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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023018568
(43)【公開日】2023-02-08
(54)【発明の名称】粉末状塗料組成物及び内装仕上構造
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20230201BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20230201BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230201BHJP
   E04F 13/02 20060101ALI20230201BHJP
【FI】
C09D201/00
C09D5/03
C09D7/61
E04F13/02 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2021122782
(22)【出願日】2021-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】501352619
【氏名又は名称】三商株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520335853
【氏名又は名称】株式会社WELLNEST HOME
(71)【出願人】
【識別番号】303046244
【氏名又は名称】旭化成ホームズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076473
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188765
【弁理士】
【氏名又は名称】赤座 泰輔
(74)【代理人】
【識別番号】100112900
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 路子
(74)【代理人】
【識別番号】100136995
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 千織
(74)【代理人】
【識別番号】100163164
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 敏之
(72)【発明者】
【氏名】服部 絵美
(72)【発明者】
【氏名】早田 宏徳
(72)【発明者】
【氏名】冨田 直哉
(72)【発明者】
【氏名】加藤 圭一
【テーマコード(参考)】
4J038
【Fターム(参考)】
4J038CG031
4J038HA166
4J038HA246
4J038HA446
4J038KA08
4J038KA19
4J038KA20
4J038MA02
4J038MA10
4J038NA12
4J038NA24
4J038PA18
4J038PB05
4J038PC06
4J038PC10
(57)【要約】
【課題】壁紙が貼付された内壁に塗装しても、ひび割れが生じ難い被膜を形成する粉末状塗料組成物を提供すること。
【解決手段】粉末状塗料組成物は、水と混錬されることにより塗料を形成する。塗料は、壁紙3が接着材層2を介して貼付された内壁1に塗装され、固化することによって被膜4を形成する。粉末状塗料組成物は、体質顔料、ガラス繊維及び再乳化形粉末樹脂を含有し、体質顔料100質量部に対して、ガラス繊維を20~100質量部含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と混錬されることにより塗料を形成する粉末状塗料組成物であって、
体質顔料、ガラス繊維及び再乳化形粉末樹脂、を含有し、
該体質顔料100質量部に対して、該ガラス繊維を20~100質量部含有する、ことを特徴とする粉末状塗料組成物。
【請求項2】
前記ガラス繊維の平均長さが0.05~2.0mmであり、アスペクト比が10~50であることを特徴とする請求項1に記載の粉末状塗料組成物。
【請求項3】
前記体質顔料のメジアン径d50が2~20μmであることを特徴とする請求項1に記載の粉末状塗料組成物。
【請求項4】
前記体質顔料のメジアン径d16とメジアン径d84から導き出される、d84/d16が6~20である、ことを特徴とする請求項3に記載の粉末状塗料組成物。
【請求項5】
不可避的に含有されているものを除き、揮発性有機溶剤を含有しないことを特徴とする請求項1に記載の粉末状塗料組成物。
【請求項6】
建築物の内壁に貼付された壁紙と、該壁紙の表面側に密着した、請求項1に記載の粉末状塗料組成物から形成された被膜と、を有し、該壁紙が紙壁紙である、ことを特徴とする内装仕上構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書の技術分野は、建築物の内壁に貼付された壁紙の表面側に塗装する塗料を形成する粉末状塗料組成物、及び、粉末状塗料組成物から形成された塗料が塗布され仕上げられた内装仕上構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建築物の内壁に壁紙を貼付し、壁紙の表面側に、塗料を塗装する内装仕上が知られている(たとえば、特許文献1及び2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-280229号公報
【特許文献2】特開平02-167953号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、壁紙がクラフト紙や和紙などの紙壁紙(紙クロス)、織物壁紙(布クロス)である場合、従来の内装仕上は、塗料を壁紙が貼付された内壁に塗布すると、塗料に含まれる水分によって、壁紙が膨張し、塗料が乾燥する際に、壁紙が収縮することによって、塗料から形成される被膜(塗膜)にひび割れが生じやすいという課題があった。
【0005】
本明細書の技術が解決しようとする課題は、上述の点に鑑みてなされたものであり、壁紙が貼付された内壁に塗装しても、ひび割れが生じ難い被膜を形成する粉末状塗料組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本明細書の実施形態に係る粉末状塗料組成物は、水と混錬されることにより塗料を形成する粉末状塗料組成物であって、
体質顔料、ガラス繊維及び再乳化形粉末樹脂、を含有し、
該体質顔料100質量部に対して、該ガラス繊維を20~100質量部含有する、ことを特徴とする。
【0007】
ガラス繊維は、親水性が強く、比表面積が大きく、保水性が高い原材料である。本明細書の実施形態に係る粉末状塗料組成物によれば、体質顔料100質量部に対して、ガラス繊維を20~100質量部含有しているため、粉末状塗料組成物が水と混錬されて塗料化された際に、ガラス繊維が水分を保持することができ、壁紙が貼付された内壁に塗料が塗装された際に、塗料に含まれる水分によって壁紙が膨張するのを抑制することができる。これにより、粉末状塗料組成物から形成される被膜(塗膜)にひび割れが生じることを抑制することができる。
【0008】
ここで、上記粉末状塗料組成物において、前記ガラス繊維の平均長さが0.05~2.0mmであり、アスペクト比が10~50であるものとすることができる。
【0009】
これによれば、粉末状塗料組成物に混錬する水の量を好適に抑えることができ、粉末状塗料組成物から形成される被膜にひび割れが生じることを抑制することができる。
【0010】
また、上記粉末状塗料組成物において、前記体質顔料のメジアン径d50が2~20μmである、ものとすることができる。
【0011】
これによれば、粉末状塗料組成物から形成される塗料の塗布作業性を良好なものとすることができる。
【0012】
また、上記粉末状塗料組成物において、前記体質顔料のメジアン径d16とメジアン径d84から導き出される、d84/d16が6~20である、ものとすることができる。
【0013】
これによれば、粉末状塗料組成物から形成される塗料がローラで塗装された際の塗りスジ(筋)を目立ちにくくすることができる。
【0014】
また、上記粉末状塗料組成物において、不可避的に含有されているものを除き、揮発性有機溶剤を含有しないものとすることができる。
【0015】
これによれば、粉末状塗料組成物が施工された建築物に出入りする人に対して、有機溶剤による害を被らせることを抑制することができる。
【0016】
ここで、実施形態に係る内装仕上構造は、建築物の内壁に貼付された壁紙と、該壁紙の表面側に密着した、上記粉末状塗料組成物から形成された被膜と、を有し、該壁紙が紙壁紙であるものとすることができる。
【0017】
これによれば、高湿度と乾燥の繰り返しによる紙壁紙(紙クロス)の伸び縮みから生じるひび割れを抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本明細書の粉末状塗料組成物によれば、壁紙に塗装した際に、粉末状塗料組成物から形成される被膜にひび割れが生じることを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】実施形態の粉末状塗料組成物が塗装された内装仕上構造の層構成のイメージを示す図である。
図2】粉末状塗料組成物に含有される炭酸カルシウムAの粒度分布を示す図である。
図3】粉末状塗料組成物に含有される炭酸カルシウムBの粒度分布を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本明細書の実施形態に係る粉末状塗料組成物及び内装仕上構造について説明する。なお、本発明の範囲は、実施形態で開示される範囲に限定されるものではない。図1に示すように、実施形態に係る内装仕上構造は、建築物の内壁1に接着剤によって貼付された壁紙3に、被膜(塗膜)4が形成されている。なお、図1は、実施形態の粉末状塗料組成物が塗装された内装仕上構造の層構成のイメージを示す図であり、図の層の厚みは実際の層の厚みとは異なる。被膜4は、粉末状塗料組成物が水と混錬された塗料が壁紙3に塗布されて固化することによって形成される。粉末状塗料組成物からなる塗料は、ローラ又は刷毛などによって壁紙3に塗布される。なお、接着剤層2は、壁紙3を貼付する接着剤が固化することによって形成される。
【0021】
粉末状塗料組成物は、原材料として、体質顔料としての炭酸カルシウム、再乳化形粉末樹脂、酸化チタン、ガラス繊維、増粘剤、消泡剤、着色顔料を含有する。これら粉末状塗料組成物の原材料は、粉末状の原材料であり、ナウターミキサ、パドルミキサなどの粉体混合機を用いて混合することによって、粉末状塗料組成物とすることができる。粉末状塗料組成物は、粉末状であるため、水性塗料と異なり、不可避的に含有されているものを除き、凍結防止剤や造膜助剤などの有機溶媒を含有していない。このため、粉末状塗料組成物が施工された建築物に出入りする人に対して、有機溶剤による害を被らせることを抑制することができる。また、粉末状塗料組成物は、粉末で保管している状態では、腐敗するおそれがないため、防腐剤を含有していない。このため、粉末状塗料組成物を扱う人に対して、安全性が高いものとなっている。粉末状塗料組成物の配合例と、体質顔料としての炭酸カルシウムを100(質量部)とした時の他の原材料の好ましい範囲(質量部)を表1に記載する。
【0022】
【表1】
【0023】
粉末状塗料組成物に使用する体質顔料としては、炭酸カルシウム、珪砂、タルク、クレーなどの一般的な体質顔料を使用することができるが、実施形態では、表面が親水性である炭酸カルシウムを使用した。実施形態の体質顔料としての炭酸カルシウムは、平均粒子径として、メジアン径d50(累積分布50vol%の粒子径)が2~20μmである。これにより、粉末状塗料組成物から形成される塗料の塗布作業性を良好なものとしている。炭酸カルシウムのメジアン径d50が2μm未満である場合には、細粒子が多く、粉末状塗料組成物から形成される塗料の粘度が高く、ローラや刷毛での塗布作業性が劣るおそれがある。一方、20μmを超えると、粗粒子が多くなり、粉末状塗料組成物から形成される被膜4の粗粒子が目立ち意匠性が劣るおそれがある。別の実施形態として、d50(メジアン径)は、4~15μm、さらに別の実施形態として、5~10μmとすることができる。
【0024】
実施形態の炭酸カルシウムは、粒度分布の幅として、d16(メジアン径、累積分布16vol%の粒子径)とd84(メジアン径、累積分布84vol%の粒子径)から導き出される、d84/d16の値が6~20である。d16からd84は、炭酸カルシウムが塗料の作業性に影響を及ぼす実質的な粒子径の幅を表し、d84/d16は、粒子径の上端に対しての下端の倍数であり、粒度分布の幅の広さの指標となる。d84/d16が大きいほど、粒度分布の中心の粒度の分布の幅が広いことを意味する。炭酸カルシウムの粒度分布の中心の粒度の分布の幅は、粉末状塗料組成物から形成される塗料のローラ塗装の際の塗りスジ(筋)の発生に影響する。塗りスジとは、ローラの転がり方向に生じるローラ端部の塗りスジであり、凹凸差によって、塗り跡が残るものである。d84/d16の値が6~20であることにより、実施形態の炭酸カルシウムを含有する粉末状塗料組成物から形成される塗料は、粗粒子と細粒子の組み合わせから密に充填され、塗りスジを視認しにくい滑らかな仕上がりを形成することができる。d84/d16の値が6未満である場合には、粒度分布の中心の粒度の分布の幅が狭く、特定の粒度に偏在が見られ、偏在した特定の粒度の粒子によって、粉末状塗料組成物から形成される塗料の塗装の際に、塗りスジが生じやすくなるおそれがある。一方、d84/d16の値が20を超える場合には、粒度分布の中心の粒度の分布の幅が広すぎ、大きい粒子(例えば、200μm以上)も含まれ、大きい粒子により、粉末状塗料組成物から形成される塗料の塗装の際に、塗りスジが生じるおそれがある。別の実施形態として、d84/d16の値は、7~16とすることができ、さらに別の実施形態として、8~13とすることができる。
【0025】
再乳化形粉末樹脂とは、乳化重合によって製造した合成樹脂エマルジョンを粒子状態で乾燥して得られた微粉末樹脂であり、水を添加して撹拌すると再乳化するものである。再乳化形粉末樹脂は、粉末状塗料組成物の結合材樹脂(バインダ樹脂)となるものであり、炭酸カルシウムなどの原材料を結合するとともに、被膜4に可とう性を付与し、壁紙3の伸縮に対して追従可能とすることができるものである。また、再乳化形粉末樹脂は、保水性が高い原材料であるため、塗料に含まれる水分を保持し、塗料の水分によって壁紙が膨張するのを抑制する効果を有している。再乳化形粉末樹脂は、セメント混和用ポリマーディスパージョン及び再乳化形粉末樹脂(JIS A 6203:2015)に規定される再乳化形粉末樹脂を使用することができ、市販品として、モビニールパウダー(ジャパンコーティングレジン株式会社製)、スミカフレックス(住化ケムテックス株式会社製)、アクロナール(BASF株式会社製)、ELOTEX(セラニーズジャパン株式会社製)などの再乳化形粉末樹脂を使用することができる。
【0026】
実施形態の粉末状塗料組成物では、再乳化形粉末樹脂の配合量は、炭酸カルシウム100質量部に対して10~50質量部である。粉末状塗料組成物から形成される被膜4に、被膜4として適度な強度を付与することができるためである。再乳化形粉末樹脂の配合量が炭酸カルシウム100質量部に対して10質量部未満である場合には、粉末状塗料組成物から形成される被膜4の結合材分が不足し、被膜の強度が不足するおそれがある。一方、50質量部を超えると、再乳化形粉末樹脂の特性により、粉末状塗料組成物から形成される塗料の粘度が高くなり、ローラや刷毛での塗布作業性が劣るおそれがある。別の実施形態として、再乳化形粉末樹脂の配合量は、炭酸カルシウム100質量部に対して15~40質量部とすることができ、さらに別の実施形態として、20~30質量部とすることができる。
【0027】
酸化チタンとは、粉末状塗料組成物から形成される被膜4に、隠蔽性を付与する原材料である。実施形態の粉末状塗料組成物では、酸化チタンの配合量は、炭酸カルシウム100質量部に対して15~50質量部である。粉末状塗料組成物から形成される被膜4に、適度な隠蔽性を付与することができるためである。酸化チタンの配合量が炭酸カルシウム100質量部に対して15質量部未満である場合には、粉末状塗料組成物から形成される被膜4に十分な隠蔽性を付与することができないおそれがある。一方、50質量部を超えると、隠蔽性を高める効果が頭打ちとなるおそれがある。別の実施形態として、酸化チタンの配合量は、炭酸カルシウム100質量部に対して20~40質量部とすることができ、さらに別の実施形態として、25~30質量部とすることができる。なお、酸化チタンの平均粒子径(d50)は、0.1~0.3μmであり、炭酸カルシウムの粒子径とはかけ離れている。このため、ローラ(刷毛)作業性に影響を及ぼすことはない。
【0028】
ガラス繊維とは、ガラスが持つ耐熱性、不燃性、耐久性に加え、再溶解させた再生ガラスをさらに1300~1600℃の高温にさらすことにより、柔軟性を併せ持つガラス製の繊維である。実施形態の粉末状塗料組成物では、炭酸カルシウム100質量部に対して、ガラス繊維を20~100質量部含有している。ガラス繊維は、繊維の太さが細いため、比表面積が大きく、表面の親水性が強く、保水性が高いものである。実施形態の粉末状塗料組成物では、ガラス繊維を多く含有することにより、塗料に含まれる水分を保持し、壁紙3が貼付された内壁1に塗料が塗装された際に、塗料の水分によって壁紙が膨張するのを抑制することができ、塗料(粉末状塗料組成物)から形成される被膜4にひび割れが生じることを抑制することができる。ガラス繊維の含有量が炭酸カルシウム100質量部に対して20質量部未満である場合には、保持できる水の量が少なく、壁紙3が膨張し、被膜4のひび割れを抑制することができないおそれがある。一方、100質量部を超えると、粉末状塗料組成物から形成される被膜4に含まれるガラス繊維が多く、ガラス繊維がローラや刷毛に絡み付き、塗布作業性が劣るおそれがある。別の実施形態として、ガラス繊維の含有量は、炭酸カルシウム100質量部に対して25~70質量部、さらに別の実施形態として、30~50質量部とすることができる。なお、ガラス繊維の保水性により、粉末状塗料組成物は、界面活性剤が配合されなくても済むものとすることができる。
【0029】
実施形態では、ガラス繊維の繊維径は、1~200μmとすることができる。ガラス繊維の表面積を確保することができ、塗料に含まれる水分を十分に保持することができるためである。ガラス繊維の繊維径が1μm未満は、汎用品が乏しく、使用し難い。一方、200μmを超えると、ガラス繊維の表面積が小さく、塗料に含まれる水分を十分に保持することが困難となるおそれがある。別の実施形態として、ガラス繊維の繊維径は、2~100μmとすることができる。
【0030】
実施形態では、ガラス繊維の平均長さは、0.05~2.0mmであり、1.5mm以下が90vol%以上である。これにより、粉末状塗料組成物から形成される被膜4の割れに対する抵抗性を高めるものとしている。別の実施形態として、ガラス繊維の長さは、1.0mm以下が90vol%以上とすることができ、さらに別の実施形態として、0.5mm以下が90vol%以上とすることができる。なお、実施形態のガラス繊維のアスペクト比は、10~50である。
【0031】
増粘剤は、粉末状塗料組成物から形成される塗料の施工時の作業性の調整や垂れを防止するために添加する材料であり、粉末状塗料組成物が粉末状であるため、増粘剤も粉末状のものを使用することができる。増粘剤として、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、ヒドロキシエチルメチルセルロース(HEMC)などを選択して適宜添加することができる。
【0032】
消泡剤は、粉末状塗料組成物から形成される塗料から気泡を抜き、粉末状塗料組成物から形成される被膜4を密にするために添加する材料である。消泡剤として、粉末状の消泡剤を適宜選択して適量を添加することができる。着色顔料は、粉末状塗料組成物から形成される被膜4に色彩を付与するために添加する材料である。着色顔料として、粉末状の着色顔料を適宜選択して適量を添加することができる。
【0033】
粉末状塗料組成物は、混錬水と混錬することによって、塗料となる。混錬水は、粉末状塗料組成物100質量部に対して75~80質量部である。粉末状塗料組成物からなる塗料が塗布されるのは、建築物の内壁1に貼付された壁紙3の表面側である。
【0034】
粉末状塗料組成物からなる塗料を施工する建築物の内壁1には、建築物の躯体の内壁1、間仕切り壁などがある。間仕切り壁を構成するボード(板)として、石膏ボード(プラスタボードを含む)、けい酸カルシウム板、木材合板、繊維強化セメント板などについて、実施形態の内装仕上構造を施工することができる。別の実施形態として、石膏ボードについて施工することができる。内壁1には、壁紙3が接着剤によって貼付されている。内壁1に壁紙3を貼付する接着剤は、表2に記載する配合の接着剤を用いた。
【0035】
【表2】
【0036】
実施形態では、壁紙3は、その素材の種類に限定されることなく施工することができるが、別の実施形態として、クラフト紙や和紙などのパルプ由来繊維を抄造した紙壁紙(紙クロス)とすることができる。また、別の実施形態として、紙壁紙として和紙を使用することができる。和紙は、吸水による膨張・収縮が少ないためである。和紙として、片面に木粉を漉き込んだ和紙を使用することができる。木粉により、紙壁紙に凹凸が生じ、粉末状塗料組成物から形成される塗料の塗りスジ及びローラによる転写模様のムラを目立ち難くすることができるためである。なお、ローラによる転写模様のムラとは、重ね塗りした際に見られる、ローラのひと塗りごとの転写模様の差から生じる、模様のばらつきである。紙壁紙の内壁1への貼付は、隣り合う紙壁紙同士を突き付けて、壁紙3が一体化するように施工する。別の実施形態として、隣り合う紙壁紙間に、0.1~2mmの隙間を設けて、紙壁紙を貼付することができる。これにより、紙壁紙の隙間が目立たないため、美観が劣るおそれがなく、かつ、実施形態の粉末状塗料組成物からなる塗料を塗布した際に、紙壁紙が伸縮して、粉末状塗料組成物からなる塗料が成膜した被膜4にひび割れが生じることをより抑制することができるためである。さらに別の実施形態として、隣り合う紙壁紙間の隙間は、0.1~1mmとすることができる。
【0037】
次に、実施形態の粉末状塗料組成物からなる塗料の塗布方法について記載する。実施形態の粉末状塗料組成物は、混錬水と混錬することによって、塗料となる。塗料は、ローラや刷毛などを用いて、壁紙3が貼付された内壁1に塗装することができる。塗布量は、粉末換算(不揮発分換算)で100~125g/m2(1回塗り)である。塗布回数は、1回塗り又は2回塗りとすることができ、隠蔽性を保つため、2回塗りとすることができる。
【0038】
このようにして施工された内装仕上構造は、建築物の内壁1に接着剤によって貼付された壁紙3としての紙壁紙に、粉末状塗料組成物からなる塗料が成膜した被膜4が形成されている。内装仕上構造は、被膜4が合成樹脂(再乳化形粉末樹脂)を含有しているため、内壁1や紙壁紙の様々な動きに対して追従することができ、塗膜4がガラス繊維を含有しているため、これら動きに対してひび割れが生じることを抑制することができる。
【実施例0039】
実施形態の粉末状塗料組成物は、配合の異なる粉末状塗料組成物について、粉末状塗料組成物100質量部に対して水75質量部を混合し、塗料とした。塗料は、表2に記載した配合の接着剤で石膏ボード(吉野石膏製)に貼付された紙壁紙としての和紙(木粉入り)、和紙(木粉なし)又はクラフト紙の上(表面)に、ウールローラを用いて、250g/m2の塗布量(2回塗りの合計量)となるように塗布して、以下に記載する評価(試験)を行なった。粉末状塗料組成物の実施例及び比較例を表3に記載する。なお、紙壁紙は、石膏ボード上に紙壁紙同士を突き付けて貼付されているものである。
【0040】
塗布作業性
塗布作業性は、ウールローラを用いて塗布した際の作業性について評価した。そして、試験結果は、難なく塗布することができるものを○、塗布することはできるがローラが重く感じられるものを△、ローラの転がりが悪く塗布するのが難しいものを×、として評価した。
【0041】
壁紙突合せ部のひび割れ
壁紙突合せ部のひび割れは、塗料の固化後に、紙壁紙同士の突合せ部に沿って、ひび割れの発生が見られないものを○、一見するとひび割れが確認できないものの、凝視するとひび割れの発生が確認できるものを△、ひび割れの発生が見られるものを×、として評価した。
【0042】
塗装によるスジの発生
塗装によるスジの発生は、塗りスジが確認できないものを◎、凝視すると塗りスジが確認できるが、30cm以上隔離して観察すると概ね塗りスジが確認できないものを○、塗りスジが確認できるが、1m以上隔離して観察すると概ね塗りスジが確認できないものを△、1m以上隔離して観察しても塗りスジが確認できるものを×、として評価した。
【0043】
塗装による転写模様のムラ
塗装による転写模様のムラは、転写模様が均一にみられるものを◎、転写模様にばらつきがあるが、30cm以上隔離して観察すると概ね均一にみられるものを○、転写模様にばらつきがあるが、1m以上隔離して観察すると概ね均一にみられるものを△、転写模様にばらつきがみられるものを×、として評価した。
【0044】
塗装によるシワの発生
塗装によるシワの発生は、全くシワが発生しなかったものを◎、塗装直後にシワが発生するが、乾燥によりシワが視認できなくなったものを○、塗装直後にシワが発生し、乾燥後もわずかにシワが視認できるものを△、乾燥後もシワが視認できるものを×、として評価した。
【0045】
【表3】
【0046】
原材料の詳細を以下に記載する。
【0047】
炭酸カルシウムA
d50=6.1μm
d16=1.5μm
d84=14.5μm
d84/d16=9.7
炭酸カルシウムAの粒度分布を図2に記載する。
【0048】
炭酸カルシウムB
d50=21.5μm
d16=7.2μm
d84=40.0μm
d84/d16=5.6
炭酸カルシウムBの粒度分布を図3に記載する。
【0049】
ガラス繊維A
平均繊維長さ:0.1mm
アスペクト比:10
ガラス繊維B
平均繊維長さ:0.07mm
アスペクト比:10~50の混合物
再乳化形粉末樹脂は再乳化形粉末アクリル樹脂を使用し、酸化チタン、増粘剤、消泡剤及び着色顔料は、それぞれ市販品を選定して使用した。
【0050】
(実施例1~3)
実施例1~3は、炭酸カルシウムA、ガラス繊維Aを使用した同じ粉末状塗料組成物を用いた実施例である。塗布する紙壁紙は、実施例1が和紙(木粉入り)、実施例2が和紙(木粉なし)、実施例3がクラフト紙である。塗布作業性は、難なく塗布することができ、仕上がりは、実施例2及び3が、30cm以上隔離して観察すると確認できないものの、塗装によるスジの発生と転写模様のムラが確認でき、実施例1(和紙(木粉入り))は、和紙の木粉によって、塗りスジ及びローラによる転写模様のムラが視認され難くなっていた。実施例1~3に、紙壁紙同士の突合せ部に沿ったひび割れは、確認できなかった。実施例3(クラフト紙)は、クラフト紙に、塗料の水分によるシワが発生し、乾燥後においてもシワがわずかに視認できるものであった。
【0051】
(実施例4)
実施例4は、実施例1から炭酸カルシウムをd84/d16=5.6の炭酸カルシウムBに変更した実施例である。塗布作業性は、難なく塗布することができ、仕上がりは、ひび割れ、転写模様のムラ、シワの発生はないものの、1m以上隔離して観察すると確認できない程度のものであるが、ローラの塗布方向に沿って塗りスジが確認された。
【0052】
(実施例5、6)
実施例5、6は、実施例1からガラス繊維の配合量を減らした実施例である。塗布作業性は、難なく塗布することができ、紙壁紙同士の突合せ部に沿ったひび割れやシワの発生は確認できなかった。仕上がりは、和紙の木粉によって、塗りスジ及びローラによる転写模様のムラが視認され難くなっていた。なお、実施例6は、粉末状塗料組成物に着色顔料を配合させたものである。
【0053】
(実施例7)
実施例7は、実施例1からガラス繊維の配合量を増やした実施例である。作業性は、問題なく塗布することはできるがローラが重く感じられるものであった。
【0054】
(実施例8)
実施例8は、実施例1のガラス繊維を、平均繊維長さ:0.07mm、アスペクト比:10~50の混合物であるガラス繊維Bに変更し、配合量を増やしたものである。作業性は、問題なく塗布することはできるがローラが重く感じられるものであった。仕上がりは、紙壁紙同士の突合せ部に沿ったひび割れやシワの発生はなく、滑らかな仕上がりであり、和紙の木粉によって、塗りスジ及びローラによる転写模様のムラが視認され難くなっていた。なお、試験の範囲では確認できなかったが、実施例8は、アスペクト比:10~50の混合物であるガラス繊維Bを使用していることにより、内壁1や紙壁紙の様々な動きに対してより追従することができるものであると推測される。
【0055】
(比較例1)
比較例1は、ガラス繊維が配合されていないものである。このため、比較例1は、塗料に含まれる水分によって紙壁紙が膨張するのを抑制することができず、紙壁紙の伸縮によって、紙壁紙同士の突合せ部に沿ってひび割れが発生していた。なお、塗装によるシワの発生は、確認されなかった。
【0056】
(比較例2)
比較例2は、再乳化形粉末樹脂が配合されていないものである。比較例2は、再乳化形粉末樹脂が配合されていないことによって、塗料に含まれる水分によって紙壁紙が膨張するのを抑制することができず、紙壁紙の伸縮によって、紙壁紙同士の突合せ部に沿ってひび割れが発生していた。なお、比較例2は、一見して、被膜4が形成されているものの、被膜4に結合材が存在せず、外力を受けると、被膜4が崩れ落ちるものであった。
【0057】
(比較例3)
比較例3は、実施例5からガラス繊維の配合量をさらに減らしたものである。仕上がりは、紙壁紙同士の突合せ部に沿ったひび割れが確認できた。なお、塗装によるシワの発生は、確認されなかった。
【符号の説明】
【0058】
1…内壁、2…接着剤層、3…壁紙、4…被膜。
図1
図2
図3