、一部吸水、一部膨潤の状態でもいい。挽き割り粒度分布、水温、時間などの要素にもよるが、膨潤大豆17が一部吸水状態であったとしても、十分な硬さの豆腐ができる。
【0020】
浸漬装置30への挽き割り大豆11及び水の投入順序は、どちらが先でもよく、同時でもよい。いずれにしても、ママコ、ダマの発生や浸漬装置30の壁面への付着が起きないように、撹拌装置などによって挽き割り大豆11及び水が流動状態にして、挽き割り大豆11及び水が投入される。浸漬装置30への水の投入は、挽き割り11の浸漬に必要な所定量を、一回に全量を投入してもよく、段階的に投入してもよく、連続的に投入してもよい。また、浸漬装置30や各所での加水装置で加える水の全体投入量を調整することで、豆乳濃度の変更が可能である。
【0021】
浸漬装置30内の水の温度は、例えば20~95℃であり、好ましくは30~80℃であり、より好ましくは40~70℃である。浸漬装置30に投入される水は温度制御可能であり、浸漬装置30内で挽き割り大豆11を浸漬するための水も温度制御可能である。浸漬装置30内の水を温度制御(加温、保温、冷却)するために、浸漬装置30の搬送流路を二重管としてもよく、搬送流路内を蒸気によって加熱してもよく、搬送流路の周囲にジャケットを配置してもよい。また、浸漬装置30内の水温が高すぎて挽き割り大豆11の浸漬が想定以上に早く進みそうな場合は、0~20℃の冷水を投入して冷却してもよい。浸漬装置30における挽き割り大豆11の浸漬時間は、挽き割り大豆11の大きさ(粒度分布)や浸漬装置30内の水温等の様々な条件によって変化するが、例えば、1秒~3時間であり、好ましくは1分~1時間、さらに好ましくは1分~30分である。より具体的には、浸漬時間は、例えば水温が30℃の場合は20分、水温が40℃の場合は10分、水温が50℃の場合は5分、という短時間に設定できる。なお、挽き割り大豆11を浸漬しすぎると、豆腐が柔らかくなり、酸化臭が生じたり、腐敗が進み腐敗臭がすることがあるので、挽き割り大豆11の長時間浸漬は好ましくない。
【0022】
浸漬装置30によって得られた膨潤大豆17は、浸漬装置30内の水とともに、磨砕装置9に供給されて、更に適宜加水しながら(ステップ12A)磨砕され(ステップS12)、生呉19が得られる(ステップS13)。この生呉19に加水して所定の豆乳濃度が得られるよう調整してもよい。磨砕装置9は、例えばSUS製の湿式微粉砕機であり、スクリーンミル式や石臼式のものが用いられる。
【0023】
生呉19は、豆乳製造装置21において加熱されて呉とされる。(ステップS14)。加熱は、通常と同じかそれ以上の強い条件が好ましい。丸大豆を挽き割らず浸漬した場合、通常、最終製品が豆腐類ならば、最終温度100~105℃まで3~6分間で加熱し、最終製品が油揚ならば、最終温度95~100℃まで1~4分間で加熱する。一方、本発明のように挽き割り大豆11を浸漬した場合、丸大豆を浸漬した場合以上の強い条件、すなわち最終製品が豆腐類なら最終温度105~115℃まで4~15分間で加熱し、最終製品が油揚なら最終温度100~110℃まで2~10分間という強めの加熱をすることが好ましい。なお、油揚を製造する場合、生呉19を加熱直後に戻し水を加水して濃度を合わせると共に煮呉温度を下げる場合もある。直接蒸気吹込みによる加熱では蒸気の凝縮水、ドレンも加水の一部に相当する。
【0024】
次に、呉が搾り装置23においてオカラ12と豆乳14に分離される(ステップS16,S17)。豆乳14は、凝固装置25において凝固剤が加えられて固められ(ステップS18)、凝固熟成後、崩して、切断装置や成形装置27で所望の形状に切断・成形される(ステップS19)。この際、豆腐を崩してでる「ゆ」は除いて排水する。その後、パック詰めされたり、フライ装置へ導入される。絹ごし豆腐の場合は、凝固熟成は穴のない型の中で固められる。凝固剤は特に限定されないが、例えば、硫酸カルシウム(すまし粉)、塩化マグネシウム(ニガリ)、グルコノデルタラクトン(GDL)、塩化カルシウム等が挙げられる。なお、充填豆腐を作る場合は、豆乳を一旦冷却して凝固剤を混合して包装後、加熱冷却して製造する。
【0025】
その後、成形されたものをカットして包装し、冷却することにより豆腐16等の豆腐類が得られる(ステップS20)。上記の製造工程で挽き割り大豆11を浸漬させて得られた豆腐16は、豆乳固形分が10~12wt%(大豆蛋白質が4~5wt%)で、凝固熟成直後で、硬さが40gf/cm2以上、好ましくは50gf/cm2以上、最も好まし
くは60gf/cm2以上となる。また、上記の製造工程で挽き割り大豆11を浸漬させ
て得られた豆腐16の硬さ及び保水性は、通常のように丸大豆を浸漬させて得られた豆腐に比べて、同等もしくは、5%以上高く、好ましくは10%以上高い。また、成形されたものをフライヤ29で揚げることにより(ステップS21)、油揚げ18や絹生揚げ20などが得られる(ステップS22)。
【0026】
本発明の豆腐類製造装置は、上記のような製造工程を経て、絹ごし豆腐、木綿豆腐、充填豆腐、豆乳(飲料用豆乳も含む)、油揚げ(薄揚げ、寿司揚げ)、湯葉、オカラ、絹生揚げ、生揚げ、厚揚げ、がんもどき等の豆腐類が製造されるのであるが、特に、挽き割り大豆11を水に浸漬させて膨潤大豆17を得る浸漬装置30に特徴を有する。したがって、以後、各実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30について説明する。
【0027】
[第一実施形態]
図2は、第一実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。上述の通り、豆腐類製造装置は、原料丸大豆10を乾式で挽き割ることで挽き割り大豆11を得る挽き割り装置5(
図1参照)と、挽き割り大豆11を水Wに浸漬させて少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17を得る浸漬装置30と、膨潤大豆17を磨砕して生呉を得る磨砕装置9(
図1参照)と、を備える。
【0028】
浸漬装置30は、挽き割り装置5によって得られた挽き割り大豆11が投入されるホッパー31と、挽き割り大豆11を水Wに浸漬しながら搬送する搬送流路を構成するパイプ33と、ホッパー31から定量供給された挽き割り大豆11及び給水装置32から別途供給された水Wをパイプに向かって供給するポンプ35と、を有する連続式浸漬装置である。
【0029】
図示の例においては、給水装置32からポンプ35に供給される水Wは温水であり、20~95℃であることが好ましく、30~70℃であることがさらに好ましい。ポンプ35は、回転容積式一軸偏心ねじポンプであり、例えば、モーノポンプ(登録商標)が適用できる。ポンプ35は、モータMによって駆動され、挽き割り大豆11と水Wとを混ぜ合わせながらパイプ33に供給する。このように、ポンプ35として回転容積式一軸偏心ねじポンプを適用することにより、先入れ先出しの効果がある。ポンプ35は固液を送液できる容積式ポンプであればよく、ロータリーポンプ、プランジャポンプ、ダイヤフラムポンプ、ピストン式ポンプ等が適宜採用可能である。吸い込み側ホッパーには固液分離しないように撹拌装置を備えてもよい。
【0030】
パイプ33は、円筒形状であり、その断面積が搬送方向における任意の位置で一定である。パイプ33には、挽き割り大豆11の膨潤速度(吸水率、吸水状態)に応じて水Wを段階的に適宜加える加水装置34が設けられる。加水装置34は、例えばパイプ33と並行に延びる散水管であり、挽き割り大豆11の膨潤速度が所望の範囲に維持されるように、パイプ33の搬送方向における複数箇所に、水Wを供給する。図示の例では、加水装置34からの水Wは、パイプ33内に向けて、搬送方向において一定間隔で供給されている。加水装置34によって供給される水Wの温度は、20~95℃が好ましく、30~80℃がより好ましく、40~70℃がさらに好ましい。なお、パイプ33周囲には保温手段(不図示)を設けてもよく、当該保温手段によって上記温度範囲に保持することで、パイプ33内の温度を一定に保つことができる。
【0031】
なお、給水装置32からポンプ35に挽き割り大豆11の浸漬に必要な所定量の水Wを一回に全量を投入した場合、パイプ33内における水量が多くなり、水ばかりが搬送されてしまう一方、挽き割り大豆11は多量の水の中に沈んでしまい(固液分離して所定の加水率を保って上手く)搬送されない虞がある。したがって、本例のように加水装置34が設けられる場合は、給水装置32からポンプ35に挽き割り大豆11の浸漬に必要な所定量の水Wを一回に全量を投入しなくてもよく、給水装置32からポンプ35に投入される水Wは上記所定量の一部とし、加水装置34によって搬送流路(パイプ33)の途中にて段階的に加水すればよい。この場合、給水装置32からポンプ35に供給される水Wと、加水装置34からパイプ33に加水される水Wの合計量と、の水量の割合は、5:5が好ましく、4:6がより好ましい。また、加水装置34からパイプ33に加水される水Wは、その位置によって温度や水量を変化させても構わない。
【0032】
挽き割り粒度分布、水温、時間等の要素によって挽き割り大豆11の膨潤速度は異なる。したがって、加水装置34による加水は、挽き割り大豆11の吸水速度(吸水曲線)を超える加水で、目標の豆乳濃度に見合った加水量であってもいいが、搬送時に水Wと挽き割り大豆11との分離がないこと、固液混合物の物性をあまり変えないこと、固液混合物の比率を変えず先入れ先出しができることが要件である。したがって、挽き割り大豆11の吸水量と、挽き割り大豆11粒子間の隙間を埋める水量と、挽き割り大豆11の一定の流動性がある最小限の水量と、を考慮して、加水装置34による加水量は決定される。濃度調整用の加水は、浸漬装置30の出口から磨砕装置9又は豆乳製造装置21までの工程で別途行うことが好ましい。製品が油揚の場合は加熱工程終了後に戻し水(所謂びっくり水であり、これも濃度調整用の加水の一部である)を加える。
【0033】
パイプ33内で搬送されながら水に浸漬された挽き割り大豆11は、少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17となり、当該膨潤大豆17は浸漬に用いた水とともに、磨砕装置9(
図1参照)に送られる。
【0034】
浸漬装置30において浸漬に用いた水には多少なりとも大豆固形分が流出するので、その水は廃棄せずに、全量を製造水として利用することが好ましい。また、原料丸大豆10を挽き割り装置5で挽き割ってからすぐに浸漬処理、磨砕処理、加熱処理することが重要である。挽き割り工程から加熱工程までの経過時間が、1日以上経つと、大豆の成分の酸化や酵素反応が進み、異臭がして、豆腐も柔らかくなってしまう。挽き割り工程から短時間(例えば1日以内、好ましくは1時間以内、さらに好ましくは15分以内)で加熱処理まで終えることが好ましい。なお、挽き割った大豆は空気酸化を受け、40℃以上の水に浸漬中には内在性酵素による分解反応や酸化反応などが急速に起き、溶出成分と土壌菌など雑菌が活発に生育し腐敗進行が速まる。
【0035】
本実施形態の豆腐類製造装置によれば、原料丸大豆10を予め挽き割った挽き割り大豆11を水に浸漬させて少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17を得る浸漬装置30を備えるので、短時間で浸漬工程を完了でき、生産性を向上できる。したがって、従来のように、前日から予め翌日の生産量に応じて丸大豆を浸漬する等の見込み生産を行う必要がなくなり、当日の急な注文に応じた生産が可能となる。
【0036】
また、パイプ33には、挽き割り大豆11の膨潤速度に応じて水Wを加える加水装置34が設けられるので、挽き割り大豆11を短時間で確実に膨潤させることができる。
【0037】
図3は、第一実施形態の第一変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。本例の浸漬装置30のパイプ33は、挽き割り大豆11の膨潤による体積膨潤に応じて、その断面積が増大する。挽き割り大豆11は、パイプ33内を進行するにしたがって膨潤して体積が増大し、パイプ33に詰まりが生じる可能性がある。この詰まりを防止するため、パイプ33を円錐形状とし、パイプ33の断面積を搬送方向に進むにしたがって連続的に増大させている。このような本変形例によれば、パイプ33内で挽き割り大豆11が詰まることを防止できるとともに、挽き割り大豆11を短時間で安定に搬送しながら確実に膨潤させることができる。
【0038】
なお、パイプ33の形状は、挽き割り大豆11の膨潤による体積膨潤に応じてその断面積が増大するものであれば、
図3に示した円錐形状に限られず、任意の形状を採用してよい。
【0039】
図4は、第一実施形態の第二変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。本例の浸漬装置30のパイプ33は、第一変形例(
図2参照)と同様に、挽き割り大豆11の膨潤による体積膨張に応じて、その断面積が増大する。パイプ33の断面積を搬送方向に進むにしたがって段階的に増大させている。すなわち、パイプ33は、直径(断面積)が互いに異なり、搬送方向に並べて配置された複数の円筒部33aと、隣り合う円筒部33aを接続する複数の接続部33bと、を有する。隣り合う円筒部33a,33aのうち、搬送方向下流の円筒部33aは、搬送方向上流の円筒部33aよりも直径が大きく設定されている。そして、搬送方向下流の円筒部33aの上流端と、搬送方向上流の円筒部33aの下流端とが、搬送方向下流に向かうにしたがって拡径する円錐形状の接続部33bによって接続される。このような本変形例によれば、パイプ33内で挽き割り大豆11が詰まることを防止できるとともに、挽き割り大豆11を短時間で確実に膨潤させることができる。
【0040】
なお、
図4の例においては、加水装置34から供給される水Wは、パイプ33の接続部33bの上流端、すなわち、パイプ33の直径が拡大し始める箇所に供給される。したがって、挽き割り大豆11が一時的に急に膨潤する膨張によって、パイプ33が閉塞するリスクを軽減することができる。
【0041】
図5は、第一実施形態の第三変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。本変形例の浸漬装置30は、ポンプ35の構成が第一実施形態(
図2参照)と異なる。本変形例の浸漬装置30においては、ポンプ35としてプランジャポンプが適用され、モータMによってピストン35aを駆動することにより、挽き割り大豆11及び水Wをパイプ33に向かって供給する。ポンプ35としてプランジャポンプを用いることで、回転容積式一軸偏心ねじポンプに比べて、挽き割り大豆11及び水Wを高圧で供給することがでるため膨潤大豆が配管内で詰まるのを防止でき、長尺のパイプ33を用いる場合に好適である。また、水Wが少ない湿潤した挽き割り大豆11(ほぼ固体のみの状態の挽き割り大豆11)でも送液できる。このようなパイプ33を並列に複数備えて、順番に送液するバッチ連続式浸漬装置として構成してもよい。
【0042】
なお、
図2の第一実施形態のみならず、
図3及び
図4の第一及び第二変形例においても、ポンプ35としてプランジャポンプが適用可能である。
【0043】
[第二実施形態]
図6は、第二実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30、磨砕装置9及び豆乳製造装置21を示す模式図である。本例の浸漬装置30においては、第一実施形態と比較し、主にパイプ33の構成が異なる。
【0044】
パイプ33は、重力方向における上下方向にひし形形状を重ねた渦巻形状(トグロ形状)を有する。パイプ33は、上記ひし形形状の四つの角部に対応する位置に折り返し部33cを有する。折り返し部33cは、例えばパイプ33を曲げ加工することによって形成されてもよく、エルボー継手によって形成されてもよい。折り返し部33cの角度θ1a
,θ1bは、折り返し部33cにおいて挽き割り大豆11が撹拌されるのに十分な程小さいことが好ましく、180度以下であることが好ましく、135度以下であることがさらに好ましい。また、角度θ1a,θ1bは、30~180度であることが好ましく、45~90度であることがさらに好ましい。このようにパイプ33に複数の折り返し部33cが設けられることにより、パイプ33内で挽き割り大豆11が撹拌されながら搬送されるので、短時間で確実に浸漬させることができる。
【0045】
なお、パイプ33の形状は、角度θ1a,θ1bが180度以下の折り返し部33cを有すればひし形形状を重ねた渦巻形状に限定されず、例えば、三角形や五角形等の多角形を重ねた形状としてもよい。
【0046】
パイプ33の折り返し部33cには、パイプ33の内部に向かってエアAを吹き付けるエア噴出機37が設けられる。エア噴出機37としては、パイプ33と配管を介して接続されたエアブローノズル等、公知のものが適用可能である。エア噴出機37によって、折り返し部33cに付着した挽き割り大豆11を吹き落とすことができる。なお、エア噴出機37の個数は限定されず、複数のエア噴出機37を複数の折り返し部33cに設置してよい。
【0047】
パイプ33は、ポンプ35から挽き割り大豆11及び水Wが供給される入口33dが、磨砕装置9に膨潤大豆17及び水Wを供給する出口33eに比べ、重力方向において下方に配置される。すなわち、パイプ33は、重力方向において下方から上方に延びる形状であり、挽き割り大豆11を重力方向において下方から上方に向かって搬送する。上方から下方へ向かって搬送を行うと、挽き割り大豆11の膨潤に必要な水Wが先に流れてしまい、挽き割り大豆11の膨潤が不十分となることが起こり得る。しかし下方から上方へ搬送する方法により水Wが先走って配管内を流れるのを防ぐことができ、挽き割り大豆11と水Wを一定速度で同時に送ることが可能になるため膨潤を十分に行うことができる。
【0048】
パイプ33内で、搬送されながら水に浸漬された挽き割り大豆11は少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17となり、当該膨潤大豆17は浸漬に用いた水Wとともに、磨砕装置9に供給される。膨潤大豆17は、磨砕装置9によって磨砕されて生呉19とされ、スラリータンク8に送られる。そして、生呉19は、ポンプ48によって豆乳製造装置21に供給され、豆乳製造装置21において加熱されて呉とされる。以降の工程は、
図1を参照して上述した通りである。
【0049】
[第三実施形態]
図7は、第三実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30、磨砕装置9及び豆乳製造装置21を示す模式図である。本例の浸漬装置30においては、第一実施形態と比較し、主にパイプ33の構成が異なる。
【0050】
パイプ33は、複数のブロック36,36を構成しており、隣り合うブロック36、36は接続管36cによって接続される。それぞれのブロック36は、挽き割り大豆11を重力方向において下方から上方に向かって角度θ2で搬送するように形成されており、搬送方向下流に向かうにしたがって重力方向上方に角度θ2で延在する複数の傾斜配管36aと、傾斜配管36a同士を接続する折り返し部36bと、を有する。角度θ2は、好ましくは0°<θ2<90°であり、さらに好ましくは5°≦θ2≦60°である。折り返し部36bは、例えばパイプ33を曲げ加工することによって形成されてもよく、エルボー継手によって形成されてもよい。折り返し部36bの角度、すなわち隣り合う一対の傾斜配管36a,36aが成す角度θ3は、折り返し部36bにおいて挽き割り大豆11が撹拌されるのに十分な程小さいことが好ましく、180度以下であることが好ましく、135度以下であることがさらに好ましい。また、角度θ3は、30~180度であることが好ましく、45~90度であることがさらに好ましい。このように角度θ2の登り勾配のパイプ33に、角度θ3の複数の折り返し部36bが設けられることにより、パイプ33内で挽き割り大豆11と水が適宜撹拌されながら固液分離を抑制しながら搬送されるので、短時間で確実に浸漬させることができる。
【0051】
図7には不図示であるが、
図6の例と同様に、パイプ33の折り返し部36bには、パイプ33の内部に向かってエアAを吹き付けるエア噴出機37が設けられても構わない。エア噴出機37によって、折り返し部36bに付着した挽き割り大豆11を吹き落とすことができる。なお、エア噴出機37の個数は限定されず、複数のエア噴出機37を複数の折り返し部36bに設置してよい。固液混合物にエアを混在させることによって撹拌効果を助長することができる。
【0052】
また、複数の傾斜配管36aのうち、搬送方向において最も上流側(重力方向において最も下方)の傾斜配管36aには、パイプ33内の水を加熱する加熱装置38が設けられる。加熱装置38としては、蒸気供給装置やパイプの周囲に配置されたジャケット、二重管等が例示される。このように加熱装置38が設けられることで、給水装置32からポンプ35に投入される水Wを冷水とした場合であっても、加熱装置38によって加温されて短時間での浸漬に必要な水温とすることができる。この場合、給水装置32からポンプ35に挽き割り大豆11とともに投入される水W(冷水)の温度は、例えば0~20℃とされ、加熱装置38によって、例えば30~95℃に加温される。なお、浸漬装置30の最終工程において、例えば0~20℃の冷水を投入し、挽き割り大豆11の過度の浸漬を抑制するようにしてもよい。このような冷水を供給する装置としては、例えば、チラー水供給装置が挙げられる。
【0053】
また、複数の傾斜配管36aのうち、搬送方向において最も上流側(重力方向において最も下方)の傾斜配管36aの内部には、スタティックミキサー39が設けられても構わない。したがって、スタティックミキサー39を通過した挽き割り大豆11及び水は、混合及び撹拌され、効率良く浸漬を行うことができる。なお、スタティックミキサー39(静的ミキサー)の代わりに、モータ駆動やエア駆動による動的ミキサーであってもいい。
【0054】
なお、加熱装置38やスタティックミキサー39の設置位置や個数等は特に限定されない。また、加熱装置38やスタティックミキサー39は、
図6に示した第二実施形態にも適用可能である。また、
図7の例においては、パイプ33は二つのブロック36、36を有しているが、ブロック36の数は限定されず、一つでもよく、三つ以上でも構わない。
【0055】
パイプ33内で、搬送されながら水Wに浸漬された挽き割り大豆11は少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17となり、当該膨潤大豆17は浸漬に用いた水Wとともに、磨砕装置9に供給される。以降の工程は、
図1を参照して上述した通りである。
【0056】
[第四実施形態]
図8は、第四実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。本実施形態の浸漬装置30は、挽き割り装置5によって得られた挽き割り大豆11が投入されるホッパー31と、挽き割り大豆11を水Wに浸漬しながら搬送する搬送流路を構成するトラフ41と、トラフ41の内部に回転可能に設けられたスクリュー43と、を有するスクリューコンベア式の連続式浸漬装置である。
【0057】
トラフ41は、重力方向と直交する方向(地面と水平)に延びる長尺槽である。スクリュー43は、トラフ41の内部の長手方向に回転軸42を介して掛架されており、不図示のモータによって回転可能である。
【0058】
本実施形態の浸漬装置30は、トラフ41とスクリュー43とを有するトラフ・スクリュー装置40を複数(図示の例では三つ)有しており、これら複数のトラフ・スクリュー装置40が重力方向における上下方向に多段に設けられている。トラフ・スクリュー装置40同士の間の挽き割り大豆11及び水Wの搬送は、ポンプ45によって行われる。
【0059】
搬送工程上流のトラフ・スクリュー装置40は、搬送工程下流のトラフ・スクリュー装置40よりも重力方向下方に配置されている。これにより、挽き割り大豆11及び水Wは、下段(重力方向下方)のトラフ・スクリュー装置40から、上段(重力方向上方)のトラフ・スクリュー装置40に、ポンプ45によって搬送される。
【0060】
トラフ41部分に関しては密閉しているパイプのような密閉型でも、上方が開放した開放型でもよい。
図9は、変形例に係るトラフ41を示す図である。
図9に示すように、トラフ41は、密閉型又は開放型どちらの形態であっても、周囲にジャケット71を配置することで保温しながらの搬送、もしくは浸漬途中での加温または冷却が可能になる。ジャケット71は、保温又は加温が可能である。したがって、予め温度調節した温水と、所定の温度に加温した挽き割り大豆11とが、トラフ41内に投入された後、ジャケット71によって温度低下が防止される。なお、
図9には、スクリュー43を駆動するモータMと、モータMと回転軸42とを接続するシャフト72と、シャフト72の外周に設けられたギア73と、が図示されている。
【0061】
1つのトラフ41の内部に設けられるスクリュー43は、1本でも、複数本であってもよい(
図8及び
図9の例では1本)。
【0062】
トラフ41内では、泡が溢れたり、一部の大豆や皮が浮くことを回避しつつ、加えた温水と大豆ができるだけ先入れ先出しに進行させるため、挽き割り大豆11が膨潤するのに必要な限度いっぱいの温水量とされることがある。この場合、トラフ41内ではスラッジ状態での挽き割り大豆11の搬送が行われ、スクリュー43が1本では供回りして適切に搬送できない可能性がある。そのような場合は、トラフ41内のスクリュー43の本数は、複数とすることが好ましい。
【0063】
図10~
図12は、変形例に係るトラフ41を示す図である。
図10~
図12に示すように、トラフ41の内部にスクリュー43を複数本(
図10では2本、
図11では3本、
図12では4本)設けることで、挽き割り大豆11を逆流させずに安定して搬送することが可能となる。また、1度に搬送できる挽き割り大豆11の量が増えるため生産能力の向上にもつながる。隣り合うスクリュー43の回転方向は互いに同方向でも逆方向の回転でも良いが、逆方向回転が好ましい。
図10~
図12に示すように、隣り合うスクリュー43のシャフト72のギア73を互いに噛合させれば、隣り合うスクリュー43の回転方向は逆方向とできる。なお、隣り合うスクリュー43は、螺旋羽根の方向も回転方向も、隣同士のスクリュー軸では逆にすることが好ましい。また、スクリュー43の螺旋羽根は、
図8~12、14、15、17のように、シングルの一条螺旋羽根が好ましい。また、スクリュー43は、搬送能力を高めるため、一つの軸に同方向のダブルで螺旋羽根を備える二条螺旋羽根など複数の螺旋羽根を備えてもよい。
【0064】
図8の例においては、先ず、ホッパー31に挽き割り装置5から挽き割り大豆11が投入される。次に、最下段のトラフ・スクリュー装置40に、ホッパー31から挽き割り大豆11が供給されるとともに、給水装置32から水Wが供給される。ここで、水Wは温水であり、30~95℃が好ましく、40~80℃がより好ましく、50~70℃がさらに好ましい。
【0065】
また、各トラフ・スクリュー装置40において、トラフ41内の水位は、回転軸42よりも低いことが好ましい。ただし、水位が低すぎる場合は挽き割り大豆11がスクリュー43に付着する場合があるので、できるだけ軸下付近まで水位があることがより好ましい。またトラフ断面の下方半円部と、スクリューの隙間にあるクリアランスをゼロにするため、少なくともゴムや樹脂の柔軟性部材(シール部材)をスクリュー外周に備えて、トラフ内面に密着するようにして、水が漏れない(前後に水だけ移動しない)ようにすることも好ましい。
【0066】
ただし、トラフ41内の水位はスクリュー43が2軸以上ある場合は大豆が膨潤するのに必要な水量でもよく、スラッジ状態での搬送も可能である。スクリューを2軸以上にすることにより泡があふれたり、一部の大豆や皮が浮いたりする現状を避けることができ、加えた温水と大豆が出来るだけ先入れ先出しに搬送を行うことができる。
図13には、変形例に係るトラフ41を軸方向から見た図である。
図14は、変形例に係る浸漬装置30を示す模式図である。
図13及び
図14のように、トラフ41が密閉型の場合は、満液かつ投入口ではスクリュー43外周より上で撹拌羽根があった方が良く、表面で大豆や付着した皮などが温水と速やかに馴染ませることができる。なお、
図14に示す浸漬装置30には、挽き割り装置5で得られた挽き割り大豆11がホッパー31を介して供給されるとともに、当該挽き割り大豆11を下流のトラフ・スクリュー装置40に供給する大豆加熱搬送装置80が設けられる。大豆加熱搬送装置80は、トラフ・スクリュー装置40と同様の構成を有しており、挽き割り大豆11を搬送する搬送流路を構成するトラフ81と、トラフ81の内部に回転可能に設けられたスクリュー83と、スクリュー83をトラフ81の内部の長手方向に掛架する回転軸82と、回転軸82を駆動するのモータMと、を有する。トラフ81の周囲はジャケット71によって覆われており、当該ジャケット71によって加熱された挽き割り大豆11が、下流のトラフ・スクリュー装置40に供給される。
【0067】
そして、
図8の例においては、挽き割り大豆11は、最下段のトラフ・スクリュー装置40において、スクリュー43によって回転させられながらトラフ41内を
図8中左から右へ進行することにより連続的に浸漬させられる。なお、挽き割り大豆11のトラフ41内の進行速度は、スクリュー43の回転速度によって自在に調節でき、挽き割り大豆11の浸漬に要する時間等を考慮して調節される。
【0068】
最下段のトラフ・スクリュー装置40の下流端まで進行した挽き割り大豆11は、水Wとともに、ポンプ45よって中段のトラフ・スクリュー装置40に送られる。挽き割り大豆11は、中段のトラフ・スクリュー装置40において、スクリュー43によって回転させられながらトラフ41内を
図8中右から左へ進行することにより連続的に浸漬させられる。
【0069】
なお、
図8の例においては、搬送流路を構成するトラフ41は、地面に対して水平に延在しており、地面とトラフ41の延在方向とが成す角度θ4は0度である。しかしながら、トラフ41は、挽き割り大豆11を重力方向において下方から上方に向かって角度θ4で搬送するように形成されてもよい。すなわち、トラフ41は、角度θ4が0度超の上り勾配としてもよい。角度θ4は、0<θ4≦90°であることが好ましく、5°≦θ4≦30°であることがさらに好ましい。
【0070】
中段のトラフ・スクリュー装置40の下流端まで進行した挽き割り大豆11は、水Wとともに、ポンプ45によって最上段のトラフ・スクリュー装置40に送られる。挽き割り大豆11は、最上段のトラフ・スクリュー装置40において、スクリュー43によって回転させられながらトラフ41内を
図8中左から右へ進行することにより連続的に浸漬させられる。
【0071】
最上段のトラフ・スクリュー装置40の下流端まで進行した挽き割り大豆11は少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17となり、当該膨潤大豆17は浸漬に用いた水Wとともに、ポンプ45によって磨砕装置9に供給される。以降の工程は、
図1を参照して上述した通りである。
【0072】
図15は、第四実施形態の参考例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。本例においては、挽き割り大豆11及び水Wは、上段のトラフ・スクリュー装置40から下段のトラフ・スクリュー装置40に搬送される。この場合、上段のトラフ・スクリュー装置40から下段のトラフ・スクリュー装置40に送る際に使用するポンプ45において、水Wが漏れ出してしまい、水Wのみが先に下段のトラフ・スクリュー装置40に流れてしまうため、挽き割り大豆11を下段のトラフ・スクリュー装置40に搬送したときに膨潤に必要な水Wが不足してしまい、挽き割り大豆11の膨潤が不十分となることが起こり得る。トラフ・スクリュー装置40に密閉シールを設けることは難しく、スクリュー43とトラフ41との間に隙間があったり、ポンプ45のロータとケーシングとの間に隙間があったりするため、これらの隙間から少し水Wが抜けやすく、重力方向における上方から下方への流れでは固液混合物から液体だけが先走る現象が生じるので、固液比率を一定に保持した搬送が困難になる。
【0073】
一方、
図8に示した本実施形態によれば、挽き割り大豆11及び水Wは、下段のトラフ・スクリュー装置40から上段のトラフ・スクリュー装置40に搬送されるので、上記隙間を通って上方に水だけ先走ることがないので、固液比率を維持しながら安定して固液混合物を搬送することができる。また、下段のトラフ・スクリュー装置40から上段のトラフ・スクリュー装置40に水Wを送りすぎた場合でも戻し流路47によって送りすぎた水Wを戻すことができる。戻し流路47は、例えば、ポンプやバルブで構成される。戻し流路47は、トラフ41の底面の所定箇所に備えたフィルター部で固液分離させて液体(水;大豆成分の水溶液)を回収して前工程に戻す。回収した液体は、磨砕装置のところでの加水に用いてもよい。なお、浸漬装置30においては、固液比率を一定に保持した搬送に必要最少の水があればよく、余分な水は、新たな挽き割り大豆11への加水に使ってもよく、浸漬工程の後の磨砕工程や加熱工程のところで豆乳濃度調整用に用いることも可能であって、大豆成分溶液を捨てずに有効に利用して歩留りを確保できる。
【0074】
ただし、上記不都合がない場合は、
図15の参考例に係る浸漬装置30を用いても構わない。
【0075】
また、
図8、
図15ともに
図2のような加水装置34を設けてもよく、給水装置32から挽き割り大豆11の浸漬に必要な所定量の水Wを一回に全量を投入しなくてもよく、給水装置32からポンプ35に投入される水Wは上記所定量の一部とし、加水装置34によって搬送流路の途中の各所にて段階的にかつ限定的に加水してもよい。
【0076】
また、
図8、
図15ともに図示はしていないが、トラフ・スクリュー装置40の外部を
図9に示したようなジャケット71や保温材等で覆うことで水Wの温度を一定に保持しながら搬送を行うことも可能である。
【0077】
図16は、第四実施形態の変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30の単段式のスクリュー43を示す図である。本変形においては、スクリュー43の重力方向上方に、スクリュー43に付着した挽き割り大豆11をエアAで拭き落とすエア噴出機46を備える。エア噴出機46としては、エアブローノズル等、公知のものが適用可能である。
【0078】
このようなエア噴出機46は、
図8に示したような多段のスクリューコンベア式の浸漬装置30にも適用可能であるが、水位に比べてスクリュー43の直径が大きく、挽き割り大豆11が付着しやすい単段式のスクリュー43に特に好適である。エア噴出機46が設けられるスクリュー43としては、例えば、水位がスクリュー43の中心43Oよりも低いものが好ましく、水位がスクリュー43の中心43Oと底部43Bとの中間部43Pよりも重力方向下方であるものがさらに好ましい。そのようなスクリュー43としては、直径が例えば50cm以上であるものが好ましく、70cm以上であるものがさらに好ましい。
【0079】
図17は、第四実施形態の変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。浸漬装置30には、挽き割り装置5で得られた挽き割り大豆11がホッパー31を介して供給されるとともに、給水装置32によって水Wが供給されるポンプ35が設けられる。このポンプ35は回転容積式一軸偏心ねじポンプであり、例えばモーノポンプ(登録商標)である。
【0080】
ポンプ35は、挽き割り大豆11と水Wとを混ぜ合わせながら浸漬装置30のトラフ・スクリュー装置40に供給する。したがって、先入れ先出しでトラフ・スクリュー装置40に供給され、トラフ・スクリュー装置40に供給される時点で、挽き割り大豆11と水Wは混ぜ合わされてスラッジ状とされているので、トラフ・スクリュー装置40において挽き割り大豆11と水Wとが分離してしまうことを防止でき、浸漬を短時間で行うことができる。
【0081】
なお、本例においては、給水装置32によってポンプ35に供給される水Wの量は、ポンプ35において挽き割り大豆11と水Wとを混ぜ合わせてスラッジ状(スラリー状、固液混合物)とするのに必要最小限とされている。したがって、トラフ・スクリュー装置40には、ポンプ35から挽き割り大豆11及び水Wが投入されると共に、他の給水装置49から浸漬に必要な水Wが投入される。また、給水に関しては
図2の加水装置34を使用してもよい。
【0082】
給水装置32からポンプ35に投入される水Wの量と、他の給水装置49からトラフ・スクリュー装置40に投入される水Wの量と、の割合は、例えば5:5であり、好ましくは4:6であり、さらに好ましくは3:7である。また、給水装置32からポンプ35に投入される水Wの温度は、例えば20~95℃であり、好ましくは30~80℃であり、さらに好ましくは40~70℃である。他の給水装置49からトラフ・スクリュー装置40に投入される水Wの温度は、20~95℃であり、好ましくは30~80℃であり、さらに好ましくは40~70℃である。
【0083】
[第五実施形態]
図18は、第五実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。浸漬装置30は、水平方向(重力方向に対して直交方向)に離間して配置されて、モータ等の駆動源によって回転可能な第一ローラ51a及び第二ローラ51bと、第一ローラ51a及び第二ローラ51bに掛け回された無端状のベルト部材53と、ベルト部材53の外周面53aに間隔を空けて立設された複数の壁部材55と、ベルト部材53及び複数の壁部材55を取り囲むように内包するハウジング57と、を有するバッチ式連続浸漬装置である。
【0084】
壁部材55の先端には、ゴムベラ等のシール部材59が固定されており、当該シール部材59は、ハウジング57の内周面に摺接する。したがって、隣り合う一対の壁部材55,55と、隣り合う一対のシール部材59,59と、ベルト部材53の外周面53aと、ハウジング57の内周面57a及び紙面奥行き方向の両側面(不図示)と、によって複数の浸漬槽50が形成される。
【0085】
第一ローラ51a及び第二ローラ51bを回転させることにより、ベルト部材53、複数の壁部材55、及び複数のシール部材59が、図中の矢印M1(時計回り)の方向に駆動され、これに伴って複数の浸漬槽50も同様に矢印M1の方向に移動する。
【0086】
ハウジング57は、ホッパー31の直下に(第一ローラ51aの上部付近に)、ホッパー31からの挽き割り大豆11及び給水装置32からの水Wを投入するための投入口57bを有している。したがって、この投入口57bと連通する位置に浸漬槽50が移動してきた時、当該浸漬槽50に挽き割り大豆11及び水Wが供給されて、挽き割り大豆11の浸漬が開始される。
【0087】
浸漬槽50に供給された挽き割り大豆11は、水Wに浸漬することで膨潤しながら、矢印M1の方向に搬送される。ハウジング57は、第二ローラ51bの下部付近に、浸漬槽50から磨砕装置9に膨潤大豆17及び浸漬に用いた水Wを排出するための排出口57cを有する。
【0088】
したがって、投入口57bから投入された挽き割り大豆11が、排出口57cから排出されるまでに膨潤して膨潤大豆17となるように、給水装置32によって供給される水Wの温度や、浸漬槽50の搬送速度等が設定されている。給水装置32によって供給される水Wの温度は、例えば20~90℃であり、好ましくは30~80℃であり、さらに好ましくは40~70℃である。また、挽き割り大豆11の浸漬時間は、例えば1分~3時間であり、好ましくは1分~1時間、さらに好ましくは1分~30分である。
【0089】
浸漬装置30には、挽き割り大豆11の膨潤速度に応じて水Wを加える加水装置34が設けられても良い。加水装置34は、例えばシャワーヘッドであり、挽き割り大豆11の膨潤速度が所望の範囲に維持されるように、浸漬槽50に水Wを供給する。加水装置34によって供給される水Wの温度は、例えば20~95℃であり、好ましくは30~80℃であり、さらに好ましくは40~70℃である。この温度範囲に設定することで、高温の水Wを加水することで浸漬時間短縮の効果があり、低温の水Wを加水することで膨潤速度を抑える効果がある。
【0090】
なお、本実施形態の浸漬装置30は比較的コンパクトであり短時間で浸漬を行うものであるので、相対的に長時間の浸漬が必要な丸大豆よりも、短時間で浸漬が可能である挽き割り大豆11に好適である。
【0091】
このように、浸漬槽50内で、搬送されながら水Wに浸漬された挽き割り大豆11は少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17となり、当該膨潤大豆17は浸漬に用いた水Wとともに、排出口57cから磨砕装置9に供給される。以降の工程は、
図1を参照して上述した通りである。
【0092】
図19は、第五実施形態の変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。本変形例では、第一ローラ51a及び第二ローラ51bを回転させることにより、ベルト部材53、複数の壁部材55、及び複数のシール部材59が、図中の矢印M2(反時計回り)の方向に駆動され、これに伴って複数の浸漬槽50も同様に矢印M2の方向に移動する。その他の構成及び効果は
図18の第五実施形態と同様であるので、説明を省略する。
【0093】
図20は、第五実施形態の変形例に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を示す模式図である。本変形例のハウジング57は、重力方向上部が取り除かれおり、第一ローラ51aの側方において開口57dを有する有底の容器形状とされている。したがって、当該開口57dは、挽き割り大豆11及び水Wが投入される投入口となる。そして、開口57dから浸漬槽50に供給された挽き割り大豆11は、水Wに浸漬することで膨潤しながら、矢印M1の方向に搬送される。そして、浸漬槽50内で、搬送されながら水Wに浸漬された挽き割り大豆11は少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17となり、当該膨潤大豆17は浸漬に用いた水Wとともに、排出口57cから磨砕装置9に供給される。以降の工程は、
図1を参照して上述した通りである。
【0094】
[第六実施形態]
図21は、第六実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30の斜視図である。
図22は、第六実施形態に係る豆腐類製造装置の浸漬装置30を重力方向上方から見た図である。
【0095】
浸漬装置30は、重力方向における上下方向に延びる円筒状のハウジング61と、ハウジング61の中心において重力方向における上下方向に延びる軸部材63と、軸部材63を回転させるモータMと、軸部材63の外周面から径方向外側に放射状に延びる複数の壁部材65と、を備えるバッチ式連続浸漬装置の一例である。
【0096】
ハウジング61は、有底の容器形状であり、重力方向における下方に底面61aを有し、重力方向における上方には開口61bを有する。軸部材63及び壁部材65の上下方向長さは、ハウジング61と略同一である。また、図示の例では、六個の壁部材65が、周方向に等間隔に配置されており、その先端部がハウジング61の内周面61cに摺接する。したがって、隣り合う一対の壁部材65,65と、軸部材63の外周面と、ハウジング61の内周面61c及び底面61aと、によって、複数(図示の例では六個)の浸漬槽60が形成される。なお壁部材とハウジングの隙間のクリアランスをゼロにするように、水漏れのないように、ハウジングに接する壁部材先端にシール部材を設けた方が好ましい。
【0097】
モータMによって軸部材63及び壁部材65を矢印M3の方向に回転させることにより、複数の浸漬槽60も同様に矢印M3の方向に移動する。
【0098】
ハウジング61の底面61aには、浸漬槽60から磨砕装置9に膨潤大豆17及び浸漬に用いた水Wを排出するための排出口61dを有する。この排出口61dからモータMの回転方向(矢印M3の方向)にずれた位置に、挽き割り大豆11を供給するホッパー31と、水Wを供給する給水装置32と、が配置されている。したがって、これらホッパー31及び給水装置32が設けられている位置に浸漬槽60が移動してきた時、当該浸漬槽60にホッパー31からの挽き割り大豆11及び給水装置32からの水Wが供給されて、挽き割り大豆11の浸漬が開始される。
【0099】
浸漬槽60に供給された挽き割り大豆11は、水Wに浸漬することで膨潤しながら、矢印M3の方向に搬送される。上述の通り、ハウジング61は、排出口61dを有するので、挽き割り大豆11が排出口61dから排出されるまでに膨潤して膨潤大豆17となるように、給水装置32によって供給される水Wの温度や、浸漬槽60の搬送速度等が設定されている。給水装置32によって供給される水Wの温度は、例えば20~95℃であり、好ましくは30~80℃であり、さらに好ましくは40~70℃である。また、挽き割り大豆11の浸漬時間は、例えば1分~3時間であり、好ましくは1分~1時間、さらに好ましくは1分~30分である。
【0100】
浸漬装置30には、挽き割り大豆11の膨潤速度に応じて水Wを加える加水装置34が設けられても良い。加水装置34は、例えばシャワーヘッドであり、挽き割り大豆11の膨潤速度が所望の範囲に維持されるように、浸漬槽60に水Wを供給する。加水装置34によって供給される水Wの温度は、例えば20~95℃であり、好ましくは30~80℃であり、さらに好ましくは40~70℃である。この温度範囲に設定することで、高温の水Wを加水することで浸漬時間短縮の効果があり、低温の水Wを加水することで膨潤速度を抑える効果がある。
【0101】
なお、本実施形態の浸漬装置30は比較的コンパクトであり短時間で浸漬を行うものであるので、相対的に長時間の浸漬が必要な丸大豆よりも、短時間で浸漬が可能である挽き割り大豆11に好適である。
【0102】
このように、浸漬槽60内で、搬送されながら水Wに浸漬された挽き割り大豆11は少なくとも一部が膨潤した膨潤大豆17となり、当該膨潤大豆17は浸漬に用いた水Wとともに、排出口61dから磨砕装置9に供給される。なお、図示の例では、排出口61dから撹拌付きスラリータンク67を経て磨砕装置9に供給される。撹拌つきスラリータンク67を設けるのは、固液分離を起こさないためである。以降の工程は、
図1を参照して上述した通りである。
【0103】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0104】
3 洗浄・殺菌装置
5 挽き割り装置
7 剥皮装置
8 スラリータンク
9 磨砕装置
10 原料丸大豆
11 挽き割り大豆
12 オカラ
13 種皮
14 豆乳
15 胚軸
16 豆腐
17 膨潤大豆
19 生呉
21 豆乳製造装置
23 搾り装置
25 凝固装置
27 成形装置
30 浸漬装置
31 ホッパー
32 給水装置
33 パイプ(搬送流路)
33a 円筒部
33b 接続部
33c 折り返し部
33d 入口
33e 出口
34 加水装置
35 ポンプ
35a ピストン
36 ブロック
36a 傾斜配管
36b 折り返し部
36c 接続管
37 エア噴出機
38 加熱装置
39 スタティックミキサー
40 トラフ・スクリュー装置
41 トラフ(搬送流路)
42 回転軸
43 スクリュー
43B 底部
43O 中心
43P 中間部
45 ポンプ
46 エア噴出機
47 戻し流路
48 ポンプ
49 給水装置
50 浸漬槽
51a 第一ローラ
51b 第二ローラ
53 ベルト部材
53a 外周面
55 壁部材
57 ハウジング
57a 内周面
57b 投入口
57c 排出口
57d 開口
59 シール部材
60 浸漬槽
61 ハウジング
61a 底面
61b 開口
61c 内周面
61d 排出口
63 軸部材
65 壁部材
67 スラリータンク
71 ジャケット
72 シャフト
73 ギア
80 大豆加熱搬送装置
81 トラフ
82 回転軸
83 スクリュー