(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018540
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】集水枡
(51)【国際特許分類】
E01C 13/08 20060101AFI20230201BHJP
E01C 5/06 20060101ALI20230201BHJP
E01C 5/14 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
E01C13/08
E01C5/06
E01C5/14
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122744
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】591044175
【氏名又は名称】日本体育施設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】越後 幸太郎
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智久
【テーマコード(参考)】
2D051
【Fターム(参考)】
2D051AA02
2D051AA03
2D051AA05
2D051AB04
2D051AE03
2D051AF03
2D051AG05
2D051AH02
2D051DA01
2D051DA09
2D051DB03
2D051HA00
(57)【要約】
【課題】人工芝グラウンドの排水溝において、人工芝グラウンドからの人工芝の破片やゴムチップの流出を阻止することのできる集水枡を提供する。
【解決手段】人工芝グラウンドの排水溝に設けられる集水枡であって、水の流入口と、水の流出口と、前記流入口と前記流出口との間に設けられる透水性のフィルタと、を備えたことを特徴とする、集水枡。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人工芝グラウンドの排水溝に設けられる集水枡であって、
水の流入口と、
水の流出口と、
前記流入口と前記流出口との間に設けられる透水性のフィルタと、
を備えたことを特徴とする、集水枡。
【請求項2】
前記フィルタは、粒径0.8mmを超える大きさの珪砂の通過を阻止可能な大きさの空隙を有することを特徴とする、請求項1に記載の集水枡。
【請求項3】
前記フィルタは、多孔質透水コンクリートボードであることを特徴とする、請求項2に記載の集水枡。
【請求項4】
前記多孔質透水コンクリートボードは、前記空隙として径が0.4mm以上、3.7mm以下の細孔を有することを特徴とする、請求項3に記載の集水枡。
【請求項5】
前記フィルタは、ヤシ繊維不織布ボードであることを特徴とする、請求項2に記載の集水枡。
【請求項6】
前記ヤシ繊維不織布ボードは、密度が49.5kg/m3以上、60.5kg/m3以下であることを特徴とする、請求項5に記載の集水枡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工芝グラウンドの排水設備に設けられる集水枡に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋汚染の要因の一つとして、マイクロプラスチックの存在が大きく取り上げられている。大手コンビニチェーンやファストフード店ではレジ袋を有料化し、レジ袋の削減への取り組みやプラスチック製ストローを紙製ストローにするなど、環境保護に対する意識も高まってきている。下記非特許文献1によると、人工芝は調査で採取したプラスチック全体の14%を占め、国内のマイクロプラスチック流出問題において最も大きな課題の一つと考えられると報告されている。
【0003】
一方、屋外の人工芝を用いた運動場及び競技場における排水溝については、下記特許文献1及び特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016-020574号公報
【特許文献2】特開2017-179933号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「日本の河川・港湾・湖におけるマイクロプラスチック浮遊情況調査」及び「人工芝の流出源調査」レポート。2020年3月25日公開、2020年5月15日訂正、2020年5月20日訂正。株式会社/一般社団法人ピリカ(https://drive.google.com/drive/folders/11mTGZwQ7AXVpufAZc7lSWP6Lfc2KlOAU)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人工芝グラウンドでは、プレー中にスパイクシューズで人工芝が破損した破片や、人工芝が植設される層を構成するゴムチップが、マイクロプラスチックとして排水中に流出する可能性がある。本開示の実施態様は、人工芝グラウンドの排水溝において、人工芝グラウンドからの人工芝の破片やゴムチップの流出を阻止することのできる集水枡を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題に鑑み、本開示の実施態様は、人工芝グラウンドの排水溝に設けられる集水枡であって、水の流入口と、水の流出口と、前記流入口と前記流出口との間に設けられる透水性のフィルタと、を備えている。
【0008】
このフィルタは、流入口から流入してきた水の透過はほぼ阻止しないが、その水とともに流入してきた人工芝の破片やゴムチップの透過を阻止可能な程度の空隙を有している。具体的には、前記フィルタは、粒径0.8mmを超える大きさの珪砂の通過を阻止可能な大きさの空隙を有することが望ましい。
【0009】
また、前記のような空隙を有するフィルタとしては、多孔質透水コンクリートボードを使用することができる。この多孔質透水コンクリートボードは、前記空隙として径が0.4mm以上、3.7mm以下の細孔を有することが望ましい。
【0010】
また、前記のような空隙を有するフィルタとしては、ヤシ繊維不織布ボードを使用することができる。このヤシ繊維不織布ボードは、密度が49.5kg/m3以上、60.5kg/m3以下であることが望ましい。
【発明の効果】
【0011】
人工芝グラウンドの排水溝において、人工芝グラウンドからの人工芝の破片やゴムチップの流出を阻止することのできる集水枡を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】実施形態の集水枡の設置位置の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照しつつ説明する。
【0014】
図1は、人工芝グラウンド10において実施形態の集水枡30の設置位置を示す平面図である。また、
図2は、
図1のAで示した部分の拡大図である。人工芝グラウンド10の辺縁に沿って、排水溝20が設けられている。排水溝20の上面は、取り外し可能な側溝蓋21(
図2参照)で覆われている。人工芝グラウンド10は、図中の矢印で示すように、辺縁に向けて緩やかに傾斜している。排水溝20は、図中上側の長辺を上流として、左右の短辺を経て、下側の長辺が下流となっている。上側長辺の排水溝20は、ほぼ等間隔に設けられた接続枡20aで接続されている。また、左右短辺及び下側長辺の排水溝20の途中には、ほぼ等間隔に複数の集水枡30が設けられている。排水溝20の水は、上流から図中の矢印方向に流れ、下側長辺の中央の最下流に位置する集水枡30である最終集水枡30aの下流にある放流管50から公共下水道60へ流出する。
【0015】
図3は、
図2のIII-III断面図である。人工芝グラウンド10においては、基層となる砕石下地14の上にアスファルト層13が舗装され、その上に合成樹脂製の人工芝11が敷設されている。そして、人工芝11の隙間にゴムチップ12が充填されている。人工芝グラウンド10の辺縁には、U字溝による排水溝20が設けられている。排水溝20の開放した上面は落水孔22が設けられている側溝蓋21で覆われている。
【0016】
図4は、
図2のIV-IV断面図である。また、
図5は、
図2のV-V断面図である。コンクリート製の集水枡30はそれぞれ、内部が中空で上方が開放した四角柱形状を呈している。集水枡30の上方の開口部は取り外し可能な蓋37で閉塞されている。集水枡30は、高さ方向の半ば付近に設けられた透水性のフィルタ32によって内部が二分されている。換言すると、集水枡30の内部は、フィルタ32の上部の上流部35と、フィルタ32の下部の下流部36とに二分されている(
図5参照)。集水枡30には、排水溝20から水が流入する流入口33と、水が流出する流出口34とが設けられている。すなわち、フィルタ32は、流入口33と流出口34との間に設けられている。流出口34は、下流側の集水枡30の下流部36と接続管40で連絡している。また、最終集水枡30aの流出口34は放流管50に連絡している。
【0017】
フィルタ32は、
図5及び
図5のVI-VI断面図である
図6に示すように、集水枡30の高さ方向の半ば付近に設けられたフィルタ受け31に指示されている。
図5及び
図6では、フィルタ32として、半円形に形成された多孔質透水コンクリートボード32aが2つ、フィルタ受け31の中心に形成された円形の孔に、嵌め込まれている。なお、多孔質透水コンクリートボード32aの形状は、本実施形態の半円形に限らず、円形に形成したものを1つ、同様に嵌め込んでもよい。また、フィルタ受け31に形成される孔の形状に応じ、多孔質透水コンクリートボード32aも任意の形状(たとえば、四角形、六角形等)に形成することとしてもよい。
【0018】
また、
図5の変形例である
図7及び
図7のVIII-VIII断面図である
図8に示すように、フィルタ32として、ヤシ繊維不織布ボード32bを用いることもできる。ヤシ繊維不織布ボード32bをフィルタ32として用いる場合、
図7に示すように、集水枡30の高さ方向の半ば付近に金網を張ってこれをフィルタ受け31とし、その上に、所定の厚さで平面形状正方形に成形したヤシ繊維不織布ボード32bを載置することで、これをフィルタ32とすることができる。
【0019】
人工芝グラウンド10でのプレー中に破損した人工芝11の破片は、人工芝グラウンド10の傾斜に従って流れる排水とともに、排水溝20へ流出する。このとき、人工芝11の根元に充填されているゴムチップ12も同時に流出する可能性がある。排水とともに流出する人工芝11の破片は、側溝蓋21の落水孔22に至る。落水孔22から排水溝20へ落下した排水は、流入口33から集水枡30に侵入すると、上流部35から、フィルタ32を通過して下流部36に至り、流出口34から次の集水枡30へ排出される。
【0020】
このとき、フィルタ32には、粒径0.8mmを超える大きさの珪砂の通過を阻止可能な大きさの空隙が設けられているため、水の通過は阻止されないが、人工芝11の破片やゴムチップ12はほぼ100%、フィルタ32に補足され、下流部36へ至ることはない。よって、人工芝11の破片やゴムチップ12が、排水とともに公共下水道60へ排出されることが、このようなフィルタ32を備えた本実施形態の集水枡30によって防止される。なお、用いるフィルタ32が粒径0.8mmを超える大きさの珪砂の通過を阻止可能な大きさの空隙を有しているかどうかは、たとえば、用いるフィルタ32の上に様々な粒径が混在した珪砂を撒いてから、水を流して通過した珪砂の粒径が0.8mm以下であることを確認することで検証することができる。
【0021】
このようなフィルタ32として多孔質透水コンクリートボード32aを用いる場合、径が0.4mm以上、3.7mm以下の細孔を有するものを使用することが望ましい。また、このようなフィルタ32としてヤシ繊維不織布ボード32bを用いる場合、密度が49.5kg/m3以上、60.5kg/m3以下であるものを使用することが望ましい。
【実施例0022】
以下、フィルタ32が人工芝11の破片及びゴムチップ12を通過させないことを実験により確認した。実験方法は以下のとおりである。
【0023】
まず、
図9に示すように、コンクリートブロック4個を、中央に空間ができるように井桁に組んでから、その上に、
図10に示すように綿布を被せた。
【0024】
そして、その上に、
図11に示すように、フィルタ32を載置した。なお、
図11ではフィルタ32として多孔質透水コンクリートボード32aを用いた例を示しているが、ヤシ繊維不織布ボード32bも同様に載置した。なお、
図11でフィルタ32の上に載置されているのは、後述する試験材を小袋に小分けしたものである。
【0025】
次いで、
図12に示すように、フィルタ32の上に試験材をまき散らしてから、
図13に示すように、0.336m
3/時間の流速で5分間、水を流した。その後、フィルタ32を外した綿布の上に、
図14に示すようにフィルタ32を通過した試験材があれば、これを回収してその大きさを測定した。
【0026】
フィルタ32としての多孔質透水コンクリートボード32aには、コクカコーポレーション製の、透水コンクリート7号砕石を材質とした透水ボードを使用した。その空隙径の理論値は0.4~3.7mmであった。
【0027】
また、フィルタ32としてのヤシ繊維不織布ボード32bには、共英産業製の、ヤシ繊維不織布を材質としたビニロック透水管(ST-50)を使用した。その密度は、0.55g/cm3±10%であった。このヤシ繊維不織布ボード32bは、厚さ50mm及び100mmの2通りを使用した。
【0028】
試験材としては、人工芝の破片(長さ10~20mm)4g、ゴムチップ(径0.5~3mm)20g、有効径0.3~1.0mmの珪砂(カラーサンド、西戸崎興産)30gをそれぞれ使用した。
【0029】
以上の実験の結果、多孔質透水コンクリートボード32aは、人工芝の破片もゴムチップも、一切通過させなかった。また、通過した珪砂の最大粒径は0.6mmであった。
【0030】
50mm厚のヤシ繊維不織布ボード32bは、人工芝の破片もゴムチップも、一切通過させなかった。また、通過した珪砂の最大粒径は0.8mmであった。
【0031】
100mm厚のヤシ繊維不織布ボード32bもまた、人工芝の破片もゴムチップも、一切通過させなかった。また、通過した珪砂の最大粒径は0.5mmであった。
【0032】
以上の結果、少なくとも、0.8mmを超える粒径の珪砂の通過を阻止できる程度の性能を有していれば、本実施形態の集水枡30のフィルタ32として使用可能であることが実証された。